Witch さんの感想・評価
4.5
今では貴重種?! 「2クールもの」の重厚なダークファンタジー
【レビューNo.25】(初回登録:2023/2/1)
コミック原作の2007年作品。全26話。
(ストーリー)
人を喰らう「妖魔」が存在する中世ヨーロッパ風の世界。
その妖魔に対抗するために生み出された「半人半妖」の女戦士「クレイモア」。
そんな女戦士の一人「クレア」の復讐劇を中心に、大剣を武器に敵をなぎ倒し、彼女たちが背負う
過酷な運命に抗いながら懸命に道を切り開いていく姿を描いたダークファンタジー作品。
よく言われることですが、「ベルセルク」の影響を色濃く受けている印象ですね。
(評 価)
・入念に作り込まれた世界観
ここまでのネタバレは本位ではないのですが、これを知らないとこの作品の良さが伝わらない
かなっと。以下特大ネタバレ
{netabare}
・クレイモアは人の喰らう妖魔に対抗するために生み出された「半人半妖」の存在。
(人間に妖魔の血肉を埋め込み製造。自らの意思でクレイモアになったのはクレアだけ?)
それを生み出したのが「組織」と呼ばれる存在。討伐指令やその際の部隊編成も管理。
(組織は街から妖魔討伐の依頼を受け、報酬を受け取ることで資金稼ぎをしている。
ある意味彼女たちはその道具)
白いアンダースーツに鉄の鎧、白いマントを羽織り、背中に大剣という装備。
妖魔の力が宿しているため、平素でも高い身体能力と回復能力を有している。
そして「妖力解放」することにより更に能力を向上させることもできるが、使いすぎると
人間の部分がなくなり、「覚醒者」と呼ばれる妖魔の上位種族に「覚醒」してしまう。
・クレイモアは女戦士のみ。かつては男戦士もいたが、男戦士はすぐに覚醒してしまうので、
今では製造されていない。
・この国の47地区に担当のクレイモアが一人づついる。それぞれのクレイモアには1~47のNo.
が付与されている。これが強さの序列を表す。クレアはNo.47つまり最弱。
(通常は一人で戦うが、敵戦力の強さに応じて召集され部隊を編成する)
・敵は妖魔の他に強敵ぞろいの覚醒者、時に組織も(組織に不要な)クレイモアの抹殺を画策。
このように彼女たちは強制的に戦うことを宿命づけられた上、時に覚醒する恐怖に怯えながら、
組織の裏切りにも神経を配るという過酷な運命を背負っているのです。
また上述の通り装備や妖魔を始め全体的に色彩を抑えた作画により、さらにこの作品のダーク
さを演出している感じですね。{/netabare}
・安定の王道展開
ストーリーとしては妖魔や覚醒者との闘いを描きながら、クレアがクレイモアになるきっかけや
他のクレイモアの掘り下げ、そして彼女らとの共闘を通して絆の深めていくといった王道展開。
作品のキモとなる大剣を武器に妖魔たちと渡り合う戦闘シーンはスピード感・迫力があり、主要
キャラには独自の必殺技もあり、十分に見応えがある作りになっています。
(敵味方問わず「手足が飛び、串刺しで血しぶきドバーッ」といった描写は日常茶飯事なので、
グロが苦手な方にはちょっとキツイかも)
また不安の共有や仲間のために命を懸ける熱い展開、死にゆくものの思いを受け継ぐ等のヒュー
マンドラマは、「半人半妖」という存在に苦悩しつつも「自分たちは人間でありたい」という彼
女たちの思いが痛いほど伝わってきて、感情が揺さぶられるものがあります。
・評価が分かれる終盤のアニオリ展開
当時はまだ連載中という事情もあったのですが、原作ファンからは強い不満の声があるようです。
私は原作未読なのでどこまでがアニオリかはわからないのですが、個人的にも終盤にいくほど雑
になっていく展開はマイナスポイントではありますね。
以下特大ネタバレ
{netabare}
・敵との戦力差がありすぎて絶望感しかない→ 一方的な展開にクレイモアの存在意義って?
→ クレアの「覚醒」による大幅戦力アップで解決→ 他のクレイモアが更に空気
ちょうど「ドラゴンボール」が、悟空だけがスーパーサイヤ人とか覚醒チート野郎になって
今まで皆で積み上げてきたものは何だったのか?みたいな。
(そもそも勝算0という無謀な討伐指令を下す「組織」の思惑がなんだかなあって・・・)
それにインフレ感出すために戦闘シーンが力押しみたいな感じになって、それまでの細やか
な描写がなくなってきたのもねえ。
また復讐劇(プリシラ戦は完全アニオリ)のその結末にも不満の声が多いみたいですね。{/netabare}
女性キャラが多数登場するにもかかわらず、そこに「萌え」や「色気」といった要素は一切なく、
過酷な運命や救いようのない絶望感等、終始陰鬱な空気が延々26話まで続くという・・・
それこそ「進撃の巨人」位原作に話題性がないと、今の時代ここまで重厚なダークファンタジー
を「2クール」かけて作ろういう機運はなかなか生まれないのではないかなあっと。
それだけに本作はダークファンタジーの世界を十二分に堪能できる貴重な作品といえるでしょう。
(ただ今のアニメ世代だと、戦闘シーンや回想・ヒューマンドラマ等長くくどいと感じるかも)
あとOP/EDもかなり「アニソン」って感じでよかったです。
OPのロックのリズムで高揚感を煽り作品に入り、EDで彼女たちの悲哀感を演出して締めるという。
(EDタイトルが「断罪の花」っていう時点でもうねえw)