引きこもりで友情なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の引きこもりで友情な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月07日の時点で一番の引きこもりで友情なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

63.4 1 引きこもりで友情なアニメランキング1位
とある飛空士への追憶(アニメ映画)

2011年11月1日
★★★★☆ 3.5 (331)
1536人が棚に入れました
たった二つの戦争中の大国しかない世界―――。『空の上では身分は関係ない』という自論を持つ「シャルル」だが、彼はまさに社会の底辺層であった。両国のハーフであるためにひどい差別を受ける彼は、飛空士としての腕の自信と、ある思い出だけを頼りに生きてきている。そんな彼に対して「ファナ」はシャルルが属する空軍を擁する大国の次期皇妃。天と地ほどの身分の差がある二人が主人公である。物語はシャルルがある作戦を告げられることから回り始める。それは「順調に進んでも五日はかかる広い中央海を、ファナを連れて二人で敵中翔破せよ」というものだった。接点がなかった二人に、つながりが生まれる。

声優・キャラクター
神木隆之介、竹富聖花、小野大輔、富澤たけし

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

端的に子供向け

オイラはよく言うのです、「厨二病」という言葉を使う以前に「子供向け」なラノベってかなり多いです
【良くも悪くも】です
これなら児童文学の方が良く出来てるよなー、何をもってしていい歳の大人にオススメしてるんだろう?
この出版社や書店は???って


誤解の無いように言っておきましょう
今作、『子供と一緒に見る映画としてはなかなかです』
今年のアニメ映画は子供向けに関してドラえもんとプリキュアを除けば正直に不作です
特にプリキュアの方は対象年齢が低めなのでより『子供と観る映画』の範囲が狭い
(余談ですがトランスフォーマーは完全に大人向け、SUPER8はスリラー好き向け、ハリポは・・・観てませぬ><)
そんな中ではこの作品が子供向けとしていい機能を果たしております
小学校高学年前後のお子様をお連れの方には是非にオススメしておいきたい


ちなみに“なぜか”PG12指定をくらってますので保護者同伴での視聴をオススメします
決していかがわしいシーンがあったりや残酷な描写が多いわけではないです
なぜレーティングの対象になったのかオイラには理解不能です┐(ーωー;)┌


お話は貧民街育ちで敵国とのハーフとして虐げられてきた生い立ちを持つ主人公が、いつしかエースパイロットに上り詰め、自国の命運を握る作戦を任せられるというものです
作戦の内容は敵の包囲網を潜り抜け、皇国の次期王妃となる令嬢を婚約者の皇子の下まで送り届けるというものであった
ただしそれをたった一人、たった一機の偵察機で行うのだ・・・


王道を感じる半面に脆弱な部分が目立ちまして、大きな体に細々とした足腰というアンバランスのようなものを感じる作品となってしまいました
オイラが感じた問題点は3つ


まず1つ目にキャラクターの弱さが目に付きます
次期王妃ファナは世間知らずで儚げで弱々しく、戦乱と権力者に振り回されるステレオタイプなお嬢様
実際の史実の上では、男社会が招いた戦乱に女性が巻き込まれてきたのは曲げようの無い事実であり、その反発としてせめてもの思いでフィクションの中の女性は強くあってほしいと願うことは、人類の歴史上当然のことなのです
強いヒロインというのは人々の願望と希望を叶える存在であり、ファナの様なキャラクターの魅力は特に王道フィクションにおいてはそこそこに留まる
(宮崎駿監督作品のヒロインが強くて凛々しいのはまさに具体例)
ですから人々がフィクションの中に強いヒロインを求めることはごく自然であります
恐らく原作者やスタッフは、このお嬢様なファナが旅路の末に成長する様を一番に見せたかったのでしょうが、それには少し演出が力不足という印象を拭い切れず、物語は終わりを迎えます
強いて言うなら「酔っ払う」シーンのところだけはファナが可愛く見えて良かったのですが、その後の二人がどうなるわけでもなしに、そんなところが「端的に子供向け」たる証拠でもあります


2つ目にファンタジーを史実っぽく描くのにはちょっと無理があるという点
公開前のプロモーション等でも『史実から隠匿された恋物語』という部分を押し出していましたが、そもそもに日本をモチーフにしたであろう敵国と連合国を髣髴とさせる自国の設定もやはり安っぽくしか見えず、ファンタジーなのか史実なのか・・・どっちつかずで中途半端な印象しか受けない
エピローグをあとがいちゃうところなんかモロです
宍戸監督の代表作といえばやはり彩雲国物語が挙げられますが、あれもハイファタジーをさも史実の様に描く演出をとっていました
どちらの作品にも【いかにも】な雰囲気しか漂っておらず、リアリティという面では物足りなさを感じてしまいます
(無論ですがドラマ性自体はまた別の話ですよ)


3つ目はチラホラと話題に挙がってはいますが、声優さんの点
まずオイラは神木隆之介くんの大ファンでして、特に彼が声優として主演したサマーウォーズや借りぐらしのアリエッティでの彼の演技は大変素晴らしいものだったと応援しています
しかし今作での彼の役どころはおしとやかなお嬢様のファナとは対比的で、よく喋ります
前2作の主演作とも比べてかなりの量の長ゼリフがあり、単純に演技力自体が進化した彼の実力とは反比例して『喋り疲れ』のような声の出し方が気になります
長旅で疲れ果てる主人公と同じく、(たぶん)喋り疲れているであろう神木くんのかすれていく声
もし演出の範囲内だというなれば、もっとしっかりとメリハリをつけるべきだったでしょう
後半はちょっと聞き取りにくいです
ちなみによく言われる『棒読み』とは全く違うのであしからず
注目していただきたいのはファナ役の竹富聖花さんでして、今作で本格的な演技初挑戦とは思えませぬ
素晴らしい


