いるかん さんの感想・評価
2.7
「ざんねん」
タイトルは、自動販売機になってしまった主人公が発声できる、数少ないボキャブラリーから選んでみました。
結論を先に言っちゃうと、よくある「製作者が原作を飯のタネとして消費するだけにしか見えない、粗製乱造アニメのひとつ」です。
原作は「小説家になろう」で最後まで読めますし、自動販売機という異色すぎる主人公を生かした内容で、オリジナリティはしっかりしています。
自発的に動けなかったり、発声できる言葉が限られることなどの、現実では想像しにくい問題をどう解決していくか、というのが面白さです。
{netabare}
なんなら、別の小説からスピンオフしてきたもっと異色な転生物(あえて、物と言い切ります)まで登場してきて、なかなかの娯楽作品でした。
{/netabare}
ですが、本作を総評すると「作画力と物語の構成力がたりない」ですね。
他の評価軸も、下げるほどではないですが、BRADIOによる主題歌以外に特筆すべきところはありません。
顕著に感じたのは…
{netabare}
#4で、誘拐され中の主人公が、少女キャラ ヒュールミにミルクティーを奢った直後のモノローグ。
「表情がゆるむとイメージが変わるなあ。まるで無邪気になった少女みたいだ」
→文字だけの原作小説ではできないことを、なんなら絵と声だけで見せてもいい場所。
でも実際のシーンは、大した変化もない上、もともと少女なので、モノローグとの乖離すら感じます。
#5の「魔道具のお披露目会」のエピソード
→「なろう」掲載時にはなく、製品版か漫画で追加された要素として期待していたんですが、以降の物語への伏線でもなかったので、蛇足感。というか、ここの労力を他に注げるところもあっただろうと。
作画だけなら、他にもいろいろ…
#5で、メニュー開発にやる気を出した地元飲食店のオッサン連中が、自販機の前で手を挙げながらいったりきたりするだけ
→動きは全般的に酷いけど、ここは最悪レベルです
#8で、自販機自身が上の階層から落ちている最中に録画した、迷路の映像を見せる時に中央に自販機が映っている
→映像(アニメ)制作者として、カメラ視点がわからないのって基礎レベルでアウトでは?
同じく#8で、主人公に対してヒロインが「考え事をしている時って、灯りが点滅しているよ」と教える
→アニメは全く点滅していません
{/netabare}
酷評が続くので、ちょっと息抜き。
ヒロインの名前「ラッミス」ですが、「ランミス」にしか聞こえないシーンが多く、音で聴くとやたら言いにくいんだな、というのはアニメ化での唯一の発見でした。
閑話休題。
全体的にも、主人公が人間ではなく自動販売機であるというのは作画上大きなメリットでもあるのに、その余力はクオリティに注がれず、ヒロインのみという印象。
あと、戦闘シーンの動きの演出がしょっぱいのも、残念な作品に多くみられる傾向です。
5年以上前に完結済みの作品なのにわざわざ二期にわけるところも、制作側の都合しか感じられません。
このアニメに限った話ではありませんが、原作やマンガに興味を持たせるとっかかりにすらなれないクオリティでは、最初に書いた通り、原作の無駄遣いな気がします。