ヒューマンドラマでシリアスなおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのヒューマンドラマでシリアスな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月06日の時点で一番のヒューマンドラマでシリアスなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

77.9 1 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング1位
ZEGAPAIN ゼーガペイン(TVアニメ動画)

2006年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (1102)
6615人が棚に入れました
未来的にデザインされた街・舞浜市に住み、近郊の高校に通う普通の学生、キョウ。たった1人で水泳部を切り盛りする彼は、中学以来の因縁を持ち難癖をつけてくる宿敵達とのいざこざも意に介せず、練習と水泳部への勧誘の為、学校の室内プールへと向かう毎日。
ある日、幼なじみのリョーコに頼まれ、映画研究部作品の撮影中、やる気の無いキョウはNGを出し撮影は中断。ふと、窓の外を見るとそこで彼は飛び込み台の最上段に立つ、1人の見知らぬ美少女・シズノを見つける。
水泳部入部希望者と察したキョウは、慌ててプールへと急ぐが、シズノは声にならない謎の言葉を残し、華麗な飛び込みを見せ忽然と姿を消す。シズノの事が忘れられないキョウだったが、程無くして彼女はキョウの自室に瞬間移動したかの如く唐突に現れる。
シズノはキョウに「ゲーム」の始まりを宣言。彼女の導きのままにキョウは異空間へ転送され、美しい光の装甲をまとった巨大ロボット「ゼーガペイン・アルティール」に乗り込み、敵と目されるキャラクターをシズノと共に倒していく。
だがしばらくして、キョウは様々な疑問に対峙していく事になる…。

声優・キャラクター
浅沼晋太郎、花澤香菜、川澄綾子、朴璐美、牧野由依、渡辺明乃、坪井智浩、井上麻里奈、吉野裕行、加藤将之、神谷浩史、ゆかな、家中宏、久川綾
ネタバレ

sekimayori さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ありとあらゆるもの 【96点】

「生」の在り方と「存在」の本質を問う、青春ロボットSF。
過酷な戦いと瑞々しい青春グラフィティが共存し、情緒的でありながら「存在」の哲学的考察にまで冷静に踏み込んだ、大好きな作品です。

惜しむらくは知名度が微妙に低い点。
これほど夏、殊に夜更けと朝焼けにマッチする作品もないと思うので、ぜひこの時期に。
SF>青春>>>ロボットな感じなので、ロボが苦手な方でも大丈夫なはず。
ネタバレを避けて、とにかく6話まで我慢強く観ていただきたく。

軽く感想を。

【○良い点】 4つ
①「幽霊」の立場から問う、「生」と「自己」
②貫かれた情緒的SF
③インテリだけど感性的なキョウと、本作のカラーを決めたカミナギ
④OP/ED:ここまで作品の内容・雰囲気とリンクした主題歌を他に知りません。
 特に、電子音の浮遊感に切ない歌詞を乗せたEDは、類稀な美しさ。
毎話のEDへの入りも素晴らしく、何度鳥肌が立ったことか(6、13話は白眉)。

【△少し残念な点】 2つ
①スロースターター: 他人に勧める際には、「6話まで観て」と付言せざるをえない。
②敵の描写:せっかく敵サイドも変化してゆくのに描写が薄く、黒幕も存在感が無い。
 だから、キョウの思想的な対立軸を、身内から出さざるを得なくなったわけで……。
 ここでもっとテーマを語ることができたはずで、すごく惜しい。

【×悪い点】 2つ
①ロボットバトル:CGの拙さ、使い回しももちろんですが、SEが安っぽい。
②ルーシェンのアレ:( ゜Д゜)ポカーン  憧れの発露、にしては行動が過激……。


こっから長々語ります、ほんと長いです、まとめろよ自分……。

■「幽霊」の立場から問う、「生」と「自己」
{netabare}
以下、本作の示す「生」と「自己」の在り方が個人的にドンピシャで大好きだというだけのお話です。

量子コンピュータ内でシミュレートされる波動関数に過ぎない自分たちは、はたして生きていると言えるのか?
そもそも、「自分」なんてものが存在しているのか?
肉体を持つ敵に対し、生命の残滓である自分たちは「幽霊」でしかないのではないか?
本作を貫くのが、この「生」「自己」に対する悲痛な疑問と、それに答えようとする(内面・外面双方において)絶望的な戦いです。

実は本作は、「生」とは何かというテーマに、作品としては明確には答えていません。
データである幻体も、人造生命である復元者も、もちろん肉体を得たキョウも生きている。
煮え切らないっちゃあ煮え切らないけど、丁寧に描かれた舞浜サーバーの幻体たちを生きていないと断ずることは、視聴者心理的にも難しい。
現実でも、倫理学からはクローン人間を否定することはできなくなっていると聞きます。
データと生命の差異という主題は、生命工学の発展により生命の定義が曖昧になった現代においては、より答えが出しづらくなったテーマなのかもしれません。

しかし一方でゼーガペインは、生命の定義が拡散するなかでの「自己」とは何かについては、一つのロールモデルを示しています。
幽霊としての永遠の命も悪くない。
そう言い切ったうえで、それでもキョウは、肉体を伴う「生」を選び取ります。
だって、ありとあらゆるものとガチンコで語り合いたいから。

この理由、(設定で多く取り入れられた)量子力学の「存在とは他者に観測されることによってはじめて確定しうる」というドグマに通じるものが。
また、作中で言及のあった「色即是空、空即是色」にも、「すべてのものが網み目のようにお互いに関係しあって存在していて、単独で存在するものはない」という意味が含まれるようです。
参考:http://www.bukkyo-kikaku.com/no_89_11.htm(※仏教系のページです)
共通するのは、自己が存在しうるのは他者との営みの中においてのみである、という意識。

生命の身体性に疑問符が付きつけられ、肉体に宿るはずの自己の確証も希薄化する時代。
その中にあって、本作は、自己のよりどころを他者に求めます。
個人的な話で恐縮だけど、一人黙々とキーボードでレビューを打ち込んでると、自分の意見に「自分」ってのがあるのか、不安になったりすることも。
でもレビューを読んでいただいたりサンキューいただいたり、その上メッセージまでいただけたりすると、とりあえず他人と同じ/違う意見を持つ自分がいるんだな、と少し実感できたりします。
そういった交流を通じて意見が変わったりもするけれど、そういう変化も「自己」の一部なんですよね。
(そんなことでしか自己承認欲求満たせないネット弁慶乙、とか言わないよーに。
リアルが寂しいんだからしかたねーのです。
空から突然女の子降ってこないかな……)
ということで、揺らぐ実存を他人のまなざしによって補完しあうという「自己」の捉え方は、少なくとも私にはとても好ましいものでした。
「自分探し」の終着点が他者を拒絶して内面に引きこもることだったエヴァから、時は進んだんだなぁとも思えます。

同時に、あえて「肉体」を重視する結論を出したのも、個人的にすごく好み。
また私事になるけど、散歩とか旅行とか好きなので、時々ネットでちょこちょこ調べた場所にふらっと出かけます。
実際に訪ねてみると、得てた情報よりすごかったりしょぼかったり色々なんですが、少なくとも絶対に想像と同じではなくて、それがすごく楽しい。
ネット社会ゆえに、実物を見た時の衝撃というか感触って、一層かけがえのないものになっているようにも思えたり。
そういう感触を味わうには、やはり肉体あってこそ。
森羅万象に素手で触れあえるというのは、決してなくならない身体の強みでしょう。

ただ、この結論がめちゃくちゃ青臭いことは否定できません。
このテーマに沿って観た方でも賛否両論好き嫌いは生じるだろう、とは思います。
いきなり飛び火するけど、まどかを「自己」確立と同時に枠組みとして世界から疎外し、それによって冷徹なまでの最大多数の最大幸福を実現したまどマギは、ほんと効率的で容赦ないなーと感心せざるを得ない。 {/netabare}


■貫かれた情緒的SF
{netabare}
テーマについて長く書きすぎたけど、ゼーガペインのストーリーは純粋に美しく、それだけで楽しめます。
絶望的な展開に青春グラフィティの透明感が強調されるのはもちろん、残酷なSF部分自体もすごく扇情的で心に残る。

これたぶん、本作が設定上ハードSFでありながら、ハードさにこだわっていないからこそだと思います。
「量子論」とか「光」とか、グッとくる単語を魔法の箱として使用することで、ガチガチな論理に支配されることなく、キャラの思いに対応する物語の展開を作り出せる。
整合性を重視した海外のハードSFとは毛色が違ってくるけど、想いが論理を超越する情緒的なストーリーは王道で大好物なわけで、日本独特の情緒的SFと言ってよいと思います。

それを支えるのが、ゼーガの屋台骨たる演出。
また、ご都合主義も疑問も、意外な力技と細かな伏線回収・セリフ回しでフォローしてくれます。
特にセリフ回し、「世界は光でいっぱいだよ」という一言で物語後を明るく暗示しつつまとめるセンスの良さには感服。
そしてやっぱりEDへの入り方が良いアニメは名作。

あと個人的には、幽霊が実存を語る、というテーマの語り方にすごく惹きつけられます。
SF、というか物語の機能の一つは、現実を超えたものを通じて現実を問う、というもの。
この点で、ゼーガは務めて正統派の、「SFしてる」SFだと言えるはず。 {/netabare}


■インテリだけど感性的なキョウと、本作のカラーを決めたカミナギ
{netabare}
AIやオリジナルシマとの問答から伺えるように、キョウって本当はかなりのインテリとして造形されています。
一方メンタリティは一見熱血バカのそれで、実際そう揶揄されてるのを見かけたことが。

でも個人的な見立てでは、それは違うよ、と。
キョウの熱血は、知性を備えた人間が考え悩んでそれでも答えが出ないときに、最後によって立つところの感性を言葉にしたもの。
それが発露するのは想いが理屈を超えた瞬間であり、だからこそ視聴者としては「舞浜シャイニングオーシャンパンチ」なんてクソダサなネーミングにすら笑みと涙がこぼれるわけで。
同時に、自己の思考のみで扱える理論・知識ではなく、他者との交流で育まなければならない感性を大事にする姿は、先に書いた「生」の在り方を謳いあげるのにとてもよくマッチしていました。
善意解釈しすぎかもしれないけれど。
ということで、キョウはスマートさと人間的な熱を同時に感じさせる、非常に魅力的な主人公だというのが私の中での結論です。

あと、絶望的な展開ばかりのゼーガが爽やかな作品として成立しえたのは、ひとえにカミナギのおかげ。
シズノ先輩には悪いけどこれだけは確定事項。
もともとの清涼感溢れる幼馴染キャラに、花澤さんの初々しい演技が合わさって、尋常じゃない瑞々しさとほんの少しの健全なエロスを醸し出していました。

おまけ。
偏見と劣情にまみれたカミナギ名台詞BEST3
1.舌足らずな「キョウちゃん」全般
2.(パイロットスーツを見たキョウの「なんかエロいな」に対し)「ありがとっ」
3.「一緒にいちゃ、やだ?」 {/netabare}


私にとって他に代えがたい作品なので、冷静さを欠いた部分もあるけれど、とりあえずギリギリ今日エンタングル(レビュー投稿)できてよかった。
1年後まで更新したくないから、誤字とかあったら死ねる……。


【個人的指標】 96点

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15

マスルール♪ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

【ネタバレ有】「“生きる”ことの、本当の意味を教えてくれる名作―!!」

 
 サンライズ製作のロボットアニメ作品―。


 タイトルの「ゼーガペイン」は、キャッチコピーである、
 ―「消されるな、この想い 忘れるな、我が痛み」―
から取られた、“是我が痛み(これ わが いたみ)”から来ている―(是我の音読みでゼーガ、痛みは英語でpain(ペイン))。



 ロボットアニメ作品というと、それだけで毛嫌いする人がいるが(実は自分もそうである…)、この作品のメインはロボットアクションではない―。


 それが、良い様にも悪い様にも出ているのだが―、この作品の軸は、ロボットアクションではなく、登場人物たちが、悩み…、苦しみ…、それを乗り越え成長する“ヒューマンドラマ”にある。

 にもかかわらず、この作品が放送されたのは、平日の夕方((木)18:00~18:30)で、この時間帯の視聴者層と言えば、まず間違いなく“子供”である。その子供たちが、ロボットアニメに期待しているのは、ヒューマンドラマな訳もなく、当然、“ロボットアクション”一択だろう(夕飯前に“命”について考え、涙している子供の姿など想像できない…いやしたくもない…)。


 (残念ながら)、作る側と世に出す側の考えが“一致”していない…。それが、この作品が日の目を見なかった一番の要因となったのではないだろうか―。



 前述、この作品の本質は“ヒューマンドラマ”と言ったが、具体的には2つのテーマを、(キャラだけでなく)視聴者に問いかけている。それは、
 ―「生きるとは何なのか―」
 ―「幸せとは何なのか―」
ということ…。


 最初に釘を刺しておくが、この2つの問いに“答え”はない―。
 それは人によって、考える時期によっても異なり、製作者側も、何もこの問いの答えを見つけてもらおうなどとは思っていない。

 しかし改めて、こうして全てを観終わった後に、この問いについて考えてみると、(この作品にハマった人なら間違いなく)、この2つの問いの“本質”…、“本当の深さ”を感じることが出来ると思う―。


 作中では、肉体の有無…、命の限り…、生きる目的…、命を懸ける理由…。様々なことを主人公の“キョウ”たちに問いかけ、それぞれが、自分の意志で考え行動することに意味を持たせている―。


 死ぬまで分からないかもしれない答えを考えるのは、結局のところ、「何のためになら行動できるか…」ということに尽きるのではないだろうか…。

 その何かを考えたとき、“誰かの顔”が浮かぶ人もいれば、やりたいこと…なりたい“夢の姿”が浮かぶ人もいるだろう。
 そうして前へと進む気になったのなら、それが、自分にとっての、この2つの問いの“答え”である―(偉そうに言っているが、自分も言葉に出来る答えはないです、すいません…(汗))。



 この作品を語る上で、もう一つ言及しておかなければならないのが、“最終話のラストシーン”である。あのシーンには間違いなく、製作者側の“想い”が込められており、(シマの置き土産ではないが…)視聴者への“最後のメッセージ”が込められている―。

 (最初に言っておくが、公式に発表された答えは無い。なので、各シーンごとに映された物や風景から、(それぞれが勝手に)、“読み解く”しかないのである。)


 では実際に、各シーンごとに見ていくと―、

 まず最初に“砂浜に埋もれているラジオ”がある。これは、キョウが一人で“リザレクションシステム”を製作していたラボにあったそれであり、そのボロボロさが“時間の経過”を表し、天気予報が放送されていることで、“人類が地球上に復活したこと”を暗示している―。


 次に、EDを挟んで、“古びた灯台”と、ベンチに座って“水を飲む一人の女性”が映される。この灯台は、(ラジオと同じように)、キョウが一人でいた頃は原形を留めていることから、同じく“時間の経過”を表している。


