不気味で熱いなおすすめアニメランキング 7

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの不気味で熱いな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月02日の時点で一番の不気味で熱いなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

78.6 1 不気味で熱いなアニメランキング1位
七つの大罪(TVアニメ動画)

2014年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (1465)
8684人が棚に入れました
いまだ人と、人ならざるものの世界が、分かれてはいなかった時代。絶大なる魔力を有し、人々から敬われ、時に恐れられる存在<聖騎士>に守られた『リオネス王国』。王国の王女エリザベスは、たった一人国を離れ、
ある者たちを探す旅に出ていた。それは最強最悪の騎士団として恐れられ、国を裏切り、全聖騎士を敵に回した罪人たち──<七つの大罪>。たどり着いた一軒の酒場で、エリザベスは店主を名乗る少年・メリオダスに出会う。それは、彼女と<七つの大罪>たち、そして世界の命運を一変させるとびきりの冒険の始まりであった――!
ネタバレ

kazunyanzu さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

侮りがたし日5|ョ∀・´)…感動スペクタクル大作!!!

◆原作コミック 全24話 原作未読
◆ジャンル アクション ファンタジー


絶大なる"魔力"を有し、人々から敬われ、時には恐れられる
存在(聖騎士)に守られた国「リオネス王国」
王国の王女『エリザベス』はたった一人国を離れ、ある物たちを探す旅に出ていた!
それは最強最悪の騎士団として恐れられ、国を裏切り、
全騎士団を敵に回した罪人たち―〈七つの大罪〉
たどり着いた一軒の酒場で、『エリザベス』は
店主を名乗る一人の少年『メリオダス』に出会う!
それは彼女と〈七つの大罪〉たち、そして世界の命運を一変させる
"とびきりの冒険"の始まりであった― (あらすじ公式サイト引用)


簡単な相関図_((Ф(・ω・`)コンナカンジカナァ!???w
スマホだと変なんなるかも´・ω・)ω・`):

          
           凸リオネス王国凸
     
       【§聖騎士§】(甲冑着た強いヒト達)
        (民衆から敬われ、恐れられる存在)
   探してる                 魔神の力を利用!?
    ↙                         ↘
 王国王女        ↑↑↑         〈∮魔神族∮〉(滅びた!?)
『エリザベス』      【VS】     不思議な魔力を有した怪物?
  探してる       ↓↓↓          ↗
(一緒に旅をする) ↘            魔神の力と関係あり!?
            【†七つの大罪†】       
         かつて王国を裏切った!? 者たち   
       『メリオダス』『ディアンヌ』『バン』
      『キング』『ゴーセル』他 +『ホーク』(豚)



14年10月~15年3月まで放送された王道アクションファンタジー
作品ですが私も毎週楽しみに視聴させて頂きました!!

というかここ最近のこの日曜5時枠作品は侮りがたしΣヾ(゚Д゚;)ノ

中々の超感動スペクタクル大作に仕上っており
私大変夢中になってしまいました(๑→‿ฺ←๑) ♪

どこか中世ヨーロッパの景観を描いた様な世界観に
魔力や、魔法などのファンタジー要素が加わって
コレぞ王道たる魅力の所以と言いますか…

そこに息をもつかせぬ熱いバトルアクションに
それぞれのキャラの想いが重なって
この戦いは負けられない!! 仲間を救う!!
大切な…大切な存在(ヒト)の為に…

そう…その幾多となくおとずれる感動秘話に胸熱必死!!!
なのであります。゚(゚´ω`゚)゚。


そんな中でも私がとても胸熱で大好きになったキャラ、及び彼(彼女)らの
エピソードをまじえてBEST③形式で書きしるしてみました!!



*・゚゚・*ヽ(*゚∀゚)ノ*【このキャラ良かったよ!! BEST③】*ヘ(゚∀゚*)ノ*・゚゚・*:

―第③位―

『ディアンヌ』

巨人族の『ディアンヌ』はその可愛らしい容姿と気取らない
真っ直ぐな性格が好印象✩
だけども、と、とても体が、その… で、でっかい(*/ω\*) でも~
それがまたいい味出していて、ホント、ピュア(嫉妬深いw)で魅力的な女のコ♡
CV:悠木碧さんの声、演技もピッタリでした♪
彼女の優しさとういか人柄の良さには多くの方が共鳴したことと思います!

なんといってもあの{netabare} 『キーラ』の弟さん(子ども)を助けるシーンは
とても胸熱、名シーンでお涙必死かと…。゚(゚´Д`゚)゚。!!

そこから、『キーラ』&『ハウザー』が聖騎士を裏切り
『ディアンヌ』を助ける胸熱展開も大変良い(*>ω<)bイイ!!
『キング』との幼い頃の素敵なエピソードも、微笑ましくとっても◎ {/netabare}



―第②位― 

『キング』

妖精王 ハーレクインこと『キング』はその純心で一途な性格と
見てくれが変化するギャップや、常に眠たげな表情で枕を抱いて宙に浮いている
癒し系な雰囲気もさることながら、やはりその優しすぎる彼の
魅力にコレまた夢中になった方も多勢いらっしゃる事かと思います!!

なんといっても、 {netabare} 疲弊した『ディアンヌ』を全魔力を使って防御の壁(バリア)
を使って『ヘルブラム』の攻撃から守るシーンは最高に胸熱(*>ω<)b
というか、か、カッコ良すぎます!!  コノコノォ(〃´Д`σ[キング]qw

『ディアンヌ』との…切ない…過去のエピソードや
旧友『ヘルブラム』とのエピソードも思わず涙の垂れ流し状態に。゚(゚´Д`゚)゚。{/netabare}




―第①位―

『ホーク』ちゃん (豚’`ゥ(*´(00)`)’`ゥ)

残飯処理騎士団 団長こと『ホーク』ちゃんは
本作のマスコット&イメージキャラクター トコトコトコ(((っ´(00)`)っ♪

残飯の量を増やしてもらうことに日々命をかけている―w

戦闘能力は皆無だが…
なぜか!?w 自分のコトを”最強の戦士”と思い込んでいるw
喋る豚として本作では基本ツッコミ担当!?
『バン』からはこれまたなぜか!? 師匠と仰がれる存在!!
何かと上から目線で口は粗いが全く持って憎めない、
愛嬌が抜群の魅力的キャラ♪*

ハラハラバトルの合間に終始、笑いをもたらしてくれる点も◎!!

というか、私途中まで、ずっと『ポーク』ちゃん(pork)かと思ってましたが…
『ホーク』ちゃんだったのですね(ノ∀`;)w

そんな『ホーク』ちゃんに、 {netabare}まさか…最終回前話にて
まさかの豚ちゃんにお涙頂戴させられてしまうコトになるとは…。゚(゚´Д`゚)゚。
紛れもなく彼(彼女?)は1人の勇者であり、真の漢の姿そのものでありました―!!!!

「あんな気のいい奴を… よくも… くそがーーーー!!」

途中『ホーク』と仲違いする展開になってしまっていた『バン』の
あの一言が全てを物語っていましたネ… (つω・`。){/netabare}



他キャラの皆さまも大変、個性的かつ魅力的でしたが(*>ω<)b
今回は私のツボによりハマった3名(匹)を抜粋しご紹介させて頂きました!!


ただ『団長』『バン』『ゴーセル』の3人はどこか…
不死身過ぎでw バトル中もなんだか、まだ全然本気出してない感が強く
特に『団長』&『バン』は常に余裕感(隙)が出ているというか…w
元より『バン』は不死身属性を持っているせいか…

大事なバトルシーンにてやや緊迫感が損なわれてしまった感が…・ω・*) ソーッ

ただその”強さの底を見せない”雰囲気というか…
そこが本作の特徴であり、興味を注がれる面白さであるゆえ
後々恐らく色々と解き明かされる上で大事な
要素の一つなのであろうと私は勝手に思っております✩

それでも最後の方の局面は ハラハラ|ョ゚Д゚。))))ドキドキで
最高の盛り上がりを見せてくれました!!

とにかく視聴前、私が期待していた以上に大いに楽しむことができました!!

終わり方も、続編に期待を含ませた見事な締め!!でしたので、
さらなる彼らの冒険の続きが描かれる日を心待ちにしたいと思いますヽ(*´∀`)ノ

投稿 : 2024/06/01
♥ : 52

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

この作品で経験した私の初めて・・・(//∇//)

この作品の原作は未読ですが、日曜夕方の5時半枠の作品という時点で視聴を決めていました。
この時間帯のアニメは健全に感動できる作品が多いのと、雨宮さん、悠木さん・・・といったお気に入りの声優さんが出演されるのも大きな後押しになっていたと思いますけれど・・・^^;

これは未だ人と人ならざるものの世界が分かたれてはいなかった古の物語・・・
国を護る聖騎士達は絶大なる魔力を有し、恐れ、敬われた・・・
この様な下りから物語が始まります・・・この下りは結構好きでした^^

物語の舞台はブリタリア・・・聖騎士が守る国なのですが、聖騎士が「聖戦」の開始に向けた準備を着々と進め、増加した騎士の横暴な振る舞いによって国は荒廃の一途を辿っていました。
それを憂い危機的状況であると感じた第3王女のエリザベスは、聖騎士を止め聖戦を回避できるのは10年前に国を追われた伝説の騎士団『七つの大罪』だけだと考え、彼らに助けを乞うため白を抜け出し七つの大罪を探しに旅立つのです。
こうしてエリザベスは、とある酒場に流れ着き・・・物語が動いていきます。

七つの大罪の団長・・・メリオダス
憤怒の罪を背負う彼が本作品の主人公なのですが、とにかく格好良過ぎです^^
体格は決して良くはないのですが、一度怒りを買うと一国を滅ぼしかねない・・・と噂されるほどの強者です。
特にエリザベスが絡んだ時・・・それもエリザベスを傷つける輩に対するメリオダスの強さは半端無かったですね^^;
時折、エリザベスに対して過度なスキンシップを強行していますが、それも彼なりの優しさの表れなんじゃないかと思います。
王女として城で暮らしている分には、心配も不自由もありません・・・
けれど、エリザベスにとって初めての旅は、7つの大罪と同行しているものの常に危険と隣り合わせで、時には傷つく仲間に涙したり・・・城での生活と真逆な環境に身を投じているんです・・・
張り詰めたら切れてしまう緊張の糸を緩めてあげようとするメリオダスの粋な計らい・・・として私はメリオダスとエリザベスの日常の掛け合いを見ていました^^

リオネス王国の三女・・・エリザベス
彼女には第1話から涙してしまいました(//∇//)
7つの大罪を探して聖戦を止める・・・その決意は立派ですが残念ながら決意だけでは目標は達成できないでしょう・・・
でも彼女の人柄が・・・周囲の人を巻き込んでいくのです^^
彼女の心からの感謝の意は、人の心を揺さぶります・・・
一緒に行くと決めたから、時には身を挺してでも自分の役割に対して真摯に向き合います・・・
例え倒れても前を見据えると約束したから・・・

そんなエリザベスの傍で主にツッコミを担当していた「残飯処理騎士団」の団長ホークちゃん・・・
ちょっとコミカルで、でもここぞという時に頑張る彼(彼女?)の存在は大きかったですね^^
メリオダスの友人でバンから師匠と呼ばれるホークちゃんでしたが、物語の終盤・・・「いいや、いるっ」と叫び立ち塞がったホークちゃんは、間違いなくヒーローだったと思います。
そしてその立ち振る舞いに私は涙が止まりませんでした(//∇//)
これまで色んな作品を見て涙してきましたが、豚さんに号泣したのは初めての経験です。
アニメって・・・奥が深いですね^^;

その他にも嫉妬の罪を背負ったディアンヌ(CV:悠木碧さん)や強欲の罪を背負ったバンなど7つの大罪のメンバーが徐々に判明していくのですが、今回の物語では全員が勢揃いするまでには至りませんでした。
最後に新たな展開の布石も見えましたし・・・次期に期待ですね^^

オープニングテーマ
「熱情のスペクトラム」by いきものがかり
「Seven Deadly Sins」by MAN WITH A MISSION
エンディングテーマ
「7 -seven-」by FLOW×GRANRODEO
「Season」by 瀧川ありさ
オープングの2曲はどちらもお気に入りです。エンディングは物語の余韻に浸っていてあまり覚えてなかったのですが友人がカラオケで歌っているのを聞いて気になったので、今度ちゃんと聞いてみようと思います^^

2クール全24話の作品でした・・・やはり日曜夕方5時半の作品に間違えはありませんね^^
冬アニメのベスト10には間違いなく入ると思いますが、お気に入りの棚に入れるかは少し悩みたいと思います^^
続編・・・すっごく期待しています♪

投稿 : 2024/06/01
♥ : 43
ネタバレ

雪だるま* さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

4話まで視聴(未評価)

◎ジャンル:ファンタジー、バトル
◎放送時期:2014年10月~

●原作:漫画(作・鈴木央、週刊少年マガジン連載)
●シリーズ構成:菅正太郎 ●監督:岡村天斎
●キャラクターデザイン:佐々木啓悟
●アニメーション制作:A-1 Pictures

■ストーリー■
絶大な魔力を有する「聖騎士」に守られた「リオネス帝国」。
王女・エリザベスは、10年前、国を裏切り多くの聖騎士を殺した「七つの大罪」を、とある理由で探す旅に出ていた。
その先で1人の少年と出会い、新たな冒険が始まることとなる。

■総評■
※原作未読。

(全話視聴後に更新予定)

■好きなキャラクター■

(全話視聴後に更新予定)

■各話感想■
【1話】
{netabare}エリザベスは聖騎士のクーデターを阻止するため、七つの大罪に助力を求めて旅に出た。
そして倒れた酒場で助けてくれた主人公の少年が七つの大罪の団長・メリオダスだった。
彼も他の七つの大罪を探す旅の途中らしく、情報を集めるため開いてた酒場(ホークの母の力で移動してるっぽい)の看板娘にエリザベスを誘い共に旅へ…という話。

今回襲ってきたオジサン騎士、メリオダスにやられて死んだかと思ったら生きてたw

メリオダスは何故容姿が昔のままなのか?
あの途切れた剣で何故あんなに強いのか?
その辺の秘密は後々明らかになるのかな。

まだ謎も多いが王道ファンタジー感は好きだしテンポも良かったので継続。
ホークが可愛いwCV久野ちゃん効果か^^{/netabare}

【2話】
{netabare}聖騎士ギルサンダーを怒らせたことが原因で名水(お酒の材料)を封じられた「バーニャ村」でのお話。

エリザベスの新コスチュームかわいい!
メリオダスはあの姿だから緩和されてるけど、ただのスケベ親父やw
前回からセクハラに全く気付かないエリザベスは天然どころじゃない^^;
さらにドジっ子属性もあるときたw彼女はこの先戦ったりするんだろうか?

聖騎士の剣は聖騎士にしか抜けないと言っていたけどメリオダスがすんなり抜いたし、やっぱり聖騎士と互角に戦えるのは七つの大罪だけってことなのか。

今んとこメリオダス無双って感じでイマイチ盛り上がりに欠けるけど、味方・敵共にキャラが増えると面白くなるかな。
あ、後半の槍投げ→槍投げ返しは迫力凄かった!{/netabare}

【3話】
{netabare}「白夢の森」にて七つの大罪の1人・ディアンヌが仲間入り→追ってきたギルサンダーとの戦闘回。

ギルサンダーは10年前 聖騎士長の父を殺されたことへの復讐、そして帝国最強の騎士と証明するために七つの大罪を狙ってるらしい。
けど、聖騎士長の死は七つの大罪の仕業じゃないっぽい。
回想から察するに、全ては誰かの謀略による濡れ衣かな?
メリオダスの最後の記憶『団長…すまない』の言葉の主が鍵か。

エリザベスは今回パンツ奪われてた…
どうやって気付かれないように奪ったんだろう^^;

ホークは今回も弄られ担当w
ディアンヌに火あぶりにされて暴れてるのがかわいそ可愛かった!

最後はメリオダスが負けたふりしてギルサンダーを出し抜き新情報入手。
ギルサンダー、早くもすごい小物感が…^^;

七つの大罪が聖騎士と互角にやりあえるのは、彼らも元は帝国騎士だからなのね^^{/netabare}

【4話】
{netabare}ギルサンダーから他の七つの大罪の在処を聞き出した一行。
バステ監獄に囚われてるバンを探しに出るのだが、思った以上に深手を負ったメリオダスは途中で倒れてしまい、近くの街で休むことになるも既にそこには聖騎士の手が伸びていて…という話。

メリオダス、今回も元気にエリザベスへのセクハラをはたらいてると思ったら…
やはり聖騎士の力は普通じゃないっぽい。

さらに治療のフリして毒薬を飲まされたメリオダス。
どう復活するのだろう…

それにしてもディアンヌちゃんの乙女心が可愛い。
大きい自分には団長のために戦うくらいしかできないと、それでも精一杯メリオダスに尽くそうとする健気さが良い。

今回もホークは癒しでしたw
スペアリブと肩ロースのくだりは笑わせてもらった。

メリオダスの生存を聞いて自ら脱獄したバン。
聖騎士見習いの剣を受けたと思いきや、散髪しただと!?w
杭で打たれた跡も消えてたけど、唯一消えてない傷が首に。
つけたのはメリオダスかな?{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 15

77.9 2 不気味で熱いなアニメランキング2位
屍鬼[シキ](TVアニメ動画)

2010年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (1460)
7811人が棚に入れました
人口1300人の小さな集落、外場村。外部とは国道1本でしかつながっていない隔絶された地ゆえ、いまだに土葬の習慣が残されていた。

ある日、村の山入地区で3人の死体が発見された。村で唯一の医者である尾崎敏夫はこの死を不審に思っていたが、事件性はないとされ、通常通りに取り扱われた。しかし、これ以降、村人が一人、また一人と死んでいくことに…。

声優・キャラクター
内山昂輝、大川透、興津和幸、戸松遥、悠木碧、高木渉、GACKT

woa さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

限界集落という場所

2010年放送。全22話+未放送話2話。

三方を死に囲まれた限界集落に謎めいた一家が越してくると同時に、死者がよみがえる「起き上がり」という超常現象が起きるという話。ただしこの際よみがえることが出来るのは、起き上がり=屍鬼に吸血された人間に限る。

尾崎敏夫と結城夏野という二人の主人公がいるが、「小説家」の室井がこの作品に命名したように屍鬼と屍鬼と人間の分かちがたさや神に見放された人間(カインがアベルを殺さざる得なかった理由)がテーマとしてあるため、村人視点の群像劇として見るべきだろう。

この群像劇を通して知るのは、死というのは誰しも平等であるが故に恐ろしく、死をもたらすことで死を超越している存在にはより酷い死を与えたいという普遍的な人間心理なのである。

屍鬼において田舎とは反知性主義、反近代的合理主義の象徴なのだ。

未放送話で描かれた周辺人物の心理描写は、集団狂気以上に現実味があるがゆえに、恐ろしいものである。子育てに加え、舅姑の面倒を見なければならない女性が子育てに絶望した時、家に火を放つというのはこのような世の中だからこそとても生々しいのだ。

それは例えば1話では清水恵視点で「旧弊」な村を脱し、都会に出ていく象徴として夏野が描かれ、彼自身は恵に与えられた主人公としての役割に対し障子を閉めるという形で拒絶の意思を表すのである。

夏野は結果的に屍鬼ではなくその亜種である人狼になることによって、物語の表舞台から退いてしまうし、尾崎は尾崎で自ら率いた屍鬼狩りの結果(屍鬼を駆除することが村を守ることになったのか否か)については何も言わないのである。

尾崎の為したことが必然的に集団狂気(サディズム)に繋がってしまう一方、屍鬼である国広律子が取った餓死いう形での「選択」の方が屍鬼という存在、誰かを殺さねば生きていけないというルールへの批判としては徹が彼女と運命を伴にしたことから分かるように根源的批判であり、有効なアンチテーゼだと思う。

(勿論、彼女自身と彼女の犠牲に供された人物が旧知の看護師だった特殊な事情はあるにせよ)

尾崎によって真実が明らかになって以降、米屋の夫妻が米袋を運ぶように屍鬼の亡骸を運び、血液に塗れた素手で、まかないのおにぎりを食べる描写などには尾崎の嘆いた田舎の思考停止具合がよく表れている。

彼らは伝染病の危険性に対してなんらかの反応も自主的には行わないのだから。

また田舎の人情味の深さに憧れて越してきた人物の末路が示すように、田舎という、特に限界集落のような場所では相互に助け合う=監視しあわなければ生活できないという前提条件がまず最初にあるのである。

たとえば井戸端会議で親しく話しているような間柄でも都会の老人ホームがあけば、生活の不安がある現状など脱して仲間には何も告げずそちらへ行ってしまう。老人ホームとは井戸端会議とは無関係な現象だからである

このような田舎のある意味ドライな人間関係が如実に現れるのも、単純に田舎には人が少ないからに過ぎない。都会ほどの人口密度があれば、ある一つの関係性がどこにつながるかをすべて把握をするのは難しいため、ビジネスライクな形式としての関係を維持するメリットは勝さるのだ。

そして都会に憧れる清水恵が笑われていたのは、彼女が自分たち自身の心情をあまりに滑稽かつ如実に反映する存在だったからに他ならない。

砂子と室井の小説観に関しての会話に表れていることがこうした村の現状から浮世離れしており、それが故に砂子は最後の詰めで失敗するのであるが、その失敗も含めて辰巳がいう滅びの美学なのであり、室井の小説は未完に終わるだ。

最終的に桐敷沙子も求めていたものは、20世紀をさまよい続けた人としての感情の行き着く場所、それは外界から閉鎖されている洋館に表れているような「家」であり、切敷の家族であったのだが、死=滅びの上に成り立つその場所や関係性は、結局のところ滅ぶべくして滅ぶのである。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
ネタバレ

ポール星人/小っさ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

のんのんびよりの後にコレ観るってのも、我ながら悪趣味

 20.5話と21.5話を後追いで視聴しました。
これって意図的に本編から外してたんですかね?
とすれば、作品の流れのテンポを崩さないようにと言う考えだったのでしょうから構成が巧いなと思いましたです。流石ベテラン監督と言うところでしょうか。
話の流れとしては本編で唐突に感じる部分を描いているので、あって然るべきエピソードですが、この作品の終盤の畳みかけるようなカタストロフィの一部としては流れを乱すから外したのかなと個人的には思いましたです。
個人的には20.5話はこの作品のエッセンスを凝縮した話としてとても良い出来だと思いました。
本編の一部として観るべきか、後追いで観るべきかに関しては私的にはですが後追いをお勧めしたいです。
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 予想より遥かに良かったです。
本放送の最終話を実は一部目にはしてたので、屍鬼達の凄惨な末路は知ってはいたんですけどね。
こんな複雑な余韻残すような作品とは思ってませんでした。
個人的には、ほんのちょっぴり遠藤周作の臭いする気がします。
まぁ私が無学であまり本読まないから、ちょっと宗教的な話となると遠藤周作思い出しちゃうだけなんでしょうけどねw
話しも複雑さは無いですし、全22話の中でも無駄回は無いんじゃないかなと。全体の作りもとてもバランスいいと思います。
もしかすると冷静に観ると話の筋として変なところ有るかもしれませんが、私は話にドップリ引き込まれて詮索する気はおきませんでした。

 正直、グロと言う点では近そうなテクノライズが観るのがツラくて視聴がナカナカ進まなかったのと違ってコレはサクサクと観れましたです。
テクノライズのイメージのグロと違って、コレのグロさはストレートに視覚に訴えますけど展開も含め頭で理解しやすいですし。

独自なキャラデザインで毛嫌いする方も居るかもしれませんが、コレだけの登場人物の多さですから、キャラの記号化と言う点で判り易いし結果的には良かったんではないかと。
この作品、絵を楽しむ作品では無いですしね。
まぁグロ描写とか凄惨な殺戮とかに関しては絵面的にも結構な代物でしたが(汗)

