2020年度のやなぎなぎおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2020年度のやなぎなぎ成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月09日の時点で一番の2020年度のやなぎなぎおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

74.6 1 2020年度のやなぎなぎアニメランキング1位
神様になった日(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.4 (750)
2212人が棚に入れました
高校最後の夏休み、大学受験を控えた日々を送る成神 陽太の目の前に、ある日突然「全知の神」を自称する少女・ひなが現れる。「30日後にこの世界は終わる」そう告げるひなに困惑する陽太だったが、神のような予知能力を目の当たりにし、その力が本物だと確信する。超常的な力とは裏腹に天真爛漫であどけないひなは、なぜか陽太の家に居候することが決まり、2人は共同生活を送ることになる。「世界の終わり」に向けて、騒がしいひと夏が始まる。

声優・キャラクター
佐倉綾音、花江夏樹、石川由依、木村良平、桑原由気
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

ひと夏をともに過ごした現代の神様

アニメーション制作:P.A.WORKS
監督:浅井義之、原作・脚本:麻枝准、
キャラクター原案:Na-Ga、
キャラクターデザイン・総作画監督:仁井学、
音楽:MANYO・麻枝准、

麻枝准というゲーム&アニメ脚本家、作曲家について、
私はあまり詳しくないが、世間的な認識では、
「泣かせる」物語で話題になった人物。
ピアノをメインにした作曲も手掛け、
アニメ業界では、いわゆる「天才」と言われるひとりだろうか。
オリジナルアニメ作品としては、『Angel Beats!』、
『Charlotte』に続く3作目として発表され、
ファンからの期待が大きかった。

物語全体の構造としては『Angel Beats!』に近い。
前半部分は、主人公・成神陽太が謎の少女・佐藤ひなや
多くの仲間とともに奇想天外な日常生活を送り、
後半になると謎が明かされ、悲劇のストーリーが展開されていく。

いわゆる「泣きゲー」と呼ばれるゲームのジャンルを
作り出した作者だけに、設定や展開で見せていく
自分の形は持っていると思う。
しかし、今作は前2作と比較しても物語が動くのが遅すぎるし、
さまざまな要素を組み入れているにも関わらず、
それが最終的には、ほとんど本流には関係ないのが
致命的な失敗といえるだろう。
{netabare}ハッカーも量子コンピューターも神様も映画制作も
「難病」のひと言で片付けられてしまう。{/netabare}
ある意味では、『アルジャーノンに花束を』の亜流とも
いえるお話だが、それとは比べものにならないし、
伊座並杏子の母の物語は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の
手紙の物語をアレンジしただけにしか見えない。
要するに「泣き」の要素に既視感が漂い過ぎて、
感動するに至らないのに加え、物語の展開に
あまりにも無理がある。
{netabare}特に最終回の、ひなが陽太と暮らすことになる流れは、
全く納得することができなかった。{/netabare}

いわゆるゲーム原作の作者なので、
深いところを描くことを期待しているわけではないが、
{netabare}「量子コンピューター」で全てを説明した気になったり、
架空とはいえ、ロゴス症候群という難病に対する描写が浅すぎたり、{/netabare}
キャラの心情描写が不足していたりという部分は引っ掛かる。

この作品は放映前から「原点回帰」という言葉が
キーワードとして使われていたが、要するにそれは、
ギャグを含めた日常回を執拗に描くことで、
ラストにより大きな感動を得られるという
これまでの麻枝准作品の根幹に
よりスポットを当てたという
発言だったのではないかと想像している。
そういう意味では、意図している作品づくりには
なっているのだろうが、前2作に比べると、
最初から陽太とひなに強くフォーカスしている分、
ほかのキャラの存在感が薄すぎて、
モブキャラ化しているのが良くなかった。
ただ、P.A WORKSの作画や麻枝准の音楽は、
アニメ全体の雰囲気を高める効果は十分にあった。