 水を飲む女性だが、これこそが、皆の意見を二分、三分する最大の理由である―。

 彼女は妊娠しており、どこかヒロインの“リョーコ”にも見て取れる(声優が同じなのは問題ではない)。

 ここで可能性として挙げられるのは、①リョーコ説、②リョーコ(とキョウ)の子孫説、③(抽象的な)未来を生きる人類説…である。

 灯台のさびれ具合などから、何十年かの時間経過があったとして、①の場合も十分に可能ではある。しかし、(基本的にハッピーエンドで終わるように作られているこの作品において)、あえて“一人のリョーコ”を映すということに意味を感じない(キョウは病気や寿命で、先に死んだという人もいるが、そうする必要性が全くない)。

 となると、②か③となるが、自分は③の説を押したいと思う。あの女性をリョーコの娘や孫と捉えるよりも―、
 もっと抽象的に、「その後の地球では、また以前のように人類が生活し、次の世代にも彼らの意思が受け継がれようとしていることを暗に示している…」…と考える方が、よりキョウやリョーコたちの“願い”(=また人類が、本物の世界で限りある命を生きること…)に近付いている気がする―。


 (ちなみにだが、この女性が飲んでいた水(コップ)には草が入っている。これは、アラスカ地方に伝わる、「“イェル”という創造神が、神々から光を盗み出す際に、葉に化けて、水を飲もうとする主神(しゅしん)の娘の体内に入り込んでその子として生まれ、神の孫として、そして神々の一人として生まれ、神々の中に潜入した―」という神話を、モチーフにしていると思われる―。

 この作品内においては、イェルとは“シズノ”のことで、実体を持たない彼女が、現実世界で人になるための手段が、女性の胎内に入り生まれることだったのではないか…、という意見が多くある。

 確かにこの作品は、(“ガルズオルム”や“オケアノス”など)神話から引用している部分が多くあり、この“草の葉のくだり”もおそらくそうだろう。しかし自分としては、そこまで完全に神話通りだと考える必要はなく―、シズノが人間になる方法も、具体的に描写する必要はないと思う。

 このシーンは、もっと漠然とした、“新しい生命の誕生を表現している…”ということでいいのではないだろうか―。)



 この作品は、わざわざ分かりやすく説明などしてくれない。自ら深く掘り下げないと、その“深さ”に気付かない―。

 この作品を“良い印象”で観終わった人たちの多くが、もっと評価されてもいいのではないかと思っていることだろう。この作品は、こうしてレビューを書いていたり、他の人達の感想や考察を見ていたりしてようやく、その深さに気付いていく(噛めば噛むほど味が出る…まるでスルメのような作品…って!下手っ…!!…(反省)…)。


 確かにこの作品は、良い言い方をすれば、テンポが良く…、悪い言い方をすれば、深く掘り下げない…。そこが、人によっては“爽快感”を感じたり、説明不足からくる“浅さ”に繋がったりするのだろう―。


 他にも、作画は2006年のロボットアニメということもあって、いかにもなCGに、上手いのか下手なのか分からないレベルの作画力―。

 タグにもあるが、声優はストレートとも棒読みとも取れる演技力で―、世界観も、キョウという“光源”のおかげで明るく見えるが、実際は“重い”設定である。(EDは最高♪)


 そういったものが表裏一体となっているのがこの作品であり、それが、この作品に対して感じる“完璧ではない傑作感”なのではないだろうか―。


 観終わった瞬間、「うわ…、最高だった…」と感動するのではなく、観終わった後、「うん、良かった…、良かったよ…」と、徐々にその良さを実感していく(まるでスルメのような…(反省)…)、そんな作品である―。



 最後に―、“命”をテーマにした作品は数多くある。その中で名作と呼ばれる作品もたくさんある。しかしこの作品は、今までのそんな作品とはまた一味違う、“命を扱う名作”である―。


 この作品はまず、命とは…生きるとは何なのかを問いかける。そして、何度も生きることの苦難を与え、死ぬことのない“永遠の命”がどれほど素晴らしいかを説く―。

 (観ていて思ったのだが、“クロシオ先輩”は実に良いアクセントになったなと思う。「虚構でもいいから死ぬことのない世界で生きたい…」…彼の考えは実に“普通”な考え方で、命を身近に感じてきた者ほど、その不安のない虚構の世界は、実に“楽な”世界に見えていただろう…)。


 現実の世界には文字通り何もなく、得ることが出来るのは“寿命”である。誰よりも生きることを望んだ者が、代価として得られるのが、“限りある命…”…まるでどっかの禅問答だ―。

 それでもキョウや他の人達はその道を選び、その方が良いと感じる自分もいる―。


 現実でもそうだろう―。限りがあるからこそ命を大切にするのと同じように、苦労するからこそ余計に幸せに感じる―。

 “痛み”なく手にしたものに本当の価値は見出せない―。そんな、当たり前だが皆が忘れていることを、改めて気付かせてくれる素晴らしい作品であった―。


 (終)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

ゼーガペイン放送から10週年を迎えて

2006年4月から放送されたサンライズのSFロボットアニメ(全26話)。

私的に2006年というのは、
日本アニメ界において非常に重大な節目となる年だったと思っています。
本作と同時期に放送された「涼宮ハルヒの憂鬱」は、
アニメ好きだけでなく、普段アニメに興味を示さない層の耳目を集めていましたし、
同年10月に放送開始した同じサンライズの作品
「コードギアス」については、もはや説明不要でしょう。
手軽に消費できる娯楽としてアニメが注目され始めた、そんな年だったと思います。
あくまで私感ですけどw
そういう大きな変革期の中で埋没してしまったのが本作「ゼーガペイン」でしょうw
「隠れた名作」、「知る人ぞ知る名作」というような表現がよくされる本作ですが、
一部の間では根強い人気を誇っており、2010年には受注限定でBD-BOXが販売。
そして、放送10週年となる今年(2016年)にはBD-BOXの一般販売が決定。
10月には、新カットも追加した劇場版が公開予定のようです。

ここからはネタバレありで語ります。未視聴の方は読まないでください。
これだけ良く出来ている作品です。
視聴前からネタバレ食らうのは損するどころの話ではないので。


{netabare}まず、ざっとですが本作を振り返ると(只のあらすじなので面倒だったら飛ばしてください)
主人公十凍京(ソゴルキョウ)たちが学園生活を送っていた舞浜市は、
実は虚構の世界(量子コンピューターサーバーに管理されている仮想世界)であり、
ゲームの世界だと思っていた荒廃した世界こそが現実世界であった。
人類はすべて滅亡しており、キョウたちも「幻体」と呼ばれる人格記憶体であり、
コンピューターに保存されたデータだったのである。

そのすべての元凶は超天才科学者のナーガである。
ナーガはかねてより時間の加速した量子サーバー内で人間を進化させる
「無限進化」を提唱しており、それを実現させる為に
致死率98%の「オルム・ウィルス」をばら撒き、人類を強制的に量子サーバー内に押し込む。
その後、ナーガはガルズオルムを組織し、
I.A.L.社のロボットを使い、環境実験空間「デフテラ領域」を世界中に作り始めた。
しかし、ループを観測しサーバーコントロールから離れた存在である
「セレブラント」達は対抗組織「セレブラム」を設立。
彼らはシマが開発した「ゼーガペイン」を始めとする光装甲を纏った「ホロニックアーマー」に乗り、
荒廃した現実世界でガルズオルムと戦い続けていた。(wikipedia「ゼーガペイン」参照、抜粋)


なんでwikiに載っていることを、わざわざここに記載したのかというと、
何故にこんな世界が形成されたのか?
敵は誰で、何の為に戦うのか?
これらの問いに対して、明確に言葉で説明できる素晴らしさを声を大にして言いたいからです。
明確に言葉で説明できるということは、
プロットの段階から設定やシナリオを相当練ってきている証左であると思います。

本作の構成要素を個別に分解していくと、
「どこか(他の作品)で見たことあるような」という、ある意味紋切り型なのかもしれません。
例えば、量子コンピューターの処理能力には限界がある為、
8月31日の午後0時になると4月5日までリセットされてしまう訳ですが、
これは、所謂ループものに内包される事象なのかもしれません。
ですが、本作をループものと言い切ってしまうのは些か乱暴だと思います。
ループものというのは、真の解決に向けてキャラが何度も同じ時間を繰り返すというものですが、
本作はそれを主とする作品ではありません。
ループすることが主ではなく、あくまでループという要素を取り扱っているに過ぎないのです。
そして、ループする原因を明確に言葉で説明できるというのが、
物語に説得力と厚みを持たせています。
こうした明確に言葉で説明できる個別の構成要素をいくつも積み重ねていくことによって、
全体で見ると、他の作品にはない本作独自の世界観が形成されているのだと思います。
例えるならば、誰もが知っている食材を使っているのですが、
それが上手く調理されているので、
出来上がった料理は今までありそうでなかった新しい美味だったと言ったところでしょうか。

本作の楽しみ方やその秘密について、さらに考えていきたいと思います。
通常、我々視聴者は作中の主人公よりも高次元の視点から、
観測者として物語を俯瞰することができます。
本作では、衝撃の事実(物語上の仕掛け)を主人公キョウに提示するのと同じタイミングで
視聴者に提示してきます。
我々視聴者は、衝撃の事実を突きつけられたキョウたちの狼狽、葛藤、
そして、どのように対峙していくのかとキョウたちと同目線で楽しむと同時に、
物語の観測者として、
さらなる仕掛けや物語の結末を予想して楽しむという二重の楽しみ方をしているのですが、
ここでも重要になってくるのが、その仕掛けを明確に言葉で説明できるということなのです。
どの作品がとは言いませんけど、
シーンありきでシナリオを作ったのだろうなという作品は多々存在するのですが、
そのほとんどすべてが設定やシナリオの脆弱性を露呈しています。
視聴者に解釈を委ねていると言えば聞こえはいいんですけどね。
突飛な展開で視聴者置いてけぼり、
真面目に予想していたのがアホらしくなってしまうことが多いんですよ。
それらの作品は、設定や起こった現象に対して
明確に言葉で説明できるということが欠如しているということなんですけど、
その有無は、作品の印象を大きく違えてしまう程重要なのだと思います。

では、これ程の作品が何故に埋もれてしまったのか?
単純に「華」がないからでしょうねw
萌えなど皆無な上、主人公十凍京(ソゴルキョウ)もイケメンという訳ではないしw
中の人と言っても、肝心の主人公十凍京(ソゴルキョウ)役の
浅沼晋太郎さんは、本作がテレビアニメ初出演。
ヒロインの守凪了子(カミナギ・リョーコ)役は当時ド新人のざーさんですからねw
あまりの棒演技に台詞の度にゲラゲラ笑ってしまった程ですw
また、戦闘シーンも迫力不足というのは正直否めません。
ただ、アクションが分かりやすかったというのはよかったと思います。
最近は3DCGの技術が著しく進化していて、迫力も段違いなのですが、
何をやっているのかいまいちよく分からないと感じることがしばしあるので。
あとは、序盤の地味過ぎる展開ですかねw
ファンの間で本作の公然の薦め文句は「取り敢えず6話まで観て」だそうですw
ほぼ同時期の同じサンライズ作品「コードギアス」と比べてしまうと、
圧倒的な華のなさですw {/netabare}


さて、私は冒頭で本作が放送開始された2006年は、
手軽に消費できる娯楽としてアニメが注目され始めた年と言いました。
宮崎駿監督の言葉を借りれば、
ポリポリとポテトチップを食べるように消費されているということなのでしょうけど、
2006年から今日に至るまでに、こういった傾向はより顕在化しているように思えます。
2000年~2011年の期間では、深夜アニメの放送本数は2006年の93本をピークに、
そこから2011年までは減少傾向にあったのですが、
2012年は106本、13年は128本、14年は159本、15年は170本と再び凄まじい勢いで
増加していっています。
もはやすべての作品を網羅することなど不可能と言ってもいいでしょう。
従って、「つまらないから何話で切った」、「よく分からないから何話で切った」
という声が増えていくのは至極当然のことなのかもしれません。

私はこのレビューで明確に言葉で説明できる、
すなわち、練りに練られた作品設定やシナリオの素晴らしさを説いてきたわけですけど、
このような状況下で、それがどれだけの重要性を持つのか、正直言って甚だ疑問です。
論理的な骨子、重厚なバックボーン、
そんなものよりも、たとえ唐突であろうとも、ご都合主義であろうとも、
まるで感動シーンを切り売りしたような、
視聴者にとって口当たりのよい、分かりやすいものの方が歓迎されるのではないでしょうか。
そんな風に思ってしまいます。

偏屈な私の知人はこんなことを言っていました。
「アニメは2000年代前半までだね。
それ以降のは一部を除いて視聴者に媚びているようなものばっかで視聴する価値がない」

こういう意見も分からなくはないですけど、
ただ、私はたとえ萌え豚御用達と揶揄されるような作品でも
素晴らしい作品はいくらでもあると思っています。
視聴者に媚びている作品=くだらない作品だとは露ほども思っていません。
どんな作品にも良い箇所はあるという考えです。
キャラが可愛いだけのアニメ? 
それの何が悪いんですか?

その一方で、本作のような骨太な作品がもっともっと評価されてほしいとも思っています。
そのような土壌の形成を心から望んでいます。
ゼーガペイン放送から10週年を迎えて、
我々アニメ視聴者を取り巻く環境は大きく変容しましたけど、
こんな時代だからこそ、より真摯にアニメ作品と向き合っていきたいとも思えます。
まぁ言っても娯楽なので、気楽に楽しむというのは大前提なんですけどねw

投稿 : 2024/11/02
♥ : 37

92.2 2 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング2位
COWBOY BEBOP - カウボーイビバップ(TVアニメ動画)

1998年春アニメ
★★★★★ 4.2 (3208)
15453人が棚に入れました
時は2071年、いっこうに減らない犯罪者達を捕らえるために「バウンティー・ハンター制度」が生まれた。賞金稼ぎのスパイクとジェットの2人が乗るビバップ号は、太陽系全域にまで拡大した人類の生活圏の中で、火星周辺を中心に活動している自家用宇宙船である。だが捕らえ方が荒っぽいために、捕り物後に巻き込まれた一般人からの訴訟も多く賠償させられてばかり。飛び込んでくる賞金首の情報に選り好みするほどの余裕も無く、日々を行き当たりばったりに過ごしていた…。

声優・キャラクター
山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみ、多田葵、高島雅羅、若本規夫

rFXEy91979 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

男の為のイケてるアニメ(時代重ねて重ねるほど、旨味増しまし間違いない)!

Session #1「アステロイド・ブルース Asteroid Blues」
余計な説明セリフはナシ、世界観もサラっと描写。貧乏賞金稼ぎ二人の金銭・食料問題等々、詰め込んだエピソードの何と無駄のない事か。加えて粋なスパイクや堅実派のジェットさん、如何わしい情報屋にボロなシップに寂れた美術。それらが醸す味わいがたまらないです。特に「古さ」が。
綺麗ばっかで泥臭さのないアニメだらけな昨今で、たまに「古さ」をオイシクできるアニメはやはり新鮮です。男も女もロマンチストで現実的でいつでも「死ねる」。ギリギリを生きるアウトローのカッコよさに魅せられます。
本気でアニメを愛したい人の「登竜門」の一本!是非!