{netabare}
 終盤の室井と沙子の燃え落ちる教会での会話と恵の最期の一連の台詞がイイすよねぇ。
人を糧とする生き方しか出来なかった沙子も、神へ救いを求めるという結果的な信仰を持ち続けて生きてきた。でも、屍鬼となった時点で神の加護の範疇を逸脱する存在となってしまったのだから神は答えてくれないよ。
って会話の後で燃える教会の中での二人は死と得て救済されるのかなと思ってからのCパート。賛否両論でしょうね、コレw
私はむしろ残酷と言うか冷たい作品だなと思いましたです。
 恵も古い村社会から抜け出したいと願ってただけの女の子なのに起き上がりにされてしまって、しまいにゃあの殺され方ですしねぇ。
尾崎医師の村の存続の為に手段を選ばなかった姿と対象を為し、なんとも複雑な印象の作品だなと。
 この作品の他の方のレビュー読んでませんが、エルフェンリートでルーシーを気の毒に思えるタイプの人は好きな作品でょうが、嫌いな方はコレも受け入れがたい作品かなとは思います。なんだかんだ言っても屍鬼達は自分たちが生きる為とは言え人を散々殺してますしね。{/netabare}

私はこの作品好きですね。
グロ耐性のある方ならば、賛否は別として観といていいんじゃないかと。
ただ、え~この人もそうなっちゃうの?(汗)みたいな凄惨な作品なので、強くはお勧めは致しませんです。
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本放送時に数話目にしてはいたので、ダークな村社会作品と言うのは知ってたんですが忘れてました。
のんのんびよりで田舎暮らしの美しさにウットリしてたのに(汗)

キャラデザインがクセ強いので若干抵抗ありますけど、数話観た感じはホラーとしてイイ感じですね。
それと何故か出てくる犬が妙にカワイイw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13

★☆零華☆★ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

死に善も悪もない。

数年ぶりに再視聴、2週目です。
いやー名作でした!そして凄くメッセージ性が強い。
2週目なのに終始集中して楽しんで観れました。
ジャンルはゾンビホラーと思われがちですが、サイコホラー(人の狂気を描いているので)です。

ホラーアニメ大好きな私は、名があるホラーアニメは全制覇しています。
(といってもここ10年で、ホラーアニメ10作品くらいしかないですけどね。笑)
需要あまり無いのかもだけど、もっとやって欲しい。

近い内にホラーアニメベスト10作る予定なのですが
屍鬼は自称ホラーアニメ専門官である、私のベスト10、上位に入れますね。


【あらすじ】
舞台は外場村という小さい村落。
村の周囲はモミの木(卒塔婆に使う木)に囲まれ、外界との交流も少なく
正に田舎の中の田舎って所。
そんな村には起き上がり(死人が蘇る)という古くからの言い伝えがあった。
物語は、こんな死に囲まれた場所で始まります。


【感想】
貴方は人殺しを悪いと思いますか?殺してはいけないと思いますか?
大半の人は悪いこと、いけないことだと言うでしょう。
何故ですか?誰が決めたのですか?
それは昔からの暗黙のルール、人が定めた罪の意識、法律があるからです。
ですが屍鬼では、そんなモノ(ルール、罪、法律)を改めて再認識させてくれる作品でした。


屍鬼(起き上がり)達は皆に自我があり、生きています。(肉体は死んでいるが)
彼等は生きる為に人を襲います。血を吸わないと死んでしまうから。
忘れがちだとは思いますが、私達ヒト(人間)も何かの命を奪って生きています。
普段は調理され、お店に並んでいる商品として接しているから気づかない。
けれど確実に命を糧として、奪い、殺し、生きています。
そう、屍鬼達も生きる為に襲っているだけなのです。
私達と何が違うのでしょうか?いいえ同じです。
寧ろ、ヒト(人間)の方が、動物、野菜、果物など、ありとあらゆる命を奪っています。
時には、理由もなく殺すこともする。
彼等(屍鬼)を悪と定めるなら、私達ヒト(人間)はそれ以上の悪であるということです。


それに何かしらの理由や、屁理屈をこねているのはヒト(人間)だけです。
ニュースとかで絶滅危惧種が、というニュースが流れれば
やれ可哀想、酷いだの何だのと騒ぎます。
じゃそれがヒト(人間)に危害を加える存在だったら?
やれ殺せ、居なくなれ何だのと騒ぎます。
実に見ていて愚かだと感じます。


【結論】
生きること、生命を全うすることにおいて、善も悪もない。
あるのは弱肉強食、食物連鎖だけです。
立場が変われば、見方が変わる。
そんなことを屍鬼は伝えたかった。
屍鬼からのメッセージだと感じました。



【豆知識・余談】
ヴァンパイア(吸血鬼)のモデルとなったのは、ワラキア公ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)という
1431年頃に実在した人物です。
敵国、自国の民共に串刺しにしたことから、串刺し公という異名を持っています。

この方もそうですが、ヴァンパイアの設定によく使われる
日の光に弱いなどの設定は、先天性白皮症(アルビノ)という方達から取ったんだと思います。
髪の毛、皮膚、ありとあらゆる部分の色素がなく、真っ白です。
また紫外線を浴びると、焼け爛れてしまい。目もヴァンパイアみたく赤くなってしまう。
本当に珍しい奇病で希有です。


【PS:追記】
BGMのズンチャ!ズンチャ!ズンチャズンチャッチャッ!が凄く印象に残る(*´艸`*)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 36

80.8 3 不気味で熱いなアニメランキング3位
AKIRA アキラ(アニメ映画)

1988年7月16日
★★★★☆ 4.0 (1081)
5148人が棚に入れました
1988年7月、関東地区に新型爆弾が使用され、第三次世界大戦が勃発した。そして31年―東京湾上に構築されたメガロポリス=ネオ東京は、翌年にオリンピック開催を控え、かつての繁栄を取り戻しつつあった。2019年のある夜、ネオ東京郊外の閉鎖された高速道路に侵入するバイクの一団があった。健康優良不良少年、金田をリ一ダーとする職業訓練高校の生徒達だ。一団は無人のはずの路上で掌に26と記す奇妙な小男と遭遇、先頭を行く島鉄雄は転倒、負傷する。この26号=タカシは、アーミーと対立するゲリラが求める軍事機密=アキラとまちがわれ、軍事基地にあるラボ(研究所)から連れ出され、アーミーに追われていたのだ。あっけにとられる金田達の眼前に突如軍用ヘリが下降、26号と同じようなしわだらけの子供27号=マサルの乗るカプセルと大佐が降りて来て、26号と倒れた鉄雄をへリに収容し、飛び去った。

声優・キャラクター
岩田光央、佐々木望、小山茉美、石田太郎、玄田哲章、鈴木瑞穂、中村龍彦、伊藤福恵、神藤一弘

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

出来の悪い舎弟(友)のケツをを吹くのが兄貴の役目・・・。

大分以前に視聴したことはあったが、今般(大友克洋全集発売記念という事で某youtubeにて視聴できたのでもう一度観てみた(2021.12)。

やはり、前に観た時とはだいぶ印象が変わって観れた。
これはどんな作品にも言える事であると思うが、実際、繰り返し観ることのある作品はそれほど多くない(時間、機会、観る気等々の制約もあるしね)。

そういう意味では、今回は機会に恵まれたという事か。

作品については、思い出、内容、諸々語り始めるときりが無くなってしまうので、控え目にしておこうと思うが・・・、大友克洋の作品を観たのは友人から見せてもらった童夢だったろうか。その当時、友人は「面白い(スゴイ)漫画がある」と言っていたが、正直私にはわからなかった(感覚的な意味で)。
私は、いわゆるマンガ的な絵の方がお好みで、大友作品を観た印象は「スクリーントーンが多用してあるな〜、新しい、シャープな印象はあるが・・・なんか『白いな』」だったwww。
まったく、自身のセンスのなさにあきれるばかりだw。
その後、AKIRAも見せてもらったが、当時は斬新であった、大判で派手な装丁ばかりが記憶に残っていて、内容は難解で、きもいトッチャン坊やは出てくるし、やっぱり「白いし」で、あまり私の琴線には響かなかったものだ。

ただ、今となって振り返ってみれば、その後に続くクリエイターの多くに影響を与え、時代を変えた作家さんだったなあ、とは思うし、あの時代を知っているのは少々優越感もある。

さてこの作品、今見返して観ても80年代らしいアニメの雰囲気を随所に見る事が出来る。
何故だかわからないが、80年代アニメ作品の多くには共通した「雰囲気」があるような気がする。
長くアニメを嗜んできたきた皆さまには、なんとなくでも解っていただける点も多いのではないでしょうか。

もっとも、この「AKIRA」と言う作品は作成当時でも、その斬新で濃密な作成方法についてTVで特集が組まれたりもしていました。
一番わかりやすいのは、アニメの口の動きを実際の発声時の口の動きに合わせて動かすという、一般人にも理解しやすいポイントでしたっけね。
実際は、もっとすごい点がいくつもあったのですが、まぁ、あまり注目はされませんでしたね、わかりやすいとこばかり着目し煽るのは今も昔もTVの仕事ですわ。

で、この作品を見返して観ての簡単な感想を。

・物語自体はそれほど珍しいパターンではない。軍が怪しい研究をしていて〜、その兵器(今回は人間)が暴走して〜、ハイエンシエントなウエポンが出て来て〜、どっかいってしまってーend〜的な。

・ただ、物語のベースとなる世界観、表現方法、キャラ含めそれぞれのパーツ=大友克洋感は特徴的かつ今なお先進的。

・やはり、セル作画アニメとしては一つの到達点と言える。

・金田と鉄雄の関係はやっぱイイ。鉄雄の屈折ぶりも大人になった今なら理解ができる気がする、最後に金田に頼るのはまだガキの証拠だぜ、金田もガキだけどな・・・(コレ(アレ)が若さってもんだろうか、取り返しのつかなくなることもあるけどな)

・ただ、鉄雄の屈折~ちょっと力持った~タカビー~暴走の流れは、なんか昨今の「無敵の人」の暴走っぽくて、心がザワザワした。
自分の得た力にうぬぼれたとしても、今の私に許容できない。
アタマをゲンコツで殴ってやりたい気持ちになった。(金田に近いかw)

・金田の元気さ、怖いもんなしで舐めた感じがうらやましい。

・SFとしても世界観、造形美、エフェクトの表現が今でも通用しそうな、と言うより、今の作品も影響を残している。

・今も、昔もエセな宗教、信者は人智を越える事象をおらが神様だと錯覚し、祭り上げ、利用し、自滅する。

・女性があんましかわいくない。

・80年代のいい加減な感じを、よくぞあそこまで取り込んだものだ(主にチャラ女のセリフ)。
まぁ、男のテキトーさもそうかなw。

・ある意味、動き過ぎて気持ち悪いw

・画面からの情報量が多すぎて、疲れる・・・(歳食った証拠だなぁ(遠い目))

などなど。

まぁ、一個一個シーンを見ながらだと、ここがすごいんだよ、この表現がねぇとウンチクをたれたくなるような作品であることが今でもすごいんだけれどもねぇ。
そうだなぁ、昨今のCGをガンガン使った作品だと、すごくても、ウンチクを述べられるスピード感じゃないですよねぇ。
早すぎるというか、あん?CGならあたりまえっしょ的な「消費される感覚」が強いかなぁ。
セルの動きで、ヌルヌルもたもたしている所に、ウンチクを述べられる隙間が存在する気がしますなw。


この作品は、今となっては30年以上前の作品となります。
人も〇にますし、グロっぽいシーンもありますが、あの時代に最も挑戦的だった作品の一つでもあります。
一度は観ておいてもいい作品の一つでは?とは思います。
合う合わないはあるでしょうけどね。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 16

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

あにこれ初のリアルイベント開催を祝して・・・

内容については言わずもがなな名作ですのであえて触れずにおきます
なんせ小さい頃にBS2で放送されたのを観て、約10年間トラウマ化した作品なのでw
(コレと塚本晋也監督の『鉄男』は本当に怖かったというw奇しくもテツオ繋がりw)


この度、あにこれにとって記念すべき初のリアルイベントである「懐アニ上映会 AKIRA」に参加したので記念に一筆をと思いイベントの感想を軽く書いておきます


オイラ、1988年の公開当時は物心つかぬ赤ん坊だったので当然映画館で『AKIRA』を観る機会などはこれまで無いに等しく、この貴重な体験にあにこれのイベントとして参加出来たことはありがたく思います


イベントで上映されたのは、HDCAM SRマスターの映像に5.1chデジタルPCMサラウンドの音声、ということで多分ビクター(現ジェネオン)が家庭用ソフトに向けて作ったマスターフィルムじゃないかと予想します
(イベントでは世界に2本しか無いと仰ってました)
当然無圧縮状態なので、家庭用ソフトのソレとは比べ物にならないほど鮮明な映像
それに5.1chで体感するあの音響、これが一番凄かった!
キャストの吐息、効果音、劇伴、とにかく全ての迫力が我が家で観るとでは段違い!
その素晴らしい作画と相まってまるで2015年今日の新作映画を観ているような気分にすらなりましたねb
名作は色褪せないってこのことか!と


岩田光央さんのトークショーにも参加しました
オーディションには大友克洋先生に一目会いたい、という軽い気持ちで参加されたという岩田さん
一時期は事務所の方針で声優としての仕事が無かった岩田さんに『ここはグリーンウッド』や『アンジェリーク』での起用がされたのには、金田というキャラの人気が絡んでいたんじゃないか?と仰ってました


オーストラリアに奥さんとダイビング旅行に行った時、現地人に「日本人ならAKIRA知ってるか!?アレは凄い映画だぞ!」と本人とは知らずに英語で力説されたというエピソードは笑えましたw
ラジオCMの仕事をした時にイケメンディレクターに、行きつけの美容室の美容師に、それぞれAKIRAのファンだと言われたこともあるそうな


『トップ2』の時に山賀博之さんが日本中のクリエイターが会社の垣根を超えて一致団結したのは後にも先にも『AKIRA』だけ、と仰っていたとのこと
しかし当時のアニメアワードを『トトロ』に取られた時は悔しかったそうなw
(真逆の作品ですよねwその後『トトロ』を観て素直に感動したそうですw)
取り調べ中の金田の「アハwアハアハw」という変な笑い方とリュウ達に拘束され「聞くは一時の恥って言うでしょー?」の直後の「言わない?w」は岩田さんのアドリブだそうです


プレスコでは玄田徹章さんがキャスト達のリーダーシップを取られ、共演者の演技の中では佐々木望さんの鉄雄そのまんま感が特に印象的だったらしい


『宇宙戦艦ヤマト』ファンであるから『2199』のようなリメイクには感動したが、『AKIRA』はリメイクして欲しいとは思わない、現代でも十分通用するから、とも
ちなみに【ゲーム版は無かったことに】と言ってましたね(爆)
暴力的な描写が目立つ作品ですが自分の息子には観せたい?と質問されて、自分で観たいと言うまで放っておく、とお答えしてました


若い自分の演技を暫く直視出来ず、30年近くなってやっと普通に観れるようになってきた(笑)とも
ご家庭で観るときは【DVDではなく是非BDの画質で】ともオススメしておりましたね


会場と一緒に「さんを付けろよデコ助野郎!」「やっとモーターのコイルが暖まってキタぜ!」と言ってくれたのには興奮してドキドキしました
(それと「ピーキー過ぎてオマエにゃ無理だよ」もw)


この度は一生の思い出になるとても楽しい時間を過ごせましたこと、関係者様各位には深く感謝を致しますm(__)m
またこういった楽しい機会を「あにこれの」というカタチで過ごせたら嬉しく思います
2015/11/21 新宿テアトル
2015/12/5 川口スキップシティ

投稿 : 2024/06/01
♥ : 27
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

天才的なSF発想の塊です。人間鉄雄にも注目すべきでしょう。

 金田のバイクってバックができるんですよね。モーターと言っていながらエンジン音がするのでハイブリットなのでしょうか。まず、このバイクのデザインだけでもゾクゾクします。AKIRAという映画でもっとも印象的なこのバイクは金田という男の強さの象徴でした。

 孤児院らしきところで友達になった金田と鉄雄でした。金田の側からみた鉄雄は守るべき存在であり、大切に思っていたのだと思います。一方で金田は鉄雄の憧れでありコンプレックスでもありました。鉄雄の金田のバイクに対する執着を映画ではかなり描写していましたので、これが一つの主題だと思います。力を得た鉄雄は不幸な過去を持つが故に、歪んでいったのでしょう。
 それでもカオリという彼女に対しては最後まで愛情を持ち続けていました。最後にカオリが危険になったときの鉄雄の反応は、途中でカオリが酷い目にあっているときの反応と一緒でした。
 ただ、{netabare}最後鉄雄は自分でカオリは殺してしまいます。金田は鉄雄を助けようとして、鉄雄は金田に逃げろと叫びます。{/netabare}非常に切ない話でした。コミック版よりも鉄雄自体の行動原理はわかりやすかったともいえます。

 あとはアキラの他3人の超能力者たちの因縁を映像の中だけで済ませていたのは良かったと思います。

 人間の描き方では、ケイと金田の気持ちの通じ方がちょっと急だったかなあという気がしますし、ケイも能力を貰って活躍しますが、このケイについては映画版の脚本の弱いところだったと思います。

 全体的なストーリーは、退廃した東京で、超能力者の拉致とテロ、反政府デモが絡んで鉄雄が超能力に覚醒するストーリーですが、事件そのものは鉄雄が大暴れるだけです。

 ただ、物語の密度がすごくて2時間程度の映画なのに、一つの作品世界にどっぷりつかった疲労感が半端ではないです。
 
 本作はSF的な発想と表現がすごいわけです。ネオ東京という発想、その街の風景や夜景、バイクで荒廃した高速道路を走り鉄パイプで戦う、斜めに地下深く降りて行く巨大エレベーター、老人のような少年少女、アキラを閉じ込めていた地下のパイプがうねるドーム、子供部屋のような実験施設、攻撃衛星、レーザー兵器、飛ぶ攻撃兵器などどれをとってもSF的発想のオンパレードでした。いや、発想は過去にあったかもしれませんが、デザイン、映像化したところがすごかったです。

 今や日本のあらゆるSF映像に影響を与えていると言えるでしょう。例えばどう考えてもエヴァンゲリオンは影響されていますよね。ただ、仕方ないと思います。童夢で有名ですが、超能力で飛ばされた人間が壁にぶつかって窪んでひび割れる表現を初めて発想した人です。大友克洋はビジュアル化の天才としかいいようがありません。

 また、アニメの演出なのかもしれませんが、バイクに乗って鉄パイプをアスファルトにつけて火花を散らすシーン。翌年ブラックレインが公開されますがひょっとしたら影響を与えたのかもしれません。アメリカでのAKIRA人気を考えるとあり得るでしょう。

 こういう考察をするといくら文字を重ねても語り切れませんのでこれくらいにしますが、さすがのAKIRAとしか言いようがありません。

 ただ、初見でいきなりこのアニメだとSFリテラシーの関係でポカンとなる人もいるかもしれません。SF慣れしてない人は先に原作を読むことをお勧めします。

 なお、音楽も青森ねぷたまつりのラッセラーを使うのはすごかったですね。パーカッションはエスニックで。魂の中の呪術的というかプリミティブな何かを揺さぶられるようなすごい音楽でした。

 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

77.9 4 不気味で熱いなアニメランキング4位
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (732)
3566人が棚に入れました
エジプトでの宿敵DIOとの死闘から11年後。
1999年、空条承太郎は祖父ジョセフ・ジョースターの隠し子、東方仗助に会うため、
日本のM県S市、杜王町にやってきた。
しかし発見した仗助は承太郎と同じ特殊能力、「スタンド」を持っていた。
そして、承太郎の来訪を皮切りにまるで引かれ合うように、新たな「スタンド使い」達が動き始める。
「この町には何かがある…」
生まれ育った杜王町を守るため、仗助は立ちあがる――

声優・キャラクター
小野友樹、梶裕貴、高木渉、櫻井孝宏、小野大輔
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

グレートでスよ こいつは!

真紅のロマンホラー、長編漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第4部のアニメ化作品。

絵柄の緻密さというか、画風がこれまでのシリーズと比べて変わりましたが、これは原作準拠だと言えると思います。漫画原作を読んだ事のある私も、3部ラストあたりから4部オープニングにかけての画風の変化に少なからぬ違和感を感じた覚えが有ります。肉体の表現がより流線型を帯び、硬さが減りしなやかになった様な感じです。背景の描き方も前シリーズまでに良く見られたゴチャゴチャした(私は結構気に入っていた)暗い感じが少なくなりさっぱりとした印象があります。

上記も踏まえ、テレビ版ジョジョシリーズ全てを通して言える事ですが、これよりも完成度の高いアニメ化は望めなかったのではないかと思われる程に、この作品も素晴らしい出来栄えのアニメになっていたのではないでしょうか? ファントムブラッドのアニメ化を契機にジョジョ人気がさらに高まり、一躍メジャーなアニメ(漫画)タイトルになったのも頷けます。

ファンタジーでありながらリアルな設定を詰め込んだ、本当の様な嘘の話。独特の台詞回しやジョジョ立ちと呼び習わされているキャラの美しい?ポーズなどに魅了されたファンは古くからいたはず。でもそんな誰もが「忠実なアニメ化は困難では?」とする※風潮が有る中で、まさかのテレビアニメ化の下りとなりました。疑念は見事に裏切られました。

主題歌はシリーズ毎にかなり異なる色合いを忠実に再現している雰囲気ですし、エンディングテーマについても、最初私は製作スタッフが洋楽好きの荒木先生の趣向を汲んで選曲されたものかと思ってましたが、なんと荒木先生御自身が選ばれているそうで、作中世界観との親和性がばっちりで流石でした。

それまでのシリーズに登場したキャラクターを原作者の荒木先生は神話の中の人物みたいなものと評価している様ですが、この4部では一変して私達の身近にいそうな人たち、未完成、未成熟なキャラクターが多く登場します。主人公の仗助を始め、康一くんや億泰の様な親近感の湧いてくる様なキャラがその代表格です。一方でスタンド使いとしても、人格者としても、既に完成された趣きのある前シリーズの主人公承太郎をメインキャラの一人として登場させる事により、承太郎を通して彼等の未熟さに対して寛容さが持てる構図になっている点も巧みです。未熟なキャラ達の失敗を温かい目で見守る事が出来、彼等の成長に期待せずにはいられない気持ちにもさせられます。

3部に続き、個人的に好きなエピソード満載の4部なので、展開は熟知しているつもりですが毎週楽しみです。


以下は各話の感想。

8、9話 山岸由花子は恋をする
{netabare}
山岸由花子さんのエピソードはスティーヴン・キングのミザリーを思わせ、ジョジョ絵も相まってホラーっぽくも見えますが、康一くんと由花子さんを脳内で萌えキャラに変換して見てみると、ラブコメとかのギャグ描写に見えなくもないのが不思議。子供時代はそんな事考えた事もありませんでしたが‥。英単語カードのフレークとかアスパラの英語辞書巻きとかは昔でも大笑いしてた記憶があります。
{/netabare}
10話 イタリア料理を食べに行こう
{netabare}
トニオさんの回。やっぱりこのエピソードも億泰の反応とかトニオさんの薬用石鹸とかに笑かされました。ネタ知ってるのに‥。アニメ版では億泰の声(高木渉さんの声)も相まって漫画版以上に面白かったです。個人的に主人公トリオ(仗助、康一、億泰)の声はかなり良いキャスティングだと思ってます。

作中に登場したモッツァレッラチーズとトマトのサラダ(カプレーゼ)は手軽に作れる上にたまらなく美味しいです。少し大味になりますが、さっぱりとしたモッツァレッラチーズが無い場合、フライパンで炒って少し油を抜いた、半量以下の他のチーズを使っても美味かと‥。
{/netabare}
13話 やばいものを拾ったっス!
{netabare}
ストレスを受けると透明になってしまう赤ちゃん登場。こんな赤ちゃんがいたら大変だ! 奇妙な赤ちゃん相手に右往左往する凸凹コンビ、仗助&ジョセフの奔走振りにまたまた笑かさせて頂きました。

ギャグ色調の強い回である一方で、10年振りの発動? 「ハーミットパープル!」には痺れました。そして、命を賭した最終場面。やっぱりジョセフはジョセフでした。さすが人類を救った英雄、やる事が違います。そして続く台詞「かっこつけたかったんじゃよ、お前の前で」‥‥グレートですよ。このお人は‥。

見終わって。下らぬ事をいつも考えてしまうブリキ男は透明になるって何かの暗喩なのではと思ってしまいました。ストレス過多で怒っている人の思考って良く分からない。泣いてばかりの赤ちゃんも、どうして欲しいのか分かりづらい。そんな人たちのストレスが、いつまでも解消されないで、ずっとそのままだったら、スタンド使いじゃなくっても本当に透明な存在になってしまうんじゃないかなぁと思ってしまうのでした。

笑える所もあり、考えさせられる所もあり、心温まるエピソードでした。
{/netabare}
16話 「狩り(ハンティング)」に行こう!
{netabare}
今回の目的はハンティング。最強のスタンド使いである承太郎とそれに順ずる実力者、仗助を相手に回し、終始圧倒的優位な立場を維持し続けた"虫食い"の知恵と狡猾さは、原作連載時より私にとって脅威の的でした。

作中にも引用がありますが、「シートン動物記」は全人類が読んでも良いと思える程の良書です。人間を食ったかの様な狡知を働かす本編の"虫食い"に勝るとも劣らぬ驚異を垣間見る事が出来る事でしょう。野生動物の知恵と胆力、運動能力というものはまっこと優れたものです。白土三平先生の漫画も合わせてお読みになるとよろしいかと‥。

恐ろしくなる描写も多々有りましたが、ファンタジーを交えた知力と策略の絡み合い。良い回でした。
{/netabare}
18、19話 「重ちー」の収穫(ハーヴェスト)
{netabare}
重ちー登場のお話。小学生の頃とか、私も道端とかにビニールテープでくくって捨ててある小説とか漫画とか拾って古本屋に売って小遣い稼ぎしてました。雨ざらしになっていたり、燃えるゴミとして捨ててあったりする事もあって、色々と拾いました。自覚も無しに現在のリサイクル業やっている人と似たような事やっていたんですねぇ‥。拾ったもの大半は読んだ後売却して、手に入れたお金でプラモとか古本とか駄菓子につぎ込んで後には何も残りませんでしたが‥。当時の友達とかとも戦利品について自慢しあったり‥。まぁまぁ愉快な思い出です。

ハーヴェスト使える人はそういうの探すのも一興かと‥。冗談です(笑)
{/netabare}
20話 山岸由花子はシンデレラに憧れる
{netabare}
由花子さんと康一くん、そしてシンデレラに登場する魔法使いに憧れるエステティシャンの人、辻彩が登場するお話。

漫画読んだ時は子供だったので、恋愛なんてヨクワカラナクテ印象の薄いお話でしたが、今の目で見るとそれなりに理解。でも由花子さん、ちょっと反応がストレート過ぎやしないかい‥? 「私を見て‥」とか真顔で言える女性がいたら結構スゴい。ちょっと尊敬してしまうかも‥。

エステについては男なので、大人なのに全くワカラナイです。まぁ表層だけで人を好きになっちゃいけない事はよ~く分かります。見てくれがカッコいいからカワイイからと付き合い始めたり、極端なケースでは結婚してしまったりしたら十中八九後悔します。少年少女でも、大人の男女でも、相手の内面を見据えた上で一歩を踏み出す事が肝要と思われます。

康一くんはナイスガイなので、そういう所をちゃんと見ています。作中冒頭でも康一くんは由花子さんが浮かない表情をしていたのに気付いていましたし(この時点で両思いなんじゃ‥)、由花子さんが顔を失った時も、すぐに見抜いてしまいました。

そのままにしていても二人は仲良くなれたかも知れません。もしかしたら魔法使いなんかいらなかったのではとも思えましたが、それでも雨降って地が固まるとでも申しましょうか、由花子さんが顔を見られたくないのなら、自分の目を傷付けて見えなくしてしまっても良いとする康一くんの決意を聞いて、由花子さんは康一くんの内面をより深く知る事が出来たのではないでしょうか?

