れんげ さんの感想・評価
4.4
西尾維新らしい言葉遊びが光る、12本の刀狩り物語
2010年1月より、月1回放送。
1時間の全12話。
後に2013年4月から、ノイタミナほかにて2枠を使い1クール一挙放送も行われました。
【前置き】
大勢の方が仰るように、当初は絵が受け付けなくて敬遠していた作品でした。
ただ、大好きな「物語シリーズ」を書いた西尾維新さん原作の作品。
加えて、上記の通りの1ヶ月毎に1話1時間の計12話という、1年単位の異例の特別放送スタイル。
(当時の原作の発行スタイルに合わせたそうですね。)
ここまでの待遇は、やはり名作であるがゆえに成せることなのでしょう…と思っていました。
さて、視聴後の感想としては……。
見始めは1話1時間ということで重圧があったものの、すぐに作品の虜になってしまい時間が経つのが早いこと早いこと。
「人様に推しても決して損はさせない」とさえ思わせる名作だと感じました。
【あらすじ】
「刀狩り」が行われていた時代。
刀を使わない剣術である虚刀流を使う『鑢七花(やすりしちか)』と、『奇策師とがめ』の2人を軸にして、「完成形変体刀」と呼ばれる12本の特殊な刀を、日本全国を巡り集めるという話。
1話1本、全12話で12本の刀が登場します。
【論じてみる】
{netabare}
あらすじだけ見ると、かなりのバトル展開を想像される方もいらっしゃるかと思いますが、そこは西尾維新さん原作。
戦いに至るまでの過程に繰り広げられる、「物語シリーズ」を彷彿させる言葉遊びが随所で光っておりました。
刀を持ち合わせた一人一人も皆、刀に合った良い味を出しており、
「次はどんな刀なのかな?」
「その刀を操るのは、どんな人なのかな?」
と、想像を掻き立ててくれるのです。
加えて、刀が集まっていくことで着実に話の終わりが近づいているのも分かるので、最後への期待も含めてワクワクさせてくれますしね。
作中での戦いや窮地においての機転を利かした「奇策士とがめ」の奇策の数々は、時には「そんな馬鹿な!」と思わせるものもありますが、シナリオに大きな破綻を生むようなものはないので
「終わりよければそれで良し」「面白ければそれで良し」
といった考えで見るのが一番ですね。
総じて、真面目一本筋のような作品では決して無いので。
ただ、その内容は人の死を数多く描かれたものとなっており、実際に七花も多くの剣客を死においやっていきます。
作中序盤より挟まれる、七花の(強引に決められた)決めゼリフ
「ただしその頃には、アンタは八つ裂きになっているだろうけどな!」
これが、七花の中で後々どういう心持ちで発するようになるのかも、作品の注目すべきところだと思いますね。
視聴前には重荷に感じていたキャラクターデザインも、そのシンプルさを逆に利用して作画枚数を増やしヌルヌルと動かしてくれるので、バトルシーンが映えて非常に見応えがありました。
作中、ある壮大な騙しのために異様に枚数を消費したシーンもあったりして、製作者の愛ある遊び心も魅力的でした。
楽曲も、オープニング2曲に加えてエンディングは毎話違い全12曲、どれも名曲揃いです。
オープニングは、癖が強くもクセになるALI PROJECTさんが歌う「刀と鞘」、エンディングでは「Refulgence」「からくり眠り談」「亡霊達よ野望の果てに眠れ」辺りが好きです。
ノイタミナ版オープニング曲として新たに制作されたsupercellさんの「拍手喝采歌合」も、まさに刀語を意識して作られた作風に合った名曲で、エンディング全12曲と戦うイメージで作り上げられたとか。
ここでもまたクリエイターの、作品への愛が感じられ気持ちが良いですね。
結果的に、私は3話ぐらいから作品の虜になり、続きがもぅ気になって仕方ありませんでした。
当初はノイタミナ枠で視聴し始めた私でしたが、我慢出来なくなってしまい最初に放送された方のDVDを探し、ものの数日で全話見てしまうほどに…。
(このノイタミナ枠版は、時間の都合で話が少し削られている為、尚良かったです。)
ただ、最後は、「最高のハッピーエンド!!」とは決して言えない内容なので、そこは人を選ぶかもしれないですね。
ですが、だからこそ作品の余韻に浸るのに十分な印象値を与えてくれるので、私は今も記憶に残り続ける大好きな作品となっております。
{/netabare}
【奇策士とがめ】
{netabare}
