バイオレンスでシリアスなTVアニメ動画ランキング 6

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画のバイオレンスでシリアスな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月05日の時点で一番のバイオレンスでシリアスなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

85.7 1 バイオレンスでシリアスなアニメランキング1位
ゴブリンスレイヤー(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (1043)
5022人が棚に入れました
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ。」
その辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで銀等級(序列三位)にまで上り詰めた稀有な存在がいるという……。
冒険者になって、はじめて組んだパーティがピンチとなった女神官。
それを助けた者こそ、ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった…。

声優・キャラクター
梅原裕一郎、小倉唯、東山奈央、井口裕香、内田真礼、中村悠一、杉田智和、日笠陽子、松岡禎丞
ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

小鬼の報酬

【視聴完了して改稿】*末尾に追記


RPGでは「ザコ」扱いのゴブリン専門の「凄腕」冒険者の物語。

小物のゴブリン退治専門でいながら「最強」の主人公は、しかし「主人公最強」という決まり文句で語る気にはなれない。

そもそも、活劇は、その本性上、主人公は必ず勝利しなければ成立しない。
活劇において主人公が戦闘に勝利する=最強でなければ、活劇を物語ることはできない。

ようするに、活劇に対して「主人公最強」と言い放っても、それは何も言っていないのと変わらない。

なぜ「強い」のかを説得的に設定していることが、本作の特徴と言える。
なんとなく懐かしいものをまず感じるのは、80年代のアニメファンの「設定ごっこ」の匂いのせいかもしれない。


かつてアニメファンの間では、架空のアニメの設定を作り上げて楽しむ遊びが流行っていて、有名なところでは『機動警察パトレイバー』が、ゆうきまさみ を中心とした仲間内の「設定ごっこ」から誕生したことが知られている。

そうした「ごっこ」遊びでは「パターン破り」が一つの典型になっていて、よくある展開、お約束の描写などを、殊更にひっくり繰り返すことが、ある種の定番だった。
『パトレイバー』にも数々の「パターン破り」が盛り込まれていたが、さすがに才能あるクリエイターの集団だけあって、単純な「逆張り」の受け狙いにはとどまらず、後続作品の新たな「パターン」ともなる独自性に昇華されていた。

本作の「ゴブリン専門でいながら高い等級の冒険者」は、とりあえず機械的に「パターン」の逆をゆく「設定ごっこ」の「パターン破り」を連想させる。
が、逆パターンを足場にした、それこそ、かつての「設定ごっこ」を思わせる設定の突き詰めが、単なる受け狙いの逆張りではない独自性の発揮にまで至っていて、冒険の背景としての扁平な「世界」ではなく、立体感のある「世界」として異彩を放っている。

同期に放映された、「最弱のスライムが実は最強」の能力を持っている「逆パターン」の別アニメが、「逆パターン」を補強する設定が一切みられないのと比較すると、姿勢の違いは明瞭だろう。

TVアニメとしては暴力的な描写を貫いた第1話は、そうした設定を効果的に表現していた。

RPG風の「異世界」では、冒険者は「ギルド」から受けるクエストをこなすことで経験値と金銭を受け取る。
これが「お約束」だ。
たいていの異世界ものでは、こうしたルーチンは当然の前提として、改めて説明されることはない。

しかし、こうした「異世界」の仕組みを無心に眺めると、どうなるだろう。

クエストの成功に対して支払われる「報酬」はどこからやってくるのか。
依頼と支払いの業務を行う「ギルド」、そうした各所の情報を統合して処理する事務員や拠点の維持の、その費用はどこからやってくるのか。
その「世界」の住人であれば、視聴者のように「お約束」で思考停止しているはずがない。

第1話で能天気にゴブリン退治に向かう新米冒険者パーティ、あるいは背景にたびたび登場する陽気な新米たちは、まさに自分たちの「報酬」がどこから来るのか考えてもいない半人前=ルーキーであり、視聴者の分身として作中へ導入されている。


「報酬」が支払われるなら、金銭を「提供」するものがいるはずだ。
冒険者のクエストに金銭を提供するのは、すなわちモンスターやクリーチャーによって「被害」が発生しているからだろう。
そう、金銭を拠出するのが誰であれ、「報酬」を出してまで退治を依頼するのは、報酬に匹敵するほどの「被害」が発生しているからだ。ほかに理由は考えられない。
直接に「被害」を受ける者か、被害を防ぐ義務を持つ行政官か、いずれにせよ「被害」を回避するために「報酬」の金銭を拠出する。
冒険者の苦労に対する「ご褒美」で賞金が出るわけはない。

もしもモンスターによる「被害」が、平均して年に5人の死亡、といったものであれば、規模の大きな村や町なら、そのまま放置しておくこともあり得るだろう。

放置できないほどの「被害」、「報酬」を出してまで、どうしても解決しなければならない「被害」の実態を示すために、まず第1話の描写が要請された。
ゲーム的異世界への逆張りで、安直な「逆パターン」の新奇性を狙ったわけではない。
逆に、これほどの「被害」も無いのに、お気楽な「ザコ」狩りで、どこからともなく「金銭」の支払いが発生するはずはないだろう、という批評性が込められもている。

新米冒険者の「入門」として「定番」になるほどゴブリン狩りが頻繁に依頼されるものであれば、あの「被害」が果てしなく繰り返されているということだ。
妄執にも似た、主人公ゴブリン・スレイヤーの動機と行動は、こうした設定から説得力を強力に与えられている。
この説得力のために、あの第1話はある。


いったんゲーム的・空想的な「異世界」設定に異を唱えた以上、表現の方もファンタジックな架空性から距離が生じる。
原作小説がどのような文体で綴られているか知らないが、なんとなく本作が大藪春彦ふうに感じられるのは、ゴブリンに対して徹底的に非情な主人公の動機が「復讐」で、ゴブリン狩りのテクニックがまさに「狩猟」に近似しているからのようだ。

狩猟で獲物を仕留めたいなら、獲物の生態について学ばなければならない。
行動圏や生殖生態や行動様式を知り、足跡やマーキングや糞の痕跡を追って、ねぐらや移動ルートを見切って追い詰める。

鉄砲を持てば好き放題に動物を殺しまくれるわけはない。まず銃の射程内まで獲物に接近することができないだろう。

こうしたことを学ばずに山に入っても、空手で引き上げるのが関の山だ。
剣や魔法を備えていても、むなしく返り討ちにあう冒険者パーティのように。

小説では、文体を模写するパスティーシュという技法がある。
文体と、その文体で描かれるものとの間に生じるギャップ=「異化効果」の面白さを狙う技法だが、ゲーム的「冒険」を、「狩猟」のテクニックで描く「異化効果」が、「ダークファンタジー」というよりも大藪春彦=「ハードボイルド」ふうの印象を生み出している。

こうした「パスティーシュ」の雰囲気が、「パロディ」が広く浸透していた80年代「設定ごっこ」の印象につながるのだろうか。


ハードボイルドと言えば、別作品のレビューで、ハードボイルドの本質は「社会の外部から侵入した報道カメラの視線」であると書いたことがある。
大藪春彦の小説が、一般的に了解されている「ハードボイルド」風の様式から外れているのに、なお「ハードボイルド」であると感じられるのは、大藪の小説の主人公が、例外なく社会に溶け込むことを拒絶した「異邦人」であるからだ。
日本社会に侵入した「異邦人」の視線と圧倒的な暴力にさらされることで、見慣れたはずの日本社会が異界化してゆく。

本作の主人公が大藪ヒーローを連想させて、「ハードボイルド」の雰囲気をまとうのは、彼が「人間社会」=作中の用語ではヒュームの世界から逸脱した、「外部」の異端者であるからに他ならない。
「外部」にはじき出す原動力が「復讐」への強い執着であるところも、大藪との共通項だ。

「人間」の冒険者からは軽侮されているのに、他種族の冒険者と良好な関係を結ぶ描写が、互いに「人間」社会の外にいる、主人公の「外部」性を示している。

こうしたところが強力にオッサンのツボを突いて引き付けられるのだが、大藪春彦が亡くなって20年以上、最近では作品の流通も盛んではないので、あまり共感はしてもらえないだろう。

しかし、共感はなくとも、ファンタジー「異世界」の「お約束」的な「調和」の限度を超えて振るわれる主人公の暴力こそが、視聴者を曖昧に拘束している「ゲーム的異世界」の「お約束」性を告発していることを感じ取れるはずだ。
人によって、「告発」の衝撃が暴力描写への単純な不快感だと誤解されるとしても。


主人公の「外部」性は、人間「社会」の外部であるのみならず、この「世界」自体に違和する、「世界」への告発者であるのかと予感させる。

もしも主人公が「外部」性に定義されているとしたならば、浮き彫りになるのは、平和な「世界」に「外部」から侵入するゴブリンという異物を、「内部」の主人公が退治しているという物語などではない、という構図だ。
主人公の「外部」性が敵対する対象である以上、「ゴブリン」は、この「世界」に内在する、「世界」に組み込まれた一要素である以外にありえない。
「外国」から押し寄せる外敵を「国内」の英雄が防ぎとめる、といった類型で了解することはできないだろう。


主人公の視界には、この「世界」はゴブリンによる「被害」を「内包」したものであると見えている。
だからこそ、ゴブリンを「世界」から「追放」したり、「侵入」を防ごうとするのではなく、あくまで世界「内」で殺し尽くそうとする。

そんな主人公にとって、世界のすべてはゴブリンを狩るための「手段」の相関として捉えられているようだ。
各種の「装備」のみならず、カナリヤや粉塵爆発の「知識」から、協力する「冒険者」たちまで。

孤独の印象が強い冒頭から、後半には他人と交わるようになったかのように見える展開だが、しかし、その冒頭から、主人公は他者を拒絶しているわけではく、折々にきちんと感謝や謝罪の言葉を述べる様が描かれている。

問題にするのはゴブリンを狩る「手段」としての有効性であり、有効であれば何ものでも受け入れるのであって、あらかじめ何かを排除する姿勢は最初からない。「他人」もまた同様だ。

本作のキャラクターには固有名詞=個人名が与えられていないが、こうした道具的な「手段」の相関として世界をとらえる主人公の視線を反映しているのかもしれない。

「ゴブリン狩り」という動機によって配置される道具の相関。

しかし、「世界の中のモノや人といった存在者を道具的関連の相関として了解する」とは、ハイデガーが記述したダス・マン=ふつうの人の実存そのものだ。

ようするに、いっけん非情で特異に見える主人公は、(ハイデガーが正しければ)視聴者と同じく、神なき時代の「普通の人間」なのだ。

「普通のオトコノコ」が活躍するアニメが、慎重に主人公を無能力化・無個性化することで視聴者に同化させようとする作為に比べ、「普通の人間」がここまで際立つのは、やはり背景=舞台となる「世界」の設定力が優れていることと、その「世界」の外にはじき出された「外部」性のためだろう。


{netabare}ナレーションによれば、この「世界」は、「秩序」の善神と「混沌」の悪神のせめぎあいで創造されたものだ。
せめぎあいの手段が「サイコロ」である設定が明かすのは、この「世界」が、偶然性によって「出来上がった」ものであり、何ものかの一貫した「設計思想」の下に「構築」されたものではない、ということだ。
「混沌」の神と共に「偶然性」によって創り上げられた、ということは、即ち、この「世界」では「秩序」は部分的なエラーのように点在しているだけ、ということを意味する。

つまり、世界にとって「バグ」にも似た「モンスター」を排除しさえすれば、「本来の」秩序だった美しい「世界」が復活する、という一般的なゲーム的ファンタジー異世界のエンディングは、本作の「世界」には望めない、ということだ。

モンスターもまた、聖者や勇者と同様に、「外部」から「侵入」する異物ではなく、秩序と混沌のモザイクであるこの「世界」に組み込まれた不可欠の組み石であり、恣意的に抜き取ることはできない。
最下級モンスターである「ゴブリン」による「犠牲」もまた。

戦闘の決定的な場面で、主人公が振られる「サイコロ」を幻視するように、アインシュタインの確信に反して、この「世界」の神々はサイコロを振る。
この「世界」の神々は、スカウターによって計測される能力値が大きければ自動的に勝利が「保証」されるような、定められた「秩序」を約束しない。

高等級冒険者であっても、ちょっとした加減で死を迎えるこの「世界」を、もっとも的確に象徴するものとして、本作の「ゴブリン」の設定がある。

単体であれば半素人でも撃退できるザコ。
しかし、群れとなれば一撃で消し去ることはできない。
必然的に撃ち漏らしが発生し、逆襲や逃走を防げない。
逆襲の手数が多くなれば、冒険者は対処しきれず致命傷を負う。

こうした設定によって、「最弱」のゴブリンは、状況次第で、新米が無事にクリア出来たり、ベテランが落命する予測不能の結果を導く。

無事にゴブリン狩りをクリアした新米は、しかし2回目には全滅するかもしれない。
ベテランであれば、5回は成功しても、6回目には死ぬかもしれない。
高等級冒険者でも、100回続けてクリアし続けられる保証はない。

丁半博打でサイコロの出目を永遠に当て続けることはできないように、誰であれ何時かは必ず敗れ去るであろう「ゴブリン」は、こうして「神々のサイコロ」性を象徴している。
勇者であっても敗れて不思議ではない「ドラゴン」や「魔王」では、サイコロ性は明瞭にならない。
容易に狩れつつ根絶は困難な「ゴブリン」こそが、この独特の「世界」を象徴する。

ある意味では現実世界そのものといった身もふたもない「異世界」だが、この現実に似た「世界」が、本来は反現実的な空想の産物である「異世界もの」と比べて独特の印象をもたらすのは皮肉だ。
量産化される数多の「異世界もの」が、いつの間にか制度化した「お約束」によって奔放さを失った類型と化しているのだと暴露する本作の「世界」は、やはりゴブリンを足場にしているからこそだろう。

しかし、勝利が「保証」されないということは、逆に敗北が「運命」づけられてはいない、ということでもある。
「ゴブリン」狩りの道具として「世界」の全てを活用しようと企てる主人公の姿勢は、「サイコロ」の目がどう出ようとも勝利する手段を必ず確保する意志の現れだ。

確率的にいつかは訪れる「ゴブリン」による「死」=「敗北」を絶対に回避する意志。
いわば「神々のサイコロ」=世界の仕組みを越えようとする主人公の意志は、やはり「世界」の「外部」性から生じていることは明らかであるように思う。
サイコロを振る神々の世界で、神なき時代のダス・マンに近似するのは必然なのだろう。


