ハートフルで親子なアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のハートフルで親子な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月10日の時点で一番のハートフルで親子なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

78.0 1 ハートフルで親子なアニメランキング1位
東京ゴッドファーザーズ(アニメ映画)

2003年11月8日
★★★★☆ 4.0 (667)
3456人が棚に入れました
自称・元競輪選手のギンちゃん、元ドラァグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキ、三人は新宿の公園でホームレス生活を送っていた。クリスマスの晩、ハナちゃんの提案でゴミ捨て場にクリスマス・プレゼントを探しに出かけた三人は、赤ちゃんを拾ってしまう。赤ちゃんに「清子」と名付け、自分で育てると言い張るハナちゃんを説得し、三人は清子の実の親探しに出かけるが、行く先々で騒動が巻き起こる。

声優・キャラクター
江守徹、梅垣義明、岡本綾、飯塚昭三、加藤精三、石丸博也、槐柳二、屋良有作、寺瀬今日子、大塚明夫、小山力也、こおろぎさとみ、柴田理恵、矢原加奈子、犬山イヌコ、山寺宏一

takarock さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ホームレス3人組のコメディ調冒険活劇in真冬の東京

故・今敏監督のアニメ映画で2003年の作品です。
「パプリカ」や「パーフェクトブルー」は浅はかと言い張る
ちょっと偏屈なアニメというより映画マニアの友人から勧められて視聴しましたw

「あらすじ」(知っている方は飛ばしてください)
酔っぱらいの呑んだくれおやじのギンちゃん、
元ドラァグクイーン(男性が女性の姿で行うパフォーマンスの一種)のオカマのハナちゃん、
そして家出女子高生のミユキ。
新宿でホームレス生活を送っているこの3人がクリスマス・イヴの夜に
ゴミ捨て場に捨てられていた赤ん坊を発見する。
子供を育てることが夢であったハナちゃんは赤ん坊に勝手に「清子」と命名するも、
やはり実の親を探そうとホームレス3人組が真冬の東京を奔走するという物語。

上記の通りこの作品には、格好良い主人公も可愛いヒロインもいません。
いるのは、小汚いおっさんと同じく小汚いおっさんのオカマと
お世辞にも可愛いとは言えないホームレス女子高生の3人です。
そして舞台はファンタジー世界でなく真冬の東京です。

設定からしてすさまじいです。
全然わくわくするような話じゃないって思うかもしれません。
けれども下手な冒険活劇なんかより余程冒険しちゃってますw
すげーわくわくさせられます。もう単純におもしろい。

このホームレス3人組はそれぞれ複雑な事情を抱えており、
ホロリと来る人情話もあれば、ド派手なアクションもあります。
3人のやりとりなんかにクスリと笑ってしまうこともしばしば。
これぞまさにエンターテインメントです。

3人が清子を拾ってから行く先々で様々な奇跡が起こります。
ご都合主義とも言えるかもしれませんが、
それは「これはアニメーションだよ」ということを強調するために
意図的にそうした演出にしたようです(友人談)
真偽の程は定かではないのですが、どっちでもいいでしょう。
まぁクリスマスの奇跡ってことでw

日本のアニメ映画と言えば、ジブリ作品や最近では細田守監督の作品が有名ですが、
それらの作品に決して負けてないクオリティ、そして感動がこの作品にはあります。
いや、それ以上と言っても決して過言ではないでしょう。(但し全盛期のジブリ作品を除く)
辛いことがあって悩んでいたり、落ち込んでいる人には特にお勧めです。
元気をもらえますよ。

この作品を観て僕は今敏監督が亡くなったことは日本アニメ界にとって
あまりに痛すぎる損失だったということを改めて実感しました。
紛れも無く天才、間違いなく本物。
そしてこの作品を始め今敏監督の作品は後世まで語り継がれていくでしょう。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 47
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

きよしこの夜

今敏監督作品、制作マッドハウス。

希望を1枚、カードで支払い、
海外から溜息を取り寄せた。
これはなかなかの上物である。
やがて部屋中が憂鬱で一杯になった。

感覚を麻痺させて生きよう。
出来るだけ静かに目立たぬように生きよう。

{netabare}クリスマスに赤ん坊を拾った。
赤ん坊はなぜ力一杯泣くのだろう!?{/netabare}
それはきっと生きる為の放熱だ。
今敏監督が描きたかったのは、
その放熱そのものかも知れない。
誰もが傷を抱えて生きている、
弱さを抱えて震えながらも前へ前へと。

少し換気をしよう、憂鬱で一杯だ。
ストレスを抱えたたくさんの現代人に、
素敵なクリスマスプレゼントなのだろう。

コミカルでハートフルな聖夜の奇跡、
これは雪降る夜の、奇跡の物語なのだ。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 47
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

サクッと観れてスカッと終われる、人情味溢れるストーリー。会話が小気味良い!

