親子で冒険なアニメ映画ランキング 5

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の親子で冒険な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年01月05日の時点で一番の親子で冒険なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.4 1 親子で冒険なアニメランキング1位
バケモノの子(アニメ映画)

2015年7月11日
★★★★☆ 3.8 (639)
4227人が棚に入れました
原作・脚本 細田守監督。


舞台となるのは、人間界のほか、動物のようなバケモノが住む「渋天街」が存在する世界。

人間界「渋谷」から「渋天街」に迷い込んだ一人ぼっちの少年が、強いけれど身勝手なために孤独だったクマのようなバケモノの剣士・熊徹と出会うことで物語が展開する。

少年は熊徹の弟子になり、九太という名前を与えられ、彼と共に修行や冒険の日々を送ることになる。


声優・キャラクター
役所広司、宮﨑あおい、染谷将太、広瀬すず、山路和弘、宮野真守、山口勝平、長塚圭史、麻生久美子、黒木華、諸星すみれ、大野百花、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

【ネタバレ無し】熊徹と共に吠えろ!!

2015年7月より劇場公開
本編119分


【前置き】

細田守監督の長編映画第4弾。
(ONE PIECEの映画を除くと。)
「時をかける少女」の頃は、原作を上手くアレンジし名作に仕上げた監督の手腕が高く評価されておりましたが、「サマーウォーズ」以降、その評判は一般層をも巻き込むカタチで大きくなり、今やポスト宮崎駿とすら呼ばれるまでとなり、その観客動員数も他のオリジナルアニメとは一線を画すレベルとなりました。
それに従い、批評する側の目線も高くなったり、偏った意見も多くなっていった印象を受けました。

私的には、監督の作品はどれも大好きです。
大手を振って褒められるかどうかはともかくとして。
なので、評判が上がるのは勿論嬉しいのですが、批評の中には闇雲な感情論による悪態でなくしっかり的を得ている意見も多くあり、色んな意見から新たな視点を得る機会に恵まれたことに楽しさも覚えました。


前置きが長くなりましたが、そんな監督の第4作目。
普段はあまり映画館へは足を運ばないのですが、知名度の高い細田監督の作品だけは評判が出尽くす前に見ておきたいと思い、前作品らと同様に出向いて来ました。



【あらすじ】

人間界「渋谷」とバケモノ界「渋天街(じゅうてんがい)」という、通常交わることのない二つの世界。
ある日、とある事情から渋谷で途方にくれていた少年「蓮(れん)」は、渋天街の熊のような風貌のバケモノ「熊徹(くまてつ)」と出会います。

蓮は、熊徹から強くなるため弟子になるよう説得され、渋天街で「九太(きゅうた)」という名を貰い、日々修行に明け暮れるのでした。

8年後、成長した九太は偶然渋谷へ戻ってしまうのですが、そこで高校生の「楓(かえで)」から新しい世界や価値観を吸収することで、自身の生きるべき世界を模索するようになります。

そんな中、両世界を巻き込む事件が起こるのです…………。



【(劇場公開中なのでネタバレ無しで)語ってみる】

監督の他作品と比べて、本作はどこが優れていたか。
それは、この少年漫画的なシナリオからくる『熱さ』にあると、私は思いました。
サマーウォーズでもあった、「キングカズマVS人工知能ラブマシーン」の徒手空拳の格闘シーンが好きな人なら、本作でもまず燃えられるでしょう。
徒手空拳の格闘技だけでなく、本作はバケモノ達(と言っても怪獣ではなく熊男や猪男のような人型)による格闘技で、非常に力任せであり泥臭いところもあるのですが、迫力は満点でした。
作画は前作同様、映画であることを差し引いてもしっかり描ききれており、そこから上記のような魅せるシーンの更なる力の入れようは視聴者を大いに湧かせてくれます。
約2時間とアニメ映画としては少々長い部類ですが、私は一度も退屈させられるようなことはありませんでした。


ただ、映画のテーマとしては少々監督の引き出しが少ないと感じてしまったのも正直な話。
本作は、異種間を含めた「親子の絆」を描いた作品。
それこそ、前作「おおかみこどもの雨と雪」でもそうでしたし、広く家族と捉えれば「サマーウォーズ」でもそうでした。
細かく分ければ「おおかみこども」は完全に親の視点である為、本作とはまた少しテイストも対象となる年齢層も違うのですが、端から見れば一緒である時点で、多くの視聴者に既視感を与えてしまう点は残念です。
加えて、「熊男」「狼男」というのもまた、ニアミスしてると言わざるをえません。
舞台設定こそ監督の作品の中では新しい「渋天街」も、それこそ他作品で言えば見慣れた世界観であり、新鮮味には欠けてしまいましたね。


キャラクターに関しても、主人公の「九太」は、幼少時代は横着な熊徹のもとで子供なりに必死に学ぼうとする(加えてコミカルな)様に心打たれ愛着を持てたのですが、8年後のスマートになった青年「九太」は少々魅力に欠けました。
なんと言うか、見た目も含めて格好良過ぎたんですよね。
これは、前作でも主演声優を務めた「宮崎あおいさん(幼少期の九太)」と「染谷将太さん(青年期の九太)」とのキャリアの差も大きかったのかもしれませんが。
彼の見せ場のシーンも、そこに至るまでの過程や肝心の敵が少々腑に落ちなくて、首を傾げながらということもありましたしね。

何より、九太の師匠である『熊徹』が非常にキャラ立ちしている為、主人公の九太の活躍が、どうしても霞んでしまうんですよね。
私的には、青年九太が頑張るどのシーンよりも、熊徹が無骨に挑みかかる格闘シーンのほうに目を奪われてしまいました。

まず「役所広司さん」の演技が抜群に良いんです。
声をヘンに作っているわけではなく、でも役所広司さんの地声とも少し違う、まさに「熊徹」というキャラクターを自身で作り上げて演じ切った感じでした。
横柄で、人の話を聞かず、短気で、ぶっきらぼう。
そして、たった一人で自身を鍛え抜いて、自分の力で強くなった…、…強くなってしまった熊徹。
そんな男が、世界の違う人間の子供に目をかけ、なんだかんだで必死に育て上げていく様。
泣くには至りませんでしたが、やっぱり心に訴えるものがありましたよ。

この作品の評価は、この熊徹が好きになれるかどうかが大きな分かれ目となると思いますね。
私は、こういう男臭くて人情的なヤツ大好きなんです。
弟子になりたいかと言われれば、それはまた別の話なんですけどね……(笑)

勿論、魅力的なバケモノは熊徹だけでありません。
やはり見た目もインパクトのあるバケモノ達が中心となるのですが、中でもその熊徹の元で九太に目をかける豚顔の僧侶『百秋坊(ひゃくしゅうぼう)』は魅力的でした。
度々の彼の諭しがあってこそ、九太も…そして熊徹も、道を違えず成長出来たんでしょうね。
視聴後に声優さんが「リリー・フランキーさん」だと知りましたが、とても落ち着いて演じられていて、あの声だからこそここまで好感を持てるキャラになったんだと感じました。


主題歌であるMr.Childrenの『Starting Over』も非常に作品に合っている名曲でした。
いつぞや、ONE PIECEの主題歌を担当された時の曲は個人的に好きではなかったのですが、今回は自分にとっても大当たりでした。
このレビューも、この曲を何度もリピートしながら作りました。
聴くと自然と作品の良いシーンがフラッシュバックする、そんな1曲でしたね。



【総評】

映画館で見る価値があったかと言われれば、私的には十分ありました。
ただ、やはり初見且つ映画館というインパクトも含めて、評価が上乗せされた感はあるので、そういう意味では少し抑え気味な評価となるかもしれません。
まだ前評判の無かった「サマーウォーズ」を公開初日に映画館で見た時のインパクトと比べると、視聴後のテンションはかなり違いましたし。

ですが、やはりシナリオからも分かる通り王道ながらしっかり見せ場のある熱い作品なので、ファミリー層を中心にまた興行収入としては成功の作品となるでしょう。
勿論、変に偏り過ぎでなければ大人も十分楽しめる内容ですので。
私は同じ作品を映画館で二度見ることはまずないので、また足を運ぶことはないでしょうけど、早くBlu-rayでもう一度見直したいです。


ただ、やはり次回作以降の引き出しには不安を感じさせるものであったことは確かです。
アニオタ界隈では「ショタ好き」「ケモナー」等の名誉?なレッテルを貼られている細田監督。
そこが真実かどうかはさておき…この監督は、しっかりと面白いところが分かっていて且つ視聴者の目線にも立てる、そして「ショタ」等の偏った需要を上手く一般層向けに紛れさせ商業作品へと仕上げるセンスを持つ、数少ない実力のある監督だと私は思っています。

と言うわけで、次回作は
『ブッキラボウな男+そんな彼を慕うロリ少女』
という私の大好きな設定を是非、一般層にも受けるような作品へと昇華させ仕上げていただきたい。

……最後の一文は忘れて下さい。

読んでいただきありがとうございました。

◆一番好きなキャラクター◆
『熊徹(くまてつ)』声 - 役所広司さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『チコ』声 - 諸星すみれさん



以下、声優を務めた「広瀬すずさん」について。
(低俗な文章を含みますので、〆ます。)
{netabare}
本作のヒロイン「楓」を務めたのは、女子高校生ながら話題の女優『広瀬すずさん』。

とある番組での、悪質に切り取られたかのような彼女の言動が世間の反感を買い、謝罪騒ぎにまで発展したのをご存じの方もいるでしょう。

そう言えば以前にも彼女は、「明星一平ちゃん夜店の焼きそば」のCMで、一部言動が誤解を招くとして差し替えとなる騒ぎも起こりましたね。
これも謝罪騒動同様、私的には少々解せなかったんですよね。

全く………、


『ぶっちゅ~~~~~~~~~~、全部出たと?』


という言動の、一体どこに誤解を招く要素があったと言うのでしょうか。

しっかり口をすぼめ(ソースを)絞り出す様の、一体どこに何の誤解が生じていたのでしょうか。

広瀬すずさんには、これからも逆境に負けず作中の「楓」と同様に、自身の信ずる道を邁進していって欲しいものです。




………………………………ふぅ。

シュッシュ、フキフキ
{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 27
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

“新冒険活劇”の意味は分からずじまいでしたが・・・

2018.08.11記


「時をかける少女」に続き「未来のミライ」公開記念で地上波で放送していたのを鑑賞。
細田監督作品は「おおかみこどもの雨と雪」「時をかける少女」に続き3作目の鑑賞となります。


今日も渋谷駅周辺は外国人で溢れ、きょろきょろしながら歩いたり、めいめい写真を撮ったりして楽しんでますね。これだけ多くの作品で取り扱われる街ですからなんの聖地巡礼かはさっぱりわかりません。ハチ公前交差点は都会の雰囲気を描写できる上、空間を広めにとれるため引きのカットをいろんなアングルから撮れることが作り手にとって魅力なんじゃないかと勝手に思ってます。