最終エピソードで主人公と共にゴブリンとの野戦に挑む冒険者の群れは、「狩猟」に似た「ゴブリン狩り」とは打って変わり、ファンタジー風のバトルでビジュアル的に楽しい。

多数の冒険者と協調して野戦に挑む描写は、主人公が偏屈さを捨て、他者と親和する「和解」を表現している、わけではない。
そもそも最初から、主人公は他者を拒絶などしていない。

主人公と共に冒険者たちが一つにまとまるのは、むしろ主人公の視界に映る「世界」がどのようなものであるのか、その「外部」の視線に映る「世界」の実相を冒険者たちに共有させるためであるように見える。

社会外から侵入するハードボイルド探偵の「外部」の視線が、その社会の汚れて歪んだグロテスクさを「内部」の人間たちに突きつけるように。

ハードボイルドとは、不愛想なのに時折キメ台詞を口にしたり、マッチョがタフを気取るポーズのことではない。
それらは「内部」を告発する「外部の視線」を表現するための技法であって、本質は視線の「外部」性にこそある。

「サイコロ」に振り回される無秩序を疑問視しせず「世界」を肯定する冒険者たちに、「世界」の実相を垣間見させる野戦は、冒険者たちに自覚があれば「世界」の足元を見極める視線を身に着けさせるだろう。

だが、視線の外部性は、単純に外部に立っているということではない。
否応なく「外部」の視線で見つめてしまう存在でありながら、しかし同時に「内部」に囚われて外側に立つことができない分裂と矛盾が、「ハードボイルド」を駆動する。

はじき出された「外部」の視線で「世界」を見つめつつ、「想い出」の象徴である牛飼娘によって強力に「内部」へと繋ぎ留められる主人公もまた、冒険者たちとの結びつきによって、一層「ハードボイルド」性が強化されるだろう。

同時に、野戦によって主人公の「外部」の視線を垣間見た冒険者たちの中から、いつか「ハードボイルド」な冒険者が誕生するかもしれないと想像させてくる。

それは、今日は雑兵扱いされている、新米冒険者の明日の姿かもしれない。
そう、「たまたま」身に着けた防具で命拾いした新米は、その意味を掴むことができたならば、生き残っていくことが出来るかもしれない。
ハードボイルドに。


アニメやマンガでは、「復讐」は、「虚しい」「何も生まない」と薄っぺらい説教をされることが多い。
が、「何も生まない」とは、第三者が外側から観察して、費用対効果の経済効率を測定しているに過ぎない。
今このときを「復讐」を糧に生きる主体の前に、経済効率が何の意味を持つだろう。

冒険者たちとの野戦を通過し、いつかは「冒険」したいという希望を漏らすに至った主人公は、「復讐」の先へ向けた視線を獲得したと見える。
が、それは経済効率を受け入れたからではない。

復讐を果たしたとき=「ゴブリン」を絶滅させたときに思いを馳せるのは、「世界」の象徴である不可欠の構成要素が除去されたとき=「世界」が決定的に変質したとき、初めて「世界」を肯定して受け入れることができるかもしれないという(半)自覚の芽生えだ。
裏返せば、「世界」がこのままである限り決して肯定はしない/できないという、いま現在の、冒険者たちとの距離感でもある。
と同時に、「新しい世界」に出会う「冒険」は、「世界を変質」させるだろう「ゴブリン狩り」と根底で通じているのだという無自覚の気付きを、主人公の「冒険者」への憧れの芽生えは示している。


「神に抗う」「神に反逆する」と仰々しく看板を掲げるアニメは数多い。
本作の主人公が、世界の命運よりもゴブリン退治を志向するのは、こうした「パターン」の「逆張り」に見える。

しかし、「世界を象徴して」いる「ゴブリン」の退治において、「神々のサイコロ」を拒絶する意志は、すなわち世界を創った「神に抗っ」て「反逆す」ることと等しい。
矮小な小物狩りに特化した主人公は、決して「勇者」を補完する「日常の守護者」ではなく、その突き詰めによって、「世界」の根幹と支配性に挑戦しているのだ。

たった一つの「駒」では「何も変わらないだろう」という神々の傲慢なナレーションは、主人公によって「世界」の足元が掘り崩されていったとき、その無自覚をさらけ出すことだろう。
この「駒」は、多数の冒険者はもとより、必要とあらば「勇者」をも道具に使うに違いないのだから。

狭小な個人的意思が、実は「世界を変える」ことと等しいのだと描く物語は、この設定の突き詰めによって実現している。
「報酬」を発生させる果てしのない「被害」を撲滅する、煉獄にも似た「ゴブリン狩り」の向こうに、「世界」が変質する希望が微かにほの見えるようだ。



こうした物語を追うと、やはり本作は「ダークファンタジー」ではなく「ハードボイルド」の様式で描かれていることが必然のようだ。
ダークファンタジーがあくまで暗黒の世界の「内部」で完結する物語であるのに対して、主人公の「外部」性が「世界」に対立する本作は、やはり「ハードボイルド」だろう。

本作のキャラクターは固有名詞を持たず、名前を呼び合うことはないが、主人公も例外ではない。
主人公の字名すら、ゴブリンスレイヤー=オルクボルグ=小鬼殺し、と固定してはいないのは、ハメットの『コンチネンタル・オプ』に代表されるハードボイルドの「名無しの探偵」の系譜に連なる存在である証のように思われる。

愛想がないのに女性が惹き付けられる主人公だが、本作やアニメに限らず、はぐれ者が女性にもてるのは物語の定番でもある。
ハードボイルド探偵のような、主人公を始めとする「はぐれ者」に女性が惹かれるのは、(ちょっと嫌な言い方だが)建前に反して女性が社会の中心部から排除されている現実の反映なのかもしれない。
「女子供」という言い回しに典型的なように、社会人未満として社会の中枢から遠ざけられる「周辺」性が、はぐれ者の「外部」性と親和するのだろうか。

本作では、殺される寸前で死を垣間見た、日常と冒険の境界に立つ受付、人外の種族、といった「周辺」性や「外部」性が、主人公の外部性と引き合う。
現象面だけ見て「ハーレム」というのは少し表面的に過ぎるようだし、「女性は視聴に注意」などと殊更に本作から女性視聴者を遠ざけるのは、余計なお世話というものだろう。



TV放送されるアニメであれば、放送に当たって様々に制限が付けられる。
第1話は、それでも制限の中で表現の限界を探る意気込みが感じられた。

が、8話では、TV的な制限で作品の雰囲気を損なう描写があり、少し残念な気がする。

奇跡によって蘇生した主人公が起き上がるシーンで下穿きを身に着けているが、設定やストーリーの流れからすると、ここでの主人公は全裸であったほうが自然だろうし、それで問題があるとは思えない。
一目瞭然でワザとらしく不自然な、下着をつけたビジュアルは、TV放送上の制限ではあるのだろうが、「この通り、放送に配慮しております」という宣言のようなもので、「物語への没入」が「放送の視聴」へと引き戻されて、白ける。

つまらないと言えばつまらない言いがかりだが、だからこそ、こんな下らないTV放送配慮が表面化して作品の雰囲気を損ねるのは、それこそ「つまらない」ことだと思う。




友人と呑んだ時に本作の話が出たのだが、友人の評価は低かった。

上記の感想は、「復讐」に憑かれた男が「世界」に敵対している、という視聴から生じたものだが、友人は「ゴブリンスレイヤー」とは「ゴブリンをスレイ」する「職業」名と視聴したらしい。

主人公のゴブリン狩りを「仕事」とみなせば、なるほど、「仕事」への取り組み方や向き合う姿勢、何より受益者である「消費者」の満足といった点で、まったくバランスを欠いた現実味のない「仕事」に見えるのも無理はない。

しかし「仕事」という点から読み返してみると、主人公とギルドの冒険者たちとの違和は、「復讐」としての「狩り」と、経済的な「職業」としての「冒険」の隔たりでもあるのだなと思えてくる。

異種族の冒険者との良好な関係は、彼らの「冒険」が、「好奇心」や「宗教的な修行」といった「仕事」を超えた非・経済的なものであるところに、「復讐」と引き合う根拠があるのだろう。

視点によって、同じ「世界」でも全く違う光景が見えるのだなと、ちょっと面白かった。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

途中で断念したにしとく

6話までの感想{netabare}
世界観がようワカラン。
リアルを追求してるのか放棄してるのか…どっちなん?
ゲームのパロなんてさくまあきらが散々やったし今更やられてもなぁ。
多分スポンサーは分かってて言ってるんだろうけど、これをダークファンタジーと謳ってて「?」。
今期放送されてる別作品で例えると、もし“ユリシーズ”を本格歴史小説って言われてたらモヤっとすると思うんだけど、そんな気分。
ただのゲームのパロディ作品でしょう。
TRPGにしろゲームのシステムってリアルの生活をデフォルメしたもので、それを更にデフォルメ重ねたところでリアルにはならない。
あれだ、藤田咲に初音ミクの物真似させても素の藤田咲とは全く違うものにしかならないって感じ。
だって、ねぇ。
野生動物よりも恐ろしい魔物退治を専門にしてるハズの冒険者が、鉈持ったアイヌより弱そうなんだもの。{/netabare}

総評というかなんというか{netabare}
あんま言いたくないんだよなぁ。
言ったところで「じゃあお前はどうなんだよ」「そんなこといえるくらい立派なのかよ」って言われたら返す言葉もなく言いよどむ事柄でして。
かといってそうやって黙り続けても鬱憤がたまるばかりでして。
なるべく別作品挙げたくないんだけど、共通した「アカン方向」ってのがあって…昔からあるものではあるんだろうけど、ラノベってジャンルに於いては“キノの旅”が奔りかなぁ、と思ってて。

皮肉ると皮肉った対象より偉くなった気になれる、イヤな感情ではあるけどまぁ分かる。
けどね、それが有名な逸話「お菓子を食べればいいじゃない」にしかなってないのはどうなんだろう。
もっと詳細に書くと、貧困にあえいでる人が「パンすらロクに食べられない」と言ってるのを聞いて、「パンが食べられないならお菓子を食べれば良いじゃない。こんなことにすら気付かないなんて大衆(この世界の住人)はナンてバカなんでしょう」とふんぞり返られても「いや、アンタの方がよっぽど…」としか思えない。
要はパンよりも菓子のほうが高価って前提(常識)があるにも関わらずそれを無視し、解決にすらならない解決策を持ってこられても困っちゃう。
世間知らずのバカが知った口利いて「ボクってなんて賢いんだろう」って振舞われても「なんだよコイツ」にしか思えない。
“トネガワ”でネズミ講を「なんて新しいビジネスモデルなんだ」と持て囃してた海老谷と変わらない。
厄介なのはこれはあくまで「パンよりお菓子の方が高価」っていう常識が前提で、もしこれが創作世界で「お菓子の方がパンより安い」って設定なのなら成立はするんだけど、じゃあそれは前もってハッキリと提示しておかなければならない。
この基本設定をボヤかして煙に巻いて賢いつもりになってた(と自分は感じた)のが“キノの旅”で、どうにもこの悪習が綿々と続いてる気がする、“劣等性”とかね。
ヤベーのは「前もって提示しておかなければならなかったこと」が、「説明するまでも無い常識」と「書いてる人が常識知らずで本当に知らなかった」の二者に分かれる中、後者側の人間が前者のつもりになってるのが痛々しくて。

で、話をゴブスレに持ってくると、やってることが既存ゲームに対して「お菓子を食べれば良いじゃない」って言ってるだけにしか見えない。
「そんなことは分かってるよ、ゲームだから端折ってるんだよ」としてた賢い先人に、そんな事情を知らん無能がダメ出しして勝った気になってるだけにしか見えない。
バカほど人の気遣いに気がつかない。

まず1話のレイプシーンだけど、「批判してる人はあのシーンがショッキングだったから拒絶起こしてる」みたいなこと言われるけど別にそれはどうでもいいんだ。
もしあれがダメって言う人は小池一夫の作品読もう。
残酷描写の良し悪しではなく、それをすることで他の部分に与える影響のほうが問題でして。

そうねぇ、最初のギルドの有り様からしておかしい。
ゴブリン退治…だけでなく、モンスターの被害に会ってる村が金を出してギルドに討伐依頼して、ギルドは冒険者に公募かけて名乗り上げた人が退治に向かう、と。
…?
村人からは前取りしてーの冒険者へは後払い?
え…これじゃあ「村滅んでくれたほうが・冒険者死んでくれたほうが儲かる」にならない?
汚職待ったなしだと思うのだがどういうこっちゃ?と思ってちょいと調べてみたら…えっ、作中のギルドって国営?
…??
年貢取って更に依頼料せしめるってこと?
ってか1話では「とても依頼をこなせそうもない冒険者」を村に送ってなかったっけ?
依頼こなせないどころか孕み袋として母体を提供する形になって更に悪化させてなかったっけ?
国営としたら大失態なんじゃ…なんでこんな???
もうこんなの「意図的に使えないやつを送った」って噂立ちそうなもんだが。
競合他社があったら即座にそっちに客取られて潰れるところを、国営として独占してるワケだ。
ってことで国やギルド自体が腐敗してるって話か?と思ったらそうではないっぽい。
改めて言う、

金のみで動く・金額次第で何でもやる・金こそが全て

っていう拝金主義ならそれはそれでいいんだ。
現ナマでしか受け付けないみたいだし、ギルドの隣に高利貸しや悪徳両替屋や人買い屋が当たり前のように併設されてる、それならそれでいい。
受付嬢はクソの権化で国王はアホの極み、それならそれでいいんだ。
けどその後の作中描写はそうでないらしい、むしろ優良企業(組織)みたいな扱いでもう意味が分からん(わかってるけど)。
これは他のこともほぼそうで、最初に印象付けた出来事に対し、その後の描写がそれに背く形になってて、「お前何言いたいの?(わかってるが)」って中身になってる。

