「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。(TVアニメ動画)」

総合得点
61.0
感想・評価
188
棚に入れた
468
ランキング
5615
★★★☆☆ 2.9 (188)
物語
2.7
作画
2.8
声優
3.1
音楽
2.9
キャラ
2.9

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

俺TUEEEも行き着く所まで行き着いてしまった

作品名とあらすじが全てを物語っている。「死ね」と唱えればどんな生物も死ぬため、主人公・高遠夜霧{たかとお よぎり}に敵はいない。そんな彼を悪戯に召喚してしまった異世界ファンタジーの住人たちは間もなく彼の『即死チート』に戦{おのの}くことになる────といった内容だ。「くだらない」「しょうもない」と言われれば、作者や制作陣もぐうの音も出ないのだろう。
しかし、これはある意味で今日、業界あまねく「なろう系作品」に対するアンチテーゼとも取れる。彼の他にもチート級の能力者は続々と出てくるのだが、みんな死ぬ(笑) 神様に様々な能力をもらったり、全ステータスが9999だったり、全属性の魔法を極めていたりとかしても関係ない。高遠はありとあらゆるなろう系主人公を殺せる存在なのだ────まあこれも『小説家になろう』発作品なのだが(笑)

【ココが面白い?:考えうる限りの最強主人公】
単純に任意の相手を即死させるだけなら、異世界ファンタジーはいくらでもその対策を講じることができる筈なのだが、主人公にはその悉くが通用しないというチートっぷりを見せられるので思わず苦笑いが出てしまう。
まず高遠に対して不意討ちができない。彼は殺しの能力を扱うからこそ相手の「殺意」を認識することができ、彼に殺意を向けた相手はもれなく実行前に死ぬこととなる。姿を隠しても、何百kmと離れた場所であろうとその即死チートから逃れることは不可能だ。
殺せるのは生物だけではない。「物」を殺せば容易に壊す・砕くことが出来るため、罠に嵌めたり上手く拘束できたとしても相手に勝ち目は全くない。それが判らず自身の能力や多人数で囲うことで勝ち誇る敵キャラが何とも滑稽に映ってしまう。
相手がゾンビの様な既に死んでいる者でも関係ない。高遠が生きている・動いていると思えば殺して永遠に動かなくしてしまう。別次元にいようが複製体だろうが関係ない、ありとあらゆる能力を持つ者が彼に襲いかかってくるが、彼はそれをほぼ一瞬でいなし続けていく。
MP消費や使用回数制限も無く、間違いなく設定だけで言えばありえないほど最強の主人公だ。だが、どこかギャグ的にその無双ぶりを描いている。高遠はお決まりの「やれやれ系」主人公ではあるのだが、ここまでわかりやすく最強な能力を持ちながら「調子に乗らない」「見下さない」「ハーレムしない」ことが何か偉い(笑) 表向きは『賢者』からロクな『ギフト』を与えられなかった落ちこぼれと見られている状況も主人公への嫌な印象の緩和を助けているのだろう。雰囲気的にはなろう系よりも『ワンパンマン』に近いのかも知れない。
彼の力は異世界由来のものではない。元の世界から、生まれた時点で持っていた能力だ。「ΑΩ」と呼ばれ幼少期から隔離されて育っていた彼の過去が物語の中で断片的に描かれている。
子供の頃から監視され、隔離され、両親の顔も知らず、名前すらろくにつけてもらえていなかった。そんな彼がとある女性と出会うことで世間を知り、名前をもらい、今の彼がある。
そんな過去エピソードをきちんと描くことで、ろくに前世での主人公のエピソードを描かない数多のなろう系へのあてつけにもなっている(笑)

【この娘が可愛い:バトルもツッコミも頑張る壇ノ浦さん】
そんな主人公の異世界蹂躙の旅にお供するのがメイン──というより唯一の──ヒロイン・壇ノ浦知千佳{だんのうら ともちか}だ。彼女もまた賢者からギフトを貰うことが出来ず、ギフトを貰えたクラスメイト達からドラゴンの囮にされた大ピンチを高遠に救われる。
スタイルが良くて例に漏れず巨乳。それが高遠が彼女を救った理由でもあり(笑)、序盤は他のゲスな男子生徒や異世界盗賊に身体をつけ狙われる「お色気担当」に甘んじる。始めはそれら降りかかる火の粉を払うのにも高遠の即死チートを頼る他なかったのだが、次第にその「おんぶにだっこ」な状態を後ろめたく思うという真っ当な心情変化を投入しているのがなろう系にしては中々の良点だろう(それもまた真っ当な作品であれば普通に入れてくるものだが笑)。
そんな折に現れた檀ノ浦家の守護霊・もこもこが憑いて様々なサポートをしてくれるというのも創作基準で考えれば中々のチートなのだが、彼女はそんなご先祖から教わる『壇ノ浦流弓術』(弓術って書いてあるけど格闘技です)で以て、身体能力は普通の男子学生である高遠の脇を固める「成長系ヒロイン」として確立していく。
また、外道や変人が多い本作においては数少ない常識人枠であり、自ずとツッコミを担当する。そのツッコミも担当声優によってキレッキレとなっており、当アニメには『富田美憂ツッコミ劇場』というあだ名がついたとかいないとか。

