嫉妬アニメ映画ランキング 20

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の嫉妬成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年02月02日の時点で一番の嫉妬アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

81.6 1 嫉妬アニメランキング1位
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(アニメ映画)

2007年9月1日
★★★★★ 4.1 (1766)
10552人が棚に入れました
かつて地球を襲った大災害・セカンドインパクトにより、人類はその半分が死に至った。幾ばくかの年月が流れ、その大惨事より復興しつつあった人類に、突如として使徒と呼称される謎の生命体が攻撃を仕掛けてきた。
国連の下部組織である特務機関NERV(ネルフ)は、極秘に開発されていた汎用ヒト型兵器人造人間エヴァンゲリオンによって襲来する使徒を迎え撃つ作戦を開始する。NERVの司令官である碇ゲンドウは、14歳の息子「碇シンジ」にエヴァンゲリオン初号機のパイロットになることを強いる。

声優・キャラクター
緒方恵美、林原めぐみ、三石琴乃、山口由里子、立木文彦、清川元夢

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

自分は誰?どこにいる?何すればいいの?時代の気分を見事に描きました。

 TVシリーズ視聴が前提でしょう。一応筋は通りますが言葉足らずです。ただ、本シリーズほどのメジャー作ですから別に気になりません。

 時間が短い分、なぜエヴァがこれほど人の心をつかんだのか、が良く分かる作品だと改めて思いました。

 シンジは14歳という親離れが始まる年齢です。でも、母はおらず父から離れて暮らしているのでその前提条件が整っていません。
 これは、親が不在になった、つまり家族の分断の気分に非常にマッチしています。ウォークマン(携帯用のカセットテープの音楽再生用機器)が何か象徴していた気がします。そして、留守番電話です。家庭に留守番がいない。帰っても人がいない家。
「知らない天井」は、自分がどこにいるかわからない。あるいはどこにいても一緒だということ。

 これが、エヴァのTVシリーズが経済的な豊かさによって、家族の消失が始まった1995年の気分にものすごくマッチしていたのではないでしょうか。

 そして、エヴァに乗れ=進学校に入れ…普段はコミュニケーションとらないくせに、いきなりそう言われた、みたいな無茶ぶりにも見えます。家出したい気分。でも行動範囲は限れれていて、大人の手の平の上。

 テストの点を取る=使途に勝利しても文句を言われる。もちろん、ミサト側にも言いたい事はあるのはわかりますが、理屈のすれ違いが感じられます。大人と言葉が通じない。じゃあ、一体何をすればいいの、と叫びたい気分です。

 思春期の性的な興味の部分はまだ序のパートではあまりクローズアップされていません。

 本作の締めくくりのレイへの言葉。「ほかになにも無いって言うなよ、さよならなんていうなよ」は、自分と同じものを見出したのではないかなあと思います。だからレイに惹かれるのでしょう。

 このシンジの描かれ方が、とにかく当時の自分の空虚さ、身の置き所のなさをモロに表現していました。ロボットに乗るのは、アニメの主人公はヒーローじゃなきゃいけない、ではなくて、ヒーローも等身大の人間だ、逃げ出すし、泣くし、どうでも良くなるというのを描けていたからだと思います。
 ただ、恐ろしいことにエヴァ人気が続いています。この気分に私たちは結末がついていないのかもしれません。


 序におけるもう1人のメインキャラはミサトだと思いますが、彼女のシンジに対する接し方は、大人としてシンジを導く、育てる、包容力で包み込む、明るい家にしなくちゃ、という役割に押しつぶされそうな「無理」を感じます。

 母として、教師としての役割。大人を代表しなければともがくミサト。核家族化から更に進んだ家族の分断で、どうやって子供と接したらいいかわからない大人でもありました。

 この論点はあまり見ない気がしますが、本作ではそこをクローズアップしようという意図が見られます。


 エヴァのアニメとしてのガワの部分は、オタクの夢でしょう。SF的な表現の究極のモノを作りたい、究極美少女を描きたい、カッコイイセリフを言わせたい、カット割りや演出の外連味を凝りたい。過去作をオマージュしたい、などなど。
 その点では95年作品でかなりの水準でしたが、序はその更に上を行きます。


 そして、シンエヴァによって、エヴァのメッセージは、オタクよ2Dから3Dに帰れ、的な結末だと言われています。メッセージとしてはそれは正しいと思います。

 思いますが、何かエヴァの評価として中途半端というか偏った見方な気がします。
 エヴァがなぜ社会現象になったかは、バブルが崩壊して、家族も分断しした、優しさとか思いやりとかそういうのがどうでも良くて、金だけと言われてたのに…という時代。その時一人で放り出された感じが、思春期の少年少女どころかもっと広い範囲の人間の共感を呼んだのではないでしょうか。

 新劇場版の序。「自分が誰なのか、どこにいるのか、何をすればいいのか」そして「子供に向かい合う大人の辛さ」が非常に良く読み取れました。
 新劇場版シリーズになって、メッセージ性がもっと伝わるように庵野監督は作り替えたのか。あるいは、TVより時間が短い分密度が濃くなって表に出てきたのかわかりません。

 この序は「なぜエヴァだったのか?」が良く分かる作品だと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

「帰ってきたウルトラマンって知っていますか?コレは帰ってきたウルトラマンの6話までなんですよ」

当時、公開直前のインタビューでそう発言したのはあの大月Pでした
まず庵野監督が熱烈な『帰ってきたウルトラマン』ファンであることとは別にし、『帰ってきたウルトラマン』という作品に対して少し・・・


『帰ってきた~』という作品の前章となった『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』といったシリーズは子供向け番組とは思えないほど本格的なSFドラマだったんですね
『社会風刺や想定科学などテーマ性をハッキリさせたお話』と『冒険心をくすぐるミステリアスな雰囲気の演出』でどちらかと言えば『大人のおとぎ話』的なイメージが強かったんです
ところが『帰ってきた~』では主人公の心理描写や周辺人物を絡めたドラマ性にスポットを当てた作品に路線変更したんです
主人公の挫折や苦悩を乗り越える様、力を持つことへの慢心や仲間との軋轢、ヒーローとしての隙の無い人物像よりもプライベートでの素顔などが中心に描かれたのです


その面たる様子が顕著なのが第6話までなのです
「初代ウルトラマンで培われた『ヒーローは無敵』というイメージをあっさり破り、いきなりウルトラマンが怪獣に敗北↓
そこからスポ根モノばりに主人公の努力と葛藤の日々、そして仲間との友情によってウルトラマンが復活↓
見事怪獣を撃破する」
ここまでで『帰ってきた~』全体のパターンが、ある程度確立されるんです
ソレ以降はほとんど予定調和の繰り返しで、大袈裟に言うと第6話までで『帰ってきた~』の半分以上は完結した。と言っても良いです


さて、もし『エヴァ序』をご視聴済みの方でこのレビューを読んで頂いてる方がいらっしゃったらもうお解りいただけたかと思います
『帰ってきた~』の第6話まで、とはまんま『エヴァ序』の内容なんですよね


主人公、碇シンジの苦悩と挫折からの葛藤、そして復活、勝利
それこそ、旧シリーズ序盤のエンターティメント性を最大限に盛り上げて解き放った「娯楽作品」としてのリビルドでした


そうそう、新劇場版制作に当たってのキャッチコピーであるこの「リビルド」と言う言葉
リメイクでもリバイバルでもないこの「リビルド」とはすなわち「再構築」の意
古くなった物を直して新品同様にするという意味合いで用いられるのですが、これを新劇場版の代名詞とする理由には
【古くなってしまった作品を現代の技術と価値観で蘇らせる】
という意味を込めたのだとオイラは思っています


あにこれのレビューなんかでもチラホラと年齢層の低めな方からの投稿で「旧シリーズは難解で何処が面白かったのかよくわからない」というものを目にします
いや、もちろん旧シリーズ当時からそういう話題は絶えなかったんですね
オイラも放映当時は小学校低学年で意味サッパリでしたしw


エヴァブームも全盛期からすればだいぶ沈静化してきていて、特にあにこれユーザーのような第1線で戦う優秀なアニヲタの皆様には『過去の偉大な名作だけど正直そんなの聞き飽きた』って方も多々いらっしゃることでしょう
そういったマーケットニーズの変化に対応すべく、『エヴァ序』は【現代の大衆娯楽へリビルドされた】のだとオイラは思いました


そしてこれはオイラが旧シリーズ時代のファンであることを踏まえた上での結論ですが・・・
「『エヴァ序』を旧エヴァと比較することは出来ないです」


一本の娯楽映画として大変優れた作品であると同時に、旧テレビシリーズの持っていたキャラクター一人ひとりのセンシティブな心情の描写が薄っぺらくなり、セリフの一つひとつもオイラには軽々しく聞こえてしまいました
旧シリーズ当時のエヴァという作品が醸し出していたあの心のダークサイドを描かんとする姿勢、それまでのメインストリームを外しながらも人々の心を掴むという他に類を見ない様な特別性
これらが格段に弱くなっていて『素晴らしい出来栄えだがありがちな感じのする一本』という印象です


だから旧エヴァと新劇場版を同じ作品、同じエヴァとして見ることはとてもじゃないですがオイラには【不可能】だと感じました
だから「エヴァとは違う、なんか別のアニメだよ」と自分に言い聞かせながらも今後Q以降の展開に期待をしたい、と今は思っています

投稿 : 2025/02/01
♥ : 22

せもぽぬめ(^^* さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

σ(・・*)アタシ的エヴァ補完計画発令!!

■(≧∇≦)ъ ナイスリメイクです!!
かなり作画が綺麗になって細かいところまで描かれている印象ですね♪
出来ることならば、TVアニメ版を未視聴な場合はTVアニメ版を視聴した上でご覧になられることをお薦めしたいですね!!
もちろん、「序」だけでも十分エヴァの魅力は感じられますよ♪
ただ、ストーリー的にはTV版を凝縮して微調整してこの「序」が制作されているのです。
その「微調整」こそが新劇場版の魅力の部分だと思っていますので、新劇場版とTV版の両方を視聴するとより一層エヴァの世界観を満喫できるはずですよ♪
 
 
■「微調整」の魅力って(*゚・゚)ンッ?
まずは、CGを使った細部までこだわって描かれている第3新東京市のギミックの描写なと必見です!
もちろん戦闘シーンの描写にも反映されていますね。
もともと他のロボットアニメとは違ってスピード感あふれる戦闘シーンは無く、戦闘時の緊迫感、恐怖感、息使い、表情など、搭乗者の心理状況をうまく描いている息を飲むような戦闘シーンがエヴァの良さなのですけど、エヴァや使徒の動きがスムーズになった事で、特に第5使徒ラミエルとの戦闘はシーン圧巻でした♪
ラミエルの生体意識がかなりレベルアップされていて、攻守において最適な形に変形するさまは観ている人に恐怖感と絶望感を与えてくれました!
 
それと、もう一つ注目は登場人物の性格や状況が微妙に違ってきています。
シンジもちょっとだけ積極的になっているように感じます。
父ゲンドウに対する気持ちをクローズアップしている発言もありまたね!
ミサトさんの立ち位置もちょこっと変化があるので、そんなところに注目してみてもらっても面白いと思いますよ♪
 
 
■総評
ストーリーに新しい展開が見え隠れするのが「序」の魅力ではないでしょうか?
ただのTV版のダイジェスト版ではなく、まったく新しいエヴァの始まりこそが「序」だと私は思っているのです♪
リリスやカヲルの描写からもそれは感じられますね!
それと、コミカルな部分が大幅カットされていますけど、ミサトさんの( ̄▽ ̄)=3 プハァー がまた見れたのは個人的に嬉しかったです♪
 
新劇場版は「破」までしか公開されていませんけど、「Q」⇒「FINAL?」とどんな結末になるのかとっても気になりますし楽しみでしょうがないです((o(^-^)o))ワクワク♪
σ(・・*)アタシのエヴァ補完計画はここから始まりました♪
 
 
2011.08.21・第一の手記

投稿 : 2025/02/01
♥ : 32

81.2 2 嫉妬アニメランキング2位
AKIRA アキラ(アニメ映画)

1988年7月16日
★★★★☆ 4.0 (1096)
5204人が棚に入れました
1988年7月、関東地区に新型爆弾が使用され、第三次世界大戦が勃発した。そして31年―東京湾上に構築されたメガロポリス=ネオ東京は、翌年にオリンピック開催を控え、かつての繁栄を取り戻しつつあった。2019年のある夜、ネオ東京郊外の閉鎖された高速道路に侵入するバイクの一団があった。健康優良不良少年、金田をリ一ダーとする職業訓練高校の生徒達だ。一団は無人のはずの路上で掌に26と記す奇妙な小男と遭遇、先頭を行く島鉄雄は転倒、負傷する。この26号=タカシは、アーミーと対立するゲリラが求める軍事機密=アキラとまちがわれ、軍事基地にあるラボ(研究所)から連れ出され、アーミーに追われていたのだ。あっけにとられる金田達の眼前に突如軍用ヘリが下降、26号と同じようなしわだらけの子供27号=マサルの乗るカプセルと大佐が降りて来て、26号と倒れた鉄雄をへリに収容し、飛び去った。

声優・キャラクター
岩田光央、佐々木望、小山茉美、石田太郎、玄田哲章、鈴木瑞穂、中村龍彦、伊藤福恵、神藤一弘

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

出来の悪い舎弟(友)のケツをを吹くのが兄貴の役目・・・。

大分以前に視聴したことはあったが、今般(大友克洋全集発売記念という事で某youtubeにて視聴できたのでもう一度観てみた(2021.12)。

やはり、前に観た時とはだいぶ印象が変わって観れた。
これはどんな作品にも言える事であると思うが、実際、繰り返し観ることのある作品はそれほど多くない(時間、機会、観る気等々の制約もあるしね)。

そういう意味では、今回は機会に恵まれたという事か。

作品については、思い出、内容、諸々語り始めるときりが無くなってしまうので、控え目にしておこうと思うが・・・、大友克洋の作品を観たのは友人から見せてもらった童夢だったろうか。その当時、友人は「面白い(スゴイ)漫画がある」と言っていたが、正直私にはわからなかった(感覚的な意味で)。
私は、いわゆるマンガ的な絵の方がお好みで、大友作品を観た印象は「スクリーントーンが多用してあるな〜、新しい、シャープな印象はあるが・・・なんか『白いな』」だったwww。
まったく、自身のセンスのなさにあきれるばかりだw。
その後、AKIRAも見せてもらったが、当時は斬新であった、大判で派手な装丁ばかりが記憶に残っていて、内容は難解で、きもいトッチャン坊やは出てくるし、やっぱり「白いし」で、あまり私の琴線には響かなかったものだ。

ただ、今となって振り返ってみれば、その後に続くクリエイターの多くに影響を与え、時代を変えた作家さんだったなあ、とは思うし、あの時代を知っているのは少々優越感もある。

さてこの作品、今見返して観ても80年代らしいアニメの雰囲気を随所に見る事が出来る。
何故だかわからないが、80年代アニメ作品の多くには共通した「雰囲気」があるような気がする。
長くアニメを嗜んできたきた皆さまには、なんとなくでも解っていただける点も多いのではないでしょうか。

もっとも、この「AKIRA」と言う作品は作成当時でも、その斬新で濃密な作成方法についてTVで特集が組まれたりもしていました。
一番わかりやすいのは、アニメの口の動きを実際の発声時の口の動きに合わせて動かすという、一般人にも理解しやすいポイントでしたっけね。
実際は、もっとすごい点がいくつもあったのですが、まぁ、あまり注目はされませんでしたね、わかりやすいとこばかり着目し煽るのは今も昔もTVの仕事ですわ。

で、この作品を見返して観ての簡単な感想を。

・物語自体はそれほど珍しいパターンではない。軍が怪しい研究をしていて〜、その兵器(今回は人間)が暴走して〜、ハイエンシエントなウエポンが出て来て〜、どっかいってしまってーend〜的な。

・ただ、物語のベースとなる世界観、表現方法、キャラ含めそれぞれのパーツ=大友克洋感は特徴的かつ今なお先進的。

・やはり、セル作画アニメとしては一つの到達点と言える。

・金田と鉄雄の関係はやっぱイイ。鉄雄の屈折ぶりも大人になった今なら理解ができる気がする、最後に金田に頼るのはまだガキの証拠だぜ、金田もガキだけどな・・・(コレ(アレ)が若さってもんだろうか、取り返しのつかなくなることもあるけどな)

・ただ、鉄雄の屈折~ちょっと力持った~タカビー~暴走の流れは、なんか昨今の「無敵の人」の暴走っぽくて、心がザワザワした。
自分の得た力にうぬぼれたとしても、今の私に許容できない。
アタマをゲンコツで殴ってやりたい気持ちになった。(金田に近いかw)

・金田の元気さ、怖いもんなしで舐めた感じがうらやましい。

・SFとしても世界観、造形美、エフェクトの表現が今でも通用しそうな、と言うより、今の作品も影響を残している。

・今も、昔もエセな宗教、信者は人智を越える事象をおらが神様だと錯覚し、祭り上げ、利用し、自滅する。

・女性があんましかわいくない。

・80年代のいい加減な感じを、よくぞあそこまで取り込んだものだ(主にチャラ女のセリフ)。
まぁ、男のテキトーさもそうかなw。

・ある意味、動き過ぎて気持ち悪いw

・画面からの情報量が多すぎて、疲れる・・・(歳食った証拠だなぁ(遠い目))

などなど。

まぁ、一個一個シーンを見ながらだと、ここがすごいんだよ、この表現がねぇとウンチクをたれたくなるような作品であることが今でもすごいんだけれどもねぇ。
そうだなぁ、昨今のCGをガンガン使った作品だと、すごくても、ウンチクを述べられるスピード感じゃないですよねぇ。
早すぎるというか、あん?CGならあたりまえっしょ的な「消費される感覚」が強いかなぁ。
セルの動きで、ヌルヌルもたもたしている所に、ウンチクを述べられる隙間が存在する気がしますなw。


この作品は、今となっては30年以上前の作品となります。
人も〇にますし、グロっぽいシーンもありますが、あの時代に最も挑戦的だった作品の一つでもあります。
一度は観ておいてもいい作品の一つでは?とは思います。
合う合わないはあるでしょうけどね。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 17

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あにこれ初のリアルイベント開催を祝して・・・

内容については言わずもがなな名作ですのであえて触れずにおきます
なんせ小さい頃にBS2で放送されたのを観て、約10年間トラウマ化した作品なのでw
(コレと塚本晋也監督の『鉄男』は本当に怖かったというw奇しくもテツオ繋がりw)


この度、あにこれにとって記念すべき初のリアルイベントである「懐アニ上映会 AKIRA」に参加したので記念に一筆をと思いイベントの感想を軽く書いておきます


オイラ、1988年の公開当時は物心つかぬ赤ん坊だったので当然映画館で『AKIRA』を観る機会などはこれまで無いに等しく、この貴重な体験にあにこれのイベントとして参加出来たことはありがたく思います


イベントで上映されたのは、HDCAM SRマスターの映像に5.1chデジタルPCMサラウンドの音声、ということで多分ビクター(現ジェネオン)が家庭用ソフトに向けて作ったマスターフィルムじゃないかと予想します
(イベントでは世界に2本しか無いと仰ってました)
当然無圧縮状態なので、家庭用ソフトのソレとは比べ物にならないほど鮮明な映像
それに5.1chで体感するあの音響、これが一番凄かった!
キャストの吐息、効果音、劇伴、とにかく全ての迫力が我が家で観るとでは段違い!
その素晴らしい作画と相まってまるで2015年今日の新作映画を観ているような気分にすらなりましたねb
名作は色褪せないってこのことか!と


岩田光央さんのトークショーにも参加しました
オーディションには大友克洋先生に一目会いたい、という軽い気持ちで参加されたという岩田さん
一時期は事務所の方針で声優としての仕事が無かった岩田さんに『ここはグリーンウッド』や『アンジェリーク』での起用がされたのには、金田というキャラの人気が絡んでいたんじゃないか?と仰ってました


オーストラリアに奥さんとダイビング旅行に行った時、現地人に「日本人ならAKIRA知ってるか!?アレは凄い映画だぞ!」と本人とは知らずに英語で力説されたというエピソードは笑えましたw
ラジオCMの仕事をした時にイケメンディレクターに、行きつけの美容室の美容師に、それぞれAKIRAのファンだと言われたこともあるそうな


『トップ2』の時に山賀博之さんが日本中のクリエイターが会社の垣根を超えて一致団結したのは後にも先にも『AKIRA』だけ、と仰っていたとのこと
しかし当時のアニメアワードを『トトロ』に取られた時は悔しかったそうなw
(真逆の作品ですよねwその後『トトロ』を観て素直に感動したそうですw)
取り調べ中の金田の「アハwアハアハw」という変な笑い方とリュウ達に拘束され「聞くは一時の恥って言うでしょー?」の直後の「言わない?w」は岩田さんのアドリブだそうです


プレスコでは玄田徹章さんがキャスト達のリーダーシップを取られ、共演者の演技の中では佐々木望さんの鉄雄そのまんま感が特に印象的だったらしい


『宇宙戦艦ヤマト』ファンであるから『2199』のようなリメイクには感動したが、『AKIRA』はリメイクして欲しいとは思わない、現代でも十分通用するから、とも
ちなみに【ゲーム版は無かったことに】と言ってましたね(爆)
暴力的な描写が目立つ作品ですが自分の息子には観せたい?と質問されて、自分で観たいと言うまで放っておく、とお答えしてました


若い自分の演技を暫く直視出来ず、30年近くなってやっと普通に観れるようになってきた(笑)とも
ご家庭で観るときは【DVDではなく是非BDの画質で】ともオススメしておりましたね


会場と一緒に「さんを付けろよデコ助野郎!」「やっとモーターのコイルが暖まってキタぜ!」と言ってくれたのには興奮してドキドキしました
(それと「ピーキー過ぎてオマエにゃ無理だよ」もw)


この度は一生の思い出になるとても楽しい時間を過ごせましたこと、関係者様各位には深く感謝を致しますm(__)m
またこういった楽しい機会を「あにこれの」というカタチで過ごせたら嬉しく思います
2015/11/21 新宿テアトル
2015/12/5 川口スキップシティ

投稿 : 2025/02/01
♥ : 27
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

天才的なSF発想の塊です。人間鉄雄にも注目すべきでしょう。

 金田のバイクってバックができるんですよね。モーターと言っていながらエンジン音がするのでハイブリットなのでしょうか。まず、このバイクのデザインだけでもゾクゾクします。AKIRAという映画でもっとも印象的なこのバイクは金田という男の強さの象徴でした。

 孤児院らしきところで友達になった金田と鉄雄でした。金田の側からみた鉄雄は守るべき存在であり、大切に思っていたのだと思います。一方で金田は鉄雄の憧れでありコンプレックスでもありました。鉄雄の金田のバイクに対する執着を映画ではかなり描写していましたので、これが一つの主題だと思います。力を得た鉄雄は不幸な過去を持つが故に、歪んでいったのでしょう。
 それでもカオリという彼女に対しては最後まで愛情を持ち続けていました。最後にカオリが危険になったときの鉄雄の反応は、途中でカオリが酷い目にあっているときの反応と一緒でした。
 ただ、{netabare}最後鉄雄は自分でカオリは殺してしまいます。金田は鉄雄を助けようとして、鉄雄は金田に逃げろと叫びます。{/netabare}非常に切ない話でした。コミック版よりも鉄雄自体の行動原理はわかりやすかったともいえます。

 あとはアキラの他3人の超能力者たちの因縁を映像の中だけで済ませていたのは良かったと思います。

 人間の描き方では、ケイと金田の気持ちの通じ方がちょっと急だったかなあという気がしますし、ケイも能力を貰って活躍しますが、このケイについては映画版の脚本の弱いところだったと思います。

 全体的なストーリーは、退廃した東京で、超能力者の拉致とテロ、反政府デモが絡んで鉄雄が超能力に覚醒するストーリーですが、事件そのものは鉄雄が大暴れるだけです。

 ただ、物語の密度がすごくて2時間程度の映画なのに、一つの作品世界にどっぷりつかった疲労感が半端ではないです。
 
 本作はSF的な発想と表現がすごいわけです。ネオ東京という発想、その街の風景や夜景、バイクで荒廃した高速道路を走り鉄パイプで戦う、斜めに地下深く降りて行く巨大エレベーター、老人のような少年少女、アキラを閉じ込めていた地下のパイプがうねるドーム、子供部屋のような実験施設、攻撃衛星、レーザー兵器、飛ぶ攻撃兵器などどれをとってもSF的発想のオンパレードでした。いや、発想は過去にあったかもしれませんが、デザイン、映像化したところがすごかったです。

 今や日本のあらゆるSF映像に影響を与えていると言えるでしょう。例えばどう考えてもエヴァンゲリオンは影響されていますよね。ただ、仕方ないと思います。童夢で有名ですが、超能力で飛ばされた人間が壁にぶつかって窪んでひび割れる表現を初めて発想した人です。大友克洋はビジュアル化の天才としかいいようがありません。

 また、アニメの演出なのかもしれませんが、バイクに乗って鉄パイプをアスファルトにつけて火花を散らすシーン。翌年ブラックレインが公開されますがひょっとしたら影響を与えたのかもしれません。アメリカでのAKIRA人気を考えるとあり得るでしょう。

 こういう考察をするといくら文字を重ねても語り切れませんのでこれくらいにしますが、さすがのAKIRAとしか言いようがありません。

 ただ、初見でいきなりこのアニメだとSFリテラシーの関係でポカンとなる人もいるかもしれません。SF慣れしてない人は先に原作を読むことをお勧めします。

 なお、音楽も青森ねぷたまつりのラッセラーを使うのはすごかったですね。パーカッションはエスニックで。魂の中の呪術的というかプリミティブな何かを揺さぶられるようなすごい音楽でした。

 

投稿 : 2025/02/01
♥ : 9

81.0 3 嫉妬アニメランキング3位
花咲くいろは HOME SWEET HOME(アニメ映画)

2013年3月30日
★★★★★ 4.1 (1288)
7272人が棚に入れました
美しい北陸の四季を背景に、祖母の経営する温泉旅館に住み込みで働くことになった東京生まれの女子高生の成長を描いたTVアニメ「花咲くいろは」(2011年4~9月放送)の劇場版。温泉旅館「喜翆荘(きっすいそう)」での住み込み生活にも慣れた松前緒花は、次第に変化していく自分に気づきはじめていた。そんなある日、緒花のクラスメイトでライバル旅館「福屋」のひとり娘・和倉結名が、女将修行のため喜翆荘にやってくる。自由奔放な結名に振り回されながらも、面倒をみていた緒花だったが、物置の中であるものを見つけて……。監督の安藤真裕、脚本の岡田麿里、アニメーション制作を担うP.A.WORKSほか、TVシリーズのスタッフが再結集。

声優・キャラクター
伊藤かな恵、小見川千明、豊崎愛生、戸松遥、能登麻美子、梶裕貴、本田貴子、久保田民絵、浜田賢二、間島淳司、山口太郎、恒松あゆみ、諏訪部順一、チョー
ネタバレ

シス子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

おはなのオハナのおはなし

テレビ版を視聴してから観ました


{netabare}先ず最初に
「劇場版」というより
テレビ版を含めて
この「花咲くいろは」という作品の
私の主観的な感想を述べさせていただきます

この作品を観た
{netabare}ほとんどの石川県民が・・・{/netabare}

いいえ
{netabare}石川県出身の女性の多くが・・・{/netabare}

っていうか
{netabare}石川県出身の"ある年齢層"の女性の大半が・・・{/netabare}

もとい
{netabare}石川県出身のある年齢層の"独身女性"の一部が・・・{/netabare}

じゃなくて
{netabare}ごく一部の女性が・・・{/netabare}

もしかしたら
{netabare}私だけが?・・・{/netabare}

{netabare}「輪島巴」(わじまともえ)という人物に
極めて強い共感を覚えたのではないでしょうか{/netabare}

{netabare}輪島巴ちゃん・・・


喜翆荘の仲居頭
28歳
独身・・・

(以下Wikiの巴データ){/netabare}

{netabare}キャラクターカラーはピンク
部屋着は黒いタンクトップだったりと大人の女でもある
左眼の下に泣きぼくろ

さらには・・・{/netabare}

{netabare}噂好きかつ覗き見好きなのが玉に瑕・・・云々
学生時代の友人が次々に結婚してゆく・・・云々
多忙ゆえに・・・云々
三十路を前に・・・云々
嫉妬心を隠せない・・・云々

・・・云々かんぬん{/netabare}

{netabare}なんか笑いながら涙出てきた~(ToT{/netabare}


{netabare}そして
なんといっても
その声の主{/netabare}

そう
あの・・・

{netabare}「能登麻美子」さんです!!! キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}石川県金沢市出身ですよ~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}どうでもいいけど私と同じ石川県出身なんですよ~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}金沢弁がとてもハマってて迫真の演技~ キャ{netabare}・・・あ

実は私
出身が金沢市じゃないからよく分かりませんでした~^^!
(金沢以外の"地方"はビミョーに違う){/netabare}{/netabare}

{netabare}っていうか・・・
「バカタレどもが~」って迫真のアドリブ・・・("ぼんぼり祭り"での本人コメント)

これ
金沢弁じゃないよね・・・(冷{/netabare}

{netabare}おうちが金沢なのに
なんで名前が「能登」?・・・(冷{/netabare}

{netabare}まあ
とりあえず・・・{/netabare}

{netabare}麻美子ちゃん最高だよ~ キャァァ~!!!{/netabare} 

{netabare}能登かわいいよ能登~ キャァァ~!!!{/netabare}

{netabare}キャァァ~!!!・・ゲホッゲホッ・・オエェェェ~

叫びすぎた^^{/netabare}











気を取り直して^^{/netabare}
    ↑
(どうしようもないことなので興味のない方スルーしてね)

この作品
個人的に
とても印象に残っているのは
たまに出てくる金沢の風景です(ほんと・・・たまにですよ)

あえて
城下町金沢をイメージさせる観光名所など
いかにも"不自然な"描写を控えめにして

普通の街中や田舎の風景が多いのは
地元の人間にとって
とても興味のあるところです

でも
観ていると
いつも思うんです

なんか違う・・・
って


「湯涌温泉」(作中では湯乃鷺温泉)に
「のと鉄道」乗り入れ?
あの"3セク赤字企業"が事業拡張?(失礼^^

便利になったもんだ~^^
のと鉄道さん太っ腹~^^

っていうか
そもそも
湯涌に鉄道敷けるほどの広くて平らな地面あったかな?

多分
実際に電車を走らせるとなると
箱○登山鉄道みたいになっちゃいますね

金沢市街の建物などの位置関係もなんか変・・・

なこちゃんの妹のまなちゃんを
おはなちゃんとなこちゃんが探すシーンでは

(多分)金沢駅から
(多分)安江町の商店街を抜けて
いきなり
(多分)香林坊ってどういうこと!?

しかも
二人が来たのは
駅と反対の方向から^^
(あきらかに香林坊アトリオに向かって片町方面の"横に変な走るオブジェがあるミスド"の方向から来ている)

どー考えてもおかしい・・・
こりゃいったいどこなの?

・・・超ローカルな話題で申し訳ございません!

気になる方は
一度
金沢に遊びにきまっし~^^
実際の町並みと比べてみるのも面白いかも


さて
お話は
テレビ版での「ぼんぼり祭り」の少し前のお話だそうで

「喜翆荘」と
おはなちゃんたち仲良し女の子4人のエピソード
さらに
おはなちゃんのお母さん
「松前皐月」(まつまえさつき)さんのお話

キャッチコピーの「私、もっと輝きたいんです……!」のとおり
みんな輝いてました!
みんなぼんぼってました!
ホビロン・・・叫んでました!

そして
おはなちゃんはというと
いつものごとく
元気に走りまくってました!

いつでも
走る!走る!走る!

どこでも
走る!走る!走る!

廊下の雑巾がけで
走る!走る!走る!

さつきさんも
走る!走る!走る!

そして
{netabare}泳ぐ!泳ぐ!泳ぐ!・・・{/netabare}

{netabare}泳ぐ???{/netabare}

そう
冒頭の{netabare}「クソババァ」(失礼^^){/netabare}のシーン

これ
どこかの{netabare}競泳BLアニメ{/netabare}を
パクったんじゃね?
って思うくらいの
{netabare}みごとな
夜間の飛び込みシーンでした^^
(※製作はこっちのほうが先です){/netabare}



最後に
もう一つ
とても気になったのは
おはなちゃんのお父さんのお話です

さつきさんとお父さんの出会いから
おはなちゃんの誕生(ここで"オハナ"の秘密が明らかに・・・)
そして
お父さんが・・・

ここでもまた涙が・・・(ToT

って
あれ・・・
よく考えたら
おはなちゃんって
{netabare}病弱なジャズシンガーのお母さんと
港にやってきた米兵さんの間に生まれたんじゃなかったっけ?(テレビ版第1話より){/netabare}


とにかく
いっぺん石川に遊びに来てみんけ~^^

投稿 : 2025/02/01
♥ : 34

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「私、もっと輝きたいんです……!」

2011年に放送されたこの作品のTVアニメ版は「P.A.WORKS 10周年記念アニメーション作品」として制作されました。
P.A.WORKSにとって、単独製作した初の完全オリジナル作品であり、P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」の第一弾に相当する作品です。

あにこれでの評価も高く、TVアニメ版は2020年11月時点で総合得点90.1点、感想・評価6058件、棚に入れた25866人という驚異的な数字を叩き出しているにも関わらず、ランキングは50位なんですよね。
トップクラスの層の厚さを物語っている証拠だと思います。

一方、この劇場版のあにこれでの評価は、総合得点79.3点、感想・評価1212件、棚に入れた6887人でランキングは399位と、TVアニメ版の1/4~1/5人しかこの作品に触れていないようです。
かくいう私もその一人でしたけれど…
ですが、この劇場版はTVアニメ版を視聴したなら見ないのは勿体ない、と思える作品でした。

私がTVアニメ版を視聴したのは2013年の5月なので、もう7年以上前になりますが、私にとって「お気に入りの棚序列51位」の作品は、今でも色褪せることなく輝いています。
その劇場版なんです…思わず視聴にも気合が入りましたよ。


祖母の経営する温泉旅館"喜翠荘"(きっすいそう)での住み込み生活にもすっかり慣れた
東京生まれの女子高生・松前緒花は、
板前見習いの鶴来民子や、仲居見習いの押水菜子らと過ごす毎日の中で、
少しずつ変わっていく自分に気が付きはじめていた。

秋も深まってきたある日、クラスメイトでライバル旅館"福屋"の一人娘である和倉結名が、
喜翠荘に女将修行にやってくる。

奔放な結名に翻弄されながらも面倒を見ていた緒花は、掃除をしていた物置の中で、あるものを見つける。


公式HPのSTORYを引用させて頂きました。

改めて視聴して気付いたこと…
作画が緻密で綺麗だと言うのは認識していましたが、声優陣がこんなにも凄かったのは気付いていませんでした。

喜翠荘で働く女子高生3人組がコチラ↓
松前 緒花(CV:伊藤かな恵さん)
鶴来 民子(CV:小見川千明さん)
押水 菜子(CV:あきちゃん)

喜翆荘の仲居頭がコチラ↓
輪島 巴(CV:能登麻美子さん)

喜翆荘のライバル旅館である福屋の一人娘がコチラ↓
和倉 結名(CV:ハルカス)

これだけの面子が揃っているんですもん…
当時この作品にハマった自分の行動原理にも納得です。
それに「P.A.WORKS 10周年記念アニメーション作品」と銘打っているだけあって、作り手の気概がヒシヒシと伝わってきますから…

私が感じたこの作品のテーマは「家族の在り方」です。
例え働いている場所が一緒でも、たとえ境遇が似通っていたとしても、一つとして同じ在り方はありません。
だから、きっと正解は無いんだと思います。

夢を叶えるために目標を定め、最短コースを全力で走り抜ける…
夢は十人十色でコースの長さや起伏も人それぞれ…
だけど、時には家族のために立ち止まったり振り返る余裕は残しておきたいと思いました。

何も言われないからって、それで良い訳じゃない。
周りには言いたいことを必死で堪えている人だって居るんだ。
だから臨界点を突破して破裂しちゃう前に気付きたい、そう思えました。
それが家族なら猶更ですよね…

それとこの劇場版で明らかになるのは、緒花の名前の由来です。
緒花はハワイ語で「家族」を意味する「ohana」から取ったそうです。
この命名の方法は今まで発想にありませんでした。

命名するとき、「その子が将来どんな風になって欲しい」という子供を主体とした発想だったり親の気持ちだったり…
各家庭のしきたり、という場合も考えられると思います。
そう考えると「家族」を意味する名前って、奥が深いと思いました。

上映時間66分の作品でした。
いやぁ、しっかり満喫させて貰えましたし、しっかり涙で前が見えなくなる展開も用意されていて大満足でした。
ここ最近、TVアニメ版は視聴済ですが劇場版を視聴していないという作品が
結構あることに気付きました。
少しずつ記憶を辿りながら、昔の作品にも思いを馳せていけたらなぁ…と思っています。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 22
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

さっぱりとした良作です

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。65分くらい。
 テレビシリーズはチラッと見たことがある程度で、内容はすっかり忘れていました。ストーリーもキャラの名前すらもあやふやな状態での視聴となってしまいました。
 ただ、見始めてすぐにキャラクターの名前や性格、抱えているエピソードなどが伝わってきました。ここまでしっかりとキャラクターが描かれいるのならば、テレビシリーズもきっと良作なんでしょうね。

 で、この映画版なんですけど、記憶があいまいだったせいもあって、楽しめないかもなと覚悟していました。ただ、そんな心配は無用なもので、想像以上に面白かったです。一番の見どころは生き生きとした登場人物たちですかね。モブもきちんと演技をしてましたし、作画関連に突っ込みどころは感じませんでした。

 軽くストーリーで描かれていた要素をまとめてみます。


客観視:{netabare}
 物語の大半は「客観視」をすることに費やされていました。
 「自分が見ている自分」「自分が見ている親」「自分が見ている家族」というのを、「第三者の視点」を通すことで理解しよう、というのがストーリーの中心です。

 例えば、学生時代のオハナママが見ている「自分が見ている自分」というのは、「写真に写った自分」を介して再評価がされることになります。
 同じように「オハナが見ているオハナママ」は「豆じいの業務日誌」を介して、「オハナが見ているオハナファミリー」は「ナコのファミリー」を介して、客観視されていきます。

 これは他の登場人物にも表れていました。例えば、ミンコは宿泊客の視点で、板長のレンジですらトモエの視点で、それぞれの思惑に対しての再評価がなされていました。
 描かれているのは「客観視」というたった一つの要素なんですけど、マンネリにならないように非常に上手くストーリーが組まれていました。一貫して描き続けよう姿勢というはすごく伝わってきましたね。
{/netabare}

オハナとオハナママ:{netabare}
 一番面白かったのは、オハナとオハナママのエピソードの書き分けですね。

 まずはオハナから。
 「オハナが見ているオハナ」を第三者の視点から見るエピソードはありません。思春期における自己の客観視は、オハナママのエピソードで足りているからかもしれませんし、テレビシリーズの話なのかもしれません。
 で、オハナは、「オハナママ」と「自分のファミリー」の両段階を、他人の目に頼っています。上で述べた「豆じいの業務日誌」と「ナコのファミリー」のことです。

 一方でオハナママ。
 学生時代の自分を客観視するためには「写真」に頼っているんですが、「オハナママの親(女将のスイ)」と「自分のファミリー」を客観視するためには、他人の目を必要としていないんですね。いずれも子供のオハナを抱えた状態で、自分の目で客観的に見れています。

 この構造的な違いというのは、そのまま年代や境遇の違いになるんだと思います。学生という未熟な視点と、子を持つ親の成熟した視点ということなのでしょう。このオハナとオハナママの似ているようで全く違う描き方が絡み合いながら、エンディングを迎えます。

 「私、輝きたいんです!」の源泉は、自分をきちんと見つめることにある。そして、親や家族に対してもその視点を適用することで、映画版のサブタイトルである「HOME SWEET HOME」につながる。これがテーマでした。
{/netabare}