で、その渋谷の街とその渋谷に隣接する異世界「渋天街」が舞台のお話です。
お約束のハチ公交差点前もしっかり出てきますので、渋谷ファンは要チェックです。


家族関係で闇落ちしている少年“蓮”の視点から物語は始まります。夜の渋谷を走り回ったりするのですが、この時の背景しかり通行人の描写、防犯カメラを使った数枚のカットなどの工夫はさすが劇場版といえる作画です。ひょうんなことから迷い込んだ渋天街もプチ千と○尋の幻想的な作りだったりと導入はバッチリでした。ただプチ神隠し感が出たことで、否が応でもポスト宮○駿を無駄に意識させちゃったかもしれないのは余計だったかも。

物語は、作品タイトルやポスターの絵柄からバケモノ(熊徹)と蓮(または九太)の親子関係または師弟関係を軸とした展開が予想され、実質その通り進んでいきます。ただそこに焦点を絞り過ぎると中盤以降の追加要素に混乱してしまうかもしれません。《詰め込み過ぎだよん》という評はしかりで、父子愛というメインテーマを補足するための追加要素がわかりづらいです。父子関係に加え蓮の成長も描こうとしてますので尺を考えればギリギリ、劇場版の宿命とはいえ、多くを観客の解釈に委ねてます。


じゃあ自分はどうだったかというと、、、普通におもしろかったです。
ただもうちょい脚本はわかりやすく出来なかったかと注文はあります。
テーマは普遍的なものを扱ってますので、その一点突破で感動するかもしれない佳作と良作の中間と言っていいでしょう。


熊徹はいい味出してました。大正生まれか昭和一桁世代の佇まいです。イメージは星一徹(大正)か銭形のとっつぁん(昭和一桁)あたりでしょうか。頑固親父かと思いきや猪王山から子供のようと指摘されてる通り、がきんちょのようでもあります。このへんのイメージはLEONっぽい気もします。子供(っぽい大人)と子供の組み合わせもなんとなくLEON。


なにかと評判の悪いリアル俳優が声優を務める劇場作品の例に漏れず、本作もそうなのですが、全く違和感のない方がお一人いたと思います。
うさぎの宗師さま役津川雅彦さんです。 
{netabare}「お前という奴は迷いなど微塵もない眼をしおってぇ」{/netabare}
合掌…


細田作品のおおかみこどもの雨と雪では母子の愛を、本作では父子の愛ということになるんでしょうが、なかなか難しいのかもしれませんね。母と子の組み合わせが物語を作りやすいのかもしれません。であれば父と子の関係を扱った本作は意欲作ということでいいんだと思います。

{netabare}「君は俺と同じだよ。バケモノに育てられたバケモノの子だ」{/netabare}
蓮が初めて言葉にして父親と認めた瞬間、親父冥利に尽きるなと感じた瞬間でした。目の前で言われるかいなくなってから言われるか、男にとってはどうでもいいことかも。
多少のご都合展開は目を瞑って親父の自分が自己投影できたので評価が甘くなったことは認めよう(笑)


ちょっと気になったところはネタバレで隠します。

■白鯨の処理
{netabare}蓮と楓を繋いだメルヴィル著の『白鯨』。たしか船長さんが船もろとも鯨と運命を共にした話だったことは覚えていて、本編では一郎太が鯨に化けたあたりから嫌な予感しかしなかったのですが。。。
{/netabare}

以下ほぼ私見かつ妄想です。

■楓の役割って
{netabare}主人公と同年代の女の子だからといってヒロインではありません。九太が蓮に、彼が人間界に戻るための触媒と思えばたぶんすっきりします。
序盤、多々良と百秋坊が触媒となって蓮と熊徹を結びます。楓はもともと蓮が持っていた好奇心を現実世界に落とし込む存在として役割を果たします。
途中から出てきたのもあって恋愛要素を前面に出すと話がぼやけるため、あのくらいの按配で良かったことでしょう。{/netabare}

■女よ、GOMEN
{netabare}虎徹への弟子入り直後、剣士としての成長きっかけとなったのは母の幻影「なりきる。なったつもりで」の一言。宗師さま巡りを経て『大事なことは自分で見つける』と気づきがありました。これまで他人のせい、自分の殻に閉じこもっていた蓮が一皮むけるために母は必要でした。
楓もそう。8年ぶりに人間界に戻ってきた蓮は楓がいなければ路頭に迷って野垂れ死にしてたかもしれません。一郎太とのバトルでも早まって差し違えて終わってたかも。
父子愛がテーマの作品で、といいつつも結局女がいなければ何もできないのが男だったりするような。こうゆうこと言うのは女性に言わせれば男の甘えだそうです。{/netabare}



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2019.01.19追記
《配点を修正》


「おおかみこどもの雨と雪」で母子の愛、本作は父子の愛。
私は昭和の人間なので、父と子ってペラペラ話し合う印象が薄く、その延長線上、エンタメとして成立しづらいのでは?と邪推。
「クレイマークレイマー」のようなのも良いが、頑固一徹親父とその息子の物語をこの時代にこそ観たいとぞ思う。そういう意味で本作は及第点です。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 40
ネタバレ

ろき夫 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ぼくはケモノもオッサンもすきなので熊鉄のこと可愛いとおもいました(まる)

月曜メンズデーの夜に行きましたが客の少なさにビビりました。
3週連続細田作品地上波放送で、宣伝にも力入ってるのに……。
先が不安になりましたが、平日の夜だし、単に山形がアニメ過疎地ということ、なんですかね。

ケモナー細田の真骨頂!!
バケモノの造形が可愛らしく、現代的です。
どっちかというと人間に近い。もののけ姫のそれとは大違いです。
まさしくケモナーが好む、ケモナーのための映画といっていいでしょう。

本作を見て一番に感じることは、広い意味で男の子が好きそうな映画だな、ということ。
(話と関係ないのですが、「おとこのこ」を変換したら普通に「男の娘」というワードが真っ先に出てきたw 打ったの初めてなのに。なんという時代……)

主人公の男の子が、熊鉄というバケモノに出会うところからはじまり、ともに成長していくお話で、子供の目線、子を育てる男親の目線、どちらからも楽しめるんじゃないかと思います。
今までの細田作品では珍しいくらい激しいアクションシーンが多いのもポイントです。
個人的には、どっちの目線にも共感できたなと思います。
熊鉄の乱暴でぶっきらぼうな接し方が、自分の父親と似ているせいかもしれません。
だんだん、顔まで父親に似て見えるもんだから不思議。バケモノにもかかわらず、です。
でも、それくらいリアリティのあるキャラクターだったと思います。
熊鉄を演じた役所公司さんの演技が素晴らしかった、というのも大きいですね。
違和感なさ過ぎてエンドロールまで気が付きませんでした。
「ああ、俺の父親もこんな感じだったよな……」なんて、少し懐かし気持ちに。

先週「おおかみこども」が放送していましたが、それと比較するのも面白いですね。
熊鉄と花のキャラクター性の違いは、父親と母親の子どもへの接し方のスタンスの違い、とも言えそうです。
本作パンフレットの細田監督インタビューでは、
「最近、うちに男の子が生まれまして。父親として何ができるかなって、考えたんです。」
と、綴られており、作品には男親としての理想がやはり込められているんだな、と感じました。
確かに、父親だったら男の子が生まれたら、一緒に体を鍛えたり男としての強さを教えてあげたいって気持ちになるかもw

前作に比べると、キャラクターのセリフでメッセージ性となる部分をはっきり伝えるから分かりやすい。
その分かりやすさに徹しているぶん、想像の余地が少なく、物足りなさを若干感じるところが欠点。
なので、ふわふわした映画の余韻を好む人には不満があるかもしれません。説明不足の部分もあります。
が、それでも完成度は高く、この作品の評価はほぼ好みの問題になるんじゃないかと感じています。
お涙頂戴なくカラッとしていて、後味爽やかで笑いがある作品は個人的には大好きです。

見ているだけで高揚感を得られる、しっかりと作られた王道ファンタジー映画は本当に久しぶりです。
宮崎駿が引退したらしたで次世代の監督が良い作品を作ってくれる……。素晴らしいですね。
会社は違えどバトンは受け渡されていくものなのかな、と感慨深くさえあります。
この幸福な循環がずっと続くといいですね。


P.S. バケモノの子展行きたいです。一郎彦の帽子欲しいです(大人サイズ)。2015/7/17

【追記】
{netabare}
ひとつ気になったのは、ケモノらしさについてです。
作中、「ニオイ」に触れられませんでした。ケモノ臭いだとか、人間臭いだとか。バケモノとは言っても、獣人なんできっとケモノ臭がすると思うんです。

バケモノの子を見て後、もののけ姫が無性に見たくなって見てみると、その部分において明らかに違います。
バケモノの子に出てくるケモノたちは臭いも無ければ、見た目以外ほとんど人間と違いが無い。
文明も発達しており、異国風と思わせといて玉かけご飯を普通に食うくらい、生活にも違いが無い。
もしかしたら、生活型が日本人と同じで無臭になってしまった・・・という裏設定が(!)
なんて妄想したりw
熊とか、体臭すごいですし、ニオイの演出も加わるとより面白くなってたんじゃないかと感じました。
九太が人間界に戻ったときに、九太に染みついたケモノ臭さに楓が鼻をつまむシーンとか見たかったんですけどね(笑)
でもニオイに突っ込むと、一郎彦の正体がすぐばれてしまい話がややこしくなるから、なんて事情が見え隠れするのであえて入れなかったのかなー、なんて勘ぐったりしてw

仮に、ニオイがあったら熊鉄のオヤジらしさに、より一層リアルさがあったのかもしれない。
一方で、ニオイなど生臭い要素をなくしたことが、マスコット的な愛らしいオヤジキャラの演出に一役買っているんだろうなとも思うので、結局この作品には「無臭」のバケモノが正解だったんでしょうね。
熊鉄のことを「可愛い」と感じる背景に、実はニオイも深く関係してるんじゃないかと、一人納得しましたw
{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 9

65.5 2 親子で冒険なアニメランキング2位
未来のミライ(アニメ映画)

2018年7月20日
★★★★☆ 3.2 (230)
873人が棚に入れました
とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。ある日、甘えん坊のくんちゃん(4歳)に生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うくんちゃん。そんな時、くんちゃんが出会ったのは、未来からやってきた妹、ミライちゃんでした。このちょっと変わったきょうだいが織りなす物語。それは、誰も観たことのない、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした―

声優・キャラクター
上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ちょっとした奇跡がつながってつながって、今の私達がいる。

『バケモノの子』に続く、
細田守監督の長編作品。

細田監督の作品の中では、
『時をかける少女』が一番好きです。

8月ごろに劇場で見てきました。
(レビューは書いていたのに、投稿が遅くなりました^^;)

大きくない会場でしたが、満員でした。

少し遅めの時間帯だったからかもしれませんが、
大人しかいませんでした。(年齢層はバラバラ。)