あんまダラダラ長く書いてもしょうがないので(といいつつもう充分長いけど)先に言っちゃうと結局これ、なろう系の鉄則「他人に厳しく自分に甘い」の「自分に甘い」の部分をののままに、「他人に厳しい」の部分をより過激にしただけ。
自分に甘いの部分に関してはイセスマなんかと変わりない。
ああ、ここでいう自分ってのは自己投影先のゴブリンスレイヤー並びにそれを賞賛する喜び組ね。
他人ってのはMOBのこと。
わざわざ人前で部下を叱り付ける上司ってのはよく居るけど、叱り付ける部分を殴る蹴る追加しただけ。
上司そのものは社長(神様=作者)に気に入られてて何一つペナルティは無く、他人に厳しいシーンだけを見て「なんて厳しい人なんだ」と騙される人も居るだろうけど、その実「自分には甘々」ってのが透け透け。
話題の1話のレイプシーンだって所詮は他人(MOB)、もしエグさを売りにしたいならもっと主人公(作者や視聴者が投影するキャラ)と親交を深める・充分感情移入させてからやりゃあいいのにそうじゃない、温い。
それでいて他人がゴブリン被害受けたら介錯するクセに自分がやられたら処女同衾で復活だってさ。
それ以外でもやれ改造転移スクロールだの小麦粉粉塵爆発だのセメントだの、前もって先の展開を知ってるとしか思えない準備の良さ(神様に気に入られてるので)。
難局を脱する際、あくまで普段持ち歩いてる特別でもなんでもないもので特殊な使い方をすれば「機転を利かせた」になるけど、ピーキーな道具をピーキーな場面で都合よく準備できてるのはご都合主義でしかない、お前未来予知能力者かよと、アクエリオンの不動指令かよと。
TRPG語るならエンカンブランス気にしよう。
えーっとかつて緊張感やピンチ演出について書いた事がある気がするけどそれではまだ説明足りてなかったなぁ…。
ピンチっていうのは「先の展開知らないで分の悪い賭けに打って出ざるを得ない状況」であって、それこそ運を天に任せてサイコロを振る瞬間であって。
先の展開知ってる限りはどんなに怪我しようがピンチじゃない、どうせ助かるって分かってるんだから…そういう意味では「異常な用意の良さ」はマイナスにしかならない。

他にも結局ゴブリンスレーヤーは誰からも悪し様に扱われない。
イントロダクション見ても「彼は手段を選ばず、手間を惜しまずゴブリンだけを退治していく」と、あたかも他人からどんなに恨まれようがゴブリンさえ倒せればそれでいいって印象を受けるが実際はそんなことは描かれていない。
なんとかゴブリン倒せたけど村人から「殺してやる」と恨まれることはない。
道すがら村人がレイプされてて助けてくれとすがられるけど犯人がゴブリンでないので「あっしには関わりのないことです」と素通りすることもない。
(牧場襲ったのがゴブリンでなかったら見殺しにしてた、くらい言わせればいいのに)
ずっと最弱(と認識されてる)ゴブリンばかり狩る変人扱いかと思えば吟遊詩人に歌われる英雄扱い。
これに関してはひょっとしたらドンキホーテよろしく笑い者として知れ渡ってるのかな?と思ったけど、サンチョのようなツッコミ役ナシでひたすら「ゴブスレのやることは正解」になるのでまぁ気持ち悪い。
「頭おかしい人の頭おかしい行為」ではない、正解引いてるんだから。
世界はゴブスレを賞賛するための道具に過ぎない。

まぁなによりも、だ。
ルールブック読んだだけで、一人でプレイしただけで、TRPGやったことないでしょ?
ってのがモロバレで。
ここら辺なぁ…鼻にかけたくないし、ある意味TRPGやったことある人にもキツいこと言うことになってしまうんだけど、現在廃れてるのは廃れるだけの理由があるワケで。
よく知らない人が昔そんなのが流行ったって噂だけを聞いて、妙に高尚なモンだと勘違いされるのもこれまた困ったモンで…。

TRPGを食った一因(あくまで一因)として格ゲーがあるけど、“ハイスコアガール”を見てもらえれば分かりやすいけど、癇癪起こして台バンする人って当たり前のように居ました。
TRPGだってそういう人が参加することはあるワケで…それでいてゲーセンの店員のような強い強制力を持った人ってのは居ない。
じゃあそういう連中野放しにしたらどうなるの?ってのは火を見るより明らかでしょう。
またそういう人を寄せ付けないようにしたら閉鎖的にならざるを得ないし、まぁ廃れて行くばかり。
高尚な遊びとして高尚な方のみが集う高尚な場(その場合私もお断りされちゃうけど)なんてのはあり得ないワケで…なにより自分が高尚だと思い込んでる人ほど厄介で。

で、だ。
ゴブスレの内容ってさ、そんな「廃れさせた奴ら」の行動まんまソレで。
私は存在は知りつつ最近まで専門用語までは知らなかったのだけど、和マンチとか吟遊GMとか言うらしいね、詳しくはググって。
むしろそういう悪行を悪行と知らずにカッコイイものと認識してるらしく、正に自分は高尚だと勘違いしてる手合いそのもの。
(かといって排斥したところで閉鎖的なのが加速するだけではあるんだけど)
「オレって糞野郎」と思ってるならゴブスレはもっと世界から悪し様に扱われさせるっしょ。

ここら辺は本当なぁ…マトモにやってた人にもプライドはあるワケで、「どうして廃れたのか」を喧伝するには口が重たかったのかなぁ。
現在の認識ではこれが正しいTRPGになっちゃうんですかね?
ちと他の作品でも(古い人から見たら)TRPG分かってない描写があっていい加減不満爆発してめっちゃ長文書いちゃいましたが、結局は「もっと勉強してくれ」に尽きます。
イメージだけでマウント取りに語ってるっていうのが丸分かりでね…所詮他作品キャラを寄せ集めたメアリースーではこれが限界なのかも知れないけど。

長々と書いてしまったけどこれにて、長文失礼。{/netabare}

追記{netabare}
ああん、そういうことそういうこと。
ダラダラ長文なだけで全然主張が見えてこないクソ駄文だと自ら思ってるけど、それに引き換え他の方の感想がやっぱり端的で素晴らしい。

↑で「ググって」って言葉で端折ってしまったけど、“吟遊GM”の件。
実際それってどういうこと?というと、要はGMの操るキャラクターが無双して大活躍して賞賛浴びるのが最大の目的で、参加プレーヤーはその引き立て役に徹する(徹させられる)ってプレイスタイルのことです。
そんなんやろうと思えば容易な話で…だってGMはこの先何があるか知ってるんだもの、この先どんな罠があるか知ってるんだもの、この先何が必要だか知ってるんだもの、敵はどうやれば倒せるか知ってるんだもの。
GMにとって気に食わないヤツ(のキャラクター)はテキトーな理由で悲惨な目にあわせるのが可能なルールなんだもの。
例えば初見では絶対分からない罠にプレーヤーを引っ掛け、どんな罠があるか前もって知ってる(当たり前だが)GM操るキャラクターはそれを颯爽と回避し(これといった理由は無い)、「お前こんな罠も分からないの?バカなの?」といってマント取るの。
「オレ(の操るキャラ)はなんて有能なんでしょう」ってのを見せびらかすのがメインで、プレーヤーはそれのための踏み台、そういう精神に侵された奴がGMを務めるTRPG。
それが更に深化して自キャラを引き立たせるために参加プレーヤー(のキャラクター)には泥水啜れ・肥溜めで溺死しろ・ゴブリンに犯されて死ね、さもなくば賞賛しろってのを強要し出す始末…ゴブスレにはそれしか感じない。
自分はそういうのはGM接待プレイと呼んでましたが…まぁ参加はしたくないですね。
で、GM接待プレイを許容できる人はこれを面白いと言っても差し支えない。
もうそこら辺になってしまうと良い悪いの話では無く許容できるか否かなだけかと。
私は許容できない、それだけ。
ただちょっと怖いのは「え、TRPGってそういうもんでしょ?」って風潮になってるのならそれはどうなんだかなぁ…?{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11
ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

彼の何に魅かれるのか考えたとき、人間の本質が見えてくる。

2018年12月30日 記載
子供の頃って、自分は何にでもなれると言う万能感で溢れていました。
根拠の無い自信で、無謀すぎる思考に取り巻かれた世界
叶えたい夢があったなら簡単に叶える事が出来て。
信じたい理想があった時、それは確実に成就出来る。
私自身も、本気でそう思っていた節があります。

勿論、そんな事は有り得なくて、在る訳無くて。
役割が伴わなければ、存在を為せないのはサルトルの言う通り
しかし、その期間は人間として1番強い時期でもあります。
無条件に「夢」や「理想」を信じられる。
「何にでも」にはなれなくても「何か」にはなれる。
全ては叶えられなくても、真に目指したい夢には到達出来る。
全ては成し遂げられなくても、信ずるべき理想には到達出来る。
子供の「思い」と言うのは、人間が本来併せ持っている「強さ」であると、私は感じます。

無知故の強靭、無恥故の蛮勇
そんな風に信じている人を馬鹿者と吹聴する大人もいる事でしょう。
しかし、そう考える事の出来る「強き思い」は何物にも変え難い信念です。
そう考える事の出来る「強き思い」は、決して覆せない覚悟となります。
そこに到達した際の役割を全う出来るだけの「覚悟」と「信念」があれば。
「夢」や「理想」なんて、決して幻ではないのです。

そして、そんな強気さえも浮かばなくなっていた今日この頃、私は本作に出会いました。
主人公は「何にでも」にはなれず、「なりたかった何か」にもなれず、「なりたい自分」が分からなくなっていた人間でした。
だからこそ自然、彼に感情移入して物語を楽しめた次第です。
現在の自分とどこか似通った部分を垣間見て、その際に私は、人間の本質を見つけたような気がします。

本日のレビューでは、少しその事についても書き添えると致しましょう。
今回御紹介するのは、喪失を取り戻す男の話
何も無い自分に「意義」を見出した『ゴブリンスレイヤー』の物語です。




【あらすじ】
これは、ある男の物語
英雄ではなく、勇者にもなれない。
ただ、小鬼を殺すだけの男の話

全てが運と知略で繰り広げられるこの世界
そんな盤上で、1人の男は只管ゴブリンを殺す。
そこにあるのは復讐を超えた義務
そこにあるのは後悔を越えた殺戮

武勇伝や英雄譚はお呼びでない。
そんな華々しい世界は、ここにはない。
小鬼を殺し、殺し、殺し、殺し続けた血の道があるだけだ。
「お前に小鬼が殺せるのか?」
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」

これは、そんな彼が織り成す「世界」の話
英雄ではなく、勇者にもなれない。
ただ、小鬼を殺すだけの男が真に成りたかったモノを、見つけるまでの……
「世界」を超えた『世界』の話だ。




{netabare}
1年が終わりました。
艱難辛苦の厄年でした。
個人的事情は抜きにして、昨年のアニメを振り返ってみると、どこぞの細胞やら、どこぞのお兄さんやら、「働く」事をテーマの一要素としたアニメが多く出ていたと感じます。
「労働賛歌」を謳ったり、「働く事の意味」を見つめ直したり、十人十色
「娯楽は時代を反映する」
娯楽に反映される程、労働に苦しむ今の社会って危険なんだろうなと感じた1年でした。

屈指のジャパニメーション国家もとい「労働問題」に辛苦する国、日本
これまで培ってきた産物から社会問題へ言及するのはよくある事
ディズニーやチェコアニメーションなんて観るとよく分かります。
ただ、それはそれとして、昨今の「あからさま」なのは嫌いじゃねえけど観たくねえと思ってしまうのです。
「働く」と名の付いた作品や、明らかに働く事をテーマとしている「勤務地」が舞台のアニメ
「辛い事もあるけど働くのって良いよね!!」みたいなポジティブメッセージを随所に感じてしょうがありませんでした。
そんな短絡的思考で容易に割り切れる問題じゃねえよ。
そう考えた結果、過労死する惨状がこの世界にはあるんだよ。
こういう「前向き」に感化されたら、自分の思考自体がよからぬ方向へマインドコントロールされてしまう。
労働嫌いな私は上記の要素も相俟って、そういった作品は観る事こそあれどあまり嵌れない始末でした。

そして、私のそんな心境は『ゴブリンスレイヤー』において、正に熟考を発揮します。
しかし、それは私のお気に入りの形で。
暗喩的且つ的確なメッセージで以って。
不快にならない程度に、上手く描かれていました。
そう、本作はそんな適度のバランスに保たれた世界で、「働く」と言う事を自然に考えさせてくれる作品なのです。
正確に言えば「労働」を基点とした「人生観」について、と言う所でしょうか。
「働く」事によって「人生」をどのように謳歌するか。
自然に考えさせてくれる描写が非常に多かったと言えましょう。

その大部分はゴブリンスレイヤーと言う人間から。
彼と言う「冒険者」に魅かれた結果、生み出された産物でした。
冒険者としての職業が成立する世界
主人公のスタンスは自分の現在と似通った箇所が多かったです。
「はたらくぞ はたらくぞ 毎日毎日戦場」の世界
誰もが向上心に溢れ、ドラゴンやらオーガやら悪魔やらロックイーターやらを倒して上へ上へと伸し上がろうとする世界
その中で、黙々と最弱モンスターであるゴブリンのみを狩り続ける彼、ゴブリンスレイヤー
成し遂げられるのは小さき事だけ、社会の風潮に溶け込めない逸脱者の自分と重なりました。
この先、ゴブリンを殺せなくなる日が、働けなくなる時がやって来る事に困惑を覚える彼、ゴブリンスレイヤー
「未来」「将来」と言う言葉がずっと迫っている、先なんてさっぱり分からない日々を送っている現状と重なりました。
結局、「先の事」なんてちっとも分からなくて、目の前の事を精一杯やるしか無いんです。
今を生きていくだけで精一杯、生きているだけで丸儲け。
そう考えていく事でしか、自らを保ち続けられない自分を、私は彼から見出しました。
弱き人間の本質を、彼を観ていた自分に見つけたのです。

そしてだからこそ、小鬼の「恐怖」を身を以って痛感しているゴブリンスレイヤーが、社会の「部外者」である彼だけが、その対処の為に彼等だけを狩り続けると言う姿勢に、私は痺れてしまいました。
あくまで自身のスタンスを貫き続け、その結果、他者からどのような目で見られ、蔑まれ、怯えられ、馬鹿にされようとも、その意思を曲げません。
そして、そんな自らの抱いてきた信念が、行動が、少しずつ実を結んでいきます。
偶々助けた女神官から、彼の逸話を聞いて集まった妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶に広がり、剣の乙女との邂逅を経て、最後にはギルド全員と意思の共有をするに至りました。
彼が培ってきた努力の体現には、感極まるより他に無いでしょう。
そして、その過程の変遷が彼の行動をずっと見守り、信じ続けてきた牛飼娘をも救ってしまいます。
牧場と言う、ゴブリンスレイヤーと牛飼娘の「帰る場所」
その「聖域」が元の形を維持し続けられた事で、そこからまた「冒険者」として旅立つ事が出来るのです。
この構成が、もう堪らなく素晴らしかった。
強き人間の本質を、彼女を観ていた彼に見つけたのです。

それは確かに、無駄じゃあなかったんです。
彼がこれまでゴブリンを殺し続けてきた過程は、決して無かった事にはならなかったのです。
目の前の事を精一杯やってきた、現在のみを見据えて生きてきたゴブリンスレイヤーの5年間は、決して無駄ではなかったのです。
私の胸はどうしようもない幸福で胸が張り裂けそうになった次第
そして、辿って来たこれまでの日々は、彼に1つの夢を呼び起こさせます。
子供の頃から、なりたかったもの
自分が叶えたくても、叶えられなかったもの
今でも、まだ叶えたとは思えていないもの

「冒険者」

自覚した彼は「死ぬまで生きていく」人生の中、追い続けるでしょう。
人間の「強さ」を取り戻した彼は、自らの道程を求め続けるでしょう。
「冒険者」になると言う「夢」を。
「冒険者」として生きたいと言う「理想」を。
「部外者」から「冒険者」へと変化した彼の「物語」は今、始まるのでした。
-----------------------------------------
まるで、偉大な物語の中にでも迷い込んだような気分です。
闇や危険が一杯に詰まっていて、その結末を知りたいとは思いません。
幸せに終わる確信がないから。

こんな酷い事ばかり起きた後で、どうやって世界を元通りに戻せるんでしょう?