最後にはお互いの心を確かめ合えた様でヨカッタ、ヨカッタ‥。

めでたしめでたし。
{/netabare}
21話 吉良吉影は静かに暮らしたい その1
{netabare}
吉良吉影の一端の見える回。

重ちーのサンドイッチの入った紙袋と吉良の女性の手が入った紙袋が入れ替わってしまう。これもスタンド使い同士が引かれ合う必然? 重ちーに持ち去られた袋を取り戻そうと、学校に潜入し体育倉庫の跳び箱の中に隠れる吉良の姿は妙にシュールでした。ハンガーを使って跳び箱の中から袋を引き寄せようとする様も‥。‥でもこの一触即発の状況、真面目に想像するとかなり怖い。そして、ついに重ちーは見てしまいます。

吉良の肉体の一部を愛でるという行為、好きなものを何らかの形に残して保存しておく(写真とか彫刻とか)という考えは解るのですが、対象の一部(しかもヒトの生身)を所持して愉悦に浸るという感性は未だ私には理解出来ていません。(出来たらヤバイかも‥)手の形状を美しいと感じるのか、生体としての面は排除している様で、血や腐臭を吉良は気にしている様です。憶測の域を出ませんが、手に人格の様なものを与えて優しく話しかける吉良の姿は、人形遊びをしている女の子を思わせました。吉良は"手"に自分の分身を探しているのでしょうか?

吉良という人物が荒木先生による全くの創作物だとしたら、それはそれとして受け止められそうですが、妙に生々しく、リアリティがあるので、いつも理解に苦められる人物です。合理的思考の持ち主に見えて、先の※ネクロフィリア的な印象に加え、自分の爪の伸び率で運勢を測るなど占いじみた事もするので、全くを持って整合性の見出せない人物なのです。結局の所、いびつ過ぎて不可解な事、そこら辺が吉良の怖さの源かも知れないと思い至りながらも、ちょっとでも理解出来ればなぁと思ってしまうブリキ男なのでした。危険ですね‥深淵もまた等しくわたしを見返すのだから‥。

※:死体嗜好の事。
{/netabare}
22話 吉良吉影は静かに暮らしたい その2
{netabare}
金に意地汚く心変わりの激しい重ちーですが、両親の事を思い、邪悪を憎み、最後の最後まで諦めず、吉良を打倒する一手を打った姿には感動させられました。命を賭した重ちーのこの行動が無ければ、多分誰も吉良に辿り着く事は出来なかったと思います。それでも仮に、スタンド使い同士が引かれ合う不思議な因果によって、いつか吉良との邂逅を果たす者がいたとしても、吉良が"敵のスタンド使いがいる"という認識を既に得ている一方で、仗助達はまだ殺人鬼=スタンド使いという確たる認識を持っていないという図式になるので、情報面の優位性を手に入れた吉良はさらに危険な存在になっていた事でしょう。

それにしても血だらけの重ちーを見て、声を掛けただけで助けようともせず、キモチワルイと言って去っていった女子達、無情過ぎる。道端で亡くなっている子供を見ても平気でその脇を通り過ぎて行く某国の非情な人々を思い出してしまいました。

続く後半パート、重ちーの残した手がかりを"つて"に追跡を開始する承太郎(と多分スピードワゴン財団)。

靴屋の店主の「お客様の名前は全て覚えていますよ‥」は専門家にありがちな虚勢をリアリティのある台詞で表していて面白かったです。でも吉良という苗字を読めないのはあるまじき、もといあり得ない事、少しだけ不自然でした。ここであっさりと吉良の名が靴屋の店主の声になっていれば、後の困難は回避出来たかも知れないのに‥。

でも吉良と対峙した人が承太郎で良かった。殺人鬼との予期せぬ遭遇にも拘らず、冷静さを失わない鋭い観察のおかげで瞬殺を回避出来ました。

お話は刃の上を渡る様な緊張感を含んだまま次回に続きます。
{/netabare}
23、24話 シアーハートアタック
{netabare}
康一くんの高慢から生じた危機、吉良のスタンドの一部"シアーハートアタック"の攻撃から康一くんをかばう為に大怪我をしてしまった承太郎。

大人視点から見ると、後悔を通して急激に精神的成長を遂げていく康一くんがとても頼もしく見えました。仗助の様な一見して分かる強さは持っていないけれど、逆境に挫けない勇気と不屈さを持つジョジョ4部の真の主人公と言えるかも知れません。

子供の頃は康一さえいなければ承太郎がやっつけてくれたのに‥とか単純に疎ましく思っていましたが‥。(おばか)

後悔を乗り越えた康一くんの機転によって、一旦はシアーハートアタックを退けたものの、忘れた頃にやってきた誤算によって状況は一転、戦いの舞台は靴のムカデ屋から路地に移ります。

最後まで吉良に屈しない康一くんの態度、言動、とても立派でした。死を目の前にしてあの様に振舞える人間というのが英雄というものなのでしょう。

そして承太郎! 超人的タフさですね。このお人は‥。承太郎&スタープラチナはやっぱり最強? 満身創痍でありながら、無傷の吉良に対してスピードと"ザ・ワールド"で圧倒、キラークイーンの指先はスタープラチナに触れる事さえ出来ませんでした。スゲェ‥。

正真正銘のバトル回ですが、ジョジョは策略、言葉、心の揺らぎを欠かさず描いているので、ガッツで勝つバトルものとは一線を画した魅力があります。

それにしてもシアーハートアタックの頑丈さは異常でした。スタープラチナのラッシュ何回も食らってるのに本体の吉良は涼しい顔。でも康一くんのアクト3の攻撃で重くなった途端、急に本体に影響が出たのは昔も今もちょっと不自然に感じます。重さというならラッシュでも受けていたはずという理屈から‥。それこそ地面にめり込むほどの‥。

手負いの吉良がシンデレラで別人になる話も子供時代の自分の視点からもかなり強引感じられました。

色々と指摘したくなる所もありますが、今回ばかりは概ね無視。絶望転じて希望となる4部最高のバトル回だと評価したいです。
{/netabare}
25話 アトム・ハート・ファーザー
{netabare}
吉良の実家で手がかりを探す承太郎、仗助、億泰、康一くんの4人。またしても未熟な少年達の心の弱さが事態を悪化させてしまい、承太郎の冷静さに救われるという展開。

流石承太郎としか言いようが無い‥。相手の迂闊な言動を聴き逃さず、吉良の父親"吉廣(よしひろ)"のスタンドの弱点を即座に分析、ポラロイドカメラのシャッターを切るだけの動作で戦闘を終了させてしまいました。

スタープラチナが強いのはオマケみたいなもので(とてつもなく豪華なオマケですが)、こういった知性の閃きが承太郎の最大の魅力であると私は感じます。

3部の高校生時代から決して人のミスを責める様な事をしなかった承太郎ですが、4部でもそのスタイルは変わらず、むしろより洗練されており、無言の中に秘める彼なりの優しさ、時は不可逆という事をよくよく理解している大人としての冷静さを示す事で、少年達の導き手としての役割を完璧に演じ切っています。"神話の中の人"という荒木先生の評価にも納得‥。

後半は川尻浩作に成り代わった吉良のお話。外見が同じでも、もし身近な人の中身が入れ替わったとしたら、かなり早い段階で別人と気付けそうなものですが、妻のしのぶにはまだ正体が分かりません。(中身が別人なんて突拍子も無い事なので仕様が無い気もしますが)夫婦であるにも拘らず、それ程までに浩作としのぶは互いに無関心だったという事なのでしょうか‥そんな印象を受けました。

これについては子供の頃は全然深く考えませんでしたが、大人になると人の内面を読み取るのが少しは上手くなるので、そんな風に思った次第。
{/netabare}
26話 ジャンケン小僧がやって来る!
{netabare}
"ジャンケン小僧"大柳賢君のお話。

ジャンケンは運の要素が非常に強いゲームですが、人の表情を読み取るゲームでもあります。そんな所はポーカーとちょっと似ています。次の手がグーなのかチョキなのかパーなのか、人の表情から読み取るのは非常に困難で、それぞれの手に対する各人のイメージ、それに付随する表情の表れ方を結び付けなければ、手を読み取る事は不可能と言っても言い過ぎでは無いでしょう。

賢君は露伴先生の表情と手をたった2回の勝負の中で結び付けていたのかも知れません。確かに赤ちゃんとか子供は直感に優れます。動物とかも‥。こういう事は大人よりも柔軟な思考を持つ子供の方が圧倒的に上手く、延いては脳梁が太くコミュニケーション能力が優れているとされる女性、特に女の子の方が人の表情を読み取る能力に長けていて、ジャンケンが強い傾向にあると言えるのかも知れません。

冷静さを失うと人の感情は表情に表れるもの、それを読み取る術に長けた者がジャンケン名人となれるのでしょう。露伴先生が2連敗(本当は3連敗)したのも焦燥から生じた表情を賢君に読まれていたのが原因であるという可能性も十分にあり得ます。結局は大人の狡猾さで辛くも勝利を収めた露伴先生でしたが、もし相手がジャンケン少女だったら惨敗してたかも知れませんね(笑)

最後に運勢という言葉について、私はこの言葉に否定的な意見を持っていて、ガラスのシャワーとか風で張り付いた写真の為に車が避けて通る現象とかは昔も今も信じられません。ガラスも風も無機物で、知性や意志が無いので、人ごときの運勢にその運動が左右されるとは思えないのです。(超能力者とかフォースの使い手とかなら別ですが)

見所もありますが疑問も残るお話、今回も理屈が抜けている事には評価を与えられない唐変木なブリキ男のレビューでした。運勢について道理の通る説明が出来る人がいたら無知な私に教えて欲しい。
{/netabare}
27話 ぼくは宇宙人
{netabare}
ミキタカ登場回。登場シーンのあの起き上がり方、漫画版みたいに正面に近いアングルの方が不気味さがあってびっくりさせられたかも知れません。その後の展開は子供時代の私も仗助と億泰とほぼ同じ反応で笑い転げていた記憶があります。胃腸薬についてはトニオさんの薬用石鹸を越えるインパクトがありました(笑)

後半はチンチロリン。高校生って3万も持ってないと夏休み乗り切れないんだろうか? とか子供の頃思ってましたが、自分が高校生になってもまるで使わず‥。ブランド物に興味を示すミーハーな所とか、妙に金に執着のある所とか、仗助って意外と主人公らしくないキャラなのかも知れません。どちらかと言うと脇役タイプ?

私はゲーム好きなので3部のダービー回のグラスにコインを入れていくゲームとか、今回のチンチロリンとか、当時の友人達と大抵はおもちゃのチップとかで、まれに10円をチップ代わりにして真似してやっていました。まぁ、10円賭けでも100円以上の金額が動く事もありますので、強く希望する輩がいないとやりませんでしたが‥。まぁ、その経験から、賭け事は自分が負けても相手を負かしても後で気分が悪くなるものなのでやらぬ方が良いと子供時代に学ばせて頂いた次第。荒木先生に感謝ですね(笑)
{/netabare}
28話 ハイウェイ・スター その1
{netabare}
前半はチンチロリンの続き、後半は新手のスタンド使いのお話。

チンチロリンの結末については連載時にも拍子抜けで残念だった(悪態をついていた)のを覚えています。露伴先生がイカサマを見破る展開を期待していたのですが、最後は露伴先生が仗助に一方的にプレッシャーをかけるだけ‥。下らない横槍で物語終了。見も蓋も無い話でした。偶然を装った必然には心踊らされるものがありますが、作為的に組み立てられた必然にはリアリティがなく、夢中になる事が出来ないものです。イカサマの種が見えている上でのギャンブル描写というのも、やはり面白さに欠ける要因です。3部のダービー兄弟のお話もイカサマを含みますが、あちらは最終局面で種が明かされる点で大きく異なります。

後半について、矢によってスタンド使いが生まれるのは設定上の必然だとしても、結果生まれるスタンド使い達が吉良の父親が望む様に、吉影を追跡する者達に敵対するというのも、上記の様な作為的な必然に当たります。杜王町の多くの人達が吉良吉影という犯罪者を憎むならば、吉良の敵を増やす確率の方が高そうな気がするからです。

こういった次から次へと物語の本筋と脈絡無く敵が登場する、バトルもの特有の流れはちょっと残念ですね。
{/netabare}
29話 ハイウェイ・スター その2
{netabare}
仗助、「問題ない」連発してましたね(汗)子供の頃は漫画の所為か(こんなに言ってたっけ)あまり気にならなかったのですが、今の目で見ると台詞回しの工夫の無さとか違和感とかが目立ちます。あと仗助、通行人から掠め取った携帯電話、ちゃんと返すのかな‥? せめて二つも取らないで、一つ目をクレイジーダイヤモンドで直せば良いのに‥(汗)

他に疑問だったのは前回に出てたトンネル内の部屋、あれは一体何だったのか? 原作コミックが既に手元に無いので確認出来ないのが残念ですが、多分子供時代から今まで私は未だに理解出来ていません。ハイウェイスターの能力の一部として想像で補完するしかなさそうです。(対象が興味を示す光景を見せるとか)

吉良の親父様の口調もギャグっぽさが増してきてやだなぁ‥
{/netabare}
30話 猫は吉良吉影が好き
{netabare}
川尻家の話。ねこは可愛いし、草は美しいけど、猫草は気味が悪いですね。よくよく考えてみると4部ってミキタカとか猫草とかスタンドとは無関係に奇妙な生命体がいます。ファンタジーとは言えルールが不明瞭になると、世界観が曖昧になってしまう印象‥。

自分の父親が別人だったらという想像、父親があまり家にいなかった所為か、あるいは洋画の「ボディスナッチャー」とか「スペースインベーダー」とか、小学生時分に見た事があった所為か、私も抱いた事があります。悪夢が現実に取って代わる様な恐ろしさ、早人君の気持ちが何とな~く分かってしまいました。

最近酷評気味のレビューばかり書いていますが、ジョジョ原作読んでいた時もシアーハートアタックの回をピークに、以降あまり楽しんでいなかった様な‥(汗)
{/netabare}
31~34話 7月15日(木)1~4
{netabare}
今回から、原作では別々に描かれていた「鉄塔に住もう」「エニグマの少年」「チープトリック」のエピソードが同時進行するという構成。

「鉄塔に住もう」
最近レビュー内で度々引用させて頂いている「宇宙船とカヌー」という本がありますが、今回のお話に登場する鋼田一豊大(かねだいちとよひろ)は上記の本に登場する※ジョージ・ダイソンがモデルなのでは? とか思いました。でも鋼田一の場合、樹上じゃなくて鉄塔。小屋も建てずに生活している所に異常さが際立っています。吹きっさらしでは、もし雨とか雪とか降ったら危険かも知れません‥。杜王町のモデルって仙台市らしいので‥。

エネルギー保存の法則については、鉄塔がしっかりひしゃげているし、熱も加わっているはずだから、余剰のパワーにびっくり! という風にも見えますが、ファンタジーなのでそういうものだと見流すのが大人というもの‥でもクレイジー・ダイヤモンドのエネルギーを元あった場所に戻すって、能力の解釈が飛躍し過ぎてやしないかいとか思ったり‥細かい事はうっちゃって見るのが正解なのでしょう(笑)


1話完結のお話を、そのまま1話ずつ描くと冗長な印象になってしまうのでタイトルを「7月15日(木)」として、原作を再構成したのは英断であったと思います。展開のスピード感が増して最終回へと繋ぐ架け橋になるのではないでしょうか?

※:16歳で家を出て、19歳で樹上に家を建てたジョージはそこで生活していたそうです。ロープ以外の材料は全て拾い物から調達したという逞しさ。地上約30メートルの高さまで、梯子と枝を使ってスルスルと巧みに登り、降りる時はロープを使い、樹液で手を汚さずに、野生動物の様に昇り降り出来たそうです‥。さすがにお金は必要で、バイトや手伝いをしていて、自給自足までは達成出来ていなかった様ですが(笑)

「エニグマの少年」
宮本輝之輔、落ち着きのある言動と心の弱みに付け込む能力、小林玉美とか、3部のダービー兄弟を髣髴させる能力です。

原作でもそうだったと思いますが、突如敵として表れ、吉良吉廣に協力する動機が不明瞭だった様に思えます。それに杜王グランドホテルに行く過程にしても、承太郎の人柄とか能力とか聞かされていたら、ちょっと臆病気味のこの人の性格からして、勝ち目が薄いと悟って戦うのを嫌煙したはず‥。あるいは割と自信過剰な人なので勝てると思っていたとか‥? 吉廣に騙されていたのかも知れません(汗)

結局のところエニグマの少年、余計な事言っちゃって墓穴を掘る所とか、小者らしいキャラでした。ジョジョのキャラは戦いに負けると何故かゲームキャラの様にへぼくなってしまいます(性格とか身長とかが変わったり‥)。これがゲームバランスと言うものなのか(笑)

「チープトリック」
露伴先生、小難しい事しないでブリッジしてスパイダーウォークで横断歩道渡ったら面白かったのに‥(笑)

3部の時点では幽波紋と書いてスタンドと読んでいたので、スタンドに抱くイメージは「うしろの百太郎」みたいな守護霊のイメージでしたが、今回のお話で、スタンドと幽霊の明確な区別が付いた気がします。

個人の持つ力のイメージ、精神エネルギーとも表現されていたスタンドですが、それが「スタンドの魂」とどう違うのか、細かいニュアンスがよく分かりません。似たものだと思えるけれど、その様なルールに‥。多分後付設定だから仕方ないのだと思いますが‥。

後半は吉良のお話。早人君に正体がばれてしまいます。お風呂のシーンは恐過ぎました‥。でもこういう場面を見るとシアーハートアタックの回に吉良と康一君が対峙した時の場面を思い出し、吉良が1部や2部で登場したディオやカーズの様な超越的な存在とは一線を画し、人間的な弱さを多分に持った小者である事が明確になります。4部では主人公勢にもその様な弱さがありますが、絵柄が一新された事もさる事ながら、それで、それ以前のシリーズとは作風が変わった印象を受ける気がします。

かと言って3部から続投のキャラ、ジョセフ(ちょっとぼけてるけど)、承太郎などは依然として英雄然とした人物として描かれていますので、年若い主人公達と彼らの対比が面白いシリーズでもあります。

次回から物語はクライマックスへと進んでいきます。
{/netabare}
35・36話 アナザーワン バイツァ・ダスト 1、2
{netabare}
もし自分が小学生で、早人君と同じ立場だったら?と考えると怖さ倍増なお話です。

子供の頃、ホラー映画見た後とか、自分の親がエイリアンとかロボットだったらどうしようとか思って、怯えたまま眠った事ありましたが、過去のそんな体験の所為で、大人になった今でもある程度早人君に近い気持ちになって視聴する事が出来ました(汗)

早人君だったらという立場ですが、私だったら1度や2度バイツァ・ダストの説明を聞いても、俄かには信じられないだろうし、理解出来ないだろうという気がします。あまりにも現実離れした能力なので‥。でも早人君は賢い! わずか4周目で猫草を用いた打開策を思い付いてしまいました。勇気もあるし只者じゃない‥。

ゲームで言う所のリセットボタンに近い能力のバイツァ・ダストを吉良が身に付けたのは、彼が安心を求め続けた故の必然の結果とも取れますが、余りにも強大過ぎる能力なので、漫画を読んでいた当時は興ざめしてしまったのを思い出します。

続く5部以降、もっととんでもない能力が登場しますが、スケールが大き過ぎたり、突拍子が無さ過ぎたり、ジョジョらしい親しみやすさが感じられず、私は段々付いて行けなくなりました(汗)
{/netabare}
37・38話 クレイジー・D(ダイヤモンド)は砕けない1、2
{netabare}
バイツァ・ダストは前回のレビューでリセットボタンみたいな能力としましたが、発動タイミングを任意に選べない事を踏まえると無限にリスタートが出来るゲームという表現の方が近いですね。

1.発動=スタート:バイツァ・ダストを任意の人物に仕掛ける。
2.起爆=ゲームオーバー:追跡者を爆殺、運命が定められスタート直後に戻る。
3.解除=セーブ:既に起こった事実が確定して定められた運命は消える。

バイツァ・ダストの不明な点はスタート地点がどこに設定されているのか明確で無い事です。2回目以降の発動では7月16日の朝がスタート地点ですが、1回目の発動はいつ? 7月15日の夜、早人君が死んだ後に発現した能力なので、発動以前の過去にも戻れなければなりません。起爆方法も以後の方法とは異なります。

そうすると"発動=スタート"という解釈は間違っている様にも思えますが、37話冒頭で吉良は早人君に「お前をこれ以上この朝に戻らせるのは危ない事だ‥」と言ってバイツァ・ダストの解除を予告するシーンもあります。これはスタート地点を危難を乗り越えた後に定める事を示しているのだと思われます。以上を踏まえるとバイツァ・ダストは‥

1.起爆手段は一通りではない。
2.発動前の過去にも戻る事が出来る。
3.能力の解除、再発動によってスタート地点を任意に定める事が出来る。

という性質がある事が分かります。こんなのいんちきじゃないか(汗)と言いたい所ですが、1と2は吉良自身でコントロール出来ていないみたいなので、作中の様な吉良にとって危ういドラマが生まれるのでしょう。

猫草をキラークイーンの中に取り込むとか、空気弾が"キラークイーンの能力に固定された"という良く分からない理由で割れないとか、クレイジーDで体に刺さった破片を戻して体ごと移動とか、血の誘導弾とか、付け足しルール他、かなり強引なご都合展開が目立ちましたが、自身の傷を治せない仗助が主役(元々主役だけど)という事もあって非常に緊迫感のあるバトル回でもありました。

後半の家屋内にいる仗助の位置を知る吉良の空気弾攻撃の不気味さや、それを可視化するための煙幕作戦、意表をついたトリック、その種明かしのシーンなどは、因果関係を明確にしている、推理物の性質を帯びた心踊るシーンで、正にジョジョの魅力そのものと言えるのでは無いでしょうか?