ひと夏の青春。
日常の尊さ。
誰かを大切に想うがゆえの哀しみと喜び。

作者が目指したものは手のうちにあったのだろうが、
指の間から零れ落ちてしまった。
(2020年12月31日初投稿)

投稿 : 2024/06/08
♥ : 65
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

君には期待してない

ある夏の日。突然「30日後に世界は終わる」と告げる一人の少女が現れてのすったもんだ。
こういったへんてこなツカミは大歓迎。多少アニメを観てる層にはおなじみの『KEY×P.A.WORKS』のゴールデンコンビ。独特なクセの強さにハマるとこのコンビが翼くんと岬くんに見えてくるわりと業界でも成功しているカップリングでございます。
当然のように2020年秋期を牽引することを期待されてた作品だったといえましょう。


さっそくの結論。感想は“つまらない”であり、端的にその理由を述べると主人公がダメ。
その前提で以下長々と失礼します。


keyはわりとプロトコルがきっちりしていて前半のドタバタとおおむね3分の2終わったあたり(8話近辺)での超展開。救いなさげなネタを投じてからのやや前向きな内容で終幕。音楽は独自性ありで映像は綺麗。演出面で秀でてるなと感じるところ。
今回も手順は同様でした。悪い意味ではなく、笑点をマンネリだと眉を上げないのと一緒です。

そのため過去の自身の立ち位置が参考になります。これまでの評価は以下

 クラナド3.9
 アフター4.6
 kanon 3.9
 Air 4.2
 AB 4・0
 シャーロット3.9

面白い/普通の分水嶺を4.0に置いており多くがボーダーライン上なのです。アフターストーリーが突出してプラス。見方を変えればムラがないともいえる実績。
完走し良いほうに転ぶと前半のドタバタ劇は「あの時は平和だったよね」となり、パッケージ全体で落ち着くところに落ち着くのですが今回はそうはいきませんでした。
高い要求レベルを求めるとそもそもクールで一つはある4.3点以上の評価に届かないKey作品群。

 共通する弱みはなにか?

尺不足だと考えます。閉じてない群像スタイルの合う作風でキャラの増加は妥当。超展開を支える骨子の説明に時間を割くのも妥当。
そうするとどうしてもキャラの深掘りはできず説明不足に陥ります。ただしこれは構成上やむを得ない二律背反。超展開止めたらそれこそブーイングの嵐でしょう。工夫は見てとれ、尺を使うキャラの“心情掘り下げ”よりも、キャラの持つ“クセの強さ”でのインパクト狙いにやや軸足置いてますよね。

充分すぎる尺をとった『CLANNAD』や1クールなら登場人物を絞り気味だった『AIR』の評価が高いためより一層そう思ってるところがある私です。


 キャラの心情描写に期待してない
 1クールでそこそこまとめてくるだろう


そんな高すぎない私の期待値すら下回ったのは、ひとえに主人公陽太くんのキャラクター性に負うところが大きい。これは好みではないかと。
私が嫌いなタイプ

 {netabare}やる気のある無能{/netabare}

そのまんまでした。花江さんこういうのやらせるとほんとに上手ですよね。さらにさらに、好き嫌いはしょうがなくても作品評価に直結してしまったのには別の理由があります。

それは大黒柱の性格。好き嫌いじゃないですよ。これまではいくらメイン/サブ問わず歴代ヒロインがぶっ飛んでいても、♂は堅実に狂言回しするタイプを配置してたんだと思います。

【歴代♂】
 岡崎朋也(CV中村悠一)
 国崎往人(CV緑川光)
 相沢祐一(CV杉田智和)
 音無結弦(CV神谷浩史)
 乙坂有宇(CV内山昂輝)

下衆いの一人{netabare}(乙坂くん){/netabare}混ざってますがそんな彼すら当時それほど気にならなかったのは、みんな一歩退いてたり、やや皮肉屋だったりどこか冷めてるところが共通していて既視感があったから。
それが本作では前に出てくるタイプへと変貌を遂げて、バランス崩壊の決定打となりました。