でも、夜の後で必ず朝が来るように、どんな暗い闇も永遠に続く事はないんです。
新しい日はやって来ます。
太陽は、前にも増して明るく輝くでしょう。

それこそが、人の心に残る偉大な物語です。
子供の時読んで理由が分からなくても。

今ならフロド様、なぜ心に残ったのかよく分かります。
登場人物達は重荷を捨て、引き返す機会はあったのに帰らなかった。
信念を持って道を歩き続けたんです。

(フロド:その信念って何だい?)

この世には、命を懸けて戦うに足る、素晴らしいものがあるんです。

『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』サムワイズ・ギャムジーの言葉より抜粋
-----------------------------------------


振り返ってみると、この『ゴブリンスレイヤー』と言う作品は、全てを喪った者の「再生」を描いた作品だったと感じます。
自分にとっての世界が崩れた時、人は別の何かにまた「世界」を見出します。
彼にとっては、それがゴブリンであり、スレイであり、ゴブリンスレイでした。
「姉」と「過去」に囚われた彼が、「世界」を小鬼殺しと言う殺戮に見出すのも必然と言えましょう。
しかし、その「世界」自体がそもそもにして狂っていた時、脱却する事は容易くありません。
何故なら、そこに彼は生きているから。
そこが、彼にとっての「世界」だから。
世界とは、良くも悪くも、人間にとっての生きる指針なのです。
それは、現実でも盤上でも変わらないでしょう。

しかし、その囚われた「世界」の中でそれを超える『世界』に出会えたなら……
その『世界』の数々が「世界」を生きる彼自身の「再生」を生み出したなら……
彼の「世界」が『世界』に取って代わる日も近いはず。

『世界』
それは、冒険者になると言う「夢」
それは、ゴブリンに捉われない愛すべき「仲間達」との日々
それは、自分の事を信じて待っていてくれる「大切な存在」
それはきっと、彼自身が元来望み、信じ、願っていたモノ
彼がずっと、子供の頃から求めていた「強き思い」なのです。


「行ってきます」
「ただいま」
上記の言葉は、そんな彼にとって、非常に重くて尊い挨拶
「冒険者」として旅立ち、「大切な者」の元へ帰る為の応酬として、非常に重くて尊い挨拶
だから、私は願います。
この『世界』を繋ぐ架け橋が、いつまでも彼の元で生き続ける事を。
この『世界』に満ちている、優しき希望が彼の中に芽生え出る事を。
心の底から、願うのです。
願うより他に無い、視聴後の私に満ちた感傷でした。
-----------------------------------------
Let out your strength from within, from within
力を注げよ 心の底から 心の底から

Then you will begin to appreciate the hope
ならば君は この優しい世界に満ちる希望に

In this graceful world
感謝し始めるのでしょう
-----------------------------------------
Let out your cries from within, from within
叫びを放て 心の底から 心の底から

Remember who you used to be
昔の自分を思い出して

Everyday can be your new beginning
どんな日も 君の新しい始まりになるのでしょう

Mili「Within」歌詞の一節より抜粋
-----------------------------------------

https://www.youtube.com/watch?v=3UJ_mERvw3A




P.S.
2018年も様々な方面で魅力的なヒロインが多く登場しました。
そして、本作で私は本年度No.1のヒロインを見つけられた次第です。
それは、ゴブリンスレイヤーの幼馴染、牛飼娘
誤解されやすい彼の思いをきちんと汲み取ろうと行動し、読み取っています。
彼と真摯に向き合って、語り合って、受け止めています。
そして、その上で、ありのままの彼を理解しようとしています。
それらの努力が功を奏したからこそ、お互いが相手を「大切」であると言う想いを惜しみ無く披露出来ているのです。
素晴らしき最高のヒロイン、及び主人公との強い関係性でした。
彼女はずっと彼を信じていられる。
彼女は彼にとっての『世界』となれる。
彼にとっての、新しい『世界』になれる。
最終話を観て確信した、生涯忘れられない少女だと思います。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15

78.1 2 バイオレンスでシリアスなアニメランキング2位
ドロヘドロ(TVアニメ動画)

2020年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (359)
1581人が棚に入れました
おいでませ、混沌。魔法によって顔をトカゲにされてしまった記憶喪失の男、カイマン。本当の顔と記憶を取り戻すため、相棒のニカイドウと一緒に自分に魔法をかけた魔法使いを探し続ける。いったい自分は何者なのか……。

声優・キャラクター
高木渉、近藤玲奈、堀内賢雄、細谷佳正、小林ゆう、高梨謙吾、富田美憂、江川央生、市来光弘、鵜殿麻由、ソンド、稲田徹、三木眞一郎、郷田ほづみ、勝杏里

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「アニメ化不可能」を可能にした3DCGと作画の融合にMAPPAの本気を見た

☆物語&感想☆

2020年冬アニメの中でもひときわ異彩を放った本作品。
「おいでませ混沌」という謳い文句通りのクレイジーな作風は、
昨今似たような作品が多いなか、強烈な個性を感じさせる。
ショッキングなシーンが多いので好みは別れるかもしれないが、
何よりNetflixなど配信を通じて、海外ウケしそうに思える。

「混沌」とは言うものの、
それは世界観や設定に関して言えることであって、
物語の内容や方向性は非常にシンプルかつ分かりやすく、
シリアスさよりもコメディ色の方が出ており、
ある意味ポップかつキャッチーさが売りになっているのではないかと思う。
あまり物語の事を突っ込んで書くような作品ではないと思うので、
取り敢えず、観て感じろ笑、と言いたい作品。
1話観てダメなら続けて観るようなもんでもないかなと。

物語はまだ混沌のなか...正直ここまでの内容だけで点数を点けるのは難しい。
とりあえず暫定的に。

☆声優☆

若手と人気声優、ベテランをバランスよく配しており、
カイマン役の高木渉さんなどはさすがのハマり具合。
(原作者のリクエストによるものらしい)

個人的に面白かったのがノイを演じた小林ゆう。
存在自体が混沌としている彼女を選んだのは、
製作陣が本当によく理解しているな~と思う笑

☆キャラ☆

とにかくどのキャラもインパクトがあり濃かった。
特に昨今の作品ではバトル、
アクション系であっても線の細い美少女が描かれることが大半のなか、
作品内に出てくるような、
ニカイドウやノイのような筋骨隆々とした女性は非常に稀でユニーク。
なんでもありな中でも魔法使い3人の過去~現在へ至る経緯はしっかり描かれていたのも良かった。

☆作画☆

本作品の作画は特に高く評価されるべきだと思っている。
昨今3DCGを用いた作品の比率が多くなってきてはいるが、
視聴者が見慣れてきてはいるものの、
今だに観ればそれと分かるものが占めている。
しかしながら、本作品の3DCGは、
どこまでがそうなのかが判らないくらいに従来の作画との違和感がない。
いや、本当に最初観た時はED観るまで、
これが3DCGであることに殆ど気付かなかったほどに。。

これまでのTVアニメは、ほぼ全てを3DCGで作っているものと、
作画をシーンによって切り替えているものが大半だったが、
本作はシーンによる切り替えに加えて、
3DCGに作画で細かく手を入れることによって、
その境界線を限りなく消すことに成功したように思える。
(厳密には作画だけではなく3DCGを作画に寄せる為の取り組みも大きい)
3DCGを作画に見せるような取り組みは、各社やっているとは思うけど、
このレベルで仕上げてきたのは恐らくTVアニメでは初だと思うし、
恐らく業界をざわつかせたことでしょう。
何はともあれ、このような新たな試みが上手く行ったのは、
3DCG専門の制作会社だからではなく、
作画ベースで作ってきたMAPPAだからこそ出来たんじゃないかと。

そして、独特の世界観を見事に描き切った背景も非常に手が込んでいて凄みがある。
ここまでのレベルの背景はなかなか並みのTVアニメではないでしょう。
セル画時代の大友作品を思わせるような質感(キャラも同様に)が、
デジタル化が進んだ現代、ここまで表現できている事は驚きしかない。

☆音楽☆

生半可なOPではこの作品にはインパクトが足りないと思われるが、
アニメ専門のクリエーターである(K)NoW_NAMEは最高のものを持ってきた。
混沌でよく意味が解らない歌詞でありつつ、ポップでキャッチーさを持っており、
ノイジーでローファイな音使いまで、見事に作品の世界観を表している。
またそれに合わせたOPアニメーションの出来も同様に素晴らしい。
作中の音楽もHOLEの退廃的な世界観に相性のいいものと、
全く合いそうにないアコーディオンの音色などを用いてポップさを出しているのが印象的。
作品を本当によく理解して作っているというのがよく解る音楽だった。


このような尖った原作の世界観を壊さずアニメ化に果敢に挑んだ、
MAPPAという制作会社は近年勢いに乗っている感があって個人的には特に注目している。
オリジナルも作っているし、原作のあるものは他社が取り上げないような、
挑戦的で攻めた内容のものを敢えて選んでいるのが好印象だが、
(バナナ・フィッシュ、どろろ、いぬやしきなど)
その中でも本作はその最たるものかも知れない。
アニメ化、映像化不可能と言われた原作を、ここまでの作品に仕上げたのは本当に見事。
引き続き続編の制作を期待したい。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

おいでませ、混沌。

この作品の原作は未読です。
実は、最初は視聴するのを躊躇っていたんです。
画面から受ける印象がゴチャゴチャしていたのと、主人公がトカゲ男という点も私の引っ掛かった点でした。
ですが、ヒロイン?であるニカイドウを演じる近藤玲奈さんの声質が気持ち良く2~3話視聴してみると案外面白い作品であることに気付き、完走して今に至っています。


魔法によって顔をトカゲにされてしまった記憶喪失の男、カイマン。
本当の顔と記憶を取り戻すため、相棒のニカイドウと一緒に自分に魔法をかけた魔法使いを探し続ける。
いったい自分は何者なのか……。

2000年の連載開始から18年にわたって愛され続けた林田球の「ドロヘドロ」(全23巻)。
唯一無二の世界観によって国内外で熱狂的なファンを獲得し人気を誇っている。
そのあまりにショッキングでカオスな内容が故、映像化不可能と思われていた衝撃作が
「どろろ」「ゾンビランドサガ」などハイクオリティで挑戦的な作品を数多く手掛けてきた
MAPPAによって、ついに奇跡のTVアニメ化!

ドアの向こうからやってくる 魔法使いの『練習』
陽気な笑顔と鋭いナイフ ビールを飲んでスカッとしよっと
黒いケムリと美味しいキノコ ホールか…胸クソワリィ場所だ
これだとケツが丸見えになるし 大葉ギョーザ時々ゾンビ
死にたくなければよく聞いてください 三遊間に底なし沼
なんでフォークを投げんだよ?ナイフだろ、フツー
口の中にもう一人男がいるぞ お前は違う こうなったらヤケ酒だ

これらの要素が作り出すもの。
それはまだ…混沌の中。それが…ドロヘドロ!


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

18年間も連載を続けた作品とは知りませんでした。
物語は完結しているのに、何故途中までしかアニメを制作しないんでしょうか?
物語としては面白くなってきたところだと思います。

ニカイドウのことが色々分かって府にも落ちて、カイマンの目的に対する手掛かりが掴めそうなんですから…
しかも、この作品の音楽プロデュースは、「灰と幻想のグリムガル」や「 Fairy gone」の音楽を担当した(K)NoW_NAMEさんなんです。
(K)NoW_NAMEさんといえば、1つの作品で沢山の楽曲を提供されるのが特徴ですよね。
本作品でもオープニングとエンディング合わせて7曲も提供されているんです。
作り手の気合が感じられるのをとても嬉しく思います。

しかし、繰り返しになりますが、近藤玲奈さんの声質…耳障りが心地良いんですよね。
前田玲奈さんの声質に似ている気がするのは私だけでしょうか。
ニカイドウを見ていると、「それでも世界は美しい」のニケ姫が頭をよぎるんですよね。
どちらも女性っぽくない口調だからそう感じたのでしょうか…?
でも口調だけなら照井春佳さんが演じた「未確認で進行形」の夜ノ森 小紅も負けてないと思いますけれど…
すみません、レビューが発散してしまいました^^;

声優さん繋がりだと完全にノーマークだったのが、恵比寿というキャラを演じていたのがとみたんだったということです。
気付いたのは完走後にレビューを書くため公式HPを視聴したとき…
破天荒なキャラだなぁという印象が強く、演じるのが難しいキャラだと思いましたが、冬アニメでのとみたんは新境地を切り開こうという気概を感じた気がします。
この恵比寿も十分に難しいキャラですが、異種族レビュアーズのクリム…これまで演じてきたキャラとは真逆じゃありませんか。
まぁ、視聴する側は嬉しい限りなんですけれどね^^;

登場するキャラが何故マスクを多用するのか…実はこの意味も良く分からなかったのですが、少なくてもアニメ化に際する効果はあったと思います。
人間の多彩な表情を全てアニメで表現するのは骨が折れますが、マスクを被っていたらこの部分はスルーできるでしょうから。
でも、それを差し引いても派手なアクションシーンが盛り沢山で、キャラもヌルヌル動いているから手抜きには見えませんでしたけれど…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、「Welcome トゥ 混沌」
エンディングテーマは、「Who am I ?」「Night SURFING」「D.D.D.D」「Strange Meat Pie」「SECONDs FLY」「404」
全て(K)NoW_NAMEさんの楽曲です。

1クール全12話の物語でした。
何だかんだ言いながら面白かったので「俺たちの冒険はここからだ!」というところで終わると少し寂しさを感じます。
続編が制作されるなら是非視聴したいと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 30
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

これ言葉にするのしんどくないすか?