もっと子どもが多いかと予想していましたけれど。
でも内容は確かに子ども向けではないかな。笑

100分ほどの作品です。


● ストーリー
4歳のくんちゃん(♂)に妹ができた。

妹・未来(みらい)の世話に追われる両親に対し、
くんちゃんは寂しさを感じる。

むしゃくしゃする気持ちから、
わがままを言ったり、未来に意地悪をしたり。

そんな気持ちで中庭を通ると、
不思議な世界と不思議な人たちに出会った。


細田監督の作品には
現実世界に溶け込んだファンタジー設定が多い気がします。

今回もそうですね。

くんちゃんは中庭を通して、
家族の未来や過去に触れます。

そんなこと、
現実世界ではありえないファンタジーですが、

出会った人たちから教わったことを自分の行動に活かしていく様子は、
ただの4歳児にも見えます。成長だねえ。

ただ、これまでの作品で感じた
“どうなるかわからないドキドキ”という点からは
遠かったように思います。

むしろ、刺激を期待せず、
日常系作品だと捉えたほうがいいぐらいですw

育児に奔走する両親と、
両親の愛が欲しいくんちゃんの、

ちょっと慌ただしいけれど、
振り返ってみると、幸せと奇跡が詰まった日常。

そんな中に、少しのファンタジーを織り交ぜて…
という物語でした。


≪ 脚本ではなく、絵で魅せようとしていた? ≫

だけどごめんなさい、
私には物足りませんでした。

それはドキドキな冒険を期待していたから、
というのもあると思うのですが…。

くんちゃんは不思議な体験を、
日を置いて何度も体験するので、
短編集のようにも受け取れる作品です。

ひな人形のエピソードは、
嫌いではないのですが、
やたらと時間がかけられていたような。

飽きてきたなーと思い始めたところに、
{netabare} 無駄に緊張感を持たせた、だるまさんが転んだのような、スローモーション。 {/netabare}

それほど重要でも見せ場となるシーンでもないのに、

「私達は大きなスクリーンで何を見せられているの?」と
なんだかあきれてしまいました^^;


しかし、作画はきれいだったしこだわりも感じられたし、
全体的に力が入れられているのが、よく伝わってきました。

キャラの表情も豊かというか、顔芸というかw

今回の作品では、脚本よりも、
こうした絵で魅せようとしていたのかな?

描きたかったシーンやキャラの表情を、
楽しんで描く。

それがこの作品の源なのだとして、
こちらもそれをわかった上での鑑賞であれば、
もうちょっと楽しめたかも。笑


● キャラクター
甘えん坊の4歳児、くんちゃん。
いやーこの年頃の男の子はかわいいですね(*´Д`)ハァハァ

だけど、わがまま全開、駄々っ子全開。笑

愛するには、
難しいキャラですw

お母さんもお父さんもたくさん出番がありますが、
よくある両親キャラだし…。

未来ちゃんはかわいかったですが、
かわいいというだけで、特別なインパクトもないし…。

キャラで評価できるのは、
ひいじいちゃんぐらいかしら?

馬もバイクも乗りこなすひいじいちゃん、かっこよかったわー!
彼の起こした奇跡も素敵♪

cv.福山雅治なのは、気付きませんでした。
エンドロールで驚いたw


● 音楽
【 OP「ミライのテーマ」/ 山下達郎 】
【 主題歌「うたのきしゃ」/ 山下達郎 】

どちらも、なんだか懐かしさを感じるメロディ。

穏やかな2曲で、
この作品にも合っていたと思います♪

私は主題歌の方が好みかな^^


● まとめ
つまらなさや怒りを感じるほどではないですが、
全体的に平和なストーリーでした。

少なくとも、
「よし、観るぞ!」と意気込んで見るタイプの作品ではありません。

この作品を観終わった頃には、
子どもの成長を大らかに受け止められる気がする…そんな作品でした^^

投稿 : 2025/01/04
♥ : 27

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

不愉快です。クズ夫婦にイライラします。ネグレクトは虐待です。

 マイナス100点。最悪の映画です。

 子育てに大事なのは願いではありません。子供は勝手に育ちます。親の願いで育つことはありません。親ができることは危機回避と背中を見せることだけです。親が子供に願いだすと、それが暗黙でも言葉や表情、行動に現れます。絶対にやってはいけません。元気で健康に育ちますようにですら、病気が見つかったら、障碍者になったら失敗になります。子供のすべてを受け入れなければいけません。
 それで子供が逃げ出したり歪んだりする小説やアニメなんて沢山見てきたでしょう。このアニメは何を考えているのでしょうか。

 子育てに大事なのはスキンシップです。クリエーターで子育てものを作るなら心理学くらい確認しろ、と言いたいです。4歳くらいの男児ならネグレクト(放置)も虐待です。ましてあそこまできつく当たるのって何なんでしょう。陰でいくら愛してるといっても、子供に伝わらなければ意味がありません。何よりスキンシップ、特に母親との肌のふれあいが無い子供は不安定になります。

 母としてなぜあそこまで子供に冷淡になれたのでしょう。嫉妬で新生児に電車を振り上げても自制できる子供が、あそこまで傷ついているのです。我が子を追い込んだ自分を省みることができない、ということは仕事のレベルも推して知るべしです。しかも外に飛び出した子を追いかけもしないで。

 平等に愛情を注ぐように気を付けていてもどうしても妹に手がかかってしまう、という感じが全くありません。完全邪魔者扱いです。何かに気がついたり心配するそぶりも見せません。1場面くらい反省らしきことを言っていますが事の重大さも認識していないし、真剣に悩んでいる風にも見えません。
 入れ替わりで産休に入る人がいたって、子供が大切ならそんなのは会社の責任で何とかすればいいし、在宅だってできるでしょう。自分が全部正解みたいなツラで仕切るな、と言いたいです。

 今の時代ですから、仕事に出るなとはいいません。いや、推奨すべきなのでしょう。が、仕事をやっている奴がそんなに偉いのか?夫の批判をしているけど、お互い様という考え方はできないのか?と思います。
 本当に子育てに優先することが、仕事にはあるんでしょうか。食わなければいけないのはわかりますが、折り合いがつけられないのでしょうか。
 
 夫は夫で、自転車で補助輪を外して頑張っている我が子を放っておいて、あれはないでしょう。母親もフォローもしないし。犬に対しても同じだったということは、そういう性格なのでしょう。生活を考えない使い辛い家を作ったり。

 これって、庭の木が見るに見かねて助けてくれたってことでしょう。父親らしさも母親らしさも皆無です。若夫婦の奮闘記にしても、レベルが低すぎます。そもそも若くなさそうだし。35歳、精神年齢10歳にしか見えません。設定は良く知りませんが。

 まったく感動も感情移入もできませんでした。というか不愉快でした。



22年8月 評価見直し中。極端な評価や感情的な部分を補正。初回見たときの印象と改めて旧作と比較したときの点数の補正など。

 冷静に考えるとあのバイクの爺さんだけはキャラが良かったのでキャラとストーリーにちょっとずつ点数入れます…が、やっぱり良い感情がもてない映画なことに変わりありません。

 なぜかと言えば、夫婦が変わらないで、子供が木の力を借りて自分自身の旅で救済を得たからです。夫婦側でも旅があり何かを悟って間違いに気が付くならいいんですけど。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 7

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

くんちゃん、すきくないの

主人公は4歳の男の子「くんちゃん」。
くん付けで呼ぶと"くんくん"になってしまう危うい名前をつけられた彼の元に、ある日、妹「ミライちゃん」が現れる。
新しく家に来た赤ちゃんに両親はかかりきになってしまい、嫉妬感でイライラが募ってしまったくんちゃんは、妹に癇癪を起こしてしまいこっぴどく叱られる。
誰にも相手してもらえず、わかってもらえない状況に疎外感を感じたくんちゃんは、一人庭に出たところ、自分を飼い犬の「ゆっこ」だと名乗る男が現れる。

幼稚園生の男の子からの目線である一般家庭の情景描写をしながら、新しい家族のあり方と子供の世界の広がりを描いたアニメーション作品。
幼き日の妄想のような異世界が登場し、そこで犬のゆっこや、成長したミライちゃんを名乗る女性と冒険をするストーリーとなっています。
監督は『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』でおなじみの細田守氏で、カンヌ国際映画祭での受賞作品ですね。

ただ、内容は海外においても賛否があります。
子供の目線で家族のあり方を描写し、不思議な冒険に、と書くとシンプルに映るのですが、その実は結構な意欲作となっています。
構成は複雑で、結局言いたかったことは何かがファジーで分かりづらく、かなり哲学的な内容と言わざるを得ないです。
ストーリーが進むとくんちゃんは、両親の子供の頃や自分のルーツ、曽祖父の決意を目の当たりにして子供ながらに"お兄ちゃん"としての自覚を持ってきます。
ただ、過去の辛い時代を知って今は恵まれていると知るというシンプルな話ではなく、やはり最終的には、私にはよくわからない話でした。
興行収入は奮ったものの、世間の評価も今ひとつのようです。

また、その年令の男の子という設定なのでかくあるべきという話ではあるのですが、とにかく、くんちゃんがわがままです。
それは狙いだったのかもしれないのですが、主人公に魅力がなく、多分、多くの人は見ていてイラつくと思います。
一方で、赤ん坊のはずのミライちゃんは、なぜか超絶大人しく、こっちはとてもファンタジーを感じました。
赤ん坊なんて在宅で仕事しているお父さん一人でなんとかなる存在じゃないだろうに、なぜか泣くシーンが殆ど無いです。
ミライちゃん以上にくんちゃんがわがままを言い、仕事中の父の邪魔をして、癇癪を起こして部屋を散らかすので、終始、くんちゃんへのフラストが溜まる作品だったと思います。
反面教材として親が子供に見せるといいのかもしれないですが、やっぱり子供が見てもドン引きするんじゃないかなあと思います。

ラストも結局どうなったのかよくわからない終わり方でした。
一方で、過去作と比較して良かった点として、やっぱり声優で芸能人を起因しているのですが、今回はそれほど違和感を感じなかったですね。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 2

70.7 3 親子で冒険なアニメランキング3位
ONE PIECE FILM RED(アニメ映画)

2022年8月6日
★★★★☆ 3.8 (112)
416人が棚に入れました
世界で最も愛されている歌手、ウタ。素性を隠したまま発信するその歌声は“別次元”と評されていた。そんな彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催される。色めき立つ海賊たち、目を光らせる海軍、そして何も知らずにただ彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味、ありとあらゆるウタファンが会場を埋め尽くす中、今まさに全世界待望の歌声が響き渡ろうとしていた。物語は、彼女が“シャンクスの娘”という衝撃の事実から動き出す。「世界を歌で幸せにしたい」とただ願い、ステージに立つウタ。ウタの過去を知る謎の人物・ゴードン、そして垣間見えるシャンクスの影。音楽の島・エレジアで再会したルフィとウタの出会いは12年前のフーシャ村へと遡る。
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

父として娘として

賛否両論ある劇場版ですね。

ワンピースのアニメって結構引き伸ばしが多いのです。
原作の1ページや数コマを30分で引き伸ばしたりなど、そうした点を見ると劇場版はそうしたのがなくサクサク進むのでワンピースの劇場版って結構好きです。

因みに、この劇場版は……現在のワンピースがワノ国編を最後に最終章に入ります。
その切り替え時期であり、原作でも謎が多いシャンクスがピックアップされてる事で物語の伏線になっているかもしれないって意見も多く重要な劇場版との噂ですね。

さて、今回の映画は……前回のスタンピードに比べると勢いや戦闘シーンや出演キャラに劣る今作では、海軍の3大将にビッグマム海賊団にCP0、ローやバルトロメオやコビーなども登場します。

アドの歌が話題を呼んでいる作品ですが、歌は個人的にはあまり……これは正直、ファンの方やこうした演出が好きな方には受けるかもしれません。

でも、私は普段アニソンを聴くか、サムネを見て貰えたら解る通りナナニジの曲とか聞いていているだけなんで、私には曲は刺さらなかったですね。
ファンの方、ごめんなさい(><)*。

ライブシーンもよくは動いてました。
しかし、これも好みで普通にアイドルアニメのライブの方が好きかな?