いくら「そう来るか!」のびっくり要素がきても
終盤の泣き要素をかぶせてきても


※ネタバレ
{netabare}ひと夏の恋で廃人の人生を背負うと決意し行動するのが意味不明。{/netabare}
{netabare}ひな父のスタンスが至極真っ当できちんとそういった人も描けているのにどうしちゃったんだろう?{/netabare}


茶番劇にしか見えなかった此度のKEY×P.A.WORKSでした。
プロトコル変にいじっちゃって途端につまらなくなっちゃった例になるのかしら。
おそらく大喜利の特番なんかで座布団運びを山田たかおじゃないアイドルにやらせちゃったことで感じる「コレジャナイ」感に近しいもの。
なんだかんだいつもながらの壮大なマンネリを強く期待してたのは私だったのかもしれません。



※ネタバレ所感

■強く擁護する

腹を抱えて笑いました。牛乳飲んでる途中でなくてほんとよかった。

{netabare}第4話麻雀回。
「二色同順」「ドラ隣」「途中まで通貫」「喰い七対子」で腰を抜かす。
アガられるか?のピンチでスキップとリバース。UNOかよ!
やってることは無茶苦茶でルールを無視したゲームは成り立たないのは承知の上で、「二色同順ドラ隣ドラ隣(2300点)」でドヤられたのが心地よかった第4話でした。{/netabare}


■絆(余談)

10年前に感じた嫌悪感。覚悟無き善意の押しつけと言ったら妥当だろうか。

{netabare}奪還するために施設に乗り込むのは構わないんですけど、普通なら施設で療養を続けるべき事案です。
そんなのを超越する情が芽生えるにはひと夏の恋で説明するには強引と思うのは既述のとおり。
後日譚が描かれることはありませんしできません。単独での介護は不可能で必ず家族を巻き込む未来が見えてます。仕事の選択も限られるし仕事中誰が面倒みるの?とかそもそも高校生は養うための収入がありません。子犬を拾ってきてもおかんに「誰が世話するの?」となるわけだし、おかんに怒られるかもと拾う時に迷うものですが、そんなの描いてたら成立しない物語となってます。

リアリティはないし、ファンタジー路線ですら寓話にもならないんですよね。
キャラクターの弱みがもろに出てました。繰り返しますが“やる気のある無能”なんです。10歳満たない子供が同情心から衝動的に捨て犬を拾うことはあるかもしらんし、「毎日僕(私)が散歩に連れてく!」くらいの言い訳は用意するだろうに、それすら微塵も感じさせない高校生というのが自分には致命的でした。しかも犬ではなく人間だもの。

これは覚悟無き善意の押しつけです。
覚悟の定義にもよりますが、気合だけで思慮のない浅い行動をとることを覚悟とは言いませんよね。考えた形跡がなくヒロイックな気分に浸って酔ってるようにしか見えませんでした。{/netabare}


さらに10年前ということで刃をあなたにも突きつける。


{netabare}「絆」「私たちにできること」という機運が生じた10年前。
震災がれきの受け入れを拒否した人少なくなかったですよね。測定して数値がほぼゼロだったと言おうががれき撤去が進まず復興が進まないと言おうが、測定値が信じられないとか漠たる不安とかやらない理由をあげつらった善意の市民。
当時の東京都知事石原慎太郎が四の五の言わず「受け入れる」と決定したのに反感をもった方々もまあ同じ穴のナントカでしょう。文句言うだけの楽な商売です。某体操選手が言ったように「どうやったらできるかを考えてほしい」の数段前にいながらこういうのに限って似非ヒューマニズムをまき散らす。非を認めず他に責を求める。ついでに感謝の意を示さないと怒る。なんで被災した身ながらお前らの感動ポルノに配慮しなきゃいかんのよと思いましたね。
いまさら掘り返して怒る気もないし、日本全国動揺しまくってた時期だとの情状酌量もあるので「当時私はそう強く思ってた」というそれ以上でも以下でもないです。{/netabare}