Session #2「野良犬のストラット Stray Dog Strut」
インテリジェントなワンちゃん巡って、三者三様大暴れwまたも無駄が一切ない上、笑いたっぷり面白い!!あんなイカツイお尋ね者がワンちゃん一緒な時点で(笑)。しかもそこにトラック野郎(?)にスパイク絡んで、てんやわんや。オーソドックスシーンすら楽しくさせちゃうこのアニメは、やっぱり名作たる所以がちゃんと宿っておりました。
賞金獲得不明だけど、ビバップ号にワンちゃん乗車とこれってもしやレギュラーキャラ?だとしたらますますニヤニヤw
つまりメッチャ面白かった!!

Session #3「ホンキィ・トンク・ウィメン Honky Tonk Women」
香港チックな題名にギャンブルものの魅力付随。そんでもって遂に登場!不二子ちゃんキャラ、フェイ・バレンタイン!!やっぱ時代がどう変わろうと、魔性の女は魅力的だわw
今じゃギャンブルアニメって下火の印象しかないけど、そういう時にこの回見るとものすごい新鮮だよ。カジノ内部の裏取引に宇宙空間の騙し騙され。それを洒落たセンス使って、30分間堪能だから、ホントビバップスタッフってのはカッコいいを極めすぎてる。フェイの逃走もカッコいいし、アインもキュートで良い味してるし、このアニメであと何回悶絶されれば気が済むの!?
マジ今回もご馳走様です!!

Session #4「ゲイトウェイ・シャッフル Gateway Shuffle」
極悪ババアと最凶ウイルス。政府も絡んだ思惑に巻き込まれたメインキャラwマジ今回も大爆笑&大仰天でした。まさか助太刀したフェイが活躍できずに撤収とはねw
ホント毎回毎回と面白エピソード出まくりで、スタッフいつまでこの幸せな時間与えてくれるのよw正直昨今アニメでは味わえなかった満足感が!
ババアがウイルス壊れるか壊れないかでハラハラするのはベタだけど超サイコーで、笑いました。そりゃ笑うわ。
何といっても一笑いはワープ空間の大立ち回り。ミサイル防ぎに颯爽と駆け付けたスパイクの予想斜めなミサイル拡散。続けて美味しい頂戴と割り込んできたフェイちゃんがキメてくれると思いきや、またまたミサイル分裂・拡散。予想二度目の斜め自体に超焦ってビックらこいて、挙句ゲート封鎖通知で大慌ての大撤収。いやあ、ここは声でちゃうほど最高の場面だった。このシナリオ考えた人、ホント頭良すぎるよ!!
さてさて遂にフェイちゃんもビバップ号に乗船だし、今後はどんな大騒動が起こるのかな?ウッシッシですw

Session #5「堕天使たちのバラッド Ballad Of Fallen Angels」
ビターで甘みがどこにもないアダルトの為の回ですね。自称死人のスパイクに固執するビシャスの思い、今尚頭の片隅にまで残り続けるジュリアの気配…。ノワールものでのファム・ファタール(要は運命の女ですね。ちょっとカッコつけました)は男を滅ぼす魔性の女、ですけどジュリアは純な女と折半した女性ですね。男の抱く幻想だと自分は思ってしまいましたが(だってあれほどのいい女が男をずっと待ってるかな)、それでも脳裏に残り続ける気持ちはすっごく分かります。本気で惚れた女はやはり死ぬまで消えちゃあくれませんしね。
まああれほど強いビシャスがあっさり死ぬとは思わないけど、コイツはホントに質の悪いストレイドッグですね。だからこそ最終回が盛り上がったわけですが、彼も非常に哀しいですね。選んだ道とその末路が…。

Session #6「悪魔を憐れむ歌 Sympathy For The Devil」
永遠に死ねない身体は、どこかこう振り返ると吸血鬼を想起しますね。生き血を吸わなきゃ生きれない身とどこが似てると問われたら、劇中の彼のように誰かの命を狩り続ける。生を狩って自分の生を実感し死を刮目。アブノーマルが生きる糧と化してるところと答えますね。
王道を行ってるけど、哀愁を感じさせる王道ですごく好きです。終わりの鍵が始まりの中に隠されてたところもですし、それを黙って引き受けるスパイクもまた同じです。苦くてでも幸せなハッピーエンド。奥深いです。

Session #7「ヘヴィ・メタル・クイーン Heavy Metal Queen」
Session #8「ワルツ・フォー・ヴィーナス Waltz For Venus」
Session #9「ジャミング・ウィズ・エドワード Jamming With Edward」
Session #10「ガニメデ慕情 Ganymede Elegy」
Session #11「闇夜のヘヴィ・ロック Toys In The Attic」
Session #12「ジュピター・ジャズ(前編) Jupiter Jazz (PART 1)」
Session #13「ジュピター・ジャズ(後編) Jupiter Jazz (PART 2)」
Session #14「ボヘミアン・ラプソディ Bohemian Rhapsody」
Session #15「マイ・ファニー・ヴァレンタイン My Funny Valentine」
Session #16「ブラック・ドッグ・セレナーデ Black Dog Serenade」
Session #17「マッシュルーム・サンバ Mushroom Samba」
Session #18「スピーク・ライク・ア・チャイルド Speak Like a Child」
Session #19「ワイルド・ホーセス Wild Horses」
Session #20「道化師の鎮魂歌 Pierrot Le Fou」
Session #21「ブギ・ウギ・フンシェイ Boogie Woogie Feng Shui」
Session #22「カウボーイ・ファンク Cowboy Funk」
Session #23「ブレイン・スクラッチ Brain Scratch」
Session #24「ハード・ラック・ウーマン Hard Luck Woman」
Session #25「ザ・リアル・フォークブルース(前編) The Real Folk Blues (PART 1)」
Session #26「ザ・リアル・フォークブルース(後編) The Real Folk Blues (PART 2)」

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

俺TUEEEE!!ならぬ俺COOOOL!!な雰囲気アニメだけに、最後まで冷えたまま盛り上がらずに終わってしまった印象

宇宙を股にかける凄腕賞金稼ぎの青年スパイク。
彼の仕事ぶりや日々の生活ぶりには、どことなく心ここにあらずといった投げやりなけだるさが漂っていた。
彼の心の中にあるのはただひとつ、{netabare}昔所属していたチャイナ・マフィアで恋仲となった絶世の美女ジュリア{/netabare}のことだった。

・・・ということで、いつも醒めた目でタバコを燻(くゆ)らせるこの主人公が、とっても COOL!!(格好いい)・・・というのが本作の最大のセールスポイントだったのだろうと推測します。

但し、最近の本当に COOL としか言いようがない、何気ないシーンのひとつひとつが研ぎ澄まされた芸術作品のような造りの名作アニメ(例えば、PSYCHO-PASS)に比べると、いかんせん 1998年制作の本作は、脚本・作画・演出とも、どうしてもチープさが隠せないように私には見えてしまいました。


◆作品別評価

TV版       ☆ 並 3.5
劇場版(天国の扉) ★ 良 4.0
-------------------------------
総合       ☆ 並 3.6


※下記の各話評価のとおり、TV版は、★★(優秀回)以上が0、★(良回)6、☆(並回)16、×(疑問回)4、と全く盛り上がりに欠ける内容で、感動するシーンも心躍るシーンも無かったので、個人評価を、☆ 並 3.5 と低めに付けました。
※但し、その後に制作された劇場版『天国の扉』は、中盤以降そこそこ盛り上がったので、個人評価を、★ 良 4.0 としました。



◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回


====== COWBOY BEBOP - カウボーイビバップ - (1998年4月-6月) ======

{netabare}第1話 アステロイド・ブルース ☆ 非合法薬物窃盗犯(アシモフ)と身重妻
第2話 野良犬のストラット ☆ ペット窃盗犯(ハキム)とデータ犬(アイン)
第3話 ホンキィ・トンク・ウィメン ☆ フェイヴ・バレンタインと特殊チップ
第4話 ゲイトウェイ・シャッフル ★ ツィンクル・マリアと環境テロ集団 
第5話 堕天使たちのバラッド ★ ヴィシャスとの再会 ※第1話冒頭に繋がる 
第6話 悪魔を憐れむ歌 ☆ 不老少年(ウェン)
第7話 ヘヴィ・メタル・クイーン ☆ 伝説の賞金稼ぎの未亡人(VT) 
第8話 ワルツ・フォー・ヴィーナス ☆ ロコ&ステラ兄妹
第9話 ジャミング・ウィズ・エドワード ★ 地球の現状と凄腕ハッカー(ラディカル・エドワード)&AI
第10話 ガニメデ慕情 ☆ ジェットの元恋人(アリサ)と賞金首の情夫
第11話 闇夜のヘヴィ・ロック × 謎の宇宙生物の襲撃、オチがないのは×
第12話 ジュピター・ジャズ(前編) ☆ ヴィシャス再登場、グレン登場
第13話 ジュピター・ジャズ(後編) ☆ ジュリア-ヴィシャス-スパイクの因縁のチラ見せ回
第14話 ボヘミアン・ラプソディ × ヘックス老人(チェスマスター)の復讐計画 ※ただの茶番回
第15話 マイ・ファニー・ヴァレンタイン ☆ フェイの過去話、コールドスリープ
第16話 ブラック・ドッグ・セレナーデ ☆ ジェットの過去話、組織との因縁
第17話 マッシュルーム・サンバ ☆ 当て逃げ犯、不時着、違法キノコ
第18話 スピーク・ライク・ア・チャイルド ★ フェイの過去からのヴィデオ・メッセージ
第19話 ワイルド・ホーセス ☆ ソードフィッシュ号の危機、スペースシャトル
第20話 道化師の鎮魂歌 × マッド・ピエロとスパイクの死闘 ※脚本がお粗末
第21話 ブギ・ウギ・フンシェイ × 宇宙風水師パオの娘 ※この回も脚本がお粗末
第22話 カウボーイ・ファンク ☆ 連続爆破犯(テディー・ボマー)、賞金稼ぎ(アンディ) 
第23話 ブレイン・スクラッチ ☆ 新興宗教団体教祖Dr.ロンデスの正体
第24話 ハード・ラック・ウーマン ★ シンガポール、エドの父親、フェイに戻る記憶
第25話 ザ・リアル・フォークブルース(前編) ★ スパイクの無くしたもの、ジュリアの伝言、ヴィシャスの反逆
第26話 ザ・リアル・フォークブルース(後編) ☆ ジュリアの死、スパイクvs.ヴィシャス{/netabare}
----------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)0、★(良回)6、☆(並回)16、×(疑問回)4 ※個人評価 ☆ 3.5


OP 「Tank!」
ED 「THE REAL FOLK BLUES」


==== COWBOY BEBOP - カウボーイビバップ - 天国の扉 (2001年9月) ====

{netabare}全1話 ★ 不死の男(ヴィンセント)、ナノ・マシン兵器テロ ※第22-23話の間の出来事{/netabare}


(補記)

本作を視聴しながら思ったのですが、私はアニメ作品の評価方針として、
(1) 「その当時の作品としては凄い水準だった」とか「当時は凄く感動した」といった「思い入れ補正」をなるべく入れず、
(2) 現時点でのフラットな評価をしたい
・・・と考える傾向が強いようで、
本作のような、多くのファンのいるかっての「名作」であっても、現時点で「本当に感動できるか」「本当に心がワクワクするほど楽しめるか」という観点から、このような低めの個人評価となってしまうこともたまにあるようです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 35
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

20世紀の遺産を堪能する

OP『TANK!』。バラエティなどでよく使われててフレーズ耳に残ってるけど元ネタこれだったのね。


思えば20世紀のアニメーションなんですよね。
いまさらトライするのになにが動機づけになるのだろう。

よっぽどの有名タイトルか?
はたまた懐古趣味か?レトロ好きか?

クールで2桁をゆうに超える作品が投下されている今日この頃…
敢えていくには大義名分が欲しい私です。例によって地上波再放送。今回は関東ローカルTV埼玉さんの英断です。
めちゃくちゃかっこいい作品なのに合間のCMでは“餃子の満州”なんぞやってた2020年。

なお冒頭動機付けの“有名タイトルか?”“懐古趣味か?”“レトロ好きか?”
同時代を生きてはいましたが、なんせ当時はアニメを観てやしないのもあり懐古趣味のようなものはなく、こちらに限らずほぼほぼタイトルに魅かれてです。今回もそれ。


視聴前イメージだと“ややハードな雰囲気かっこいい系SF”ってのでしょうか。
観る前だと例えば“AKIRA(観た)”“攻殻機動隊(観てない)”“TIGER&BUNNY(観た)”あくまでジャケット判断。本作はこれらに近い雰囲気ありますね。あくまで見ためです(しつこい)。


 そして実際かっこいい


ややアップテンポでジャジーな劇伴に乗せて繰り広げられる賞金稼ぎの物語。一話完結型。全26話。完走して思った。

{netabare}意外と書くことが無い{/netabare}

伏線がどうとかキャラ掘り下げてどうとかがあるのかもしれないけどそんなんじゃない。見事な一話完結。引っ張っても前後編の2話セット止まり。リセットして次いってみよー!
恐らく最大の長所であり短所なんでしょう。

 {netabare}美学に極フリ{/netabare}

物語から受け取るメッセージは皆無。でもこれでいいんじゃなかろうか。スパイキーな仕上がりになってることを否定できる人はいないでしょう。
視聴感は『ルパン三世』に近いと思う。たまに人情話を挟んで普段はコミカル、ここ一番でやる時はやるみたいなやつ。
声優陣も豪華。

【賞金稼ぎな面々】
スパイク・スピーゲル(CV山寺宏一)
⇒主人公らしい主人公
ジェット・ブラック(CV石塚運昇)
 ⇒おっさんらしいおっさん
フェイ・ヴァレンタイン(CV林原めぐみ)
 ⇒ミステリアス成分抑えめな不二子ちゃん
エド(CV多田葵)
 ⇒ネジの弛んだスーパーハカー少女

今は大丈夫ですがもし当時に遡って視聴していたら、エヴァすら未見だった私にとってはらんま1/2のPちゃん(山寺さん)と女らんま(林原さん)のイメージが強かったためびっくらこいてたでしょう。運昇さん加えた三人のセリフ回しはとことん男前でした。


全てに高次元とは言いたくないですね。もちろん敬意を払ってのことです。
仕事柄チェーン展開してるコーヒー屋さんをよく利用します。一定のサービスレベルはどこも約束されていてお店ごとに差別化がある世の中には皆さんも慣れてるかと思います。
そこでふと個人経営店に迷い込んで思いの外良い時間、コーヒーもだし空間を満喫した感覚に似てるといえるかも。


思えば20世紀のアニメーションです。
ノウハウが蓄積されてきて予算さえあれば勝利の方程式を適用し得るのが21世紀になって早20年経過した今なんだと思います。
『エヴァンゲリオン』をアイコンに勃興してきた“大人も楽しめるアニメーション”時代の幕開けはこの頃でしょう。なんでもありな熱を感じますね。
だいたいおもちゃの売れないアニメを作るのなんておそらく出資者がいなかった頃合いじゃないですか。ゼロからイチを編み出したらもう遺産でしょう。


ここであらためて冒頭の“有名タイトルか?”“懐古趣味か?”“レトロ好きか?”
有名タイトルに吸い寄せられてみていくつか視聴し気づいたことは、この深夜アニメが本格化する黎明期作品の熱といいますか尖りっぷりといいますか。一昔二昔前ならではの魅力があることに確信持てましたよ。“レトロ好き”なる観点も“アリ”です。

 作りたいもの作ってたんだろうな~

がここにある。趣味が高じてる良作です。



※余談

■BE-BOPといえば?

