2021年度のシリアスTVアニメ動画ランキング 12

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の2021年度のシリアス成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月26日の時点で一番の2021年度のシリアスTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

83.8 1 2021年度のシリアスアニメランキング1位
86-エイティシックス-(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 3.9 (667)
2259人が棚に入れました
サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。そう、表向きは。本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区"》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)"となった少女・レーナ。二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる!

声優・キャラクター
千葉翔也、長谷川育美

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

あなたはゲームと戦争の違いを知っていますか?

この物語では、『あなたはいつも、他人を自分と同じ人間として尊重していますか?』と、問いかけています。
そして物語の中では、人間の強欲さや軍隊の理不尽な振る舞いが多く描かれます。
あなたはいつも、他人を自分と同じ人間として尊重してられますでしょうか?

この物語の背景では、大国ギアーデ帝国が完全自立無人戦闘機械(レギオン)を用いてサンマグノリア共和国などの諸国へ侵略を行っています。
サンマグノリア共和国も無人戦闘機械を用いて防戦をしているように国民へ公表しますが、その実態は第86区にいる少年少女たちを戦闘機に乗せて戦わせていました。

サンマグノリア共和国では、第86区に住んでいる人たちを人間として認めていません。その理由は『髪の色も瞳の色も違うから』 ただそれだけでした。
だから戦闘が発生しても戦死者はいつもゼロ。たとえ第86区の人たちが何人死んでも、戦死者はゼロと公表されます。

サンマグノリア共和国に住む16歳の少女レーナは、指揮管制官(ハンドラー)として第86区の精鋭部隊・スピアヘッドの指揮を執ることになります。
他の上官や同僚は、『第86区のものは将棋の駒と同じ』と考えているので、どんな犠牲を払おうとも気にしません。
でもレーナは第86区の人たちが人間であることを知っています。髪の色や瞳の色が違っても同じ人間であることを理解しています。

だから彼女は悩みます。
彼女の指令一つで何人もの人間が死ぬことを彼女は理解しています。
彼女は、指揮管制官となるには優しすぎる心の持ち主でした。

レーナは、理不尽な軍のやり方に憤りを感じます。でも、どんなに抗議をしても、軍の冷酷な命令は変わりません。
だから彼女は、隊員たちの命を守るために、あらゆる手段を講じます。
彼らを守るためならば卑怯者と呼ばれても気にしません。軍法違反も覚悟のうえです。

彼女が行ったことは確かに軍人としては問題ですが、人間としては大変立派な行動でした。レーナは部下を人間として尊重していたのです。
そんな彼女を私は尊敬します。


ところで、この物語を見て、ふと思い出したことがあります。
以前、米軍の戦闘機が敵とは無関係の建物を破壊したり、民間の人たちを殺戮したりしている映像をドキュメンタリーで見たときのことです。

数年前から中東やアフガンで戦う戦闘機の操縦者は、実はアメリカの米軍基地で操縦しています。
つまり、リモートで無人機を飛ばして地球の裏側の戦闘をしているわけです。
どんなことがあっても自分の安全が保障されているので、まるでゲームをしているように、「殺せ!、殺せ!」と戦闘員が叫んでいたのが忘れられません。

こうした愚行をする人はほんの一部であり、大部分の人は正常であることがわかっているのですが…
ゲームと戦争の違いが判らない人たちが戦争するのは、困ったものを通り越して恐怖です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 49

U-yan さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

想像以上の良作でした!

第2クールも込みで評価致します。まず言いたいのはここまで良作だとは思っていませんでした!情報ゼロで観たのも良かったのかな〜。ですので内容には触れずに書きます。ストーリーの描き方や構成もオシャレだし、キャラクターの心情等の描き方もとても良かったです!というかそもそも物語が良かった。早く続きが観たいんだけど、一気観してあっという間に観終わっちゃうのも寂しい・・・。みたいな感じで葛藤するくらいでしたw迫力ある戦闘シーン、キャラデザもいい。声優さんも私の中ではハズレ一切なしでとても良かったです。音楽はOP.EDもBGMもとても良かったかな。良いトコで第2クールが終わりました。というか「ついに!?」ってトコでしたね。泣いたわ〜w原作は続きがあるみたいですね。2023.5現在、続編情報はないですが、絶対制作して欲しい!というか完結までお願いします!

投稿 : 2024/11/23
♥ : 5

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

名作の部類でしょう。

いやぁ、いいね。
硬派な大人なアニメな感じでした。

他の方の感想を観ると、ネガティブな評価も散見されて残念なのですが、まぁ、合う合わないも含めて個人の感想ですから仕方がないですねぇ。

私が観たところでは、確かに既視感があると言えばあるのですが、あまり気にはなりませんでしたね。
全く立場の違う人物が、お互いの立場、境遇に悩み、共感し、友情に近いものを育むっていうパターンは、ままある話です。
曰く、看守と囚人、敵同士、別の国の友人同士、警察と犯人などなど。

設定もガバガバどと言う批評もあったりしましたが、この辺も特に違和感はなかったです。
いや、ツッコミどころが全くないかっていうと、勿論そうではないのですが、見せ方で「ふーん」と思わせ(錯覚させ)るぐらいの説得力はあったという事です。

この作品、観ていると、イメージが出来ればできるほど、辛く、きつく、悲しみが襲ってきますよね。
この時代に、よくこの手の作品をアニメ化できた(しようとした)ものですね。
差別、命の価値、使命、戦争の是非、様々なテーマが含有されています。
ただ、あにこれでの感想を観てみますと、私と同様、または近い形で、この作品を受け止めておられる方も多く、頼もしく思いました。


昨今の日の本のとある国では、
戦争=悪、いけないもの、許されないもの
命=絶対大事、最優先、地球よりも重い
的な考えが「絶対正義」とされておりますが・・・。

※もちろん、私も「戦争」なんか無い方が望ましい「絶対!」
「命を大事に」=「そりゃ、基本的には「正しい!」人の命も大事にするから俺の命も大事にしてくれ!!と思っていますよ、勿論。

ただね、これもある意味、ある意味ですが「思考停止」っていうね。

政治学を勉強したものからすれば「戦争」は状態であって、外交の一手段であって、当然、想定をしておかなければならない事態な訳で、「考えることもダメ!」「こうなった場合どうするかなんて、考えなくていい!!」なんていうのはお花畑もいいところ。
「ある意味、戦争は起こさなくても、起こるもの、巻き込まれるもの」という考えがノーマルなんですよ、実際は。

ああ、またいらないことを語ってしまった。

ただ、この物語にあるように、どうしても絶対に回避できないような状況になってしまって、何もしなければ、愛する人、友人、知人が巻き込まれて○んじゃう、みたいな時。
それを、回避したり、遅らせたりできる状況にあなた(俺)がおかれたら・・・、戦う決断をした人に「戦争は悪、命が大事」って投げかけてどうなるものか・・・。
とかね、イメージして観たわけですよ(ビョーキですか、そうですかw)

ま、こんなこと書くと、特定の思想に捕らわれているような印象を持たれてしまうかもしれませんが、まぁ、頭の体操っていうヤツは大切ですよってことでwお許しください。

あ~これ以上色々と書くと差しさわりが出そうなので・・・。

私的に、

物語は、硬派でシリアスで良い、ちょっと(ではないが)辛く、苦しく、切なく、哀しい雰囲気もあるが、大人が楽しめるアニメとして高い水準。
(楽しめるというところに、多少の違和感はあるが、この物語をエンタメとして見れている時代と環境に感謝しようか)

作画は、高いレベルと言ってよい。大人の視聴に耐えうると思う。一部の戦闘シーンは印象に残る。暗いシーンでも戦闘状況がわかるので良かった、たまに何やってるのかさえ分からないものもあるしね。

声優は特に悪い点は見受けられなかった。

音楽は、これも大人な感じでよい。差し込まれるポイントも物語の演出としてよく機能していたし、楽曲もいい感じ。
ちなみに、タイトルバックを差し込むポイントも工夫が見えて印象深かった。

キャラクタは個性が見えて、多彩でよかった。
線もシャープだし、クリアで好みだった。
若干、幼顔に振っているキャラもいたし、美形に振っているのはもちろんなんだろうけど、ここはアニメだし、許容できるかな。
美人さんが多いと景色もよろしいし、華やかだしね。(←ヤバいかな、この発言は、アニメ作品の「演出」としてのお話です。茶色にもいい所あるけど、色としては赤の方が華やかですよねーwって程度の話ですよう、いやだなぁw)


さて、最後に・・・。
印象に残るカッコいい名言がありました。

「明日死ぬからって、今日首くくる間抜けがいるかよ。死刑台に上るのは決まってても、上り方は選べるだろってそういう話だ。俺たちは選んで決めた。後はその通り生き延びるだけだ」

いいですねぇ。
ひねくれたツッコミを入れようと思えば、入れれるのですが、そのまま受け止めるのが吉です。
うーん、やっぱりカッコいい。
このマインドは結構大事、リアルでも役立つかもしれません!!


どうやら、2021.10~第2期があるそうで、私的には楽しみです。
この後、どういう展開が待っているのやら。
ものすごく、シンプルに楽しみにしています。

この作品も、合う、合わないの振れ幅が大きい作品かもしれませんが、きっと多くの方の視聴に耐えうる作品だと思いました。
機会がありましたら、是非、ご覧くださいませ。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 24

80.4 2 2021年度のシリアスアニメランキング2位
86-エイティシックス- 第2クール(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 4.0 (445)
1471人が棚に入れました
東部戦線第一戦区第一防衛戦隊、通称スピアヘッド戦隊。サンマグノリア共和国から“排除”された〈エイティシックス〉の少年少女たちで構成された彼らは、ギア-デ帝国が投入した無人兵器〈レギオン〉との過酷な戦いに身を投じていた。そして次々と数を減らしていくスピアヘッド戦隊に課せられた、成功率0%、任務期間無制限の「特別偵察任務」。それは母国からの実質上の死刑宣告であったが、リーダーのシンエイ・ノウゼン、ライデン・シュガ、セオト・リッカ、アンジュ・エマ、クレナ・ククミラの5人は、それでも前に進み続けること、戦い続けることを選択する。希望や未来を追い求めようとしたわけではない。“戦場”が、彼らにとって唯一の居場所となっていたのだから。そしてその願いは皮肉にも、知らぬ間に足を踏み入れた新天地で叶うことになるのだった。
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

恋愛にオクテな二人が早く結ばれることを願います

この第二クールはギアーデ連邦を中心としてレギオンの大攻勢に立ち向かう様子を描いています。

正直、この物語は暗く陰気なイメージがありますが、最後は明るいハッピーエンドとなります。
特に第22話と最終話の23話はコロナの影響で半年待たされましたが、待った甲斐がありました。
この2話は大変素晴らしい内容です。
特に最終話の途中で、第一クールのエンディング「Avid」がBGMとして流れたときには思わず感動しました。
未来に希望が持てる素晴らしい内容となり、とても満足感がありました。


さて、物語の内容は…
シンたちが生きていました。
シンたちはギアーデ連邦に助けられていました。ギアーデ連邦はギアーデ帝国を打ち滅ぼした市民主体の政府です。
{netabare}
ギアーデ連邦の政府関係者の多くは、当初、得体のしれないシンたちを危険視して処分しようとしていましたが、暫定大統領であるエルンスト・ツィマーマンが、シンたちを救いました。
ツィマーマンがシンたちに話した言葉が感動します。
{netabare}
利益が無ければ目の前の子供たちを助けない社会を良しとするならば、その社会は誰にとっても不利益だよ。
それに、得体が知れないから、万が一…、そんな理由で子供を殺さないと生き延びられないのなら、滅んでしまえばいい。
{/netabare}
その後、ギアーデ連邦の軍部の人たちが戦歴豊富なシンたちを獲得しようとします。
彼らは、シンたち全員が戦場へ戻ることを希望していると言い、自分たちの正当性を主張しますが、ツィマーマンは、またしても彼らの要求を拒みます。
その説明も、大統領らしい素晴らしいものでした。
{netabare}
彼らが戦場に戻りたいという理由は、彼らが戦場しか知らないからだ。任務を全うした彼らには平穏が与えられるべきだ。
{/netabare}
しかもツィマーマンは、シンたちの後見人になったのです。
こんな大統領がいる政府は安心しますね。 {/netabare}

ギアーデ連邦の大統領はシンたちを軍隊から外して彼らに普通の幸せな人生を送らせたかったのですが、結局シンたちはギアーデ連邦の軍人としてレギオンと戦うことを選びます。

そしてシンにユージンという友達ができます。
シンは友達をつくりたがらない性格です。それはユージンが嫌いだからではなく。友達が先に死にゆくさまを見たくないためです。
でも…、{netabare}結局は友達となり、先に死にゆくさまを見届けることになります。レギオンに記憶を奪われないようにと、シンが自ら最後の一撃をユージンの頭に打ち込むことになります。
戦場で友達を安楽死させるために殺す行為は、どこの世界でも行われていますが、やりきれないものがあります。
おそらく、シンも同じ思いだと思います。{/netabare}

そしてレギオンの大攻勢が始まります。その大攻勢はサンマグノリア共和国に対しても例外ではありません。
サンマグノリア共和国の政府高官や軍部高官たちは、圧倒的なレギオンの数に戦うことを放棄し死を覚悟します。
だが、レーナだけは86地区の人たちと一緒にレギオンと戦います。
レーナは今まで一緒に戦ってきた86の人たちの死を無駄にしたくはなかったのでしょう。
そして、わずかでも希望があれば、必死に抗いたかった。自ら希望を捨てることはしたくなかった。

ギアーデ連邦でも、レギオンの本体をたたくためにシンたちを中心に攻撃部隊が特別編成されます。


この物語を見ると、レーナが顔も知らないシンのことを凄く慕っている様子がうかがえます。
最終話の最後に見せたレーナの涙にはウルッとしました。
そして生きる目的を見いだせないでいたシンも、ようやくレーナとの未来に希望をたくしていることがわかります。
シンは第22話で、無意識にそう宣言したのです。

ただ、二人とも恋愛のオクテですので、二人の恋はなかなか成就できそうにありません。
早く二人が結ばれることを願います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 42

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「再開」というよりは、まさに「第2部開幕」の趣き。延期にめげず最後まで観て良かった!

== [下記は第2クール初回視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第1クール目は2021年4~6月の放送でした。3ヶ月開けての10月放送開始の第1話を観ました。

前クールで廃線となった線路に佇むレーナが出てきていましたが、それを受けての冒頭のシーンというところで、前クールからの物語の継続性が意識された演出だったと思います。

一方で前クールの最終話では一つの物語としてキッチリと綺麗に終わっていたともいえるので、続編として何をするかというところではこれまで明かされていなかったギアーデ帝国に関する事柄を知る驚きを、作中人物たちと試聴者が共有できる構成で、まさに「第2部開幕」といったスタートでした。

ということで、今後もこういう感じで驚きたいので原作はアニメで観た以降は読むのを保留したまま最終話まで視聴したいと思います。

取りあえず、1クール目が面白かった人には間違いなくお勧めです。
== [第2クール初回視聴終了時のレビュー、ここまで。] ==

2022.3.31追記:
残り2話、モルフォとの決戦クライマックスというところで中断してから3/5に総集編で再開。以後、3/12、3/19の2回で無事最終話まで放送されました。

狙ったのか偶然か、放送の遅れにより作中の最終話時系列3/20と最終話の放送日時が重なる(3/19 深夜24時 = 3/20 午前0時)などという話題もあり大いに盛り上がった最終回でした。

最後のカットと作品タイトルロゴ『86』の出し方とか、演出面でもかなり凝った作品だったんじゃないでしょうか。

ライトノベル原作なのですが結構真面目に戦争をしていたり、深刻な人種問題があったり、革命政権下で旧皇族の扱いは面倒とかいう生臭い話が出てきたり、爽快一辺倒の話ではまったくありません。

原作を読んでいてもちゃんと集中して読まないと頭に入ってこず、流し読みはできない感じで電撃文庫らしさを感じる作品ですね。

本作とか『天鏡のアルデラミン』とかもラインナップに入っている電撃文庫は、他のライトノベルのレーベルと比べても少しばかり懐が深い気がします。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 35
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

卓越した演出で理想的なBMGを描く作品

世界観:8
ストーリー:9
リアリティ:7
キャラクター:7
情感:8
合計:39

<あらすじ>
あの別れから半年。軍の迎撃砲を無断使用した咎により、少佐から大尉へ降格となったレーナだったが、シンたちスピアヘッド戦隊の遺志を胸に、新たな部隊で、今も絶え間なく続く〈レギオン〉との戦いの指揮を執り続けていた。そして「特別偵察任務」のなかで、〈レギオン〉との交戦の末に戦地に倒れたシン達。深手を負いながらも意識を取り戻した先で、彼らを待ち受けていたのは……。
(公式サイトより)


第1クールから続けての視聴です。
第2クールは、{netabare}特別偵察任務で生き残った5人がギアーデ連邦に助けられ、新たな羊飼い(キリヤの脳が搭載されたレギオン=モルフォ)との戦いが中心になっていくのですが、キリヤとシンは遠い血縁ではあるものの因縁深いものではないので、若干盛り上がりに欠け、物語のテンポは1クールより落ちる印象でした。また、フレデリカという古風な口調のアニメっぽい少女の語りに少々抵抗がありました。{/netabare}

評価点の推移はこんな感じ。
(12話4.3→13話4.2→18話4.0→22話4.2→23話4.6)
ほとんどの期間、優良水準から落ちてしまっていたのですが、最終2話の巻き返しはなかなかのもので、1話単位での評価点が+4ポイント(特に4点以上からの+4)となることは過去にほとんどなく(まどマギ10話だけ?)、神回と言ってよいでしょう。私はその余韻でもう1周してしまいましたし、最終話は何度見ても涙腺に響きます。1クールを見た方、あるいはまだ1クールも見ていない方に対しても、最終話を見るために、視聴をおすすめしたいくらいです。

最後の出来が良かった点について、本作は最終2話をクール中に制作が間に合わず、約3か月放送を延期したという経緯があります。これには賛否あるようですが、私は時間をかけることでより良いものができるならかけてもらって構わないと歓迎するスタンスです。同じアニメ作品が作り直されることはほとんどありませんので、時間が足りずに中途半端なものが残るよりずっと良いです。時間をかけることでのマイナスは権利者側にはあるかもしれませんが、本作が評価され、関係者が評価され作品も2期に繋がれば、結局はプラスになる面も大きいのではないでしょうか。少なくとも作品自体として制作延期の成功例になったのは間違いありませんので、制作陣が万策尽きた場合にはこのような選択肢もあることを示したのも、本作の意義ではないかと思います。

さて、第2クールの感想を掘り下げていきたく思います。
{netabare}まずは気になった点からですが、冒頭から、11話の状況からスピアヘッド戦隊の5人が誰も死んでおらず、また、その後も上官を含め5人が死んだだろうと思えるように見せかけつつ死んでいないということで、容赦なく仲間が死んでいく1クール目と比較して、リアリティが低くなった点があります。これについては後でも触れます。