同情が欲しいわけではなく関心寄せるなら適切な行動を取ってくれという事案。
身近なものなのに身近なものとして捉えることを拒否したアニメ作品と身近なものになった途端逃走した現実の出来事。
災難だったり不幸を目の前にして当事者意識がないのは一緒なのですよ。


プロトコルの変更(主人公♂)で生じたメッセージ(善意の押しつけ)への非共感で沈んだ一品です。



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

------


2021.01.31 初稿
2021.09.28 修正

投稿 : 2024/06/08
♥ : 57
ネタバレ

えりりん908 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.5

ギャグアニメでスタートして、、、最後は、、、

どこでスイッチ入れてくれるのか?

麻枝さんの作品だけに、
すごいどんでん返しと、
壮大なカタルシス展開、
すごく期待しています。

1回目だけでも、
ギャグの切れ感がよくて
楽しかったけど、
麻枝さんなのですから、
このままのはずはあり得ないと思うから、
2回目以降が待ち遠しくて。

神様だけに、
神話になるのか
神アニメになるのか?!


ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナ

今、ちょうど第9話、観終えたところです。{netabare}
おおげさに「世界の終わりまで〇〇日」とクレジットしてた意味は、
想像していたとおり、「この世界が」ってことではなく、
「ヒナの人生が終わる」ということで、特に驚きはなかったですね。
ヒナと世界の結びつくポイントも、ハッカー少年の出現で予測できてたし。

前作シャーロットでも、麻枝さんは前半遊びまくっていたけど、
6話からシリアスに舵を切ってたのに比べると、
今作での大展開は、ちょっと遅すぎですね!
シャーロットのとき、無駄に見えた5話までのフラグを回収したように、
今作でもちゃんと、ラーメンとか麻雀とかピアノ曲とか映画とかのフリを、
何とかできるんでしょうか?{/netabare}

「泣かせ」の準備は整ったみたいだけど、
残りの回数が少なすぎて、お話がきっちりまとまるのか、
少し、すごく、心配です・・・


ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナ

最終回、観終えました。
{netabare}
結局は、「泣かせ泣かせ」とさんざん宣伝しておいて、
陳腐なお話で、ガッカリです。
今期は出だしの評価と最終評価が、私の中で、
乱高下した作品が多かったんですけど、
これは、残念ながら急降下の代表作品になってしまいました。
よかったのは、P.A.ワークスさんの丁寧な作画と、
声優さんの演技ぐらいでした。
あと、ギャグ、かな?
評判よくないみたいでしたけど、前半延々と続くベタなギャグ、
私は結構好きでした。ですので、麻枝さんは今後は、吉本新喜劇みたいなべったベタなギャグアニメやったらいいんじゃないかって思います。

