2023年度の医者おすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2023年度の医者成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月11日の時点で一番の2023年度の医者おすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

66.8 1 2023年度の医者アニメランキング1位
REVENGER(TVアニメ動画)

2023年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (129)
359人が棚に入れました
むかしむかし、私たちとは異なる歴史を辿った長崎で……。 信じていたものに裏切られ、卑劣な罠にかかり、許婚の父を手にかけてしまった雷蔵。 許されない罪を背負い、自らも絶体絶命の危機に陥ったところを、 町の何でも屋「利便事屋」に救われる。 実は、彼らの正体は力なき人たちの復讐を代行する殺し屋、「REVENGER」だった。 秘めたる信仰に生きる、優雅な蒔絵師・幽烟。 町の人たちに慕われる、元海賊の町医者・徹破。 無邪気さと残酷さを併せ持つ、両性具有の少年・鳰。 酒と博打を愛する、その日暮らしの博打打ち・惣二。 半ば拾われる形で、雷蔵は一癖も二癖もある殺し屋たちの仲間になることに。 生まれも育ちも主義も主張もバラバラな5人の間に、命がけの仕事を通じて奇妙な友情が生まれていく。 やがて、長崎で起きた事件の真相を追う中で、彼らは大きな陰謀に巻き込まれていく——。
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

長崎リベンジャーズ

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
必殺仕事人をオマージュした作品。元ネタを知らない若い人はどう観るんだろうね?

といっても、私も、再放送を時々、祖父母と一緒に観た程度なので、あまり詳しくはないんですけどね。

アニメとしてのクオリティは高く、単なるモノマネには留まらない、キチンと真面目に作られている印象を受けました。

雰囲気としては、テレビアニメというより、映画のような感じです。最初から最後まで、ちゃんと暗いというか、作りたい作品を美学をもって作りきったという感じで、好感がもてました(世の中に迎合していない感じが)。

そのへん、流石、原案が虚淵玄さんだと思いました。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
利便事屋で、リベンジ屋とは、ナイスなネーミングだと思った。金箔で人を殺せる理屈は、最後まで分からなかったけれど(笑)

ラストシーンを、どう考えるかで、その人における、本作の評価が決まるような気がする。

私は基本、ハッピーエンドが好きで、本作のように、主人公が死んでしまう展開は好きではない。

が、本作に関しては、なんだかしっくりきてしまった。

「無常」というか、「無情」というか。

繰馬雷蔵は、決して悪人ではないが、騙されたとはいえ、多くの者の命を奪っている。その対象は、悪人だったり愛する人だったり、金で雇われているだけの奴だったりもする。

でも、それが誰であれ、理由はなんであれ、きっと誰かの大切な人なのだろう。人を殺すということは、それだけ重い「業」を背負うことになる。

本作の上手いのは、絵描きとしての、ちゃんと明るい未来の可能性も見せたことだ。でも、雷蔵自身は、結局最後まで、自分を許せていなかった。

「正義と悪」「幸せと不幸」「生と死」

そんなシンプルな二択では割り切れないような、複雑に揺れ動く心情を丁寧に描いてきたからこそ、視聴者も(雷蔵の今後の人生について)迷うと思うし、迷って答えが出ないうちに、何気なく、呆気なく、主人公の命が奪われた。

その唐突な、不条理な感じは、ある意味でとてもリアルだった。

最後、雷蔵は多分、死によって救われた気になったと思う。でも、苦悩しながら、絵描きとして10年も生きたあとならば、死が救いになることはなかったかもしれない。

きっと人間なんてそんなもので、時間によって、環境によって、運によって、色々なことが変わっていく。

物語の最後を観て、私はモヤモヤを抱えてしまったが、なんか、雷蔵はスッキリしてたのかなと思うし、他の面々も、悲しみながらも受け入れ、普通に生きていき、どこかでそれぞれの死を迎える気がする。

本作はバッドエンドではなく、ビターエンド。余韻を楽しみ、想像を膨らますことができる展開。

こういう、ビターなラストが似合うように、脚本もシナリオも、逆算しながら、丁寧に世界観を作ってきた気がして、だから、私には珍しく、ビターエンドを受け入れたいと思った。

そんな作品は、久々だった。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14
ネタバレ

みのるし さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

総じておもろかったです。

本家必殺よりも面白かったですわ。

本家に劣るところがあるとすれば、そうっすなぁ、菅井きんさんと白木万理さん的な役どころのキャラがいてなんだことぐらいですかねー。

あとはもう文句なしですわ。

アヘンの密輸を軸にしたストーリーと同業の敵キャラとのバトルもよかったし、
最後主人公が{netabare}刺されて死んじゃう{/netabare}とか太陽にほえろのショーケンとか探偵物語の松田優作とかみたいやないすか。

ま、逆にゆうとボクらくらいの世代の人じゃないと楽しめなかったかもしれないですが。

いずれにしても総じておもろかったです。

こおゆう昔の時代劇のリメイクアニメみたいなのまたやってほしいですわ。
今度は破れ奉行あたりのリメイクとか見たいなぁ(笑)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 12

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

その罪、その咎、悔い改めよ。

アニメの視聴が終わって公式サイトを見てビックリ…
なんとストーリー原案とシリーズ構成を手掛けられたのは、ニトロプラスの虚淵玄さんだったんですね。
虚淵さんと言えば、「魔法少女まどか☆マギカ」や「PSYCHO-PASS サイコパス」が余りにも有名…
他にも「Fate/Zero」や「翠星のガルガンティア」も手掛けられています。

「時代劇だから」という仕方の無い理由で視聴を先延ばししてきましたが、実際視聴したらメッチャ面白かったですから…
そっか…虚淵さんの物語なら面白いのも納得ですね^^


信じていたものに裏切られ、帰る場所をなくした男、雷蔵。
そんな彼が拾われたのは、力なき人たちの復讐を代行する殺し屋「REVENGERリベンジャー」だった——。

普段は、「よろず利便事りべんごと引受け」の何でも屋を営む男たちが持つ、表の顔と裏の顔。
優しく温和な態度とは裏腹に、破壊衝動を隠し持った町医者。
天使のように愛らしい無邪気さと倫理観の無い残酷さを併せ持つ、両性具有の美少年。
金と酒に目がなく、他人に厳しく口の悪い博打打ち。
そんな個性的な面々を率いる、優美な容姿にクールな頭脳を持つ蒔絵師。

不器用で、まっすぐで、欠落を抱えた男たち。
共に過ごしていくうちに、雷蔵と彼らの間に奇妙な友情が芽生えていく。

『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS サイコパス』など、
緻密に練られた世界観に、観る者の心揺さぶる人間ドラマを生み出してきた虚淵玄(ニトロプラス)が
本作で約10年ぶりにTVアニメのストーリー原案・シリーズ構成を務める。

監督を担当するのは『忍たま乱太郎』シリーズや『怪物事変』など熟練の演出で魅せる藤森雅也。
他にも数々の人気作品で実績を残してきたスタッフが名を連ねる。
キャストには、雷蔵役を務める笠間淳を筆頭に、梅原裕一郎、武内駿輔、金元寿子、葉山翔太が集結。
悲哀と歪さをはらんだ殺し屋たちを、情味豊かに演じ上げていく。

「その罪、その咎、悔い改めよ」
5人の殺し屋たちによるダークヒーローアクション史劇!


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

この物語の主人公は、元薩摩藩士で剣術の達人で、なんと示現流の使い手である繰馬 雷蔵。
実は私の知り合いに、鹿児島出身で示現流の免許皆伝した方がいらっしゃいます。
とは言っても木刀を振っているところは一度も無いんですけどね。

だからどんな流派なのか、名前しか知りませんでしたが、この作品を経てようやく示現流がどの様な流派なのかが良く分かりました。
「キエエエェェー!」と叫びながら一刀両断で戦いを終わらせる剣法なんだとか…

あとは、ひーちゃん演じる鳰(にお)も良き感じのキャラでした。
両性具有の少年だそうですが、この設定活かされていないんじゃ…と思いきや、しっかりこの設定も仕事していましたね。

作品のタイトル通り、利便事(りべんじ)を生業とする物語です。
だから決して己の情や私利私欲にかられて人を殺めるのではありません。
死んでも死にきれない後悔を持つ者が残した「恨噛み小判」の依頼を受けて復讐を請け負うんです。

最初は「恨噛み小判」と復讐のルーティンでした。
ルーティンとは言え、恨み形は星の数ほどあるので復讐も千差万別です。
法で裁けない悪もあるので、ある意味必要な仕事なんだと思います。

ところが、物語は中盤以降様相を変えてきます。
物語が一気に壮大になると言うか、諸悪の根源が明らかになったというか…
大きな意味でも復讐と考えれば合点がいきますけれど。

回数を重ねるごとに面白さの増す作品です。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、レトベアさんによる「ダウンタイマー」
エンディングテーマは、坂本真綾さんによる「un_mute」

1クール全12話の物語でした。
完走して振り返ってみると、味わい深い作品だったと思います。
くだらない理由で視聴を先延ばしにしたことを少し後悔しています。
オリジナル作品だけあって、1クールの尺の使い方や物語のテンポも良かったと思います。
しっかり堪能させて頂きました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 6

84.1 2 2023年度の医者アニメランキング2位
【推しの子】(TVアニメ動画)

2023年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (670)
1898人が棚に入れました
「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」 地方都市で働く産婦人科医・ゴロー。 ある日"推し"のアイドル「B小町」のアイが彼の前に現れた。 彼女はある禁断の秘密を抱えており…。 そんな二人の"最悪"の出会いから、運命が動き出していく―。

声優・キャラクター
アイ:高橋李依
アクア:大塚剛央
ルビー:伊駒ゆりえ
ゴロー:伊東健人
さりな:高柳知葉
アクア(幼少期):内山夕実
有馬かな:潘めぐみ
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

早熟にもほどがある

動画工房制作。

地方都市で働く産婦人科医の男の前に、
現れた患者は推しのアイドル、アイであった。
{netabare}医者として彼女を支えようと決意をするも、
彼女の出産を直前に、男は何者かに襲われる。{/netabare}
二人の出会いが予期せぬ運命へと動き始める。

序章はネタバレ厳禁なのでしょうが、
物語の導入部としては強烈な引きであり、
かなり奇抜な物語の設定ではあるが楽しい。
演出が効果的に機能しているのでしょう。

アイドルは夢を与える仕事である。
{netabare}そして夢の裏側、綺麗な嘘の悲劇的な代償、
前世の記憶を引き継ぐ双子の兄妹、
とある悲劇的な事件の真相を暴くため、
兄と妹はそれぞれの仕方で復讐を誓う。{/netabare}

一定以上の緊迫感が続けば嬉しい、
先の読めない展開に期待しています。

最終話視聴追記。
序盤の展開はサスペンス一辺倒ではなく、
{netabare}まずは芸能界で足場を作り、手掛かりを探す、
アクアは事件の裏に誰が関与しているのかと、
推測し、周りと良好な人間関係を構築していく。
期待していたサスペンスフルな展開とは、
少し方向性が違うも、まずまずは楽しめる。
復讐劇が成就するまで、まだ先がありそうだ。{/netabare}

女王蜂の楽曲がとても良く印象に残りました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

「それでも光はあるから」

赤坂アカ氏・原作の連載コミックは未読。

【物語 4.5点】
題材は芸能界の裏側。

初回から90分SPでインパクトを残す。
あとは数話完結エピソードで適度にヤマを作って勢いを持続させる。
最近のバズる1クールアニメの構成として理想的。

その中でアイドルの虚実。
演技力だけで決まらない役者のキャスティング。
リアリティショーを巡るネット、SNS上のエゴサ、炎上。

多くの人が芸能界に対して薄々感じている、こじれた部分を、
踏み込んで言語化して、よく映像化してくれたと共感を得ていく内容。

7話の{netabare} ネットリンチ{/netabare} はここまでエグッて来るのかと戦慄しましたし、
3話にて語られた、良い原作を良い映像作品にしたいという純心だけでは通らないドラマ事情。
それでも現場スタッフはより良い物を作ろうと奮闘してはいるという描写。
私も、今後アニメ化で好きな原作を台無しにされた時も、少しは優しい気持ちで受け止められそう?ですw


主人公少年・愛久愛海(アクアマリン)は{netabare} 母であり推しであるアイ{/netabare} をあんな目に遭わせた芸能界の連中への復讐に燃える闇サイド担当。
妹・瑠美衣(ルビー)は母も輝いたアイドルに憧れを抱く光サイド担当。

両サイドを行き来したり、交錯させたりすることで、
闇は深いけど、人を惹き付けてやまない夢の芸能界を演出。

またアクアの復讐闇堕ちルートを思い留まらせるルビーのアイドル光ルートという構図も、
葛藤の軸として確立されており、制作決定している2期以降も安定して期待できます。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・動画工房

きらびやかなステージのスポットライトにトップアイドルの瞳の煌き。
芸能界のキラキラを表現する極彩色のカラーが強烈。
裏に潜む嘘の存在を否応なしに意識させられる、“価値ある不快感”を提供。

反面、芸能界の本音やトラウマを描く時は、しっかりと色数を落とす。
地味にアクアが業界の裏情報を探るため鏑木と会談するモノクロに近い映像も印象的。
灰色の店内で裏話を交わす2人の男。そして、闇に浮かぶ{netabare} 4万円の寿司w{/netabare}

