サイバーパンクおすすめアニメランキング 42

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのサイバーパンク成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月11日の時点で一番のサイバーパンクおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

90.3 1 サイバーパンクアニメランキング1位
攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG(TVアニメ動画)

2004年冬アニメ
★★★★★ 4.3 (2327)
12348人が棚に入れました
「笑い男事件」が解決して半年…労働力不足を補うため国外から招かれた約300万人の招慰難民。日に日に存在感を増す招慰難民と、国家の孤立を謳うインディビジュアリストたちの対立は深まり、テロが頻発するようになった。その状況の中で「個別の11人」を名乗るテロリストがテロと自決を決行する。
だが「個別の11人」のその行為の背後には、あるからくりがあり、その仕掛けに踊らされていただけだった。それに気づいた公安9課は、その事件の黒幕へと迫っていく。
一方、自決した「個別の11人」の生き残りであるクゼは、招慰難民のカリスマ的指導者となり政府と対立を深めていく。そして素子(もとこ)はそのクゼとの間に奇妙な因縁を感じ始める…。

声優・キャラクター
田中敦子、阪脩、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

リアリティが半端じゃない! スキのないすばらしい作品

原作未読。
1期の続きです。

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス]」
http://www.anikore.jp/anime/475/

「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」
http://www.anikore.jp/anime/588/

「攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society[ソリッドステートソサイエティ]」
http://www.anikore.jp/anime/1635/

1期レビュー → http://www.anikore.jp/review/646727/


1期から2年、公安9課が再び動きだす。
今回は「個別の11人」を名乗るテロ集団が相手。
その過程で、社会情勢、国際問題に発展する事件に関わっていく。


完成度がとても高い作品です。
個人的には1期をはるかにこえています。
ストーリー、音楽、演出とどれもがハイクオリティ。

特に設定の細かさには驚かされます。
攻殻機動隊ワールドともいえる一つの世界観。
科学技術、社会情勢、思想にいたるまで入念に設定されています。
また、何か一つの行動に対し、影響のあることをきちんと拾い上げています。

・マスコミの反応
・国家上層部の対応
・世論の動き

など。
そのリアリティがたまりません。


文句はないのですが、あえていうなら話が難しいです。
社会的、政治的な話のうえに、言葉が難解で、情報量が多いです。
まとめて見ると疲れたり、内容が頭に入ってこなかったりする可能性があります。

ただ、そこをうまくカバーしているのが癒やしキャラである「タチコマ」の存在。
1期でも際立っていたAIロボットです。
かわいらしい声とかわいらしい話し方。
物語にぐいっと感情移入させてくれます。
{netabare}
タチコマの自爆で泣きそうになりました。
「ごめんね」って(´;ω;`)ウッ…
{/netabare}

テーマは「心と体の可分、不可分性」。
魂(作中では「ゴースト」)は、体に宿るものなのか。
それとも、体から離れて存在するものなのか。
{netabare}
ネットワークを介して、個々の人々が、一つの意志を持つかのようにふるまう。
それが「スタンドアローン・コンプレックス」。
「水が低きに流れるように」、人々の意志も一定方向に誘導される。
難民問題を通じて、それを意図的に高い位置に導こうとしたのが、クゼの行動なんですね。
{/netabare}

1期ではテーマ性がぼんやりしていました。
しかし、2期ではっきりしたことで、胸のつかえがおりました。
腰をすえてじっくり見る必要がありますが、すばらしい作品です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 58
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

動機ある者たち

ProductionI.G制作。

個別の十一人を名乗るテログループが、
中国大使館を武装占拠した。
{netabare}彼らの要求は難民受け入れの即時撤廃である。
難民問題が大きくクローズアップされる。{/netabare}
少子高齢化から派生した地続きの物語である。

パトリックシルベストルが著したとされる、
個別の十一人なる革命評論集が重要タームだ。
彼のモデルは三島由紀夫なのでしょう。

公安9課は「少数精鋭」である為に、
敵の「物量戦術」に脆いことが課題である。
{netabare}度重なる内庁の外圧に後手に回る公安9課、
素子たちの敗走が描かれストレスが溜まる。{/netabare}

公安9課メンバーの過去回想や、
素子と難民の指導者クゼとの若き日の邂逅。
ゴーダが語る「英雄の条件」とは!?
{netabare}迎えた最終局面ではプルトニウムによる、
難民の核武装計画、いよいよ難民との、
戦争状態に突入する自衛軍である。{/netabare}
9課はこの泥沼の状況に終止符を打てるのか!?

この国の行く末を憂う動機ある者たち、
ぶつかり合う様々な思想に心が揺さぶられる。
ただ為すべき正義を全うするしかないのだ。

自分の「ゴースト」に従え、
公安9課の反撃はこれからだろう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 47

リクポテ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

超一級の政治ドラマ(^.^)ノ

コミック原作 未読

前作の笑い男事件から半年・・・
「個別の11人事件」をきっかけに、公安9課、事件を裏で操る政府、革命を起こそうとする者という三つ巴の戦いが幕をあけます。


相変わらず緻密に作り込まれた攻殻機動隊ワールドでしたね。

ストーリー構成は1期とあまり変わらず基本的に1話完結です。1期よりさらに社会情勢に深く踏み込んでいます。個別の11人事件をきっかけに始まる9課の戦い。
相手の裏を読みながら少しずつ真相に近づいていく様は見ごたえ抜群です。特に終盤の展開はあまりの素晴らしさに時間を忘れます!!

ただやはり題材が題材なので話が難しいですね(*_*)
1つ1つの会話も聞き逃せないのであまりの情報量に頭がパンクしそうww
まだ完全には理解出来てないんだろうなぁ・・・

作画と演出も抜群です!
戦闘シーンはホントによく動きます。

声優さんの味のある演技で硬派なキャラがさらに生き生きして描かれていますね。タチコマはこのシリーズの唯一の癒し要素です。

音楽もさすがは菅野よう子さんといったところ。
世界観や場面にマッチしたBGMはもちろんのこと、OPの「rise」が半端ない!
9課の面々が歩いていくところ+少佐の目に吸い込まれるカメラワークは何度見ても鳥肌がたちます!!


是非1期から見てください。1期2期合わせて50話以上ありますが長さを感じさせないです。
とにかく完成度がすごいアニメです。
ストーリー重視の方には絶対にオススメできます!


頭悪い自分はまだ完全には理解できないのでもう1回1期から見直してみますww

投稿 : 2024/05/11
♥ : 37

72.8 2 サイバーパンクアニメランキング2位
BLAME!(アニメ映画)

2017年5月20日
★★★★☆ 3.8 (212)
1189人が棚に入れました
テクノロジーが暴走した未来。人類の希望は孤独な旅人に託された――。

過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。
都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。
都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。
少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。
仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、花澤香菜、雨宮天、山路和弘、宮野真守、洲崎綾、島﨑信長、梶裕貴、豊崎愛生、早見沙織
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

撃ち抜いたものは何だ!?

弐瓶勉×ポリゴンピクチュアズ。

映画「マトリックス」の世界。
圧倒的な世界観と映像美に心が躍る。
シドニアの騎士よりキャラに表情が生まれ、
女性キャラも可愛いし最高です。
お勧めできる方も少ないかも知れませんが、
後世に伝えたい傑作ハードSF。

遠い未来、極限にまで発達したテクノロジー。
そこは正規アクセスする人々の、
要望を叶える理想郷だった。
{netabare}しかし破局が起こり、人々はアクセス権を失う。
暴走するテクノロジーと蔓延する感染症。
正常な機能を失い、増殖する巨大階層都市。{/netabare}
人々は都市から駆除される存在となる。
セーフガードの目を逃れ短い生を生きる人々。

無機質なアートワークと音響にも注目したい。
一時期の「廃墟」ブームや、
「工場萌え」の方々も絶賛するでしょう。
構造物や美術が主人公と言っていいぐらいだ。

いったいここの地下には何があるのか!?
いったいこの迷宮は何階層あるのだ!?
そんな事を想像してみると楽しい。

果てしなく続く暗黒の未来。
孤独な旅人、霧亥は人類の生き残りを賭け、
巨大階層都市を放浪する。
彼が求め、探しているのものは何だ。

重力放射線射出装置が撃ち抜いたものは…、
僕の心でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 67
ネタバレ

おぼ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

バーン!ドカーン!

原作未読/105分間

[シドニアの騎士]の作者、弐瓶勉のデビュー作。
20年前には映像化出来なかった理由が良くわかる
良作でした。

( 'ω'o[ネタバレレビュー]o
{netabare}
弐瓶勉の作品が物凄く好きなので、期待どMAXで視聴しました。

ジャンルはもちろんSF(`・ω・´)
最初は微妙かな?といった感じでしたが、
後半は完全に世界観にのめり込んでいました!

なんといっても良かったのが戦闘シーン( ´'ω'` )
登場人物が銃を打っただけで映画館に音が響き渡り、イスが物凄く揺れましたΣ(・ω・)(本当に)

びっくりして、最初くしゃみをしちゃったぐらいです(;´Д`)

世界観は
{netabare}時代も場所も明らかでない超未来。コンピュータ・ネットワークは極限まで発達し、高度に階層都市化された世界は、堅牢な『超構造体』に内蔵された『システム』により支えられていた。『統治局』により管理された一大ネットワーク社会『ネットスフィア』は、実社会と同じか、それ以上へと拡大し、ネットワークへの正規アクセスを可能にする『ネット端末遺伝子』の保有そのものが市民権と同義となる。人々の生存圏はネットワーク・スペースへと置き換わり、その仮想空間の事象を現実世界へと反映させるなど、理想の世界を構築した。

しかし、厄災によりネットスフィアは機能不全に陥り、人々は『珪素生物』による感染症の蔓延によりネット端末遺伝子を失ったことで、ネットワーク社会は崩壊する。制御が失われた『建設者』により際限なく拡張され続ける都市構造物は、やがてその惑星系すら内部に取り込み、不安定な連結がネットのカオスを加速させる。ネットスフィアの番人である『セーフガード』は、管理規定にのっとりアクセス権のない人類を不法居住者として排斥し続け、珪素生物はネットの機能回復を阻止すべく人類を襲撃する。人々は繁栄の記憶を忘れ、全てが壊れた世界の片隅で、目を盗むようにして短い生を生きる。人類の黄昏の世界が舞台である。(wikiより){/netabare}

こんな感じ。

みたら分かる通り、とても練られた世界観なので、
SF好きの人は絶対見た方がいいと思います(*´ω`*)

それでは、短いですがここで終わります{/netabare}

( 'ω'o[観点事のレビュー]o
{netabare}[物語]/4.0★★★★☆
設定を生かしたいい物語でした。
ただ、終わり方が雑だった点や、短い間に仲間意識が高まりすぎている点など、気になる所もあったかな……(;´Д`)

[作画]/5.0★★★★★
これに関しては正直[神]としかいいようがないです。
作り込まれた世界観の中で繰り広げられる戦闘は、本当に圧巻でしたΣ(・ω・)

[声優]/4.0★★★★☆
皆さんキャラに合った声優さんだと思いました。
特に良かったのは花澤香奈さん!
いや~(*´ω`*)良かったです

[音楽]/5.0★★★★★
なんというか、効果音が物凄かったです!(表現力皆無)
迫力の音量で戦闘が見たい方は是非!

[キャラ]/4.0★★★★☆
キャラ自体はありきたりな感じですが、
この作品だからこその良さはあったと思います。

[総評]/☆4.4{/netabare}

点数【81点】

投稿 : 2024/05/11
♥ : 34

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

都市に駆除される人間が命綱にする先人からの伝承

原作コミックは本作劇場鑑賞後に新装版を2巻まで購読中。
他に弐瓶勉氏の関連作品は『シドニアの騎士』をアニメで視聴したくらい。


にわかにコミック版に手を付け始めてすぐに、
私は本劇場版が原作構成等を大幅に組み立て直した作品だと知り驚きました。

こうした改変の試みはたいてい大惨事に終わりますがw
本作の場合は硬派なハードSF漫画を、スタッフたちの作品愛で、
未体験の鑑賞者にもより状況把握し易いSFエンタメ映画として
再構築することに成功していると思います。

映画館行った時点では『BLAME!』が『シドニアの騎士』の
遙か遠い昔の前日譚と解釈することも可能な作品らしい……。
との予備知識くらいしか持っていなかった私が
ちゃんと理解して楽しめたのだから間違いないと思います。

アニメ『シドニアの騎士』にて、ヒロインの目が小さくないか?との一部指摘を真に受けたのか?
“東亜重工”スタッフは、づるちゃんをパッチリ眼の萌えCGキャラに擬態?させ投入する等、
色々と懐柔策を仕掛けて来ますw


とは言え、本作は柔らかくなっただけ、アクションが派手なだけじゃなく、
弐瓶氏×ポリゴン・ピクチュアズのCGアニメ作品らしい、
ゴツゴツした魅力が、シナリオ、作画等にしっかりと滲み出ています。

相変わらず使い倒され擦り切れ、年季の入ったスーツが、
人類を駆逐しようと増殖し続ける都市の鋼板をゴンゴン叩く様に、
スタッフたちの気骨を感じます。

鉄サビ臭い世界観の中で思いのほか際立つ人間臭さも健在。
暴走都市に土俵際まで追い詰められた人類が、
遠い祖先から受け継がれた伝承や経験も拠り所にしながら、
徳俵に足がかかりつつも踏ん張り、アイデンティティを保つ……。
その生き様に私はグッと来ました。


で、感銘を受けた勢いで、原作コミックにも興味を持った私。
最近、漫画はかさばらない電子書籍で購読することが多かったのですが、
本作観た後だと、スマホ等の電子書籍端末が、
人類を凌駕、支配する勢いで強大化する
AIの手先、“セーフガード”にも思えて来て気持ち悪さを感じたこともありw
気が付いたら超かさばる新装版大判コミックを両手に抱えて書店のレジに並んでいましたw

私の不器用な手先には太古の昔から受け継がれて来た、火を起こす技術などはありませんがw
暖かみがある灯の側で、紙の本をめくって、
心身を落ち着かせ、先人からの知恵に思いを馳せつつ、
引き続き、『BLAME!』の世界観に浸りたいと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 33

92.1 3 サイバーパンクアニメランキング3位
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス](TVアニメ動画)

2002年秋アニメ
★★★★★ 4.3 (5049)
21458人が棚に入れました
西暦2030年…あらゆるネットが眼根を巡らせ、光や電子となった意思をある一方向に向かわせたとしても「孤人」が複合体としての「個」になるほどには情報化されていない時代…。
情報ネットワーク化が加速度的に進展し、犯罪が複雑化の一途を遂げる社会的混乱の中、事前に犯罪の芽を探し出し、これを除去する攻性の組織が設立された。内務省直属の独立部隊公安9課、通称「攻殻機動隊」である。
公安9課の役割は、深刻な電脳犯罪への対処、国内における要人の援護、政治家の汚職摘発、凶悪殺人の捜査から極秘裏の暗殺まで、多岐に渡っている。彼らは電脳戦を最も得意としつつ、高性能義体を生かした物理的な戦闘においても特筆すべき能力を発揮する、精鋭部隊である。

声優・キャラクター
田中敦子、阪脩、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、山口太郎、小野塚貴志、玉川砂記子
ネタバレ

ラスコーリニコフ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あにこれでの攻殻の順位変動

■攻殻の順位変動について

自分があにこれに来たのは2011年の夏、招待制だった頃で、その頃
の攻殻の総合順位は7~9位くらいだった気がする。

たしか1位がとらドラ!、2位エヴァ、3位がCLANNADのAFだったかな。

CLANNAD、あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。も現在よりは
上位だったはず。

その後、一部のエヴァアンチによる悪意のある工作(明らかに1人の
人間が大量のIDを用い低評価を付けまくり)により、エヴァの順位が
やや低下。シュタゲとコードギアスが徐々に上昇。

あとは自身何度か休止を挟んでいるので、正確な事は分からないです
けど、大きな動きは無かったような。

2013年の6月、化物語が急にトップに、攻殻も一気に順位を上げる。

詳しくは

化物・攻殻の大躍進
http://www.anikore.jp/board/608/

自分は2013年の6月下旬~11月中旬まであにこれを休止しているので、
どう変化したのか分からないですが、気付くと攻殻が1位になっていた。


■攻殻機動隊が1位の弊害

レビューサイトとしての信頼度は上がる気がするものの、あまり良い
事では無いよーな・・。


・視聴のハードルが高い

あにこれに初めて来た人が最初にチェックするのは、総合1位の作品と
そのレビューだろうし、それがよく知らない作品だったとする。

普通は見る。自分が来た時も、まずは「とらドラ!」を見た訳ですよ。

釘宮病だったので掘り出し物を見つけた気はしたものの、ストーリー
はそんなに面白く無かった、なんでこんなもんが1位なんだよ、と。

とはいえ、とらドラ!だったら多分どんな人でも完走出来るだろうし、
死ぬほどつまらない、なんて事も無いはず。

少なくとも「話が難しくてよく分からん」という事はまずない。攻殻
だと結構な確率でそれがある訳です。

「初っ端で挫折する人が出て来る」、これが問題の1つ。

タグに社会派ドラマとかあるけど、巷で話題の半沢直樹とかとは受け
入れの広さが違う。

「やられたらやり返す。倍返しだ!」で、キャッキャするよーな事は
できねー訳です。


・レビューも書きにくい

頑張って完走したとする、そうなると次はレビューです。

レビューを書くのが初だったら、まずは人の真似をして書いて慣れる。

あ~みんな 感動した 最高だった 神アニメだった って書いてる。

よし、じゃあ自分もそんな感じで書こう、と。

そんなノリで書いたレビューは段々消したくなるのですが、仮に後に
消したり書き直す事になるとしても「慣れるために必要な事」な訳で、
攻殻の場合はそのハードルが非常に高い。

「え~、こんな視点で見て、こんな事を書かなきゃいけないの~」

なレビューが沢山並んでいる訳です。当然、脱落する人が出て来る。


■一部の人用の作品

○攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 【全13巻】
巻数  初動  2週計  累計   発売日
01巻 *8,722 **,*** 19,680 02.12.21

○攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 【全13巻】
巻数  初動  2週計  累計   発売日
01巻 11,533 14,576 20,158 04.03.26 


ほぼ同時期に出ているガンダムSEED

○機動戦士ガンダムSEED 【全13巻】
巻数 初動   2週計  累計   発売日
01巻 30,147 38,685 71,081 03.03.28

売上が全てという事では無いですが、圧倒的に負けている訳でして、
性質としては あにこれでの順位は876位、総合得点は64.7点 の

○頭文字D Fourth Stage 【全12巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
01巻 22,008 29,647 44,169 04.06.16

に近い。「特定の事に興味がなければ普通は見ない、けど、その一部
をほぼ確実に掴める」攻殻もそういった類のものです。


◯涼宮ハルヒの憂鬱 【全8巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
00巻 28,729 33,892 35,176 06.06.23

○コードギアス 反逆のルルーシュ
DVD版 【全9巻】
巻数  初動  2週計  累計  発売日
01巻 36,634 45,593 62,527 07.01.26

○魔法少女まどか☆マギカ 【全6巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 52,944(*9,097) 57,767(10,295) 68,547(11,542)

○化物語 【全6巻】
巻数    初動       2週計       累計
      DVD(BD)    DVD(BD)     DVD(BD)
01巻 15,513(29,372) 19,103(37,251) 24,755(58,048) 

○けいおん! 【全7巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 32,503(*7,949) 35,220(*9,418) 42,625(10,847) 

○進撃の巨人 【全9巻】
巻数    初動       2週計      累計
      BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 37,339(19,454) 40,488(21,852) 51,473(29,252)


もっと色々見たければ、

検索 TVアニメ 先発累計平均5000超作品一覧 除外方式 2000年以降


つまり「1位の作品を見る」という気持ちでは、見ない方が良いです。

現在たまたま1位ですが無理して手を出すよーなものではない、内容
に興味がある一部の人だけが勝手に見て、勝手に盛り上がる代物。

自分も含めて、攻殻好きは「理屈っぽくて面倒臭いイメージがある」
ので、レビューを書いたらマイナスになる事もあると思います。


■下がんねーかな順位・・

見て面白くなかったら、積極的に面白くねー、つまらねーと書くのが
良いです。

所詮メスゴリラとむさい男共とハゲジジイが社会の隅っこで色々な事
をしてるだけの話で、2ndに出て来る茅葺総理の雰囲気が少しエロい事
以外は女っ気の欠片もない。

美女、美少女不足は現代アニメとしては「重大な欠点」な訳で、欠陥
商品にはいくら文句を言っても問題ねーです。


大昔に書いた少し恥ずかしいレビュー
(をやや修正、主に「読むに堪えない暑苦しい部分」をカット)
{netabare}

レビュータイトル:よし、そろそろ熱い想いを込めて書こう。

このサイトに来て半月程。
長文書くのは久々だったし、そもそもレビューを書くのは初体験で
この作品への思い入れが強過ぎたせいでこれのレビューを書くのを
後回しにして来たけど、大分慣れて来たんでそろそろ書く事にする。


■一部の人用の作品、マニア用、無駄な凝り具合

普通のアニメとは凝り具合が完全に別方向。

自分は、これ以外の作品ではどれだけ評価が高いものでも気に食
わないと言いたい放題書いてきたし、レビューの内容はそれで良い
と思います。


■科学崇拝

とある魔術の~の話じゃなくて、科学崇拝者ホイホイ作品という話。

【エヴァの自分のレビューの一部】

(エヴァレビューにはひどい事を書き過ぎた為、少し反省、控えめ
 に書き直しを行い、今はこの部分は残ってないです)

ーーーーーーーーー
「攻殻」-「立証可能な理論、現実性」+「ウジウジ君」=エヴァ

「現実を元にした虚構」=攻殻 「虚構を元にした虚構」=エヴァ

背景にあるのがエヴァの場合は宗教と現実味の無い哲学で、攻殻
の場合は、背景が科学と推論としての哲学、あと文学少々。

攻殻は実際ある理論を元に今後ありそーな世界で、ありそーな事を
やってる訳で、両方メッセージ性で話題になった事あるけど、違いは
理解して頂きたい。
ーーーーーーーーー

攻殻を絶賛していたアニオタの友人達は皆が数学、物理、科学等の
崇拝者でして、情緒面よりも科学、エロ、萌え、そして金。と。

検索 空想科学読本

この本中身を知らずにバスで読んで笑いが止まらなくなって困った
事があったんですが、多分この手の作品が好きな人がハマる傾向が
あるのが攻殻。

つまり理系用作品、文系でこの作品の中身にまで興味を持った人は、
相当偏差値が高く良い高校や大学へ行っている(た)人な気がする。

ちなみに「攻機」じゃなく「攻殻」と略しているのは、何の作品なのかが
分かりやすくなるようにする為。口頭でも「攻機」と言ってしまうと通じ
ない場合があるので「攻殻」と言う癖が付いてます。


■銃器、兵器、他陸自等、軍事オタホイホイ

作品には架空のもの実在のものが出て来て、攻殻はかなり凝って
ます。興味ないと評価できないでしょうけど、これも売りの一つ。

ブラックラグーンとかでも少し出て来る話で、
(「軍人達は皆プラグマティストだ、憶測じゃ動かない」だったかな)

軍事はプラグマティズム(実用主義、道具主義、実際主義、行為主義)
の塊なので、科学崇拝者達とは非常に相性が良い。


■攻殻は近未来の日本が舞台の話

2030年頃の日本を舞台にした話なんですけど、2019年の事とかも
あるので、現在2011年ですけど、ちょっとリアル科学は攻殻に追い
つきそうにないですね。追いつくと思ったのになー・・残念だ。


■本当にありそーな設定、無茶とは言い切れない設定

「立証可能な理論、現実性」「現実を元にした虚構」

・・、立証可能な理論って言葉の使い方おかしいけど、他に言葉も
浮かばないから、イメージとして理解して頂きたい。

(実証、証明・・とも少し違うよーな、やはり立証が一番近い気がする。
理論を立証するって言い方はあるから、立証可能な理論でOKなはず)

そういった現実からの発展、推測、推論、未来予測が元になってる
作品なので「そんな未来があり得そう」な訳です。


■その発想力と設定の細かさ

ここのレビューの限界文字数知らないけど、本気で書くと多分余裕
でオーバーするので、設定は解説サイト見て来ると良いです。

架空の話なんだから、そんなとこまで細かく設定する事ねーよ!な
内容で、それ故にマニアが食い付く。


■出てくるキャラ

メスゴリラ、むさ苦しいおっさん達、無駄に有能なジジイ、そして
攻殻が好きはきっと皆大好き笑い男。2rdでは雰囲気がエロい総理。


■作画

萌え絵じゃなくて、変な作画じゃなくて、本当に良かった。


■台詞

センスが日本のアニメのよくあるそれではない、ハリウッド映画系、
ともやや違う、脳筋系すらそのセンスのせいで激しく良いキャラに。

蒼天航路、富野作品、ブラクラ、銀英、冨樫や福本作品、ビバップ

パッと思いつくので、それぞれが独特に台詞が印象に残る作品。

攻殻にも脚本に6人のうち1人がビバップに関係してるけど、ビバップ
ともやや違う。台詞一つで台無しになるところを素晴らしい仕上がり。


■声優

有名どころだけ:田中敦子 大塚明夫、山寺宏一 中田 譲治 三木
眞一郎  折笠愛 榊原良子


■音楽

日本の至宝、菅野ようこ様

検索 Inner Universe (full song)

2011年秋に480万再生、2013年年末に900万再生。


■アニメーション製作・Production I.G

作中もだけど特にオープニングが気合入り過ぎで、当時開いた口が
塞がらなかった。

検索 攻殻機動隊 S.A.C Origa - inner universe OP : Ghost in the? Shell

検索 攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG Origa - rise - YouTube


■これが原作漫画だと?