ダメだなって思ったところは、
まず第一に、「神様」とか、何か訳ありそうな巨大組織の影をチラつかせるとか、大風呂敷広げておいて、ただの難病モノのホームドラマだったこと。
ロゴス症候群とか大げさな架空の難病を設定してるけど、見る限り筋ジストロフィーみたいな描写がちょっとと、自閉症か知的障害みたいな描写だけ。
これで、実の父親が耐え切れずにヒナを捨てたとか、生みの母親が苦悩に苛まれて自殺したとか、設定が狂っているとしか思えません。
それに、死に至る不治の病と言っておいて、専用の療養施設の担当者が「あの子は居場所を見つけたのよ」って言って陽太にヒナを託すなんて、ばかばかしくて話になりません。
第二に、SF的設定をちょっと使っているけど、中身は凄腕のハッカー少年が謎のまま出て来て、謎のままいなくなってしまっただけっていうこと。
実際にそんな組織絡みの犯行なら、ヒナだけでなく、ヒナに関わった人はすべて抹殺するとかして証拠隠滅しておかないと、作中に出てきた「量子コンピューター」のことだって、状況証拠付きでおおやけになってしまいますよね?そこまでじゃないにしても、閉鎖療養施設に不法侵入してヒナに接触してきた陽太を、なぜ見逃すのか理解できません。事件の背景を知らないのなら、2週間の接触で陽太に心を開いたとしても、専従の看護職員はそんな得体の知れない人物にヒナを渡しちゃいけない責任を重視するべきだし、事件の背景を知っているのなら、陽太の不法侵入を解明できた瞬間に、何らかの口実作って、生かして返さないですよね。そうするのが、謎組織につながる施設のスタッフとして当然で、そう覚悟を決めておかなきゃいけないし、そう行動しなきゃいけないはずです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真面目に作るなら、
SF的なエピソードや小道具やは一切無しで、
重い病をおしても、なお成し遂げたい何事かを、少女が成そうとする。
そんなストレートな話にしておくのでなければ、
共感も感動も、もちろん泣いたりも出来ないですし、そもそも物語として意味ないです。

実際、最終回のあまりにも滑稽な展開には、開いた口が塞がらないって感じでした。

評価は、最初は星4.5だったのが、最終的には作画と声優さんの努力を、最大限に評価するとしても、落胆分も含めると、星1.5が精一杯という感じです。
{/netabare}
麻雀シーンとか野球とかのエピソードは、
麻枝作品の常套句みたいなものらしいので、
そこを気にしちゃいけないというのは、
あとから知って、
軽くズッコケてしまいました。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 51

86.7 2 2020年度のやなぎなぎアニメランキング2位
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(TVアニメ動画)

2020年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (729)
3257人が棚に入れました
過去のトラウマと、独自のひねくれた思考回路によって「ぼっち生活」を謳歌しているように見える比企谷八幡は、ひょんなことから生活指導担当教師、平塚 静に連れられ「奉仕部」に入部する。同じ部に所属する息を呑むほどの完璧美少女・雪ノ下雪乃や、クラスの上位カーストに属するギャル・由比ヶ浜結衣とともに、クラスメイトの人間関係の問題の解決から生徒会の手伝いに至るまで、数々の案件をこなす毎日をすごしていた。季節は移ろい、春。雪乃から最後の依頼を受けた八幡と結衣。3月の卒業式を控えた中、いろはからブロムの協力を求められ…。― 本物を求めた八幡は3人の関係を変えていく。果たしてこの先、彼の高校生活はどんな結末を迎えるのか!?

声優・キャラクター
江口拓也、早見沙織、東山奈央、佐倉綾音、悠木碧、小松未可子、近藤隆、檜山修之、柚木涼香、中原麻衣、井上麻里奈、ささきのぞみ、小清水亜美、堀井茶渡
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

正三角形の三角関係

原作未読


うむ終わった。3期相当『俺ガイル・完』は全12話。1期からの続きもんで足掛け計38話で完結です。
ラノベはやたら長いタイトルが跋扈していて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』例外なく長いやつです。たいていはツカミだけのタイトルで中身は別物ですが、本作は看板に偽りなし。

2期で 「お~青春ラブコメだね~」
3期で 「う~んまちがっているね~」

となることはお約束できますのでうっかり1期2期未視聴の方はぜひ振出しに戻ってここまで楽しみながら歩いてきてくださいね。
ラブコメが大きく動き出した2期最終話を受けての3期はこれまでの群像劇っぽいところからより主人公ら個々人の関係性にフォーカスされます。もう奉仕部+αで三角関係しかやらない勢いですね。
人となりは2期までで明らかになりました。ざっと、理性と感情の化け物が揃っていて理性カテゴリに八幡と雪乃。感情カテゴリに結衣となります。理性の化け物二人の緩衝材としてガハマさんは機能しており、彼女がいなければ早晩奉仕部は崩壊していたことでしょう。では似たもの同士八幡と雪乃の決定的な違いは自意識の有無。面白いのは結衣で1期の頃から成長して自分というのを持てるようになった。自意識それあるーカテゴリでは2期終わる頃には八幡と結衣が入ることになります。
ちなみにこの組み分けは陽乃の「理性の化け物」あらため「自意識の化け物」だね、と八幡を評したことに由来します。