とまあ散々に言っては来ましたが、ラストシーンに関しては清々しくスッキリとした終わり方で大好きですね
そうそう子供向けなんだからひねりとかいらんのです
美しいラストこそが一番
ちゃんと「ダンス」の伏線も張ってましたし
チョコチョコと「オチがない」というご感想をお持ちの方もいらっしゃってはいるようですが、オイラとしてはあのラスト以外は考えられませんね
あの後、二人は逃避行の旅に、、、、なんてトンデモエンディングだったらオイラは納得しません^q^









ちなみに『空戦』が見所の作品でもありますが、CGによるドッグファイトシーンは割かし地味で、スペックで主人公達を圧倒する敵側の戦闘機のデザインも(やはり旧日本海軍の震電がモチーフなのでしょうが)航空力学などツマラネェ話をすれば「ちゃんと飛びそうにない」です(笑)
同じことが押井監督のスカイクロラでも散々言われましたが、戦闘自体はミニチュアっぽい等の批判に納得しつつも迫力を出さんとする演出であちらの方が圧倒しています;


空戦そのものよりも、むしろ架空の世界観であるが故に美しく切り取られて描かれる情景の数々の方が魅力的に感じましたね


さらに余談中の余談ですが、既存のスチームパンクとは一線を画する・・・内燃機関や外燃機関よりも先に燃料電池が発明されているという独特な世界観には、高校時代に燃料電池を研究していたオイラとしては燃えるポイントでした^q^









「ファナー!」って2回繰り返す必要ないですよね(回想はいらない)
あーゆー余分なことしちゃうのが宍戸監督の良いところというか悪いところというか・・・(´ω`;)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 23
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ひとりぼっちの追憶

小さい頃から人に目をつけられやすかった狩乃シャルル。
貧乏で気弱で何もできなかった彼は自由を求め「飛空士」になった。その技術だけは他の者を圧倒するほど抜群だった。
傭兵の身分であり、自分を目の敵にする奴も絶えなかったが、そこでは良い仲間もでき彼にとっては心地良い場所だった。
自分にぴったりの場所だった。(これってね、言葉にできるほど簡単に見つけられるものじゃないんだ。)
そんな彼の腕を見込んで上からある任務が言い渡された。
ある王国で次期皇妃となられるお姫様ファナ・デル・モラルをその王子の国へ引き渡したいとのことだった。
だが、傭兵の分際が運んだと知られればこれは末代の恥である。けれど戦争中であることもあり腕の立つ者が必要だった。
そこで狩乃の腕を借り強靭な警戒網を突破し安全な所で上の連中に引き渡す(引き渡すことで手柄はお偉いさんのもの)といった作戦だった。
狩乃はこれを引き受けた。これから始まります。”お姫様護送任務”


本作では、激しいドッグファイトがあれば、かたや静かな海の描写がある。
また、いますぐ駆け出したい恋を目の前にそれがどうしてもできないことで涙を呑む人間の繊細な描写もある。
人にとって一体何が「大事なもの」なのでしょう。忠義か、自分の意志か、愛するものなのか。
なんでもかんでも従えば良いことではない。かといって全部まとめて海に捨てることもできない。
それはあらゆる意味において危険でnaiveな行為だからだ。
揺れ動く自我に空も海も呆れるほどに綺麗で、人の間に起きていることなんて無関心に見える。
狩乃はどうすることもできず何重にも板挟みにされていく。最新型飛行機は好調に飛行を続けるのだ。

本作は日常的にTV放映されているアニメとは、一部そういう要素を含みながらも一味違ったテイストを持つ作品です。
目的は”お姫様の護送”、テーマはマクロな意味では”身分差の恋”。
大勢の敵と戦うところや、一度負けて一騎打ちでのリベンジなどかっこよく燃える「アニメ」的要素は確かにありました。
それは映像としても群を抜く出来でした。敵と遭遇する恐怖や死と隣り合わせにいることの閉塞感には身が縮むような思いをしました。
空中戦でのGもこちらにそのまま伝わってきます。まさに生死の境を縫うような緊張感です。

このように意図して作られた「バトル」もありましたが、もっとそれ以外のところこそがこの映画の醍醐味です。
たとえば、狩乃とファナの距離を詰めていく過程や、飛行機での長距離移動の描写、そして狩乃シャルルの視点での物語の推移は普通の「アニメ」とはいささか違ったものを感じさせます。
まだよそよそしい2人が海の真ん中で停泊したり、戦線をくぐり抜けたりする中で親密になっていく描き方は明示的過ぎなくて僕の好みでもありました。
それにストーリーの内容にも言えることですが偶然性の描き方も良かったです。
彼らはただ踊らされているわけではなく、物語の中でちゃんと生きていました。ひとつひとつの出来事が常に新鮮でした。
それらの中でも特筆すべきは狩乃シャルルの人生背景を含めた上での本作での描写が何よりも素晴らしいこと。
“上司たちからは最初から最後までドブネズミ扱いされ、不遇な運命の中でやっと見つけた幸せにも手を伸ばすことは許されない。
物語の中で目的達成に向けてひたすら真面目に取り組む姿は凛々しくもあるが、その背中からはわずかに悲しみが漂う。
達成したところで名前の残らない仕事。たくさんの犠牲を払っても自分らには一切目を向けない上の人間たち。
これが終わって自分に残るものはなんだろう。ああ、金だ。それもたくさんの金だ。”
この反動もあってかラストシーンは最高です。もの凄い感動がありました。


どうもあにこれ内での評判は良くありませんが、シャルルの背景やファナとの距離の絶妙な描写は心を震わせてくれます。
この作品にしかないものをそれぞれに見つけられるかどうかはその人のコミットの深さ次第です。
どこまでシャルルという人間を捉え辛い経験やその立場を理解しこちらから共感していくか、彼とファナとの関係にどれだけの想いの温かさとまたその儚さをみることができるか。
これは好みの問題でもあるけれど、少なくとも声優の良しあしや漠然としたファクターを繋げて鳥瞰する以前の問題です。
王道であるとか、無難であるとか、そういうところに留まらない、まぶしいくらいの輝きを秘めた作品です。
一見の価値は十分にあります。
とても良い作品なので観る際にはどうか斜に構えず、まっさらな気持ちで観て頂きたいです。ぜひ一度。そしてもう一度。

{netabare}


レビューのタイトルは原作のこの作品の漫画化を担当したのが小川麻衣子さん。
ただいま『ひとりぼっちの地球侵略』進行中の方です。
そんで、この漫画が大好きなのでタイトルを合体させたというどーでもいい話ですw

閑話休題

ラストは見事でした!
ファナを引き渡した後の金がホントにごみのように見えました。あのシーンはなかなかのインパクトがあります。
そしてなにより最後の飛行です。かっこよかったー!ホントかっこよかった!
最高の愛の表現です。素晴らしい!