{netabare}ハイスクールと反射的に答える私。{/netabare}

実際は1940年代チャーリー・パーカーあたりが提唱したジャズのいちスタイル。流行って廃れてそれでも現代で生き残ってるようです。
意味合いは“アウトロー”とか“自由な”とかのニュアンスが含まれてます。

お世辞にも優等生とはいえない主人公たち。そして月日が経っても「おもしれーじゃん」な作品にそのまま表れてますね。タイトルに偽りなし!

{netabare}どうでもいいこと思い出した。森田童子の曲中にチャーリー・パーカー登場してましたね。あのドラマもスパイキーだった。{/netabare}



{netabare}喫煙がかっこいいアニメなんて絶滅するんだろうな。吸い終わったのを踏んで火を消すシーンなんてごちゃごちゃ言われそう。時代は確実に流れてます。{/netabare}



視聴時期:2020年7月~12月 地上波再放送   

------


2020.11.29 初稿
2021.09.18 タイトル修正

投稿 : 2024/11/02
♥ : 49

80.6 3 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング3位
NHKにようこそ!/N・H・Kにようこそ!(TVアニメ動画)

2006年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (1539)
7908人が棚に入れました
大学を中退して4年目の佐藤達広は、ひきこもりとなっていた。佐藤は、自分が大学を辞め、無職でひきこもりであることなど全てが、謎の巨大組織の陰謀であると妄想する。その組織の名はNHK(日本ひきこもり協会)。そんな折、中原岬と名乗る謎の美少女が佐藤の前に現れる。佐藤をひきこもりから脱却させるべく、岬は「プロジェクト」の遂行を宣言。その「プロジェクト」の目的が不明のまま、岬による佐藤のカウンセリングが始まる。

声優・キャラクター
小泉豊、牧野由依、阪口大助、小林沙苗、早水リサ
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ヒキコモリ君の妄想話とナメていたら、意外と確りとした《BMG/青春もの》でした!

※レビュータイトルでネタバレ防止のため、変な略語になってますが、BMG={netabare}Boy Meets Girl{/netabare}のことです。
もっとも、18歳のヒロインはともかく、主人公の方は22歳の青年なので、この表現にはちょっと語弊があると思いますが、一応、物語のスタイルとしては、そう要約するのが一番適当なのではないかと。

◆「もどかしい世界の上で」が流れ出す第13話が転換点なので、初見者はそこまで我慢してね!!

歌手で声優の牧野由依さんのアルバム『天球の音楽』(2006年12月リリース)には、『ARIA』で使われた「ウンディーネ」「ユーフォリア」「シンフォニー」、それから『ツバサ・クロニクル』で使われた「アムリタ」「ジャスミン」「夢のツバサ」といった私の好きな曲が沢山収められているので、そのCDを流しっぱなしにして度々ドライブをしていた時期が以前ありました。

そしてそのアルバムの4番目の曲は、最初は馴染みがなかったのでSKIPすることが多かったのですが、慣れてくると何だかこれも良い曲だなぁ・・・と思い始めて、そのうちその曲がくるとそこだけリピートすることが屡々ありました。

・・・そうやって、別段曲名を調べることもなく何となく曲調と歌詞はだいたい覚え込んでいたのですが、たまたま本作の第13話を見ていたら、そのエンディングに突然、この馴染みのある曲が流れてきて、驚いてようやく曲名を調べたら、これが本作2クール目ED「もどかしい世界の上で」だったんですね。

本作自体も、その第13話が、丁度全24話の折り返し点でありシナリオの転換点になっていて、それまで本作のことを、「情けないヒキコモリ君の妄想まみれの下らないコメディだろう・・・」とナメていた私の心が、第13話での意外な展開と、そこでEDとして初めて流れた本曲によって、一気に揺さぶられてしまい、あとは最終回までガッツリ作品世界に惹き込まれてしまいました。

ラスト2話では、それまで謎だった{netabare}ヒロインの真意と目的{/netabare}が過不足なくきっちり開示され、それに対する{netabare}主人公のリアクションと変化{/netabare}も中途半端ではなく納得できる結末まで確りと描き出され、視聴前には思ってもみなかった《感動》まで味わうことが出来、その直後から1周目の時は早々に「ながら見」になってしまっていた序盤からもう一度確り見直そう、という気持ちになりました。


◆本作は、ヒロインの《ulterior motive(アルテリア・モウティヴ 隠された動機)》に見どころがある優秀作

私がこれまで視聴した作品で、同系列(隠された動機系)の名作/優秀作/人気作としては

(1) 『アイドル・マスター』 (2011年)(25話+劇場版) ※個人評価 ★★ 4.7
(2) 『俺の妹がこんなに可愛いはずがない』 (2009,13年)(31話) ※個人評価 ★★ 4.6
(3) 『四月は君の嘘』 (2014年)(24話) ※個人評価 ☆ 3.9

・・・の3本が挙げられると思います。
要するに、この手の作品は、

<1> 1周目では、我々視聴者は、「視点人物」たる「仮・主人公」の少年(ないし青年(*1))のモノの見え方や心情に沿って、謎めいたヒロインの行動動機や心情を訝(いぶか)しがりながら物語を追っていくしかないのですが、
<2> それらが開示されたあとの2周目では、今度は「真・主人公」たる「ヒロイン」の心情が、各々のシーンでどのように描き出されているのか?を読み取り/確認しながら、物語を再度追いかけていく、

・・・という二重の楽しみ方を出来ることになります。

(*1)『アイマス』の場合は、プロデューサーの視点。

一応、ここで私の意見を率直に述べると、上記の3作品の中で本サイトの総合評点が一番高い『四月は君の嘘』の場合は、該当レビューの方にも少し書きましたが、2周目視聴時点で気づくヒロインの描かれ方が、やはりどこかいい加減で中途半端(※肝心のシーンで急にギャグ調の作画に切り替わって何だか胡麻化された気分になってしまう点が特に・・・)であり、“泣ける”作品としては非常に需要にマッチして良く出来ているのだろう、とは思うけれども、私などが好む“心情描写系”作品としては、いまいち粗雑な出来なのでは?と思ってしまいます(※そのため私の個人評点もそこそこに留まる)。

一方、本作の場合は、いざ2周してみると存外にヒロインの側の《心情描写》が確りしている、というか、気合を入れて見ていなかった1周目では見過ごしてしまっていた彼女の心の動きが、実に細かくキチンと描き出されていることを、あちこちのシーンで確認できて、視聴時の満足度が跳ね上がってしまいました。

⇒ということで、本作の個人評価を、『君嘘』よりはだいぶ高いけど、『俺妹』よりはやや低い、★ 4.4 とします。

※ヒロインには大きく感情移入できたけど、ヒキコモリの主人公の方は色々とマイナス点が多くて、『俺妹』ほどには評価が高くなりませんでした(←それでも最後は{netabare}主人公も頑張ってくれた{/netabare}ので、完走後の後味は悪くないはず)。

《まとめ》
本作は、序盤の主人公のネガティブさに閉口してしまう方が多いと思いますが、そこを何とか我慢して切り抜ければ、中盤過ぎから急に面白くなり、最後は感動も出来てしまって、さらにもう一周したくなる、1粒で2度美味しい《感情描写系》の優秀作と思います。
とくに、『俺妹』や『アイマス』を、途中で飽きてきて断念したくなりながらも、頑張って視聴を続けたところ、途中から急に楽しくなって最後は確り感動できた人には、割と同様の視聴経験が出来る作品として、お薦めしたくなりました。


◆視聴メモ(2周目)

※上記のとおり本作の1周目の半ばまで、「ながら視聴」して視聴メモは全く取っていませんでした(従って以下のメモは2周目時点のものです)。
{netabare}
・第1話視聴終了時点
冒頭のシーンだけでも色々と気づくことが多くて・・・2周目に色々と発見がある作品はやはり名作なのかも?
そして、Aパートの終わりで早くもヒロイン登場←今考えると、本作ってこの第1話から最終話まで《引きこもり青年×動機を秘めた少女》の初対面からの《感情推移》を描いた作品として、実は全然ブレてなかったんだね(1周目視聴時は全然そうゆう展開になるとは想像できませんでした)。
・・・とゆーか、N・H・Kの陰謀って「Nihon・Hikikomori・Kyokai(日本ひきこもり協会)」ではなくて「Naka・Hara・misaKi(中原岬)」の陰謀だよね笑。
1周目は専ら主人公(※正確には視点人物)の側から、そして2周目になるとヒロイン目線をプラスしてより重層的に物語を追える作品と確定!
やっぱりそういう2度美味しい作品は良い!!!
・第2話視聴終了時点
引きこもりがよくSOHOなんて単語知っているな笑。
・第5話視聴終了時点
岬のカウンセリング第1回・・・八百万の神やフロイトの夢分析について岬より詳しい佐藤(←大学中退の22歳と18歳だとそうなるな普通。)
・第6-12話視聴終了時点
何気ないエピソードが淡々と続くが、後から考えると第13話までつなげていくこの一連の展開はなかなか良く出来ていると思う。
・第13話視聴終了時点
岬の意外な本心が噴出してしまう注目回であり、初めて流れる2番目ED「もどかしい世界の上で」も◎(初の★★(優秀回))。
・第15-19話視聴終了時点時点
佐藤がネトゲとマルチ商法に巻き込まれる話。
ここはシナリオの本筋には余りないマンネリ気味の展開で、ちょっと残念(個々のエピソード自体は面白いけど)。
・第23話視聴終了時点
特殊EDは多分ここだけ。流石にドラマチックな展開で2度目の★★。
・第24(最終)話視聴終了時点
佐藤がオカリンに見える!・・・というか、こっちの方が早かったんだね。
第1話冒頭の主人公の夢落ちと重なる内容は◎、ラストはあっさり展開でここも好感を持てました(3回目の★★)。
{/netabare}


◆制作情報
{netabare}
原作小説        滝本竜彦(WEBサイト「Boiled Eggs Online」2001年1-4月連載)
監督           山本裕介
シリーズ構成・脚本  西園悟
キャラクターデザイン 右湊具央、吉田隆彦
音楽           パール兄弟
アニメーション制作  GONZO{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

================== N・H・Kにようこそ! (2006年7-12月) ================

 - - - - - - - - OP「パズル」、ED「踊る赤ちゃん人間」 - - - - - - - - -
{netabare}
第1話 プロジェクトにようこそ! ★ 佐藤達広(22歳、大学中退ニート、ヒキコモリ歴まもなく4年)、N・H・K(日本ひきこもり協会)の陰謀?、中原岬(18歳)との出遭い、公園呼出し(岬のプロジェクト開始)
第2話 クリエイターにようこそ! ★ ヒキコモリ脱出サポート契約の提案、隣人アニヲタ(山崎薫、高校時代の文芸部の1年後輩)、岬との約束(制作ゲームを見せる)
第3話 美少女にようこそ! ★ ギャルゲー事始め、校門前取材(盗撮未遂と岬の意味不明な態度)
第4話 新世界にようこそ! ☆ 山崎との聖地・秋葉原巡礼(ヒロインのキャラ作り取材)、柏先輩との再会
第5話 カウンセリングにようこそ! ★ 続き、中原との契約成立、引きこもり脱出講義開始、ゲームシナリオ作り
第6話 クラスルームにようこそ! ★ 続き、山崎の彼女疑惑、伐々木デザイナー学院見学
第7話 モラトリアムにようこそ! ★ 母親からの上京連絡、岬の恋人役引き受け、初デート
第8話 中華街にようこそ! ★ 母親上京、3人のお食事会(横浜中華街)、芝居からのはみだしデート
第9話 夏の日にようこそ! ★ ゲーム作りの期限、山崎の初恋の思い出、夏祭り(岬との花火鑑賞)
第10話 ダークサイドにようこそ! ★ 岬に惹かれる気持ちと募る疑念、岬尾行、岬への捨てゼリフ(カウンセリング放棄)
第11話 陰謀にようこそ! ★ 柏先輩からの連絡・突然の来訪、先輩との思い出、「天国に一番近い島」オフ会へ
第12話 オフ会にようこそ! ★ 陰気な集団との無人島行き、オフ会の目的判明{/netabare}

 - - - OP「パズル -extra hot mix-」、ED「もどかしい世界の上で」 - - -
{netabare}
第13話 天国にようこそ! ★★ 山崎の岬問い詰め、集団自殺一歩手前、岬の引き留め(本心吐露)
第14話 現実(リアル)にようこそ! ★ 城ケ崎のオフ会メンバー暑海温泉招待、岬の置き手紙、カウンセリング再開、夏コミ失敗、母親からの電話
第15話 ファンタジーにようこそ! ☆ 仕送り半額に、RMT(リアルマネートレード)参戦(ミアとの出遭い)、カウンセリングすっぽかし
第16話 ゲームオーバーにようこそ! ☆ 岬の佐藤リアル引き戻し作戦、ミアの正体・ネトゲの現実(山崎の忠告)、高校の同級生(小林)からの電話
第17話 はぴねすにようこそ! ☆ マルチ商法(ねずみ講)サークル、小林のなき脅し
第18話 ノーフューチャーにようこそ! ☆ クーリングオフ交渉大失敗、委員長宅訪問(トロトロの中の人)
第19話 青い鳥にようこそ! ★ 小林の兄・友一(トロトロ)との決別会話、岬の手料理、マウスロード強制捜査、友一のヒキコモリ脱出
第20話 冬の日にようこそ! ★ 冬コミ間近の追い込み、山崎の個人事情(帰郷決定、七菜子との決別)
第21話 リセットにようこそ! ★ ギャルゲー完成(冬コミ)、山崎との別れ(北海道帰郷)、カウンセリング年末試験(初詣デート、岬とはぐれて)
第22話 神様にようこそ! ★ 続き(柏先輩との別れ、岬の誤解と動揺)、猫の埋葬、意地悪な神様、岬のプロジェクト進行
第23話 岬にようこそ! ★★ 岬のトラウマ、カウンセリング卒業試験合格、新しい契約拒否、仕送り途絶・警備員バイト開始、岬のリストカット・、岬の家庭事情、遺書と失踪
第24話 N・H・Kにようこそ! ★★ 雪の石濱岬の一幕、岬の生家(廃屋)、後日譚(桜の季節){/netabare}
------------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)3、★(良回)15、☆(並回)6、×(疑問回)0 ※個人評価 ★ 4.4


最後に一言。
本作には、確率1%の「N・H・Kの陰謀」が確実に存在する!
そう、それは「{netabare}N(aka)・H(ara)・(misa)K(i){/netabare}の陰謀」なのだ!!!
←この陰謀はアリだと思った(※『俺妹』の桐乃よりもずっとリアリティありそう)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 25
ネタバレ

buon さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ああ、売れないわけだ。超怒級ドM専用の名作

これ、痛みを一つも覚えず完走できるヤツはアニオタにいないだろうな。
1話見て「3チャンにしては過激だなぁ」とか思ってたら、民放やんw
これ怒られんかなww
元ネタとして使われているローマ字のとこの風刺とか、なんか込められてるでしょ。
最初は「NHKのお仕事現場をアニメにしました」ってドキュメントっぽい
『働くって素晴らしい♪』って感じのお仕事紹介アニメだと思ってた。
ええ、ある意味、ビシバシ刺激を受けて労働意欲増進、食欲旺盛になりましたとも。