対象年齢等:
 予備知識はそこそこあれば問題ないと思います。もちろん、あった方が楽しめるのは否定しませんけどね。私程度の予備知識でも楽しめましたから、コアなファン向けってわけではないと思います。
 家族ものですから、思春期以上なら視聴年齢は特に気にしなくても大丈夫です。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

78.1 4 嫉妬アニメランキング4位
空の境界 第五章 矛盾螺旋[ムジュンラセン](アニメ映画)

2008年8月16日
★★★★★ 4.2 (852)
4893人が棚に入れました
1998年10月、両儀式はふとした事から臙条巴という自称人殺しの家出少年と知り合う。式は巴の隠れ家に自室を提供し共同生活を送り始めるが、しばらくして巴は自分の親殺しの罪を告白する。奇しくも蒼崎橙子から似たような事件の詳細を聞いていた式は、巴とともに臙条家のある小川マンションへ向かう。

声優・キャラクター
坂本真綾、鈴村健一、本田貴子、藤村歩、東地宏樹、中田譲治
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

空の境界中、最難関にして最上の作品。困難を乗り越えて理解して欲しい本作の神髄

か「空の境界」は奈須きのこによる、同人誌に掲載された長編伝奇小説である。全7章で構成され、本作は第五章「矛盾螺旋」が映像化された。「そらのきょうかい」でも「くうのきょうかい」でもなく、「からのきょうかい」なのでお間違えの無い様に。
略称は「らっきょ」。

「空の境界」は奈須きのこの小説だが、奈須きのこと武内崇の所属する同人サークル(現在は有限会社Noteのブランド)「TYPE MOON」の作品に「月姫」、「Fateシリーズ」などがあり、「空の境界」と世界観を共有している。奈須氏によると「微妙にズレた平行世界」とのこと。


劇場版「空の境界」は圧倒的な映像美、迫力満点の戦闘シーンと、難解且つ素晴らしい世界観を、原作小説を忠実に再現し映像化したufotableの力作である。
本作のメインテーマは「境界」である。相反する二つのものに関するメッセージが緻密に組み込まれている。
その各々に対する矛盾もまたテーマの一つだ。
奈須氏の命の重さ、禁忌を主題とした本作の完成度には脱帽するばかりである。
「生」と「死」、「殺人」と「殺戮」などについて考察するわけだが、テーマがこれであるから必然的にグロテスクな描写がある(しかも美しかったり)。
また、難解な言葉(辞書的意味では用いない)や、時系列のシャッフルにより、物語の理解はやや困難である。
しかし、この時系列シャッフルこそが「ミステリ」における叙述トッリクとして作用しているのである。
決して時系列の通りに見てはいけない(2度目からはご自由に)他にも、原作にはなかった「色分け」が行われている点も魅力的だ。式の服の色や、月の色なども見てみると楽しい。
全7章に渡って展開される両義式と黒桐幹也の関係も素晴らしい。
設定はここで説明するとつまらないので、作品を視聴することをお勧めしたい(丸投げであるが(笑))
副題のThe Garden of sinnersは直訳すると「罪人の庭」と言う意味。sinには(宗教・道徳上の)罪という意味があり、guiltの(法律上の)罪とは区別される。
Theの次のGardenが大文字であることから、これはギリシアの人生の目的を心の平静(アタラクシア)に見出した精神快楽主義のエピクロス学派を意味する。よってThe Garden of sinnersは快楽主義に溺れた道徳的罪人という意訳が適切ではないか。



第五章の本作は「空の境界」の時系列で、全7章のうち5番目にあたる作品だ。本作の視聴で第一章から第四章までの殆どの伏線を回収し、荒耶宗蓮の物語は終結する。
本章は「空の境界」という作品の肝であり、本作を荒耶宗蓮の野望を主題とするならば、
第六、七章は本章の残滓と言っても過言では無い。なぜならば、一章から四章の伏線や、
これまでの両儀式に纏わる物語は全て彼の計画の完遂の為に周到に準備されたものだからだ
(しかし、荒耶が手薬煉を引く前に式や橙子に見つかったので、計画を前倒しにしているきらいもある)。
内容は非常に理解に面倒で、予備知識が必須である。また、時系列のシャッフルが本章では作品内で構成されている為、一度の視聴での理解は不可能である。
是非、二・三度視聴して、理解を深めて欲しい。
本章は原作と比較して描写が大幅にカットされており、半ば継ぎはぎ感を感じざるを得ない。しかし、完成度としては至極満足である。私が考えるに原作による補完は必須である。
(原作を読む上での注意:
1.言葉をそのままの意味で理解せず、状況から推測する。(例:二律背反)
2.作者の造語が理解の範疇を凌駕した場合は、採り合えず調べる。(例:死街)
3.作者の日本語が明らかに文法上誤りである箇所が多々見受けられるが、脳内補完する。
(修飾の該当箇所が明らかにおかしい。
例: その一連の映像は、古びた頁に挟まれ、書に取り込まれて平面となった押し花を幻想させた。
   ←その一連の映像は、古びた本の頁に挟まれ、平面(のように潰れた形)となった押し花を
   連想(或いは髣髴)させた。[()は無くても良い。]
  八月になった最初の夜←八月になって最初の日の夜)
4.本来の日本語に無い使用法が見受けられる。(例:幾多もの←幾多の/迫ったほど←迫る/迫った)
上記の例は全て一章俯瞰風景に依った。)
副題のParadox Paradigmは其のまま矛盾螺旋である。


考察←観る前に見ない様に。
{netabare}
時系列:5/8
1998年10月
両儀式:18歳 職業:高校生(サボりがち)
黒桐幹也:18歳 職業:大学中退 伽藍の堂に勤務

原作との相違:大(時系列のシャッフルや1度目の橙子VSアルバ戦のカットが目立つ)
原作との尺の比 417P:114min=1:0.40(1分当たり3.66P)
(一番原作との尺の長さの比が合致していると判断される2章の比を基準:1とする)
(原作の頁数は講談社文庫を用いる)

・「矛盾と螺旋」について
矛盾・・・contradictionの訳語。一方を立てようとすれば、他の一方が立たないという、くいちがった関係におかれる概念、または判断が対立して統一できない場合。
<韓非子>より楚の故事に由来。
螺旋・・・巻貝のようにぐるぐるまわっていること。

「空の境界」におけるこれら二つの言葉の意味

矛盾・・・人は宗教・哲学などから見て取れるように、絶対の理、永遠不滅の真理を求めようとする知的好奇心旺盛な生き物である。ソクラテスは無知の知を自覚し、真の知を求めることを重視した。仏教でも般若波羅密を知ることを求め、一切皆苦の厭世感から真理を追究した。哲学でも様々な興味深い分類が試みられている。
他方、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教浄土系宗派など真理の追究を諦め、絶対的なものに縋ることにより救済されるという、知の探求を事実上放擲している宗教も存在する。また煩悩具足であることを寧ろ良い事と考え厭世感を持たない考えも蔓延っている。これは無知であることを否定し、無知である自己や世界を否定し、自己乃至世界を救うべく真理の探究をする姿勢と明らかに矛盾する。人間は真の叡智を求める一方、真の叡智を求めることを放擲或いは拒絶しているのだ。
共通する認識は、世界或いは自己が滅びることを絶対的に拒み、之を救わんが為に行動していることである。

螺旋・・・人の性である煩悩は祖先から子孫まで相違は無く、永遠に螺旋を描いてゆく。
繰り返される日常や人生は人間の進化進歩しない煩悩の螺旋であり、二重螺旋構造を持つ遺伝子の匣として定められた過程を営む。


・「荒耶宗蓮」について
荒耶宗蓮は、元は台密の僧(台密とは天台密教の略称)で、起源である「静止」を覚醒させている。此の起源により200年以上生きながらえおり不老不死である(肉体は人形)。前項の人類の矛盾を克服出来ないことを悔やみ、人間では解決出来ないことから「起源」を追求し人の存在意義を探求するに至った、現在の彼は、もはや『 』へ至る為の概念と化している。
『 』へ至った暁に彼は、人類の死を等しく肯定する為に人類を滅ぼし、新たな世界、死を等しく肯定出来る世界の構築を望んだ。
彼は人の存在意義を「生」ではなく「死」に見出し、どのような死を迎えるかを重要視する。魔術協会で同期の橙子が人形、つまり肉体を重視したことに対して、彼は魂、つまり精神を重要視した。「根源」追求の為に死の蒐集をしており、人の死を記録する実験を重ねている。
結界を構築する能力にも長け、橙子曰く魔法(後述)の域に達しているらしい。
また武術の達人でもあり、左手に埋め込まれた仏舎利により、他人から自分の死線を認識されることを防いでいる。橙子程ではないが人形師として相当の腕も持つ。
他にも他人の「起源」を認知し、覚醒させることも可能である。
「不倶」「金剛」「蛇蝎」「戴天」「頂経」「王顕」という六道境界を自身の周りに張巡らす。
境界にはサンスクリット文字が出てくる。


・「相克する螺旋で待つ」の意味について
二章殺人考察で述べた五行思想のもので、五芒星の外接円として、各頂点に接する円を描くと、五つの頂点が其々木火土金水となり、円の流れが「相生」、五芒星の線上の頂点を一つ飛ばした流れを「相克」と云う。
相克
1.対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うこと。
2. 五行(ごぎょう)説で、木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木にそれぞれ剋(か)つとされること。五行相克。相手を打ち滅ぼして行く、陰の関係。
という二つの意味がある。
因り相克する螺旋とは、先ほどの円が螺旋しており、バネの様にグルグルと廻っていて、さらにその円を相克の関係で崩れた五芒星を描きながら進む線分のことである。
ここでの相克は後述のアラヤと荒耶、小川マンションや、巫条霧絵、浅上藤乃{netabare}、白純里緒{/netabare}などに言えることだろう。


・「荒耶宗蓮の計画」について
前項の「根源」『 』へ至る為には荒耶自身の真理の追究(つまり魔術師の研究と同義)では達成出来ない。それは荒耶の真理の追究の目的が他の魔術師と異なり、人類を滅ぼすことに繋がる事案である為、「抑止力」(後述)による制約を受けてしまうからである。
よって、肉体が既に根源に繋がる可能性を持っている両儀式に接触し、彼女を根源に近づけ、最終的に彼女と一体化することにより根源に至ろうとした。
巫条霧絵、浅上藤乃という式と同じ「虚無」を起源にもち、しかし殺戮を無自覚の内に愉しんでいるという刺客を送り込むことにより、彼女を精神的に追い詰め根源に近づけた。
彼の計画は彼が予期していたよりもずっと早く最終段階に以降する。それは黒桐幹也と白純里緒の存在が影響している。式が追い詰められた原因は七章で、式が何故根源に繋がるのかは後述する。


・「小川マンション」について
小川マンションは荒耶宗蓮とコルネリウス=アルバの合作である(設計には橙子も参加)。
アルバが生きた人間の脳髄を摘出し、之の生命を維持させ、荒耶が制作した人形を本人と寸分違わぬ生命体として存在させた(この人形は血が出ず、歯車で動く様だ)。
また荒耶は結界によってマンションを外界から隔絶された異界とした。
アルバの「ようこそ、私のゲヘナに」という台詞は、「ようこそ、私の地獄に」という意味。
小川マンションは荒耶にとっては人の死の探求、アルバにとっては橙子の殺害が目的だ。
小川マンションでの実験は、荒耶宗蓮による実験であるが、之は式と一体化し根源に至る計画とは別件である。しかし、式の肉体が思いのほか早熟し、丁度罠に掛かったので、急遽予定を繰り上げて根源へ至る準備に取り掛かった。

荒耶は、精神的に不安定な不和を抱えた人間を選りすぐってマンションに入居させ、その嗜好を凝らした建築様式で更に住人の精神を不安定にさせ、死に至らしめた。
マンションは完全なシンメトリーになっており、西側と東側はマンション内から見る外観も似通っており、判別不可能な構造となっている(この構造は太極の具現である)。
東西棟は円柱の中央のエレベーターと其れに纏わりつく螺旋階段のみで接続されている。
入居者は始めは西棟に住み、死亡後は脳髄を摘出され、荒耶が制作した人形を通して東棟で生活する。エレベーター及び螺旋階段はロケット鉛筆というより、螺旋を描いているドリルの芯や、床屋でくるくる廻っているサインポールを想像すると理解し易い。
下から芯を捻り上げて出口をずらす事により東西を入れ替え、住人に気付かれることなく部屋の移動を完了させたのだ。
そして東棟の人形住人は朝に起き、夜に死ぬという生死の螺旋を繰り返し「命日」を毎日繰り返す。対して西棟では本人の死体をそのまま放置しておく。こうして一方は死骸、一方は朝蘇り夕べに死ぬ生きた人形という同時刻に同じ人間を二人用意し、同じ死を矛盾した状態で毎日螺旋させることで、その死にどのような差異が生じるかを実験した。
小川マンションは荒耶の体内に等しく、彼の思うままに操ることが出来る。
燕條巴は実験の成果と言える。


・「蒼崎橙子」について
蒼崎橙子は魔術師(後述)の六世に生まれた。14歳で魔術協会に留学し、衰退したルーン魔術を専攻して之を復興させた。荒耶、コルネリウスとは同期である。その後礼園女学院に入学。持って生まれた才能から次期当主として有望視されていたが、妹の青子に敗れた。魔眼を持っており、普段は魔眼殺しの眼鏡を掛けている。妹の青子とは相当仲が悪く、殺しあうほどである。かつての使い魔が青子に敗れたため、両儀式を新たな使い魔の代わりとして用いている。
魔術協会はトップランクの魔術師である橙子に「赤」の称号を贈ったが、本来望んでいた「青」とは真逆の「赤」を得たということで、橙子はこの称号を不服に思っている。そのことを指摘されること、とりわけ「傷んだ赤色(スカー・レッド)」と呼ばれることはことさら嫌っており、そう呼んだ者は全員殺している。例外は殺し損ねた妹のみ。
また、当代屈指の人形師で、人形という雛形で根源への到達を目指していたが、もう興味は無いらしい。
その魔術が根源に近づいた為、魔術協会から封印指定(後述)を受け出奔中である。
彼女は「魔術師当人が最強である必要はなく、最強のものを作り出せばよい」という持論から、使い魔を鞄に入れ、之を使役することで戦闘する。
また、アイデンティティの確保が出来れば肉体はさほど重要ではないとの考えらしく、
自身の脳が損傷した場合は即時に用意しておいた予備の人形が起動し、以前の記憶を継承して再び生活を送る。よって橙子を殺すには、脳髄が損傷しないように半殺し状態にし、
永遠に延命治療を施さなければならない。荒耶が「私が蒼崎を仕留めたのは詮方なき事だ」と言ったのは、荒耶は魔術師として橙子に敬意を払っていてそれを悔やんでいるのと同時に、
橙子を殺すことは彼女の復活を意味する為に、仕留めたという表現を使っているのだ。
首となった橙子は五感を有しており、コルネリウスが「傷んだ赤色」と言ったことも聞いていた為に、荒耶は「――たわけ。口にしてはならないことを口にしたな、コルネリウス」と言ったのだ。橙子は、コルネリウスが橙子の頭を粉砕したことで、彼女の予備を起動せさられたので、小川マンションに駆けつけられたのである。


・「燕條巴」について
彼はかつて走ることが大好きで、中学では名の知れた陸上競技の選手だった。
しかし、父親が失業し高校入学の資金は自らアルバイトをして稼ぐこととなった。
生活苦の為働きながらも陸上だけは続けていたが、父親が交通事故で人を轢き、賠償は母親の親戚が何とかしたものの風評被害で陸上は止める事になった。これにより生き甲斐を失って高校を中退。父親は飲んだ暮れであり、彼はアルバイトで、母親はパートで生活費を稼ぐという無気力な生活が続いていたところを荒耶に目を付けられて、一家で小川マンションに越す。ある日、帰宅後に母親によって殺害され、前項の荒耶の計画から、脳髄を摘出され、人形として(本人に人形だという自覚は無い)朝生まれ夕べに死ぬという螺旋を繰り返す。ある日、自身の死を予期して母親を殺害し逃亡、自身を支配する「ニセモノ」であるという認識を恐れ、圧倒的な強さを見せる式に見蕩れて彼女のアパートに転がり込んだ。
実際に彼が抱く自身が「ニセモノ」であるとする自覚は、荒耶とコルネリウスが制作した人形である為だが、彼は陸上を諦めたことを理由と合理化し納得した。
いつしか式を愛するようになり、彼女が荒耶に捕らえられて困惑するが、幹也に幼少期を過ごした家屋に連れて行かれて家族への思いを思い出し、自身が「ニセモノ」であるとする認識、家族への想い、式への想いに決着を付ける為、幹也とともに小川マンションへ向かう。元から極悪な人間など居らず、置かれた境遇が人間を形成する(因って私は性悪説を支持)。巴の家族も昔は平凡ながら幸せを享受していて、彼はそれを思い出すことで、家族への苛立ちや、真実を直視することの恐怖から解き放たれたのではないか。彼の式への恋慕は荒耶が仕組んだ人為的な感情だったが、彼はそれを越えて彼女を愛していたことを本物だと認識し、式の為でなく自身の為に荒耶と対峙した。
彼の起源は「無価値」であるが、彼が荒耶を足止めしたことで、式が復活する為の時間が稼げて、結果的に荒耶は倒されたので、彼は起源を凌駕したことになる。
また、彼の家族愛の象徴である「家の鍵」は、普段家に鍵を掛ける習慣の無かった式に、鍵を掛けさせるという意味を残した。
彼は幹也に「俺はさ、両義に同じ物を見て安心していただけだったんだから。俺とかあいつみたいな人間にはさ、あんたみたいに呆れるほど害のないヤツの方がいいんだよ――」と言っている。幹也がなぜ異常者に対して他の常人と同等に普遍的に接するのかについては、六章忘却録音で述べる。
因みにFateの衛宮士郎は彼がモデル。


・「抑止力」について
カウンターガーディアンとも言い、集合的無意識によって形成される世界の安全装置である。抑止力とは発生しないように止める力のことで、一般に軍事で使用される言葉だ。
春秋戦国時代の縦横家の張儀の連衡策や核抑止論が有名である。相手が動作する際に、その動作に関わるリスクと得られる利益を天秤に掛け、リスクの方を高いと思わせる力を主に指す。TYPE-MOONの世界観では地球で発生する事象の内、地球或いは人類の生存に差し障る脅威を排除する力と考えるのが妥当だ。
抑止力には二種類有り、人類の持つ破滅回避の祈りである「アラヤ」と、星自身が思う生命延長の祈りである「ガイア」がある。
またこの抑止力は、「歴史的人物は世界史的な個人であり、したがって絶対者は個々人の情熱やはたらきを利用して自己を実現する」というヘーゲルの絶対精神と似通ったところがある。地球或いは人類の生存を脅かす事象を森羅万象すべてが拒み阻止しようとする。
荒耶が憎んでいたのは、前者のアラヤであったために、彼の螺旋の探求は、彼が探求を始めた時点から矛盾していたと言える。

仏教の阿頼耶識は四章伽藍の洞で触れた唯識(あらゆる諸存在が個人的に構想された識でしかないのならば、諸存在は主観的な存在であり客観的な存在ではなく、唯、人の感覚でしかなく、実態は空)の思想で、五感(眼・耳・鼻・舌・身=五根)が含まれる般若心経の六識(眼・耳・鼻・舌・身・意)に未那識、阿頼耶識を加えた八識の最終である。六識については痛覚残留で述べたので割愛する。
阿頼耶識は人間存在の根本にある識で、未那識とともに無意識に該当する。
心の内にある種子(しゅうじ:色々の現象を起こさせる可能性、可能力で、ある現象が影響して自らに習慣的な刺激によって植えつけた印象のこと(唯物史観に少々似ているかもしれない))から、世界の諸現象を生じる。生じた現象はその人の阿頼耶識に印象(熏習)を与えて種子を形成し、刹那に生滅を繰り返し、之を持続する。
諸法の種子を内臓「一切種子識」
過去の業の果報(異熟)から生成「異熟識」
他の識の根本「根本識」
身心の器官を維持「阿頼耶識(我持識・執我識)」
などの働きがある。
未那識(まなしき)は、意識と阿頼耶識の中間にある無意識を担当する識で、阿頼耶識の見分から我・法などを思量し六識に作用する。
八識はみな思量の作用があるが、末那識は特に恒(間断なく常に作用する)と審(明瞭に思惟する)との二義を兼ね有して他の七識に勝っているから末那(意)という。
睡眠中でも深層に於いて作用し阿頼耶識を対象とし、それを自分であると執着する。
未来福音の両儀未那はこれに因む。


・「魔術と魔法、魔術師と魔法使い」について
魔術とは魔力を用いて人為的に神秘・奇跡を再現する術の総称である。
常識で可能なことを非常識で可能にしているに過ぎない。
現在、魔術の殆どは文明の利器により現実可能であり、指に火を灯すか、ライターで火を灯すかくらいの違いしかない。魔術を使うものを魔術師といい、その殆どは魔術協会に加入している。
魔術協会は魔術師を監視し、魔術の漏洩や魔術師が一般人に危害を加えることを防ぐ。
魔術師は魔術協会で勉強し、その膨大な資料を自身の研究の為に使用する。
蒼崎橙子やコルネリウス=アルバ、荒耶宗蓮はこの魔術師に該当する。
魔法とは人間には到達出来ていない、或いは到達し得ない「奇跡」を具現させる術である。
この魔法を使うものを魔法使いといい、世界に五人しか居ない(生きているのは四人)。
判明しているのは、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグと蒼崎青子の二人。
人類の科学が進歩していなかった頃は、魔法使いのハードルは現在よりも低く、多くの魔法使いが実在したが、現在それらは文明の発展に伴い殆どが魔術へと格下げされてしまった。
また、魔法は魔術師達が目指す最終到達地点である「根源の渦」から引き出された力の発現である。
魔術師の家系は生涯を賭けて学んだ神秘を魔術刻印という遺産にし、子孫に伝える。
そして研究成果の最終目標である「根源の渦」『 』への到達を目指す。
魔術協会は、学問的に習得不可能レベルの魔術を身につけた魔術師(「根源の渦」への到達が近い者)に対し、魔術協会がサンプルとして保護する旨の令状「封印指定」を出す。魔術師としては栄誉であるが、軟禁生活を強いられるため、たいてい逃亡する。橙子はこの封印指定を受けているため、伽藍の堂に結界を張って隠遁している。


・「肉体と精神」について
「われ思う、ゆえにわれあり(コギト=エルゴ=スム)」で有名なデカルトの説いた物心二元論では、物体と精神とは実体として存在し明確に分離され、物体は精神に依存せずに因果関係によって運動するという機械論的自然観を確立した。物体は「高邁の精神」によるコントロールを受ける。現在此の説を支持するものは殆ど無く、機械論的自然観を形成したことで、寧ろ批判されている。肉体と精神は切っても切り離せない関係にあり、自我の形成には肉体が多大な影響を与えている。くわしくは終章空の境界で述べる。


・「根源」について
根源とは全ての原因。あらゆる現象が流れ出したもとである。『 』はこの根源に近いが、
根源をも含む森羅万象の原因であると解釈される。
有り体に言うと「真理」「究極の知識」ということになる。全ての原因であるがゆえに、全ての結果を導き出せるもの。この一端の機能を指してアカシックレコードと呼んだりもする。
有と無、生と死の狭間の世界であり、仏教的に言えば「空」に近いと言える。
魔術師は根源に到達することで、先祖代々の目的である永遠の真理に到達する。
この根源とは、ギリシア哲学で言えば、「イデア界」、仏教で言えば、「般若波羅密」の実践により得られる真理(即ち一切皆空と悟る涅槃寂静の境地)と言える。
一種のエロース(イデア界への羨望・回帰欲求)があるのかもしれない。
前項で述べた抑止力の説明にヘーゲルの絶対精神を用いたが、こちらの方が絶対精神に近い側面を持つ。アイデンティティを持ったまま、根源に到達したものは自らの願いを叶えることが出来るらしく世界を改変する力を持つ。Fateの聖杯もこの考えによって理解出来る。ヘーゲルが言うには絶対精神は神(唯一神・人格神)と同義らしい。
アカシックレコードについては六章忘却録音で述べる。


・「太極図」について
太極とは即ち根源の事で、道家や陰陽家で重視された。陰陽魚太極図が有名である。こちらも二元論的な側面が強く、全てを陰と陽に分ける。例えば陽には、明・男・積極的・攻撃・前・上・左・天・奇数・味方・夏などの意味があり、陰には、暗・女・消極的・防御・後・下・右・地・偶数・敵・冬などの意味がある。太極を二つに分けたものを両儀、四つに分けたものを四象、八つに分けたものを八卦という。大韓民国の国旗を太極旗といい、真ん中の赤と青により描かれている巴を太極、四方に有る三本の棒の集合を八卦という(韓国の国旗はこの八卦の内の四つ。因みに八卦は16パターン存在し、「易経」の八卦を後天図、宋学の朱熹の八卦を先天図と云う。ここでの八卦は先天図)。――と--を爻(コウ)、爻により構成されるものを卦(ケ)と云う。
爻が一本な卦(二つ在る)を両儀、爻が二本な卦(四つ在る)を四象、爻が三本な卦(十六在るが、内、八つ)を八卦という。
両儀は太極を二つ、つまり陰と陽に分離したものであり、式が男性人格と女性人格を持ち、一方は欲望の抑圧や拒絶、一方は欲望の解放や受諾を担っていたのもこの為。式のことを太極というのも此の為。根源から分離した小川マンションは太極図の具現である。


・時系列の整理
1.本物の燕條巴が母親により殺害され、荒耶の実験が始まる。
2.黒桐幹也が免許取得の為に、長野の自動車学校へ通うことにより、観布子を留守にする。
3.偽物の燕條巴(以下巴)が予知夢(実際は現実)を恐れ、母親を殺害、逃亡中に式に出会う。
4.空き巣が燕條家に侵入し、死体を発見(突発的な犯行←抑止力に依る)
5.巴、式の部屋に転がり込み居候する。親殺しや偽物感から苦悩する。
6.巴、式のために部屋の鍵を造る。
7.式は殺人衝動を満たす為に巴を殺そうとするが断念。
8.巴、コルネリウスを目撃、式に報告するが一蹴される。此の頃から式へ好意を持つ。
9.幹也、免許取得後、伽藍の堂にて橙子に小川マンションについての調査を依頼される。
10.鮮花が伽藍の堂に来る。黒桐、橙子から両儀や魔術についての享受を得る。
11.秋隆が刀を式のマンションに届けに来るが留守で幹也に預ける。
12.巴、母親を殺した筈なのに、生きている母親を目撃する。
13.幹也、橙子に小川マンションについての調査結果を報告。刀を式に渡す。
14.何日か経過し、巴は不審に思い式と共に小川マンションに赴き、もう一人の自分と最後の一日を直視する。式の部屋に鍵を掛ける。
15.式、荒耶と戦闘するも彼に捕らえられる。巴、真実を知り、式を救うべく逃走。
16.同日、橙子と幹也が小川マンションに調査に入る。
17.翌日、コルネリウスが橙子の人形館に挨拶に来る。
18.橙子、小川マンションでコルネリウスと対峙、之を倒すも荒耶に敗れる。
19.荒耶、橙子の頭をコルネリウスにプレゼント。
20.幹也、式の部屋で巴と会い、彼を幼少期過ごした家へと連れて行く。
21.幹也、巴に式の部屋の鍵を貰う。
22.幹也、小川マンションに向かい、コルネリウスに苛められる。
23.巴、地下の工房で自身の脳髄を発見し、荒耶の元へ赴くが返り討ちにあい消滅。
24.コルネリウス、橙子の頭を粉砕、二人目の橙子が現れて彼を殺害し幹也を救助。
25.式、荒耶の造った結界を破壊(結界の死線を切断)し、具現、荒耶を消滅させる。
26.式、巴の影響で部屋に鍵を掛ける様になる。

幹也が式の部屋のインターホンを鳴らした順番
①上記11.の時のチャイム。
②上記14.の時のチャイム。
③上記20.の時のチャイム。


・「sprinter」について
燕條巴をイメージして奈須きのこ監修の下、梶浦由記によって作詞・作曲された。
他の曲に比べて歌詞が明快で、曲調もテンポが速く、「競争」しているかのように次々と繰り出される歌詞が特徴的だ。巴が式を想っていた事、肉体はニセモノであるが、精神はホンモノであること等が、歌詞に刻まれている。空の境界の主題歌の中では私が一番好きな曲だ。


・「矛盾螺旋」という作品について
黒桐幹也は自動車運転免許取得のための教習のため、長野に1ケ月間滞在し、留守にしていた。燕條巴は陸上の選手だったが、父親の失業によりアルバイトを始め学費を自分で稼いで高校へ入学したが、父が交通事故を起こしそれが元で、高校を中退。一家で小川マンションに越し、そこで母親に殺害された。魔術師荒耶宗蓮は人の螺旋し、留まることの無い性に失望し、世界を改変する為に『 』への到達を目論み、「抑止力」に左右されない、両儀式と一体化するという方法を模索し、霧絵・藤乃を差し向け、式を精神的に根源へと近づけた。今回はコルネリウスと別件で人の「死」に対する実験を小川マンションで行っており、巴はその実験に利用され、死後も人間の精神を持った人形としての生活を送っていた。
巴は荒耶の実験の成功例であり、死の螺旋から脱出したが、親殺しや自らがニセモノであるという感情に苦悩していた。荒耶の細工により式に近づき好意を覚え、彼女を愛し始めた。巴は何日か経過し殺したはずの母親を目撃し、小川マンションへ行き確認することを考え始めた。丁度その頃、橙子は免許を取得し帰還した幹也に、小川マンションの調査を依頼した。幹也は式の部屋に向かうが留守で、そこで秋隆から名刀を預かり翌日式に渡した。幹也はマンションの調査を一晩で終わらせ、その調査結果を見た式は、巴と共に小川マンションへ向かい、この建造物の真実を知るが、荒耶に敗北し捕らえられる。その後、橙子と幹也は小川マンションを調査し、この建造物の真実を知る。翌日、橙子の人形館にコルネリウスが登場し、式を捕らえた旨を橙子に伝える。橙子は戦闘の支度をし、小川マンションへ向かってコルネリウスを破るが、荒耶に敗北し、首だけとなった。待ちきれなくなった幹也は、式の部屋で巴と出会い、彼を旧家に案内した後、共に小川マンションへ行く。此の時、巴に式の部屋の鍵を貰う。巴は荒耶に返り討ちに遇い消滅した。幹也はコルネリウスに目の前で橙子の頭を粉砕され、彼に苛められるが、二人目の橙子が登場し、彼は死亡した。巴が荒耶との問答で時間を稼いでいる間に式は、覚醒し荒耶の結界を破り、名刀によって彼を消滅させ、彼の野望は脆く崩れた。


・名言(原作より抜粋)

式「だっておかしいじゃないか。人間が見れるのは外見だけだろ。それを見てくれたおまえはいらなくて、心なんて見えもしないモノを見てくれなきゃイヤだ、なんて普通じゃない。普通じゃないって事は異常ってこと。ほら、おかしい話じゃないか。そいつもさ、心を見てほしかったら紙に書けばよかったのにね。臙条。おまえ、そいつと別れて正解だよ」

式「お断りだ。おまえの命なんて、いらない」

荒耶「荒耶宗蓮。式を殺す者だ」

荒耶「無こそがおまえの混沌衝動、起源である。――その闇を見ろ。そして己が名を思い出せ」



幹也「ろけっとぺんしるって、何ですか?」

橙子「黒桐。魔術師という輩はね、弟子や身内には親身になるんだ。自分の分身みたいなものだから、必死になって守りもする。・・・・・・まあそんなわけだから、きみは安心して待っていろ。今夜には式を連れて帰ってくる」

コルネリウス「Repeat!」

巴(―風は止んだし、合図も鳴った。さあ―そろそろ本気で走りはじめなくちゃ―)

コルネリウス「危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな、危ないな」

橙子「おまえは死んだはずだ、なんてお決まりの台詞だけはよしてくれよコルネリウス。器が知れるぞ。あまり、私を失望させないでくれ」

コルネリウス「お前は――本物か?」

橙子「学院時代からの決まりでね。私を痛んだ赤色と呼んだ者は、例外なくブチ殺している」

荒耶「語るまでもない。私が幾度となく争ってきた想念、荒耶が敵とみなすモノは、救いきれぬ人間の性である」

橙子「認めろ荒耶。私達は誰よりも弱いから、魔術師なんていう超越者である事を選んだんだ」

巴「わりぃな、両儀。俺は、おまえのために死んでやれねぇわ。俺はさ――俺のために、この命を懸けなくちゃいけねえみてえだ」

巴「ああ。――それでも、この心は本物なんだよ」

巴「――そりゃあ、うちの家族はろくな連中じゃなかった。でも、こんなふうに殺されるほど、悪いヤツラじゃなかった。こんなふうに死んじまうほど、罪深くはなかったんだ・・・・・・!」

荒耶「戯け」

荒耶「最後に教えよう。おまえは何も成し得ない。なぜなら――おまえの起源は”無価値”だからだ」

荒耶「語るまでもない。私が幾度となく争ってきた観念、荒耶が敵とみなすモノとは、救いきれぬ人間の性である」


橙子と荒耶
「アラヤ、何を求める」
「――真の叡智を」
「アラヤ、何処に求める」
「――ただ、己がうちにのみ」
「アラヤ、何処を目指す」
――知れた事。この矛盾した螺旋(せかい)の果てを

式「オレ、おまえの部屋のカギ持ってない。不公平だろ、そういうのって」


感想

本作は空の境界中、理解するのに最難関な作品であり、頁数も一番多いことから、考察にも多大な時間と労力を費やし、レヴューも他の追随を許さぬほどに冗長になってしまった。
このレヴューによって一人でも多くの人の「矛盾螺旋」という作品の理解の参考になれば幸いである。
感想としては、まず原作と比較してあまりに尺が短く(自己調査の結果、尺比1:0.40)、映画の視聴だけで本作を理解するのは繰り返すが不可能である。また、本作は只でさえ理解に難いのに、あまつさえ時系列のシャッフルが行われて一層理解が困難になっている。
しかし、映画を全章観終え、原作を読破し、考察を完了した上で本章を視聴すると、以前との理解の程度が甚だしく、歓喜を覚えるほどであり、感無量である。この感覚が味わえるのならば、この時系列シャッフルも悪くないと最近想い始めた。是非この感覚を体験していただきたい。橙子が小川マンションの前で降車するシーンは素晴らしい。
本作は、原作との良い意味での違いが多く浮き彫りになっている。その最たる例は、巴と荒耶の対峙の場面である。原作では、エレベーター降車後、巴と荒耶が対峙し、会話があって、巴が荒耶に襲い掛かって、起源が「無価値」であることを宣告され消滅する。
本作では、地下の脳髄壜の前で、荒耶に真相を暴露され、後にエレベーター降車後、巴が荒耶に襲い掛かり、「無価値」宣告を受ける。ここで巴が「ここに居たんだ」と云って消えて行く。この場面が大変良い。因みに原作では襲い掛かる際に「ここに――居たから――!」と云っている。
尚、巴は荒耶に起源が「無価値」であることを宣告され、消える際にエレベーターの中に居る両儀式を目撃している(1:30:54)。しかし、荒耶には見えていなかった。巴は死ぬ際に、式の再誕を予知したのだろうか。
作品に対しては、荒耶宗蓮という人物の野望や両儀式の本質、燕條巴の人生という様々なテーマによって構成されており、大変見堪えがある。一件落着した後の式のデレには強烈な破壊力があり、何時もの蠱惑的な魅力とは一風変わった愛らしい魅力に溢れていた。{/netabare}


この五章は、一から四章を視聴した上で「両儀式」という人物について改めて考えさせる作品だった。また、荒耶宗蓮、コルネリウス=アルバという魔術師の登場と、彼らによる計画が、空の境界という作品の世界観をより一層具現化させた作品でもある。
また、三章、一章、本章と式が幹也へ寄せる想いが深くなっていることが随所で伺える。

本作は考察のし甲斐があり、非常に面白い。また現代人への処方箋のような役割を果たし、私達にカタルシスを与える。

私は全章視聴後原作を購読したが、読み応えがあって大変面白い。アニメを観た人は補足の為にも、お勧めしたい。
未視聴の方は、是非挑戦していただきたい作品である。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 52
ネタバレ

disaruto さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

複雑難解なストーリー構成。それぞれの螺旋の果てにあるものは?

制作はufotableで原作は奈須きのこ氏の小説です。
ジャンルは伝記ファンタジーです。
全8巻あるうちの五巻目が「矛盾螺旋」になります。
グロ描写とともに精神衛生上良くない場面もあります。
時系列では五番目になります。
この物語の集大成といえる完成度だったと思います。(終わってないですが)

作画について戦闘シーンは第一章並みの迫力でした。
とにかく式が動きまくっています。
黒幕との戦いは本当にしびれました。
BGMも素晴らしい。(やたら長い曲がありましたね)

他の章も難解な世界観を放り投げて視聴者に見せているためわけわからないことが多々ありましたが、それに加えてこの「矛盾螺旋」は時系列をずらし、場面を不意に切り替えるため中盤までストーリーが全く見えません。
ひょっとすると最後までわけわからないかもしれません。
「これを映画でやったら、オンタイムで見た人で理解できる人いるの?」と思わざるを得ない感じです。

ちなみに私は最初は普通に鑑賞し、わけわからないながらも映像・音楽・演出の素晴らしさで見入ってしまいました。
けれども何が凄かったのかは全く分からない。
3回見て、やっと話が自分の中で見えたのでレビューを書いています。

今回の章は臙条 巴(えんじょう ともえ)という男が母親を殺すところから始まる。
彼は家から逃げ出し、路上で襲われていたところを式に助けられる。
行き場のない巴は式の家でかくまってもらうことになる。


以下考察。
{netabare}この話の大本は二つの螺旋構造でできていると私は思います。
一つは「臙条 巴」の螺旋、もう一つは「荒耶 宗蓮」の螺旋です。
前者はミクロ的な視点で、後者はマクロ的な視点で描かれており対比がなされています。
この二つの螺旋が絡み合うことでストーリーが組まれています。


まず「臙条 巴」の螺旋について。
巴は話の半年前に死んでいます。
彼の脳髄だけが保管され、何度も繰り返される殺人実験に使われていました。
これが彼にとっての「矛盾螺旋」、「矛盾した連なる日常」です。

しかし、彼はその「矛盾螺旋」を、母親を殺すことで知らず知らずに破ってしまいます。
殺した理由は「自分が何度も殺されるところを見ていた」から。
繰り返されることに対する伏線はドアを開けるシーン、時計台、アナウンサーなどでも示されます。
彼は自分が一体何のために生きるのかわからなくなります。
それを解くカギになるのは式です。
彼女との生活で彼女への愛を感じ、彼女が生きる意味の一つとなります。
また幹也の導きで家族への愛を取り戻し、平凡な日常を取り戻すため、そして愛する人を助けるために式のもとへ向かいます。

彼にとっての「真の螺旋」は「家族がいて、愛する人がいる、平凡な日常」です。
なんてことはなく、そして最も尊いものを彼は求めていました。
荒耶に歯が立たず存在を消されますが、その時間稼ぎで形成が逆転します。

「この螺旋が、矛盾していなければよかったのに」
この言葉は、「矛盾螺旋」の必然として出会った式と、違う形で出会いたかったという思いから出たものでしょう。


次に「荒耶 宗蓮」の螺旋について。
荒耶は200年もの間、人間の愚かな行為を見て、また無意味に思われる死も見てきました。(戦争など)
なぜかその行いは止むことはないです。
これが彼にとっての「矛盾螺旋」、「矛盾した人類の歩み」です。

彼は根源の渦、アカシックレコードにたどり着いて、すべての原因・真理・過去・現在・未来を知り、死んでいった者たちの無意味な死を意味ある死に変えようとします。
それを解くカギになるのも式です。
彼女の持つ「直視の魔眼」は物体の真理を知ることにつながっており、つまりそれは彼女自身が根源の渦につながっていることにほかなりません。
その体をのっとり、根源を開こうとします。

彼にとっての「真の螺旋」は「叡智を持った人間による世界の創造」です。
醜い人間を消し、愚かな行為をやめさせたい。
それが無理であることは分かっているので、根源を開くことで死に意味を持たせ、そしてすべてを終わらせようとしたわけです。
彼の壮大な野望が、矮小でしかない巴の望みによって破られたのは皮肉ですね。

まだまだ指摘したい点はありますが、私の文章力ですと収拾がつかなくなりそうなのでこの辺で。{/netabare}


総括して、あにこれやってよかったと思いました。
多分普通に過ごしてたらこの作品を知らなかったし、見なかったと思うので。
ここら辺がこのサイトの良さなのでしょうね。
何度も楽しめるスルメな作品だと思います。
むしろ何度も見ないとわけわからない。
これほど作品の面白さを伝えたいと思ったのは初めてかもしれません。

どうでもいいですが、ラストシーンの式のデレが凄くかわいかったですw


[全て視聴し終わって]
{netabare}荒耶は白純という面倒くさい置き土産をしましたねw
彼の存在が式と幹也の愛の物語を引き立てます。
終わっていないけど集大成と書きましたが、これは普通に集大成だったようです。{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 35
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

現在と過去、真実と虚構の境界線

原作未読。
全8章からなる物語の5章目。約114分。

「空の境界」全章に共通する項目は、第1章のレビューをご覧ください。
→ http://www.anikore.jp/review/450724/

すべての黒幕の登場。
そして、決着に至る物語。

1~4章までの事件は、いったい何が目的だったのか、それが明かされます。

この章の主人公でもある「嚥条巴(えんじょうともえ)」。
Fate/staynightの主人公「衛宮士郎(えみやしろう)」のモデルにもなった人物です。

この章の見所であり、見る側を混乱させる要素でもあるのが「時系列のシャッフル」。
同時並行で複数の話が進み、同じ時間帯に起こった出来事が別の場面で流れる。
その演出も面白い。
扉を開けたら別の時間だったり、時間軸が場面変更することなく変化します。

見てる側にとっては、いつどこで何があったのか、わかりにくい構成になっています。
そんなねじれた時間軸が、タイトルの「矛盾螺旋」とよくマッチしている作品だと思います。

そして、今までの集大成と言わんばかりの圧倒的な戦闘描写も特徴です。

EDテーマは「sprinter」。
英語で「競走者」を表します。
巴の事を歌った曲なのですが、シンクロっぷりがすごいので、ぜひ歌詞を最後まで聞いてみて下さい。


【5章「矛盾螺旋」の考察】
{netabare}
非常に考察しがいのある話です。
完全に解説しようと思えば何万文字になるかわかったもんじゃありません(笑)
……というか、私自身、よく理解できていません。5回は見たのにw
原作に当たらねば!!