原作を超えたとかよく聞くし、原作は見る気も起きない。


■士郎正宗

原作者の別の作品「RD潜脳調査室」を見た時の、俺の落胆っぷり
といったら・・いや、そんなものは存在しなかった。


■周囲で影響を受けた人は数知れず

急にハッキング系の本を読み出したり、サリンジャー作品を読み出し
たり、作品に出てくる用語をネタとして使いまくる人々。自分がよく使用
したのは「~と囁くのよ、私のゴーストが」

人気があったのは光学迷彩

検索 光学迷彩 ニコ大百科


■STAND ALONE COMPLEX

独立した個人が結果的に集団的総意に基づく行動を見せる社会現象
孤立した個人でありながらも全体として集団的な行動をとる


この作品は色々な部分を作ってる人々が、他の部分のあまりの出来の
良さに影響されて、普段の実力以上の仕事を、創作への熱意を燃やす
事になった、そう解釈しています。

「どんな環境でどんな仕事にも真剣に取り組む人」は非常に立派です。

しかし、やはり他がダレていたり、打ち込む価値が無いと感じてしまう
と、どうしてもやる気が無くなる、人間とはそういうものです。


我々の間には、チームプレーなどという都合の良い言い訳は存在せん。
有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。


製作側がアニメをどういう風に作っていくかは知らないので、ただの
妄想。

スタッフ全員本気で良い仕事し過ぎて、自分だけ手が抜けなくなった、
というより自分も感化されて本気になった、攻殻機動隊製作委員会に
はそれがあったと思う。

質の良い原作ありきで、更にスタッフ個人の良い仕事し過ぎ、頑張り
過ぎによる相乗効果、その成果こそが

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」だと、自分は信じている。


■書き直したい

暑苦しい駄文を大分カットしてすっきりしたけど、全部書き直したい。

でもそんな事をするなら、最初から全部見ないと・・。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 120
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

道化か、それとも英雄か

ProductionI.G制作。

サイバーパンクの金字塔、
至高の映像体験とジャーナリズム。
日本が誇る傑作SFサスペンス。

未解決企業テロが続出し、
セラノゲノミクス社社長が誘拐された。
数多くの電脳化による弊害、
捜査は錯乱の様相を呈している。
{netabare}隠蔽された告発、駆逐された正義。{/netabare}
サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」、
シンボル化されたポップアイコン。

自我の並列化の果てに何があるのか?
{netabare}オリジナルの不在、踊る模倣犯、
広大なネットの海で暗躍するものたち。
そして真相は闇に葬り去られる。{/netabare}
今こそ「笑い男」事件の全貌を暴け。

手に汗握る銃アクションに興奮する。
近未来社会を通じて描かれる現代の諸問題、
世界観が驚くほどの想像力で構成されている。
何というのか…心底、面白くて眩暈がする。

道化か、それとも英雄か。
正義の行方は何処へ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 87
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

リズミカルな社会派アクション

原作未読。

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス]」
http://www.anikore.jp/anime/475/

「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」
http://www.anikore.jp/anime/588/

「攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society[ソリッドステートソサイエティ]」
http://www.anikore.jp/anime/1635/


上記のシリーズの1作目。
2030年、電脳化やサイボーグ化の技術が発展した時代。
「公安9課」と呼ばれる対政治犯の組織の物語。


社会派アニメです。
小難しい単語がたくさんでてきますので、適当には見られません。
実際、辞書を引いた単語がいくつかありました。


1話1話が、世界観とマッチしたドラマ。
完成度が非常に高いです。
そして、基本的に1話完結なのに、続きが気になります。
これは、世界観を小出しにしているのが鍵。
世界の姿を小刻みに見せていくことが、「引き」の代わりになっているんですね。


そして、リズムの良さもポイント。
難しい内容のあとには簡単なシーンを。
簡単な内容のあとには難しいシーンを。
話の難易度を調節することで、マンネリ化やギブアップを防いでいます。

文章に例えてみます。

ひらがなやカタカナばかりのぶんしょうのばあい、かんたんによめますが、ながしてよまれやすいです。
逆に漢字の多い文章だと読み難く最後迄見て貰え無い可能性が高いです。
したがって、ひらがなを主体にして、たまに難しい漢字を入れることで「引っかかり」を作る。
これが、読み手の意識を、内容に集中させるための有効な手段です。

攻殻機動隊の場合、良質なアクションシーンが、ひらがなの役割を担っています。
そして、会話の内容で「引っかかり」を作っています。
おかげで、話に入り込みやすく、興味が持続しやすい仕組みになっているわけです。


ただ、そこまで順位が高い作品かなぁ? というのが率直なところ。
面白いと感じたのは間違いないんです。
でも、消化不良ぎみ。
テーマがぼんやりとしているからだと思います。


{netabare}「デジタル化した心」{/netabare}と{netabare}「心をもった機械」{/netabare}、このふたつにどんな差異があるのか。
外枠に触れてはいるものの、まだあいまいです。
主題にもう少し踏み込むことを期待して、続きも見てみたいと思います。

{netabare}
この作品って東のエデンと繋がっているんですよね。
先に出たのは攻殻機動隊ですが。
{netabare}
ジュイス{/netabare}がタチコマになるなんて。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 60

84.0 4 サイバーパンクアニメランキング4位
電脳コイル(TVアニメ動画)

2007年春アニメ
★★★★☆ 3.9 (1966)
11135人が棚に入れました
今よりもちょっと未来…子供たちの間では街のどこからでもバーチャル世界=コイルに接続できる電脳メガネが大流行していた。小此木優子(おこのぎ ゆうこ)は、小学校最後の夏休みを前に、父親の仕事の都合で最新の電脳インフラを擁する地方都市・大黒市に引っ越すことになる。
優子は、その街で出会った友達と電脳空間で次々と巻き起こるフシギな出来事を体験する…。

声優・キャラクター
折笠富美子、桑島法子、矢島晶子、小島幸子、斉藤梨絵、鈴木れい子、野田順子、小林由美子、梅田貴公美、山口眞弓、沼田祐介
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

子犬デンスケ

マッドハウス制作。

最新の電脳設備を備える大黒市へ、
引っ越ししてきた小此木優子(ヤサコ)、
祖母の探偵局の一員となったヤサコは、
仲間とともに行方不明のペット捜索を開始する。

AR技術が普及する世界と地方都市の怪談、
現実と仮想空間とに生息する不思議な生き物たち。
大黒市ではオカルト的で奇妙な事件が多発している。

数多の謎が散らばり物語を牽引し、
練りこまれた脚本と構成の妙により、
最後まで集中力を切らさず楽しめます。

{netabare}絵日記に書かれた数字と鍵穴の絵、
イリーガルの観察が、
少女の失踪事件の真相へと繋がっていく。
あちら側に消えてしまった少女!? {/netabare}
ホラー、サスペンス要素が強く楽しめます。

子犬デンスケが良いですね。
自身を顧みず危地へと飛び込んでいく、
誰よりも勇敢で、優しいのです。
愛くるしいキャラクターだと思います。

一見の価値ある物語でしょう、感動しました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 63

お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ナチュラルメイク

NHKアニメを観て感じる事なんですが、世界観の魅せ方とメッセージの伝え方が旨いなと大体思わされる。本作も設定自体は割と複雑設定ですが、なんと言いましょうか、素材の良さを潰さない為に無駄な細工をしない点でしょうか。化粧で言えばナチュラルメイクとでも言うべきか、逆に普段厚化粧作品を観ているから逆にそう感じる部分もありますが

電脳物質を目視する事が出来る電脳メガネ。その他様々な電脳アイテムを駆使して描かれる日常世界。物語が動きだすのは中盤からで、おやこれは一体どこへ向かっているの?と感じたのは杞憂。後半怒涛の伏線回収と訴えたいメッセージ、感動シーンは纏まるべくして収まった印象。

ただ、前半何となく観ていた時に本作の魅力が詰まっていると感じられた。往々にして乱暴なやり方(戦闘、伏線回収、世界観)がアニメには少なからずほころびが出るものですが、本作は極めて高水準だった。電脳メガネシステムのビームは生物には打たないとか、パトロールロボットの行政不可侵領域等々、何気ない配慮がなされていて、舞台設定も駄菓子屋で電脳アイテムが買えたり。電脳って言う設定に親しみやすさを感じさせる細工は見事。

その一方で、小学六年生と言う微妙な年頃の描写もさりげなく繊細で、子供向けアニメとして見てる視点の一方で、青春アニメとしても、また電脳世界においては大人向けと、様々な側面から捉えられる世界観と同時に、様々な年齢心情に浸れる、微妙な機微の描写は中々に味わえないものに感じる。

メッセージとしては、触れられるものを大切にと言うセリフのくだりから、またインターネッツ系の警鐘か、、とも思ったのもつかのま、逆のメッセージで来たラストはこれ以上ない終わり方でしょう。よくを言えばもうちっとエンタメ性を加えてくれれば、と、、厚化粧を求めてはいけませんね。

※ナチュラルメイクは何気に厚化粧だそうです。何となく分かってもらえれば幸い

投稿 : 2024/05/11
♥ : 54

九条 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

怒涛の超展開。これぞ、NHKの本気。

ヤサコとイサコを中核に電脳メガネに関わる少年少女の目線でARの普及した近未来世界を描いており
謎と不思議に満ち溢れる未知数概念を、都市伝説や専門用語の多用により、効果的に具現化している。
シュールなメッセージ性を根幹に斬新かつ洗練された各種設定など、視聴者を釘付けにする要素満載。
緻密かつ丁寧なストーリーも然ることながら、怒涛の超展開を繰り広げる近未来系SFアニメの最高峰。
特に序盤から中盤にかけ散布された伏線を巧みに利用・回収する終盤の展開は圧巻に次ぐ圧巻であり
表向きは子供向けの顔をしながらも、大人が鑑賞するに十二分に耐え得る汎用的な内容となっている。

現実と虚構の狭間で揺れ動く思想・価値観の変化を通じ、ジュブナイル的成長が顕著に描写されており
それと同時に、子供・大人の分け隔てなく巧い具合に近年のネット社会に対する警鐘が鳴らされている。
ただし、ユーモアも込められている故、堅苦しい感は皆無に等しく、ビジョンの在り方が示唆されている。
コミカル・ハートフル・シリアス・ミステリー・ホラーなどジャンルも幅広くSF大賞・星雲賞など数々の賞を
受賞するだけあり、どれもこれも一級品のレベル。因みに、第12話「ダイチ、発毛ス」は、SFファン必見。

また、小難しいストーリー構成とは対照的にジブリを彷彿させる愛嬌あるキャラを著しく際立たせており
非常に良く動く躍動感・疾走感のある映像は独創性にも富んでおり、本作を象徴する魅力の1つである。
ノスタルジックな雰囲気が漂う昭和風テイストの町並みとサイバーパンクSFの融合も綺麗かつ鮮やか。
しかし、作画以上にストーリーが素晴らしい。心の痛みを乗り越えて、成長していく過程の集大成であり
感動の最終話は、涙なくしては見られないと言えるほど凝縮されており、これぞ、NHKの本気と言える。
新たなシャープな切り口としてアニメ業界以外にも大変意義のある功績・可能性を示した秀作であろう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53

86.4 5 サイバーパンクアニメランキング5位
GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊-ゴーストインザシェル(アニメ映画)

1995年11月18日
★★★★★ 4.2 (1095)
6494人が棚に入れました
他人の電脳をゴーストハックして人形のように操る国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」が入国したとの情報を受け、公安9課は捜査を開始するが、人形使い本人の正体はつかむことが出来ない。そんな中、政府御用達である義体メーカー「メガテク・ボディ社」の製造ラインが突如稼動し、女性型の義体を一体作りだした。義体はひとりでに動き出して逃走するが、交通事故に遭い公安9課に運び込まれる。調べてみると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。

声優・キャラクター
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大木民夫、玄田哲章、生木政壽、家弓家正

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

90年代後半を振り返る ~身体と心の乖離、そして電脳社会の到来~

1995年11月に公開されたアニメ映画。
2008年にはCG映像を中心にリニューアルされています。
監督は押井守監督です。
アメリカのビルボード誌のビデオチャート1位を獲得、
「マトリックス」を始め、様々なハリウッド映画に多大な影響を与えた超本格SF作品。

風の噂によると押井守監督は、熱海の自宅を建てる為にこの仕事を引き受けたとか何とか。
まぁ風の噂ですよw

簡単なあらすじを言うと、西暦2029年。
他人の電脳をハッキングして人形のように操る
国際手配中の凄腕ハッカー、通称「人形使い」を
主人公草薙素子(くさなぎもとこ)が所属する公安9課が追っていくという話です。

電脳化というのは、脳にマイクロマシンなどを埋め込み、
そこからネットワークに接続できるといったようなもので、
主人公の草薙素子も電脳化、
さらには義体化(簡単に言うとサイボーグ化)している存在です。

もの凄くざっくりと本作の紹介をするとですね、
この人間と機械の中間のような存在の草薙素子が、
記憶すらもデータとして扱われる機械と人間のボーダーレス化が進んだこの世界で、
「本当に自分は人間なのか?」と
自己のアイデンティティを問うて葛藤していくという話です。

本作はよく、難解であるとか、哲学的である、なんて表現がされますが、
哲学的かどうかというのは一旦置いておいて、
少なくとも難解であるとは思いませんでした。
その当時観ていたら、難解だと思ったでしょうけど、
現在の視点から言えば、非常に馴染みの深いテーマなんですよね。
つまり、本作のテーマは90年代後半に、アニメだけでなく社会全体の問題として
再三再四に渡って取り扱われてきたということです。

では、ここで90年代後半とはどのような時代だったのかを
ちょっと振り返っていきたいと思います。


押井守監督作品によく見られるテーマ、
いや、ひょっとしたら押井守監督の哲学なのかもしれませんが、
「現実と虚構の境界線の曖昧さ」

90年代後半はまさにそのテーマを現実として目の当たりにした時代でした。
本作公開年である95年は、1月の阪神・淡路大震災の天災に始まり、
3月20日には、国内史上最悪の人災と言われたオウム真理教による地下鉄サリン事件発生。
これまでは、創作物の中の出来事と思っていたような事件が、
今現実に起こっていて、
TV画面越しにそのショッキングな映像が映し出されていたのです。
教祖の言うことならば、どのような凶行も実行してしまう心を失くした信者たち、
こういった側面からも盛んに議論が交わされていました。

1997年には、神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)が発生。
自らを「透明な存在」と表現した当時14歳の少年が、
残虐無比な殺傷事件を起こし、日本中を震撼させます。

そして、街では
「身体と心は別物だから」と言わんばかりに少女たちは身体を売って、
援助交際は社会問題として取り扱われていました。

極めて不安定な状況に置かれた価値紊乱の時代。

また、1995年11月23日Windows 95日本語版を発売。
これが爆発的なヒットを記録し、
これまで夢物語と思っていたネットワーク社会が
すぐそこまで迫っていることを、一般層も意識せざるを得なかった
過渡期を迎えていました。

当時、ネットワーク社会が本格的に到来したら
日本はどうなってしまうのかなんてことは誰にも分からないことでした。

分からないということは、それは不安であり、恐怖でもあるのです。
ましてや、この時代は上述したように
「身体と心の乖離性」が大きく取り扱われていたわけですからね。

1997年にリリースされたサザンの「01MESSENGER ~電子狂の詩~」という曲があります。
これはPCやインターネット社会に対しての歌なんですけど、
ちょっと聴いてみましょうかw

ジャッジャッジャッラチャ~(前奏省略)

「君はいったい誰なの?」

はい、ストップ!!
ね、端っからこれですよ。

ネットワーク社会=仮想世界=そこに本当の自分など存在しない(本当の自分とは?)
もうこういう論調が当たり前だったわけです。
そしてそれは本作のテーマでもありますね。

90年代後半のアニメ作品を見ても、
95年10月に放送開始された「新世紀エヴァンゲリオン」は、
「身体と心の乖離」「本当の自分とは?」
これがテーマになってますし、
98年7月に放送開始された「serial experiments lain」なんかは、
まさに電脳仮想世界と現実世界の狭間で「本当の自分とは?」を
問うていくような作品なわけです。
厳密に言えば、本作とこれらの作品は似て非なるものなのですが、
それはまた別の機会に語ることにしましょう。


さて、90年代後半を振り返ってきたわけですけど、
こういう時代に生き、その当時の作品に触れてきた私にとっては、
本作のテーマというのは、難解でも何でもなく、お馴染みのテーマでした。
「90年代後半なんてまだ自分は生まれてないよ!」という方でも、
おそらくこういったテーマを扱った作品に触れたことがあると思います。

じゃあ、総括していきますよ。
政治的亡命とかODA要請とかの外交問題は何となくの理解で結構です。
公安9課と6課の内部コンフリクトについても何となくの理解で結構です。
専門用語? もちろん何となくの(略)
これらは主テーマを際立てせる為の、物語に重厚さを持たせる為の
ただの舞台装置と捉えてしまいましょう。

そして主テーマは、今現在の視点で言えば、非常に分かりやすいと思います。

細部までこだわり抜いた躍動感のあるアクションを楽しみ、
当時の技術の粋を尽くした映像を楽しみ、
物語の結末はどうなるのかをワクワクしながら楽しむ。

難解だと思えば、難解になりますけど、
シンプルに捉えれば、決して敷居の高い作品ではないと思います。

ただ、レビューを書いている人だと特にだと思いますが、
作品を網羅的に、構造的に理解しようとする人は結構多いんじゃないですか?
けれでも難しい所は何となくの理解でいいと思いますよ。

本作を視聴して、「この作品はそんな単純なものではない!」と思ったのならば、
各種考察を是非楽しんでみて下さい。
哲学的な視点から、宗教的な視点から、
台詞回しから、香港という舞台1つとっても、
本作は、それができる作品です。

95年当時、間違いなく衝撃的な作品だったでしょうし、
現在の視点で言っても、アニメ史に残る名作として語り継がれていく作品だと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 65
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

世界5分前仮説

押井守監督によるの攻殻機動隊シリーズ劇場版第1作。
劇場版は、テレビ版の「攻殻機動隊 Stand Alone Complex(http://www.anikore.jp/anime/475/)」のパラレルワールドという設定です。
世界観がよく似ているのでどちらから入っても大丈夫です。
しかし、テレビ版から見たほうがとっつきやすくていいと思います。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 → http://www.anikore.jp/anime/1798/

イノセンス -INNOCENCE → http://www.anikore.jp/anime/1864/


人間の脳が電脳化され、ネットワークで接続されるようになった時代。
人形使いと呼ばれるスゴ腕のハッカーが、次々と電脳をハッキング。
それを追う公安9課(攻殻機動隊)の物語。


ガッチガチのシリアスなストーリーです。
テレビのシリーズとは異なり、タチコマという癒やし要素が存在していません。
もともとの硬派なアニメがさらに硬くなりました。


目立つ特徴は独特な間。
多くの時間がBGMと動画だけで占められています。
映像と音楽で表現される「行間」です。

しかし、いったんしゃべり出すと嵐のようなテーマ展開。

キーワードは、

・全と個の境界
・生命の定義
・現実と夢の境界

といったところです。
見るだけでくらくらしますね。
でも、そんな哲学を上手に表現するのが、このアニメの持ち味です。


みなさんは、「世界5分前仮説」ってご存じですか?
文字通り、この世界は5分前に生まれたという話です。

「世界は5分前に、5分前の状態で作られた」

別に30秒でも1時間でもいいです。
要するに、「記憶」は本当にあったできごとなのか、それとも植え付けられたものなのか。
それは証明できないという理論です。

このアニメでも似たようなことを表現しています。

自分という個が昔から確かに存在し、今も存在している。
それを証明する手立てはあるのか?
また、これからも個を存続させることはできるのか?

それに対していろんなアプローチをしているのが本作。
テーマは「アイデンティティ」。
カギとなるのが先ほどのキーワードです。


何やら難しいことを書きましたが、簡単に言えば、
{netabare}
素子(もとこ)「機械化しすぎてワケがわからなくなったけど、自分って本当に人間として生まれてここにいるの?」
人形使い「記憶があるんだから自分は人間と変わりがない。でも、自分をコピーで増殖しても進化がない」

機械に近い人間と、人間に近い機械。
さーて、そんな2者が合体したら答えは出るのかしら?
{/netabare}
ということです。

なかなか面白いテーマだと思います。
2度、3度と見ると、テーマにつながる新しい発見があります。
余韻が残り、いろいろ考えをめぐらせてみたくなる、そんな作品でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 59

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「私」を規定するもの

押井守監督作品。

種としての生命は、
遺伝子という記憶システムを持ち、
人はただ記憶によって個人たり得る。

様々な外部装置の進歩により、
記憶の改ざんも可能な世界にいる人にとって、
「私」を他人に「私」であると、
証明できるものは驚くほど少ない。
「私」を規定するものは何だ?

混沌の世界に展開される、
押井守×士郎正宗の哲学、娯楽との邂逅。
当時の粋を尽くして描かれる虚構と現実、
現代もなお、この作品に追い付けてはいない。
私たちの自我に対する根源的な問いかけ。

人と機械の境界線が曖昧な時代。
原初の海から生命が誕生したように、
広大な情報の海は何を生み出し育むのか!?
正真正銘、傑作シリーズの始まりです。

もう一度問わねばなりません。
「私」を規定するものは何だ?
何を持って「私」であると証明できるのか?

投稿 : 2024/05/11
♥ : 57

78.3 6 サイバーパンクアニメランキング6位
攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society[ソリッドステートソサイエティ](OVA)

2006年9月1日
★★★★★ 4.2 (890)
5467人が棚に入れました
「個別の11人事件」後、草薙素子が公安9課を去って2年経った2034年。草薙が失踪したことにより組織の変革を余儀なくされた9課は、課員を大幅に増やし、捜査活動やその方針にも変化が見られる。そんな中、シアク共和国残党の特殊工作員によるテロ計画が判明。実質的リーダーとなったトグサ率いる9課は捜査を開始。ところが当の工作員達が次々と謎の自殺を遂げる。新浜国際空港では、9課の目の前で1人の工作員が「傀儡廻が来る!」と謎の言葉を残して自殺する。\\n一方、単独でテロ事件の捜査を行っていたバトーは草薙と再会する。草薙はバトーに「Solid State には近づくな」と謎の警告をする。捜査が進むにつれ、バトーは草薙が「傀儡廻」ではないかと疑い出す。
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ラストが不完全燃焼感。残りはGOOD!

2期の続きです。
約105分のOVA。

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX[スタンドアローン・コンプレックス]」
http://www.anikore.jp/anime/475/

「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」
http://www.anikore.jp/anime/588/

「攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society[ソリッドステートソサイエティ]」
http://www.anikore.jp/anime/1635/

1期レビュー → http://www.anikore.jp/review/646727/
2期レビュー → http://www.anikore.jp/review/667295/


2期からさらに2年が経過した2034年。
公安9課は、連続自殺、麻薬などの事件をひも解いていく。
その途中で現れる「傀儡廻(くぐつまわし)」というキーワード。
傀儡廻の正体にせまりつつ、少子高齢化や社会保障問題といったテーマにつながっていく。


ハラハラドキドキさせつつ、余韻が残るストーリーでした。
さすが攻殻機動隊。

実は最初に見たとき、すべて見る時間がありませんでした。
そこで、きりがいいところまでのぞき見しようと思ったんです。
それがそもそもの間違い。
53分まで止まりませんでした。
おかげで約束の時間に思いっきり遅れました。

……私が悪いですね、はい。


止まらない面白さ。
構成がうまく、アクションシーンも上質で、見ごたえが十分でした。
1期や2期と比べると、動き重視かもしれません。
{netabare}
突入のシーンはかっこよかったですね!
スーツ vs. タチコマ、心理戦も取り入れた良質なアクションでした。
{/netabare}


ただ、終わり方が少し強引だったかなと。
特別なことは何もしていないし、根本的な解決もできていません。
勝手に話が終わった印象があります。
{netabare}
傀儡廻の正体は推理できます。
素子(もとこ)が絡んだ集団的無意識の集合体なのでしょう。
個々の無意識が一つになることで、まるで意識を持っているかのように動くと。
しかし、決定的な証拠がありません。
そして、それがどうして最初の自殺の引き金になるのか。
すっきりしない点があります。
{/netabare}
また、自殺や麻薬といった話から、少子高齢化や社会保障というテーマにかわっています。
途中で論点をすりかえている気がするんですよね。
私の理解力がないだけかもしれませんが、一度見ただけでは疑問が残りました。
もう少し争点をはっきりさせて欲しかったです。


最後にひとこと。
作中にこんなセリフがあります。

「10の力で1つの事件を解決する組織」から「8の力で3つの事件を解決する組織」へ。

私もこの考え方には大賛成でした。
私は効率を求める合理主義者なんだなと実感しました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 42

風来坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

素材が生きた!