◇小説原作!?、2クール、全24話、一冊だから買っちゃった♪

誰でもこれ観たら何かしらドコかしら痛いだろうな。
四畳半を観たときに感じたものに近い感覚があるが、破壊力が30倍増し。


さて、アニメ業界の購買層のシェアはどんなもんなんだろう?
廃人(引き籠って、資金源が自分以外にある)、
お得意様(働いたお金をほぼ全額アニメ業界につぎ込んでくれる人)、
この層が厚いと売れないだろうね。

魔法使い、童貞、最近じゃセカンド童貞という言葉もあるらしい、
そこら辺の層もどうなんだろう。
ぶっちゃけダメ人間の素養がある人間の方が購買力あると思う。

リア充、あるいはどん底から完全に立ち直った人間に購買力があるとは思えない。
・・・って言うか、完全に立ち直るとか、真人間とかいないけど。
リア充と呼ばれている人もお花畑をフルタイムで漫喫してるわけなじゃいけど。
むむむ、オレは一体何を言っているんだ?? w

要するにダメ人間が買いたくなくなるような作品。


☆あらすじ☆
ニートの佐藤くんが新興宗教チックな女神の岬ちゃんに救済の手を差し伸べられる話。
★そんだけ★じゃないよーw

こういうのを「アニオタへのアンチテーゼ」「現代アニメのアンチテーゼ」とかいうのかな。
ってアンチテーゼってなんだよwググった、命題の反対って、数学か!弁証法って久しぶりだよ!!
使用例はなんか見たことあるからなんとなく分かるが。

思考に支障を来す様な作品だった。
内容は↑に書いてある分の感想を見たらなんとなく分かるっしょ。

ドMにオススメ、あとは岬ちゃんに惚れたら観た方がイイ・・・のかなぁ。
とりあえず、一回観てみな。

ちょっと残念なのが1~5話までエロゲとか変態チックな話がメインなことかな。
それが取っ付きにくさとなってるかも。
あと作画がひどい回が2,3回ある。一応、女の子の出番が少ない回とか選んでそうだから、
オレとしてはあんまり気にならん。ネタと思ってる。

この作品でも言ってたが、挙げられていたのはエロゲだけど、
「消費者は現実なんか求めていないんだよ!」って方にはオススメしない。

それにしても、山崎イイヤツ過ぎるな。なんだかんだで佐藤くんもイイヤツだな。
でも佐藤は完全にニート貴族。タバコに酒に、それだけで少なくとも毎月2万円超えてるだろw


そう言えば友人が言ってたが、
今の社会は「イイヤツが上に登りづらい」って。
オレは「イイヤツは上にいない」って思う。下にもね。ドコでも誰でも住みづらい世の中だよ。


OPすげー好き☆☆☆☆☆ 何、この溢れる名作臭w
EDも好き★★★★★ 虐めたいの? ええ、虐めてください♪
2クール目のEDは牧野さんの歌、こっちもええ♪♪
・・・あの赤ちゃん人間の絵、どこで見たっけなぁ~

ああ、1つだけ言っておかないとな。
{netabare}「ニートになっても、何年待っても、岬ちゅぁんは来ちゃくれないんだよぉぁー!!!」


※完走した人用の感想 → {netabare}

岬ちゃん役の牧野さんて、{netabare}シーキューブのユラ公だったのか(T_T)
・・・イイ声なのに、めぐり合わせで仕事も変わりそうだな。{/netabare}


※※以下、断定口調で述べますが語尾に「気がする」を付けて読んでね♪


この作品の裏を読むと面白いことが三つある。

一つは、誰も死んでないこと。
引き籠りもその素質があるヤツも「死にたい」とか簡単に口にするけど、
こういう人間って大抵は犯罪するようなこともないし、自殺することもない。
よく「自殺する勇気がない」とかいう言葉を耳にするが、
「~する勇気」って、あれ、勇気じゃないから。
本当に死んでしまう人は、悩むことや勇気とか、そういうの通り越して何も考えてないし、
考えられない。
だから考えられる人間は引き籠る余裕がある。

もう一つは、ラスト2話の前に引き籠りを脱出する例が2つあったこと。
1つは、見栄のために働こうとしたこと。
「かわいい女の子に引き籠りと思われたくない」
もう1つは委員長の兄ちゃんがアルバイトしてたこと。
「飯を食わせてくれれば何でもする」
兄ちゃんのが一番強い理由になる。
女の子にカッコ悪く思われたくない、とかの理由もイイ。
「空腹」「カッコ悪い」とかこういうマイナスの方向の動機は実に行動しやすい。
とりあえず佐藤くんは、
バイト先に岬ちゃんがいなかったらあの時点で引き籠り、ニートでなくなったかも。
あの動機付けで続くかは知らん。
ちなみに「岬ちゃんと付き合いたい」とかあまりにも明確な動機だと、長続きしない。
動機は単純で切実な方が、脱する力は強い。

最後は、実は周りの支えが引き籠りを脱するのを阻害していたこと。
単純に山崎や岬ちゃんがいなければもっと早く引き籠りを脱してたかも。
あの天使のような岬ちゃんが佐藤くんの自立を阻害してたかも、
という事実がなんか悲しい。
佐藤くんに関してだけ言えば、
彼自身はダメ人間だがどちらかというとイイ人間。
母さんに罪悪感を感じ、自分の状況をある程度理解していた。
しかも、妙な見栄があって餓死しそうになっても北海道に帰らなかった。
(帰るという選択肢がなかったから、交通費を残すなんてことを考えなかった。)
となると働くしかない、という状況は遠からず来ていた。
岬ちゃんや山崎が食糧支援してたから、飯の点だけでも、窮地からは遠のいた。

こういう見方をすると恐ろしいなw
もっとも、怪しい自殺のお誘い、マルチ商法地獄エンドから逃れられたのも、
あの2人の支えがあったから、という物語としての事実がある。
それに人間的な成長に大きく貢献していた。


この作品は物語として極端ではあるが、引き籠り・ニートについてよく表していた。

引き籠りの脱し方は最終話まで観ても、一話の結論から少しも変わっていない。

最後は岬ちゃんと恋人エンドっぽいけど、結局チューすらしてないし、
幸せなのか、幸せになれるのかもわからない。

ダメ人間同士が傷を舐め合っているだけにも見えるが、
それでも生きている、それで死なないなら御の字じゃん。

何でもいいから働いて生きろ、って単純なメッセージを私は勝手に受け取りました。
曲解して「かわいい女の子と楽しい時間を過ごしたいなら働け」ともw
あ~、オレもかわええ女の子とイチャイチャして~www



小説のプチ感想 {netabare}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小説だと山崎も佐藤くんもかなり末期だなw

アニメの元ネタは1クール分ぐらいしかなくて、
大筋の流れは同じでも、その過程が大分異なるので、アニメと小説で2度楽しめる。
岬ちゃんについて詳しく書かれているから、感情の入り方が変わった。

どっちにしても、凹む内容だwwwww

アニメは、カッコいい山崎とアクティブにダメな佐藤くん、可愛く献身的な岬ちゃん、
2クールでちょっとダラダラだが、エンターテイメント性の富んだ作品。
小説は、末期な佐藤くんとかなりダメな山崎、淡白な岬ちゃん、
1冊だけをサクッと読めて、より無情感を楽しめる作品。時間的にはこっち。

それにしてもアニメの脚本家?さんスゲーな。
よく小説を消化して昇華させたもんだ。
オリジナル要素てんこ盛りなのに、本質的には変わっていない。

小説は挿絵ないし、アニメ観た方が情景が思い浮かべやすいので、
岬ちゃんの可愛さを漫喫したかったら先にアニメを。
先に小説を読むと、きっと主人公と自分、他の登場人物も知り合いに入れ替わるから、
ドM日本代表は先に小説を。

どっちから入っても楽しめると思う★ ヒッヒッヒ

投稿 : 2024/11/02
♥ : 21
ネタバレ

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

「じゃ、また夜に、公園で。」

2話でヤマザキ君がちゃんと出て来るまで
「ひょっとして…この隣人は孤独死していて、ついに主人公は発見してしまうのではないか。夏場だし死体の腐敗もきっとひどい。引きこもりの末路を見た彼は、部屋から出る決心をするのでは…」
という展開を妄想して、ヒヤヒヤしていました。
いや、壁の向こうで同じ曲がループ…というのがそう思わせたのでした。
みさきちゃんも、「本当に存在するのだろうか…彼にしか見えなかったら…」とか。
身構えて見てたのですが、何やら物騒なことを見せそうな雰囲気がビンビン漂っていたのですよ。

内容は、痛い。序盤は特に痛い迷走ですね。
考えたくない事から目を逸らすのに必死になってエネルギーを注ぐ事で、また目を逸らしたい事実を作ってしまう。
横道でも、邪道でも、真剣に楽しめれば、楽しませられれば、それが突破口になることもある!?
目指せ、わらしべ長者。でも、求めることはすぐに等価交換はでき無くて…。

人間万事塞翁が馬、いいと思った事、ダメと思った事も、ゆくゆくはひっくり返ったりもするような話なのかな…?と思いつつ視聴。

序盤。ヤマザキの切れやすさと主人公とのやりとりが、コメディとして楽しいです。
他の方のレビューにもあったれど、仲間の出来方が確かに急かもしれない。こんなに仲間が居るじゃないですか、主人公…。

7話まで
岬ちゃんのプロフィールを知ろうとしないのが不思議だった。どうして相手が自分に興味を持ったのか、気にならないのかな。
{netabare} 「親についた"恋人"という嘘がバレるから知っとかねば」ということで、ちょっと詮索してみるのだけど、岬ちゃんの現実に踏み込みたい訳ではない。
…高校時代の先輩とも、そうだったんだろうね。
ガードが固いんだかユルユルなんだか分からない主人公だなあ。{/netabare}

10話くらいでやっと岬ちゃんのバックボーンが気になり出して、 {netabare}しかし同時に身を引いちゃうのか…。
うーむ。。
主人公が「自分の子供時代のかわいい純真な姿」を思い返すのがなんとも切ないんですが…それは記憶補正もあるかもよー。

岬ちゃんのルートをおいて置いて、先輩へという感じですが、先輩も何か暗いですよ。 {/netabare}
ひょっとして、このアニメの展開は、
「どの選択肢を選んでも他人に委ねる限りはうまくいかない」…っていう話なのだろうか。

12〜13話
どんな暗い話になるのかと思いきや、サスペンス調でドラマチック。そうくるか!てとこが多くて、面白かった。
{netabare}自殺幇助、ダメ絶対の話。お金持ちだけど全てを失ったオジさんの身の上話、もっと聞きたかったけどな。やっぱりそこで「聞いちゃいけなかった…」て引いちゃうのが、サトー君なんだな。

主人公が1人で元気いっぱい空回りする自身の姿に、昔の懸命な学級委員長を思い起こして重ね、その頃からの無関心で怠惰な自分の事を後悔するとか、素直でグッときた…。
しかし、大活躍のお株は、自殺を考え直した眼鏡の医大中退に持ってかれる。そうですよ。遺されたお母さんや子供は、一時ではなくその後ずっと辛いですよ。{/netabare}

16、17話
ああー、やっぱり、「他人に委ねる限りはうまくいかない」流れが来た。{netabare}マルチ商法。

そしてサトーのネトゲー部屋をせっせとお掃除して、オムライス作って待ってる、岬ちゃんの健気さが凄い。おしかけ女房の鑑です。QEEN OF OSHIKAKE。
ネズミ印の商品を大袋に抱えて、満面の笑みでアパートへ帰ってきたサトー君を、待ち構えた二人。
ヤマザキ御奉行の眼鏡が光る。
切っておしまいなさい…!{/netabare}

18話
クーリングオフ大作戦。
{netabare}本当に、ヤマザキと岬ちゃんが居てくれてよかった!!
と思ったのも 束の間…

ヤマザキお奉行の背中の桜が、ネズミに散った…。わぁーん‼{/netabare}

19話
でもやっぱり仲間がいてよかったよ…。
{netabare}
委員長の兄さん、そう来たか…って意外な脱出劇を見せてくれました。
地方へ行けば結構若人は貴重がられますが、先日まで引きこもってた目と鼻の先で頑張ってる姿がミソですね。
(地方での健闘はヤマザキが担うことに…。)

高校時代の委員長の熱心さを思い起こせたことが、自殺幇助の際に主人公の身を助けた一因になっていたと思うんですが、委員長は知らないままでしたね。
{/netabare}
生命維持のための焦りと、
受け入れて見守ってくれる周囲の支えが、自立の支えになるという話。
他人の間で必要とされたいという本人の切実さ、も大事かなあと感じます。

21話{netabare}
マリッジブルーをチラつかせてサトー君を誘う「先輩」、ダメな人だなあ…。良い悪いで見たくないですが、ダメです。
サトー君の深入りしたがらない性分と、これまでで懲りた事もあってか、「不倫してみる?」のお誘いはすぐに断れて真っ当でした。
先輩は、どうあっても心の充足感を得にくい性分なんでしょうか。
難儀だと思う、それは。
しかも妊娠してるって。すぐにおめでとうを言えたサトー君は、やはり真っ当でした。

ヤマザキの家出と怒りっぽさは、保険に自らの人生と値段を決められていた所に起因していたのか…。
ヤマザキの「田舎の人間関係は、酒が呑めればやってけるぜぇ〜!」という報告に、まさか、このままアルコール依存症の流れまでこないだろうな…と心配に。もはや人生の落し穴を探せ!状態です。{/netabare}

23話あたりからは
岬ちゃんとサトー君との間がいよいよ佳境に。
やっと岬ちゃんの故郷について、ふと聞いてみるサトー君ですが、さびしいからそばに居て‼という岬ちゃんの切実な告白に、
やっぱりまた身を引いてしまう。まだまだ心の中のさびしさの実が熟さないんでしょうか。
でもちょっと男の子らしいと思えた。

ここからのラブストーリーはとても丁寧で、終わった時には岬ちゃんとサトー君のカップルが何だか好きになっていました。

ひきこもりがテーマの、回りくどいラブストーリーだったのかもしれない。
同じようなひきこもり・卑屈脱却を描いた四畳半神話大系と比べても、とてもリアルな描写が多くて重い部分もありましたが、コメディの効いたドラマチックな面も多くて見応えがありました。

とても読みづらいレビューになってしまいました。御一読ありがとうございます。でも何か、色々語りたくなってしまう作品ですね。
他の方たちのレビューも面白く拝見できた不思議な作品でした。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 28

70.1 4 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング4位
櫻子さんの足下には死体が埋まっている(TVアニメ動画)

2015年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (936)
4979人が棚に入れました
北海道の旭川を舞台に、抜群の美貌とスタイルを持っているのに美しい骨を愛でるのが大好きなお嬢様の九条櫻子と、そんな彼女に振り回される平凡な高校生の館脇正太郎の2人が、骨にまつわる事件にかかわっていく物語。

声優・キャラクター
伊藤静、榎木淳弥、今村彩夏、磯辺万沙子、高橋広樹、石田彰、柿原徹也
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

氷菓のような評価をされたかった作品?