後、今回はワンピースに何を求めるかで評価事態が大きく左右する気がします。
全体的な印象としてはワンピースらしくはない気がします。

しかし、今回は考えさせられた部分や感動する部分もあり感情移入をしてしまう。
物語は凄く刺さりました。
ワンピースらしくはないけど、親子がテーマの1つであり私には新鮮でした。

劇場版のキーキャラのシャンクスの娘のウタ
彼女のポジションに驚いたのです。
{netabare} まさかのルフィ達に対立する立場として出て来ます。 {/netabare}

{netabare} 今作には敵と言うのが明確に存在しません。まっ、敵と言うなら魔王?
ウタも敵のような演出なんですが、中々憎めないキャラでした。{/netabare}

海賊に居場所や家族を奪われたり、海軍にも助けて貰えない民間人達が幸せを感じられるのがウタの歌です。
彼女の歌に心を救われた民間人達は、やがて彼女に依存してしまう。

{netabare} そんな彼女が沢山の人の救いに答えようと取った手段が彼女の能力世界に自分の歌を聞いてくれる人達を閉じ込めて何不自由ない平和な夢世界で幸せに生きてもらうと言う選択肢でした。

民間人が平和な世界を望んだから!
仕事や勉強をしないで生きれる世界を望んだから!
何不自由ない世界を望んだから!
彼女の歌をずっと聞いていたいと望んだから!{/netabare}

彼女は……気持ちに答えたかった。
でも、それを知った民間人は「帰りたい」と言う……あれだけ嫌がって居た現実世界に!

ウタはまた悩んでしまう。
{netabare} だから何も考えないでいいように更に楽しくなればと!
民間人を夢世界でお菓子や人形に変えてしまう。{/netabare}

私も思います。
自分達が望んで後から現実世界に帰りたいなんて勝手過ぎるって…
皆が望んだから力になってあげたかったのに……

でも、違う……
確かに平和な世界で争いもなくて病気もしない世界で一生遊んで暮らせるのは素敵だし幸せの1つだと思う。

けど、{netabare} ウタがした事はただの幸せの押し付けです。
自分の思う幸せに沢山の人を閉じ込めて守ってあげるよって幸せを押し付けて…… {/netabare}
もぅ……それは幸せじゃないよ。
{netabare} 幸せは押し付けたり押し付けられたりするもんじゃないもの…… {/netabare}

{netabare} 現実世界のウタが眠ってしまうと能力がリセットされ夢世界から民間人が現実世界に戻ってしまう。
皆の幸せを守る為に、現実世界のウタはネズキノコと言う眠れなくなるキノコを1人で食べるだけの日々を送ってました。{/netabare}

睡眠をしない彼女は近々死んでしまう……
{netabare} でも、彼女は死んでもいいと考えてます。
何故なら彼女が死んだら夢世界は永遠にキープされ全員が夢世界で一生暮らせるから。{/netabare}

私には彼女が{netabare} 死を覚悟してまでも誰かの幸せを守ろうと1人寂しそうにキノコを食べる姿に心が締め付けられました。{/netabare}
こんなにいい子なのに道を間違えてしまった……きっと彼女は優し過ぎたのだ……
だから、私はウタに同情してしまいました。
きっとこの子も被害者なんだ……

彼女はシャンクスに捨てられた過去がありました。
その理由はシャンクスが親だから選んだ選択肢でした。
大人は子供に事情を知らせないで勝手な事をする。
子供の為に例え恨まれようが、嫌われようが……

子供の頃は私にはそれが解らなかった。
多分、子供の私が見たら大人は勝手だ!何も説明しないで子供の為だとか言う言葉で蓋をして!
子供だって真実を知りたいし理解したいし納得したいんだって……力になりたいって。

でも、少し大人になった私には解る。
子供の気持ちは解る。
大人だって昔は子供だから……
それがわかった上でも知らなくていいんだ。
子供に悩んで欲しくないし心配かけたくないんだ。
不安も心配も悩みも抱えなくていいんだよ。
そんなものは成長すと嫌でも悩んでしまう日がくるから、その時までは、元気に楽しく遊んで欲しいって思う。
その方が楽しいでしょう?って

だから、シャンクスも{netabare} ウタに事実を隠して自分が憎まれ役になりながら元気に歌っていて欲しい。
いつか海の上で元気な彼女の歌声を聞くのを楽しみにして選んだ選択肢なんだと思いました。{/netabare}
親だから大切な子供だから別れたのだと。

ルフィはウタの友達で幼なじみ。
{netabare} でも、ルフィは最後までウタを攻撃する事はしませんでした。
「戦う理由がねぇ」彼のセリフですが、ルフィは解っていたのでしょうね。
ウタが間違えた方向に進んでいる理由も彼女が誰よりも優しい人間だと言う事を。{/netabare}

そして、ついにウタの前現れたシャンクス。
{netabare} でも、彼はシャンクスや赤髪海賊団はウタを攻撃しません。
ウタは現実世界の民間人の身体を使い赤髪海賊団に攻撃させますが、シャンクス達は何もしません。
攻撃も防御もせずにひたすら殴られ続ける。

多分、それは痛くないからです。
シャンクス達のした事って大人としては正しいと思います。 {/netabare}

しかし、親としては間違えだと思います。

{netabare} 例え子供の為でも、そこにどれだけ正当な理由があろうと、ウタを子供を置いていくなんてやってはいけない事です。
そうする事で本当に傷ついたのはウタでした。
ウタの心の傷に比べたらどれだけ痛くないか……彼女の心の傷は……痛みや悲しみや寂しさや辛さの方がどれだけ痛いだろうか?{/netabare}

多分、シャンクス達はそれが解るから親として当然の報いである思っているのかもしれません。
ウタも1年後にはシャンクス達の秘密に気づいていたみたいですが、それでもシャンクス達を許せなかったのでしょうね。
だから、シャンクス達は少しでも気が済めばと考えたのかもです。

{netabare} そんな中、海軍が一般人に発砲します。
ウタは夢世界では最強ですが、現実世界では血が流れすぎない様に泣きながら両手で止血するしか出来なくて……
夢世界でも発砲シーンはありましたが、それは直ぐに直せてたけど {/netabare}
やっぱりウタの現実世界の姿を見たら、この子は本当に優しい子なんだと感じました。

赤髪海賊団の{netabare} 「大事な娘の大切な人達を奪わせない」 {/netabare}ってカッコイイ理由だなぁ〜と思いました。

そうして、ウタの歌声によりトットムジカ……
{netabare} 魔王が降臨。
魔王はかなり巨大でしたね。
デザインはなんか……変な人形みたいな感じで魔王感はありませんねww {/netabare}

しかし、この巨体に総力戦で当たります。
巨体だとアニメだとスリラーバークのオーズ以来かな?
あれよりもかなり迫力ありましたね。

アニメでは過去にない連携ですね。
作戦組んで指示通りに攻撃はなんかワンピースの戦闘の中では新鮮味がある気がしました。

今回はシャンクスとウタの親子の絆もそうでしたが、もぅ1組…… {netabare} ウソップとヤソップですね。
この親子共演は初ではないでしょうか?
最初は指示出しがウソップが若干遅れ気味でしたが、段々とタイミングが重なり始めるのに親子の力を感じました。 {/netabare}

最後のルフィの攻撃とシャンクスの攻撃。
シャンクスは父として、ルフィは友達として……
私はこの作品を見るまで、もしも誰かが道を謝れば止めるものだと思っていました。

だから、最初はルフィもウタを止めるために説得していたしシャンクスも娘を止める為に来たのだと思っていました。

しかし、止める、では50点です。
{netabare} 「娘を救いに来た」{/netabare}とシャンクスが言ってました。

間違えた時に止めるだけでは意味がない。
{netabare} 救う事に意味があるのだと。{/netabare}
止めると間違えた道は進まなくなるけどそれだけ……

{netabare}救う事が出来るなら別の道へシフトさせてあげられる。
苦しんで悲しんで選んだ道ならそうした事から救い出すのが、家族であり友達ではないでしょうか?{/netabare}

だから、ルフィは{netabare} 友を救うために{/netabare}
シャンクスは{netabare} 娘を救う{/netabare}為に
一撃を放つ。

シャンクスはウタに薬を渡す。
{netabare} それを飲めば眠りにつきウタは死ななくてすむ。夢世界の皆も帰ってこられる……でも、夢世界に心が囚われているとウタが寝ても能力がリセットされずに皆が出られなくなります。
{/netabare}

シャンクスは多分…… {netabare} それでも薬を飲んで生きて居て欲しかったと思います。
やっぱり血の繋がりはなくても父親であり娘だから生きて欲しいって…… {/netabare}

でも、ウタは歌いたいと言う

皆を現実に呼び戻す歌を……
{netabare} 自分の命よりも皆を優先してあげられる。
夢世界が皆の幸せだと勘違いした彼女の姿はどこにもなくて…… {/netabare}

争いばかりで平和な世界じゃなくても、悩みながら苦しみながら時には道を踏み外して、泣きたくても泣けない事もあれば、泣くしか出来ない様な、今日もどこかで泣いたり命を落としたりする様な救いようのない世界にも、幸せはあって……
そんな世界だから幸せを強く感じたり出来るのかもしれませんね。

だから、彼女は歌う。
{netabare} その決意にシャンクスは何も言わない。
娘の決意を尊重する姿も親として姿を感じる事が出来ました。{/netabare}

歌の後に海軍がウタの引渡しを要求してくる。
{netabare} シャンクスは娘を守る為に覇気で海軍大将以外を気絶させるし、黄猿や藤虎もビビるらせるレベルでした。
戦わずして勝つ!とはまさにこの事ですね。{/netabare}

ウタは争いを嫌うから…… {netabare} シャンクス達からは仕掛けないけど、ウタを連れていくなら容赦はしない。{/netabare}
シャンクスらしい決意ではないでしょうか?