カラースクリプトも数多く担当した助監督の猫富 ちゃお氏。
要チェック人物としてマイリストに登録されました。


動画工房の主力・谷口 淳一郎氏ら“作画育成監督”を複数人擁する陣容も特徴的。
この作画育成監督、近年ではCloverWorksの岡 勇一氏も務めるポジション。(※)

過酷な労働環境などを背景にした、技術継承不足が呼ぶ、さらなる人材不足という地盤沈下の悪循環。
アニメ業界も、芸能界と同じく、色々と闇を抱えているようですが。

作中でルビーたちが{netabare} 新生B小町{/netabare} により芸能界に光をもたらすのかと予感させるのと同様に、
日本のアニメ業界も、社内育成体制の整備と内製回帰による基盤強化で、将来に光明を見出していこうという意志を感じます。


【キャラ 4.5点】
“10秒で泣ける天才子役”有馬かな。
子役の旬が過ぎて見向きもされなくなった高校時代にアクアらと再会。
CV.潘 めぐみさんの濁声で、骨身に染みた芸能界の現実を語る解説役としても重宝する。
{netabare} 新生B小町のセンター{/netabare} も決まってましたね♪

また、必要なのは有馬かなという元・子役の名前だけ、良い演技より波風を立てないことを求められる現場で放った、
ドラマ業界騒然の会心の演技。
{netabare} 「それでも光はあるから」{/netabare}
矛盾だらけの芸能界をも照らすメタファーとして私の心にも深く刺さりました。

今後も有馬かなは{netabare} アクアを巡る黒川あかねとの三角関係?{/netabare}
など恋愛面でも活躍が期待できそうです。


人気“高校生ユーチューバー”MEMちょ。{netabare} 新生B小町メンバー。{/netabare}
メディア横断的にバズる導線を引くネット工作能力が貴重。
衝撃の{netabare} 実年齢25歳、7歳サバ読みの{/netabare} カミングアウト。
芸能界の過剰な早熟性欲求へ一石を投じる意味でも有用なキャラです。


【声優 4.0点】
主人公アクア役の大塚 剛央さんは近年ブレイクし始めている若手声優。
ルビー役の伊駒 ゆりえさんに至ってはメインキャストは初の新人。
大塚さんは闇堕ちを危惧させる怪演などで片鱗を見せていますが、
伊駒さんは演じるキャラ同様、芸能界の闇に放り込むのが憚られるピュアさを感じます。

1期目は正直、有馬かな等、強烈なキャラ勢に埋まってる感もあったメインお二人。
シリーズを重ねる中でどう染まるか、化けるのか。
伸び代にかけた意図を感じる新人、若手起用だと思います。


カリスマアイドル・アイ役の高橋 李依さんが、初回の衝撃の掴みを支える。
天才若手女優・黒川 あかね役の石見 舞菜香さんが、8話の起死回生の演技を押さえる。
要所を締める声優の役者魂も光りました。

発声方法が謎なのが“覆面筋トレ系ユーチューバー”で苺プロの稼ぎ頭・ぴえヨン役の村田 太志さんのアヒル声w


【音楽 4.0点】
伝説のグループ・B小町の楽曲群は、やや昔のアイドルリバイバル感を醸した構成。
自己紹介&ヲタ芸煽り曲「サインはB」の作詞・作曲が大石 昌良さんというのがツボにハマります。
『~GRIDMAN』の主題歌同様、大石さんは懐古な心をくすぐるのがお上手です。


OP主題歌はYOASOBI「アイドル」
Ayase氏が原作漫画が好き過ぎて、インスパイアされた楽曲を複数作曲していた所、
タイアップの話が舞い込んで、その中の一曲が世に出た形。
歌詞世界は原作者が書き下ろした短編小説「45510」を元に展開。

「45510」は現在ヤングジャンプHPで期間限定公開されていますが、
私はアイのメガジャケ目当てでポチった「アイドル」CD版の付録で読みました。

2番を聴いて感じていた、1期では描写されなかった{netabare} アイのグループ内人間関係{/netabare} が、
真相に深く関わっているのだと再確認しました。

かわいいを表現しようと挑発的に語尾を上げるikuraさんのボーカル。
キャッチーな音をクドいくらい重ねるアレンジ。
良い意味で耳に障る構成で、アイドルと嘘というテーマを体現した力作。
AMVもYouTube2億回再生も納得の出来栄えです。


ED主題歌は女王蜂「メフィスト」
こちらはアヴちゃんが長年構想していた、人の願いを叶えるためにどこまでやっていくか?
という楽曲テーマが、作品と出会うことで結実し、日の目を見た形。
「メフィスト」はゲーテ『ファウスト』で登場する悪魔。
本曲では願いの悪魔の意が込められたとのこと。

毎回引きを強くするイントロが優秀なEDでもあります。
引きでは、時に囁くようなモノローグだったり、息を飲むカットだったりしますが、
音響が小さな音量のセリフ素材をイントロに負けないよう調整し、印象的な幕引きを演出したとのこと。
楽曲のパワーだけでなく、細かい音響の仕事も作品を支えていました。

尚、EDにも実写MVがありますが、こちらは視聴するのに相当な覚悟が要ります。


【参考文献】※CloverWorks公式ホームページ「STAFF INTERVIEW 岡勇一 クリエイティブ事業部 演出・作画ルーム 作画育成監督 培ってきた技術をすべて後輩に継承していきたい」




【第1話(90分拡大版)先行上映感想】嘘つきはアイドルの始まり

長いので折りたたみ。
{netabare}
アイドルは嘘で人々に夢を与える偶像。
嘘こそアイドルの本質。
こんな捻くれた考えを持った私。

本作の「この芸能界において嘘は武器だ」とのキャッチコピー。
主人公のアイドル・星野アイの“しいたけ目”を越えた“キラ星目”。
嘘臭すぎてかえって惹き付けられる極彩色の強烈なビジュアル。
これはさぞ濃密な芸能界の嘘を暴き出してくれるに違いないと、注目していた期待作。

加えて展開が衝撃的との評判は耳にしていたので、
まずは是非とも映画館で気持ち良く驚いてみようと、
今回の鑑賞まで情報シャットアウトして挑みました。

結果、本当に驚きましたし、取り扱う嘘は胃もたれして吐き気を催すくらい濃厚でした。
基本設定に{netabare} 推しの子供として転生した双子{/netabare} というトンデモがありますが、白けることはなく。
むしろ芸能界を徹底的に相対化できるポジションに視点を置く。
口の固い大人が油断して本音をこぼしてしまうキャラクターを活かす。
芸能界の嘘と現実にまつわるテーマの深掘りも怖いほど快調で引きずりこまれます。

例えば、ネット上で、あの娘の笑顔は作り物っぽくて嫌いとのアイドルアンチを見かけます。
あれも本作にかかれば、作り物も何も、芸能界の笑顔は全て人工物。
結局、人々は各々が、どの嘘が綺麗でしっくりくるか否かで、あれは本物じゃないだの叩いているに過ぎない。

さらには夢を壊されたと荒れるアイドル恋愛問題。
俳優の実力より事務所のパワーバランスによって決まる出番の尺の長さ。
真偽そっちのけで他人の不幸すらコンテンツとして消費する下衆な大衆。
嘘に踊らされる世間の風刺は多岐に渡り、シナリオ展開との合せ技で打ちのめされます。

初回90分で、まだ物語のプロローグに当たる第一章にしてこの密度。
序盤力は近年でも屈指だと感心しました。


アニメーション制作は動画工房。
手描き重視のアイドルライブシーン等で、世間が待望する綺麗な嘘を好表現。
目力の強弱が激しいキャラ素材を活用した心情描写も気合が入っていました。

主人公・星野 アイ役の高橋 李依さん。
作中アイドルソングも歌い、ミリ単位で供給する笑顔を微調整する狂気をフォローし、
嘘が本当になる未来や愛を求めて嘘を重ねる業も表現する。
持てる引き出しを全て開け放ったような見事な演技でした。

今回のラストではOP主題歌のYOASOBI「アイドル」も公開。
楽曲のために原作者が書き下ろしたという小説を元ネタに、
アイドルグループの本音を、韻を踏んでえぐってくる攻めてるアニソンでした。
OPの先攻を受け、後攻の女王蜂がED「メフィスト」でどう応えるのか。今から戦々恐々ですw


嘘を追求した先にあるのは真実か?代償か?
人は愛を取り戻せるのか?

初回から刺し違える覚悟で挑みたい。
2023年・春アニメ、台風の目です。{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 47
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

憧れは止められない

今期最推しのアニメ! 
かぐや様の作者のかたが話を書いていますが、かぐや様と一緒で無駄に不快なことするメインキャラクターがいないのが好き(ちょい役には嫌な人もいますけどね)

話の組み立て方が上手い 演出のセンスの良さが凄い!
感情の起伏の表現が繊細で、キャラクターの一挙手一投足から伝わってくる感情、感情、感情・・・
ただお金をかけて作ってるだけじゃないんですよ、超絶な作画と演出で魂を吹き込まれて動き出したキャラクター達はまるで生きているかのよう
1話がピークって評価もわかるけど、登場人物が増えていくにつれてどんどん面白くなっていくいい作品なので是非最後まで見て欲しいです

各話の締めからEDのメフィストが流れる演出が最高にセンス良くて
「こっから面白くなるぞ!!」ってのを遺憾なくアピールしてきます、こんなカッコよく次話に導入されたら期待せずにはいられないでしょう!
OPテーマYOASOBIのアイドルもすごくいい曲なんですよね、アイドルのことを歌ってるようで、普通の恋愛にも言えることなのかなって思います、是非フルで聴いてみてください!

この作品のテーマは「憧れ」
推しのアイドル、キラキラした芸能界、輝かしい実績を持っているライバル、人気急上昇中のライバル、仕事と恋愛の共存
大好きなスターに憧れて目を輝かせた小さな頃の自分と、夢を叶えることの難しさと現実の厳しさに折れそうになる心・・・
でも心が折れそうになったときに支えてくれるのもまた「憧れ」でした
憧れ・・・それは人それぞれ形が違う、純粋で、尊くて、だけど意地悪な幻想

1話は90分使ってまるで映画のように起承転結が詰まっていて、1話だけで一つの物語として楽しめます!
2話からはだいぶ雰囲気がかわって1話のような衝撃はないけど、1話まるまる使って物語の導入を丁寧に描かれているので2話以降もとても見やすいんですよね
シナリオはアクアの目的とルビーの夢を軸にW主人公のような形で、厳しい芸能界に人生をかけるキャラクター達を描いています
ライバルになるキャラクターは優れた才能を持っているし意識も高いけど、陰湿な嫌がらせや見下した態度をとってくるわけでもなく、いいライバルキャラとして登場するところが好き
特に{netabare} フリルのポジションなんて他のアニメだと嫌な感じのキャラクターになりがちだけど、 1期見た感じだと嫌な感じの人ではなさそうで、2期での活躍を期待しています!{/netabare}
こういうアニメってすごく性格悪いいかにもな悪役が登場しがちだけど、さすが赤坂アカ先生、不快なキャラクターは必要最低限しか出てきません
なのにちゃんと厳しい世界で生きている感じは伝わってきました


実際の芸能界はこんな感じではないと思いますけど、でもリアリティを感じるんですよね
それは、芸能界の厳しさを描くアニメってだいたい「理不尽」を強調しがちだけど、この作品は理不尽さを感じさせない生々しい厳しさを描いていて、そこがリアリティを感じさせることにつながっているのだと思います

2期がとても楽しみです!