[文量→中盛り・内容→余談が本論系]

【総括】
リアル路線のミステリーアニメ。本格的なミステリーもの、推理ものと考えてしまうと、やや物足りないが、変な特殊能力とか使わないだけ、まともにおもえる。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
冒頭の、桜舞い散る学園やそこに流れる雰囲気は明らかに、ライトミステリーの名作「氷菓」を思わせる。

ただ、氷菓との決定的な違いは、「キラキラしていない」という点だろう。むしろ、推理面では氷菓よりも納得できる点が多く、ミステリー小説としては面白いのかもしれない。ただ、「キラキラ」していない。「ワクワク」しない。「ドキドキ」しない。

この作風なら、むしろ実写で連続ドラマ化し、火曜なんちゃらとか木曜なんちゃらで放送した方が良かったのでは? キャストによっては数字とれたと思う。タイトルにもインパクトあるし。

まあ、アニメは嗜好品だから、色んな種類があって良いし、それを好みに合わせて我々視聴者が選べば良いんだろうけど、個人的にはやっぱり、心が温かくなったり熱くなるものが好きだな。折角の現実逃避だからね。

最後まで視聴ができたのはただの一点、第1話で紹介された、「梶井の小説がどう生きてくるか」を見たかっただけである(まさか最終話で、はっきり言っちゃう&本当に死体が埋まっているとは思わなかったがw)。
{/netabare}

【余談~ 梶井基次郎 桜の樹の下には と本作の関連性(文学部的レビュー) ~】
{netabare}
この作品を語る上で、梶井基次郎の「桜の樹の下には」を念頭に置くことは避けられないだろう。

なんで、まずは「桜の樹の下には」を全文掲載します(青空文庫より)。少し長い詩ですが、興味があれば読んでみて下さい♪ 難解ですがね(汗)
{netabare}
桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!

これは信じていいことなんだよ。何故なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。

どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選(より)に選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。

いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽(こま)が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱し生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を撲(う)たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。

しかし、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。俺にはその美しさがなにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不安になり、憂鬱になり、空虚な気持になった。しかし、俺はいまやっとわかった。

おまえ、この爛漫(らんまん)と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像してみるがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがおまえには納得がいくだろう。

馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな腐爛(ふらん)して蛆(うじ)が湧き、堪らなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとたらしている。桜の根は貪婪(どんらん)な蛸(たこ)のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚(あつ)めて、その液体を吸っている。

何があんな花弁を作り、何があんな蕊しべを作っているのか、俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。

――おまえは何をそう苦しそうな顔をしているのだ。美しい透視術じゃないか。俺はいまようやく瞳を据えて桜の花が見られるようになったのだ。昨日、一昨日、俺を不安がらせた神秘から自由になったのだ。

二三日前、俺は、ここの溪(たに)へ下りて、石の上を伝い歩きしていた。水のしぶきのなかからは、あちらからもこちらからも、薄羽かげろうがアフロディットのように生まれて来て、溪の空をめがけて舞い上がってゆくのが見えた。おまえも知っているとおり、彼らはそこで美しい結婚をするのだ。しばらく歩いていると、俺は変なものに出喰(でくわ)した。それは溪の水が乾いた磧(かわら)へ、小さい水溜を残している、その水のなかだった。思いがけない石油を流したような光彩が、一面に浮いているのだ。おまえはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数の知れない、薄羽かげろうの屍体だったのだ。隙間なく水の面を被っている、彼らのかさなりあった翅(はね)が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。

俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。墓場をあばいて屍体を嗜(この)む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。

この溪間ではなにも俺をよろこばすものはない。鶯(うぐいす)や四十雀(しじゅうから)も、白い日光をさ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過ぎない。俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。俺の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。俺の心に憂鬱が完成するときにばかり、俺の心は和なごんでくる。

――おまえは腋(わき)の下を拭ふいているね。冷汗が出るのか。それは俺も同じことだ。何もそれを不愉快がることはない。べたべたとまるで精液のようだと思ってごらん。それで俺達の憂鬱は完成するのだ。

ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!

いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまはまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。

今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑のめそうな気がする。
{/netabare}

、、、梶井といえば、「檸檬」が代表作である夭逝の作家である。作家というより、詩人。私はむしろ内面的には女子だと思っている。

梶井は、武骨な外見とは裏腹に、とても繊細で移り気(感覚的)な人物だ。

梶井の友人として有名なのは川端康成。一方、梶井の作品と近い性質(デカタンス)を持つのは芥川龍之介である。私はこの二人を、「日本文学史上、最も優れた天才作家」だと思っている。現代ではNo.1の評価を受けている村上春樹ですら、裸足で逃げ出すほどの才能だ(と、勝手に思っている)。

川端、芥川の対比は面白い。これはウチのゼミの教授の受け売りだが、川端は「醜なるものに美を見い出す作家」であり、芥川は「美なるものに醜を見い出す作家」である。例えば川端は、遊女や孤児などをよく書いたが、いわゆる社会の中で低く見られている人々に対し、僅かながらの光や輝きを見ようとしている。一方芥川は、上流階級の女性や優しき人間を書きつつも、そこに必ず醜さを見いだしている(基本的に人間が嫌いなのだろう)。

梶井に関しては、この美意識が作品ごとに変わっている印象がある。その辺が感覚的な作家であるという評価に繋がっているのだろう。

梶井の代表作である「檸檬」に関しては、川端的な「醜なるものに美をみる」姿勢が見られるし、「桜の樹の下には」芥川的な「美なるものに醜をみる」姿勢が見られる。

梶井は、桜の木の下に死体が埋まっていることを「妄想」と認めている。しかし、この妄想が完成するまでは、爛漫と咲く桜に対して、「ひどく陰気な」心を抱いている。それは、自らが深刻な健康被害を被っていた故の、生命への畏れだろうか。それとも、完璧な美が存在するのなら、自らの文学が価値を失ってしまうということへの恐れだろうか。

おそらく梶井は、「純粋に、無邪気に、存在そのものが美しいもの」を無条件には信じられないのだろう。美しいものには、美しい為の理由がある。それを解き明かせないかぎり、梶井にとってその対象物は恐怖の対象(得たいの知れないもの)になるのだ。

日本人は桜が大好きだ。桜は美しい。皆が口を揃えて言う。にも関わらず、なぜ桜が美しいか、桜を好きなのかをはっきり説明できる人は少ない。

ピンク色だから? 散るから? 期間限定だから?

じゃあ、なぜピンク色だと美しいんだろう? 散るのはなぜ美しいのだ? と、なっていく。

無条件に皆に好かれる存在は、恐怖だ。

例えば、クラスメイトにそんな人はいなかっただろうか? 特別に何が秀でているわけではないのに、なぜだかみんなに好かれている存在。みんなが口を揃えて「あいつは良い奴だ」と言う奴は、なんだか不気味だ。でも、もしそいつに何らかの短所や欠陥を見つけられたら、そいつのことを本当の意味で好きになれないだろうか?

桜の木の下には、死体がある。桜は、死を吸っているから、生を謳歌できる。桜だって、完璧ではない。醜さを内包している。

そう妄想することで、梶井は初めて「あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒を飲めそうな気がする」のだ。

……頭が良すぎる人ってのは、花見ひとつするにも大変だねぇ(笑)

さて、櫻子さんの話である。櫻子さんは、死体(骨)が好きだ。しかし、死が好きなわけではない。むしろ、死を嫌悪している。櫻子さんにとっての死体とは、生の裏返しであり、生を語るものだ。

櫻子さんは、生を無条件には信じられない。死体を見て初めて、「あぁこの死体は生きていたのだな」と感じることができる。これは梶井が、桜の木の下に死体があることを妄想して初めて、「あぁ桜の花はきれいなのだな」と感じられる感覚に似ている。

梶井は深刻な健康被害を抱え、常に死を身近なものと感じていた。自らが死を内包しているからこそ、普通の人なら見逃してしまうような、身近な景色や出来事にも価値を見い出だすことができたのだ。だからこそ、「何の代償も払わないような、無邪気な、無条件な、美や生」には懐疑的だったのだろう。

櫻子さんも、(弟の)死を抱えていた。だからこそ、「ただそこにある生」を感覚的に素直には受け止められず、そんな生にも価値を見いだせない。一見すると冷たく、非人道的な人間のように描かれていた。でも、良く考えると可哀想な人間である。

やはり、頭が良すぎるというのは、大変だな。

もしくは、これは正太郎から見た櫻子さんへの感想なのかもしれない。櫻子さんの正体不明な美しさを説明するための比喩として、「死を吸っているから」としたのか? いや、正太郎はそんな考え方をする子じゃないな。ということはやはり、第三者的な視点で、櫻子さんの本質を言い表していると考える方が自然か。

正太郎は冒頭で、作品の舞台である旭川のことを、「時間が停滞している」「この街には過去の記録がひっそりと優しく息ずいている」と、評している。それは、櫻子さんが死体に抱く感覚と同じではないだろうか。

死を見ることで生を感じる。つまりはそういうアニメである。

この一点において、梶井の「桜の樹の下には」が有効に生かされている。が、多分その一点以外においては、関連性は見られない(ひょっとすると、タイトルのインパクトだけで流用し、小説の中身までちゃんと生かしていないのかもしれない)。まあ、文学部的なレビューの結論としてはそんなところかな。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 42
ネタバレ

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

CVが石田さんだと警戒から入るよね…

なんか裏がありそう…みたいなw

そんな石田さんですが、彼の演じるキャラを特別好きになる私がいます(我愛羅も桂もカヲルくんも、各作品で一番好きなキャラだったりします…)。

この作品の石田さんキャラ、磯崎先生についてですが、案の定作中で一番好きでした。

そんな私が一番好きだった回は当然
第6話の「アサヒ・ブリッジ・イレギュラーズ」です。以下ネタバレあり
{netabare}
 あらすじ:夏祭りに来た鴻上(準レギュラーの女子高生)は友人(DQN(偏見))とはぐれた際、暗い表情で川面を見つめる黒衣の女が橋上にいることに気づく。女はそのまま立ち去るが、鴻上は中に遺書めいた言葉とダイヤモンドのリングを見つけて…。何としてでも自殺を思いとどまらせたい鴻上は、祭りの監督に来ていた磯崎先生(イケメン)や警官の内海を巻き込んで、女を探し始めるのだが…。

 この回は、鴻上と先生の対照的な意見と、先生の過去での出来事の伏線が見どころだと思います。

 磯崎先生の「自分の命を自由にできる権利を持つからこそ人間なんだと僕は思う。」だとか「自らの生と死を選択しその責任を持つ。少なくとも彼女にはその権利があると思う。彼女の選択を否定する権利はあるんだろうか?」という、どこか冷めたようなセリフに彼らしさが感じられます。
 私は先生のこういった発言は教師らしくないとは思いますが、非常に説得力があると思います。

 一方、鴻上の「嫌だ!死んでほしくない!って思うのは当然じゃないんですか!」という感情的なセリフに鴻上らしさがにじみ出ています。大事なおばあちゃんに先立たれた経験が彼女にこう言わせたでしょう。(この前に言った「先生は大切な人に急にいなくなられたことがありますか?残された人の気持ちがわかりますか?」というセリフについては、後ほど謝ることになります。)
 彼女の意見は先生のと比べて明らかに子供じみています。ただ、あながち間違っていない意見だと思います。なにしろ、磯崎先生だって自分の受け持つ生徒が「死」を選択したことによって酷く傷付いた過去を持っているのです…。
 この作品のいいところ?に、少年や鴻上ら子供達が、子供らしく描かれているところもあると思います。イライラする方も多いと思いますが、意見がまとまってなかったり、わがままだったり…。そのわがままさが、案外物語を動かす鍵になったり…

 今回も大人である磯崎先生が先に折れて、捜索を続行する流れとなります。
 このときの一連の会話がかなり好き!

鴻上:もういいです!私一人で探しますから!(泣きながら)

先生:待って(腕をつかんで)!鴻上が何と言おうと自分が間違ってるとは思わない。でもこのまま放りだしてトラブルにでも会われたら僕が管理責任を問われる。それはめんどくさい。 行こうか?

鴻上:一緒に探してくれるんですか?

先生:あぁ。だけど僕は彼女が見つかると思ってないし鴻上が見つけられるとも思ってない。

鴻上:私先生のこと大嫌いになりそう…

先生:いいよ。僕は自分以外好きじゃないし嫌われてもなんとも思わない。でも覚悟はした方がいい。見つからなくてもそれは鴻上の責任じゃない。だから絶対に自分を責めちゃ駄目だ。言いかい?君は自分以外の人の人生をしょい込もうとしてる。正しいことかもしれない。でもそれは本来とても覚悟のいることなんだ。その抜けない棘は君をずっと傷付けるだろう。その茨は弦を伸ばすだけで決して花は咲かない。痛いだけだ。それでも君は彼女を探すの?

鴻上:探します。今ここで諦めたら私は私を許せないだろうから。

先生:わかった。ただしあと1時間だけだ。それ以上は許可できない。

鴻上:一時間?

先生:ああ。だって、僕は花火が見たい。

鴻上:…最低(呆れたように笑いながら)。

 これを石田さんのイケボでやられるんですよ…惚れるでしょ!!
途中の自分を責めてはいけないって言う一連のセリフは、自分を責め続けている先生だからこそのセリフでしょうね…

 恋愛脳な私は、これをきっかけに、鴻上は先生に惚れたと思ってるんですが、皆さんはどうでしょう?
 鴻上の友人たち(リア充)が超絶バカっぽかった(偏見)故に、先生のスマートさが際立ちます。
 先生の方に気はないでしょうが…。

締めの会話
鴻上:綺麗ですね。(花火見ながら)
先生:何?僕が?
鴻上:最低。(笑いながら)

良いカップリング過ぎる(断定)
{/netabare}
 一番好きなのは磯崎先生ですが、櫻子さんとかヘクターも魅力的ですね。
 この作品は、OPも格好いいですし、EDも透き通ってて…好みです。

 総評として、好き嫌い分かれそうな作品ですが、個人的にはかなり好みでした。
 何の気なしに格好いいこと言うようなキャラが好きです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

本格探偵推理のシリーズものはキャラ萌えが重要ですが…うーん。

 原作は数巻、途中まで読んで放ってあると思います。推理小説好きなのでちょっと長いレビューです。謎とストーリーそのものはネタバレになるので一切触れていません。

 推理小説には社会問題を事件を通じて描く社会派と殺人事件の推理のプロセスに重点を置いた本格派の大きな2つの分類があります。詳しい分類の説明は他に譲るとして、本作は大きく分ければ本格派になると思います。
 
 本格派の特徴として、まず謎を探偵が推理によって解き明かすプロセスですね。フェアに謎と証拠が提示されて、読者側が推理しようと思えばきちんと犯人を当てられることにこだわります。

 本格派推理では、素人探偵が殺人事件の犯人を特定する、というストーリーが大きな魅力になります。一方、現代日本の科学捜査において本来探偵の出る幕などどこにもありません。ですので、素人探偵が事件に介入する舞台づくりに作家は腐心します。

 推理を読み慣れていない人には荒唐無稽感が強いと思います。なんで通報しないの?なんでそんなに事件に遭遇するのという不自然さが特にシリーズものにはあります。まあ、コナン君を見てればわかると思いますが。