私としては、『奇策師とがめ』が作品の中で一番好きでした。
この、とがめというキャラクター。
刀集めの報告書を書く立場にある為、言動もどこか客観視された物言いになるのは分かるのですが、まるで作者の気持ちを表したかのように、序盤から
「そろそろ口癖を考えなければな。」
「そなたは個性が弱い。」
「気遣いで『読者』を虜にするような報告書が書けるか!」
「退屈で、途中で読むのをやめられたらどうするのだ!」
等と言い出す始末。
私達観る側からすると、必至に作品を盛り上げようとしてくれているみたいて、なんだか感謝の気持でいっぱいになりました。
その言動や行動も中盤からは癖になり…非常に可愛く思えてしまってからは、もう始末に負えません。
特に要所要所で挟まれる
「チェスト!!」ならぬ「チェリオ!!」
に、毎回悶えてしまい、個人的にはとても大変な目にあいました。
声を担当された田村ゆかりさんの威力は、かねてより知っていたつもりでした。
しかし、本作の威力はまた格別でした。
可愛いだけではなく、シーンによっては真面目で説得力のある声色をこなせるのがまた好きなのです。
とがめ役が田村ゆかりさんでなかったら、私は本作「刀語」に対し、ここまでの高評価に繋がっていなかったと断言出来ます。
後、どうでもいいですが、とがめの髪型は幼く見えるショートの方が好きですね。
大好き……いえ、愛してると言っても良い。
あぁ…、最終話は泣いちゃいました…。
もう嗚咽を抑えるのに必至でしたよ……。。。。
{/netabare}
【鑢 七実】
{netabare}
あと、もう一人。
作中で恐らく最強の、鑢七実(やすりななみ)も、大好きなキャラクターとして挙げたいですね。
このキャラクターの、病弱ながら人のレベルを超越した例外的な強さは、作中でも圧倒的な存在感でした。
「一回見れば大抵のことは覚えられます…、二回見れば盤石……。
ありがとうございます…、見せてくれて…。」
この、人の技を自在に扱う「見稽古」の力もさることながら、それすら反動を恐れて本来の自分の力を出さない為の手段でしかありません。
加えて、中原麻衣さんの心地良くも優しい声で
「これから貴方を拷問しようと思っています……。
せっかくだから選んでいただけないでしょうか…。
黙って死ぬか…、喋って死ぬか…。」
等と冷徹な台詞を吐くものですから、格好良いというよりは血の気が引いてしまうようなインパクトが生まれるのです。
鑢七実が活躍する、それまでの伏線や予告からの壮大な騙し?展開の4話と、その本領が発揮される7話は、作中でも最終話に次いで大好きな回です。
圧倒的な強さを持つキャラクターというものは、それがバトルものであろうとなかろうと、やっぱり絶大な印象を与えてきますね。
{/netabare}
【総評】
最終話では、全話追ってきたからこそ最高に熱い展開が待っており、
「これまで作品を見てきて良かった!!」
と思わせてくれた点でも、気持ちの良い作品でした。
ただ、上記でも述べましたが…、後味は人それぞれかもなぁと思います。
なんにしても、「まどか☆マギカ」と同様に、絵で判断してはいけないという教訓を改めて胸に刻もうと思わせてくれた作品でした。
当初とはうってかわり私は、今ではこのキャラクターデザインに愛着すら湧いています。
我ながら手のひら返しにも節操がありませんが、少なくともそれで見識は広がりましたね。
自分の中で、間違い無く『名作』に位置付けられている作品です。
本作に出会えて、本当に良かった。
ではでは、読んでいただきありがとうございました。
◆一番好きなキャラクター◆
『奇策士とがめ』声 - 田村ゆかりさん
◇一番可愛いキャラクター◇
『奇策士とがめ(ショートカット時)』声 - 田村ゆかりさん
…………以降は、視聴済みの方なら誰もが共感する内容ですが、駄文なので〆ます。
{netabare}
私は夜眠れない際は、とがめの「チェリオ!!」をエンドレス再生しながら、
「チェリオ!!」が1発……、
「チェリオ!!」が2発……、
と、脳内再生をして眠りについています。
時には、私から「チェリオ!!」して、イチャつく妄想でもしてみようかしら……。。。。
うへへ…こりゃ眠れませんなぁ、ぐへっへへへへ……(;´Д`)ハァハァ
『ただしその頃には、オレは八つ裂きになっているだろうけどな!!』
…………お付き合いいただき、ありがとうございました。
{/netabare}