Witch さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
従来のスポ根モノよりは一歩引いた視点が面白さに繋がっている(心理描写が丁寧)
【レビューNo.139】(初回登録:2024/8/18)
コミック原作で2024年作品。全12話。
キャッチコピーは
「天才たちは出会ってしまった…!」
「気づいてしまった もう、逃げられない。」
などのようですね。
(ストーリー)
中学野球界で圧倒的な力を見せつけ、相手の心をへし折ってきた清峰葉流火・
要圭の天才バッテリーコンビ。
過去に対戦した山田太郎も野球を辞める決意をして、野球部のない小手指高校
に進学するが、そこで清峰と要に出会ってしまう。
・要が「記憶喪失」により野球素人になっていた
・清峰は”要と野球をすること”にしか興味がない
2人は強豪校の誘いを断り、同校に入学していたのだった。
同校ではちょうど野球同好会が発足したばかりで、清峰は再び要と野球を始め
るために山田を誘うのだった。
そして同校には同じように清峰と要に心をへし折られ、野球と決別した天才プ
レイヤーの藤堂葵と千早瞬平も入学しており・・・
出会ってしまった天才たちの時間が再び動き出す。
(評 価)
・終わってみればコメディは必要だった
本作はこの手のスポーツモノでは珍しい、ギャグをどんどんぶっ込んでくる
のコメディ色の強い作品になっています。
最初は宮野守さん演じる要のハイテンションなギャグについていけず、昔読
んだ漫画『泣くようぐいす』が頭をよぎりましたね(笑)
(同じようなギャグ&結構シリアスな野球描写だが打ち切りにw)
なので、最初は「こんなギャグいるんか?!」と。
でもキャラの関係性が構築されてくると、山田あたりがギャグやボケをしっ
かり拾ってくれるので(ギャグ自体は寒くでも)意外とコメディとして成立
してくるんでよね。
それに最終話をみると、
{netabare}「要の『お調子者キャラ』は壮大な伏線だったのか!」
と受け取ることもでき、なかなか侮れない作品ですね。
(最後まで視聴すると「滑り芸的なものも狙ってやってたのか?!」という
気もしてくるw){/netabare}
・野球作品としてはかなり面白い
ストーリーとしては、弱小校にワケありの才能あふれる主人公が入学してき
て、さらに才能あるプレイヤーを説得しながら、イチからチームを作り上げ
ていくという王道展開ですね。
清峰・要の天才バッテリーコンビに加え、藤堂と千早も性格やプレースタイ
ル等キャラがしっかり確立しており
「この4人が同じチームでプレイしたらどうなるんだ!」
という期待感がハンパないんですよね。
特に藤堂と千早については
・頑なに入部を拒む2人を説得~入部への流れ
・清峰と要に心をへし折られたのは実はきっかけのひとつで、野球を辞める
ことになった本当の理由
かなり掘り下げられるので、キャラがより魅力的に描かれていきますし。
{netabare}また要も一時的に記憶が戻り「智将ムーブ」を発動してくれましたし。{/netabare}
そして山田太郎という有能なサブキャラもポイント高いかなっと。
主人公は清峰と要のバッテリーコンビらしいのですが
・清峰:唯我独尊で言葉足らずのコミュ障
・要:「記憶喪失」でアホの子
ということで、山田が語り部を担っています。
山田自身は地道に努力してそこそこの実力者ではあるものの、4人の天才に
は及ばない、いわば普通の高校球児なんですよね。
そんな彼の視点から天才たちを語っていくという構成は、なかなか上手いや
り方だったのでは思います。
また山田の温厚で常識人というキャラは
・上述の通りコメディ展開の有能なツッコミ役
・個性派揃いの天才の中でのバランサー役
・持ち前の安心感あるキャラで要所でのチームの支え役
(チーム内の人望も勝ち取っている模様)
4人の天才が悪くいえば投げっぱなしのキャラなので、そこを山田を使って
上手くフォローしているという印象ですね。
でも個人的に一番のお気に入りは、土屋和季の加入シーンかな。
{netabare}内野はタレント揃いだが外野が弱い。で、メンバー探しですが・・・
彼も4人のような天才ではないのですが足という武器を待っていて、そこに
(守備範囲の広い)センターという重要なピースが埋まる瞬間が最高にテン
ションが上がるんですよね。
「何やこのチーム!めっちゃ面白そうやん!!」{/netabare}
・部活動への問題提起とタイトル「忘却」に込めた思い
まあ「問題提起」はちょっと盛ってますが(笑)
象徴的なのが土屋のエピソードですが
{netabare}・中学時代、体育会系のノリや上下関係の厳しさに馴染めなかった
・また野球部を辞めたことで”根性なし”扱いされることになった
ということで2Dの野球に失望して、3Dへ逃げ込んだ経緯があるんですよね。
スポ根モノなら、強キャラ主人公がそいつらをぶっ飛ばしてスカッと展開に
なるんでしょうが、現実はそうもいかないわけで・・・
「厳しい規律と上下関係というシステム。そのせいで埋もれてしまった才能
もたくさんあるかもしれないと」
山田のモノローグがなかなかに染みますね。{/netabare}
また要についても
{netabare}・元々は今の調子者キャラだったが
・清峰を一流投手にするために、努力で「智将キャラ」に変貌
・しかし勝ち続けていく中で、自分を厳しく律してきた負担や心をへし折っ
てきた相手への罪悪感からいつしか「野球が楽しい」と思えなくなった
・そんな心の反動が「記憶喪失」
(正確には「解離性同一性障害による人格交代」らしいが)
という感じで「勝利至上主義」へ一石を投じるような描写がみられるんです
よね。
この辺は少し深読みしすぎな気もしますが、最終話で『要圭』という人間が
描かれた上で、タイトル「忘却」に込めた作者の思いとは・・・
単に「記憶喪失」いう意味だけでなく、「過去からの解放」といったものが
含まれているのかもしれません。
本作でも最後に
「もし一つだけ何かを忘れられるとしたら、俺は・・・」
で含みを持たせていますし。
今後この辺りも明かされていくのでしょうか。
「記憶喪失」によりお調子者で野球素人になってしまった要ですが、皆でイ
チから野球に取り組んでいる姿はノビノビしていて、過去との対比を意識し
ているようにも感じますね。{/netabare}
そんな感じで、
・序盤のギャグ展開は合わずに眉を顰めていたが
・イチからチームが出来上がっていくワクワク感
・キャラ同士の深まる関係性
・原作者の描きたいテーマ性
回を追うごとに積み重ねが生まれ、面白さが増していく作品なのかなっと。
今期では練習試合まででしたが、今後このチームが公式戦でどこまでいけるの
か純粋にみてみたいと思いますし。
原作者は女性の方のようですが、(男性目線の)従来のスポ根モノよりは一歩
引いた視点から描いてる感じが、独自の面白さに繋がっている感じがしますね。
(山田の語り部や独自性のある丁寧な心理描写が印象的だったかな)
OP「ライラック/Mrs. GREEN APPLE」
ED「忘レナ唄/マカロニえんぴつ」
・こういう方々がこぞって参戦しているのをみると、アニソンという分野も
レッドオーシャン化しているのをつくづく感じますね。