最後は……多分、ウタは…………

EDは止め絵でしたが{netabare} 懐かしい場所やキャラが沢山出ていたし、ウタの歌がどれだけの世界の人に聞かれて居るのかが良く伝わるEDで{/netabare}よかったですね。

最後まで見ると誰も本当は悪い人なんていなくて……
守りたい者の為にそれぞれが戦ったのだと感じました。

今回のテーマは「親子」「幸せ」ではないでしょうか?
親子の絆の強さや形、誰かにとっての幸せとは?など沢山沢山考えた作品でした。

ワンピースは人気作品で感動の名シーンも多いと聞きます。
でも、私はワンピースで良い話だなぁ〜くらいの感じは経験ありますが、感情移入や泣きそうになる事はありませんでした。
多分、ファンの方がキレてしまう発言でしょうね。(このレビュー1つで私色々なファン層の方に怒られそう……ごめんなさい)

しかし、私はそれくらいに今作は感動するものがあったと思います。
正直、最初はあまり期待してませんでした。
スタンピード程の人気キャラのオールスターでもないし注目はシャンクスくらいでキャラが全体的に弱いと思ってましたので、しかし見終わってここまでの物語に仕上げて来たのかと関心でビックリしてしまいましたw

また、見たくなる様な話でしたね。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 10
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

海賊アニメとしても音楽アニメとしても異色

【まえがき】
ひとり語り多めの長文なので折りたたみw
{netabare}『ONE PIECE』は私にとってはハマる要素が多いはずなのに何故か入り込めない不思議なコンテンツ。
原作未読。劇場版鑑賞は本作が初めて。TVアニメも10年以上観ていないはず。

私は『パイレーツ・オブ・カリビアン』全作観る程度には海賊好きですし、
昔、観たエピソードも弱きを助け強きを挫く王道で、感動的だとも思いました。
が、キャラデザが合わないのか、
にしても涙腺脆すぎでしょ?啼泣だけが泣きじゃない。との感性の違いなのか。
観てはハマり切れずを繰り返す内に、自分は『ワンピ』とは縁が無いのだろうと距離を取っていた感じ。

だから私も最初はAdoさんが歌唱した本作の主題歌を耳にしても「うっせぇわ」って感じで聞き流していたのですが、
聞いている内に段々とウタに洗脳され、この歌かっこいいな♪となり、
脳内でヘビロテする中毒症状が現れたので、
Dolby Atmosでこじらせてみようと劇場に飛び込んだ次第。

尚、一部で、ウタの歌ばっかしで物語がおざなり。
タイトルや事前情報から、シャンクスが掘り下げられると期待したのに裏切られた。
といった雑音も耳に入った上で、ウタのライブに行くつもりで挑めばいいんでしょ?
と天邪鬼に天邪鬼で返す、捻くれた姿勢での鑑賞となっているのでご容赦下さいw{/netabare}


【物語 3.5点】
監督には谷口 悟朗氏を三顧の礼で迎える。

海賊作品としては異色。
原作者の「伝説のジジィ描くのに疲れちゃった」との意向を汲み(←おいおいw)
ヒロインおよび敵役でルフィの幼なじみの歌姫少女が「ルフィ、海賊やめなよ」と、
“大海賊時代”を否定する“新時代”の理想を語ってくる異例のシナリオが展開。

ベクトルの違うウタの能力には、
作品世界の序列やセオリーをリセットするシナリオ効果があり、
従来の能力インフレ下では出番無さそうなキャラにもワンチャンあり。
オールスター企画との相性は良好だった印象。


音楽アニメとしても異色。
通常、音楽で押す作品を観たら、やっぱり音楽っていいな~♪となる単純な私ですが、本作の場合は
{netabare}大海賊時代で疲弊した一般市民の想いを代弁したウタが、歌の力により、
ライブで感じる幸せが永久に続く、ウタウタの精神世界に人々を連れ去ろうとする攻防。{/netabare}
というプロット。
私もライブ会場からの帰り道、これ終わったら現実に戻るのか……と抱いた寂しさを思い出してみたり。
近年、動画配信等で、面倒なリアル社会との関わりを飛ばしてアーティストが才能をダイレクトに世界に広める良い時代になったなぁ~と思っていましたが、それも度が過ぎると考え物だなと思い直してみたり。
こんな苦い余韻が残る音楽アニメはチョット記憶にありませんw


構成は冒頭いきなりウタのライブ→寸劇→ライブと続く。確かに歌の猛攻w
ただライブばかりで物語が削られているというのは少し感覚が違うと思いました。
ウタの歌はウタウタの実の能力であり、ライブシーンは言わば戦闘エフェクト。
アクションアニメで技が飛び交うのは自然な成り行き。
『マクロス』でも視聴する感じで挑めば折り合えると思われます。

とは言え、キャラめっちゃ多いな~と思ったのも事実(苦笑)
どちらかと言えば、ウタも含めたキャラたちの能力描写に物語の尺が食われる、
お祭り作品あるあるな感覚の方がシックリくるかと。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・東映アニメーション

ライブ空間を再現した劇場体験には臨場感があり、
鑑賞者もウタウタの世界へと誘う引力があります。

それ以上に、本作は現実とウタウタ双方の世界にまたがるファイナルバトルの作画は、360°法則無視。
諸々の境界が溶けて行くようなフリーダムな作風。
これなら、{netabare}ルフィがシャンクスに再会したら麦わら帽子を返してシリーズが完結してしまう
というジレンマも越えて“共闘”も可能ですw{/netabare}


【キャラ 3.5点】
今回はシャンクスより“娘”のウタの話と開き直るのは良いのですが、
ウタの物語として見ても、シャンクスの掘り下げ不足と感じます。

(※核心的ネタバレ){netabare}ウタを傷付けないために真実を隠し罪を被ったという点。
ゴードンは真実を告げる勇気がなかった大人の弱さとしても、{/netabare}
シャンクスはそこまで弱い海賊なのかな?という疑問が残りました。
この辺りについてはルフィの幼馴染としてのウタより、
“シャンクスの娘”としてのウタの描写により力を入れることで、
シャンクスの“父性”の詳述から、彼の言動の真意を理解することで、納得したかったです。
具体的には20歳のシャンクスおよび赤髪海賊団にウタが愛されていく過程がもっと欲しかったです。


【声優 4.0点】
ヒロイン・ウタ役は名塚 佳織/Adoの演者と歌い手の分担。
クセのある歌い手にいたずらっぽい声質で合わせる名塚さんの対応力が光る。
ルフィに対する「でたぁ、負け惜しみ~」には、
幼少期から外の世界と隔絶されて育ったウタの変わらぬ無邪気さと狂気性が混在しており印象深いです。

ウタの育ての親・ゴードン役には津田 健次郎さんを据え盤石。
脇に置くべきゲストタレントを重要キャラに起用する間違いは犯しません。


ルフィ役・田中 真弓さん、シャンクス役の池田 秀一さんなど、
他作品では、失礼ながら流石に往年のパワーはない?と感じることもあるベテラン声優陣ですが、
『ワンピ』だと元気いっぱいですね♪
大御所だからとスタッフが遠慮しないこと。作品自体にパワーがあること。
ベテランを活かす秘訣です。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は中田 ヤスタカ氏。同氏はウタが歌う主題歌「新時代」も提供。
ウタの振り付けにはPerfumeでも組んでいるMIKIKO氏を起用し、
タッグでウタのライブシーンの“攻撃力”を磨き上げる。

ウタ歌唱担当にAdoさんと聞いた時は毒キツ過ぎない?と懸念しましたが、
鑑賞後は、天使の歌声から{netabare}魔王の召喚{/netabare}まで振れ幅の大きさをカバーするには彼女の表現力が不可欠だったと納得。
低音域の唸り声には“パンチ力”がありました。

その他、ウタの歌は、
海賊を流儀ごとねじ伏せるMrs. GREEN APPLE提供の「私は最強」
澤野 弘之氏提供の闇落ちソング「Tot Musica」などの挿入歌群。
EDは秦 基博さん提供の「風のゆくえ」で締める全7曲の豪華絢爛な“作曲村”方式。

興収狙うならフェス感があって上策なのでしょうが、
作曲村はテーマの一貫性が保てないと感じ私は正直苦手です。
(自分が中田氏が全部担当したらどうなるか聞きたいだけという説もありw)


【付記】
次『ワンピ』を観るのは何時になるかは分かりませんが、
今度はキャラを絞って伝説のじじぃに挑む無難な海賊バトル作品をチョイスしたいですw

投稿 : 2025/01/04
♥ : 13
ネタバレ

ソース さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

谷口悟朗とAdoを求めて...

自分は「ワンピース」に関して、造詣が深くない。知識は東の海編,映画数本を見たレベルである。しかし、今作が興行収入を伸ばし話題作であるという点,監督が谷口悟朗さんであるという点やAdoさんを起用しているという点など惹かれる部分が多かった為、視聴した。

結論から言うととても面白かった。自分の知識が浅いため、存じ上げないキャラも居たがさほど問題はなかった。



物語序盤はウタがめちゃくちゃ歌うので「あれ?これAdoさんのライブの映画だっけ?」と一瞬思ってしまった。自分は楽しめたが、人によってはもうここら辺で嫌になっている場合もあるのかな〜と感じる。


中盤、 {netabare} ウタの能力が判明するが、この能力がいわゆる「セカイ系」を彷彿とさせる能力であることが分かる。 {/netabare} 正直この展開には驚かされた。ワンピースでこれをやりますか〜という感じ。

自分はVery Good!!と思ったが、ワンピースガチ勢の皆さんの中にはここら辺でう〜ん...という感じになる人がいるのだろうか。

また {netabare} ウタの能力や思想が判明したときに、エヴァンゲリオンや谷口悟朗監督作品で言う所の「ガン×ソード」のカギ爪の男,「コードギアス」のラグナレクの接続 {/netabare} などが脳裏をよぎった。「監督が谷口悟朗さんだから...」と釣られて今作を見た側面がある自分からしたらニヤニヤといったところであった。

00年代に名作を多く作った谷口悟朗監督だからこそ、この展開が出来たのかしら?


そして終盤
{netabare}
・ウタとシャンクスの別れの真実
・胸熱過ぎる、現実世界とウタワールドでのシャンクス達,ルフィ達の共闘
・まどマギを彷彿とさせるトットムジカのキャラデザ(意識してたと予想する)
・「ウタは俺の娘だ。」 by シャンクス
・ウタのラストの歌唱
etc.
{/netabare}

終始激熱で、さらに思わず涙が出てしまう展開もあり...ちょっと舐めてたなと感じた。多少詰め込み気味に感じる部分もあるが、大変満足出来る作品であった。



どうやら賛否両論あるようだが、個人的には今作に何を求めているかで評価がだいぶ変わるよな気がする。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 6

66.0 4 親子で冒険なアニメランキング4位
借りぐらしのアリエッティ(アニメ映画)

2010年7月17日
★★★★☆ 3.6 (663)
3154人が棚に入れました
とある郊外に荒れた庭のある広大な古い屋敷があった。その床下で、もうすぐ14歳になる小人の少女・アリエッティは、父ポッドと母ホミリーと3人でひっそりと静かに暮らしていた。アリエッティの一家は、屋敷の床上に住むふたりの老婦人、女主人の貞子とお手伝いのハルに気づかれないように、少しずつ、石けんやクッキーやお砂糖、電気やガスなど、自分たちの暮らしに必要なモノを、必要な分だけ借りて来て暮らしていた。借りぐらしの小人たち。そんなある夏の日、その屋敷に、病気療養のために12歳の少年・翔がやって来た。人間に見られてはいけない。見られたからには、引っ越さないといけない。それが床下の小人たちの掟だった。そんなある日、アリエッティは翔に姿を見られてしまう・・。

声優・キャラクター
志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、竹下景子、藤原竜也、三浦友和、樹木希林
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