でも早人君全編に渡って喋り過ぎとか、空気弾遅過ぎとか、億安も喋り過ぎ(笑)とか演出面にも気になる所が多々あって(漫画だとあまり気になりませんでしたが)時間の流れが一定のアニメで原作漫画の台詞がほぼそのまま再現されるというのは、荒木先生リスペクト故なのでしょうが、かなり不自然な光景に見えてしまいました(汗

ループ物の起源とされる物語はあれこれありますが、それよりかは、原作漫画の表紙裏のカバー部分-何巻のものかは失念(汗)-に荒木先生の好きなものベストというのがあって、それの中にテレビゲームのバイオハザードが入っていたのを思い出すブリキ男なのでした。
{/netabare}
39話 さよなら杜王町-黄金の心
{netabare}
吉良との戦いも決着し、杜王町は少しだけ平穏を取り戻しました。

「傷の痛みが深く表れてくるのはこれからなのだろう‥一体この痛みはどうやって癒せば良いのだろう。」康一君のモノローグにあるこの言葉は自分の一部とも言える家族や恋人、近しい友人を失った者にとって、繰り返し心を苛む疑問です。

もし心の欠けた部分を補ってくれるものがあるとしたら、それは同じく"人"か、緩慢な癒ししか与えてくれないけれど"時間"と答える事しか私には出来ません。でもいくら補ってもそれは決して元通りにはならず、つらい記憶は時折古傷が痛み出す様に疼く事があるものです‥。

吉良の行為は他者の平穏を奪い、自らの平穏を得るというもの、吉良のスタンド能力の第二、第三の爆弾はそれを自動的に行なうもの。この様な罪悪感も自覚も無く人殺しを遂行するものを見ると、私は戦争に使用されるミサイルだのリモコン爆撃機だのを思い出します。殺す者の罪の意識が明らかに薄い‥。吉良は天性の異常者なので、別の理由から罪の意識など感じていないのかも知れませんが、先に挙げたスタンドの性質はその様な吉良の冷酷さの象徴であるかの様にも私には思えました。

我々生物は他者の平穏を壊さなければ生きていけませんが、奪ったものの価値を見つめるという義務を怠った時、他者の痛みに鈍感になります。また命を殺める行為は当然の事として、心を傷付ける事も他者の平穏を壊す行為に当たると言う事も忘れてはなりません。

吉良の様な殺人鬼にも、心を苛む悪人にも出来る事なら会いたくないものですが、もしその様な輩と遭遇してしまったら、彼等の平穏を壊し自らの平穏を守り抜く覚悟は必要になるのかも知れません。それは戦いとも言うけれど、勇気とも言うもので、ジョセフ・ジョースターが黄金の精神と呼ぶものなのではないでしょうか?

町を見守る少女の霊は天に消えて、人々はまた元の生活へと戻っていく。

失われた命が戻ってくる事は決して無いけれど、人は支え合って生きていく。未来への希望が感じられる見事な最終回でした。

※:バイツァ・ダストの能力について、発動時に1時間くらい時間が蒔き戻るらしいです。原作熟知していると思っていましたが今回の早人君の台詞聞くまですっかり忘れてました(原作にそういう説明あったっけ?)
{/netabare}

自分がイタリア料理、延いては料理全般に興味を持つきっかけになった、トニオさんの回ほか珠玉のエピソード満載で綴る"ジョジョ"を創出された原作者の荒木飛呂彦先生にこの場を借りて心から感謝の気持ちを述べたいです。


※:自分の周りにいた友人は口を揃えてそんな事言ってましたが、世間的にはどうだったのだろう? 過去にOVA版あり、悪く無い出来だとは思いますが、個人的には原作漫画の雰囲気を再現しているとは言いがたい印象でした。


以下は本作品と殆ど関係無く、イタリア料理についての豆知識。
{netabare}
[豆知識1 にんにくは絶対に焦がしてはならない]
イタリア料理において、またその他の国の料理においても、にんにくを焦がす事は最大の禁忌です。日本では焦がしにんにくとか普通に有りますが、風味も味も台無しになっているので私は好きではありません。この点を厳守するだけで全てのイタリア料理が格段に美味しくなります。最弱の火でじっくりと柔らかくするのがコツです。

[豆知識2 トマトは少なくても実は美味しい]
400g入りのホールトマト缶はイタリアントマト6~7個分位の容量が有ります。トマトソースのパスタ一人前につきトマト1個で十分なので、単純計算すれば一缶で6~7人前作れる事になります。味についてもその方が生トマトで作った時のトマトパスタに近いものになります。それでも一缶全て使い切ってもそれはそれで美味しいので気分によって量の加減をすると良いと思います。

[豆知識3 茹で汁は捨てないで]
パスタをゆでた後の茹で汁は塩分たっぷりうまみたっぷりなので、これでそのまま肉などを煮て胡椒で味を調えれば立派なスープになります。ブイヨンや野菜などを加えてもとても美味しい。お好み焼きの溶き水、煮込みや麻婆豆腐を作る時、パンを捏ねる時、ピラフやパエリヤを炊く時(この場合は出来るだけ上澄みを使いましょう)など何にでも使えます。

[豆知識4 実はゆでられる。短時間で!]
パスタの茹で時間は大体7分以上になりますが、実はその時間を半分以下に短縮出来る裏ワザが有ります。パスタを予め1時間以上水に浸けとくと良いのです。そうしてからそのままそれを火にかけると、パスタの太さ、形状にもよりますが、沸騰してから1~2分くらいで茹で上がります。グニャグニャになるイメージを持たれる知れませんが、しっかりとアルデンテの食感になります。沸騰後1分過ぎたあたりでパスタの食感を確かめましょう。やはり茹で過ぎは良くないです。

{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 53

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ド変態の吉良吉影さん

今作は仙台をモデルにした杜王町が舞台。
しかも、この町の外に出ることは一切ないというジョジョの中ではちょっと変わった作品。
シリーズの中では個人的に一番好き。

ジョセフジョースターの隠し子東方仗助が主人公。過去から続くディオとの因縁はスタンド能力を覚醒させるか死んでしまうかの矢だけ。

最初はレッチリのような色々な敵が襲って来つつ、仲間を増やしていく展開
ラスボス吉良吉影とのバトルが特に後半のメインになっていく。
質問を質問で返すなあは秀逸な名言だと思う。汎用性高い?やっぱり使うところないです。
女性の手だけ手に入れて溺愛する変態ぶり。彼の際立った個性が面白い。
ラストのれろれろも衝撃しかない。森川智之の放つ勃起がたまらんぜよ。勃起、勃起と気合いが入っている。なんでこんなんで静かに生きいけると思ったん??覚悟しといてよね。

前半もそれはそれで面白い。モテモテな康一とメンヘラな由花子などなど。透明なベビーのお世話で金使いすぎ問題とか。イタリア料理も気が抜ける感じで好き。後半の吉良吉影メインで進みつつも時折、色んなスタンド使いを絡ませるの印象的。宇宙人は違うけど。
が、やはり兎に角キャラクターが濃い吉良吉影あってこそだと思う。しげちーもしれっと良い味出してたし。なんで死なせてしまったん?猫もしれっと活用されて笑う。


OP
Crazy Noisy Bizarre Town THE DU
Crazy Noisy Bizarre Town 〜EDM arrange Ver.〜 THE DU
chase batta
Great Days 青木カレン・ハセガワダイスケ
ED
I Want You Savage Garden
Great Days -Units Ver.- JO☆UNITED(富永TOMMY弘明、Coda、橋本仁、城田純、和田泰右、Jeity、ホシノ
Crazy Noisy Bizarre Townの作詞がこだまさおりさんか。EDでもよさげ。chaseは曲名通り仗助たちが杜王町に潜む殺人鬼・吉良吉影を追跡していく映像だけど、あんまし印象にない。Great Daysのほうがとても印象に残っている。歌詞もアニメにぴったり。36話以降は川尻浩作に成りすました吉良の髪型が変更、38話では効果音。36・37話では曲の終盤が使用され、吉良が「バイツァ・ダスト」で時間を巻き戻す能力を反映するかのような逆再生した映像を織り交ぜつつ再編集。なんか面白い演出だった。ロックな感じが好きでドラムのリズムがたまらん。
I Want Youの映像は登場人物たちのいる杜王町を映す。ストーリーの進行具合に合わせ登場キャラクター追加。作者のリクエストなのかな。作品にぴったりの歌詞とは言い難いけど、選曲は良き。


名言
このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?(東方仗助)
あばあちゃんのスージーQが結婚45年目にして怒りの頂点てやつだぜ(承太郎)
うちのおふくろ、気が強い女なんだけど…ジョセフ・ジョースターのことまだ愛してるみたいで思い出すと泣くんですよ。承太郎さんの顔、一発で孫だってバレますぜ(仗助)
人間は何かを破壊して生きているといってもいい生物だ。その中でおまえの能力はこの世のどんなことよりもやさしい」(承太郎が仗助に)
おまえは1枚のCDを聞き終わったら、キチッとケースにしまってから次のCDを聞くだろう?誰だってそーする。おれもそーする(形兆)
「なぜオレを助けたのか聞きてえ!!」「深い理由なんかねえよ。“なにも死ぬこたあねー”さっきはそー思っただけだよ」(億泰と仗助)
俺の『クレイジーダイヤモンド』は自分の傷は治せないんだよ。世の中…都合のいい事だらけじゃあねえってことだな」(仗助)
グレートだぜ…億泰!(仗助)
このまま『海を真っ二つに裂いて紅海を渡ったっつうモーゼ』のように…この軍隊を突破して本体のおめーをブッ叩いてやるっスよーっ!(仗助)
『ボヨヨン岬の行き方』…地元の漁師に「ボヨヨン岬」ってどこ?と聞くと、その人が親切なら船で連れてってくれる(作者解説)
お前も飲んでみろ!なんつーか気品に満ちた水っつーか、例えるとアルプスのハープを弾くお姫様が飲むような味っつーか、スゲーさわやかなんだよ…3日間砂漠をうろついて初めて飲む水っつーかよぉーっ(億泰)
ウンまああ~いっ!こっこれは~っ!この味わあぁ~っ!サッパリとしたチーズにトマトのジューシー部分がからみつくうまさだ!!チーズがトマトを!トマトがチーズを引き立てるッ!“ハーモニー”っつーんですかあ~、“味の調和”っつーんですか~っ!例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット!ウッチャンに対するナンチャン!高森朝雄の原作に対するちばてつやの“あしたのジョー”!」
スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う!(仗助)
仗助くん。わし…これから死ぬかも知れんから、その時は…君の母さんに…よろしく伝えといておくれよな…(ジョセフ)
この岸辺露伴が金やちやほやされるためにマンガを描いてると思っていたのかァーッ!!(露伴)
なぜ!30分なの…?どうして『30分』だけなのよォオオ~ッ!!(山岸由花子)
このケツ穴女ッ!顔を元どおりにしてッ!(由花子)
スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃…(仗助)
下痢腹かかえて公衆トイレ捜しているほうがズッと幸せ(康一)
公衆の面前で「赤っ恥のコキッ恥」をかかされたこの気分がおさまらん(吉良が康一に)
おまえはバカ丸出しだッ!あの世でおまえが来るのを楽しみに待っててやるぞッ!(広瀬康一)
(康一の靴下が裏返し)ええい!やはり気になる。ちゃんと履きなおせ…靴も…これで落ちつく(吉良吉影)
こいつらは、クソッたれ仗助に、あほの億泰…それにプッツン由花子だ…(岸辺露伴)
『少年ジャンプ』に描いてる漫画家のくせに子供を殴るなんてひどいヤツだ!(大柳 賢)
もっとも『むずかしい事』は!『自分を乗り越える事』さ!ぼくは自分の『運』をこれから乗り越える!!(岸辺露伴)
おまえは自分の「強運」だけを頼った。ぼくは自分の力で運を変えた…自分を乗り越えるってのはそーいうことなんだぜ(岸辺露伴)
わたしの名は『ヌ・ミキタカゾ・ンシ』といいます。年齢は216歳です(宇宙人)
“手”、治させろッ!コラア!(仗助、露伴に)
だが断る(岸辺露伴)この岸辺露伴が最も好きな事のひとつは 自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやる事だ…
スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~ッ(仗助)
ギャース!(猫草)
康一かもしれないという可能性が1%でもあるなら…!助けねえわけにはいかねえだろう。ワナだと分かっていてもよ~!(仗助)
噴上裕也、おめえ…なんか、ちょっぴりカッコイイじゃあねーかよ…(仗助)
質問を質問で返すなあーっ!!疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのか?わたしが“名前”はと聞いているんだッ!(吉良=川尻)
やった!間に合った!「運命」に勝った!(早人)
激しい「喜び」はいらない…そのかわり深い「絶望」もない…「植物の心」のような人生を…そんな「平穏な生活」こそわたしの目標だったのに…(吉良=川尻)
ぼくが触ればいいんだッ!」(早人)
おめ~のそのブッ飛んでる根性…まじに小学生かよ…小僧~!!(仗助)
億泰とは気が合うんだ…おめーにはわかんねーだろうが、こいつはオレの友達なんだ…(仗助)
やかましい!生きてんならよォ~さっさと目を醒ませ~コラァ~ッ!!(仗助)
フウウウウウウ〜〜〜わたしは…子供のころ レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」ってありますよね……あの絵…画集で見た時ですね
あの「モナリザ」がヒザのところで組んでいる「手」…あれ……初めて見た時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね………
ぼくも…パパが…帰ってから一緒に食べるよ…
“正義”の輝きの中にあるという『黄金の精神』を…わしは仗助の中に見たよ…(ジョセフ)


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
エジプトでの宿敵DIOとの死闘から11年後。1999年、空条承太郎は祖父ジョセフ・ジョースターの隠し子、東方仗助に会うため、日本のM県S市、杜王町にやってきた。しかし発見した仗助は承太郎と同じ特殊能力、「スタンド」を持っていた。そして、承太郎の来訪を皮切りにまるで引かれ合うように、新たな「スタンド使い」達が動き始める。「この町には何かがある…」生まれ育った杜王町を守るため、仗助は立ちあがる――。


1. 空条承太郎!東方仗助に会う!
1999年、4月―。東方と言う姓の人物探して日本のS市杜王町にやってきた空条承太郎は、駅前で不良に囲まれた一人の少年に遭遇する。亀を傷つける不良に対して、怒りもせず、頭を下げて謝るその少年の姿に不快感を抱く承太郎だったが、次の瞬間、衝撃の言葉を耳にする。その少年の名前は、東方仗助。彼こそ承太郎が探していた人物だった―。

2. 東方仗助!アンジェロに会う
杜王町に潜む凶悪殺人犯、アンジェロのスタンドを目撃した仗助は、その件を承太郎に報告する。何らかの方法で人間の体内に入ってくるタイプのスタンドだと考えた承太郎は、自分が行くまで物を一切口にするな、水場に近づくなと仗助に注意するが、まさにその時、コーヒーを介して仗助の母・朋子の体内にスタンドが侵入してしまう!仗助は慌てることなく、ある行動に出るのだが―。

3. 虹村兄弟 その1
アンジェロのスタンド能力は、謎の弓と矢によって引き出されたものだった。しかも、その弓と矢にはどうやらDIOも関わりがあるらしい―!アンジェロを倒したところでこの町の危機が去ったとは考えられない仗助と承太郎は、弓と矢の行方を追うことを決意する。それから数日後、仗助とともに帰宅をしていた康一は、仗助の家の前の空き家に人影を見かける―。

4. 虹村兄弟 その2
弓と矢で射られ瀕死の重傷を負った康一を助けるため、虹村邸の中へと歩を進める仗助。その彼を天井の闇の中から無数の光が攻撃してきた。仗助は間一髪でかわすも、攻撃を受けた億泰の顔面には無数の穴が!仗助は形兆のスタンドの正体を話せば傷を治してやると億泰に持ちかける。しかし、それでもしゃべろうとしない億泰に対して、仗助は驚きの行動に出る!

5. 虹村兄弟 その3
形兆を打ち破った仗助と康一。これ以上被害者が出ないよう、弓と矢を探して破壊することにした2人は、屋根裏部屋の奥でそれを発見する。だが、薄暗い部屋の奥からは何かをひっかくような音と奇妙な叫び声が!意を決した仗助が部屋の中へ飛び込もうとしたその瞬間、怪物のような手が康一の足をつかみ―。

6. 広瀬康一(エコーズ)
自転車で学校へ向かう途中、康一は袋に入った猫をひいてしまった。あまりの事に慌てふためく康一。そこへ小林玉美という男が現れる。事故にも関わらず、猫を埋葬してやるから金を出せと言い始める玉美。訳が分からずあっけにとられる康一を、猫をひき殺してタダで立ち去るのかと責め立てる。罪悪感にかられた康一の胸に錠前が現れて―!

7. 間田敏和(サーフィス)
玉美からぶどうヶ丘高校の間田敏和が、スタンド使いかもしれないと聞いた仗助と康一は、それが本当か学校内を調べ始める。間田のロッカーの中を調べる仗助だったが、その中には不思議な木製の人形が入っている以外、特に変わったところは見当たらない。しかしその時、人形は見る間に仗助そっくりの姿に変身し、二人に攻撃を仕掛けてきて―!

8. 山岸由花子は恋をする その1
同級生の山岸由花子から好きだと告白された康一。はじめは告白に嬉しさを隠せなかったが、突然キレたり、しおらしくなったりする由花子の姿に引いてしまう…。さらに翌日には、1日で編んだという手編みのセーターや手作り弁当などを用意してきて、康一はそんな彼女の好意に異常さを感じ始める。思い込みの激しい由花子の行動はますますエスカレート。ついにとんでもない行動に出る。

9. 山岸由花子は恋をする その2
どんどんエスカレートしていく監禁生活に耐えきれなくなった康一は脱出を試みる。由花子との会話からどこかに電話があると考えエコーズを使って周囲を捜索、公衆電話を発見した康一は仗助たちに連絡をとろうとするが、その考えは由花子に読まれていた。作戦を見透かされ絶望する康一。余裕の由花子は食材を仕入るため公衆電話へ向かうが、そこで予期せぬ出来事が起こる!

10. イタリア料理を食べに行こう
杜王町に新しくできたイタリア料理店にやってきた仗助と億泰。この店はお客からのオーダーに応えるのではなく、シェフのトニオが客を見て料理を決めるという変わった料理店だった。トニオは億泰を快適な気持ちにするための料理として、まず水を提供すると、一口飲んだ億泰はあまりのうまさに大感動!感動で次々と涙があふれてくるのだが、次第に体が異常な反応を見せ始めて―。

11. レッド・ホット・チリ・ペッパー その1
レッド・ホット・チリ・ペッパーがついに仗助の前に姿を現す。承太郎以上とも思えるパワーを発揮し、電気の通るところであればどこでも移動ができ、そしてそのパワーを持ちながら遠隔操作もできるということに仗助も改めて脅威を感じるのだった。翌日、承太郎に呼び出された仗助たちは、ある人物が杜王町に向かっていると知らされる―。

12. レッド・ホット・チリ・ペッパー その2
ジョセフ・ジョースターの命を狙うレッド・ホット・チリ・ペッパーを倒すべく、仗助たちは港に集まっていた。バッテリーのついたものでジョセフの船へと乗り込むであろうと考えた承太郎は、仗助と康一を港に残し、何かが飛び立ったら本体を探して撃退するよう命じる。ジョセフに対する複雑な気持ちを抱く仗助の前に、勝利を確信したレッド・ホット・チリ・ペッパーの本体が姿を現す!

13. やばいものを拾ったっス!
音石明を捕まえ、弓と矢を無事に回収することができた仗助たち。事件は無事解決し杜王町には平和が戻るが、仗助には大きな問題が―。未だに打ち解けられない父、ジョセフとの関係だ。遠くから母を見るだけという条件で自宅まで連れて行こうとするのだが、耳は遠いわ、勝手に違う方向へ向かうバスに乗ろうとするわと振りまわされてばかり。しかもジョセフは、近くにスタンド使いがいると言いだして―。

14. 漫画家のうちへ遊びに行こう その1
大人気漫画「ピンクダークの少年」の作者、岸辺露伴が杜王町に住んでいると知って自宅にサインをもらいに行く康一と間田。中から出てきた露伴はサインすることを快諾してくれただけでなく、仕事場を見学するよう家の中へと招き入れてくれて康一たちは大興奮!しかしリアリティを追及する露伴の度を超えた行動に、康一は次第に恐怖を覚えはじめ―。

15. 漫画家のうちへ遊びに行こう その2
いつの間にか露伴の自宅前にやってきていた康一がおそるおそる家の中に入ると、そこにはものすごいスピードで漫画を描く露伴の姿があった。昨日、康一の体験を読んだことで創作意欲が掻き立てられ、漫画を描きたくて描きたくてしょうがないというのだ。ヘブンズ・ドアーの能力でまたも康一を本に変えた露伴が、ページを破り取ろうとしたその時、玄関に予期せぬ人物が現れる!

16. 「狩り(ハンティング)」に行こう!
突然、承太郎からハンティングに誘われた仗助。その目的は、音石明によってスタンド能力を身に付けた「ネズミ」を狩りに行くというものだった。仗助たちが、ネズミが射られた用水路にやってくると、そこには煮こごりのような状態で固められた何十匹ものネズミの異様な死体が!自分たちが追っているネズミの仕業と考え排水溝の先へと進むと、それは農家の下水へとつながっていて…。

17. 岸辺露伴の冒険
康一と露伴は奇妙な光景を目にしていた。目の前に、地図にはない謎の小道があるのだ。この道がいったいどこへ続くのか…ふたりが進んでみるとそこは空き家や電気の切れた自動販売機、地図に載っていない曲がり角や道が広がっていた。不思議に思う康一たちだが、そこで更なる異変に気づく。何度やっても3度しか曲がっていないのに最初の場所に戻ってきてしまうのだ。露伴は何者かにスタンド攻撃を受けているのではと考えるのだが―。

18. 「重ちー」の収穫(ハーヴェスト) その1
貯金がなくなり頭を抱える仗助の前に1円玉を持った小型のスタンドが現れた。驚いた仗助がその後を追いかけていくと、そこには新たなスタンド使い、矢安宮重清(重ちー)の姿が!自身のスタンド、ハーヴェストを使って町中に落ちている小銭を集めているという重ちーの行動に感心した仗助は、ハーヴェストを使ったあることを思いつく。

19. 「重ちー」の収穫(ハーヴェスト) その2
500万円の当選宝くじを手に入れ銀行へ換金にやってきた仗助たちだったが、その当選くじが本当に仗助たちのものか行員に怪しまれてしまう。自分たちで買ったとしらを切る仗助だが、宝くじの裏には仗助たちとは別の人物の名前と電話番号が書いてあると指摘され、さらに行員はその番号に電話をかけ始めた!言い逃れできない状況に追い込まれた仗助は、ある行動に出るのだが―。

20. 山岸由花子はシンデレラに憧れる
康一にまったく振り向いてもらえないことに落ち込んでいた由花子は、とある店の前で足を止める。エステ「シンデレラ」、その店は普通のエステとは違い「幸福の顔」を作るという変わった店だった。エステティシャンの辻彩に「愛と出会う顔」にしてもらった由花子が町に出ると、さっそく康一に遭遇。しかも、いつもと様子が違ってとてもいい委囲気に…。これまでの人生で最高の幸せを感じる由花子だったが、その効果は30分しか持たず…。

21. 吉良吉影は静かに暮らしたい その1
行きかう人々で賑わう昼時の町中、吉良吉影は女子社員の誘いを断ってパン屋でサンドイッチを買うと公園で1人、ランチを楽しんでいた。そこへ通りかかった重ちーは誤って自分のサンドイッチと吉良のサンドイッチの袋を取り違えてしまう。それに気づき、血相を変え重ちーを追いかける吉良。実は、吉良の袋の中にはサンドイッチではない別のものが入っていて―。

22. 吉良吉影は静かに暮らしたい その2
吉良吉影は杜王町に潜んでいた殺人鬼であり、そしてスタンド使いでもあった。自身の秘密を知った重ちーを消そうとする吉良にハーヴェストで応戦する重ちーだったが、吉良のスタンド、キラークイーンの特殊能力により瀕死の重傷を負ってしまう。一瞬の隙をつき、吉良の前から逃げることに成功した重ちーはクレイジー・ダイヤモンドに傷を治してもらうため、そして吉良の脅威を知らせるため仗助の元へ向かう。

23. シアーハートアタック その1
ボタンの持ち主を探していた承太郎と康一は靴のムカデ屋で殺人鬼・吉良吉影のスタンドが放つ第2の爆弾「シアーハートアタック」に遭遇する。康一は逃げる吉良を追おうとするが、承太郎はそれよりも再び攻撃する隙を狙っているであろうシアーハートアタックを警戒するよう促す。まずは犯人を確保すべきと考えた康一は慎重な行動をとる承太郎に納得がいかない。しかし、次の瞬間、シアーハートアタックが康一に取り付き―!

