ぽこやん さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
世界を壊し、世界を造る。全ての憎しみは自分の元へ・・・
まず、ここまでの練りこまれた世界観とストーリーは圧巻の一言。
第一期よりの続編となりますが、内容の濃さが違いすぎる・・・
一見はSFロボットアニメ、が、このアニメの本質はロボットの単純なバトルなどではありません。
「世界の為に、最強の敵を倒す」
そんな内容のアニメはいくらでもありますが、
「世界の為に悪を演じ、愛する人、仲間、友達に対して仮面を被り、世界を救う、そして造る」
この表現が正しいかどうかはわかりませんが、主人公・ルルーシュの信念、強さ、決意、行動・・・全てが心を打ちます。
息をつかせない展開と、素晴らしいストーリー構成が、いつまでも印象に残りますね。
ここまでの世界観の表現は、他の作品とは比になりません。
「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ」
主人公ルルーシュの全てを表現する言葉ですね。
「俺は世界を壊し、世界を、造る・・・」
それが実現された時、自分は涙が止まりませんでした。
それではレビューに移ります。
{netabare}先に書いたとおり、この作品は前作よりの続編になります。
前作の最終話が「?」な形で終わっていたので、始まった時点では、自分の中での評価は低かったのですが・・・
今作を見終わった時、前作の全ての布石がつながり、終わり方にも納得ができました。
主人公は・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、元神聖ブリタニア帝国第11皇子。
普通の学生として、妹とともに暮らす、頭の良い男子生徒といった設定。
なぜ一国の王子が学生として暮らしているのかは、前作参照ですね。
少し前作の話をしておくと、C.C(シーツー)という謎の少女と出会い、ギアスという異能の力を手に入れ、仮面の男「ゼロ」を名乗り祖国に反逆する。
ゼロの元にはいつしかブリタニア帝国に反逆する人々が集まり、黒の騎士団という反ブリタニア勢力が出来上がっていく、といった話。
正直前作の流れは、ありがちな話ではあるかなぁという印象。
ギアスという異能はこのアニメに必須なものではあるのですが、主人公ルルーシュ以外にも様々なギアスは存在します。
ルルーシュのギアスは「絶対尊守」。
どんな相手にでも、いかなる命令にも従わせることができる能力。
ただし、一度ギアスにかかった相手を、再度ギアスの力で従わせることはできない。
ギアスを使うには、直接相手の目をければならないなどの制約も存在します。
ギアスにかかった人間は、その前後の記憶がなくなる、これは最終話への布石になります。
ストーリー上、様々な起点や転機、見どころはありますが、やはり一番は最終話でしょう。
最終話「Re;」
前作の最終話は「ゼロ」だったので、もしかしたらそれに向けられたものなのかも知れません。
まずルルーシュが世界を変えようと思った当初の目的は、妹であるナナリーのためでした。
物語が進むにつれ目的は変わっていくのですが、やはりルルーシュの根本にはこの思いがあったのだと思います。
しかし今作では、守るべきはずのナナリーは、ルルーシュの敵となります。
ブリタニア帝国は世界を手に入れるため、「ダモクレス」という兵器を手にするのですが、このシステムを使うには「フレイヤの鍵」が必要になります。
ナナリーは最終的にフレイヤの鍵を手にし、自らの意志でそれを発動させます。
ここだけ聞いていると、ナナリーは悪人になったの?となりますが、そうではありません。
共に世界を変えたい、と思った二人の、辿り着いた結果が違っただけなのです。
最終話のルルーシュとナナリーの会話で、
「それは卑劣なのです。人の心をねじ曲げ、尊厳を踏みにじるギアスは」
「ではダモクレスはどうだ? 強制的に人を従わせる、卑劣なシステムではないのか?」
「……ダモクレスは、憎しみの象徴になります」
「……っ!」