原作未読


はじめに

どうも言葉に落とす作業が難儀な作品です。
とりあえず“独特な世界観”ということでお茶を濁してそれ以上言うのが難しい。


原作はほぼ20年かけて完結したとのこと。そんな事情は一切知らずタイトル買いした作品。なんか画面から流れてくる溢れんばかりの“底辺”感が素敵です。
そして観てみた第1話。背景美術が美しいですね。制作は“MAPPA”仕事はしっかりしてくれそう。息をのむという美しさとは違う、底辺を這いずる質感、吹き溜まり特有の湿気を感じることができる美術といったらいいかしら。かつてドブネズミみたいに美しくなりたいといったあのセンス。
基本的に気持ち悪いので、初回で合いそうか否かわかる親切設計だとは言えると思います。

魔法によって頭を爬虫類に変えられた記憶喪失の男が、自分の本当の顔と記憶を取り戻す姿を描いたダーク・ファンタジー作品。
wikiの記述そのまま引っ張ってきましたがこれだけじゃわかりません。端的に“ヴァイオレンス”です。

私がヴァイオレンスに期待するものはズバリ殺す側の所作。
感情の上下がないのが理想。美学の有る無しは問わず鼻をかむくらいの軽さで殺すのが良い。一方で殺す時にドヤ顔決めたり、ビビりながら引き金を引くのは好みではありません。
理想は実写映画の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『パルプ・フィクション』あたりだろうか。この作品『ドロヘドロ』からはそんな名作の波動を感じました。個人的にはこれで充分満足です。
なお、殺す/傷つけるが基本の作風ですがそればかりではありません。キャラ達が自分の意思で動く。たくましく生きる姿は頼もしくもありコミカルで愛らしかったりします。生き生きしてるんですね。


どこか気だるくて陰鬱な空気に覆われてはいるんですけど、生き生きしたキャラクターたちが織り成すカラフルモザイクな世界は居心地の良いものでした。見てお楽しみなEDの仕掛けや背景美術のクオリティの高さがさらに作品を底上げしてます。良作でしょう。


※ネタバレ所感

■飯テロリング

二階堂と恵比寿って共通項は“麦”ってことですかね。ニカイドウ経営中華屋の看板メニューが餃子ということでビールにとても合いそう。
そこにこだわります?って程料理作画に気合入れとりますので深夜空腹に耐えるのがたいへんでした。

{netabare}そもそもOPアニメーションがひたすらニカイドウの餃子仕込み映像という謎っぷり{/netabare}

{netabare}そしてカイマンへ強くコミットしている女性は“友人としての”ニカイドウと“たぶん敵としての”エビスってことなんですかね。餃子とビールコンビに勝てる男性はおそらくいません。{/netabare}

いちおう飯テロネタということでこだわりの謎作画は他にも。

{netabare}焼肉。肉のサシの入り具合や弾力を感じる動画。これも素晴らしい。鳥や豚ならともかく牛は飼育に手間がかかるイメージ。あんな殺伐とした世界でまともな畜産業出来るんかいなというのがよぎり、何の肉なのか気になってしまった。牛ではないのかもしれない。でも美味そう。{/netabare}


■自由人

自由すぎる登場人物は物語の良きアクセントになります。例えば『キルラキル』満艦飾マコ。『ゾンビランドサガ』山田たえみたいな。自由すぎる振る舞いに笑いつつ、時おりハートウォーミングな行動を見せて不意打ちでうっかりこっちが感動しちゃうことがあるような存在です。

{netabare}その点で本作の恵比寿はとてつもない耀きを放ってました。{/netabare}

トップ of 自由人な一名が突出してますが、{netabare}カスカベ博士{/netabare}あたりもたいがいです。そして各々のコミュニティにも馴染んでいて二人とも浮いた存在にはなっておりません。強烈なキャラクターを受け止める側も個性が強烈だから違和感なく見えるのです。


これはちょっと後に引く感じでクセになります。ただこの面白さ文字にすると陳腐に映りますね。
やはりどうも言葉に落とす作業が難儀な作品です。



視聴時期:2020年1月~3月 リアタイ

-----


2020.04.11 初稿
2020.05.04 タイトル修正
2020.10.15 修正

投稿 : 2024/11/02
♥ : 57

76.4 3 バイオレンスでシリアスなアニメランキング3位
アクダマドライブ(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (366)
1252人が棚に入れました
遙か昔、カントウとカンサイの間で戦争が起き、世界は分裂した。カンサイはカントウの属国となり、独自の発展を遂げていった。しかし、政治と警察力は衰退し、犯罪が横行。その犯罪者を“アクダマ"と呼ぶ――。 本作品の舞台となるのは、高度に発達しながらも歪んだ社会。その中で、アクダマたちはいかにして自分らしくあろうとするのか。一堂に会したアクダマたちの美学がぶつかり合う。

声優・キャラクター
黒沢ともよ、梅原裕一郎、武内駿輔、堀江瞬、緒方恵美、木村昴、櫻井孝宏、大塚明夫、花守ゆみり、榊原良子、内田真礼
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

わ~るいことす~る度に刑期延びちゃう

1話感想{netabare}
タイトルからカゲプロやクビキリサイタルみたいなのを想像したけど全然違ってブレードランナーでした。
というか…別に対立煽りをしたいワケじゃないのであんまり声高に言いたくないのだけど、前期“ノーガンズライフ”で「足りてないなー」と思ってた部分がガッツリ詰め込まれてた。
丁度飢えてたところにスコーンとこんな作品が出てきたモンだから引き込まれないワケがない。
ノーガンズライフだけ槍玉に上げても悪いので…“ニンジャスレイヤー”もトリガー逃げずにこのクオリティで作ったらなぁ、とか。
他に似てるなぁと感じたのは“ハンドシェイカー”のジグラート(大阪が舞台だからか?)、“P5”の誰だったかのメメントス、“ダグ&キリル”…ここら辺の「目指してた先」はコレなんじゃない?とさえ思えたり。
いやぁ“ドロヘドロ”で「テレビアニメでもここまで頑張れるのか」と驚いたモンだけど、まさかまた出てくるとはねぇ。

但し目を引いたのは背景や小物、それを見せるギミック、演出で、肝心のストーリーはまだなんとも言えない。
まさか黒沢ともよがレプリカントってオチは無いだろうけど、巻きこまれ型で派手にドッカンバッキンやるだけだと飽きちゃうかも。
いや、そんなことは無いと信じたい、頼みますよマジで…。{/netabare}

5話までの感想{netabare}
2話以降、じわじわと作画が…うーん。
悪くはないのだけど1話に比べるとってことね。
それとダンロンスタッフということである程度覚悟してたけど、話の腰を折る展開が目立つ様な?
2話「新幹線を襲撃してもらう」からの『詳しくは場所を変えてってことで、バス奪ってホテルに突撃して』、そこでちょろっと新幹線の詳細について語るけどすぐに『処刑課の襲撃があって戦闘して廃墟に逃げ込んで』3話になってようやく「ミッションの概要を説明」。
どうにも『』で括った部分が邪魔というか、「新幹線を襲撃してもらう」からすぐに「ミッションの概要説明」に行ってくれないと勿体ぶってる感を抱いてしまう。
同様に5話、依頼人の正体を問い詰める医者に一般人が横槍入れるのも勿体ぶってる感が…。
ドラマなんかでたまにある、敵の手下を捕まえて「誰の差し金だ」「く、黒幕は…(物陰から何者かが狙撃)うっ」「しまった!」ってやつと同じ、引っ張るにしてももうちょいやり方ありそうな、尺稼ぎくせぇってやつ。
これも文句ってことじゃなくて、これ以上こういうのが増えると困るギリギリのラインってことね。
ってか何億イエンも報酬払えるヤツを見た目子供だというだけで庇おうとする精神がよくワカラン。
まぁ一般人自身が超アヤシイのでウラがあってそういう行動したのかも知れんので、その件については様子見だけど…。
というか依頼者(兄)が“トイレの花子くん”に見えて仕方ないのだけどどうしよう、医者役でオガメグも居るしw

声優ネタといえばNHK風の解説パート、サメくんの声が「たんけんぼくのまち」でお馴染みのチョーさん。
NHK風を演出する上でこれ以上の適役は存在しない…かも?青野武が存命だったらなぁ。
一方のウサギちゃんは聞いただけでは誰か分からなかったけど…エフェクトかかってるせいもあるのかな?ところどころで藤田淑子っぽく聞こえるような?
「関東って知ってるーぅ↑?」のイントネーションなんてすっごく藤田淑子(「私も北に住みたいわーぁ」は久野三咲っぽいけど)。
“デジモンアドベンチャー”や“ダイの大冒険”のリメイクが放送され、藤田淑子ボイスに飢えてたところにコレでちょっとウルっと来てしまった。
で、確認してみたところ間宮くるみでした…えっ、こんな声だっけ!?へけっ。
ダンロンスタッフだったら声優ネタあるのかな?と思ってたが、これがそれに当たるのかな?{/netabare}

6話感想{netabare}
1話で「お、これは!?」と感じるも、それ以降ビビっとクるものはなく5話までなだらかな下降線だったのだが…6話で盛り返したかな?
やっぱ消耗戦は熱いねぇ。
それぞれの得意分野を駆使した協力プレイでミッションクリアーもいいけど、消耗するものが何も無く常に全力プレイできるのと、リソースが限られててどうやり繰りするかの要素アリだと、後者の方が盛り上がるかな、と。

実は5話最後、処刑課はどうしてアクダマの進入口が分かったの?ってのが不満だったのだけど、ああ、上の連中は結構お見通しなのね。
関東がどうなってるとか積荷はナンなのかとか、現場の処刑課師匠弟子も把握してないっぽい(弟子に至っては死にたがりを繋ぎとめるためのツーマンセル制度だったことも知らなかったみたいだし)。
今後それらの秘密に触れることでアクダマ側に肩入れしてくって展開に…なるかな?どうかな?
師匠死んじゃったしなぁ(ホントかな?)。{/netabare}

総評(これだけ見ればいいかも){netabare}
悪くはないのだけど何か物足りない。
「5話までの感想」でも触れたけど、アクションシーンはよく描けてるのだが、それがどうにも話の腰を折る余計なシーンに感じることが多かった。
9話の「殺人鬼に追われてトイレに閉じこもる」も、どうして居場所がバレるのか分かってるのにワザワザ密室に逃げ込むかなぁ?
ホラー映画演出をしたかったのは分かるんだけど、そういうシーンを描きたいがためにキャラに不自然な行動をさせてる感がバリバリ。
って感じで、各話サブタイトルにも見られる様に映画のオマージュ(主に演出面)に走って肝心のシナリオが弱くなってしまった気がする。
詐欺師が供物にそこまで肩入れする動機の描写も弱い気がするし、眼帯ちゃんの心の揺れ動きももうちょっと踏み込んで欲しかった。
「アクションシーンが邪魔に感じる」ってのはアニメとしてどうなの?とは思うけど、内容のうっすいドッカンバッキン見た目だけ派手な娯楽として見る分にはいいかも?
あ、でも医者の最期は大好きw
「ワルモノ」の末路はこれくらいやってくれなきゃねー、聞いてるか?炎炎。

ところで、市民をコロコロして一旦は暴動を鎮圧するも最後市民によって制圧される処刑課とか、これ…中国じゃ放送できんだろうなぁと思ったり。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

ふむふむ。。見応えはあるけど好みは分かれそうな?

 
正直、ジャンル的に優先度は低かった作品ですが、利用しているサブスクでは軒並み配信されず。
Tverで期間限定配信というのを聞き、優先度を上げて視聴しましたが果たして・・・

世界観はいいですね。
絵とかOP/ED、チカラ入ってる感じがします。
この感じ、オリジナルの感触・・
 
 原作:オリジナル
 製作:studioぴえろ
  ニルス/うる星やつら/きまぐれオレンジ☆ロード
  /平成天才バカボン/おれは直角/幽☆遊☆白書
  /はじめ人間ゴン/十二国記/キングダム
  /凪のあすから/転スラ・・・
  結構、老舗なんですね。
 放送:2020年秋(全12話)
 視聴:2020年冬(Tver)


▼あらすじ(公式イントロダクションより)
{netabare}本作品の舞台となるのは、高度に発達しながらも歪んだ社会。
遙か昔、カントウとカンサイの間で戦争が起き、世界は分裂した。
カンサイはカントウの属国となり、独自の発展を遂げていった。
しかし、政治と警察力は衰退し、犯罪が横行。
その犯罪者を アクダマ と呼ぶ ―。
▲{/netabare}

ん~あらすじだけ見ると、やはりテンションは上がらないけど・・
ただ、この声は・・ほほ~
自分はcvだけで完走できる特異体質なのでいけそうw

▼キャラ/キャスト
{netabare}一般人(詐欺師):黒沢ともよ
 ハンコセンター職員の20歳。
 巻き込まれ体質?いやーおせっかい気質じゃんw
 黒沢さん、待ってましたヒロイン。
 やっぱり、演技、声ともに惹かれるものが。
 シリアスな世界に明るさを与えてくれました。
医者:緒方恵美
 豊満な肉体を持つ美女マッドサイエンティスト。
 中の人は、「エヴァ」とか「たまゆら」が印象的かな。
 メインキャラはレア感ありますね。
 担当キャラが突出して有名になると大変ですね。。
黒猫/兄:内田真礼
 アクダマに爆弾付きの首輪を装着し指示を与えた。
 cvマジ?男性役もこなすんですね。
妹:市ノ瀬加那
 兄と共に「カントウ」への供物として囚われていた少女。
 市ノ瀬さんは少し復習・・・
 色づく世界の明日から(風野あさぎ)、
 かぐや様(四条眞妃)、
 Dr.STONE(小川杠)、
 ゴールデンカムイ(エノノカ)、
 天気の子(佐々木巡査)・・
 お可愛いことw
処刑課弟子:花守ゆみり
 アクダマ排除に燃えている処刑課の若手女性。
 花守さんも復習しとこか・・
 ゆる△キャン(なでしこ)、
 オバロ(イビルアイ)、
 転スラ(シズ)、
 エガオノダイカ(ユウキ・ソレイユ)、
 かぐや様(早坂愛)、
 ハチナイ(宇喜多茜)、
 鬼滅の刃(白髪)/慎重勇者(ロザリー)、
 ランウェイで笑って(藤戸千雪)、
 ダーウィンズゲーム(スイ / ソータ/映像研(百目鬼)、
 グレイプニル(愛子)・・
 男性的な声もできるんですね。
▲{/netabare}