TVシリーズ1期である「攻殻機動隊 STAND ALONE
COMPLEX」のレビューでは26話間の構成のgdgdに
よって素材が生かし切れていないという感想を書きました。

しかし、この劇場版では構成がgdることがなく、良素材が
生きた気がします。2時間弱と劇場版のアニメ映画としては
結構長い作品ですが、TVシリーズのように各話の構成という
部分がなかったのが勝因でしょうか?

それにしても細かい描写まで丁寧に描かれている妥協のない
作り込みには感服。難解な造語(?)が沢山出てくるのは
相変わらずですがw

私はTVシリーズ2期「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 」を
飛ばして本作を観てしまいましたが、時系列的にはその後の
物語のようですので順を追った方が良いかもしれません。
いきなりTVシリーズを飛び越して本作に飛び込むのは自殺行為
なので止めましょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 23

こたろう さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

”らしさ”が損われない100分間

攻殻機動隊のOVA。時系列としてはTVシリーズ2期の[S.A.C. 2nd GIG」の2年後にあたります。
おなじみの公安9課のメンバーが活躍する100分のストーリーですが、社会問題や政治色の強いアダルトな事件背景。攻殻機動隊らしいカラーはなんら損なわれていません。
映像としてのクオリティの高さもいわずもがな、です。


お話は、あるテロ事件をきっかけにして「傀儡廻」と呼ばれるハッカーの正体を追っていくストーリー。
相変わらず現代を風刺したような皮肉が込められてます。未来の電脳社会の筈なのにフィクションだと割りきれない「怖さ」を感じさせるのがお上手です。
そんなに長くない尺で見応えのあるお話に仕上がってます。

ネタバレになるので詳細には触れませんが、TVシリーズを知っておいた方が、楽しめる内容です。
この事件そのものは独立した話ですが、人間関係や前に起こった事件の件がチラホラ。1期、2期のご視聴後に、ちょっと間を置いてご覧いただく事をオススメします。
まぁ、予備知識なしで本作を見る人があまり居るとも思えませんが・・・・


とにかく、「嗚呼、公安9課がかえってきたー」って気分が味わえます。
攻殻S.A.Cファンのための”おかわり”作品でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 21

80.8 7 サイバーパンクアニメランキング7位
AKIRA アキラ(アニメ映画)

1988年7月16日
★★★★☆ 4.0 (1080)
5138人が棚に入れました
1988年7月、関東地区に新型爆弾が使用され、第三次世界大戦が勃発した。そして31年―東京湾上に構築されたメガロポリス=ネオ東京は、翌年にオリンピック開催を控え、かつての繁栄を取り戻しつつあった。2019年のある夜、ネオ東京郊外の閉鎖された高速道路に侵入するバイクの一団があった。健康優良不良少年、金田をリ一ダーとする職業訓練高校の生徒達だ。一団は無人のはずの路上で掌に26と記す奇妙な小男と遭遇、先頭を行く島鉄雄は転倒、負傷する。この26号=タカシは、アーミーと対立するゲリラが求める軍事機密=アキラとまちがわれ、軍事基地にあるラボ(研究所)から連れ出され、アーミーに追われていたのだ。あっけにとられる金田達の眼前に突如軍用ヘリが下降、26号と同じようなしわだらけの子供27号=マサルの乗るカプセルと大佐が降りて来て、26号と倒れた鉄雄をへリに収容し、飛び去った。

声優・キャラクター
岩田光央、佐々木望、小山茉美、石田太郎、玄田哲章、鈴木瑞穂、中村龍彦、伊藤福恵、神藤一弘
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

放熱、スピン、衝動

生涯最高得点はこれで決まり。

圧倒的画力で表現されたセルアニメ。
緻密に描かれた摩天楼や廃墟、
モブキャラまで動く凝りに凝った映像、
序盤のバイクシーン、暴徒化した群衆、
そのままアニメ史に残る圧巻のシーンだ。

大友克洋監督が敬愛する、
アメリカンニューシネマと、
サイバーパンクのハイブリッドな映像。

人工物と瓦礫で溢れたネオ東京、
翌年にオリンピック開催を控えている。
{netabare}暴力とドラッグが少年少女を蝕む、
アニメが触れなかった悲しい現実である。{/netabare}
希望もない少年たちの抵抗、放熱、衝動、
生命とは創造的活動として飛躍するものだ。
これはそんな少年たちの物語でしょう。

都市型の宗教、崩壊のカタルシス、
{netabare}途方もない力に翻弄され臨界点が迫る。
巨大な廃墟の緊張は頂点に達し瓦解し、
アキラを巡る壮大な物語は幕を閉じる。{/netabare}

どこまでも色褪せないSFアニメの金字塔。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 67

えんな さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

祝!2020年東京オリンピック

世界的にAKIRAって有名ですよね 何度かTVでやってたのを思い出します
主人公の名前がアキラで超能力者と思いきや・・・でもそう思ったの私だけじゃないですよね?

1982年に東京は爆弾で?壊滅するも2020年オリンピックに向けて開発が進んでる設定・・・
え!?2020年オリンピックって・・・リアルすぎる!
88年の映画ですけど、すでに東京オリンピックを予言していたのか・・・

超能力バトル系といえばそうだけど、AKIRA君の悲しみというか憤りをもっと出せばいいのに
声優に子役を使った子供役もなんか正直イマイチ・・・

でも見所はたくさんあると思います
革新的なバイクなんか未来を感じさせますよね

皆さんも今一度AKIRAを見てみませんか^^

投稿 : 2024/05/11
♥ : 55

文葉 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

感想

アニマックスで一度視聴するも、残酷なグロシーンが耐えられなくて一度断念
その後、半年くらい空いてから再度気になり視聴

冒頭のバイクシーンが記憶に残ってます あのBGMが頭から離れない・・
作画の書き込み量(背景も半端なく凄い)が凄まじくって動きも滑らかで凄い
海外ウケが良いのも納得です このサイバーパンクな世界観がハマると抜け出せそうにないですね

原作を読んでいないので、ストーリーが理解しづらかったです
友人によると「原作の漫画見たほうがわかりやすい」というので機会があれば読んでみたいですが、やっぱり残酷なグロシーンが多いのでもう一度見るには勇気がいるというか「ピーキーすぎてお前には無理だよ」と、言われてしまいそうです

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52

76.1 8 サイバーパンクアニメランキング8位
楽園追放 -Expelled from Paradise-(アニメ映画)

2014年11月15日
★★★★☆ 4.0 (887)
4648人が棚に入れました
われわれはどこから来たのか われわれは何者か

われわれはどこへ行くのか――。

地球はナノハザードにより廃墟と化した。

その後の西暦2400年、大半の人類は知能だけの電脳世界ディーヴァに生きていた。

電脳世界に住む捜査官アンジェラは、

闘力を誇るスーツ・アーハンを身につけ地上に初めて降り立った。

そして地上調査員ディンゴと共に地上のサバイバルな世界に旅立った。
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

重力では好奇心には勝てない

オーソドックスな王道SF作品。

人口爆発と資源問題、
地上はナノハザードにより廃墟と化した。
地上を捨てた大半の人類は、
電脳空間ディーヴァに移行し、
恒久の平和を手に入れる。
{netabare}そのディーヴァに地上からの不正アクセス。
目的正体不明のフロンティアセッター。
不安に駆られるサイバースペースの住人。{/netabare}
捜査官アンジェラは地上に降り立ち、
世界の謎に迫ろうとしている。

世界観の作り込みとシナリオが、
上手にまとまっていて好感が持てる。
大切なのは物語なのでしょう。

相反する2つの価値観、
{netabare}進化の次のステージに進むこと。
肉体の檻の中で生きていくこと。{/netabare}
管理され制限された精神世界と、
空腹に疲弊し、病気になる地上の重たい肉体。

そう言えば草薙少佐も、人が人足り得るのは、
好奇心あってこそだと言っていましたね。

銀河の果てまで、旅立とう。
勇敢なるその一歩が新しい歴史を作るのだ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 66

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

3DCGの進化と可能性・・・でも結局はアンジェラタンの尻!

2014年11月公開のアニメ映画。
監督は水島精二氏、脚本は虚淵玄氏、
劇場用フル3DCGアニメーション。

もし、あなたがアニメ評論家ならば
本作は絶対に視聴しなければならない作品でしょうw
というのも「3DCGの進化と可能性」というのは
現在必ずと言ってもいい程アニメ評論の俎上に乗せられるホットトピックだからです。
従って3DCGアニメーションの「蒼き鋼のアルペジオ」や「シドニアの騎士」の
視聴もマストですw いや、アニメ評論家ならではですけどねw

2014年現在今まさにアニメ業界は大きな変革期を迎えており、
私たち視聴者はその渦中を目の当たりにしている最中なのかもしれません。
それだけ3DCGの進化は著しいということなのでしょう。

もし本作のあるべきレビューなるものが存在するならば、
本作に照らし合わせて3DCGの技術論を語っていくというものなのでしょうが、
無論私にそのような知識はございませんw
なので、ここでは水島精二監督の言葉を引用したいと思います。

「いままでの現場だと、リスク回避のため2Dのアニメーターが
レイアウトとラフモーションを作り、
それを元に3DCGアニメーターが作業をするという手法を取っていた。
しかし、それだと3DCGアニメーターの実力も分からないので、2Dアニメーターを介さず、
直接3DCGアニメーターに画づくりをしてもらうことを提案した」

また、水島精二監督は本作の制作を通して確かな手応えを感じたのか
このような言葉も残しています。

「キャラクターの表情や表現も向上していて、
 今回の制作を通じて、3DCGで萌えアニメが作れる確信を得た」

新時代の到来を期待せずにはいられないお言葉です。

これは3DCGが2Dを駆逐するということではなく、
水島精二監督も相補的な関係を望まれているようです。
両者が相互に刺激を与え合うことによって、
作業の効率化、優秀な人材の確保、
そしてより質の高い作品の提供という循環が理想的なのでしょうね。

さて、このような予備知識を得てしまうと視聴前のハードルというのは
かなり高めに設定されてしまいますが、製作陣もそれは望む所なのかもしれません。

というわけで簡単なあらすじを(知っている方は飛ばしてください)。

西暦2400年、地上は荒廃化している中、
人類の98%は肉体を捨て自らをデータ化し、
電脳世界「ディーヴァ」で豊かな生活を謳歌していた。
ある時「ディーヴァ」へ地上からハッキングを受けるという事件が起こり、
ディーヴァ捜査官アンジェラ(CV:釘宮理恵)は
生身の体(マテリアルボディ)を纏い地上へと降り立つ。
地上調査員ディンゴ(CV:三木眞一郎)と共に地上のどこかに身を潜めている
ハッカー「フロンティア・セッター」を追っていくという話です。

で、感想なんですけど、あらすじを読んでもらえば分かるように
どこかで聞いたことがあるような話ですし、
最後まで観ても特段語るようなことはございませんw 
飽きずに最後まで楽しめましたけど「まぁおもしろかったです」で感想は終了ですw

ストーリー自体は凡庸かもしれませんけど見所は結構あります。

ディンゴ役の三木眞一郎さんは物語シリーズで貝木泥舟役を演じておられますが、
非常に人間味溢れるところなんかは貝木泥舟に通じるものがありますw
そんなディンゴとアンジェラ(くぎゅうううううう)のやり取りなんて
ニヤニヤしながら観てましたw
「か、勘違いしないでよね。別にあんたのことを認めた訳じゃないんだからね!(赤面)」
こんな台詞は多分なかったような気がしますが、まぁくぎゅってましたねw

人間味溢れると言えば自我を持った人口知能(CV:神谷浩史)なんてのも居て、
この辺りは「翠星のガルガンティア」を彷彿とさせます。
テーマも似通ったところがありますね。

利便性を享受するも実質的には電脳世界の運営に支配されながら生きていくのと
不便性を伴いながらも自らの生き方を自分で決めることができる地上での生活とでは
どちらが真に豊かなのか?
あるいは合理性、効率性のみを追求する人間と
遊びの心を持ち合わせている人口知能とではどちらが人らしいのか?
とかそんなテーマを投げかけてはきますが、
私感としてはあくまでエンタメの範囲内です。
特に哲学的な重厚な作品という印象は受けませんでした。
製作陣もライトなSFということは意識されていたようですけど、
その通りの作りになっていると思います。気軽に観れると思いますよ。

そしてやはり本作の注目ポイントはセルルックのフル3DCGアニメーション映画ということで、
キャラの表情などがどれだけ自然な出来なのかということになりますが、
これはかなり高いレベルで仕上がっていると思います。
前知識なしで視聴すればもしかしたら3DCGということに気付かないレベル
・・・というのは流石に言い過ぎかもですが、私がブヒるには十分でしたw
それでも気になる箇所というのは存在しましたし、
激情だったり鬼気迫る表情ということで言えば線がちょっと軽いですね。
「キルラキル」なんかは情念のこもったGペンタッチの線で迫力満点だったのですが、
まぁそれは極端な例とはいえ、あっさりし過ぎて迫力不足な点は否めませんでした。

戦闘シーンも爆発だったり構図やアングルはさすがに3DCGという出来なのですが、
建物が若干ジオラマっぽいなとか細かい所を観ていけば
まだまだ課題は残っているのかもしれませんね。

しかし、一番の見所はアンジェラタンの揺れる乳に、尻!尻!尻!尻!(尻の4カード)ですw
真面目なテーマを扱っているだけにこういう露骨なサービスカットが
必要なのかどうかは疑問符がつくところなんですが、
これも技術の進化を示す為には必要なことなのかもしれませんw

長々とした文章になってしまいましたが、
私が本作で最も印象に残っているのは結局「アンジェラタンの尻」ですw

とはいえ、「3DCGの進化と可能性」という観点で言えば
後々まで語られるであろうエポックメーキングな作品ということになるでしょう。
もしかしたら本作を劇場で観たという歴史の証人になれるチャンスかもしれませんよw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 64

ワタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

極上の娯楽映画。

結論から言うと、今年放送されたどの作品よりも、これが一番面白かった。

ジャンルはSFだが、廃墟と化した地球・電脳世界・人工知能などといった、もはや手垢のついた設定ばかり。
ストーリー的にもこれといった深みも捻りもなく、ましてや大きな仕掛けやどんでん返しがあるはずもない。
でもそんなことはスタッフも重々承知の上で「それがどうした?面白ければそれでいいじゃないか!」
と言わんばかりの、萌えエロとメカアクションに溢れた上質な王道娯楽活劇に仕上がっている。

時間の制約上、アンジェラ・ディンゴ・フロンティアセッターの3人のみに焦点を絞ったのも好判断。
立場が異なる各々の主張が、テーマ語りだけでなくキャラ立てとしてもしっかり機能している。

終盤の戦闘シーンは圧巻の一言。
ここ最近のCGメカアクションでは、マジェプリ・シドニア・亡国のアキトが特に凄いと思ったが
本作はセルルック(3Dを2Dのように表現する手法)という意味で、方向性が若干異なる。
3Dならではの高速戦闘でありながら、2Dの手描き感も味わえるとは・・・!
本作はフルCGアニメだが「2Dこそが至高」と思ってる人に一度観て欲しいと思った。

アンジェラの顔芸一歩手前の鬼気迫る表情や、ワンカットだけあった完全デフォルメ顔なんかも印象的で、
これは専用の表情モーフィングツールを使っているとのこと。手描きと思ったけどホント技術凄いな・・・

一応不満点を挙げると、電脳世界側の描写が薄いところか。
劇中で電脳世界の在り方が肯定されたり否定されたりするが、いまいちピンと来ない。
あとディンゴが完璧超人すぎるかな(歌がアレなのは中の人の問題)。
アンジェラとの掛け合いは面白いけど、アンジェラが一方的に論破されてるだけに見えるのがね・・・w

※※※

作品に斬新さや深みがあるという「だけ」で褒め称えられ、
それらがない作品は特段価値のないものとして格下に位置付けられるという風潮は間違いなくあると思う。
個人的には創作作品である以上、まずエンタメ優先であって欲しいという思いがある。
斬新さや深みに拘り過ぎるあまり、娯楽性が疎かにされるような作品はあまり好きではない。
作者の妙な哲学のせいでストーリーがグダグダになり、キャラがブレまくるなんて本末転倒だろう。

虚淵玄という脚本家には色々思うところがあるが、
その本質はエンターテイナーだということを本作を観て勝手に確信した次第。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 60

75.8 9 サイバーパンクアニメランキング9位
イノセンス -INNOCENCE(アニメ映画)

2004年3月6日
★★★★★ 4.1 (765)
4229人が棚に入れました
草薙素子(少佐)がいなくなって3年後の2032年。
少女型の愛玩用アンドロイド(ガイノイド)「ロクス・ソルスType2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走をおこし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9 課で捜査を担当することになり、公安9課のメンバーであるバトーは新しい相棒のトグサとともに捜査に向かう。
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

詩のようなアニメって表現がしっくりくる

押井守監督による攻殻機動隊の映画版第2作。
1作目の続きです。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 → http://www.anikore.jp/anime/1798/

イノセンス -INNOCENCE → http://www.anikore.jp/anime/1864/


前作とよく似た雰囲気です。
オレンジを基調とした美しいグラフィックとBGM。
独特の間が目立ちます。
また、いったん口を開けば高密度な哲学的テーマが飛び出すのも前作と同様です。


正直、かなり難しい内容でした。
次々に出てくる仏典や聖書や偉人の言葉。
そして、映像による数々のトリック。
1回見ただけでは頭がパーン\(^o^)/です。

雰囲気や動きはいいんですけどね。
いかんせんわかりにくい。
何度も見るのを前提にしたほうがいいかもしれません。


今回の主人公はバトー。
ロボットの暴走によって所有者が殺害されるところから話が始まります。
単なる暴走なのか、それとも仕組まれたものなのか?
トグサやイシカワとともに捜査に乗り出します。
それに前作で{netabare}ネットの世界にダイブ{/netabare}した素子(もとこ)への淡い恋心が絡めてあります。

しかし、はっきり言ってストーリーはおまけみたいなもの。
テーマ性と雰囲気が肝ですね。

テーマは、

「人間と人形の違い」

でしょうか。
前作と似た感じかな?

「機械化された人体」と「疑似体験」がカギをにぎっています。
機械化された肉体は、どこまでが「人間」でどこまでが「人形」なのか。
存在する記憶は、どこまでが「現実」でどこまでが「虚構」なのか。
人間を人間たらしめるのは何か。
器なのか、記憶なのか、その両方なのか。
答えは出していませんが、その境界線のあいまいさを説いています。

しかしまあ、難しかったですね(少なくとも私には)。
前作もそうでしたが、それ以上の難解さ。

・難しい言葉をひもとくのが好きな人
・芸術的な雰囲気アニメが好きな人
・攻殻機動隊が好きな人

この3つを満たしている人に向いていると思います。
なんというか、詩を読み解いている感覚になります。
芸術的なのですが、視聴者に優しくない、そんな作品でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

果てしなく続くイノセントワールド

2004年公開の作品で、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の続編。
士郎正宗氏の原作はあるものの、
監督とシナリオを手掛けた押井守監督が好き勝手アレンジしているので、
押井守監督の作品と言ってしまってもいいでしょうw

視聴前から負け戦は覚悟していましたw
押井守監督フリークの友人の「当時視聴して衝撃を受けた(悪い意味で)」という言葉や、
難解な上、娯楽性は皆無という各方面の評判。
従って、視聴に至るまでの心の準備にかなりの時間を要しましたw

で、視聴したわけなんですけど、視聴直後の私のリアルな感想は
「これ、レビューどうしよう?」でしたw
頭の中が真っ白になる位書くことがないw
気が向いたらレビューを書くというのが私のスタンスなので、
別に無理に書く必要はないんですけど、押井御大の作品ですからね。 
視聴前から書くつもりではいたのですよ。

本作に対して批判的な方の感想を抽出すると以下の様なものになるでしょう。

・CGを駆使した映像美は素晴らしい
・ストーリー性は希薄
・詩や哲学を引用した衒学的な台詞回しにうんざり

映像は確かに圧倒されます。
今敏監督の「パプリカ」を視聴した際も感じましたが、前衛的なアート映像のようです。
でも結局それもストーリー性を伴っていないと、
観終わった時に映像しか印象に残らないんですよね。

本作のテーマは「人間と人形の違い」です。
本作のDVDの特典映像に押井守監督と
ジブリの代表取締役であり、映画プロデューサーの鈴木敏夫氏との対談というのがありますが、
この対談を観た方が本作を観るよりも本作のテーマを理解しやすいと思いますw

この対談で押井守監督が語っていることというのは、
人間の身体は言葉から生まれたのであり、言葉によってしか意識されない。
つまり、身体は言葉であり、名付けられたものでしかない。
言葉で語られることのない人間の外側にこそ本当の身体がある。
人間の外側の身体というのはどこに存在するのかといえば、
それは例えば犬であったり、人形であったりする。
人間は自分が失われた身体の代替物を、あるいは犬に求めている。
そして、人形というのは人間が作り出した観念としての身体である。

押井守監督は病的なまでの愛犬家として有名ですけど、
このようなテーマの着想は愛犬との触れ合いの中から生まれたものなのでしょう。
本作では、その本当の身体を汚すのは人間の醜い欲望ということなのですが、
そのアイディアはおもしろいとは思いますが、正直私にはあまり興味を引かないテーマでした。
いや、これももうちょっとストーリー性を伴っていれば
違った反応になっていたかもしれませんが、
如何せんストーリーがひどい、ひどすぎる!!

私は基本的に娯楽性を重視するタイプですが、
映画に何を求めるのかというのは、人によって千差万別であり、
立脚点の違いによって本作の評価というのも変わってくるものだと思います。

とはいえ、本作だって娯楽性というのを完全に度外視したわけではないと思います。
ただ、作り手のメッセージ性(主張)とストーリー性のバランスが著しく悪いです。
作り手のメッセージ性>>>>>>>ストーリー性では、
例外はあれど、娯楽性なんてまず生まれてこないでしょう。
論語や旧約聖書、哲学者の言葉をこれでもかと引用した
テンポを損なうボソボソとした会話劇も相まって
ひとりよがりの悦に入った作品にしか思えませんでした。

押井守監督フリークの友人曰く
「押井守監督は本当はすべての台詞を引用で済ませたかった」とのことです。
それが本当ならば、「正気か!?」と言いたいところですけど、
思うに、本作の登場人物はいずれも
人間の意識の外側にある本当の身体を持たざる者です。
言い換えると、言葉によって意識される身体の持ち主であり、
言葉に支配されている者たちということになります。
それを際立たせる為の引用ということなのかもしれません。
そして、そうすることによって人間と人形の違い、
つまり人間の意識の外側にある本当の身体というものを、
言葉でなく、感覚で感じて欲しいという狙いがあったのかもしれません。

もうそうなのであれば、おもしろい仕掛けだとは思いますけど、
結局のところ、娯楽性は二の次三の次という作りでは、
「もう自主制作でいいんじゃね?」と言いたくなるのも、むべなるかな、
というのが本作に対する私の印象です。
正直本作に限って言えば、この台詞にはこんな深い意味があるとか、
あの場面に繋がっているとかはどーでもいいです。

鈴木敏夫氏との対談で押井守監督はこのようなことを述べています。
「映画は言葉で語られることによって初めて存在する」

では、私は本作をこう語りましょう。
「莫大な制作費を投じた自主制作的な商業作品です」と。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

人形と犬

押井守監督作品。

「サイボーグ」
それはもう一つの人間の身体。
イノセンスは押井守が言う、
冷たい身体と匂う身体の物語。
それは人形と犬を巡る物語であり、
人の無垢なる他者たちの物語である。

自分が造られたものではないかという疑い。
自分が人形ではないのかという疑い。
どこまでが私でどこからが私でないのか!?
ここでも押井守は「私」について考察する。

バトーは夜の街を彷徨う。
何故、人は人形をサイボーグを創るのか。
何故、人は自分の似姿を制作するのか。
まるで神のような振る舞いであろう。

身体を巡るフェティシズム。

哲学的に射程の長い壮大な物語でしょう。
これが癖になりだすと監督の術中に嵌る。

今でも異様な熱量で書き込まれた、
街の風景が恋しくなり、また観たくなる。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 43

77.0 10 サイバーパンクアニメランキング10位
シリアルエクスペリメンツ・レイン[serial experiments lain](TVアニメ動画)

1998年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (879)
3877人が棚に入れました
コミュニケーション用コンピュータネットワーク端末「NAVI」(ナビ)が普及した現代、中学生の岩倉玲音は、死んだはずの四方田千砂からのメールを受け取る。その日以来、玲音は見えないはずのものを見るようになる。四方田千砂のメールの言葉に興味を持ち、大型の「NAVI」を手に入れるが、それ以来更に奇怪な事件に巻き込まれていく。物理世界(リアルワールド)と電脳世界(ワイヤード)、二つの世界・二人の玲音(lain)が混濁し錯綜する果てにあるものは? 「人は誰しも“繋がれて”いる」「私は遍在する」
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

たくさんいる「私」

岩倉玲音の時代である。

ブゥーーン、ブゥーーーン、
幾度となく強調される送電線のノイズ音。
それは「つながり」のメタファー。

90年代末尾を飾る時代が生んだ傑作。
欝々しい展開にカルト的人気で名高い作品、
そこを乗り越えた先の大団円に感動を覚えます。
ここでの問題提起は「攻殻SAC」へと昇華され、
この偉大な「供儀」の物語は幕を閉じる。

絵柄は古く、演出は静かに進行する。
しかし前半に種を撒き、後半に回収する。
物語の基本に忠実な展開、構成だと思う。

主人公は中学生、岩倉玲音。
{netabare}現実世界と仮想世界の「2人の玲音」、
ある日、自殺した同級生からのメールが届く。
会話もない冷たい家庭の食卓、
自宅前に張り付く不気味な黒服たち。{/netabare}

神の不在、集合的無意識。
何かがおかしい!?何かが始まっている!!