物語としては愛の逃避行をしなかったことにより、共同体が阻む苦しみがひしひしと伝わってくる結果になりました。
でも悔しいですねー。んー、歯がゆい!脚本にしてやられましたな。

まあそんなわけでとっても好きなんですよ、この映画。

{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18

シス子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

ひ・く・う・し・・・ひくうし(-_-(合掌)

      ↑
滝○クリ○テルさんをイメージしてね^^!


某トロピカル系サイトを筆頭に
書籍通信販売系のサイトで「とあるシリーズ」を探そうと
“とある”というキーワードで検索すると
上から5~6番目くらいに必ずといっていいほど候補に出てきたのがこの作品

気にはなっていたのですが
まさかアニメ作品になっていたなんて想像すらしてませんでした

原作はラノベ
ジャンルは恋愛、戦争、ファンタジー

「飛空士シリーズ」というシリーズモノの一作品で
「とある~恋歌」や「とある~誓約」などの作品があります

ちなみに「~恋歌」は2014年1月よりアニメ作品が放送予定だそうです


お話は・・・
タイトルのとおり
とある飛空士さんのお話^^
そのまんまです

ここで注意して欲しいのはタイトルが
「~飛空士~」であるということ・・・

分かりますか?

“ひこうし”じゃありませんよ”ひくうし”ですよ”ひ・く・う・し”

分かりにくいのでもう一度書きます

ひ・く・う・し・・・

ちなみに
わたしのパソコンで”ひくうし”を変換したら
最初”引く牛”って出てきて
その後どう頑張っても正しい表記にならないので
「飛行」→一文字消して→「空」→「士」っていう順番に入力
あとはコピペで対応・・・って
どうでもいいことを無駄に書いてしまいました

とりあえず
「飛空士」という肩書きを持つ人がいる
どこか”別の世界”のお話ということです^^

その主人公で”引く牛”・・・じゃなかった^^
“飛空士”の「狩乃シャルル」(かりのしゃるる)くんと
どこかの国のお姫様(になる予定)の「ファナ・デル・モラル」ちゃんの
淡い・・・
だけど
とても熱い恋のお話

観終わって
なんだかよく分からなかったので
とりあえずWikiでリサーチしてみると
“「ローマの休日」と「天空の城ラピュタ」の
切なさと爽やかさを意識しながら執筆された”と
記述されていました

えーと
とりあえず
ラピュタは分かりました
飛行船みたいなものが飛んでいたので・・・

でも
“ローマ”はないでしょ
っていうか
この手のお話ならモチーフになる作品って他にもたくさんあると思うのに
なんで”ローマ”?

ソフトクリーム出てこないじゃん
飛空機(“ひこうき”じゃないよ”ひ・く・う・き”^^)がバイクの代わり?
真実の口は?
グレゴリー・ペックみたいな優男は?(シャルルくん?マジで?ありえない~)

でも原作の先生様がそう仰るのならそうなのでしょう^^


さて
率直な感想を一つ(といいながらダラダラと)書かせていただくと

あの終わり方はない

ストーリー自体が
なんか煮え切らない感じで終わっていて
“もうどうでもいいや^^”
っていうような幕引き

さらに
最後は
二人のその後を
字幕カットで説明ってどういうこと?

二人の行く末がこんな軽いものだなんて・・・

せっかくアニメ作品にしたのに
これじゃあ全く意味がない

なんか・・・
こう・・・
なんというか・・・
もっとドラマチックな演出もあるでしょう?

たとえばエンドロールのとき
その後の二人の姿を
ダイジェストで流すとか・・・(NG集じゃないよ^^)


さらに
憤慨(半分キレた)してしまったのは
ファナちゃんの声

これはもう
小学生が国語の教科書を読んでるか
私がやる気のない上司に啖呵切っているみたいな(知らんわ!)

セリフの棒読みですよ~

そして
今にも舌を噛みそうなくらいの滑舌の悪さ

いっそ噛んじゃって
「かみまみた(>_<)」って言ってくれたほうが
いくらか可愛げがあるのに
(まあどう転んでも私はブチキレます^^)

くわえて完全にキレてしまったのが(もうキレまくってる^^)

ファナちゃんのしつこいくらいの「引く牛さん!」の連呼

セリフの半分くらい「牛さん」引いてるんじゃないの!?

「引く牛さん!」
「引く牛さん!」
「引く牛さん!」
「牛さん・・・引く?(笑」って

あまりにもテンポ良く叫ぶもんだから
「よっ!」
「はっ!」って
思わず
拍子つけてしまったじゃないの!