ヒロイン、初めは眼を見てロボットかと思った・・
サブ含めキャラの特徴は立ってるかな。
でもなぜか好きになるキャラは少ない・・

正直、視聴モチベーションは、ほぼヒロイン(のcv)w

▼エピソード
個人的にはアニメオリジナル作品って、
物語部分は色んなオマージュを感じたりして、
新鮮味が感じられない(つまり残念な思いをすることが多い)といった印象・・

この作品も、その範疇を超えることはなかったかな。

マンガや小説が原作の場合、原作が市場に出る前に編集部のチェックが入るし、市場で淘汰され人気がある作品がアニメ化されるワケだから、仕方ないっちゃ仕方ないですケドね。すでに原作ファンもいるわけだし。
だからこそオリジナルは絵や曲にチカラを入れる必要があるんだろうけど。
とはいえオリジナルアニメでも好きなものはあるので(すぐには思い出せないけどw)、ちょっと期待しました。

犯罪者視点でのミッションとバトルは、悪くない。
でも、気になるところが・・
~{netabare}
第六話、復習しに来た処刑課師匠はどうやってアクダマたちの居場所がわかったのか。。怪我してたんだしまず組織に報告じゃね。
私情で動くし過度な自信やプライドが身を亡ぼす事をわかってないのは・・美学でゴリ押ししてそうだけどプロと呼べるんかな。

前半は謎が気になって面白味もあったけど、
後半は謎部分が刺さらず、なんだかな~な感じも。。

他にもざっと挙げてみると。。
<cv>
 一部、ちょっとミスマッチというか気になった。
 本人というよりOK出してる方がどうなんだろ。。
<ヒロイン>
 序盤人物像が掴めず感情移入しづらかったかな。
 巻き込まれただけでここまでやる行動原理が不明。
 途中、運び屋に惚れたんだなーとは思ったけど、
 ここまで引っ張らずに視聴者にわかるように
 してくれれば、もうちょい感情移入できて楽しめたような。
 首に爆弾つけてアクダマ達を操ろうとした兄妹を、
 命張ってまで助けようとするのも人が良すぎ。
<その他>
 月に行く?電脳世界?う~ん。
 モブの処刑課、弱すぎ。
 処刑課女ボス、威張るだけで無能すぎ。
 何でも出てくる弁当箱、四次元ポケットすぎ。
 銃弾をはじくとか、人間じゃなさすぎw
 医者、真っ二つにされて手術とか不死身すぎ。
 殺人鬼、赤い糸イミフ。詐欺師の顔舐めんなしw。

途中は良かったけど、
終わってみれば、個人的にはなんだかなー感が強かったかな。
結局アクダマ達の命を犠牲に不老不死の兄妹が逃げおおせた。
よかったよかった・・とは思えない。

▲{/netabare}


設定や演出は光るものがあったし、作画は劇場レベルかと。
キャラとストーリーは好みが分かれそう。
黒沢さん、やっぱいい・・BEST10作り直そうかなw

ただ・・{netabare}ヒロイン殺すなしw{/netabare}
 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

浪花節な古事記

オリジナルアニメ 

“アクダマ”とは作中でいう犯罪者のこと。そう言えばいいのにしてないのはそういう世界だから。
その昔「カントウ」VS「カンサイ」で戦争勃発。カントウが新型爆弾を落として決着。焼け野原になったカンサイの復興を助けたりもしてカンサイ人はカントウに感謝するようになった、とのこと。

メタで馴染み深いものが仕込まれてそうですが、当該世界はオリジナリティあるんじゃないかしら。
2020秋スタート新作の中では第1話の引き込みがぶっちぎりで良かったのがこれ。構成がしっかりしてるとか心情描写が丁寧だとかいうのをいったん置いときまして

 {netabare}作った人の頭ン中を覗いてみたいぜ!{/netabare}

人間の想像力は際限ないなと実感できる“架空の世界”を堪能しちゃえばええじゃないかと思うのです。
“アクダマ”が疾走(ドライブ)する全12話。IF世界の近未来モノ。今年2020年でいえば『ドロヘドロ』と同じくどうも言葉に落とす作業が難儀な作品です。「1話観て合いそうかわかるよ」死体がゴロゴロ転がります。そこ本筋ではないもののそれ自体が嫌という方には撤退を推奨するくらいでしょうか。

【アクダマ's】
 詐欺師(CV黒沢ともよ)
 運び屋(CV梅原裕一郎)
 喧嘩屋(CV武内駿輔)
 ハッカー(CV堀江瞬)
 医者(CV緒方恵美)
 チンピラ(CV木村昴)
 殺人鬼(CV櫻井孝宏)

愚連隊は黒澤明の時代より七人と決まってるのかどうなのか。
その七人の通り名には当たり前だが意味がある。
そして通して観ると「進むべき道は自分の意志で決める」真っ当なメッセージも伝わってくる。
突拍子ない世界に私達が置き去りにされないのは基本的なお作法を心得ているのもあるやもです。

アニメに求めるものの一つは表現手段として実写ではしょぼくなると思しきものをいい意味で見せつけてもらうことだったりします。それを満たしてくれた良作ですね。

■むしろ…
『ダンガンロンパ』と比較される本作ですが、肝心のネタ元を知らない私です。
むしろ『PSYCHO-PASS』との既視感が強いかしら。アクダマ認定のオートマティックぶり。某執行官ばりに現場で処刑実行できる公務員の存在。そんな世の中に感じる居心地の悪さなんてのもそうです。
{netabare}さらにサイコな殺人鬼役に櫻井孝宏さん。ダメ押しで公機関の女ボス格に榊原良子さん。榊原さんがどーんと鎮座してると悪の組織風味が何倍か増しますよね。{/netabare}



※妄想劇場

■大大阪(だいおおさか)の衰退

大正末期~昭和初期。大阪が東京を凌駕していた時代を指してこう言う。何年か前に通天閣で大大阪展やっててそれで知ってました。約100年前の大阪イケイケどんどんぶりは白眉ものでしたよ。
そして現在…ってことになるわけでして結果は東京への一極集中。いろいろ理由はあるんでしょうが

{netabare}東海道新幹線開通{/netabare}

{netabare}東名高速道路その他インフラ投資が高度成長を後押ししました。導かれるはリアルでの大阪の没落そしてアニメでシンカンセンの神格化。なんとも皮肉が利いてます。
またこれ“財政健全化”“国民の借金いくら”“角栄の頃と違い公共工事に効果はない”と捉えてる層にとっては、公共工事アクダマ論に乗っかり「そんなのを神聖化するなんて…プークスクス」とさらにマウント取れることでしょう。なお私の意見は真逆です。{/netabare}

蛇足で劇団☆新感線も出自が大阪芸術大学だったりするのもなにかの意図を感じます(しません)。


■暗喩なのか妄想なのか

大阪を好きなのか嫌いなのかよくわかりませんが、無関心ではいられないというのは伝わってきます。
く○るのたこ焼きが500円と現在より安価。デフレーションでも起きているのでしょうか。

{netabare}ハンコも消えてない(笑) このハンコで一元化って仕掛けは面白かったですね。きっと文化と認められての発展形をアニメで描いたのでしょう。そんな発展形ハンコのもたらす災厄を描いてたこともあって、マイナンバーみたいに“国民総背番号制”一元管理どうかと思う層には「ほら見たことか」とウケが良かったかもしれない。なお私の意見は真逆です。{/netabare}

作品チュートリアルなウサギくんとサメくんの寸劇は有難かったですね。ウサギとサメの組み合わせで
{netabare}真っ先に思いつくのは“因幡の白うさぎ”だったりします。文章上のワニ=サメと解釈するのが一般的。その寓話の教訓とは?

1.思いやりの心をもっていると、幸せな結末が待っている
2.余計な振る舞いは災いを招く

といったところでしょうか。本作の展開結果に通ずるものがあります。{/netabare}


とここまでの垂れ流しをご容赦をば。
カンサイという近未来大阪風味な街で繰り広げられる大騒動。やや陰惨でディストピアな世界だからこそ他人様の優しさが沁みる。地でいく娘主人公の立ち居振る舞いに心打たれます。

 思いやりの心をもって迎える結末は幸せなのか不幸なのか?
 余計な振る舞いが招いたのは災いなのか未来への光なのか?

各々で捉えようのある結末も好感度高し。

 馬鹿な出会いが利口に化けて よせばいいのになんとやら

人生どう転ぶかわかんないもんですよね。


{netabare}結局のところ“医者”の年齢は不明のまま。おいくつだったのだろう?{/netabare}



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

------


2020.12.30 初稿
2021.09.25 タイトル修正

投稿 : 2024/11/02
♥ : 50

71.8 4 バイオレンスでシリアスなアニメランキング4位
からくりサーカス(TVアニメ動画)

2018年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (264)
1100人が棚に入れました
小学5年生の才賀勝は父親の事故死によって莫大な遺産を相続したことをきっかけに命を狙われていた。そんな折、青年 加藤鳴海は偶然にも勝と出会い、手を差し伸べることを決意する。しかし、勝を追ってきたのは人間ではなく高い戦闘能力を持つ人形使い達であった。窮地に陥った二人は突如姿を現した懸糸傀儡マリオネットを操る銀髪の少女しろがねに助けられる。こうして、日本で出会ったこの3人は数奇な運命の歯車に巻き込まれていく──

声優・キャラクター
植田千尋、小山力也、林原めぐみ、櫻井孝宏、佐々木望、黒沢ともよ、井上麻里奈、江川央生、岩崎諒太、石川界人

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

待ち受けるは、世界の”からくり! 立ち向かうは、”しろがね”の意志

この作品の原作は未読ですが、「うしおととら」の作者である藤田和日郎先生の作品ということで、視聴を楽しみにしていました。

以前の私なら敬遠していたこの手の作画ですが、「この様な手法でしか表現しえない世界がある」ことを知ってからはアニメに対する視聴の幅を広げられた気がします。

実際、「うしおととら」では相当感動させて貰いましたから…
うしおの「つんのめるほど前向きな姿勢」が大好きでした。
そしてこの作品に登場する小学5年生の「才賀勝」もそのDNAをしっかり引き継いだ主人公だったと思います。


小学5年生の才賀勝は父親の事故死によって
莫大な遺産を相続したことをきっかけに命を狙われていた。
そんな折、青年加藤鳴海は偶然にも勝と出会い、
手を差し伸べることを決意する。

しかし、勝を追ってきたのは人間ではなく
高い戦闘能力を持つ人形使い達であった。
窮地に陥った二人は突如姿を現した
懸糸傀儡(マリオネット)を操る銀髪の少女しろがねに助けられる。

こうして、日本で出会ったこの3人は
数奇な運命の歯車に巻き込まれていく…


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

個人的にこの作品の素晴らしい点は3点あると思っています。
まず、第1に登場するキャラの「目」に色々と持っていかれてしまいました。
勝の…しろがねの真っ直ぐ前を向いた視線は、見るたびに鳥肌モノ…

そして2点目は楽曲です。
特にロザリーナさんの「Over me」がヤバいくらいに格好良いんです。

第1印象で衝撃を受けて…それから毎週2度はオープニングを見ていたと思います。
勿論、楽曲も発売後に即買いです。

ロザリーナさんがこの曲に込めた思いがネットの記事になっていました。
まず、この楽曲はこの作品のために書き下ろした賛歌なんだそうです。
歌詞が…胸に深く染み入ります。
勝のための…しろがめのための…そして鳴海のための曲だったと思います。
この作品のクライマックスに相応しい楽曲だったのではないでしょうか。

そして3点目は声優さんの起用についてです。
特に小山力也さんと、林原めぐみさんの起用が抜群だと思いました。
これは「うしおととら」を視聴した時にも感じていましたが、今回この作品を視聴したことで確信に変わりました。
「うしおととら」では、小山さんが「とら」で林原さんは「白面の者」という重要な役どころを演じていました。
そして本作では、小山さんが鳴海で林原さんがしろがね…

お二人と藤田和日郎先生の作品とは、きっと相性が良いのでしょう。
鳴海としろがねを演じたのがこの二人だったから、きっとここまで感動できる作品になったんだと思っています。

勝、しろがね、鳴海を取り巻く状況は、「数奇な運命」という言葉が陳腐に見えるほど過酷でした。
心が折れたのだって、一度や二度じゃありません。
運命から逃れられないから、大切なモノを守るために必死で戦ってきました。
苦しい時、何度も頭をよぎった姿が励ましてくれたから頑張れた…
どれだけの人に助けて貰ったんだろう…
手が届かなくって…悔しくて大粒の涙を流してきました。
思えば思うほど苦しくて…そんな痛みにずっと耐えてきました。
そんな苦しみの先で、みんなが選択した本当の一番…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、BUMP OF CHICKENさんの「月虹」、KANA-BOONさんの「ハグルマ」、ロザリーナさんの「Over me」
エンディングテーマは、ロザリーナさんの「マリオネット」、眩暈SIRENさんの「夕立ち」、BUMP OF CHICKENさんの「月虹」
珍しいのが、1期オープニングの「月虹」が3期のエンディングに起用されていることです。
BUMP OF CHICKENさんの楽曲も好きですが、ロザリーナさんの楽曲が抜群過ぎ…
アニソンBEST10でどこまで上位に食い込むか楽しみです。

3クール全36話の物語でした。
完結した原作のアニメ化は、最後まで描いて貰えるので視聴者としては嬉しい限りです。
しっかり感動・堪能させて貰いました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11
ネタバレ

sekimayori さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

観てるぜメモ

放送途中のただの備忘録、たぶんそのうち消す(なのでサンキューもいらないです、読んでくださった方ありがとうございます)。
推敲もなにもしてないから誤字脱字ご容赦を。

今5話まで観てます。
序章が終わり、これから話のスケールがぶわっと広がる転換点。
ワクワクしつつリアルタイムです。

そもそも原作ファンとしては、懸糸傀儡(からくり)の戦闘が見られるだけで眼福なんです。
セルルックCGとか3D技術の発展がほんとありがたい。
ともすれば絵が荒々しすぎて見づらくなる原作を、うまく動きで補完してくれているのではと。
これからも個性的な人形がたくさん登場し、サーカスの舞台を彩ります。
ひょうきんながらも禍々しい、そんなデザインを楽しんで頂ければ嬉しいですね。

声優陣の熱演、聴くほど鳥肌なOP・EDも見事。
鳴海(小山さん)は少し渋いなw、阿紫花(櫻井さん)はイケボすぎるwとは思いますが、まあ一読者の脳内アフレコとの差異なので。
しろがね林原さんは作者のアテ書きだし、勝役の新人・植田さんは驚くほどぴったり。
OPとEDはぜひ歌詞にも注目していただきたいですね。
特にOPの歌詞は原作読者にとってはニクいです…そう持ってくるか…
かといってネタバレには絶対にならない良い塩梅でして、改めてBUMPすげーな。