我が家においでませ

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 2回目です。95分くらいの現代ファンタジー。
 「傑作か」と聞かれると「まぁまぁで」と言いたくなるのですが、好き嫌いで言うと結構好きな作品です(悪いところはレビューの下の方にまとめています)。

 スケール感はとても綺麗に表現されていると思います。軒下とその周辺というアリエッティの世界が、家と庭へと拡大して、その先へというストーリー展開に合わせた世界の作り方もいいですよね。小人のいないシーンでも時折不意に入るローアングルが、私たちの知らない世界を見せてくれて、ドキッとさせてくれます。

 甥っ子と遊んだりすると、彼らの住む「膝丈の世界」に驚いてしまいます。腰丈のテーブルの下を走り回り、腰掛けるソファによじ登り。そんな彼らの目線に合わせると、自分たちのスケールで作られた世界のなんと不便なことか。でも、彼らにとってはもともと「そういう風に作られた世界」であって、そんな世界にいることに何の疑問も持ってはいないんです。アリエッティたちも同じですね。
 私たちも以前は確かに「膝丈の世界」に住んでいたんですが、成長とともに気が付くとギャップが埋まっていて、いつの間にか「当たり前の世界」に住んでいる。でも、最後までこのギャップが埋まらないのが、アリエッティたちのいる「小人の世界」です。


ギャップ:{netabare}
 問題はスケールのギャップではなくて、認識のギャップ。

 アリエッティたちは「借りぐらし」をしています。でもハルは彼女たちを「泥棒の小人」と言っていました。
 例え少量でも、返すあてのない無断の借り物は泥棒です。「借りている」と主張する側と「盗まれた」と主張する側の認識の乖離は埋められず、事実は「盗まれている」のです。正に借りパクですね。小人と人間の間には、「取る側」と「取られる側」というギャップが拭えないのです。

 アリエッティたちも同族からは「借り」ないはずです。同族だと罪になるけど、他種族なら「借りる」という言葉を使って「盗む」ことを正当化してしまうのです。
 これは私たちも同じです。私たちも生きるために「殺し食べる」必要がありますが、同族に対しては罪になります。他種族に対しては「いただきます」という感謝の言葉を使って、「殺し食べる」という事実を正当化するのです。
 「借りる」も「いただきます」も罪の意識を軽減するための言い訳の言葉と捉えることができます。善悪の問題ではなく、それぞれがそういう「当たり前の世界」を作り上げているのです。生きるための行動に罪を感じてしまっては、生きること自体が辛くなってしまいます。
 それぞれの異なった「当たり前の世界」が存在していることが、この作品の根底にあります。

 小人に理解を示すショウ。彼ですら二つの「当たり前の世界」を壊し、一つにすることはできませんでした。
 彼は盗まれたものを「わすれもの」とすることで、小人の正当化を幇助しました。でも、これは上から目線のほどこしであって、「共生」ではありません。「取る側」と「取られる側」という一方通行の構図自体は変わらないのです。彼のほどこしを受けることは、アリエッティたちにとっては、自助努力を無くした単なるペット化に等しいものです。プライドのあるアリエッティは受け取りませんでした。

 相容れない二つの世界が出会ってしまったら、ハルのように破壊するか、ショウのように懐柔するか、このいずれかであって、共生は困難なのだとこの作品では語られています。アリエッティパパの言うとおり、「見つかってしまたら離れる」ことが生への道なのです。もののけ姫の結論に非常によく似ています。

 もし、巨人というのがいて、私に餌付けをしてきたらカチンと来ますよ。私はペットになる気はありません。自力で「借りる」ことを選択するでしょう。例えそれが巨人にとっての「盗む」だとしても、です。「悪者なら殴っていい」とまで理論を展開するつもりはありませんが、環境の変化に合わせて、自分を正当化する新しい「当たり前の世界」を作り出してしまうことでしょう。
 もし、我が家にアリエッティが来たら、餌付けしたくなっちゃうけど…見て見ぬふりをしなければいけませんね。餌付けはエゴですものね。ビデオで撮ってこっそり愛でることにします。
{/netabare}

アリエッティの髪型:{netabare}
 アリエッティは髪を上げたり下ろしたりと結構忙しいですよね。

 最初は、初めての屋内探索の日に行っています。日取りが事前に決まっていたこと、衣装替え、髪を上げる、腰のベルトなどからすると裳着(成人の儀式)のアレンジみたいに思えます。14歳ですから妥当な年齢です。裳着は結婚適齢期に入ったという意味も持ちます。アリエッティママが、アリエッティにスピラーとコミュニケーションを取らせようとしていることからも伺えます。

 最後の髪下げはエンディングで、こちらは二つの意味を持ちそうです。
 一つ目は、ショウ(人間)との別離。角砂糖を受け取ること自体は「和解」とか「共感」だとは思います。そして、ヘアクリップをプレゼントするのですが、「あげる」というよりは、「借り物を返した」だけですからね。「盗む」にはならなかったけれど、最後まで真の意味での与える側にはなれなかった、という埋まらないギャップを感じます。「共感」までが限界で「共生」はできませんでした。

 二つ目は、女性化ですね。髪が伸びるとか髪を下ろすというのは、やっぱり女性を感じます。成人の儀式があって、女性化が描かれているので、やっぱり結婚は近そうです。相手は、スピラー…なの? 少なくとも選べるほどは候補がいなそうですけどね。まぁ、選ぶなんて言っているのも私たちの価値観のもとで成立することであって、彼女たちにとっては選べないことが「当たり前の世界」なんでしょうけどね。

 ちょっと話はズレますが、エンディングテーマ中に、スピラーがアリエッティに木イチゴを渡すシーンがあります。この木イチゴの大きさは、ちょうど角砂糖と同じくらいです。角砂糖はカバンにしまいますが、木イチゴはその場で口に含むんでいますよね。こういうのを見るとやっぱりアリエッティは小人側なんだな、と思います。
 スピラーはコオロギの足ではなくて、木イチゴに変えていて、渡す仕草からも思春期っぽさが出ていましたね。
{/netabare}

小人と人間:{netabare}
 冒頭の軒下を駆けるアリエッティには、高い身体能力を感じますよね。で、そんなアリエッティが拍手喝采を送るのがアリエッティパパなんですけど、そんなパパを優に超えていくのがスピラーです。身体能力以上の生命力みたいなものを感じます。
 一方のショウ。心臓の手術に備えて、安静にするためにこの屋敷に来たわけですけど、どんどん弱っていく。顔色が変わらないので分かりづらいですが、胸を押さえるシーンが増えますよね。

 「滅亡する種族」と「繁栄する種族」という大局の対比があるのですが、その中身を見ると少し違う。
 「滅亡する種族」の家庭には逞しいお父さんと活発な子供達がいるんですが、「繁栄する種族」の家庭には、二人の老婆と心臓を病んだ少年しかいないんです。種族という大きな枠で見ると滅亡する側と繁栄する側なんですけど、家庭という局所でみると、滅亡と繁栄が逆転されています。「生きて行く滅亡する種族」と「死に行く繁栄する種族」という構造になっています。
{/netabare}

エンディング:{netabare}
 ショウとの別れのあとで描かれるのは、「生きて行く滅亡する種族」が川を下る姿だけです。
 ヤカンの上で描かれるのはアリエッティとスピラーの思春期です。これはやはり「生きて行く」姿だと思うのです。そして、ヤカンは障害物にも引っかからずに川に沿って下って行きます。この流れに沿う感じとその淀みのなさに、小人という種族の行き着く先の必然性みたいなものを感じてしまいます。やっぱり運命には抗えない「滅亡する種族」なのだろうと実感してしまうです。結局、エンディングテーマ中で描かれているのは、思春期という清々しさを隠れ蓑にした「生きて行く滅亡する種族」の姿なんだと思うわけです。

 エンディングでは、ショウについては何も描かれていません。ショウには不吉なフラグが立っているんですが、そのフラグを壊すところも行き着く先も描かれません。この描かないところがなんとも嫌な予感を受けます。
 「生きて行く滅亡する種族」が「生きて行く滅亡する種族」として説明されている以上、「死に行く繁栄する種族」も「死に行く繁栄する種族」なのではないだろうか、と予測せざる負えません。

 ただ、この予測に対しては二つの反証があります。
 一つ目は「君は僕の心臓の一部」というショウのセリフ。このセリフは、心を奪っていった的なものではないと思います。奪ったのではなく、その逆。補完しただと思います。
 ショウの心臓は、そもそも病んだ心臓・欠けた心臓です。生きることに後ろ向きでした。ここの欠けた部分に、アリエッティのために頑張るという思考が加わって、生きることに前向きになった、というのがショウの持っているストーリーです。アリエッティがショウの生を補完してくれたのです。ショウは生きたいのです。
 二つ目は、オープニングの「僕はあの夏…一週間だけ過ごした」という語り。二日後の手術前に「あの夏」という振り返りはないでしょうから、もう少し先の未来からの語りでしょうね。ショウは生きているんです。

 二つ目の反証はショウの生存を確定的なものにしますが、一つ目の反証は期待できるという程度のもので、反証とは言い切れません。オープニングだけでしか生存を明言しないために、最後の最後でモヤモヤしてしまうのですが、個人的には明言しなくて良かったと思います。最後に言い切ってしまうと、積み上げてきた「生きて行く滅亡する種族」と「死に行く繁栄する種族」という構造を壊す、ご都合主義エンドになっちゃいますからね。
 まぁ語りの時点での生存が確定していたとしても、「死に行く繁栄する種族」の枠から抜け出せなければ、どれほど元気かはわかりませんけどね。個人的には元気でいて欲しいです。
{/netabare}

 何やらこの作品には賛否があるようですが、決して悪い作品ではないと思います。
 テーマが分かりづらいなんて意見もあるようですが、構造をシンプルにしている分、むしろ分かりやすいのではないでしょうか。「(別々のところで)共に生きよう」という擬制的な共生は、もののけ姫が持つテーマと変わりません。一緒にいることに価値を見出しているのではなく、別々のところであっても生きていることに価値があるってことです。「生きろ、そなたは美しい」の精神です。

 で、悪いところがないのか、と言われると残念ながらあります。結構あります。
 以下、文句。{netabare}
 軒下、家、野外と舞台が展開していくにも関わらず、後半になると世界のダイナミズムみたいなものが、むしろ失われていきます。これはホントにダメ。

 私たちの天敵(?)のゴキブリが、小人にとっては天敵足りえないというのは百歩譲って許しましょう。でも、カエルとかネズミとか「外にいる怖いもの」のエピソードに不足しているのはどうなんですかね?チラ見せだけにせずに、外の怖さを感じるエピソードも欲しかった。結局外に出るんだし。

 ディティールへのこだわりが強いのは分かるのですが、なんにも効果を持たずに、綺麗なものの列挙で終わっちゃうのもいただけませんね。例えば、アリエッティ一家の三人が使っているマグカップのデザインは、ハートダイヤクラブなんですけど、スペードはありません。スペードをショウかスピラーに担わせておけば、とかね。描いたものを活かそうという視点には欠けています。

 あと人物描写。感情にもうちょっと溜めが欲しい。唐突な感情爆発が結構多いです。感情爆発自体は構いませんが、そこに至る過程があまり良くありません。人物の掘り下げもちょっと足りない。
 最後にアリエッティ。あんなに楽しそうだったアリエッティが、罪の意識に苛まれて後半はほとんどふさいだ顔。最後の最後はハツラツとしたアリエッティが見たかった。
{/netabare}

 酷評してもおかしくないんですが、脚本が宮崎駿だけあって、骨子自体は悪くないと思います。アニメ作品としての表現の部分が今ひとつなだけで。ただ、観察眼は良いと思いましたし、水関係の描き方はホントに素晴らしい。なによりアリエッティがかわいい!全てを許しましょう!