ファナちゃんの声の人のスキルを考慮して
あえて
「牛さん」のセリフを多くしたのか

原作から既に「牛さん」というセリフが多かったから
ファナちゃんの声の人が決められたのか

って
あれれ
なんか話題が「牛さん」に飛んじゃってますね^^


とにかく
世界観やストーリー
空中戦などのアクションシーンは良かったのですが
細かいところに不満のある作品でした~

あっさり締めてゴメンナサイ~

投稿 : 2024/11/02
♥ : 25

64.7 2 引きこもりで友情なアニメランキング2位
文学少女 劇場版(アニメ映画)

2010年5月1日
★★★★☆ 3.7 (274)
1390人が棚に入れました
文字どおり食べてしまうほど文学が好きなヒロイン・天野遠子と、彼女によって無理やり文芸部に入部させられた男子高校生・井上心葉が様々な事件の解決に乗り出す学園生活の模様を綴った野村美月の人気ライトノベル・シリーズを映画化した劇場版アニメ。『銀河鉄道の夜』がモチーフとなっている原作の第5巻『“文学少女”と慟哭の巡礼者【パルミエーレ】』をベースに、心葉と彼のトラウマとなっている少女・朝倉美羽との運命の再会がもたらす切なくも愛憎入り交じる人間模様を描く。

声優・キャラクター
花澤香菜、入野自由、水樹奈々、宮野真守、小野大輔、豊崎愛生、下田麻美、平野綾
ネタバレ

N0TT0N さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

視聴ルートと個人的適性。

【わたしのタイプと視聴ルート。】

前もって言っておくと、私にとってチャレンジ色の濃い視聴でした。

・普段見ないタイプの作品(恋愛強め)
・キャラデが好きな方ではない(少女漫画風?)
・普段は比較的情報を入れずに視聴するタイプだけど、今回沢山のレビューをじっくり(ネタバレ抜きで)読ませていただいてからの視聴。

3つ目は、どうやら劇場版とOVAが補完関係になっているらしいという構成を知って視聴順を決めるためやむなく‥というのが大きな理由。
先ず、そういうタイプのわたしが書いたレビューなのを前もって言っておきます。原作未読。

で、わたしが選んだ視聴ルートはというと、
OVA(3作品)→劇場版でした。情報比較の甲斐もあり、個人的にはこのルートで正解だったと思うのですが、さらに完璧を期すためには、「プレリュード(OVA)」→「劇場版中盤まで」→「レクイエム(OVA)」→「劇場版クライマックッス」、で、デザートに「OVAのラプソディー」。
これがN0TT0Nお薦めの視聴ルートですw
お試しあれ。



【軽く内容などについて。】

山とガールが、肉食と女子が、ゲスの極みと乙女が出会う遥か以前からまるで四文字熟語か慣用句かのように融合している『文学』と『少女』。
この飛行機雲のようにまっすぐなタイトルから、爽やかで、なにか清廉なイメージを勝手に持ってしまうのですが(キャラデも含めて)、結構、闇な部分を描いた作品だったと言えます。
宮沢賢治の文学作品をモチーフにしている点など文学関連のフィルターを通した表現が多いのですが、この作品の主題は「トラウマ×恋愛」だと思うので、爽やかとか癒される系の物語を、心掻き乱されることなく視たい人にはお薦めできません。要注意です。

ただ、文学少女こと天野遠子先輩の登場している時間帯、特に文芸部の部室シーンは別。逆光などの作画クオリティも手伝ってか、とてもいい感じの空間に仕上がってます。

ですが彼女、ほとんど物語に関わってこない。
この部分は上記の視聴ルートで多少改善されますが、物語を食べる彼女、そもそもこの物語の中での立ち位置も、この特異な設定と同じように読者であったのかもしれません。
ファンタジックな着地も読者目線と捉えればなんとなく合点がいきます。
てか、OVAプレリュードを視聴すると、このはと遠子先輩との出会いの意味が180度変わるエピソードが仕込まれています。
実はこの物語、遠子先輩の思惑がかなり‥‥ry

そして物語の主題「トラウマ」に関しても劇場版だけでは消化不良だったと思います。わたしが朝倉美羽というちょっとアレなキャラに高いリアリティを感じたのはOVAレクイエムのおかげだったと思ってます。

全体としては、リアルな葛藤に対してファンタジーな爽やかさを被せてくる演出がう~~ん‥でした。
空気感としては良い「転」→「結」だったと思うけど、この辺がカッチリ融合して説得力をもっていればもう少し楽しめたかと思います。

ということで、わたしの未知のジャンルの適性チャレンジは"保留"という感じになりました。小さな一歩は踏み出しましたが、恋愛度強の作品を堪能できる素養はまだ確認できてません。

作品については、正直劇場版単体ではあまり物語を評価できませんが、OVA込で視るんであれば、それなりに楽しめるかと。突っ込みどころも完備してますしね。

※以下OVAの話込みのネタバレ。

{netabare}

正直言うと劇場版とOVAの連続性が欲しかった。
大人の事情が多大に影響していたのでしょうが。。

キャラデは意外といけたし、髪揺れや光表現などの作画クオリティも高く視やすかった。ちあの身長が完全に1m切ってたシーンあったけど流石に吹いたwだまし絵かとww

内容的にはOVAも含めると美羽のキャラは説得力あったと思う。思うのだけどトラウマ克服の展開が安易なのは否定できない。一言で救われることが絶対に無いとは言わないけど、遠子先輩と初対面なのも含め、積み重ねが無さ過ぎて説得力が‥。

そもそも抱えてる問題はリアルに描いてるのに解決方法が唐突で、しかもファンタジー‥というのがちょっと興ざめでした。
しかも美羽が克服したとみるや遠子先輩に一目散なこのはw
なんたるフットワーク、切り替えの速さ。バロンドール候補に推薦したいレベル。

その遠子先輩は魅力的に描かれてて良かった。魅力的でいて物語に殆ど関わらないという立ち位置がある意味斬新だけど、OVA込みならまあまあ理解できる感じ。物語を食べる設定もOVAで結構お腹いっぱいにはなるんだけど、返す返すも劇場版と連続性を持たせて頂きたかった。

以上です(`_´)ゞ

{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

ファンタジーだからこそ心の動きが自然でした。

 dアニメのトップにあったので、あまりのなつかしさに視聴しました。本作を見て思うのは、感動とかいい作品って、決してリアリティじゃないですね。

 どんな荒唐無稽な設定の中でも人の心の動きをしっかりと描き切っていれば、一見バカみたいな設定、ちょっと不自然な物語の展開が、かえって感情を強調してくれて深く感動できます。それが、日本のマンガやアニメそしてラノベのいいところだと思います。そしてその代表が「文学少女」なのかもしれません。