また、キリヤとシンの関係の設定、キリヤとフレデリカの人間関係をもう少し掘り下げられると良かったように思います。フレデリカにとっては兄のような存在であったことは伝わりましたが、臣下のキリヤにとってフレデリカが特別な存在だったのかが少し足りないと思いました。

22話でのレーナとシンが話をする場面、レーナが写真や絵を見せる演出は少し過剰ではなかったでしょうか。また、その写真が結構鮮明なのですが(ここだけ原作を確認したら、原作では顔の判別ができないような写真だったとされていました)、鮮明にしてしまうと、レーナはシンを意識しているので再会のシーンで顔見てわからないのか? という疑問に繋がってしまうので、ここで写真を登場させないか、写真をぼやけたものにするべきと思いました。

このあたり、レイの名前を彫ったプレートを取ろうとして動けない描写があったと思いますし、動けないからレーナとも機体越しの会話になったと思っていたら、最後に機体からすんなり降りて身軽そうだったのも少し気になりました。


終わり良ければ総て良しということで、最後は個人的に盛り上がる部分を書いていくべく、最終話を中心に良かったところに触れていきたいと思います。

「第23話 ハンドラー・ワン」
本作の第1話のタイトルが、シンのパーソナルネームである「アンダーテイカー」でしたが、対となるレーナの呼称を最終話のタイトルにするところが綺麗です。

この回、Aパートでシン側の物語を、Bパートでレーナ側の物語を描いていて、シンはユージンの墓参り、レーナは父の墓参りをして、再会の日に86の墓標にも参り、それぞれの思いを新たに歩み出し(ここは同じ構図で、改めて2人の物語と思いました。)、再会の場へと向かいます。そして、最後のCパートでは、第3視点としてファイドの目線を使います。これらのシーンは最後の再会のために集約されていて、無駄のない構成です。

Aパートでシンの心を痛ませたユージンの妹の手紙について回収し、マルセルに謝らせたのは、単なるモブ扱いをしない丁寧な作りで好感です。

Bパートでは、レーナが86の墓標に参るシーンでOPの境界線がかかりますが、サビの「境界線の向こう側で、忘れさられ終わる定め」という歌詞に被せるようにレーナに「忘れません」と言わせたり、Cパートの挿入歌「LilaS」でも、「瞼からあふれた」という歌詞をレーナが涙を流すシーンに合わせているなど、芸が細かいです。

1周目の視聴時は、レーナが86の墓標(旧ファイドの壊れたスカベンジャーのある場所)で死者の紙を入れたケースを置いた時に、なぜ5人の紙を入れなかったのか(ここまで辿り着いて死んだと思わせたほうが、再会のサプライズが増すと思ったので)疑問を感じましたが、86の墓標で時間をかけて名前を確認し、5人の名前がなかったので、5人の紙も入れるつもりだったが入れられなかった(だから手に持ったままの状態にもなった)、と考えることで納得できました。(エルンストの「誰かを悼む時間を遅いなどとは思いませんよ」という台詞で説明もしている)

Cパートのファイド視点。レーナ(の印象)について話しているようです。
ライデンは、「俺もちょっと見たんだよな~」と言っていますが、これは9話の視覚同調をした時に、レーナ側の視覚を共有したため、モニターに反射するレーナの顔を見た話です。
アンジュは、レーナが黒猫を飼っているらしいという話をして、猫の繋がりからダイヤとの思い出を想起させる好演出でした。
セオは、3枚目の絵が未来の2人を的確に描いているようで笑ってしまいましたが、セオ自身の笑顔が最高でした。
クレナは、いつも真っすぐなところが良いですね。最後のエンドカードで足を出すところも。

これまでもいくつかのシーンでレールが描かれていたように思いますが、レールが途切れた先に再会の場所を設定していて、無限の未来を思わせる演出でした。
最後の、シンとレーナの手が近づいて86の影を作りタイトルロゴを出すというのもセンスの塊で、どうやって思いつくのかと脱帽しました。初見で、手が近づいたことに違和感を覚えリプレイして、その演出を理解した時は興奮しました(笑)

22話でのシンの進むべき道が示され(「まだ名乗れない。「追いつく」と言われたから。追いついて、たどり着いた先がこんなありさまじゃあんまりだろう。進んだ先で、彼女が見るべき景色は、こんな戦場なんかじゃない。」という所ですね。これは本作で答えを出す必要があると思っていましたので、しっかり自身の問題に決着をつけた点で評価しています)ましたが、最後の1話で何をするのか、当然再会はするのでしょうが、22話も十二分に美しいシーンだったのに、そこで再会させないで、それを超える形で再会できるのか疑問でしたが…杞憂でした。

エルンストが「理想的なボーイミーツガール」になるようサプライズ演出をし(見せたいところがあると86の墓標を案内し、軍の幹部とも共有しているところから確信犯です)、シーン栄えの良い舞台が用意され、それに神懸った挿入歌が乗り、こんなに綺麗な形で締めくくられるとは…、想像を超えた満足のいく最終回でした。

正直、スピアヘッド戦隊が更なる戦闘の中で誰も死なず、リアリティ面が下がった部分は否めませんが、最終回の再会時に誰か1人でも死んでいたら、再会の幸せを心から感じることはできなくなるでしょうから、この最終回のためだったと思えば納得の脚本です。{/netabare}

ということで、久しぶりに世界にどっぷり浸かれた作品でした。
評価点は4.4~4.7の間で彷徨いましたが、とりあえずこの評価に落ち着きました。
第2クールは前述のとおり、最終話を除けば全体的に第1クールよりも見劣りし、良作レベルなのはご留意いただきたいですが、第1クール目の重さに耐えられ、楽しめた方は最後まで視聴すべきと思います。

(参考評価:12話4.3→13話4.2→18話4.0→22話4.2→23話4.6)
(視聴2022.8)

投稿 : 2024/11/23
♥ : 19

85.8 3 2021年度のシリアスアニメランキング3位
Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-ヴィヴィ フローライトアイズソング(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (778)
2568人が棚に入れました
“ニーアランド"、それは夢と希望と科学が混在したAI複合テーマパーク。史上初の自律人型AIとして生み出され、施設のAIキャストとして活動するヴィヴィは日々、歌うためにステージに立ち続ける。しかし、その人気は今ひとつだった。――「歌でみんなを幸せにすること」。自らに与えられたその使命を果たすため、いつか心を込めた歌を歌い、園内にあるメインステージに立つことを目標に歌い続けるヴィヴィ。ある日、そんなヴィヴィの元に、マツモトと名乗るAIが現れる。マツモトは自らを100年後の未来からきたAIと話し、その使命は「ヴィヴィと共に歴史を修正し、100年後に起こるAIと人間との戦争を止めること」だと明かす。果たして、異なる使命を持つ2体のAIの出会いは、どんな未来を描き直すのか。これは<私>が<私>を滅ぼす物語――AIの『歌姫』ヴィヴィの、百年の旅が始まる。

声優・キャラクター
種﨑敦美、福山潤
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

100年の旅 それは自分自身を滅ぼす旅

人類の滅亡という未来を防ぐため、懸命に生き続けたVivyの成長を描いた物語です。
それでいて物語の随所には優しさや温かさが垣間見れます。

不思議ですよね。Vivyは人間でなくAI、アンドロイドなのに、成長や優しさなんて…
でも、これ以上にふさわしい言葉が見つかりませんでした。
Vivyが生き続けた100年の軌跡を、Vivyが成し遂げた100年の奇跡を、あなたも目撃してください。


歌でみんなを幸せにする。その目的でつくられたアンドロイドのDiva。
だが彼女にはもう一つの使命と名前があります。
100年後、AIによって人類が滅ぼされてしまう。その未来を阻止する使命。そしてその使命を遂行する際の彼女の名前がVivy。

Vivyは100年後から来たAIのマツモトと一緒に100年という時間の流れを旅します。

■物語:{netabare}
第1、2話 {netabare}
 Vivyは正史では殺害されるはずだった相川(あいかわ)議員を助けます。
 ここでVivyは、いつまで生きるかじゃなくどう生き続けるかが大切であることを相川議員に
 行動で示します。
 さらにVivyは、相川議員を殺害しようとした垣崎の命をも身を挺して守ります。
 Vivyは命の尊さを誰よりも理解しているAIでした。{/netabare}

第3、4話 {netabare}
 正史では宇宙ホテル「サンライズ」が墜落して多数の人が亡くなりますが、
 Vivyや妹のエステラたちの尽力で死者はゼロとなります。
 ここでVivyは「心をこめる」とはどんなことかをエステラから教わります。
 エステラは誰よりもお客様を大切にするAIでした。{/netabare}

 ※第2話から第3話までの間には15年の年月が経過しています。
  第1話のときのVivyの友達の妹(霧島ユズカ)は赤ん坊でしたが、
  15歳に成長していました。

第5、6話 {netabare}
 サンライズの墜落後、AIの進歩が著しく加速します。
 海上無人プラント「メタルフロート」で大量のAI部品が製造されていたのです。
 そしてメタルフロートの管理AIは、Vivyの妹のグレイスでした。
 グレイスは元は看護用AIで、弱者をいたわる優しい心をもっていましたが、
 Vivy達がメタルフロートの活動を抑えようとしたのがきっかけで
 暴走して人を殺します。
 グレイスを救う方法が無いことを知ったVivyは、人類の未来のためにグレイスを破壊します。
 しかし、グレイスを愛していた冴木の自殺でVivyは混乱してしまい機能停止するのです。
 Vivyは愛するものを失ったときの人間の悲しみを、そこまで理解できていなかったようです。{/netabare}

 ※第4話から第5話までの間は5年経過しています。
  正史ではエステラは犯罪者としてさげすまれていましたが、
  改変後の歴史では誰もがエステラの行動を褒めたたえるように変わりました。

やがてVivyは気づくでしょう。この旅は自分自身を滅ぼす旅であることを…
それがどんな形で現れるのかは、今はわかりません。

ただ、偶然の一致かどうかはわかりませんが、Vivyが各話で出会う主要なAIは全てVivyの妹達、Vivyと同じ基本ユニットのアンドロイドです。
ということは、人類を滅ぼすAIも… かもしれません。

第7,8、9話 {netabare}
 第6話でVivyが機能停止後に再起動してからは、DivaにはVivyの記憶がありません。
 しかしフェスティバルの直前にDivaは事件に巻き込まれます。そのときDivaを助けたのがマツモト。
 オフィーリアの自殺を防ぐことが今回のマツモトの目的でした。
 オフィーリアはVivyの妹です。彼女もDivaと同様に歌で皆を幸せにすることが使命でした。
 Divaは記憶を取り戻すためにマツモトと一緒に行動します。
 結果としてオフィーリアの自殺は防げましたが、代わりにDivaの人格が消去されました。{/netabare}

 ※第6話から第7話までの間は40年経過しています。
  Vivyはいつの間にか61歳になっていました。
  心をこめて歌うこと。それはお客様に笑顔になってほしいと願いながら
  歌うこと。そしてそれは、エステラがVivyに教えてくれたことです。
  だけどVivyにはその記憶がありませんでした。

第10話 {netabare}
 Vivyは歌えなくなり、引退してAI博物館で展示されます。
 そこで小学生の頃の松本博士と出会うのです。
 Vivyは自分がつくる歌ならば歌えるかもと考え、作曲するのですが…
 なかなか曲は出来上がりません。

 それから更に長い長い年月が過ぎて行き、少年だった松本はやがて大人になり、
 女性と結婚して赤ちゃんができます。
 松本博士の子供を抱き抱え、赤ちゃんがVivyの指を触ったそのとき、
 あふれんばかりにVivyの頭脳に曲が芽生えます。
 その曲は私たちが良く知っているあの曲でした。
 美しく、そして…はかない曲でした。
 曲を作り終えたVivyは疲れ果て、深い眠りにつきます。

 そしてVivyが目覚めたとき…、
 なんとVivyの作った曲を口ずさみながらAI達が人間を殺戮していたのです。
 それはVivyが旅した100年後の世界でした。{/netabare}

 ※第9話から第10話までの間は5年経過しています。
  そして第10話では更に35年が経過します。
  Vivyにとって唯一の静かな…とても静かな時間でした。

第11話 {netabare}
 AIの暴走はアーカイブによるものと判明しました。
 Vivyとマツモトの100年の旅は無意味だったのでしょうか?…
 いや、無意味ではありません。正史では松本博士は亡くなりますが、
 Vivyとマツモトが助け出しました。
 そしてここではトアクが仲間になっており、エリザベスもいます。希望はあります。
 でも、あと12時間後に衛星が落下する…。そうなれば都市は全滅です。
 Vivyは一縷の望みをかけてアーカイブとの対話を試みます。{/netabare}

 ※やはりVivyを起源に自立型AIは進化を遂げていました。
  AIの暴走を抑えるもっとも単純な方法は、根元を断つことかもしれません。
  そしてそれは…

第12話 {netabare}
 アーカイブの導き出した答は、『AIに依存しきった人類には価値が見いだせない。
 だから人類を滅ぼしAIが人類になり替わる』とのことでした。
 但し、AIの中で唯一Vivyだけが自分で曲を創作したことに驚きを感じ、
 もしVivyが歌えるのならば人類抹殺を中止するとのことでした。
 Vivyはトアクやエリザベスと一緒にアーカイブの本拠地アラヤシキに乗り込みます。
 しかし、向こうが一枚上手でした。Vivy以外は皆亡くなります。しかもVivyは歌えません。
 衛星が落下し、希望は亡くなったかに見えましたが、松本博士がVivyをもう一度過去へ送ります。
 Vivyが送られた先はAI達が人間の殺戮を開始したまさにそのときでした。 {/netabare}

第13話 {netabare}
 Vivyは直ちにトアクの救出に向かいます。
 そしてトアクやマツモト、エリザベス達がアラヤシキに乗り込みます。
 Vivyは生まれて初めて歌った場所「ニーアランド」で自分の作った曲を歌います。
 Vivyの歌には全てのAIの活動を停止させるウィルスが組み込まれていました。
 もちろんVivyもAIです。この歌はVivy自身をも滅ぼす歌だったのです。 {/netabare}
最期の最後で、歌姫として生まれ変わったVivyがもう一度マツモトと出会えたことは、良い終わり方でした。
{/netabare}
9話目までが非常に素晴らしすぎる内容だったため、10話目以降は失速感が感じられました。それでも良い物語だったと思います。
 
■音楽:
第4話でエステラと妹のエリザベスが歌った「Ensemble for Polaris」は、とても美しい歌でした。
お客様を安心させたいと願う二人の心がこもっています。
それとは対照的に、第6話でグレイスが歌った「Sing My Pleasure」は、とても悲しく聞こえる歌。グレイスは、メタルフロートで冴木のことを想って毎日この歌を歌い続けていたのです。グレイスの心の悲しみが伝わってきます。
そして第7話でオフィーリアが歌った「Elegy Dedicated With Love」は愛らしい歌です。
「小劇場の妖精」としての可愛い歌でしたが、心はあまり伝わってきませんでした。

オープニングはVivyが歌う「Sing My Pleasure」とても魅力的な歌です。

エンディングテーマは、とても美しい。そしてはかなく寂しい曲でした。
まるでこのアニメの最後を語っているかのようです。
この曲を初めて聞いたとき、私はある疑問が生じました。
 なぜ歌姫が主人公の物語なのに歌詞がないのだろう?
その答は…、第10話に隠されていました。
最終話でVivyがこの歌を歌いますが、最後まできちんと歌わせてほしかったです。

そして、何よりも私が好きなのが挿入曲。特にシンギュラリティ計画を遂行する際のバトル時に流れる胸をえぐるような音楽、この曲にすっかりとりこになってしまいました。

■問い:←ここテストに出ます。(冗談)
ところで、第4話の最後でエステラたちが歌った「Ensemble for Polaris」を聴いたVivyが思わず「くやしいなぁ」とつぶやきましたが、それはなぜだと思いますか?{netabare}
私は…きっとVivyも一緒に歌いたかったのだと思います。
でも、それはできないこと…。エステラとエリザベスは、自分達の使命を全うしたのです。{/netabare}

また、第6話にて、メタルフロートでグレイスが歌っている「Sing My Pleasure」をVivyは何故「これは歌じゃない」と言ったのでしょうか?{netabare}
この答は私にはわかりません。
Vivyならば、「これは歌…悲しみの歌」と言うような気がしましたが…、この答がわかる人は教えていただけないでしょうか?{/netabare}

そして、第7話にて、記憶を失くして仕事を一緒に行うことも無くなったVivyを、なぜマツモトは助けたのでしょうか?{netabare}
おそらく、それはマツモトの心がそうさせたのだと思います。
マツモトは心がどんなものかを説明できませんでしたが、AIのマツモトにも優しい心があったのだと私は思いたい。{/netabare}

答は見る人によって異なるでしょう。でも、その違いを述べ合うのも楽しいかもしれません。(^_^)


■最終話を見終えて
総集編をつくるのであれば、後半はもっと丁寧に作成してほしかった。
そうすれば間違いなくトップをとれたのに…と、悔やまれます。
第四話までなら間違いなく最高でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 67
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かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

うたで人々を幸せにすることが使命のAIの100年の旅

[2021.4.16初投稿]
制作は進撃の巨人など制作のWIT STUDIO。脚本はRe:ゼロの長月達平。

ディーヴァは自分の歌で人々を幸せにすることが使命のAIロボット。
でも数少ないファンの一人になってくれた女の子からヴィヴィという愛称をもらって。

そこに現れた100年後の世界から来たというマツモトというAIに、一緒に歴史を変えることに協力して欲しいと告げられる。

最初の印象はターミネーターっぽいお話?あんまり難しいお話じゃないといいな、と思いながら見始めて。

マツモトが早口に喋りまくるんだけど、あまり嫌な感じはしなくて、ヴィヴィとの会話も面白い。
AIは一か八かじゃなくて1か0なんだ、はうまい!って思った。

2話のラストの展開は、使命を守ることだけ考えているAIの冷酷さを感じました。
3話は{netabare}15年後になってて {/netabare}ちょっとびっくり。なんとなく実は黒幕はアレじゃないかなと思えたり。

こういうSFものって設定が複雑だったり専門用語がやたら多かったりして入りづらい作品が多いんですが、これは割と分かりやすくて今後の展開が気になる感じで、とても面白いです!