さて、時系列や場面移動が複雑なこの章ですが、途中で入る白黒のカットインで区切りが付きます。

「矛盾螺旋」
前半。
ほぼ時系列どおりに話が進みます。

繰り返す「死」の1日。
巴がマンションを脱出し、式と出会う。
そして、式が荒耶宗蓮に捉えられるまで。
丁度この頃、黒桐幹也は自動車教習所で免許を取り、その後、巫条霧絵に眠らされていました。


「螺旋矛盾」
中盤。
「カチャン」という時計の音が流れる度に、時系列が飛びます。

橙子と幹也がマンションのことを調べ上げ、荒耶宗蓮にたどり着くまで。
丁度この頃、式の部屋には巴がいて、カギをかけていました。
そのため、幹也は式の部屋に入ることができませんでした。


「矛盾螺旋と螺旋矛盾が混じり合うとき」
後半。
何の脈絡もなく時系列や場面が飛びます。

たとえば、幹也と巴がマンションにたどり着いたとき、車が3台あります。
しかし、次の瞬間には2台、そしてまた3台に戻っている。

時系列を追えば、
①一人目の橙子が来る
②幹也と巴が来る
③二人目の橙子が来る
という、単純な話なのですが、
①橙子が車を止めるシーン
③橙子が車から降りるシーン
②幹也と巴が来る
と、順序を入れ替えることで、橙子が2人いることに気付かせないようにしています。


さて、黒桐幹也と、荒耶宗蓮から逃げてきた嚥条巴が出会います。
そして、巴の本当の家へ向かう2人。

……家族が崩壊していく過程が、見ていて苦しかったです。
しかし「死」を永遠に繰り返されるほどの罪など犯していない。
過去の出来事を知り、家族の「本当の愛情」に触れ、巴は、真実の体と偽物の体の境界線を乗り越え、式を助けに行く決心をします。
EDテーマの「sprinter」=競争者。元陸上部。走り出す巴。


アルバ「お、お前は本物か!?」
橙子「お前さぁ……私に対してその質問に何の意味があるんだい?」
橙子「実を言うとね、お前の憎しみも悪くなかった。それは蒼崎燈子という私がいる証だから」


荒耶「お前には何一つ本物であるものはない」
巴「分かってる、俺が偽物だってことくらい。だけどよ、俺には過去はないけど、強い思いがある!俺は両儀が好きだった!偽物だろうと、この心は本物なんだ!!」


2人とも「誰かの存在」によって本物と偽物の境界を乗り越えているんですね。
処刑モードの橙子、全力で荒耶宗蓮に立ち向かう巴、2人ともかっこよすぎる!!

アルバが倒され、巴が時間稼ぎをしたことで、式は結界から脱出することに成功しました。
巴が消えたことを悟った式は、「殺人衝動」を超えた「怒り」で荒耶宗蓮に立ち向かいます。
そして敗れる荒屋宗蓮。
しかし、彼にも悲しい過去があったんですね。
ただ、それは無関係の人々を巻き込む「実験」でもあり、単純に許されるものではない。

結局、巴は消えてしまいましたが、巴「ここに居たんだ」のセリフ。
そして、幹也に対して「俺、お前の部屋の鍵もってない。不公平だろ、そういうのって」とすねた式。
「鍵」という愛情の証を通して、式の中に巴が残りました。
切ないながらも、救いのある終わり方で良かったです。

【全て見終わった人へ】
{netabare}
シナリオを考えれば、この章が事実上の最終回ですね。
最終回の名に恥じない、最高の演出と最難関のストーリーでした。

次回は、待ちに待った鮮花の出番。
次回予告の「えへっ★」にやられたのは私だけではないはず!!
{/netabare}

{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 41

72.3 5 嫉妬アニメランキング5位
THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!(アニメ映画)

2014年1月25日
★★★★★ 4.1 (538)
3110人が棚に入れました
芸能事務所765プロに所属する13人の少女たちが、アリーナライブに向け切磋琢磨する様子を描く。

声優・キャラクター
中村繪里子、長谷川明子、今井麻美、仁後真耶子、浅倉杏美、平田宏美、下田麻美、釘宮理恵、たかはし智秋、原由実、沼倉愛美、若林直美、滝田樹里、赤羽根健治、大塚芳忠
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

春香の「夢」「成長」「未来」

[文量→特盛り・内容→感想系]

【総括】
「THE IDOLM@STER」の続編にあたる劇場版。当たり前ですが、「THE IDOLM@STER」の視聴が前提となり、ここから観てもダメなタイプの劇場版です。

ファンなら必見、ファン以外なら観ても、ん? かな(私はファン♪)。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
冒頭の765プロ総出演の映画ですが、実写であれだけのCGや特殊効果は、リアルだったらムチャクチャ金かかるんじゃ(笑) てゆうか、シンフォギアっぽいし、何より同時上映の紹介までする姿勢には笑ったw

日曜夜のゴールデンに事務所単独でアイドル番組もってるって、全盛期のモー娘。や、AKB48以上やないか~い(カン♪)w

海での合宿、ここから入った視聴者は(ほとんどいないだろうけど)、「なんだ、水着回に温泉回か」なんて思うかもしれないけど、本編から観てきた視聴者は当然、「春香の夢、願い、叶って良かったね!」と、早くも涙腺緩むに違いないのです(断定w)。

アリーナでのライブというか、その前に、皆で向えることが、ね。

研修生との対比で各自の成長を魅せるのは良い演出です。平和な765プロの中に波風立てないために、今さら765プロ内に優劣はつけられないし。

劇中歌「ラムネ色 青春」に乗せ、合宿の様子を伝えるのも良かった(ガーリッシュナンバーの九頭Pなら動画回して売り出すな、とか思ってしまったw)。前から何度か書いてるけど、セリフなしで魅せられるアニメは優秀です。キャラがたってる証拠だしね。

事務所での窓越しの雨のシーン。実写かっ!? というレベルの作画力。ちょっとびっくりしました。でも、可奈と春香がお菓子食べるシーンとか、ミキと春香のトイレでの会話シーンとか、律子が屋上で走り出すシーンとか、なんか人物の動きが奇妙な感じがするシーンがいくつかある気がするんだけど、気のせいかな?

しっかし、提供だろうけどローソン無駄に出過ぎw

バックダンサーにそこまで気を遣うってのは、?

ファンはそこまで観ないし、シホはバックダンサーなのに出過ぎでしょ。イラッとする(笑)

春香は苦労を背負いこむ星の下に生まれてきたんすね、きっと。まあ、でも似合ってるから大丈夫(笑)

ただ、これはちょっと苦言だが、スクールの後輩たちの悩みについて(あまり苦言を述べたくないアニメなので隠しておきますがw){netabare}可奈の逃亡期間、春香にしては対応が遅れた気がする。あの「こうだと決めたら真っ直ぐ突き進む」「良くも悪くも空気読めてない」春香なら、可奈のサボりを聞いて、あるいは辞めたいメールを見たら一目散に駆け出していきそうだけど。あのウジウジは、なんか春香っぽくない。それに、可奈の太ったクダリは、気持ちは分かるけどやはり叱られて然るべき行動だと思う。多少まるくなったとはいえ、千早や伊織あたりはプロ意識高いからイラッとしそうだし、志保に関しては間違いなくキレるはず(バックダンサーのくせに春香に食いつくくらいの活きのいいルーキーですからw)。う~ん、春香を筆頭に皆が熱い気持ちを吐露するアリーナの場面、感動はしたんだけど、やっぱりひとつ突き抜けなかったのは、可奈の我がまま自堕落っぷりに引いてた部分があるかも。みんな可奈をかばってたけど、(一人で自主練習してたとかなら良かったんだけど)あからさまに可奈が単独で悪いだけだから、なんか同情できなかったです。それなのに{/netabare}少し尺をとりすぎたかな、と。

春香が以前経験したような悩みを、今度は先輩という立場で見せたかったのもわかるし、今後の商業的な展開からも新人達も魅せたかったのでしょうが、やはりみんな本編のファンなわけで、しかも多人数ヒロインのアニメ。もっと、少しでもたくさん765プロの面々のストーリーを観たかったのが本音。それこそ、研修生には引き立て役に徹してもらって。

ただ、その中でも、伊織と雪歩の成長はよく描かれていました。プライドが高くて野心家で、ワガママお嬢様だった伊織が周囲に気を使えるようになったり、引っ込み思案で常にみんなの足を引っ張っていた(と少なくとも自分では思っていた)雪歩が、春香と一緒に研修生の食卓についたりと、「大人になったな~」と感動する場面も。研修生や他のメンバーを自宅に招いたがこの2人だったのも驚き。これが(家の広さは別として)千早やあずさだったら驚きはしないのだけれど、「へ~、この2人が副キャプテン的な役割をこなすようになったのか~」と感慨もひとしお。

逆に、千早や美希は本編で準主役級の扱いを受けていたこともあり、少々大人し目でしたね。まっ、要所要所での一言には含蓄があり、やはり他の面々より一歩先に進んでるな~とは思わされましたが。

そして、私が好きな真は今回もほぼ出番なし。贔屓だぁ、不憫だぁ(笑)

終盤、合宿の集合写真をバックに「私もみんなと一緒に変わっていきたいな」と春香が言ったことに驚き。本編で、あれだけみんなとの関係性が変わっていくことに悩み、暴走した春香も、しっかり成長していたんだな~と実感。

ラストを飾るライブに関しては圧巻で何の文句もなし。歌もアイドルっぽくて(まあ、ライブの1曲目に歌う曲じゃないけどw)良いし、なによりカメラワークと作画! 特に、アイドルを手前に置きながらなめるように2階席までうつした時の観客との一体感と、花道をアイドル達が走ってくるのをカメラで迎えたり追いかけたりする所の疾走感は並みじゃない! 気合い入ってるな~と素直に拍手!
{/netabare}
ED含め、THE IDOLM@STERという名作を締めくくるに相応しい劇場版でした。満足!

(蛇足)
{netabare}ラストのライブシーンの直前や最中、ジュピターの面々や音無さんをうつすのは良いんですけど、善澤さんうつす余裕あるなら、千早のお母さんうつそうよ(汗) まさかシンプルに忘れたってことはないだろうけど、あそこで登場させない意味が分からない。それと、横浜アリーナのキャパで、メインのアイドルが12人いて、バックダンサーが7人って少なすぎるんじゃ? (アニメには出せないが)せめて20人くらいほしいって思うけどw{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 25

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

音楽に生かされ、音楽に殺された不遇の迷作か!?

グレンラガンのキャラデザで名を馳せた錦織敦史の初監督、元京アニのネ申演出家である高雄統子を招き入れ、A-1Picturesと名立たる豪華スタッフに支えられて2011年に幕を閉じた『アニマス』
その豪華スタッフが再度集結し今度は劇場版を作ると来たもんです
いやはや、仰天やで・・・っておい!どこにも「待田堂子」の名前が無いぞw
(お察し下さい、待田さんはWUGで忙しかったんです)
もうこの時点で実はちょっとガッカリ気味だったんですわ
「待田×高雄」のタッグが描く『少女像』ってのがあってこそのアイマスだとオイラ思ってたんで










テレビシリーズ26話の後、遂にアリーナでのライブをすることになった765プロダクションのアイドル面々
アリーナライブはアイドルとしての一つの到達点である
またこのライブの後に美希はハリウッドデビュー、千早も海外での本格的な音楽活動を控えていた
そんなアリーナライブでの演出の一環として、765プロオールスターズは初のバックダンサーを従えることとなる
新人育成の意味も込めて、プロデューサーと律子は久々に全員集合した765プロオールスターズと新人ダンサー7人で合宿を取り計らった
しかし現役アイドルとして鍛え抜かれた765プロとの実力の差は激しく、現実に強く打ちのめされる新人達
やがて新人達の間にこのままアイドル志望でいるべきか悩む者が現れ、それをきっかけに軋轢が生じてしまう・・・
プロデューサーから今回のライブのリーダーに抜擢された春香は彼女達をとりまとめようと奮闘するのですが・・・









まず冒頭からテレビシリーズの「生っすか!?回」で荒れまくった(笑)高橋龍也の脚本らしい劇中劇ネタが飛び交います
これはホント素直に面白かったですw
そしてOPには永遠の名曲「THE IDOLM@STER」が流れ、テンションは高まる


本編でとにかく注目したいのは今作でようやく劇場デビューを果たした春香役の中村繪里子さんの熱演ではないでしょうか
自身も「春香に飲まれる(春香しか代表作が無いということ)」を深く気にしつつも、そんな春香というキャラとそのファンに支えられ辿り着いた現在(いま)
「今までの全てがあって現在がある」
劇中の台詞通り、重みを感じる一言です


続いて今作のもう一人の主人公となる新キャラクターの「矢吹可奈」を演じた木戸衣吹ちゃんも素晴らしかったです
今作の一部では木戸ちゃんの歌声も炸裂(笑)しており、今期の『pupa』と『ノブナガ・ザ・フール』じゃ木戸ちゃん成分物足りん!と思っていたオイラには一安心でしたわ


そして、今作には3人目の主人公がいると言っても過言では無いでしょう
それは美希・・・じゃなくて!千早・・・じゃなくて!なんとまぁ【伊織】だったわけです(爆)
一見してワガママに見えても本当のところはメンバー想い
そんな成長した伊織が、かつての自分を見るかのような態度を取る新人、北沢志保に【良き先輩】として指針を示す様は今作のアツいポイントの一つ
オイシイとこ持って行きやがりますホントw


時系列が過去に移ると撮影効果で淡い光に画面全体が包まれる高雄演出のお約束もあり、この辺はマニア泣かせ(?)


ただ、とにかくすんげぇ残念な部分が多いのも事実なんです
『WUG』が7人のキャラクターに上手くスポットを当てつつ上映時間90分で収めたのに対し、こっちは引っ張りに引っ張って120分
長い、長過ぎます


千早の趣味がカメラになったのは何時からだ!?
これはオイラのリサーチ不足かもしれませんけど、伏線まるで張れてませんよ?


765プロの事務所にある箱○とPS3がカットによって色違うし!(←単純に背景ミスですね、これは)


とまあ一回観ただけで気付くポイントが多い


プチシューをとっちらかすカットは何故ロトスコ(?)なのかw
まあ作ヲタ的には笑ったけどw


クライマックスのライブシーンはCG+作画、ですが2次元と3次元の境目がわかっちゃっててそーゆーのはまだ『ラブライブ!』の方が上手いと思います


一番ダメダメなのは音楽ですかね
【劇伴がとにかく五月蝿い】
劇場音響意識したボリュームなのはまだわかるんですが、問題は劇伴の入れ方です
静まり帰ったシリアスな会話に飛び込んでくる耳を劈くようなBGMのイントロ・・・これは酷い、本当に酷い
しかもそれが一回や二回ではないのです
せっかくの声優さんの熱演を掻き消すようなBGMの使い方、こいつぁちょっといただけませんでした


うーん、結局のところテレビシリーズ以上に色々な課題を残してしまった感があります
単純に一本の映画としてはこちらより遥に低予算で仕上げられた『WUG』の方が良く出来ていたと思いますし
まあ、なんにせよファンが観て幻滅するような内容ではないのでギリギリ及第点ってとこだとオイラは思ってます
錦織監督自身が重視しているのもソコだしね

投稿 : 2025/02/01
♥ : 25
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

一人ひとりの想いが伝わってくる、私の考える最良・最愛のアニメ

この作品の魅力を、ひとことで語るのは結構難しいです。
ただ、一点だけ指摘しておきたいのは、鑑賞した回数によって、この作品の見え方が微妙に変わってくるのではないか、ということです。

まず1回目は、誰だってこの作品のストーリーを追いかけます。
鑑賞し終えての感想は、大方は「幾らか波乱はあったけれども、最後は予定調和的に綺麗にまとまって良かった」でしょう。
2時間ちょっとという尺では、やはり少し物足りなく感じる方が多いのではないでしょうか。

※以下は2回目の鑑賞時の感想です。
ストーリーは既に頭の中に入っているので、今度は作品のテーマを読み取ろう、という鑑賞姿勢になっています
→後から読み直すと、強引で一面的な見方をしていて結構恥ずかしい内容ですが当時の率直な感想として。
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{netabare}
この作品のテーマを一言でいうと、社会人教育の定番中の定番

△ディール・カーネギー『人を動かす』
△スティーヴン・コヴィー『7つの習慣』

の説く「動機づけ型リーダーシップ」の哲学をまんまアニメ化した作品!!!!
に私には見えた!
まず間違いないだろう。バンダイナムコ狙ってたな。

つまり、少しだけ解説すると、リーダーシップというものには実は、

①自分がグイグイ引っ張るタイプのリーダーシップと、
②周囲の人の想いを掬いあげ、メンバーの各々の力を引き出していく動機づけ型リーダーシップ

の2種類があって、普通の人は、①だけがリーダーシップだと思いがちなんだけど、本当に凄いリーダーってのは②ができる人のことなのです(とカーネギーとかコヴィーは言っている)。

で、プロデューサーがなぜ春香をリーダーに任命したのかというと、それは春香が自分では気づいていなくても、②が出来るタイプの人だったから、というのが、このアニメのミソです。(※追記あり)

可奈ちゃんを切り捨てていたら、一時的にはライブは上手くいったかも知れないけれども、それはそれだけの話。
結局は、彼女らは大切な仲間を一人永久に失うはめになってしまいます。

あそこで可奈ちゃんの心を拾うために最大限の努力をしたからこそ、765プロは仲間を誰も失わずに、前よりも高いステージに進むことが出来た(できる)はずで、ビジネスの言葉でいうと、貴重な人材を失うことなく全体の戦力を高められた、ということになるのでしょう。

※追記
一番のビッグ・アイドルの美希が「本当は春香が羨ましい」「春香はプロデューサーが選んだリーダーだから」「美希は自分の出来ることを頑張るの」といって、春香をそれとなく勇気づけるこのアニメのキーシーンがあります。

春香とは対照的な性格の美希は、典型的な①タイプで、その持前のグイグイ引っ張るリーダーシップで、竜宮小町が台風でライブに遅れて765プロが困っているときに、人一倍頑張ってステージを支えて、竜宮小町以外のメンバーも注目を浴びるきっかけを作った功労者(第13話)なのですが、TV版の最後のほうでも、この映画でも、春香の自分とは違った良さをちゃんと認めて、彼女を支える発言をしており、美希もまた春香とは別の個性が光っていてやはり好感度が高いです。
{/netabare}
(終わり)
--------------------------------------

このようにストーリーを把握し、かつ、妥当か否かはともかく作品のテーマを自分なりに推測したあとの3回目から4回目にかけての鑑賞時は、
主人公である春香および本作のキーキャラである可奈の感情推移をじっくり追いかけて推測していくことになります。

さらに、5回目以降の鑑賞になると、春香や可奈に加えて、千早・美希・伊織さらには他のメンバーたちの一瞬毎の行動や発言に対しても、その意図や想いについて推測する余裕が出てきます。

そこまでくると、この作品が、どこまで細やかに一人ひとりのキャラの想いを描き込んでいるのか、ということに気づいて改めて感嘆の気持ちを強く抱くことになると思います。

私はこの作品を劇場で10回近く鑑賞しましたが、それでも飽きない感動がありました。
10月8日のBD/DVDリリースが待ち遠しいです。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 59

88.8 6 嫉妬アニメランキング6位
冴えない彼女の育てかた Fine(アニメ映画)

2019年10月26日
★★★★★ 4.3 (496)
2501人が棚に入れました
ある春の日、安芸倫也は桜舞う坂道で運命的に出会った少女・加藤恵をメインヒロインにした同人ゲームを制作することを思いつく。美術部に所属していながら、同人イラストレーターとして活動する澤村・スペンサー・英梨々と、学年一位の優等生でありながら、ライトノベル作家として活躍している霞ヶ丘詩羽を誘い、blessing software を結成。やっとのことで一作目を発表した――。英梨々と詩羽は大作ゲーム『フィールズ・クロニクル』を開発するために、人気クリエイターの紅坂朱音のもとへ。blessing software 代表の倫也はサークル活動を継続し、副代表の恵とともに新作の開発を開始した。イラストレーターに後輩・波島出海を起用、プロデューサーを出海の兄・伊織へ依頼し、氷堂美智留と彼女のバンド icy tail とともに新作の開発を進めるが……。英梨々と詩羽の大作はどうなるのか? 倫也と恵の関係に異変が? はたして blessing software の新作の行方は?

声優・キャラクター
松岡禎丞、安野希世乃、大西沙織、茅野愛衣、矢作紗友里、赤﨑千夏、柿原徹也
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

冴えまくり彼女に萌えそびれた私

ついにここまでやってきた!

1期2期を経て堂々完結の劇場版。fine(フィーネ)と言ってる以上終わるもんは終わるのです。
完パケしてるためこれからの方はパッケージで視聴検討されたらよいシリーズものかと思います。

 冴えないヒロインは育ったのでしょうか?

完結編で求められるはこの一点。恐らくダブルミーニングで

1.加藤恵の魅力はさらに増すだろうか?
2.渾身のギャルゲーは完成するだろうか?

しっかり育っての大団円だったと思いますが、どうなるかはもちろん自分の目で確かめて下さいね。


“お約束”を登場人物使ってとことんコケにしながらその“お約束”をありったけ投入し
“オタク”をさんざんをこき下ろしながらもその“オタク”へ注ぐ視線がこのうえなく温かい。
そして加藤恵という唯一無二ヒロインが異彩を放っている作品です。一言で言えば尖ってる。

いったんラブコメとラベリングし経過を辿ればこんな感じでもありました。
1期→ラブ2:コメ8
2期→ラブ5:コメ5
これが劇場版では

 劇場版→ラブ8:コメ2

くらいでしょうか。これまでを踏まえた流れに無理はないしきちっとラブはキュン死不可避でしょう。
なのでTVシリーズからのファンは迷う必要ありません。迷わず行けよ!行けばわかるさ!

ちなみに私はさほどこの劇場版では踊れませんでした。尖っておらず只のめちゃくちゃきゅんきゅんするラブストーリーだったことが理由。

自分の過去レビュー読み返してもみました。どうやらこの作品にはラブtheオンリーを期待してなかったみたいです。己の心の姿勢の問題。
過去の私の評価は1期(3.7)2期(4.1)です。面白いかどうかの分岐は4.0。つまらないかどうかの分岐は3.5として、クリエイターの産みの苦しみとラブコメが調和した2期を高く評価しました。なおシリーズ通して加藤恵に萌えてはいません。
唯一無二ヒロインについては『擬似三次元女子』と評し1期レビューにまとめております。平たく言えば現実には存在しないリアリティ無き女子です。存在に現実味がないため“ラブ”が深いところに刺さらない。響かない。
作品の柱ギャルゲ作りも産みの苦しみはどこかに消え作業ゲーになってました。障害はトモヤくんのサボりですもんね。これは比重をラブに置いた結果ですから仕方がありません。


あくまで私の心の姿勢の問題ですからね。シリーズの流れを逸脱しない自然な展開。劇場版ならではのグラフィック。きちっとタイトルを回収しながらの大団円。本来なら減点要素はない。どれも及第点だったけど自分には引っ掛かりの薄い佳作でした。



※ネタバレ所感

■遅らばせながら…

気づいたこともありました。遅せーよ!

{netabare}ストーリー展開がそもそもギャルゲーだったんですね。
加藤恵を模したヒロインでゲーム作ってるのに、お約束やフラグのギミックで遊んでいるって指摘してたのに、すこーんとこの観点が抜けておりました。

振り返ればエリリルートや詩羽先輩ルートを経てからのメインルートが劇場版の位置づけでした。
ギャルゲと思って1期から振り返ることは意義があるように思えます。{/netabare}


■高校生のスケジュール管理

納期より大事なものはあるっ!→いやそんなもんねーよ!
自由すぎるトップに翻弄されてた加藤恵が工程管理表を手にしていたのに驚いた。有能ですねこの子。

{netabare}項目を大中小分類に分けていて、分量(カット/差分)、月での区割り(上旬中旬下旬)のシンプルなやつ。

ええ一時停止してガン見しました。高校生にしてゴールから逆算して考える発想があることに驚き。
それでも人生の先輩ヅラしておせっかいを焼きたくなりましてちょっと失礼…

 {netabare}追加したほうがいい項目 → 担当者、予実、マイルストーンいやクリティカルパスかしら
 修正したほうがいい項目 → 区割りを日単位{/netabare}

自由人を縛れるかはまた別の話っす。{/netabare}


■エモかったとこ

もっとも胸を締めつけられたのはここ

{netabare}エリリが「トモヤがいても描ける」と淋しそうに目線を落としたところ

想い人との関係が深まるのと反比例しイラストが描けなくなってったエリリでした。クリエイター魂を優先し袂を分かった2期のクライマックス。整理すればエリリルートの終焉。
それが今は描ける。ちょっとしたボタンの掛け違いで別れる関係もある。今だったら素直に飛びこめるのに、でも今の自分があるのはあの時の別れがあったから。このジレンマがたまりませんでした。{/netabare}


■紅坂朱音(CV生天目仁美)のお仕事

ほんとにトモヤの…ひいては作品の魅力はこれでした。

{netabare}「クソみてぇなキモヲタの妄想を垂れ流せるのがお前の強みなんじゃねーか」{/netabare}

{netabare}「鳥肌が立って恥ずかしくなって目を背けたくなって…」
「それでも読めちまうのがお前のクソシナリオなんじゃねーか」{/netabare}

{netabare}「真のキモヲタは絶対お前についてくる」
「今は上手くなろうとするな」
「キモいまま突き進め」
「てめぇの妄想をそのまま垂れ流せ」{/netabare}

S.ジョブズの劣化版みたいなキモヲタ主人公のキモイ情熱をもっと見たかったのでした。
でもそれを望むのは酷なのかも。ヒロインと一緒に陰キャの代表選手みたいなキモヲタも人間的に成長したものと思うようにしました。

末永く爆は…いやなんでもありません。



※閑話休題

なんだったんだろう?

{netabare}題字協力 松岡禎丞 茅野愛衣{/netabare}



視聴時期:2020年10月 

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2020.10.28 初稿
2021.08.26 修正

投稿 : 2025/02/01
♥ : 49
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

うん。。ヒロインもいいしエピソードも楽しい。ラブコメの名作と言っていいんじゃないかな。

 
終わったと思った『冴えカノ』の続編で劇場版。
fine(フィーネ)はイタリア語でendの意味。
DVDレンタルで視聴。

う~ん、TV版のラストをよく覚えていない・・
ま、いいかw

■エピソード

そっか、blessing softwareのメンバが刷新されたんだっけ。

~{netabare}
出だしは『icy tail』のバンド演奏・・
色んな要素を盛り込んでますね。
ガールズバンドものは好きだからいいけど。
その部分のエピソードが薄いのは仕方ないか。

2期での大ごとである、詩羽と倫也のキス・・
ドラマチックな展開でズルズル引きずるかと思ったら、
居酒屋で加藤がいるの目の前で、露呈。
しかも、あっさりコメディタッチでw
なんかドロドロしなくて個人的にはホッとしました。
ラブコメはこうでなくっちゃw

それなのに倫也にサンドイッチを作る加藤・・
それを食べ残す倫也も、おいおい、と思ったけど、その食べかけのサンドイッチを食う加藤。
せめてもの関節キッスと、詩羽にはできないことを密かにすることで自分の留飲下げる行為ってことかなw

オタクとはいえ倫也のヘタレ加減に辟易。

紅坂の入院によりマルズのゲーム製作が頓挫・・
倫也が交渉・・いいねこの先が読めない裏切り展開。

エリリと詩羽を助ける倫也・・
加藤、そこはスネるんだ。へー。
キスは流した風に見えて、実は不満がたまってたのかな。

加藤が倫也を呼んだセリフが無音・・
どう呼んだのか。「安芸クン」?「倫也クン」?
この口の動きはきっと・・

物語開始から1時間14分・・
blessing softwareに戻る倫也を送り出したエリリと詩羽。
と、突然、画面がブラックアウトしエリリと詩羽が倫也に助けを求めるかどうかを話し合うシーンに逆戻り。
え・・・タイムリープ?別ルート?ラブコメでこれは新鮮w

いや・・
違う・・のか。
これは、触れられなかった二人の会話。
倫也をメインヒロインルートへ戻してやろうという。
手法としては珍しくないけど、ジーンときた。

家の前で加藤と再会する倫也・・
住宅街の路地。憤懣やるかたない加藤。
 倫也:『それに、安芸クンに戻ってない』
・・やっぱそうか。
 加藤:『これだけ怒っているのに、他人行儀な怒り方、できないよ』
・・名ゼリフ。
遂に告白。
 加藤:『合格、だよ』

次は加藤の回想シーン・・
これまでのモヤモヤした気持ちも一気に解消する、
ヒロインの待ち望んだイベント。
 加藤:『違わないよ、倫也クン』・・
    『私の、望んだとおりだよ』
 二人:『いっせーの・・』
うん、ラブコメはこうでなくっちゃw

ええと、残り15分あるのにエンドロール・・・
そこに小田和正の『ラブストーリーは突然に』の文字が。
え?使ったっけ?

エンドロール後にエピソード・・・
なんだこれ・・
加藤は夢を追う倫也が好きだったの?
詩羽と再会・・

きた!『ラブストーリーは突然に』
・・そういうことかww

詩羽ルートは自分も望むところなので劇中での宣伝なのは残念ではある。

エリリや詩羽以外、例えば美智留や出海などの悲哀も、もう少しあっても良かったけど、ドロドロし過ぎず明るい作風とメインヒロイン推しを貫いた姿勢は好感が持てました。

モヤっと書きましたが、{netabare}俺ガイル{/netabare}と比べてしまってますw・・いい悪いではなくて。

それにしても・・
{/netabare}~

うう・・か、加藤、かわええw

展開とかセリフとか、やっぱ一味違う。

終わり方も自分好みで良かったw

やっぱラブコメはこうでなくちゃww
(しつこいですがw)

★エンドロールの後もお見逃しなく ^^


 原作:ラノベ
 キャラデザ:高瀬智章
  FGOも担当。原画や作画監督はTo LOVEる、
  WORKING、SAO、化物語なども。
 制作:CloverWorks
    A-1 Picturesの血統だけあって安定。
 封切:2019年秋
 視聴:2020年秋 レンタル

■キャスト
~{netabare}
松岡禎丞(倫也)
 さすがに演技は安定。
 ちょっとキリト感を感じてしまったけど
 視聴の邪魔になる程ではなかったかな。

安野希世乃(加藤 恵)
 別のレビューやBEST10でも触れていますが、
 かくしごと(ラスナ)も良かったし、今回も
 正統派ヒロインを堪能させていただきました ^^

大西沙織(澤村・スペンサー・英梨々)
 ダンまち(ヴァレンなにがし)とは
 違ったキャラも楽しませていただきました ^^

茅野愛衣(霞ヶ丘 詩羽)
 かやのん、もうホントにマジ天使 ><

矢作紗友里(氷堂 美智留)
 元気っ娘といえば矢作さん、的なw
 ハマリ役かと。

赤﨑千夏(波島 出海)
 段々メインヒロインが増えてきていますねー。
 今回も別ルートがあってもいいキャラかと。
 外伝求ムw

生天目仁美(紅坂 朱音)
 パワフルなキャラはさすが。
 一騎当千(関羽)、俺妹(沙織)、
 このすば(ちょむすけ)、
 宝石の国(スフェン)、
 エグゼロス(ニョタイカ蟲)・・・
 結構お世話になってます ^^;
{/netabare}~

冴えカノも、これにて終幕・・か。

シリーズ通して、名作と言っても過言ではないかと
 

投稿 : 2025/02/01
♥ : 26
ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

誰もが悶絶するヒロインの描きかた

映画館でこんなに顔が火照った事はない!
萌えて悶え過ぎて顔がゆでダコのようになりました。

ヒロイン「加藤 恵」が可愛すぎる♪♪♪

ここまで徹底したあざとい可愛さは見事と言うしかない!

主人公が力説する「オタクにとっての理想的なヒロイン」

私も含めた2次元オタク男性が萌えて悶えて魅せられる「恋する女の子キャラ」を描き上げる為に構築されたアニメシリーズの最終章であり最高潮の仕上がり。

テレビドラマ2クールで、クリエーターとしての才能と尖った個性を持つヒロイン達を魅力的に描きつつ、唯一目立った才能が無い普通の女の子でありながら、抑えてきた感情のインパクトある露出によって存在感を示したメインヒロイン。
その彼女の清楚で可憐な魅力が劇場の大スクリーンで満開に花開きます。

本シリーズの脚本構成を担当されたのは丸戸史明氏。
恋愛物としては、同じ丸戸シナリオで個人的に傑作だと思う「WHITE ALBUM 2」に比べると、主人公の(CV松岡さんのイメージも手伝って)ハーレム的ご都合感は拭えませんが、ヒロイン達が主人公を好きになる要素は俺Tueee系より断然説得力があり、丸戸氏がゲームシナリオ作家として培ってきたノウハウを活かすゲーム仕立てのプロットで、ヒロイン達の切ない恋の進退をドラマチックに纏め上げてます。
(ちなみに丸戸氏のギャルゲーが原作の「WHITE ALBUM 2」は、楽曲を織り込んだストーリーと演出、中盤の盛り上げや鳥肌物のラストの脚本構成も合わせ1クールの恋愛アニメの中では神懸かった出来映えです!)

加えて、ゲーム作りに纏わる主人公やヒロイン達の言動には、ゲームシナリオ作家として歩んできた丸戸氏のクリエーターとしての情熱が伝わり見応えがあります。
{netabare}(倫也の書いたゲームシナリオを紅坂が豪快に笑い飛ばすとこなんて、青臭い頃の自分を振り返りつつ自分の道程を肯定的に受け止めている様でクリエーターとしての矜持を感じる。){/netabare}

また、登場人物にゲームシナリオを演じさせる様な客観的なセリフは、丸戸氏ならではの視聴者へ寄り添う遊び心があってユニークでした。

《作画》

テレビ版から背景も含め綺麗な作画で、挟まれるパステルチックなカットもお洒落。
そして本シリーズでは何と言っても、アイラインのカラーが特徴の女子キャラの描写に力が入ってます。
弾力感が伝わる肉感的な体のライン、あざと過ぎる可愛い仕草やエロいポーズをふんだんに描く事で萌えに徹してます。
かがんで見せるたわわな胸の谷間、テーブル下で絡み合う脚線美・・フェチなアングルも堪りません。
アニメと無縁の女性に鑑賞させたらセクハラになります♪

《音楽》

春奈るなさんの主題歌を初め、声優さん達の劇中歌も多く、ヒロイン達の恋心を盛り上げてます。
エンドロールの挿入歌に「ラブ・ストーリーは突然に」とあり、いつ流れた?と思ったら・・・オッサン世代へのサービス♪

《特筆声優さん》

今回の劇場版ではメインヒロイン役、安野希世乃さんの透明感のあるクリスタルボイスにキュンキュンさせられました。
安野さんは歌も上手いですね。今作の挿入歌も良かったし先日まで放送の「ソウナンですか?」のEDも好き♪

《キャラ》

よく泣く主人公は、女々しく感じ好きになれませんでした(同じオタクとしての妬みか^^;)が、ヒロイン達には制作スタッフの思惑どおりブヒブヒと鳴かせていただけました。

以下は萌えブタのネタバレ鳴き(見苦しいのでお許しを)
{netabare}
スカイプでの会話で「とっくにフラグは立ってる」(2期終盤の坂道での二人を見てる視聴者への完全表明)にまず、
ブヒー♪

ホームでただの手つなぎから恋人つなぎに!
ブヒブヒブヒー

誕生日デートの約束に「どうなっても、し~らないよ~♪」
ブヒブヒー

名前呼びを指摘されて
「それのどこが悪いの!」
倫也以外にも♭じゃない態度露出で、
ブヒブヒブヒー

2人の初めてのキスシーン
「タイミングがずれただけだよ」
ブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒー
「「いっせーの!」」
ブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒーヒーヒーヒーヒー

「私の事、好きだった~?!!」のエリリにも、ブヒブヒブヒブヒブヒー(泣)
(ちなみに1期では私、エリリ推しでした(^^;) エリリと詩羽先輩の、二人が居たからこその恋の引き際も、切なくも素晴らしい魅せ方でした!)

