フィリップ さんの感想・評価
3.4
恋に落ちる瞬間
アニメーション制作:A-1 PICTURES
監督・シリーズ構成:平池芳正、
キャラクターデザイン:安田京弘、原作:ふじた
アニメ化以降の原作でいちばん盛り上がったと
私が勝手に思っている高校時代の小柳花子と樺倉太郎の
エピソードをピックアップ。
桃瀬成海と二藤宏嵩が偶然にスタバ?で小柳と遭遇し、
樺倉と付き合うことになったいきさつを聞き出す構成。
ヲタ恋のコミックスではオタクあるあるのネタを
エピソードや欄外の書き込みなどによって、
細かく表現したことと、オタクの男女を
少女漫画の手法でラブコメとして成立させたことが
幅広い女性ファンの心を掴んだ。
それではアニメの特徴はどうかというと、
大きな魅力のひとつは、小柳・樺倉カップルを
沢城・杉田のCVでたっぷり表現したことだろう。
本編でのふたりが喧嘩する居酒屋のやり取りなどを
観ていると、このコンビだからこそ、
さらに面白くなったのではないかという、
テンポや演技の上手さが存分に感じられる。
そもそもこのふたりの声優は、配信などでの
アニメ企画で頻繁に共演しており、息の合ったところは
よく知られるところ。杉田のオタク具合&ボケと沢城の
的確なツッコミで楽しませてくれることもしばしば。
ふたりは駆け出しのころから業界では有名人で
顔見知りだったらしく、お互いを意識する存在でもあったとか。
それもあり、ふたりが絡んで言い争うシーンなどは、
相乗効果を生んでヒートアップしている気がする。
今回のOADはごく普通のラブコメに
オタクネタが付加された印象。
それでも、ふたりの濃いキャラクター設定と
CVの上手さもあって十分に楽しませてくれる。
高校時代の小柳は、オタクの気配もない
ただの気の強い女子で、ここからディープなオタクに
なっていったと想像すると新鮮に感じる。
ラストシーンはベタともいえる展開だが、
何故か見入ってしまう。
シチュエーションのせいなのか、
自分の心が乾いているせいなのか。
ふたりが交差する瞬間の表現はいい。
ウォン・カーウァイ監督の
ストップモーションの手法を思い出す。
コミックスの特典作品だが、dアニメストアなどで視聴可能。
小柳&樺倉のカップルがが気になる人、
沢城&杉田のやり取りが好きな人にとっては
微笑ましく、楽しい時間になるだろう。
(2020年7月11日初投稿)