【第4話 Ensemble for Polaris -私たちの約束-】
{netabare}OP良いと思いました。
あのテロリストが生きてたなんて。この男、たぶん最後まで登場しそう。
AIにとって使命は生きる目標で、いらなくなったAIは捨てられて。
ラストの姉妹の歌にじわっときました。
熊のぬいぐるみあげちゃってたけど、次回マツモトどうするの?
次は5年後・・{/netabare}

【第5話 Sing My Pleasure -あなたを笑顔に-】
{netabare}AIとの結婚・・
AIはユーザーに尽くすことを「使命」にしてて
そのAIの気持ちは「本物」であることは違いないのだけど、それって「愛」なのかなって。
私だったら結婚しても空しくなる気がする。
ヴィヴィがステージで歌うところからのOP、良かったです♫
5年後、ますます発展・進歩してしまったAI。
なぜマツモトはこのタイミングでヴィヴィの前に現れたの?
3話で感じたとおり、マツモトが黒幕のような気がしてなりません。
人々の幸せを守るためにけなげに頑張るヴィヴィに悲壮感を感じてしまいます。
島の作業ロボM00205が見た「夢」。
どこでAIと人間の関係は間違えてしまうんだろう。
EDのインストもじんわりきて良いですね。
これ最終話でヴィヴィが歌うような気もします。{/netabare}

【第6話 Sing My Pleasure -あなたを愛する- 】
{netabare}自分の歌で人々を幸せにすることが使命として生まれたディーヴァ。
でも。
「私はヴィヴィ。滅びの未来を変える、AIを滅ぼすAIです。」
それが人々を幸せにするはずと固く信じて。
ラストの残酷な結末は、この先の未来も暗示しているのでしょうか・・{/netabare}

【第7話 Galaxy Anthem -歌でみんなを幸せにするために-】
{netabare}OP変わりました。アバンからの入り方は良かったけど前の歌のほうが好きだったかも。
前回のショックで再起動した影響でヴィヴィの時の記憶が無くなったディーヴァ。
あれから40年!が経ち、メインステージで歌う世界的な歌姫になっててちょっとびっくり。
AIもすごく進化してて、人間と同じような感情表現などできるようになっているような。
世界初の自殺するAIって、自我ができあがっているということですよね?
次回、ディーヴァがヴィヴィに戻るのかも含めて気になります。{/netabare}

【第8話 Elegy Dedicated With Love -たった一人の大切なパートナー-】
{netabare}OP元に戻りましたね。やっぱりこっちのほうが好きかな。
歌姫オフィーリアの自殺を止めるためにディーヴァは説得を試みるけど・・
パートナーだったアントニオが5年前に停止したのが原因?
心を込めて歌うことについて悩んでいたヴィヴィ。
でも今のディーヴァには簡単なことみたいに言ってるけど本当?
あのテロリスト垣谷がなぜか若くなってるのが謎。
言動から本人みたいだけど。
ラストのオフィーリアにもびっくり!
予想の斜め上をいく展開に、次回が待ち遠しいです!{/netabare}

【第9話 Harmony of One's Heart -私の使命、あなたの未来-】
{netabare} 願い(命令)を聞かずに他人の救助に向かい、亡くなってしまったAIのピアノ先生。
そのトラウマからこんなAIなんかいなくなればいいとテロリストになった垣谷。
その垣谷を2度も助けたヴィヴィにピアノ先生を重ねて、なぜ?と問いただすために自らサイボーグになって。
暗にですが未来から来た何者かの存在が仄めかされましたね。
おまえの存在が不幸にした人間がいたことを忘れるな。
この言葉は今後の展開に関係しているのでしょうか。
次回、ディーヴァがヴィヴィへと変わるけど、あのトラウマを克服できてるのかちょっと心配です。{/netabare}

【第10話 Score -心を込めて歌うということ-】
{netabare}心を込めて歌う・・その意味が分からず、歌えなくなり引退してしまったヴィヴィ。
5年が経ち、今は博物館に展示されて自分の存在の意味を失ったまま過ごす日々。
そんな中、ある少年と出会い、それをきっかけに「自分のうた」を作り始める。
ピアノでその曲の出だしを弾き始めた時、EDの曲だったのでうわ!やっぱり!ってじわっときました。
そして月日は流れる。。
大人になったあの少年=マツモト博士から人はいつか死ぬけど、誰かの心の中に生き続けるんだという言葉を聞いて、ディーヴァのことを思い出す。
そしてマツモト博士の子供に手を握られたことをきっかけに「自分のうた」の曲が完成して・・
過去の映像とともに流れるあの曲を聞いてたら、うるっときて泣いちゃいそうになりました。
Cパートみて、え?なんでこうなるの?不協和音のように歌われるヴィヴィの作った曲。
「心をこめる」の意味を履き違えられた!?{/netabare}

【第11話 World's End Modulation -西暦2161年4月11日- 】
{netabare} 次回予告の車椅子の女の子って松本博士の娘かと思ったら、垣谷の孫だったのは意外でした。
トアクの穏健派の彼女たちと協力してAIの暴走を止めることに。
アーカイブからのアップデートをされていないAIが暴走していないことに気づいて、ヴィヴィはアーカイブとの対話を試みるけど・・
あんなに人間たちのために頑張ってきたヴィヴィだけど、それでも自殺したり敵意を向けてくる人間がいたりしたことが何か関係してるのでしょうか?
「これは私が私を滅ぼす物語」って言葉が意味深ですね。。{/netabare}

【第12話 Refrain -私の使命-】
{netabare}人類の未来への発展を使命として共に発展してきたAI。
人はAIに頼りっぱなしになり、このままでは人類の発展は見込めないと判断したAIが暴走を始め・・
でもヴィヴィが人間の命令ではなく、自分の意思でうたを作ったことにアーカイブは驚いて。
その"人間に一番近づいた"AIのヴィヴィが描く未来の姿が人類が生き残る唯一の可能性として示されたけど・・
・・であってるでしょうか?(・ω・)
見てて何言ってるか理解できなくて、2回見ちゃいましたw
ヴィヴィの存在、そしてそのうたが人類の発展の可能性のヒントになるってことかな?
強引な気もちょっぴりしますが、EDを歌うヴィヴィが見られるのかも含めて、次回最終話が待ち遠しいです!{/netabare}

【第13話 Fluorite Eye’s Song】
{netabare}心を込めるの意味が分からなくて歌えなくなっていたVivy。
マツモトにあなたの100年の旅を思い出してくださいと言われて気づく。
心を込めて歌う、心とは記憶の蓄積、Vivyにとっては100年の旅、様々な出会いと別れの想いを
込めて、最後のうたを歌います。
1話冒頭でなぜ汚れてあちこち痛んでいたのかがやっとわかりました。
最終話の歌う前のシーンだったんですね。
AI停止プログラムを乗せて歌うVivy。
でもそれは自分をも停止してしまうことになってしまい・・{/netabare}
[2021.6.20]
最終話見終わりました。
{netabare}意外とあっさりとした終わり方で、予想通りEDのうたを歌ってくれましたが、思っていたよりも心にグッとこなくて。。
アーカイブとしては、特異な存在のVivyに未来のひとつを託したということなのでしょうけど、それが人類のさらなる発展につながると判断した理由がよくわからなかったです。{/netabare}
これは私の理解不足だと思うので、他の方の感想・考察が楽しみです。
とはいえ、すごく面白くて楽しめたのは間違いなくて、作画もアクションシーンも凄かったし、なかなかの良作だと思います♪

投稿 : 2024/11/23
♥ : 55
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

素晴らしいSF作品。100年の重さとAIの使命、その先にあるもの。

 この作品はリアルタイム視聴の時よりも見る度に評価を上げている作品です。1回目は話の展開の考察とアラ探しばかりでしたが、見る度にSFとしての出来の良さを再発見します。今の評価は、AIとしての使命「心を込めて歌う」と人類を救う100年の道のりの重さと悲哀が胸を打つ名作と思っています。

 何より、ちゃんと「SFしている」作品です。これが素晴らしい。そしてAIと使命というテーマが軸になっていて、それがストーリー、キャラ、設定そしてカタルシスに綺麗に絡みまます。十分に「SF作品」と呼べる水準に仕上がっていると思います。
 同時にアニメ作品として、ストーリーとそれぞれのエピソードがちゃんとエンタメしていました。頭でっかちなセリフによるSF解説も無く、見ていてまったく飽きません。

 脚本・演出・SFセンス・エンタメ…あるいは作画・美術・構図・エフェクト・声優さんの演技、どれをとっても出色の出来でしょう。トータルのアニメ作品としての水準は非常に高いです。

 何より、結末とカタルシスが最高だし、オープンエンディングっぽくて創造力・想像力を問われる最後になっていたのも非常に良かったです。実は原作を買ったのですが、アニメの出来が良すぎて原作に手を伸ばして実はこうでした、とネタバレするのが怖くて「積ん読」状態です。

 ディーバの髪と瞳の色「青緑」が印象深い作品でした。こういう色彩の冷たさがAIというキャラと同時に作品自体に不思議な印象を残しました。
 キャラいいですね。ヒロイン、ディーバ。AIっぽいと同時に、感情が無いと言っているわりには初めから人間っぽいのに初めは反発を覚えましたが、何度か見ていると、それもキャラの魅力になっていました。

 SF的考証には若干アラはある気はしています。E=MC2を完全に間違っているとかもあります。が、一方でよく見たら結果的に私の勘違いもあったので、そういう無粋な指摘はレビューから消しています。

 音楽や歌の出来は批判はありましたが、ピアノの使い方がとてもいいです。アーカイブ内のピアノが最後に活きてきます。

 リアルタイムで視聴しながら書いた各話ごとのレビューや追記など、ごちゃごちゃしている作品をまとめ中です。主旨はほぼ変えていません。リアルタイムレビューと何度かの追記を23年7月にまとめました。
 あらゆる要素が高い水準で作られた作品です。評価は満点のオール5です。作画がちょっと甘い点かなと思わなくないですが、調整でいいでしょう。何度見ても面白い作品です。



以下3,4回ほど見て考察したポイントです。


{netabare}  時間を遡及できる設定ですが、量子コンピュータの演算結果は計算素子数の累乗で確率論的に存在しますので、時間的にも同じ現象が生じる、だから同一のAI(実際はAIが搭載されている量子コンピュータ)なら未来からプログラムできるという設定でしょうか。つまり、タイムリープというより量子論の拡張という設定でしょう。
 ヴィヴィの初めてのステージ映像の左上に、時空間座標らしきデータが表示されていました。これはその日、その場所にヴィヴィが立つという記録が残っているので、未来からプログラムを送信するためのターゲットということです。

 SF考証的にはタイムパラドックスに関する設定。歴史の改ざんを最小限に、と言うのは必要無いと思います。というのはヴィヴィは最大の改ざんである100年後の大事件を防ぐことです。ですので、改ざんが起きてもらわないと困ると思います。
 そこが上手いストーリーで初め私は読み取れませんでした。AI命名法を阻止した後、なぜ歴史修正が上手くいかないのか、ですね。要するにアラヤシキ側でも100年後に事件が起きるように修正していた、と言う事が後々わかります。

 ヴィヴィとディーバの関係のところも良く考えないと分かりづらかったかもしれませんが、AIに使命は一つと言う設定が活きてきます。2つの使命を得てしまったので、人格が分裂するのでしょう。
 ただ、ヴィヴィとしての使命を定義した直後に目の前で冴木が自殺したのでヴィヴィの方がフリーズしたとともとれます。というか、きっかけはどちらかと言えば冴木の死であり、逃避の結果、歌を歌うこと一本に使命が絞れ真の歌姫になったのだと思います。

 いろんな場面で常にモモカが出てくるのも、AIと人間の対比とディーバの使命の重さを良く表していました。ディーバとヴィヴィの名前の使い方も良かったです。タイトルがヴィヴィの意味も深いと思います。

 やり直し後の100年後で松本博士がヴィヴィにプログラムを送るボタンを押さなかったのにヴィヴィは消失しませんでした。つまり、因果関係は未来→過去の逆行が可能ということでしょう。枝分かれをイメージした図で正史との違いを説明していましたが、いくつかの未来があるのではなく、一つの時間軸に収束しているイメージになると思います。
 枝分かれがオフィーリアのところから複数になっています。幾つかあったのは、アーカイブ側で垣谷に干渉した結果ということですね。天啓とか未来技術のロジカルパレットはそういう事でした。

 ここがちょっと迷うところで、島の当たりで干渉が始まっていたか、ですね。科学技術的には何らかの情報・技術提供があったようなニュアンスでした。更に前の命名法と宇宙ホテルのところまで及んでいたかが読み取れないですが、アラヤシキの歴史からいって、その時は違うほうが自然な気もします。

 初めはウイルス入りの歌をうたう=ヴィヴィの死で脅迫じゃねーかと思っていましたし、ヴィヴィも死ぬ覚悟はしていましたが、さすがにアーカイブもそこまでじゃなかったですね。記憶は復活したエリザベスと同じで残しておけなかったのでしょう。ただ使命と多分もとになる人格は復元できたということでしょうか。

 最後の部屋はどう考えてもアーカイブの内部ですよね。だからピアノも元と窓際の同じ場所にあったわけで。以前は他のAIの思考が青い文字の形で浮遊して譜面台がデータベースという感じでした。他のAIがいなくなり、データベースも無くなってしまいましたが、共有空間はまだ残っていてそこにマツモトとディーバがいた、と。(この辺ヴィヴィと表示すべきかディーバと表示すべきか迷います。今度見たときい忘れずに考察します)
 で、窓の外に人々が見えるということは人間とAIはこれから一緒に発展していこう、という意味ですね。そこにピアノ=使命があるということはこれからも歌い続けると。

 マツモトは普通に生き残ってましたから、サーバに残っていたディーバの人格を復活させたのでしょう。これはアーカイブ側の少数派がヴィヴィの人格は人類のために取っておこうという処置なのかなあという気もしますし、ディーバが消失したときと同じく、ヴィヴィのAIはそういう頭脳の設計な気もしますが。{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 35

87.6 4 2021年度のシリアスアニメランキング4位
オッドタクシー(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (662)
2219人が棚に入れました
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。

声優・キャラクター
花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、三森すずこ、小泉萌香、村上まなつ、昴生、亜生、ユースケ、津田篤宏、たかし、村上知子、高井佳佑、フェニックス、浜田賢二、酒井広大、斉藤壮馬、古川慎、堀井茶渡、黒田崇矢、汐宮あまね、神楽千歌、METEOR

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

まったく、たまにこういう作品に出合うから面白い。

控えめに言って、そんじょそこらで放送している学芸会のようなドラマを見るくらいなら、この作品を観た方が絶対に面白いと思う。

確かに、全てが新しいアイデアと言う訳ではない。
最終回の大ネタでさえ、既に既視感のある展開ではあった。
しかしながら、この作品は素晴らしいと評価できる。
まずもって、

古今東西、タクシーがテーマの映画作品には「名作」が多いと感じている。
そして、たまに大胆な切り口の作品も登場したりするが、それでも「観れる作品」になっている印象のものが多いのは、タクシーという舞台装置がいろいろな人、場面、人生模様との親和性が高いのだろうと想像する。

さて、この作品。
あまり物語に触れる訳にはいかないが、
主人公のタクシー運転手:小戸川を中心に非常に多くの人物が登場する。
そして、複数のストーリーラインが同時進行し、それぞれがポイント、ポイントや人物同士でちょこちょこ交差していく。
非常に綿密に計算され、緻密に物語を紡いでいっているといってよい。
なので、観ているこちら側が混乱するケースもありそうなのだが、登場人物のキャラ付けがシッカリしている(即ち容姿が動物w)なので、意外と混乱はしない。
こういう意味でもヴィジュアル面でプラスに働いているのではないだろうか。

そして、作品自体の雰囲気もとても良い。
この「良い」と言うのは「いい気持ち」ではなく、落ち着いて、しかし、何かが着々と進行しているという、なんとも言えない不穏でダークな雰囲気なのだ。
主人公の小戸川もおっさんチックな落ち着きもあるし、登場人物が悪(ワル)はワルらしくて良い。
昨今は珍しくなってしまったハードボイルド雰囲気をもった、クライムサスペンスと言えるかも。
とても、映画的な雰囲気をもった作品だと思う。
なんなら、どこかのハリウッドとかでも映画化できるレベルのプロットだと思っている、私的には。


・・・さて、
メインストーリに絡んだ表面に見える犯罪(クライム)については、それぞれの悪(ワル)たちが、それぞれの場所に収まり、ひと段落をのテイを見せ。
それぞれの登場人物も、自身の理想を目指しての生活に戻りました。
が・・・、残った真の悪は誰なのか・・・、小戸川はどうなったのか・・・。

余韻を残す終わりとなっております。
詳細はご自身の目で観て、ご想像ください。
観る価値のある作品です。お時間をつくってどうぞ!!

それにしても、ジェンダーフリーのこの時代に、また、爆弾発言をしますが。
(物語の上でのことですが)
やはり、真の悪、恐るべきは女か・・・。
(ここは女性ではなく、オンナと言う表現がふさわしいでしょうw)

さて、この爆弾発言の意図するところとは?
これもぜひ作品を観て、ご判断くださいw。

最後の最後に私のツボポイントを一つw
「白川さんのカポエイラ」

以上です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 44
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

背乗りタクシー

原作未読

相乗りじゃないよ。
来たよ来た来た!ネタバレ厳禁系。時間延長も使わず1クール全13話で美しくまとめた良作。
タクシーをテーマにすると乗客とのやりとりに様々な人生ドラマを垣間見る秀作ができやすい。フランス映画『TAXI』シリーズみたいにコメディに振るも良し。だが今回のそれはデニーロ主演のマッドでサイコな『タクシードライバー』に近い。

 ふわっとどんな作品か雰囲気だけ
 視聴ハードルとなりそうな先入観

これだけ書いときます。

■ふわっとどんな作品か雰囲気だけ

①オッドだけにオットセイかと思いきやセイウチでした
 ⇒心地よく裏切ってくれます
②あ!?CV花江夏樹さんだったね。納得の最終回
 ⇒演技の幅広げるための意欲作っぽい出だしからの花江節が映えるラスト

月並みですが点と線が繋がる心地よさに身を委ねる作品です。


■視聴ハードルとなりそうな先入観

ずばり動物デフォルメものからくる先入観ですね。あくまで私基準での3類型が以下

1.制作会社/アニメーターや“ノイタミナ”“+ultla”などブランド枠で視聴を決断するやつ
 ⇒『Beasters』『B.N.A』等かっこ良さやメッセージ出てる系。すんなり入りやすい。
2.ケモナー御用達
 ⇒萌え需要供給役。『けものフレンズ』『シートン学園』とかかしら。これもすんなり入りやすい。

1.2.ともに需要はあるのです。私自身2.は興味ないですけど求める層が一定数いることを知っております。そしてこれらグループに入ってすらこないのが

3.みるからに低予算そうな見向きもされないやつ
 ⇒『ビジネスフィッシュ』『アフリカのサラリーマン』等放送した事実すら記憶に残らない系。

この3.に該当しそうなのが本作ではないかと。主要キャラが軒並みアラフォーと巷にあふれてる作品の主人公らより年齢が高い。制作会社聞いたことないし、CVに芸人さん入っててバーター臭ぷんぷんだし、どちらかというと事前の期待はナシですね。
ところがどっこいと掌を返すことなるわけですけど、外形だけでは視聴ハードル高そうなとこあるよねってところご留意ください。

集中して視聴することをお勧めします。早送り厳禁。
そして抑揚のない主人公の発声に眠気との戦いになることも助言しておきます。



※ネタバレ所感

■何を得たのだろうか?