 出てくる女がみんな不快になる要素を持っています。ヒロイン遠子も含めてです。彼女は無垢でもありますが、我儘です。でも、深く深く主人公を尊敬し理解しています。しかも、主人公が井上ミウだということを知らなかったのにです。そして、その事実を知ったからED前のあの2人の美しい場面につながってゆきます。

 {netabare} 誰よりも好きで理解していて尊敬しているから一緒にはいられない、{/netabare}という決断って古典的ではあります。が、これを自然に描こうとするのはストーリーに力がないと間抜けになります。遠子の決断に至る心の動きの説得力は、文学を味わうという「文学少女」の不思議なファンタジーな設定だからこそ活きてきます。

 で、本作のメインキャラ、ミウがいるわけです。まあ、この子についてのエピソードは正直不快なだけですが、主人公が小説家になるきっかけとか、遠子との対比という意味で重要です。ミウは主人公にきっかけを与えましたが、結果として彼の小説家としての未来を危うくしてしまいます。でも、遠子は主人公を少しずつ癒し、最後は{netabare}自分の気持ちと引き換えに背中を押します。{/netabare}主人公に対する執着と理解、心を壊したか癒したかが描かれていました。だから、最後の10分くらいの感動につながりました。
 号泣は言い過ぎですが、結構涙が自然にあふれてきました。

 それにしても平野綾さんは、うまいですね。いろいろあって活躍が中途半端なのは残念ですが、声の演技という点では非常に才能がある方でした。素晴らしかったと思います。

 非常に面白いし、懐かしくてさっき原作全巻買い直してしまいました。本作は不思議なことにこの映画の前段となるシリーズがTV等でアニメ化されてないんですよね。で、いきなり映画ってすごいですね。是非TV化希望といいたいですが、今のラノベと比べて作風が古いですし、当時としても異色だったと思います。多分もう無理でしょうね。

 予備知識が無くても、本作だけでも楽しめます。人の設定もストーリー展開上知識無くても読み取れる部分は多いです。
 ただ、やっぱり登場人物とかの関係で入り込むなら原作読んだほうが良いかもしれません。竹田という女の子。原作はかなり強烈でしたが、本作ではあんまり感じませんでした。

 なお、エンドロール後のあれはそういう事です。良かったですね。

追記 皆さんのレビューで知りましたがovaあるんですね。さっそく探してみます。


雑記です。

 宮沢賢治についてはビブリオ古書店でも取り上げられていますし、ピングドラムでは主題でした。銀河鉄道999はまあモチーフにしただけですが。作品そのものは銀河鉄道の夜以外に沢山アニメ化されています。アニメ見るなら一度宮沢賢治はじっくり読んでおいた方がよいかもしれません。

 覆面美少女作家というと、北村薫を思い出しますね。多分作風からいって本作の原作者も読んでいるのではないでしょうか。
 北村薫は意図したわけではないですが、おっさんで学校の先生で身分を隠したら女子大生と勘違いされたみたいですね。この人は人が死なない推理小説の元祖とも言われています。氷菓とかハルチカとか好きな方にお勧めです。

 追記 なお北村薫はリセット、ターン、スキップの3部作で時間跳躍というSF要素を一般推理小説に導入した功績もあります。一般人?が見る普通のTVドラマ化もされているのでその意味では日本のクリエータに多大な影響を与えた人です。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 2

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

(他人の)愛憎劇。それは最高のご馳走。

アニメ見ると感想書く習慣がついたせいで最近よくやる(エロ)同人RPG
クリア後の感想書かないとなんかモヤモヤする体にされてしまった。

ドロドロ検索シリーズ。
今回はこの文学少女。110分かそんくらい。
原作はあるらしいのだけど知らなくても特に問題無し。勿論私も知りません。

タイトルがドロドロ劇に似つかわしくないので視聴前は半信半疑ではあったけど考えてみればあのスクイズだってタイトルは学校の日々という割りとさわやかなタイトルでした。

結論から言えばそれなりに良作。多分マイナーなんだろうけど掘り出し物だったと言ってもいいレベルだったようには思います。

今回のヒロインズは3人。ttと同じですね。
主人公はいつものドロドロ劇専用主人公だと思って頂いて大体構わないかと。

この作品。ヒロインのキャラは比較的立ってたと思います。
この手のお話の肝はヒロイン達がどれだけ魅力があるかに掛かってると思うのです。

では3人のヒロインを簡単に見てみましょう。

タイトルにもなってる文学少女。これが主人公の1個上の先輩にして文芸部の部長?
見た目はいかにも文学少女って感じの地味ながらも可愛い感じですね。
地味故に個性を持たせるつもりだったのかこの子は本が好きな余りに本を食べてしまう妙な癖?があります。
ああ、いや本を食べるはさすがに人外すぎでしたね。正確にはページをちぎって食べる・・・ですね。
お前は山羊の生まれ変わりかよと突っ込みたくもなりますがこのおかげかインパクトは強いです。

続いて美羽。
所謂ヤンデレに近い存在で本作品のドロドロ劇の8~9割程度は彼女が担ってると言っても過言ではないでしょう。
先輩が光だとすれば完全にこちらは闇ですね。
実際にいれば関わりたくないお方ですがこういう物語だと彼女のような存在は実に映えます。
お前石仮面被っただろと言いたくなるくらいタフネスなのはさすがに変な笑いが出てしまいますが。

んで3人目。
こういう話の3人目のヒロインてのは何故か扱いが軽いことが多いですが彼女には見せ場もあり比較的恵まれたポジションだったのではないでしょうか。少なくとも私は好きでした。

3者3様の魅力はあるんですが悲しい共通点として全員が身内にカイジ君いますか?と問いたくなるような立派な顎をお持ちな点が多少気になると言えば気になるかもですね。
1度気にするとね。どうしてもそこに目が行くのは人間の悲しい性なんでしょうかね。

序盤は穏やかな普通の物語してますが暗雲立ち込めるのは大体中盤辺り以降でしょうか。

先輩が妙に魅力あるせいかこのままドロドロ抜きのさわやか恋愛でもいいかなぁと不覚にも思ってしまった時期もありましたが物語が荒れてくるとやはりそれはそれで心躍るものがあるのです。