ラストのエンディング曲中
「あなたが望むメインヒロインになれたかな?」
ブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒ悶絶ー

正直オマケパートは折角の余韻が冷める蛇足だと感じましたが、クールダウンしたのは良かったかも知れません。
あのまま直ぐ映画館を出てたらどんな顔をしてたやら
(*^^*)

「回収しとくね♪」のキスにも
ブヒブヒブヒブヒブヒブヒブヒー♪{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 27

86.0 7 嫉妬アニメランキング7位
リズと青い鳥(アニメ映画)

2018年4月21日
★★★★★ 4.1 (576)
2383人が棚に入れました
北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。

声優・キャラクター
種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏
ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

優しく繊細に描かれた人生のアイロニー

(末尾に【追記】を加えました)

【総合評価:☆☆☆☆☆】
 高校の吹奏楽部で、それぞれオーボエとフルートを担当するみぞれと希美。ふたりは(一見)とても仲が良い。しかし、コンクールで演奏する自由曲「リズと青い鳥」での掛け合いが、どうもしっくりしない。その原因はどこにあるのか…?
 アニメ『リズと青い鳥』は、青春期の戸惑いや心の揺らぎを、優しく繊細に描き出す。声高な主張はない。わずかな仕草や言い淀んだ沈黙を通じて少しずつ明かされる真実は、切なくやるせなく、人生は見かけ通りではないというアイロニーを感じさせる。

【みぞれと希美】
 みぞれはひどく内向的で他者とのかかわりを避け、めったに感情を表さない。一方の希美は外向的でいつも取り巻きに囲まれ、感情豊かに会話する。表面だけ見ると、人付き合いが苦手で立場の弱いみぞれが、希美に庇護されているようでもある。しかし、制作した京都アニメーションのアニメーターたちは、そんな単純な関係でないことを画面にきちんと描き込んでいる。
 作品冒頭、みぞれと希美が校門から部室へと向かうシーン。石段の上で青い羽根を見つけた希美は、太陽にかざして「わっ何これ。めっちゃ青い。きれい!」と声を上げ、「あげるよ」とみぞれに差し出す。みぞれは、ぼおっとした表情のまま「ありがと」と微かに語尾を上げて受け取り、「なんで疑問形?」と突っ込まれる。二人の関係性が凝縮され、見ているだけで切なくなる名シーンである。
 そのまま先に立ってずんずんと進み、軽くターンしてから一段飛ばしで階段を上る希美は、常にどう見られているかを意識し自分を演出する。一方、希美の行為をなぞりながら数メートル後ろを付いて行くみぞれの姿は、外界との距離感を確認しつつ慎重に立ち位置を見定めているようだ。希美にとってのみぞれは、自分の演技を見つめる観客の一人。みぞれにとっての希美は、外界とのつながり方を示す唯一の指標で、それ故に強い思慕の対象でもある。相手への思いに、「親友未満」と「親友以上」という格差がある。
 もっとも、みぞれが頼りないのは外面だけ。{netabare}そのことを示すのが、中盤でみぞれが独りオーボエを練習する場面から始まる(私好みの)シークエンス。オーボエ担当の後輩が「ダブルリードの会(吹奏楽部に4人しかいないダブルリード楽器担当者の茶話会)」に誘っても、「わたしが行っても楽しくないから」とすげない返事。確かに、みぞれが希美のように「朝ご飯に何を食べるか」といったテーマで会話を弾ませる姿は、想像もつかない。ところが、同じ後輩がリードを自作するみぞれに「あたしにもできますかね~」と擦り寄ると、すぐに「今度教える」と答えて、後輩を感激のあまり泣かせる(後輩が何か言うのだが、涙声で聞き取れない…)。
 みぞれは、社会のさまざまな側面に対して適切に対応する柔軟性を欠き、そのせいでいかにも頼りない。しかし、自分には何ができるかをはっきり自覚しており、役割を果たせるとわかれば能動的に行動する。
 これに対して、希美は多くの後輩に慕われ楽しげに振る舞うものの、明確な上下関係が生み出す雰囲気を好んでいるだけで、その言動はあまり主体性を感じさせない。みぞれとの付き合いも、そうした上下関係の一つと捉えているようだ。みぞれをプールに連れて行こうとしたとき、「ほかの子も誘っていい?」と予想外の返答をされ、心底驚いた表情を隠せなかった(映像では、人が前を横切った瞬間に取り繕う)。他の同期生とは対等な会話を避けており、みぞれとの件で部長に責められたときには、まともに返答できない。{/netabare}精神の内奥においては、みぞれの方が希美よりも遙かに勁(つよ)い。
 {netabare}希美の弱さが表に現れるのは、木管楽器の指導者がみぞれだけに音大のパンフレットを渡したと知ってから。音大進学を表明したものの強い決意があったわけではなく、周囲にふと「あたしさぁ、本当に音大行きたいのかな」と問わず語りに口にする。主役のつもりで演じていたのに、スポットライトが傍らを通り過ぎただけと気が付いた---そんな役者を思わせる情けなさそうな表情で。何度見ても、私はこのシーンで泣いてしまう。泣かせるシーンではないのに。{/netabare}

【人生のアイロニー】
 物語が進むにつれて、みぞれと希美の間のひずみはしだいに大きくなる。一見、とても仲が良さそうなのに、相手に対する思いのベクトルは微妙にすれ違う。社交的な希美が孤立したみぞれを庇護しているようで、精神の強靱さも気遣ってくれる友人の数も、希美よりみぞれの方がずっと上である。こうした外見と内実の乖離が前提となって、クライマックスの演奏シーンが強烈なエモーションを生み出す。
 この作品は、人生のアイロニーを強く感じさせる。アイロニーとは、表面的な意味と隠された内実が相反することを表す用語で、主に物語芸術に関して、登場人物の認識と現実の状況が食い違う場合に使われる。例えば、ギリシャ悲劇『オイディプス王』では、己を正義だと信じるオイディプスが前王殺害の真相を追究するうちに、真犯人が誰で自分は誰と結婚したのかという恐るべき事実を突きつけられる。まさに悲劇的アイロニーの極北である。『リズと青い鳥』も、これに似たアイロニカルな状況を描いた作品である。ただし、ギリシャ悲劇のように深刻なカタストロフはない。現実の人生でごくふつうに起こり得る、ささやかなアイロニーである。そんな事態を前にして、人は寂しそうに笑うしかない。

 ところで、この物語の後、みぞれと希美はどうなるのだろうか?{netabare}アニメのラストはハッピーエンドと呼んで良いものだが、二人の性格と置かれた状況を考えると、幸せな状態がいつまでも続くとは思えない。みぞれが「ハッピー・アイスクリーム!」と声を上げたときも、希美はそれがゲームだと気づかない。親友同士のように振る舞いながら、互いに相手のことをよく理解していない状況は、大して変わっていないのである。想像するに、それぞれ別の大学に進学して疎遠になり、その後の人生ラインが交わることは、もはやないだろう。もっとも、それは必ずしも悲しむべきことではない。人生の一時期に、生涯の宝となる貴重な体験をしたという事実は揺るがないのだから。{/netabare}

【アニメにおける人間描写】
 『リズと青い鳥』は、みぞれと希美の内面を深くえぐった心理劇である。アニメは、小説や演劇に比べて心理描写に向かないメディアだと見なす人もいるが、そんなことはない。むしろ、言語による抽象的な観念に束縛される小説や、生身の俳優が持ち込む身体性を排除できない演劇に比べて、純粋に心理だけを描き出せるメディアである。
 アニメの強みは、個人が創作する小説などと異なり、人間が持つさまざまな側面を、各分野の専門的なクリエーターが磨き上げられる点にある。私は、プルーストやヴァージニア・ウルフの心理描写が好きだが、それでもこんなアニメを見せつけられると、言語表現の限界にいやでも気づかされる。クライマックスの演奏後にみぞれと希美が行う対話を使って説明しよう。
 台詞は、言語に対して鋭い感性を持つ脚本家が彫琢する。{netabare}希美は、妙に冷めた見方でこれまでの経緯を振り返り、「違う」「希美」と言葉を挟むみぞれを無視して話を続けるが、途中でみぞれが強い語調で「聞いて!」と遮り、思いの丈を語り始める。「希美の笑い声が好き、希美の話し方が好き、希美の足音が好き、希美の髪が好き、希美の…希美の全部」。希美がそれに応えるように「みぞれのオーボエが好き」。{/netabare}
 声優は、台本だけではわからないニュアンスを言葉に付け加える。過去を振り返る際の、冷静さを装いながら端々に心のざわめきが現れる希美の口調。一方のみぞれは、口数が少なく自分の内面を説明しないが、かすれそうでかすれない口吻は、意外と粘り強い性格を感じさせる。
 劇伴となる音楽も、心理描写に欠かせない。対話シーンでは、当初、バックで音楽が鳴っていることにほとんど気づけないほどかすかな音の連なりが続くが、少しずつ明瞭になり、ほんのわずかな期間、明るく心躍るメロディを奏でたかと思うと、次の瞬間にはスッと消える。まるで、いつも揺らいでいる少女の心のように。
 何よりも素晴らしいのが、表情や仕草に魂を込めた作画。それまで意図的にこしらえた微笑ばかり見せていた希美なのに、ここでは視線が定まらない。一方のみぞれは、まっすぐに希美を見つめる。{netabare}「大好きのハグ」をするときの、二人の手の位置、体の傾げ方、そして、感極まったようなみぞれとどこか曖昧な表情を浮かべる希美の対比。そのすべてが、二人の心の内を照らし出す。{/netabare}
 『リズと青い鳥』は、静謐なアニメだ。長広舌よりも途切れた言葉、目的を持った行動よりもちょっとした仕草の表現が素晴らしい。例えば、希美にもらった青い羽根を、みぞれが両手で包み込んで口元に寄せるシーンのような。シャープペンの持ち方、髪のいじり方、地面を蹴るときの足の動き---そんな些細な描写にも、アニメーターの思いが籠もる。
 アニメとは、間違いなく、日常の奥深さを描けるメディアである。

【監督・山田尚子】
 当然のことながら、アニメの人間描写が優れたものになるには、スタッフの意思が統一されていなければならない。そのために重要なのは、中心的なリーダーの存在である。アニメの場合、通常は監督がリーダーとなり、スタッフと綿密な打ち合わせをすることで、作品世界を明確に設定し、人物像に一貫性を与える。こうしたリーダーの役割は、制作現場の状況を伝える断片的な報告に示される(例えば、イアン・コンドリー著「細田守、絵コンテ、アニメの魂」では細田守、『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』DVDの特典映像では神山健治、第6回文化庁メディア芸術祭における『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』上映前のトークショーでは原恵一が、それぞれスタッフとどんな議論をして作品世界を作り上げたかが紹介された)。
 『リズと青い鳥』がどのような状況で制作されたかはわからないが、監督・山田尚子のインタビュー(『リズと青い鳥』公式サイト liz-bluebird.com に掲載)を読んだ限りでは、テレビアニメの制作を通じてスタッフが原作に馴染んでおり、作品の方向性が自然と一致したようだ。インタビューから引用すると、「「少女たちの溜め息」のようなそっとした、ほんのささやかなものを逃すことなく描きたい」とのこと。
 山田尚子は、監督に抜擢されたテレビアニメ『けいおん!』(2009)で人気作家の座を獲得した。この作品はギャグ中心の4コマ漫画をアニメ化したものだが、アニメでは、話数が進むにつれて、ギャグが薄まる一方で物語の流れが滑らかさを増しており、監督の技量がストーリー重視の方向に成長したことを伺わせる。『けいおん!』の第2期と劇場版、テレビアニメ『たまこまーけっと』とその劇場版も評判を呼んだ。ただし、私の見る限り、話を淀みなくまとめるのはうまいものの、心理描写はそれほど深くない。クリエーターと言うよりは職人に近いという印象だった。
 (私の個人的な)評価が変わるのは、劇場用アニメ『映画 聲の形』(2016)から。聴覚障害者を主人公に人間のつながりを描いたものだが、イメージショットを多用し、流れよりも観客に何かを考えさせることを重んじる。アニメ作家として一皮剥けた感があった。
 続く作品が『リズと青い鳥』で、これまでのところ山田の最高傑作である(一般的な評価とは少し違うが)。『けいおん!』以来、多くの作品で協力関係にあった名脚本家・吉田玲子と、トップクラスの職能集団である京アニ・アニメーター陣の力が大きいとはいえ、山田が着実に成長を続けていることを示す。今後の動向に注目したい。

【『響け! ユーフォニアム』との関係】
 ここで、本作とテレビアニメ『響け! ユーフォニアム』の関係についてコメントしておこう。一言で言えば、まったく別の作品である。
 京アニは、武田綾乃のライトノベル『響け! ユーフォニアム』シリーズを継続的にアニメ化しており、2015年と16年にテレビアニメ第1、2期が放送(いずれも放送翌年に総集編が劇場版として公開)された。これらは高校吹奏楽部の人間模様を描く群像劇で、まじめに作られたウェルメイドな作品である(ただし、私好みではなく退屈した)。さらに、2017年のトークイベントで、石原立也監督による「2年生になった久美子(シリーズの実質的主役)たちの物語」(2019年公開)と、山田尚子監督によるの「みぞれと希美の物語」(2018年公開の本作)という完全新作映画2本の制作が発表された。この2本は、いずれも、トークイベントのすぐ後に刊行されたシリーズ第4長編『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』を原作とする。
 京アニは、決して大きな会社ではない。同じ原作の(したがってファンがかぶる)劇場用アニメを並行して2本制作するというのは、かなり無謀な企画である。なぜそんな決定をしたのか、私のような部外者は憶測に頼るしかない。おそらく、2016年に、興行収入250億円という超特大ヒットアニメ『君の名は。』が出たほか、興収50億以上のアニメが3本、京アニ制作の娯楽性の乏しいアニメ『映画 聲の形』も興収23億(興収額は日本映画製作者連盟発表のデータによる)に上ったことから、経営陣が劇場用アニメ制作に前のめりになったのだろう。
 原作小説『波乱の第二楽章』は前後編2分冊で、1本の映画にするには少し長すぎるため、2本に分割したと考えられる。ただし、前後編に分けるのではない。1本は、テレビアニメで登場人物の成長を描いてきた石原立也が担当し、久美子らが2年に進級してからコンクールに出場するまでを経時的に描いた。不思議なのは、もう1本が、かなり地味なみぞれと希美のエピソードを取り上げた作品になったことである。
 山田尚子は、『聲の形』に先立つ『映画けいおん!』でも、それまでの京アニ記録だった『涼宮ハルヒの消失』の2倍以上となる興収19億円を達成しており、京アニ最大のヒットメーカーである。経営陣が彼女に大いなる期待を寄せ、その希望を最大限に受け入れたことは想像に難くない。こうして、山田が原作にとらわれず、自分の思うままに作ったのが『リズと青い鳥』なのである。
 近所の図書館にあった原作の一部を読んでみたところ、控えめに言って、本アニメとはかなり趣が異なる(…って言うか、「全然ちゃうやん」というレベル)。原作の北宇治高校は男女共学なのに、アニメでは男子生徒の姿が見えず、完全に“女の園”になっている。目を凝らすと、全体練習の際にちらほら男子が映っているのだが、後方でぼかされた姿に。廊下や下駄箱周りにもモブのように現れるものの、巧みに別の箇所へと視線誘導される。おそらく、本アニメだけを見た人の大部分が、女子校の話と思ったはずだ。敢えて「男子はいない」と錯覚させるような演出がなされている。
 原作には、部員たちの(擬似)恋愛の描写が過剰気味に現れるが、これもほとんどが省略された。それほど、みぞれと希美の関係に集中したかったのだろう。まるで、アンリ・ヴェルヌイユやエリック・ロメールら名匠の手になるフランス映画のように、二人の心理をじっくり描き出す。
 石原立也が監督した『響け! ユーフォニアム』は、原作にかなり忠実なようだが、『リズと青い鳥』は、登場人物が共通するだけで、作品全体の方向性が全く異なる別作品だと思った方が良い。それぞれのキャラも、かなり大きく変更された。部長の優子は、頭の大きなリボンがいかにも不釣り合いな、真面目で他人思いのリーダーとして描かれる。
 ただし、山田には原作から離れているという意識がなかったらしい。公式サイトに掲載された山田のインタビューでは、「原作の持つ、透明な、作り物ではない空気感を映像にしてみたいと思いました」「原作から受けたこの二人の物語の印象をそのままフィルムに落とし込んでみたいというのがまずありました」とある。原作に没入するうちに、行間を深読みしイメージが勝手に膨らんでいったのだろう。脚本の吉田玲子とも見解の相違はなかったようで、「あまり窮屈に打ち合わせるような感じではなかった」と語っている。
 本人に「原作とは違うものを」という気負いがなく、思うがままに作ったため、壊れやすい少女の内面を丹念に描いた、アニメ史上に残る傑作が誕生したと言える。もっとも、山田の感性は『ユーフォ』ファンと少しずれがあったようで、興行的には惨敗に終わった。

【おまけ---オーボエという楽器】
 本アニメでフィーチャーされるオーボエは、2枚のリードを向かい合わせに固定し、その間に息を吹き込むことで音を出す楽器。高音成分が多く震えるような切ない音色が特徴で、それに心惹かれる人も多い。ただし、本格的な演奏をしたければ毎回リードを自作せねばならず、やたらに手間がかかるのに、フルートのような華麗さに欠ける。希美がフルート、みぞれがオーボエを担当するのは、それぞれのキャラに見事にマッチする。
 オーボエの名曲と言えば、モーツァルトやリヒャルト・シュトラウスの作品が有名だが、私は、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハのオーボエ・ソナタ ト短調が好きだ。派手さはないが心に沁みる曲で、みぞれのテーマとして使えそう。

【も一つおまけ】
 作中でアニメ内アニメとして描かれるのが、コンクール曲のベースにもなった童話「リズと青い鳥」。大写しになった本の表紙に「ヴェロスラフ・ヒチル著」と明記されていたので、実在する童話かとおもって検索したが見つからない。ネットの情報によると、映画監督のヴェラ・ヒティロヴァをもじって、武本康弘(京アニ所属の監督で放火事件で亡くなった)が考案した名前らしい。ヒティロヴァには『ひなぎく』というぶっとんだ快作があり、私は30年ほど前、これ見たさに唯一の上映館がある吉祥寺まで遠征した。武本監督とは、そんな趣味も一致していたのか---ちょっと涙。

【追記】
 上のレビューを執筆した時点では、原作となる『北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編/後編』のうち、近所の図書館にあった前編しか読んでいなかったが、その後、別の図書館から後編を借りて読むことができた(文庫本くらい買えって言わないで!金欠なんだから)。
 アニメが小説と趣を異にすることは前編と同じだったが、それが心理描写の深化にとどまらず、原作における客観的記述ともかなり食い違っていることに、少々驚いた。出来事の時系列や希美を諫める人物を変更したほか、みぞれと久美子の会話や、みぞれがオーボエソロで名演を示した後の指導者の対応など、ストーリーの上でかなり重要な部分をバッサリ切り捨てている。その一方で、原作では触れられない童話「リズと青い鳥」の細かな内容を、本編とは異なる技法を用いた映像によってたっぷりと見せる。ここまでくると、山田尚子がかなり確信犯的に原作を変更したのではないかと思えてくる。おそらく、原作(前後編)のプロローグ部分に記された希美とみぞれの関係に心打たれ、その部分をどこまでも拡大してアニメ化したのだろう。
 そう考えると、本作が『響け! ユーフォニアム』シリーズの一編として制作発表されながら、公開時にそのことを示す副題がなかった理由も見えてくる。京アニの経営陣は、完成間近になって、原作や(原作に忠実な)テレビアニメとかなり異なると知って驚いたのではないか。「響け! ユーフォニアム」と冠すると、これまでの路線を大きく逸脱したことに対して、ファンの批判が高まりかねない。そこで、独立した作品としても楽しめるという言い訳をしながら、スピンオフ作品として扱わない方針を固めたと推測される。結果的には、それが大爆死と言える興業成績につながったようだが。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

山田尚子監督が目指していたものをやり切った、実写的表現の到達点

アニメーション制作:京都アニメーション、
監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、
作画監督・キャラクターデザイン:西屋太志、
音楽:牛尾憲輔、美術監督:篠原睦雄、
色彩設計:石田奈央美、原作:武田綾乃。

揺れるポニーテール、廊下を歩く足、瞬く瞳。
静かな劇伴が流れるなかのふたりの情景。
絵柄は滲んだブルーを基調とし、透明感のある色彩。
響く足音、キャップを開ける音、楽器を組み立てる音。
様々な生活音を拾い上げていく。
細部まで徹底的なこだわりを感じさせる。
思わず息を詰めて観てしまうような静謐感が作品全体に流れている。

私は冒頭のシーンを観たときに、この感覚はどこかで味わったような気がすると、
鑑賞中にずっと考えていたのだが、
それは岩井俊二監督の『花とアリス』だった。
岩井俊二監督のなかでいちばん好きな作品だが、
それを初めて観たときのような鮮烈な印象を受けた。
眩いばかりの透明感を重視した絵作りだ。

『リズと青い鳥』は『響け!ユーフォニアム』シリーズの続編に位置づけられる。
田中あすかや小笠原晴香たち3年生が引退した後の
春から夏にかけての一部分を切り取った物語。
しかし、シリーズ名がタイトルに入っておらず、
単体で観られることも意識して制作されている。
私は原作を全巻既読で、TVアニメも映画も過去作品は
全て鑑賞済みなので断言はできないが、
初見の人でも十分に楽しめるのではないかと感じた。
人間関係は観ていれば、ほとんど理解できると思うし、
基本的には鎧塚みぞれと傘木希美の関係性についてのストーリーのため、
それほど分かりにくくはないと思う。
ただ、もしかするとみぞれと希美の依存といえる関係性が理解できず、
物語に入り込めない人がいるかもしれないが、
そんな友人同士の繋がりもあると考えてもらうしかない。
これは、いびつな形ですれ違い続ける愛と嫉妬の物語だ。

アニメ的な手法よりも実写的なカメラワークを
意識しているシーンが多く見られる。
足の動きや手の動き、会話の「間」などで、心情を表現している。
また、感情を表すような目元のアップシーンが多い。
アニメではなく、実写ではよく使われる手法だが、
この作品では重視されている。
そして、被写界深度を意識した絵作り、
つまりカメラの焦点とボケを意識している点はシリーズと同様だ。
物語にはそれほど大きな起伏がないため、
好き嫌いが分かれるタイプの作風だが、
映画としての完成度はかなり高い。

{netabare} 特に素晴らしいと感じたのは冒頭のシーン。
何かの始まりを予感させる童話の世界から現代の世界へ。
まだ人があまりいない早い時間の学校に鎧塚みぞれが到着して、
階段に座り、誰かを待っている。自分の足を見る。不安げな瞳。
誰かがやってくる。
視線を向けるが、期待した人ではない。
そして、待ち人がやってくる。いかにも楽しそうで快活な表情、
軽快なテンポの歩様、揺れるポニーテール。
それに合わせて流れる明るいメロディ。
フルートのパートリーダーである傘木希美だ。
鎧塚みぞれは、それとは逆に表情が乏しく、口数も少ない。
彼女なりに喜びを表現して希美と一緒に音楽室へと向かう。
途中で綺麗な青い羽根を拾った希美は、それをみぞれへと渡す。
戸惑いながらも希美からもらったものを嬉しく感じるみぞれ。
この青い羽が、閉じられた世界の始まりを予感させる。

校舎に入り、靴箱から上履きを取り出すときのふたりの対比。
廊下に彼女たちの足音が響くが、その音のテンポは全く合わない。
完全な不協和音。ふたりの関係性が垣間見える。
みぞれは少し距離を置いて、希美の後に付いていく。
階段の途中の死角から希美が顔を覗かせてみぞれを見る。
希美は少し驚いたように、目を何度か少しだけ動かす。
教室に着いて鍵を開け、椅子と譜面台の並んだ誰もいない室内に
2人だけが入っていく。
吹奏楽コンクールの自由曲は、「リズと青い鳥」。
この曲を希美は好きだという。
そして、ふたりで曲を合わせてみるところで、
タイトルが映し出される。

この一連のシーンだけで気持ちを持っていかれるだけのインパクトがある。
とても丁寧で実写的で挑戦的な作風だと感じ、
私は思わず映画館でニヤついてしまった。

物語はみぞれと希美のすれ違いを中心にしながら、
それに劇中曲である「リズと青い鳥」の物語がリンクしていく。
童話のほうの声優にちょっと違和感がある。
ジブリ作品を見ているような感覚だ。
みぞれがリズ、希美が青い鳥の関係性として観客は見ているが、
最後にふたりの立場が逆になる。
みぞれの才能が周りをなぎ倒すようにして解放され、
美しいメロディを奏でる。
同じように音楽に真摯に取り組んでいたみぞれと希美の差が
明らかになる瞬間だ。

二羽の鳥がつかず離れずに飛んでいくシーンが映る。
左右対称となるデカルコマニーの表現。
そして、ふたりの色は青と赤。
心があまり動かずしんとした雰囲気のみぞれが青、
情熱的で人の中心になれる希美が赤だろうか。
このふたつの色が分離せずに混ざり合っていく。

みぞれが水槽に入ったふぐを見つめるシーンが度々出てくる。
おそらくみぞれは、水槽のなかのふぐを羨ましいと思っている。
仲間だけでいられる閉じられた世界。
そこが幸せで、ほかは必要ないと考えている。

この作品は意図してラストシーン以外での
学校外のシーンを排除している。
鳥籠=学校という閉じられた空間を強調しているのだ。
閉じられた学校という世界のなかにあって、
さらに閉じられた水槽内にいるふぐ。
それをみぞれが気に入っているというのは、
みぞれの心情を示している表現だろう。

たくさんある印象的な場面でいちばん好きなのは、
向かいの校舎にいる希美がみぞれに気づいて手を振り、
みぞれも小さく手を振って応えるシーン。
そのとき、希美のフルートが太陽に反射して、
みぞれのセーラー服に光を映す。
それを見てふたりがお互いに笑う。
言葉はないが、優しく穏やかな音楽が流れるなかで、
(サントラに入っている「reflexion, allegretto, you」
という曲で、1分20秒と短いがとても美しい)
何気ない日常の幸せをいとおしく感じさせる。

ラストシーン。歩く足のアップ。
一方は左へ、一方は右へと進んでいく。
希美は一般の大学受験の準備ために図書室で勉強を、
みぞれはいつものように音楽室へと向かう。
帰りに待ち合わせたふたりが歩く。
足音が響く。
ふたりの足音のリズムは、時おり合っているように聞こえる。
お互いに別の道を歩くことを決め、そこでようやく何かが重なり始めたのだ。
ふたりの関係がこれからどうなるかは分からない。
しかし、最後に「dis」の文字を消したところに、
いつまでも関係がつながっていて欲しいという作り手の願いがこめられている。{/netabare}
(2018年4月初投稿・2020年5月5日修正)

大好きのハグから続くラストシーンについて
(2018年5月11日追記・2019年3月15日修正)

{netabare}みぞれは希美の笑い方やリーダーシップなど、
希美自身のことを好きだと告白するが、
それに対して希美は「みぞれのオーボエが好き」だと言い放つ。
このやり取りは一見、ふたりの想いのすれ違いだけを
表現しているように感じるが、実はそれだけではない。

友人として以上に希美のことが大好きなみぞれにとって、
とても厳しく感じる言葉だが、これは希美自身にとってもキツイ言葉。
みぞれの才能を見せつけられて、ショックを受けているときだから尚更だ。
それなのに、敢えて言ったのはなぜか。
この言葉には、自分は音大には行けないが、
みぞれには、音大に行ってオーボエを続けて欲しいという
願いがこめられているのだ。
「みぞれのオーボエが好き」という希美の言葉がみぞれに対して
どれだけ大きな影響を及ぼすのかを希美自身は自覚している。
単に希美が自分の想いを吐露しただけではない。
「みぞれのオーボエが好き」は童話における、
一方的とも思えるリズから青い鳥への
「広い空へと飛び立って欲しい」と言った想いと同じ意味を持っている。

それは、帰り道に希美が「コンクールでみぞれのオーボエを支える」と
言ったことからも分かるし、それに対して、
みぞれが「私もオーボエを続ける」と宣言をしていることからも明らかだ。
しかし、このやりとりはどう考えても違和感がある。
つまり、希美はコンクールの話をしているのに、
みぞれは、コンクール後のことについて語っているからだ。
会話がすれ違っているように聞こえる。
ところが、そうではない。
つまり、ここでは希美が音大に行かず、
フルートを続けなかったとしても、
みぞれは音大に行く決意をしていることを示している。
これは希美の「みぞれのオーボエが好き」に対して
みぞれの出した答えなのだ。

実は原作では、音大を受験するかどうかの話を
みぞれが希美に問い詰めるシーンがあるのだが、
映画では、完全にカットしている。
その代わりに、左右に分かれていく足の方向と
図書館での本の借り出し、楽譜への書き込み、
最後の会話によって表現している。
「みぞれのオーボエが好き」という言葉が
みぞれの背中を押したという、別の意味を持たせているのだ。
そのあとの「ハッピーアイスクリーム」で
ふたりの感覚が足音のリズムとともに、ようやく一致したことを描いている。
また、みぞれが校門を出るときに希美の前を歩いたり、横に並んだりする。
切なさはあるが、やはりこれはハッピーエンドといえるのではないだろうか。

音楽については、フルートが反射する「reflexion, allegretto, you」と
ラストシーンで流れる静かだが心地良いリズム感の「wind,glass,girl」、
そして、字幕の時の「girls.dance,staircase」、
「リズと青い鳥」、Homecomingの「Songbirds」が印象的だ。{/netabare}

コメンタリーを視聴して(2019年2月14日追記)

{netabare}昨年発売された脚本付きBDを購入して、
本編とインタビューは手に入れてすぐに観たのだが、
脚本やコメンタリーは後回しになってしまっていた。
脚本を読んでみると、「リアルな速度の目パチ」など、
とても細かい指示がなされていて驚いた。
目を閉じ切らないまばたきも指示されている。
また、作画については「ガラスの底を覗いたような世界観」という
指南書が配られていたという。
映像では山田尚子監督の意図を確実に実現している。

そしてこの作品には3つの世界観が表現されている。
学校、絵本、そしてみぞれ(希美)の心象風景だ。
絵本は古き良きアニメを再現させるよう
線がとぎれる処理を行っている。
心象風景は、よりイメージ感の強い絵作りを意識したという。
希美が走る水彩画のようなタッチ。
左右対称の滲んだ色の青い鳥など。
これら3つの世界観が上手く活かされていて、
物語に彩りを与えている。

それに加えて、BDで解説を聞かないと気付けないのが、
生物学室のみぞれと希美のシーン。
最初から何段階かに分けて色合いを変化させている。
夕方の時間の経過とともに初めは緑っぽかった室内から
オレンジ系に少しずつ色を変えるのと、
カットごとに順光、逆光でも変化させている。
確かに言われてみて確認すると、
生物学室での色合いはとても繊細だ。

髪を触る仕種については山田尚子監督自らの発案。
曰く、みぞれがそうやりたいと言っていたから。
キャラが監督に下りてきていたそうだ。
また、「ダブル・ルー・リード」も監督のアイデア。
これは映画館で観ていたときから、
洋楽好きな監督が考えたことだろうと予想していたので、
インタビューを観たときは、あまりにもそのままで可笑しかった。
印象に残ったのが、スタッフのいわば暴露話で、
内面を描くよりも映像(ビジュアル)で見せたいと
昔に語っていたことがあったそうだ。
監督は昔の話だと恥ずかしがっていたが、
まさにこの作品はその方向性を貫いたといえるだろう。{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 122
ネタバレ

藍緒りん さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

ふたりということにまつわる衝撃的な傑作。

今までで観た映画のなかで一番か二番か、くらい凄かったです。
少なくとも五本の指には入ります。凄まじかったです。
ほんとうに、見終えてからどんどんもどかしさが膨らんでいくというか、
映画の意味が分かっていくというか、本当に切ないんですよ。

あまり劇場には見に行かないのですが、
山田監督の「たまこラブストーリー」が良かったことと、
本編ユーフォニアムが良かったことから、見に行くことにしました。
予想していたとおりですが、ユーフォニアム感はまったくなかったです。

精神的な意味での甘酸っぱい「青春もの」を求めている方にはぜひお勧めしたいものでした。
というよりも、ほろ苦い、のほうが近かったかな。
ジブリで喩えるならば、
同監督の「映画けいおん」や「たまこラブストーリー」を、宮崎駿っぽい作品だと喩えるならば、
本作は高畑勲っぽい作品だなと思いました。
人間の心の機微やずれなどのテーマを丁寧に描いている作品で、
エンターテインメント映画の性質は弱いと感じました。

以下猛烈にネタバレですので本編をご覧になった方だけ。

{netabare}

 劇場を出てから電車の中で、なんて悲しい終わり方だ、って思いました。
 希美にとって、みぞれは謎だったんですね、何を考えているのか分からない。
 劇中で、希美はふっとみぞれに距離を置いてしまうのに、
 自分が距離を置かれているという感じ方になってしまう。
 相手のことが分からないとき、自分のこともわからなくなってしまう、
 そういう混乱みたいなものがすごく生々しかったです。

 みぞれにとって希美は唯一無二の親友だったわけです。
 でも、希美からしてみればそこまで思われる根拠がない。
 なんとなく気になって、吹奏楽部に誘ってみて、友だちになった。
 するとみるみる上手くなって、置き去りにされちゃった、という感じ。
 分からない存在ではあっても、大親友という感情ではないんですよね。
 後輩に仲良いですよね、って聞かれたときも、
 「たぶん、そうだと思う」としかいえない。
 このときも自分がみぞれのことをちゃんと友達として思っているかさえも、
 曖昧になってしまっている、謎へ向かう時の混乱を感じます。

 関係的にはふたりとも相手のことがわからないんです。
 みぞれからしてみれば、なんで希美ほどの人が自分と仲良くなってくれるのかわからない。
 希美からしてみれば、なんでみぞれは自分のことをそんなに大切に思っているのか、
 それでいて、どうしてあまり感情を出してくれないのか、謎になってしまっている。
 みぞれからしてみれば、向こう側から来てくれた希美に、自分を出すのはすごく怖いんですよ。
 それでも希美はみぞれの謎のなかに、嫉妬が絡まってすごくややこしい感情を抱いている。
 嫌いなところなんてないのに、でもなんとなく遠ざけたい気持ちになる、
 それが「みぞれは私のことを遠ざけてるんじゃないか」っていう違和感になる。
 ほんとうは、自分が遠ざけてるんですけどね。その理由がわからないから相手が遠ざけてるから、っていう理由に逸れてしまう。

 それでも、関係のなかでの自分の立ち位置はちゃんと分かってるんです。
 みぞれは「私は希美にとって友達のうちの一人でしかない」
 希美は「私はみぞれが思っているような人間じゃない」
 それは的確なんですね。それぞれ相手に別の意味で過剰な感情をいだきすぎている。
 それが結局ずれたまま終わるということが、すごく切ないな、と思ったんです。

 でも映画を観てから一晩寝て、やっぱりこの映画はハッピーエンドなんじゃないか、って思い直したんですよ。
 結局この二人はまだ関係の途上にすぎなくて、作中ではけして平行線を辿っていたわけじゃなくて、
 ずれたままとはいえやっぱり距離は縮まっている。
 希美はみぞれに「大好き」っていう明らかな感情をぶつけてもらった。
 みぞれは希美に自分の感情を曲がりなりにも受け入れてもらえたわけです。

 どうして二人があんなにずれてしまっていたのか、自分に精一杯だったんですよね。
 ふたりとも進路提出表を白紙のままで出していましたが、
 関係に詰まっているのより先に、人生に行き詰まっているような状況の中にいた。
 優子や夏紀はそういう点で根本的に安定感があるんですよ。
 だから関係も「ずれ」の中でも、割合すんなり過ごしていくことが出来て、
 優子は人の感情にすごく敏感で、ちゃんと気にかけることができるし、
 夏紀なんか適当なこといって希美を慰めてみたり、
 そういう二人のようにはすんなりいけない素質が、関係以前に希美とみぞれにはあって、
 それがずれていることをひどく残酷なものにしていたような。
 その意味合いで、アニメ版ではなんで優子が部長?って思っていたんですが、
 映画版ではもう完全に部長の器でしたね。

 自分に精一杯だと、関係の中での問題も、全部自分の問題になってしまう。
 希美はみぞれが何を考えているのか、ってことを考える余裕がなくて、
 みぞれは希美が何を考えているのか、って考える余裕がない。

 それでもみぞれは新山先生との「リズと青い鳥」についての対話の中で、
 逆の立場だったらどう思うって聞かれてふっと視線が変わるわけです。
 物語と現実の関係もずれていて、そのまま適用できるようなものではない。
 どちらもリズでも青い鳥でもなくて、ただ相手のことを見る余裕の違いがあると思うんです。
 リズはずっと自己完結ですよね。相手のことを見る余裕はない。
 相手のことを思ってはいるけど、でも自分で勝手に決めて勝手にさよならしちゃう。
 青い鳥にはすごく余裕があるんです。別れるのは嫌なのに、リズがそう決めたなら、って
 ちゃんと受け入れて飛び立って行くんですね。
 みぞれはリズの立場だったら絶対離さないぞってところで演奏に身を入れられなかったけれど、
 青い鳥の立場から、希美が言うんだったら別れだって肯定できるよ、っていうすごい大きな愛を羽ばたかせてあのオーボエの演奏を披露するわけです。
 それでも希美の立場からはいままでは手を抜いたんだ、っていうだけのことになる。
 それでガツンとやられてひとりはぐれてしまうわけです。もう希美とは無理だというような追い詰められかたをする。
 物語の構図を使うならば希美は別れを告げられたのに受け入れられなかった青い鳥なんですよ。
 みぞれは自分こそ青い鳥だという自覚で吹いていたけれど、
 希美の立場からみれば別れを突きつけられてしまったんです。
 そこで何も解けないまま理科室へはぐれてしまう。

 理科室で再会しても希美からしてみれば、みぞれから試練を突きつけられているだけなんですよ。
 わたしは本気を出せばこれだけ吹けるんだよ、と。そこでついて行けないことの罪悪感と恨みとが心の中を巡るわけです。
 それでもみぞれからしてみればあれは「愛の告白」なんですよね。そこが決定的にずれている。
 ずれているけれど、希美が自分で精一杯だってことを受け入れるだけの余裕がみぞれには生まれていたんです。
 大好きのハグ、なんて希美からすれば唐突で、すごくびっくりしていましたよね。
 あれはいままで受動的だったみぞれが希美に対して始めて能動的になるシーンであるとも言えます。
 希美はみぞれが積極的になったことの中にあのオーボエソロの凄まじさも含めて考えることができて、少しみぞれのことが分かったはずだと思うんです。
 それでも根本的には愛の告白は唐突に感じられたでしょうね。
 今まで自分をどう思っているのか分からなかったみぞれから、感情を明らかにしてもらって、それは紛れもなく嬉しかったと思います。
 それでも希美の頭の中にはやっぱり「みぞれのオーボエ」が残り続けていた。
 「みぞれのオーボエが好き」って漏らしたのは、作中では「希美のフルートが好き」って言ってもらうための呼び水として漏らしたわけですが、
 どちらにしろあのシーンでの希美の返答はそれしか考えられない。みぞれのオーボエの演奏が凄いという事実を受け入れることだけが、希美にとっては愛の告白でありえたんですから。
 その意味でみぞれは希美の愛の告白に応えなかったわけですよね。そこで散々ずれていたお互いの関係が一致したところで決まった、つまり両方があのシーンで「失恋した」ってことだと思うんです。

 ラストシーンではみぞれが「ハッピーアイスクリーム」なんて言って、今まででは考えられなかった積極性を見せるわけですよね。
 それでも希美は「アイスクリーム食べたいの?」なんて誤解をしている。
 普通「ハッピーアイスクリーム」なんて言われたら「え?なにそれ?」ってなりますよね。
 まだ理科室での唐突な告白も希美にとって謎の中にあるし、希美にとってみぞれは未だ「不思議」な存在のままなんです。
 それでもみぞれは笑ってみせる。はじめて観たときは、その笑いが二人の誤解を象徴しているものだとおもって残酷だとおもったんですが、
 それはみぞれが希美の誤解を受け入れている、分かっていることの笑いだと思うようになりました。
 それならやっぱり二人はこれから仲良くなれるんじゃないかという希望の描写だと思うんですよね。
 というのが大まかなこのストーリーの自分の解釈で、大まかには捉えられてるつもりです。
 それでもインタビューで述べられているような「互いに素」であるような決定的なずれというよりも、
 自分に必死であることが生んだずれで、もしそういう必死さがなくなったところであれば、
 ふたりはもう少し一致できるような気がします。
 
 リズと青い鳥のことを希美は結末はハッピーエンドだと思うと言って、
 そのことをみぞれはすごく気にするんですが、
 希美は子供の頃読んだ童話のひとつとして、そこまで切実に考えていないんですよね。
 他にもたとえば希美は「一緒に音大行こう」なんて言ってないのに、
 優子に「音大行こうって言っといて辞めるって何!?」と責められる。
 そして希美もそれを否定しない、そういう過去が曖昧なものになっていく感じとか、
 そういうずれの描き方が、格段にすごいと思いました。
 上にも書きましたが、自分で相手を避けておいて、
 相手が自分を避けてるんじゃないかって思う感覚とか、
 人のせいにするってわけじゃないけど、自分の感情も曖昧になってくるんですよね。
 そういうことの描き方の濃度が異常なほど高いと思いました。