難解でしょうか?いいえ。
我々の側が複雑にさせているのでしょう。
しっかり観ていれば、迷子にはならない。
{netabare}私なりの攻略指南を書かせて頂こう。
英利政美の思考を追え、これだけです。{/netabare}

世界は等しく病んでいる。

文化庁メディア芸術祭優秀賞作品。
ご堪能あれ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 74
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

私と中の人は同一人物なのだろうか

メディアミックス作品。全13話のアニメ版。
「難しいアニメ」として紹介いただいたことで視聴を決意しました。

Q.難しかったか?
A.難しかったです。

おとなしい中学生、岩倉玲音(いわくられいん)の身の回りで起こる、不可解な現象を追った作品。
「lain」とは何か、世界はどうなっているのか、謎を追っていく。


実験(experiment)的であり、かな~り人を選ぶ作品。
笑いなどかけらもなく、描写も無機質で、大衆受けの真逆を進んでいます。

始まるのは幻覚でも見ているようなサイケデリックな日常(?)風景。
グロい影やら、誇張された人物の姿やら、不快なビープ音やら……頭の中は「?」でいっぱい。
教科書的なナレーションによる、オカルティックな歴史の勉強まで流れ出します。

謎が明かされるのは中盤~終盤です。
それまでは、流れる風景と会話を頭に入れる作業です。

そのため、序盤の退屈さは尋常ではないです。

ということで、ダメそうな予感がする時点でやめたほうがいいです。
「合う人には合う、合わない人には合わない」のひとことです。


ただ、「事実は何か」ということも物語の鍵となっています。
したがって、狙ってわかりにくい表現がされています。

また、ストーリーはきちんと進んでおり、結末までしっかり描かれています。
投げっぱなしのお話ということはありません。


作風が合えば問題ないでしょう。
しかし、合わなくても見どころは見つけられます。

この作品はインターネットのあり方について述べていますが、
1998年当時にしては、非常に先見の明があります。

タブレット端末の普及、ネット内で変わる人格。
ハッカー集団「Anonymous」のような存在(ちょっと違いますが)。
特にネット内での人格描写については深く触れられており、主人公の謎にも関わっています。
{netabare}
乱暴に言えば、「lain」はインターネットの集合意識に人格を与えたものといえるでしょう。
そこにいるのは多数の個なのに、ひとつの人格として扱う風潮があります。
言ってしまえば「おまえら」に名前を付けたものに近いかもしれません。

そのため、人格はひとつではなく、攻撃的なもの、悪意に満ちたものも含まれてきます。
{/netabare}

もう一つ、このアニメを今見ると、多くの作品との共通点が浮かび上がってきます。
有名どころだと、

* 攻殻機動隊でいう{netabare}個と全の境界線{/netabare}
* エヴァンゲリオンでいう{netabare}人類補完計画{/netabare}
* まどか☆マギカでいう{netabare}円環の理{/netabare}や{netabare}キュウべぇの意識について{/netabare}

特にまどマギとはストーリーの結末に関わる出来事が似ています。
lainは{netabare}友達を救うために世界を書き換え、ひとり神のような存在になるまどかと、
端末が複数存在する意識集合体であるキュウべぇを足した存在{/netabare}とも捉えられるかも。

ほかにも色んな作品を意識しました。
それだけ普遍的な内容を扱って、相互に影響しているとも言えます。


ただ、明確なテーマがあるかどうかと言えば微妙です。
「記憶と記録の違い」とか哲学風の発言は多いのですが、ひとつに絞りきれません。
寂しくもちょっと素敵な終わり方といい、やはりストーリーがメインだと思われます。

しかし、前述の普遍性ゆえに、テーマを自分で作って解釈する余地は大いにあると思います。
{netabare}
すべての意識が繋がって肉体が不要になれば、それは便利なことかもしれません。
といっても、肉体から離れてひとつになった精神は、自我を持ち、幸福を感じるのかどうか。
疑問なところですね。
{/netabare}

「雰囲気が好き」という人を除けば、「知ること」「考えること」をとことん求める人に向いているかもしれません。
まず、一番の謎が主人公の正体についてだからです。
また、予備知識があったり、調査を行うと有利になります。
そして、幅広くいつでも通用する命題をいくつも扱っています。


funnyでもexcitingでもamusingでもないのでinterestingが頼り。
「知りたい」という欲求とキャッチーな表現が噛み合えば、きっと神作品になります(ネタバレ)。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 47
ネタバレ

disaruto さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

時代を先取りしすぎたカルトアニメ

制作はトライアングルスタッフのメディアミックス作品です。
ジャンルはSF・サイコサスペンス・ホラーです。
かなり視聴には難があるので注意が必要です。


コミュニケーション用コンピュータネットワーク端末「NAVI」が普及した現代、中学生の岩倉玲音は、死んだはずの四方田千砂からのメールを受け取る。
彼女は「NAVI」に興味を持ち、大型「NAVI」を手に入れ、急速に適応していく。
それ以来、彼女は不思議な事件に巻き込まれていく…。


1998年放送なので結構古い作品ですが、内容は今に通じるものがあります。
一回通して見たときはほぼ理解できなかった作品ですw
本作を見るならば腰を据えて見ないと意味不明になること必至。

話は基本的にシリアス(というか意味不明)で、笑いどころは皆無。
本当に話の流れが分からないとはこの事。
ホラー・サイコ・グロ要素もありますのでそれが好きでないのであれば避けた方が無難でしょう。
愉快な作品ではないのは確か。


結局この作品では何についてみればいいのかというと「レインって何者?」ってことだと思います。
彼女は「NAVI」を使い始めることで覚醒していき、あらゆる世界を覗いていきます。
そこにヒントがあるわけなのですが、脈絡もなく急に場面が飛ぶので意味が分からないw
覗いている世界は現実なのか?
ネット世界なのか?


以下考察。
{netabare}この作品の言いたいことは「現実で自我を保つこととネットの世界で自我を保つこと、はたしてどちらが良いのか」ということでしょう。

現実では肉体が邪魔をするので、肉体を捨ててネットに埋もれこむというのも理論的にはわかります。
極論を言えば有限なものは邪魔にしかならないし、情報は形がないのでとても便利ですからね。
心身二元論の考え方です。

しかし、そこに本当の意味での自我がありうるのか?
肉体があってこそ、初めて自我が生まれるのではないか?
心身一元論の考え方です。

ネットの世界はあいまいに思われますが、果たして対局である現実社会は明確なのでしょうか?
「この世界には私がいる」ことを証明できるのでしょうか?{/netabare}


総括して、いろいろと手が出しにくい要素があるので尋常じゃないほど人を選びます。
ですが、難解な作品を見たい方にはもってこいな作品だと思います。
見て後悔しても、責任は取りませんよw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 43

72.2 11 サイバーパンクアニメランキング11位
GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0-ゴーストインザシェル(アニメ映画)

2008年7月12日
★★★★★ 4.1 (340)
3115人が棚に入れました
時代は21世紀、第三次核大戦と第四次非核大戦を経て、世界秩序は大きく変化し、科学技術は飛躍的に高度化した。その中でマイクロマシン技術(作中ではマイクロマシニングと表記されている)を使用して脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展系であるサイボーグ(義体化)技術が発展、普及した。その結果、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代が到来した。人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが混在する社会の中で、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知してその被害を最小限に防ぐ内務省直属の攻性の公安警察組織「公安9課」通称「攻殻機動隊」の活躍を描いた物語。

声優・キャラクター
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大木民夫、玄田哲章、榊原良子、家弓家正

AKIRA さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

2.0ということでてっきり続編かと思っていたら

続編ではなくてリメイクだったのですね。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊>TV一期>TV2期>イノセンス>GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0(イマココ)

初めて攻殻を観たのがリメイクされる前の作品でした。
それからTV版を含めそれなりに作品を見てきたので。大分世界観などは理解できるようになりました。

そういった意味でリメイク以上に新鮮に見ることが出来ました。(最初は続編かと思いドキドキしてみていたら、どこかで見たシーンが…ってなりましたがw)

映像美を除けば個人的には初期の方が好きでした。なんかこう…不気味な感じというか暗い感じが好きだったので。

ただTV版などを見た上での視聴となった近作は会話の中にでてくるTV版を想起させる台詞が散りばめれれていてなかなか楽しめましたね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 12
ネタバレ

Etzali さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

殻の中の自我

≪GHOST IN THE SHELL(劇場版)視聴済≫

自我を発展させる為には殻に閉じこもったままでいるか、それとも殻に閉じこもらず(電脳化)によって自我を発展させるかという問いに私は電脳化によって自我を発展させる方を選ぶと思う。 なぜなら、自分自身の「世界」を広げる為にも情報は必要不可欠だからだ。

その自我の発展に関しては人間だけが持ちうる特権なのか? 自我(学習能力や感情)と置き換えた場合、動物にだってそれは存在する。またその自我は動物だけに与えられたものなのか?電脳化が進んだ未来にも人の形をした人形にだって自我を持ちうるのではないか。
そうでないとするのならそれこそ「殻」に閉じこもったままの自我ではないか。

最後に{netabare}~「自分が自分自身であり続ける為には自分をある限界に制約し続ける」という素子の言葉{/netabare}は今の自分に満足せず、もっと世界を認識して視野を広げろというメッセージのように私は思いました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 10
ネタバレ

テロメア さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

【簡単解説】プロジェクト2501に関するレポート

そうしろと囁くのよ、私のゴーストが。

攻殻機動隊その映画第一作品のリメイクで、独特の世界観、宗教観、哲学が秘められています。戦闘シーンが最高にクール!


簡単に簡潔にストーリーを説明します。
{netabare}少佐率いる公安9課はゴーストハック(一般人の人体を奪い操作すること)をしている謎のハッカー(人形使い)をとらえようと動いている。そしてついに捕えるもなぜか6課が干渉してきて‐-。{/netabare}

ここで各組織のねらいを整理します。
{netabare}公安9課はゴーストハック事件の真相解明。
人形使いは生存するために9課に接触。
6課はプロジェクト2501の隠匿。
ガベル共和国はODA資金援助の交渉に。
旧ガベル共和国の旧指導者は日本に滞在中で外交的カードの一つになっています。
プロジェクト2501は後に{netabare}人形使いである{/netabare}とわかります。
{/netabare}

という感じです。これだけ分かれば概ねOKかと思います。詳しい考察は他の方の感想をどうぞ。


なんといっても見どころは
{netabare}少佐VS多脚戦車!作中の山場になっています。筋肉の動きや戦車の動き、武器の操作などの数々の演出が鳥肌物でたまりません!
ほかの戦闘シーンですが光学迷彩を駆使し格闘するシーンはかっこよすぎました。どこか奇妙でシュールな様がよかったです。{/netabare}

素晴らしく作りこまれた作品で何度見ても新しい発見があり飽きません。
動きも意味が分からないほど良いですし映像美でたまらないです。


良くも悪くも考えさせられる一作。
知的な気分で感慨にふけってみては。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 6

67.1 12 サイバーパンクアニメランキング12位
エルゴプラクシー(TVアニメ動画)

2006年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (419)
2559人が棚に入れました
焦土と化した大地と大気中に蔓延する未知なるウィルス、太陽光は粉塵により遮られ、地球は荒涼を極めていた。そのような環境下で生きていくために人々は隔離されたドーム型都市の中での生活を余儀なくされる。完全な管理体制下にある都市ロムド。人々は「オートレイヴ」と呼ばれるロボットとともに模範的、従順なる「良き市民」として生活していた。しかし近年、犯罪とは無縁と思われていたロムドでオートレイヴに自我の発症をもたらすコギトウィルスの感染が増加し、問題となっていた。ロムドの市民情報局に勤める若きキャリア、リル・メイヤーは、ウィルスに感染し制御不能に陥ったオートレイヴの暴走事件、そして多発する謎の市民斬殺事件の捜査にあたっていた。
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

デウス エクス マキナ

村瀬修功×マングローブ、
哲学的に存在理由を問うダークサイファイ。

焦土と化した大地と蔓延する未知のウィルス、
太陽光は粉塵により遮られ全編を通じて暗い。
陰鬱とした荒涼な世界は「12モンキーズ」だ。
人々は完全に管理されたドーム型居住区で、
全き「良き市民」として生きる。

ここでは誰も外部世界を知らない。
管理された平穏なる善良な世界で、
{netabare}情報局捜査官リルメイヤーを襲った、
オートレイヴの自我発症による暴走事件。
上層部の思惑と沈黙が意味するもの、
怪物プラクシーの存在の秘匿は最優先である。{/netabare}

善とは善なるものだけで出来ているのか、
創造主はなぜ人に「心」を持たせたのか、
その答えがシンプルな形で提示されている。

娯楽性は乏しいが気迫は伝わってくる。
レディオヘッドの傑作楽曲が許諾され、
時代を彩るトムヨークの叫びに感動する。
そして愛玩型オートレイヴ少女ピノ、
彼女の存在に暗い物語が救われますね。

滅びの世界から再生する大地の強さ。
人類の可能性は未来に到達できないと、
そんな失望した人の群れにあくびが出る。

私もまたあなたのように強くありたいと願う。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 40

ラスコーリニコフ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

オープニング詐欺

タイトルと絵から「多分、よくあるB級作品だ」と予測し、
オープニングを見て「あれ・・もしかするともしかするかも」
となり、初回からしばらくは話の出来を判断できず、後半に
なればなるほど「やっぱB級だった」となり、その頃にはもう
「仕方ない最後まで付き合うか」になる作品。

という訳で基本的には、ヒロインのリルメイヤーを眺める話
ただ、無難な美人ではなくクセのあるアイシャドウがあるんで、
それがアリかナシかで見れるかどうかが決まる気がする。
ワイルドで傲慢な令嬢、冷静で頭が良いよーなフリをしながら
大胆でおバカな行動ばかり取ってる。不機嫌な時とワガママな
時がとても素敵

あとは一応ロリが出て来るが、このロリが極小の上に人間じゃ
無いんで、これまた一部のマニア向け。完全に小動物

話以外が色々と高水準なだけに、非常に勿体無いと感じた。
話さえ良ければアニメの歴史に名を残すような素材が揃ってた。
あとはその素材を、身の程を弁えてる三流が適当につなぎ合せ
れば、それなりの人気アニメになるものが、身の程を弁えて
いない二流が作ったせいで、どーしようもなくなった的な。

脚本の技術不足って事なんだけど、何が悪いって話の作り方と
まとめ方がヘタクソ。会話を一つ一つ区切れば台詞部分はかなり
良く、一話一話区切れば駄作だとは誰も判断できないが、全話
見れば駄作。

一般ウケしなさそうなテーマも作り手の技量さえ伴えば化けた
んだろうけど、残念な事に伴わなかったという。
一般視聴者は話について行きにくく、学があればあったで話の
稚拙さが気になるという中途半端な出来。

王道のストーリーにしたりアクション多めにすれば台詞センス
は生きただろうし、努力家の凡人が天才作家の真似事したら全く
できなかったみてーな。言わせたい事を全部言わせた、やりたい
事を全部やった、それらの上手いつなぎ方、まとめ方が分からな
かったって感じか。

結果、華も魅せ場も魅せ回無く、通常の作品で繋ぎやアクセント
として用いる話を大量に垂れ流し、何がしたいのか分からない、
どよ~んとしたB級作品になったとさ。

流行りものかつ、どちらかと言えばマニア向けのアニメから色々
とウケそうな要素はパクってるんだけど、その台詞この場面で言
わせてどーすんだよ?この程度の事でこの台詞・・?、とか、
あとはこの手のキャラ周囲とギャップがあるから際立つのに・・
とか、違和感あり過ぎな事が多過ぎた。

最後の方は特にB級臭が強過ぎて何がどーなっても驚けない状態
だったし、本当に、なんで、こんな事に、なったんだろう。
そしてなんで、俺は、こんなものを、全部見てしまったんだろう。

マトリクスの空気もあったし、リルにアクションしまくらせれば
良かったんだよ。そうすりゃ話がゴミでも視聴者は付いて来た。
作中でロリが料理とは呼べない料理らしきものを作るんだけど、
あれがこの作品そのものだな。素材がどうとかあまり関係ない。
むしろ、素材が良いだけ料理のひどさが際立った。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 15

monoface さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

史上最高にかっこいいOP

90年代で一番かっこよかったOPはエヴァンゲリオンだと信じて疑わないが、00年代で一番かっこよかったのがおそらく本作である。オープニングだけをヘビーローテ。美しい映像。ちなみにエンディング曲はRadioheadのParanoid Android。

内容としては、硬派な大人向けアニメであり難解。超展開かつ謎展開。そして2011年現在、日本のTVアニメとしてはおそらく最後の本格派SF作品。系統としてはサイエンスよりもフィロソフィーに重きを置いたものであるが、この作品以降採算が見込めないためか、こういった硬派なSF作品は世に送り出されていない。非常に残念である。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 12

75.0 13 サイバーパンクアニメランキング13位
PSYCHO-PASS サイコパス 3(TVアニメ動画)

2019年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (441)
2199人が棚に入れました
「正義」は、新たな世界を切り開く。 魂を数値化する巨大監視ネットワーク・シビュラシステムが人々の治安を維持している近未来。シビュラシステムの導入後、日本は海外との交流を断ち、長らく事実上の鎖国状態にあった。2120年、開国政策により変革の刻が迫ろうとしている。変わりゆく世界で、犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、犯罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。

声優・キャラクター
梶裕貴、中村悠一、櫻井孝宏、大塚明夫、諏訪部順一、名塚佳織、沢城みゆき、佐倉綾音、日髙のり子、宮野真守、中博史、田中敦子、日笠陽子、森川智之、堀内賢雄、矢作紗友里、関智一、野島健児、東地宏樹、伊藤静、本田貴子、花澤香菜
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

看板だけでいつまで商売できるだろうか

やらかしたかもしれない

こうであろうと頭の中にストックされてる情報と大なり小なりズレが生じております。

“観るべきなにかしらをスルーしてないだろうか?”
“これまで観てきた本編の重要箇所を見落としてないだろうか?”

なお当方の視聴遍歴は以下

・PSYCHO-PASS1期(全22話)
・PSYCHO-PASS2期(全11話)
・劇場版PSYCHO-PASS(劇場版)

感じたズレはこちら↓

{netabare}・いつのまに霜月が課長になっとる?
・いつのまに常守が収監されとる?
・移民て何?鎖国政策とってたと思ってたのに
・外務省とは新たなプレイヤーですね
・六合塚さん執行官じゃないのかい?{/netabare}

不安になりました。例えるとしたら、交差点で「青色=渡れる」と覚えてたのが「そこ青じゃなくて紫だよ」と指摘されたような戸惑いがあって、人物や組織相関の修正を強いられます。
なお3連作『Sinners of the System』と1期の新編集版は未視聴です。
すんなり入れた方は無問題として前提や前後関係の把握に時間とられちゃったのは私だけではないかもしれませんね。
実際は見落としというより3期で初披露の“変化”だったみたいです。


で、この事案。
良いのか悪いのかシリーズものの整合性を保とう、みたいな配慮は希薄なのかなと思ってしまいました。プロセスを端折り過ぎという意味でですね。

 『シビュラに支配された超管理社会』

この強烈な設定さえあれば脚本はわりと自由にやりましょう!が見え隠れする3期でした。餃子の王将が各店舗オリジナルメニューを認めてるようなもんですかね。
2期で提示された“集団的サイコパスの是認”を受けて次どうか?が繰り広げられるのだろうと密かに予想してたものですが、全くといっていいほどそれが無かったため、さらにその思いが強くなるわけです。

一見否定的な見方しかできなさそうですが、良く出来た設定を活かしていろいろ試すことが出来てるとも言えます。今回でいえばメンタリストというかサイコメトラーみたいな主人公の投入がそうでしょう。少なくともTVシリーズの主人公が1期から3期までで各々違いますもんね。

・TVドラマを意識した1時間の各話構成
・魅力的なキャラが織りなす群像劇
・とはいえ1期2期の旧作にも配慮はしてる

これはこれで有象無象の凡作の海の中では魅力的に映る作品のひとつ。
なんだかなぁと悶々とするところはあっても小言は期待の裏返しみたいなもんでしょう。もっとオイラを楽しませてくれ!



そしてレビューはこれでおしまい。作品が極めて中途半端に終わっているので評価しようがないため。

{netabare}いわば起承転結の転で終了。1時間枠実質16話分の尺を取りながら一応の区切りをつけて続編は劇場で!というわけではなく、完全に途中でぶった切っているので不満が残ります。{/netabare}

{netabare}『彼方のアストラ』のように放送中の1時間枠を効果的に使っていたり、
『鬼滅の刃』のように区切りをつけた上での劇場版誘導なら見える景色も違ったろうにこれだと好感度ダダ下がりです。{/netabare}


それにそろそろ“免罪体質”だけで乗り切るにはつらいかもよん。
類似のアニメ作品もないですし、設定を活かしながらキャラを入れ替えて『相棒』みたいなご長寿シリーズを担ってほしいなと期待はしてるんです。
せめてシビュラ前夜的な設定の『絶対零度』よろしく第4シーズンくらいまではいってほしいですね。


いつの日か某課長が常守おばあの落とし前をつけるその日まで、しっかり視聴を続けるつもりです。

・・・結局、、観るということです。やれやれ…



視聴時期:2019年10月~2019年12月   

------


2020.01.08 初稿
2020.07.31 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 54
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

亡霊的キュビズム

ProductionI.G制作、SF×サスペンス。

豪華な布陣は劇場版の水準であろう。
集大成を目指す制作陣の意気込みを感じる。

新人執行官アラタはメンタルトレースなる、
高度な共感特殊能力を持ち犯罪者を追撃する。
彼の正義は新たな世界を切り開くのか!?
{netabare}大勢が加担し、誰も罪の意識がない、
詐欺的な犯罪では色相が曇らないという。
メンタルハザードと跋扈する街の魑魅魍魎、
見えざる巨悪との戦いが開幕した。{/netabare}

5話視聴追記。
物語に厚みが増し俯瞰的な視点が必要になる。
{netabare}ビフロストのコングレスマンの真意は!?
シビュラに反旗を翻す構造主義者なのだろうか。{/netabare}

最終話視聴追記。
事件はさらに複雑化し社会の暗部が露呈する。
それぞれが幾多の動機に支えられ命を削り合う。
{netabare}殺意なき殺人の連鎖、差別を生む社会への告発、
重厚なシナリオが緻密な絵で描かれている。
黒幕であろうビフロストの謎や、
過去の因縁が劇場版に持ち込まれ、
ここだけは残念な結果に終わりました。{/netabare}

入り組んだ複数の視点、正義の解体、
{netabare}最終話のタイトルは「CUBISM」である。{/netabare}
ここに全てが集約されている。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 47
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

より刑事ドラマ寄りに最適化された3期目

【物語 3.5点】
TVアニメ2期で刑事ドラマ風の路線へ傾倒していった感のある本シリーズ。
3期では実写連続刑事ドラマでも多い1時間枠になり、傾向はさらに顕著に。

22世紀鎖国日本というSF要素も“開国”により後退。
外国人労働者を認知、受け入れ拡大に舵を切った
現代日本にタイムリーなネタも提供する。
その他、{netabare}宗教と政治と都知事選、アスリートとドーピングなど。{/netabare}

グローバル世界とつながり、罪をもゲーム化して希釈し、
無自覚化する21世紀型の巨悪も息を吹き返す。
その権化たる「ビブロスト」と公安局刑事課一係らとの対峙がメインストーリーの軸。

一方で、この状況に対する「シビュラシステム」の真意は語られず……
というよりシビュラ中枢には、今回ほぼ出番がない。

世相を反映した一つ一つの事件を解決していくうち、
裏で蠢く巨大な陰謀が姿を見せていくシリーズ構成も連続刑事ドラマ風。
そして、{netabare}巨悪との対決は劇場版で!という伝統の投げ技まで決まるw{/netabare}


【作画 4.5点】
上々。道中、人物に謎の輪郭変動?はあったものの、
概ねCGもバランス良く交えて22世紀日本を再現。

見所は1時間枠になり長尺化したアクションシーン。
警棒、締め技なども乱れ飛ぶバーリトゥードでエンタメ性十分。


【キャラ 4.0点】
“メンタルトレース”により事件対象者になり切り捜査を進展させる監視官・灼(あらた)。
ロシア系帰化移民として開国日本の縮図も体現する炯(けい)。二人の新バディコンビが軸。

灼は能力者同然の“特A級メンタリスト"であり、
さらに{netabare}免罪体質者{/netabare}でもあり、
必ずしもドミネーターの執行判定に従わない言動も含めて、
シビュラをSF設定もろともスクラップにしかねない危険な主人公。
にも関わらず彼を監視官にしたシビュラの意図も現状見えず……。
旧来からのファンにとっては不安要素になり得る。