今敏監督作品。約90分。
同監督にしては非常に分かりやすい話です。

クリスマスの夜。
ホームレスのギン、オカマのハナ、家出娘のミユキ、社会的にはダメダメ3人組が、ゴミ捨て場で赤ちゃんを見つける。
クリスマスに拾ったことから「きよしこの夜」をもじって「キヨコ」と名付け、親の元に届けようとするのだが……。
キヨコを巡ってさまざまな騒動に巻き込まれる物語。


東京のごちゃごちゃした景色、人物の細かく丁寧なしぐさ、この辺はさすが今敏監督。
ミユキが寒くて鼻をすする動きは、とってもリアル。
人間の動きをよく観察してますね。
キャラクターの表情を見ているだけでも飽きません。

そして、なんとも人情味のあふれる話です。
ホームレスのおっちゃん、オカマ、家出娘の会話ですから、冗談のように聞こえますが、それぞれの生い立ちから出てくる、なかなか気の利いたセリフ。
酔っぱらったときの台詞回しも絶妙!

なお、キヨコの声優は、こおろぎさとみさん。
赤ちゃんの演技には定評がある方です。

また、漫才のような笑える会話劇も見所です。
お気に入りなのは、
{netabare}
ギン「クズを捨てたいんだが」
ギン「ちょっと小さいかな」

ハナ「たとえばぁ……日に焼けた肌に角刈りが似合う細身の中年男で、ちょっと困った顔しながら、足りない料金を、"ったくしょうがねぇな"なーんてまけてくれる江戸っ子みたいな男がすてきー」

ハナ「私たちはどう見えるのかしら」
ギン「ホームレスとオカマと家出娘と捨て子」
{/netabare}

テーマは「親子の絆」そして「自分の居場所」でしょうか。
{netabare}
娘に合わせる顔がないギン。
親を知らないハナ。
親を刺して逃げだしてきたミユキ。
{/netabare}
境遇は異なるものの、それぞれ親子関係に特別なしがらみを持っています。


終盤の展開は実に爽快!
キヨコを巡ったハイテンションなドタバタコメディに、アクションシーン。
そして、気持ちの良いオチ。

サクッと観れてスカッとした気分で終われる物語です。
登場人物がとっても人間くさく、このまま実写映画にしてもおかしくない感じ。
アニメ好きじゃなくても十分楽しめます。
{netabare}
冒頭の牧師の言葉
「癒しを求める人間に、心の救いをもたらすためだったのです!」

心の癒しを得るきっかけを作ってくれたのはキヨコ。
でも、本当に癒しを得たのは個々の力なんですよね。
それにしても、ハナさん男前!! ……じゃない女前!!

しかし、宝くじまで当たっちゃった!
やっぱりキヨコは、三人にとって最高のクリスマスプレゼントだったのでした!
{/netabare}

投稿 : 2024/11/09
♥ : 47

64.8 2 ハートフルで親子なアニメランキング2位
崖の上のポニョ(アニメ映画)

2008年7月19日
★★★★☆ 3.5 (649)
3085人が棚に入れました
海沿いの街を舞台に、「人間になりたい」と願うさかなの子・ポニョと5歳児の少年・宗介の物語である。
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

ポニョの世界、宮崎駿の世界

しばし「素直な気持ちで視聴すれば」ということを耳にすることがある。
しかし、どうもこれは「細かいことを論うような視聴をしないで」
という意味合いが強いようにも思えます。
これのどこが「素直」なのだろうか?
作品内のディテールや整合性におかしな点があれば気になるものですし、
矛盾点があれば「何故?」と思うのは私にとっては当然のことであり、
それらを敢えて度外視するような観方は極めて不自然な視聴姿勢だと思っています。