    理性   感情   自意識   {netabare}気持ちを言葉にすること{/netabare}
八幡   ◎    ×     ◎    {netabare}  下手{/netabare}
雪乃   ◎    ×     ×    {netabare}  下手{/netabare}
結衣   ×    ◎    △→○   {netabare}  下手{/netabare}

中庸の△や○が無いといいますか、スキルチャートを作れば歪な五角形ができそうな三人組とみてよさそうです。だからこその面白さが本作の持ち味です。
登場人物もめんどくさいですけど抽象的な会話劇は同じかそれ以上にめんどくさい。自分は物語を紐解くのに登場人物相関図を頭に描きながら楽しむクセがあるんですがこの物語ではこんな感じ。合ってるかどうかはわからんです。違ってたらごめんなさい。

もう一つ。言ってることがわけわかんない時は言ってることよりもやってることを重視してます。言動より行動ってやつ。見当違いも多いですけどね。
{netabare}※漫画喫茶!?では隣同士肩にもたれかかる距離感だったのが、後日公園のブランコでは距離を取って座ってる…みたいなそういうとこ。{/netabare}

さらにもう一つ。概念として面白かった“本物を知りたい”について。
互いを出し切っても崩れることのない関係性みたいなものでした。
自己の欲求を追求すると壊れてしまう関係。これすなわち偽りの関係。
自分を偽って維持できる関係。これもすなわち偽りの関係。
大人であればあるほど、『本物』は遥か遠く手の届かないものであることを痛感させられます。若者も直感的には気づいてる。それでも求めてやまない、やはりこの年代ならではの心情の吐露なんです。

こちらを希求して止まないのが主人公比企谷八幡でした。どうやら折り合いをつけそれっぽいものを手に入れそうなところまで来ています。
同じく希求して止まない(…のだと思う)のがおそらく雪ノ下姉の陽乃。なんとなくこじらせたまんま大学生になっちゃった感ありでこれまで同様にちょっかいを出してきます。


まーあくまで一解釈ではありますが軽くおさらいでもしてから楽しんじゃいましょうという作品。
終わってみて思ったのが八幡、雪乃、結衣の関係って各自二方向に等分のきれいな好意の矢印が出ている正三角形のかたちをした三角関係だというのに気づきました。だいたい矢印は片方だったり短かったりするものを三角関係だと思ってきた人生だったのでこういう関係もあるんだなあと思った次第です。

もしかすると『本物』の関係ってこういうことなのかもしれない。
そんな錯覚を覚える青春ラブコメの秀作です。
別の作品でめんどくさい女性は魅力的だが男性の場合はただただめんどくさいみたいなこと書いて今の今も基本的な考え方は変わりませんが、男女ともにめんどくさくても面白いと思わせてくれた作品でもありました。


なお作中頻繁に出てきた3期のキーワード{netabare}“共依存”{/netabare}は結果的に無視しとります。

{netabare}「うがった見方をすればそう受け取ることもできなくはないくらいの話だ」
「君も雪ノ下も由比ヶ浜もそんな関係性ではないよ。共依存なんて簡単な言葉で括るなよ。君の気持ちは言葉一つで済むようなものか?」