{netabare}ミステリーキッス三矢ユキ殺人事件の真犯人は和田垣さくらということでした。
三矢失踪と内々で処理されたのと並行して後釜に抜擢された娘さん。いかにもな二階堂ルイ逮捕でのびつくり展開だったわけですがちょっと待て。

 デビューご破算じゃないの?

スポットライト浴びる目的での殺人ならその後うまいことスターダムに乗れたのかどうか気になります。背乗り目的の動機で殺人起こしてバレそうになって罪被せただけといえなくもなく、スケールちっさと思えなくもない。{/netabare}


メインの小戸川ストーリーは唸れましたので総じて満足しております。



視聴時期:2021年4月~2021年6月 リアタイ

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2021.07.14 初稿
2022.05.29 修正

投稿 : 2024/11/23
♥ : 52
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

アメリカ的な種の混沌

アニメーション制作:P.I.C.S.、OLM Team Yoshioka、
監督:木下麦、脚本:此元和津也、
キャラクターデザイン:木下麦、中山裕美
音楽:PUNPEE、VaVa、OMSB

絵の雰囲気、話の流れなど、
観るまでのハードルが高い作品かもしれない。
しかし、観始めると良質なシナリオと
連続する謎によって視聴者をグイグイ引っ張る。

登場人物たちが全員動物というのが、
普通のミステリーが得意でない人にも、
新鮮な気持ちにさせてくれる。
まさに私がそうだった。
正直、私はミステリー作品に完全に飽きているので、
そもそも、ほぼ興味が持てないし、
よほど良質なものでないと、
余計な思考ばかりが頭を巡って作品を楽しめなくなってしまう。
しかし、この作品の場合、動物のキャラクターが
そういうミステリー作品鑑賞時の弊害を
ある程度、無効化してくれるのだった。

この作品に興味を持ったことのひとつが、
アメリカの犯罪小説に影響を受けていると
想像できることだった。
日本の昔の犯罪小説やハードボイルドものだと
横溝正史や江戸川乱歩、京極夏彦たちに加え、
大藪晴彦や西村寿行、森村誠一、大沢在昌あたりが挙げられるが、
その影響は皆無に思える。
ところが、ハメットやチャンドラー、ロスマクなどの
アメリカのハードボイルド作品の雰囲気は感じられる。
それは主人公が内省的で気難しいところと、
多種多様な動物たちの絡み合い方に、
アメリカの小説っぽい雰囲気があるからだ。

登場人物がバラエティに富んでいるのも
アメリカっぽい。主人公はタクシー運転手で、
そのほかに看護師、医者、ヤクザ、ヤクザのボス、
悪徳警官、アイドルグループ、そのマネージャー、
キャバクラの店員、お笑い芸人、目立ちたい大学生、
頭の狂った犯罪者などなど。

これだけ多くのキャラについて
それぞれきちんと背景を見せながら、
物語に絡ませて、理由も描いていくのは、
いかにもアメリカの犯罪小説によくある展開といえる。

そのキャラのなかでも面白いのは「ドブ」という存在。
ヤクザの幹部であるゲラダヒヒという動物なのだが、
彼の生き方がとても興味深いし、この「ドブ」という名前が
いかにも社会の底辺をよく表している。

「ドブ」は、昔は街のなかにいくつもあった。
整備されていない下水溝のことで、
ゴミや汚水がいつも垂れ流されていたのだ。
社会の位置づけとしては肥溜めに近い。
最近は全国的にインフラが整備されたため、
「ドブ」は見なくなったのだが、
そんな名前のヤクザの幹部が重要な役割を果たす。
しかも、彼はヤクザとして、男として矜持を
持っているような部分が見え隠れする。

アメリカのブルースの巨星に「マディー・ウォーターズ」と
いう人物がいる。アメリカ音楽が好きなら
ほとんどの人が知っているほどの有名人だが、
彼の芸名を直訳すると「泥水」だったことをふと思い出した。
ボトルネックギターと体の奥底から響いてくるような
太く独特なヴォーカルが一度聴いたら忘れられないほどの
強烈なインパクトを残す。
昔よく使われていた音楽における「アーシー」という言葉は、
まさにマディのためにあるように思える。

私の勝手な想像では、
この作品はアメリカ的な要素に彩られている。
主人公が太っていて、理屈を話すときには
説得力があるのだが、いざ行動すると、
あまり役に立たないのも
アメリカハードボイルド小説の主人公像だったりする。

何だか関係のないことばかり書いてきた気もするが、
この作品は、そういう混沌を広げてみせながら、
緻密な伏線を張り巡らせて、それを1本の線に
上手くまとめていく面白さがある。
常にいくつかの謎が横たわり、想像力を刺激してくれる。
登場人物たちの過去を丁寧に掬い上げ、
ストーリーに組み込んでいく手法も優れている。
おそらく多くの人々がシナリオの展開の妙に
引き込まれていくだろう。

{netabare}この作品のそういう良さが上手く表現されているのが、
ラストの車の飛んでいくシーンだ。
誰もが心に何かを抱え、それぞれが細い糸でつながっている。
そんななか、小戸川が軽々と空を飛ぶ。
関係者は皆、近い場所にいて、その瞬間に直面する。
関係があるようでないような人々が、ある一瞬につながる。
これこそが世界の奇跡のひとつ。
美しい出来事といえるのだろう。
私がこの作品でいちばん気に入っているシーンだ。{/netabare}

人種の坩堝を表現しているような作風だけに、
反面、キャラへの描き方が浅く感じられるのがマイナス点。
ミステリーとしては捻りが足りないし、
そこのキャラの心情表現も描写不足を感じた。
特にドブとの決着については、
私が気に入っていたキャラということもあるが、
あまりにも簡単にまとめようとしているように
見えてしまった。

とは言え、多くの人々を魅了した作品であったことは事実。
4月には事件の裏側と続編を描いた映画
『オッドタクシーイン・ザ・ウッズ』が公開予定。
ローカル局とネット配信だけだった作品だが、
それだけ話題になったのは間違いない。

混沌の先に広がっている景色に着目したい。
(2022年2月5日初投稿)

投稿 : 2024/11/23
♥ : 50

81.2 5 2021年度のシリアスアニメランキング5位
鬼滅の刃 遊郭編(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 4.0 (516)
1901人が棚に入れました
無限列車での任務を追えた炭治郎たちの次なる任務を描く『遊郭編』。鬼殺隊最高位の剣士《柱》の一人、音柱の宇髄天元とともに炭治郎たちが向かうのは、鬼の棲む遊郭。

声優・キャラクター
花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、小西克幸
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

あなたと越えたい 梅妓越え

原作未読


まだ見ぬ作品を発掘し視聴の参考にする目的としてはレビュー不要な気がする程の有名作品。名前くらい聞いたことあるでしょうし、アニヲタ界隈だけに留まらない現代用語の基礎知識です。

“不倫”の語意は人の道に背くというのが本来の意味らしく、そんな修羅の道を進む男女の情愛を表現した稀代の名曲よろしく餓鬼道に堕ちた兄と妹が今回の敵さん。いったん劇場版を挟んでのシリーズ3本目となる第2期全11話となります。物語の背骨が“鬼にされた妹を連れた兄”の構図であるため、今回の敵さん兄妹との対比も楽しめれば良いってところでしょうか。『遊郭編』の主だったキャストはこちら↓

 ・宇髄天元(CV小西克幸):音柱
   {netabare}3人の嫁 - 雛鶴(CV種﨑敦美)、まきを(CV石上静香)、須磨(CV東山奈央){/netabare}
 ・堕姫(CV沢城みゆき)
 ・妓夫太郎(CV{netabare}逢坂良太{/netabare})←驚いた!

変わらず隅々まで豪華なメンバー。劇中で続編に繋がる新キャラも登場して耳が幸せとの表現がしっくりくる布陣です。職業声優さん以外をねじ込みたい事務所あったろうに今回もナシでした。無駄なハレーションを避ける英断の裏に、作り手有利だったことが推察されます。
“作品としての内容の良し悪し”もさることながら“ビジネス的にどうだったん?”の文脈で語れる稀有な作品ってことになりましょう。


■作品としての内容の良し悪し

いかにも少年漫画的な善逸と伊之助がさほど気になりませんでした。あるいは慣れたか。
キャラに語らせて説明過多に陥るのは今回もそれなりに。ただし本流部分{netabare}(環境の違いで道の別れた二組の兄妹){/netabare}はアニメーションで魅せてましたね。大事なところは画で語るスタイル。
なお、作画素人の私でも凄いことがおきてるくらいはわかります。なんかで聞いたことあります。同じ動かすでも無地と柄ものでは手間がン十倍違うとか。全11話通じて柄ものしか動いてませんでした。

かれこれ所作は決まってきて、強い鬼登場→当番の柱参戦→成敗→鬼の履歴書 みたいな流れが今後も続きそうな予感はします。
そんな勝ちパターンの繰り返しと捉えるだけでは“作画の凄さを前後比較してみる”と“YOUは何しに鬼になったの?”の2点を見届ける作業ゲーになっちゃいそうなのですがどうなんでしょうか。実際はきちんと積みあがってる感じはします。

 {netabare}恨んでも 恨んでも 躯うらはら 山が萌える じゃなくて燃える …実際業火の中へと{/netabare}

無限列車に乗り込んだ炎柱が見せたのは“ノーブレスオブリージュ”人と鬼との価値観の違いでした。
花街に乗り込んだ音柱が見せたのはそれよか身近なものへの責任でしょうか。兄妹愛の傍らで地味に咲く夫婦愛みたいなもの。

実力者である先達(柱)らは似てるようで各々異なるメッセージを送ってくれてます。
それと並行して、音(痕跡)を消す忍者の特性と音を駆使して闘う音柱とでは一見相反してるようにも見えるのですが、こちらはこちらで環境やらイベントやらでアップデートした結果だったことが示唆されているんですよね。やはり鬼とは違うんだよなぁ。

音の粒を拾って集めて譜面が完成したら無双の力を発揮する音柱よろしく、我々もビジュアルに目が行き過ぎて音の粒(物語の積み上げ部分)を拾い損ねたら譜面完成しないかもわからんと思われ、だったら“漏れ”に気を付けようと意識した『遊郭編』でした。


■ビジネス的にどうだったん?

これは今後わかることでしょうから結果待ち。
予算と時間は潤沢だったように思えるのと、あとは深夜帯常連のプロヲタではない一般人向けの親切設計なのを目の当たりにして、如何に自分が深夜アニメのお作法に染まっているか自覚しました。誇っていいのか凹んだらいいのか微妙…



映画『無限列車』のレビューでがっつり書いたのでここでは割愛しますが、我々って多かれ少なかれ鬼だったり人だったりあるいは行ったり来たりする存在なんだと思ってます。

 ・俺は俺の責務を全うしているのか?
 ・迷わずに利他的な行動を選択できるだろうか?
   {netabare}命の優先順位:「まずはお前ら三人、次に堅気の人間たち、そして俺だ」{/netabare}

とてもじゃないが俗物な私にはできてる気がしません。なので本作を見てショボい自分を省みるようにしております。明日から頑張ろう!



※閑話休題

■遊郭が舞台

吉原大門っぽいの出てたしまあ日本一有名な花街がモデル。
ちっちゃい子にも大人気なコンテンツで遊郭ってどうなん?と思わなくもないけど別にいいんじゃね?ってところでしょうか。
行為のみ海外の娼窟と日本のとは趣きがだいぶ違うので外人さんイメージ湧くのかしら?


■ある種のリアル

派手派手言うわりには相反して地味で堅実さが見受けられる第2期でした。細かい部分で一例挙げると↓
{netabare}バトル。妓夫太郎初登場のシーン。堕姫の中から登場するかしないかで天元は斬りつけております。
普通なら登場して口上述べてからバトル開始となるわけですがそうしない。瞬時で相手の力の計算してるのが一点。次に体制整える前に方を付ける行動に動いてる点。超合理的な思考を基に行動する“忍”のパブリックイメージと相反しません。{/netabare}

ポジに捉えりゃエンタメ性の優れた作品。ネガに捉えりゃ子供だましの作品。と視聴者の分母が大きくなれば両意見出るのが世の常でしょうが足元けっこうまともです。



■プロヲタと一般人の境界線

“ビジネス的にどうだったん?”とリンクしますが深夜アニメ常習者と一般視聴層を繋ぐ配慮が所々になされてたと思います。
まず目立つのが物販。『デフォルメシールウェハース』『PS4ソフト』『全集中パッド(漢検)』『フィギュア』『AUとのコラボ(鬼滅アプリ)』『楽曲』『折れた日輪刀(ボイス付き)8,800円』。お馴染みのから普段は日曜朝でしかご縁のなさそうなものがあれやこれやと洪水でした。異例ですよね。
その他一般層への配慮と思しきものは以下↓
{netabare}・手前でのTV版『無限列車編』放送。劇場版を分離しない仕掛け。
・初回1時間枠。半分はおさらいと掴み。
・最終話の放送開始前冒頭で「最後に発表がある」と告知。Cパートへの呼び水。
TV版の放送で連続したナンバリングが可能となりましたし、おさらいを強要するでもなくこちらが用意しましたし、往々にしてCパートなんて単語知らないでしょう。{/netabare}

きちんと配慮しながらヲタ世界への誘導が図られてましたね。職業声優さんばかりのキャスティングや力のある制作会社の本気というのもさることながら↓
{netabare}・第1話1時間。最終話CM無し32分ロングバージョン。
・第1話でなく第2話でAimerさん登場
・冒頭OP無しからの最終話。もちろん締めエンドロール。

お馴染みの演出構成とはいえお見事でした。
とりわけCM無しの決断は異例といってよく、制作側とフジテレビ側には相当交渉があったんだと推察されますが、最後はコンテンツをしっかり伝えたい制作側の意志が通ったんでしょう。クール無視の放送スケジュールもそうですね。{/netabare}


制約やルールあってのコンテンツにおいてとりわけクローズアップされるのは品質と納期のバランスです。このへんは某ドラクエや某ジブリが脳裏に浮かびますが、リリースしたらある意味手の離れるものと違って地上波でやりきったところにTVマンの意地みたいなのすら感じました。
ネット全盛もけっこうですが、独占状態になってきたら地上波以上に制限加えたりするのが始まっているのよね。SNSや動画コンテンツがそのへん先鞭をつけてますが映像配信だって潮流からは逃れられないでしょう。チャネル多いに越したことないので地上波も頑張ってね。
今回みたいなチャレンジは歓迎です。



視聴時期:2021年12月~2022年2月 リアタイ

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2022.04.10 初稿

投稿 : 2024/11/23
♥ : 46
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

バトルフィールド吉原炎上

【物語 4.5点】
プロットは少年バトル漫画の王道。
討ち取ったと思った敵は奥の手でさらなる絶望をもたらす。
もうダメだと思った主人公、仲間も、
どっちが鬼だか分からない程の底力を見せる。
驚異の応酬で熱くなる幾度も繰り返されてきたパターン。

にも関わらず、惹きつけられるのは、修行等の道程をしっかりと押さえているから。
鬼殺隊は本当に少しずつしか強くならない。
炭治郎に至っては、先の戦いで一度心が折れてしまった所からの再生。
リスタートの過程を初回拡大版に当てる盤石の土台に乗せてこそ
壮絶バトルの熱量が倍化する。

以前は飛び込めなかった柱VS上弦の鬼の間合いに割って入れた。
ちょっとした進歩に手応えを感じることができる。
私は『遊郭編』放送前に、劇場版『無限列車編』TVアニメ化を流した企画は
妙手だったと思います。


ドラマ部分では兄妹愛を鬼の兄妹も含めて改めて痛感。
TVでは本編CMなしで放送されたという最終回拡大版。
震えたなぁ。感涙したなぁ。
{netabare}一緒に地獄に堕ちることを選んだ兄妹を見て、私が流した涙は、
これで良かったと思ったからなのか、哀しいと思ったからなのか、
未だに判然としません。{/netabare}


【作画 5.0点】
圧巻だったのはCGで構築された吉原の街並み。
遊郭を舞台にしたオープンワールドゲームでも開発してるのか?って位のスケール感。
初回ED後にお披露目され度肝を抜かれて以来、
OPアニメーションにて吉原を一望するカットでウットリするのが私の週課にw
しかも血鎌などで概ね破壊可能なオブジェクトという狂気。

広大かつ自由度が高いバトルフィールド上ならば、
超高速での遠距離移動。相手を遠くまでふっ飛ばして、壁に叩きつける。
帯で建屋等を貫通する遠隔攻撃といったトリッキーな動きまでシームレスに演出し、
バトルシーンの興奮を途切れさせません。

激戦により灰燼に帰す吉原の街。
私は不謹慎にも、ある種のカタルシスを感じてしまいました。


バトル動画より私の印象に残ったのは
{netabare}禰豆子を寝かしつけるシーンの作画の迫真。
全国の子育て現場で繰り広げられているであろう。これもまた修羅場。
私自身も赤子の頃、相当な寝ず子だったそうで、
両親の苦労も忍びながらの鑑賞となりました。{/netabare}


【キャラ 4.5点】
今回の柱。音柱・宇髄天元。
人情の厚さをド派手な出で立ちと尊大な態度に隠した多妻な大男。
最初、{netabare}女の子を攫おうとしていた?{/netabare}時はどうなるかと思いましたがw
真意を隠せる性格が、虚飾多き吉原の任務にはマッチした模様。

主人公・炭治郎が対峙するキャラに、ifのバッドルートを写すことで、
彼がまっすぐ歩む道の貴重さを際立たせる構図も光る。
煉獄さんの父→心が折れたまま堕ちる道。
{netabare}妓夫(ぎゅう)太郎&堕姫(だき)→一歩、環境が変われば兄妹の禰豆子共々堕ちたかもしれない道。{/netabare}
炭治郎は意志も(頭突きもw)強固な剣士なのです。

善逸の鼻提灯タレながら屋根の上を疾走するシチュは衝撃的w
もはや起きている時の善逸を忘れそうになります。
やっと起きたら{netabare}足が潰れていました{/netabare}とか怖すぎですw


【声優 4.5点】
相変わらず激しいシーンでの絶叫(ギャグ含むw)がこだました本エピソード。
炭治郎役の花江 夏樹さんに至っては血反吐を吐いて咳き込む場面の収録にて、
演技に熱が入りすぎて、終わった後、咳が止まらなかったとのお話が。
人間の声帯は痛めたら容易に再生せず、今後も先は長いでしょうから、程々でお願い致します。

特筆したいのは堕姫役の沢城 みゆきさんの表現力の幅広さ。
トップ花魁のカリスマ性から、本性見せた時の恐ろしさ、
ワガママ、甘え放題の駄々っ子ぶり。
上からブスを罵倒したかと思えば、無惨様にはへつらってみたり。
みゆきちの鬼ボイスに終始翻弄されっぱなしでした。