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44

64.9 3 2023年度の医者アニメランキング3位
AIの遺電子(TVアニメ動画)

2023年夏アニメ
★★★★☆ 3.2 (135)
376人が棚に入れました
これは、私たちの未来の物語――。 21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人類に突きつけた。 そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。 須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく。 時に、裏の顔も使いながら……。

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

何故だ、なぜ響きが鈍いのか・・・。

物語は、今後想定されるかもしれない近未来を舞台にしたサイバネティックなジャンルをベースとしたヒューマンドラマ。

まったく・・・w、
変にカタカナを交えると矛盾や対立しているような印象のもの同士を組み合わせた様な異物感が出てしまうのは何故だろうw。

ひらたく言えば、AIや電脳、人工のボディを持つロボットやヒューマノイドと人間様とのあれやこれやが描かれる物語だ。
そして、「人間」と「人ならざる人」の物語の中で描かれるのは必ず「心」や「思い」である。

これは、現時点においてではあるが常と言ってもいいと思う。
後の世に向けた期待と不安の表れなのか、未来に向けた心の予行演習なのか・・・。
いずれにせよ、こういった世界が仮に実現し、当たり前の世界になった暁には「人間」と「人ならざる人」のあれやこれやといった哲学的要素を除いた「意志ある者」VS「意志あるモノ」の対立、コンフリクトとしてドライに処理されていくことになるのでしょう。

そう考えてみると「『意志あるモノ』が生まれたらどうしよう、どう扱おう」なんて思いを巡らせている昨今の方が夢があるのかもしれません。


さてと、この作品なのですが、
レビュータイトルにあるように、私自身が視聴前に前情報として知っていた際に思っていた印象とは少し変わった受け止めになってしまいました。

以前に視聴した、いくつかの作品のレビューにも書いたと思うのですが、そもそも私自身、「人間」と「人ならざる人」的なモノをテーマにした作品が好きなのです。
なので、今作品も楽しみにしていました。

もちろん、オムニバス形式の様に種々盛り込まれていたエピソードの中には私の琴線に触れるものもいくつかはあったのですが・・・。
総合的に言うとすると・・・少し物足りなく感じました。
物語のツブがそろっていないと言うか、なにかザラザラ、ゴロゴロした印象です。

私的にはもう少し自身の心に響くような、もっと大袈裟に言えば、心が震えるようなエピソードが少しでも含まれていないかと期待をしていたのですが、少し期待が大きすぎたのかもしれません。

あと、私の悪いクセも出てしまいました。
相変わらず、失礼な事かとは思うのですが・・・。
視聴中に手塚治虫のブラックジャックや攻殻機動隊が頭に浮かびまして・・・。
これは、他のレビュワーさんの中でも書いておられる方がおられるので、まぁ珍しい事ではないと思うのですが、こういった思いを持ってしまうと「アレよりも面白くない」「アッチよりも、ココがいい」といった比較≒勝ち負けの図式になってしまい、いやいや、そういう見方は控えよう・・・なんて必死にバイアスを抑えようと思うと、それがバイアスになるという矛盾w。
ちょっと、落ち着いて観れなかったのかもしれません。

あえて、視聴者側からの勝手な言い分を言わせていただくとすると・・・。
「他の作品が浮かんだとしても、それを忘れさせたり、吹き飛ばすくらいの鮮烈なイメージや視点、斬新な切り口、ハートに刺さる様なエピソードが一つでもあれば・・・」的な。

スミマセン・・・勝手な事ばかり言いまして。


なので、少しだけ、評価点は地味目のものになっています。


作品自体が悪いわけではないのです、物語としてのテーマ性や内容、表現方法はフツーレベルは超えていると思いますので、少し重めのテーマもあったりしますが楽しめると思います。

あ、もう一つ失礼を承知で私個人の印象を言わせていただくとすると・・・。
キャラクタの魅力が今一つ不足していたかもしれません。
華が無いと言うか・・・。

これは、硬派目の作品という事もあるのかもしれませんが、ヒューマノイドとして登場するキャラが多い事もあり、実務的にそうなっているのかもしれませんし、主人公も少し陰がある役回りなので、こちらも影響をしているのかもしれませんケド。

まぁ、可愛げのあったキャラがパーマくんくらいという・・・。
そして、助手のリサもあまり可愛らしくないという・・・。


( ゚д゚)ハッ!・・・これは、萌えが足りないと言っているのと同義なのでは・・・。


いやいや、そんなこともないと思うのですけどねぇw。





どうやら、今作品については、今後の展開がある様な終わり方をしていますのでどうなるかですが・・・。
主人公絡みのメインのストーリーはある上で、オムニバスっぽい作りなので、エピソードの在庫もあるようですし、どうとでもなるのでしょうけれど。
後は、作品の力があったかどうかでしょうかねぇ、少し地味目の作品な印象ですから。


私?はい・・・。
一応、今後も気にはなりますので機会があれば視聴すると思います。










相変わらず、大変失礼な事を言ってしまいますが、この手の作品だったら・・・、業田 良家さんの『機械仕掛けの愛』とかの方が、泣き系としてノイズなく楽しめたりするかなぁ・・・なんて。

相変わらず、失礼を、スミマセン。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 21
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

【最終】このご時世にこんなSF作品がアニメ化されたのが奇跡かも(面白いかは別問題だが)

【レビューNo.87】((最終レビュー)初回登録:2023/9/30)
コミック原作で2023年作品。全12話。

(ストーリー)
これは、私たちの未来の物語――。 21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、
社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人
類に突きつけた。 そして22世紀後半。人々は「産業AI」とは別格の存在とし
て、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしてい
る。 須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存
がもたらす「新たな病」に向き合っていく。 時に、裏の顔も使いながら……。
(作品情報より)

(評 価)
・第1話:これメインテーマが全く伝わらないだろうな(2023/7/14全面改訂)
 {netabare}・人間とそん色のない、感情や人格を持ったヒューマノイドがいる世界
 ・ヒューマノイドの母親がウイルスに感染、やがて機能停止。
  → (違法に取得していた)人格のバックアップデータから新たに再イン
     ストールして復旧。
 ・人間の娘は、母が以前料理に工夫を施したことが完全に抜け落ちているこ
  とに涙。
  → 人格を再インストールしたヒューマノイドは果たして元のヒューマノ
    イドといえるのか?
っていう問題提起した話らしいのですが・・・

・世界観の提示が全くないことに違和感
 ・ざっくりいうと
  ・プラメモ
   ・この世界に何故「ギフティア」が存在するのか?
    → 家族を必要とする人たちに家族を提供するため
  ・PSYCHO-PASS
   ・この世界に何故「シビュラシステム」が存在するのか?
   → 人間より高次な存在により社会を管理・運用するため
  ・で本作ですが
   ・この世界に何故「ヒューマノイド」が存在するのか?
     → ???誰か説明できる人いる?
     → この共存のボーダーはどこにあるのか。
       (ヒューマノイドはどこまで人間扱いされているのか)
  正直存在理由が不明なヒューマノイドありきで、しれっと話が進んでい
  く流れに個人的には強い違和感がありました。
 ・その象徴的な存在が、この第1話で登場する家族で
  ・父親:人間
  ・母親:ヒューマノイド
  ・娘:養子で加わった人間
  この歪な「家族」に一体どんな意義があるのかが、全く分からない。特に
  この両親からは子供が生まれないから、養子で埋めるという世界観が気に
  なって、本筋の話に入っていけない感じでした。
 ・この辺りもう少し補足すると、初見では、やってることは
  ・「存在理由が不明な」ヒューマノイドと人間が共存する世界。
   そこにはこういう問題が発生するので提起します。
   → 「こいつ何言ってんだ?!」
  というのが拭えなくて・・・

・「人格のコピーはNG」という大原則の重要性が伝わらない
 ・ただ第1話に関しては、上述でも話は成立します。
  >この共存のボーダーはどこにあるのか。
  が、「人格のコピーはNG」というのでギリ提示されているからです。
  でもこの大原則が頭に入っていないと、逆に話は全くわからないし、本作
  の問題は、これが話の根幹になることが全く伝わってこない点です。
 ・「人格のコピーはNG」の大原則ですが、
  ・人格:人間が「その人たらしめる」(オリジナルであること)を決定づ
      けるもので、この世で唯一無二なもの
  人間では「あなたはあなただけ」が当たり前のように担保されている訳で
  すが、AIだと
  ・人格 →コピーによりこのオリジナル性がいともたやすく崩壊
  という大きな問題をはらんでいます。
  なので「AIの人間性問題」=「人格のコピーはNG」の大原則は、見識
  ある方なら「SFテンプレ」として当たり前のようにセットで頭に入って
  いる話らしいのですが、普通の方はそうではありません。
  だから「これが話の根幹となる」ということをきちんと提示する必要があ
  るのですが、その描写が最悪です。
  ・「人格のコピーはNG」の重要性の説明が雑
   → 人格が不正コピーされ犯罪に利用される等いろいろ問題があるんだよ!
     ・「AIの人間性問題」を語る上での「根幹となる大原則」である
      という重要事項であることが説明されていない
     ・この話だと後述するメインテーマに全く繋がらない
  ・登場人物
   ・父親:「何かあったらヤバイからバックアップ取っておこう♡」レベル
       の見識しかない
   ・主人公・医者:高額報酬のためなら何でもやる「倫理観0」
  こんな状況なので、「人格のコピーはNG」という大原則の重要性が全く
  頭に入らず、この部分が抜け落ちるので、後述のメインテーマで「AIの
  人間性問題」を語られても全く理解できないんですよ。

・メインテーマが全く伝わらない
 ・この辺も他の方のレビューを参考にしたり、nyaroさんに教えを乞うたりし
  て、ようやく自分なりにこういうことかなっとようやくイメージできた感じ
  ですね。
 ・メインテーマとしては
  「人格を再インストールしたヒューマノイドは果たして元のヒューマノイド
   といえるのか?」
  ということで、nyaroさんの言葉を拝借すると
  ・AIにとってはコピーの上書きは死
  ・人格の連続性の断絶
  といったテーマになるようなのですが、これのどこが問題なのかというと、 
  本作だとこの人格の再インストールや記憶欠落により
  ・娘が「これは私の知ってる(本当の)ママじゃない!」と嫌悪感を抱き、
   母親を愛せなくってしまった。
  ・母親が「人格を再インストールした私の存在って一体何?」って自分の存
   在に疑心暗鬼になり、自我が保てなくなった。
  のようなバットエンドを迎えたとすれば、イメージしやすかったのかなっと。
 ・でも本作だと
  ・上述の通り、「人格のコピーはNG」の大原則が頭に入っていないから、
   これが何故「AIの人間性問題」に繋がるのか理解できない。
   (これが頭に入っていないと仮に上述バットエンドを提示されても、何故
    そんな発想に至るのかが理解できない)
  ・問題の描写が問題提起というより、「お涙頂戴」を狙ったかのような演出
   >人間の娘は、母が以前料理に工夫を施したことが完全に抜け落ちている
    ことに涙。
    → 視聴者「そんなこと忘れたこと位で大騒ぎする話?!」
  ・主人公は金儲けのために、積極的に「人格の再インストール」を実施w
   (作中では
    ・治療直前に「フォーマットするぞ」と機械的にいい放つ。
    ・母親びっくりして「フォーマット怖い!」で再インスト―ルを中断
    ・ウイルスが進行して機能停止
    で結局本人の承諾がないまま、再インスト―ルを実行しちゃうんだよなあ)
  って視聴者をミスリードしているようにしか見えないんだが?!
  私も初見では、何が問題になっているのか全く理解できませんでした。

 という感じで、メインテーマが理解できると確かに「AIの人間性」について
 問題提起したエピソードだなって話になるのですが、構成や描写などいろいろ
 残念すぎて、最後に「娘よ、そんな事ぐらいで何で泣いてるねん?!」という
 感想しか残らないんですよね。
 これSFのリテラシーがかなり高くないと、全く理解できんやろwww
 私の理解力が低いのが問題なのかもしれませんが、もうちょっとどうにかなら
 んかったんかいなって感じですね。
 nyaroさん、いろいろとありがとうございました。

 あと本作は主人公を巡るドラマも展開しており、この主人公のドラマに絡めて
 上述のような、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」をオムニバスで見せて
 いくらしいのです。

 ・主人公・須堂 光について説明
  ・自ら医院を開業しているヒューマノイド専門医の人間
  ・裏では「モッガディート」と名乗り、高額報酬で違法治療も請け負う
   「闇医者」
  ・幼少期の頃自分の治療費のために、ヒューマノイドの母親が騙され、
   「自分の人格コピーの売買」(この世界では人格コピーは違法)
    加担させられ、母親が重罪人として25年服役中。
    → 母親のコピー人格を探すことが彼の目的でもある。
  この主人公の目的も最初はよくわからなかったのですが、
  ・母親のコピー人格を探している
   → 元を絶たないと永遠に悪用される可能性があるから、闇組織から回収
     したいってこと?
  ・その調査には多額の金がいる
   → だからヤミ医者稼業で高額報酬を要求しているってことかな?
  この辺は今後の展開に期待ってことで。{/netabare}

・第2話:単純に面白くない →ヒューマノイドの必然性が感じられない
 {netabare}・第1話はSF作品としては古典的で定番といえるテーマらしいのですが、
  それだけに(出来は最悪でしたが)「AI社会へ問題提起する作品」とし
  ては成立していたのですが・・・
 ・2話を観るとこの作品は
  >この世界に何故「ヒューマノイド」が存在するのか?
  ・はじめからドラゴンやエルフが共存する世界として受け入れろ!
   → はじめから人とヒューマノイドが共存する世界として受け入れろ!
  という「(SF)ファンタジー」の世界なのかなっと。
  所謂「手塚治虫」の世界ですね。
  それならそれで「人とAIの共存する世界」のドラマを面白く描いてくれれ
  ば問題ないのですが、これが面白くないんだなあw
  ※作品の大局的な話は、数話観ないと判断しねるので、今回は2話のメイン
   エピソードについてレビュー

 (エピソード要旨)
 ・ジュンはバイオ系のヒューマノイドで陸上短距離選手。
  途中まで筋肉等も成長するので記録を伸ばせたが、以降「スペックの壁」
  があり、予め設定された上限により記録が伸ばせずに苦悩していた。
 ・そんなジュンに人間の親友マサは「諦めるな、頑張れ!」と発破をかける。
  「お前に俺の苦悩なんか分かるわけがない!!」と反発するジュン。
 ・最後はマサの応援の甲斐があって、ジュンは自己ベストを更新!