それと一応タイトルが文学少女となってますので宮沢賢治とかは頻繁に出てきますが特別詳しくなくても多分支障はないかと思います。

全体的に見ても上手く纏めてある印象が強いのですが出来れば12~13話くらいでもう少し深くしたものも見たかったかなぁというのは本音ですかね。


ネタばれ無しじゃ詳しく聞けないのだけどラストの先輩の決断がなぁ・・。

どうしてこんなことなったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、その時、私は死んでいるでしょう。
…死体があるか、ないかの違いはあるでしょうが。

これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。 byひぐらし

いや死んではないけどまさにこんな気分。
なんとなく察しはつくもののなんだかなぁて感じです。

まぁ終わってみれば良作だったと思います。少なくとも見て損することは無いのではないでしょうか。
劇場版ということを考えれば程よい愛憎劇具合で御座いました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 20

63.1 3 引きこもりで友情なアニメランキング3位
花とアリス 殺人事件(アニメ映画)

2015年2月1日
★★★★☆ 3.6 (142)
539人が棚に入れました
2004年に岩井俊二自身が原作・脚本・監督を務めた、ふたりの少女を描いた映画『花とアリス』の新たなストーリーをアニメで描くことになる。

『花とアリス』の前日譚となり、史上最強の転校生のアリスと史上最強のひきこもり 花が出逢ったとき、世界で一番小さな殺人事件が起こった、とのストーリーになるという。ふたりの出会いの物語だ。

アニメ映画では、鈴木杏と蒼井優を彷彿させるデザインのキャラクターが登場し、さらにふたりがこの声を演じることで10年ぶりに競演するのもみどころだ。

ちなみに映画は先に声を録音するプレスコを採用している。

声優・キャラクター
蒼井優、鈴木杏、勝地涼、黒木華、木村多江、平泉成、相田翔子、鈴木蘭々、郭智博、キムラ緑子

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

【今作があればもう日本には“アニメも邦画もイラネ”ってなる!!!】「いやぁ~どぉだろぉかぁ~σ(^^;)」【第3の映画誕生の瞬間を目にした!!!】

『Love Letter』や『スワロウテイル』で有名な天才邦画監督、岩井俊二が初めてアニメ長編に挑んだ意欲作
『サイコパス』の本広克行など、最近有名映画監督がアニメに乗り込んできたことをオイラの友人は「アニメが売れると分かってシャシャり出てきてる」と批判しました
ソイツの気持ちもワカランでも無いですが、今作に関しちゃ技術的にも物語的にも完成度的にもとても素晴らしい歴史的傑作に仕上がったと思っています
どうか【食わず嫌いだけはしないで欲しい】という気持ちで今作を応援させていただきたい


事の始まりは2003年にネスレKitKat(キットカット)のホームページ上で配信された連続webドラマ
所謂「続きはwebで」と銘打ったCMドラマです
蒼井優が演じる天真爛漫な元気娘“アリス”
鈴木杏が演じるアリスに振り回されがちな内気で惚れっぽい“花”
この二人を軸に描かれる受験生応援&青春恋愛ドラマでした


webドラマが思いのほか人気だったので2004年には続編となる長編映画が公開
映画の1年後には今作のプロットが出来ていたらしいですがお蔵入りになってしまい10年の月日が経った・・・そしてまさかの10年越しの復活、それもアニメで、という斜め上に意表を突いたのが今作なんですね


さて、なんでよりにもよってアニメ?
となるところですが、コレ物語が中学3年生の花とアリスの“出会い”が描かれるという前作の前日譚になってるんです
つまり10年越しに【鈴木杏と蒼井優】を10代の【花とアリス】に若返らせる為に「残された手段はアニメしかねー!」ってワケでオリジナルキャストを尊重した結果の決断なんですね


だから演出方法は基本的に実写と同じで、実写では普通に出来るカメラワークを純粋にアニメへ落とし込むためには・・・って努力がアニメ初挑戦の岩井監督ながらとにかく凄い
3本柱となる技術がロトスコープ、トゥーンシェード、背景をパーツ化してのモーフィング


監督自らデジタルコミック作成ツールを使って絵コンテを起こす

蒼井優ら前作オリジナルキャストが集結しプレスコ録音

実写ロケハン&ロトスコ撮影専門キャストで演技撮影

撮影した実写を元にロトスコープ作画&トゥーンシェード3DCGによるアニメート
(ロトスコとCGはカットごとに使い分けてます)


すんげぇ手間が掛かってるんですよ
2013年の『悪の華』が全編ロトスコだったり、最近でもトゥーンシェードのアニメが注目を浴びたりしてますが、今作は現代映像技術で出来ること全てを投入した結果といえる
魅せる動きのカットはスーパースローで、という演出の再現は基本中の基本
すごいのがアニメではまずやらない、ってか出来ない“フォローパン”を背景の立体化も含めた技術で完全にアニメートしてること
この背景自体も美監が滝口比呂志でコミックスウェーブフィルムも関わっていたりとあの『言の葉の庭』のスタッフが集結し“超美麗”っす
つまりあの『言の葉の庭』の美麗背景がシームレスに動いてるんですよ!?
その映像はまさに目からウロコ


もちろんこの作品を手放しで賞賛する気はオイラにも無く、まだ課題が残ってたりもします
『悪の華』では実写キャストにとにかく似せよう、というスーパーリアル調なキャラデザが賛否両論となりましたが、今作の場合は岩井監督の“ヘタウマ”な絵コンテが全てのベースになっている為、表情の描き込み等が乏しいのがタマにキズ
この岩井監督の絵を、「可愛い」と取るか「単に下手」と取るかで賛否は真っ二つでしょう
目が単なる棒線になってしまっているカットとか(こんな感じの→ |0| )、みんな同じ顔してるモブキャラとか、端的に粗末でもっと作り込めたな・・・ってカットが多々あったのは残念ですかね
もっと作画監督とか立てても良かったのでは?と