 素人探偵ものの読書法として、警察の不在と不自然な探偵の介入の部分はスルーする、という作法が必要になります。

 親戚や親が警察官のエライさんとかの人間関係、法医学者や記者、弁護士等々の職業などでその舞台づくりをするケースとシチュエーションで事件に介入することもあります。
 場所で警察を遮断することもあります。クローズドサークル(雪の山荘や嵐の孤島)、旧家の遺産相続等で警察には秘密に…ですね。

 そして、推理のシリーズものの魅力として、探偵またはアシスタントへのキャラ萌えが必要です。アニメだとシリーズ全部が見られませんが、すべてがFになるの犀川と西之園、姑獲鳥の夏の中禅寺と関口などです。シリーズがかなり網羅されている氷菓なら折木と千反田などですね。
 これらは事件の雰囲気や謎、その推理のプロセスや舞台設定を楽しむことはもちろんですが、なんといってもキャラの活躍がシリーズの大きな魅力になっています。

 という前提条件で言うと、本作です。事件の関わりとして、骨格標本の研究者という設定、そして舞台は北海道の原野や広く古い建物などです。そこに櫻子さんの性格を付け加えることで、事件への介入の理屈と推理小説の雰囲気づくりという点では良いのではないでしょうか。

 骨というのは不吉で死のイメージがありますし、ゴシックホラー的な映像もなかなか良いと思います。そして真の犯人的な存在と骨にまつわる謎の解決というシリーズを通じてのテーマにもなっています。という点で、設定やキャラ作りという点においては良いと思います。

 ただ、です。キャラに萌えられないんですよね。櫻子さんの天才性に愛嬌がないんですよね。いわゆる弱点的なところが見えてこないので人間性が描写されない。設定に負けている感じが非常に強いです。デザインも普通の黒髪美人だし。で、アシスタント役である主人公との関係性に絆があるようで、ここが曖昧なんですよね。

 また、天才性についても骨から抜け出せていないので、謎ときの証拠が骨なんですよね。骨の知識以外がありません。もちろんキャラが良ければおぎなえるのですが、先ほども言ったように櫻子さんのキャラ自体の魅力が薄いです。ですので、謎解きを一緒にしようという気にもなりませんし、謎解きから得られるカタルシスが少ないです。

 ラノベ的な感じの原作からも、探偵としてのキャラ萌えと同時に感情移入するアシスタントの主人公との何かの関係性が必要かと思います。一応表現されていますが、うーん…弱いですね。なんかセリフだけです。共感できませんでした。

 ヒューマンドラマがあるのでその点ではいろいろあると思いますが、推理でやるなら推理としての出来の良さが前提です。その点でいえばハルチカと同じでかえってノイズになっている気がします。
(本格推理ではないですが、文学少女と良く比較してしまいます。あちらは荒唐無稽ですけど、ヒロインと主人公に萌えられました)

 以上の点から、初めは惹きつけられます。でも、後が続きません。要するに飽きます。そして一番のポイントになる10話、11話ですけど…うーん。これはまあ良く考えたんでしょうけど、モリアーティ登場でおしまい?なんか感情的にエモい12話で何かを補おうといしたんでしょうけど。


 総評。雰囲気はいい。不自然さも本格推理の範疇におさまっている。キャラ設定も悪くないです。でも、シリーズものとして、謎が単調な上にキャラに萌えられません。で、シリーズものの最後の手段、シリーズを通じた超強敵を出されても…うーん。
 

 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10

80.3 5 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング5位
3月のライオン(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (981)
4879人が棚に入れました
主人公は、東京の下町に1人で暮らす17歳の将棋のプロ棋士・桐山零。深い孤独を抱える彼が、あかり・ひなた・モモの川本3姉妹と過ごす時間や、さまざまな棋士との対戦を経て、失ったものを少しずつ取り戻していく様が描かれる。

声優・キャラクター
河西健吾、茅野愛衣、花澤香菜、久野美咲、岡本信彦、井上麻里奈、細谷佳正、三木眞一郎、杉田智和、木村昴、千葉繁、大川透、櫻井孝宏

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

原作者の思いに見事に応えた、新房監督&シャフトの本領が発揮された渾身の力作

NHKで2クールにわたって放送された、第1シーズン。

☆物語☆

中学生で将棋のプロ棋士となった主人公桐山零が、
棋士として、人間として、周囲の人との出会いと関わりを通じて成長していく過程が描かれる。

1話の中で複数のエピソードを区切って消化していくスタイルながら、
尺的に足りないと感じることはなく、どのエピソードも上手く纏められている。
NHKの枠なので途中にCMを挟まず自由に区切れ、25分間使えるというのも制作側には好都合だったでしょう。

さすがにNHKで放送されるだけあって、内容的には王道路線で、
シリアスな場面が多いものの、反対にコミカルな面や萌え要素までバランス良く取り入れて重すぎないので、
アニメファン以外の幅広い一般層に受け入れられる作品なんじゃないだろうか。
将棋のルールなんかが分からない人向けにも、作品内で解りやすく絡ませてあり、この辺りは親切。

作風や主人公がどうしても似ている、と感じてしまうのはノイタミナで以前放送された「四月は君の嘘」。
これは観た人みんな思ってるでしょうね。
タイトルに「月」が入っているのは単なる偶然なのか。。

正直物語自体はそこまで斬新なものでもないし、スローペースで進むので、
昨今の尺的にゆとりのない目まぐるしい展開が多い作品と比べると、退屈さを感じる人も居るだろうが、
自分としては、この作品で特に感じた魅力はキャラクター達の人間模様や日常、
心情描写の細やかさと、台詞の重みや間の取り方など、数々の優れた演出にあると思っているので、
じっくりと丁寧にやってくれたのは(原作通りなのかは知らないが)本当に有り難い。

作品内での零の語り、零と関わっていくキャラ達の台詞には、時には非常に残酷であったり、
とても温かみがあったり、また思わず自分にも改めて気付きを与えてくれるような、
そんな深みがあったりと、毎話感慨深く大きな余韻を与えてくれた。
台詞の一つ一つを噛みしめる事ができる感受性、間を想像力で補える能力は人によって異なるとは思うが、
この作品におけるキャラ描写とそれを引き立たせる演出が素晴らしいことに疑いの余地はない。

第2シーズンになれば嫌でもストーリーは進んでいくだろうし、今後の展開にも大いに期待したいところだが、
これまでどおり、焦らずじっくりと進めて欲しい。

☆声優☆

さすがにNHK作品の配役に関しては、
デビューして日の浅い新人などを主要なキャラに配したりはせず、
実力、人気共に安定している声優とベテランで構成されていて隙がない。

中でも3姉妹に関しては見事の一言だが、
主人公零に関しても、とても良く考えて選ばれていると実感する。
通常の台詞以外に公園のグラウンドでの叫びなど、感情を顕にする場面などは、
イケボでなく、ちょっとヘタれな感じが性格に凄く合っているなと。

☆キャラ☆

先にも書いた通り、この作品の一番の魅力と感じる部分は優れたキャラ描写&演出にある。

キャラクターの心情がポエム的な独白、
ナレーションによってたびたび観るものに訴えかけるのだが、これが深く心に響いてくる。
これはキャラに共感できなければ、やり過ぎると返って逆効果で退屈さと冗長な点として捉えられる事もあるものの、
(同様にポエム的な「あまんちゅ!」で気になった点)
各キャラそれぞれが抱えている思いが、台詞の良さも相まってとても巧く表現されていた。
各キャラに共感、もしくは同情してしまう「要素」がしっかりと解りやすく提示されているので説得力がある。

時間を掛けて丁寧に描かれていることもあって、
主人公とその周りの主要なキャラに関しては、とても興味深く魅力的に映った。
中でも3姉妹は本当に癒され和む存在だったので、後半に出番が減ったのは少し寂しく思えたが、
逆に言えば前半のエピソードが特に良かったということかもしれない。

また、打って変わって香子のような存在は、女性作家ならではの描写力で、
女の嫌らしさやねちっこさなど、非常に生々しく描かれていて、こちらも同様に素晴らしかった。

☆作画☆

NHK作品はさすがに予算も掛かっているせいか、派手さはなくとも安定感があって全く不満はない。
背景美術に関しては、水彩画のような非常に淡くノスタルジックな雰囲気を醸しだしており、
また、それに合わせるキャラも違和感なく淡い質感で背景に馴染ませていて、とても温かみを感じる。

最大の見所としては、やはりシャフトならではの映像演出。
キャラの心象風景を、独自の解釈で映像化された場面は観ごたえと相性の良さを実感した。
観る人によって、または原作を読んでいる人には多少クドいと思われるかも知れないが、
自分はよりキャラの心情を理解する上で、良い方向に作用したと好意的に受け取っている。
原作者がシャフトでの制作を熱望したというのも納得。

OPやEDのアニメーションは、特に制作会社の個性が出る部分だと思うが、
零の息苦しさ、閉塞感や孤独感、葛藤、もがき苦しみながらも前へ進もうとしている様が、
抜群のセンスで表現されていたと思う。

☆音楽☆

1クール目のOP、EDで起用されたBUMP OF CHICKENの曲、
歌詞、アニメーション共に最高の出来だった。
もともとBUMPが原作のファンで以前にMVでコラボしたりしているので、
そりゃこの作品のために書き下ろした曲が、相性が良いのは言わずもがな。
できれば2クール目も変えないで欲しかったくらいだが、
2クール目のOP,EDも曲自体は悪くないし、最終話で戻してくれたのは心憎い。

作中BGMもやはりキャラの語り、ナレーション場面で使われているものが印象的だったが、
コミカルな場面もなかなか良いチョイスがされていて、曲のバラエティ自体も豊富で申し分無かった。
台詞間に挿入されるBGMが良いからこそ、その間が大きな余韻となる。
音響含めた音楽面での演出も、映像に負けず劣らずこの作品では大きく貢献していたと実感しますね。


こうして改めて一つ一つの要素を振り返ってみてみると、褒める所ばかりで殆ど点数を差し引く部分が無いように思える。
王道ながらもシャフトによる優れた芸術性が加味され、とても高いレベルで纏まっている。
本当につくづく続編が楽しみだ。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 21

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

才能の残酷さを描くことで、人の内面の弱さを表現しています。

 ハチミツとクローバーで恋愛ドラマの仮面をかぶって、才能の残酷さを見せてくれた羽海野チカ。さすがですね。人の愛憎や執着、孤独や過去などのヒューマンドラマの中に、しっかりと才能というものの恐ろしさを見せつけてくれます。
 ただ、ハチクロよりも進化したと思うのが、義姉ですね。あの義姉のキャラがあるから人の内面描写に深みが出て、才能の残酷さは他人にも劣等感という形でつきつけますが、己を傷つけ孤独にする部分も描かれていました。

 才能があるからこそ、居場所が出来た半面、人の居場所を奪ってしまった。周囲の人を巻き込み歪ませる。義姉の態度のコンプレックスの表現は女性作家ならではの迫真のストーリーですね。おしいことにコミック版ほどの禍々しさの中に見える圧倒的な劣等感の表現には至っていませんが、この義姉がいるからこそ、主人公の居場所の無さが浮き彫りになるし、3姉妹との交流に意味が出てきます。

 一方で将棋という特殊な世界にのめり込む男達の心の交流もありました。島田の研究会もそうだし、何よりあの二海堂くんですね。どう考えても村山聖ですよね。聖の青春という小説にもなった羽生善治の少年時代からのライバルです。ちょっと身体の事も村山をなぞっているので、いろいろ心配してしまいますが、詳しくは小説かWIKIで。
 彼がいたからこそ、将棋に向き合うことができたような気がします。良くいる真っ直ぐなおバカキャラに見えて誰よりも将棋に真摯で、主人公のこと…というより主人公の将棋の才能を純粋に愛していたような気がします。(それから学校の先生もですね)

 なお、羽生善治はタイトル99期、史上初の7冠棋士、永世7冠という圧倒的な将棋の天才でので、二海堂=村山だとしたら、主人公が羽生なのかなあと思ったら違いましたね。宗谷でした。宗谷が目指すべきラスボスっぽかったですね。

 その前に後藤ですか。彼の性格の意味は現段階ではちょっとわかりませんね。素の性格なのか、やっぱり宗谷に対比した時にコンプレックスがあるのか。
 ただ、この後藤の態度を見せることで、初めは憎たらしいだけの義姉に対する気持ちが和らぐから不思議です。うまいですよね。結果的に才能の世界の周辺に生きている人たちの惨めさを上手く表現しています。

 そう、義姉が重箱のお稲荷さんを食べるだけで、このキャラに対する見方が全然変わっていました。ここが少女マンガの凄さですね。直前の3姉妹の敵のように見せていて、胃袋で篭絡されてしまう。これで義姉の人間的な内面が表現されて憎めなくなります。ちょっと男の作家には描けないでしょう。ここが一番本作のすごいところだったのかもしれません。

 そしてこの3姉妹ですね。どうも傷があるようです。母性の塊のような長女の内面が見えてこないことが不気味です。この作者が単なる良いおねえさんキャラを出すとも思えませんが…どうなんでしょう。菩薩…で終わるのか違うのか。以前原作10巻まで読んでますが…無かった気がします。

 で、主人公ですね。この構造って、やっぱり主人公がラスボスと対決するために周囲を顧みず…みたいな話になるのでしょうか。ハチクロを見るとそんな気もしますし、3姉妹との交流でそうにはならないのかもしれません。

 将棋の世界の話だけに限定すると、ストーリー展開はちょっとヒカルの碁っぽい感じがありますが、似たような世界ですからね。

 とにかくきれいごとではない人間の内面、特に劣等感を描かせると、羽海野チカは最高ですね。決して「いい話」ではありませんが、特殊な世界をデフォルメすることでヒューマンドラマとして、人間の本質を見せてくれています。この辺りはハチクロのやり方を踏襲している気がします。


 3月のライオンはどちらかと言えばコミック版の方がコマ割りとかモノローグとか少女マンガらしいテイストが話にあっていました。アニメはその点がちょっと表現できていませんでしたね。



 追記 少女マンガ的表現ができていない、といっても、演出で内面描写、モノローグの時は少女マンガらしいエフェクトをいれて頑張っていました。ただ、少女マンガの文法はやっぱりあの独特のコマ割り=時間の使い方と客観主観のシームレスな切り替え、エフェクト=心の動きじゃないと。ここは媒体の特性もあるのでやむを得ないでしょう。

 追記2 水というモチーフは浮かんでいれば羊水のような心地よさがあります。が、泳いだ時のねばりつく水の抵抗は前にすすむ困難、もぐったときの息苦しさは思考が暴走している感じ、音が無くなるような感覚は棋士の集中力ですね。ハチワンダイバーとかにも通じます。

 それと川ですね。川は流れ、広がりなどで原風景のような心落ち着く光景になります。滔々と流れる広い川は、人の営みのアナロジーでもあるでしょう。それを岸から眺めるという意味ですね。また、街の移り変わりを映すことで表情を変えてゆきます。あるいは自分自身の人生そのものでもあるかもしれません。
 また、川岸ですね。これが不思議な効果をだしていました。漠然とした東京の下町の表現というより、俗世界から切り離された特別な場所として機能していました。
 これが演出というだけではなく、内面の重層的な表現に効果的に機能していいたと思います。ただ、とにかく象徴的・抽象的なので何を表現していたかを考察するのではなく、画面から感じるのが作法だと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18
ネタバレ

明日は明日の風 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

少年棋士の心の葛藤と心の成長を描いた作品、作者と制作会社とTV局が一体となった良作

これほど原作が読みたくなった作品は久しぶりのような気がします。終わるまでまとうか、読んでしまおうか、葛藤中です。

シャフトっぽさを消しているようで、ところどころやっぱりシャフトだと思わせるような描写がチョコチョコ見られるのが良いです。特に場面転換で不要じゃね?と思わせるようなカットを入れてきて、それがまた綺麗だったり、インパクトがあったりとするところなんか、シャフトだなと感じてしまいます。ただ、「シャフ度」と言われる首の角度が抑え気味なのはやっぱり寂しいかも(?)