 ・率直にいえば何を見せられたのかが、よくわからない。
  ①ジュンは頑張ったが、結局スペックの壁は越えられなかった。
   → ジュンがヒューマノイドである必然性あり
   人間と同様の向上心があるもの、スペックの壁が立ちはだかることに
   絶望するヒューマノイド。
   → SF作品として成立
  ②ヒューマノイドが偏見視され、人間との間に溝がある世界
   ・マサ「ヒューマノイドがいくら頑張っても無駄なんだよ。」
   ・ジュン頑張って自己ベスト更新。
   ・マサ「ヒューマノイドもやるじゃねーか!」 
   → ジュンがヒューマノイドである必然性あり
   人間とヒューマノイドは歩み寄ることができる。   
   → ファンタジー作品として成立
  ③で本作ですが
   → ジュンがヒューマノイドである必然性がどこにあるのか?
  正直
  ・これが人間だとテンプレすぎて目新しさがないから、無理やりヒュー
   マノイドに置き替えただけでは?
  ・特に前半「車のレースと同じでマシンの性能がアップしなきゃ限界が
   ある」とかもっともらしいことを言ってたのにそれは・・・
   → 主人公「人間もヒューマノイドも怠け者だからなw」???
   結局ヒューマノイドって何なのか?
  ・(ヒューマノイド等を差し引いても)この物語を面白くみせる工夫な
    どが皆無。単純にチープで面白くない。
  あくまでも2話単体の評価になりますが、「ヒューマノイドで無理やり話
  しを成立させよう」という力業だけが目に付き、この話のどこに共感ポ
  イントがあったのかが理解できなかったですね。
 
 有体にいってしまうと
 ・本来は話を面白くするために「SFを上手く活用すべき」ところを
 ・「SF作品を作ること」自体が目的になってしまっていないか?!
 という疑念を感じる第2話でしたね。
 今後の展開でこの疑念は払しょくされるのでしょうか。

 (追 記)
 >ジュンがヒューマノイドである必然性がどこにあるのか?
 ・あえていうなら「スペックの壁」を言い訳に、ジュンは無意識に努力を怠
  っていたが、ひと皮むけた。
  → ヒューマノイドはそれだけ高度な人間性をもち、そういうAIが現れる
    とこういう自分の限界を勝手に決めてしまうこともあるという暗喩み  
    たいな?!
  それでも無理やり感があり、やはりSFとしてもファンタジーとしても面白
  さが感じられないかな。{/netabare}

・第3話:やはり作品として「世界観の提示」がないのは違和感
 {netabare}・やはり1話のレビューで書いた通り個人的には、作品として「世界観の提示」
  がないのは違和感ハンパないという印象ですね。
  ・プラメモ
   ・人間とそん色ない「ギフティア」を家族として提供するのが産業とし
    て成立。
    そして「ギフティア」には絶対的な機械寿命が設定されている世界。
    → それゆえに家族やツカサとアイラの「別れ」が心に刺さる。
  ・PSYCHO-PASS
   ・人間より高次な「シビュラシステム」が社会を管理・運用し、それが
    大多数に支持されている一見完全に見える世界
    → それゆえに常森が突きつける「『シビュラシステム』の抱える矛
      盾」が心に刺さる
  SF作品としてその世界観の中できちんと物語が成立しているのですが、
  ・で本作
   ・「存在理由が不明な」ヒューマノイドと人間が共存する世界
  なので、作品に根幹となる軸がないので、「SFっぽい思い付きの何か」を
  ただただ見せられているという印象で、どこに共感を見出せばいいのか分か
  らないんですよね。  

 ・しかも今回は、これまで散々人間とそん色のないヒューマノイドを登場させ
  ておいて、今更「ロボットに心があるのか」という超古典的なテーマを描く
  ために、心のない「産業用恋人ロボット」や「おもちゃのクマ」を出してく
  るとか、もう何でもアリかと。
  (2話の話をちゃぶ台返しするような違和感がハンパないのだが・・・)
  しかも2つの話を交互に見せながら何か仕掛けがあるのかと期待させといて、
  そこに深い意味はなかったし、話自体も特に目新しいさがあるわけでもなく
  正直どこに面白さを見出せばいいのか・・・
  (それとも深い何かを私が見落としてるのか?) 

 ・「世界観の提示がない」のは、下流で「SFについていろいろなテーマを広
  く描きたいから」下手に上流で縛りを設けることができないという感じがす
  るのですが、それだけに作品全体の歪感がハンパねーなあと。
  「この世界の人間はどこを目指しているのか」が分からないまま、とっちら
  かった問題を見せられてるような感覚がなんとも・・・
 ・こういうSF作品はこの描写からいろいろなことが読み取れるから、それを
  考察するのが楽しみ方なのかもしれませんが、レベルの低い私には向かない
  のかも。
  個人的はそれなりのレベルのモノを見せられた上での、そういう話なら納得
  ですが、2,3話を見る限りでは、下手な物語が無駄に伏線だけバラまいて、
  回収できずに丸投げで終わるみたいな、思わせぶりにそれっぽく振舞ってる、
  「雰囲気アニメ」の印象が強いですかね。
  (1話だけは1本筋が通ってるっていう納得感はありましたが)
  TaXSe33187 さんの
  >「回答不能な問いを投げかけることで自ずと高尚な立場に立ちたがる」タ
    イプの物語
  という言葉が一番しっくりくるかな。
  根本的に私とは楽しみ方のスタンスが違う作品なのかもしれません。
 
  まだ「MICHI」の話等本丸が動いていないので、その辺りで面白くなり
  手のひら返しとなるのかですかね。

 (追 記)
 >そこに深い意味はなかったし
 ・あえて3話について意味を見い出すなら
  ・完全フォーマットで顧客の秘密保持を徹底している産業用恋人ロボット
  (とはいえ、サーバーで5年間保存して復活できるというある種のリスク
   は抱えているのだがw)
  ・それに対しデータ消去が不完全なため、前の持主が特定されてしまった
   おもちゃのクマ
  話の中では美談風に描かれているが、実は対比で情報社会の闇を描いてい
  るのかなと感じたというのはあるのだが、その考察が楽しめたかといえば
  正直「??」でやっぱりイマイチ面白さが分からんかなっと。
  むしろ「逆張り的に物語を見ようとしてる自分ってどうなの?」って感じ   
  がどうも好きになれないというか・・・{/netabare}

・第4話:作画以外はアニメ作品として面白く構成されていた
 {netabare}・2,3話で何が不満だったのかというと、2話でも触れましたが
  ・本来は話を面白くするために「SFを上手く活用すべき」ところを
  ・「SF的なテーマ提起」ありきが前面にきていて、それに脚本や演出等
   が追いついておらず、単純にエピソードとして面白くなかった。
  30分の話を観て面白ければ、「コメディ」でも「テーマ提起」でも何で
  もいいのですが、「テーマ提起」したことに満足して、作品を面白くする
  という部分がおざなりなっているのか、面白いと感じられなかったんです
  よね。
 ・今回の4話はその点上手く構成され、面白くできていたかなっと。
  「4つのケース」ということで
  ・「手塚治虫」よろしく「SFファンタジー」色の強い世界観で物語を展
   開すると始めに提示。
   → 「ケース1」のリサと友達・レオンのコメディ劇がアペリティフと
      して上手く機能し、後続の今回のメインテーマに上手く誘導。
  ・それを受け「ケース2」「ケース3」もコメディ色強めながらも
   ・「ケース2」では、先日話題となった「AIアイドルグラビア」といっ
    た今らしいテーマ(AIの画像処理技術の飛躍的向上)を、未来では
    VRの世界まで拡張し、身近な問題として上手く見せてくれていた。
   ・「ケース3」では
    ・人間とそん色のないヒューマノイドとはいえ、作為的に感情を制御
     するのは(割合簡単に)可能
    ・でも人間の「心変わり」は最新技術でもどうにもなりません!!
    という対比が上手く表現されていたかなっと。
   ・これを今回「ブラックジョーク」めいたオチでみせてくれたのも、
    私の好みでしたね。1話でも触れましたが、
    ・「問題があります」→「ブラックジョーク」で顕在化
    という図式の方が受け入れやすいかなと感じました。
    (この辺も話の内容等によると思うので、上手く使い分けて欲しいと)
  ・「ケース4」のレオンが抱える、ヒューマノイドながらも「人間らしい 
   悩み」も、この流れの中でみせることで「4つのケース」の締めとして
   スンナリ落ちてきましたしね。

 ・あと前回触れた世界観の話ですが、これも話の構成の問題で
  ・主人公がナビゲーターの完全オムニバス(世にも奇妙な物語等)でやっ
   てくれるなら、その都度そこに見合う世界で話を進めてくれればいいか
   ら問題なし。
  ・また今回のような「SFファンタジー」でいきますなら、こちらも「全
   て受け入れます」の腹づもりで観るので問題なし。
  ・ですが、(私の価値観だと)本作を観てると(構成の問題か)ところど
   ころ「じゃあ、なんでわざわざ人間とそん色のヒューマノイドを作って
   共存してるの?」というのが気になってくるんですよね。
   恐らく上述した通り「テーマ提起」ありきが前面にきてるようにみえる
   からだと思うのですが。
  ・作品としては
   「SF的なテーマを提起して、後は視聴者がいろいろ考えてくれたらOK」
   という類のモノなのかもしれませんが、個人的には「テーマ提起」が前面
   に来るなら、
   「そのベースなる前提条件を提示してくれないと、いくらでも問題が捏造
    できてしまうやん?!」
    → テーマ提起の部分にこの作品としての独自の工夫をみたかった。
   という感じなのかなっと。
   (だから個人的には
    「物語を進めるために存在する」ヒューマノイドと人間が共存する世界。
    そこにはこういう問題が発生するので提起します。
    → 「そら問題発生するやろw →ただのマッチポンプやんけwww」
    に見えてしまうみたいな。)
  ・この辺りも結局アニメ作品として面白いと思える流れになれば、解消され
   る話かなっと思うのですが。

 別に「コメディ展開」だったから面白いということではなく、やはり
 「この作品をどう面白く魅せるか」
 ここがしっかりできているかどうかだと思うのですよ。
 そういう意味では今回は
 ・今まで鼻についた「SF的なテーマ提起」ありきが薄れ
  → 物語を面白くみせるためのスパイス →「名脇役」として機能
 ・全体像を崩さず、それでいてしっかりテーマ性も伝わるよう脚本等魅せ方も
  上手かったように感じた。
 面白くないから、レビューも面白く感じられない理由の粗探しっぽくなるわけ
 で、作品として面白ければそこは素直に評価したいですね。
 
 ただ作画が・・・今までのちょいちょい怪しかったですが、今回かなり酷かっ
 たですね。{/netabare}

・第5話:引き続きバランスよく物語が構成されていた
 {netabare}4話に続き「世界観」「テーマ」「魅せ方」等がちゃんと調和していて、視聴
 しやすかったかなと思います。
 ・5話は「調律」ということで、人間に極めて近い存在のヒューマノイドは
  人間と同じような悩みや問題で苦悩しますが、ヒューマノイドだからこそ
  人間とは異なるアプローチでの治療も可能な訳で・・・
  ・元アルコール依存症のダメヒューマノイド
   まず「アルコール依存症のダメヒューマノイドって何やねん?!」って
   ツッコミを入れたくなりますがそれはさておき、これについては須堂の
   大学時代の友人瀬戸が「記憶操作」というかなり強引な施術を行ってい
   ます。
   治療の効果があって真人間(?)になったものの、副作用が出ているの
   で須堂のところに通院して、2人は相対することになるのですが、瀬戸は
   瀬戸なりに自分の治療方法が最善であるという自負を持っているようです。
  ・感情の制御ができない(発達障害っぽい?)ピアノ少年
   「情動系の調律」ということで、須堂曰く
   → ようするにクランケの性格を無理やり変えちまうって話www
   慌てて相棒の医療用AI「ジェイ」がフォローw
   → 人間だと投薬や習慣改善カウンセリングで治療するが時間がかかる
   → ヒューマノイドならば情緒のメカニズムそのものを微調整し、人間
     の治療より安全かつ効果的に治療可能
   まあモノはいいようですなw
   はじめは須藤の言葉に驚きを見せていた母親も、度重なるクランケの問
   題行動に治療を受け入れる訳ですが・・・

  作中ではヒューマノイドはほぼ人間扱いされていますが、医療については
  まだまだ手探りの部分も多いという世界のようですね。
  2話で無理やりヒューマノイドで話を成立させようとしたのには辟易しまし
  たが、今回はヒューマノイドだからこそ話に面白さがあり、2つのエピソ
  ードにもきちんと狙いがあり、これも3話の展開よりはしっかり作られてる
  なという印象ですね。
  また前回は「ブラックジョーク」めいたオチで問題を健在化させていまし
  たが、今回は須堂の終始歯切れの悪い言動が、テーマに深みを持たせ上手
  い演出だと思いました。
  こうやって変な欲を出さず、「アニメ作品として面白く魅せる」というこ
  とに注力してくれれば文句はないのですがね。{/netabare}