「子供のような素直な気持ちで」なんて言われた日にはいよいよ以って胡散臭く聞こえます。
大人はこれまでの経験則や理屈から「何でそうなる?」と問い掛けるに対して、
子供はその好奇心から容赦なく「何で?何で?」と問い掛けるではありませんか。
それで返答に困った大人はこんな逃げ口上を言うのです。
「大人になれば分かるよ」と。

そういう意味で言えば、臭いものには蓋をしてなんてことをしない子供というのは、
作り手たちにとっては、大人よりも遥かに怖いお客さんなのかもしれません。
そして、宮崎駿監督はその怖さを誰よりも知っている監督なのだと思います。

私は本作「崖の上のポニョ」をそれこそ「素直な気持ちで視聴すれば」の
元来の意味であろう「あるがままに受け止める」という視聴姿勢を取りました。
良い所は良い、駄目な所は駄目と言い、
分からない箇所や矛盾点には容赦なく「何で?何で?」と問い掛ける。
というか、これはいつも通りの私の視聴スタイルです。

そのようにして本作を観終えたわけですが、
本作の感想をどう表現していいのか非常に悩ましいものがありました。
「良い話だったと思う・・・しかし・・・」
素直におもしろかったと言わせてくれない
喉に刺さった小骨のような違和感が残りました。

このレビューでは、
本作の長編ドキュメンタリー「ポニョはこうして生まれた。 ~宮崎駿の思考過程~」
での宮崎駿監督の言葉を拝借しながら
私が感じた違和感の正体、
そしてポニョとはどのような作品なのか、
さらには宮崎駿監督の人物像に迫っていきたいと思います。
ここからはネタバレありです。


{netabare} 「そもそもポニョって何なのさ?」

海を泳ぐ金魚のような姿をした妖精?
最初はなんとなくそう捉えていましたが、ポニョを拾った宗介は「金魚」と言い切っている。
母親のリサもそのことについて特に気に留める様子もなく、受容しているように見える。
人間には金魚に見えるということ?
ところが、どこかひねくれた性格のトキさんはポニョを見て
「人面魚だ」と視聴者の声を代弁してしまいますw
もうこうなるとポニョをどういうスタンスから捉えていいのか訳が分からなくなってきますw
本作では他にもいくつもの不可思議なポイントがありますが、
このシーンが、私が本作に対して違和感を感じることになるトリガーとなるシーンでした。

あと、カルキ(塩素)抜きしてない水道水に金魚を入れてはいけませんw
本作の影響で一体何人の子供がバケツの中の水道水に縁日でとってきた金魚を放おって、
一体何匹の金魚が犠牲になってしまったのか考えてはいけないのかもしれませんが、
リサ「宗介~水道水に金魚を入れたらダメだからね~」
宗介「ポニョは特別だから大丈夫だよ」ってやり取りを挿れた方がよかったと思います。
金魚さんたちの為にも!!w


「違和感を感じるのはシーンだけでなくストーリー構造そのものも」

本作のクライマックスシーンはどこかと言えば、ポニョが宗介の元へやってくるシーンでしょう。
アニメーション本来の魅力である動きで魅せるということをとことん追求した
まるで生き物のようにうねりを上げる波の描写はもう圧巻でした。
リサの乱暴な運転もそうですが、疾走感というのを序盤から意識していたように思えます。
何故に危険を顧みずわざわざ自宅まで戻ったのかというのはこの際不問にしますw

さて、ポニョ到来がクライマックスシーンならば、
その後の話は些か蛇足だったという意見もあると思いますが、
宮崎駿監督は劈頭から掉尾までの話をきっちりと決めてストーリーを作るというやり方をしていません。
宮崎駿監督曰く
「人物を配置し、まるで方程式に当てはめていくかのような話の作り方は
脳みその表層面で作ったもの。 
混沌とした領域(脳みその中)の中身が出てくる。 それが才能のひらめき」

「最初のプランが瓦解した時に映画作りが始まる。
予定(最初のプラン)は脳みその表側で作るもの。だから浅はか」

時代によって変化するものですが、売れる為のロジックというのはあるもので、
現在ではそれをそのまま当てはめたような作品が蔓延っています。
俗に言うテンプレアニメなんてものがそうなのでしょうが、
宮崎駿監督はおそらくそれを嫌うでしょう。
でもそんなことを言えるのは数々の成功を収めてきた宮崎駿監督だからでしょ?
と思うかもしれませんが、そうではないでしょう。
成功を収めてきた者はその成功例をトレースしたくなるものですが、宮崎駿監督はそれを拒否します。
宮崎駿監督曰く
「前やったものと同じことをやるんだったらそれを見ててくれればいいんですよね。
それはできないんですよ。やりたくもないし。
そうするとやっぱり今までやってなかったことに踏み込んでいかざるを得ない」