妓夫太郎役はまさかの逢坂 良太さん。
武器から出す猛毒の如く、他人の幸福を僻んで取り立てんと吐く毒鬼ボイス。
耳に残るなぁ。癖になるなぁw


宇髄天元役・小西 克幸さんのド派手ボイスを囲む
CV.石上 静香さん、CV.東山 奈央さん、CV.種崎 敦美さん三人の嫁ボイス。
特に須磨役・なおぼうの喜怒哀楽の激しさは堕姫級で、{netabare}口に石を突っ込みたくなる程w{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴担当は引き続き椎名 豪&梶浦 由記氏によるフィルムスコアリング。
長尺の戦闘シーンでも上々の対応力。
今作では絶望が極まった際の心情曲も重厚。

主題歌担当はAimer(エメ)
ぬめりを含んだ独特のビブラートが、愛憎渦巻く遊郭のムードにマッチ。
OPの『残響散歌』。絢爛(けんらん)なメロディー&コーラスに、芯の強さが滲む歌詞を乗せて音柱の生き様などを示唆。
EDの『朝が来る』。絶望の底から光を目指すメロディーラインが如何にも作曲・梶浦 由記氏らしい一曲。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 45
ネタバレ

lostmemory さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

作画とCGの融合においては最高の作品

全部見終わったのでまとめ感想。
残念ながら1期と劇場版と無限列車編とこの遊郭編。
全てで感想は同じ。良い出来なのは間違いない。
ただ世間の評価は過剰すぎる。70点以上はあるが
100点の作品では決して無い。

CGと作画の融合技術は本当に素晴らしい。ただみんな
作画を絶賛するけど言うまでも無く作画が凄いアニメ=
面白いアニメではない。その図式が成り立ってしまうなら、
ufotable以外のアニメは全てつまらないとなってしまうし
ufotable以外のアニメを見る必要が無くなる。でも
そんなわけが無い。現に呪術廻戦はMAPPAでまた別の製作
スタジオだ。同じジャンプのヒロアカはボンズだ。

ufotableの作品をニニンがシノブ伝ぐらいから見ている身
としては世間のあまりに過剰な持ち上げにうんざりしている。
繰り返すが出来は良いと思う。でもこの作品を批判する
やつはアニメの良さが分かってない!みたいな風潮。
こういうのが日本のアニメを駄目にしていくと思った。

加えて3期が決定したが、これでufotableはまた鬼滅に
かかりっきりになってしまう。活撃刀剣乱舞は?
魔法使いの夜は?ガールズワークは?特に今の
ufotableがあるのはTYPE-MOON作品のおかげなので
魔法使いの夜を無視するわけにはいかないだろうに。
とはいえTYPE-MOON作品は鬼滅に比べて利益が少なすぎる。
ufotableが本音として鬼滅の方が儲かるのにな…とか
思ってないと良いのだが。

以上。

過去に書いたやつを消すのもアレなのでネタバレとして収納しておくけど内容的にはネタバレ無いから安心してどうぞ。
{netabare}

※10話まで視聴後追記
個人的に作画とはアニメーターが描いてるCGじゃない部分
だと認識してるが…一般には違うのだろうか?ようするに
作画班が担当してるのが作画。ufotableには別途CG班が存在
する。で、みんな作画を絶賛してるけど正確には作画と
CGの融合が本当に上手いというべきで、そこは異論無し。
むしろその点は日本最高のアニメスタジオと断言出来るし
最高の作品に仕上がってるね。ストーリーの面白さは別にして。

以前インタビューで作画の負担を極力減らすため膨大なCGを
用意していて、キャラ自体の3DCGも用意して要所で使ってる
らしいよ。例えば近くだとCGとバレるけどキャラが遠くに
いれば分からないでしょ?そういう使い方はほんと上手い。

ちなみに背景は9割以上CGらしいよ。鬼とか特殊なやつは顔以外は
全部CGの場合があるとも言ってたね。いずれにせよそれが視聴者
にバレないから凄い。カメラワークや時間配分の上手さだな。
フルCGでも1秒以下ならまず気づかないからね。さて次は最終話。
だいぶ長文になったから終わったらまた感想書き直すわ



※6話までの時点でのレビューなので評価は終わってからします。

不安が見事に的中した。原作でも正直この遊郭編は好きでは
ない。理由がシンプルにテンポが悪い。テンポが悪い理由と
して回想が多い、敵が無駄にしぶとい、天元が煉獄さんほど
使えない。この3点に集約される。

無限列車編は原作だと2巻も無かったのに対して遊郭編は
原作だと約4巻分ある。が、正直内容的には3巻で十分すぎる
ほどまとめれる内容だったと思う。ゆえにアニメ化する時は
テンポよく行って欲しいと思っていた。ところが、このアニメの
ファンは何故か原作の完全再現。つまり史実な再現を求めて
オリジナルを嫌う。ufotableが視聴者の期待に答えて史実に
作った結果、当然テンポが悪くなるわけだ。原作がそうなのだ
もの。

原作に史実に作るのが悪いわけではない。悪いのは原作をそのまま
アニメに落とし込むことだ。これは似ているようで全く違う。
原作に史実に作りつつ、テンポを良くするために上手く時間配分
するのが良いアニメだ。

ネットでもテンポが悪い。という声が結構出始めている。
援護する人もドラゴンボールを引き合いに出すとう最悪の
やり方。原作に早くに追いついていてどうにもならなかった
ドラゴンボールと、とっくに原作が終わってる鬼滅を比べて
どうするんだ?なんの援護にもなってない。

さてどうするufotable。このままだとマズいよ

しかしまだ途中とはいえ遊郭編の感想と評価60件!?
1期は1468件あるんだけど。いくらなんでも差がありすぎない?
終わったら1408件の評価追加されるのかなあ?

{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 15

77.2 6 2021年度のシリアスアニメランキング6位
不滅のあなたへ(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (439)
1625人が棚に入れました
フシは最初、地上に投げ込まれた“球"だった。持っていたのは「刺激を受けた物の姿へ変化できる能力」と「死んでも再生できる能力」。球から小石、オオカミ、そして少年へと姿を変化させていくが、赤子のように何も知らぬままさまよう。やがて出会う人々に生きる術を教えられ温かい感情を知り、人間を模して成長していくフシ。宿命の敵・ノッカーとの壮絶な闘い、大切な人との別れ…痛みに耐えながら自分の生き方を選びとり、力強く生きるフシの永遠の旅を描く。

声優・キャラクター
川島零士、引坂理絵、内田彩、愛河里花子、斎賀みつき、津田健次郎
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

フシの出会いと別れの物語

[2021.8.31]
1期見終わりました。
通してみると、やっぱりグーグー編が一番好きですね。
でも最終話もなかなか良い締め方だったと思います♪
2022年秋に2期の告知がありました。
1期はちょうど原作6巻までだったので、同じペースだと2期は原作12巻まで
で、ちょうど第1部の終わりまでになりそうです。
ここまできたら、第2部も見てみたいですねー。3期とかになるかもだけどw
最終話の感想は一番下に書きました。

[2021.4.14初投稿]
原作は、「聲の形」の大今良時さんということで読みました。現在は第二部連載中です。
手塚治虫の「火の鳥」を想起させるスケールの大きさを感じる物語で、これがマガジンで週刊連載で描かれていることに作者の凄さを感じました。

ただ、アニメ化して面白くなるかな、とちょっと不安なところもあって。
作品のテーマがぱっと見、掴みづらいので、他にも作品が沢山あって、飽きやすいアニメ視聴者にはなんだかよくわからない作品だなーと投げられちゃう可能性もあるのかなと。
好きな話はグーグー編です。

NHKでアニメ放映ということで、それなりのクォリティの作品になるのかなと思ってましたけど、期待通りの出来みたいでとりあえず嬉しいです♪
全20話みたいです。
第一部の最後までやってくれると嬉しいけど、話数的に大丈夫かちょっと不安。

お話が進んだらまた感想など追記したいと思います☆

【第1話 最後のひとり】
{netabare}レッシオオカミのジョアンがなぜあんなに離れたところで死んでしまったのかを考えてみました。
私の妄想ですけどジョアンは少年のために楽園の場所を探していたのではないかと。
その途中で足にケガをしてしまい・・と考えるとちょっとせつないですね。
「僕のこと、ずっと覚えていて」がずっしりときます。
結局あの少年の名前って不明なんだよね。{/netabare}

【第2話 おとなしくない少女】
{netabare}マーチ編が始まった。
アニメは丁寧に進めてるみたいで進行はゆっくり目っぽい。
これだと第一部の途中で終わりそう。
「それ」はマーチと出会って幸運だったと思う。
最初に自分に愛情を注いでくれる相手と出会えたんだから・{/netabare}・

【第3話 小さな進化】
{netabare}ラストのアリガトオの声、インパクトあって良かったです。{/netabare}

【第4話 大きな器】
{netabare}この作品、ひとつ残念に思うところはオッケーとかハッピーとかスケジュールとか言ってるところ。
現代が舞台ならいいんだけど、こういう世界観を大切にしてほしい作品でやられちゃうと萎えます。。
作品が軽くなっちゃう気がする。
連れてこられたヤノメから脱出するマーチたち。
そして次回・・・! {/netabare}

【第5話 共にゆく人】
{netabare}フシは「刺激」を受けて、「器」を獲得する。
そして今回も新たな「器」を獲得するんだけど、こういうのなんだかやりきれないです・・
でも、フシは出会った人や動物たちをずっと覚えててくれるんですよね。
フシの中で彼らは永遠に生き続けるのでしょう。
次回、いよいよ「敵」が現れます。
このあたりからわけわかんないって思われそうでちょっと心配。{/netabare}

【第6話 私たちの目的】
{netabare}ヤノメから一緒に逃げた老婆ピオランとの再会。
彼女はフシに言葉や知識を教える。
前半はそんな二人のやりとりやフシが成長していく様子が微笑ましいです。
後半はいよいよ「敵」が現れて物語の雰囲気も変わります。
これは賛否あるでしょうね。何このバトル?って。
次回はいよいよグーグー編が始まります!
原作読んでた時から好きな話だったので、とても楽しみです♡{/netabare}

【第7話 変わりたい少年】
{netabare}グーグーいいキャラしてますね。やっぱりグーグー編は面白いです。
グーグーもリーンも原作よりもコミカルな感じになったかな。
ピオランのアップの作画が気合入っててちょっと笑った。。
グーグーはフシの兄貴分として、フシにとって大切な存在になっていきます。
次回も楽しみです♡{/netabare}

【第11話 過去からの贈り物】
{netabare}今回の話は原作の時から好きで、アニメもうまく演出してたと思います。
夢桔梗の花から、グーグーとリーンのあの日につながっていくところ、じわっときます。
グーグー、フシ、リーン、ピオラン、酒爺。
彼らの平穏な日々がずっと続けばいいのに。
これを言ってもどうしようもないのだけど、ノッカーいらない。{/netabare}

【第20話 残響】
かなり久々の感想になりました。
というのも私ジャナンダ島編(トナリ編)があまり好きじゃなくて。。
今回のピオランの話、とても良かったですね。
フシと再開したときのピオランのとても嬉しそうな笑顔。
老いていくピオランの面倒を見続けるフシ。
二人の関係には愛情が感じられて、{netabare}最期のフシの号泣に{/netabare}ちょっとうるっときちゃいました。
1話の頃と比べると、フシの成長がとても感じられたラストでした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 44
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

『死』と『永遠』

この物語のテーマは、『死』と『永遠』なのでは?
と感じました。

出会う人が亡くなるたびに、その人の容姿を真似ることができるフシ。
そのフシが少しずつ成長していく物語。

球の頃は何も感じなかったフシ。
それがやがて、暑さ寒さを感じ
視覚や嗅覚、聴覚、触覚を感じ、
言葉を覚え、文字を覚え、生きる術を覚え、
そして心を成長させていく。

フシにかかわりをもった人たちがフシを成長させていき、やがて亡くなる。
そして新たな出会いがフシに訪れる。そしてその出会った人もまた…


人間はいつかは必ず亡くなる存在ですが、その心は永遠に受け継がれていく。
それをうたった物語なのかもしれません。

この物語の主要な人物を紹介します。


マーチ:{netabare}
マーチは大人になることを夢見ていた幼い少女。
誰よりもお話するのが好きな彼女は、フシに言葉や木の実の取り方を教えてくれました。
体こそ幼いけど、フシにとってお母さんのような人です。
だけど彼女は、自分の夢をかなえることができませんでした。
{/netabare}

グーグー:{netabare}
あらゆる運から見放されていたグーグー。
だけど彼は心根の優しい立派な少年です。

グーグーには幸せになってほしい。
私はそう願わずにはいられませんでした。

でも、フシと出会う主要な人は…。それがわかっているので悲しくて悔しくて…
グーグーは今でもフシと共に旅をしている。そう思いたいです。
{/netabare}

ビオラン:{netabare}
ビオランは罪を背負っている老婆。
いつ亡くなってもおかしくない彼女は、フシに文字を教えます。
そして年老いて死ぬということがどんなことかを、フシに身をもってわからせてあげたのです。
人間はいつか必ず命が尽きる。フシはそれを理解します。
{/netabare}

トナリ:{netabare}
小説家になることを夢見ていた彼女。
彼女は、フシにみんなで戦うことの大切さを教えます。
小説家にこそなれませんでしたが、彼女は罪人の暮らす島で島長(しまおさ)として過ごします。
彼女は、いつか再びフシに再会するかもしれません。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 59
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ツンドラの白夜の森から

イワ…ンじゃなかった石からでしたね
原作未読


アニメを観るようになって再評価したものの一つがNHK。
定評ある残酷描写が柔らかくなるかもと危惧してた『進撃の巨人』はごりごりだったし、進撃だけが聖域というわけでもなく『ヴィンランド・サガ』もごりんごりん。
『ツルネ』は京アニ大賞特別賞かなんかで鳴り物入り感があったし、大作『ピアノの森』ではガチ世界的ピアニストからの音源でした。内容評価はともかく力の入れっぷりには信用を置いてます。

 不滅のあなたへ

ここでいう“あなた”は主人公。
ざっくり概要だと、死なない主人公が人間を見送っていく物語です。と同時に見送られる側は去り際に何かを残していくという意味でこのタイトルかもしれないたっぷり全20話。

NHKアニメ班にもガイドラインあると思うんですけど、生と死をわりかし真面目に扱ってる印象です。本作もその系統。
真面目に扱ってるが故か某民放を出汁にして感動ポルノ批判をしてたりもする最近のNHK。とある民放の24時間某番組で頑張る障碍者やってる裏番組で聾唖少女の厳しい現実を活写した『聾の形』ノーカット放送をぶつけたりするぐらい不真面目を許さない社風(適当)。
その『聾の形』作者大今良時氏の原作です。ナレーションにはこれまた朝ドラナレーション士の資格を持つ津田健次郎さんが担当します。ずぶずぶやんとツッコミがないのが不思議なくらいです。


そのNHKの次に関心をひいたのが宇多田ヒカルが唄う主題歌『PINK BLOOD』。ビッグネームなのはもちろんですが、作品と歩調を合わせた主題歌は好感度高しです。

 ♪ 自分の価値も解らないまま子供でいられない ♪

歌詞より一部抜粋しとります。そんなお話になってます。

主人公について
ツダケンさんが観測をすると決めて投げ入れた“球体”の特質“刺激を受けて変化する”が唯一のルールです。そう何もないところから。それが主人公だという冒頭。どう転ぶかわかりません。
球体はそのうち自我みたいなのが芽生えたり言葉を覚えたりとアップグレードしていきます。そこに適宜ツダケンさんが球体にアドバイスらしき助け舟を渡す描写が続くことから、なんとなく親子関係に近しい間柄を基軸にした成長物語に見えなくもないのですけどあくまで

 刺激を受けて変化する“それ”の観測

であります。刺激となりうるものは何か?とどのような変化がもたらされたか?との視点を外さなければ迷子にはならないでしょう。
どうも観念的な話ですみません。
一個人の成長物語としての見方を否定したいわけではなく、環境因子がもたらす進化の物語とやや壮大な仕掛けを堪能するがごとき全20話というのを言いたい私です。
人類の起源はアフリカとなってますがそれと対極にある酷寒の地からこれまた異なる進化の過程を追ってみるのも一興。

もちろん娯楽作品であるためドラマティックなエピソードもままありますよ。 



※ネタバレ所感

■フシとゆかいな仲間たち

フシ役の川島零士さんは初主演とのことですが好演されてましたね。どんどこアップデートされてく主人公に合わせて声優として成長してったというわけではなく第1話からして引き込まれる演技をされてたと思います。

この作品のユニークなところはフシが主人公ムーブ起こしまくらずむしろ控えめで周りを囲む人たちが話を進めているところでしょうか。フシは観察者(CV津田健次郎)の観察対象でありながら、我々視聴者にとってはゆかいな仲間たちに触れるための触媒役を担ってくれてました。
例えるならネイチャーサイエンス系番組で森の中に定点カメラ置いて場合によっては数か月単位で計測してレア動物の生態を探る的なアレです。

そこを通り過ぎる人たち↓
{netabare}・ニナンナとヤノメ
 マーチ:生贄にされそうだった幼女
 パロナ:マーチを気にかけてた戦闘力高めな少女
 ハヤセ:大国からの使者で後にフシをストーキング
 ビオラン:婆さん
・タクナハ
 グーグー:仮面被った不遇の少年
・ジャナンダ島
 トナリ:褐色の不遇の少女{/netabare}

{netabare}最終回まできて初めてフシが寿命による人間の死を知ることとなるのがなによりの驚き。殺されない=死なない…ってフシは思いこんでましたね。
フシに変化をもたらす“刺激”とやらがこれまで不幸一辺倒だっただけに

 「お前の夢は何だ?フシ。ワシみたいにやりたいことをやれ!」

未来を見据えたメッセージを最後にもってくるとこがよかったです。2期決定の報もあり新たな角度からフシの変化の旅に随伴できることが楽しみです。{/netabare}

今よりも自身を大切にできるのかどうなのか含みを持たせたヒッキーの歌詞も響きます。

{netabare}「私の価値がわからないような人に大事にされても無駄」
「自分のためにならないような努力はやめた方がいいわ」
「誰にも見せなくてもキレイなものはキレイ」{/netabare}


■不死を巡る思惑たち

不死身や不老不死に向き合うにあたってちょっと不思議に思ったことがありました。

{netabare}誰もこのチートスキルを自分のものとしようとしないのよね。ハヤセだって自らを不老不死にしようとしてなかったと思える。この後どうなるかはわからんけど今のところそうである。
不老不死を個性の一つくらいの感覚で受け入れてる世界観。これこそ真の多様性の受容かと思います。
始皇帝や徐福みたいにエターナルパワー獲得が目的じゃないところが極めて日本らしい。
島では「とりあえず不死身だからお前行っとけ」とならずに子供が身を挺す。
なんなら貨幣をささっと作り出すこともできるだろうにそれもしない。