絶好のタイミングでその時に1番欲しい言葉をピンポイントで投下する平塚先生についていけばよし。{/netabare}




※軽めの余談

■平塚センセから浮気しそうになりました

いろはすを凌駕するほどあざとかったのが作り手さんだった気がします。

あざとい?:{netabare}ガハマさんに肩入れしてしまう仕様{/netabare}
CASE1:{netabare}表情の作画カロリー消費っぷりは登場キャラ屈指{/netabare}
CASE2:{netabare}モノローグの度に締めつけられましたよ{/netabare}
CASE3:{netabare}ヒッキーとのデートする時間長かったよね{/netabare}
CASE4:{netabare}CMでまで白無垢着させた上に「わたし今が一番幸せだよ」とか言わせちゃダメ{/netabare}


■めんどくさかったです(褒め言葉)

1.{netabare}1期:「どうせ何を言っても伝わらないし関わらない」と卑屈さが全開
 2期:何を言っても壊れないor何も言わなくても通じ合う関係こそ本物だと信じる
 3期:ごちゃごちゃ言ってないで“伝える”“関わる”努力をする

 こんな若者の成長をこねくり回しながら描いたシリーズといえましょう。{/netabare}

2.{netabare}いろはすの「○○です。ごめんなさい」が段々YES寄りに。周囲の人たちも充分めんどくさい。{/netabare}

3.{netabare}結局「スキ」と言ってたのは我らが平塚静先生だけだったぞ。あーめんどくさ。{/netabare}



視聴時期:2020年7月~9月 

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2020.10.01 初稿
2021.08.01 修正

投稿 : 2024/06/08
♥ : 65
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の残余

主要キャストの整理をしておこう。
冒頭から紹介もなくドラマパートである。

多様な価値観が生まれ広がり、
私たちは数多くの選択肢の前で躊躇している。
表現できないものから順々に、
私たちは自己の内に沈殿していく。
そんな葛藤が心に響くのであろう。
人との距離は接続でも切断でも、
間違ってしまえば瀕死の重傷であるのだから。

3話視聴追記。
良質な予感が既に漂っている。
キャラ造形が見事で配置も良い。
{netabare}今始めれば間に合うかも知れない。{/netabare}
きっと誰もが経験した青春の残余なのだ。

雪ノ下の葛藤を物語の軸に、
八幡の故意に間違える青春が描かれる。
{netabare}彼はそれを偽物だと呼ぶ。
大人たちは共依存から脱却し自立した生を願う。
自分であれ、青春であれ、
ここまで冷静に俯瞰できるのだろうか?
繊細な主題が浮かび上がってくる。
間違うことにどんな意義があるのかと。{/netabare}

最終話視聴追記。
もやもやと、燻り続ける青春は、
一定の方向へと道は開けたのであろうか。
{netabare}自分を偽り、思い悩み、悔やみ、
その先で心の隙間に残る貴重なもの。{/netabare}
やはり彼の青春ラブコメは間違えている。

あまりに秀逸なタイトルだと知るのです。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 62
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春ラブコメは終わらない

アニメーション制作:feel.
監督:及川啓、シリーズ構成:大知慶一郎
キャラクターデザイン:田中雄一
音楽:石濱翔、高橋邦幸、原作:渡航

ライトノベル部門で長年トップの
人気を誇っていた作品の完結編。
累計発行部数が1000万部を突破し、
このジャンルにおいては、抜きんでていた印象があるが、
一見地味な作風に映る。

近年、確実に増加の一途を辿っている
「ぼっち」という孤独な存在。
何十人もいるクラスにおいて、話すクラスメートもおらず、
休み時間になると机に突っ伏して寝ているか、
ひとりで本を読んだりしている。
たまに話しかけられると嬉しくなって、
過剰なテンションで対応してしまい、
笑いものにされてしまったり、その相手が女子だったりすると、
思春期の心情もあって、深い心の傷になってしまうこともある。
この作品では、そういう「ぼっち」にならざるを得なかった
存在にスポットを当て、捻くれたやり方で
クラスカーストに対抗するのが
いちばんの特徴になっている。
多くの若者にとって、どこか自分のことのように感じ、
その痛快劇に留飲を下げたのが
ヒットの要因のひとつだったのだろう。