これまで数々の名作を残してきたことは今の自分を支えてはくれない。
飽くなき探究心と挑戦精神こそが宮崎駿イズムだと感じずにはいられませんでした。

宮崎駿監督曰く
「いっぱい見すぎてるからね 今のお客さんは。
だからすぐにああ、あれだなとかそういうゲームのように当てるのが好きな奴がいるんですよ。
こうなると思ったとかさ。
すぐそういうことを得意気に言う人がいるでしょ。それ悔しいじゃんね。
そういう連中が自分の予想が当たらなくなるとブツブツ言うんだよ。 分かんないとかさ」

ひたすら消費されていく作品、
そしてレビューなぞ書いて得意気にすべてを理解したような気になっている視聴者。
私ですw 本当にごめんなさい。

このような風潮に対するアンチテーゼとして作られた側面もあるのではないか?
それも考えられなくはないですが、一方で宮崎駿監督はこうも言います。
「分からないけど面白いっていうのが一番いいなと思って。
分からないからつまらないを作っちゃうとこれはヤバいなって。
子供たちは分かるんです。 論理で生きてないから。
珍しいことやっているんじゃなくて面白くなきゃダメなんです。
手間がかかったからっていいわけじゃないんだ」

ただのアンチテーゼでは商売にならない。面白くなければ意味がない。
宮崎駿監督の苦悩、そして矜持がその言葉の中に詰まっています。
紋切り型のストーリーテリングに囚われない野放図な作り方、
故に理屈で読み解こうとしてもどこか違和感が残るのは当然といえば当然なのかもしれません。
「良い話だったと思う・・・しかし・・・」
この初見時の私の感想は宮崎駿監督からすればまさに想定の範囲内ということなのでしょう。


「宮崎駿監督の自然観」

これはもう宮崎駿監督の作品を語る上で外せないポイントです。
代表作が「風の谷のナウシカ」と「もののけ姫」でしょう。
年を経るごとに宮崎駿監督の自然観というのも若干変化していってますが、
その作品では、学術的にどのような立脚点なのかを探るというのも有意義な考察だと思います。

さて、本作における宮崎駿監督の自然観とはどのようなものなのでしょう。
宮崎駿監督はこう語ります。
「これはさ、大人の世界で言うと大災害なんだけど子供たちにとっては大冒険なんだよね。
僕は大冒険のほうで作りたいの。
地震があったとか大水が出たとかって時に、
津波があったとか どうやったらそれが防げたのかとか
そういう論調だけで語っているけど
どうもこの地球っていうのは人間が考えている以上のスケールで動いているんだよ。
動いている時期にあたるとね そういうこと起こるんだよ。
それに対する哲学を持っていた方がいい。
別にそれで悲惨さが薄まるとかそういうことでなくてね。
何かそういうスタンスのものがあるんだよ。
自分たちがあまりにも人工的に何とかなるんじゃないかって
いうことばかりを20世紀になって思うようになったんだろうけどね。
どうにもならんものはどうにもならんのにね」

言うまでもなく、本作は2011年の東日本大震災以前に制作されたものです。
震災を経た今では宮崎駿監督の言葉は非常に考えさせられるものがあります。
そして、私が目を引いたのは
「大人の世界で言うと大災害なんだけど子供たちにとっては大冒険」というくだりです。
大災害とまでは言わずとも、
積雪や台風といった自然現象でも大人にとっては基本的に百害あって一利なしなんですよね。
通勤電車のダイアの乱れで済むならまだしも、
下手をしたら住居や車の損壊で
諭吉が泡のように消えていく修繕費用とろくなことがありません。
でもそんなこととは無関係な子供にとってはワクワクするような非日常なのかもしれません。
さすがに大災害に直面した時にそんなことを感じる余裕はないでしょうけどね。
少し話が逸れましたが、
本作においては水が溢れてしまった世界を災害というネガティブな捉え方をするのではなく、
人々は逞しく順応し、水の中には古代生物もいて生命で満ち満ちているというような
非常にポジティブな捉え方がなされ描かれています。
そして、宗介とポニョにとっては格好の冒険舞台ということになります。
この水が溢れた世界をポジティブに捉えるというのが従来の常識を打ち破る
宮崎駿監督の挑戦精神なのです。
これを不謹慎だと言い切ってしまうのはあまりに安易です。
絶対的なマイナスのレッテルを貼られている題材に対して違う捉え方をするというのは
新しい世界を切り開こうとする創作活動では必要になってくることがあるわけです。
それが不謹慎かどうかの判断は表面上だけを掬うのでなく、
製作者の意図を汲み取ることが求められるのではないでしょうか。