対象年齢等:
 私が一番重視しているのって対象年齢なんですけど、この作品はちょっと厳しい。
 言葉の選び方やキャラクター(昆虫とか悪役)の使い方は子供向けっぽいんですよね。でも、「借り」の概念を伝えるエピソードに乏しくて、子供への説明は足りてないように思えます。大人向け、というのも粗が目立って難しい。
 子供が見ても分かるように説明するか、後半のエンタメ要素を増すかのテコ入れは必要でしょうね。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 6
ネタバレ

セレナーデ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」の不自然さ

「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」
自分としては、冒頭5,6分にアリエッティママが放ったこのセリフで全てが決したといっていい。この一言で本作への期待値がスゥーっと下がり、その後の展開も期待値に背反することなくエンディングを迎えたのである。引きの強さを感じた場面も少しはあったのだが、総じて言うと、予感した通りの低空飛行シナリオであった。
それくらい、ママの一言はある意味象徴的といえるものだった。

◆「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ。」の不自然さ

このセリフ、一言で言うと説明くさいんである。

そのセリフが発せられたのは、アリエッティが外界から帰宅した直後。まだ外界の危険性を熟知していないアリエッティの活動的な行動を、アリエッティママが心配し、諭すシーン。

そのシーンでは、「外界の生物が小人にとって脅威となることは、小人の世界での社会通念である」という情報を発信している。つまり、人間にとっては特別注意を払う必要のないカエルや猫のような小動物も、小人にとっては命を脅かす存在であり、そのことは小人の世界では常識だ、という世界観を、アリエッティとママとの会話で「表現」しようとしていたわけである。

・・・・・・であるのだが、カエルや猫が脅威的な存在である世界観において、心配の言葉をかけるなら「カエルや猫だっているのよ?」とかそういう親身な言い回しが自然と思う。

そこのとこ「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」という一言は、作品が持つ「小人にとって外界の生物(小動物)は脅威である」という世界観を「描写」するのではなく、視聴者に「説明」しようとしてるようなマインドが感じられる。

シナリオの文脈ではさも「自然に発せられた咄嗟の一言」のような口跡だったけれど、視聴者を意識しすぎてる香りがして、観てるこちらとしては、ナチュラルな一言には感じない。

しいて例えるなら、免許とり立てでいざこれからドライブにいかんとしてる息子に注意を促すとき、本来なら「気をつけて走りなよ」とか「右折には気をつけるんだよ」と目線を合わせた物言いをするところを、いきなり「車社会には危険がいっぱいあるのよ」という大上段な諭し方をされたような、ぎこちなさ。

ママのセリフにはそのような、表現として生硬な印象を受けてしまう。視聴者に対し、小人の生活を「見せる」ためではなく、小人の生活を「教える」ために見繕われたような不自然さ、それは、作品世界への陶酔の妨げに他ならないんである。

で、

しいては「そんなセリフがまかり通った脚本」に、後の展開にも一抹の不安を覚えてしまったわけで、個人的な感想の範囲として、その不安は奇しくも的中した形となった。
楽しめれたのは、小人が人間の家宅を探検するときはこうやってるんですよ的な描写くらいで、基本的には予感したとおりの味気なさ。病に苦しみ死を案じていたショウくんのドラマのカタルシスの薄弱さ、樹木希林が小人の捕獲に執念を燃やす唐突さと動機の不明瞭さ、住まいを放棄しざるを得ない宿命を背負ったアリエッティ一家の結末の投げやり感。あと、なんだ、あれとか、これとか、それとか。ともかく、面白くねえなこれ、の連続で。

脚本至上主義者の自分としては、「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ。」には、その面白くねぇなの連続を予感してしまったのでしたとさ。

以下、ネタバレじゃないけど、独り言で。

◆「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ。」は子供向け

{netabare}「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」に対しての考えをもうちょっと言わせてもらうと、こういう説明じみた表現自体は、全然あってよいと思います。

ただ、本作にはやって欲しくなかったな、というだけで。

このママのセリフは、低年齢層向きな手法なわけです。表現としてはかなり直接的で、「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」という言葉と、「小人にとって外界の生物は脅威である」という情報とのリーチを短く表現している。

なんで直接的な表現が子供向きかというと、単純に分かりやすいから。
というより、そうでないと子供に分かってもらえないかもしれないから。

大人は「直接的な表現」でも、対する「間接的な表現」でも対応が可能なわけです。怒った表情で「怒った」と言いながら勢いよくドアを閉めて退室される、柔らかい笑顔で「怒ってない」と言いながら勢いよくドアを閉めて退室される、どちらも”怒り”の表現であると理解できる。

むしろ後者の「間接的な表現」のほうが、残る印象は強いんじゃないかと勝手に推測してます。少々の計算というか、「空気を読む」という作業を通過したほうが、大人は真に迫る説得力を感じられるんじゃないかと思う。

しかし、子供の場合、皆が皆「空気を読むスキル」を有しているとは限らない。人生経験が不十分であるがゆえ、「『怒ってない』と言ってたから怒ってないのだろう」と認識してしまう子がいても不思議ではない。

仮にママのセリフが本当に「カエルや猫だっているのよ?」であったとした場合も同じで、子供によっては、「外にはカエルや猫がいると説く」+「心配する声のトーンや表情、前後の会話の内容など」で、
≒「小人にとって外界の生物は脅威である」と答えを導き出す計算が働かず、「外にカエルや猫がいることをママは教えただけだ」と、そのままの意味で捉えてしまうかもしれない。

つまり、「行間を読む」とか「文脈から察する」と言った高度なリテラシーを要求する間接的な表現方法は、低年齢層のオーディエンスをおいてけぼりにしてしまう危険性がある。

そんなリスクを背負う表現をするくらいなら、素直に「直接的な表現」をした方がいい。怒ったなら「怒った」、悲しいなら「悲しい」、許せなかったら「許さないぞバイ*ンマン!」、外の世界が危険だったら「外には危険がいっぱい」とキャラに言わせたり、叫ばせたり、説明させたりすれば、子供に情報が正確に伝達する可能性はぐんと高くなる。低年齢層向けコンテンツであれば、その手法は極めて真っ当な手段であり、大正解だと思う。

ただ、個人的には『借りぐらしのアリエッティ』が、ターゲットを低年齢層に特化させた作品だとは、ちょっと思えない。低年齢層寄りではあるかもだけど、アダルト層の集客を見込んだシナリオや演出を目指してる姿勢も、なんとなく感じるわけで、本作が劇場版の『ドラえもん』や『アンパンマン』や『プリキュア』と同じ敷居かと訊かれると、感覚的にはやっぱNOなのです。

だからこそ「外には危険な生き物がいっぱいいるのよ」という、お子様向きである純度の高い直接的説明的なセリフには、少々落胆してしまいました。もうちょっと気の利いたセリフにならんかったのかと、そんな気分になりました。{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 9

hiroshi5 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ここに宣言しよう、「小人姫アリエッティー」の方が絶対良かった!

二回見ました、この作品。
まぁ酷評の人が多いと思います。なんせ終わり方が、というか話全体が設定と共に縮小してしまって薄い内容になっていましたからね。

では、なぜこの作品は設定と共に縮小してしまったか、それから結末を回避することは可能だったのかを吟味していきましょう。

この作品で一番面白かったのは初めの30分でしたw
小人という設定、小さい人間から見た世界観、小人の生活スタイルなど斬新なものばかりで興味津々で見入ってしまいました。特に作画。家具など本当にリアルに描かれている部分もあれば、水(水滴)みたいなものは独特な最近のジブリらしいタッチで素晴らしいデキだったと思います。
問題はアリエッティーが子供に見つかってから。ここから小人ワールドから人間を含めた世界を描き始めます。

一つここで疑問。人間の子供を出す必要があったのか。
この作品は人間と小人が共存または敵対する世界を描いています。もしこの作品に人間を登場させなかったらどうなっていたでしょう。全体的なスケールは小さくても、その枠内で壮大な話を展開出来たのではないでしょうか。
例えば、人間を完全に敵と設定することで、もういないと思われていた別の小人たちと小人たち内だけの冒険を始める。スケールは小さくなりますが、ストーリーとしては独特の世界観を維持しながらファンタジー物語を展開することが出来ます。勿論映画としてのメッセージは完璧に変わりますが、視聴者にはこちらの方が受けたのではないでしょうか。

話を戻します。
本編が始まったのは主人公であるアリエッティーが人間の子供と接触してから。ここから映画としての方向性が見えてきて、世界観も一気にファミリアーになります。
さて、今作品での最大の問題は世界観を最終的にどっちつかずにしてしまったことです。
人間の観点から見るのか、小人の観点からこの作品を描くのか。
人間の観点になると、病で元気をなくしている男の子が小さいけど頑張っている小人から勇気を得る、生きる意味を知るといったテーマになります。
小人視点になると、人間に存在がばれてしまった事から新しい居住地を探す羽目になる。その過程で別の小人たちと出会い、生きていける可能性を見出だす、
といったものになるでしょう。
この二つをごっちゃにするから中途半端な作品になってしまい、結末も曖昧なものになってしまうのです。

では、選ぶとしたらどちらが良かったのか。それは明らかに後者でしょうね。前述したように、世界観はジブリの技によって良く描けているのだから、それを利用する以外はないでしょう。それに病の男の子が誰から生きる勇気を得る、といったパターンはありきたりで斬新さに欠ける。

私がもしこの設定で話しを進めるとしたら、もうちょっと尺を長くして、さらに特殊な能力、「脳内で意思伝達できるテレパシー」なる設定でも追加して、話を一気に世界規模にします。
そうですね、タイトルは「小人姫アリエッティー」でw
初めの20分は小人独特の世界観を描いて、その後すぐ現在の居住地を人間に見つかり新たな開拓地を目指す。その旅路に新たな小人民族と出会い、そこから人間に対抗すべく長年計画を練っていた馬鹿げたシュール小人民族たちの存在を知る(まぁ勿論反乱なんか出来るわけがないんですが)。しかし、主人公の秘められたそのテレパシー能力が開花し、それにより世界中に住んでいる小人たちを集合させ・・・・
この後は想像にお任せしますw反乱するのも良し、友好関係を築くのも良し。劇的最後を迎えるのもありですねw