さてここまでは技術の話ばっかでしたが、物語的にもホント素晴らしい


転校生のアリスはクラスメートから何もしてないのになぜか無視をされ続けている
どうも1年前に同じ教室で“ユダ”なる人物が殺され、ユダの呪いが封印された座席に転校してきたアリスが座って封印を破ってしまったらしい
アリスは謎だらけのユダ殺人事件の詳細を唯一知る人物で、1年前から不登校を続ける花に接触を図る・・・


ユダとか殺人とか謎だらけのキーワードが物語を力強く引っ張り、コージーミステリとしてとてもよく出来ています
さらに中盤からユダの謎が徐々に解け、やがて思春期特有の淡い感情が生んだ小さな事件であることが明かされる・・・


プレスコによって伸び伸びとした演技が出来たキャスト陣が個性溢れる濃ゅいキャラクター達をより生き生きとさせており、小気味良いマシンガントークのさながら撃ち合いがテンポよくお話を進める
よく「非声優をアニメに出すな下手だから」とかいう人がいますが、それはアテレコの話であってプレスコの今作はむしろ本領発揮なワケです
そういった意味でも安心して楽しめると思います


とにかくずっと笑っていられる、そんな生暖かい目で観れる青春ミステリー傑作と呼べるでしょう
『氷菓』とか好きな人は絶対観るべきです、素晴らしかった


何気に作画協力に磯光雄が携わっていて“磯さんの生存が確認出来た(笑)”ことも個人的には面白かった


今作で用いられた技法は決して安易に作品を量産出来るものではありません
しかしながらこの技法の確立によってアニメでも実写でもない【第3の映画】が生まれたんじゃないか、とオイラ思ってます
岩井俊二ってだけでアニヲタドン退き、アニメってだけで大衆ドン退き、ってことで今作はイマイチ注目度が低いようです
けみかけは『花とアリス殺人事件』を全力で応援していきます

投稿 : 2024/11/02
♥ : 40

ostrich さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

折り合い

実写映画「花とアリス」は、岩井俊二作品を熱心に観ていたころに何度か鑑賞している。結構、好きな作品だ。

もっとも、一時期の岩井俊二作品は全部好きなのだが、思い返せば、「花とアリス」で私の岩井俊二ブームは終わった気がする。それは、たぶん、彼のせいでも「花とアリス」のせいでもない。私が必要としなくなったというか、岩井俊二的な気分ではいられなくなったということだと思う。
もしかしたら、時代の影響もいくらかあるのかもしれないが、よくわからない。ただ、「日常の中のファンタジーを描く」という作風が、良くも悪くも2000年代後半から現在の世の空気と折り合いが悪かったような気はする。

本作は、実写作品の前日譚を10年以上の歳月を経て、ロトスコープアニメーションで描いたわけだが、率直な私の感想は「懐かしい」だった。ああ、岩井俊二は今も岩井俊二なのだな、という。ただ、この感想もまた、良くも悪くも、ではある。

本作は岩井俊二作品にまったく触れたことがない方には、結構、オススメしたい。非常に彼らしい作品だし、彼の作品群は好き嫌いはさておき、一生に一度くらいは触れておいたほうがいいと思うからだ。
ただし、私と同じように一度、岩井俊二作品と距離を置いた人には、若干、皮肉混じりに「いつものアレだよ」と言ってしまうかもしれない。

この「アレ」の中身はいろいろあるのだが、一言で言うなら、前述した「ファンタジー」ということだ。「ファンタジー」と言えば聞こえはいいが、「こんなヤツいねえよ」ということでもある。
ただ、岩井俊二のすごいところは、「こんなヤツ」を、そこそこ現実感を持たせて描いてしまうところで、本作もそういうところを目指してはいる。

だが、ロトスコープアニメーションになったことで、違和感の方が際立ってしまった感は否めない。
なんとも逆説的なことだが、実写は演劇的な要素が入ることで、「リアルな世界の中のファンタジー」として成立するのかもしれない。そして、テレビドラマ出身の岩井俊二は、このあたりには自覚的で、それを活かした演出が抜群にうまかったということなのだろう。
ところが、アニメーションはそもそも形態からしてファンタジーなのだ。そこに現実と隣接したファンタジーを持ち込むと、嘘くささの方が際立ってしまう。

たとえば、作品冒頭にアリスが二階から落ちるシーンがある。
あれが実写なら「面白いウソ」になるところだろう。あるいは普通のアニメーションなら「よくあるウソ」として、アニメのリテラシーと合致しているから違和感はない。
ところが本作の場合は「ありえねー」となってしまう。アリスの体重がいくつかはわからないが、おそらく、40-50キロ前後のものが二階から落ちてきて、その下に別の人間がいたら、ああいう動きにはならないだろう。もちろん、フィクションなのだから、それでもいいのだが、なまじ他の動きにリアリティがあるので、嘘くささが際立ってしまうのだ。

10年以上の歳月を経てもなお、同じキャストでやりたかった結果として、ロトスコープアニメーションを選んだのだと思うが、こういう折り合いの悪さは随所で見られた。それは、動きだけではなく、会話やエピソードにも散見された。

そして、このことが岩井俊二という作家の現在の立ち位置を象徴しているように思えてならなかった。もう、ずいぶんと彼の新作を観ていないが、観ていない理由がわかってしまった気がする。
古参の岩井俊二ファンとしては、ちょっと苦い思いもある作品だった。

■シナリオについて

たぶん、私はシナリオライターとしての岩井俊二がとても好きなのだと思う。
本作の随所に折り合いの悪さを感じてもなお、本作のシナリオはやはり嫌いにはなれない。いや、「おじさんのエピソードは必要か?」とか、いろいろあるけれども、そこが岩井俊二的でもあるのだから、仕方がない。

