ピピン林檎 さんの感想・評価
3.8
ナウシカ互換、王蟲ならぬ王獣と心を通じ合う少女の物語
本作の原作者・上橋菜穂子氏は、『風の谷のナウシカ』のファンなのだそうで、本作の
①科学的・物質的文明がさほど発展していない、どことなく中世的・牧歌的な作品世界、
②古くからの因習に頑迷にとらわれながらも基本的には善良な市井の人々と、権勢欲や名誉欲にとらわれて争いを起こしがちな政治的・軍事的指導者たち、
③そうした人々のネタバレレビューを読む 一人の少女、
④そして、ネタバレレビューを読む
・・・という世界観と筋立ては、やはり同作のオマージュといってよいものと個人的には思えました(※多分、ファン層も重なっているのでは?)。
ただ、『ナウシカ』の方は2時間弱の劇場版作品で、サクっと見れたのに比較して、本作の場合は、全50話(※約20時間)という長丁場で、かつ、下記のように展開がかなり緩慢ということもあって、決して面白くない作品ではないのですが、私の個人評点は ☆ 3.8 と、いまいち高くなりませんでした(※因みに、『ナウシカ』は 未レビューですが ★ 4.0 です)。
◆パート別評価
【1】 ネタバレレビューを読む (エリン10歳まで) ※第1~7話(計7話) ★ 4.0
【2】 ネタバレレビューを読む (エリン14歳まで) ※第8~14話(計7話) ☆ 3.5
【3】 ネタバレレビューを読む (エリン18歳まで) ※第15~30話(計16話) ☆ 3.6
【4】 ネタバレレビューを読む (エリン18歳以降) ※第31~50話(計20話) ★ 4.0
--------------------------------------------------------------------
総合 ☆ 3.8 (全50話)
・・・このように、
<1> 【1】序盤と【4】終盤は、それぞれ《分かり易いドラマ》があって、まずまず楽しめたのですが、
<2> 【2】+【3】という長めの中盤(併せて23話)の展開が非常に緩慢で、個人的には退屈な感じを否めず、視聴には難儀してしまいました。
といっても、この【2】+【3】に全然見どころがなかった訳では決してなくて、むしろ《分かり易くないドラマ》つまり《ヒロインの心理的成長》という《内面のドラマ》が、淡々としたテンポで念入りに描かれていて、制作者の意図としては、このやや長丁場を通過することで、視聴者の側にヒロイン(エリン)への愛着をせっせと刷り込んでいって、それを【4】のドラマチック展開での感動へと繋ぎたかったのだと推測するのですが、それがどうも残念ながら、私の好きな種類の刷り込み内容ではなかったようです。
もう少し詳しく書くと、この中盤で描出される《ヒロインの内面的ドラマ》については、
<1> 彼女とネタバレレビューを読む との間に次第に感情が通い合っていく過程の描写としては過不足ないものであったとしても、
<2> 彼女とネタバレレビューを読む との間に友情や信頼関係が育っていく過程の描写 としては何となく違和感ないし抵抗感のあるもののように、私は見えたのでした。
この違和感・抵抗感について、以下さらに分析します。
◆人々の“蒙(もう)を啓(ひら)く”少女への好感度は?
本作全体を見終わっての印象として、このヒロイン(エリン)は、ネタバレレビューを読む を真っすぐに貫きとおして、最終的には周囲のひとたち全てに「自分の正しさ」を認めさせる結果に至る、まさに、
人々の“蒙(もう)を啓(ひら)く”少女である。
--------------------------- デジタル大辞泉 --------------------
けい‐もう【啓×蒙】
[名](スル)《「啓」はひらく、「蒙」はくらいの意》
人々に正しい知識を与え、合理的な考え方をするように教え導くこと。「大衆を啓蒙する」「啓蒙書」
--------------------------------------------------------------
・・・ということで、上記のとおり原作者・上橋菜穂子氏がファンだという『風の谷のナウシカ』を始めとする宮崎駿監督作品のヒロインたちにもこれは言えることと思いますが、その確固とした姿勢から、姿格好は如何に少女っぽく描かれていても、その内面が余り少女らしくない、何だか“説教じみた”“独善的で”“ドグマチック(教条的)な”存在のように見えてしまう点が、本作から受ける違和感・抵抗感の正体ではないでしょうか。
よくファンタジー世界などに転生した少年が無双の活躍をみせる作品のことを「俺TUEEE!」系といって揶揄する方がいますが、本作の構造も、ある意味で「私SUGEEE!」系と言えなくもないような・・・。
・・・というより、「俺TUEEE!」系は、これはこれでエンタメ作品として十分に需要があり「見るとスカっとして気分が良くなる」というプラスの効用があると思いますが、この手の「私SUGEEE!」系(※というジャンルが仮にあるとして)は、エンタメ目的というよりは明らかに「啓蒙」目的(※まだ何も知らない人に《私が正しいと思うこと》を教え込む、という些か独善的な目的)というか「下心」を秘匿した作品にも見えるので、その点をどう評価すべきか?(あるいは、そういう問題意識自体に気づいていない人が多いのか?)
私個人としては、同じNHK製作・放送アニメであれば、本作とよく似た中世的・牧歌的な作品世界を持ち本作よりしばらく前に放送された『ツバサ・クロニクル』(2005-6年)の方が、
<1> ヒロイン(サクラ姫)の心模様や振る舞いのナチュラルさに非常に好感が持てたうえに、
<2> 作品全体としても、変な「啓蒙」意図など微塵も感じず純粋にエンタメ作品として楽しめたので、
・・・本作よりもずっと好印象をもっているのですが、私と同じく両作を視聴してみた方がいるとしたら、その方々の感想も是非一度聴いてみたいところです。
◆視聴メモ
ネタバレレビューを読む
◆制作情報
ネタバレレビューを読む
◆各話タイトル&評価
★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回
*付きは原作小説にないオリジナル・エピソード
=================== 獣の奏者エリン (2009年1-12月) =================
----------- 【1】 ネタバレレビューを読む (エリン10歳まで) ----------
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ OP「雫」、ED「After the rain」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ネタバレレビューを読む
----------- 【2】 ネタバレレビューを読む (エリン14歳まで) ------------
ネタバレレビューを読む
----------- 【3】 ネタバレレビューを読む (エリン18歳まで) -----------
ネタバレレビューを読む
----------- 【4】 ネタバレレビューを読む (エリン18歳以降) ---------
~~~~~~~~~~~~~~~~~~ OP「雫」(*別ver.)、ED「きっと伝えて」 ~~~~~~~~~~~~~~
ネタバレレビューを読む
---------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)0、★(良回)14、☆(並回)35、×(疑問回)1 ※個人評価 ☆ 3.8