 さりげない描写でかつ印象深いシーンが多いのがアニメシリーズもそうでしたが、特徴だと思います。
 フルートが照り返す光に気がついて笑ったりするシーン、
 ああいうシーン描かれるとそれがあまりにさりげなすぎて泣けますよ。
 あのシーンだけでももう大傑作ですよ。
 あらすじじゃもはや語れないんですよね。細部が充ちているという感じがすごいです。

 もうひとつだけ、黄前久美子ちゃんと高坂麗奈ちゃん、ほとんど出てこなかったですが、
 二人でセッションしているあのシーンはほんとやばかったですね。最高だったです。
 ほんとうにあの二人はかわいい。自分たちの世界を作り上げている。
 普通に考えて先輩がうまくいかないパートを堂々と部室の裏で吹くなんてあてつけ、
 あまりに性格悪いですよ。
 みぞれと希美もやっぱりちょっとむっとしてますし。
 でも許されるようなところがある。
 あの二人はつんけんしているところもあるけど、基本的に人間が好きなんですよ。
 その愛情が感じられるからこそ、多少きついことを言っても受け入れられる、
 つまり周囲から信頼されている、その感じがたまらなく可愛いし、羨ましいですよ。
 キャラクターとして最高です。ほんと。

 終わります。

{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 23

72.0 8 嫉妬アニメランキング8位
千年女優(アニメ映画)

2002年9月14日
★★★★☆ 3.9 (448)
2167人が棚に入れました
芸能界を引退して久しい伝説の大女優・藤原千代子は、自分の所属していた映画会社「銀映」の古い撮影所が老朽化によって取り壊されることについてのインタビューの依頼を承諾し、それまで一切受けなかった取材に30年ぶりに応じた。千代子のファンだった立花源也は、カメラマンの井田恭二と共にインタビュアーとして千代子の家を訪れるが、立花はインタビューの前に千代子に小さな箱を渡す。その中に入っていたのは、古めかしい鍵だった。そして鍵を手に取った千代子は、鍵を見つめながら小声で呟いた。「一番大切なものを開ける鍵…」
少しずつ自分の過去を語りだす千代子。しかし千代子の話が進むにつれて、彼女の半生の記憶と映画の世界が段々と混じりあっていく…。

声優・キャラクター
荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、飯塚昭三、津田匠子、鈴置洋孝、京田尚子、徳丸完、片岡富枝、石森達幸、佐藤政道、小野坂昌也、小形満、麻生智久、遊佐浩二、肥後誠、坂口候一、志村知幸、木村亜希子、サエキトモ、野島裕史、浅野るり、大中寛子、園部好德、大黒優美子、山寺宏一、津嘉山正種
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

千代に八千代に千変万化

オリジナルアニメ劇場版


『東京ゴッドファーザーズ』に端を発しての今敏監督作品3本目の視聴。『PERFECT BLUE』を挟んで本作です。

氏の作品については、“虚構”と“現実”入り乱れる作風が特徴との交流あるレビュアーさんの言及があり、まさにその通りなんだろうと思います。
前作『PERFECT BLUE』でも、本作『千年女優』でも物語の主役は“女優”です。作り手が発信したいメッセージを表現するには、虚構を演じる職業柄“女優”という属性は語り部にふさわしいのかもしれません。

両作品とも現在進行形の今(現実)があって、そこに撮影シーンいわゆる劇中劇(虚構)が挿入されて次第に溶け合っていくのを基本構成としてました。
基本構成のみが前作とすれば、本作では女優藤原千代子の過去語り(回想)も加わることでより一層カオス度合いが増した印象。それでいて最後はきっちり収束するので観てて心地よかったです。
“女優”を扱った同氏の作品を続けて鑑賞したのはよい対比となりました。視聴順の推奨というほどでもありませんが、これからご覧なられる方は片隅にでも留意いただけるとよいかもです。


隠居した往年の名女優のインタビューをとりに女優宅を映像制作会社の社長さんが訪れるところから物語はスタート。
女優の名は藤原千代子。千代子の大ファンでもある社長さんは立花源也。千代子の半生を辿るドキュメンタリー製作が口実での訪問だったが、その半生がどういったものかもそしてインタビューを千代子が受けようとした理由も、鍵を握るのは立花が持参したあるおみやげでした、と。
以後、千代子が女優になったきっかけからの回想が始まり、出演映画のシーンも織り交ぜながら想い人である絵描きの青年を追いかけるストーリーが展開されていきます。はたして想いは成就されるのされないの?に視点を置いての鑑賞になるでしょう。


以下2点の両立がなされているところは高く評価したいです。

 1.上っ面だけかすめても面白い
 2.小難しく考えても面白い

どっちかに特化しても良いんですけどね。


1.上っ面だけかすめても面白い

映画の大半を占める千代子の半生語りの回想は、劇中劇と合わせて独特の空気を醸し出してます。普通は回想と現在との2本立てなところを、“回想”“劇中劇”“現在”3本立てで構成されているのは先述の通りです。それが溶け合ってチャンプルーしてるのが特徴となります。
複数場面が溶け合ってることのみならず、そこに登場するキャラにも捻りを加えてきます。過去の千代子、役を演じてる千代子、現在の千代子とその場面に合わせた登場人物たち。加えてインタビュアーたる立花と同行のアシスタントくんが回想と劇中劇にも顔を出してくるのです。なかなかお目にかかれない演出です。視聴者が??となりそうな箇所ではアシスタントくんが適度なツッコミを入れてくれるので置き去りにならない設計になってるとも思いました。
ここまででも新鮮味がある作品設計という強みがあるのですが、なによりテンポがよいのです。そして美しいのです。そんなお金かけてる気はしないんですが。。。
{netabare}馬賊に襲われているところからの戦国への転調シーンなど本来なら不自然なはずなのにカット割りが自然で気にならない。{/netabare}
{netabare}町娘が追いかけてる時の背景が浮世絵絵巻物風で、美しいと思える背景美術となっている。{/netabare}
{netabare}映画全盛期の昭和30年代。街並みから映画チラシ。家の中の家具調度品などの郷愁感。すなわち『三丁目の夕日』感っていうやつです。もしくは『新横浜ラーメン博物館』感のどちらでも。{/netabare}
{netabare}印象深いのは雪景色。絵描きの青年との出会い/別離のシーンであったり、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」的なシーンもありました。そのまんまでも綺麗なのですが、{netabare}絵描きの青年(役名は鍵の男)の郷土北海道の暗喩だったんでしょうね。{/netabare}{/netabare}

そもそもの話で、おばあちゃん千代子さんの佇まいの品の良さとたまに見せる少女のかわいらしさには触れておきたいかも。ヒロインへの感情移入の土台となるのは、往年の名女優の現在の立ち居振る舞いだったと感じます。
めくるめく場面展開の独創性が面白さの源泉であり、本流である想い人を追いかけるエモさは古今東西受け入れやすかろう物語でした。締めの一言がラブストーリーとして見立てた本作の評価に直結するくらいでしょうが、賛否両論あるくらいがこの作品にスパイスが利いていた証左です。


2.小難しく考えても面白い

やはり幕の降ろし方が気になります。
頭を使いそうな作品に遭遇した時、理解の手助けの一つとして冒頭シーンの意味をよく考えたりします。作品の開幕に監督がどのような意図をもって何を用意したかが表れているから、が理由。
その視点で本作を眺めた場合、※以下視聴済の方向けネタバレ

{netabare}千代子にとって想い人を追いかけることを止めて女優も引退したという人生の分岐点があの宇宙飛行士役の一幕でした。
“鍵”“地震”“老婆”“鍵の男”なにかしら示唆する暗喩めいたものは数多く配置されてるのが本作です。この宇宙飛行のシーンは冒頭と中間そしてラストと都合3回出てきますが、中間部分で二度目の鍵の紛失という事態に見舞われます。
一度目の紛失の際、千代子は結婚し家庭に入ってしまいます。劇中劇は「もう顔も思いだせない」と咽び泣いた教員役の1カットのみ。触れられてませんが、鍵が見つかるまで教員役以外の“女優”藤原千代子の描写がありません。
二度目の紛失の際には女優を引退し鎌倉だか葉山に引っ込んでしまい今日に至るといった具合です。
鍵とはどういった意味を持つものか?について鍵の男は言いました。

 {netabare}一番大切なものを開ける鍵{/netabare}

鍵を無くした時期に失っていたもの = 一番大切なもの ということなのでしょう。振り返れば劇中劇の多くは想い人を追っている描写で埋められてました。
どこかに辿りついて鍵を開けるのがゴールだと見えてたのはミスリードで、鍵が手元にあるから一番大切なものを開放できていたのです。こちらも振り返れば、千代子は鍵をネックレスにして首からかけてました。宝箱は千代子自身だったのでしょう。
となると、回想でも劇中劇でも想い人である“鍵の男”を追っている時に女優藤原千代子の人生が輝いていたと言えます。恋に恋してという陳腐さではありません。

{netabare}想い人を追う現実の自分{/netabare}
{netabare}想い人を追う演技をしている役の自分{/netabare}

“現実”と“虚構”が溶け合いました。導き出される答えは女優という職業に人生を捧げた一人の女性の凄味です。そして女優という職業の業の深さでしょうか。
そもそも“鍵の男”がちょんまげ姿で登場した時点で気づくべきでした。想い人は何かしらの象徴的な意味合いを持ち、好きな男を追いかけるシンプルな話ではなくなっていたのです。

人生は舞台であると言ったのはシェイクスピア。
浮世は舞台でメケメケの世界と言ったのは桑田佳祐。
本作を通じて、人生という舞台を演じ切るのが大事なのでは?との問いが投げられたと受け止めることができます。

{netabare}空襲後に「いつかきっと」の石版絵{/netabare}

完成することはきっとないのだと思います。だからこその「尊き哉人生」です。{/netabare}


小難しく考えると、ラストがストンと腑に落ちるのでした。
人生を愛した一人の女性の物語です。名作と言って差し支えありません。

{netabare}みたび鍵を手にすることができた千代子は、半生を振り返るインタビューの中で久方ぶりに女優となるわけです。
病床のベッドの上で立花からの「また追いかけられますね?」との励ましに「どっちでもいいのかもしれない。」と答えた千代子。

“わが人生に一片の悔いなし”{/netabare}



最後に余談。

■どこが千年?
千年とは物理的な時間の意味に非ず?
「千代に八千代に」ずっと
「千変万化」いくらでも
で使われる“千”の意味合いが強いと思う。


■声優“荘司美代子”のお仕事
藤原千代子役には年代に合わせて三名の役者さんが声を当てられてます。

荘司美代子:70代
小山菜美:30~40代
折笠富美子:10~20代

そのうちの荘司美代子さんのお声が凛として気品がありました。調べてみたら「ちはやふる(2期)」の山城今日子専任読手の声の方だったんですね。声の仕事はあまりない方ですが印象に残る演技です。



2019.02.17 初稿
2019.08.04 修正

投稿 : 2025/02/01
♥ : 34
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

考察多めです

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。

 初見でした。90分ほどの作品です。2002年の作品なので少し古いのかなと心配しましたが、そんなことはありませんでした。「猫の恩返し」と同年ですので、まだ見ていない方にとっても無用の心配かもしれません。ただ、昭和感を重視しているためか、ポップで明るい要素は乏しいので、そこを踏まえてから視聴した方がいいでしょう。

 完成度の高い作品ですが、好みは分かれると思います。謎解きのような要素が強く、考察対象が多いのが特徴です。考察好きに好まれるかもしれませんが、頭を空っぽにして楽しめるというわけではなく、90分という時間以上に疲れてしまいました。エンターテイメントよりは文学です。アニメを楽しみたいというより、映画を楽しみたいときに見た方が良いでしょう。
 称賛されるべき作品ではありますが、残念ながら私の好みには合いませんでした(評価に好みは反映させていません)。私自身が、あまりワクワクできなかったことが原因かもしれません。終盤の山場でも盛り上がれませんでした。


ジャンル:
 形容しがたいのですが、謎解きでいいと思います。「一番大切なものを開けるカギ」というのが何なのかを探っていきます。この問いに対する答えをより積み上げられるとエンディングでのカタルシスが増すのだと思います。
 語りべである元女優が、各年代での出演映画に自分の人生を投影し、徐々に映画と現実が邂逅していく、という展開です。やや難解に感じるかもしれませんが、解説役がいますので迷子になることはないでしょう。序盤では同じようなシーンが続きますが、少しずつ変化していきます。個別の循環構造ではなく、全体としてのスパイラル構造として描かれます。


テーマ:
 初恋から始まりますが、元女優の人生観を描いたという方がよいでしょう。


一番大切なものを開けるカギ:{netabare}
 絵具箱のカギなのか画材箱のカギなのか分からなかったのですが、「七色の女優」とチヨコが表現されていたので絵具箱が正しいのだと思います。
 まぁ、大事なのはもちろんそこじゃないですね。。。

 チヨコは、各年代で様々なジャンルの作品に出演しています。この点からは「七色の女優」と呼ばれるのは正しいのでしょう。ですが、キャラクター的には常に男性を追う役であり、多様性には疑問が残ります。逆に言うと、「七色の女優」と称されるほど様々な役を演じていたのに、その全てに自己投影できてしまったということです。チヨコにとって女優という職業が人生と同じ重みを持っていたということなのだと思います。
 カギは、初恋の象徴でもありますが、女優になるきっかけを与えてくれたものでもあります。つまり、カギは女優としての象徴でもあるのです。事実、カギを失ったチヨコは「主婦」であり、書斎からカギを見つけた途端に演技を始める「女優」となります。
 以上から、カギ=女優=人生であるといえます。初恋の男の絵具箱を開けるとか初恋の男に渡すとかは、強調されるほどは重要な意味を持っていないのではないでしょうか。チヨコがカギを持っているときだけ「一番大切なもの」が開く、すなわち、チヨコの人生が色彩鮮やかになるのだと思われます。{/netabare}


初恋の男:{netabare}
 初恋の男に会えないことと初恋の男が死亡することは、予測がついてしまいました。むしろ、予想できるように作っていたのだと思います。月の表現と、男が反体制派(反主流派)であることによるものです。
 月の表現は暗喩です。男は「十四夜の月」が好きだと言っています。「十四夜の月」は、どんな作品に使われたとしても、一般的に次の二つをイメージさせます。一つ目は「満ちることがない」ということ。二つ目は「満ちたときに何かが起こる」ということです。この作品では、両方が描かれます。
 老婆の「未来永劫恋の炎に身を焼く」というセリフは、初恋の男について「満ちることがない」、つまり、会えないことを示します。初恋の男が反体制派として描かれるときには、常に死の匂いが漂っていたため、死亡は不可避のように思えました。これも会えないことを補強しています。なお、終盤での拷問による死亡という告白は、死亡自体を伝えたというより、死亡時期を伝えたという印象を持ちました。
 そして、月が満ちるとチヨコは男の死を確信します。{/netabare}


千年の呪いとエンディング:{netabare}
 あの老婆はチヨコ自身だと思われます。何も説明がないのですが、説明が多いこの作品で何も説明がないことが逆に強烈な特徴になっています。他と関連しないからこそ、チヨコ以外あり得ないのだと思います。
 老婆はチヨコに千年の呪いを与えます。千年の呪いは、いとぐるま・ロータス(蓮)・出演映画と関連付けられて、輪廻観を示します。蓮といとぐるまで輪廻転生です(※)。女優としては、確かに1000年分の役を演じてました。そのどれもが男を追う役だったというのは前述の通りです。チヨコは役を通して1000年分の輪廻転生を繰り返していました。
 ところで、チヨコの女の幸せについて述べておかなければなりません。序盤で「国のために尽くすこと」「結婚して子を産むこと」が提示されます。いずれに対しても、チヨコは許容を示しませんでした。中盤では「結婚して子を産むこと」だけが残ります。このとき、チヨコは強い拒絶を示していました。

 輪廻転生と女の幸せへの答えがエンディングです。地震は生(再生)と死を意味していたようです。地震とともに、チヨコは「明日になれば思い出せない」といい、次の転生を否定します。チヨコに実際の死が訪れます。
 最後のセリフは「あの人を追いかけている私が好き」です。「あの人を追いかけている私」というのは、「カギを持っているチヨコ」を言い換えたものです。カギ=女優=人生ですので、初恋ではなく、女優人生への賛美です。「国」や「結婚出産」ではなく、女優として生きたことに一人の女性として満足したのだと私は思いました。宇宙飛行士という最後の役を演じることで、1000年目が終わり、呪いからの解放、輪廻からの解脱となりました。
 また、地球と月(宇宙)が対比されていたように感じました。月は男であり死、地球はチヨコであり生で、彼岸と此岸の関係です。月に降り立ったチヨコが見るのは男との別れであり、チヨコの死(解脱)も地球からの離脱として描かれます。だから、最後の役が宇宙飛行士だったのでしょう。

 実は視聴後、オープニングでなぜ未完成のはずの宇宙映画を見ていたのか、しこりのように残っていました。ですが、このレビューを書きながら分かったような気がします。
 あれは、現実と映画の邂逅の始まりであり、チヨコの最後の映画の開幕(カギを得て最後の転生をすること)を告げたのではないでしょうか。地震が起きてましたし、大きく外れた解釈ではないと思います。
{/netabare}


※千年の呪いへの補足(蛇足):{netabare}
蓮単独では、象徴されるのは「清浄」が基本となります。
蓮+円環(ループ構造)で「輪廻転生」。
蓮+食で「現世苦難からの解放」です(Lotus Eater)。
 上二つは、ヒンドゥー教・仏教から来るもので、三つ目はギリシャ神話から来るものです。老婆のいとぐるまは必須のアイテムでした。食が強調されたシーンは(多分)なかったので、エンディングで3つ目の要素を意識する必要はないと思います。テーマ的にもミスリードする可能性は少ないですが、念のため言及しておきました。{/netabare}


 考察として、どのシーンを取り上げるかは個人差があるかもしれませんが、説明が多い分、多様な解釈を許す作品ではないと感じました。「千年の呪い」に関連して、「明日」とか「若さ」とか、時間の表現に注目するのも面白いと思います。1回の視聴ですべての要素を掴むのはおそらく困難なので、少しずつ視点を変えて周回していくと、より楽しめるのかもしれないと思いました。念のためにもう一度述べておきますが、私の好みはともかくとして、名作ですよ。


対象年齢:
 高校生以上が望ましいと思います。重要なアイテムに気付ける力とそれを読み取る力が必要となります。これらがなくても楽しめることを否定はしませんが、この作品の持つ魅力が半減してしまうとは思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 12
ネタバレ

大滝政人 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

映画の映画

お気に入りの棚に入れてるのに、
いつまでもレビューを書かないのは、
どうかと思ったものなので書いてみますかね。

私的に今敏監督作の中で最高作でありますが、
根本的に面白くはない(観る人によるかな?)ので、
私は何度も観たいとは思いません。
レビューを書く為に今一度、視聴しましたが、
おそらくもう観ないでしょう。

一度でも良いので観てもらいたい作品ではあります。

例えば貴方が日曜の午前中にTVを点け、
何かのヒーロー物を観たとしましょう。
ヒーロー達は色分けされており、
リーダーのレッドを初めとして、
他にブルーやイエロー、グリーン等がいます。
ヒーロー達は、それぞれ得意な分野がありますが、
主人公のレッドには得意な事がありません。
しかしレッドは恐るべき素質を秘めていて、
それを見抜いた博士にスカウトされ今に至るのだった。
なにしろレッドは条件さえ満たせば、
どんな敵をも必ず一撃で打ち砕くスゲー技が使えるのです。
その条件とは悪に対する怒りが頂点に達した時である。

とまぁネタバレを避け微妙な話をしましたが、
予備知識ゼロから本作を観るよりは、
マシではないかと思い書いてみました。

本作の内容の半分は、こんな感じでありますが、
これを、そのままやってしまったら、
とてもじゃないが大人が観る作品とは言いがたい。
それに本作が描いている事は、もっと深い意味を持つ。

以下、ネタバレ。
{netabare}
では早速、言ってみます。

開始早々に元大女優は鍵の意味を口にしてくれます。
本来は何の鍵であるかは、すぐ後で出てくるし、
絵描きですから中身も予想がつくでしょう。
それを特別な物の様に言う質問に対し、
恥ずかしがり屋な少女の自然と出た勇気が微笑ましい。
もちろん鍵の君にとって大切の物であるのはウソではない。
仮にも招待するのだし、もう少し自分と、
好きな世界の事を話したいのだろう。
そんな鍵が彼女にとっても特別な物になるのです。

これまでの人生において、
貴方にも憧れのあの人に位置する人物が、
一人くらいはいただろう。
本作は愛よりも恋の割合の方が多い。
愛の力…と言うよりも恋に焦がれる無限の可能性、
つまりはその無敵さを描いています。

しかし、どんな偉人であっても人である以上、
老いからは逃れられません。
人は自分の欠点や認めたくない何かを、
自己防衛の為か目を背ける事が出来ますが、
彼女の場合は、どうでしょう。
彼女の身から鍵が離れていく時、恐怖が訪れます。

最後のセリフは「PERFECT BLUE」と同じく、
不評な方もいるでしょうが、
私は本作の場合は素直に良かったですね。
彼女は自分自身を認め答えを出すのです。
かくして大女優は大女優として幕を閉じるのである。
終盤の彼女のセリフは鍵の君に会う為のものだと思います。

要点だけ整理してみます。

まずは老婆について。
「あやかしの城」以降も彼女を苦しめる老婆の正体…
それは…なんと俺だぁ! (ウソです、ごめんなさい)
真面目に答えるとセリフの内容からして、
未来の彼女でありましょう。
そして彼女は「いずれ分かる時」が来て隠居する。

次は鍵について。
彼女にとって何を開ける鍵なのかだが、
それは俺の…もとい、
純真な少女たる心を開く物でして、
過去の彼女でありましょう。
少女時代の時は元々、少女ですから、
純真な少女たる心を保つ鍵であり、
開ける物ではなく閉める物となります。
彼女は少女のまま大人になれたのではなく、
大人になっても少女の強みを振るっていたのですから。
大人の彼女が外から鍵を開く度に、
少女の彼女が内から大切に閉めてくれるのです。

最後は本作において私が最も重要視している、
教えて先生!について。
ここでは鍵を所持していないので、
なんだか棒読みと言いますか抜け殻の様ですが、
映画の時とは違う「演技」になっていきます。
現代の彼女は鍵を所持しているからである。
「好きだった」と過去形なのが痛々しい。
彼女は隠居したとはいえ、
あやかしの老婆に近い存在なのは変わりはない。
だから彼女は忘れる様に努力した。その後悔。

まとめます。

これまでの彼女の演技は演技ではないはず。
ですが彼女は最後に本当に演技をするのです。
鍵の君の事が好きだからこそ、
「その想いの先は鍵の君ではない」という演技を。
そこには、あやかしの老婆の姿はありません。
老婆の千年の運命(さだめ)から解放され、
鍵の君に会えるのです。
これまでの彼女の映画は、どうでしたか?
演技ではない演技を続けていては、
千年の運命からは逃れられません。
いくら追いかけても鍵の君には会えない事を意味します。
約束を守る為の愛の意志が終盤のセリフなのです。

一応、最後のセリフを言葉通りに受け止めてやるとだ…
時は満ちた。いざ行かん境界の向こうへ。
少女の心を吸収しパワーアップした老婆は、
死後も生き続けるクリーチャー千代子となり、
「神演技をさせろ!理由?輝きたいからに決まってんだろ!?」
という悦楽の為だけに鍵の君は、この怪物に追われ続ける事となる。
そして彼女の恋が実る日は今後も来はしない。
まさに千年女優…どこまでも行け。
なんて解釈を貴方はしたいですか?
私はしたくありません。

正直、私の解釈は外れです。
なぜなら私的な願望なので…
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 3

87.6 9 嫉妬アニメランキング9位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~(アニメ映画)

2019年4月19日
★★★★★ 4.3 (427)
1976人が棚に入れました
昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、低音パートへやって来たのは4名。一見すると何の問題もなさそうな久石奏。周囲と馴染もうとしない鈴木美玲。そんな美玲と仲良くしたい鈴木さつき。自身のことを語ろうとしない月永求。サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、石谷春貴、藤村鼓乃美、山岡ゆり、津田健次郎、小堀幸、雨宮天、七瀬彩夏、久野美咲、土屋神葉、寿美菜子、櫻井孝宏

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

群像劇としての厚みを出す為に台詞は一言もいらないということを学びました【LIVE ZOUND&イオン幕張ULTIRA感想追記】

※以下の本文では2018年の映画『リズと青い鳥』の略称を“映画『リズ』”、劇中に登場する楽曲「リズと青い鳥」の略称を“「リズ」”、劇中劇としての童話「リズと青い鳥」の登場人物は“リズ”と表記しています


2015年の第1期テレビシリーズ、
2016年の劇場版総集編『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と第2期テレビシリーズ、
2017年の劇場版第2作『届けたいメロディ』、
2018年の映画『リズと青い鳥』、
それらに続く『響け!ユーフォニアム』シリーズの完全新作長篇映画


結論から先に言ってしまうと、【『届けたいメロディ』と『リズと青い鳥』は本作やテレビシリーズとはパラレルワールド】と割り切ってください
本作の世界観は【テレビシリーズ第2期の続き】になりますので特に映画『リズ』との整合性は一致しません
メインスタッフはテレビシリーズでお馴染み、石原立也監督、花田十輝脚本、池田昌子キャラデザ、音楽は松田彬人、京都アニメーション制作


昨年度、全国大会出場を果たすも銅賞に終わった北宇治高校吹奏楽部
ユーフォニアム奏者の黄前久美子は同級生でトロンボーン奏者の塚本秀一の告白を受けて付き合いだす
久美子達は2年生となり、新たな体制となった吹奏楽部で改めて全国大会金賞を目指すことに
昨年度の全国大会出場と、顧問の滝昇先生の人気も相まって新入部希望者は潤沢
低音パートにも4人の1年生が入ってきた
しかし新入生でチューバ担当の鈴木美玲は卓越した演奏技術を持っているものの協調性が無く、同じ低音パート部員達にも馴染めていない
さらに久美子の直接の後輩に当たるユーフォニアム担当の1年生、久石奏もまた社交的な表の顔とは裏腹に部活動そのものに含むところを持っているよう
1年生の指導員を兼任する久美子は1年生の抱える問題を「めんどくさいな~」と口にしながらも積極的に支えていくことになる…


『リズと青い鳥』を除けば『ユーフォ』シリーズにとっては初の完全新作の長篇
劇中ではかなり長い年月の多岐に渡る出来事を合間合間を区切りながら描いており、非常に濃厚な内容の映画と言えるでしょう
具体的には起承転結が3回以上繰り返すと思っていただいて結構です


これまでのシリーズを踏まえた作品なので、最低でも総集編映画である『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と『届けたいメロディ』の2作はご覧になってから今作をご鑑賞いただくことをオススメします
と、言うのも今作の久美子はとても主人公らしい牽引力を持った人物として描かれますが、それは久美子が1年生の時に“アレだけ色々な事件を経験してきた”からなのです
特に印象的な部分で一人になった久美子が「響け!ユーフォニアム」という楽曲を演奏してあすか先輩のことを思い出したり、吹奏楽の原初的体験である姉との思い出を振り返ったりするシークエンスは、そのシークエンスが持つ久美子の心理描写をセリフや表情だけでは読み取れない形にした高尚な演出になっていると感じることでしょう


また劇中でコンクールの自由曲として選ばれる「リズと青い鳥」という童話をモチーフにした組曲が持つ物語性については、映画『リズと青い鳥』の中で詳しく描かれているので興味があればそちらも是非どうぞ
ただし先述の通り映画『リズ』はパラレルワールドであり、今作と整合性は一致しません
具体的には映画『リズ』劇中の傘木希美だと、ソリストになるだけの実力に及んでいないこも
映画『リズ』劇中で本来はオーボエとフルートが掛け合いをするパートを、(遊び半分だと思うが)久美子と麗奈が練習していたシークエンスが今作には存在しないこと
今作の鎧塚みぞれの性格が明るめに描写されているのでシリーズでは比較的に最も好転的なみぞれが描かれた『テレビ第2期』或いは描写が無かっただけで可能性としては存在する『届けたいメロディ』の世界観の続きと考えるのが自然なこと
この3点から映画『リズ』はパラレルワールドだと推測が出来ます


さて、「リズ」という楽曲を踏まえた上でクライマックスの演奏シークエンスまでに描かれる“群像劇としての『ユーフォ』”について話したいと思います
よくオイラは群像劇が好きだという話をするんですが、『ユーフォ』って登場人物が多い割りにスポットが当たるキャラが非常に搾られていて、ソレはソレでまとまっているという肯定的な観方も出来るんですが、登場人物は多ければ多いほど物語に厚みが欲しい派なんです、オイラは
そういう意味で『ユーフォ』は諸手を挙げて絶賛出来る作品では無かったのですが今作で少し考え方が変わりましたね
と、いうのも劇中では度々にみぞれと希美という2人が見切れるカットがあり、この2人がメインストーリーライン上はともかく、北宇治高校吹奏楽部の、特に「リズ」という楽曲に関しては欠かすことの出来ない重要な人物であることが多くを語らずに表現されているのです
「リズ」の第3楽章が始まるとオーボエとフルートがそれぞれ青い鳥とリズを表現する掛け合いパートがあり、それがこの楽曲において最も印象的なフレーズとして幾度か登場します
そこでこの掛け合いを演奏するのがみぞれと希美というわけ
ですがこの超重要人物2人、なんと台詞が一切として無いんですよね
声優もクレジットされてないのでガヤ等も含めて台詞ゼロは間違いなさそうです
この2人の関係性についてはテレビ第2期、或いは映画『リズ』で散々語られているので今更何か付け加えたところでメインのストーリーラインが散ってしまう恐れもあり、あえてモブの一部として扱っているということなのでしょう
そうまでしてもみぞれと希美を登場させているのは、この2人の存在こそが「リズ」という楽曲の物語性を引き立てているのだと、クライマックスで気付かせる為なんですね
台詞の無い登場人物から物語の厚みを感じるとは…いやはや恐れ入りました
思わず演奏シークエンス中に泣いてしまいましたからね;;


メインのストーリーライン上かかすことの出来ない人物として新1年生も加わり、物語は新しい局面を迎えます
特に鈴木美玲は卓越した演奏技術を持ちつつも孤立しがちな高坂麗奈と似た様な側面を持ちつつも、実際は麗奈ほど孤独を愛しているワケではない“弱い麗奈”とも言える存在であること
そして久石奏もまた、他人との距離感を計ることが得意ながら性根が捻じ曲がった“歪んでしまった久美子”と言える存在であることなど、久美子達2年生世代との対比になるキャラとして設定されてるのが面白い


原作では3年生になった久美子達の物語がいよいよ始まったようですが、3年生篇のアニメ化は正直難しいかもしれませんね…
今作では1年生指導員になったことでまるで悟りを開いたかのような落ち着いた様子で物事に対処する達観した態度の久美子が徐々に見受けられるようになっていきます
でもそれってつまり久美子にその任を指名した、恐らく吉川優子部長と中川夏紀副部長の才なんだと思うんですよ
久美子世代が入学する前に部の雰囲気を険悪にしてしまったのは優子世代ですし、麗奈と香織先輩のソロ争いに物申したのも優子自身、今作で奏ちゃんが途中憤慨するキッカケは夏紀ですし、映画『リズ』の主役は言うまでも無く優子世代
これまでの北宇治の事件には、常にその中核に優子世代がいたわけです
実は物語上の最大のキーパーソンは優子世代だったということになりませんか?
“なかよしがわ”と“のぞみぞれ”がいなくなった北宇治はあんま観たくない…;
というのがオイラの本音ですね


(とか言ってる間に3年生篇のアニメ化が決定しました、オイラが言いたいことは上記の通りなのであとは原作がめちゃくちゃ面白い、とかそういった不確定要素に期待しています)


ところで早見沙織に二言しか喋らせないアニメってなんだよwww


本日、2019/6/5までに4回ほどリピートしましたが4回目に数多くの『ユーフォ』ファンが“最高”と賛辞を贈る川崎チネチッタの8番スクリーン、通称“LIVE ZOUND”が今週で上映終了とのことで初めて足を運んでみました
いや~、本当に最高です!
関東近郊で『ユーフォ』を観る上でこのLIVE ZOUNDを超える劇場は存在しないと断言できます
剥き出しのウーファー2基にフロント左右に吊り下げられたラインアレイスピーカー、と仕様自体は立川シネマツーaスタに似ています
が、箱が正方形の為、音の定位が非常にハッキリしています
環境音、つまり川のせせらぎや人混みの喧騒などに広がりが感じられますし、演奏シークエンスではドコで何の楽器が鳴っているのか、一音一音がよ~く聴こえます
低音や高温が中音にかき消されて無いんですね
序盤の「それが私の生きる道」で左手に夏紀先輩のエレキ、右手に緑輝のベースがいるのが瞬時にわかりますし、クライマックスの「リズと青い鳥」に至っては、もはやこの劇場でなければ100%の音を聞き分けるのは難しいのでは?とすら感じます
セリフ類の音量も確実に上がっているのに、不自然な圧力や歪みは感じられませんので他の上映より数段セリフが聴き取り易いと思います
メインのキャラにセリフが被ってしまっているバックのモブが、何を言ってるのかが明白に解ります
唯一、このLIVE ZOUNDについて注意が必要な点ですが、後ろの席ほど傾斜が付いていて観易く聴き易くはなっているものの、最前列になるとスクリーン位置やスピーカー位置が高いこともあってかなり観上げることになってしまう点です
最前列ではLIVE ZOUNDの真価を体感することは出来ないと思って頂いて結構でしょう


イオンシネマ幕張新都心にてセカンドラン上映が決定し、イオン幕張が誇る8番スクリーンULTIRAで鑑賞してきました
正直音の定位はまぁまぁですかね
音の定位に関しては川崎チネチッタ>幕張≧新宿ピカデリー≧その他という感じです
低音は重く響くまさに重低音という感じですが歪んだ印象は無くクリアです
でも肝心の大型スクリーンが3Dに対応する為にシルバースクリーンなんですよね…『幼女戦記』の時にも同じことを書きましたシルバースクリーンだと色調が暗めになる上に霞が掛かったような靄が掛かった様な映像になります
これはちょっと僕の好みから外れる、というのが結論です

投稿 : 2025/02/01
♥ : 21
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

響け。。奏(かなで)の心と、全国大会の空に!