また、本作に限って言えば、後半の構成がずるい。
「恋人たちの距離(ディスタンス)」だもの。

「恋人たちの距離」について語ると、本作のネタバレになってしまうので詳述はしないが、この構成は岩井俊二の作家性ととても親和性があると思った。

あ、「恋人たちの距離」を知っている人にはネタバレになるのか。
でも、知っている人はむしろ、本作に関心を持つと思うので気にしないことにする。
そもそも、本作はネタバレがどうのという作品でもない。

岩井俊二も「恋人たちの距離」も知っているなら、本作は間違いなく楽しめる。逆に、本作を気に入った方は、岩井俊二作品も「恋人たちの距離」も気に入るはずだ。

■想起した作品

「この街のこども」

前述した「恋人たちの距離」と同様の構成の作品(つまり、本作後半とも同様の構成)。もともとNHKで放映されたテレビドラマだが、劇場版もあり、そちらのほうが視聴しやすいと思う。

本レビューでは本作の「折り合いの悪さ」を指摘してきたわけだが、「この街のこども」は時代とも手法とも完全に折り合っている。本作を好きな方が気に入るのかわからないが、今の日本に生きるなら観ておいた方がいい作品だと私は思う。
岩井俊二が観たなら(おそらく観ていると思うが)、地団太を踏んで悔しがるんじゃないだろうか。
ちなみに、脚本を担当しているのは岩井俊二の弟子筋にあたる渡辺あや。

一応、「この街のこども」は本作よりも先に発表されているので、本作に影響を与えている可能性も否定できない。しかし、構成(と構成によって必然的に語られるテーマ)が同じなだけで、類似したエピソードがあるわけではないことは岩井俊二の名誉のために付け加えておく。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 4

N0TT0N さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

実写とアニメ殺人事件

まず情報として言っておきたいのが、この作品は『花とアリス』(岩井俊二監督)(2004)という実写映画の前日譚ということです。
だけど、それはあまり気にしなくていいかもしれません。
本作品だけで十分成立しているので、気に入ったら実写版を‥という見方もOKだし、制作順に実写版→アニメ版の順番で視ても楽しめます。

そしてこの作品、実写をベースにしたアニメーションという特徴があるので、万人に受け入れられる作品ではないかもしれません。
かく言う私も過去の経験から実写ベースのアニメは危険!という認識があったので、半信半疑で視聴したんですが、結果、全くの杞憂に終わりました。

作画が合う合わないは予告編で十分確認できると思うので、迷っている人は動画サイトの予告編をチェックしてみてもいいかと思います。

いやぁぁ。。

しかし素晴らしい作品でした♪

まず、物語についてですが、
ほんとに小さな物語でした。そしてテンポがよく、結構笑えたw

多くの作品で「物語の主題に合わせてキャラクターが動く。」ということが起こるけど、この作品のキャラクター達は、それぞれのキャラクターの意志に従って行動している感がありました。
物語のゴールに向かって行動しているのではなく、今やりたいことをやっている。
ものすごく無駄に行動したり、不細工に笑ったり、同じ事を何度も繰り返したり、相手との距離感を計りそこなったり。。
この自然さをよく脚本にしたり、演出したりできたと思う。
このあたりは岩井監督の得意分野でもあるけど、流石としか言いようがないです。
要は説明的じゃないということかもしれません。
例えば「疑問に思うけど今は聞かない」みたいな状況ってありますよね?
そういうときって「疑問に思うけど聞かない顔」を演出として挿入したり、少し長めの間をとったりして「疑問に思ってる」の説明をするものだけど、
実際はそんな顔はしないし、変な間も作らないw
99%相手に悟られないような演技を誰しも行っている。
こういう些細な部分の演出がほんと素晴らしいです。

物語の構成もサスペンス調の演出と、脱力系の演出が噛み合って楽しさと緊張感を絶妙な配合でブレンドできていたんじゃないかと思います。



作画について。
正直、実写をトレースしたような作画で100分の視聴に耐えられる作品を過去に視たことがありませんでした。
画風で独特の効果を出して異彩を放っているような、例えば「惡の華」みたいな作品はありましたが、本作は異彩を放つ作品ではなく、むしろ王道、ポップでシニカルなエンタメ作品と言っていいと思います。

で、実際この作品の作画はどうだったかというと、線の少なさプラス背景の鮮やかな色使い。これが絶妙でした。
トレースする線の少なさは平面的になりがちで、背景の鮮やかな色使いはファンタジーが強く出過ぎるというデメリット(本作の場合)があると思うのですが、まさか‥この両方を組み合わせることによってそのデメリットが打ち消されるなんて!
ほんと、ビックリです。驚愕です。マーベラスです。

もう一つ付け加えるなら、人物を鮮やかに描かなかったことも良かったと思います。
その代わり、人物の"動きの表情"をよく捉えてました。
動きの表情。
これは結構この作品のキモではないかと思います。


キャラクターの話。
アニメ的な表現方法と比較すると、「属性がない」「記号的じゃない」と言っていいかと思います。
アニメでは通常、キャラクターをある程度固定概念で認識することが暗黙の了解みたいになっていると思うし、そのキャラ設定を軸に物語を見ていく。みたいな流れって(冒頭のキャラ紹介等)あると思うんだけど、本作の登場人物はもっと自由で、固定された設定もなくて‥でも確実にキャラクターとして存在している。みたいな。。
これ、言葉でうまく説明できないんだけど、実写ベースという表現方法が可能にしていると思うんです。
例えばジブリ(宮崎)作品なんて、動きに命が吹き込まれている感がありますよね?
あれと全く逆の方法で、動きに命が吹き込まれている感じがあるんです。

モーションキャプチャーは画像を貼らなくても、ドットだけで生々しい動きをしますよね?
たぶんあの感じだと思うんだけど、その効果を使って上手くアニメート出来ていたんじゃないかと思います。

あくまで個人的な印象だけど、実写より、通常のアニメよりそれを強く感じました。

という訳でこの作品大好きです。

いろんな方に視ていただきたい。




因みに実写版視たので、解らなくはないんだけど‥

お父さん平泉成はウケたw

投稿 : 2024/11/02
♥ : 16
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