「憎しみは、ここに集めるんです。みんなが明日を迎えるためにも」
ここでルルーシュは気付きます、ナナリーも同じなのだと。
そして全てを悟ったルルーシュは、
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! ダモクレスの鍵を渡せ!」
最愛の妹に、ギアスをかけます。
ナナリーの正義の在り方は少し疑問がありましたが、正義というよりは、やはり兄であるルルーシュを救いたかったのではないでしょうか。
最終話に至るまでに、ルルーシュはすでに世界の敵となっていますから。
ルルーシュも同じなのでしょう、同じ覚悟を持った妹に全てを背負わせるのならば、妹にギアスをかけ、自分が憎しみの象徴となる・・・
ギアスにかかった状態のナナリーにルルーシュがかけた言葉、言葉が伝わらない時だからこそ伝えた言葉。
「ナナリー、お前はもう立派に自分の考えで生きている。
だからこそ俺も、俺の道を進むことができる。
……ありがとう、愛してる、ナナリー」
これは印象的でしたね・・・。
そして我に返ったナナリーに背を向け、ダモクレスの鍵を手に、ルルーシュは妹から離れて行きます。
全てを背負った背中、ナナリーはルルーシュを罵りますが、兄に止まって欲しかったからこそ、なのだと思います。
そして最終局面。
ルルーシュの目的は「ゼロレクイエム」という言葉で表現されています。
「我が覇道を阻む者は最早存在しない。
そう、今日この日、この瞬間を以て、世界は我が手に落ちた!
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。
世界よ、我に従え!」
世界はルルーシュのものとなったのですね。
では、なんの為にルルーシュは世界を手に入れたのか?
そう、世界を壊し、世界を造る為です。
前作では敵であった、親友である枢木 スザク(くるるぎ スザク)と共に、ルルーシュが計画した方法。
仮面の男である「ゼロ」をスザクが演じ、憎しみの象徴となった自分を殺させる、それによって世界から憎しみの連鎖を断ち切る。
そして世界は軍事力ではない方法で、明日を迎えることができる、そう考えたのですね。
人々にギアスという呪いをかけた代償として、ルルーシュは世界のために自らの命を断つという選択をしたわけです。
そしてスザクの剣はルルーシュを貫き、仮面の中でスザクは涙を流します。
このあたりで二人の会話があるのですが、これは是非本作で見て頂きたいですね。
そして最後に。
ナナリーには人の手に触れると、その人物の記憶が流れ込む・・・という体質があります。
剣を引きぬかれたルルーシュは倒れ、ナナリーの元に滑り落ちます(ここあたりの描写は、本作でどうぞ)。
ナナリーはルルーシュの本心をまだ知りません、最愛の兄が死ぬ瞬間まで、それを知ることはなかったのです。
そっと呼びかけても答えない兄の手をそっと握ったナナリーに、一連の記憶が流れ込んで・・・
この辺りの描写は見事の一言、そして声優さんの演技も素晴らしい、ナナリーがルルーシュに対してかけた言葉、鳴き声、ここで涙が出ました。
練りこまれ構成されたラスト、そこに至るまでの脚本、前作よりの流れや人間関係、神アニメといわれる所以はここにあります。
{/netabare}
このアニメは100%完璧なのか?といわれれば、もちろん疑問が残ることもあります。
ですがそれを「まぁいいか」と捨てるのではなく、逆に考えてしまうのは、やはり脚本が本当に素晴らしいからこそ・・・ではないでしょうか。
すべてにおいて良い部分と悪い部分、それは当然に存在するもので、更には別々に判断するべきものであり、コードギアスの場合は、自分の中で評価するべき点のほうが多かった・・・というだけの話です。
相殺されたわけではなく、全体的な判断として「良作」だと感じました。
いやー長くなってしまいましたが、本当にいい脚本のアニメと出会いました。
是非ご覧になってみて下さい。
それではまた、どこかのレビューで!
あ、そうそう。
この作品、TV版とDVD版で、本当に細かな描写変更が多数あります、キャラの表情であったり、色々です。
全部探せたら凄いですねw