・第6話:単話としてはよかったが、そうなるとヒューマノイドの存在意義がねえ
 {netabare}今回は「ロボット」ということで、再び産業用ロボットの登場です。
 ・Aパート:伝統工芸の技を記録するために鍛冶屋に弟子入りした「覚える君」
  Bパート:将来の介護業務に向けて人との交わりを学ぶために小学校に転校
       してきた「パーマ君」
 ・個人的には
  ・「(SF)ファンタジー」という枠組みの中で、物語を面白くすることに
   注力して、変に本格的SFを主張することなく、話の流れに違和感がない。
   それでいて、嘘(ファンタジー)の世界にひとさじの真実(SF的テーマ)
   を加えているから、物語がしっかり引き締まりバランスもよい。
   (変に押しつけがましさがなく、スッとテーマが入ってくる感じが〇)
  ・テーマも「AIの学習」ということで、今やディープラーニング等AIの
   発展と学習については密接な関係にあるわけで、そこに目を付けたテーマ
   のチョイスが現在にマッチしたものになっているのは高評価。
  ・この時代に伝統工芸というものを残したセンスだったり、パーマ君のメカ
   デザインがちょっと愛嬌のあるロボットっぽいのも遊び心があり、個人的
   にはアリかな。
  ・そしてこのような学習方法 →「それに見合うコストは大丈夫なのか?」
   産業用ロボットならではの視点もきちんと組み入れてる点は、真面目に作
   品創ってるなあって感じでこちらも高評価。
  ・そして最後は「ファンタジー」世界らしく、産業用ロボットと人間の心の
   交流や彼らの成長が人間の心にもたらすものという綺麗な形で締めくくっ
   ている。
  今回も主人公が「産業用ロボット」であるからこその面白さがちゃんと担保
  されており、物語的には尺の都合上少し駆け足気味なところはあるが、無駄
  な要素がない分視聴しやすさもあり(それに下手に深堀すると作品の全体像
  が崩れそうなので)概ねよかったかなと思います。

 ・ただね・・・こういう産業用ロボット出しちゃうと
  ・産業用ロボット
   → 役割が明確で存在意義がはっきりしている。
  ・ヒューマノイド
   → ますますこいつらの存在意義って何なの?
  って、どうしても比較してしまうわけですよ。例えば設定では
  「ヒューマノイドは全人口の1割」
  という話だったので、
  「まだヒューマノイドとの共存を模索している実験段階」
  というような話なら、こちらも受け入れようもありますが、これだけガッツ
  リ人間扱いされてると、もうそういう段階は終わってるよなっと。
  そりゃ他のレビュアーさんから、ヒューマノイドの存在が酷評されるのも当
  然だわなって感じですね。
  (しかも出てくる奴らは(物語を進めるために)そろいもそろって問題児と
   いうwww)
  こういうのって6話作ってる時に「製作陣が疑問に思わないのかなあ」って
  逆に心配になってきますねw
 ・個人的には
  ・4話以降ファンタジー色が強い路線になった。
   → 例えば「鉄腕アトム」に「アル中のロボット」が登場したとして誰も
     それを咎めたりしないだろw
   ってことで、4話以降はこちらも大人の対応として、そこに目をつぶれば
   「アニメ作品として面白い」モノになってきたので頭切り替えてますが、
   そうなると1-3話の「SFの本格的なテーマ提起してる俺スゲー」みたい
   な作りが浮いちゃってる感じですね。
 ・この辺は超高度AI「MICHI」が、人間およびヒューマノイドの世界を
  コントロールしているらしいので、そこで何か提示されて逆転劇を見せてく
  れるのかに注目ですかね。{/netabare}

・第7話:最後の演出で明暗分かれたA/Bパート
 {netabare}今回のタイトルは「人間」ということで、結構テーマ性が前面に出てきた
 ので大丈夫かと思いましたが・・・
 ・Aパート:ヒューマノイドの電脳治療
  ・「青少年育成団体の世話人」を務めるヒューマノイドの老人が、事故で
   電脳に障害を負ってしまい、以前の人間性を失ってしまった。
   専門医は超高度AI「MICHI」での治療を勧めるも、家族は拒否。
   ちょうど孫娘の歌で彼が快方に向かい、それが美談扱いに。
  ・それに「ヒューマノイドの人権団体」が異を唱える。
   「電脳を治す手段があるのに治さないのはネグレクト」だと。
   で、超高度AI「MICHI」での治療に拒絶感を示す家族に対し、
   須堂医師による治療をと白羽の矢が立ったのですが・・・
  「この浅い作り込みの世界で本格的なテーマ提起?!」と辟易しかけた
  のですがのですが・・・
  ・須堂の治療は完璧
   → 名士という表の顔とは別の裏の顔「家庭内DV」まで復元www
  いやー、いい意味でのちゃぶ台返し!!
  最後はパンチの利いた「ブラックジョーク」できっちりファンタジー世
  界で終わらせてくれました。
  特に自分の主張や信念こそ正義だとゴリ押ししてくる「ヒューマノイド
  の人権団体」の横っ面を張り倒すような描写はスカッとしましたw
  ある意味現在社会にもいるそういう団体への痛烈な皮肉だったのかも。

 ・Bバート:クレーム処理担当のヒューマノイド
  ・誠実なクレーム処理担当のヒューマノイドがモンスタークレーマーに
   「ヒューマノイドじゃ話にならん、人間の担当者を出せ!」
   と罵倒され、ストレス性の症状が体に現れる。(須堂の元を訪れる)
  ・事態を重くみた会社は重度のクレーム処理を外部の専門家にアウトソ
   ーシング。
  これも前半だけ観ると
  「ヒューマノイドで無理やり社会派的な話を作ろうとしてないか?」
  という懐疑的な見方だったのですが、このエピソードのオチは
  ・誠実(すぎる)対応を心掛けるヒューマノイド
  ・マニュアルの沿った演出で合理的に対処した人間
  という対比の構図がバッチリハマって、ここで終わっときゃいいのに
  → 「・・・あなた方は人間ですよね。」
  → 「企業秘密ですw」
  → 「確信はないですが、彼らはロボットだと思うんです。」
  なんでこんな余計なものつけちゃうかな~。
  ここの面白さはあくまで
  ・人間より人間らしい対応をしようとしたヒューマノイド
  ・(人間を出せといったクレーマーに対し)人間性を放棄して対処した
   人間
  という「人間」だから「ブラックジョーク」が冴える訳で、ここをロボ
  ットにしちゃうと、話が台無しやん!!
  それとも最後に社会派SFでも気取りたかったのか?
  正直制作陣の意図が理解できない。
  (そもそもタイトル「人間」で、最後にロボットで終わらせるってなんだよw)

  A/Bパートとも、4-6話とは少し流れが異なり結構テーマ性を前面に出し
  てきた上、そこにいろいろな要素(ヒューマノイドの人権団体など)も
  入ってきたので、込み入って視聴しにくかったのですが、これを力技の
  「ブラックジョーク」で見事にひっくり返すという爽快感が、個人的に
  はツボでしたが、最後の演出で明暗を分けたかなっと。

  あと「社会派的なSFテーマ提起」を否定する気はないですが、それを
  本格的にやるならやるで、それが面白く見えるよう作品の全体像の整合
  性をしっかり取ってくれって話ですね。
  ざっくりいうと「ガバガバなファンタジーベースの世界観」の上で、
  「社会派的なSFテーマ提起」を強く主張されても作品の構造として
  破綻してるから、無理やり感が先立ち面白さがないだろうっと。
  個人的には以前レビューした通り、この作品の最適解は
  「嘘(ファンタジー)の世界にひとさじの真実(SF的テーマ)を加える」
  あくまでも「SF的テーマ」は作品を面白くするための最高のスパイス
  として活用というバランスなのかなって感じがしますね。
  まあ面白ければ何でもいいんですが、ここまでの話を観る限り
  ・面白いエピソードは全体像が理に沿っており
  ・外れのエピソードはやはり理から外れているのかなあ
  というのが、率直な感想ですね。

(追 記)
>「確信はないですが、彼らはロボットだと思うんです。」
今思いついたのですが、これはクレーム処理担当のヒューマノイドの
・ヒューマノイドのくせに人間らしさが邪魔をして上手く割り切れない自虐ネタ
・人間のくせにあっさりと人間性を捨てた彼らへの皮肉
的な意味が込められているのか?!
だとしたら、なかなか高度な言い回しだなw
でも物語の全体像を考えると蛇足感が強く、やっぱり「ブラックジョーク」の
切れ味で締めるべきだったと感じるかな。{/netabare}

・第8話:個人的には「手塚治虫の描いた『笑うセールスマン』」という目線
 {netabare}今回のタイトルは「告白」ということで、バレンタインイベントは未来にも
 継承されてるどころか、そこにヒューマノイドまで乗っかっているというw
 ・4話で明らかになったレオンが抱くリサへの想いに苦悩し、須堂の元に
  「恋愛感情を消去してほしい」
  っていう話ですが、
  ・ヒューマノイドだからこその対応ではありますが、この手の感情コント
   ロールの話は5話の「調律」等で何度もやっているので今更。
  ・「女性が女性を好きになる」これもこの作品でなくても、巷には百合作
   品等で溢れている。
   (他作品ではこれをメインでやるわけだから、本作では勝負にならない)
  ・で、この組み合わせでの面白さがあるのかといえば、リサ等の説得によ
   り予定調和のオチで何の面白さも感じられない。
   → 本作独自の面白さを出すには施術するしかないが、さすがに今回は
     製作陣も良心が痛み、視聴者側も引くだろうっと。
  「感情が簡単にコントロールできてしまう」というガバガバ設定に乗って、
  ヒューマノイドで無理やり話を作りましたって感じが前面に出てて、ネタ
  切れ感がハンパないですね。
 ・この回唯一の救いは、リサからの手作りチョコレートケーキを貰って食し
  た須堂の感想
  「上手いまずいでいえばロボットに作らせればいい。でもリサが一生懸命
   作ったというストーリーはロボットに作れない。」
  浅いテーマ提起かと思いきや、「で、味はどうでした?」と迫るリサに
  → リピートで返答www
  まさかの笑いに使ってきたのは、一本取られたなっと。

 個人的には4話以降はある意味
 「手塚治虫の描いた『笑うセールスマン』」
 という捉え方をしていて、そう考えるとこのガバガバな世界観もまあ笑って
 許せるかなっと。でも締めは上手く魅せてくれよと。
 今回のように予定調和の小綺麗なオチでは、どこに面白さを見い出せと?!
 というのが率直な感想ですね。{/netabare}

・第9話:だんだんネタ切れ感が否めない
 {netabare}今回は「正しい社会」ということで
 ・「不健全」と思われるアニメを作ってるクリエイター
 ・AIを拒否して人の指導による公平を目指した小学校に採用された教師
 が主役で、テーマ的には
 ・AI社会における人間性や倫理観とは何か
  (正しさを追求し、「悪」を切り捨てる社会は果たして「善」なのか等)
 っぽいのですが・・・

 正直何を見せられたのかが理解できない。
 ・世界観との整合性がとれていない
  前提として、AIを推進し過ぎた結果そういう価値観が主流となった世界観
  というものが提示された上で、今回のテーマが展開されたならまだ説得性
  があるのだが、そういう世界観は皆無。
  なので観ていて
  「それってあなたの思い付きですよね」  
  って感じで、「ただそれっぽいことを言って高尚に見せかけたいの?」と
  いう薄っぺら感が強い。いろいろ詰め込み感も凄いですし。
  で、今回の主役2人が共に人間じゃなくヒューマノイドって点も
  「えっ、人間性について考えてるのは人間じゃないんかい!!
   この作品で何をやりたいんや?!」
  ってのに拍車をかけてるというwww
 ・そもそもAI関係ないやろ
  個人的には未来の話というより
  ・BPOへの過剰なクレーム等で、どんどん規制がかかり面白さがなくな
   ってきたアニメ作品
  ・ゆとり教育導入で「みんなが一等賞」的な歪だった平等性
  等むしろ現在社会で起こっている問題への風刺という感じがして、そこへ
  「AIガー」っていうと「人間性とは?」でそれっぽくみえるやんって無理
  やりくっつけた感が凄く、やはり浅い作品かなって印象が拭えないですね。

 ここ2話位はネタ切れがハンパなく、以前書いたように
 ・本来は話を面白くするために「SFを上手く活用すべき」ところを
 ・「SF作品を作ること」自体が目的になってしまっていないか?!
 に逆戻りしてるやんって感じがしますね。何か
 「『AIガー』で人間性がとかそれっぽいことを言っておけば『SF的なテーマ
  提起した』考察しがいのある奥の深い作品として、視聴者が満足するやろ」
 みたいな。
 個人的にはガバガバで「これがSF作品?」って言われていても
 「手塚治虫の描いた『笑うセールスマン』」
 的な以前の路線の方が味があって好みですかね。{/netabare}

・第10話:「女子無駄」→「今から凄いこと言っていい?」との違いは?
 {netabare}今回のタイトルは「来るべき世界」。
 ・今更ですが・・・
  本作は他の方のレビューにもあるように、ストーリーを楽しむというより
  「大喜利」的な提示されたお題について、アレコレ考察を楽しむ作品。
 ・「AIと人間の共存」というSF的なテーマを扱いつつも、
  「AIの進歩によってもたらされる未来像」
  というよりも、そのフィルターを通して
  「『では人間とは?』という今一度人間自体のありよう的ものを問う」
  みたいな? 結構哲学的要素の強い作品だったのかなあ~と。