24. シアーハートアタック その2
進化したエコーズACT3の能力でシアーハートアタックを重くし、なんとか難を逃れた康一だったが、そこへ殺人鬼・吉良吉影が姿を現す!ついに目の前に現れた殺人鬼に強い怒りを感じた康一はACT3で吉良に対抗するが、まったく歯が立たない。公衆の面前で恥をかかされたことに気がおさまらない吉良は、康一に容赦ない攻撃を浴びせるのだが…。

25. アトム・ハート・ファーザー
吉良吉影の手がかりを得るため、かつて吉良が住んでいた家を調査する仗助たち。それといった特徴のない吉良だが、承太郎は家の中の物から高い知能と能力を隠すため、わざと自分の長所や短所を人前に出さない男だと分析する。それと同時に、長年切った爪とそのデータを机の引き出しに保管しているのを発見。仗助たちは平凡な男の異常な趣味を目の当たりにし、不気味さを感じていた。すると、ふいに机上にあるポラロイドがひとりでにシャッターを切って…。

26. ジャンケン小僧がやって来る!
弓と矢を奪い仗助たちの元から逃走した吉良吉廣は、息子の吉影を守るため味方となるスタンド使いを探していた。矢に射抜きたいものを選べと告げると、矢はある人物を差す―。その頃、吉良吉影を追う露伴は杜王駅前で通勤中の会社員の写真を撮影していた。吉良が誰かとすり替わったのであればそいつとして通勤していると考えたのだ。吉良がその家族を消し去る前に見つけたいと願う露伴。そこに突然、少年がジャンケンをしてほしいと声をかけてきた。

27. ぼくは宇宙人
顔を奪い、川尻浩作として生活を始めた吉良だが、自分の本性を隠したまま生活をすることにいらだちを覚え始めていた。道行く女性を見ては自分の本性を打ち明けたい、その細い首を絞め殺してみたい…という衝動を懸命に抑える吉良。しかし、川尻の妻・しのぶの首筋を見た瞬間、殺人衝動に駆られて―!一方、仗助たちは杜王町の外れの麦畑でミステリー・サークルに倒れた不思議な男を発見する。

28. ハイウェイ・スター その1
チンチロリン勝負でイカサマがおこなわれていると感じた露伴は自身の小指にペンを突き立てる!次の勝負で仗助のイカサマを見破れなければ、200万円でクレイジー・ダイヤモンドに治療を頼んでやるが、イカサマの正体を見つけたときは、仗助の小指を貰うという露伴。さらに、取り立て人として玉美を呼び出し、心の錠前で、仗助がイカサマをしないという逃げ道も封じる!!

29. ハイウェイ・スター その2
露伴に窮地を救われた仗助は、謎の足跡型スタンドの本体を探す。どこまでも追ってくるスタンドをバイクで振り切り、康一に電話をしてエコーズで敵本体を探してもらおうと考えるが、仗助の匂いを覚えたスタンドは大まかな位置をつかんで仗助の傍へ現れるため、時速60キロ以下に減速する事すらできない。何とか携帯電話を入手し康一へ連絡を取ることに成功するが、気が付くと目の前には海が迫っていて―!

30. 猫は吉良吉影が好き
ある朝、しのぶから地下室で喉に大きな穴が開いたブリティッシュ・ブルー種の猫を見つけたという話を聞いた川尻。あの『矢』で射抜かれた猫なのではないかと考えた川尻が地下室へ様子を見に行くと、そこには死んだ猫の姿があった。猫に恐怖したしのぶがホウキを振り回した際に倒したビンの破片で喉を切って死んでしまったようだ。川尻は家の庭に猫を埋葬してやるのだが、翌日、猫を埋めた場所からは怪しげな植物が生えて…。

31. 7月15日(木) その1
行方不明となった吉良吉影の姿を探していた吉廣は川尻浩作を発見する。間違いなく息子の吉影だと確信した吉廣は川尻に近づこうとするが、その後ろには川尻をビデオで隠し撮りする早人の姿が!露伴や承太郎たちも吉影を捜索している中、このままでは見つかってしまうと考えた吉廣はある行動に出る。一方、登校中の仗助と億泰は道端で双眼鏡に変身した未起隆に遭遇。使われていない鉄塔を見てくれと言われ、双眼鏡を覗くと、そこには鉄塔の上で生活する男がいた!

32. 7月15日(木) その2
火事の修理と見積もりのため、露伴の家に一級建築士の乙雅三がやってきた。露伴は家の中に乙を招き入れるが、乙のとる奇怪な行動に興味を惹かれる。その頃、仗助は鉄塔に捕らわれてしまった未起隆を助けるため、再び鉄塔内で鋼田一と対峙していた。しかし、鉄塔の構造を熟知した鋼田一は仗助の攻撃を余裕でかわすと、今度は思いもよらぬ攻撃を仕掛けてきて…。

33. 7月15日(木) その3
乙雅三の背中を見たことで露伴はスタンドのチープ・トリックに取り憑かれてしまった。チープ・トリックへの攻撃はそのまま本体である露伴自身に返ってきてしまうため、むやみに攻撃することもできず、露伴は窮地に立たされる。そして、康一を探していた仗助と噴上の前にあらゆるものを紙にして閉じ込めるスタンド・エニグマを持つ少年が現れる。エニグマの少年がポケットから取り出した紙にはあるものが隠されていて…。

34. 7月15日(木) その4
チープ・トリックの攻撃に困り果て、自宅に康一を呼び出し助けを求める露伴だったが、スタンドが取り憑いた背中をどうしても見せようとしない露伴の姿に、康一はからかわれているのではないかと不信感を抱き、怒って帰ってしまう。チープ・トリックに屈辱を味わわされ怒りに震える露伴は、意を決して自宅を出て杜王グランドホテルに向かうことにする。しかし、それは背中を見られる危険性のある過酷なものだった!

35. アナザーワン バイツァ・ダスト その1
追い詰められた川尻浩作は、早人を手にかけてしまった。事故に見えるよう早人を殺害したが、露伴たちが早人の存在に気づき、明日にも川尻家を調べに来ようとしているという最悪のタイミングだった。このままでは、正体がバレる、捕まってしまう―!絶望の淵に追い詰められた川尻だったが、突如、吉廣の持っていた矢が川尻を突き刺して―!

36. アナザーワン バイツァ・ダスト その2
キラークイーン第3の能力「バイツァ・ダスト」によって岸辺露伴を爆破し、同じ朝に戻ってきたということを聞かされた早人は、キラ・ヨシカゲを倒せるのは露伴のような「能力を持つ者」だけだと思い、露伴を死なせずにキラのことを伝えようとする。しかし、一度起こった運命の結果は変わらない。早人が露伴に会わなくても露伴は爆発してしまう。キラ・ヨシカゲを倒せないのかと苦しむ早人の目の前に、さらなる人物が現れ…。

37. クレイジー・D(ダイアモンド)は砕けない その1
ストレイ・キャットの空気弾で吉良を殺そうとした早人の作戦は失敗に終わった。早人が何度も同じ朝を往復していると察した吉良は、露伴の他にも何人かを吹き飛ばしている、そしてこれ以上同じ朝に早人を戻らせることは危険だと思い、今回でバイツァ・ダストを解除しようと考える。「運命は」自分に味方してくれていると確信した吉良だったが、そこにある人物が現れた。

38. クレイジー・D(ダイアモンド)は砕けない その2
キラークイーンとストレイ・キャットの攻撃によって追い詰められた仗助と早人は接近戦に持ち込むため近くの民家に逃げ込むが、そこへ空気弾が壁をすり抜け入り込んできた。灰皿の灰をまき、空気弾を視認できる状況にすることでかわそうとする仗助だったが、なぜか空気弾は仗助を追いかけてくる!外から見えるはずがないのに確実に仗助を狙っている空気弾に仗助と早人は動揺する―。

39. さよなら杜王町 黄金の心
ついに仗助たちは吉良を追い詰めた!承太郎たちも集まり、絶望の淵に立たされた吉良だったが、それでもなお、助けにやってきた救急隊員の女性にバイツァ・ダストを仕掛け、時間を吹き飛ばそうする。自ら女性に自分の正体を明かすことでバイツァ・ダストの発動条件を満たした吉良は、キラークイーンのスイッチを押す!杜王町の未来をかけた最終決戦、いよいよ決着―!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

思いっきりやってくれたアニメスタッフに感謝

2016年4月~2016年12月放送のTVアニメ。全39話。

放送前に書いた通り、思いっきりやっちゃって欲しいと思っていたら、本当に思い切ったやり方になってました!

脚本は常に安定していて、スムーズに尺に収め原作で描かれなかった部分を補完するよう、細かな部分がカット・改変されています。
それでも尺の振り分けには苦労したようで、思いきった手法を取ったのが31話から34話。本編に関係無いけど面白いシーンがなくなっていたりするのはかなり勿体無いですが、一つの方法として面白いと思います。

原作でも感じていた事ですが、第4部は杜王町の至る所で一見繋がりの無い事件が起こりその全てがテーマを様々な角度から浮き彫りにしていく構造。ラスボスが登場してからの盛り上がりは本当に見事です。

改変に関してはキャラクター同士の関係性の補強などは特によく出来ていて、仗助と億泰と康一の仲の良さ、康一と由花子の恋の発展はかなりわかりやすくなっています。
キャラクターそのものも原作後半準拠で綺麗に整えられて、仗助は原作4部中盤以降の親しみやすい人物像に、承太郎は6部からの設定を反映して大人の貫禄をより強く感じる落ち着いた雰囲気に統一。細かな印象の変化は数えきれず、原作との比較が実に楽しかったです。

個人的にはBGM作曲者が3部と同じで、地続き感が良いなと思う反面、雰囲気が似てしまう時があってちょっと勿体無いと思いました。音楽の使い方も、ホラーのシーンではもう少し無音の部分を増やして欲しかったですね。

作画はアニメーターの個性がよく出ていて楽しかったですが不安定な時もあり、連続3クールはかなり大変だったようでした。本当にお疲れ様でした。


【ヴィジュアル面・演出面】
{netabare}
西位輝実さんのキャラクターデザイン原作に比べ大分シンプルに仕上がっていて賛否ありましたが、私はイメージが固定しすぎない良い絵柄だと思います。4部のエピソードはシリアスからギャグ、気味悪いものから感動するものまで振り幅の大きさが魅力ですが、キャラデザもまた、シリアスにもコミカルにも、濃くもすっきりも見せられる自由度の高さが素晴らしい。
描く人・描き方によって個性的に仕上がり、西位さん自身もBDジャケットのようにしっかり描き込んだ濃い絵も仕上げたりしていて、個人的には非常に楽しく堪能させていただきました。
欲を言えば、第一弾PVやOPのような柔らかい動きをもっと見たかったかも。表情の変化は濃さも残しつつ、優しい印象のシーンが増えましたね。

おなじみの効果音表記は、康一のスタンド演出を目立たせるために全体的に控えめに。
色変えはさらにビビッドになり、テクスチャは漫画のカケアミやスクリーントーンのようなイメージの模様が多く使われています。

演出では画面切り替えにかなり凝っていて、1エピソードをコンパクトにまとめなければならない時、場面を印象強く繋げる際に多用されています。このやり方、効果的かつ挑戦的で新鮮でした。{/netabare}


【4部のテーマは普遍的】
{netabare}
原作で一貫している「日常の中の非日常」は時代が変わっても共通する根源的かつ身近な問題です。
日常は守らなければ続かないもの。それは例えば「プリキュア」などにも共通する要素があると思うのですが、プリキュアも10年以上続いているように、ジョジョ以前からも似たテーマを扱った作品があったように、古びないテーマであると感じています。

アニメの演出面でもそのことに非常に気を配っていると感じました。平和なラジオに載せて吉良の日常(切り取った手)を映すのはその筆頭ですし、悲惨な虹村家のエピソードのラストに明るくちょっとおバカな億泰を持ってくるなんて、日常に引き戻しコミカルに物語を閉じるとても効果的な演出です。
だから実は、トニオさん回みたいな日常回がとても力が入っているんですよね。エピソードカットはせずシーンのカットのみできつい尺に合わせたのは大変だったと思いますし、尺がぎりぎりで勿体無いエピソードもありましたが、日常回を削ってしまうと4部の魅力は少なからず損なわれてしまいますから良い判断だったと思います。

荒木先生の杜王町の描き方はご自身の故郷がモデルですからリアルな部分や身近な感覚がありますね。
アニメでも丹念な町づくりをしつつ、特徴的な画面作りによって非現実感が強くなっています。

リアリティを感じない色使い、閉塞感を感じるような背景は独特。遠くに映る海と山が外界との繋がりを視覚的に阻む杜王町は、劇の舞台のように、幕を閉じるまで出られない「箱庭」です。ディレクターの津田さんが雑誌で「箱庭感を出したい」という内容の発言をされていたと思います。
最終回で承太郎とジョセフが船で杜王町を出るまで、町から生きた人間が出る描写がないのは象徴的でした。

ネットで視聴感想を見ていると、形兆と父親の関係を現実の様々な問題に照らし合わせている人が多かったり、それ以外でも、誰もが自由に感情移入できる間口の広さを本作では改めて実感しました。
誇張こそされていても、荒木先生の人間描写には身近さを感じ、憎たらしいのに愛されるキャラクターもいれば、批判されるべきなのにその境遇に涙せざるを得ないキャラクターもいる。品行方正ないい人は杜王町に存在しません。主人公の仗助だってお金が絡むとちょっとゲスになりますしw
善悪で割り切れない人間がこんなに愛される描かれ方になったのは4部からじゃないかと思います。一度顔を合わせ内面を知れば、彼らは同じ町に住む隣人となりますが、一概に「味方」とは言えないのが面倒で面白い所ですね。

例外はアンジェロ、音石、吉良といった自分のために何も知らない人を踏みにじる存在です。彼らは家族や友人といった「大切なもの」の描写が一切無い。
自分だけが良ければそれで良いという者とは共に生きられないことは、鼠の一件で承太郎が語ったとおりですが、そんな存在が町のどこにいるのか解らないというのは現実でも遭遇する恐怖です。

顔の見えない隣人の恐怖はむしろ原作執筆当時よりも作中の1999年よりも、情報化社会である現代ほうがよほど切迫した問題となっているように感じます。
当時のジャンプでこのテーマを掲げた荒木先生は凄いなと思いますが、アニメスタッフは4部をよく理解し、時代性も加味して若干のアレンジを加えてストーリーと映像に落とし込んでいます。
だからこそ古い作品が原作でありながら斬新で、改変していながら根底に流れるテーマ性が変わらない。
原作を尊重しながら、アニメスタッフの個性と一貫した方向性が見出せる、素晴らしい作品に仕上がっていると感じます。{/netabare}
(2016.12.31)


【以下初回感想】
{netabare}
初回だけ感想を書こうかと思います。

全体的なイメージはぴったりでした。脚本の細かな変更点、演出意図などは合理的で、今後の方向性も感じられました。
ただ、色彩がきつすぎるとは思います。4部の奇妙さは色で出すということですかね?日常描写が多いから、むしろ地味になるかなって思ってた時期が私にもありましたw
ビジュアル面ではソエジマヤスフミさんがクレジットされてないのが気になるところですが…

作画は予想通り大変そうでしたが、自分としてはそういうところまで含めてなんだか好きです。表情の豊かさ柔らかさを大切にするというスタッフの意思は受け取った!
{netabare}
仗助は原作序盤のヤンキーっぽさはナシ。小野友樹さんの演技もとても良かったです。
PVでも感じましたが、原作と違い最初から「見た目はアレだけど普通の高校生」のイメージで来ましたね。年頃の男子らしく小さな意地を張るシーンもあり、これから成長するキャラクターとして描写していると感じます。
完璧系だった承太郎との差別化も出来ますし、良い方向性だと思います。
康一との会話で「不穏なことに首を突っ込む気は無い」「自分の今の生活にそれなりに満足している」という趣旨のセリフが追加されていて、ここから「守ろうとしなければ平穏は続かない」と気付く流れがより自然になるだろうなと感じました。小林靖子さんやっぱりベテランなだけあって上手ですよね。
{/netabare}
続きが楽しみです。好きな方向性なのでこのまま行って欲しいな。
(2016.4.4)
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 31

85.0 5 不気味で熱いなアニメランキング5位
呪術廻戦(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (846)
3325人が棚に入れました
少年は戦う――「正しい死」を求めて。辛酸・後悔・恥辱。人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む。呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く。そして、呪いは呪いでしか祓えない。驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁はごく普通の高校生活を送っていたが、ある日“呪い"に襲われた仲間を救うため、特級呪物“両面宿儺の指"を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう。呪いである“両面宿儺"と肉体を共有することとなった虎杖は、最強の呪術師である五条悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり……。呪いを祓うべく呪いとなった少年の後戻りのできない、壮絶な物語が廻りだす――。

声優・キャラクター
榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、小松未可子、内山昂輝、関智一、津田健次郎、中村悠一、諏訪部順一

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

呪術ぱいせん

ハリーポッター風に例えるとヴォルデモートのような存在の指を食べるはめになってしまった少年の話らしいと聞いて
普通、指食べようとはならんだろ。

よくある身体能力お化けなのに、運動部入らないマン。
よくある少年漫画的な作品という感じだけど、そういうシンプルなものが意外と良いもの。完全懲悪みたいなところもある。ショッカーと戦う初代仮面ライダー的な?
ただ、凄く流行る作品でもないような。どう?
強くなって自分の力も制御していくんでしょうね。仲間の力も借りて。
五条悟だけ規格外すぎんか。なんぞ?
タッパとケツのでかい女好きに対する想いは笑う。勝手に同じ中学卒業扱いて笑。


OP
廻廻奇譚 Eve
VIVID VICE Who-ya Extended
ED
LOST IN PARADISE feat. AKLO ALI
give it back Cö shu Nie
挿入歌
REMEMBER Masato
前半クールのOP・EDが好きだった。


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
少年は戦う--「正しい死」を求めて 辛酸・後悔・恥辱 人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む 呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導くそして、呪いは呪いでしか祓えない 驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁はごく普通の高校生活を送っていたが、ある日“呪い”に襲われた学友を救うため、特級呪物“両面宿儺の指”を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう 呪いである“両面宿儺”と肉体を共有することとなった虎杖は、最強の呪術師である五条 悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり..... 呪いを祓うべく呪いを宿した少年の後戻りのできない、壮絶な物語が廻りだす- 


1. 両面宿儺
並みはずれた身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁。祖父が死んだ夜に呪術高専一年の伏黒 恵と出会う。彼は、虎杖の持つ“呪物”を回収しに来たというが、ちょうどその“呪物”は虎杖の先輩らによって封印が解かれていた。“呪物”が引き寄せた、呪いの化け物に襲われる先輩たち。そこに虎杖と伏黒が駆けつける。

2. 自分のために
見知らぬ部屋で目を覚ます虎杖は、目の前にいた呪術高専の教師・五条 悟から自分の“秘匿死刑”が決定したと告げられる。五条は、虎杖に二つの選択肢を示す。今すぐ死刑になるか、『両面宿儺の指』20本を探し出し、すべて取り込んだのちに死ぬか--。

3. 鉄骨娘
3人目の一年生、釘崎野薔薇を迎えに行く虎杖と伏黒、五条。そのままとある廃ビルへ向かい、五条は虎杖と釘崎に、廃ビル内に潜む呪霊を祓ってくるよう課題を与える。ビル内、二手に分かれて呪霊を探し始める虎杖と釘崎は、子どもを人質にとる狡猾な呪霊と対峙する。

4. 呪胎戴天
少年院で起きた緊急事態に、虎杖、伏黒、釘崎が派遣される。任務は、いずれ特級呪霊に成り得る呪胎とともに取り残された生存者の確認と救出。乗り込んだ虎杖たちは、無慈悲な現実に直面する。直後釘崎の姿が消え、残された虎杖と伏黒の隣には、特級呪霊の姿があった。

5. 呪胎戴天-弐-
少年院の外に退避した伏黒は、特級呪霊の死に気付く。次の瞬間、横に両面宿儺が現れ、虎杖の体から心臓を抜き取り、人質にする。このままでは虎杖の意識が戻っても死んでしまうと戦い始める伏黒だったが、格の違いを痛感する。

6. 雨後
虎杖の死に悔しさをかみしめる五条。仲間の死に沈み込む伏黒・野薔薇は強くなるために2年生達と特訓を始める。一方、夏油達も動き出す。そんな中、死んだはずの虎杖は--。

7. 急襲
移動中だった五条は、特級呪霊・漏瑚の奇襲を受ける。攻撃を重ねても決して当たらない--漏瑚は、すぐに五条の強さを目の当たりにする。一瞬で高専に戻り、修行中の虎杖まで連れてくる余裕の五条に、漏瑚は怒りを爆発させ、ある手段に出るが、対して五条は--。

8. 退屈
交流会に向けた特訓の合間。釘崎と伏黒の前に、呪術高専京都校二年の禪院真依と東堂が現れ、二人にケンカを吹っ掛ける。伏黒を腕っぷしで押していく東堂。一方、真依の言葉に嫌悪を抱き、釘崎は真依を挑発するが--。

9. 幼魚と逆罰
高校をサボり映画館に来た吉野順平は、自分をいじめていた同級生が顔を変形させられ、死んでいるところを目撃する。“犯人”を追い、声をかける吉野。その後、事件現場の映画館に乗り込んだ虎杖と脱サラ一級呪術師の七海建人は、2体の呪霊に遭遇する。

10. 無為転変
吉野の調査を任された虎杖は、補助監督の伊地知に作戦を聞く。低級の呪いに吉野を襲わせ、反応を確かめるというが作戦は失敗し、虎杖は吉野に直球で声をかける。結果的に嫌悪する担任教師を追い払ってくれた虎杖を見て、吉野は話を聞く気になる。一方、真人のアジトを突き止めた七海は地下水路で真人と相まみえるのだった。

11. 固陋蠢愚
真人に追い詰められた七海は呪力の制限を解除、十劃呪法『瓦落瓦落』で地下水路の壁を破壊し、がれきの雨を降らせる。一方、吉野と接触した虎杖は、映画の話で意気投合する。吉野の母とも会い、家に招かれるとさらに打ち解けるのだったが...。

12. いつかの君へ
真人に心酔していた吉野は、上手く利用され虎杖と戦うように仕向けられていた。復讐に走り暴走する吉野に対し、虎杖は拳を重ねながらも動機を聞き出し説得しようと図るが、吉野の口から残酷な事実を知ることになる。そんな二人のそばに真人が忍び寄り--。