で、本題のストーリー面。
原作信者だけど、現状最大限エッセンスを抽出してくれてる気はする。
43巻、膨大な登場人物の群像劇として、それぞれの結末を描いた原作。
それに対して、アニメは36話という尺しかない。
厳しい制約の中で、どんなドラマをピックアップしていくのか。
4話までは物語のイントロダクションとして、細部を削ぎ落しつつ原作をなぞってきた。
それに対し、5話から本格的に再構成に入ったな、という衝撃がありました。
諸々考えると、勝・鳴海・しろがねがスポットライトをより多く浴びるアニメ化になるのではと妄想します。
個人的に、『からくりサーカス』は様々な愛の気づきと、それへの決別の物語にも読めると思っていて。
主演の三人はそれを最も純粋に表しているキャラクターなので、そこさえ強固に押さえてくれれば、大きく軸がブレることはないのではと信じています。
ぶっちゃけ、原作も寄り道や中だるみ多いしねw

正直、期待はしてなかったんですよ。
同じ作者の『うしおととら』は、原作のダイジェストなのに詰め込みすぎという微妙な出来(個人の感想です)になっちゃってた……
ので、やっぱり不安と期待をないまぜにしつつ。
(↓完っ全に原作のネタバレありで「不安」(と予想、最後のだけ完全な不満)を書いとくと
{netabare}・鳴海生存をめっちゃ早く見せてる、次回はイリノイ?
 鳴海の怒りとしろがねへの態度、困惑されないかな。
 理屈は大丈夫なんだけど、感情が追い付くといいなと。
・ドラムvsビーストやらないならリーゼさんの存在価値が…
 そのための黒沢ともよさんキャスティングじゃないの?
 まあ順番入れ替え可能なので、期待だけ…
 ヴィルマさんの扱いもどうなるか。
・黒賀村とローエンシュタインたぶんあかん。
・ミンシアとファティマさんの声、逆のイメージだった。
・冒頭のVolnの社名ロゴ映像だけは本気で削ってほしい。
 その10数秒でフィルムの価値変わるでしょ。
 単純計算、36話で10分超えるので…){/netabare}

それでも、アニメになってくれてうれしいです。
はじめて本作に触れる方、久しぶりに思い返す方、そんな方と一緒に新しい演目、アニメならではの『からくりサーカス』を一から楽しめるなら、とても素敵なことだと思っております。
そのうえで、お暇があれば原作も手に取ってもらえるともっと世界が広がるかなと。
みなさま、鷹揚の御見物を願います。
(2018.11.11)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11
ネタバレ

木村天祐 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

マリオネットを操る長編ダークストーリー漫画原作アニメ

原作知ってる勢です。原作の内容飛ばしすぎですね。飛ばしまくりでも結構面白いのは流石かな。同じ原作者でアニメ化したうしおととらよりも飛ばしまくりでひどいです。本来4、5クールでやるべきだと思います(本気で再現やったら6、7クールくらいになるはず)。

超金持ちの子供が遺産のために誘拐されそうになっているところをゴリラみたいな兄ちゃんが助けるところから物語が始まります。子供が頼りにしたのが、祖父さんの恩をうけたサーカス団の美人の姉ちゃん。そのハーフの姉ちゃんが操る特徴的なマリオネットはこの物語の看板です。遺産を巡る戦いから、世界で蔓延する奇病 ゾナハ病を引き起こすオートマタとの世界を時代をまたにかける戦いに発展していきます。

声優も作画も音楽も良い。原作飛ばしまくりなこと以外は欠点特にないんですよね。かといって原作完全再現すると話が長すぎてテンポが悪くなるでしょうし、難しいところです。

仲町サーカス編とか勝のヒロインたちが出てくる所すべからくカットでしたね。ほとんどヒロイン出てこなかったんですが、{netabare}かろうじて出ても下手に活躍してアンタ誰ってなっちゃってましたね(リーゼさん...)。
もともと鳴海は記憶なくなってから別キャラみたいな変貌ぶりでしたが、フランシーヌ人形に似ているしろがねと再会した時めっちゃ怒りまくってたことに違和感ありましたね。アニメの場合話がダイジェストすぎて、私の感情がついていけないんですよ。アニメ見ている側としては、さっきチョイチョイっとオートマタと戦っただけの鳴海が、鳴海のことを愛してるしろがねを殺したいほど憎んでるっていう描写を見せつけられます。といってもなんでしろがねが鳴海を愛してるかも話飛ばされてよくわかんないんですよね。{/netabare}
後半になるにつれて、ダイジェストじゃなくなって、スピードがちょうどよくなるのは笑っちゃいました。{netabare}勝誘拐編からフェイスレス戦編までの間がダイジェストって感じですかね。{/netabare}
全体の中抜きをしてる感じといえばわかるでしょうか。
まあ、長編漫画作品のアニメ化の難しさってやつなのかなぁ。悲しいなぁ。

このアニメの最高の楽しみ方は、「じじいの過去編から見る」ですかね。17話くらいから最後までかな。アニメ全36話中、丁度真ん中ぐらい。{netabare}「始めも中盤もわかんないけど、なんかあったんだろう。」と想像に任せて、見てないからわかんないと片付ければ違和感ないはず。漫画だと断然一番燃えるのがしろがね軍団vs真夜中のサーカス決戦ですけど、決戦の前も後ろも、さらに中身も中抜きされてるんで見ない方がいいかも。 {/netabare}

それなりに楽しめる仕様に仕上がってるアニメだと思うのでオススメはしますが、{netabare}どっちかっていうと漫画の方がオススメってのが俺の感想ですかね。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 2

71.9 5 バイオレンスでシリアスなアニメランキング5位
フルメタル・パニック!Invisible Victory(IV)(TVアニメ動画)

2018年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (281)
1319人が棚に入れました
相良宗介たち「ミスリル」に、敵「アマルガム」が逆襲!
今度は本気の闘いだ!!

敵<アマルガム>のガウルン、ゲイツといった強敵を倒し、いつもの平和な日常が戻った「陣代高校」。
しかし、そんな日々は長くは続かなかった・・・。
失態続きの<アマルガム>は、本気で相良宗介たちに襲いかかってくる。
世界各地の<ミスリル>の基地が強襲される!
テッサ率いるトゥアハー・デ・ダナンが格納されている「メリダ島」もたくさんのミサイル、アームスレイブによって攻撃される。
一方、日本の宗介、かなめにも魔の手が追っていた!!

再び、宗介、かなめ、テッサたちに試練が訪れる!!!

声優・キャラクター
関智一、ゆきのさつき、木村郁絵、森川智之、夏樹リオ、ゆかな、三木眞一郎、根谷美智子、大塚明夫、西村知道、浪川大輔、山路和弘、杉田智和、てらそままさき、井上麻里奈、内田彩、茅原実里、津田健次郎、玄田哲章、速水奨、山口勝平、遠藤大智、斉藤次郎、代永翼、櫻井トオル

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

俺はすべてを守る。君に属するすべての世界を護衛する!

この作品は「フルメタル・パニック」の4期に位置する作品です。
物語の内容に繋がりがあるので、前期未視聴の方はそちらからの視聴をお勧めします。

本作品の最大の特徴でもあると思うのですが…
これまでアニメーション制作は京都アニメーションでしたが、今回からXEBECに変わっています。
XEBECといえば、しーぽんの愛称が懐かしい「宇宙のステルヴィア」や「蒼穹のファフナー」が頭に浮かびますが、調べてみると「To LOVEる -とらぶる-」シリーズや、「這いよれ! ニャル子さん」などの作品も手掛けられているんですね。

京アニからアニメーション制作が変わる事を知り、少しビックリしましたがXEBECと聞いて安心しました。
XEBECといえば「蒼穹のファフナー」の様な半端ないクオリティのロボットバトルを輩出した会社です。
直近では「蒼穹のファフナーEXODUS」が放送されましたが、この作品のスタッフには子供の頃にファフナーを見て、自分もこの様なアニメを制作したい、という意志を持った人たちが参加していたそうです。
こういうモチベーションの高いスタッフが一緒だと心強いですよね。

一方、本作品の物語の方ですが…
これまで「アマルガム」というミスリルの敵の名を幾度となく聞いていました。
アマルガムの執拗な攻撃に相良宗助らは、何とか辛勝してきました。
ですが、今期のアマルガムは本気です。
本気でミスリルを潰しに襲ってくるのです。
彼らの本気…実はこの目にするまで皆目見当が付きませんでしたが、本作品で彼らの実力が明らかになります。

明らか…とは未だ言えないかもしれません。
アマルガムは底の見えない組織なんです。
だから、これが彼らの本気であることを証明する手立てがないんです。

しかもアマルガムはミスリルを同時多発的に襲ってきたんです。
個々の能力では拮抗するかもしれません。
でも最新式のアームスレイブを多数揃え、圧倒的火力の差を持って襲われては流石のミスリルも堪りません。

そして当然ですが、アマルガムの手は相良宗助…いえ、かなめにも迫っていたんです。
きっと状況はこれまで見てきた中で最悪と言っても過言ではないと思います。
そしてこの物語は、ミスリルにとって組織も心も瓦解した最低最悪の底辺から動いてきます。

今回はどのキャラを見ても心が痛みます。

成す術なく選択を強制・受諾させられた相良宗助。
これまで手を伸ばせば触れられる位置にいたはずなのに、一体どれだけの溝が開いてしまったのだろう…
でも再び歩き始めた矢先で彼を待っていたのは絶望…
襲い来る数々の痛み・苦しみを味わいながら、それでも宗介は顔を上げ叫びます。
だって…約束したから。

一番心細いのは、かなめかもしれません。
普通の高校生活を送りたいだけなのに、どうして自分の身の廻りでは騒ぎばかりが起きるんだろう…
でも、今度の騒ぎは普段の宗介のバカ騒ぎが可愛く思えるくらいに激しく、友達を容赦なく傷つけていくんです。
だからもう全部駄目かも…と思っていました。
けれど、物語ラストの叫びはズシンと胸に響きましたよ。
やっぱりかなめはそうじゃなくちゃ…

でも一番心を痛めたのはテッサで間違いないと思います。
自分の一声で人を生かしも殺しもするんです。
現在の状況を踏まえ、一番正しい選択が出来ていたのだろうか…
彼女の心にはこの問いがずっとついて回るのではないでしょうか。
いえ、今回の一件だけじゃありません。
自分が大佐としての言動全てについて回るんです。
その重みを受け止めるには…正直テッサは華奢すぎです。
更に寄りかかりたい人の消息は分からない…
組織としての自分、本心の欲求に対する自分…
きっと心はグチャグチャだったのではないでしょうか。

そういえば、今回新たに一人紹介したい人ができました。
宗介が立ち寄ったナムザクで知り合ったナミという女ん子です。
明るく聡明で…彼女もかなめやテッサに負けず劣らず良い娘なんですよ。
暗い話ばかりが続く中、彼女はオアシスの様な存在だったと思います。

混沌は留まる事を知りません。
そして一旦は停止を余儀なくされましたが、これで終わるミスリルではありません。
これまでも圧倒的不利な状況の中から、僅かな勝利条件を掴んできました。
この戦いにおいてもその奇跡を信じています。

オープニングテーマは、山田タマルさんの「Even...if」
エンディングテーマは、山田タマルさんの「yes」茅原実里さんの「Remained dream」
何このオープニング…ムッチャ痺れるんですけどっ!
って、エンディングも…!
どちらも大好きで通勤電車でリピートしながら聞いている曲です。
特に好きなのはオープニングです。
今期のアニソンBEST10の上位にどれだけ食い込んでくるかが楽しみです。

1クール12話の物語でした。
作画は、ロボットのクオリティーが素晴らしいです。
キャラデザは京アニとの違いは感じましたが、違和感は無かったと思います。
まさか…これで終わりじゃありませんよね。
原作は完結しているようなので、最後まで描ける条件は整っていると思います。

以前、とても悲しい思いをした経験があるので、なにとぞ続編…からの劇場版という改悪パターンだけは無い様にお願いします。
これはそうしちゃいけない作品だと思いますので…

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
ネタバレ

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

この愛に壮大な名前をつけよう

序盤 あぁ

中盤 うーん

終盤 うーーーーんんんん

四期です。お察しの通りInvisible Victoryの頭文字をローマ数字のⅣと見立てています。
三期の続きなのでだいぶ暗いです。四期もシリアスメインとなってきます。コメディシーンはやはり少ないです。個人的には嬉しいんですがね?