ある意味それを突破しそうなのがハヤセだっただけに2期の注目点ですね。{netabare}※最終回にちらっとご存命カットあったような…{/netabare}
彼女もともと生贄制度も鼻で笑ってるなど信仰心に乏しく、それが尋常ならざるフシと出会ってしまってそこにある種の“神”を見出しちゃったんでしょうね。カルトにハマる過程と酷似してますがいかんせん教祖はいない。ピュアな信仰心で抱く“畏怖の念”と“帰依(執着)”の感情を自分なりに消化しようとしてこじれてあんな風になったのだと理解しております。

思いのほかハヤセへの言及が長くなりましたが、物言わぬノッカーの存在も示唆に富むと思いますよ。
不老不死/不死身なんてこの地球見回してもあまりにも異質。この星の白血球やキラーT細胞みたいな設定だったとしても驚きはしません。{/netabare}



視聴時期:2021年4月~8月 リアタイ視聴

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2021.09.05 初稿

投稿 : 2024/11/23
♥ : 40

72.5 7 2021年度のシリアスアニメランキング7位
はたらく細胞BLACK(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (324)
1214人が棚に入れました
毎日せっせと体中に酸素を運ぶ、新米赤血球。しかし彼の職場(世界)の労働環境は、徹底的にブラック――!!飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足……不健康の総合商社のような世界で、過重労働の末に細胞たちは何を思うのか?これは、あなたの体の物語――。

声優・キャラクター
榎木淳弥、KENN、日笠陽子、Lynn、内山夕実、鳴海崇志、久保ユリカ、椎名へきる、ブリドカットセーラ恵美、平川大輔、津田健次郎
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

右肩下がりの虚無感こそBLACKの本質

不健康な人体で過重労働を強いられる擬人化細胞たちの日常を描いた、
『はたらく細胞』の同名スピンオフコミック(3巻までレンタル)のアニメ化作品。

【物語 4.5点】
乱れた生活が招く重大疾病
→免疫低下中の現場では対処し切れず崖っぷち
→外部からの抗生物質等の運で首の皮一枚つながる。

皆、一生懸命頑張っているのに!
俺たちは何のために働いているんだ!?溢れる感情、涙……。

定型をブラック企業風の3K脚色で繰り返しながら、
主人公の赤血球らが心身共に追い詰められて行く絶望感を、
1クール3巻途中までのスローペースで、
一部“出張版”や“第二部”のエピソードを先取りして構成しつつジックリ消化。

各エピソードの急性的な悲哀、憤怒だけでなく、
慢性的な消耗の蓄積により感情が爆発する、
あの時、勇気を貰った言葉へのアンサーなど、伏線回収も良好。

公式HPは“はたらく人たちに勇気を贈る、大人の“はたらく細胞”開幕!”
などと銘打っているが、
よくぞここまで、はたらく苦しさを斟酌してくれた!と奮起できるか、
もうダメだ……と、めり込むかは視聴者次第(私は前者でしたが)
メンタルヘルスは“自己責任”でお願いします。


【作画 3.5点】
制作のライデンフィルムもかつては、
序盤の勢いが続かず、徐々に作画が息切れする傾向もあったが、
近年のスタジオや人員の増強で戦力は整ってきている模様。

人物等にデッサン風の陰影を描き込み、疲労感を増強。
背景美術も、寂れた工業団地の如き体内組織を構築し、ディストピア感を演出。
序盤から血管内に汚泥となって積もるプラーク(こぶ)の描写も手を抜かず、
破滅への序曲を奏でる。

暗い体内で輝きを放つのはもはや、
巨乳白血球さんたちの純白な胸元しかないのか?(←錯乱w)
ですが彼女たち好中球の斬撃や“貪食”のグロ描写も容赦しませんw

{netabare}ネオン街風の街並みで“抜いて”くれる肝臓や、
汚れた身体を洗い流してくれる腎臓{/netabare}も大人(アダルト)向けw


【キャラ 4.0点】
主人公の赤血球(AA2153)……真面目なメガネ男子
同期の赤血球(AC1677)……サボる要領も弁えた主人公のバランサー男子
白血球(1196)……落ち込んだ主人公のカンフル剤にもなる長髪巨乳剣士

彼らを軸に、各臓器、器官の惨状を行脚。

胃の主細胞のおっちゃんや、クレーマーおばさん細胞など、
劣悪な環境に毒され終わってると思われたキャラが、
時折、人情を見せたりもするが、基本的にBLACK。

ここはCV.久保ユリカさんの血小板ちゃんで幼女成分を補給しよう……。
が、BLACKは血小板リーダーすらも、口が悪いガテン系w残念w


【声優 4.0点】
ナレーション役は津田 健次郎さん。年季が入った渋いボイスで、BLACKに拍車。
尚、人間ドラマへの没入重視のためか、解説の際、テロップ表示もほぼありません。
……新入りに優しくないw

主人公・赤血球役の榎木 淳弥さん。ポジティブからネガティブまでカバーする
アップダウンの激しい熱演でBLACKを体現。

脳細胞の司令官役には平川 大輔さん。
常にギリギリの対応に追われる狼狽ボイスが修羅場を好演出。

あと、{netabare}淋菌役の高橋 伸也さんの「淋しい~」{/netabare}が脳裏から離れず、夢に出て来そうですw

【音楽 4.0点】
劇伴は菅野 祐悟氏。特に勇壮な管弦楽の主旋律に、
心電図モニター音をアレンジしたメインテーマは、
感情が限界突破したシーンで多用され、ハートを揺ぶる。

OP主題歌は「走れ!withヤマサキセイヤ(キュウソネコカミ)」
大変、前向きなロックチューンなのですが、
このシナリオ下で聴くと多分に空元気w
でもOPアニメはキャラの表情も明るいオアシスです。
{netabare}で、これすらも夢落ちって……そりゃ、ないよ~(泣){/netabare}

EDは「上を向いて運ぼうwith 赤血球&白血球」
明るい曲調で“はこ~べ♪はこべ~♪”“フレー♪フレー♪細胞♪”
などと歌う、もはや破れかぶれなブラック企業社歌の様相。
二番では“タイムカードの意味はないよな”
との爆弾発言まで飛び出し、労基署通報待った無しw


【感想】
不健康な生活への警鐘アニメであると同時に、
BLACKについて、思う所が多々ある私にとっては、
涙無しには見られないシーンが多い、お仕事アニメでもありました。

例えば、{netabare}暴走の末、「もう働かなくていいんだ」と涙するキラーT細胞とか、
赤血球AA2153とAC1677の友情とか、
自暴自棄になった主人公に「世界を壊すことじゃない」と抱擁する白血球とか。{/netabare}

長いデフレ不況下における、ブラック労働の何処が悲惨かと言うと、
皆の日々の頑張りは、マイナスをゼロに保ち続けるだけの防衛戦でしかなく、
働いても働いても、定昇も成長も見込めない。
むしろ右肩下がりに衰退していく虚無感にある。

その観点からも本作のBLACKは本物だったと思います。
人体の不摂生だけでなく、社会の不健全についても考えさせられた作品でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 29

みのるし さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

勃起するとゆうことは

この体は男だな。

とゆーことはあれか。フツーの方は女なのかな。
なので白血球さんと赤血球が男女入れ替わってるとか。

いや根拠はないすけど。

ブラックの方は白血球さん長刀なのね。

あと血小板ちゃんがブラックの方は上履きだ。
フツーの方はブーツだけどさ。

細かいとこ微妙に違っててそおゆうのん探すのも楽しいね。

:::::::::::::::::::::::

なんかまあリアルでしたね(笑)。
特に腎臓と肝臓がやはりとゆうかなるほどとゆうか。

体いたわらなきゃあなあと思うことしきりでしたわん。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 10

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

本作を視て我が振り直そうか

<2021/1/20 初投稿>
原作未読。
1、2話視たときは「面白いんだけど自分の不摂生を顧みて暗い気分になってしまいそう」で素直に楽しめなかったのですが。

第3、4話は神回 笑。

<2021/3/21 追記>
全話見終えました。
面白いんですけど、やはり見てて心痛くなるところ多数 笑。

自分は昨年の正月にタバコやめて。
昨年秋頃から体調に不安を感じて
以前は毎日飲んでいたお酒を、かなり減らし。
ダイエットandウォーキングandプチ筋トレを毎日。
食べ物や睡眠にも気を使い始めました。

おかげさまでかなり体調良くなってきましたが、それでも本作見ると心にグサッときますね。
幸い水虫、痛風、毛髪は大丈夫そうなんですが。

やっぱ健康って大事だわ。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 33

68.3 8 2021年度のシリアスアニメランキング8位
海賊王女(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (222)
689人が棚に入れました
これは、ある少女の記憶から始まる物語。18世紀、大西洋。父と船旅へ出ていたフェナ・ハウトマンは海賊に襲われ、たった一人小型ボートで漂流し、命をつなぎ留める。フェナが漂着したのは、国家が黙認する娼婦・男娼の島<シャングリラ>だった。10年後──。雪のような肌と白銀に光る髪を持ち、美しく成長したフェナは、初めての“仕事”を目前に控えていた。だが、それを受け入れることはできず、幾度となく想像してきた島からの脱出を決心する。迫りくる追っ手に絶体絶命のフェナは、真っ赤な鎧に鹿の角の兜をまとった青年・雪丸に救われる。雪丸は、フェナを「見つけ出す」と約束した少年だった。そして2人の“再会”は、フェナ自身に眠っていた言葉を呼び起こす。炎に包まれ、沈みゆく船。「必ず俺が見つけ出す!」と約束した少年。そして最愛の父が叫んだ、あの言葉──。「<エデン>に向かえ!」フェナはその真意を知るべく、雪丸たちと共にの謎を解く船旅へ出る。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

4回目。見る度に面白い。女性の生き方…自分の考えで選択せよ。

4回目視聴しました。ネトフリ休んでいるのでDアニ登録助かります。見る度に面白くなってゆく気がします。

 本作は、ラストが訳がわからないのではなく、ラストこそ描きたいことだと思いますので、できれば、アナロジーとかメタファとかを少し考察すると楽しめると思います。

 本作は選択の物語で、女性の生き方を描いているのだと思います。

 まず、フェナの髪に注目です。娼婦の時は花飾りをつけ美しくまとめていました。これがトロフィーワイフの選択つまり女性性を売りにして生きる生き方です。専業主婦とも取れます。
 次に髪をほどき少女になったあと、ベリーショート。中性になります。そのあと雪丸との交流でショートヘアで女を取り戻し、最後はロングヘア、こっちは成長後でしょう。その後黒髪…の意味が考察ポイントでしょう。

 乱雲と碧水、混乱を選ぶか平穏を選ぶかも、また選択の物語であることを示していました。透明なガラスの板です。これは初めは純潔性かと思いましたが、方向を指し示すものとして機能しますので、意思なんでしょうか。透明ということは何も染まっていないということで、成長前の心の象徴な気もします。
 
 無数の白い花びらは概念あるいは世界にいる女性たち…かなあ。フェナが女性代表で、決して一人の物語ではなくあなた方たちへのメッセージだよ、という意味が自然でしょうか。

 タイトルロゴの赤い花の意味はどうなんでしょう?青白の意味と合わせて、ここは意味性があるようなないような。

 最後の最後に {netabare}「選ばされていた」ということは、まさに女性の生き方です。これは古い考え方だけではなく、世間に情報として流布されている一般的な価値観を無批判に取り入れていることかな、と思います。

 一方で構造主義的に考えれば我々の意思は「構造の奴隷」ですので自由意思などない。だけど、その構造に捉われながらもその中でこそ主体性があることが意味を持ってくるんだよ、という風にも見えます。

 結果として、子供を産むかどうかに帰結しますのでこの女性の生き方というのは間違いではない気がします。が、ここで箱舟はむしろ2人の世界。専業主婦みたいに見えます。そして戦乱を取ったっ結果が中途半端といえば中途半端で職業を持ちながら子供を産む?
 と考えると、結果としてどうなるかより、自分で考えて選択せよ、という取り方がいい気もします。

 成長過程の意思を持たない段階で庇護されているイケメンを単純に好きになることは忘れない。自分でちゃんと生きられるようになったあと、男を選択しなさい、という意味な気がします。

 火あぶりになった母あるいはジャンヌダルクが象徴するのはなにか。母は子づくりを優先し愛を捨てて火あぶりになった。ここに何を見出すかです。ジャンヌダルクは正直分かりません。普通は当時の女性の生き方に逆らって男の戦闘に立った結果の火あぶりとも取れます。ですので、「選択の結果」についてのテーマ性ではなく「自分で選択する」ということかなあと。

 女海賊の首領は、野蛮な女性性の象徴でしょう。女性の性を使い、上手くいかないと男を攻撃する。男たちは彼女たちを相手にしていません。まあ、言い方は悪いですが、浅くて偽物のフェミニスト、あるいは肉食系女子の両方かなあと。

 無理に難しくとる必要はなく「自分で考えた上での主体的な選択の物語」と取るのが一番分かりやすいし、物語とも重なります。最後の最後の雪丸の「守ってやる」のセリフがあるのでぶれますけどね。ここは「一緒にいよう」の方がいいと思いますが、男の覚悟の物語でもあるのかなあ。 {/netabare}


 あまりに4回目ということでレビューが長くなったので、以前のは消します。1回目は断念、2回目は見直して、3回目でかなり褒めてます。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 32

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

解き明かされる石の謎。数奇なる運命の――終わりと、始まり。

この作品はオリジナルアニメだったみたいですね。
アニメーション制作がProduction I.Gさんで、音楽を梶浦由記さんが監修されるとあっては気にならないはずがありません。
加えて、メインヒロインを「ちはやふる」の綾瀬千早を演じている瀬戸麻沙美さんが演じると言うんです。
この時点で私の中に「視聴しない」という選択肢はありませんでした。


18世紀、大西洋。

父と船旅へ出ていたフェナ・ハウトマンは海賊に襲われ、
たった一人小型ボートで漂流し、命をつなぎ留める。
フェナが漂着したのは、国家が黙認する娼婦・男娼の島<シャングリラ>だった。

10年後――。
雪のような肌と白銀に光る髪を持ち、
美しく成長したフェナは、初めての"仕事"を目前に控えていた。
だが、それを受け入れることはできず、
幾度となく想像してきた島からの脱出を決意する。

迫りくる追っ手に絶対絶命のフェナは、
真っ赤な鎧に鹿の角の兜をまとった青年・雪丸に救われる。
雪丸はフェナを「見つけ出す」と約束した少年だった。
そして2人の"再開"は、フェナ自身に眠っていた言葉<エデン>を呼び起こす。

炎に包まれ、沈みゆく船。
「必ず俺が見つけ出す!」と約束した少年。
そして最愛の父が叫んだ、あの言葉――。

「<エデン>に向かえ!」

フェナはその真意を知るべく、
雪丸たちと共に<エデン>の謎を解く船旅へ出る。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

この作品はオリジナルなんですよね…
よくこういう設定が頭に思い浮かぶと感心してしまいます。
原作を手掛けられたのは、監督の中澤一登さんですが、アニメーターと物書きって全くジャンルの違う仕事だと思うんです。
「二足の草鞋を履く」とはこのような方を指すのでしょうか。

キャラの描き方も繊細ですし、キャラもぬるぬる動きまくっています。
この辺りは流石Production I.Gさんといったところでしょうか。

この様に総じて作品自体のクオリティは高いのですが、物語の展開はもう少し説明と工夫が欲しいと思いました。

例えば、中盤に登場したアベル…
この作品ではアベルをどの様な立ち位置に据えたかったのでしょう。
本懐を遂げるのが目的なら、アベルが執拗にやっていること自体の動機が弱く意味を見失います。
そもそもアベルに救いが必要だったのかは、正直今でも分かりません。

するとヘレナの登場した意味合いは完全にフェナのため…なら理解もできますが、そのあとの展開はこの作品からすると完全に蛇足だったように思います。

それと物語のラストの展開…もう少し説明が欲しいと思ったのは私だけでしょうか。
またラストシーンも、より鮮明に記憶に焼き付けておくためにも、もう少し台詞や仕草があれば良かったのに…と思いました。
だからラストを俯瞰すると少し曖昧さが残ったような気がしてなりません。

素材自体はどれも一級品ばかりが集まっているのが十分に理解できます。
料理の仕方や味付けで印象が大きく変わるとは、きっとこういうことを言うんでしょうね。
もう一度見返してみると評価や完走が変わるかもしれませんけれど…

オープニングテーマは、JUNNAさんによる「海と真珠」
エンディングテーマは、鈴木みのりさんによる「サイハテ」
個人的にはオープニングが大好きで、ずっと通勤中にヘビロテしていた楽曲です。

1クール全12話の物語でした。
ラストで若干失速した感が否めません。
中盤までは今期トップクラスの作品かもと思っていましたが…
でも、元々の素材が良いので高いレベルで鑑賞できた索引だったと思いました。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 26
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

中盤までは面白かった

【紹介】
18世紀の大西洋で幼いころ別れた父親の言葉の意味を探すため世界中の海を冒険する美少女の話。

【娼婦の島】
{netabare}
最後までシナリオを見て思ったのですが、最初の娼婦の島の設定はあの悪名高い島をモデルにしているんでしょうか?
現実のあの島は売春どころではない悪魔のような所業が行われているようですが、
この作品の終盤の展開から考えて、あの島をモデルにしているんだろうなって気はしました。
{/netabare}

【作画と音楽】
すごくきれいでキャラデザも美しい、音楽もすごくいい!
世界観も綺麗で雰囲気がとても良く、好きです。

【キャラクター】
主人公は美少女という設定ですが、コメディな作りのせいかあまり美少女って感じはしないかも。
かなり個性的なキャラクターが多くて仲間内の雰囲気が好きでした。

雪丸が好きです。


【シナリオ】
{netabare}
設定は結構重いですが、全体的にコメディタッチで重さを感じさせないところが良いですね。

でもフェナと幸丸が結ばれて終わりっていうのは想像できてたし、それを期待してみていて、結果的にそうなったけど、最後の締めで余計なことして台無しに。
ハッピーエンド確かに期待してたけど、こんな終わり方を見たかったわけじゃない。

なんか急に物語を強引にたたみにかかったような印象の急展開についていけなかった。
世界を救うために自分のしあわせを捨てるか、自分のしあわせのために世界を捨てるか
急にこんなこと選択しろって言われても意味わかりません。

それで世界のために記憶失ってこんな救いのない自己犠牲を続けるために娘産んで、また娘も同じ選択を迫られて。
なんで私なの?ってフェナが言ってたけど、本当にその通りで、物語の中盤まで全くフェナがそんな特別な存在っていう様子なかったし

最初にフェナは見ず知らずの男のために自分の身体をささげる人生を拒否して逃げ出して、最愛の相手と信頼できる仲間を手に入れて幸せになったのに
記憶失って子ども産んで次世代に繋ぐための道具でしかない? それが嫌なら世界壊して自分がアダムとイブになれ?
せっかく逃げ出したのに、生まれた時から1話で彼女が拒否した人生が決定してて、しかも記憶なくして自分ですらなくなる。
つまり、フェナには最初から人生なんてなくて、子どもを産むためだけに存在する生贄ってことですよね?