13. また明日
間一髪で真人の一撃を防ぎ虎杖を救った七海。ここで確実に真人を祓うため虎杖と七海は息の合った攻撃を重ねる。真人は改造人間を使い虎杖を精神的にも追い詰めようとするが、虎杖はそれを乗り越える。畳み込まれる攻撃に追い込まれた真人は「死」を感じ--。

14. 京都姉妹校交流会-団体戦⓪-
虎杖たちから逃れた真人は、夏油らと合流し、あるプランを進めようとする。一方、呪術高専では“京都姉妹校交流会”が行われようとしていた。伏黒と釘崎、二年の真希、棘、パンダが集合するが、そこに東堂ら京都校の面々も到着。早速一触即発な空気の中、さらに遅れて五条が駆けつけあるサプライズを行う--。

15. 京都姉妹校交流会-団体戦①-
京都姉妹校交流会の団体戦が始まった。東京校のメンバーに、京都校の東堂が襲い掛かるが、足止め役を任されていた虎杖が相対する。東堂のパワーに圧倒される虎杖だが、突然東堂から女の趣味を尋ねられ--。

16. 京都姉妹校交流会-団体戦②-
東堂は、虎杖の“逕庭拳”が特級には通じない技だと指摘する。助言を素直に受け取る虎杖に対し、東堂は全力で相手をし、導いていく。一方、京都校の西宮に、釘崎はケンカを吹っ掛ける。その横にいたパンダに、陰から攻撃を仕掛けるメカ丸。釘崎と西宮、パンダとメカ丸の戦いが始まる。

17. 京都姉妹校交流会-団体戦③-
交流会団体戦は続く--。対峙する真希と三輪。三輪は真希の等級には表れない圧倒的強さに驚きを隠せない。同じ頃、箒で空中を飛び回る西宮を追う釘崎。真依の苦労、女性呪術師として生きていく意味を語る西宮をバッサリ切り捨て、一気に反撃に出る。そして姿が見えない真依は--。

18. 賢者
各所で勝敗が見え始めた交流会1日目。伏黒は御三家の嫡男・加茂と対峙していた。自身の血を操る「赤血操術」を使う加茂に、伏黒は式神と体術で対抗する。同じ頃、狗巻 の言霊の増幅・強制術式である「呪言」を生かして場を進めていく。その狗巻が突如感じた不穏な気配に振り返るとそこには--。想定外の事が起こり始める交流会。戦いの行方は--。

19. 黒閃
交流会に突如乱入し、襲い掛かる特級呪霊・花御。対峙する伏黒と狗巻、加茂は花御の攻撃を防ぎながら、帳の外に向かって走る。追い詰められる3人だったが、そこに真希が参戦し、伏黒との連携で攻め立てる。しかしそれでもなお、特級呪霊である花御の圧倒的な戦闘力を前に窮地に立たされてしまうが--。

20. 規格外
花御との戦いに参戦した虎杖と東堂。虎杖が黒閃を決め、東堂との連携プレーで攻め立てていく中、さらに自身の術式を解禁する東堂。超親友となった虎杖と共に、東堂はトリッキーな術式と(自称)IQ53万の脳内CPUを持つそのクレバーさで花御を翻弄していくが--。

21. 呪術甲子園
圧倒的な強さで五条は花御を退けた。瀕死の花御と合流した真人は、「両面宿儺の指」と特級呪物「呪胎九相図1番~3番」を強奪。着実に10月31日に決行する五条悟封印の準備を進めていた。一方、高専サイドは真人らの目的を明らかにできない。被害を鑑み、そのまま交流会も中止、となりかけるが、何故か野球で決着をつけることに。姉妹交流会・2日目野球戦、プレイボール--。

22. 起首雷同
呪霊により3人の男が似た状況で死亡する事件が発生。被害者たちは同じ中学校に在籍していたことが判明し、虎杖、伏黒、釘崎はその調査に派遣される。現地に着いてみると、その中学校は伏黒の母校であった。被害者らは地元の心霊スポット「八十八橋」の下で揃って倒れていたことがあったと聞く。さらに伏黒の姉・津美紀も事件に巻き込まれていたと分かり--。

23. 起首雷同-弐-
八十八橋の呪いに加え特級呪物「呪胎九相図」の1体・血塗(けちず)と対峙する虎杖・伏黒・釘崎。八十八橋の呪いの結界内にいる伏黒たちだが、突如釘崎が腕を引かれ、結界外に消える。それを追い、出ていったもう一体の血塗と虎杖も外へ。残った伏黒は早々に八十八橋の呪いを片付けるが--衝撃の光景を目の前にする。一方、釘崎は「呪胎九相図」の1体・壊相(えそう)と対峙。そこに血塗(けちず)と、追ってきた虎杖も加わり--。

24. 共犯
「呪胎九相図」兄弟の壊相・血塗に対する虎杖と釘崎だったが、壊相・血塗の血を浴びてしまい体内から腐食が始まる。窮地に立たされるも釘崎は自らに釘を刺し、「共鳴り」を発動。兄弟との我慢比べが始まる。虎杖も止まらず血塗を攻め立てていくが--。「両面宿儺の指」に端を発した今回の任務。果たして虎杖・釘崎・伏黒は無事高専へ帰還できるのか--。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 13

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

呪いから守るために、自らに呪いを宿す。

週刊少年ジャンプで連載中の漫画が原作のアニメ。

まだ鬼滅の刃人気が高い中放送が始まったこの作品、
とある小学1年生の女の子に
「私は鬼滅の刃より呪術廻戦が好きなの!」とゴリ押しされ、

放送が終わったら一気に見てみようかなーと思ってたら、

会うたびに「呪術廻戦見た!?」「絶対観てすぐに観て」とプッシュされ続けたので、観念して放送中から見始めました。笑

その後どんどん人気が高まって、
今や鬼滅の刃にとって代わる人気となり、
時代を先取る嗅覚の鋭さすごいなと感心しておりますw

全24話です。


● ストーリー
高校生の虎杖悠仁(いたどり ゆうじ)。
オカルト研究会に所属する彼は、学校で怪しい箱を拾う。

オカルト研究会の先輩が箱の箱の中身を確認しようとするが、
それは強い呪いが込められた“呪物(じゅぶつ)”であり、
呪物の封印が解けたことで、人を襲う“呪霊(じゅれい)”が現れ、
先輩たちが襲われてしまう。

呪物の回収に来ていた呪術師の伏黒恵(ふしぐろ めぐみ)と共に先輩たちを救おうとするもピンチになり、

悠二は呪物「宿儺(すくな)の指」を食べ、
呪いに対抗できる力を得る。

しかしそれはあまりにも危険な力のため、
先輩たちを救うことができた後、悠二には死刑が宣告される。

死刑を延ばす代わりに、
そして世に溢れる呪いによって誰かが苦しまないように、

残りの「宿儺の指」を集める使命を果たすため、
都立呪術高専に転校し、呪術師として生きることを決意する。


長いあらすじとなりました。

ざっくりまとめると、つまり、
呪術師として呪いと戦う話です。

呪いの見た目は気持ち悪い。

死体も出てくるし体も切断されるしで、
なかなかグロさもあります。

現代日本が舞台なのに、
呪いという異形と戦うことで非日常感が強い。

でも学生同士で仲良くしてたり、
普通の高校生っぽい一面もあるし、
不思議な世界観です。


ストーリーは、進んでいるような流れているような。

いきなり新しい展開が始まっている。
そしてもやもやっとそのシリーズが終わる。笑

強すぎる敵を追いつめはするんだけど、
逃げられてしまったりで、いつも倒すわけではないのがその原因かな。

この作品はなぜ人気が高いのか、
その理由をうまく言葉で説明できない。

ストーリーは、波があったものの、
全体的に面白かったです。

毎回30分があっという間に終わるし。

アクションシーンの作画もかっこよかった。

キャラもそれなりに魅力があって個性的。
女子ウケ抜群な五条先生という最強キャラもいる。

でも、呪いの見た目は不気味だし、
必殺技も真似したいものとか真似しやすいものではないし、
血みどろの戦いで見た目はよくないし、

呪いとか人の心の闇とか、暗い雰囲気で、
人の心は醜く描かれてるところもあるし大事な人も死んでしまうし、
メンタルやられるところも多い。

ここが人気なポイント!と語るのが非常に難しい。笑

呪術師たちは元々強いけど、
その強さを十分に描けていないのか、
それともこれから強い敵とぶつけていくうちにその強さが描かれることになるのか、

全力出しきった感がないんだよなー。
いや当人たちは全力出してるんだろうけど。

それでも十分かっこよくはある。
これからもっと強くかっこよく見せてくれるのかなというわくわくもある。

24話見たけれど、
どうやら私はまだこの作品を掴み切れていないのです。

そもそもグロい系の作品が苦手なのもあるかもしれないけど^^;

少年ジャンプの作品だけど、
少年以上に青年や大人に好かれそうなタイプの作品だと思いました。


● キャラクター
全体的に大人から好かれそうな、
かっこいいキャラが多かったように感じました。

観終わってみると、
好きなキャラが多かったなー。

順位はつけられませんが、私のお気に入りは
・釘崎 野薔薇(くぎさき のばら)
・五条 悟(ごじょう さとる)
・七海 建人(ななみ けんと)
の3人ですね^^

釘崎は最終話のかっこよさで好きになりました。

クールでかっこいい女の子キャラならよくいるけれど、
釘崎のようなタイプのかっこよさは珍しいなと思いました。

自分に自信があり、女であることを忘れず、
相手が誰だろうと怯んだり屈したりしない。

認めた相手は慕うし、大切にも思う。

敵に対しては容赦しない非情さも好き。
なんなら、笑ってるもんなw
最終話はどちらが悪役なのかわからなくなったよw


五条先生はつかみどころがないけど、
その分、普段のふざけた人柄と真面目なときのギャップがやばい。

圧倒的過ぎる強さ、かっこいいです。

そしてcv.中村悠一さんなんだからもう大勝利です。笑


● 音楽
【 OP1「廻廻奇譚」/ Eve 】
【 ED1「LOST IN PARADISE feat. AKLO」/ ALI 】

この作品と言えば、やっぱり「廻廻奇譚」が強いですね。
この曲の圧倒的かっこよさよ…!

そして作品の雰囲気とぴったり。
というか、この曲が雰囲気を作ったと言ってもいいぐらい。

アニメーションにもいろいろと伏線やら秘密が隠されているようです。
細かな変化もたくさんあったし、とても凝られていました。

EDは英語の歌詞でのポップな曲調だけど、
こちらも別のかっこよさがありました。

アニメーションもおしゃれでした^^


【 OP2「VIVID VICE」/ Who-ya Extended 】
【 ED2「give it back」/ Cö shu Nie 】

この後半OPもまたかっこよくて好きだなあ。

「廻廻奇譚」と雰囲気は似ていなくもないけど、
別物のかっこよさです。

アニメーションはこちらもかっこよかったです。
じっくり見れば見るほどかっこいい!

というか、「廻廻奇譚」だけでも十分なかっこよさと人気だったのに、そのハードルを越えてきたこのOPによって、次のOPはさらにハードルが上がりますね。笑

EDはしっとり感動系。

映像とのマッチングによって、より沁みます。


どの曲も当たりで、
音楽の選曲もアニメーションも最高でした。


● まとめ
面白かったです。

よく理解できていない部分も多いものの、
楽しめたのは事実です。

好きな作品かと問われると微妙なところなのが、
自分では不思議な感覚なんですけど。

これからもっと強い敵と遭遇するのだろうし、
それに伴って彼らの活躍もよりかっこよく、
見どころのあるものとなっていくのでしょう。

話としてはまだまだ途中だし、
24話の最後に「続」と出てたから、きっと2期もあるでしょう^^

2021年には「東京都立呪術高等専門学校」の劇場版アニメの公開が予定されています。

これは「呪術廻戦」がジャンプで連載される前の、
呪術高専のお話のようですね。

まずはこちらを楽しみに待ちたいと思います^^

投稿 : 2024/06/01
♥ : 30
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

呪いは生き方を主張し、少年は正しい死を模索する

人間の負の感情から発生し暗躍する“呪霊”と“呪術師”との戦いを描いた
同名コミック(未読)のアニメ化作品。

【物語 4.0点】
理詰めのバトル中に披露される各々の人生哲学。
育成学校のイベントには裏の駆け引きがある。

お馴染みの枠組みをグロく装飾したバトル物だろう。
と気軽に入っていくと、人を虫とも思わぬ呪霊たちがもたらす容赦ない死の描写と、
抉り出された人の心のドロドロした部分を目撃し、引き込まれる感じ。


虎杖(いたどり)悠二も一見、典型的な熱血少年主人公だが、
若くして“正しい死に方”を選ぶ決意を固める。
{netabare}特級呪物を呑み込む{/netabare}体質的にも、人間的にも器の大きさ、異様さを有する。

他の呪術師たちにしても、いくら骨を断つためとはいえ、
その肉の切らせ方は尋常じゃないという戦い方を平然とする。
凡そ死という物への感覚が麻痺している感。

さらに、汚い陰謀を巡らせる呪術師界・上層部と、
上を見限り慇懃(いんぎん)じゃない無礼を働きw
教育からの変革を企てる五条先生との確執。


こうした描写に触れる内、己の本能に忠実に生きる呪いの方が、
むしろ人間的なのではないか?との倒錯した感情すら抱きます。

第五話の特級呪霊・漏瑚(じょうご)によるファミレスでの主張。
{netabare}人間の正の感情は嘘、偽りだらけ。真実の負の感情から生まれた呪いこそが取って変わるべき。{/netabare}
否定しきれないのが辛いですw

呪いを祓うだけが正解なのか?
根本的な問いが、五条の変革や、虎杖の存在と今後どう関わって来るのか。
深いテーマ性への期待が牽引力。


【作画 4.5点】
バトルアニメの楽しさを思い出させてくれる。

人物も呪いも画面を目一杯使って実に良く動く。
構図、アングルもダイナミックで、視聴者を常識外に拉致。
MAPPAはグロい物体をクールに動かすのがホントに上手いですw

背景美術も“領域展開”の再現など良好。
背景の動きも、時に地面と遠景で異なるスクロールを組み合わせるなど、
撮影もカメラを静止させることなく、映像が単調にならぬよう尽力。
バトル空間の広さを体感させ、戦闘のスケール感を伝達。


【キャラ 4.5点】
五条先生の格好良さは特級品として、教師では七海先生も印象的。
{netabare}実業より虚業が栄える人間社会に疑問を抱いた{/netabare}呪術師転身前の過去。
共感度が高くて哀しいですwあと、{netabare}時間外労働{/netabare}お疲れさまですw


主人公・虎杖(いたどり)と東堂の“親友”関係もバトル馬鹿ならではで楽しい。


ヒロインズが逞しい(おっかないw)のも特徴的。
そう言えば、虎杖の顔面が一番ひしゃげたのは、
{netabare}荷物持ち・虎杖が釘崎の買い物を落したことに対する制裁だったようなw{/netabare}


【声優 4.0点】
主役の榎木 淳弥さん。熱血の裏に何かがありそうな懐の深い演技で謎多き主人公を再現。
最近の、えのじゅんとのエンカウント率の高さも納得の充実度。

呪い側の最強キャラ・宿儺(すくな)役・諏訪部 順一さん。
人間側の最強キャラ・五条悟役の中村 悠一さんと共に、
落ち着いたボイスが、圧倒的な能力と対照的で背筋が寒くなる、底を見せない好演。

強者に対するリアクションボイスにも熱演が揃う。
特に{netabare}五条に軽くのされる漏瑚(じょうご)役の大ベテラン・千葉 繁さん。
相手をした中村さんが申し訳なくなる位の大噴火ボイスで五条最強を証明w{/netabare}


異例だったのは原作者の要望によりナレーションが除去されたこと。
没入度はアップしたが、専門用語、超常現象に解説が付かないのはスパルタw
モノローグは充実しているので、付いては行けますが……。


【音楽 4.5点】
劇伴はバンド音楽をベースに、興が乗るとラップも挿入し、滾(たぎ)るバトルシーンを演出。
coldrainのボーカル・MASATOさんによるバトル挿入歌「REMENBER」もアドレナリン全開♪


OPは前期がEve「廻廻奇譚」、後期がWho-ya Extended「VIVID VICE」
共にヒットアニメのタイアップを引けばもっと来る!と思っていた男性アーティスト。
ついに大吉を引きましたね。おめでとうございます♪


前期EDはALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」
スタイリッシュなジャズ&男性ボーカルで東京を喰らう。
EDアニメ含めて、どんな展開後でも呑み込む独自の世界観を持つ。

後期EDはCö shu Nie「give it back」
ハイトーンな女性ボーカルで、哀しい過去を抱えた呪術師たちの心情を炙り出す。
どんな展開後にもマッチする透度の高い良作バラード。


【余談】
「廻廻奇譚」について。

放送前、先に楽曲だけ発表された時、
ネット上ではイマイチ?との評も見られました。
ですが、Eveを、あにこれの「僕らはまだアンダーグラウンド」のMVレビューで知り、
アニメーションとの融合度を信頼していた私は、
OPアニメ見て度肝抜かすなよと、世間の反応の変化にほくそ笑んでいましたw

あにこれやってて良かったですw

投稿 : 2024/06/01
♥ : 39

79.6 6 不気味で熱いなアニメランキング6位
86-エイティシックス- 第2クール(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 4.0 (423)
1401人が棚に入れました
東部戦線第一戦区第一防衛戦隊、通称スピアヘッド戦隊。サンマグノリア共和国から“排除”された〈エイティシックス〉の少年少女たちで構成された彼らは、ギア-デ帝国が投入した無人兵器〈レギオン〉との過酷な戦いに身を投じていた。そして次々と数を減らしていくスピアヘッド戦隊に課せられた、成功率0%、任務期間無制限の「特別偵察任務」。それは母国からの実質上の死刑宣告であったが、リーダーのシンエイ・ノウゼン、ライデン・シュガ、セオト・リッカ、アンジュ・エマ、クレナ・ククミラの5人は、それでも前に進み続けること、戦い続けることを選択する。希望や未来を追い求めようとしたわけではない。“戦場”が、彼らにとって唯一の居場所となっていたのだから。そしてその願いは皮肉にも、知らぬ間に足を踏み入れた新天地で叶うことになるのだった。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

原作読んで総評です。私はもういいかな…原作がちょっと合いませんでした。

 原作読みました…いや、なんとか読み終えました。アニメのレビューサイトなのであまり言いませんが、体言止めと漢字熟語にカタカナルビが多くて辛くて読みこなせませんでした。戦闘シーンが何やってるかわからないし、情景描写もあまりないし、時系列を置き換えている意味がわからないし…読み終えたというか、まあ、なんとかページは最後まで頑張ってめくりました。
 これは私がこのタイプの小説を読み慣れていない、読み方が分かっていないせいだと思います。


 で、アニメについてです。この読めないラノベを画にして見せてくれた功績は大きいと思います。アニメなければ1巻の半分で諦めてます。2、3巻に関してはそのままアニメ化した感じでしょうね。やっぱりちょっと原作を更に水で薄めていた気はしますけど。これはアニメが間延びしているだけではなく、ほぼ原作がそんな感じだったということでした。

 結果的にやっぱりあのロリの王女さまの意味がわかりませんでした。シンと兄の関係をなぞっているだけだし…脳をレギオンが取り込んでいるという説明に厚みを持たせたかったということ?

 うーん。ごめんなさい。私はこのシリーズはもう関わらないかも。アニメで次のシーズンが来たらレーナちゃんが活躍するかの確認はすると思いますが…


 

以下 初回時のレビューです。

 レーナちゃんに免じてぎりぎり及第点。テーマのブレ、長すぎ、読めすぎです。

 結末はこれ以外考えられないでしょうね。そのために2クール目のストレスを耐え忍んだのでそうでなくては困ります。

 本作について構造は「君の名は。」だ、ということでいいと思います。名前も素性も知っているけど直接会った事がない。生死の狭間で相手がどうなったかわからない。そして…ということでした。

 1回目が見終わった後です。

 悪い方からいえば、1クール目の冒頭の部分の冗長な日常描写、SF設定の甘さについては印象が変わりません。
 それでも1クール目は、シンの敵とシンクロできる部分や兄との関係などがありましたし、レーナちゃん覚醒の話なので、1クール目を見終えたときは、まあ、過小評価してたけど面白い部分もあったなあという感想でした。

 そして、2クール目に入って、86というストーリーが戦争もの…それも差別された人種の決死部隊という設定が吹き飛んでしまい、昔の仲間との約束、ロリ王女等々の要素が入り込んできたと思ったら、俺TUEEEの無敵兵士、狂気の自殺願望部隊から、そして「君の名は。」になりました。
 最後のほうの大きな作戦だった、地面効果翼機もなんか出てきただけで、作戦そのものにエピソードとして関心できるところも無かったし、周辺の登場人物の動きも心情も良くわからなかったし…
 テーマも視点もブレブレだったと思います。自分は何を見させられているんだろう、という感じが常に付きまとう展開でした。
 そして、1クール目の最後から2クール目の最後のシーンは完全に予想できました。予想外があるとすれば遅すぎです。

{netabare} そして5人のメンバーたちの様子を見ていると、その戦死した仲間たちの約束とかそういうものが無くなってしまいましたね。もちろんシーンとしては随所にいれてるんですけどお約束程度でしたね。
 長い割には個々のメンバーの内面の掘り下げが無かったと思います。あの背中の入れ墨とかどこに行ってしまったんでしょうか。平和な暮らしと兵役をはかりにかけた葛藤が、シンの狂気に引きずられてなかったことになりました。

 あとはレーナちゃんが最後に合流する部分のストーリー展開はいくらなんでも強引だろうと思います。22話が良かったのに23話でそれだけ?というずっこけはありました。

 ひょっとしたらですけど、原作とアニメの読者・視聴者側の体感時間つまり分量の差があるのではないかと疑っています。構成ですね。レーナちゃんとの邂逅のために時間調整があったのでは?と疑っています。そうでないと2クール目の内容が無さすぎの気がするんですけど…

 良い点と言えるか、まあ、このために見ていました、という点ですね。
 もちろんレーナちゃんとの邂逅あるいは再会といっていいのかもしれませんが、このカタルシスが欲しくずっと見ざるを得なかったのは、制作陣の思惑に乗せられたという気があります。そして、やっぱりここまで引っ張られるとカタルシスは確かにありました。
 2クール…しかも延期もありましたので、半年以上ですからね。この時間があったせいで、勿論最後のシーンはジーンときます。{/netabare}

 作画は昨今のアニメ事情からいって、悪い回、動かない回があるのは諦めてます。その点ではがんばって水準は保っていたと思いますし、良い回は良かったと思います。


 総評です。SFなのでもう1回チェックしたいところですが、2回目見るのに勇気がいります。この冗長なストーリーをまた見るのかあと思うと気が遠くなります。原作読んだ方が早いかなあ、という評価です。

 そしてテーマ性。差別問題がなくなりました。途中で平和OR約束も深掘りできませんでした。脳のつながりも謎からエピソードのネタになりました。シンたちのメンバーがもしかしたら誰か欠けるかもというドキドキも2クール目の前半で消えました。
 つまり2クールは細切れのエピソードの集合体になっていたと思います。

 ラストはもちろん良かったと思います。思いますけど、いくらなんでもそれだけかあ…という感想もあります。ただ、レーナちゃんって初めはミニスカの士官なんているかよ、とか能力低すぎだろう、とか騒いでるだけじゃん、ケーキ喰ってんじゃねえ、お前が戦場に行け、と思っていたのに、2クール目では心待ちにしていたのは、まあ、上手く乗せられたなあと思いました。そこは素直に上手く転換させたなあと思います。

 ということで、1回目の印象ですから後で何か発見があるかもしれませんが、レーナちゃんの涙に免じて及第点、だけどぎりぎりかなあ…SFだから評価は厳しめですけどね。






 17話までみました。まず、分割2クールでやったために、1クール目との物語の密度が違い過ぎるのは失敗だと思います。特殊な状況で制作の関係もあるのかもしれませんが。

{netabare} ストーリーについてです。1クール目に対して格段に面白くなっています。86たちの連邦の扱いに焦点を絞っているのでストーリーに展開があって、理解もしやすいと思います。
 レーナちゃんをもっと出せという気持ちにさせるのも、クリエータ側の意図なのでしょう。後を楽しみにしておきます。

 あのロリ女王さまはどうなのかと思いますけど。マスコットって…いやそれはやりすぎでしょう。1クール目のレーナちゃんもそうですけど、こういう女性の扱いをすると、せっかくのシリアスな物語に、潜在的な性的な願望の匂いを感じてシラケるので止めたほうがいいと思います。

 あと、ユージ?とかいう銀髪の図書館で会った男性の戦死ですが、フラグ立てすぎでしょう。演出なんとかしろよ、という感じでした。

 で、テーマ性です。86については、共和国の差別の中で選択肢がないからこそ、彼らの戦いに意味があったわけです。連邦で彼らは何度も軍は止めろと説得され、それでもなお彼らは軍人になりました。
 ここで死者に対する約束について揺れ動く人間が出るかと期待しましたがいませんでしたね。

 で、軍にはいれば、当然戦力を考慮し突撃部隊要員にされてもここはあまり悲惨さを感じません。それは彼らが軍人になった選択をしたからであって、ここで86だからと拗ねるのは、ちょっと違う気がします。

 そして、86の5人についてはいつの間にかスーパーマンになってしまいました。そこまで無敵な感じではなかったと思うのですが。話に安心感はありますが、1クール目のいつ死ぬかもわからない、という絶望感が無くなってしまいました。まあ、だからこそ誰かが欠けた時にストーリーになるんでしょうけど。

 ストーリー的には面白くなりましたが、テーマ性が1クール目に比べてぶれている気がします。彼らはもはや被差別階級ではない、から周囲の人の反応が、やっぱり差別はあるに急に方向転換したように見えます。
 差別に戻して民主主義のヒューマニズムの薄っぺらさとか入れればまだ良かったんですが。最後に「すまないな、少将」というのを入れてしまったので、本当は彼らに頼るしかないからあえて言った?に見えます。差別を敢えて誘導した?子供を戦場に送りたくないとか…うーん。なにがしたいんでしょう。
 で、妹からの手紙とか、シンの狂気とか、ロリ女王の騎士さまとか…戦争の狂気なら読み取れますか。

 今のストーリーだと、志願兵である以上86のテーマはもはや差別ではなくなりました。現状は以前の戦死した戦友との約束という名の自殺願望がある狂気に支配された集団にしか見えません。レーナちゃん登場で救ってくれる感じでしょうか。

 今後楽しみなのはレーナちゃん側ですね。孤軍奮闘のジャンヌダルクでしょうか。やっぱりレーナちゃんが正しかった?だけですかね。秘密の研究とか、貴族社会とかもう関係ない感じですか?

