ユニバーサルスタイル さんの感想・評価
4.7
生きることは闘うこと。そのために一歩踏み出す勇気。
1クールと見やすいので久々に見直してみました。
今見ると稚拙な部分も見られますが、非常にメッセージ性の強い作品なので評価の高さも妥当だと思います。
あらすじ
{netabare}
引きこもりの中学二年生、桜田ジュン。彼は毎日ネット通販で怪しげなものを買っては暇をつぶしていた。
ある日受け取ったダイレクトメールの「まきますか まきませんか」の文面に「まきます」と答えたことで、後日謎の鞄がジュンの家に届く。
鞄から出てきたのは一体の美しいアンティークドール。ゼンマイを巻くと生き物のように動きだし、自分は真紅だと名乗る。
彼女は只のドールではなく、至高のドール‘アリス’を目指す内の一体、‘ローゼンメイデン’であり、姉妹達と戦う運命にあると告げる。
ジュンは成り行きで真紅と契約を結ばされ、ローゼンメイデン達の争いに巻き込まれることに。
{/netabare}
この作品が評価されている要因は、まず人間でなく人形-ドール-がヒロインとなって多数登場するところです。
顔、特に口元辺りが整っていたり、豪華なドレスを纏っていたり、足取りもチョコチョコと可愛らしくて非常に人形じみた外見が魅力的です。
歩く人形が自分を慕ってくれたり罵ってくれたりするなんて、なんと羨ましいことでしょう。
どのドールも個性が際立っていて等しく美しさがあります。
{netabare}
真紅はプライドが高くより高貴であろうとする格式高きドール。金髪の長いツインテールで赤い衣装に身を包んでいます。
雛苺は無邪気で一番子供らしい甘えん坊なドール。頭に大きなリボンを付けて、全身をピンクの可愛らしい衣装で包んでいます。
水銀燈はクールで誰とも馴れ合おうとしない孤高のドール。銀色の長い髪をなびかせ、モノクローム?の一番シンプルな衣装です。
翠星石、蒼星石は二人で対になる鏡合わせのようなドール。勝気な姉と寡黙な妹で正反対の性格をしています。瞳は同じくオッドアイで、翠星石は緑を基調にした衣装、蒼星石は青を基調にした衣装に身を包んでいます。
金糸雀は賢いけれどおっちょこちょいなドール。巻き髪がかった髪型に全身黄色の衣装で可愛らしいです。(一期だと未登場)
{/netabare}
そんなドールがジュンと共に戦い、ときに守りときに守られる。視覚的に満足度の高い光景です。
そのドール達の内面、そして繰り広げる闘いは外見に反してとても人間臭く、ギャップに魅かれる面もあります。
‘アリスゲーム’と呼ばれる闘いは、最後の一体になるまで争わなくてはならない辛く残酷なドール達に課せられた宿命。
真紅がジュンに向かって言った台詞「生きることは、闘うことでしょう?」。この台詞は強く心に響いてきますね。
ドール達が愛ゆえに苦しみ翻弄される様は、やはりどこか美しい。
主人公のジュンが現実を拒絶し自身の殻に閉じこもっている現状から、少しずつ立ち直っていって自分と現実に向き合う姿も、視聴者に大なり小なり共感を与えたのではないかと思います。
完全に心を閉ざしていた彼は、ドールとの交流によって少しずつ心を開いていき同時に生きることの過酷さを学んでいきます。
ドール達の闘いに接して、nのフィールド(もう一つの世界)で自身の現実と直面し、並の人間なら立ち直るどころか心折れてしまう状況でむしろ強く立ち上がるジュンはやはり強い人間だと思いました。
何よりこのアニメに欠かせないのはALI PROJECTの主題歌です。
これが元々のローゼンメイデンに加えてさらに華々しいイメージを作り出しています。
OPは映像も美しくて曲との相性が良いと思います。シリーズが進むごとに映像クオリティも上がってます。
EDでkukuiが歌う「透明シェルター」も透き通った歌声に非常に癒されます。
どちらも作品の雰囲気に合っているから聴いていて違和感がないのだと思います。
欠点としては作画がイマイチな点です。
もう10年前になるので仕方ないですがバトルにもあまり迫力は見られなく、あまり期待してはいけないです。
キャラデザはとても可愛らしいので、作画が良いときは中々に見栄えが良いものです。
キャストは今も活躍している方もおり、それだけ良い人材が揃っていたということかもしれません。特に沢城みゆきさん、桑谷夏子さん、田中理恵さんは凄いですね。
そう、あと素晴らしいのは音楽です。光宗信吉さんの手がけるBGMはどれも感動的に響きます。
意外とコメディ要素が強めですが、ドールとジュンのやり取りは心温かくなる所や胸打たれる所があり、ドールの可愛さと可憐さは今見ても変わらないものでした。