 
はあ・・遂に視聴できた・・
劇場版外伝の『リズと青い鳥』を視聴後、配信まで待てず、いつか観なきゃと思っていましたが・・
↓↓ネタバレじゃないけど作品に関係ないので畳んでおきます↓↓
~{netabare}
2020年某月某日。
まとまった自由な時間がとれることになり、5本で安くなるTSUTAYAレンタルで映画を観よう!と、思い立ちました。
でも・・

とあるキャッチユーザのレビューを拝見して、まさかとは思ってたけど・・そのまさか。
最寄りのTSUTAYA泉古内店に置いてないじゃん・・・orz

となり街の蔦屋書店仙台泉店まで行ってもいいんだけど、ある確証はないし、泉古内店にこの後探しに来る人もいるかも知れないし・・と思い、店内の専用端末で取り寄せしました。多分取り寄せたらその店に置くんだと思うし・・

で、今になってサイト検索してみたら、蔦屋書店仙台泉店にも取り扱いなし・・ちょっとちょっとTSUTAYAさん!京アニなめとんのw

自分みたいに探して諦めてる人って結構いるんじゃないかな。
なんだかなーだよ・・
やはりここは取り寄せて正解ですよね。

ちなみに、この日レンタルした5本は・・
■冴えない彼女の育て方 fine
■青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない
■劇場版 メイドインアビス-深き魂の黎明-
■この世界の(さらにいくつもの)片隅に
■サイコパス3 FIRST INSPECTOR
 (ユーフォがなかったために急遽選定。
  後にアマプラで配信されてることが判明w)
{/netabare}~

さ、いよいよ黄前ちゃんや麗奈との再会です・・

■エピソード
おっとおおーっ!
のっけからそうきますか!ww
~{netabare}
いきなりの、告白シーン・・
久美子の困り顔いただきました(^^)/

で、久美子もOKしたみたいですねw

ユーフォって百合要素あるし恋愛エピソードないのかと思ってたのでびっくり。でも、たまこまーけっとの例もあるし、大歓迎ですよー ^^

まずは新入生の勧誘ですね。
またもやエレキギターやドラムの演奏が・・
吹部って軽音楽もやるんですね。

うへぇ・・1年めんどくせぇw
今回は彼女らが引っ掻き回してくれそうですね ^^;

劇場版『リズと青い鳥』のヒロイン、みぞれと希美は・・
ちゃんといたw

顧問の滝が選択した自由曲は・・リズと青い鳥!
やっぱそうこなくちゃね ^^

今回は吹奏楽部の生々しいドロドロも健在(?)で、本当に部活青春してました。

恋バナの展開も楽しみでした。
ひょっとして、『ちはやふる』的な展開も!?なんて期待してたんですが。
花火大会のあと、恋人関係解消って・・・・
それほど吹奏楽に打ち込みたいってことね。
さすが。この作品は一味ちがうw

コンクール会場にあすか登場。
ちょっと鳥肌が立って、ジワっときた。
魔法のチケットってなんだったのw

この作品のために書き下ろされたという楽曲『リズと青い鳥』。
演奏シーンはヘッドホン推奨です。
衣擦れの音や繊細なハープの音、全体の強弱がよく聞こえます ^^
演奏シーンは凄かった・・・
特にみぞれの演奏シーン、ジーンと来ました (;_;

なのに・・なのに。
みぞれもいるのに、麗奈もいるのに・・
『リズと青い鳥』を最高の演奏をしたのに、金賞なのに・・
全国大会行けないんですか・・
いまの今まで、金賞=優勝だと思ってました。
金賞は何校もあるんですね。
より優秀な高校が多かったってことか。

観直してみれば、演奏終わりのシーンの演出が抑え気味だったかな。
ちょっと力強さが足りないというか。

そして、そういえば、劇場版『リズと青い鳥』はこの話の並列進行なんですね・・

帰りのバスににて・・
奏:
 頑張るってナンですか。
 だからいやだったんです。
 結局ナンにもならなかったじゃないですか。
 あんなに練習して、ケンカみたいなこともして、
 夏休みなのに毎日学校来て。
 バカみたいです、こんなの。

ナンにもならなくはないよ。
でもその価値に気付くのはもう少し後かな。

あの黄前ちゃんも、遂に三年に。そして部長!
みぞれは卒業かぁ・・
でも・・この悔しさを胸に、今度こそ・・・
{/netabare}~

期待に違わぬ絵と音楽の美しさでした。
これまであまり触れられることのなかった、久美子と秀一の関係も気になりました。
やはり1年の新入部員がいい具合にかき混ぜてくれました・・

そして・・これぞ青春! ^^;


■キャラ/キャスト
新キャラ中心に・・
~{netabare}
久石 奏(ひさいし かなで): 雨宮天
1年生。ユーフォニアム担当。
遂に天ちゃんも、京アニに。
七つの大罪から注目してます。
今回、可愛いけどカワイクない、
クセのある個性的なキャラで、
しっかりイライラさせて頂きましたw
これからのキャラなので大いに期待してます ^^

鈴木 さつき(すずき さつき):久野美咲
1年生。ツインテール。チューバ担当。
ええと、どっかで聴いた声。
無彩限のファントム・ワールド(熊枕久瑠美)、
3月のライオン(ヒロインの妹、モモ)、
む、七つの大罪(ホーク)これだ・・

鈴木 美玲(すずき みれい):七瀬彩夏
1年生。高身長でチューバ担当。
cv七瀬さんは・・
慎重勇者(フラーラ)、
お!サクラクエストのヒロイン(木春由乃)、
と、まちカドまぞくの猫(メタ子)・・
今回はおとなしいキャラでしたね。

黄前ちゃん:黒沢ともよ
声優さんの中でも個性的な
セリフの言い回しですね。
声を聴くのは『宝石の国』以来かな・・
第十二回声優アワード主演女優賞受賞の
貫禄すら感じるのは気のせいでしょうか。

麗奈:安済知佳
黒髪ロングなので作中キャラでは最もタイプかな。
安済さんは・・
灰と幻想のグリムガル(メリイ)、
クズの本懐(安楽岡花火)、
サクラクエスト(緑川真希)、
刻刻(佑河樹里)、
ハクメイとミコチ(セン)、
荒ぶる季節の乙女どもよ。(菅原新菜)・・
メインも多いですね ^^

加藤 葉月(かとう はづき):朝井彩加
2年生。チューバ担当。ちょい刺さるキャラw
浅井さんは・・
え。カリメロ(カリメロ)!
スクスト(降神陽奈)・・
お世話になってます。
元気なキャラが多いですね ^^

小笠原 晴香(おがさわら はるか):早見沙織
コンサート会場に来てくれました。
早見さんもマジ天使w
{/netabare}~

水着シーン・・
宇治って泳げる川があるんでしょうか・・
これ、公園かな?
私、気になりますw

エンドロールに山田尚子さんの名前を発見・・
そういえば公開は事件前でしたね。

 原作:宝島社文庫の小説
 制作:京都アニメーション
 公開:2019年4月
 視聴:2020年11月DVDレンタル

ED後も忘れず観てください ^^
3期が待ち遠しいです。
 

投稿 : 2025/02/01
♥ : 35
ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

響け!久美子

待ちに待ったテレビドラマの続編。
2年生になった主人公・黄前久美子を中心に、北宇治高校吹奏楽部の新年度の1年間が描かれます。

私は原作未読で、昨年鑑賞した映画「リズと青い鳥」以外、テレビドラマ以降のストーリー情報は一切入れず本作を鑑賞しました。

その上で、テレビアニメ版のファンの1人として素直に満足できたのは、映画の100分間という限られた尺の中で「期待していたモノ」を全て見せきってくれたこと。

「愛着あるキャラ達の個性的で愛嬌に溢れた数々の描写。」
「新しい部員達も含めて描かれる葛藤と熱い思い。」
「主人公・久美子の更なる成長。」
「物語中に組み込まれる心地好さと高揚感のある数々の演奏シーン。」

テレビドラマ(特に1期)で感じたハラハラ、ワクワクの「響け!ユーフォニアム」の魅力がギシギシに詰まっています。

そして更に今回の映画で加わった強い見応え感覚はニヤニヤです♪
同じ京都アニメーション制作の「たまこラブストーリー」のような恋のエッセンスが盛り込まれているのですが、作品の部活物としての熱い雰囲気を損ねる事なく本題のテーマにしっかりマッチした二人の爽やかな進展は、テレビドラマになかった味わいを絶妙に添えています。
本映画の脚本構成の中でもっとも個人的に秀一・・もとい、秀逸に感じました。(オッサンなんでお許しを^^;)

とまあ、映画としては満足するべきなんですが、2クールかけたテレビドラマに比べると、心情描写の時間が少なくキャラクターの掘り下げも不足しているため、テレビ版2期で感じた深みのある感動や余韻は得れたとは言いがたい・・・
欲を言えば、これだけ魅力的な部員達個々のドラマ要素があるのだから、もっと尺をとったコンテで登場人物の一人一人にじっくり感情移入して悲しみや喜びを味わいたかったです。
(テレビのクール放送が無理なら、映画を前後編の2本立てにすれば、本作を観る私のようなファンは必ず2本とも観るから興収も稼げたと思うのだが・・勝手な素人勘定かな・・・制作サイドはプロ集団。この美味しい題材をもっと上手く調理出来るのを承知の上で1本の映画に詰め込んだのは業界の大人の事情なのか?3期に繋げる為の戦略であって欲しい・・)

以下グダグダとネタバレ感想です
{netabare}
「好きなんだけど・・お前を!」
秀一の告白から始まる物語の開幕シーンは自分的にはややサプライズでしたが、それに合わせたオープニングの選曲はジャスト「いい感じ~♪」
交際に絡む反応には久美子らしさが出ててニヤニヤしまくりでした。
中学生でもさっさとキスをする恋愛物が多い中、「そういうことはしない・・」って、お前ら真面目かよっ!
ツッコミながらもラインのやり取りを見て清々しく感じます。
そんな二人のコンクールを前にしての一旦の決断にも純粋なひた向きさが伝わり胸が熱くなりました。
(父親的に将来の二人の結婚を認めます^^)

めんどくさい1年生筆頭、久石奏。

CV雨宮天さんの巧みにキャラの表裏さを感じさせる好演は魅力を引き出してました。
久美子役の黒沢ともよさんとの熱演、雨中での二人の本音をさらけ出した掛け合いは本作一番のエキサイティングなシーン。
「ボケっとした顔・・鏡貸しましょうか。」の奏の毒舌には久美子に悪いがニヤっとも。
相変わらずの熱い久美子節は冷めていた奏の心に火を着けます。
そうして受け継いだ熱い思いを感じさせる「悔しくて死にそうです!」は見事な締めでした。

不憫すぎる~加トちゃん葉月。

後輩の美玲にキツイ態度をとられ、挙げ句今年もオーディション落選。それでも「ゴメンねー」「やったじゃん」常に優しく振る舞います。
描写は少なかったけど、陽気さの影で1年の時から大きなチューバを背負い必死に練習してきた姿が偲ばれ健気さに泣けました。
さつきがなついてくれるのと、サンフェスで演奏する勇姿を映してくれたのがせめてもの救いですが、この娘をコンクールの舞台に立たすためにも続編切望です~

チョッと丸くなった?「特別」麗奈。

再び大吉山のシチュエーションでトランペットの音色と魅惑的な姿にご馳走さま♪
プロ奏者を目指すと言った彼女は、まだなりたい物を見つけていない久美子の良きナビゲーターであり相談友達ですね。
この娘も続編で先生へのLOVEを捧げる演奏をぜひ見届けたい~

「ハイっちゅーもーく!」の優子部長。

前年の晴香部長より貫禄があり堂々の部長ぶりでしたが、コンクールの結果に崩れ落ちる後ろ姿が切ない~~直後の、落ち込む部員達の前での発言は立派でした。
夏紀副部長との絡みと「マジ、エンジェルー♪」が聞けたのが幸いです。


やっぱり凄い!コンクールの演奏シーン

自由曲「リズと青い鳥」のフル演奏。今回も全奏者と楽器を映しだす圧巻の作画です。(風の音を出してた回転ドラムみたいのも楽器?)
みぞれのオーボエが際立つ楽曲は、その音色もさることながら彼女を一周するカメラアングルも巧みでシビれました。
素人の耳には前年の「三日月の舞」と遜色なく聞こえ、むしろ荘厳さを感じるくらい。
しかし全国大会の切符をつかんだのは昨年の北宇治のお株を奪ったかのような、新任ゲンちゃん先生(月永求の親戚?)の龍聖学園。
結果は次年度の展開を考えれば正直予想どおりでしたが、発表の瞬間はドキドキし北宇治の部員達と共に落胆しました~( ´△`)


最後に、押しも押されぬ北宇治高校吹奏楽部の顔に

かつて「ユーフォっぽい」と評された久美子。
ユーフォニアムの楽器紹介を見ると、
低音から高音まで色んなパートに顔を出し、メロディから伴奏までこなす何でも屋。
金管楽器から木管楽器まで幅広く音を合わす事が出来る。
とありました。(知名度が低く影が薄いとも^^;)
作品で映し出される彼女の成長は、まさにその楽器を体現していくかのようです。
テレビドラマでは色んなやっかい事に顔を出しては解決に奔走。
映画では気難しい後輩達を懐柔し、辛い先輩に寄り添う事で色んな人と馴染む術を身に付けます。
劇中、奏に指摘されて見せた本心、演奏を「上手くなりたい」の邪魔になるとわかりながら上手く立ち回ってでも皆と合わそうとする自分の事も認めようとする思いは、久美子自身がユーフォニアムのようでありたいと願っているのかも知れません。
そんな彼女が部長として率いる北宇治高校吹奏楽部の頂点への挑戦と、その先に待つ歓喜の光景が今から待ち遠しいです。{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 39

76.1 10 嫉妬アニメランキング10位
続・終物語(アニメ映画)

2018年11月10日
★★★★☆ 3.8 (346)
1921人が棚に入れました
高校の卒業式の翌朝。顔を洗おうと洗面台の鏡に向かい合った暦は、そこに映った自分自身に見つめられている感覚に陥る。思わず鏡に手を触れると、そのまま指先が沈み込んでいき……。気がついたとき、暦はあらゆることが反転した世界にいた。

2018/11/10より全国劇場にてイベント上映開始!

声優・キャラクター
神谷浩史、斎藤千和、加藤英美里、沢城みゆき、花澤香菜、堀江由衣、喜多村英梨、井口裕香、早見沙織、井上麻里奈
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

僕達と,育ち続ける物語。

こちらは「こよみリバース」。
高校の卒業式の翌朝から始まる物語です。
終わりの,続きの物語ということらしいです。
今回もあらすじに沿ってレビューしていきたいと思います。

阿良々木くんが朝,顔を洗って洗面台の鏡を見ると,鏡の中の阿良々木くんが動いていないことに気付きます。
鏡に手をのばすと彼は鏡に引きずられるように入っていってしまったのでした。
{netabare}気がつくと,そこは洗面所でした。
鏡の中の反転した世界です。
そこに現れたのはお風呂から上がった背の低い火憐ちゃん。
いや。お兄ちゃんの前で裸で平気ってなんなのこの妹。いつものことだけど…。
女としては地味にブラの着け方が気になる。。
これじゃ綾波レイの二の舞じゃないか!!
それより気になったのはパンツよりブラの方を先に着けるの!?
まぁ,火憐ちゃんの好きだけどさ。
「って言うか兄ちゃん,出てけよ。妹が下着姿なんだよ。」って。
あのぉ。裸は良いのに下着姿はダメなのですか??
なにそのダブルスタンダード。
その後月火ちゃんに会うのだけど,彼女の浴衣が左前になってることに阿良々木くんは気付きます。
そして斧乃木ちゃんにも会います。
いつも無表情な彼女がいつもと違う。
そしていつものひらひらスカートじゃなくてパンツスタイル。
八九寺に会おうと北白蛇神社まで来た阿良々木くんはお賽銭を投げて八九寺を召喚しようとします。
ここで内心「オリジナリティーあふれるアイディアが出てくるかどうかがあいつと僕を分ける壁だと言えよう。」とか言って貝木をディスってるけど,恋物語観た視聴者さんはみんな「(o-∀-)σオマエ…」ってなってるよね(笑)。
投げ入れる金額も違い過ぎるし。。
なんとか八九寺は現れます。でも21歳の八九寺お姉さん!!
「阿良々木くふぅん♡」って(笑)。
それで八九寺お姉さんに相談にのってもらいます。
そして阿良々木くんは思いつきます。
暦物語「こよみウォーター」での出来事を思い出したんですね。
神原の家のお風呂が元の世界との通話口になるのではないかと。
でもそこでレイニー・デヴィルに出会ってしまうのです。
「憎い」を連呼して追いかけてくるレイニー・デヴィルだったけど,ブラック羽川に救われます。
羽川の乳房の左右差まで把握してたとか,変態すぎるんだけど阿良々木くん!!
確かに右胸の方が大きいのは珍しいけど!!
家に帰ると,女の子が居ました。
どうやらこの世界の阿良々木くんは老倉育と一緒に暮らしてるらしい。
この世界の老倉さんは幸せそうだなぁ。
現実がこうだったら良いのにな。
真宵お姉さんが召喚したのは先代神様のクチナワさんこと千石でした。
口調がクチナワの兄貴っぽくなってる(;´・ω・)
千石との会話の中で阿良々木くんは鏡は左右逆に反転するのではなく裏返っているのだと気付くのです。
そして,元の世界に代わりに行った阿良々木くんは扇ちゃんではないかと考えるのでした。
寝ようとした阿良々木くんのところに斧乃木ちゃんが来ます。
いつもの無表情の斧乃木ちゃんです。
うん。こっちの方が落ち着くなぁ。
「深淵を覗く者は,また深淵からも覗かれている」
有名なニーチェの言葉ですね。
阿良々木くんが斧乃木ちゃんのパンツを脱がさずに去ったことを訝しんでの行動だったようです(笑)。
“パンツ”がパンティーの方のパンツなのかトラウザーズの方のパンツなのか聞く阿良々木くんだったけど,「さあね。自分の胸に聞いてみたら?」って教えてくれない斧乃木ちゃん…好きです。
それに加えて「僕の胸を使ってやるいつものやつ」とかいうパワーワードまで飛び出します。
大事なことなので2回訊ねる阿良々木くんだったけど,それは華麗にスルーされます。
斧乃木ちゃんはブラック羽川に阿良々木くんを助けるように依頼した人が居ると考えます。
そして,学習塾跡に向かいます。
でもそこにあったのは廃ビルではなく豪華絢爛なお城でした。
そして,そのお城に住んでいたのは人間のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだったのです。
姫様に謁見している阿良々木くんは,その余りの高貴さに自然と自殺したくなってきてしまいます。なにその謎設定(笑)。
阿良々木くんはこの世界に長く居続けちゃいけないらしい。
翌朝,月火ちゃんに顔を洗われます。
その水が流れていく瞬間,その水に映ったのはにやりと笑う阿良々木くんの顔でした。
自分とは違うその表情に驚く阿良々木くん。
どうでも良いけど,阿良々木くんの妹たちは何でいっつも裸で登場するのよ!?
神原の家に向かう阿良々木くんと斧乃木ちゃん。
レイニー・デヴィルは斧乃木ちゃんが何とかしてくれるらしい。
結局,お風呂につかる阿良々木くん。
そこに現れたのは神原駿河のお母さん,臥煙遠江でした。
何故か一緒にお風呂に入って話します。
いや。どんだけ裸の女が登場するの!?このアニメ。
臥煙遠江は何でも知っちゃう人らしい。
彼女から背中にスティグマという名のヒントをもらう阿良々木くん。
そのヒント通りに直江津高校に行くことにしました。
制服を着て行こうとしたけど,制服が男子用から女子用になっていました。
女子用の制服を着て高校に向かう阿良々木くん。
いくら鏡の中の世界だからってメンタル強すぎるよ,阿良々木くん。
扇ちゃんが北白蛇神社に行くと真宵お姉さんと千石と羽川が酒盛りをしていました。
羽川は幼女バージョン。
羽川は何でも知っているなぁ。
阿良々木くんが直江津高校のかつての一年三組の教室に向かうとそこに待ち受けていたのは扇ちゃんでした。
洗面台に見えた顔が笑ったように見せたのは扇ちゃんでした。
扇ちゃんは鏡の世界の住人ではなく,阿良々木くんの扇ちゃんらしい。
扇ちゃんは阿良々木くんに,阿良々木くんが鏡の世界に来たのではなく,鏡の世界には削られているはずの20%を引っ張ってきたと教えます。
ん~。何だか分かったようで分からない。。
斧乃木ちゃんは懐から吸収率100%の鏡を取り出します。
それを北白蛇神社に奉納すればいいのだそう。
そうすれば残りの2割を吸収してくれるらしい。
結局,阿良々木くんの心残りが今回の事件を引き起こしたってことらしいです。
元通りになった世界に現れたのはピッグテールの戦場ヶ原さん。
阿良々木くんは今回の事件について彼女に話します。
心残りは何だったのか彼自身にも分からないらしい。
最後は戦場ヶ原さんといちゃいちゃして終わり☆{/netabare}

全体的になんか退屈でした。
今までのヒロイン達総動員だったし,会話で面白いと思った所はもちろんあったけど,相変わらず無意味な会話やだらだらとした説明がとにかく長くて,途中で観るのがしんどくなっちゃいました。
こちらはテレビアニメとして6話に分割して放送されたらしいので,それならまぁ観れるかなと思うけど,一気見は集中力がもちません。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

僕達と、育ち続ける物語。

この作品の原作は未読です。
化物語から始まる一連の「物語シリーズ」ですが、物語の難易度が段々上がっている気がするのは私だけでしょうか?

元々は、私立直江津高校三年生の阿良々木 暦が春休みに吸血鬼であるキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと出会て吸血鬼の眷属となります。
そして、暦の周囲の友達や家族に取り憑いた「怪異」に纏わる物語でした。
この頃は話が分かりやすかったんですけどね…
個人的には「終物語」くらいから、物語の構成や登場人物の設定が複雑で難しくなった感があります。

だから恥ずかしながら本作では怪異は微塵も登場しなかったと思っていました。
高校を卒業したから…?
それとも暦の周囲の怪異は出尽くしちゃったからとか…?
などと考えていましたが、結論から言うと私が忘れていただけでしっかり怪異は登場していたんです。
でも、その怪異に関しては全てがシークレットなんでしょう。
重要なキーパーソンである筈なのに、公式HPのどこにも見当たらないのですから…
もちろん、ストーリーには出てきますけれど…
つまり物語が放送されるまで、そのキーパーソンに関する情報が皆無だったんです。


阿良々木暦の物語は終わった。
地獄のような春休みから始まり、
いくつものめぐり合わせを経て、
阿良々木暦の高校生活最後の一年間は終わった
…かに思えた。

だが卒業式を終えた翌朝、思いがけない事態が起こる。
暦は、鏡の世界に迷い込んでしまっていた。

これは、高校生でもない、大学生でもない、
そんな時期に阿良々木暦が体験した
終わりの、続きの物語。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

「阿良々木暦の物語は終わった」と書かれていますが、見た時にどうしてなんだろうと率直に思いました。
何故なら、原作ではまだ阿良々木暦のの物語は大学生編として続いているから…

確かに高校生としての阿良々木暦の物語は終わったかもしれません。
ですが、阿良々木暦自身の物語は終わっていませんので…
でも、物語を完走して理解しました。
この物語を成立させるには、ここで一旦を終わらせる必要があったんです。

でもこの伏線は正直分り辛いです。
最後の最後までチンプンカンプンでしたから…

でも、難しいながらも視聴を進めていくと、この鏡の世界の設定は実に面白いです。
特に化物語から欠かさず視聴してきたファンの方には堪らなかったのではないでしょうか。
かく言う私もその一人ですけど…

この鏡の中の世界…文字は裏返り右と左が逆になるんですが、これは見た目の話だけで本質ではありません。
この世界の面白さの本質は、設定そのものが裏返ることなんです。
設定が裏返ることの面白さは、登場人物のこれまで見れなかった一面が見れることに尽きると思います。

例えば八九寺 真宵は永遠の小学5年という設定でした。
ですが本作では「傾物語 第閑話 まよいキョンシー」でお目見えした真宵お姉さんになっていたり…
この設定で色々持っていかれたのは、やっぱり余接ちゃんで決まりでしょう。
普段無表情の余接ちゃんが裏返ると…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

人生には進学、就職、結婚など様々な節目がありますが、節目を迎える時にはこれまでを振り返る大切さを、この作品に教えて貰った様な気がします。
今回暦も高校を卒業するという節目を迎えた訳ですが、節目を迎えた人ならではの物語だったのではないでしょうか。
だから物語を終わらせて節目を迎える必要があったんです。

きっと優れた人は節目を迎える前に自分自身を振り返るんでしょうね。
だから第2、第3の暦になる可能性は格段に低いのでしょう。
まぁ、それが出来たら苦労しないんですけどね^^;

物語はちょっぴり切なくて…やっぱり戦場ヶ原ひたぎは可愛くて…
〈物語〉シリーズ・ファイナルシーズン最終巻をアニメ化したこの作品…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、阿良々木暦の「07734」
エンディングテーマは、TrySailさんの「azure」
オープニングは不思議な感じの曲でした。
TrySailさんの「azure」は安定感抜群の曲だったと思います。

0.5クール全6話の物語でした。
多少、難しさを感じましたが気合いと根性で乗り切りました。
もちろん堪能させて貰いましたし、視聴して良かったと思っています。

でも、この〈物語〉シリーズの終着点ってどこになるんでしょうね。
終わらない作品は決してありませんが、この作品にはまだまだ広がりを見せて欲しいと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 18
ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

不思議な世界

原作未読 上映時間 約150分

テレビアニメ放送(未定)に先駆けて6話分を劇場版としてひとつに纏めて公開した作品です。

阿良々木 暦が私立直江津高校を卒業して、大学入試の合格発表前の出来事を描いています。朝、洗面所の鏡に映る自分を不思議に思ったあと、その鏡の中に引き込まれたお話です。

キャラデザは、テレビアニメ版と同じなので違和感なく観れました。

いつもの阿良々木暦の一人語りがメインで、色々なキャラとの会話劇もたくさんありましたね。{netabare}(まさか神原 遠江(臥煙)さんまで出てくるとは思いませんでしたw){/netabare}

女性キャラがほぼ登場しますが、いつもと違った面が観れました。
{netabare}
成人になった八九寺真宵、レイニー・デヴィル姿の神原駿河、クチナワ口調の千石撫子、ブラック羽川や少女姿の羽川翼、背が低くなった阿良々木火憐、人間の時の忍野忍、ツインテールの戦場ヶ原ひたぎ、表情や仕草が豊かな斧乃木余接、学ランを着た(男性?)忍野扇、そして老倉育さんだけは最初誰だか分からないくらい容姿や性格が変わっていましたねw
阿良々木暦の女子制服姿で真剣に語っているところは、ちょっと笑ってしまいました。
{/netabare}
PG12作品ということで、やたらと下着姿や裸のシーンが多かったですw

化物語の世界を満喫しました。この作品の特徴として、アクションシーンが少なく会話する時間が長く、150分もあるので退屈するかもしれませんね。

テレビ放送はいつになるのでしょうか? 早く観たい方で、化物語シリーズが好きな方は観てもいいのではないかと思います。

ED TrySailさんが歌っています。

最後に、原作の物語シリーズはまだ続いているにゃ~。またTVアニメか劇場で続きを観たいシャシャシャ~。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 28

65.9 11 嫉妬アニメランキング11位
ピアノの森(アニメ映画)

2007年7月21日
★★★★☆ 3.8 (189)
1222人が棚に入れました
町外れの「ピアノの森」で育った少年カイの物語。はじめは楽譜すら読めないカイが周囲を取り巻く人々によりピアニストとしての才能を開花させていく過程を描いている。
主な登場人物 [編集]

声優・キャラクター
上戸彩、神木隆之介、池脇千鶴、福田麻由子、宮迫博之、田中敦子、松本梨香、田中真弓、天野ひろゆき、ウド鈴木、黒沢かずこ、高田純次
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

行こう,森へ。

こちらは漫画が原作のアニメで,原作の方は読んだことがないものの,存在は知っていました。
―というのも,昔天才ピアニストと称された牛田智大くん(だったと思うんだよなぁ。まだ子どもだった)がインタビューでテレビを観ないとか言ってて,有名な芸能人とかも知らないものだからインタビュアーの男性(スタッフ)が漫画は読まないのか聞いていたんですね。
で,そこで唯一だったかうろ覚えですが,あまり漫画を読まない彼が何を読むのか気になったスタッフが「何を読むんですか?」って聞いたときに答えていたのがこちらの原作で,スタッフは漫画さえもピアノ関係のものなのかって感じで絶句していたのが印象的で覚えていました。
アニメ化していたのを知らなかったのですが,テレビでやっていたのでこの機会に古い方(映画の方)から観てみることにしました。

結論からいうととても良かったです★
正直森の中にピアノがあるっていうことしか知らない状態で観始めたので,その幻想的な設定から勝手にファンタジーだと思っていたんですよね。
主人公が小学生というのも知りませんでした。
きっと森の中にあるというピアノに出会えるのはピアノが好きだとか,楽しもうとか,うまくなりたいとかそういうポジティブな気持ちをもっている時だけで,スランプに陥ったり,誰かと自分を比べて妬んだりするようなネガティブな感情のときに森に行ってもピアノには出会えないんだろうなって…。
そういうファンタジックな設定なのかと思っていました。
特に,初め雨宮くんがピアノを弾こうとしても音が出なくて,でも海くんはあっさりと音が出せたから,彼はこの森のピアノと仲良しなんだなって。
でも違いましたね。
{netabare}あのピアノは森に捨てられたもので元は阿字野先生のものだったとは!!
登場人物がストリップがどうとか言っていたのが,(本当の意味での)シュールでした。{/netabare}
ただ,あの森のピアノは雨ざらしだし調律もされてないのになんで壊れてないのはもちろんメロディーを奏でられるの!?ってとこはやっぱファンタジー要素もあるのかな。。
{netabare}ファンタジー要素としてはカイくんにモーツァルトが見えるってとこかな(笑)。
しかも日に日に増えていくんですよね。どこか見覚えのあるモーツァルトが。
あの描写は可愛くて好きでした。
コンサートの最後キンピラバージョンのモーツァルトの靴が学校の上履きになっているのが化けの皮がはがれている感じがして細かいなって(笑)。{/netabare}
ファンタジー好きとしてはちょっと拍子抜けではありましたが,それを差し引いてもとても素敵な物語だと思いました。

キャラクターが良いんですよね。
わたしのお気に入りはやっぱりカイくんです。
ただこの物語の主人公は雨宮くんだと思って観ていたので,エンドクレジットで海くんの名前が1番上だったのに驚きました。
この映画だけが雨宮くんが主人公っぽい描き方をされているだけで原作はそんなことないんでしょうか??
わたしは雨宮くんが主人公の方が良い気がするけどなぁ。。
雨宮くんは小学生らしくない雰囲気を持った子で「(当時の)牛田智大くんっぽいなぁ」と思いました。
髪型オールバックとかおじさんかよ(^-^;
けど,カイくんと雨宮くん,性格も家庭環境も真逆と言っていい2人がピアノという繋がりをもって友達になっていく様が凄く良いなって感じました。
雨宮くんはきっと裕福な家で育ってピアノに関しても英才教育を受けているような子。
対して海くんは森でピアノに出会ってただピアノが好きで弾いているだけの子です。
なのに才能っていうのは時に残酷ですよね。
雨宮くんが弾けない森のピアノを難なく弾いてみせたときの海くんはファンタジーではないのに凄く幻想的に描かれていて見入ってしまいました。
あのとき弾いていたメロディーも神秘的な感じがして,いつもケンカばかりしている粗暴な小学生男子が弾くものとは思えないなと(^▽^;)
雨宮くんも海くんのピアノの才能を知ってか知らずかピアノをきちんと習うことを勧めるところは,「彼も根っこの部分ではピアノがとても好きなんだな」と感じました。
ピアニストとしては将来自分のライバルになってしまうかもしれないって打算的に考えてしまうかもだけど,ピアノを愛する者として,森でピアノを弾く彼の姿を見てしまったらカイくんにもピアノをきちんと習ってほしいって思うのは自然な感情だと思いましたし,そういうところが真面目で良い子だなって思いました。
カイくんは悪ガキって感じではあるんだけど,貧しい家庭環境にありながら,根はとても優しい子なんだなって見ていると分かります。
お母さんがまだ若くてきれいな人だから,彼のこともきっと若くして産んだのだろうなと推察しましたが,シングルマザーで生活も苦しくともカイくんを愛情いっぱいに育てているんだなとも思いました。
あとは阿字野先生ですね。
初め阿字野先生が登場したときはただの小学校の先生だと思っていたので「この先生,小学校の先生向いてないよ。何で先生になったんだ??」って思いました。
けど観ていくうちにこの先生も良いキャラクターだなと。
{netabare}彼の過去はとてもつらいものなのでここで言及するのはやめておきますが,カイくんの扱いをみていると「この人子どもの扱い分かってるなぁ」って(笑)。
ピアノから完全に離れても良かっただろうに,彼が小学校の先生をやっているのが分かった気がしました。{/netabare}

キャラクターデザインはけっこう好きです。
でも如何せん2007年のアニメなので全体的な絵というのか画質というのか―が古い感じはしましたね。
こちらは原作漫画の他にTVアニメも作られているそうで,そちらのキャラデザもちらっと見たのですがわたしはこっちの方が好きだなぁ。

そしてボイスキャストですね。
メインキャラクターは俳優さんたちが演じてますね。
少し前のアニメ映画って俳優さんをメイン起用するのが多かった印象です。
カイくんは上戸彩がやってるんですが,わたしは微妙だと思っちゃいました。
―というのも,思いっきり女性の声なのでわたしは初め彼のことをボーイッシュな女の子だと思っちゃったんですよね。
原作をきちんと読んでいれば…あるいは前情報だけでも入れて観始めれば良かったんですが,彼が女の子だと思っちゃったのでカイくんがクラスメイトに馬乗りになられて殴られているのにはびっくりしてしまいました。
いや。男の子だから良いってものでもないんだけどさ。
少年っぽい声が出せる俳優さんか子役,もしくは本業の女性声優さんは少年の声がデフォルトで出せるみたいなので(笑),そっちの方が良かったんじゃないかな~。
神木隆之介くんはとても良かった♪
某動画共有サービスのコメント欄でアニメは声優さんが演じた方が良いけど,彼だけは例外―みたいなニュアンスのコメントを読んだことがあって「ふむふむ。そうなのか」ってその時は思っただけだったけど,今回確かにそうだなぁと思いました。
阿字野先生は最初棒だなぁと思ったけど,そういうキャラだと思えば気にならなくなりました。
でもエンドクレジット見て「え。そうだったの!?」って驚きました。
こちらはお笑い芸人の方たちがけっこう出ていますね。
ダメじゃないけどさ~。
このアニメに限ったことではないけど,やっぱり基本的にはアニメは声優を本業でやられてる方をメインにした方が良いと思いますね。
アニオタ的な感覚なのかもだけど,主役やメインキャラクターは俳優さんで脇役が声優さん…とかはもやっとする。
職業に貴賤なしっていうじゃん!?!?
ある俳優さんがとある声優さんの演技を「立体感のある演技」って言ってたのが印象的で,俳優さんはやっぱ表情とか身体の動きありきなんですよね。
まぁそこが凄いところでもあるのだけど,アニメとなるとちょっと物足りなくなっちゃう。
TVアニメ版は声優さんが演じているみたいなのでそっちも観てみるつもりです。
ただキャラデザがこっちの方が好きだから,全体的な良さはこちらを超えられない気がしています(;^ω^)

音楽の評価は森でカイくんが弾いたメロディーがとても良かったから★4にしてますが主題歌はピンときませんでした。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5
ネタバレ

Kuzuryujin さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ピアノの神様に選ばれた10歳の少年の物語

この作品が初公開されて10年以上の歳月を経て
2018年の春クールにNHKでテレビアニメ化されるということで
嬉しくて3年ぶりにレビュー追記します。

この作品がきっかけで原作を読み始めました。

原作は全26巻ですが、完結するまで1998年-2015年の18年間という
長い年月を経て熟成されたヴィンテージワインやギターのような
深い味わいに感動の涙が...。

途中、長期休載、連載誌移籍、不定期連載など波乱万丈な作品でしたが
有終の美できれいにまとめた原作者のプロ根性に頭が下がります。

この映画はそんな物語の序章のようなもの。
しかしその序章だけでも心の琴線に触れるものが多かったのです。
詳しくは以下に。

2015.04.28 16:02に投稿したもの(加筆修正あり)
{netabare}
<大好きな作品のひとつ>

初めて観たのは2008年頃、レンタルDVDで。
某映画ランキングサイトで高評価だったので視聴。

原作未読で内容に関する知識は白紙の状態で観始めました。
天才的なピアノの才能を持つ主人公、一ノ瀬海(いちのせ かい)の魅力で
上映時間100分などあっという間。
物語のテンポが良く、予想外に笑える場面もありすごく面白かった。

ジブリ作品のように役者やタレントさんを多数起用していますが、
不満や違和感のあるキャストは一人もいなく、
エンドロールで初めてキャストを知ってびっくりしたほど。

レビュー書きたくなったのは、
2014年10月-2015年3月放送の「四月は君の嘘」を視聴して、
いろいろ被るものがあるこの作品を思い出し、
また観たくなって再鑑賞したため。

今回は原作既読済みでしたので、
とっても上手く原作の贅肉を削ぎ落としていて、
主人公と生涯のライバルであり親友との出会いと成長が
しっかり描かれた秀作になってるとあらためて実感しました。

<原作は青年漫画『ピアノの森 -The perfect world of KAI-』>

第12回(平成20年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。
代表作『花田少年史』で知られる一色まこと女史の作品。
掲載誌は当初『ヤングマガジンアッパーズ』(講談社)にて連載。
途中、同誌廃刊のため『モーニング』(講談社)に移籍。

1998年から連載開始。以後、長期休載、不定期連載などもあり
連載スタートから17年後の2015年4月現在、既刊は25巻。
なので、1巻と25巻を見比べると作画の進化を如実に感じられます。

25巻では主人公は17歳。
滞在2か月のポーランド、ショパン・コンクール編に決着がついて一段落。

<この映画は2007年制作>

TVアニメ版『花田少年史』も担当した小島正幸氏が監督。
(2014年4月~7月には『ブラック・ブレット』を監督)
カイの小学校編の途中まで、原作1巻から6巻冒頭の回までを描いています。

<カイと雨宮修平>

生涯の親友でありライバルとの初めての出会い、
修平転校までの3か月間の交流が描かれ、
カイがピアニストとして覚醒し、後に世界を目指すところを暗示して終了。

シンプルな王道サクセスストーリーに引き込まれます。

<阿字野壮介(あじのそうすけ)>

カイの初めてのピアノの師匠になる元天才ピアニストの描き方が
原作よりもスマートにかっこよく描かれています。

阿字野は、交通事故により婚約者を亡くし、
自身もピアニスト人生を奪う生涯治せぬ傷害を
左手に負ってしまい魂の抜け殻状態だった。

しかし彼とカイは、森に捨てられたピアノを介すことで絆が結ばれ、
お互いの人生を変えていくことに。

カイを掃き溜めから救い、ピアニストの才能を伸ばすことで
阿字野自身も魂の抜け殻状態から救われる。

映画ではその序章といったところ。

<日に日に増えるモーツァルト>

弾けないなら楽譜返せと、カイに迫りくる幻影。これには爆笑!!
彼の脱皮と成長と共に消えていく様が何度観返してもいいです。

<ウェンディと便所姫>

カイとコンクール会場で出会う出場者の一人の女の子とのひと時の交流。
ここもかなり笑えます。この映画で一番好きなシーンです。

原作の性描写や児童虐待とかのシーンはかなり省かれているので
子供から大人まで安心して楽しめるのでかなりオススメします。

完結こそしてませんが、2007年時より原作ストックもかなり溜まったので
ぜひテレビシリーズ化を検討して欲しい作品ですね。


と書いた後、2015年12月末に最終第26巻が出版され大団円、大感動で完結。
さらに2018年4月よりNHKでテレビアニメ化されました。
そちらのレビューも投稿する予定です。
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 17

. さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ピアノに選ばれた少年の物語

全編に美しいピアノの音色が響き渡る、とても素敵な作品です。音楽好きの方ならピアノの音色に心奪われ、そしてそうで無い方もこの音色にはきっと癒される事と思います。


原作は漫画です。本作では主人公である海(カイ)君の小学生時代のエピソードを書いたものになります。この作品をご覧になり、もし気に入っていただけたのでしたら、是非とも原作の漫画も読んでいただく事をお勧めいたします。とても面白い作品ですので^^


自由奔放でやんちゃな性格である主人公の”一ノ瀬 海”君。彼は幼い頃より、近くの森にうち捨てられたピアノに触れて育ちます。毎日ピアノに触り、時にはピアノの上で寝泊まりし、彼の生活にピアノは溶け込んで行きます。そして彼は誰に習うわけでなく、いつしか我流でピアノを弾きこなす。天才・・・。彼は天才。そしてピアノに選ばれた人間。

そんな彼に友達が出来ます。東京から転校してきた”雨宮 修平”君。彼はピアニストの家系に育ち、そして自身もピアニストになる事を目指し、日々厳しい練習に明け暮れる毎日。”雨宮 修平”君は森にうち捨てられたピアノを弾く”一ノ瀬 海”君の演奏を聴き、衝撃を受けます。なるべくしてピアニストを目指す自分に持っていない物を持つ”一ノ瀬 海”君の演奏。聴く物を引きつけ、感動させる演奏・・・。2人はこの日から生涯のライバルとなる事を運命づけられます。


本作品では”一ノ瀬 海”君と”雨宮 修平”君がピアノコンクールで競う場面までが描かれます。ピアニストの家系に生まれ、サラブレッドとして育った”雨宮 修平”君。彼はその環境に満足する事無く、日々厳しい練習でピアニストになると言う夢を掴もうとするいわば”秀才”。
そして全てが我流であるが、ピアノに選ばれた天性の才能を持つ”天才”である”一ノ瀬 海”君。コンクールでは、お互いが全力を出し合い、そしてお互いを認め合いながら静かな戦いがきって落とされます。

本作品の最高の見せ場がこのコンクールのシーン。
自分の本当の演奏を見つけられず、コンクール本番中までも悩み続ける”一ノ瀬 海”君。彼は果たして本当の自分の演奏を見つけ出し、そしてそれを演奏する事が出来るのか?答えは彼のピアノの音色が教えてくれます。


主人公の”一ノ瀬 海”君役には上戸彩さん。ライバルの”雨宮 修平”君役には神木隆之介さん。その他にも池脇千鶴さん、福田麻由子さん等々有名人が声優として出演しています。製作はマッドハウスさんが担当。相当力の入った作品です。これで良い作品が作れない訳がない?