時代というものは無慈悲にすぎるもので、三期放送から13年の月日が立ちました。流行りや一般受けが変わる中で、作風が変わるのはとてもどうしようもないことなのでしょうが、個人的にあの作風が好きだったので残念です。

序盤から攻めてきます。恋愛系から始まるのですが、いきなりシリアスシーンになったり戦闘になったりと忙しいです。そしてあいも変わらず血は跳ね首が飛ぶので苦手な方はご控えを。まぁ三期を見れるくらいなら余裕でしょうが。
やはり前に三期あったとはいえ13年のときが経っているので、覚えているか正直微妙でしたが視聴し始めれば徐々に思い出してくるので安心してください。しかし、導入が雑だったのは些か見過ごせませんが。
中盤は新キャラがメインになってきます。主人公はソウスケのままなのですが、時間的にも空間的にも間ができるのでちょっと最初は驚きます。しかし、そこはフルメタ。もちまえの「なんやかんや」と「非情」を使い切り抜けます!
おおとここで終盤に差し掛かる!止まる様子はまったくなく、ゴールもどんな形かわからない。この状況で不安にならない視聴者はいるのでしょうか。{netabare}実際ものすごく中途半端で終わりましたからね。続きはあるのでしょうかね。また13年待つのは厳しいですよ。{/netabare}
物語の全体的な印象としては悪くないです。なんやかんや言ってもフルメタは四期まで続いているだけあってちゃんと物語としては成り立っています。無駄なシーンもあることにはありましたが、それが無ければ納得するかと言われれば微妙なとこです。要はフルメタが好きならば問題ない、ということです。個人的にはセカンドが一番好きですが、本作が一番好きという視聴者がいてもおかしくは無いと思います。そういう感じです((

{netabare}あと個人的な読みではソウスケが「愛」を知るのに時間がかかったり、何かしらのアクションがあると思ったんですが、案外あっさり愛を伝えてますね。私が見逃しただけなのかな。だとしたら結構重要なとこ見落としてますね。世界を巻き込んだ恋愛なのですから、一括いに愛の力と表現するのはなんか癪です。かと言ってなんと表現すればいいのか。やはり愛なのか…できれば下限も知ってほしいところです。発送としては良いのですがね?
あとナミの声優さんは茅原実里さんだそうです。茅原さん救われない役多くない?気のせい?いつも死んでるか救われないイメージしかないんだけど。気のせいかな(汗){/netabare}

先程も行ったとおり制作会社がかわり作風がガラリと変わっています。一期と二期ではもちろん差はあったにしろ大きな変化ではありませんでした。しかしこの三期と四期の間には深すぎる溝ができてしまいました。主人公たちや生徒たちはもちろん、ロボットや車などが大分変わり果てていました。人はキャラデザの変更を疑うくらいには違いましたね。見た目から元気いっぱいだったあの少女が今では恋するうら若き乙女に。まぁ言動とかが女々しくなったのも原因でしょうが。個人的にはやはり昔のほうが好き。
ロボットは3DCGをつかっていました。モーションは丁寧でしたが、ちょっと陳腐な感じはしました。対象年齢が低めのアニメにでてきそうなやつ(伝わってほしい)。まぁ大の大人がロボット変形に対し「その稼働はおかしい」と批判する業界もありますからね(そっと宇宙世紀から目をそらす)。ほ、本当にガンダムは面白いですよ?(必死のフォロー)
あと恭子ちゃん扇情的になった?ちょっと気に食わないんだけど。前の元気で天真爛漫な恭子ちゃんに戻してよ!(過激派)びっくりしたね。一瞬誰かわかんなかったもん。

監督は中山勝一さん。planetarianのシリーズディレクターをされた方ですね
原作・シリーズ構成・脚本は賀東招二さん。
キャラデザは堀内修さん。不動
劇判は佐橋俊彦さん。不
アニメ制作はXEBECさん。ファフナーやニャル子などを制作したところですね

opは山田タマルさん作詞曲歌唱、山本陽介さん編曲の「Even...if」
edも山田タマルさん作詞曲歌唱、山本陽介さん編曲の「yes」
ちなみに個人的に好きなのが8話ED畑亜貴さん作詞、菊田大介さん作編曲、茅原実里さん歌唱のゴールデンコンビの「Remained dream」が大好きです
声優さんはよく、主人公の関さんが初期とは大違いの演技力でした。いや初期も味があってよかったんですけどね

総合評価 受け入れられない人もいると思う

投稿 : 2024/11/02
♥ : 9
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

今回のフルメタは死者・怪我人続出の本気戦闘モード!

本シリーズに関しては、サブヒロインのテッサ隊長が可愛いだけの、温(ぬる)くて展開の散漫な「なんちゃってロボット&学園ラブコメ」アニメとばかり思っていて、この新作の視聴前はほとんど期待していなかっただけに、第1話から・・・ちょービックリ!!!!
前作まで(1~3期+OVAの計50話)は、長~い前座だった!?

何か見続けているうちに、主人公=宗介君が『装甲騎兵ボトムズ』のキリコ君に見えてきた!
これは、《リアル志向ロボット&軍事アニメ》の思わぬ拾い物でした。

チンタラしてなかなか話の進まなかった前作までを余り確り見ていない私が、この新作はこれだけ楽しめたということは、コレ単独で新規に見始めてもいい作品なのかも?
というか、私の場合、この新作を見終えて、初めて前作の方をじっくり再視聴してみたくなりました。
原作の方は、さらにこの後シリアスな展開が続くそうなので、何とか最後までアニメ化して欲しいところです。


◆制作情報
{netabare}
原作ラノベ      賀東招二(『富士見ファンタジア文庫』1998-2011年刊)
監督         中山勝一
シリーズ構成・脚本  賀東招二
キャラクターデザイン 堀内修
メカニックデザイン  海老川兼武、渭原敏明
音楽         佐橋俊彦
アニメーション制作  XEBEC{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

======== フルメタル・パニック! Invisible Vicrory (2018年4-7月) ========
{netabare}
第1話 ゼロアワー ★ テロ組織「アマルガム」の本気宣言(レナード)、普通の学園生活の終り、世界各地のミスリル基地への大攻勢開始
第2話 損害制御 ★★ メリダ島基地への敵襲、宗介&かなめへの襲撃、スペック伍長懲戒(テッサ大佐)、かなめ動揺
第3話 BIG ONE PERCENT ★★ ベヘモス迎撃(スペック戦死、キャステロ中尉戦死)、Mr.クラマの卑劣な罠(人質・常盤恭子)、宗介とかなめの約束
第4話 オン・マイ・オウン ★★ 学園の戦闘(人質解放、レナード来襲・かなめ投降)、メリダ基地放棄・テッサ隊脱出、宗介の決意{/netabare}

 - - - - - - - - - - - シナリオの切れ目 - - - - - - - - - - -
{netabare}
第5話 WELCOME TO THE JUNGLE ★ 東南アジア・ナムサク市編(AS闘技場(アレーヌ)、ナミ&レモンとの出遭い、参戦)
第6話 腐敗のまどろみ ☆ 続き(地元警察署長の接触、宗介の目的)
第7話 ジャイアント・キリング ★ 続き(闇バトル(ロートル機サベージvs.最新鋭機M9)、再びクラマの卑劣な罠(人質・ナミ))
第8話 ワン・マン・フォース ★★ 続き(ナミ死亡、宗介の復讐戦、クラマ戦死・宗介重症、かなめの行方) ※ED「Remained dream」{/netabare}

 - - - - - - - - - - - シナリオの切れ目 - - - - - - - - - - -
{netabare}
第9話 堕ちた魔女 ★★ 旧アーバレストAI(アル)の機能回復、テッサ大佐サンフランシスコにて発見、アマルガムの尻尾あぶりだし作戦
第10話 前へ、前へ ★ レモン隠れ家への襲撃、囚われのかなめ、フロリダ軍事キャンプ(宗介回復)、カリーニン少佐の裏切り
第11話 ストーミー・ナイト ★★ メキシコ・レナード隠れ家強襲、かなめ奪還作戦(クルツ&メリッサ合流)、レナードの待ち伏せ
第12話 メイク・マイ・デイ ★★ かなめ奪還失敗、新機レーバティン無双(AIアル&宗介のコンビ復活)、かなめからの連絡・約束、テッサとの再会・宗介&アル原隊復帰{/netabare}
--------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)7、★(良回)4、☆(並回)1、×(疑問回)0 個人評価 ★ 4.3

OP 「Even...if」
ED 「yes」

投稿 : 2024/11/02
♥ : 16

63.8 6 バイオレンスでシリアスなアニメランキング6位
高橋留美子劇場 人魚の森(TVアニメ動画)

2003年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (76)
379人が棚に入れました
現代より約500年前。漁師の湧太は仲間と共に浜に流れ着いた人魚の肉を面白半分に食べてしまう。すると仲間は次々に死んでいき、湧太だけが生き残った。それどころか、湧太は不老不死の体となってしまった。

不老不死の妙薬と呼ばれる人魚の肉。だがそれは力が強すぎるために、普通の人間にとっては猛毒であり、死ぬか、“なりそこない”と呼ばれる化け物に変わる。それに耐え切り不老不死を得ることができる者は、数百年に一人。湧太がその一人の人間であった。そのために湧太は、人と交われぬ永遠の孤独をその身に背負う事になる。親しいものは皆死に絶え、永遠の時を生きなければならない。いつしか湧太は元の人間に戻ることを切望するようになる。

声優・キャラクター
山寺宏一、高山みなみ

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

高橋留美子が人魚伝説をモチーフに、シリアス路線で描いた珠玉の短篇集

「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」「犬夜叉」「境界のRINNNE」など、
主な原作の殆どがアニメ化されている漫画家、高橋留美子が、
80年台から不定期で発表してきた短編を高橋留美子劇場の人魚シリーズとして、
2003年に放送された作品。全13話。

高橋留美子と言えば、個人的には「うる星やつら」や「めぞん一刻」のようなラブコメがすぐ思い浮かびますが、
本作はホラー&サスペンス要素を含む終始シリアスな路線で描かれており、
内容には一部過激な描写も含まれるなど、(12,13話はR15指定でDVDのみ収録)
その他の作品とは一線を画するものとなっています。

☆物語☆

人魚の肉を食べ、望まずも不老不死になってしまった主人公ユータが、
元の人間に戻るために人魚を探し、数百年の月日を経てようやく人魚の里へ辿り着くも、
元に戻る方法は無い事を知る..そこで、とある理由から不老不死にされてしまった少女マナを助け出し、
あてどもない旅を続ける事となる。

短篇集ということで殆ど1話か2話で完結するオムニバス形式となっていて、
少々強引と感じる場面もありますが、設定がユニークで興味深く、
どのエピソードも非常によく練られた濃いもので、
観ていて飽きさせない辺りは、やはり原作者の力量に依るものでしょうね。

全話通して悲しく重いものばかりですが、
人魚伝説に翻弄される人間の欲望、悲哀や苦悩がよく伝わってくる、
「命」「生きること」を考えさせられる、深みのある作品となっています。

☆声優☆

メインキャラの山寺宏一さん、高山みなみさんをはじめ、
今となっては実力派のベテラン&重鎮の声優が多く起用されており、
非常に豪華な顔ぶれと演技が堪能できます。

今ではベテランの域に入ってきた小林ゆうさん(デビュー当時)が、
ちょい役で幾つかのエピソードでクレジットされてたんですが、
これにはさっぱり気付きませんでした笑

☆キャラ☆

声優の演技力に依るところもあると思いますが、
各エピソードで出てくる人物達の感情、思いがよく伝わってきます。

☆作画☆

2003年の秋アニメということで、やや古さを感じる作画は致し方ないとは思いますが、
同時期の「プラネテス」と比べてしまうと、少々物足りない出来に思えます。
まぁ「プラネテス」が良すぎるというのもありますが。。

☆音楽☆

OPはアップテンポながらマイナー調の物悲しい楽曲で、本作との相性もとても良く、
EDは物語の余韻を感じさせる物憂げかつ穏やかでもので、どちらも秀逸。
作中BGMは現在に比べるとややバリエーションが少ないながらも、
繰り返し流れることで印象に残ります。


ラブコメ系のイメージの強い高橋留美子作品でしたが、良い意味で裏切られ、
また懐の深さを再認識できました。
シリアスで重く悲しい物語が好きな方には、是非オススメしたい作品です。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 10

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

猫は死んだら死んだままなの?

高橋留美子のアニメ化作品では希少なサスペンスホラー。
人魚に纏る伝記や伝承の様なダーク・ファンタジー作品。

日本各地に伝わる人魚伝説は恐ろしいものがほとんど。
ディズニー作品等の様な綺麗な「人魚姫」のイメージが
強く一般的だと思うけど・・実際には世界各国の人魚
も不吉な象徴や悲しい結末のものが多い。

この作品は日本古来の港町の伝記のようなダークな人魚
の不老長寿に纏る悲しい話を軸に展開してく。

人魚そのものは不老不死ではなく、人魚の肉を食べて
不老不死になった人間の肉を食べて若返るというもの。

人魚の肉は毒性が強く、耐性の強い者は極一部だけ。
大多数は死ぬか「成り損ない」として化け物になる。

人魚の灰は死体をゾンビ化する・・頭を打ち落とされ
なければ、身体に杭を打ち込まれ絶食状態でミイラの
ようになっても絶命しない等・・ドラキュラと似てる。


あらすじ

漁師の湧太は仲間と共に浜に流れ着いた人魚の肉を面白
半分に食べてしまう。
たった一人生き残った湧太は不老不死となってしまった。

親しい者・愛する者は皆死に絶え、永遠の時を生き続け
なけるが・・常に孤独に苛まれる・・人間に戻ることを
切望するようになり、人魚を探す旅を続ける・・

それから500年後・・ある日ついに人魚の里を見つけ出す。
そこで囚われの身の少女・真魚と出逢い助けだすが・・
その里の人魚に・・元の人間に戻る方法は無いと聞かされ
湧太と真魚は共に旅に出る。
その永遠の旅の中、彼らは「人魚の伝説」に翻弄される人々
の悲哀を見続ける。というもの・・

真魚と出逢う前の過去500年戦国、江戸、明治、大正、昭和
の湧太の過去回想等も混じえ悲哀要素など多く含んでいる。

真魚は囚われの身故俗世に疎く、猫を珍しがり慈しむが・・
湧太の「どうせすぐに死んじまうから放っておけ」という。
真魚は「猫は死んだら死んだままなのか?」と聞き直す・・
そうしたちょっとした会話にも悲しさがある・・

OPで雰囲気が良く出ている。EDも古さを感じさせない。
作画は少し古いけど可也作風にあった雰囲気で良い感じ。
※可也力の入った描写や綺麗な背景などもある。

第十二話・最終話は内容的に残酷な表現があり、TV未放送。
ソフトは最終話を含む巻のみR15指定を受けている。
※実際最近の深夜アニメの陰惨グロ映像の方が遥かに酷い。


4~5話人魚の森前後編 神無木登和(島本須美)
此処がひとつのピークかもしれない。



湧太 - 山寺宏一
真魚 - 高山みなみ
登和 - 土井美加
佐和 - 此島愛子
椎名 - 槐柳二
椎名(青年時代) - 田中和実
佐和(少女時代) - 山崎和佳奈

島本須美・桑島法子・折笠愛・佐久間レイ他各話にゲスト
キャラが登場する形式。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5

おすぎまん さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3

ストーリーだけは秀逸

元々、原作は読んでましたし、高橋留美子は昔から短編集を出しており、ギャグあり、シュールあり、シリアスありという内容のものでいずれも秀逸なものが多いので、割とこういうのは真骨頂だと思っています。

という訳でストーリーは本当にいいです。
昔読んで懐かしいのと、イマイチ結末が思い出せない話もあったので、観ました。

不死をめぐる人間の醜さや、不死になってしまって周囲とかかわることの切なさは特に勇作の「俺は暮らすことはできない。ただ生きるだけだ」というセリフで胸に来るものがありました。

でも、作画がとにかくひどい。
あと規制のために、血が出るシーンなんかは、有名なゲロ隠しのようにキラキラしているし、なぜか人魚の肉を取り出すシーンも肉がドラえもんの秘密道具のようにキラキラしているとか、演出もひどい。

原作マニアの人が文句言っているなりそこないの指の本数は別にどうでもいいですwww
むしろそんなの覚えていて、そんなことに文句言っている人が気持ち悪いwww
ストーリーに出てくる醜悪なキャラそのものですw

あの作画じゃあここでの評価が低いのは当然でしょうね。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 2
ページの先頭へ