NHKが、しかも総合で流すのですから、力入れているのはよく分かります。まだ前半も途中ですが、引き込まれっぱなしになっています。主人公である零の歩んできた人生の重さ、その重さを少しずつ解放する三姉妹と二海堂との掛け合いの面白い事。

二海堂のモデルは将棋好きの人なら知らない人はいないくらい有名な村山聖なんでしょうね。となると、太っているのは病気のせいであり、あかりが「むっちり」で喜んでいるのはどう解釈したらよいか戸惑いました。このあと二海堂は病気が重くなっていく展開になるんだろうけど、つらいな…

三姉妹は本当にキャラがいい。声も完璧だし、流石としか言いようがありません。話の展開も良く、たぶん、最後まで面白く見ていくことができる作品だろうと思います。すでにお気に入りに入れてもいいように思っています。

【前半を終えて】
結局終わるまで待てず、原作を読んでしまいました…。面白い、何故にこれまでスルーしていたのだろうと思います。前半は零の置かれた状況を表現していた感じです。零が何故に将棋をしているのか、零がどうして三姉妹と関わりを持ったのか、二海堂と零のライバル関係、零と香子の関係等々をシャフト独特の表現でうまく繋いでいた感じです。
とあるコラムニストがシャフトっぽくないのが良いと書いていたのですが、どこを見ているのかと。零の気持ちを表現するときや香子とのシーンはシャフトそのものでしょう。シャフト特有のズルいイメージ(個人的な感想)ふんだんに盛り込んでます。原作のイメージがそのままシャフトっぽいですし、シャフトなら良いと言ったらしい作者の感覚がすばらしいと思います。
三姉妹は癒しそのもの。に対して香子の危うさと言ったら…。香子の声も良いです。老倉育を見て井上さんに決めたらしいのですが、本当にぴったり。

後半はもっと将棋に突っ込んでいくのではないかと思います。また、三姉妹の関わり、零を囲む周りの人々の動きなど、楽しみです。

【後半の中盤】
後半に入り、零の気持ちがどんどん重くなっていきました。そこを救うのが三姉妹であり、先生であり、二海堂であり、島田八段であり…とにかく零は人に恵まれました。回を追うごとにその事が分かります。
将棋に関する話も濃くなってきたのも後半の面白いところです。鍵となる島田八段は飄々としているのに、プロの厳しさを零に伝えてくれます。そしてとうとう出てきた宗谷名人。まさに怪物に相応しい佇まい。アニメになると、その事がいっそう強調された感じです。
零と香子の微妙な関係も相変わらず。が、三姉妹と香子の絡みとか、実は可愛らしい一面もあるところとか見れて良いです。
それから、今の季節に合わせたような進行具合も非常に良いです。これからラストに向けて零がどう成長していくのか楽しみです。

【一期終了】
零のちょっとずつだけど、成長していく感じが見てとれました。
「11年もボッチだったんだ」いう台詞の重みから解放されていく過程を描いたのが一期だったと思います。ゆえに、展開は重く、零の台詞もなにかぱっとしません。耐えられない人はそれでこのアニメはお仕舞です。
零は周りに恵まれました。それは零が成長するための起点になっていきます。二海堂であり、三姉妹であり、林田先生であり、島田八段であり、科学部の面々であり、そういった人々と交わることによって、重く押しかかっていた零の心が開かれて、次のステップへと進んでいきました。見直すと、中盤までの零とは明らかに違う人間になっているのがよくわかります。

この作者は人と人とのつながり、心の葛藤や解放へ向かうまでの描き方が上手だと思います。重くなり過ぎそうなときはわざとデフォルメさせたり、ちゃちゃを入れるような場面を入れてほぐします。これが嫌味に感じないところがまた良いのです。せっかくなので、ハチクロも見てみたのですが、作品は違っても、描き方は同じでした。
それと、ハチクロを見て思ったのが、シャフトで良かったということです。ハチクロも悪いわけではないのですが、ライオンを見た後だと何か足りません。零や香子みたいな人物が多く出演する、心の葛藤を中心とするような作品を作らせたらシャフトは上手です。ちょうど同じ時間帯にAT-Xではefを放送しており、ライオン始まるまでの10分間は視聴していましたが、シャフトの右に出るものはないなとさえ思いました。

二期が決定したので万歳です。二期は{netabare}宗谷とひなが大きくかかわってくる話になると思いますが、この話がどう描かれるのか{/netabare}楽しみでしょうがありません。

少年棋士の心の葛藤と心の成長を描いたこの作品、2クールゆっくりと描かれているので、ドラマ性を求めている人にお勧めです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 53

64.1 6 ヒューマンドラマでシリアスなアニメランキング6位
ゲキドル ACTIDOL SCHOOL(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.2 (103)
262人が棚に入れました
謎の災害・世界同時都市消失から5年世界は混乱の中にありながらも、少しずつ復興を遂げようとしていたそんな世界で3Dホログラムを用いた「シアトリカルマテリアルシステム」を使った演劇に魅せられ光り輝くステージを目指す少女たちがいたそれぞれの思いを胸に今、ステージの幕が上がる

声優・キャラクター
赤尾ひかる、持田千妃来、諏訪彩花、花澤香菜、M・A・O、山本希望、髙野麻美、秋吉あや、佐藤亜美菜、鳥海浩輔、八島さらら、水橋かおり

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

だって私には、君がいるから

この作品はオリジナルアニメだったみたいですね。
正月早々、「ゲキドル」の第1話と劇中劇「アリスインデッドリースクール」が放送されるなど、話題性の高い作品だと思っていました。

また、完走後にwikiを見て知ったのですが、主役である守野せりあ役を演じた「ぴ」ちゃん、こと赤尾ひかるさんが2015年に事務所に所属してからの初アフレコ作品だったんだそうです。

ぴちゃんと言えば、「アサルトリリィ BOUQUET」の一柳梨璃を始め、「えんどろ〜!」のユーシャ、「こみっくがーるず」のかおすなど、色々な作品に出演しています。
だから、これが初アフレコ作品と言われると時系列がズレているような気がしてなりません。
それとも、世に輩出するまで5~6年を要する作品だったということなんでしょうか?

個人的には、ぴちゃんの原点を知ることができたのは嬉しかったですけれど^^


―――謎の災害・世界同時都市消失から5年

世界は混乱の中にありながらも、少しずつ復興を遂げようとしていた

そんな世界で
3Dホログラムを用いた「シアトリカルマテリアルシステム」を使った
演劇に魅せられ、光り輝くステージを目指す少女たちがいた

それぞれの思いを胸に
今、ステージの幕が上がる


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

完走して思ったこと…
すご~く難しい作品だったような気がします。

まず、第1話と連動して放送された「アリスインデッドリースクール」ですが、本編とは何の関係も無かった…と思っています。
確かに、本編の出演されている声優さんが演じている、と言う点での共通点はあると思いますが、それ以外の接点は残念ながら見い出せませんでした。

そもそも「アリスインデッドリースクール」は、これまで無印、オルタナティブ、ビヨンドなどと形を変えて何度も演じられてきた舞台作品なんです。
寧ろ、舞台作品としての「アリスインデッドリースクール」がアニメ化されたと考えた方がしっくりするのではないでしょうか。

さて、このゲキドルですが劇場版アイドル作品、或いはアイドル要素を舞台に織り込んだ作品などと考えていると、どんでん返しを食らうことになります。
もちろん、wikiのジャンルも「演劇、アイドル」と記載されていますし、上記の様な要素が無い訳ではありませんが、物語の内容は予想の遥か斜め上をぶっ飛んでいた気がします。

まず、この作品の劇中劇ですが殆どがアリスインプロジェクトで実際に行われた演劇が基になっています。
ですが断片的過ぎて正直良く分かりませんでした。
劇中劇としてハッキリ認識できたのは、「アリスインデッドリースクール」と、物語最後の演目となった「クロノゲイザー」です。

アリスインデッドリースクールは物語の結末まで描かれていませんでしたが、クロノゲイザーは一部ゲキドルのオリジナル要素を含みながら終幕まで描かれていました。
次から次へと明らかになる物語の超設定の連続にビックリ…

劇中劇の設定にビックリしたのではありませんよ。
ビックリしたのはこの作品の物語自体にです。
まるで「STEINS;GATE」を彷彿させるかのような…
あ、同じ香菜ちゃん繋がりだからといって、まゆしーの「とぅっとぅるー」を彷彿した訳じゃありませんからね^^;

個人的には劇中劇クロノゲイザーの顛末は劇中劇以外の部分との構成・バランス共に素晴らしく良かったと思っています。
これで色々持ち直した感がありましたから…
でも少し詰め込みすぎだったかも。
もう少し演者の心情にスポットを当てても良かったような気がします。

オープニングテーマは、「ゲキドル!」と「時の翼 Chrono Geizer」
エンディングテーマは、「キズナ」、「制服DOLL」、「トーキョーロンリーガール」、「ダンデライオンガール」
それぞれアリスインシアターのメンバーが歌っています。
「時の翼 Chrono Geizer」が私のお気に入りです。

1クール全12話の物語でした。
すご~く難しい作品で、キャラデザも似通っていて区別しずらい面もありました。
私としては、ぴちゃんの活躍を堪能できたので満足しましたけれど…^^

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15
ネタバレ

kabaj31 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ひっそりと期待。。。

■完走後の感想

回を重ねるごとに面白くなっていくアニメでした。

{netabare}第5話でドールが赤い目になって覚醒した辺りから、
このアニメはいったいどこに向かっているんだ? と、とまどいつつも、
目が離せないアニメになっていきました。
SF要素が濃くなり始めてから終盤の11話になっても、そこからの着地点が見えず、
最終話の12話まで、ダレることなく見れました。
最終話のサブタイトルが「終わりよければすべてよし」なのは笑いました。

個人的に、過去改変モノについて、過去は変えられないから過去であり、
過去が変えられないからこそ、今大切なモノを大切にしようというエンドしか
無いものだと思っていましたが、こういうやり方で変えることも出来たのかと、
少し感心しました。
ゲキドルが過去改変モノに入るかどうかはわかりませんが。

OP、EDについては、前半のOPはアイドルものっぽい歌で、
あ、これ見なくていいやつだ、って感じのOPでしたが、
EDで、あ、これは見なくちゃいけないと思いました。
後半のOPが、じわじわ、妙にかっこよく思えたりもしました。

音に関しては、BGMや効果音、環境音や、ザワザワとした周りの声など
基本を押さえていて、非常に良かったと思います。

声に関しては、あいりの他にあれ? と思う人が何人かいましたが、
劇のシーンでは、せりあ、あいり、ともに気合いの入った演技で
すごかったと思います。
終盤のかをるやドールの声もすばらしかったと思います。

キャラに関しては、
ストーリーが濃い分、後半から終盤にかけて、キャラの魅力は薄くなっていったように思いました。
その点については、もっと、劇パートをたくさん見てみたかったなぁという気がします。

最後に、
人を選ぶ内容ですが、
SF好きならオススメしたいと思うアニメでした。{/netabare}


■第2話までの感想

第2話まで視聴。

「ここは、どこですか?」
「太陽系第三惑星、地球。その直径は約一万三千キロ。
一つの衛星を持ち、炭素型生物の生存に適した大気組成と‥」
「わかります。いえっ、わかりません! 地球のどこですか?」

舞台演劇を題材にしたアニメでしょうか。
元々、劇中劇のHOTDの様なゾンビモノに興味があったのですが、
こちらの本編の方が、ストーリーがしっかりしている気がします。

一部の都市が消滅していたり、近未来的な舞台装置とかが出てくるようですが、
今後、それらがどのような方向でストーリーに絡んで行くのか今のところ不明です。
ただ、登場キャラの紹介や、それぞれのキャラにちなんだエピソードで話が進ん
で行くタイプのストーリーではないような気がします。
なにか大きな柱のあるストーリーであることを期待しています。

もしかすると魂がこもった作品になるのか、ならないのか、
化けるのか、化けないのか、注目してみたいと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 8
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0

天ぷら盛り合わせと焼肉定食、あ、ご飯は炒飯、味噌汁はコーンポタージュに変更で(笑)

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
アイドルと演劇を両方こなす、演「ゲキ」アイ「ドル」を描いた、SF作品。

題材がトリッキーな上、演出も味濃くて、しかもずっとシリアスなんで、ちょっと胃もたれしました。

変わった作品であることは間違いないので、色んなアニメに見飽きたら、つまんでみるのも良いかもしれませんが、気合いは必要です。

《以下ネタバレ》

【視聴断念(6話まで)】
{netabare}
薄ら怖いな~という印象。全体として、名作の雰囲気はしてて、好きな人がいるのは全然分かるが、ちょっと自分には合わなかったかな?って感じ。私は、(特にリアル多忙期は)結構薄っぺらいアニメが好きなのでw

ゲキドル、という題材自体は興味深く、そのまま普通に青春・成長路線で行けば、普通には面白くなったな~とは思いました。もちろん、これをカッチリまとめきれれば、名作になる爆発力は秘めていたとは思います、が、、、

う~ん、SF要素、必要か?

ゲキドル、ガチ百合、池袋ロスト、アリス(ドール)、など、単品でお腹一杯になりそうな要素を盛り合わせにするから、胸焼けがする。

あと、セリアの演技を叱るアイリが、セリアよりもやや棒くさいというか、演技過多な感じがどうも。監督の要求なのか、日常パートでまで全キャラが演技がかっているので、エロゲ感があるというか。

まあ、その「嘘くささ」が、「うすら怖さ」に繋がっているから、狙いならば成功しているのでしょうが。個人的には、観ていて疲れる要因になりました。

まあ、この複数要素をどうまとめていくのか、確かに先は気になりますよ?

でも、、、これはシリアス系の作品全てで大事だと思っていますが、「疲れてしんどいけど、先を観たくてたまらなくなる」という「途中の面白さ」が本作には足りなく、ここで視聴断念とします。

ラスト(伏線回収)は、皆さんのレビューで補完しますので、頑張って完走して下さいね(笑)
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目 ☆3
また池袋。SF×アイドル×役者、うまくいくかな?

2話目 ☆2
なんか、アイドルになったな。

3話目 ☆3
確かに、その売り方はな。良く分からんが、ジュニアアイドルに脱がしたら犯罪では?

4話目 ☆3
なんか、意外と中身が深まってきたな。棒は直らないけど。

5話目 ☆2
なんか、いつの間にかドールが主役に。

6話目 ☆2
百合だな~。

7話目 ☆


8話目 ☆


9話目 ☆


10話目 ☆


11話目 ☆


12話目 ☆

{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
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