肝心のピアノ演奏及びミュージックアドバイザーには世界の巨匠である”ウラディーミル・アシュケナージ”さんが参加。ピアニストとしてはショパンの演奏で有名な彼ですが、彼の演奏はとにかくテクニックが凄い!音色が凄い!そしてその音色は怖いまでに美しい。彼が演奏するメインテーマである”Forest of the Piano”はクラッシックファンの方にはとにかくお勧め。彼の演奏は天才”一ノ瀬 海”を表現するのにぴったりと言えます。

エンディングテーマは女優であり、そしてピアニストでもある松下奈緒さんが歌う”Moonshine ~月あかり~”。なんとも美しく、切なく優しい、本作にピッタリとマッチした神曲です。

画像も綺麗ですね。特に森の中で佇むピアノの描写が素晴らしい。パッケージ絵となっている、森の中で木々の間からの日差しに照らされるピアノ。とても幻想的で癒されます。


素敵なピアノの音色に包まれ、そして観る物を引きつけるストーリーを持つ本作。疲れた心を癒す清涼剤になってくれる事と思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 21

69.9 12 嫉妬アニメランキング12位
クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡(アニメ映画)

1997年4月19日
★★★★☆ 3.8 (180)
959人が棚に入れました
愛犬シロを連れて散歩していたしんのすけは、オカマのローズが落とした光るタマをこっそりと持ち帰った。それは、伝説の魔人ジャークを封じ込めた埴輪の鍵となる一対のタマのひとつで、ローズをはじめとするオカマ3兄弟は慌ててしんのすけの行方を探し始める。一方、もうひとつのタマを持っているホステス軍団も、オカマ3兄弟を追ってしんのすけをマークし始めていた。ローズはしんのすけに接触し、タマを取り返そうとするが、しんのすけが持ち帰ったタマをひまわりが飲み込んでしまっていたことから、やむなく野原一家全員を新宿2丁目のオカマバーに連れ去る。
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

『頼んだぜ…、お兄ちゃん』

劇場版クレヨンしんちゃんの第5作。
1997年公開。


劇場版シリーズ第5作は、しんちゃんの妹ひまわりが遂に登場。
シリーズ中でも群を抜いた徒手空拳の格闘が盛り込まれながらも、しんちゃんのお兄ちゃんとしての行動が光る快作で、こちらもまた大のお気に入り作品です。


本作から、これまで脚本を担当されていた原恵一さんが監督も兼任。
ここから、シリーズ引退作となる第10作「アッパレ!戦国大合戦」まで続投されています。

くわえて本作は、原作者の臼井儀人さんが制作に参加(タイトルを付けた)最後の作品となっております。
そう思うとちょっと寂しい気持ちになりますが、以降もシリーズの色を変えず名作を生み出し続けた原恵一監督に、精一杯の感謝を送りたいですね。



【あらすじ】

魔神ジャークの復活を目論む「珠黄泉族(たまよみぞく)」と、それを阻止する「珠由良族(たまゆらぞく)」の抗争をメインに、

その復活の鍵となる「珠(タマ)」をひまわりが飲み込んでしまったことにより、野原一家がその激しい戦いに巻き込まれていく、というストーリー。



【論じてみる】
{netabare}
本作の特色としてまず上げたいのが、そのオリジナルキャラの多さですね。
ただ多いだけでなく、これまた印象値が強い面々が揃っているのが高ポイント。

野原一家と行動を共にする、珠由良ブラザーズの(オカマの)3人。
加えて、千葉県警の「凶悪犯罪特別分室」(←本当はただの資料室)に属する、東松山よね(グロリア←自称)。

敵キャラである珠黄泉族の面々も、中村玉緒さん風の頭領や、パワーファイターながら子供好きなサタケなど、コミカルさは抜群。

そして何より!!!
珠黄泉族と行動を共にする、金髪碧眼の外国人。
恐らく『劇場版シリーズ最強』の格闘術を持ち、更に特異な能力も持ち合わせている【Mr.ヘクソン】。
彼の強さは、もう圧倒的でした。

このヘクソンが、(七人の侍の如き)珠由良七人衆と呼ばれる銃刀法違反集団を一人で武器も無しになぎ倒し、野原一家に迫って来るシーンは、

「私は一体、なんの映画を見ていたのだっけ?」

という錯覚にすら陥る程、緊張感のある戦いを魅せてくれました。
コミカルな一面もあるのですが、ひまわりを投げ殺そうとしたりと基本的に冷徹な悪人なので、作中でも異彩を放っていましたね。



あと、原作者の『臼井儀人さん』が、そのまま出演されているのも印象強いですね。
今では決して叶わない貴重な声ですし。
ちなみに、劇中によると
『好みの女性=松たか子』『趣味=便座観賞』
だそうです。

ただ、この臼井儀人さん。
以降の作品でも度々登場されるのですが、そのどれもが(褒め言葉として引用します)どーでもいい&しょーもないシーンなんですよね。

特に本作終盤、ひまわりを攫われた野原一家達が、怒りの余り劇画タッチとなり、敵陣へ立ち向かうシーン。
ここが非常に面白くて好きなのですが、その途中、この怒りの集団をタイミング悪く引き止めた臼井儀人さんが、


「ちょっと~、すみません。

 全日本 心の演歌カラオケ大会の予選会場は、どちらでしょうか。」


と本編と全く関係無いことを聞き、ひろしに


「知るか~~~~~~~~!!!!!!!」


と、思いっきり右ストレートを頬に入れられちゃうのです。
ここはシナリオ上では全く必要の無いシーンなのですが、私は劇中でも一番笑ったかもしれません。

テレビ放送時、もしこのシーンがカットされて放送されていたら、私はグレて非行に走っていたのは、まず間違い無いでしょう。
ちゃんと放送されていて良かったです、臼井儀人さんお疲れ様でした。


ぞんざいな扱いと言えば、「東松山よね」のイジられっぷりも面白かったですね。
警察という肩書を持ちながら、全く当たらない射撃の腕前を披露してからは、その信頼は一瞬にして地に落ち、以降全てのキャラクターからイジり倒されます。

こういう扱いは、基本的に本編のメインキャラが張ることが多いのですが、「東松山よね」にはそれを覆すキャラクター性がありましたね。
美人なんですけどね…、ホント残念な人でした。
{/netabare}



【ひろしが伝えた、しんちゃんへの言葉】
{netabare}
今作は面白さだけでなく、ひまわりという存在が周囲に「守る」という共通の意志を付与してくれるので、シナリオも分かりやすく非常に盛り上がります。

それに、ひまわりの登場で初めて「お兄ちゃん」という肩書きを得たしんちゃんが、(ヤキモチをやきながらも)ひまわりを必死に守ろうとするシーンは、後の感動路線を彷彿させる雰囲気があります。

このしんちゃんの成長は、中盤の ひろしとしんちゃんの、このやりとりから培われたものでした。


「しんのすけ…。父ちゃんに何かあったら、ひまわりのこと守ってやってくれよ。」


「う~ん……、考えとく。」


「頼んだぜ…、お兄ちゃん。」


私は、このひろしの最後の台詞の「お兄ちゃん」という言い方が、優しさに溢れていて大好きなのです。
藤原啓治さんの声は、どうしてこうも格好良いのでしょうね。

ひろし自身、劇中で弱音を吐いたり人間らしい脆さも見せているのですが、こういうところはキッチリと決めてくれるのが良いですね。

……その後、ヘクソンに(あっさりと)やられて屁をこく始末でしたけど(笑)

ただ、そこからヘクソンに対し、しんちゃんが


「母ちゃんとひまわりに近付いちゃダメ~~~~!!!!!」


と言うシーンは、ちょ~っと目頭が熱くなりました。

ただその直後しんちゃんも、守る相手である筈のひまわりにチ○チ○を引っ張られたりして、汗だくで消え入りそうな声を出す目にあうんですけどね。
アレは痛いでしょうねぇ…。。。。
うん…、よく頑張ったよ…しんちゃん、存分にフーフーしていいよ。
{/netabare}



【総評】

ファンタジー路線は非常に抑えめとなりましたが…。
個性溢れるオリジナルキャラ、徒手空拳の格闘技、そして…しんちゃんの初めてのお兄ちゃんっぷりが本作の魅力。

シナリオ的に見ても伏線の回収もキッチリされており、大勢のキャラの後日談もエンディングで挟まれるので説明不足も特にありません。
特に、ひまわりの泣き顔を見て敵から寝返ってくれたサタケが、珠由良ブラザーズの店で笑顔で一緒に働いている絵は、嬉しくなりましたね。

総じて、後味も非常に良い作品です。
あっ、モチのロンで、笑いのクオリティも「東松山よね」がいるのでシリーズ内でも高水準。

90数分程、お時間に余裕がありましたら是非!!

ではでは、読んでいただきありがとうございました。


次回作は、第6作「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」です。


◆一番好きなキャラクター◆
『東松山よね(グロリア)』声 - 山本百合子さん


◇一番可哀想なキャラクター◇
『臼井儀人』声 - 臼井儀人さん




以降、『オカマ』について、どーでもいい見解をワリと真面目に語ります。
興味の無い方はスルー推奨。
{netabare}

本作は、劇場版シリーズ中一番「オカマ」が全面に登場するのも魅力の一つでした。

ただ、本作がテレビ放送された際は、言葉として不自然になるほど完全に「オカマ」というワードを排した構成になり、以降のシリーズでもオカマキャラが消されていった傾向になりました。


この「オカマ」というワードが、人によっては傷付いたり不快な思いをしたり、偏見を与えてしまうことにもなりかねない、というのは十分に分かります。

ただ、本シリーズを文字通り擦り切れるほど見た私としては、決して一部の人を小馬鹿にして中傷するような内容では無いと思うのですけどね。

むしろ、作中で登場するオカマ達は総じて、好感の持てる良いキャラですし。
(まぁ…、4作の「マカオ」と「ジョマ」は強烈過ぎるかもしれませんが…。)
それも、人それぞれなのですけどね。


こういった傾向として、やはり致し方ないとは思うのですが、

『面白いと思ったものを思う存分、描けない、言えない』

そんな世の中にドンドンなっていくのは、とても嫌ですね。
えぇ…はい、ポイズンです。

……と、言うわけで、


「たまゆら♪ たまゆら♪ たまゆら♪ ゆ~~ら♪

 振れば力が、わ・い・て・く・る♪」


これは劇中の歌ですが、素晴らしい程ストレートな歌詞で良いですね。

えぇ、湧いてきますよ勿論。

これは、「ぷるんぷるん」というより、濁点の方の「ぶるんぶるん」って感じですが。

はっはっはwww



………反省してます、本当にすみませんでした。
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 18

セレナーデ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

構成が飽きない

改めて見ると構成力の高さに驚かされました。野原一家が平穏な日常から追われる立場にさらされ、そのあと今度は追う側に立場が切り替わるメリハリの利いた構成が見事です。新宿のクラブ、健康ランド、スーパー、辺境地と舞台を次々と変えていく流れも面白く、それぞれの場所に立ち寄る目的や状況も「事情説明」「休息」「アクシデント」「防衛」と各々に変化をつけているので飽きが来ません。

キャラクター描写もすごくよくって、白眉はラスボスのヘクソンの見せ方。途中までは表立った活動はせず謎めいた人物像だったヘクソンを、野原一家が追う立場になる話のポイントで「野原一家にとって最大の障害である」と強烈に印象付けた計算高さには軽くうなりました。話の流れをガラリと変えるためのポイントを象徴した屈指のシーンと思います。

たまにギャグのクドさがストーリーの疾走感を殺してしまってること、女刑事がタマユラタマヨミ両族の因縁と特に関係ないため賑やかしキャラに落ち着いてしまってることがやや残念。あとみさえがヘクソン討伐のアイデアを提案したけど、脈絡がなかったので何か伏線が欲しかったです。

保護者向けのネタは本作くらいのさりげなさが丁度いいです。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

はまち さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

映画クレしんの最高傑作は実はこれです

オススメです!!! 



オトナ帝国、ヘンダーランドの影に隠れている気がしますが、僕はこれが一番だと思います。


 まずオカマですよね。最近では少なくなっている見たいですがそれでもクレしん映画といえばオカマでしょう。
 クレしん映画のオカマってオネエ系オカマが多いと思うんですけど。この作品のある一人のオカマはクールビューティ的なかっこいいオカマが登場します。そこが今までと違ってまた良かったですね。

 ストーリーは勿論ギャグばかりなんですけど戦闘シーンは中々迫力あったのではないでしょうか。
 そして途中感動するしんのすけのシーンが本当に良かった。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

65.5 13 嫉妬アニメランキング13位
未来のミライ(アニメ映画)

2018年7月20日
★★★★☆ 3.2 (230)
873人が棚に入れました
とある都会の片隅の、小さな庭に小さな木の生えた小さな家。ある日、甘えん坊のくんちゃん(4歳)に生まれたばかりの妹がやってきます。両親の愛情を奪われ、初めての経験の連続に戸惑うくんちゃん。そんな時、くんちゃんが出会ったのは、未来からやってきた妹、ミライちゃんでした。このちょっと変わったきょうだいが織りなす物語。それは、誰も観たことのない、小さなお兄ちゃんの大きな冒険の始まりでした―

声優・キャラクター
上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ちょっとした奇跡がつながってつながって、今の私達がいる。

『バケモノの子』に続く、
細田守監督の長編作品。

細田監督の作品の中では、
『時をかける少女』が一番好きです。

8月ごろに劇場で見てきました。
(レビューは書いていたのに、投稿が遅くなりました^^;)

大きくない会場でしたが、満員でした。

少し遅めの時間帯だったからかもしれませんが、
大人しかいませんでした。(年齢層はバラバラ。)

もっと子どもが多いかと予想していましたけれど。
でも内容は確かに子ども向けではないかな。笑

100分ほどの作品です。


● ストーリー
4歳のくんちゃん(♂)に妹ができた。

妹・未来(みらい)の世話に追われる両親に対し、
くんちゃんは寂しさを感じる。

むしゃくしゃする気持ちから、
わがままを言ったり、未来に意地悪をしたり。

そんな気持ちで中庭を通ると、
不思議な世界と不思議な人たちに出会った。


細田監督の作品には
現実世界に溶け込んだファンタジー設定が多い気がします。

今回もそうですね。

くんちゃんは中庭を通して、
家族の未来や過去に触れます。

そんなこと、
現実世界ではありえないファンタジーですが、

出会った人たちから教わったことを自分の行動に活かしていく様子は、
ただの4歳児にも見えます。成長だねえ。

ただ、これまでの作品で感じた
“どうなるかわからないドキドキ”という点からは
遠かったように思います。

むしろ、刺激を期待せず、
日常系作品だと捉えたほうがいいぐらいですw

育児に奔走する両親と、
両親の愛が欲しいくんちゃんの、

ちょっと慌ただしいけれど、
振り返ってみると、幸せと奇跡が詰まった日常。

そんな中に、少しのファンタジーを織り交ぜて…
という物語でした。


≪ 脚本ではなく、絵で魅せようとしていた? ≫

だけどごめんなさい、
私には物足りませんでした。

それはドキドキな冒険を期待していたから、
というのもあると思うのですが…。

くんちゃんは不思議な体験を、
日を置いて何度も体験するので、
短編集のようにも受け取れる作品です。

ひな人形のエピソードは、
嫌いではないのですが、
やたらと時間がかけられていたような。

飽きてきたなーと思い始めたところに、
{netabare} 無駄に緊張感を持たせた、だるまさんが転んだのような、スローモーション。 {/netabare}

それほど重要でも見せ場となるシーンでもないのに、

「私達は大きなスクリーンで何を見せられているの?」と
なんだかあきれてしまいました^^;


しかし、作画はきれいだったしこだわりも感じられたし、
全体的に力が入れられているのが、よく伝わってきました。

キャラの表情も豊かというか、顔芸というかw

今回の作品では、脚本よりも、
こうした絵で魅せようとしていたのかな?

描きたかったシーンやキャラの表情を、
楽しんで描く。

それがこの作品の源なのだとして、
こちらもそれをわかった上での鑑賞であれば、
もうちょっと楽しめたかも。笑


● キャラクター
甘えん坊の4歳児、くんちゃん。
いやーこの年頃の男の子はかわいいですね(*´Д`)ハァハァ

だけど、わがまま全開、駄々っ子全開。笑

愛するには、
難しいキャラですw

お母さんもお父さんもたくさん出番がありますが、
よくある両親キャラだし…。

未来ちゃんはかわいかったですが、
かわいいというだけで、特別なインパクトもないし…。

キャラで評価できるのは、
ひいじいちゃんぐらいかしら?

馬もバイクも乗りこなすひいじいちゃん、かっこよかったわー!
彼の起こした奇跡も素敵♪

cv.福山雅治なのは、気付きませんでした。
エンドロールで驚いたw


● 音楽
【 OP「ミライのテーマ」/ 山下達郎 】
【 主題歌「うたのきしゃ」/ 山下達郎 】

どちらも、なんだか懐かしさを感じるメロディ。

穏やかな2曲で、
この作品にも合っていたと思います♪

私は主題歌の方が好みかな^^


● まとめ
つまらなさや怒りを感じるほどではないですが、
全体的に平和なストーリーでした。

少なくとも、
「よし、観るぞ!」と意気込んで見るタイプの作品ではありません。

この作品を観終わった頃には、
子どもの成長を大らかに受け止められる気がする…そんな作品でした^^

投稿 : 2025/02/01
♥ : 27

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

不愉快です。クズ夫婦にイライラします。ネグレクトは虐待です。

 マイナス100点。最悪の映画です。

 子育てに大事なのは願いではありません。子供は勝手に育ちます。親の願いで育つことはありません。親ができることは危機回避と背中を見せることだけです。親が子供に願いだすと、それが暗黙でも言葉や表情、行動に現れます。絶対にやってはいけません。元気で健康に育ちますようにですら、病気が見つかったら、障碍者になったら失敗になります。子供のすべてを受け入れなければいけません。
 それで子供が逃げ出したり歪んだりする小説やアニメなんて沢山見てきたでしょう。このアニメは何を考えているのでしょうか。

 子育てに大事なのはスキンシップです。クリエーターで子育てものを作るなら心理学くらい確認しろ、と言いたいです。4歳くらいの男児ならネグレクト(放置)も虐待です。ましてあそこまできつく当たるのって何なんでしょう。陰でいくら愛してるといっても、子供に伝わらなければ意味がありません。何よりスキンシップ、特に母親との肌のふれあいが無い子供は不安定になります。

 母としてなぜあそこまで子供に冷淡になれたのでしょう。嫉妬で新生児に電車を振り上げても自制できる子供が、あそこまで傷ついているのです。我が子を追い込んだ自分を省みることができない、ということは仕事のレベルも推して知るべしです。しかも外に飛び出した子を追いかけもしないで。

 平等に愛情を注ぐように気を付けていてもどうしても妹に手がかかってしまう、という感じが全くありません。完全邪魔者扱いです。何かに気がついたり心配するそぶりも見せません。1場面くらい反省らしきことを言っていますが事の重大さも認識していないし、真剣に悩んでいる風にも見えません。
 入れ替わりで産休に入る人がいたって、子供が大切ならそんなのは会社の責任で何とかすればいいし、在宅だってできるでしょう。自分が全部正解みたいなツラで仕切るな、と言いたいです。

 今の時代ですから、仕事に出るなとはいいません。いや、推奨すべきなのでしょう。が、仕事をやっている奴がそんなに偉いのか?夫の批判をしているけど、お互い様という考え方はできないのか?と思います。
 本当に子育てに優先することが、仕事にはあるんでしょうか。食わなければいけないのはわかりますが、折り合いがつけられないのでしょうか。
 
 夫は夫で、自転車で補助輪を外して頑張っている我が子を放っておいて、あれはないでしょう。母親もフォローもしないし。犬に対しても同じだったということは、そういう性格なのでしょう。生活を考えない使い辛い家を作ったり。

 これって、庭の木が見るに見かねて助けてくれたってことでしょう。父親らしさも母親らしさも皆無です。若夫婦の奮闘記にしても、レベルが低すぎます。そもそも若くなさそうだし。35歳、精神年齢10歳にしか見えません。設定は良く知りませんが。

 まったく感動も感情移入もできませんでした。というか不愉快でした。



22年8月 評価見直し中。極端な評価や感情的な部分を補正。初回見たときの印象と改めて旧作と比較したときの点数の補正など。

 冷静に考えるとあのバイクの爺さんだけはキャラが良かったのでキャラとストーリーにちょっとずつ点数入れます…が、やっぱり良い感情がもてない映画なことに変わりありません。

 なぜかと言えば、夫婦が変わらないで、子供が木の力を借りて自分自身の旅で救済を得たからです。夫婦側でも旅があり何かを悟って間違いに気が付くならいいんですけど。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

くんちゃん、すきくないの

主人公は4歳の男の子「くんちゃん」。
くん付けで呼ぶと"くんくん"になってしまう危うい名前をつけられた彼の元に、ある日、妹「ミライちゃん」が現れる。
新しく家に来た赤ちゃんに両親はかかりきになってしまい、嫉妬感でイライラが募ってしまったくんちゃんは、妹に癇癪を起こしてしまいこっぴどく叱られる。
誰にも相手してもらえず、わかってもらえない状況に疎外感を感じたくんちゃんは、一人庭に出たところ、自分を飼い犬の「ゆっこ」だと名乗る男が現れる。

幼稚園生の男の子からの目線である一般家庭の情景描写をしながら、新しい家族のあり方と子供の世界の広がりを描いたアニメーション作品。
幼き日の妄想のような異世界が登場し、そこで犬のゆっこや、成長したミライちゃんを名乗る女性と冒険をするストーリーとなっています。
監督は『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』でおなじみの細田守氏で、カンヌ国際映画祭での受賞作品ですね。

ただ、内容は海外においても賛否があります。
子供の目線で家族のあり方を描写し、不思議な冒険に、と書くとシンプルに映るのですが、その実は結構な意欲作となっています。
構成は複雑で、結局言いたかったことは何かがファジーで分かりづらく、かなり哲学的な内容と言わざるを得ないです。
ストーリーが進むとくんちゃんは、両親の子供の頃や自分のルーツ、曽祖父の決意を目の当たりにして子供ながらに"お兄ちゃん"としての自覚を持ってきます。
ただ、過去の辛い時代を知って今は恵まれていると知るというシンプルな話ではなく、やはり最終的には、私にはよくわからない話でした。
興行収入は奮ったものの、世間の評価も今ひとつのようです。

また、その年令の男の子という設定なのでかくあるべきという話ではあるのですが、とにかく、くんちゃんがわがままです。
それは狙いだったのかもしれないのですが、主人公に魅力がなく、多分、多くの人は見ていてイラつくと思います。
一方で、赤ん坊のはずのミライちゃんは、なぜか超絶大人しく、こっちはとてもファンタジーを感じました。
赤ん坊なんて在宅で仕事しているお父さん一人でなんとかなる存在じゃないだろうに、なぜか泣くシーンが殆ど無いです。
ミライちゃん以上にくんちゃんがわがままを言い、仕事中の父の邪魔をして、癇癪を起こして部屋を散らかすので、終始、くんちゃんへのフラストが溜まる作品だったと思います。
反面教材として親が子供に見せるといいのかもしれないですが、やっぱり子供が見てもドン引きするんじゃないかなあと思います。

ラストも結局どうなったのかよくわからない終わり方でした。
一方で、過去作と比較して良かった点として、やっぱり声優で芸能人を起因しているのですが、今回はそれほど違和感を感じなかったですね。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 2

62.9 14 嫉妬アニメランキング14位
アシュラ(アニメ映画)

2012年9月29日
★★★★☆ 3.6 (156)
578人が棚に入れました
15世紀中期、相次ぐ洪水、旱魃(かんばつ)、飢饉で荒野と化した京都。
それに追い打ちをかけるように始まった日本史上最大の内戦・応仁の乱。その死者数・行方不明者はあまりに膨大で、歴史のページには刻むこともできなかった。こんな時代に産み落とされたアシュラは、ケダモノとしてサバイバルを続けながら生き抜いていく。
 そんな時一人の少女・若狭の優しさと愛、そして法師の教えに触れ、アシュラは次第に人間性を備えていく。
言葉を覚え、笑い、喜ぶ日々。しかしそれは苦しみと悲しみの始まりでもあった。やがて天災と貧困が起こり、人間性を失っていく人々。ついには若狭さえも……。
果たしてアシュラの運命は?

声優・キャラクター
野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ、玄田哲章、平田広明、島田敏、山像かおり、山口勝平、水島裕

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

ダークな情景とカニバリズムの中に確かに感じる“生きること”へのメッセージ・・・今こそ『まどマギ』以上の絶望へと目を向けよ

原作は1970年の週間少年マガジンにて連載されていたジョージ秋山先生のマンガ
その残酷な描写から有害図書指定され、当時は社会問題にまで発展したそうな曰く付きの問題作


というのも、物語のプロローグとなるのは大飢饉に見舞われた平安時代の京都
腹に子を宿しながらも貧困に喘ぐ妊婦が一人・・・
妊婦の周りでは飢えへの苦しみから、人を殺してその肉を食すことを覚えてしまった狂者が出る程の始末
いつしか妊婦も辺りに平然と転がる死体を喰らうことを意識しはじめる
やがて子は産み落とされ、一時は母性を目覚めさせるものの、飢えはすぐに女の理性を歪ませる
そしてとうとう我が子の肉を食さんと、焚き火の中に赤ん坊を投げつけてしまう・・・


このショッキングな幕開け、そりゃ問題作にもなるわな;


やがて顔の焼け爛れたその赤ん坊は、親の手も無しに育ち、人語も解さず、人を襲ってはその肉を喰らう、、、というまさに【ケダモノ】として生きていた・・・


さてさて、この物語の魅力はいよいよここからなんです
だいぶ原作とは異なる部分も多いようですが、この作品には強く“生きろ”というメッセージが込められているんです


【ケモノのような子】はある日に一人の屈強な法師と出会い命を救われ、『アシュラ』と名付けられます
しかしまだ満足に言葉も話せず、暴力を振るうことでしか感情を表現出来ないアシュラ
怒りに任せた結果、偶然にも地頭の息子を殺してしまうのです
追われる身となったアシュラを匿ったのは、貧しいながらにも慈愛に満ちた『若狭』という少女でした
法師から教わった道徳、若狭と触れて学んだ優しさ、、、やがて人間として感情豊かになっていくアシュラ
しかしそんなアシュラの成長とは裏腹に、天災と貧困が人々を徐々に追い詰めていくのです・・・










一見すると『ノートルダムの鐘』にも似た構図を持つ作品
ですが比較にならないほどあまりに過酷な世界観、過激な描写、そして終盤に押し迫る哀愁
どれをとっても一級品のシリアスドラマ


監督の『さとうけいいち』と言えばテレビシリーズ『タイガー&バニー』の監督でもありましたが、今年度のタイバニ劇場版の制作を、彼はあえて別の監督に託し、今作の制作に打ち込んだようです


昨年度の東日本大震災の影響からか、過激な描写をあえて避ける映画も多々あった傾向の中で、今作はあえてダークな世界観、シリアスなストーリー、過激な描写に挑戦し、最高潮の緊張感の中で改めて【命あっての物種】という言葉を思い出させようという明白な方向性が見て取れます


なにより、カニバリズムという非人道的な行為の裏に「食べなければ生きていけない」という切なくも力強いメッセージを打ち出していることに拍手したいです
特に「食べなければ・・・」のキーワードを全く偶然にも同時期に扱った映画『伏』と比較するとその差は歴然としていて、今作の説得力の強さに感服しますm(__)m
(そしてこの「食べなければ・・・」がラストシーンの悲劇を生む・・・)
また、『まどマギ』においての魔法少女の宿命の一つでもある「戦わなければ生きていけない体」と比較をしても、今作はより身近で深刻な問題として捉えることが出来ます










さとうけいいち監督作品らしく、全編はCGで描かれていますが、日本ならではの2D(作画)アニメの手法を欧米主流のCGアニメへと転用するべく、様々な新手法が今作のために発明されたのも見どころ


日本画のような毛筆タッチの背景画をパーツ化、立体化して動かす(細田守の『おおかみこども』でも近いことをやってました)
キャラの影にハッチング(斜線)を自動生成するソフトの新規開発
いわゆるアニメパース(遠近法のデフォルメ。近くの物を極端に大きく、遠くの物を極端に小さく描いて迫力を出す)をCGで作り出すために、カット毎に異なるキャラモデルを作成


これらに加え、CGアニメならではのカメラワークとエフェクトの自由度が駆使され、度々挿入されるアクションシーンを盛り上げています










そしてオイラが最も注目してほしいポイントなのが声優
今作の主人公、アシュラを演じるのは大ベテラン『野沢雅子』
物語の序盤でアシュラは人語もままならないというだけあって、前半のセリフが全て“雄叫びのみ”なのです
この難しい役どころを演じきれるのはやはり大ベテラン、全く持って御見逸れいたします;


さらに中盤から登場のヒロイン、若狭にはめぐさんこと『林原めぐみ』
実は中盤以降、ほとんどがこのアシュラと若狭の二人だけの会話で進むという昨今珍しい狭いやり取り
まさにこの二人のベテラン役者だからこそ成り立ったであろうレベルの高い演技は、アニメのみならず邦洋実写を問わずしても屈指の【魅せる演技】であったと思います!
とにかく凄いんです、是非ともチェックしていただきたい!


最後になりましたが、音楽はタイバニに引き続き『池頼広』さん
この劇伴がまた最高に素晴らしい!
ですが小南泰葉さんが歌うEDテーマにはちょっと疑問です;
キュートな魅力とダークネスな妖艶さを兼ね備えた小南さんのロックな楽曲は、実は個人的にもファンではあるのですが、今作の重すぎるテーマに対して少し前向き過ぎるし可愛過ぎたかな?と感じました;

投稿 : 2025/02/01
♥ : 30

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

悟空ーっ! こっち来ないでくれーっ!

70分程度 フルCG 超シリアス 


確かにシリアス物を好むとは言いました。
言ったがまさかここまでのもんとは正直なところ多少舐めてた。

あらすじはあにこれのあらすじが完璧にあらすじしてるんでそちらでどうぞ。

このあらすじを見る限り中々興味を抱かせてくれます。


出だしから結構ハードモード全開なんで人によって合う合わないがはっきりするかもしれません。
絵柄も手伝ってか気味が悪いというか気持ち悪いというか。

なにより序盤を見る限りコレが主人公であることに軽い抵抗を示してしまうのです。
 
アシュラさんってさぁ・・・なんかそこら辺の連中と匂い違いますよね・・・・・・
危険というかアウトローっていうか・・・ もっとはっきり言うと・・・人喰いの匂いがするっていうか・・・・・・
(カイジ5巻 佐原AA省略)

そう。この主人公アシュラ君は時代背景や状況で止む無し?とは言え人間を食してしまう系男子なわけです。
「ちょっと男子ぃー人食べないでよねー!」


これにはさすがの星野氏も「アシュラはわし育ててない」(AA省略)と言うに違いありません。

人斬り抜刀斎は許されても人喰い抜刀斎だったなら間違いなくあそこまで人気にはなってなかったでしょう。

なんて言うか色んな意味で生々しい作品なんだと思います。


でもこの作品はそういうグロ系だけで終わるようなチンケな作品では当然ありません。

例えどのような状況でもどんなに苦しくても人は生きていかねばならない。
こういうことがこの作品の最大のテーマになっているのだと思います。
なんてドヤ顔で分かったふうに言っちゃってますが多分見れば誰でもそこらへんは理解出来るかと。

序盤こそ軽く引くような展開が続きましたが中盤そして後半に至る頃にはすっかり物語に入り込んでしまうのです。

只、アシュラの声があの有名な孫悟空の人なのでそのイメージが余りに強すぎて目を閉じればそこに悟空がいるかのようです。
しかも私、毎週リアルタイムでドラゴンボール超見てるもんだから尚更。

声だけ聞くとチチも「悟空さ、おめえ働きもしねえでこんなとこでなにしてるだ!」と耳の痛いお小言言いそうです。

つくづく思うけど余りに特定のキャラのイメージが強すぎる声優の人も大変そうだなあと。

例えばの話、シリアスな恋愛物があったとしてイケ面主人公がフリーザ様の人だったらもはやフリーザにしか見えないわけで。
あーでもそれはそれでアリなのか?なんか見たくなってきた。

そんなこんなで最初こそ悟空にしか聴こえないので軽く笑ってしまってた自分がいたんですが中盤?いや終盤?辺りのアシュラ君の叫びを聴くと「ああ、これはこの人で正解だわ」と思ってしまうのであります。
演技の影響もあるんでしょうがジワッと泣きかけるような一連の流れ。さすがなのです。


纏めますと非常に重いテーマを扱った極めて硬派な作品だと思います。
グロ描写も少なくはないのでどうしてもそこに目が行ってしまいますが全体的に見ると結構良作ではないかと。

色んな意味で人間と言うものの描写が良く出来てるように感じます。

平安とは名ばかりの荒んだ時代で生き抜いてきたアシュラ君。
強い影響を及ぼすことになる2人の人間との出会いで果たしてどのような結末を辿るのでしょうか?

星野氏もドヤ顔で「アシュラはわしが育てた」(AA省略)と言えるようになるのでしょうか?

それは実際に視聴してからのお楽しみです。
出来れば絵柄等で敬遠せずにもっと多くの人に見て頂きたい作品だと思います。



密かにAAが使えるか実験したけどあかんかった・・悔しい(´・ω・`)

投稿 : 2025/02/01
♥ : 22
ネタバレ

るぅるぅ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

人として生まれた命の重み

人であって獣の本能を剥き出し生へ執着するアシュラ。
法師・少女の若狭から人としての在り方を学んでゆくが・・・
獣と変わらない心に人の心を宿せるのか。
荒んだ世界において人間の根底にある生きようとする性が、またアシュラを苦しめる。

素直にレビューを書くとネタバレばかりになり、簡単な内容説明しか書けないですね。
内容を少し知る程度で観た私の感想は、今の時代に生まれたことを喜べました。
同時に人として生きれるのかと問われているようなメッセージが余韻として忘れられないですね。

冒頭アシュラの出生から始まり、衝撃的な映像が流れ生々しい
グロシーン漫画を再現したような作画が荒々しさをさらに誇張し陰鬱な作品です。
人の温もりに優しさ、醜さから悲しみ・絶望を知り否応無しに生への執着する姿から命の尊さが伝わってきます。

人間とは、知識を有し他の生物より優れ理性で制御し内なる獣という本能を抑えつけて生きてます。
それは生まれた環境・時代が大きく影響し、誰もこの時代の生きる強さを否定することは出来ないと思います。

作品の性質上グロ描写が多くありますが、75分に詰められた深いテーマを感じて欲しいですね。

【視聴された方向け感想】{netabare}
アシュラの人の肉を食するシーンは、怖さもありますが生への執着・生きる強さを伝わり衝撃的な絵に魅了されましたね。

そんな獣の本能に若狭の優しさ母親に似た温かさがあり救われたのもつかの間で・・・アシュラの心が人へ近づくなか、七郎への恋路がアシュラにとって妬ましさ挙句、人でなしと罵声を浴び裏切りと想う中で人の心の苦しさを法師が左腕を切断し人であるか獣であるか諭すシーンは優しさと愛情ですね。
落ち着くことの無い心もがく心情が本当に素晴らしかったです。

最後に思わず泣いてしまったシーンは馬の肉を差し出すアシュラそれを拒む若狭。
生きて欲しいと想う心に触れるべきか・・・
人の肉かもという疑心が犬畜生となって生きるべかの葛藤。
人として生まれた為に理性が邪魔し苦悩する苦しさが痛々しく
観ていて辛かったですね。
誇りを選んだ若狭もまた人であり、アシュラは人として間違っているが人を食べても生きたいと想う心は人の性であって誰も咎めることは出来ないだろう。
私は若狭と同じ判断をしたいが、この時代の飢える苦しみの中で生まれた私ならきっと食べるだろう。
あなたは、どちらでしょうか?

コンビニに行けば食べ物が身近にある今の時代に本当に感謝ですね。
人の糧となった命あるモノへの感謝を忘れずには、いられない気持ちでいっぱいです。{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 20

67.6 15 嫉妬アニメランキング15位
同級生(アニメ映画)

2016年2月20日
★★★★☆ 3.9 (81)
478人が棚に入れました
メガネの優等生・佐条と、バンドマンのイマドキ高校生・草壁のラブストーリー。

声優・キャラクター
野島健児、神谷浩史、石川英郎

かさい さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

映像作品として...

中村章子さん初監督作品。林さんキャラデザ。A-1制作。
アニメーションプロデューサーは福島さん。

アニメーションとして素晴らしい作品だということは間違いない。
映像も音もすばらしく、全てにおいて統一性がとれており、映像クオリティとしては文句のない作品。
BL作品で個人的にも抵抗がなかったわけではないが、アニメファンには是非見てもらいたい。

総合:4.79/5

【物語】4.7
欲を言えばもう少し見たかった。
上映時間は60分。
シナリオは出会いからの1年間を完結にまとめてる。
流れがとにかくシンプル。しかし、急ぎもせずにしっかり丁寧に。
もう純粋な恋愛アニメ。
シナリオ展開的には恋愛アニメの王道を感じた。
既視感はあるが、キャラは男性。
これだけで新鮮な感覚を味わえる。


【構成】4.7
60分という非常に短い尺ではあるが、構成としても焦らずに終始落ち着いたシナリオ運びだったと思う。

【作画】4.85
作監に林さん。原画には監督級の方や個性的な方、劇場大作常連の方、リアル系の方までいろんなタイプの方が集まっている印象。中でもA-1制作のアニメに龍輪さんが参加されているのはかなり意外。女性が多め。
作画に関しては動きが良い。これは、芝居がリアルとか、派手なエフェクトとかの話ではなく、原作の漫画の絵柄を丁寧に汲み取り、この絵柄を動かしたらこんな風に動くだろうと思えるドンピシャの作画。
タッチは全体的に柔らかく、線はとても美しい。
動きも全体的に統一性があり、キャラも凄く映えてた。
ギャグタッチな動きもあれば、繊細な芝居も見れるまさにウマウマなアニメではある。

【美術】4.85
中村千恵子さん。
イメージとしてはピンドラあたりが近いか。
中村監督に持っていたイメージどおりの美術背景。
一つの画としても凄く良いが、普通にアニメキャラが歩いていたら違和感しか出なさそうなタッチではある。
しかし、その点もしっかりキャラのイメージに合わせているし、全体的なタッチにも統一性があるので違和感は感じられない。
むしろ、画面から優しさ、柔らかさ、美しさが溢れ出てくる勢い。
BLという成分もこの要素で和らげてくれている印象。

【声優】4.8
メインキャストは野島さんと神谷さん。
改めて、神谷さんは凄いなと痛感。
実は、神谷さんは佐条のイメージだったが、草壁でも全く違和感なく演じていた。違和感というか、元から神谷さんは草壁だったんじゃないかと思えるレベルの演技。キャラや性格もしっかり読み取っていることがわかるし、自然体でしっかり演じているあたりも凄い。
女性ファンも多いあたりからしても良キャスティングだと思う。

【音楽】4.8
アコースティックの割合が非常に多かったと思う。
優しい落ち着く劇伴。雰囲気もドンピシャ。
作品とキャラをしっかり立たせて、主張は抑えていた印象。

【演出】4.85
中村監督と林さんの共同演出。
中村さんらしさをそこまで詳しくは知らないが、この映像は中村さんらしさなのかなと思える。
短い尺だか、長尺のカットはあるし、BGオンリーで季節などを表現したカットは少なくなかった。
あおりや俯瞰といったアングルはほとんど無く、全体的に引きめのショットで遠くから二人のシルエットを映したり、背景とうまくシンクロするレイアウトなどが目立った。
引き目のショットでは主に横構図が印象的。
キャラの横顔を捉えたプロットも多かった。
横構図もプロットもシルエット映えしてたなと。
音響操作も見事だった。
少し過激なシーンにも意欲的。
印象的なシーンは噴水前での一連。
あれはすばらしい。

【世界観】
男子校にかよっている男子二人の恋愛アニメ。
自分も男子校に通っていたが、この手の話には一切縁がなかったし、話題にすらならなかったので、現実味はあまりない。
ただ、純粋な恋の物語だったし、男性目線から見たBL作品もなかなか興味深いものはあった。

【キャラ】4.8
繊細なキャラ描写、濃厚なBL表現、シンプルなセリフやモノローグ。
60分で成り立った要因としては、余計な演出や描写、セリフやモノローグが殆ど無かったからだと思う。
セリフはとにかくシンプルでダイレクト。
キャラの背景もきっちり描写されていたし、声優さんの演技や表情も相まって、感情移入もできる。
キャラとキャラのイチャイチャも、逃げずに綺麗に丁寧に描いているので、個人基準だが、男性でも十分見れる映像になっている。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

BLと呼ぶのもおこがましい程に真摯で爽やかで丁寧な【ファンタジーではない恋物語】

『同級生』、と音だけ聞くとエロゲの方が真っ先に思い浮かぶタチです;
今作は中村明日美子が2006~7年頃にOPERAで連載していた漫画を内容ほぼそのまま60分の作品に映画化したものです
ジャンルは男子高校生同士が恋に落ちるというもので所謂BLなのですが、そう呼ぶと途端にファンタジーっぽく聞こえてしまうのでオイラとしては普通に恋愛モノとして受け止めたいです
鑑賞料金は特別興行の為に一律1500円
未成年が喫煙&飲酒するシークエンスがあるためレーティングはPG12


初監督となるアニメタ出身の中村章子に、キャラデザ林明美、美監は中村千恵子と超豪華スタッフが集結しました
アナログな絵柄の原作の雰囲気を、細い線と柔らかいタッチの作画、淡い色彩、温かみのある背景で見事にアニメートしており、今年観た全アニメの中で画作りはぶっちぎりの1位と言えます
馬越組やら北田勝彦さんやら錦織敦史さんらをはじめとした超一流のアニメタが集結しており、適度にデフォルメや金田的ポージングをコミカルに取り入れた作画だけでも必見の価値あり
さらに劇伴をアコギタリストの押尾コータローが手掛け、Galileo Galileiの尾崎雄貴をフィーチャーした主題歌が爽やかにエンドロールを飾るというこれ以上に無い完璧な布陣といえるスタッフ陣です


物語は男子高校2年の夏
金髪癖っ毛ちょい不良なバンドマンの草壁光
黒髪七三にメガネで優等生な佐条利人
一見して真逆の二人だったが、ある日に草壁は同じクラスで真面目一本木の優等生、佐条が合唱祭の練習で一人だけ歌わず口パクしていることに気付く
その日の放課後、偶然にも教室で一人歌をカゲ練する佐条を目撃した草壁が、彼に興味を持ったことから始まる・・・


全篇は【夏】【秋】【ばかと大馬鹿】【二度目の夏】の4篇で構成されており、基本的にモノローグがとても多いのが特徴
BL云々以前にこーゆー構成が苦手な人には意見が別れる作品だと思います
BL、と言いましたが前述した通りファンタジーっぽさは皆無
【等身大の男子高校生】の【等身大の恋愛】が描かれているのが今作の魅力です
ただそれが【男の子同士】だってことだけが普通でないだけで、男同士であるが故の恋路の障害なんかも描かれているから、これを単純に「BL」と一括りにしてしまうことにはオイラは抵抗があります
それぐらい恋、というものに真面目な作品です


と、言っても原作が短くまとまっていることを見ての通りそれほど重苦しい内容ではありません
サクッと観れるのがまた良い
それでも前半2篇は少し展開が早い様に感じてコミカルな部分以外ではちょっと物足りないように思いましたが、後半2篇は素直にトキメキを覚える清々しい内容だったので皆様に強くオススメ出来る一本に仕上がってると感じます
個人的にはクライマックスでチョロっと出て来るCB400スーパーボルドールの走行シーンがとても丁寧だったことにも拍手です(笑)


それにつけても四十路過ぎて高校生を演じれる神谷浩史ってホント素晴らしいですなb

投稿 : 2025/02/01
♥ : 11
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ズゴックでなくて、ズコック??