そこへ溜飲を下げさせるように登場する朱(あかね)や狡噛(こうがみ)らの旧メンバー。
ズルいよ。


私のMVPは自称エースから中間管理職へクラスアップ?した霜月課長。
口は悪いが、情は厚い。24歳にして、息子たちを叱咤し見守るおっかさん風の人当たり。
歯ぎしりが聞こえてきそうな、伏魔殿・外務省との交渉などにも感じる名物上司の可能性。


【声優 4.0点】
豪華。CV.梶裕 貴さん&中村 悠一さん演じる新コンビは
公安局の同僚である以上に幼馴染み。
人物設定を理解した役者により、異なる性格の相互理解も含めた、
兄弟じみた腐れ縁が滲み出ている。

公安局のオッサン成分もCV.大塚 明夫さんの執行官が新たに供給され、
哀愁溢れる境遇の吐露を通じてシビュラ社会に毒を浴びせる。


一方の黒幕の方も、
{netabare}CV.宮野 真守さん演じる気鋭の新“コングレスマン”が、
CV.中 博史さんの老紳士やCV.田中 敦子さんらベテラン陣に挑む。{/netabare}
こちらも世代間抗争含めた?不穏なムードを醸して上質。


【音楽 4.0点】
BGMは引き続き菅野 祐悟氏が担当。
メインテーマはバイオリン属よりギターを強調したアレンジで
刑事ならではのアクション&執行シーンで威力を発揮。

OPのWho-ya Extendedの「Q-vism」がスタイリッシュなロックサウンドの中に
監視社会下の葛藤を込める。
新人の主題歌抜擢自体も、主役一新の制作方針と合致。

EDはCö shu Nie(コシュニエ)の「bullet」。
表現力豊かな女性ボーカルがゲーム感覚で罪を重ねる黒幕を
運命を切り開く意志を込めた銃弾で狙撃。


【感想】
『PSYCHO-PASS』はシリーズを重ねるにつれ、
時系列は22世紀の先へ進んでいるのですが、SF要素の後退によるものなのか、
段々、21世紀に巻き戻っている感じが、私にはどうしてもしてしまいます。

現代日本が直面する課題も貪欲に取り込んで、
本作では鎖国設定まで捨てて、タイムリーヒットを狙うのは良いのですが、
これ別に22世紀じゃなくても出来るネタなのでは?と捻くれた私は感じてしまうのです。


今後はどうかシビュラさんにも、もっとお出まし頂き、
もう少しSFとしての矜持も見せて欲しい。

22世紀でも何故か健在だったタピオカ(笑)を眺めながら、
未来を夢見る私なのでした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 32

64.9 14 サイバーパンクアニメランキング14位
攻殻機動隊ARISE GHOST IN THE SHELL 「border:1 Ghost Pain」(アニメ映画)

2013年6月22日
★★★★☆ 3.6 (334)
2025人が棚に入れました
『公安9課』が最優先ラインの攻性部隊とはなり得ていない、A.D.2027。公安捜査の権謀術数に限界を覚える荒巻の前に現れたひとりの女─ 陸軍『501機関』所属・草薙素子三佐。 最高度のフィジカルと電脳戦スキルを備える一方、向こうみずで世慣れぬ未熟さをあわせ持つ草薙は、荒巻と不即不離の関係をたもちつつ、次々と発生する犯罪へと対処する。だがそれは、ゆりかごたる501機関との関係を問い直すことでもあった。上司であり保護者でもある野心の女・クルツ中佐との間に生じる軋轢。さらに、謎のウィルス『ファイア・スターター』の出現。困難な事件に立ち向かう中、『眠らない目を持つ元レンジャー』『所帯持ちの特捜刑事』ら、個性的な人的資源と気脈を通じる草薙。荒巻といつしか共有していた目的─『犯罪に対し常に攻性の精鋭実力部隊』創設へ向け、草薙は彼らを糾合してゆくこととなる。『攻殻機動隊ARISE』─これは草薙が少佐と呼ばれる前夜の物語である。

声優・キャラクター
坂本真綾、塾一久、松田健一郎、新垣樽助、檀臣幸、中國卓郎、上田燿司、中井和哉、沢城みゆき、浅野まゆみ、星野貴紀、野島健児、宮内敦士

えんな さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

感想

声優はすべて刷新は置いといて

ARISEの時点で素子とバトーは知り合っていた、この時点で素子の階級は「三佐」

あれ?大戦中バトーと同じ部隊にいたとき「少佐」じゃなかったっけ?

面白いし攻殻機動隊は大好きなシリーズだけに、もっと丁寧に作って欲しいな・・・

ロジコマのcvが沢城みゆきさんだったとは・・・

投稿 : 2024/05/11
♥ : 50
ネタバレ

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

押井じゃない!神山もいない!キャストも音楽も違う!だけど冲方丁が来たよ!つまりオイラが知る限り最高の攻殻だよ!

後に攻殻機動隊と呼ばれる『公安9課』のメンバーが一同に会するまでを、新たに書き換えた設定の元に描くという攻殻シリーズの【エピソード0】と呼ぶべき全4部作の第1話
今作では草薙素子、荒巻、バトー、トグサ、パズの5人が登場
各々のファーストコンタクトと、そして素子の旧所属である『陸軍特科501機関』が題材となっています










まずたったの全国20館の上映にも関わらず、あにこれ内でもまずまずの前評判
これには流石長寿作品ということで脱帽です
一方で、ネガティブな評価の多さに個人的には残念でしょうがないっす
【たぶん今年一番のアツイ作品になりそう!】というのがオイラの率直な意見だからです


既にGIS、SACといったアニメ化を経て原作者の手元を離れたと言ってもいいであろう『攻殻』という作品
そして今作は【第4の攻殻】と呼ぶべき新シリーズとなり、監督や脚本はおろか、キャストの総変更という大冒険に出ています


これは単純に好みなのかもしれませんが、このキャスト変更に関しては前向きに受け取ってます
特に主演のまーやはコドモトコも演じてるシリーズの常連
アップルシードのキャスト変更のときもそうでしたが、まーやを使うこと自体には特にデメリットを感じません
むしろ大正解、実に俺得(お
初めて攻殻に触れる人にもオヌヌメ


そして最もたる特徴なのが脚本の冲方丁の存在でしょう
攻殻シリーズらしい今作の事件のトリック{netabare}(電脳の記憶改竄、視覚操作){/netabare}、これを氏が得意とするサイコサスペンス調で描く様はこれまでのどのシリーズよりも手に汗握るスリルと興奮を誘います
(っていうかまんま『マルドゥック・スクランブル』なんですけどw)


犯罪心理やゴーストの在り処といった複雑で哲学的内容だった以前のシリーズと違い、映画らしいシンプルなドキドキを感じさせてくれるお話作りの今作
オイラは上映後にスタンディングオベーションを送りたかったくらいです



それと音楽
川井?菅野?いえいえ、それもええけど今作の劇伴はなんとコーネリアス
コーネリアスですよ!?小山田圭吾でしゅお!?
オイラの記憶によればエクスマキナ以来ですか
これがすげーんです、カッケーんすよ
エスニックな民謡でもブラックなファンクでもない、けどシンプルなエレクトロがこんなにも攻殻の世界観とマッチするとは・・・
灯台下暗しとはこのこと;


これに絡めてゆらゆら帝国の坂本慎太郎が作詞、小山田圭吾のサウンドプロデュースでsalyuが歌い上げる幻想的でアンビエントな主題歌もエンドロールでの心地良い余韻を生んでいます


こういった部分から攻殻を知らない人にこそ観ていただきたい作品だと言えます
サイバーパンクが流行らない昨今でこれだけの大作に出会えたことは感涙ですね


イイとこばっか語っていてもなんなのでツッコミどころをば・・・
なんと今作、完全義体であるはずの素子がシャワーを浴びるシーンがあります(笑)
これにはちょいと驚き
義体の取り扱い方が依然の作品の設定と違うのか、光学迷彩を装備していない点を見るとそもそも完全義体とは名ばかりで厳密には生身の部分が残っているのか
その辺は定かではない
ようはアレです、サービスカットってやつですか


あとマイクロソフトのタブレット型PCとコラボしたアニメCMが上映前に流れ、以前のシリーズを汚しかねないヘボいオマージュが多くて思わず吹き出しましたw
いくらなんでもあれはないw


ええでもまあ、タチコマの旧型と思しき新ガジェット(新キャラクター)の『ロジコマ』(CV:沢城みゆき)かわいいよぉ、かわいいよぉ


それに相変わらず日産車に乗ってますたね


キャラデザがどうのこうの言ってもそりゃ好みの差
黄瀬和哉、西尾鉄也、沖浦啓之・・・ってどうみてもいつもの攻殻です
1.5巻辺りの原作にも近いし、本当にありがとうございました!


今はとにかく次回作が楽しみでなりませんねー
(半年後らしいですけどねw)
次回以降の盛り上がり次第では今年のベストジャパニメーション!?
要注目ですぜb

投稿 : 2024/05/11
♥ : 28

ahirunoko さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

自分の中での「GHOST IN THE SHELL」は1995年の映画だけかな

全てではないが「攻殻」シリーズは観てるけど、何かだんだんズレてきてる感じが・・・

好きな人はとても大勢おられると思うが、申し訳ないけど、もうり興味を持てなくなってきた。

掘り下げすぎ。マニアックになりすぎ。この二言に尽きるかな、と。

個人的思いもあり、う~ん、と思っても評価はしていません。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 18

68.5 15 サイバーパンクアニメランキング15位
SAMURAI7_サムライセブン(TVアニメ動画)

2004年春アニメ
★★★★☆ 3.8 (332)
1960人が棚に入れました
人類は数々の大戦を経て、機械化文明と農耕文明が入り混じった混沌とした時代にあった。大戦が終了してしばらく後の事、コメの刈り取りの時期に現れては村を襲い、コメを略奪する野伏せり(のぶせり)を撃退すべく、神無(かんな)村は密かにサムライを雇う事を計画する。村の水分り(みくまり)の巫女であるキララは自ら願い出てサムライを探しに、都の虹雅渓(こうがきょう)へ出る。

高田屋 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

誰かが死ぬ、生きるために

機械と農業が混じった不思議な世界。長く続いた戦争でサムライ達はその身を機械に窶してまで戦い続けた。時代は移ろい商人の時代。野伏せりへと身を落としたサムライ達は生きるために村々を襲い、農民は生きるため侍を雇って野伏せりを追い払うことを決意する・・・
黒澤明監督の七人の侍が原作、原作視聴済みですが世界観を変えながら、かなり原作に沿った作りになっています。

※カッコ内は原作名。
文武両道のリーダー各、島田カンベエ(勘兵衛)
伊達男の槍使いシチロージ(七郎次)
双剣の達人キュウゾウ(久蔵)
サムライの心をもつ機械の元農民、キクチヨ(菊千代)
総髪の迷える若者、岡本カツシロウ(勝四郎)
機械のエキスパート林田ヘイハチ(平八)
大道芸に身をやつした片山ゴロベエ(五郎兵衛)

戦場で死ぬこと、主君のために死ぬこと。己の道を全うすること。生きること・・・
それぞれの7人のサムライの生き様、逝き様をその目に焼き付けてください。

「誰が先に死ぬか、それだけのことだ。生きてもらうぞもう少しだけな」
総毛立つとはこのことだ!!

天主(あまぬし)と農民、侍と機械。善悪のはっきりと分かれた勧善懲悪の世界感、日本人の米への憧れ、農耕文化。武士道。色んなものが詰まっていて本気でテンションがあがります。機械とサムライの世界で消え行く心が粋すぎる。ただし26話は少し長すぎる気も、原作+αの部分や戦いが始まるまではややだらける部分もありますが、それを補って余りあるスタイリッシュな殺陣は必見です。
七人の侍公開から50周年を記念して作られた本作。原作の映画界へ与えた衝撃を考えるとどれだけの重圧でしょうか。その分本作への意気込みを感じられます。

視聴した方にはぜひ聞いてみたい、貴方はどの逝き様に惚れますか?


***以下雑談


・・
・・・はい、そろそろ我慢できないので暴走します。
かっこええええええと叫び声あげたくなりますwww
単純に男として憧れる、切った張ったの大立ち回り。テンション上がらない筈が無い。逆に女性や海外の方はこの作品を見てどのような感想を持つのでしょうか。
原作は海外で絶大な人気と知名度を誇る作品。スピルバーグやジョージ・ルーカスさえ原作の影響を受けているといわれています。少なくともクールジャパンのイメージを広げてくれる、世界に誇る日本の文化として世界に発信できる作品ではないでしょうか。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 18

こたろう さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

カッコいいの一言につきる

男ならシビレること受けあいです。
ロボットアニメの様になっていますが殺陣の主役はあくまで人間。機械は斬られ役です。
黒澤映画っぽさを損なわず、戦闘アニメとしてのエンターテーメントが盛り込まれ上手くできていると思います。


ただ強いだけでなくサムライとして生き様や青くさい若者の成長を丁寧に描いて、まさしく「七人の侍」。
サムライとは、百姓とは、商人とは、生きるとは、の人間ドラマが見所です。


ヒゲ面のムサい朴念仁のオッサンが主人公ですがw
ただ、ひたすらカッコいいです!オススメ

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

ろき夫 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

お侍さん、貴方に惚れますた(≧∀≦)

「七人の侍」をアニメアレンジした作品。

原作では戦国時代が舞台なのだが、アニメでは+ロボットが登場し、当たり前のごとく武器、兵器として利用され、他にも戦国の文化を無視した大胆なアレンジがなされている。

これが受けるかどうかは観る人次第かと思いますが、私はあの独創的な感じが新鮮で面白いと思いました。

最初は不自然過ぎてエエッΣ(゚Д゚)という感じなのですが、驚くことにだんだん慣れてきてむしろこの世界観がクセになりますw

そして、何といっても原作が神なだけに、物語の内容はただ単に悪党成敗の話ではなく、割とシリアスで、人間の本質に触れた深みのある話になっています。

また、悪に立ち向かっていく七人の侍一人ひとりのキャラがしっかり引き立っており、メチャ魅力的でカッコいいです!
リーダーのカンベエは特にカッコいい!!まさにザ・漢☆
他の侍の生き様にも心底魅せられました^^

アクションシーンも見ごたえ十分!何でも刀でスパスパw
唯一、カンナ村の決戦でのリピート再生にはかなりショックを受けましたが…(=□=;)ガーン

全体的に見て、かなり完成度の高いイイ作品だと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

64.2 16 サイバーパンクアニメランキング16位
紅殻のパンドラ(TVアニメ動画)

2016年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (360)
1839人が棚に入れました
先進国では、一部ではあるが、サイボーグや自律ロボットが一般に出回り始め──
戦争や災害をはじめ、世界はあらゆる災厄に覆われ、救いをもとめて人々がさまよっていた時代。
これはそんな時代に──全く関係なく、『彼女が、彼女に出会う物語』

声優・キャラクター
福沙奈恵、沼倉愛美、田中敦子、森田順平、松田颯水、村川梨衣

ninin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

明るく可愛い全身義体の女の子だや〜

原作未読 全12話

主人公の七転 福音(ななころび ねね)が両親と死別し、親戚の引き取られた先のセナンクル島で、ある大事件に巻き込まれるお話。島に向う途中で知り合ったアンドロイドのクラリオン(クラリン)と一緒に物語は進んでいきます。

原案が士郎正宗さんというこで「攻殻機動隊」と同じ世界観らしいのですが、こちらはシリアスな部分を極力抑えて、明るく楽しいコミカルな感じになってます。

福音とクラリンの愛情に近い友情物語という感じですね。とにかく明るい前向きな福音に対して、いつも冷静なクラリンの極端な性格でバランスが良かったです。

良くも悪くも可愛い作画やコミカルなところ挟んでいるので、ハラハラドキドキというような危機感を全然感じませんでした。

お話も切りがいいところで 終わってい ますが、伏線が全然回収されていないので全容が最後まで把握できません。

福音とクラリンの近未来な日常として割り切って観ると楽しいかも知れませんね。

OPはZAQさん、EDはこの作品の主役キャラを演じている福沙奈恵さん、沼倉愛美さんの2人が歌っています。

最後に、変身シーンだけはちょっといただけませんね^^;

投稿 : 2024/05/11
♥ : 33

offingbook さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

LOVE&PEACE!

2016年1月から3月まで放送。全12話。原作漫画未読。

サイボーグやロボットなどが一般にも出回り始めた近未来。ある島を舞台に、
脳以外を全身機械化した少女・七転 福音(ななころび ねね)と、
その島で福音と出逢った美少女型のアンドロイド・クラリオン(通称・クラりん)、
2人の活躍や日常を描いたSFアニメ。

シリアスな雰囲気になっても、思わず笑っちゃうユーモアが入り込む作風。
SFだけれど、難しくなり過ぎない軽やかさ。
目を惹く近未来的な映像表現がありつつも、ほのぼのとしたやわらかさを失わないゆるやかさ。
SFであり、変身ヒロインものであり、でも日常コメディであり、
そして可愛い百合もある、そういうの全部合わせたカオスな感じ。

いろんなものが盛り込まれているのに、すっきりとした気持ちで観れる、
その、絶妙なアンバランスなバランスの良さ、全部ひっくるめてすごく僕好みでした!
(僕は何を言っているんでしょう?(笑))
まぁ簡単にいえば、すっごく面白いアニメ作品でした!2016年冬アニメで一番好きです!

いろんな要素が描かれつつも、それでも今作を重さなく、とことん楽しく視聴出来たのは、
何といってもメインヒロインの2人・福音とクラりんの可愛らしさです!

明るくて優しい、感情豊かな福音。福音と出逢い少しずつ変わっていくクラリオン。
2人ともすごく可愛らしくて、とても魅力的。いっしょに少しずつ成長していって、
少しずつ深まっていく信頼や繋がり、観ていて愛らしく、とても癒やされました。

たとえどんなことが起ころうとも、2人が正しくまっすぐ進んでくれたから、
観ているこちらも、最後まで清々しく、温かい気持ちで視聴できました。
二人を見守る(?)ブエルの存在も楽しかったです。(笑)

福音とクラリオン、2人にはこれからどんな日々が待っているのでしょう?
きっとまだまだ慌ただしい未来が待っていそうで、とっても気になりますね。
まぁ簡単にいえば…続編が観たい!すごく観たい!(笑)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 31
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0

ルールをちゃんと守る悪役(苦笑)

[文量→中盛り・内容→酷評系]

【総括】
90年代後半のアニメの良さを出している感じの作品。

エロは苦手だけど、ギリギリ許容範囲かな? 絵は、あえて少し古めを意識してるのかな? メカがタチコマっぽくて、攻殻機動隊ファンとしてはニヤニヤ。もちろん、他にも共通点多数。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
う~ん、面白くなかったな~。パンドラデバイスはひとつの装置として良かったと思います。少年がいきなりモビルスーツを操縦できるよりは、インストールという方がなんとなく納得できるし、あの位置にあるのもまあ、他人にバレにくい部分にあると思えば、なくはない。ざっくり言うと、士郎版ひみつのアッコちゃん、ですね。

中盤の日常回がいらなかった気がします。最初と最後をシリアスバトルにするなら。あと、敵も味方も、みんな浅いな~と思いました。特に、メインの敵であるイアン・クルツの小者感がひどかった。

「ブエルの真の価値は……」と気をもたせ、「荷電粒子砲だ!」……ん?? 「荷電粒子砲なら、条約に触れることなく、中枢を破壊できる!」……って、真面目か(゜o゜)\(-_-)wwwww

なに、悪のくせに条約気にしてんねん(笑) というか、最初は条約外でも、すぐに条約化されるでしょ? そしたらなに? ブエル使うのやめるの(笑)?

ある意味で、ここ最近一番笑った台詞です(笑) 死に方まで小者だし(笑)

あと、ところどころでガンダムネタが雑に扱われて、腹がたちました。シリアス場面での笑えないパクりネタは、原作への冒涜、つまり悪です。と、ガンダム好きとしては、思わずにはいられませんでした。

まあ、士郎さんは、世界観の設定とざっくりしたキャラ設定までの原案で、ストーリーその他諸々は、漫画家の六道さんが担当しているそうなので、しょうがないかな~とも思いました。最初は面白かったのに、残念。シリアス展開追いかけ(微百合、微ギャグ程度で)、2期目があったら、化ける可能性も感じるアニメでした。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29

67.2 17 サイバーパンクアニメランキング17位
マルドゥック・スクランブル 圧縮(アニメ映画)

2010年11月6日
★★★★☆ 3.8 (335)
1804人が棚に入れました
 『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第1弾。特殊な証人保護プログラムによって死の淵から甦った一人の少女娼婦が、不思議なネズミの捜査官と協力し、自分を亡き者にしようとした男の犯罪を暴くべく戦いを挑む姿を描く。声の出演は、ヒロインのバロット役に林原めぐみ、その相棒ウフコックに八嶋智人。マルドゥック市で生きる未成年娼婦、ルーン=バロット。働いていた店が摘発され、行き場を失った彼女は、カジノ経営をする資産家、シェルに拾われる。しかしその後シェルの非情な計画によって、彼女は車ごと爆破されてしまう。業火の中から辛うじて助け出されたバロット。彼女は、マルドゥック市の事件担当官ドクターとウフコックによって、特殊な強化繊維で再構成された人工皮膚を移植され一命を取り留める。これにより特別な能力も手に入れたバロットは、シェルの犯罪を追っていたドクターとウフコックの捜査に協力していくのだが…。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、田中正彦、若本規夫、かないみか、三宅健太、脇知弘

minisaku さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

面白いけど圧倒的に尺が足りてない。 全部見終わった感想です。

特殊な科学技術によって死の淵から甦った娼婦の少女が、不思議なネズミの
捜査官と共に、自分を亡き者にしようとした男の犯罪を追うってお話。

『圧縮』『燃焼』『排気』の全三部作で構成されている物語です。


まず最初に、この作品は全体的に暗めで内容的に重い部分も多いですし、
残虐な殺人行為や性的虐待など、暴力的でエログロな描写なども
結構あるので苦手な人は注意が必要です。



では、注意書きもしたのでココから感想w


かなり見るヒトを選ぶだろうなって作品ですが、なかなか面白かったです。

作品の持つ独特な世界観や雰囲気、綺麗な映像、スピード感あるアクションなど、
惹かれる要素の多い作品でしたが、この作品の一番はやっぱり映像ですね!!

立ち並ぶビルや光を帯びた道路など近未来の街並、楽園での草木や水などの自然風景、
色鮮やかなカジノでの背景などなど、映像だけでも十分引き込まれる位の魅力が
ありました。 特に「楽園」での光と水の描写はすごくキレイ!!

それに、この作品の見所の一つだと思う 戦闘でのアクションシーンなども
とても綺麗で良かったです!!


ただ、かなり自分好みの作品ではあったのですが、ストーリー自体が
面白かったかと言えば、それはまた別の話で...


大筋のストーリーは良いのだけど、展開が速くて元々わかりづらい内容な上に、
描写不足、説明不足が加わって更にわかりにくなってます。
やはり世界観や設定、バロットやボイルドの能力、心理描写などの
説明不足は大きいですね。

それに、人物描写はもっと欲しかった... 一番描かれていたバロットにしても、
それでも足りないって思うし、せっかく魅力的なキャラがいるんだから
もっと掘り下げあっても良かったと思う。
まぁバロットの心情、不安定さや心の弱さなどを、言葉だけじゃなくて
目線の動きや仕草などでも表現してるのは上手いと思うんだけど、
やっぱり足りてない...

あと、ラストは少しあっさりしすぎだったかな... それに加えて最終決戦のBGMが...
BGMがヒドかった。 なんで最後だけ... それ以外は良かったのに...


そんな感じで、ストーリー自体に対しては 物足りなさを結構感じますね。
原因は確実に尺の問題なんだろうけど...


でもまぁ、一部では華麗なアクション、二部では楽園での映像美、三部ではカジノでの
緊張感ある心理戦など、それぞれ見所もあって良かったと思うので、
一概によくなかったとも言えないんですよねw

そう、悪くは無いんですよね、なんとも惜しい作品なんです!!