 結論から言って、話は2クール目で各段に面白くなりました。テンポもいい作画もかなりいいです。レーナちゃんがクールなのはいいし、86たちへの焦点の当て方も良かったと思います。
 ですが、テーマが消し飛んでしまった感じがあります。まあ、途中で何か見えてくればまた、レビューします。


追記 特攻の理由なんですけど、列車砲なら線路をもう1回、今度は滅茶苦茶になるまで攻撃すれば良くね?と思うのは間違ってます? {/netabare}


 18話。言わないようにしていましたが、被差別民族という部分、ロボットの多脚形態といい、今回の浸透作戦といい、指揮官が同乗するところといい、どうしても亡国のアキトの展開を思い出しますね。

 {netabare}そういうところは割り切って、たまたまということでいいですが、じゃあヒューマンドラマとしてはどうか…でも、あのロリ王女ちゃんとのやりとりは茶番にしか見えてきません。それなら早くレーナちゃん出して。

 で、でました。新兵器?地面効果翼機ですか。すごいものを引っ張りだしました。なかなか面白い発想です。ユーチューブの珍兵器とかでたまに見かけます。

 ただし、作中でも言っていますが、数メートルしか浮き上がれません。技術的な設定でいえば、翼が地面にぶつかるのでRの小さいバンク旋回ができないのでほぼ直線でしか飛べません。また、小高い丘も飛び越えられませんので、実用化したのはカスピ海で旧ソビエトが使っていたくらいで、それですら波が高い日は運用できなかったそうです。(ただ、今度海で運用されるみたいです)
 ですので、道中ほとんど湖にするとかそういう設定にすれば良かったんですけどね。

 さらに、地面効果翼機でレーダーを避けられるなら、より小さくて同じように地面すれすれを飛ばせる巡行ミサイルのほうが良いし、また、地面効果翼機で近づいて爆撃じゃあ駄目なの?と思います。

 正直、ロボットや兵器、AI等の戦闘のSF的、技術的、戦略的な設定は、たいしたことがないんだから、そこは短くして、被差別とかヒューマンドラマを深掘りした方がいいと思いますが、そこがブレブレかなあ。{/netabare}



19話 あれだけ決死の戦闘の前振りだったのに…これだけ?

 待たされた割には…心配した作画乱れはあんまりなかったですが、人が動かないこと…まあ、いろいろ厳しいのでしょうか。

{netabare} 地面効果翼機はあれだけ?ピンチにすらならなかったですね。とにかくロリはなんとかしてほしい、鬱陶しいだけ。

 やっぱり脚本かなあ。設定やテーマ、キャラ。どれをとっても悪くないんですけどね。うーん。1クール作品を2クールに伸ばした感というか、小説とアニメの媒体の差を考えずそのままやっちゃったか…他作になりますけど、転スラとか、オリジナルのアクアトープの方も引き延ばし感満載だからなあ。

 以前なら少し遊びが入った2クール作品もありだったんですけどね。昨今の密度が高いアニメになれると考え方が古い気がしますね。SFだから集中して見たいし。
 それに最近の2クールって、原作消化のペースを遅らせたりダラダラ展開がで引き延ばしてますからね。特に分割2クールにその傾向が多い気がします。以前の2クールは原作が溜まってからやってたので引き延ばしも少ないし、構成も無理がないし、感情移入も途切れないし。

 後はレーナちゃんかあ。最後あの列車砲やっつけるのに、レーナちゃん登場?多分あと3~5話くらいですよね?早くしてほしい。

 それにしてもテクノロジーの設定がわからねー…あの電磁砲的なやつももそうですけど、機体そのものがオーバーテクノロジーじゃん…って思うんですけどね。{/netabare}


20話です。残りは3月ですか…。

{netabare} 私は適当な作画で作品を作られるくらいなら延期賛成派なんですけど、だったら18話で決断すべきだったと思います。正直19話の作画は痛痛しかったと思います。

 さて、本作のここまでの総括ですが21話見てないですがどうせ話は進んでいないでしょう。2クール目後半はあまりにエピソードの密度が薄すぎです。

 1クール目は全体的に話がごちゃごちゃしてるしその癖間延びしているし、エピソードは当たりはずれが大きかったと思います。ですが、1クール目には中心のテーマがありました。2クール目はそれが吹き飛んでしまいました。86つまりスピアヘッドたちの行動原理に説得力が無くなってしまっています。

 無論、以前の仲間への約束で死を選択する、というのはあると思いますが、やっぱりシンの狂気に引きずられているというか、もっと悪くいえば単なる俺TUEEEになってしまっています。
 ロリ王女はそこに意味性を持たせるために登場させたのだとは思いますが、悲劇をいくら積み重ねても、1クール目の86の悲惨さにはかないません。

 何よりレーナちゃんですよね。ラノベで良くある手法ですが、待望のキャラのじらしプレイですね。人気キャラを出さないで引っ張って引っ張って、最後登場させてのカタルシスを狙ってはいるのでしょうけど、2クールのこの薄い密度の話でそれをやりますか?という感じです。小説とアニメのメディアの特性の違いは良く考えたほうがいいと思います。

 2クールを連続してやったとしても相当薄い内容で冗長感がある本作で更に延期ですからね。だったら1クール目+3月の2話で十分なくらいです。{/netabare}


22話です。つまり「君の名は」だったと。

{netabare}  油断しました。やってたんですね…23話もう見た方いるみたいですね。すっかり忘れてました。

 やはり2期はレーナちゃんとの再会というより初コンタクトが最大のカタルシスでしたね。1期の86とレーナちゃんの関わり方、2期の関わらないストーリーはそのための舞台装置だったということでしょう。つまり若干変形はしてますけど構造は「君の名は。」ですよね。

 関わり、対立、事件、別れ、想いの自覚、探索、葛藤、再会…ですね。探索部分が86では表現されていませんでした。

 ただなあ…戦場でいつ死ぬかわからない状況なら名乗れよ…それが3.11東日本大震災以降の人の関わりだと思うんですけどね。旧時代の別れが美しいとか秘めた想いは、命あってこそ、再会の期待があってこそですからね。「君の名は」で最後声をかけた意味ってそこにあると思うんですけど。

 一度邂逅するまでは、2人は絶対に死なないだろうなあ、という予測にもなってしまいますし…いくらハードな事件が起きようとも、そうしないと話にならないですからね。
 これが頭にあるのでちょっと2クール目の途中から冷めてしまいましたね。もうちょっと早く会ってから、展開してくれたほうが良かったかなあ。

あーでも、22話がカルデラ山の上のシーンだとすると、その先は…まあ、そういうことですね。裏切ってくれても面白いですけど、ここは順当にひねらないで行ってほしいかな…

 で、23話でなんかあるんでしょうか。楽しみです。{/netabare}




 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 26
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

Where Have All the Flowers Gone(花はどこへ行った?)

戦争をモチ-フにしたアニメ作品は、
これまでにイヤというほど製作されておりますし、
これからもイヤというほど製作されることは想像に難くありません。

そして、一口に『戦争アニメ』と言っても内容は千差万別、玉石混合。

んで、僕はそれら『戦争モノ』アニメを個人的に、
大きく三つに分類して視聴したり考察したりしています。
ほんとうに、あくまでも私的かつ便宜的な線引きに過ぎないのですが、
ご参考までに紹介すると以下の通りです。

 ① 戦争は悲惨だアニメ

   戦争被害だの困窮する市民だのにスポットをあて、
   ほらね、戦争ってよくないでしょ?
   みたいなことを啓蒙する、いわば『反戦』アニメ。

   言ってることは決して間違っちゃいないし、
   若い世代に伝えていかなきゃイケナイことではあるのだけれど、
   「だから?」という問いにまったく答えておらず、
   その後の利用のされ方がおおむねアレなのが玉にキズ。

 ② 戦争はニンゲンの縮図だアニメ

   戦争そのものより戦争をモチ-フとして『人間』を描くことが主題で、
   人間の『愚かさ』『傲慢さ』『業の深さ』『狂気』や、
   それに対峙する『強さ・気高さ』『絆』なんかを描くアニメ。
   (もちろん、飲み込まれていく『弱さ』も描かれたりします)

   別の言い方をするなら『戦争ドラマ』になるのかしら。

   中には、かわぐちかいじ氏作品のように、
   軍事力と平和の共生を模索する『現実秩序論』的アニメもありますが、
   社会派ということで、一応この中に入れています。

 ③ 戦争かっけえアニメ

   戦争をモチ-フにした、エンタメ特化型アクション娯楽アニメ。
   前線で戦う兵士を中心にして描かれるのがほとんどで、
    中二成分が入ってみたりみなかったり、
     萌え成分が入ってみたりみなかったり、
      ラブ成分も入ってみたりみなかったり。

   設定はかなり緻密に作られ、
   メカデザインだの演出だのにはタマシイかなり入っているものの、
   言ったりやったりしていることは昔っからだいたい一緒です。

これら①~③に「どれがエラい」という序列なんかありませんし、
もちろん、すべての作品が明確に線引きできるわけでもありません。
それぞれの要素が混じり合っていたり、
何かを足したり引いたり揉んだり伸ばしたり、
それなりの『個性』があるのが一般的なのではあるまいかと。
(なんの『個性』もない寄せ集めアニメも少なくないですが)


で、本作『86』でありますが、
先に放送された第一ク-ルと、この第二ク-ルでは、
作品の色彩が潔いほどガラッと変わっております。

第一ク-ルは②の『戦争ドラマ』的色彩が強かったのですが、
そういうのはほとんどなんもなしです。
ヒトの思惑とかがちょいちょい足を引っ張るものの、
基本的には勧善懲悪の電車道、
③の、ドキハラ楽しい『戦争かっけえアニメ』に仕上がっております。

というか、そもそも『戦争モノ』ですらなくなり、
戦争っぽいSF娯楽アクションアニメ、みたいな感じではあるまいかと。
だってさあ……{netabare}

(1)そもそも『人と人の殺し合い』じゃなくなってるし。

  周辺諸国に侵略戦争をふっかけ、
  大戦の元凶になった軍事国家『ギア-デ帝国』なのですが、
  市民革命であっさり滅亡いたしております。

  後を継いだのは人道派のエルンスト率いる民主国家、ギア-デ連邦。
  他の国に侵攻したり特定民族・国家を差別したりするつもり、
  さらさらありんせん。

  だからもう、国と国との『戦争』じゃないんですよね。

  じゃあ何と戦っているかというと、
  ギア-デ帝国が開発した自立型の殺戮兵器であり、
  勝手に人間の脳を取り込んで増殖するようになった『レギオン』であります。

  ようするに『ツブれた交戦国』が遺した、
  勝手に増殖して人類を攻撃する『メイワク兵器』なんですね。

  もう帝国いないし、戦争やめてまったりしたいんだけど、
  こいつらがわさわさ攻めてくるのでしゃあなく戦っているという、
  なんとも締まりのない『戦いの構図』が物語の根幹になっております。


(2)仲間、死なないし。

  これは、戦争かっけえアニメではほとんどお約束。
  戦隊ものや美少女戦士ものなんかと同じで、
  どんなに強大な敵と戦おうが、
  味方の主要キャラって、まず死ぬことはありません。

  本作も、第一ク-ルは仲間が無惨にばたばた死んでいったのですが、
  第二ク-ルでは「ないわ」と思うぐらい、
  どんだけ無茶な状況に陥っても86メンバーは不滅のアナタ。

  第一ク-ルの印象が強烈だし、
  そのために用意されたであろうサブキャラが戦死したりするので、
  かなりドキハラさせられるのですが、それは演出。

  もちろん「ああよかった」と僕も胸をなでおろしたわけなんですが、
  よくよく考えてみたら、
  最後に「ああよかった」なんて思える『戦争』なんて、
  アニメの中だけの話ではあるまいかと。


(3)萌えとかラブ成分増し増しだし。

  ロリっ子フレデリカの登場は、市街地なら問題なし。
  そりゃまあ、街中にはロリっ子のひとりやふたりいるでしょう。
  だけど軍部に『マスコット』として配属ってなんだよマスコットって。

  戦闘部隊を幼い娘と寝食を共にさせて疑似家族とし、
  愛するムスメやイモウトのため命を賭して戦う気にさせるって……
  兵士に里心がつくだけでむしろ逆効果なのでは。

    救護班や整備班、補給班などを除き、
    戦時には軍施設に『保護を要する非戦闘員』を入れないのが鉄則です。
    (軍の施設というのは、それだけで敵の攻撃対象ですしね)
    もし戦闘になれば保護に人員を割かねばならず、戦力低下は必至。
    それを『風習』の一言でかたづけるって……パヨクの工作っすか。

  で、前線の経験もない10歳の子どもに知ったような口を叩かれ、
  それに納得したり鼓舞されたりとかね、もうね。
  前線はアキバじゃないんだよっていう話であります。

  それに比べるとシンとミリ-ゼのラブ要素はけっこう控えめ。
  なにを言ってるんだおまえは、
  という台詞もあるにはあるんだけれど、
  戦闘終了後、非戦地域での言葉なのでお咎めなし。

  最終話、二人の手の影が寄っていく甘々カットは、ちょっとアレかしら。
{/netabare}

というわけで本ク-ルは第一ク-ルとうってかわり、
何かを考えさせる・問いかけるような要素はほぼ皆無となっており、
登場人物や戦闘シ-ンを見てもらって
『かっけえ』『すげえ』と思っていただきたい、
そんな作品に仕上がっております。


僕的なおすすめ度はB+ぐらいの感じです。

リアルな『戦争』からは目いっぱい遠ざかっちゃいましたが、
人間の脳を取り込んで増殖する機械兵器など、
シリアスなところはシリアスで、出来のいいバトルアクションアニメかと。

  美少女が『よくわかんない敵』と戦い、
  最後は覚醒だの友情パワーだのでなんだかんだ、みたいな作品よりは、
  遥かに地に足がついた物語に仕上がっております。

  戦地に赴く若者の『覚悟の有無』みたいなものも描けているし、
  ドラマ要素的なものもそれなりに。
  戦略・戦術的なものは強引というかムリあり過ぎですが、
  リアルな戦争ぶっちぎったアクションアニメだからと割り切れば、
  けっこうドキハラしながら楽しめます。
{netabare}
  ただし最終バトルでロリっ子が前線に紛れ込んじゃうのは、
  「しっかりつないどけよ」としか言いようがなく。
  こういうムカシふうの安い演出は、僕的には『萎え』要素に他なりません。
{/netabare}

映像はふつうにかっこいいです。
動と静、いずれのシ-ンの描写にも繊細なこだわりが感じられて良き。
無機物・有機物の質感まできれいに表現されています。
アングルにも相当こだわってて、仰角/俯角、引き/寄せの配合が絶妙。
その一つ一つにちゃんと意味があるんだ、これがまた。


キャラクターは、86のメンバーは味があるのですが、
エルンストあたりからちょっと微妙になり、
軍属のほとんどはテンプレの焼き直しがこれでもかと並びます。

フレデリカに至っては、何をかいわんや。{netabare}
レギオンをばらまいたギア-デ帝国最後の女帝という立場なんだから、
(本人の責任じゃないから責めることはないにしても)
そのレギオンと命がけで戦っている兵士に上からモノを言ったり、
私的なこと(キリヤの件)を頼んだりするのはよかわけなかばい。{/netabare}

  もちろん『そんなこと百もわかって言っている』というキャラ設定なんだけど、
  その自己矛盾を『子どもゆえ』の一言で片づけちゃうというのは、
  ドラマの構成として安すぎるのではあるまいかと。

  おなじようなチビ女帝でも
  共感という意味では『うたわれるもの偽りの仮面』のアンジュの方が、
  背負うべきものをきっちり背負っていて良き、と拙は思います。

キャラが最高に立っているのは、やっぱミリーゼかと。
第一ク-ルの最終話から、その足の置き場が一ミリもずれていません。 {netabare}
最終話、墓碑銘の前で「忘れません」という台詞を五回繰り返し、
その後立ち上がって毅然と歩み去る姿を仰角で捉えるカット、
何回見ても鳥肌ものです。 {/netabare}

  ほんとそれだけ、台詞が「忘れません」しかない25秒ほどの演出で、
  彼女が自分自身に刻み付けたものの『深さ』と、
  それに向き合う覚悟の『強さ』が見事に表現されています。

  これ、絵コンテ描いたの監督の石井さんですよね?
  アニメの専門学校ではなく千葉大の理系出身という変わりダネで、
  アニメ-タあがりではなく制作進行あがり。
  しかも初のTVアニメ監督作品でこの表現力はすごい。すごすぎる。
  まじで、駆け寄って握手を求めたいところそす。


音楽は、OP・EDともエンタメ特化。
とりわけOP曲の『境界線』は(少なくとも僕の耳には)、
平和ボケした日本の若者が
アニメの内容に沿ってドラマチックになるよう歌ってみました感満載で、
一般ウケしか狙ってませんという潔さがありありと。


役者さんのお芝居は、高水準で安定。
欠点と呼べるほどの欠点がほとんど見受けられず、
ほんと安心して視聴できます。

特にミリ-ゼ役の長谷川育美さん、
はじめてのメインヒロインなのにすごくがんばっているなあ、と。
気を張ったときと緩めたときの『声の硬度』の使い分けが絶妙です。

今期だと『ぼっち』の陽キャラ喜多郁代を演っているのでわかるように、
使える音域や芝居の幅が広い役者さんです。
まだまだ若いし伸びしろもありそうで、要チェキの一人かと。
いい役引き続けられれば、大化けしそうな感じです。
頼むから『けいおん』みたくなるのだけはやめておくんなまし。

  あと、フレデリカ役の久野美咲さん。
  キャリアも実力も充分すぎるほどの方なので、
  いいかげん、こういう役どころから解放してあげたいな、と。


とにもかくにも第一ク-ルまでの路線をかなぐり捨て、
前線をガタゴト走る無骨な戦車から
テ-マパークのアトラクションに乗り換えたような作品です。
{netabare}
最終話には『戦場のボ-イ・ミ-ツ・ガール』なんて、
ウクライナの方々には絶対にお見せできないようなカンド-演出もあり、
まさに平和の国ニッポンならではの仕上がりではあるまいかと。
{/netabare}
第一ク-ルを『重い・しんどい・クラい』と感じていた方は、
  「おお、やればできるじゃないか」と満足し、
逆に第一ク-ルの『重さ・しんどさ・クラさ』に惹かれていた方は、
  「う~ん……なんかペラペラでやだわ」と感じちゃう、
まさに『トンネルを抜けると雪国アニメであった。』という感じです。

  あとはもう、雪が好きか嫌いかぐらいしか分水嶺がありません。

{netabare}
ちなみに最終話、滅亡したサンマグノリア共和国の市街が映され、
いまだに86への差別意識をもった市民の姿を描くことで、
自業自得だよね的な雰囲気を漂わせています。

だけど、そうじゃない、ただ平和に暮らしていた市民もいたわけです。

 ・瓦礫の中にある、焼けた家族写真や子供の玩具
 ・身を寄せ合っておびえたように凍える戦災孤児たち
 ・倒壊した家屋の前で涙を流し続ける、片足を失った老婦人

そういうカットを数秒間ずつ流すだけでも、伝えられることはあったはずです。
おごりや差別意識があろうがあるまいが、
戦禍に巻き込まれ国が滅ぶというのはそういうことなのですから。

だけど石井監督は『描かなかった』。
最終話の放送は3月12日。
ロシアのウクライナ侵攻開始は2月24日ですが、
その時には完パケあるいはそれに準ずる状態であったはずであり、
国際的配慮などではなく『確信的演出』として。

そういうものをあえて『描かない』ことによって、
『最高のオレたたエンド』なんて評されている大団円をさわやかに見せる。
そういう計算であったであろうことは、容易に推察できるところです。
{/netabare}

そのことの是非は視聴者一人一人が判断すべきことで、
僕ごときがエラそうにあ~だこ~だ言うべきようなことではありません。
(好き嫌いぐらいなら言えますが、言っても詮なきことですし)

ていうか、僕的にはその焼け出されたサンマグノリアの人たちが、
『ケンポ-9条に固執して侵略されちゃった日本人』みたく見えたのですが、
それはまた別の話ですよねえ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 20
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

卓越した演出で理想的なBMGを描く作品

世界観:8
ストーリー:9
リアリティ:7
キャラクター:7
情感:8
合計:39

<あらすじ>
あの別れから半年。軍の迎撃砲を無断使用した咎により、少佐から大尉へ降格となったレーナだったが、シンたちスピアヘッド戦隊の遺志を胸に、新たな部隊で、今も絶え間なく続く〈レギオン〉との戦いの指揮を執り続けていた。そして「特別偵察任務」のなかで、〈レギオン〉との交戦の末に戦地に倒れたシン達。深手を負いながらも意識を取り戻した先で、彼らを待ち受けていたのは……。
(公式サイトより)


第1クールから続けての視聴です。
第2クールは、{netabare}特別偵察任務で生き残った5人がギアーデ連邦に助けられ、新たな羊飼い(キリヤの脳が搭載されたレギオン=モルフォ)との戦いが中心になっていくのですが、キリヤとシンは遠い血縁ではあるものの因縁深いものではないので、若干盛り上がりに欠け、物語のテンポは1クールより落ちる印象でした。また、フレデリカという古風な口調のアニメっぽい少女の語りに少々抵抗がありました。{/netabare}

評価点の推移はこんな感じ。
(12話4.3→13話4.2→18話4.0→22話4.2→23話4.6)
ほとんどの期間、優良水準から落ちてしまっていたのですが、最終2話の巻き返しはなかなかのもので、1話単位での評価点が+4ポイント(特に4点以上からの+4)となることは過去にほとんどなく(まどマギ10話だけ?)、神回と言ってよいでしょう。私はその余韻でもう1周してしまいましたし、最終話は何度見ても涙腺に響きます。1クールを見た方、あるいはまだ1クールも見ていない方に対しても、最終話を見るために、視聴をおすすめしたいくらいです。