 ただ個人的には「アニメ作品」として面白いかどうかが先に気になるわけで
 ・・・上述の「テーマ提起」というスタイルが面白くないというより、やっ
 ぱり見せ方が合わないのかなあっと。
 ・上流の作り込みがないガバガバの世界観なので、どうしても「提起できる
  テーマ」が即興で出せるレベルの踏み込みの浅いケーススタデイ的なものに。
 ・個人的には交通安全のKYT(危険予知訓練トレーニング)っぽい
  「これからあなたの運転する車が交差点に進入します、予想される危険は?」
  的なものを見せられているという感覚なんですよね。
 ・それに何というか文字通り「『大喜利』のお題を上げました」だけみたいな?!
  例えば今回だと
  「超高度AIによって維持管理され(飼いならされて)停滞してしまっている
   人間社会」
  的なテーマが提起されますが、それを構成の方で上手く演出して見せてくれ
  てるなら納得ですが、あるヒューマノイドがそう叫んだから
  「そのテーマで確定!」
  みたいなw(何か言ったもん勝ちみたいな?!)
  個人的には「ただの『Aさんのケース』というだけやん」という否定が先に
  きて、それ以上話が入ってこないんですよね。
 ・これを30分枠アニメで見せる意味って。
  それこそこのレベルのテーマ提起だけでいいなら、YOUTUBEでアップされて
  るようなショートアニメでもええやろっと。
  そこにそれっぽい語りをいろいろねじ込んだり、須堂やリサの話を入れたり
  して1話のエピソードにしてるが、「点」の詰め込み感が否めず物語の歪さ
  が目立ち面白さが感じられない。
 ・しかも(今回はマシでしたが)ここ数話はもう
  「『自称』ヒューマノイドを出したからSF作品ですよ」
  というやっつけ感が凄い。何度か指摘してますが
  「『SF作品を作ること』自体が目的になってしまっていないか?!」

 極論でいうと
 ・「女子無駄」のアバンタイトルでの「バカ」のお約束
  → 「今から凄いこと言っていい?」
 ・本作「今から凄い知的なことをいっていい?(AIガー、人間性ガ―)」
  正直大差がないのかなあっと。
  今回は特にそれを感じてしまいましたね。

 受信感度の高い方ならこれで十分楽しめるのかもしれませんが、鈍感な私には
 作りのまずさの方が先に目に付いてしまい、折角の哲学的要素も楽しむことが
 できないようです。
 個人的にはやはり4-7話のような
 「嘘(ファンタジー)の世界にひとさじの真実(SF的テーマ)を加える」
 ような構成のバランスのよさとか、ブラックジョークの切れとか、そちらの方
 に面白さを見出してるという感じですね。

 あとは物語も終わりを見据え「MICHI×須堂」も実現しそうなので、それ
 だけは見届けようかと。{/netabare}

 (2023/9/17追記)
 >やっぱり見せ方が合わないのかなあっと。(一番のひっかかり)
 {netabare}「アニメ作品」である以上、例えば同じ言葉やセリフでも
 (世界観といえば大袈裟ですが、まあ作品のもつ空気感や雰囲気ですね。
  それに演出といえば、タイミングやシチュ・キャラ描写にそれまでの流れ
  だったりと)
 その言葉やセリフが映える「環境作り」が出来ているかどうかで
 ・それがピタリとハマり、心に響く。
 ・その言葉やセリフの上滑り、空回りを感じてしまう等。
 と、受け取るこちらの印象もガラリと変わるわけで・・・
 本作はどうもその部分を軽視しすぎでは?と感じてしまうんですよね。

 で、その一番の要因がやはり「ヒューマノイドの扱い」で
 ・彼らもつ高度な「人間性」
 ・とはいえ人間とは異なる「機械性」
 この2面性を合わせ持つ特異な存在であるというところまではいいんですよ。
 問題はこの2面性が
 ・作品を面白く見せる方向に上手く活用されているのか
 ・それとも製作者都合のためにガバガバな「便利屋」運用されていないか
 って話で、ここで致命的にやらかしてちゃっているのかなあっと。

 >「大喜利」的な提示されたお題について、アレコレ考察を楽しむ作品。
 作品の主旨からすれば、テーマ提起さえできればOKなのかもしれませんが、
 そのやり方が
 「そういう言葉を並べたから、しっかりテーマ提起できている深い作品」
 は、ちょっと違うだろうと。
 「テーマ提起」の前にまずは「アニメ作品」であるわけですから、その部分
 で違和感を覚えてしまう仕事ぶりはどうなの?
 と、個人的には感じてしまうんですよね。{/netabare}

・第11話:須堂の物語がよくわからなかった →次回で解明されるのか
 {netabare}今回のタイトルは「トゥー・フィー」
 ・「トゥー・フィー」はリサの妹の名で、その正体は離婚した父親がリサ
  の「人格コピー」をインプットしたリサの代用品のような存在で、彼女
  は父親を殺した後、リサに成り代わるためにリサに近づいたようですが、
  実行できずに逮捕されました。
 ・一方須堂の方にも大きな動きがあり、「MICHIの大規模改修計画」
  の審査会に須堂を引きずり出すための交渉材料はやはり、
  「母親の人格コピーの情報」
  ということで、交渉は成立した模様で、そのヒューマノイドが海外にい
  るらしく、会いに行くためにリサに別れを告げて終わるという・・・

 今更感もありますが、ある意味1話の「バックアップ」の回収的な部分も
 あり、1話の締めよりはこちらの方がその問題性がわかりやすく提示され
 たのはよかったと思います。
 リサの掘り下げ回という流れにも上手くマッチしていましたし。
 (まあこちらも今更感がありますがw)
 ただ須堂の方は少しわかりにくかったかな。
 ・須堂が探していたのは、「元となる人格のバックアップデータ」だと解
  釈していたのですが・・・
  (元を絶たないとイタチごっこになるだけでは?)
  → その人物に会うことで、そこにたどり着く手がかりとなるかもって
    ことなのか?
    でもその者にとって一番いい道を探したいとも言ってたしな。
    (そもそもMICHIならば、そちらを探し出すことも可能な感じ
     がするのだが)
 ・海外へいくということは、「MICHIの大規模改修計画」の審査会は
  終わったという解釈でいいのか。
  → 「MICHI×須堂」は本作の一番の見どころっぽいのですが、来
    週やってくれるのか?
    (単純に情報を先に受け取り決意しただけで、これから審議会が始
     まるってことなのか?)

 次回で終わりのようですが、「MICHI×須堂」位はそれなりに見せて
 欲しいところですね。
 (やってくれるんかは知らんけどw){/netabare}

・第12話:全部ぶん投げて終わりやがったwww
 {netabare}今回のタイトルは「旅立ち」。
 須堂が母親の人格がコピーされたヒューマノイドを探しにいくまでの物語
 を描いていましたが
 ・「須堂新医院」は5話で登場した瀬戸に譲渡。
  → 看護師のリサもそこで継続雇用。
 ・リサとも最後に和解して、リサも送り出すことを了承。
 となりましたが、
 ・どうも「MICHIの大規模改修計画」の審査会は始まっていないっぽい。
  → え―――っ、思わせぶりに引っ張っておいて結局何もなしですか?!
 ・母親の人格がコピーされたヒューマノイド捜索もこれからだ!END。
  → まあこれは仕方のない部分もあるが、作中でこちらのコピーの方も皆
    「須堂の母親扱い」にしている点が気になった。
    今の私の感覚だと「ただのコピーロボットやん」というところですが、
    この世界だと母親の人格を有する以上「収監されている母親」と同格
    扱いなんでしょうか。
    この辺の価値観はかなり興味深いですね。
 ・この人格のコピーについては1話で涙した娘も出てきて、ヒューマノイド
  がほぼ完全に人間扱いされている世界だと、そういう価値観になるのかと。
  須堂との会話を含め、この作品らしい世界観が提示されてるようでそこは
  よかったのでは。
  こういうところを初めから丁寧にとやってくれればよかったのですが。
 しかし「MICHI×須堂」は最後に見せて欲しかったが、これまでぶん投
 げで終わるとは・・・{/netabare}

(最 終)
締めの言葉として、須堂のモノローグ
「ある学者がいった。人間は終わりなき進歩の奴隷であり、AIこそが人間を解
 放する。~中略~ 人間の望みとは何なのか?」
もっともらしい言葉ですが、
・そのAI/ヒューマノイドがアルコール依存症や家庭内DV等問題児ばかりで、
 進歩とは程遠い存在に感じたのは私だけ?
 (別の意味で人間らしく進化してる部分はあるがwwwそれが人間の望み?!)
・そもそも「人間らしい悩み」を抱えていたのはヒューマノイドばかりで、人
 間なんてほとんど描いてなかったやんw
 (で、最後の語りで「(昔ながらの)人間」をやたら強調しているというw)
>・「AIと人間の共存」というSF的なテーマを扱いつつも、
  「AIの進歩によってもたらされる未来像」
  というよりも、そのフィルターを通して
  「『では人間とは?』という今一度人間自体のありよう的ものを問う」
  みたいな? 結構哲学的要素の強い作品だったのかなあ~と。
まあそんな悩み多きヒューマノイドを通して、「人間とは何か」今一度考えよ
うってことなんでしょう。

本作について言いたいことは、10話のレビュー(+追記)でほぼ書いたので、
そこは省略しますが、11.12話で1話「バックアップ」について面白い見せ方を
しているのを観ると、浅いお題だけ上げて終わりみたいな各エピソード構成は
いささか残念であったかなっと。
(個人的には4-7話の
 「嘘(ファンタジー)の世界にひとさじの真実(SF的テーマ)を加える」
 みたいな作風はよかったと思うのですが)

ただ他のレビュアーさんがおっしゃっていたように
「このご時世に少年週刊誌で、このようなSF作品が連載されている奇跡。」
というのは、かなり的を得たご意見でこれには大いに納得させられました。
そういう意味では、こんな作品がアニメ化までされたのは評価できるのかも。
まあ面白かったかどうかは、また別問題ですがw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 20
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人格のコピー問題の視点が秀逸。AIものというより哲学ですね。

 最終話の意味としては、ミチは恐らく会議のような密室での議論では答えが出ないことを知っている。AIそして人間存在の本質はやはり人間の関係の中にこそ存在するという意味だと捉えました。
 作者が設定としてヒューマノイドという中途半端な存在を置いた意味は、人間をデフォルメして極端な形で見る事ができるからでしょう。つまり、特別な条件を与えることで何かを探ろうとする数学の証明のようなアプローチです。

 ロビジアは道徳のない医療の国らしいので、そこでは更に極端なヒューマノイドについての研究がなされているはず。そこに倫理の問題が絡んでくるでしょうが、しかし、人間の本質にもっとも近づいている可能性もあります。

 本作については、道徳・哲学的な人間の問題を俯瞰するような視点が各話でてきましたが、やはり愛情・性愛問題が多く含まれていました。そこにこそ人間性があるということになるんだと思います。で、やはりコピー問題ですね。人間とは何かを哲学するのにこれほど示唆に富んだ課題はありません。最終回でやはりそこに視点が行きました。

 オープンエンディングにもならない、ボヤッとした終わり方ではあります。結果の詳細は読み取ることはできませんし、推理してもしょうがないでしょう。
 しかし、想像することはできます。コピー人間の本質をその存在だけで定義すると偽物ですが、しかし、他人あるいは人間関係の中に置いた時、その他人にとって本人になるわけです。つまり、本物が2つ存在する状態がありえるということでしょう。
 それがミニスカ看護婦の素性が明かされた意味に重なってくるのだと思います。
 オリジナルがもう存在しない1話のコピーと、正副両方存在する母親。その対比がわかりやすく提示されました。

 で、全体的にいいアニメだったと思います。人間の問題とSF的な実存問題を絡めてかなり楽しめました。
 ストーリーラインは弱いですが、エピソードの出来が秀逸でした。ブラックジャックの作劇法をかなり意識している作りになっていたと思います。

 ということで、ストーリーというよりテーマ性の評価はかなり高いです。キャラは弱いですが、調整としてそこそこの点はつけたいですね。


追記 そういえばミチって、主人公にそっくりですよね。つまり、クローンの可能性がないでしょうか?ヒューマノイドのコピー問題と人間のクローン問題。この描写は面白かったと思います。



 1話  人格をコピーしバックアップすると死は果たして防げるか問題

{netabare} 非常にいいですね。絵柄とミニスカ看護婦でちょっとずっこけますが、かなりのSF的な世界観を提示できていると思います。電脳ブラックジャックIN攻殻機動隊のような感じでした。

 人間、AIに限らずですが、攻殻機動隊では電脳になった時にこのコピー問題をゴーストという人間を人間たらしめる存在で回避しています。アシモフのロボットシリーズでは陽電子頭脳という複製不可能な構造のハードウエアで処理しています。SAOでは、アリシゼーション編の冒頭で人格のコピー問題を扱っています。

 水星の魔女で残念だったのが、 {netabare}このパーメット粒子エリクトの人格はコピーではないのか?という疑問に解答がなかったことです。人間の脳からパーメット化した先は本人なのか?ですね。
 その問題の回避のためには私はむしろガンダム内に脳みそを保管してくれていたほうがよかったのに、と思っていました。まあ、キーフォルダー小姑になれないのであえて無視したのかもしれません。{/netabare}

