ワドルディ隊員 さんの感想・評価
4.0
情熱と狂気
このストップモーションアニメ映画は、堀貴秀氏が
ほぼ一人で作り上げた大作である。
数年前に30分バージョンのものを見て、衝撃を受けた記憶が
あったので気長に楽しみにしていた。
だが、それから100分以上になった今作が今年に公開されるのは
きちんと把握していなかった。そもそもこれを知ったのは
某動画サイトでこの作品が紹介されたのが理由だ。
(まあ、マスメディアが取り上げるようには思えないにしろ)
もう少し堀氏の動向を機にかけてよかったのでは
と自ら省みた次第。改めて某動画サイトに感謝。
見終わった感想だが、ほとんど一人かつ独学で作った
ものとは思えないほど濃厚な作品であった。
ジャンルとしてはいわゆるダークファンタジーものであるが、
「パンズラビリンス」や「パシフィックリム」でおなじみの
映画監督、ギレルモ・デル・デルトロが絶賛するのもうなずける出来だ。
(まあ、これはデルトロ本人がこういった作風の作品を
好むというのもあるが)
なんだかんだいって、いつの間にか自分もパンフレットを
購入していたのでこの作品のとりこになっていたのは間違いない。
王道ではあるが、個人的にはかなり見応えのあるストーリー構成。
観る前はゴッテゴテのファンタジーアドベンチャーもの
ではと思っていたが、日常要素も程よく加えられており、
うまいこと工夫されているのが分かる。
中だるみする場面もそこまでなく最後まで見ることができた。
主人公がガラクタでできた体という設定も
うまく生かしているように感じた。
愛らしくも魅力的なキャラクター達。
主人公を含む主要メンバーそれぞれに明確な役割が
与えられており、このキャラは不要だと感じたことは
ほとんどなかったように思う。
個人的には地獄の3鬼神こと3バカが一番のお気に入りだ。
当初はただのかませ犬では言う印象がぬぐえなかった
のだが、後半における大活躍で感銘を受けてしまった。
こういった人物になりたいものだと常々思う。
ギャグにおいても自分好みの部分に入る。いくつかあるのだが、
お気に入りキャラである3バカのやりとりや、トロちゃんの
愛称で呼ばれる野生動物が持っている特定の部位が
唐突にクローズアップされるシーンが印象的。
終盤において3バカの名前が明らかになるのだが、独自の
言葉ではなく日本人でも違和感なく聞こえるほど
そのままの通りの名で呼ばれるのも面白かった。
監督について調べていたところ、今までの職業経験の積み重ね
や監督自身の好きな映画による体験がよく反映されているのがわかる。
改めて思い返しても、相当こだわりを感じられる。内部まで
作られた背景セットや徹底されたカメラワーク、事細かな
キャラクターの動きが視聴者の目を釘付けにする。
監督自身の好きな映画についてだが、主に挙げられていた映画は3つ。
不思議惑星キン・ザ・ザ、エイリアン、ヘルレイザーがそれにあたる。
主人公たちが交わす独自の言語でのやりとり、クリチャーによる
舌なめずり、目玉を持たない地下に住む住民たち等々。
元ネタがわからないとピンとこないが、ある程度映画に
精通している人なら
ニヤッとするはず。
ちなみに、彼がこの作品を作ろうと思ったきっかけは、
(君の名は。でおなじみの)
「新海さんが一人で作ったと耳にしたから」だそうだ。
私自身は新海作品と非常に相性が悪く、いい思い出がないので
不安だという印象しかないが、堀さんに動機を起こさせたので
あれば話は変わってくる。
(新海氏の映画をほめているわけではない)
今までは前述のようなイメージだけだが、少なからず
堀さんに影響を及ぼした人物としては高く評価している。
こればかりは新海監督に感謝せねばならない。ありがとう新海監督。
(個人的な意見ではあるが)映画をそれなりに見ている方を
対象としているような気がするが、ファンタジーものが
好きなら一見の価値ありだと私は考えている。
まあ、グロ描写がそこそこある故に人を選ぶ作品で
あることに変わりはないが。
個人的には間違いなく良作だと思う。