 うちの近くの映画館でやるということもあり、劇場CNでも良く見ていたので、何となく見に行ったです。絵柄を見たときから、女性向きかとは予想はしていたけど、行くと女性客が多かったです。10代後半から年輩の方まで、幅広かったのには驚いたです。

 男子校での佐条、草壁を中心に少し原先が絡む展開のアニメだったです。物語が進むうち見せつけるシーンが多くなっていきました。これが私が学校に行っていた頃から聞いたことのあるBLというものなのでしょうか?です。
 女性の方が興奮するのかなぁ?な、男と女ではあるような見せつけるシーンが、佐条と草壁の仲が深まるうちに発展したと思うです。最初、歌の練習をする友人同士から進み、雰囲気に流されたのが、きっかけだったのに・・・。

 自意識過剰に見えた、桜Trickを思いだしますです。でも、自意識過剰というでもない、また違った男同士の恋の形なのでしょう?です。今、日本でも同性婚が、認められてきているのでそうなのだろうです。
 
 流れる曲とか良い感じだし、背景画など色彩も良くCGではない良さを引き出していて好きなほうでしたです。眼鏡の佐条、金髪の草壁、担任の原以外のキャラは、白目だったりのっぺらぼうだったり、点目だったりでしたけど・・・。このアニメでそれだけ、2人を強調したかったのでしょう。原作あるようですが、どうかは分からないけどアニメ色というより、色彩良くした漫画がそのまま動いたり、喋ったりに見えたです。

{netabare} 原先に佐条が迫られるのを見て、駆け付けた草壁がゲンコツを原先に加え佐城を奪還して、その後告白するところなんか、{/netabare}男と女とは違う形を見たです。{netabare}また、草壁のライブ見に行った後、やきもち??やいた佐条に追いかけた草壁が、砂場で寝ている所に飛び込むのも{/netabare}面白さあったです。

 誰かさんがやっているバンド名、ジャブローに出てきた水中用モビルスーツかと一瞬思ったです。

 仲が深まることは良いことばかりでもなく{netabare}、後半で進路を考えていない草壁にとって、佐条が進路を定めていることは分かれてしまうのでないかという辛さより、嫉妬だったというのは見ものでしたです。
 いったん距離を置いても、草壁がバイクで佐条を試験会場まで送るシーンは、良かったです(「あなた 待ってるわ~」とか)。今まで草壁が佐条詰め寄っていたのに、公衆の面前でも佐城の方から見せつけるようになるのは、驚きというより周囲も意識しない{/netabare}凄さを見たと思うです。

 これが、ゆっくり恋していくことなのだろうです。まぁ、これでいいのだです。
 

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10

69.1 16 嫉妬アニメランキング16位
うる星やつら 完結篇(アニメ映画)

1988年2月6日
★★★★☆ 3.8 (70)
441人が棚に入れました
キュートな宇宙人・ラムと超女好き高校生・あたるが巻き込まれる奇想天外な現象や事件を描いた、高橋留美子の同名漫画をアニメ化。本作は、原作の最終話を元にストーリーが作られている。監督=出崎哲。撮影監督を「おじゃる丸」の大地丙太郎が務めた。ある日、黒ブタの馬車に乗った黒づくめの少年“ルパ”がラムの前に現れる。彼は曾祖父さん同志が決めたラムの許嫁だと名乗り、ラムに指輪をはめさせる。その瞬間、ラムの特殊能力はなくなり、彼女はルパにさらわれてしまう。ラムが連れていかれた先は、闇の宇宙。そこではラムとルパの結婚式の準備が進められていた。あたるはラムを救出するために闇の宇宙へ向かうが、ルパの巧みな妨害工作によってラムとケンカしてしまい、結局彼女を置いて地球に戻ってしまう。ところが、地球で起こった間抜けな事件の解決策として、ルパの持つブタが必要になり…。ラムはブタを提供する条件として、初めて出会った日と同じ鬼ごっこを要求してくるのだった!

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、神谷明、島津冴子、鷲尾真知子、千葉繁

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ラムとあたるの歴史的異次元ラブコメ完結編(仮)届け愛の電撃ショック!

1988年上映の劇場版 うる星やつら 第五作目 完結編ですが最終編ではありません

原作 高橋留美子 監督 出崎哲 脚本 金春智子 制作 マジックバス

1981年から1986年まで218回にわたりテレビ放送され、
劇場版も4作作られた「オタアニメのレジェンド」の原作版の完結編の映画化。

マジックバスは杉井ギサブローが設立した制作会社で主にグロス請けで現代でも活発に活動しています。
配給会社の東宝は「完結編」とすることで製作を了承した作品。
なぜなら、同時上映作品が「めぞん一刻 完結編」なので。

初の原作付き劇場版と言うことで、
作者特有の取っ散らかったキャラコメディになっていますが、
個人的には原作にやや難ありという感想です。

過去劇場版で何度も観たようなシーンの連続が原作コミックの最終章では、
作者の発想の貧困さを露見しているように思えます。
その劇場版も、本作未登場のクラマ姫編を金春さんが何度も脚色したものが多く、
本作もその路線ではがっかりです。
ちなみに、次作「いつだってマイダーリン」も同様。
作者が「ビューティフルドリーマー」の発想に嫉妬したのも当然かな。

この作品のアニメーションとしてのレベルは年代を考慮すると相当優秀です。
現代でもストレスなく観れる作画レベルで、
やや太めのキャラですが、体重が感じられる高度な出来です。
監督の出崎兄は無個性っぽく見せながら、各キャラに生命を与えられる、手練れ監督です。
名監督である弟の「エースをねらえシリーズ」で唯一監督を請け負った「新エースをねらえ」でも生命感が躍動しています。

個人的な評価としては、
押井守に奪われたうる星やつらを高橋留美子と金春智子が取り戻したが、
物語的には何も進展させられず、出崎哲監督の名演出に助けられた。
と言う感じです。

アニメ「うる星やつら」は多くの人がかかわった長期作品ですので、
制作側にもいろいろドラマがあったことが伝わっています。

原作でさえ最初は、お馬鹿ヒーロー「諸星あたる」の地球を狙う宇宙人撃退物語だったものが、
最初の侵略者「ラム」が戻ってきて主人公に居座ると言う破綻ぶりです。

それでもなお、「うる星やつら」はコミック界、アニメ界に燦然と輝く名作中の名作。
私も数十年に渡ってこの作品を愛し続けています。
物心つき始めの頃から知っていて、死ぬまで愛し続けるであろう作品は、
これと、「ゲゲゲの鬼太郎」だけかも知れないです。

ネガティブな意見はこのくらいにして、この作品最大の見どころは、
ランちゃんのUFOでしょうかw
初期の頃のラムのUFOはどうなったのかな?
弁天、お雪の活躍もいいです。レイさんはどうでもいいです。
宇宙戦闘の作画はなかなか凝ってまして監督と制作会社の実力がうかがい知れます。

先にも書いた通り、生命の躍動する人物画は、
ラストの輝くばかりのラムとあたるのシーンにスーパーノヴァの如く炸裂します。
素晴らしい部分もイマイチな部分も含めて、
これが「うる星やつら」の完結編(仮)。

永遠のヒロイン「ラムちゃん」完全復活の日を信じて、
今回はやや厳しい意見になりましたが評価点は平均以上です。

出崎哲氏制作のエンドロールには涙が溢れました。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 15

レッツマゲマゲ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

あれ…なんか安心してる俺がいる…

昭和を代表する人気アニメのひとつではないでしょうか。

それにしてもなんて内容のないオチのない漫画なんだと当時から思ってましたがそれでも毎回楽しみに観ていました。

楽しければいいじゃない的な、なんてバブリーな頃の作品なんでしょう。


なんでもないお祭り漫画として私の中で完結するはずのこの作品が、そうはならずに今も記憶に刻まれる名作となってしまいました。

それもこれもこの「うる星やつら 完結編」にてガッツリハートを鷲掴みにされたからなんですが。

当時初めて買ったこのマンガの単行本が最終巻である34巻だったのですが、うる☆には珍しく丸々1冊通したストーリーになっていました。この34巻をそのまま劇場版完結編にしたのがこの映画ですね。

だいたい毎回1話読み切りのドタバタだったのに…どうしたことだ!?でも最後まで読みきったあとすぐにレンタル屋に走ってアニメでも完結編を鑑賞しました。

この完結編これだけ観ても楽しめるのでしょうが、それ以前からの「しょうもないやり取り」からみていた方がより完結した感を味わえます面倒臭い話…(汗)

平行線のようで時には距離が近づいたかと思うとやっぱり特に代わり映えのない日常を過ごしていた「あたるとラム」ですが、やっぱり最後ってどうなるの?どうなったの?って気になるところでしたからね。

いや~そうなったか!ってゆうか
そうなの~!!ってゆうか

でもなんかこの作品らしい最後で…
あれ?なんか安心してる俺がいるってところに落ち着き、ひとまずこの作品に終止符を打つこととなりました。

昔のアニメですし、ここだけ観てみる?とゆう感じもあるので今更新規でオススメまではしません。

オールドファンが昭和ノスタルジーにちょっと触れたい時に手に取るアニメ作品といった感じでしょうか。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

一生続く痴話喧嘩♪

タイトル道理「うる星やつら」の劇場版シリーズ完結篇。
1988年2月6日公開。

劇場版『うる星』シリーズでは唯一の原作付き作品で、
最終章「ボーイミーツガール」をほぼ忠実にアニメ映画化
している。(wiki抜粋)

ある日、ラムは黒い服を着た老人に「お前を嫁にする」と
言われる悪夢にうなされるが・・

ラムは空飛ぶ豚に乗る男・ルパに拐われてしまう。
あたるたちは救出に向かうが…。


劇場版の中で最もTV版の雰囲気に近いかな?
物語も簡潔で単純明快なラブコメになっている。
キャラデザなど微妙に雰囲気が変わっている。

あれ・・やはり恋愛モノに弱いみたいだ・・面白い♪
良い最終回ではありませんかw

「うる星やつら」放映開始10周年記念として後に劇場版
「うる星やつら いつだってマイ・ダーリン」が有るけどw


諸星あたる - 古川登志夫
ラム - 平野文
ルパ - 塩沢兼人
カルラ - 井上瑤
ラムの曾祖父 - 北村弘一

面堂終太郎 - 神谷明
三宅しのぶ - 島津冴子
テン - 杉山佳寿子
お雪 - 小原乃梨子
弁天 - 三田ゆう子
ラン - 小宮和枝
レイ - 玄田哲章
因幡 - 鈴置洋孝
藤波竜之介 - 田中真弓
竜之介の父 - 安西正弘
サクラ - 鷲尾真知子
錯乱坊 - 永井一郎

ラムの父 - 沢りつお
ラムの母 - 山田礼子
あたるの父、ウパ - 緒方賢一
あたるの母 - 佐久間 夏生
メガネ、記憶喪失装置 - 千葉繁
パーマ - 村山明
カクガリ - 野村信次
チビ - 二又一成
温泉先生 - 池水通洋
校長先生 - 西村知道
コタツネコ - 西村朋紘

投稿 : 2025/02/01
♥ : 0

66.5 17 嫉妬アニメランキング17位
うる星やつら オンリー・ユー(アニメ映画)

1983年2月10日
★★★★☆ 3.7 (76)
363人が棚に入れました
 高橋留美子原作の同名漫画をアニメ化した、劇場用作品第1弾。TVシリーズの好調を受けて制作された。監督は「攻殻機動隊」の押井守。無類の女好きで浮気ばかり繰り返す高校生・諸星あたると、その押しかけ女房となったキュートな宇宙人・ラムが日常的に巻き込まれる非現実的で奇想天外な事件をハイテンションに描いたSFラブ・コメディ。ある日、あたるの知り合い全員に結婚式の招待状が届いた。差出人は、“諸星あたるとエル”。謎の女性・エルの正体は、やっぱり宇宙人。だが、宇宙一の美女と言っても過言ではないほどの美しい女性だ。そのうえ、彼女と結婚すれば彼女の星の王にもなれる。ラムは当然のごとく嫉妬し、ふたりの結婚を阻止しようとするが…。ふたりは本当に結婚してしまうのか? そして、エルは本当にあたるに惚れて結婚しようとしているのか…!? 何やらこの結婚には裏がありそうで…。

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、榊原良子、島津冴子、神谷明、杉山佳寿子

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

完全無欠のうる星やつら これを見なきゃ始まらない20世紀を代表する名作アニメ

1983年公開の劇場用アニメ 公開版80分ノーカット版104分

原作 高橋留美子 監督 押井守 脚本 金春智子 制作 スタジオぴえろ

押井守氏の初監督作品は「うる星やつら」劇場版初監督は「うる星やつら オンリー・ユー」です。

監督降板(脚本が嫌だったのか?)を受けテレビ版監督の押井氏が急遽登板、
まったく進行していない状況で、脚本改編と絵コンテ作成を同時にほぼ一人で強行する、
それも、テレビ版の監督と同時進行、まさに「押犬大明神」と化していたという時期です。
脚本の人から文句が来るほど変えたそうですが、
この金春さんという人はテレビ版の「よっぱらいブギ」のみ執筆、
調子が悪いナツコさんのような回です。
「めぞん一刻」ではごく初期に2本執筆したのみということで、
ベテランの割にはあまり信用がおけなさそう。

おそらく、押井氏が不満だったのはこの設定の中枢であるエルについて。
宇宙人の王女「エル」が子供の頃した「あたる」と結婚の約束を果たすため、
地球に攻め込むというアイディアは、原作初期の「クラマ編」の焼き直し、
これではプライドの高い押犬としては、自分の黒歴史と思いたいでしょう。

ところが意に反してアニメは素晴らしい出来です。
傑作、いや名作級。
どうにも改変できなかった「エル」設定も含めて私には非の打ちどころがありません。
この時点での全キャラ登場のテレビファンのための特大ボーナス?
いや違います。
この作品こそがテレビの延長の「うる星やつら」本編本道の大作。
スピンアウト的位置の「ビューティフルドリーマー」のほうがボーナスです。

押犬に騙されてはいけません。オンリー・ユーこそが見るべき作品です。

諸星あたる CV古川登志夫  カイ・シデン ピッコロ大魔王
ラム Cv平野文    
三宅しのぶ CV島津冴子   フォウ・ムラサメ ダーティペアのユリ
面倒終太郎 CV神谷明    流竜馬 キン肉スグル 冴羽リョウ
テン CV杉山佳寿子     魔法のマコちゃん ハイジ 白鳥のジュン
錯乱坊 CV永井一郎     磯野波平 猪熊滋吾郎 八宝斎
サクラ CV鷲尾真知子
メガネ CV千葉繁      一堂零 レレレのおじさん ねずみ男
ラン CV井上遥       セイラ・マス おそ松
お雪 CV小原乃梨子     ドロンジョ コナン 野比のび太
弁天 CV三田ゆう子     ハットリ・シンゾウ ネコ娘
クラマ姫 CV吉田理保子   早乙女ミチル クララ 神崎メグ マリア・フリード
レイ CV玄田哲章      岩鬼正美 海ぼうず 多数

エル・ド・ローゼンバッハ CV榊原良子 ハマーン・カーン 竜崎麗香
ロゼ CV丸山裕子       ロボタン キノッピー

ラムの美しさは際立っていますが、同様にラン、弁天、お雪も超絶美しい。
見なきゃ損。
いや、お願いですから見てくださいレベルの個人的名作です。

押犬も心を入れ替えて自分が作った名作を認めなさい。

まったく未見の人はテレビ版1話からどうぞ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 28

でんでん虫 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

綺麗な薔薇には棘がある

・映画というよりテレビスペシャルというべき内容
・ギャグは面白かったが物語全体では楽しめなかった

■映画らしい所が無い
映画にはたいていインパクトの強いものやオーバーなくらいの演出があるものだが、この作品には印象に残るシーンが無かった。どれも中途半端というか、古いだけなのかもしれないが「目に焼き付いて離れない」というようなシーンが残念ながら無い。

■物語にメリハリが足りない
 物語の起伏が今一つ感じられない。「笑」と「悲」を区別して、もっとラムに感情移入出来るようにして欲しかった。主人公のあたるが他の女のことでヘラヘラと笑っている一方で、ラムが悲しむというのがこの作品のポイントなのだから、その辺の陰と陽をはっきりと出すべきだった。

■テーマやメッセージが分からない
 うる星やつらのアニメは少ししか見たことが無いのでよく分からないのだが、今作はおそらくいつものラブコメと大差ないと思う。一体この作品を通して何が言いたかったのだろうか。やっぱりラムが一番好き?綺麗なバラには棘がある?わざわざ映画にする意味が分からない。

製作した押井監督ご自身もこれが失敗作と仰っているようだが、私もこの作品は映画としては失敗だと感じざるを得ない。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

plum さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

らしさでいえば本作

1983年公開のうる星やつら劇場版第1作。

諸星あたると宇宙人エルとの、結婚を巡ってのドタバタコメディ。
劇場2作目のビューティフル・ドリーマーよりもキャラデザがTV版に近く、
ストーリーもあたるの浮気性を中心にしたドタバタがメイン。
しょーもないオチと、最後はお約束のドタバタで締め。

とっても、”うる星やつら”らしくて好きです。

宇宙を舞台にした、ちょっとだけスケールが大きいところが
劇場版って感じでしょうかね。
うる星やつらといえば、数多いサブキャラが魅力のひとつですが
弁天くらいしか活躍の場がないのは、少し寂しいところです。

ビューティフル・ドリーマーの評価が圧倒的に高く、
また監督自身が失敗作だと言っている、少し可哀相な作品ですが、
”うる星やつららしさ”が出ているのは、本作だと思います。


しかしこの時代って、半裸の女の子がでるアニメとか、
パタリロみたいなBLのアニメが、ゴールデンタイムにやってたんですよね。
いまからすると不思議なものです。
まぁ、親はチャンネル変えろってよく言ってたな。

それは野球みたいからだろう!

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

66.2 18 嫉妬アニメランキング18位
インサイド・ヘッド(アニメ映画)

2015年7月18日
★★★★☆ 3.9 (62)
331人が棚に入れました
『トイ・ストーリー』ではおもちゃの世界、『モンスターズ・インク』ではモンスターの世界、『ファインディング・ニモ』では海の中の世界と、ユニークな世界感を表現してきたディズニー/ピクサーが、最新作で描くのは"人間の頭の中"の世界。主人公は、11歳の少女ライリーではなく、彼女の頭の中にある"5つの感情"、ジョイ(喜び)、アンガー(怒り)、ディスガスト(嫌悪)、フィアー(恐れ)、サッド(悲しみ)となっている。

本作の"世界"となる、とても明るく幸せに育った少女ライリーは、父親の仕事の都合で、今まで育った田舎から、都会のサンフランシスコに引っ越すことになる。ライリーが新しい生活に慣れようとする中、"感情=キャラクター"たちは、それぞれ彼女の幸せを守ろうとぶつかり合う。そして、彼らの行動はライリー自身の感情となり、大事件を巻き起こすことになる。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

【解剖学と心理学に裏打ちされた圧倒的説得力と自然な感動】これはあなたの物語【ピクサー最高傑作の謳い文句に偽り無し!】

ホントはもっと早く書いてあげたかったんですが完璧過ぎてなんの文句も無かったのでむしろ書き辛かったですw


公開前から「トイストーリー3を超える最高傑作」だとか「ドリカムが日本版主題歌を担当」などの煽りがウザくてあんま期待してなかったというのが本音
まず本当にピクサー映画史上最高傑作なことはオイラが胸を張って保証します(お
それに例の日本版主題歌は本編前にPVのように掛かる仕組みなので、本編とは一切無関係、どうしても駄目って人は寝てていいです(お


物語はライリーという少女が生まれた日から始まる
全ての人(ゆくゆくは全ての生き物)の頭の中には5つの感情を擬人化したキャラクターがいて、我々が取る言動のひとつひとつは全て彼らが指示を出して行っているものとされている
ヨロコビ(JOY)
イカリ(ANGER)
ムカムカ(DISGUST)
ビビリ(FEAR)
そしてカナシミ(SADNESS)


5つの感情たちに共通していることはライリーを心から愛しており、常にライリーのためを想っているということ
時にそれらは悪態や憤怒や涙というカタチで出てしまうものの、ライリーは優しい両親や友人や生まれ育ったミネソタの自然のおかげもあって真っ直ぐで、明るくて、ユーモアのある女の子に育った
特にヨロコビはライリーにいつも笑っていて欲しい、という想いが人しきり強く感情たちのリーダーシップを取る
しかし11歳のある日、ライリーの一家はミネソタからサンフランシスコへの引越しを余儀なくされ、全ての歯車はそこからズレ始める・・・


まず断っておきたいのが凄く悲惨な話や深刻な話ではないということです
引越しを機にアンラッキーなことが続いてしまい、それが頭の中でポジティブなヨロコビとネガティブなカナシミの対立を生んでしまう
誰の身にも起こりうる、端から見れば全然大それたエピソードではないのです
が、“実は頭の中では壮大なスペクタクルが繰り広げられていた”というのが素晴らしい


ヨロコビとしてはライリーにいつもハッピーでいて欲しいのに、それをカナシミが邪魔してしまう
なぜカナシミが必要なのか?
ここが映画ではキーポイントになるんですが、セリフで説明するのではなく表情と仕草と音楽だけでクライマックスに持っていく様は説教臭くなく、自然な感動を誘います
オイラなんかビンボンのくだり以降ずっと泣きっぱなし(T_T)


それに解剖学と心理学に基づいた“頭の中の世界”の描き方が丁寧で物語の説得力を倍増させています


冷たいものを頬張ると頭が痛くなるアレはなにか
記憶はドコにしまわれていてどうやって取り出しているのか
アイデアはどこからやってくるのか
サブリミナルはなぜ起こるのか
忘れるとはなにか
空想のキャラクターは頭の中で何をしているのか
アートはどうやって生まれるのか
夢はどこで作られているのか
そして、性格は誰が作ったものなのか


頭の中ってホントにこーなってんだ、って思わせてくれる納得のいく完成度
上手いですね


記憶が陳列されている棚が大脳皮質のシワの形をしていたり、感情たちがいる司令塔と呼ばれる建物がシナプスの形をしていたりと、モチーフがハッキリとしていて世界観の描写だけ観ていても凄くwktk出来る


爆笑してしまったのは物語の悪循環が始まる引越し先が“サンフランシスコ”だってことすかねw
だって半年前に『ベイマックス』がサンフランシスコは良い街だってあんなに推してたのに今作は「ミネソタの方が良かった・・・」とサンフランシスコをこれでもか!ってぐらい徹底的にディスりまくってるw


ああ、オイラは年間の映画のランキング表を作ってるんですが、、、心の何処かで一番は「日本のアニメであって欲しい・・・」などと甘いことを考えてました;
いい映画でした‐‐b

投稿 : 2025/02/01
♥ : 22

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

頭の中には、あなたの幸せを願う5つの感情が住んでいる――。

2015年公開の
ピクサー長編アニメ15作品目。

人の頭の中を舞台とした物語。

ファンタジーだけど、あってもおかしくなさそう!な
夢ある設定がおもしろかったです♪

90分ほどの作品です。


● ストーリー
ミネスタ州で生まれたライリーという名の少女。

彼女の頭の中で最初に生まれたのは、ヨロコビ。
次に生まれたのは、カナシミ。

そしてイカリ、ムカムカ、ビビリが生まれた。

ライリーの作る思い出の中でも、
特別な思い出は、彼女の性格を作る特別なもの。

しかし、サンフランシスコに引っ越したことをきっかけに
ライリーも不安定になる。

そして“特別な思い出”とヨロコビ、カナシミが
記憶保管庫に吸い込まれてしまった。

司令部へ帰るためにヨロコビとカナシミは、
迷路のような長期記憶保管庫を歩く。


頭の中にいる5つの感情が行動をつかさどり、
特別な思い出が宿主の性格を作る。

日々の思い出はガラス玉のような形をしていて、
どんどん保管されていく。

頭の中には他にも様々な働きをする場所があって…。

ありえないファンタジーだけど、
でもそうだったら楽しいな♪と思えるような、夢ある設定♪

頭の中のいろいろな場所を冒険していくのは、
わくわくしました^^


≪ ヨロコビだけじゃ生きられない ≫

ヨロコビはチームの中心であり、
ムードメーカーでもある。

だけど、ヨロコビだけあれば人生が幸せなのかといえば、
そうではないことに、ヨロコビ自身が気づく。

そこにこの作品のメッセージが込められているのだと思いました。

大人からしてみれば、まあそうだよなと思える話ですが、
子どもが見ると、新たな人生観につながりそうですね。

大人が見ても子どもが見ても楽しめる。
さすがピクサー♪


● 音楽
【 主題歌「愛しのライリー」/ DREAMS COME TRUE 】

この作品のために書き下ろされた曲。

主人公のライリーの名前も入ってる!

両親が語りかけるような、
優しい歌詞がすてきですね^^


● まとめ
頭の中のいろいろな場所を冒険する、というのは
夢があっておもしろかったです♪

私達の頭の中にも5人の司令塔がいたら楽しいのにな^^笑

あり得ない話だけど、
そうだったら夢があっておもしろい。

そんな気分にさせてくれるのは、さすがです♪

投稿 : 2025/02/01
♥ : 16

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

トイストーリーの後継作

正当な『トイ・ストーリー』の後継作品だと思いました。物語の大きな核は二つあります。つまり"どうやって親として子に接するか"という子育ての話と、"職場の仲間とどうやって仕事をしていくか"という話です。『トイ・ストーリー』もウッディがアンディの保護者として見守っていくという話と、バズという自分より性能の高いおもちゃに嫉妬しながらも職場仲間として理解し合っていくという話でした。
本作もそれと非常に構成が良く似ている。カナシミは職場で要らんことばかりするちょっと扱いづらい同僚。それをヨロコビは最初非難する。カナシミには彼女なりの仕事があるのだということが分からずに、ライリーが喜びを沢山感じるのが何よりも良いことなんだとカナシミに押し付ける。「とりあえずマニュアルでも読んでてよ」という適当な指示方法は駄目な管理職の典型的な姿でしょう。但し、カナシミと旅を続けていく中でカナシミにも彼女なりの重要な仕事があることに気づいていく。それは共感したりとか、つらいときにつらいと正直に言う大切な感情です。そしてそれは自分のヨロコビと表裏一体("Inside Out")なんだと気付かせてくれるラストシーンの素晴らしさ。楽しい思い出は悲しい思い出と本質は同じなのですね。美しいメインテーマも相まって思わずホロリと来てしまいました。
ヨロコビは仕事仲間としてキチンとカナシミの存在意義を見出して、職場の一員として互いに認め合う。ライリーが生まれた時からライリーの保護者として彼女を守り続けていた感情たちは、何も喜びの感情だけを子どもに与えておけば子どもが幸せではないことを知る。全ての感情が子を豊かに成長させるのですから。こうやって感想を書くと、やっぱり非常に大人向けな作風であったと言えますね。
それから、心の中という極めて抽象的な舞台の構築、途中で3Dアニメからキュビスムになったり二次元までキャラクターが分解されてしまったりの画的な面白さ、ライリーの両親の感情たちの様子など、冒険心を忘れないピクサーだからこそ作り得た作品だったと思います。個人的にはピクサーの全作品の中でもトップクラスに面白い作品でした。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

67.8 19 嫉妬アニメランキング19位
うる星やつら3 リメンバー・マイラブ(アニメ映画)

1985年1月26日
★★★★☆ 3.8 (49)
282人が棚に入れました
キュートな異星人・ラムと、超女好き高校生・あたるが次々に巻き込まる宇宙規模のドタバタ事件を描く、ハイテンション・SFラブ・コメディ。劇場用作品、第3弾。原作は高橋留美子。監督、やまざきかずお。友引町にメルヘンランドという遊園地がオープンした。だが、そこのアトラクションのひとつ、大マジックショーを見に行ったあたるの身に、とんでもない災難が降りかかる。魔術師ルウに魔法をかけられ、ピンクのカバにされてしまったのだ。なんとかしてあたるを助けようとするラムだったが、今度はラムが罠にはめられてメルヘンランドのミラーハウスに閉じこめられてしまう。だが、一連の事件は実はラムのほうに原因があった。ラムが生まれたときに彼女にかけられた呪いが、今ごろになって効きだしたのだ。だが、その呪いをかけた人物とルウの間には何の関係もなく…。果たしてルウの目的は? そして、ラムの呪いはとけるのか?

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、鈴木一輝、杉山佳寿子、島本須美、岩田光央

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

私たちの左手の小指には誰でも目に見えない赤い糸が結ばれていて必ずある人の指に・・・

1985年公開の劇場版うる星やつら第3作 90分

原作 高橋留美子 監督 やまざきかずお 脚本 金春智子

10年ぶりくらいに見返してみました。
このタイトルはほぼ全部観たので少しずつレビューしていきたいです。
1985年1月なので、テレビ放送138回(161話)ころ。
130話以降はやまざき監督なので、交代後30週以上は経ってます。
ゴールデンタイムなので野球放送などの影響があり約1年弱でしょうか。

この作品から大きく変わったのは脚本でしょう。
第一作「オンリーユー」のクレジットには金春智子さんの名前がありますが、
どうもアイディアだけ残して押井守氏がほとんど書き換えたらしく、
第二作「ビューティフルドリーマー」は脚本押井守です。

押井氏が去ったことにより、原作者との連携が取り戻せてコミックに近い脚本にはなっています。
しかし面白いかというと前2作には遠く及ばないどころか、
原作に忠実なテレビ版のような魅力も減ってしまっています。
脚本に関しては致命的につまらないシーンも多いようです。

単に「オンリーユー」の元設定の逆転、つまり当事者があたる→ラムに変えただけとも取れますし、
キャラの扱い方や物語の進行も相当雑です。
脚本に関しては愛が足りないとしか言いようがありません。

作画はテレビ版からずっとやまざき氏が中心なので大きな変更はありません。
この作品に関しては物語よりも作画が先行しているような雰囲気で、
新海誠氏の劇場版アニメにも近い感じです。

もっとも嬉しい点はラムのビキニ姿が堪能できることで、
ビキニラムの空中戦闘シーンはテレビ版でも少なく、最大の見どころではあります。
現代の基準では低レベルすぎる戦闘ですが、なにしろラム様なので格が違うかもしれません。
作中、ラムの出生年らしき表示が1967年とありました。
今や50歳ですね。

ラムは周囲の人間をもサザエさん時空に閉じ込める能力があるという描写がこの作品にもあります。
過ぎ去った時間をも元に戻すようです。

脚本は雑ですが本来の「うる星やつら」の乱雑さがそれなりに表現されて、
この時点のキャラ勢揃いの本作もアニメ史的に見て重要だと思いますし、
日本人として最も幸せだった「ラムちゃんLOVE時代」に触れられる貴重な作品。
力作であり傑作でもあると思います。

テレビ版を見つつ、オンリーユーから順番に観ていただきたい逸品ですよ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 23

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

情けないっちゃ♫

やまざきかずお劇場アニメ初監督作品。

「結ばれる男女は赤い糸で結ばれている」
そんな言い伝えを聞き、はしゃぐラムは
早速あたるとデートする為新設の遊園地
「友引メルヘンランド」がへ向かうが・・

妖怪や宇宙人と等でごった返していて・・
それだけではなく・・只ならぬ妖気を漂わ
せていた・・
その遊園地のイベントで、あたるは手品師
によってピンクのカバにされて、元の姿に
戻れなくなってしまう・・

ラムは手品師を鏡迷路へ追い詰めるが・・
逆に亜空間に幽閉されてしまう・・

ラムの束縛や嫉妬から開放されたあたるは
此処ぞとばかりにナンパを謳歌するが・・

運命の赤い糸は・・ラムとあたるには存在
せず、結ばれることはないのか?というか・・

ラムは放置で良いの?あたる君?という物語♫

ラムが居なくなった事で、変と変をつなげた
もっと変な世界の友引町が・・普通の町に・・


TV版の延長の様で、劇場版の中で起承転結が
一番はっきりした作品かな。

劇場版の「お約束?」何時もラストはキス寸前
で・・二人の愛?を確かめる肝心な所で邪魔
が入るが・・今度こそ結ばれるのか?放置の
ままなのか?

それにしてもコタツ猫・・そして取り巻く猫
可愛いな・・龍之介も男らしい!?で・・
相変わらず登場人物が多いけど、基本メイン
のラムとあたる中心の展開です♫


ゲストキャラクター

ルウ(岩田光央)
ピエロやマジシャンに扮する謎の少年。

ラーラ(島本須美)
ルウの家庭教師。

樫の木森のオババ(京田尚子)
ラムの生誕祭に自分だけ呼ばれなかった
腹いせに、ラムが年頃にる頃、愛する男
と必ず引き裂かれる様に呪いをかけた人。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

miki0908 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

無駄が多いがアイデアは最高です

前作ビューティフルドリーマーはアニメの金字塔の一つ。
今作はそれと比べると辛い。
しかしアイデアは素晴らしい。

ラムがいなくなってそれを探すあたる、
また、あたるを探すラム。
呪いによって引き離された二人が様々な動物、昆虫になっても必ず結ばれる。
よく出来ているんですが、脚本が甘い。
でもEDのリメンバーマイラブは名曲です。

古い名作の一つとして一見の価値ありです。
BSで再放送とかやってくんないかな。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 2

66.1 20 嫉妬アニメランキング20位
うる星やつら4 ラム・ザ・フォーエバー(アニメ映画)

1986年2月22日
★★★★☆ 3.7 (48)
258人が棚に入れました
キュートな異星人・ラムと、超女好き高校生・あたるが巻き込まれる、荒唐無稽でバカバカしい事件や超常現象を描くハイパーテンション・SFラブコメディ。原作は高橋留美子の同名漫画。監督は前作と同じくやまざきかずお。劇場用作品、第4弾。あたるたちは大財閥・面堂家に伝わる鬼姫伝説をモチーフにして自主製作映画を撮っていた。主役はラム。だが、撮影の都合で面堂家の守り神とも言われる老木・太郎桜を切り倒してから、ラムの身に次々と異変が起こり始める。まずラムの電撃のパワーが落ち、角がなくなり、飛行能力まで失ってしまったのだ。そればかりか、みんなの心の中からもラムの存在が消えつつあった。そのうえ、友引町自体にも奇妙な現象が発生。事件の真相を調べ始めたあたるたちは、太郎桜の根から鬼姫の遺骨を見つける…。

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、神谷明、島津冴子、鷲尾真知子、千葉繁

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

我々はラムちゃんの思い出だけでも生きていける!それはメランコリーの軌跡。

1986年公開の劇場版うる星やつら第4作

原作 高橋留美子 監督脚本 やまざきかずお 脚本 井上敏樹 制作 ディーン

テレビ版うる星やつら末期の劇場版最終作の予定だったらしいが・・・
名作「ビューティフルドリーマー」や力作「リメンバーマイラブ」に比べると、
やや黒歴史っぽい作品になってしまったようです。

ビューティフルドリーマーはラムの夢という理解しやすい世界でしたが、
今回は舞台である友引町が主役になります。
友引町はコミック版では練馬区(高橋留美子自宅)、アニメでは武蔵小金井市(スタジオぴえろ所在地)です。
メガネが所在地を口走る回はやまざき監督になった直後なので思い入れもありそうですね。

友引町が主役と言うことで、テレビ版のメインキャラが勢ぞろいするという設定ですが、
それはまあ前作と同じです。

劇中対策会議においてラムの存在が友引町を狂わせた件に関して、
ランちゃんが「あたしも美しき・・・よ」と言ったため、すべて根底から崩れました。
その後の展開は、論理性というものから外れた単なる馬鹿騒ぎで終始してしまいます。
最終作品(予定)ということですべてぶち込んだんでしょうが、
結局は次の「完結編」の制作により黒歴史化したと言うわけです。

うる星やつらのキャラさえ出ていればなんでもいい、という人も多いでしょう。
私もそうですが、ラムの虎ジマビキニシーンが少なすぎる!
厚着ラムなど見たくないんです。
友引町の気候が狂って服装が煩雑に変わるのが原因なんですが、
テレビ版ではビキニに苦情が寄せられ、仕方なくセーラー服にしたという状況で、
劇場版くらいは、と誰でも思いますよね。

テレビ版放映中の劇場版は4作、終了直後に「完結編」「いつだってマイダーリン」
いろいろ文句はありますが個人的はすべてマストアイテムです。

正直に言いますと「リメンバーマイラブ」と間違えて借りてきてショックを受けただけなんですw

ちなみにOVAは12作です
了子のお茶会 1985年
アイム THE 終ちゃん 1986年 
夢の仕掛け人 因幡くん登場 1987年
怒れシャーベット 1988年
渚のフィアンセ 1988年
電気仕掛けの御庭番 1989年
月に吠える 1989年
ヤギさんとチーズ 1989年
ハートをつかめ 1989年
乙女ばしかの恐怖 1991年
霊魂とデート 1991年

ザ・障害物水泳大会 2010年 これだけ見てない、つーか今知った!

うる星やつらは総集編含めてすべて必見!もちろんこの作品もですよ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 21

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

帰ろう・・俺達の町・・友引町へ・・

1986年2月22日公開。TV放送が1986年3月で終了する直前に
公開された映画で、キャラデザや作画は可也向上している。

面堂家に伝わる「鬼姫伝説」をヒントに自主制作映画を撮影
していた友引高校の面々は・・面堂家の庭の樹齢300年の
老木「太郎桜」を斬り倒したことで不思議な世界に迷い込む。

本来のラブコメディーから完全にかけ離れ、全体的に重く
暗い雰囲気の作品と言われているけど・・これらの名作の
良い所を現代風にアレンジして洗練された最近のアニメを
視慣れている人にはあまり差がないかもしれない。

面堂終太郎のハーレム回?浮かばれる日が来るのか?
あたるに愛はあるのか?

ミステリーでサスペンスな雰囲気もあるけど、物語として
は構成も演出もなかなか濃い感じはする。

人は思い出だけで生きていけるのか?という感じかな。


以下妄想。
櫻の樹の下には「絆」か「屍」か?」何方が埋まっている?
(※内容とは関係ない)
鬼姫伝説は平家物語?「嫉妬に狂う鬼」橋姫という部分だけ
を嫉妬深いラムに重ねて冒頭の歌が聞こえるに重ねた?
丑の刻参りから大木・・桜の木には死体・・という流れ?

wiki参照。うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーを
モチーフとして現実と非現実の認識論・存在論的な再検討
を試みた。らしい。

諸星あたる - 古川登志夫
ラム - 平野文
三宅しのぶ - 島津冴子
面堂終太郎 - 神谷明
テン - 杉山佳寿子
水乃小路飛麿 - 島田敏
水乃小路飛鳥 - 島本須美

メガネ - 千葉繁
パーマ - 村山明
カクガリ - 野村信次
チビ - 二又一成
あたるの父 - 緒方賢一
あたるの母 - 佐久間なつみ
ラン - 小宮和枝
温泉先生 - 池水通洋
校長 - 西村知道
面堂の父 - 天地麦人
サクラ - 鷲尾真知子
錯乱坊 - 永井一郎

投稿 : 2025/02/01
♥ : 2

みり仔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

わかりにくいかも

この作品、2のビューティフルドリーマーに影響された作品で、正直わかりにくい。
押井守監督のすごさがわかります。
見比べるといいですよ。

単体としても、まぁおもしろいですよ。
ラムちゃんの能力が弱っちゃうみたいなー
でも無理しすぎてます。
だから内容は低めです。
歌は玉置作曲ですきです。

うる星が好きな人だけ見ればいいと思います。
興味ない人がみても低評価で終わると思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 3
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