 このことを突き詰めて行くとタイムリープとか世界線等SFの話にもつながります。東京リベンジャーズなどでもそうですけど、タイプリープ世界の友人=違う人生を送ってきた人物は本当に自分の友人なのか?ということにもなります。あるいはタイムリープした人物はその記憶が変わった友人の存在に押しつぶされないか。そこが引っかかって同作の青春とか友情が嘘っぽく感じました。

 シュタゲにおいて、 {netabare}岡部の主観だけ救済されるの?それぞれのマユの人格は岡部の中では消えていますが、死んでいったマユの魂はどうなの?その救済は?ということです。死はいずれにせよ人格が消滅する行為です。時間がなかったことになっても、その時死んでいったマユには魂があったわけです。その絶望をどう考えるの? {/netabare}です。とあるシリーズのある回でもこの問題がでていました。

 人格や記憶のコピーというとピンとこないかもしれませんが、要するにコピーはカットアンドペースト作業においてオリジナルをデリートしてないだけです。我々が相対しているのはペーストされたものですから、オリジナルではありません。このオリジナルでないものが流出したら大問題です。人格も人権も分裂することになります。だからこそ、AIの電脳のコピーは禁止と言うことになります。

 と同時に、人間の魂とはなにか?という哲学・思想・科学あるいは倫理や感情、尊厳の問題にまで発展する大問題です。

 クローン問題や瞬間移送装置などバリエーションは様々な形で作れますが、本作はこういう人格とはなにかという思考実験をやっているのか、コピーにまつわるヒューマンドラマをやっていると思われます。

 1話で記憶の欠落問題がでてました。{netabare} AIのみならず様々なカテゴリーで使われるテーマですが、記憶…いや思い出と言ったほうがいいでしょう。人格の連続性の問題として家族と絡めて非常によく描けていたと思います。

 そして、母親の問題で謎かけがありましたが、1話の一番最後の感じだと、母親のオリジナルが流出して遠い世界にいるということでしょうか。それを探しているという物語がありそうですね。あの刑務所での主人公の冷たい感じは母がコピーだという風に見えました。{/netabare}



追記 私の上の書き方だと、記憶が欠損することが情緒的な問題と捉えれれるかもしれませんね。そうではなくて、AIにとってはコピーの上書きは死ということです。

{netabare} 本作は分かりやすく一回フォーマットという行為を挟んでいました。そこに再インストールすると外からみるとタイムラグによる記憶の欠落です。
 しかし、フォーマットされる側からすれば死刑宣告です。つまりバックアップには死を防ぐ効果はなく、外部の人間から見た場合は一見同じ人格が連続しているように見えるだけです。

 人格の連続性の問題を扱っているというのは、コピーとはいえ新しい人格をインストールされる側にとってはウイルスで壊れるのも、フォーマットされるのも等しく死ということです。母親はそのことを感覚的にわかっていたのでしょう。だから家族とともに最後の時を過ごしたいという判断なんだと思います。

 父や娘から見たらその場で再インストールすれば死ななかったのに、という誤解があるのかもしれません。実際弔っていましたし。だから生クリームの記憶の欠損によってそれを思い出しているのか、死が避けられなかったことを実改めて理解したのかわかりません。
 ですが、実際は何をやってもウイルスに感染した段階で手遅れです。{/netabare} {/netabare}


2話 生殖と家族が人間の幸せか?限界を設定するのはハードかソフトか?

{netabare}  まず1つ目のテーマ。生殖機能がないはずのヒューマノイドにとって、人間的な幸せの象徴である家族の団欒がどうみえるか、という問題。

 これは面白いですね。逆説的にとらえらば本来人間の幸せと言うのは「子供を残す、子供を育てる」という人類というより生物として遺伝子的な条件付けです。その生殖機能を持たないヒューマノイドにとっては、どういう発想になるか。

 生物的にいえば同性結婚や性自認、性指向(嗜好)等々のポリコレ云々が人間として本来は不自然だということです。全員が子供を持たない選択をすれば人類は滅亡します。そのジレンマをどう考えるか。
 あるいは人間は生物的な限界から解き放たれて、人工的に子供をつくる、あるいはヒューマノイドのようなもので、人間の数の不足分を補完してゆくべきなのか。

 いきなりおっぱい揉んでてちょっと驚きますが、SF的課題として置き換えた場合、生殖しないヒューマノイドにとって、生殖のために異性を刺激するような肉体的特徴、つまりセックスアピールが必要かどうかですね。本作ではそこまで行きませんが、もちろん化粧やアクセサリ、衣服などの問題にもかかわります。
 看護婦がミニスカで色ボケなのはいい対比でした。食欲というか嗜好品でもあるケーキに夢中なのも、人間的であるということでしょう。逆に言えば看護婦の無邪気な喜びや主人公の愛情はAIのアルゴリズムの方向づけということでしょう。その不自然さの象徴なんだと思います。(不自然さだけだと言葉たらずですね。この世界のAIの設定によってはそれこそが、ヒューマノイドも人間と同じ幸せを享受できるという意味にもなります)

 家族あるいは夫婦というのは、人間の遺伝子的には女性から見て、子供を安全に育てる場所を担保するためのユニットです。
(なお、子作りのパートナーには遺伝子の優秀さを求め、子育てするパートナーには生存戦略を求める、という違う種類の男を使い分ける女性の本能が浮気とか不倫の原因らしいですね。男の浮気は単純に種をまきたいからですけど)

 あるいは子供が無邪気に遊ぶ姿を見て、遺伝子が作り出した脳内物質が発せられる、幸せだという気分になるという機能は必要か?あるいは社会の共通認識としてそれが幸せであるという定義=道徳や倫理の有り方の問題なのかかもしれません。

 つまり、生殖と家庭から解き放たれたとき、人間が求める「幸せ」はどこにあるのでしょうか?という話でした。


 2つ目のテーマ。人間と同じ向上心をもったAIが肉体の限界の仕様が設定されたとき、どんな葛藤がおきるのか。これはあまりパッと類似例が思い浮かばないです。ここまで、人間化したAIという設定があまりないせいでしょうか。

 面白いですね。ヒューマノイドの彼の限界は何が決めているのか。それは実は人間と同じで、心の問題なのではないか?という事でしょうか。
 もちろん、作中で説明があった通り、人間と同じ世界でヒューマノイドが生きるために能力に制限を設けるというのは仕方ないでしょう。この制限が逆にAI問題に面白い視点を産みました。あるいは友情や他人からのポジティブな影響がヒューマノイドにも効果がある、という意味にも取れました。



 で、最後。恐らくMICHIというのはリミッターなのでしょう。AIは人間を理解できるか?ですね。
 私の一番好きなアニメ「ビートレス」の超高度AIが人間の定義に苦しんでいたところに通じる気がします。非常に面白いです。

 真面目にSFしている良作だと思います。2話の視点には感心しました。視聴継続ですね。 {/netabare}


3話 心はどこにあるのか?

{netabare}  ヒューマノイドが夢を見るということがわかりました。つまり、ヒューマノイドは潜在意識を持っているということで、ほぼ人間と同等の脳機能を持っているということです。

 それと対比するように、行動に条件付けをされたロボットが出てきます。この脳みそははっきりとプログラムと言っています。つまりコンピュータということでしょう。ヒューマノイドとロボットは、ソフトウエアの違いではないし、ハードウエアの違いどころか、概念そのものが根本的に違うという設定だと思われます。
 人間の脳を工学的に再現できる人工頭脳がヒューマノイド、現在のコンピュータの延長の電子頭脳がロボットでしょう。(ただあの医者が修理しているので、同じ構造かも。ちょっと違和感ありますけど)

 今回はこのコンピュータの心問題が出てきました。本作はそもそもヒューマノイドが人間として扱われているので、今更感はあるかもしれませんが、SFではかなりメジャーなテーマでしょう。

 心はどこにあるか。現実社会でも愛玩ロボットのAIBOロスなどが実際問題になっていましたが、単純なロボットであっても人間の呼びかけに応答するものには、人間は心を見てしまいます。本作の結論としては、まず心は使う側にある、というのが答えでした。

 ただ、コンピュータサイド。記憶を保持し主人に合いたいと思う気持ちは心ではないのか?主人を守りたいという気持ちは心ではないのか?

 我々は当たり前のように脳みそに心があると思ってしまいがちですが、本当にそうでしょうか?身体の感覚や反応が心を形成するケースもありますので、実際はよくわかっていません。今回はコンピュータの心問題とともに、哲学の問題でもありました。
 ためしに「心はどこにあるか」で検索してみてください。山のように難しい文書が出てくるはずです。

 その一方で、データとして書き換え可能な記憶は、サーバの中に保存されます。それを心と呼ぶなら、記憶こそが心なのか?
 1話でもちょっと似たテーマがありましたが、今回は命とか魂の問題ではなく、心はプログラミングか?データか?あるいは心はどこにあるのか?という問題でした。 {/netabare}


4話 VR時代の性欲処理と恋愛の問題、現実との境目。

{netabare} 恋愛、性欲、創作物による性欲の処理などいろいろありました。

 本作は本筋で母問題あるいはコピー問題はありますが、当初考えていたAIの発展とかAIの人間性の獲得という話よりも、人間とは何か?特に脳科学、心理学、哲学などに触れる端緒となる視点の紹介という感じなんですね。

 AIもののSFというよりは、AIを使った人間理解の話という側面が今のところ強いです。
 その点で4話は、AI画像生成によってコラ画像がかなりの精密さで出来るようになった現在、結構ホットな話題ではないでしょうか。
 VRで現実の人間がコラージュできるとなると、現実とゲーム(創作物)との境の問題や使われる側の感情や権利の問題があります。

 そもそも、VRや画像が代替になるのは性欲においてのみで、触れ合いが無い点で恋愛関係の代替にならないのでは?というわけでもないのは「ラブプラス」の時に、宿泊パックを用意した熱海の旅館があったくらいで、実際利用者がいたみたいです。つまり、VR彼女と本気で恋愛していた人が2010年にはいたということです。今も初音ミクと結婚しましたという人もいるくらいです。

(ラブプラス、調べたら「大野屋」というホテルで近畿日本ツーリスト。1泊2日で約4万円。布団が2つ敷かれるそうです。「愛花号」「寧々号」「凛子号」のバスが用意されたとの事。まあ、聖地巡礼の意味もあるでしょうが、たしかニュースで取材されていた人は、2、3人ガチ恋がいたと思います。)

 4話は現実の人間をVR画像に落とし込む話ですからちょっと違いますが、VRと恋愛できるか?と言う点では一緒です。
 そして、好きになった子に振られるストレスは相当辛いです。好きな子の画像データを取り込めるなら、ますますVRに依存するのではないでしょうか?

 少子化まで考えると、本作の範囲においては拡大しすぎですが、現実の世界におけるネットコンテンツによる性処理は、恋愛のモチベーションを著しくさげますのでこのVRはいずれ少子化の文脈で社会問題化すると思います。
 回りまわってこの作品の社会背景の考察にもなりますが、人間がますます産まなくなる条件の一つになりそうです。だから、人間に似たAIが必要になるのでしょう。

 それと彼氏が浮気することに価値がある問題は良かったですね。普通にいますからね、ああいう女性。彼氏の価値を恋愛市場価値で計るという意味と、駄目な彼氏を許してあげる自分に酔うという意味とあるみたいです。
 賢者タイムボタンはちょっと笑いますけど、つまり人間ならオナニーで我慢しているという風に置き換えればいいと思います。要するにどんな女ともセックスできるくらいの価値がある彼氏がいるステータスが大事であって、その状況に酔っているということでしょう。

 それとレズ問題かあ…同性同士の友情にかこつけて、ですねえ。ひょっとしたら、それを見せるのが目的だったかもしれないです。そう考えると4話は面白い構成でした。 {/netabare}


5話 医療の役割と罪。子供への愛情とはなんぞや?

{netabare} 今回は2人の異常行動についてでした。アルコール依存と自閉症スペクトラムによる暴力衝動と音楽的才能(サヴァン症候群?)だと思います。「青色サヴァン」の時に調べたのでなんとなくわかりました。
 2つの症状の共通点は日常生活に影響があることです。その症状を治療するために医療行為がどこまで許されるのか?が今回のポイントでしょうね。

 アルコール依存の場合。これは悪しかないようなイメージですので、それを治療することの是非はあまり問題にならないでしょう。ただ「嘘の記憶」という方法を使うことの是非ですね。しかも違法です。それでもまともな生活を送れるようになる。良い事をしているという満足感も治療に寄与しているかもしれません。

 サボテンというのはなんでしょうね?催眠のトリガーとアンカーみたいなものでしょうか?わざわざこれを入れたのは、今回の治療は人間でいえば催眠療法のことだよ、という意味かもしれません?調べたら普通に人間でもできるみたいですね。


 自閉症スペクトラムを治療する場合。こちらは暴力衝動という症状を消す代わりに音楽の才能を失くしてしまう罪ですね。
 子供を平凡に育てるか、孤独でもいいから個性とか才能を伸ばすのか。それが病的なものであったとしても…ですね。本当に子供を強制的に学校に溶け込ませるのが、正解なのか?