自分としては、残念だった部分を含んでも、差し引きで「見て良かった」って思えますが、
好みがかなり出ると思うので、人にはあまりオススメは出来ないかな。

ただ、この映画って原作読んだ後に見ると かなり面白いんじゃないかなって
思ったりします。 自分はすごく原作読んで見たくなりましたしねw

というか、おそらく読むと思いますww

投稿 : 2024/05/11
♥ : 29

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

元少女売春婦のサイボーグが犯罪組織と戦う本格SF作品

2010年劇場公開 2011年に完全版が完成した 69分 R18指定

原作脚本 沖方丁 監督 工藤進 製作会社 GoHands

ルーン=パロットCV林原めぐみ
ウフコック・ぺンティーノCV八島智人

ディック風近未来SFアニメの定番設定が見られるが、
作者としてはウイリアム・ギブソン系サイバーバンクをイメージした模様です。
作者の沖方さんは本格SF作家としてデビュー、代表作はこれですが(日本SF大賞受賞)、
最近はラノベ系の創作活動を主としているようです。

相当昔(05年)にゴンゾでアニメ化と言われていたんですが中止、
結果として高レベル劇場作品になったので自分としては嬉しいです。

主人公ルーンは15歳(?)の売春婦で、犯罪組織により分解されかかったところを、
犯罪捜査官のイースターとネズミ型万能兵器ウフコックによって助けられる。

瀕死のルーンは禁止科学によって命を救われ、
電子干渉(スナーク)という能力とサイボーグの肉体となり、
「犯罪組織シェル」を追う者たちの一員となる。

ウフコックはネズミの知能を高めたものらしいが、亜空間に武器を貯蔵したりするちょっとあり得ないテクノロジーの産物。
ルーンのパートナーまたは武器として活躍する。

今回は臓器フェティシスト集団の誘拐屋とのバトルが見せ場となるが、
まるでラブクラフトの怪物のような異様な外観の犯罪者たちが気味良い、
いや、一般的には「気味悪い」になるのかな。

雰囲気のある作画とキャラデザ(やっぱディックっぽい)に、
良い構成のストーリーそしてリアルなバトルと、第一部としては申し分ない出来。
とても楽しめました。
続けて第二部、第三部も視聴意欲が沸きます。
「サイコパス」にも影響を与えたと思える銃器デザインは前田真宏さんです。
SFファンに超お勧め。そうでもない人もぜひ挑戦してみて欲しい逸品。

そして何よりも何よりも EDです!

日本国始まって以来最大の真の歌姫「本田美奈子」様の
「アメイジング・グレイス」日本語版 伴奏新バージョンが流れるんですよ。
涙が溢れました。

三部作ともにEDは本田美奈子です。 

投稿 : 2024/05/11
♥ : 24

ゆうみん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

それは彼女の選択

あ。。あ。。あわわわわ。。すげぇ
こんなに興奮するアニメははじめてだよ

マルドゥック・スクランブルは日本SF大賞を受賞したSF小説の劇場版アニメ
内容はかなり過激でみんなにおすすめとはいかないかな
苦手な人もいるとおもう
でもおれのなかで最高のアニメ

単語でストーリーを表現してみるなら
サイバーパンク。未来。少女。売春。事件。謎。生きる。死にたい。苦しい。死にたい。愛。決意。選択。裁判。過去。
軽蔑。敵。グログロ。戦い。超人。最強。死にたくない。

こうやってみるとわかりやすく過激な内容だなーっておもう
でもおれはそういうの大好きだからこのアニメにどっぷり溺れましたよ
SFとかアクションとか好きな奴はっこういうどどどかーんとくるのが大好物なのさ

なにかと血みどろドロドロでほんとに見れない人はむりだとおもう。設定もドロドロなのさ
主人公の境遇がこの世の終わりだし
あんなにかわいいのに汚されきって。。。
とことんゲロドロだよ~
でもそのなかでやさしさや愛がかがやいてみえた

おれはこのアニメ最高っていいまくる
けど苦手な人は嫌いだろうね~
このアニメはひどく狂気じみた感があるからね

でもやっぱみんなみてほしいなー

これが一期の感想

感情的なはなしばっかになっちゃったから二期の感想は内容のついてはなせるといいな~

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

63.3 18 サイバーパンクアニメランキング18位
RD潜脳調査室 アールディー(TVアニメ動画)

2008年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (272)
1685人が棚に入れました
2012年、フリーダイバーの波留真理は、建設中の人工島沖合で観測実験の最中、「海が燃える」現象に遭遇し、49年間も昏睡状態に陥った。2061年、長い眠りから覚醒した波留は81歳の老人となり、車椅子生活を送らざるを得なくなった。そんな中、波留は旧友・久島永一郎によって、メタリアル・ネットワーク(通称:メタル)の情報を調査する、電理研外部委託調査員に任命される。メタルは、安全で人々の欲望を満たす一方、現実世界(リアル)の世界に歪みが生じたからだ。こうして、波留は蒼井ミナモとバディ(英語で『相棒』の意)を組み、メタルとリアルの間で起きる事件や謎を追う事になる。

ninin さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

あなたにリアルドライブ!

全26話(攻殻機動隊未視聴)

攻殻機動隊の原作者 士郎正宗と制作したプロダクションI.Gの共同原作作品です。
設定は合わせているようですが、内容には接点がないようです。

ネットワークが発達した世界、通称「メタル」での様々な事件や謎を解決するため、電脳ダイバーで主人公 波留真理(はる まさみち)、ヒロインで中学生の波留さんのバディ(相棒)蒼井ミナモやその仲間たちの活躍を描いています。

キーワード「海」ですね。舞台は海が綺麗な人工島で普通にダイビングできそうな感じです。

基本、1話で1つのエピソードですので、観やすいです。
終盤は、連続したお話となります。

主人公が老人という設定はなかなか斬新でした。

キャラはみなさんちょっと太めです。萌え作画ではありません。

自然と科学技術は調和できるのか、対局にあるのか、そう言ったことを考えさせる作品だと思います。

電脳世界といっても基本人間同士のお話なので、人間味溢れるエピソードが多い作品です。楽しめました。オススメです。

OP/ED アニソンとはちょっと違う感じの曲です。アップテンポな曲ですが、儚さを感じました。

最後に、主人公 波留真理さんの声を担当していたのは森 功至さんですが、私には銀河英雄伝説のウォルフガング・ミッターマイヤーのイメージが強いですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 27
ネタバレ

minisaku さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ある意味、インパクトの強い作品

内容は、「メタル」と呼ばれるネットワーク世界。それにより発生する、
リアルとメタルの間で起こる事件を解決していくって感じのお話。
基本的には1話完結で全26話です。

この作品は、主人公が81歳の老人だったり、女性キャラのデザインが
異様に太いなど、少し変わったアニメではありましたが、
個人的には楽しめましたww

電脳化や擬体化など、「攻殻機動隊」に近い用語が出てくるな~って
調べてみると、原作者同じらしいですね。まぁ繋がりはないようですがw


物語としては、地味かも知れませんが落ち着いて見られる
良い内容の作品だと思います。

犬の話、視力を失った少女の話、美食倶楽部の話などなど、
電脳化社会ならではの事件や出来事は、興味深い話も
沢山あって面白かったです。

それに、たまにある素手での格闘シーンが何気に良かったです!!
ホントたまにしかないんだけど、自分はとても好きでしたww


まぁ終盤の展開やラストについてはちょっとな... って思ったりもしたけど、
全体的に見れば楽しめたので、良しとしようって感じです。

それに、これより許容しづらかったトコがあったので... 太さとか...


では最後に、この作品を見て誰もが必ず思うであろう女性のキャラの
キャラデザについて。(ネタバレではないです。ただ、自分の感想を
ぶちまけてるだけなのでww){netabare}

とりあえず... ムチムチ具合が半端無いです!!


太ももは太いし,お腹の脂肪やたるみなどがしっかり描かれています。
明らかにぽっちゃりを超えてる気が...

う~ん... これには一体どんなこだわりがっ!? 誰の好みですか... !?
とツッコミたくなります!!

マジでありえないです!! どういう意図があるのでしょうか...
全く意味が分からないww

さすがに見続けると慣れてはきますが、見始めた当初は切るかどうかすごく悩みました...

個人的には、キャラデザだけで長文レビューが書けちゃうくらいの衝撃度だったし、
実際、見続けるにあたっての最大の難関でしたww
{/netabare}

まぁ攻殻の「姉妹作」、女性キャラの体型、地味な物語などなど、
気軽に見るには取っつきにくい要素もありますが、
個人的には楽しめた作品ではありましたww

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25

えんな さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

もうひとつの電脳社会

攻殻機動隊でお馴染みのプロダクションIG、士郎正宗原作の近未来SFモノです
なんとなく攻殻機動隊と似たような世界、共通設定(電脳とか)ありますが別世界みたいですね
けっして二番煎じとは思いませんが、イマイチ影が薄い作品になっているみたいで残念です

主人公はなんと81歳のおじいちゃん!いい味出してます
ヒロインは15歳!オイオイ・・・と思ったら孫と祖父みたいな温かい関係です
主要な登場人物はそんなに多くないので関係性もすぐ把握できます
主人公のcv森功至さんは70年代のタイガーマスク役の方だったんですね
ニュース番組のナレーションで聞き覚えていたので、しっとりとした声で役にあってると思いました

攻殻機動隊とは違った電脳ネット社会を描いてるので楽しめました

個人的に「もっと評価されるべき」

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25

69.1 19 サイバーパンクアニメランキング19位
TEXHNOLYZE テクノライズ(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★☆ 3.8 (227)
1400人が棚に入れました
舞台は、絶望と暴力に支配され荒廃した都市・流9洲(ルクス)。老朽化したこの街は現在、外界からのネットワークから外されて孤立しており、街から他の都市へ行くことは困難だが、逆に行き場を失くした者達が流れ着く、吹き溜まりの場所と化していた。

ある日、この地に一人の男が外界から降りてきた。男の名は吉井。ある野望を遂行すべく降り立ったこの男を迎えるのは、生きる為に賭けボクシングで生計を立てる少年・櫟士、近い未来を見ることの出来る少女・蘭、街の声を聞くことの出来るオルガノの長・大西京呉、そして未来の義肢である「テクノライズ」の技術に魅せられクラースから降りてきた科学者・ドク。この男の来訪により、やがて流9洲は街全体を巻き込んだ事件へと発展していく。

ソーカー さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

未来は残酷で美しい、戦慄のSFカルトアニメ

舞台は、絶望と暴力に支配され荒廃した都市「ルクス」。
ヤクザ組織「オルガノ」、オルガノに対立する労働者連合「救民連合」、ギャング集団「ラカン」
様々な組織が入り乱れる混沌とした世界で、巻き起こる抗争を描いたSFカルトアニメ
もちろんただの抗争を描いているわけではなく、何者かの陰謀や謎が付きまといます

このアニメは終始退廃的かつ陰鬱で非常に難解なので、決しておすすめはできないですw

中盤までは「ヤクザの抗争を描いたVシネマ」みたいな内容ですので、
凄まじくバイオレンスな描写も多いです
そして痛快さ・爽快さの欠片もないので、単純に娯楽性を見いだすのは厳しいです。
特に意味不明な1話で90%ぐらいの人がリタイアするんじゃないかな?w
まぁそんな感じなので・・・それでも見てみたい人は挑戦してみてください

どこが難解なのか?というと情報の提示の仕方が、視聴者にあまりにも不親切すぎるところですね。
普通にぼんやり見てたら、間違いなく理解不能な状態に陥るでしょう。
なので、多少ネタバレ覚悟でwikiもしくは公式サイトで調べてから見るか、調べつつ見ることをおすすめします

とりあえず基本設定である「テクノライズ」についてだけ説明すると・・・・
テクノライズとは損失した人体の一部を補う、未来の義肢のことです
そのテクノライズの人間にもたらす影響が、この作品の大きなテーマになってきます。
後半になるにつれ、事態が大きくなってくるので徐々に分かってくるでしょう。
人間が「テクノライズすることによる功罪とその意味」を直接的に描いています

他にも重要な設定は多々あるのですが・・・興味があれば自分で調べてくださいw
設定や世界観がぼんやり分かってきたら、中盤から目まぐるしく事態が動くので面白さが増してくる
ただ終盤はもう想像を絶するカオスです。プラス超絶鬱展開・・・

『serial experiments lain』(脚本家が同じ)と双璧をなす難解作品ですが
個人的にはストーリー性・世界観・設定全てにおいてテクノライズの方が断然面白かったです
SF設定も、殺伐とした世界観・独特の演出も素晴らしい
今まで色々アニメを見てきましたが、色んな意味で一番衝撃的な作品です。

こんなハードなアニメには、もはやお目にかかれないででしょうね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 20
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

中盤まで恐ろしく退屈で、終盤は胸糞悪くなる・・・全くもってお勧めできない作品!

本作が好きな人は余程のマゾなのか?(失礼!)

私は根性で完走しましたが、かなりの苦行でした。
そして見終わって、「途中で投げださないで頑張って良かった。」という報われ感が全然ないところが・・・また何とも。

変わったアニメが見たい人にはお勧めできる作品なのかも?(これ以上の感想は出てきません・・・)


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回


=========== TEXHNOLYZE テクノライズ (2003年4-9月) ============

{netabare}ROGUE 01 STRANGER (部外者) ☆ ※初見では何が何やらサッパリ分からない・・・
ROGUE 02 FORFEITURE (喪失) ☆ ※同上
ROGUE 03 TEXHNOPHILE (ハイテクマニア) ★ ※「テクノライズ(義体化する)」という特殊技術
ROGUE 04 SYNAPSE (神経細胞の連接部) ☆ テクノライズ技術の解説回
ROGUE 05 LOITER (彷徨い歩き) ☆
ROGUE 06 REPETITION (反復、模写) ★
ROGUE 07 PLOT (策謀) ☆
ROGUE 08 CRUCIBLE (坩堝、激しい試練) ★ 市街での抗争勃発
ROGUE 09 WIGGLE (体の揺れ) ☆ 
ROGUE 10 CONCLUSION (結論) ★ 吉井の死 ※初めて少し面白いと思い始める
ROGUE 11 VAGRANT (ルンペン) ☆
ROGUE 12 PRECOGNITION (認識) ☆
ROGUE 13 VISTA (展望) ★ もの見(ラン)の予言
ROGUE 14 REJECTION (拒絶) ☆
ROGUE 15 SHAPES (形状) ☆
ROGUE 16 STRAIN (圧力、旋律) ★ シェイプスの侵攻  
ROGUE 17 DEPENDENCE (依存) × シェイプスの秘密 ※単に悪趣味の話だったとは
ROGUE 18 THRONE (玉座) × 三長老惨殺 ※悪趣味さを見せ付ける作品?
ROGUE 19 HEAVENWARD (天国の方へ) ☆ 地上の世界 ※だからどうしたの?という感じ
ROGUE 20 HADES (ハデス(冥府の王)) ☆ 
ROGUE 21 ENCEPHALOPATHY (脳疾患) × ※もうどうでもいい話になってしまっている
ROGUE 22 MYTH (神話) × ※同上 ※ED 「WALKING THROUGH THE EMPTY AGE」{/netabare}
--------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)0、★(良回)6、☆(並回)12、×(疑問回)4 ※個人評価 × 3.1


OP 「GUARDIAN ANGEL (XAVIER'S EDIT)」
ED 「月の詩」

投稿 : 2024/05/11
♥ : 17
ネタバレ

ねこmm。 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

煉獄に咲く花  【ねこ's満足度:85pts】

荒廃した街・流9洲(ルクス)に生きる人間たちの不器用な生き様を描いたSFアニメ。
”テクノライズ”というのは、人体との融合を目的として作られた、いわゆる義肢のことです。

とことん泥臭くてオシャレさなどまるで無し。
画面から滲み出てくる狂気と終末感は激ヤバです。
一秒先で何が起こるのか分からない。そんな異様な緊迫感の中進むストーリー。
抜け出したいのに抜け出せない。目を背けたいのに見入ってしまう。そんな作品でした。

過激な暴力描写こそあれ、序盤は淡々とした立ち上がり。セリフも少ないです。
特に主人公はほとんど喋りません。発する台詞はほぼ「はぁはぁ」のみ。なんだこれ(笑)。

ところが流9洲とは別の場所から来た吉井一穂という男の出現により、物語は大きく動き出します。
この吉井という男、これがまたヤバい。最初はただの変わった奴といった印象でしたが違いました。
吉井により引っ掻き回された流9洲は、まるで生物であるかのように怒り、悶え苦しみだすのです。

中盤以降はとにかく引き込まれました。
止まらない負の連鎖。目を覆わんばかりの残酷シーン。
そこから見える結末は、救いようのない”絶望”だけ。
最終話の{netabare}ヒロインの扱い{/netabare}なんてヒドいの一言でした。

ただ、この作品には本当に救いが無かったのか?
わたしは逆に、”究極の救い”を描いた物語だったような気がします。
キーワードは”{netabare}煉獄{/netabare}”。{netabare}地獄{/netabare}ではなくあくまで{netabare}煉獄{/netabare}と表現されていることが鍵です。

本作をひとことで表すなら、『人間賛歌の物語』といったところでしょうか。
”生きる”ってどういうことなんだ?”生かされてる”こととの違いとは。
過激すぎる表現のその裏で、そんなことを謳っている作品のように感じました。
それにしても重たかった……。そしてなにより、流9洲には絶対住みたくない!!(笑)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 15

63.9 20 サイバーパンクアニメランキング20位
攻殻機動隊ARISE GHOST IN THE SHELL 「border:2 Ghost Whispers」(アニメ映画)

2013年11月30日
★★★★☆ 3.7 (217)
1337人が棚に入れました
自らが育った501機関から独立を果たし軍内部での自由を得た草薙素子。しかし自立を後押しした荒巻の薦めにも関わらず自身の部隊の結成を先送りしていた。そのさなか、何者かによるロジコマへのハッキングが発生。調査のためにロジコマを移送する草薙は武装集団に襲撃される。そこには、「眠らない眼」を持つ元陸軍空挺特科第一のバトー、ネットの情報解析を得意とする元陸軍情報部のイシカワ、特殊工作と電子戦のスキルを持つ同じく元陸軍空挺特科第一のボーマがいた。都市交通網を混乱させてまで執拗に草薙を攻撃する武装集団。対する草薙は陸軍警察の潜入捜査員パズと海兵隊のエース・スナイパーのサイトーをスカウトし反撃に出る。

声優・キャラクター
坂本真綾、塾一久、松田健一郎、檀臣幸、中國卓郎、上田燿司、中井和哉、沢城みゆき、沢木郁也、藤貴子

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

素晴らしい!やりたいことはハッキリしてる、【素子vsバトーvsパズvsイシカワvsボーマvsサイトー】だ!

「戦え、戦わずして、未来を語るな」


攻殻シリーズのエピソード0を独自世界観で描く全4部作の第2話
監督はメカ作画が本業の「竹内敦志」へ交代したことで前作以上にスピーディーな戦闘シーンが持ち味になっています


今回新たに「サイトー」「イシカワ」「ボーマ」の3人が初登場(トグサは出番なし)
サイトーがギャンブル狂だったりと新たに付け加えられた設定が多数あるものの、【結局のところシリーズにおいてこの3人は深く人物像が語られていない】のであまり以前のシリーズの先入観を持って観るのはよろしくない
つまり今作、シリーズファン向けではないのです
しかしながら映画としての魅力は余りあるものがあります


今作ではバトーらの元上官が企てたクーデターに素子と彼女がスカウトしたパズとサイトーが仲間に加わって事件に挑むというもの
よって後の公安9課のメンバーの邂逅、そして彼らの直接対決が描かれるというファンならずとも興奮の展開が待っています


事件のオチこそborder:1から引き続きの“お約束感”が出てきたものの、冲方丁お得意の群像劇風に多数の人物の視点が絡み合うドラマティックなお話作りは特に賞賛したいですね
まだ荒巻の部下となったワケではないですが、軍から独立した素子が独自部隊結成のために奔走する姿が描かれます
荒巻の言葉を借りるなら「ようやく、動き出した」ワケです
一時間足らずの尺の中に詰まる膨大な情報量と見せ場、そして無理の無いテンポ感
昨今のアニメ映画には間延びした作品が多い中でこれだけ切り詰められた今作は大変素晴らしいと思いますね


作画監督はスーパーリアル調の西尾鉄也氏から交代になったものの、息もつかせぬアクションとスーパースローを意識した演出、CGとの調和など前作からさらにパワーアップしておりまして、これだけでも十分な見どころといえます
それに我らが「ロジコマ」も大活躍(笑)


音楽は引き続きコーネリアス、主題歌は若干23歳のシンガーソングライター「青葉市子」とコーネリアスのコラボ
このブレない方向性も相変わらずカッコよすぎる


そして今作のラスト、なぜかシリーズお馴染みの“あの”名セリフが呟かれます
これは恐らく次章以降の素子の人格に影響を与えると思しき伏線のような気がします
次回作は2014年6月・・・ってちょっとまた間隔長過ぎだってばよw











また、「檀臣幸」さんは今作がまさかの遺作となってしまいました;
改めてご冥福をお祈りします

投稿 : 2024/05/11
♥ : 18
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

公安9課の芽吹き!!第二弾:直球作品★

■評価
テーマ性    :★★★   3.0
サイバーパンク度:★★★★  4.0
スピード感   :★★★★  4.0
考察度     :★★★☆  3.5
おススメ度   :★★★★☆ 3.8

■ストーリー
陸軍501機関から独立した草薙素子は自身の独立部隊を立ち上げる事を模索する日々を送っていたが、ある日荒巻から公安局のシステムダウンとロジコマへの不正ハッキング事件の捜査を依頼されるが・・・事件の背後に大戦時の戦犯者であるソガ大佐や武装集団、そして政府高官の陰謀の渦に巻き込まれる事になる。果たしてどんな真相が隠されているのか?
そして、草薙は独立部隊を立ち上げる事はできるのか?

■感想
前作と同様に誰にでも受け入れてもらえる作品になっており
個人的には前作のBorder1よりも楽しめる内容でした^^

前作ではサスペンス・ミステリー+ちょいホラー調??の変化球作品でだったが、本作では倍速再生したかの様なスピード感あふれる直球勝負の展開となってます。
また本作は政府高官の政治スキャンダルをベースにアクションを多用する事で、アップルシードを彷彿させる雰囲気と、権力と電脳犯罪に翻弄される犬達(兵士・捜査官)を描く物語は苦々しくもクールな内容です。
Border1のレビューと重複しますが、ストーリーはもっと長く複雑でも個人的には構わないと感じますが、アクションと長文台詞を並行進行させ、強制的に視聴者の脳みそで同時処理させる演出があるので、私は理解するのに一苦労しました。
この弩Sっぷりは相変わらずという所でしょう。(自分だけか…。)
また視聴する方によっては、キャラ設定の大幅な変更に戸惑いを感じるかもしれないが、ある意味でカジュアルな雰囲気のある原作漫画に近い作風にしていると感じます。S.A.Cの根強いファンは少し覚悟を持って視聴した方がよいでしょう。

不満点は今回の攻機ARISEのテーマは『メンバーとの出会い』と『組織の発起』となるが、前者のテーマがちょっと雑すぎると感じます。ストーリーを軽くしている分、仲間との出会いや信頼関係を築く過程をもっとドラマティックに描いて欲しかった。このテーマが崩れると、このシリーズの存在意義が問われる事になるので、今後はテーマを深堀する様な展開に修正していって欲しいと感じます。

しかし、記憶を操るウィルスの謎はまだまだ未解明なので
これからの展開を更に期待します。

尚、念のため本作はスピード感重視であるため、ストーリーの取りこぼしがない様に簡単に話のポイントをまとめておきます。完全なネタバレになるので閲覧にはご注意くださいまし。

■本作の謎とポイント
{netabare}
Q1:ドミネーションって何?
A1:本作で作られた造語の様です。
  意味は社会インフラシステム(国民生活を支える交通・
  電力・上下水道)への大規模ハッキングによって制御を
  奪い取る事を言っている様です。

Q2:パンドラって何?
A2:軍事機密や外交白書??など国家がもつ機密情報を
  たっぷりとつめこんだ記憶媒体の総称の事を言って
  いる様です。

Q3:物語序盤の高速道路での少佐と武装勢力との戦闘で
  少佐は黄色いバイクに乗り換えたが何故?
Q3:ドミネーションによって、少佐のデジタルバイク
  (赤いバイク)が操作不能になったが、偶然にも横を
  走っていたアナログバイク(黄色いバイク)が人の
  マニュアル操作が可能なレトロなバイクであった
  ために乗り換えた様です。

Q4:なぜ少佐はボーマの居場所が分かったの?
A4:どうやらヴィヴィが少佐や荒巻に教えた様です。
  どうやって教えたかはちょっと分かりませんでした。

Q5:本作の事件概要は何だったの?展開早すぎで分かり
  辛かった…。
A5:国防省次官は武器密売とゲリラ虐殺を隠蔽し
  且つ米帝に亡命するために軍事モジュールと
  擬似記憶ウィルスに感染させたソガ大佐や旧78部隊を
  利用して大規模ドミネーションを発生させ、パンドラ
  内部の軍事・機密情報に不正アクセスしようとした
  ・・・というのが事件概要です。
  また国防省次官を裏で操っていたのは、米帝情報部の
  ヴィヴィであり、彼女も何者かの暴露型ウィルスに
  感染することで暴走し、パンドラ内部の情報を全世界
  に暴露しようとしていました。
  米帝の陰謀かは不明ですが・・・棚ぼたでパンドラ内
  の情報を奪取しようと、だんまりを決め込んでいた
  のは確かな様です。(荒巻・少佐談を参考)

  しかし、ヴィヴィを操ったウィルスは何者がどんな
  目的で放ったものなのか?
  この伏線が非常に気になる所です。Boarder1の
  ファイヤースターターと関係してくるのか?
  今後の展開に期待しています。
{/netabare} 
 