作者の渡航は当初、1冊だけの読み切りで考えていたそうだが、
人気を得るにつれ、8年をかけた17巻にも及ぶ長編ラノベを
書き上げることになった。
原作は未読なので、アニメでの話になるが、
物語はテンプレ的な要素を排除し、
主人公の比企谷八幡が、自分の「ぼっち」である武器?を
駆使しつつ問題を解決していく。
それと並行するようにしてラブコメを展開させ、
視聴者をグイグイと引っ張っていく。

個人的には「ぼっち」の思考からいかにして
脱却するのかが、作品のテーマではないかと感じていたが、
それは、ほぼ「続」の部分で解決。
残ったのは、新たに浮上した雪乃の問題と
3人の関係性の決着となった。

そんななかで行われるのが3年生送別の際に
企画された「プロム」というイベント。
プロムナードの略称で、要するに海外の高校の
卒業時に行われることが多いダンスパーティーだ。
これを企画するにあたって、雪乃は親の敷いたレールの上を
ただ歩んできたこれまでの自分から脱却することを目指し、
八幡の力を借りずにイベントの成功を試みる。
その様子を見ながら、八幡は自分の気持ちに正直になり、
雪乃をどのようにして助ければ良いのかを画策するのだった。

自分だけの力で何かを成し遂げようと意固地になる雪乃、
雪乃の意志を尊重しながら、協力しようとする八幡。
そして、ふたりの関係性を注視しながらも
複雑な想いで八幡と行動する形をとる結衣。
3人がお互いの気持ちを慮りながら、
自分の気持ちに正直になろうとする。

学生時代の何事にも突き詰めてしまう感情が
全編にわたって、とても上手く表現されていた。
この作品を観ていて、【親友のために死ねるか】という
大命題?を真剣に考えていた友人のことを思い出した。
それは何と言うか「覚悟」みたいなもので、
「できない」という結論を下す自分自身について、
まだまだ「男」としてダメだと友人は考えていた。
私なんかは、それを聞いていて
今ひとつ理解できなかったのだが、当人は大真面目なのだ。
仁侠映画好きなやつだったので、そういう思考が
本人からすれば、当然のことだったのかもしれないが、
話を聞いていると自分の感覚とは
あまりにもかけ離れていたため困惑したことをよく覚えている。

でも、人と人というのは、そういうこともある。
当人でなければ、本当の悩みや考えを
完全に理解するのは不可能なのだ。
しかし、他人に対して考えるのを諦めるのではなく、
「分かろうとする」ことは、とても大切なことなのだろう。
結局のところ、私たちは「ぼっち」で生きていくことはできなくて、
自分の抱えている、他人には受け入れてもらえない部分も含め、
苦しくても関わっていかなければならない。
「分かろう」として「分かってもらう」ことから
逃げ続けてはいけないのだろう。

八幡と雪乃と結衣。そしていろはや葉山、陽乃など、
それぞれクセのある性格の者たちだらけ。
彼らが八幡を中心にそれぞれ大人になっていく。

2020年夏クールで最も期待していた作品だったが、
最後まで視聴した今回のシリーズの感想としては、
中途半端だった印象を拭えない。
{netabare}八幡と雪乃の関係の進展がクライマックスで、
そこ以外は現状維持というまとめ方だった。{/netabare}
作者や編集者が続編の余地を残したためだろうが、
終わらせるときは、きっちり締めて欲しかった。
主人公たちがまだ2年生というのも異例だ。

とはいえ、「ぼっち」の視点から人間関係に切り込んでいくのは、
とても新鮮に感じられたし、集団と個人という
普遍的なテーマを分かりやすく展開した点は、
シリーズを通して痛快だった。

彼らの青春ラブコメは今後も続くのだろう。
(2020年12月5日初投稿)

投稿 : 2024/06/08
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