 両者とも人間ではありえないくらい簡単に治療できてしまうのが、AIならではですね。
 今回については、どちらかといえば音楽的才能を殺してしまう罪の方が大きい気がしますけどね。

 もう一つ。子育てにおける愛情です。ジョウロ=手間をかけて水をやる、自動化=手間がかかるから目の前の症状を抑えることを考える。
 つまり、愛情の注ぎ方とは何ぞやという謎かけでしょう。親が安易な治療をすることへの批判とも取れます。
 今回は病気の症状を含めて親が子供の全部を受け止めきれなかった感じでした。どちらかと言えば子供を愛しているというより自分の困難を何とかしたかったという風にとれます。

 ということで、今回の話では、病気治療の功罪と子育てにおける親の愛情の問題が目につきました。 {/netabare}


6話 機械が人間の技術を越えると人間は不要になるのか?一歩先に行く高品質は無駄なのか。不完全さを知ることが人間を知ることなのか?AIロボットが人型である意味は?

{netabare} すし職人が修行で何年もお店で奉公するのは、無駄で非人間的だという話があります。技術をマニュアル化して作業手順だけ覚えさせれば、最高のすし職人とほとんど変わらない味のすしが握れる、と。たとえばこれを95%の水準としましょう。

 6話前半において、この最後の5%を追い求めることが無駄なのか?という視点があると思います。そしてマニュアル化と作業手順がすなわちAIということでしょう。日本においては議論がありそうですが、効率化を考える海外の企業においては、この5%は削りマニュアル化する。そしてそれが80%の水準でも自動化を進めるという結論が大勢でしょう。

 それは資本主義がROE、つまり資産の利回りによって成功失敗を判断するからです。つまり、経済的には徒弟制度的修行で最高峰を目指すより経済性ではマニュアルによる効率化、更には自動化の方が高いという結論がでているからです。

 ただ、一方ではハンドメイド、この最後の5%を求める人がいるのも事実です。日本の大量生産品でもトヨタのセンチェリーや日産GTR、セイコーのグランドセイコーなどはハンドメイド部分があります。これがいわゆる「豊かさ」だと私は思います。裏を返すと「贅沢品」ですけどね。
 技術的には本作のような刃物加工もそうですが、キサゲ作業と言われる平面加工は人間でないと出せない精度があります。

 これをまず機械が越えられるのか?という話がまずあります。もちろん、いずれは超える日もくるでしょう。ただ、それは人間の敗北、人間の不要論なのか?という話です。

 後半は、人間性には限界と失敗があるということでしょうか。AIが人間に対する理解を完全なものとしてとして捉えてしまうと、それは非人間的なものになる。人間は失敗し、疲れ、時に攻撃的になる。その一方で人型のものが人間のようにふるまうと、友達として扱うようになる。

 前半後半の共通項目として、AI側の認識の問題としてはマニュアルだけでなく生活を共にすることで「人間を機械学習する」必要があるということかもしれません。
 その視点でいうとロボットが人型である意義は大きいのかもしれません。

 加えて「フィードバック」の関係が示唆されていました。特に前半は目新しいですね。人間と機械がお互い向上することで、更に上を目指せるという事だと思います。機械が人間を越えられるか、あるいは、人間要不要など結構二者択一の議論が多い中、共存の提案は良かったと思います。

 後半は直接的ではない学習成果、つまり人間理解が今後のAIには必要になるという示唆でした。人間への理解が深まると別の場所で活かせる、という種類のフィードバックでした。{/netabare}


7話 メンタルと治療、何が正しいのか?

{netabare} しかし、この作品事象をいろいろもってきます。病気によりその人の家族にとっての欠点が無くなった場合、治療を拒否するのを責められるか?特にDVが絡む場合は切実です。
 また、深い個別事情を知らず病気をすべきと外野が責め立てるのは許されるか。治療することが必ず正しい事なのか、という問題が前半でした。
 この問題、踏み込んでゆくと過去の精神医療施設の虐待事件とか思い出しますが、生生しいので割愛します。

 後半は、カスタマーセンターのストレス問題があります。基本的に2年以上は精神が持たないし、ストレスチェックをマメにしないと厳しい部署です。その対応を機械でやる、あるいは人間が演技と割り切ってやる。どちらに心がこもっていると言えるでしょうか。

 ただ、ストレスをためて胃が痛くなっていた人も、結局は「対応」しているだけです。客の側とサービスをする側の認識の違いですから、どういうやり方でも丸め込むという対応方法も間違いじゃない気もします。

 また、向き不向き、メンタルストレスを対処療法で乗り切ることがいいのか?などでした。 {/netabare}


8話 題名が遺電子ですから、テーマ的本命はこの話?

{netabare} まず手作りの価値という視点がありましたが、特に掘り下げはなかったようです。また、メッセージとしてバレンタインチョコの位置付けを念押しするところに、立場表明とプライドなどが見えて面白い描き方だと思います。先生のケーキの素性を隠したところに、ウイットと優しさがありました。

 で、恋愛ですね。確かに精神疾患かもしれません。しかし、エロスとタナトス。無意識世界に混とんとして存在しているそれは、人間の生命のエネルギーになっています。
 また、感情は人間らしさの基本であり、恋愛はその中心的なものです。そして、生命的にいえば生殖するからその個体は存在価値があるとも言えます。遺伝子の役割が本作のテーマであるなら、これは本題ともいえるでしょう。
 バレンタインという儀式的な人のコミュニケーション、プレゼントや言葉というややこしい生殖・恋愛のためのツール。気持ちとは何か?そして、恋愛・生殖の意味とは?

 恋愛と生殖を忘れれば、それは社会にとってはエネルギーを無駄に使用日する環境負荷でしかないと言えるのかどうか。

 ただし、それが今回は同性というところが面白い。機械で同性。生殖には関わってきません。その時に「恋愛とはなにか?」という本質を考えるきっかけになりそうです。

 1話で、提示された行方不明のコピーの問題が作品の本筋なんでしょうけど、題名から言えば、エロスとタナトス、アイデンティティ・感情・恋愛・遺伝子・子育て・そして社会性とはなどが今まで提示されてきました。これがテーマ的本題なんでしょうか。だとすれば哲学ですねえ。とても面白いです。{/netabare}


9話 子供に「悪」を見せるということ。教育とルール。

{netabare} さて、今回はテーマ的には結構単純ですが、解答や見解が非常に別れるテーマでした。

 日本だけでなく世界的に〇〇を見せるとそれに影響されて犯罪が増えるという言説を信じている人があまりに多い問題です。特に暴力と性犯罪ですね。今回は暴力ですが、手塚治虫氏や永井豪氏などが実際に規制されていますし、都条例もありました。

 発達心理や社会の本質を考えたり、研究やエビデンスをそろえないで感覚的に議論しているからこういう結果になるのだと思います。子供に暴力や性的なものを見せたくないという馬鹿親があまりに増えすぎです。実社会での危機回避や倫理観の情勢、自分で考えるクセの習慣化に役立ちます。
 あるいは人間というものの本質を理解するのに創作物における悪の有用性がまったくわかっていないようです。

 その辺りを皮肉っていましたが、この回は特に母親の視点で言えば、何が言いたいのかはわからないかもしれません。少数の事例を証拠だといいはって、暴力コンテンツは教育に悪いという結論ありきの議論しか見たことがありません。

 後半です。規律の程度の問題です。これは学校教育の場面もそうですけど、実社会にも言えることです。グレーゾーンを認めず黒か白かで判断するということです。

 ここちらも、特に若い世代の人はそれの何が悪いのだ?「規則は規則だろう、ハイ論破」的な視点を持つ人もいるかもしれません。しかし、かなり低い視座で言っても、柔軟性がない思考方法は場面場面では正義ではあっても、いずれ調整が出来ずに破たんすることが分かっていないのだと私は考えています。

 もう少し高い視座で考えた場合、そもそも構造主義的に考えれば社会によって正義は変わります。そして法やルールというのは曖昧に作ります。公共の福祉、権利の濫用、悪人正機、予定説、最大多数の最大幸福等々さまざまな概念や判例・過去の類似例・TPOなどを使ってベターな解答を導き出すものです。

 むろん、刑法はデュープロセスオブロウの観点からブラックリスト形式をとりますが、それは公権力の制限をするためです。まあ、この問題を論じるとキリがないです。
 この問題、いつもアニメで言えば「ガンダムシード」のマリューVSナダルを思い出します。あれでどちらに感情移入できるかで立場がわかる気がします。

 その辺の視点を描いていましたが、最終的に道徳とルールの問題は「正論」と言う名の思考停止が存在する一方、「人間性」と言う名の思考停止も存在しますので、今回の話は正解を求めずに考え続けることでしょうね。

 上で私が述べたような、厳格なルールって駄目だよねという解答もまた一般解に近いです。後半の学校のルールについては特に考える必要があるでしょう。
 この問題はそれぞれが理屈や感情でどれだけ勉強するか深く考えるか、が大事であって正解はないでしょう。正解があると考えるのが一番恐ろしいです。 {/netabare}


10話 人間の行動は誰が決めているのか?人間は自分が無になるという事実に耐えられるか?

{netabare}  前半部分です。それ以前のTVと雑誌の時代から、欲望のコントロールは行われていましたが、それはドラマに出てくる小物や食べ物など消費に関することから始まり、報道のニュアンスやタレントの発言等々による誘導で、消費経済へと価値観が誘導されていたわけです。
 これは誰かが意図した陰謀論ではなく、テレビとスポンサーを中心として仕組みが作り出した構造主義的な成り行き、つまり、資本主義的マスメディアの構造でした。

 今現在はそれが意図的に行われています。検索履歴はもちろん。ネット決済や位置情報が便利だと思わせる誘導。陰謀論でもなんでもありません。それは現実に行われ個々人のインターフェイスに反映されています。

 我々は欲望をコントロールされいています。AIの提示する動画の候補や買い物サイトのインターフェイスはもちろん、検索の結果の並びに反映もできます。旧ツイッターの旧スタッフによる情報の故意の操作もあまり問題になりませんでしたが、ディープフェイクの温床になっていました(これはスタッフの手作業だったという事らしいですけど)。

 そう考えると、AIによる人間の行動の統制は非常にたやすいものです。人間は自分で思っているほど、行動のモチベーションを自分で決めていません。外部情報を自分の情報だと錯覚して行動しています。
 そのバランスをとるのが様々なメディアや書籍、他人に触れることでしたが、今やそれらは巨大IT産業により情報の出どころが一緒になっています。

 この大規模なものはAI時代なら必ず起きます。知能が高い彼だから気が付けたという話です。「リコリコ」の真島がバランスをとるために犯罪を犯すのとある意味では似ていました。

 なお、バタフライエフェクトをこの現象になぞらえていましたが、あれは「計算できない」影響の広がりの問題で、本作のような陰謀論とは相いれない気がします。


 後半はなぜ非科学的なスピリチュアルが流行するのか?問題ですね。

 東大病院の准教授だったと思いますが、突然死後の世界はあると言い出して世間を驚かせました。本作はそこからの発想でしょう。
 
 人間は死後は「無」になる。あるいは物質になり原子に帰ると考えて行くと、宇宙に寿命がある以上はいずれゼロになるというのは当たり前の話です。宇宙はないのに魂はあると考えるのは不自然ですよね?

 宗教が無くなり自分の存在の拠り所が無いと、人間は死に対して不安と恐怖を覚え、無になることを受け入れられない人は非常に多いのではないでしょうか。宗教の代替としてのスピリチュアルというのは極めて自然な発想だと思います。
 「攻殻機動隊」や「シリアルエクスペリメントレイン」などが有名ですが、ネットの世界というのは未知の世界です。人間的なものが情報として生きられるようなイメージは持ちやすいのではないでしょうか。その意味でAIを神とあがめる人も、SF的シミュレーションとしては自然かもしれません。

 その人間に内在する死の恐怖とスピリチュアルへの傾倒を良く描けていると思います。

 で、本筋がやっと進みましたね。そういう事ですか、という感じでした。となると、本作の行く末ですが、ヒューマノイドはなぜ必要だったか?と重なってくるのでしょうか?あと2話だと思いますがどうなるんでしょうか。楽しみです。{/netabare}


11話 1話完結のショートストーリーの方が面白いと思います。

{netabare} 1話完結の話を重ねてきただけに、本筋に違和感を感じてしまいます。再びコピー問題です。
 人間なら双子に置き換えれば分かりやすいかもしれませんが、環境により性格が変わる例といえばいいのでしょうか。

 テーマを掘り下げると深さはあるのでしょうが、本作の11話だけ見るとありきたりだし、メインのモブというべきヒロインの素性を今更説明しなくてもいいのに、と思わなくはないです。コピーのアイデンティティ問題は1話でやりましたし。
 ミニスカ看護士さん、バラバラの身体を組み立てるということは、ちょっと姉妹の関係に違いはありますが「ブラックジャック」のピノコといってもいいかもしれません。

 来週あたり最終回かもしれませんが、しかし、この作品はキャラの内面が弱いので、寓話というか未来の日本昔話として、1話完結なら優れた話なんですけど、メインの登場人物に感情移入できない弱さがあります。いまさら看護士さんの素性いる?という気はしました。母親がいる場所がアジア的なのでインドつながりで現地の状況の説明がしたいのかもしれませんが。

 キャラが弱いのは「蟲師」と同じ欠点ですね。「ブラックジャック」がいかに優れていたかが分かります。{/netabare}


 

投稿 : 2024/05/11
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