「トンネルの向こう側の世界」

本作で最も分かりにくいのがこの終盤のシーンだと思います。
クラゲドームに覆われた世界はグランマンマーレの世界です。
これはドキュメンタリーで宮崎駿監督も言及しています。
グランマンマーレの強い魔力が及んでいる世界なので
ポニョの魔力は急速に減退し、眠くなってしまうというわけです。
そしてひまわりの家の老人たちは車椅子を捨て元気に走り回っています。
まさに摩訶不思議な世界ですね。
本作には、このクラゲドームに覆われた世界=死後の世界という有名な説が存在します。
確かにトンネルの入り口のお地蔵様など
そういったことを臭わすような描写や演出は至るところで散見されるのですが、
それはこれからポニョが人間として生きていくこと、
すなわち「生」との対比であり、「生」を強調する為の装置だと私は捉えています。

宮崎駿監督曰く
「二人だけで完結するのではなく、周りの人たちが二人を応援する形で大団円を迎える。
5歳の子どもたちが自分たちだけで解決する必要はない。
大人がちゃんと賢くなきゃ駄目だ」

水が溢れてしまった世界というのは、もはやバランスを保てなくなった現代社会、
いや、もっと広義の意味で現在我々が生きている世界と捉えた場合、
破滅の世界に取り残されたアダムとイヴでは駄目なんです。
本作のモチーフは「誰も不幸にならない人魚姫」ということですが、
ポニョが人間になってめでたしめでたしというだけでは駄目なんです。
大人たちに見守られ、
大人たちが二人を応援する形での大団円こそが真のハッピーエンドなのだという
宮崎駿監督の強い想いを感じました。
これからの世界(未来)を宗介とポニョ(子供たち)に託したということなのかもしれません。


さて、長々と語ってきましたが最後に。
引退作となる次作「風立ちぬ」が宮崎駿監督「自身」の集大成だとしたら、
本作はこれまで連綿と続いてきた宮崎駿監督「ジブリ作品」の集大成だと私は思いました。
あの大団円がそれを物語っています。

本作が賛否両論なのも知っています。
「宮崎駿監督は衰えた」なんて言われていることもです。
作業量という点ではそうなのかもしれませんが、
この人の脳の中にあるビジュアルイメージ、発想力、
あらゆることに興味を示す好奇心、観察眼、
1人だけでもアニメ制作をできるのではないかいう技術力、
これまでの経験や知識など、どれをとっても今でも規格外だと思います。
はっきり言ってしまうと、「スタジオジブリ」は宮崎駿監督がいなければ
成り立たないのではと思ってしまいますね。
実際に宮崎駿監督引退後に映画制作部門を解体というニュースが報じられましたが、
それも当然の流れなのかもしれません。
ただ、宮崎駿監督は長編映画からは引退されていますが、ジブリ美術館用に
短編「毛虫のボロ」を3DCGで製作中とのことです。
これは非常に明るいニュースだと思います。
齢70を超え、今なお新しいことに取り組む飽くなき探究心と挑戦精神こそが
宮崎駿監督の何よりも優れている才能なのかもしれませんね。{/netabare}

投稿 : 2024/11/09
♥ : 46

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「ポニョ、宗介好き!ポニョ、人間になる!」

2008年公開のスタジオジブリ作品。

当時も観た覚えがあるんだけど、「ふーん。」程度だった印象。笑

テレビで放送されたものが録画されていたので、
改めて観てみました。

当時の印象もあってあまり期待していませんでしたが、
なかなか楽しめましたよ^^

特に作画!