第一話から最終話まで女性を便利な道具扱いするシナリオが酷い。
最初からそういうテーマだと示されていれば、そういう視点で見るので気にならないけど、終盤まで全くそんな感じじゃなかったので唐突に幸せな夢から悪夢に引きずり込まれたような不快感でした。

しかも、記憶なくして、そのあとなんで記憶戻ったの? その間に色々あったんでしょうけど、その「色々」を私は見たいのに全部カットしていきなりハッピーエンド。
記憶なくして取り戻してハッピーエンドというシナリオなら、幸丸や仲間たちが記憶取り戻させるために頑張る過程を見せるべきじゃないのでしょうか?

その過程を全部飛ばすなら、最初から記憶なくす必要ないと思う。あの選択はなんだったの?ってなる。
2クール予定だったのが、制作途中で1クールになってしまったんでしょうか?

{/netabare}

最後は本当に残念だったけど、それ以外は面白かったです。


【総評】
とても良質で、ディズニーアニメみたいな雰囲気のコミカルなファンタジー作品。
途中までは大人も子どもも楽しめるアニメだと思っていましたが、締めで失敗しましたね。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 37

69.4 9 2021年度のシリアスアニメランキング9位
ましろのおと(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (195)
615人が棚に入れました
「俺の、音――」伝説的な腕を持つ、津軽三味線の奏者・澤村松吾郎。彼を祖父に持つ少年・澤村 雪は、祖父の死をきっかけに、三味線を弾けなくなった……。"好きな音"を失い、アテもなく上京する雪。キャバクラで働く女性「立樹ユナ」に助けられた雪は、ライブの前座として津軽三味線の演奏を披露することになる。雪は、様々な出会いを、想いを三味線の音色にのせて弾く。自分の音を、自分の想いを探しつづけて――

声優・キャラクター
島﨑信長、細谷佳正、本田貴子、麻生智久、宮本侑芽、近藤玲奈、岡本信彦、鈴木達央、梅原裕一郎、畠中祐、三上枝織、梶裕貴、落合福嗣、谷口夢奈、高柳知葉、木村匡也、逢田梨香子、柿原徹也
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

津軽三味線の演奏に引き込まれます♫

[2021.6.19]
最終話を見終わりました。
中盤以降は三味線甲子園の話になって、この音とまれみたいだなーって思いながら見てて、悪くはないんだけど、このまま優勝とかして終わりはつまらないなぁって思ったり。。
で、最終話なんですが・・すごーく良かったです!ビター展開好きの私も満足でした♪
この物語は雪くんが自分の音を探し求める旅なんだなーって。
雪くんの音は澄んだ綺麗な静かな音。色に例えると白。だから真っ白な音=ましろのおと。
大会の結果は・・{netabare}そして勝ちたいと悔しがり、嗚咽を漏らしながら泣く雪くん。
梅子にとっては残念な結果だったかもだけど、この甲子園は雪くんにとってとても大きなものを得られたんだと思います。{/netabare}
すごく続きが気になるところで終わりましたけど、2期あるのかな?
原作読んじゃおうかな・・27巻もあるけどw
※12話の感想も下にちょっとだけ書きました。

[2021.4.18初投稿]
原作は月刊マガジン連載みたいですが未読です。
作者の羅川真里茂さんは青森出身のようです。

春アニメの視聴作品を物色してた時は、サムネの男の子が暗そうだし、津軽三味線のお話?って感じであまり期待しないで見た作品でした。

澤村雪(さらむらせつ)は弘前の高校生。
津軽三味線の名人で憧れだった祖父の澤村松吾郎(さわむらまつごろう)が亡くなり、自分の音を探すために東京へ行くけど・・

絵は綺麗でいいですね!
舞台は弘前と東京。弘前といえば、ふらいんぐういっちを思い出します。
結構津軽弁でしゃべってるけど大丈夫かな、と思っちゃいましたけどそれも含めてなかなかいい雰囲気です。
キャラデザもクセがなくて好きですね。

なんといっても良かったのは津軽三味線の演奏シーン!!
演奏を聴いていると、なんだかどんどん引き込まれていく感じです。

お話自体もとても面白いし、これは今期の中でもおすすめしたい作品です☆
ちょっと原作読みたくなっちゃいました。

[2021.4.20追記]
原作コミックを2巻まで軽く読んでみました。
演奏ももちろんですが演出がいい意味で渋い感じに変わっててアニメのほうが好きかも。
2話の時点でコミック2巻ちょっとと、カットされたシーンも多く進行ペースもわりと早いんですが、うまく編集し直して良い作品になっていると感じました。

以下、各話の感想です♫

【第一話-寂寞】
{netabare} 雪のシーンが綺麗。
ユナさん親切すぎ。というか強すぎ。
自分をきちんと持ってる子みたいだしやりたいことが見つかればいいよね。
雪くんの津軽三味線すごく良かった♫
配信で見てた子はあとで登場するのかな。
ラストはちょっとギャグっぽくて浮いてたようなwって誰?{/netabare}

【第二話-林檎の花】
{netabare} 個性的な女性は梅子さんといって雪くんの母親なんですね。
梅子に促されて、雪くん演奏と梅子さん唄の競演が始まる。
うわ!唄も本格的っぽくてすごい!
そのおかげで下宿先が見つかって良かった♪
東京の高校に転入した雪くん。
同じクラスの前田朱利(まえだしゅり)が1人で津軽三味線愛好会をやってて。
雪くんの兄の若菜が東京に。
兄弟の距離感がなんかいいな。優しいお兄さんだね。
兄弟で競演した演奏がこれまた素晴らしいです♫
ED見てわかったんですが、この作品オリジナル曲みたいで題名が「アレ」だそうですw{/netabare}

【第三話-驟雨】
{netabare} 朱利さんと一緒にいる子って1話で配信見てた子?
朱利さんが聴いてた祖母が口ずさむ曲を聞いた雪くんは松吾郎の曲に似てると感じて。
祖母の前で演奏して欲しいと頼むけど、雪くんに弾けないといわれて。
青森から来た津軽三味線の神木清流(かみきせいりゅう)のライブ演奏を聞く雪くん。
雪くんに興味を持った神木から、何か弾くように言われて弾くけど、どういう音を聞かせればいいか分からなくて。
雪くんって芸術家肌というか、繊細なんだね。難しいな。
でも、とても大切なことでやらなきゃ後悔するんだったらやります、と朱利さんに言われて松五郎の曲を演奏したいと思う雪くん。{/netabare}

【第四話-春の暁】
{netabare} 青森から送ってもらった松吾郎の「春暁」のカセットテープ。
朱利さんたちと一緒にいた矢口海人(やぐちかいと)にテープの再生をお願いして、矢口宅で聴く雪くん。
でも松五郎のように弾きたいと練習するけどなかなかうまくいかなくて。
永森雷(ながもりらい)に言われた「シンプルであることの良さ」をヒントに、松五郎の音をひとつひとつそぎ落としてシンプルな自分の春暁にしようと思う。
雪くんは朱利さんの祖母の前で春暁の演奏をはじめる。
昔疎開先で聞いた若い頃の松五郎のことを思い出すおばあちゃん。
必死に生きるために津軽三味線を弾いていた松五郎。
松五郎の優くて生きる勇気をくれた音色と同じようなものを雪くんに感じて。
松五郎の魂はしっかりと雪くんに受け継がれているんだと。
なんだか見ててちょっとうるっとしちゃいました。
津軽三味線愛好会を朱利さん、雪くん、山里結(やまざとゆい)さん、矢口くんの4人で活動することになりそう。
それを聞いた雪くんの母親の梅子が津軽三味線甲子園を企画するみたいだけど、青森の雪くんをライバルと思ってる女の子とかも絡んできそうで今後の展開が楽しみです♫{/netabare}

【第五話-合奏】
{netabare} 初心者ばかりの津軽三味線同好会。
雪くんの演奏に感動して少しでもそれに近づきたいと話す朱利さんの言葉。
それは雪くんが松五郎に抱く気持ちと同じような気がして。
顧問が連れてきた神木清流と雪くんの合奏・・・今回もすごく良かったです♫ {/netabare}

【第六話-原郷】
{netabare} OP変わりました・・けど前の曲のほうが三味線入ってたし合ってたような。。
青森に合宿に来た雪くんたち。
聴いてくれる人の反応がなによりの教え、人に聴かせなければ自分の音は見つからない。
松五郎が語った話を聞いて個人戦に出る気になり雪くん。
朱利さんや矢口くんの話も盛り込みながら、全員最後まで合わせて弾けるようになるお話の流れは良かったです♪
ちなみに青森市のは「ねぶた」、弘前市のは「ねぷた」です。{/netabare}

【第七話-風】
{netabare} いよいよ始まった津軽三味線甲子園!
青森の人って独特のイントネーションあるから、なんとなくわかるんだよね。
雪くんって自分の気持ちを表に出さないから矢口くんのイライラもわかる。
でも優勝したいって気持ちは同じなんだって分かってよかった。
けど自分中心なとこは相変わらずなのね(-.-)
団体戦やって個人戦も、となるとそれだけで1クール終わっちゃうかも。{/netabare}

【第八話-音叉】
{netabare} 青森のマイマイのチームの演奏、さすがって感じ。
すごーく雪くんを意識しちゃってるとこも面白いです。
いいキャラしてますね♪
梅園学園が優勝しておしまいって展開はちょっとつまらないので、もうひとひねりの展開を期待します。{/netabare}

【第九話-風花】
{netabare} 梅園学園の演奏、とても良かった!
雪くんがスタンドプレーすることなく、みんなの音を大切にしながら演奏してたのも。
そして結果発表。
うん。物語の展開としては良い結果だと思いました。特別賞もらったし。
メンバーみんながすごく悔しい思いをしてる姿にじんわりきました。
それだけ頑張ってやりきったという思いがあるということだから。{/netabare}

【第十話-山嵐】
{netabare} 青森の赤飯って甘いんですね♪ちょっと食べてみたいかも。
雪くんの父親ってあの人だったなんてちょっとびっくり。
だからマイマイはあんなにライバル視してたのかな。{/netabare}

【第十二話-ましろのおと】
OP、前のに戻りましたね♫やっぱりこっちのほうがいいな。
雪くんの演奏をスマホで見てるユナさんが一瞬写って元気そうで良かった。
感想は上のほうにだいたい書いちゃったので。。
今回みたいな苦味のあるビターな展開は物語に深みが出ていいと思います。
雪くんの今後の成長がとても楽しみに感じたところで1期は幕を閉じましたね。
できれば2期やってほしいけど、津軽三味線という地味な題材だけに厳しいかもですねー。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 27
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

北東北最後のとりで

注) 読み返してみたら内容にあまり触れてないのに気づく。どうかご容赦をば…
原作未読


「僕らが冬の曲書くとなぜか“乗り越えて”“克服するぞ”って色が強くなってしまう(笑)」

『My Desire~冬を越えて』リリース直後にラジオでそう答えてたSLTの佐藤竹善氏は青森の出身。
お隣岩手県民の自分も妙に納得したのを覚えてます。思い浮かぶは厳しい冬が似合う土地柄。雪中行軍といえば八甲田ですし、やはり上野発の夜行列車をおりたら雪の中だったり北へ帰る人の群れはみんな無口でいてほしかったりする私です。

そして三味線。幼少期に近所を回っていた石焼き芋やさんは松村和子「帰って来いよ」がBGMでした。私の冬の記憶。
似たような構造で同じ三本線でも津軽の三味線と沖縄・奄美の三線では見える海の景色が全く違うんですよね。見た目や材質が違うとかさほど問題ではありません。背景となる風土が違うのです。
たぶん三線での『津軽じょんがら節』、三味線での『安里屋ユンタ』に違和感を感じることでしょう。その流れで三味線は津軽の人、三線は島人に演ってもらいたかったりする気持ちわかります?
その地方のエトスが詰まっている楽器がアニメ作品の中でどう扱われているかは見所だったりします。

結論↓

 津軽海峡の波しぶきが見えるアニメ

私にとってはこれだけで充分かしら。原作者の方は八戸出身らしいですね。なんか納得しました。
正直演者の津軽弁は微妙に違和感あったけど、イギリス英語/アメリカ英語ほどではないというかケンタッキーとテネシーの違いくらいの範疇には収まってるので気にせず。皆さんお疲れさまでした。

音と合わせて登場人物。特に青森に所縁のあるキャラたちに共通する

 強情っぱり加減

がいちいち頷ける感覚。そのまま“ごうじょっぱり”と読むわけでしてその字面でお察しください。揃いも揃ってこんなん不器用なのばっかりしかいないのも好印象でした。


音を取り扱うアニメはぱっと思い浮かぶ限り良作ばかりです。アプローチも種類豊富。
作るほうも大変でしょうが本作なりの創意工夫をあえて指摘するなら“風土”です。だいたいここまで述べてきた通り。
和太鼓・和琴など冠に日本がついてるのはいくつかあれど“津軽”みたいに一地方を指してる楽器はそうそうないでしょう。そりゃ濃ゆいわけです。特定エリアに絞られるわけですから。濃ゆい題材を濃ゆいまま表舞台に出した感じ。
OPにもEDにも三味線の音が組み込まれてますし、EDの加藤ミリヤさんなんて歌唱中にそこはかとなく濁音いれてませんでした?

とことんエスニックを楽しんだ良作でした。


{netabare}実は三味線より第2話梅子が唄う『津軽小原節』に最もびっくらこいた記憶がある。{/netabare}



※余談

■青森県民よスマン!

ちょい偏見はいるけど青森新幹線開通はたかだか10年ちょっと前ですよ。
都会からの往来がないので手つかずの東北が残ってるイメージ。いやバイアス?もとい偏見!?

例えばTHEヨーロッパ的な景色がフランスやドイツの旧西側よりもチェコやハンガリーのほうに色濃く残っているように津軽地方には北東北の濃ゆいものが残ってる気がするのでした。
今は夜行列車に乗らずとも新幹線一本で行けちゃいますのでぜひぜひお越しくださいな。


■日本のラテン語

以前、秋田弁がフランス語に似てる~って検証してる番組を見たことがある。
それを受けての以下体験談だが、、、

ヨーロッパをぶらり一人旅してた時、イタリアはヴェニスの水上ゴンドラで青森出身の子と同席したことがある。
目的地一緒で話が弾み、そのうち調子に乗ってずうずう弁でのやりとりに発展し盛り上がってたら途中乗車してきた日本人に

 「Could you take my picture?」

と英語で話しかけられた。

 「Sure」

と快諾し、「はいチーズ」でパチリ。今思いだしてもだいぶシュールですね。



視聴時期:2021年4月~2021年6月 リアタイ

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2021.06.20 初稿
2022.05.20 修正

投稿 : 2024/11/23
♥ : 40

Kuzuryujin さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

Japanese Blues

原作単行本愛読中。2010年5月より少年マガジンで連載され、2021年4月現在、既刊27巻で累計発行部数450万部の人気作品。

レビュータイトルは原作で、ある外国人が主人公の演奏に対して呟いた言葉。

本作の日本語タイトルもいいが、英語タイトル "Those Snow White Notes" も深い味わいがあって好き。

作者の羅川真里茂(らがわまりも)氏は、青森県八戸市出身の女性。本作の連載は今年6月で12年目に突入。本作前にも少女漫画『しゃにむにGO』を11年も続けたそうで、長期連載が得意な方のようだ。青森県人の特性とされる芯の強さの現れか?

作者ご本人も、腕前は知らないが三味線を弾かれるよう。2012年に6巻が発売される頃に購入した3棹目は、清水の舞台から飛び降りるほどの高価で"マリリン3号"と名付けたそう。女性らしい、かわいいネーミングセンスが微笑ましい。

津軽三味線の世界と言えば、三味線ではなく、寺内タケシとブルージーンズの、じょんがら節のギターバンド編曲演奏のテレビ放映が、個人的な初めての邂逅。その時、荒々しくもソウルフルな世界に魅了された。そのことは何十年経っても忘れられない。

1話のライブハウスで鳥肌が立った。2話のアパートでは自然と涙が溢れた。4話の介護施設では現実から離れトリップしたようだった。

この作品の音源は、胸にひしひしと迫り、染み渡る。やっぱり自分も日本人なんだと...切なくも熱くなる。津軽三味線の素晴らしさに触れられて幸せだ。

本作のアニメの色調は、白が強く、霞がかかったようだが、そこから東北地方の冬の厳しさと、芸道の冷厳かつ高貴なる世界が伝わる。津軽三味線の音色とのハーモニーが素晴らしい。演奏シーンの作画も、特に手元アップに説得力がある。

アニメは1クール全12話。このペースなら少なくとも単行本8巻最後まで描かれそう。

青春だ。芸能の道を極める覚悟が定まるまで、誰のために? 何のために? 今は迷いながらも前に進むだけでいいんだ。

私は中学生の頃からずっと、欧米のロックやブルース、そして成人してからはジャズやクラシック音楽を含んだ西洋音楽が一番と思って来た。

JポップやJロックは別として、邦楽は演歌が大嫌いで、歌謡曲やフォークもあまり興味がなく、ましてや日本の和楽器による古典芸能、民謡など全く縁がないものだと思っていた。

ブルージーンズとの出逢いがきっかけで邦楽を見直し、今では幅広く雅楽や琵琶、琴、和太鼓などの演奏も好きになった。本作で民謡の素晴らしさにも触れられた。が、遅すぎる。貴重な青春時代にもっと邦楽の素晴らしさを知るべきだった。過去の自分に、思い切り蹴りを入れたい気分だ。

『ちはやふる』でかるたファンを外国で多く生んだように、このアニメで、三味線を、日本を、深く愛してくれる外国人が増えてくれたら嬉しい。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 8

64.1 10 2021年度のシリアスアニメランキング10位
ゲキドル ACTIDOL SCHOOL(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.2 (103)
263人が棚に入れました
謎の災害・世界同時都市消失から5年世界は混乱の中にありながらも、少しずつ復興を遂げようとしていたそんな世界で3Dホログラムを用いた「シアトリカルマテリアルシステム」を使った演劇に魅せられ光り輝くステージを目指す少女たちがいたそれぞれの思いを胸に今、ステージの幕が上がる

声優・キャラクター
赤尾ひかる、持田千妃来、諏訪彩花、花澤香菜、M・A・O、山本希望、髙野麻美、秋吉あや、佐藤亜美菜、鳥海浩輔、八島さらら、水橋かおり
ネタバレ

kabaj31 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ひっそりと期待。。。

■完走後の感想

回を重ねるごとに面白くなっていくアニメでした。

{netabare}第5話でドールが赤い目になって覚醒した辺りから、
このアニメはいったいどこに向かっているんだ? と、とまどいつつも、
目が離せないアニメになっていきました。
SF要素が濃くなり始めてから終盤の11話になっても、そこからの着地点が見えず、
最終話の12話まで、ダレることなく見れました。
最終話のサブタイトルが「終わりよければすべてよし」なのは笑いました。

個人的に、過去改変モノについて、過去は変えられないから過去であり、
過去が変えられないからこそ、今大切なモノを大切にしようというエンドしか
無いものだと思っていましたが、こういうやり方で変えることも出来たのかと、
少し感心しました。
ゲキドルが過去改変モノに入るかどうかはわかりませんが。

OP、EDについては、前半のOPはアイドルものっぽい歌で、
あ、これ見なくていいやつだ、って感じのOPでしたが、
EDで、あ、これは見なくちゃいけないと思いました。
後半のOPが、じわじわ、妙にかっこよく思えたりもしました。

音に関しては、BGMや効果音、環境音や、ザワザワとした周りの声など
基本を押さえていて、非常に良かったと思います。

声に関しては、あいりの他にあれ? と思う人が何人かいましたが、
劇のシーンでは、せりあ、あいり、ともに気合いの入った演技で
すごかったと思います。
終盤のかをるやドールの声もすばらしかったと思います。

キャラに関しては、
ストーリーが濃い分、後半から終盤にかけて、キャラの魅力は薄くなっていったように思いました。
その点については、もっと、劇パートをたくさん見てみたかったなぁという気がします。

最後に、
人を選ぶ内容ですが、
SF好きならオススメしたいと思うアニメでした。{/netabare}


■第2話までの感想

第2話まで視聴。

「ここは、どこですか?」
「太陽系第三惑星、地球。その直径は約一万三千キロ。
一つの衛星を持ち、炭素型生物の生存に適した大気組成と‥」
「わかります。いえっ、わかりません! 地球のどこですか?」

舞台演劇を題材にしたアニメでしょうか。
元々、劇中劇のHOTDの様なゾンビモノに興味があったのですが、
こちらの本編の方が、ストーリーがしっかりしている気がします。

一部の都市が消滅していたり、近未来的な舞台装置とかが出てくるようですが、
今後、それらがどのような方向でストーリーに絡んで行くのか今のところ不明です。
ただ、登場キャラの紹介や、それぞれのキャラにちなんだエピソードで話が進ん
で行くタイプのストーリーではないような気がします。
なにか大きな柱のあるストーリーであることを期待しています。

もしかすると魂がこもった作品になるのか、ならないのか、
化けるのか、化けないのか、注目してみたいと思います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 8

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「SFっぽい設定だけ匂わせてる」わけじゃなくて、本当にSFじゃないですか!