まぁ要は世界観は良く描けているんだからそれをベースに話を展開させた方が良かったのでは?といったことです。

ここからは二つ目の問題。人間と小人の世界観を合わせた上でのストーリー展開で、あの最後以外の最終を迎えられたのか、というよりあの最後より良いオチは無かったのかということですけど、う~ん多分難しい。
よくよく考えれば、あの終わり方はあの尺と設定にしては良く出来ていると感じてしまう。一応、二人のオチは付いている訳だし(だって後半から突然アリエッティーの旅だけを描くわけにはいかないから。なんせタイトル「借り暮らし」ですからw)、あそこからの発展は不可能。それに人間たちが全面的に協力して新しい居住地を探す旅に出るってのも無理がある終わり方。
だったら、もうあのオチで良いじゃん!ってことになる。

結論、人間と小人の世界観をごっちゃにしたのが全ての間違いだった。

うん。なんかすいません、製作者の皆さん><ホント勝手なことばっか書いて・・・汗

投稿 : 2025/01/04
♥ : 17

66.2 5 親子で冒険なアニメランキング5位
クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝(アニメ映画)

1994年4月23日
★★★★☆ 3.5 (122)
633人が棚に入れました
野原家の嵐を呼ぶ園児・しんのすけは商店街の福引を当て、ひろし、みさえの両親と共にゴールデン・ウィークは南の島のブリブリ王国へ。だがそれは王国の秘宝を狙う秘密結社ホワイトスネーク団の罠だった。何と誘拐されたスンノケシ王子と瓜二つだったしんちゃんは、親衛隊の美人少佐ルルの努力にもかかわらず、ホワイトスネーク団の参謀ミスター・ハブとおかまの部下ニーナ&サリーに連れ去られる。


声優・キャラクター
矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

『殺す!殺す!って、気安く言わないでよ!! 子供が見てるでしょうがっ!!』

劇場版クレヨンしんちゃんの第2作。
1994年公開。

前作は夏休み公開でしたが、本作以降はゴールデンウィークに公開となっております。
よって、本作に限っては前作から1年経たずして公開。
スタッフの皆様お疲れ様でした。

前作は作品紹介も兼ねた作りであったのに対し、今作は今現在では定番の、野原一家が大騒動に巻き込まれ、家族の絆を深めながら立ち向かうという方向性を見出した作品でもあります。
くわえて、ファンタジー色も勿論強いのですが、それ以上に強烈な格闘シーンが目白押しで、こちらも後々に継承されていきました。

あと、記憶にある方も多いかもしれませんが、オープニングはクレイ(粘土)アニメで制作されており、以降こちらも劇場版クレヨンしんちゃんシリーズの定番となりました。
これが毎度、クオリティが高く見ていて楽しいんですよね。



あらすじとしては、福引で「ブリブリ王国」への旅行券を当てた野原一家が、旅客機内で
{netabare}
実はその旅行を画策し、しんのすけをある理由から誘拐する算段を立てていたホワイトスネーク団と対峙し、その陰謀に巻き込まれていくというストーリーです。


本作を見た方なら誰もが感じると思いますが、内容はインディ・ジョーンズとアラジンをクレヨンしんちゃんとして上手く混ぜあわせたような作りとなっています。
特にアラジンへの、オマージュが強いですね。

だからこそ読めてしまう部分も多々あるのですが、本作の魅力はなにより、個性的で魅力的なキャラクターが多いことなのです。


まず、初期からしんのすけを付け狙うオカマの2人組、ニーナとサリー。
この2人が、悪党ながらも人間味があり、しんのすけと行動していく内に心境に変化が湧いていくんですね。
勿論、オカマなりにですが。

当初は、「そのガキを渡しなさい!」と声を荒げていましたが、いつの間にか2人は寝ているしんちゃんに対してこうも言っていました。

「寝顔だけは可愛いじゃない…?」
「寝顔だけはね……。」

この内、サリーの声を担当された塩沢兼人さん(本編ではぶりぶりざえもんの声優)は、後の5作目でも味方のオカマキャラで再登板されています。
実際、オカマっぷりが絶妙にハマってらっしゃいましたからね。
ブチ切れた時の口調なんか怖かったりもして、幼少期はちょっとビビりましたけど。
(塩沢兼人さんに関しては、語りだすと長くなるのでメインの第6作で……。。。)


そして、メインのボスキャラの一人。
逆三角形をまさに絵で描いた体格の、ミスター・ハブ。
俳優として活躍されてらっしゃる中田浩二さんの声の渋さが凄まじく、敵キャラらしい冷徹さを見せ、その圧倒的な格闘術?もインパクト抜群。
のワリに、作中とある場面では真面目にコミカルなダンスも披露する万能ぶりも見せてくれます。

悪党でも、ただの悪党では終わらない。
これが、特に初期の劇場版クレヨンしんちゃんシリーズは強くて、個人的に大好きなところです。


しかしなにより私が個人的に押したいのは、劇場版全シリーズ内でも3指に入る程大好きな女性キャラクター。
そのミスター・ハブと世界の命運をかけて戦う

『ルル・ル・ルル』

ですね。
ブリブリ王国の秘宝を求め、秘宝に繋がる鍵となる王国の王子スンノケシと、スンノケシと全く同じ身格好のしんのすけを連れ去るホワイトスネーク団に対し、王の奪還のために動くキャラクターが彼女なのですが…。
その活躍っぷりは、作中でも際立っていました。

基本的に真面目一本で、見た目もショートカットの(私好みの)綺麗なお姉さんなのですが、どこかズレた感覚の持ち主で、流石の野原一家でさえ表情を曇らせる場面も……。。。。
あげくには、オカマの2人組にまで

「あたし達の方が、よっぽどノーマルじゃない?」

なんて言われる始末。

しかし、いざ師匠(カンガルー)直伝の格闘技を披露すると、その圧倒的強さに惚れ惚れしてしまうのです。
彼女が最終戦で言い放った

「鼻が高過ぎたみたいねぇ、ミスター?」



「殺す殺すって、気安く言わないでよ!! 子供が見てるでしょうがっ!!」

の台詞のシーンは、今でも他のアニメでは中々味わえない程の熱さがあります。
私は、何っっ度見ても痺れます。


王子に対しての、愛情にも似た献身ぶりも良いですね。
終盤では、人間味溢れるニーナとサリーが、ルルのその健気な献身ぶりに涙してしまう場面も…。
しんのすけが絡むことにより

「何笑ってんの?」

「感動してんのよ(怒)」

ってやりとりになっちゃってましたけど…。。。。
{/netabare}


総評として。
本作は、前作同様に子供向け色の強い作品ではありますが、初期10作の定番となる『魅力的なオリジナルキャラと、熱いバトルで魅せる』シリーズの地盤が固められた内容です。

そして、今回の敵はしんのすけの誘拐が目的である為、ひろしとみさえが、しんのすけをどれだけ大切に想っているかが垣間見えるのも良いですね。

勿論、定番のギャグも今作はピカイチ。
スカイダイビングのシーン、野生の猿とのやりとり、誘拐直後のしんのすけの立ち振舞いなど、思い返してもニヤついてしまうシーンが多いです。
初期の作品は毎度毎度、よく90分弱でこの内容をまとめたなぁと感心してしまいます。

総じて前作よりも、大人も子供も一緒にっていうより関係無く、誰もが見やすいエンターテイメント作品になっているかと思います。


ではでは、読んでいただきありがとうございました。

次回作は、第3作「雲黒斎の野望」です。



末筆となりましたが、メチャクチャに格好良く、時にはコミカルな天然さを見せて可愛らしい。
そんなルルの声を御担当された、声優の紗ゆり(さゆり)さん。

後に本編でも、しんちゃんの憧れの女性ななこお姉さんを演じて下さいましたが、2012年に55歳という若さでがんにより他界されました。

今回レビューを作るにあたり本編を見返しましたが、やっぱり最っっ高にハマリ役で、ときめくような声でした。

本当に声優さんは、お亡くなりになってもファンの中で耳に刻まれ生き続けるのですね。

改めて、なんて素晴らしい職業なのだと感じ、こんな気持ちを抱かせてくれたことに、感謝の気持でいっぱいになりました。


◆一番好きなキャラクター◆
『ルル・ル・ルル』声 - 紗ゆりさん


◇一番可愛いキャラクター◇
『ルル・ル・ルル』声 - 紗ゆりさん


◆嫁にしたいキャラクター◆
『ルル・ル・ルル』声 - 紗ゆりさん


◇罵られたいキャラクター◇
『ルル・ル・ルル』声 - 紗ゆりさん

投稿 : 2025/01/04
♥ : 17

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

優れたバトルアクションと脚を楽しみましょう…それだけですけど。

 クレヨンしんちゃん人気絶頂の時期の作品ですね。興行収入も良かったみたいですが、面白さでいえばそうでもないです。他の作品のレビュー用に見返そうと思ったら作品を間違えました。せっかくなのでレビューしておきます。

 小学生向けの活劇ですが、大人が見ても楽しめる水準です。90分なのでテンポがいいので飽きる頃には終わるでしょう。私は大変面白く見た記憶があります。1回限定ですが。今回見返しましたが、10年以上間があると思いますがちょっと辛かったです。(クレしんは不思議なことに、劇場版になると対象年齢が下がる気がします。コミックは大人用、TV版は薄く広くで、劇場版は小学生から中学生までしょう)


 それを補ってくれるのがアクションシーンでしたね。冒頭の賊が侵入するシーンからかなり見せてくれます。人が非常に良く動いています。完全なギャグ体型がヌルヌル動いているのがちょっと不思議な身体感覚ですね。ルル=ル=ルルというヒロインのアクションが良かったです。かなり動いていました。それと御御足を大胆に見せてくれてます。

 ドラえもんもそうですけど劇場版になると女性キャラが急にエロくなりますね?お父さん向け?クリエータがなんか表現したくなる?

 それと作中の地下ダンジョンのようなところのギミックの表現が他からの流用だとは思いますが、見せ方が上手くてここは面白かったです。
 
 クレヨンしんちゃんですから、親子3人の冒険譚ですね。珍しく幼稚園組が全く登場しませんでした。みさえとひろしが積極的に物語に関わってくるのが劇場版の特徴ですが、本作については解決に夫妻がかかわったかというと、ちょっと脇役感が強かったですね。
 加えて夫婦喧嘩を頻繁にするのですが、内容がヒロシがみさえに状況を作った責任を押し付けるような攻め方をしていました。これが結構不愉快でしたね。モラハラ…覆水盆に返らず…うーん。時代ですかね。LGBT的な表現もちょっとスレスレでしたね。

 牽強付会的に友情とか欲というテーマが付けられなくはないですが、まあ、童話的な寓意が若干ある程度です。

 
 ブリブリ大魔王…ブリブリ左衛門ではないですが、やはり塩沢兼人さんがよかったなあ…他の役で出てるのにもったいない。やっぱりマクベの声だからいいと思うんですけどね。

 OPのクレイアニメはやっぱり良かったですね。今は3Dですからね。貴重です。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 6

AKIRA さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

インディ・ジョーンズ風のアクション映画

当時はハイグレ魔王と雲黒斎の中間で地味な印象でした。

まだ劇場版2作品目ということもあり方向性が決まっていなかったと思います。

覚えているのもルルくらい… 見たのが昔ということもあるかもしれませんが全体的にパンチが足りなく地味な印象でしたね

投稿 : 2025/01/04
♥ : 4
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