子どもっぽい作画だけど、こういう作画大好きだなあと
海辺の世界にすっかり見入っていました。


● ストーリー
5歳の宗介(そうすけ)は海辺で金魚のような生き物を助ける。

不思議な金魚に“ポニョ”と名付け、大切にするも、
フジモトという男にポニョを奪われてしまう。

捕まったポニョはフジモトの魔法の力を盗み、
人間になって宗介のもとを目指す。


ストーリーはざっくり言うと、

 ポニョと宗介の出会い
     ↓
 「ポニョ、人間になる~。」

という感じです(笑)

次から次へといろいろな展開が待っていて、
息つく暇もなくラストまで駆け抜けていきました。

出会いと絆、そしてファンタジーな世界という、
ジブリらしいストーリーだと思いました。


● キャラクター
ポニョはお腹がぽにょぽにょしていてかわいいし、

宗介はとても5歳とは思えない冷静さと賢さがあって、
でも子どもらしい一面も忘れず描かれていて、

どちらも好きです^^

宗介の、子どもだからこその純粋無垢な行動には、
胸を打たれた場面が数多くありました。


リサ(宗介の母)も、しっかり者で芯の強い人だけど、
自分の感情に嘘をつかない子どもっぽいところがあったりと、
とても魅力的な母親です。

この作品は、ポニョと宗介とリサ、そして老人ホームのおばあちゃん達で
構成されていると言ってもいいでしょうw


● 作画
ストーリーが子どもでも楽しめる仕様なのと、
主人公が5歳の少年少女というところから、

全体的に作画は絵本を観ているような、
幻想的で幼い夢世界のようです。

しかしこれが海の世界の神秘的な美しさを十二分に表現していて。

色鉛筆タッチで描かれている背景の美しいこと…!!

部屋に飾りたい絵だな~と思いながら見入っていました(*´ω`*)


水による屈折した描写やポニョの姿が人間と魚で揺れている時などは、

パッと見は稚拙な絵なんだけれども、
どこか上品さや技術も感じます。

上手に幼稚な絵を描くと言うか…
すごい技術だな、と感嘆せずにはいられませんでした。


そして人物も。

なんと言っても、表情が細かい!

私が特に印象に残ったのは、ポニョが初めてしゃべるシーン。

宗介は驚きと喜びから、くるくると表情が動きます。

台詞の少ないこのシーンですが、宗介の表情からすべてが伝わってきて、
宗介の喜びに「よかったねえ(´;ω;`)」と感動で胸がいっぱいでした。


● 音楽
物語の冒頭から、BGMは作品を盛り上げてくれます。

ジブリ音楽は安心して聴くことができますね^^


【 主題歌「崖の上のポニョ」/藤岡藤巻と大橋のぞみ 】

「ポーニョ ポニョ ポニョ さかなの子♪」
で一世を風靡したこの曲(笑)

音楽の親しみやすさから、大人から子どもまで大人気でしたね。

難しい曲じゃないので、いろんな楽器で簡単に演奏できるのも
流行したポイントかもしれませんね。

私もいろんな楽器で演奏して遊んでいたのを覚えています(笑)



【 主題歌「海のおかあさん」/林正子 】

上記の主題歌人気に隠れていますが、
こちらも主題歌としてクレジットされています。

子守り歌のような優しい曲が、
心を癒してくれますねえ…。

初めて聴いたときは外国語の歌だと思ってましたが、
よく聴くと日本語の歌詞です。


● まとめ
「子ども向け」という印象が強い本作品ですが、
大人だからこそ感じ取れるものも多いと思います。

そういう意味では、家族で観るのにぴったりの作品かも^^

「ポニョは死後の世界だ。」というトトロに似た話も耳にしますが、
夢ある世界のお話だと私は信じています!


あまりにも背景に魅了されたため、
本屋で画集を見つけたら即購入してしまう自信があります…。笑

投稿 : 2024/11/09
♥ : 26

ゅず さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

かわいい?

私にとっては半分人間半分魚の時のポニョが気持ち悪すぎて;
すごく映像が綺麗な作品だったね。流石時間かけただけはある

子どもにも人気だしジブリらしい作品だと思う
けれどファンタジー要素が強いね
それがいいし
それがよくないかもしれないけれど
微妙なスパイスのような細かいさじ加減でバランスをとってジブリはできているんだな

投稿 : 2024/11/09
♥ : 24
ページの先頭へ