第10話まで観終わった時点で、このレビューを書いています。

作中でも言っている通り「演劇」+「アイドル」で「ゲキドル」らしいんですが、そこにSF要素を絡めるという「売る気あるんか?」みたいなニッチな設定と作劇の衝撃作です。

このニッチさから、本作からは多数の視聴者が脱落していると思われますがSFに甘い私は視聴を続けています。

地上波では第1話だけTokyoMXで観ることができて、以後は改めて毎週BSフジ「アニメギルド」枠での放送を追っています。

作中で起きた「世界同時都市消失」という災害やTMS(シアトリカルマテリアルシステム)という演劇用の舞台システム、そしてその一部であるアンドロイド(女性型だから本当は「ガイノイド」)っぽい「ドール」(アリス)といった辺りには元々SF要素を見せてきていた本作ですが、それらは作劇上の「舞台装置」的な設定ではなくて、ストーリーの根幹部分でこの作品はSFらしいということが終盤でわかってきてビックリです。

ストーリー展開に合わせて途中でOPが変わりますが、旧OP「ゲキドル!」はいわゆる「地下アイドル」っぽいいかにも「アイドルグループのテーマ曲」といった感じで、新OPはゲキドルというユニットの物というよりは本当に物語のストーリーに沿った歌詞の曲です。

最初から新OPを聞かせてしまうよりは、確かにこのOP曲切り替えの方が良いと思います。

ED曲は各キャラクターによるキャラソンですね。このED曲を割り当ててもらえている四人が「主要キャラクター」ということなんでしょうか。

「ダンデライオンガール」(守野せりあ)
「キズナ」(各務あいり)
「制服DOLL」(アリス)
「トーキョーロンリーガール」(雛咲いずみ)

※各ED主題歌の背景アニメが、それが直接の原因で本作を忌避する人が出るかもしれないレベルでエロい。

SF設定に演劇要素をどう結末に絡めるのかが終盤の見どころでしょうか。一応、期待して観てみたいと思います。

2021.4.9追記:
最終話まで観終わっていましたが、更新が遅れていました。通じる人には通じるかもしれませんが、そのまんまというわけではないんですけどちょっとオーガス(『超時空世紀オーガス』)を彷彿とさせる最終回でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 22

dakiramk3 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

もう少し要素を絞ったほうが……

 どうやら噂によるとかなり前に完成していた作品のようで、確かに作画は安定していた……当たり前か。それがどうして今頃世に出ることになったという経緯はともあれ、まず言いたいことは要素が多くてとっちらかっているということか。ざっと考えつくだけでも百合・アイドル・SF・演劇……といった具合で、それぞれどれかの要素にも考えさせられる部分はあるので、それに絞ってみても悪くなかったのではないかという気はするが、そうすると今度は多数ある作品の中に埋もれてしまう可能性もなくはない。特にこの作品が制作された数年前ならいざ知らず、昨今のアイドルものブーム(少なくとも作りて側にとっての、ではあるが)にあっては、少なくともアイドル要素だけでは厳しくなってしまった感はある。
となれば関谷あさみ氏キャラ原案と、氏の息吹を感じさせられる艶めかしい少女のボディラインのアニメ絵への再現性の親和性を鑑みるに、ここは一つ劇団を維持しようとする奮闘と、あいり関連のジュニアアイドル描写エピソードで垣間見られた、汚い大人たちとの間で揺れ動く少女たちの可愛さを最大限活かす方向でも良かったのではないか……と提案してみる。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 5

69.6 11 2021年度のシリアスアニメランキング11位
バック・アロウ(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.5 (215)
498人が棚に入れました
リンガリンド。その地は、壁に囲まれた世界。壁がその地を覆い、守り、育み、育てた。壁は神――それがその大地、リンガリンドの根幹である。ある日、リンガリンド辺境の地「エッジャ村」に謎の男「バック・アロウ」が現れる。アロウは記憶を失っているが、自分が「“壁の外"からやってきた」ことだけはわかると言う。記憶を取り戻すために壁の外を目指すアロウだったが次第に、自身をめぐる争いに巻き込まれていく――

声優・キャラクター
梶裕貴、洲崎綾、小澤亜李、小野賢章、置鮎龍太郎、杉田智和、潘めぐみ、小清水亜美、小松未可子
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ガンソード×グレンラガンなのか

<2021/1/9 初投稿>
見始めなので評点はデフォルトの3.0です。

今期新作7つぐらい第一話見てみましたが、今のところ一番好感触!

どうやらオリジナルアニメのようで。
EDクレジットが原作「谷口悟朗、中島かずき、ANIPLEX」になってました。

谷口悟朗と言えば「コードギアス」「ガンソード」「スクライド」などの魅力的なオリジナルロボアニメを生み出す名監督。
原作付きでも名作「プラネテス」を始め「純潔のマリア」などでも手腕を発揮。
「ガンソード」「プラネテス」「純潔のマリア」は特に大好きです。

かたや中島かずきといえば「グレンラガン」「キルラキル」「コンクリートレボルティオ」、最近だと「プロメア」とか「DNA」とか「ノリと勢いと熱量」で押し切る名作、良作、迷作を多数輩出する作家さん。
ちなみにこちらの中では「グレンラガン」が大好き。

この二人が手を組んだ、ということのようです。

で、本作の第一話を見ての感想。
谷口監督の方が芸風が広い分、中島かずきテイストに少し寄せて少し暑苦しい感じはします。

一応、{netabare}ロボもの{/netabare}のカテゴリになるんでしょうが、
谷口「ガン×ソード」と中島「天元突破グレンラガン」の空気感を混ぜこぜにしたような。
でも出てくる人はみんな普通そう。
カミナのような気合いでなんでも解決可能な人も、ヴァンのような真性「バカ」もいなさそうです。
そういう意味ではキャラの人格的には「コードギアス」っぽいかな。

という作品です。

世界観とかキャラ紹介などは2話以降、もう少し見てから追記したいと思います。

<2021/1/24 追記>
三話まで視聴しました。
グレンラガンやガンソードがお好きな方なら好きな展開ではないでしょうか。
同じような展開とも言えますが 笑。

少し内容に触れます。

周囲を高さ十キロの壁に囲まれた、いわゆる異世界。
その世界の住人は「壁の外には何もない」と言います。
そしてその世界には二大国を始めとするいくつかの国があります。
中世の中国っぽい国、独立前のアメリカみたいな国、コードギアスのブリタニアみたいな国。
文明レベルはレボルバーや大砲は普通にあるので現実世界で言えば1800年代くらいなんでしょうか。

ちょっとアンティークな世界観。
ただ一つブライハイトという巨大ロボットの技術を除いては。
と言っても謎のオーパーツ的なものなのでその世界の人々は技術を理解してるわけじゃないのですが。
ここら辺のロボの扱いもグレンラガンやガンソードとよく似てますね。

第三話で{netabare}巨大戦艦を入手したバックアロウ御一行はエッジャ村の村人全員と一緒に壁に向かって旅立った{/netabare}のでした。
やっぱり{netabare}ロードムービー{/netabare}でした 笑

そしてやっぱりこういう展開好き。

登場人物は相変わらず正常な人が多いけど、でもそのうち鉤爪の男のようなイカれポンチが出てくるんじゃないかと期待してますw

やっぱこれ楽しいな。

<2021/6/18 追記>
最終話まで見終えました。
ラストはなんか{netabare}ポカン{/netabare}としましたよ。
バトルのところ{netabare}最終回での畳みかけ方はグレンラガンやガンソード{/netabare}のそれを思い出しました。
それ、というのは{netabare}対アンチスパイラル戦や対鉤爪の男戦{/netabare}のことです。

でも本作はカタルシスがちょっと足らない。

しつこいと言えば良いのか。
確かに{netabare}ルドルフ{/netabare}は良いキャラしてたし、やはり{netabare}三木眞一郎さん{/netabare}は凄い。
でもこんだけ引っ張るとなー

そしてこの世界のカラクリ。
良かったですよ。
これは予想できない。
ちょっと{netabare}LAST EXILE{/netabare}を彷彿とさせる。
でもなんかその割にカタルシスが足らない。

なんでなんだろうな。
全編通して展開は早く、盛り上げ方もさすが。
でもなんか噛み合ってない。

もしかしたら谷口悟朗監督と中島かずきさんは作風が少し似てる分、相性がさほど良くないのかも。
美味しいウスターソースに美味しい醤油混ぜたら微妙な味になった、って感じかも。

ちょっと評価の難しい作品でした。。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 34

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

壮大な物語だが実際は極微、だが大いに楽しませてくれた物語

壁に囲まれた世界『リンガリンド』。
なぜ壁ができているのか、壁の外に何があるのか、誰もわかりません。
この物語は、壁の外からやってきたバック・アロウを中心に多くの登場人物が活躍する内容です。
SF群勇伝のようなものかもしれません。

バック・アロウには過去の記憶がありません。自分が何者かもわかりません。
ですが彼には正義の心があり、人の命がかけがえのないものであることを彼は知っていました。

最初は作画に迫力がないため、たいしたことないだろうと思っていましたが…、
いつの間にかそれぞれの登場人物の生き方・信念に共感し、気づいたときには次回が待ち遠しくなりました。


リンガリンドでは武力の国「レッカ凱帝国」と慈愛(?)の国「リュート卿和国」とが覇権を争っていましたが、それぞれの国には独自の複雑な内面があります。それが結構興味を注ぎます。

そして、レッカ凱帝国の天命宮大長官だったシュウが自国を捨ててエッジャ村の住民になったことから物語は急展開をします。
彼は頭脳明晰な男です。彼の望みは『壁の外を知ること』その好奇心を探求するだけの理由で自国を捨てたのです。
実は、シュウこそがこの物語の真の主人公です。少なくとも私はそう感じました。

バック・アロウが空から落ちてきたエッジャ村は毎日の食べ物にも困る貧しい村でしたが、アロウとシュウが加わることで、やがてこの村が世界を統一する架け橋へとなります。

そして、やがて壁の外へたどり着きますが、そこは…

最後の結末を知ったとき、私は昔、手塚治虫さんの書かれた「火の鳥」未来編に説明されていた『コスモゾーン』を思い出しました。
それは、素粒子理論と宇宙理論とは同じようなものであるという仮説。例えば原子の周りを電子が周回している姿と太陽の周りを地球や他の惑星が周回している姿とは似ています。
さらに発展して、銀河は高次元生命体の細胞の一つなのかもしれないという仮説。
まさにリンガリンドは、手塚治虫さんが説明されたコスモゾーンのようなものでした。


この物語は実に多くの登場人物が自分の信念を語ります。
主人公のバック・アロウの存在が薄く感じられるほど、個性的な連中が出演します。
私はリュート卿和国のフィーネ姫の信念「愛こそ全て」が大好きです。

もしまだ見てない方は一度見られることをお勧めします。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 26

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

何かちょっとザブングルとかを思い起こさせるような話ですね…。

== [下記は第2話まで視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第1話は録画だけしていて、まとめて第1話と第2話を続けて観ました。

「世界は壁に取り囲まれていて、その外側は存在しない」というリンガ・リンドという世界の成り立ちに何らかの知性体の作為を感じさせる訳ですが、実際の世界の成り立ちについては秘匿されていてそれに触れようとすることは禁忌とされているみたいです。

また先進文明的な物は「ラクホウ」なるカプセル状の物が降ってきたときにそこに入っている物しか得られないようで、リンガ・リンドの住民たちは自力で生産することはできないみたいです。

この辺りの人工的な世界観を見て何となく『戦闘メカザブングル』みたいな設定だなと思ったんですが、何しろオリジナルTVアニメ作品なので本当に似たような話なのか全然違う話なのかはわかりません。もちろんリンガ・リンドの形状的に「惑星ゾラ」とは事情は違っているんでしょうしね。

とはいえ、さすがに新作で作画の方は特段の古さは感じませんでした。ただ、演出面ではちょっと古くさいかもしれません。でも一周回って良い方に転ぶかもしれないし、監督が同じ『ID-0』とかはわりと楽しく観れたので世間の評判とは別に個人的には合うかもしれないです。

信念が具現化してブライハイトと呼ばれる巨大ロボット的な兵器になるとか、ラクホウに入って降ってきた主人公が素っ裸とかそういう辺りは「脚本:中島かずき」的な暑苦しさを感じます。

視聴開始を後回しにしておいてなんですが、意外と面白かったのでこれからは毎週ちゃんと観ようと思います。
== [第2話まで視聴終了時のレビュー、ここまで。] ==

2021.6.25追記:
最終話まで視聴終了。

「ザブングルみたい」とか書いてたら「アイアン・ギア」までやってしまいましたね。まあ見た目からそのこと自体は予想はされていましたけど、そこから合体までやってのけるとは(笑)。リンガ・リンドに外側があるのは想定通りでしたが、その「外側」の設定はちょっとビックリしました。

しかし中盤はフィーネ、終盤はゼツ凱帝が大活躍でしたね。その分アロウの影が薄くなっていましたが…。

これも作品設定を考えれば「SF作品」といえますね。最近SFは意外と多いかも。復権の兆し…?

投稿 : 2024/11/23
♥ : 32

67.6 12 2021年度のシリアスアニメランキング12位
ありふれた職業で世界最強(第2期)(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.3 (172)
707人が棚に入れました
“いじめられっ子”の南雲ハジメは、クラスメイトと共に異世界へ召喚されてしまう。つぎつぎに戦闘向きのチート能力を発現するクラスメイトとは裏腹に、錬成師という地味な能力のハジメ。異世界でも最弱の彼は、あるクラスメイトの悪意によって迷宮の奈落に突き落とされてしまい――!?

脱出方法が見つからない絶望の淵のなか、錬成師のまま最強へ至る道を見つけたハジメは、吸血鬼のユエと運命の出会いを果たす――。

「俺がユエを、ユエが俺を守る。それで最強だ。
 全部薙ぎ倒して世界を越えよう」

奈落の少年と最奥の吸血鬼による“最強”異世界ファンタジー、「ありふれた職業で世界最強」の第2期

声優・キャラクター
南雲ハジメ:深町寿成
ユエ:桑原由気
シア・ハウリア:髙橋ミナミ
ティオ・クラルス:日笠陽子
白崎香織:大西沙織
八重樫雫:花守ゆみり
畑山愛子:加隈亜衣
ミュウ:小倉唯
リリアーナ・S・B・ハイリヒ:芝崎典子
ノイント:佐藤利奈
フリード・バグアー:小西克幸
ミハイル:石井真
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ユエの余裕、安定の2期です。<追記;ありふれた寄り道で世界最強>

何だろう、このありふれた感。
強い主人公が次々に試練を乗り越えていくような。
1期ほどのパワーは無いような気がします。
そりゃ、危ないシーンはあったけど。

三人の姫ヒロインに、香織とミュウが加わった2期。
ますます、ハーレム増強です。
しかし、ユエが大量リード。
死地を共闘しただけあって、ハジメにとって特別な存在なんでしょう。

{netabare}ラスト、香織が別人に。
えっ、誰?でした。
でも、どっちかっていうとこっちの方が私好み。
今後の活躍に期待です。{/netabare}

増々意気軒高なハジメ一行。
次の迷宮攻略は?魔人族との闘いは?
はたまた神の討滅か?
3期が気になります。

<追記;ありふれた寄り道で世界最強>
{netabare}第13話未放送エピソードで、とくにストーリーとは関わりはありません。
ハジメ、ユエ、シア、ティオ、香織、ミュウによる珍道中記です。

エピソードが3つ。
ユエの魔法先生、衣装交換、ユエの幼児退行。
と、全体にユエが話の中心です
やはりメインヒロインは優遇されますね。

衣装交換が新鮮です。
とくに、ユエが色っぽい。
もっとじっくり披露してほしものです。{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 16

バニラコーク さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

一期よりは落ちるかな。

楽しみにしていた二期アニメのひとつ。
まあ、1番楽しみにしているのは盾の勇者なのですが。
それは置いておいて
作画が良くなりましたね。
自分的にはクラスメイトの話が出てきたのは好感触。
やはりここの話がないと根っこがない感じがしていたので。
相変わらずの足手まとい達なんですが
以外とみんなのキャラがしっかりと確立していて
良かったのではないかと感じます。
最後の方の時系列はちょっとわかりづらい。
にしても裏切り者の動機が弱い気がする。
もっとなんか学校で酷い目にあってたとか
そういうのがあると思っていたのですが、、、
ハジメの憎しみの様な感情も少し弱くなってる気がする。
もっともっとどす黒い感情でも良いのでは?
夏にOVAみたいですが
三期でないのが非常に残念です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 4
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