ご拝読有り難うございました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 15
ネタバレ

ポール星人/小っさ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

アクション多めで1話よりは観やすいですね。

 ARISE見直してみて、2話はバランスよく素直に面白いと感じたので上方修正します。

ただ、ほんとARISEは原作の台詞の引用が妙に目立つのが逆に鼻につくなとは改めて思いましたです。
/////////////////////////////////////////////////////
 話が進むごとにランキングが下がりますけど、普通に面白いと思うんですけどねぇ(汗)
 大雑把に言うと{netabare}国にスケープゴートにされた(とある意味思いこまされた)軍人の復讐の背後に悪さ働こうとする政治家がいて、実はその更に裏には他国のAIを利用した謎の存在が有って {/netabare}戦いは続く~的なプロットな訳ですがそいでは弱いって事なんでしょか?1時間に巧く纏めてる気はするんですが。
事の真相は何?という刷り込まれた嘘の記憶に翻弄される皮肉なこの世界観には有ったアクション物として及第点かなと。
劇場でみる単発の映画として観ると確かに爽快感は無いかもですが、OVAの2話目として観た私的には相応には満足です。
まぁ、私が俯瞰で物語を見るのが苦手なタイプだから不満点が見えないだけかもしれませんね。

 んでも、あえて原作版・押井版は兎も角、神山版にもマッチしない前日譚というものにする意味って有ったの?という冷めた目では観ちゃうんですけど。原作者を軽んじるのがアニメ版攻殻の流儀としても、SACの人気には乗っかった商売で良かったんじゃね?とは思うんですが。

「君且つ僕?僕且つ君??」がフチコマな感じで懐かしいすね。沢城さんとは贅沢なw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 11

75.4 21 サイバーパンクアニメランキング21位
PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR(アニメ映画)

2020年3月27日
★★★★☆ 3.8 (223)
1330人が棚に入れました
2120年、東京。シビュラシステムによって管理された社会で、刑事課一係を率いて事件を解決してきた二人の監視官、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフは、事件を捜査していく渦中で真実と正義を巡り決裂してしまう。それらの事件の裏で暗躍する梓澤廣一は、ついに刑事課そのものを標的に定め、公安局ビルを襲撃する。かつてない窮地に立たされた公安局刑事課一係。灼と炯の信義を問う、最後の事件が起きる――

声優・キャラクター
梶裕貴、中村悠一、櫻井孝宏、大塚明夫、諏訪部順一、名塚佳織、沢城みゆき、佐倉綾音、日髙のり子、宮野真守、中博史、日笠陽子、森川智之、堀内賢雄、矢作紗友里、関智一、野島健児、東地宏樹、伊藤静、本田貴子、花澤香菜
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

亡霊たちの宴、終幕。

ProductionI.G制作、SF×サスペンス。

乱雑する全ての点が線となり集約され、
ここに亡霊たちの宴が幕を閉じる。
人物を動かすあらゆる動機が露呈された。
シリーズ最高評価点を贈りたい。

正義を巡り決裂した灼と炯・イグナトフ。
{netabare}暗躍するインスペクターが公安局を襲撃する。
仕組まれた自動車事故、微笑むコングレスマン。{/netabare}
かつてない窮地に立たされる公安局刑事課一係。
占拠された公安局ビルでダイハードが始まる。

シビュラシステムの盲点が照準である。
複雑に入り組んだ事件の真相は、
それぞれが抱く正義と信念をもとに、
その分岐点が交錯し始めるのだ。
{netabare}ビフロストの真の目的とは!?
一介の駒である梓澤のその真意とは!?
そして法斑静火の行動原理、
圧巻の映像描写は健在で臨場感が凄い。{/netabare}

シビュラはまだ進化の途上であるのだ。
高度に拡張した完璧なシステムの構築に、
膨大な外部情報だけでは測れないもの、
亡霊とは設計図から零れ落ちたバグである。

灼が語るこの言葉こそ物語の本質である。
{netabare}「ドミネーターには引き金が付いている」
つまり責任はまだ「人間側」にあるのだ。{/netabare}

躊躇する存在こそ人間なのだろう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 41

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

き、汚い!。流石サイコパス汚い。

フェイトがおじゃんになっちゃったので、急遽予定変更してサイコパスを鑑賞。正直3期は微妙だったし、アマプラで見れるから…と期待はしてなかったのですが、面白れぇ…じゃねぇかこれ。


しかし、やはり汚い!。詳しくはネタバレ注意なんで言えないですが、こんな終わらせ方は汚い!。でも…、好きってなってしまうのが罪深い。そもそもディケイドじゃあるまいし、続きは劇場で!はないと思いますが、ソフトが売れない今は色々厳しいのかも。


正直言って作画は劇場版に相応しい超豪華仕様じゃ全くありません。テレビのクライマックスな2、3話を劇場にかけた感じです。しかし、微妙だった3期が見違えるほどに面白い!。終わらせ方はともかく、一本の映画として充分ストーリー、キャラが魅力的だから善し!。正直私は全シーン作画がしっかりしてないと許せないタイプではないので。作画の粗捜しはつまらないことです。


とにかく、今回は梓澤の悪役としての魅力が全体にしっかり芯を通してるし、目標もハッキリしているアクションサスペンスとしてかっちり構成されてます。キャラの台詞がいちいちキマっててどこか箴言じみている味わいがあるのも善し。


多くのキャラ、多くの事態が入っていますがゴチャゴチャにならず2時間15分くらいが凄く充実しています(充実し過ぎて久々に膀胱がヤバイ…って状態に)。


終盤の事件の収拾が少々軽かったり、そもそもあの終わり方…とか言いたいこともあるが、3期でガッカリした人も充分見る価値あります。


最後に、梓澤と相棒のハッカーのおデブちゃんの関係がめちゃ良い!。彼等の活躍をもっとテレビ…とは今更言ってもせんないこと。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 28
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

シビュラの帰還

AmazonPrimeVideoの編集版を視聴。

【物語 3.5点】
『~3』としては大風呂敷を畳むも、
『PSYCHO-PASS』としての論点は、語る土台を整えるに留まる。
とは言え、刑事ドラマとしてシリーズが脱線、霧散という最悪の事態は避けられた。


道中、シリーズの象徴である“ドミネーター”の出番を制限してまで、
アクションや人質に交渉、脅迫、“狐”やブラフなども飛び交う、
刑事ドラマSPらしいお祭り騒ぎを繰り広げた時は、
興奮はするけど、もう『PSYCHO-PASS』は戻って来ないのでは?
とワクワクとイライラが入り混じった複雑な気持ちにさせられましたが、
最後はちゃんと『PSYCHO-PASS』として着地。


結局、{netabare}いつも通りのシビュラ圧勝でしたw{/netabare}


【作画 4.5点】
各組織の“代表選手”が激突する格闘戦、銃撃戦、ドローン戦などが
よく動く作画でド派手に演出されている。

もっとも、私のベストバトルは……{netabare}“ダンゴムシ”無双ですが。{/netabare}


描き込まれた背景美術に重ねられた季節の描写も頑張っていた本作。
降り止まない雨ばかりでなく、
雪降りしきる真っ暗な冬から、やがてやって来る花吹雪舞う新しい春へ……。
春公開の意外なタイムリー性を見せる。


霜月課長の変顔もあるよw


【キャラ 4.0点】
華やか。舞台を公安局とその周辺にしぼることで、
現状のオールスター戦が実現。


『~3』の新主人公キャラの灼(あらた)については、
シビュラとの関係性も含めて立ち位置が明確になり、
罪を憎んで人は執行せず裁きにかけるという性格が改めて強調。


今後、旧主人公の朱の構想や、狡噛の価値観と、
どう関わり、対峙していくかが、
『~3』が壮大な伏線だったか、脱線だったか、
決定付けるポイントになると思います。


梓澤(あずさわ)は、“紙の本”で読書する中々のボスキャラでしたが、
1期の例のあの方には、やはり及ばず……。

むしろ、スタッフさんたちもそれは承知の上で、
及ばない様を、シナリオで生かす道を模索した感があります。


【声優 4.0点】
主要キャスト陣らが引き続き安定。
ブラフ合戦が醍醐味になるのも役者の好演あってこそ。

天才クラッカー・小畑千夜役を演じた矢作 紗友里さんの悪態と、
受け流す梓澤廣一役の堀内 賢雄さんの掛け合いも程よい毒スパイス。

CV野沢 由香里さんとCV斧 アツシさん。
ベテラン勢が演じた“ピースブレイカー”残党も
“亡霊”として渋味が効いてグッド。


【音楽 4.5点】
劇伴は『~3』からのメインテーマが要所で活躍。
新旧キャラが“肉体言語”で会話するシーンでは、
旧メインテーマの旋律もアレンジされ対決を盛り上げる。

OPはWho-ya Extended「Synthetic Sympathy」
雨が降り止まない首都の闇をハイスピードで駆け抜ける快作。

EDはCö shu Nie「red strand」
変拍子も交えて歪んだ世界をかいくぐり意志を貫き通す。


なんだかんだ『~3』の一番の収穫は新OP&ED主題歌体制の確立。
特にWho-yaの抜擢は大きかったと思います。


【感想】
どこぞの中央銀行が利下げした、統計発表がどうだった。
テロが起きた、選挙結果が意外だった……。

現代の市場取引は、世界情勢などにも反応して、
自動的に売買を即断するアルゴリズムによって、
超高速マネーゲーム化している……。

とすると仮に市況を一変させる出来事を操作、創造できるとしたら、
これはもはや大きすぎて摘発されないインサイダー取引だな……。

本作を視聴していて真っ先にこの着想を思い出しました。


過度な刑事ドラマ路線傾倒への懸念はひとまず払拭されましたが、
22世紀が舞台のSFとして未来を見せてくれたかと言えば、
扱われた問題は、引き続き21世紀的だったと思います。

ビブロストとの戦い自体……
{netabare}シビュラ開発過程で残った過去の問題の精算でしたし。{/netabare}


さらにここに来て、朱が、{netabare}法による人とシステムの保護を提唱し出した件。

そう言えば、そもそも法治主義が何故崩壊したのか。
そこからシビュラシステムがどう確立されたのかについては、
語られていないことも多い印象。

もしも朱が法治主義の復活を目論むならば、
今後の物語は多分に温故知新の様相を呈していくと思われます。{/netabare}


因みに劇場公開版の方は、EDクレジット後に今後の展開も匂わせる映像が追加されているとか……。
流石に新型コロナ感染リスクを冒して劇場に遠征する勇気はないですね……。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 27

67.2 22 サイバーパンクアニメランキング22位
マルドゥック・スクランブル 燃焼(アニメ映画)

2011年9月3日
★★★★☆ 3.9 (214)
1322人が棚に入れました
 『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第2弾。賭博師シェルの犯罪を追うヒロインのバロットとその相棒ウフコックを待ち受ける数々の困難と、新たな戦いの舞台“カジノ”で繰り広げられる緊迫の攻防を描く。賭博師シェルの犯罪に巻き込まれた少女娼婦バロットと、委任事件担当官のネズミにして万能兵器のウフコック。シェルを追う2人の前に、シェルに雇われた委任事件担当官ボイルドが立ち塞がる。やがて九死に一生を得たバロットとウフコックは特殊な研究施設“楽園”に運び込まれる。窮地を乗り越え絆の強まった2人。やがて彼らは、シェルの移し替えられた記憶が、彼が経営するカジノの百万ドルチップの中に隠されていることを突き止める。バロットはそのチップを手に入れるべく、ついにカジノへと乗り込んでいくが…。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、若本規夫、小林由美子、浪川大輔、有本欽隆、勝田晶子、藤田淑子、土師孝也

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

3部作の中間と言うことでクールダウン的な作品 静かなるサイバー

2011年公開の劇場用アニメ 第2弾 62分 R15指定

3部作でスタッフキャストは一貫しているようです。

林原めぐみさんは結構お年と言うことで、15歳の役は2度に渡って断ったそうですが、
物語の設定上、声に強力なエフェクトをかけると言うことで受けたようです。
第一部に比べてエフェクトのかかりが薄く、林原さんの地声に近くなってますが、
さすがはベテラン、違和感は無いです。15歳に聞こえるかは関係ないです。

前半は亜空間「楽園」内でのゆるいバトルで多少グロあり。
でも、放送できないレベルでもないし、R15の意味は無いと思います。
ここではパートナーであるウフコックが物語内で重要な役割を担いそうな流れになります。
後半はカジノでの頭脳戦。
サイバーではないウイリアムギブソンの世界という感じで、ちょっと地味かな。

第二部と言うことでそれほど盛り上がりも無く衝撃的な画像も見当たらない。
大人しい感じに仕上がっているようです。

本格SF小説が原作と言うと「新世界より」や「パプリカ」など数は少ないようですので、
貴重な作品の一つだと思います。
上に上げた作品と比べても意味は無いことで、この作品にしかないセンスオブワンダーを感じられれば価値ある作品となると思います。
この作品の価値はちょっと深いところにあるような気がします。

EDは天上の歌声 本田美奈子の「アヴェ・マリア」

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ウフコックキターーーー(○∀○)ーーーー!!!

前回より全然良かったです!
なにより前作ラストで血みどろになったウフコックが復活する瞬間が最高


前作よりウフコック全然可愛くなっているし、バロットの精神的成長もあって危機を乗り越えた二人の絆はより確かなものとなっていますね
試験管に抱きついて当人達以外には声は聞こえないのですが、確かにバロットは「愛してる」と囁くわけですよw声は聞こえないんだけどw
いやーニヤニヤが止まりませなんだ(・∀・)


二人の名コンビぶりが発揮される様は爽快
特に今回は殺し合いという形ではなく、カジノでの知略においてという形なので変に安っぽくも悪趣味でもないのが素晴らしいです


名脇役のトゥイードルディー&トゥイードルディムも登場
小林由美子はやっぱり天才でしたw


そして劇中で最もカッコイイ女性、ベル・ウイングさんの登場に胸がアツくならざるをえない


ウフコックの出生の秘密やボイルドの過去などもちゃんと挟んでくるし、キャラクターは完全に熟成したと思います
ひとまずは満足


って!またそんな中途半端で終わりかーい!w
はやく【排気】やってくれー^^;

投稿 : 2024/05/11
♥ : 11

watawata さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

冲方丁の世界観炸裂!!

冲方丁作品だけあって、理解し見終えるのに2回かかりました。
独特の世界観がこの上なく自分には相性が良かったかなぁ。

キャラクター同志の会話の掛け合い、映像美がこの上なく素晴らしかったですねぇ。

自分の苦手とするグロシーンも多々ありましたが、何とか我慢できる許容範囲。

次回作、排気に期待だいですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 8

76.4 23 サイバーパンクアニメランキング23位
アクダマドライブ(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (360)
1225人が棚に入れました
遙か昔、カントウとカンサイの間で戦争が起き、世界は分裂した。カンサイはカントウの属国となり、独自の発展を遂げていった。しかし、政治と警察力は衰退し、犯罪が横行。その犯罪者を“アクダマ"と呼ぶ――。 本作品の舞台となるのは、高度に発達しながらも歪んだ社会。その中で、アクダマたちはいかにして自分らしくあろうとするのか。一堂に会したアクダマたちの美学がぶつかり合う。

声優・キャラクター
黒沢ともよ、梅原裕一郎、武内駿輔、堀江瞬、緒方恵美、木村昴、櫻井孝宏、大塚明夫、花守ゆみり、榊原良子、内田真礼
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

浪花節な古事記

オリジナルアニメ 

“アクダマ”とは作中でいう犯罪者のこと。そう言えばいいのにしてないのはそういう世界だから。
その昔「カントウ」VS「カンサイ」で戦争勃発。カントウが新型爆弾を落として決着。焼け野原になったカンサイの復興を助けたりもしてカンサイ人はカントウに感謝するようになった、とのこと。

メタで馴染み深いものが仕込まれてそうですが、当該世界はオリジナリティあるんじゃないかしら。
2020秋スタート新作の中では第1話の引き込みがぶっちぎりで良かったのがこれ。構成がしっかりしてるとか心情描写が丁寧だとかいうのをいったん置いときまして

 {netabare}作った人の頭ン中を覗いてみたいぜ!{/netabare}

人間の想像力は際限ないなと実感できる“架空の世界”を堪能しちゃえばええじゃないかと思うのです。
“アクダマ”が疾走(ドライブ)する全12話。IF世界の近未来モノ。今年2020年でいえば『ドロヘドロ』と同じくどうも言葉に落とす作業が難儀な作品です。「1話観て合いそうかわかるよ」死体がゴロゴロ転がります。そこ本筋ではないもののそれ自体が嫌という方には撤退を推奨するくらいでしょうか。

【アクダマ's】
 詐欺師(CV黒沢ともよ)
 運び屋(CV梅原裕一郎)
 喧嘩屋(CV武内駿輔)
 ハッカー(CV堀江瞬)
 医者(CV緒方恵美)
 チンピラ(CV木村昴)
 殺人鬼(CV櫻井孝宏)

愚連隊は黒澤明の時代より七人と決まってるのかどうなのか。
その七人の通り名には当たり前だが意味がある。
そして通して観ると「進むべき道は自分の意志で決める」真っ当なメッセージも伝わってくる。
突拍子ない世界に私達が置き去りにされないのは基本的なお作法を心得ているのもあるやもです。

アニメに求めるものの一つは表現手段として実写ではしょぼくなると思しきものをいい意味で見せつけてもらうことだったりします。それを満たしてくれた良作ですね。

■むしろ…
『ダンガンロンパ』と比較される本作ですが、肝心のネタ元を知らない私です。
むしろ『PSYCHO-PASS』との既視感が強いかしら。アクダマ認定のオートマティックぶり。某執行官ばりに現場で処刑実行できる公務員の存在。そんな世の中に感じる居心地の悪さなんてのもそうです。
{netabare}さらにサイコな殺人鬼役に櫻井孝宏さん。ダメ押しで公機関の女ボス格に榊原良子さん。榊原さんがどーんと鎮座してると悪の組織風味が何倍か増しますよね。{/netabare}



※妄想劇場

■大大阪(だいおおさか)の衰退

大正末期~昭和初期。大阪が東京を凌駕していた時代を指してこう言う。何年か前に通天閣で大大阪展やっててそれで知ってました。約100年前の大阪イケイケどんどんぶりは白眉ものでしたよ。
そして現在…ってことになるわけでして結果は東京への一極集中。いろいろ理由はあるんでしょうが

{netabare}東海道新幹線開通{/netabare}

{netabare}東名高速道路その他インフラ投資が高度成長を後押ししました。導かれるはリアルでの大阪の没落そしてアニメでシンカンセンの神格化。なんとも皮肉が利いてます。
またこれ“財政健全化”“国民の借金いくら”“角栄の頃と違い公共工事に効果はない”と捉えてる層にとっては、公共工事アクダマ論に乗っかり「そんなのを神聖化するなんて…プークスクス」とさらにマウント取れることでしょう。なお私の意見は真逆です。{/netabare}

蛇足で劇団☆新感線も出自が大阪芸術大学だったりするのもなにかの意図を感じます(しません)。


■暗喩なのか妄想なのか

大阪を好きなのか嫌いなのかよくわかりませんが、無関心ではいられないというのは伝わってきます。
く○るのたこ焼きが500円と現在より安価。デフレーションでも起きているのでしょうか。

{netabare}ハンコも消えてない(笑) このハンコで一元化って仕掛けは面白かったですね。きっと文化と認められての発展形をアニメで描いたのでしょう。そんな発展形ハンコのもたらす災厄を描いてたこともあって、マイナンバーみたいに“国民総背番号制”一元管理どうかと思う層には「ほら見たことか」とウケが良かったかもしれない。なお私の意見は真逆です。{/netabare}

作品チュートリアルなウサギくんとサメくんの寸劇は有難かったですね。ウサギとサメの組み合わせで
{netabare}真っ先に思いつくのは“因幡の白うさぎ”だったりします。文章上のワニ=サメと解釈するのが一般的。その寓話の教訓とは?

1.思いやりの心をもっていると、幸せな結末が待っている
2.余計な振る舞いは災いを招く

といったところでしょうか。本作の展開結果に通ずるものがあります。{/netabare}


とここまでの垂れ流しをご容赦をば。
カンサイという近未来大阪風味な街で繰り広げられる大騒動。やや陰惨でディストピアな世界だからこそ他人様の優しさが沁みる。地でいく娘主人公の立ち居振る舞いに心打たれます。

 思いやりの心をもって迎える結末は幸せなのか不幸なのか?
 余計な振る舞いが招いたのは災いなのか未来への光なのか?

各々で捉えようのある結末も好感度高し。

 馬鹿な出会いが利口に化けて よせばいいのになんとやら

人生どう転ぶかわかんないもんですよね。


{netabare}結局のところ“医者”の年齢は不明のまま。おいくつだったのだろう?{/netabare}



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

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2020.12.30 初稿
2021.09.25 タイトル修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 50
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

これまたアクダマン

制作STUDIOピエロ。

アクダマと呼ばれる犯罪者が跋扈するカンサイ。
高度に発達しながらも歪んだ社会で、
己の生き方を貫く全員悪党の犯罪活劇開演。

街の喧騒が細部まで書き込まれ、
推定懲役数百年の悪党どもや市民が、
たくましく生きているカンサイ。
とある依頼から集められた精鋭たち。

初回最後で見事にオチが付いた。
{netabare}アクダマに指示を与えるネコ型ロボット。{/netabare}

ダークホースならこれでしょうか、
楽しくなる可能性は大いにありますね。

6話視聴追記。
{netabare}物語の奥行に、疑問を感じ始め、
これは期待薄なのかと…思いきや、
ここで物語に芯が通ったと思います。{/netabare}
戦闘シーンは素晴らしいの一言ですね。

最終話視聴追記。
この結末で良いのではと思う。
荒唐無稽な物語でしたが、
どこか熱量を感じる作品でした。

率先して、お勧めは出来ないが、
勢いある演出、展開がお好きな方へ。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 48
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

カントウへの憧憬は消えたのか

アニメーション制作:studioぴえろ、
監督:田口智久、シリーズ構成:海法紀光、
ストーリー原案:小高和剛、
キャラクター原案:小松崎類、田口智久、
キャラクターデザイン:Cindy H. Yamauchi、
原作:ぴえろ・TooKyoGames

80年代からアニメ制作を行ってきた
老舗の制作会社、studioぴえろのオリジナル作品。
原色系の派手な色遣いの作画は、
『ダンガンロンパ』を彷彿とさせる。

500YENを拾ったことから
アクダマ(犯罪者)認定された一般人が、
ほかのアクダマたちとともに、ある荷物を強奪する
仕事を請け負うところから始まる物語。
周りは一癖も二癖もある凶悪犯罪人だらけ。
どこか見覚えのある展開だと思ったら
ニコラス・ケイジ主演のアメリカ映画『コン・エアー』だった。
こちらは、運悪く犯罪者になってしまった男が、
懲役年数の長い囚人専門の輸送機に乗り込むことになり、
周りの凶悪犯罪者によるハイジャック事件に
巻き込まれるというもの。
おそらくこの作品が土台ではないだろうか。
輸送機が新幹線に変えられ、関東から関西への移送という
ところにSFの謎を盛り込んでいる。
アクダマたちの無類の強さは、『デュラララ!』を想起させるし、
アクダマ認定は『サイコパス』にも影響されている。
カントウの謎についても既視感がありすぎて凡庸。
さらに、手垢に塗れた『胡蝶の夢』を取り上げるなど、
せっかくのオリジナル作品なのに、
多くの部分でツギハギ感のある印象を受ける。

ただ、1話ずつでそれぞれ見せどころを作って
視聴者を引っ張っていく全体の構成は上手い。
謎とアクション、右往左往する一般人のCV黒沢ともよの
演技は好感で、独特の作画によって物語に引き込む。

輸送する荷物の謎。
依頼者は一体誰なのか。
カントウとカンサイにおける関係性とは。
巻き込まれただけの一般人が選択する決断。

キャラクター全員が個性的で
展開が目まぐるしく変化するジェットコースターストーリー。
アクダマたちが皆、得意なものを持っており、
それを活かしながら問題を解決していくのは、
爽快感もある。{netabare}また、そのなかにあって、
一般人とチンピラは、何の力も持っていないという
設定が、物語を意外な方向へ導く。{/netabare}
時おり挟まれる、カンサイの教育番組の
ウサギちゃんとサメくんがアクセントになっており、
ラストでは意外な方向で役割を果たす。

ただ、世界観や全体のストーリーを動かすことばかりに
気を取られているせいか、7人のアクダマや
処刑課の面々が描写不足のため、
その行動原理が分からない。
どうしてそんなに必死になっているのか、
伝わってこないため、物語に入り込めないのだ。
凶悪犯罪者たちは、何のために生きているのだろう。
主人公の一般人にしても、普通のOLだった
ただの真面目な女性が、どうして犯罪者たちと
ともに大胆な行動をするようになるのかという部分の
説得力が圧倒的に不足している。
やっていることは、面白い部分もあるが、
どのキャラクターにも心情を重ねられる部分がないのは、
物語を構築する上での失敗だ。
登場人物が多いので、過去を説明する必要はないが、
インサートカットなどで、もう少しキャラについて
イメージさせてくれるだけでも印象は変わったかもしれない。
運び屋については、「胡蝶の夢」の部分で
イメージはさせてくれたが、一般人と運び屋については
せめて、もう少し突っ込んだ描写が欲しかった。

とは言え、全体的に見ると、きちんとまとまっているし、
最後まで視聴者を引っ張るだけの牽引力はある。

関西の人々が抱える関東への憧れ。
辿り着いてみると幻想だったということか。
(2021年2月6日初投稿)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 44