最後の出来が良かった点について、本作は最終2話をクール中に制作が間に合わず、約3か月放送を延期したという経緯があります。これには賛否あるようですが、私は時間をかけることでより良いものができるならかけてもらって構わないと歓迎するスタンスです。同じアニメ作品が作り直されることはほとんどありませんので、時間が足りずに中途半端なものが残るよりずっと良いです。時間をかけることでのマイナスは権利者側にはあるかもしれませんが、本作が評価され、関係者が評価され作品も2期に繋がれば、結局はプラスになる面も大きいのではないでしょうか。少なくとも作品自体として制作延期の成功例になったのは間違いありませんので、制作陣が万策尽きた場合にはこのような選択肢もあることを示したのも、本作の意義ではないかと思います。

さて、第2クールの感想を掘り下げていきたく思います。
{netabare}まずは気になった点からですが、冒頭から、11話の状況からスピアヘッド戦隊の5人が誰も死んでおらず、また、その後も上官を含め5人が死んだだろうと思えるように見せかけつつ死んでいないということで、容赦なく仲間が死んでいく1クール目と比較して、リアリティが低くなった点があります。これについては後でも触れます。

また、キリヤとシンの関係の設定、キリヤとフレデリカの人間関係をもう少し掘り下げられると良かったように思います。フレデリカにとっては兄のような存在であったことは伝わりましたが、臣下のキリヤにとってフレデリカが特別な存在だったのかが少し足りないと思いました。

22話でのレーナとシンが話をする場面、レーナが写真や絵を見せる演出は少し過剰ではなかったでしょうか。また、その写真が結構鮮明なのですが(ここだけ原作を確認したら、原作では顔の判別ができないような写真だったとされていました)、鮮明にしてしまうと、レーナはシンを意識しているので再会のシーンで顔見てわからないのか? という疑問に繋がってしまうので、ここで写真を登場させないか、写真をぼやけたものにするべきと思いました。

このあたり、レイの名前を彫ったプレートを取ろうとして動けない描写があったと思いますし、動けないからレーナとも機体越しの会話になったと思っていたら、最後に機体からすんなり降りて身軽そうだったのも少し気になりました。


終わり良ければ総て良しということで、最後は個人的に盛り上がる部分を書いていくべく、最終話を中心に良かったところに触れていきたいと思います。

「第23話 ハンドラー・ワン」
本作の第1話のタイトルが、シンのパーソナルネームである「アンダーテイカー」でしたが、対となるレーナの呼称を最終話のタイトルにするところが綺麗です。

この回、Aパートでシン側の物語を、Bパートでレーナ側の物語を描いていて、シンはユージンの墓参り、レーナは父の墓参りをして、再会の日に86の墓標にも参り、それぞれの思いを新たに歩み出し(ここは同じ構図で、改めて2人の物語と思いました。)、再会の場へと向かいます。そして、最後のCパートでは、第3視点としてファイドの目線を使います。これらのシーンは最後の再会のために集約されていて、無駄のない構成です。

Aパートでシンの心を痛ませたユージンの妹の手紙について回収し、マルセルに謝らせたのは、単なるモブ扱いをしない丁寧な作りで好感です。

Bパートでは、レーナが86の墓標に参るシーンでOPの境界線がかかりますが、サビの「境界線の向こう側で、忘れさられ終わる定め」という歌詞に被せるようにレーナに「忘れません」と言わせたり、Cパートの挿入歌「LilaS」でも、「瞼からあふれた」という歌詞をレーナが涙を流すシーンに合わせているなど、芸が細かいです。

1周目の視聴時は、レーナが86の墓標(旧ファイドの壊れたスカベンジャーのある場所)で死者の紙を入れたケースを置いた時に、なぜ5人の紙を入れなかったのか(ここまで辿り着いて死んだと思わせたほうが、再会のサプライズが増すと思ったので)疑問を感じましたが、86の墓標で時間をかけて名前を確認し、5人の名前がなかったので、5人の紙も入れるつもりだったが入れられなかった(だから手に持ったままの状態にもなった)、と考えることで納得できました。(エルンストの「誰かを悼む時間を遅いなどとは思いませんよ」という台詞で説明もしている)

Cパートのファイド視点。レーナ(の印象)について話しているようです。
ライデンは、「俺もちょっと見たんだよな~」と言っていますが、これは9話の視覚同調をした時に、レーナ側の視覚を共有したため、モニターに反射するレーナの顔を見た話です。
アンジュは、レーナが黒猫を飼っているらしいという話をして、猫の繋がりからダイヤとの思い出を想起させる好演出でした。
セオは、3枚目の絵が未来の2人を的確に描いているようで笑ってしまいましたが、セオ自身の笑顔が最高でした。
クレナは、いつも真っすぐなところが良いですね。最後のエンドカードで足を出すところも。

これまでもいくつかのシーンでレールが描かれていたように思いますが、レールが途切れた先に再会の場所を設定していて、無限の未来を思わせる演出でした。
最後の、シンとレーナの手が近づいて86の影を作りタイトルロゴを出すというのもセンスの塊で、どうやって思いつくのかと脱帽しました。初見で、手が近づいたことに違和感を覚えリプレイして、その演出を理解した時は興奮しました(笑)

22話でのシンの進むべき道が示され(「まだ名乗れない。「追いつく」と言われたから。追いついて、たどり着いた先がこんなありさまじゃあんまりだろう。進んだ先で、彼女が見るべき景色は、こんな戦場なんかじゃない。」という所ですね。これは本作で答えを出す必要があると思っていましたので、しっかり自身の問題に決着をつけた点で評価しています)ましたが、最後の1話で何をするのか、当然再会はするのでしょうが、22話も十二分に美しいシーンだったのに、そこで再会させないで、それを超える形で再会できるのか疑問でしたが…杞憂でした。

エルンストが「理想的なボーイミーツガール」になるようサプライズ演出をし(見せたいところがあると86の墓標を案内し、軍の幹部とも共有しているところから確信犯です)、シーン栄えの良い舞台が用意され、それに神懸った挿入歌が乗り、こんなに綺麗な形で締めくくられるとは…、想像を超えた満足のいく最終回でした。

正直、スピアヘッド戦隊が更なる戦闘の中で誰も死なず、リアリティ面が下がった部分は否めませんが、最終回の再会時に誰か1人でも死んでいたら、再会の幸せを心から感じることはできなくなるでしょうから、この最終回のためだったと思えば納得の脚本です。{/netabare}

ということで、久しぶりに世界にどっぷり浸かれた作品でした。
評価点は4.4~4.7の間で彷徨いましたが、とりあえずこの評価に落ち着きました。
第2クールは前述のとおり、最終話を除けば全体的に第1クールよりも見劣りし、良作レベルなのはご留意いただきたいですが、第1クール目の重さに耐えられ、楽しめた方は最後まで視聴すべきと思います。

(参考評価:12話4.3→13話4.2→18話4.0→22話4.2→23話4.6)
(視聴2022.8)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

70.9 7 不気味で熱いなアニメランキング7位
ゴジラ S.P<シンギュラポイント>(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (188)
585人が棚に入れました
2030年、千葉県逃尾市。“何でも屋"な町工場「オオタキファクトリー」の有川ユンは、誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ。空想生物を研究する大学院生の神野銘は、旧嗣野地区管理局“ミサキオク"で受信された謎の信号の調査へ。まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、それぞれの場所で同じ歌を耳にする。その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。

声優・キャラクター
宮本侑芽、石毛翔弥、久野美咲、釘宮理恵、木内太郎、高木渉、竹内絢子、阿座上洋平、浦山迅、小岩井ことり、鈴村健一、幸田夏穂、手塚ヒロミチ、置鮎龍太郎、小野寺瑠奈、三宅健太、磯辺万沙子、志村知幸
ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

大迫力の怪獣アニメ、脚本も魅力的

【総合評価☆☆☆☆】
 SFとは畢竟、リアルなホラ話だ。ガルシア=マルケスらのマジックリアリズムと同じく、観念を自在に操作できる文学でこそリアリティの純度が高まるのだが、映像表現にパワーがあれば、映画やアニメでも優れたSFが生み出せる。『ゴジラS.P』は、怪獣を主役としたSFアニメの秀作である。
 ジャルゴンを撒き散らした脚本が(良い意味で)見事な目眩ましとなっているものの、話の筋は至ってシンプル。{netabare}日常の片隅に非日常の兆しが現れ、しだいに異常性が増殖し、ついには世界崩壊へと至(りそうにな)る物語である。こうしたメインプロットは、黒沢清の傑作『回路』とそっくり。『ゴジラS.P』では、“紅塵”や“超時間計算機”のような謎を解く鍵かと思わせるアイテムが登場するが、『回路』における「ネットから幽霊が溢れ出す」という設定と同じく、一種のマクガフィン(話を進めるためだけに導入される設定・道具)だと割り切った方がいい。{/netabare}

【迫力ある怪獣の造形】
 『ゴジラS.P』の主眼は、怪獣たちの造形にある。CGを用いた滑らかな映像が、大迫力を生み出す。
 怪獣のデザインには、3つのパターンがある。第1は、ラドンやマンダのように、古生物学や神話、先行作品から原型を借用したもので、最も効果を上げている。第2は、ゴジラの造形で、『シン・ゴジラ』を踏襲し環境に応じて大きく変態する。『シン・ゴジラ』がなければ驚異的な表現だが、いかんせん、二番煎じの感は免れない。第3は、恐竜をベースに突起物やカラーリングで粉飾したアンギラスとサルンガ。ウルトラセブン以降のウルトラ・シリーズに登場する怪獣たちを思わせ、平凡でひねりがない。特に、サルンガのシーンはすべて興醒めであり、その特殊な役回りを考慮して、もっと意表を突くデザインにしてほしかった(諸星大二郎の描くモンスターのような…)。
 興奮させられるのは、何と言っても、ラドンとマンダが活躍するシーン。マンダは、東宝映画『海底軍艦』でムウ帝国の守護神として崇められる海竜。鱗をパタパタと動かし体を大きくひねる初登場シーンこそ素晴らしいものの、それ以降はほとんど活躍の場がなかった。ところが、『ゴジラS.P』では何頭ものマンダが波しぶきを上げて進み、迫力満点である。第5話アヴァン、マンダが振り上げた尾を自衛隊のヘリがかろうじて避けるシーンでは、思わず「おおぉおぉぉ」と声を上げてしまった。OPで尻尾だけ登場するところも、要注目。
 本アニメのラドンは、翼竜ケツァルコアトルスまんまの姿に描かれる。私は、あらゆる怪獣の中で、リトラリアとともにラドンが最も好きだが、操演が難しいせいか、実写映画では見せ場に乏しい(余談だが、米映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のラドンは超絶的にカッコイイ。空中でキングギドラと激突する)。『ゴジラS.P』の場合、外見は私好みでないものの、鳥系の怪獣が活躍してくれるだけで嬉しい。中でも、第3話「のばえのきょうふ」は、初めから終わりまでラドンの独壇場。映画『ジュラシック・パーク』でヴェロキラプトルが人間を追い詰めるシーンに匹敵する、スリルとサスペンスを味わわせてくれる。{netabare}後半でラドンが次々と墜落するところは、東宝映画『空の大怪獣ラドン』における哀切を極めたラストシーンへのオマージュか。{/netabare}
 ラドンやマンダの描写では、表面的な派手さを抑制しながら的確なコマ割りによって迫力を増しており、演出の技量が抜群である。これは、隠れた傑作『RIDEBACK』を作った監督・高橋敦史の手腕によるものだろう。高橋は『RIDEBACK』以降、本格的なテレビアニメの監督をしておらず、「干されていたのでは…」と気になる。これだけ才能があるのだから、もっと積極的に起用してほしい。

【脚本の妙味】
 見所の多い怪獣たちと比べると、人間はあまり好意的に描かれていないが、これはむしろ円城塔による脚本の妙味と言うべきである。
 ステープルドンやレム、ストルガツキー兄弟らの思弁的SFが好きな私は、小松左京や光瀬龍が幅をきかせていた頃の日本のSFは嫌いだった。しかし、今世紀に入って状況が変わる。惜しくも早世した伊藤計劃をはじめ、円城塔、冲方丁、宮内悠介ら70年代生まれの作家が、やや年長の飛浩隆らとともに、社会を飛び越えて世界そのものと人間の関わりを見据える作品を次々と発表し始めたのである(同じ頃、テッド・チャンやケン・リュウらによる中華SFも隆盛期を迎えており、SF文学界では世界的な地殻変動が進んでいるようだ)。
 中でも円城塔は、物理学科出身の理系作家として、現実とは異なる世界のあり方を追求する点に特徴がある。小説『文字渦』を(読む人が)読めば凄さがわかるだろう。アニメでは、『スペース☆ダンディ』第11話「お前をネバー思い出せないじゃんよ」と第24話「次元の違う話じゃんよ」の脚本を執筆した。この第11話は、高橋敦史が絵コンテ・演出を担当しており、『ゴジラS.P』での共同作業へとつながったらしい。
 円城の作品では、ウェットな人間関係の描写は極力避けられる。主要登場人物は、場の空気を読まず世界の本質に目を向ける変人ばかり。こうした特徴は、『ゴジラS.P』の脚本でも遺憾なく発揮される。
 主人公は、神野銘(♀)と有川ユン(♂)の二人。抜群の才能を持つ若い男女が協力してゴジラに立ち向かうというストーリーなのに、恋愛沙汰が全くないのが潔い。二人とも、自分の置かれた状況を客観的に判断できないようで、平然と異常な行動をとる。神野は、現実にはあり得ない生物を考えるのが研究テーマの院生だが、私も「時間が2次元の世界で知的生命は歴史をどう認識するか」などと真剣に悩んだことがあるので、「あ、同類だ」と思ってしまった。
 これ以外の脇役は、まともさが災いして危機に巻き込まれる不運な人々(ミサキオク職員・佐藤くんのような)と、主人公以上にクレージーな牽引役(葦原博士とか)に截然と分かたれる。一見マッドなようで、実は結構まともに巻き込まれていくベイラ・バーンがカワイイ。
 理系作家の脚本らしく、科学的トピックスが(事実を少し歪曲して)紹介されるところも楽しい。コンピュータを利用した分子設計によって、自然界に存在しない新素材を生み出す試みは、現在、多くの研究者が実際に取り組み中。負の屈折率を持つ媒質も、実現可能性があるらしい。ただし、作中で紹介されるアーキタイプのように、時間方向に負の屈折率で曲げるのは不可能。光子はボソンなので、反粒子が存在しないし…。
 ところで、シンギュラポイント(特異点)というホラ話をどう解釈すべきかというと、それは、{netabare}見る人が勝手に考えればいい。{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★☆☆☆☆ 1.0

馬鹿にするな。ゴジラでもSFでもAIものでもない。

 ちょっと冷静になってからの追記です。本作の何が気に入らないかを冷静に考えると、現実の世界という系の上に完全に別の系を乗っけてSFオナニーをしているように見える点です。ここでの系というのは法則が完結する一つの閉鎖した理屈だと思ってください。
 ゴジラSPの物語の構成は多分よくできているのでしょうが、最終話になるまでは同じ現象を別の系を使って説明できるような気がしてなりません。つまり、物語を見ながらの考察が不可能だと言いたいわけです。

 結末を見てから、あれはこういう意味か、とか、そういう表現だったのね、という楽しみ方はできるでしょう。でも、途中までは物語は構造的に別の系の別の解釈に置換可能な気がします。

 つまり、サイエンスになっていない気がしたからです。子供が自分のルールでなぞなぞをして「はい、君間違い」といわれている気がしたともいえるでしょう。

 ユークリット幾何学では、非ユークリット幾何学は解けないということです。非ユークリット幾何学内の事象としてルールの説明があって、フェアな物語展開がされれば、立派にSFになるのでしょうが、これはクリエーター側の騙しに近い作品に見えます。
 最後に平行線の定理が違うもんねーと言われている気がしました。

 また、ゴジラという存在がメタ的に扱われている気がします。本作において、ゴジラという名を冠した作品だからゴジラが出てくると言っているようにしか見えません。これもゴジラでなくても成立する部分です。
 ゴジラが出現した理由って結局語られてないですよね。これってゴーストバスターズのマシュマロマンだって言われている気がしてなりません。

 つまり、ゴジラSPという閉じた系の中で、SFオナニー、考察オナニーはできるでしょう。それは深く考えさせる話かもしれません。それが面白いという人も沢山いるでしょう。

 ですが、私はSF作品でもゴジラ作品とも言えないだろうと思ったわけです。深掘りと考察が足りていない可能性は十分ありますが、ゴジラが出なさすぎて頭にきて最後は流し見だったので。私の見た範囲ではそうとれました。

以下、以前のレビューです。

{netabare}13話まで見て。非常に不愉快です。面白い面白くないは好み、向き不向き、気分があるので人それぞれです。
 でも、本作はゴジラを冠してゴジラではない。SF設定があるように見せかけて、未知の物質、未知の理論、未知の解決方法ってなんですか。言葉だけ特異点特異点って、ホーキング理論やビックバン理論の説明の新解釈みたいなわけでもないし。
 そして、アプリレベルのAIの進化版が解決?もう、滅茶苦茶です。
 ネット○リックスは日本の視聴者を馬鹿にしているとしか思えません。

 最後まで見たのは、面白いからではありません。最後まで見たけど滅茶苦茶だった、と言いたかったから我慢してみました。


6話までの感想
 職人肌の老人が活躍する。性格がひねくれた主人公とそのバディ、そして、年若い天才少女科学者。
その他、人物造形はちょっと笑ってしまうくらいテンプレです。

 プロットも、広がっていた謎が収束していくタイプの構成で、謎の作り方としては、個々の要素にこだわる必要はなく、結局は、どこかでバーンとゴジラ登場で盛り上げるんだろうなあ、という感じ。エンディングの捻りを期待したいところ。

 SF要素として難解な用語をちりばめた疑似科学で説得性を持たせている感じで、これも見ていて赤面する感じがあります。

 しかし、作画は奇麗、動きもいい、何よりヒロインが滅茶苦茶可愛い、というアニメとしての強みは素晴らしいです。

 また、プロットや話の組み立て方はほぼテンプレで、展開は読めるのですが、ストーリーは面白いので、楽しむ分にはかなり良質の作品かと思います。

 まあ、強いて上げればゴジラである必然性があるか、でしょうね。本来、ゴジラはどこまで行っても反核兵器が主題であるべきで、その意味では本作はゴジラではない気がしますが、これもいい意味で裏切って欲しいところです。

7話見て追加
 冒頭からゴジラのテーマ音楽きましたね。特にOPの後のストリングスでゴジラの主題が流れてるのがゾクゾクしました。

 {netabare}ですが、あの地元の伝承はちょっと…と思います。あれだけ近世的な絵があるなら、前にゴジラでてたときの記録は普通にあるだろうと思いますよね。あれがなくても話は展開できるのですから、ギミック多すぎの謎のための謎はちょっと恥ずかしくなるのでやめてほしいです。

 紅塵 こうじん(漢字わかりません)を無害化できる。でましたね。ということは、アンギラスサイド×ゴジラ・ラドンサイドの戦い?アンギラスの周辺には赤い砂はないし、時間をさかのぼれるし。
 それはそれとして、ゴジラ対アンギラス&ジェットジャガーをやるなら、オーソゴナル…アナライザーとかいう話をベースに置かないほうが良かったのではと思います。未知の物質にストーリーの骨子を委ねるというのはよっぽど練らないと厳しいですよね。SF設定としてうなるわけでもないし…{/netabare}

 ゴジラが暴れるところは見たいので、まだ、見続けます。がんばってほしいなあ。

 8話みて。
 いや、怪獣パートすごいじゃないですか。なんで、これをもっと…。
この世は神のコンピュータみたいなやつはいいので、ゴジラですよ、ゴジラ!


 9話です。
 あのゴジラを爆撃とかありえないでしょう。人類はそんなに馬鹿じゃないです。それに、バンカーバスターでゴジラを攻撃する絵はシンゴジラで見ました。新味が全然ありません。

 クモも面白くないし。ヘドラにでも化けるんですかね?それにしたって2週は引っ張りすぎ。

 観念的なSFになっていないSFで謎を作っている気になっている。なんか、言葉を弄んでいるだけ。全然興味が持てない。
 最後の期待はやっぱりゴジラの映像ですけど…いや、この分じゃ駄目かなあ…。

10話 ゴジラ来たー!!!
まあ、映像はシンゴジラですが、いいです。あと5話早く…でも、まあ、やっとです。
なお、もう怪獣シーン以外は飛ばしてます。どうでもいいので。

11話 ………。誰かようつべにゴジラのシーンだけアップしてください。いや、違法ですので、嘘ですけど。これ2クールなんですかね。

12話です。もはやゴジラの名をかたった詐欺に見えます。なんなんでしょうか。なぜ、時間とか計算とかいう抽象概念を弄んでSFをやっているように見せかける?解決のための味付け程度ならまだ許せるが、中心にもってきておいて何のSF的な深みもない。
 SFへの裏切り、ゴジラ詐欺。最悪です。 {/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 11

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

抗えない未来(ゴジラ)を、覆せ。

この作品はオリジナルアニメだったみたいですね。

公式サイトに「ゴジラ映画ヒストリー」が記載されていたので覗いてみると、第1作が公開されたのが1954年の11月3日だそうです。
そこから、日本で制作された実写版が全29作で、ハリウッドで制作された実写版が全3作。
そして日本で制作されたアニメ版が2017年から2018年に公開された映画『GODZILLA』の3部作ということで、これまで何と35作もの作品が作られていたんですよね。
改めてキャラクターとしてのゴジラの人気の高さを知った気がします。

とは言え、ゴジラシリーズは幼い頃に何作か見た記憶がありますが、物語どころかどの作品を視聴したのかもすっかり忘れてしまっている状態だったので、私にとっては結構新鮮な気持ちで視聴に臨むことができました。


2030年、千葉県逃尾市。

“何でも屋”な町工場「オオタキファクトリー」の有川ユンは、
誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ。

空想生物を研究する大学院生の神野銘は、
旧嗣野地区管理局“ミサキオク”で受信された謎の信号の調査へ。

まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、
それぞれの場所で同じ歌を耳にする。

その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。

孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。

果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

完走して思ったこと…
ストーリーが頭に入って来なかったのは何故なんだろう…と今でも考えています。
2人の主人公がアプローチは異なるものの、同じくゴジラの脅威に立ち向かっているという幹の部分は理解できましたが、枝葉の部分が難解だったのか、私の理解が悪かったのか…

そもそも、ゴジラや怪獣がどうして暴れているのか、人類に危害を加えるのかがサッパリ分からなかったんですよね。
ゴジラって、人間の味方じゃなかったの…?
と思っていましたが、どうやら公開初期の頃は人類にとって恐怖の対象だったみたいです。
ゴジラが恐怖の対象って…恥ずかしながら知りませんでした^^;

私自身がこんな感じだったので、宮本さん、くのちゃん、くぎゅが頑張っていたのは肌身で感じましたが、物語には正直あまり入り込めませんでした。

それと、私の集中力を削ぐ要因が2つあったのも事実です。
1つ目は、くのちゃんの演じている「ペロ2」がずっと「ゼロツー」に聞こえていて、名前を呼ばれるたびに、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」の「ゼロツー(CV:ハルカス)」が脳裏をよぎったこと…

そして2つ目は、物語の中で「紅塵(こうじん)」が街を覆いつくす場面があるのですが、普段「こうじん」という単語自体に聞き慣れていないせいか、聞くたびに「虚構推理」の「鋼人七瀬」と、あかりん演じる琴子ちゃんが脳裏をよぎっていたこと…

極力考えないようにと思っていましたが結果的にダメでしたね^^;

理解できたらきっと面白い作品だと思うんですけれど…
もう1回視聴したら印象が変わるのかもしれません。

オープニングテーマは、BiSHさんによる「in case...」
エンディングテーマは、ポルカドットスティングレイさんによる「青い」
個人的にはオープニングの楽曲が好みでした。

1クール全13話の物語でした。
作画もしっかり動いていましたし、怪獣も迫力があって見応えは十分だったと思います。
最終話で、続編への布石と思える1シーンがありましたが、続編はあるんでしょうか。
続編があるなら、この作品を再マラソンして視聴に臨みたいと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 18
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