Witch さんの感想・評価
5.0
雰囲気だけで御飯3杯はイケる?!傑出したダークな世界観
【レビューNo.100】(初回登録:2023/12/24)
オリジナルアニメで2008年作品。全24話。
「レビュー100本記念」はこれでいきたいなと。
他のレビュアーさんとやりとりして、昭和のアニメ「ガッチャマン」や「キャ
シャーン」を知らない世代に軽くショックを受けたので。
(冷静に考えるとウチの娘たちも絶対知らんわwww)
なので、その辺りのアニメも取り上げてみようと。
とはいえ、今更昭和の作品そのものを取り上げるものいかがなものかと思い、
平成にカムバックしていた本作を紹介しようと。
(ストーリー)
長い眠りから目覚めるも、それ以前の記憶を失っていたキャシャーン。
しかしその間にロボットを含む全世界は「滅び」が進む荒廃した世界へと変わ
ってしまっていた。
「キャシャーンを食らうと永遠の命が手に入る」
そんな噂に群がり、キャシャーンに襲い掛かってくる「滅び」に冒されたロボ
ット達。そして
「お前が犯した『罪』を思い出すまで許さない!!」
と、キャシャーンに付きまとう女ロボットのリューズ。
荒野をさすらうキャシャーンは、襲い掛かってくる敵と戦いながら自らの記憶
を取り戻さんとする。やがて様々なロボットや人間と出会い、自身の背負った
「罪」 を知ることになるのだった。
※ロボットの「滅び」
→ 体中に錆が発生し、部品交換も適わず朽ち果てていく現象。
(それまで不死身に存在だったロボットに訪れた「死」という概念)
(評 価)
・昭和の名作を大人向けに見事にブラッシュアップ
・「キャシャーン」は昭和アニメで、ブライキング・ボス率いる「アンドロ
軍団」に立ち向かうべく、東博士の息子の鉄也が「新造人間キャシャーン」
となり、人類を守るために戦う子供向けのヒーローもので、私も子供の頃
お世話になった作品です。
・その「キャシャーン」から、主要キャラや終末期という世界観を引き継ぎ
ながらも、単純な「懲悪もの」から「死生観」や「罪」といった哲学的な
要素を取り入れ、大人向けにストーリーを一新したものが本作になります。
・主要キャラも前作から下記のように変更。
・キャシャーン
悪を倒すヒーロー
→ 記憶を失った放浪者。唯一「滅び」から逃れた「不死身」の存在
・ルナ
キャシャーンの相棒(ヒロイン的存在)
→ 他者に「生」と「死」を与える力を持つ存在
・ライキング・ボス
アンドロイド軍団を率いる悪玉ボス
→ 狂言回し的な存在。(「滅び」のきっかけを作った張本人ではある)
あと前作のような変身機能はないですが、ロボット犬フレンダーも引き続
き登場するのは嬉しいですね。
・誉め言葉としての「雰囲気アニメ」
元々キャシャーンは前作から、
「終末感漂う荒廃した世界で繰り広げられるシリアスなストーリー展開」
というダークさが漂う作品ではあるのですが(一応子供向けだったので強く
は押し出してはいないですが)、本作では上述に加え
・「滅び」という「死」の概念が蔓延した鬱々とした空気感
またそれから逃れられないという閉塞感やぺシニズム
・キャシャーンが犯したとされる「罪」という十字架の重さ
・大人向けの辛口な演出
ということで、重厚でダークな世界観がホントたまらない!!
そしてすべてを明確に語らず、ミステリアスな余韻が残る演出も相まって、
本作が纏う「傑出した雰囲気」を創り出してるって感じですね。
この雰囲気を味わうだけでも、本作を視聴する価値はあると思います。
・秀逸なメカデザインと戦闘シーン
前作から引き継いだ戦闘用量産型ロボットに加え、ならず者(?)のロボッ
トのメカデザインはどこかレトロ感がありホントに秀逸です。
また戦闘シーンでキャシャーンに破壊される際の部品が飛び散る作画や金属
音など、メカ好きには堪らない描写も多いです。
それにキャシャーンと同タイプで同等の戦闘能力を有するライバルキャラも
登場しますが、この辺りの戦闘シーンスピード感や迫力があり熱の籠ったも
のに仕上がっています。
人間タイプのロボットも登場しますが、幼女のリンゴ以外はどこかにロボッ
トと分かるデザインがなされており、それでいて人間らしい感情のセリフを
吐き出したりとギャップも上手く作用しています。
・「生」と「死」を扱った割と重い作品
前作が「懲悪的ロボットバトルモノ」ということもあり、そういう描写が多
いですが、本作の本質は「滅び」というロボットに訪れた「死」の概念がも
たらす、各ロボットの「死生観」にあります。
・「死」から逃れるためあがく者
・「死」受け入れる者、そしてそれにより気付きを得た者
→ 「他者と限りある時間を過ごすのが愛おしい」と感じる恋愛感情っぽ
いもの
→ 「死があってこそ生がある」という生きている実感etc…
しかし一度は死を受け入れたものの、キャシャーンという「蜘蛛の糸」が目
の前に現れた時その者は・・・といった結構エグイ描写もあり「生」と「死」
というテーマに対し、ロボット達は様々な答えをみせてくれます。
そしてそれと対比しての「不死身」の存在となったキャシャーンの苦悩。
またテーマから少しそれますが「ロボット軍団」を率いて一時頂点に立って
いたライキング・ボスが目指した世界とは・・・
哲学的な要素を含む面白い作品に仕上がっていると思います。
昭和の「ヒーローもの」だった子供向けだった作品を、「大人だからこそ楽し
める」作品にブラッシュアップしてきたタツノコプロの手腕は賞賛に値すると
思います。それに何といっても傑出したダークな世界観!!
それをしっかり24話で魅せてくれるという・・・
もう15年位前の作品となりますが、今なお十分楽しめる作品だと思います。
あとOP「青い花/カラーボトル」はかなりの名曲です。
(私の記憶が確かなら多分最後に買ったCDになるかな)