65.1 24 サイバーパンクアニメランキング24位
攻殻機動隊 新劇場版(アニメ映画)

2015年6月20日
★★★★☆ 3.8 (155)
1068人が棚に入れました
2029年3月、総理大臣暗殺事件という戦後最大の事件が発生した。
被害者の中には草薙素子のかつての上司、501機関のクルツもいた。バトーやトグサたち寄せ集めメンバーと捜査を開始する草薙。
「お前たちは私のパーツだ。パフォーマンスを発揮出来ないヤツはパージする」と言い放つ草薙に、「俺たちはパーツか?」と反発するメンバー。
事件の背後にあったのは、戦後の義体開発の行く末を左右する技術的障害【デッドエンド】をめぐる政治的取引。
さらに「洗脳・ゴーストへの侵入・疑似記憶の形成」を一度に行う電脳ウィルス【ファイア・スターター】の存在も見え隠れする。
そして、事件を捜査する中で掴んだ手がかりは、草薙の秘められた生い立ちにも繋がっていたのだった……。暗躍する謎のサイボーグ。
総理大臣暗殺の真相。“第三世界”の存在。その先に待ち構える罠。たった1人で己の“戦場”に向かう草薙は、後に残すメンバーに最後の“命令”を告げる。
「自分のゴースト(魂)に従え」。残された6人が己のゴーストに従う時、はぐれ者の寄せ集め集団は最高のパフォーマンスを発揮するチームへと変化する。
“攻殻機動隊”誕生の瞬間に、世界は震撼する―。

声優・キャラクター
坂本真綾、塾一久、松田健一郎、新垣樽助、咲野俊介、中國卓郎、上田燿司、中井和哉、沢城みゆき、野島健児、浅野まゆみ、潘めぐみ、麦人、宮内敦士、NAOTO

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

【あらそう】セルフオマージュの塊みたいな映画でしたが電脳化、義体化への答えは提示された意欲作では【窓の外だ!】

『新劇場版』と言ってますが95年の『GIS』のリメイクというわけではなく『ARISE』シリーズの完結編という位置づけです
『ARISE』シリーズに登場した人物たちの思惑に終止符が打たれるという内容であるが故に、例え『攻殻』ファンであっても同シリーズを観ていない方にはチンプンカンプンでしょう


逆を言えば『GIS』や『SAC』を全く知らなくても『ARISE』だけ観てればOK
今作に先駆けて『ARISE』をテレビオンエア用に再編集した『AAA』は放送開始当初なぜ時系列をシャッフルしているのか意味が理解出来ませんでしたが、たぶん「あらそう」で始まって「あらそう」で終わりたかったためでしょう(笑)


『AAA』で唯一オリジナルエピソードとなった『PYROPHORIC CULT』はクルツがファイアスターターを完成させる為、と素子の独立攻性部隊に国家予算が降りるキッカケの為、にあった一幕というだけで観ても観なくてもどちらでも


さて『ARISE』シリーズは一貫して人類電脳化、義体化への警鐘を鳴らしてきました
今作ではその答えが出るというカタチの結末となっています
感覚操作の危険性(Pain)、記憶操作の危険性(Whispers)、高度メンテナンスの必要性(Tears)、精神と身体の同一性崩壊の危険性(Stands Alone)
そして最後に今作では電脳の規格が更新されることで規格を選び間違えた義体が救済されること無く朽ち果てていくという【電脳と義体のシェア選択】がテーマ
その答えの鍵を握っているのが産まれた時点で全身義体だった素子、そしてクルツと言うわけ


電脳ウィルス、ファイアスターターに関する一連の事件は『ARISE』シリーズを全部観た方ならクルツが黒幕だとバレバレなわけなんですが、今回なんとそのクルツが密会中だった総理大臣もろとも爆殺されてしまう


荒巻の誘いを断り、独立行動を続ける素子は501機関時代の盟友でありつつ、今作では幼馴染であったことも同時に明かされるクルツの仇討ちを決意し事件を洗いなおしていくのですが・・・


みどころは『ARISE』シリーズから継続して真綾が演じることで血気盛んな若者として描かれる素子
可愛過ぎる沢城ロジコマ


そして今作で注目したいのは満を持してのコドモトコの登場、っていうかまんま子供時代の素子が描かれている
黄瀬総監督自らが描く子供時代の回想シーンは既に今作のクライマックスと呼べるのでは


さらに素子の義体がボロボロになっては更新されていくうちに『GIS』や『SAC』、あるいは原作に近いキャラデザになっていくのがポイント
これはまんまラストカットに繋がっていて、まあセルフパロディみたいなもんでオイラのように思わず笑っちゃうか、旧作が好き過ぎて怒りを覚えるかはその人次第ですかね


中盤ファイアスターターのホストが素子と同型の義体を使っていることから素子VS素子、というトンデモナイ絵面が繰り広げられるのも面白かったです


当初から過去作にも増して愚痴を垂れまくるキャラとして描かれていたトグサの憎まれ口も健在


久々に登場したツムギの大活躍は今作で最も泣かせるシークエンス
それに回想シーンに登場するツムギの幼少期は誰もがびっくりしたことでしょう
野島健児さん本人が一番驚いてましたからね


まあなんやかんや旧作ファンに言われていますが『GIS』でも『SAC』でもない上で“SFサイバーパンクサスペンスアクション”という『攻殻』の本文は全うしたのでないかとオイラは思います
それに話しが、キャラが、と散々文句を言われたとしても“音楽面に関しては完全に旧作と肩を並べてますしね”


強いて言うなら肝心の【攻殻機動隊が結成に至るまで】が描かれるという序文だったはずが、ほとんど成り行き任せで荒巻の下に就いているのが残念
もうちょっと盛り上げて欲しかったのが本音です


それとEXILのNAOTOが演じていたヤツはいてもいなくても良かったのでは?と(笑)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 19
ネタバレ

ポール星人/小っさ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ちゃんとARISE観終えてからにしてネ

円盤買ったので居間で飯食いながらTVで再視聴したんですが、コレ多分ヘッドフォンで観た方がいいですね。台詞聞き洩らすと思う。
かみさんが想像以上の喰い付きで、どんだけ攻殻好きなんだよと亭主引き気味な感じ(汗)
という事で、若干評価点上げます。

 本作の設定での素子は胎児状態での義体化な訳ですが、紅殻のパンドラの福音は10歳。
義体技術の成熟期にゼロから義体を動かすのと、義体技術の黎明期に一度自らの体を捨てての全身義体への適合ってどっちが難しいのかなとか思ったりすると、やっぱ紅殻って変なアニメですが最高に面白いプロットだったなと。

しかし、作品毎に素子の義体化の時期が違うってのも攻殻と言うコンテンツらしいというか(汗)
/////////////////////////////////////////////////////
押井版に肉薄する様な名作では無いですが、アニメとしてつまんなくはないと思います。
ただ押井版の"あ、俺なんかいい物見ちゃってる?"的なんか頭良さげなシンプルな美しさと完成度は無いです。別に私G.I.Sディスってませんからね。当時VHS版予約して買ったんすからw
正直、新劇場版は独立した映画としては並程度だと思います。
ARISEのTVシリーズのラストとしては満足ですが、個人的には何度も観たくなるという類の作品じゃなかったです。

 原作の冒頭花見のシーンの前が見たいって人にはお勧め。
なんで台詞を 桜の24時間監視・ヌードバーに連れてってやるぞ から変えたのかは?ですが。そもそもフチコマでないし。
そんなものが居るかは判りませんが攻殻難民が居るのだとすれば、そういう層に向けた作品としてはマズマズな出来な気はします。


 私はミリオタではないので見方間違ってるかもしれませんが、{netabare}序盤の大使館突入いくら何でも大味過ぎ。ファイナルオプションを見てるつもりがニューヨーク1997を見せられたような残念感w
小人数だから力技なのかもしれませんが、扉を抜くのに爆薬でなく連射とかやられちゃうと一気に冷めるというか。あれじゃ人質殺されなかった方が不思議。
アクションとしての見栄えはイイですが、もっと緻密な突入で他の戦闘シーンとの差別化しても良かったような。ド派手な戦闘ばかりで食傷気味なシリーズですし。
監視カメラ等の実行犯直視以外の目が多いであろうこの時代で、内視鏡やデンタルミラーでチマチマ覗く方がリスキーだから力押しって事なんすかね。

事の発端を"人形使い"に安易に直結させず、彼が生まれた情報の海を"第三世界"と表現して世界観の繋がりを意識させる作り自体は納得なんですが、故に原作なりG.I.Sを未見の人には訳ワカメになりそうな映画になっちゃってるのは商売的にどうなのよ?とは思いました。

 ARISEの鮨詰めの1時間程濃密でない作りにしてない訳で、なればこそクルツとツムギとの繋がりの部分はお涙頂戴とは言わずとも情感有る演出多めにしてくれた方が個人的には好みすね。施設の子供達という要素と鉛色の大人社会の構図でもう少し印象深い絵に出来たような。
というかラストでの残された施設の子供達に対し原作のあのセリフ吐く?
救済センターでジメジメしてた彼らと施設の子達って立ち位置がちと違う気がするんですけど。
{/netabare}

 ARISEシリーズの総体としての作りはとても親切で、絵と台詞を漏らさず注視していれば展開と物語に考察が必要とされないのはイイと思います。
その点では時代をちゃんと見てますよね、制作側が。
ただ如何せん、出てくる言葉等が攻殻と言う物を知っている前提なのは苦しいトコというか。
攻殻と言うコンテンツに目新しい魅力が無くなってしまった今、イマイチARISEがウケなかったのは出来云々を別として止むを得なかったのかなと。
私的にはジャンクフードの合間にちょっとイイお肉食わせてもらったみたいな満足感は有りましたです。攻殻が好きな方は見ても悪くないんでないかと。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 13

ヒロウミ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

これが攻殻機動隊?笑えない冗談は素子ちゃん!

ストーリー構成、世界観の構築や声優陣の熱演は素晴らしく優れた作品であるにも関わらず「これじゃない」がゆえに期待を裏切るものでしかない。
裏切りは失望へと変換されリアルタイムのファンじゃなくて心底良かったと思わせるのはこの作品。



ARISE劇場版4作品+PYROPHORICも合わせて視聴済みでのレビューなのだがてっきり無印やSACの関連した物語かと思ったが全く別物。繋がりが薄すぎて本当に引くレベル。

声優陣の総入れ替えでメッタ刺し状態。無印(以降SAC含む)にわざわざ声質を寄せさせているんだがまぁ酷い。沢城姉さんの声がチョー大好きでどの作品もスゴいなぁとほぼ無条件で手放しで感心しちゃうのだがこの作品は本当に「コレジャナイ」。そして特にバトーとボーマはもう止めてくれってレベルにアンマッチ。犬を猫と人を糞と言えというレベル。他の声優さんは悪くないんだけど所詮似せたパチもんはパチもんで明らかに無印の世界観はそこに無い。あ、坂本さんはスゴいなぁと思ったけど他がこれじゃあね・・・。

しかもサイトーとの出会いなど無印での主人公を構成したはずの回想物語全てを反故しちゃってる設定。ナニコレ?以前の作品の製作陣に対する嫌がらせかなにかですか?それとも脚本家が下手なだけですか?まさか原作者が自分の作品を忘れちゃったんですか?
無印、SACでは人と機械の中性的存在であり儚い存在の中でユラユラ揺れつつ自我を構築していく様が妖艶でかっこ良かった主人公。それがC級ヒーロー作品並みの安いヒーローに成り下がってしまっている。あの絶妙なバランスの描写がない。チープ過ぎて失笑しかない。本当に「コレジャナイ」し「コレハナイ」。
更にはARISE4作品の作画の時折ある手抜きが酷い。武器の描写なんか水鉄砲?銀玉鉄砲?こんなんが劇場版なのかと思うと本当にリアルタイムで見なくて良かった。


先にも言ったが「攻殻機動隊」の名が無ければ優れた作品。特に今作は絵も綺麗でこれをスクリーンで見てたなら迫力に押されること間違いなし。だが、この作品は攻殻機動隊であるべきで無印を無視するならば残念ながら優れた作品とは言えない。スーパーマンの続編を見に行ったらスッパマンが出てきたようなものだ。
コレジャナイコレジャナイコレジャナイだらけで失望でしかったこの作品。こんなものを見ても正統な流れを汲んだ攻殻機動隊の続編を望んでしまうのは馬鹿なのだろうが無印、SACシリーズが素晴らしかっただけに諦めきれない。それでもバッタもんに用は無い。
Production IG、しっかりしておくれ!

投稿 : 2024/05/11
♥ : 12

66.2 25 サイバーパンクアニメランキング25位
マルドゥック・スクランブル 排気(アニメ映画)

2012年9月29日
★★★★☆ 3.9 (177)
998人が棚に入れました
『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第3弾。

賭博師シェルの犯罪に巻き込まれた少女娼婦バロットと、委任事件担当官のネズミにして万能兵器のウフコックは、宿敵ボイルドとの激闘後に訪れた“楽園”にて、シェルの移し替えられた記憶は彼が経営するカジノの百万ドルチップの中に隠されていることを知る。

バロットは、シェルの罪状を白日の下に晒すため、チップを手に入れることを決意。
シェルの経営するカジノへ乗り込んだバロットは、ウフコックとの見事な連携により、伝説の女性スピナー、ベル・ウィングをも制した。

しかし、そんなバロットの前に、最強のディーラーにしてハウスリーダーであるアシュレイが立ち塞がる…。

最後に挑むゲームは、“ブラックジャック”。
果たして、バロットはアシュレイを破ることが出来るのか?

そして、ボイルド、シェルとの戦いの行く末は?

命をかけた最終決戦がはじまる-。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、藤田淑子、土師孝也

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

生きることが穢れであった少女の戦い 排気?廃棄?心は流体力学

2011年の劇場版アニメ 3部作の最終章 62分 R15指定

スタッフキャストは一貫している。

前半は第二部の続きでカジノでのブラックジャック勝負。
SF的な部分があるのかは視聴者の感じ方次第。
ブラックジャックそのものは面白いし手に汗握る。
まあ、サイバーバンクSFアニメを期待したとすれば裏切られる方向性かな。

後半は一転して、乱雑な未来社会(ウイリアムギブソン風)を舞台にガンバトルが繰り広げられる。
ハカイダーの如く壁を歩く強敵ディムズデイル=ボイルドCV磯部勉との決着だ。

3部作一貫して主人公ルーン・バロットの魅力が全開で、
受け入れられるかどうかは、数奇な運命をたどった少女との一体感を得られるかだと思います。
大人向け作品なのでルーンには処女性は無く、汚れきった生命の強さを見せます。
はかなげな外見とは相いれないような穢れこそがその本質です。

この作品が成功作なのかどうかは原作を読んだ人にしか評価できないでしょうが、
SFファンにとっては貴重な作品であることだけは確かだと思います。

80年代の米SF界を席巻したサイバーバンクにあこがれた日本人作家の必死な作品とも見えますが、
完成させたことにより、日本人独自の創作が一段階上がった、
恥ずかしながらもマイルストーンと言える作品であったと思いたいです。

物語の迷走は「乱雑な世界」を描くための上級創作ともいえますが、
失敗であったとも取れる、視聴者に判断をゆだねたものだと思います。

誰にでもお勧めできる作品ではありませんが、
未知なるものへの興味が、完成品しか認めないという固さを超える人には、
価値ある作品になる可能性はある作品だと思いました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 22
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

心に焦げ付く重厚サスペンス作品★

本作およびレビュー内容にはR18になりそうな過激な言語表現が含まれていますので、嫌な方は読まないで下さい。

■評価
テーマ性 :★★★★☆ 4.1
エログロ度:★★★★  4.0
純愛度  :★★★★☆ 4.3
シリアス度:★★★★☆ 4.3
おススメ度:★★★★☆ 4.1

■ストーリー
未成年売春婦のバロットは専属の雇い主であるカジノオーナー・シェルに突如焼殺される。しかし、生きる希望を持たぬバロットに救いの手を差し伸べたのは一匹のネズミであるウフコック・ペンティーノだった。そして、一命をとり止めたバロットは自身が焼殺された謎をウフコックたちと共に追っていくストーリー。『圧縮』『燃焼』『排気』の全3話 劇場版作品。

■感想
本作は著者:冲方丁さんの日本SF大賞を受賞した小説をアニメ化したもので、私は原作小説をすべて既読済です。本作はSF作品となっていますが、科学的な考察などは皆無であり、あくまでSF設定を用いたハードボイルド・サスペンス作品となります。(攻殻の様な世界観は求めない方が良いです)

個人的な感想としては、原作小説は超えられなかったが、難しい言語表現がならぶ小説の世界観を巧みに表現した良作だと思います。本シリーズは『生きる事とは何か?』というシンプルなテーマを持ち、一つの殺人未遂事件から真相を追う過程を、肉弾戦・頭脳戦・心理戦を用いて楽しませてくれる内容になっています。
そして、未成年売春・幼児虐待・強姦・近親相姦・暴力・ドラッグ・汚職・金・権力という人間の汚物と血反吐にまみれた世界観の中で、そのストーリの本質が生きる苦しさ、そして純愛という人の生臭さを描いているので本シリーズのテーマが光ってみえます。

また本作を鑑賞すると『生きる事は何なのか?』と考えさせられ、それは『自身や他者の存在を必要とし、必要とされる事』そんな分かりきった答えを理解しながらも、想い通りにはいかない人生の虚しさ(焦げ付き)や他者に愛される幸福感を本作品は感じさせてくれます。これぞハードボイルドの真骨頂です。

ただ、尺が足りない事でエンターテイメント性が薄れている点は残念です。個人的に本シリーズ通しての見所は、カジノでの頭脳戦・心理戦になりますが、このシーンでのバロットやウフコックの心理描写や、結果に対する過程の説明が少し足りないので、緊張感や悲壮感に物足りなさを感じます。
非常に惜しいです。

総じて、本シリーズはエログロ鬱なので、万人受けする作品ではありませんが、個人的には本作の続編(前章譚)であるボイルドが主人公のマルドゥック・ヴェロシティーのアニメ化も強く祈願しております。みんな~オラにパワーをぉぉぉ!!

レビューはここで一旦しめさせてもらいます。
ご拝読有り難うございました。


-------
■本作の謎とポイント
ネタバレになりますので、興味のない方は
読み飛ばしてくださいましm(_ _)m
{netabare}
Q1:バロットはなぜシェルに焼殺(未遂)されたの?
A1:原作小説から引用すると、生きる実感を得るために
  バロットは思いつきで自身の身元を確認してしまった
  事で、マネーロンダリングの秘密に触れたと思われ
  シェルに殺害される事になります。
  (本シリーズではよく描かれていませんでした)

Q2:ウフコックって何者?
A2:世界大戦期に楽園にいた三博士の一人に設計開発
  された人口知能をもったネズミ型万能兵器です。
  (ドラえもんのネズミ版です)
  仕組みは全くわかりませんが、異次元に物体を
  無限・永久的に保存し、必要なときに現次元に
  呼び出す様な構造になっていたと理解しています。
  そのためウフコックが銃になれば弾は無限に供給され
  続けます。

Q3:シェルって何者?少女達を殺害した動機は?
A3:オクトーバー社と結託し、身寄りのない少女達の
  戸籍を利用したマネーロンダリングを行う悪党です。
  そして、シェル(殻)という名の通り、過去の母親殺し
  という罪と苦しみから逃げるために、マネーロンダリ
  ングの証拠隠滅と併せて、自身の記憶の抜き取りを
  繰り返し、結局は中身のない殻の様な男に成り下がり
  ました。また動機ですが、どの少女も自分の事を
  知ろうとしてしまう事でシェルの過去の罪の苦しみや
  恐怖をフラッシュバックさせてしまい、A1の内容と
  あいまって動機となり殺害に及んでいました。

Q5:ボイルドって何者?
A5:彼は元々は戦術爆撃機のパイロットであり、過度の
  過労と処方されたオクトーバー社製ドラッグが要因
  で、誤って見方を爆撃してしまう罪を犯します。
  そして楽園に人体改造のモルモットとして送られ
  ますが、ウフコックという愛を与えてくれる存在と
  出会い希望を見出した人間でした・・・。

Q6:バロットはなぜ人体改造の順応率が高くて強いの?
  主人公だから?
A6:半分合っています。
  バロットは幼少期から大人の欲望に蹂躙される経験を
  もち、その経験から無意識の防衛本能により、自分の
  体の感覚を自由に無感・無心にする術を身に着けて
  いました。そのため、繊細なコントロールが必要な
  スナーク機能とバロットの愛称がよく順能率が
  あがった事になっています。

Q7:ボイルドは重力を操って弾丸をはじく程、無敵なのに
  なぜバロットの銃弾が当たったの?
A7:バロットが持つ能力はスナーク機能となっており
  電子機器の遠隔制御やハッキング、そして自身の肌
  から放出する電磁波をソナー代わりにして、物体の
  接近や動作を察知します。
  この機能を駆使してボイルドが銃を撃つ際に
  重力の壁に隙間ができる事を察知し、その隙間に
  銃弾を打ち込む事でボイルドは初めて被弾したのです。
  そのため、終盤のボイルドはチャクグレネードを使い
  バロットのスナーク機能を封じようとしたのです。

Q8:ボイルドのもっている銃は何?威力ありすぎでは?
A8:65口径のモンスター・マグナムです。通常の人間が
  撃てば両腕が脱臼するほどの威力ですが、ボイルドは
  重力でその衝撃を抑えて使用しています。
  現代でも55口径の拳銃が最大です。
  詳細はヴェロシティーで!!

Q9:ボイルドとウフコックは過去に何があったの?
A9:ボイルドとウフコックは楽園からでてからも
  マルドゥックスクランブルO-9の有用性を証明する
  ために、相棒として日夜事件と戦っていました。
  しかし、オクトーバー社の陰謀によりマルドゥック
  スクランブルO-9の遵守が難しい(ウフコックが処分
  される)と思った彼は、その陰謀を潰すため
  自分たちに不利な証言をする一般人たちを口封じの
  ために次々と暗殺したのです。
  その事が原因でウフコックはボイルドと離別し
  単独で任務に励みますが、実はボイルドのお陰で
  存在できているのです。そんなボイルドの愛を
  知っているからこそ、ラストシーンでウフコックは
  あんなにも落ち込んでいたのです。
  ここで何でボイルドはオクトーバー社側に
  ついてるの?という疑問が沸きますが、詳細は
  ヴェロシティーで!!

Q10:冲方丁さんは虚淵玄さんの二番煎じの脚本家
  じゃないの??
A10:私は違うと思います。
  冲方丁さんは数多くのアニメ作品を手がける私の
  好きな脚本家さんですが、私は虚淵玄さんも好きです。
  このお二方の共通点は触れ幅の激しいストーリーと
  鬱展開だと思っていますが、決定的に違う点が
  あると思います。
  それは虚淵さんは、容赦なき『死に様』を描いて
  強烈な心の傷(印象)を残しますが、冲方さんは
  主人公の過酷な『生き様』を描いて、苦しみと絶望を
  心にジワリジワリと染み込ませてきます。
  この似ているけど異なるすばらしき脚本家さん達の
  活躍に今後も期待しています。

少しでも本作を楽しむ糧にして頂いたら幸いです。
{/netabare}
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投稿 : 2024/05/11
♥ : 17

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

サイバーパンクハードボイルド3部作に決着の時、来たり!「君は何人も殺さないし、殺されたりしない。殺させもしない!」

思いっきり前回の続きからなので前2作を観ないと完全に置いてけぼりですw
ダイジェストとか一切ナシですw
可能であれば3作を連続して観て頂くのがイチバンかと?;


前作でベル・ウィングさんとのルーレット勝負に辛くも勝利を収めたバロットとウフコック
続けてブラックジャックに挑戦し、目的である100万ドルチップ4枚の回収を狙う
前回に引き続き、前半の内容は完全にギャンブルでの頭脳戦、心理戦の模様


そしてバロットを殺そうとしたシェルの、消し去った記憶から明らかになるその素顔と真実
残忍な殺人犯であるはずのシェルに秘められた悲しい過去に困惑するバロットがドラマティックですb


そしていよいよクライマックスはボイルドとの最終決戦
シリーズ集大成とも言うべき圧巻のアクションシーンにスタッフの成長も感じられ、ここまでマルドゥックを追いかけてきた甲斐もあったというものですよ
(実際に、第1部制作開始当初は新米だったアニメタ達の、レベルアップを狙ったOJT的な制作現場だったようです)


改めて『3年という月日』と『60分×3部作という構成』は、「原作を完全再現したい!」という想いから生まれたものではあるものの、いささか“詰め込みすぎた”感が苛まれ、決して今回のフォーマットがマルドゥックのアニメ化に相応しいモノだったとは言い難いです


でもねw
この『排気』単発の出来栄えからするとその辺はもうドーデモ良くなってくるのですよwww


神さま(本田美奈子)が差し伸べた救いの手(アメイジング・グレース)がバロット(林原めぐみ)に受け継がれていく様(今作の挿入歌で林原めぐみと本田美奈子が奇跡のデュエット)とかもう感無量


とりまちゃんと完結したことへのお祝いも兼ねて、本当に良かったね
って微笑ましく見送りたいっす

投稿 : 2024/05/11
♥ : 11
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