【でもココがひどいw:キャラの大量消費社会】
主人公とヒロイン以外の扱いはとても雑だ。何しろ主人公らと敵対した時点でそのキャラクターの退場は確約されており、背景の掘り下げもへったくれもあったものではない(笑)
{netabare}例えば第3話では【支配者(ドミネーター)】という能力を手に入れた男子生徒が5人の従者を侍らせて2人と再会する。従者には序列をつけており、彼女ら下僕を通じて序盤の街でも無休の経験値稼ぎが出来て既にレベルは1万を超えていると自慢はしてくるのだが、その時点で敵対はしてこない。
ところが従者の内の1人が勝手に動いてトモチカを暗殺しようとする。危険を察知したトモチカは高遠に連絡を取って即座に殺してもらうのだが(笑)その判断の早さが彼女が殺そうとした理由すらも永遠の闇に放り込んでしまう。普通ならもう少し相手から殺人動機を聞き出せるものだし、そもそも本当に殺そうとしていたのかも彼女が部屋に侵入しようとしている時点で殺してしまえば定かではなくなってしまう。

『推測でよろしければ……あの女を連れてきて御主人様を喜ばせようと思ったか、或いは御主人様に相応しくないと排除しようとしたか。各々の良かれと思ったことが御主人様の意に沿わない可能性もございます』

うん、それ本人の口から言わせてあげようか{/netabare}
高遠が別に戦闘狂でも唯我独尊でもない合理的な性格をしているのも他キャラの不遇具合を増大させており、変身中の魔族や大魔法を放とうとしている魔法使いなど本領発揮しようとする相手を直ぐ様殺すのは序の口。他にも四天王的な相手の内、最弱の1人しか戦闘シーンを見せないまま全滅させる『ソードマスターヤマト』的な展開で〆てしまったり、封印が解かれれば世界が滅亡するという魔神すらも事前に殺してしまうことで封印を見守る『剣聖』の役割やその候補を選抜する試練の意義、そして{netabare}実は異世界転生を行う女神が魔神を復活させようとしていたというどんでん返し{/netabare}までをもブッ壊してしまったりする。
異世界転移したクラスメイトたちは賢者シオンから与えられたギフトを駆使してミッションに挑み、新たな賢者とならなければならない。そして賢者は『アグレッサー』と呼ばれる侵略者を撃退する役割を持ち両者は日夜、戦い続けている────という設定もあるのだが高遠にとってはどうでもいいことだ(笑)
元々希薄であったクラスメイトとの関係──むしろバス内に置いていかれた怒りも若干ある──は彼らの安否など取るに足らないものにしており大事なのはトモチカだけ。2人は元の世界へ帰還するために自分たちに同意無く召喚したシオンへの接触を試みる。そこに立ち塞がるのなら級友はおろか賢者や魔神に王族や女神────何が相手でもどれだけの犠牲が出ても関係無く、即死チートで実に呆気なく命を摘み取ってしまうのだ。

【総評】
「一周回って逆に面白いのでは?」と感じることができる作品だと評する。
これまでのなろう系作品に登場した「チート」を遥かに凌駕する即死チートには弱点や使用制限といった駆け引き要素が一切無く、他の世界なら立派に主人公を努められそうなチート能力者たちが本作の主人公に喧嘩を売っては大量に死んでいく。逆に誰が生き残るのか気になってしまうほど、ぽんぽんとキャラが出退場を繰り返す様は苦笑い程度ではあるものの「ギャグアニメ」としての構図が生まれている。
一時期『チートスレイヤー』という漫画が色々ななろう主人公のパロディキャラを敵として登場させたことで炎上して打ち切りになってしまったこともあったが、本作はそれに近いことをしている。中には「やり直し」能力やガチャ、タイムリープなどどこかで見たことあるようなチートを使うキャラも出てくるのだが、ギリギリ相似していない能力とテキトーなそれっぽいキャラデザのおかげで本作はとくに怒られることのないまま、アンチなろう作品としてのギャグを成立させている様だ。
只、最初に書いたようにこの作品自体が『小説家になろう』発作品であるためか、あまり気合いの入った制作はされていない。とくに終盤は戦闘シーンが多いものの、はっきり書いて作品全体としてのクオリティは高い方ではなく、作画枚数を削ってなるべく1枚絵による戦闘シーンを描いているような印象だ。
高遠はギアスよろしく即死チートで一方的に屠るのみなのでこれといった「動き」は要らないのだがトモチカ他、脇役をその分動かさなければ『ワンパンマン』にも類似しているだけにそれ以下、という評価にせざるを得ないだろう。とくにアグレッサーと戦う賢者サンタロウの剣捌きがぬるぬるではなく「ジャキジャキ」と動いている様を見ると、「賢者って本当に強いの?」とまで疑問に思ってしまうのである。
音楽面は可もなく不可もなく────といったところだが、OPだけは敢えて歌詞(リリック)を幼稚にして印象付けている印象(笑) ラップならもうちょい上手い韻を踏んでくれた方が感心するのだが……。
ストーリーは非常にわかりやすい。主人公はとにかく元の世界に戻りたい。そのために情報収集をしながら邪魔者を排除し、最終的には元の世界への門(ゲート)を開く『賢者の石』を集めるという目標を掲げてひとまず物語を〆ている。それまでの道のりはこれまで世に出たアニメ作品を遥かに凌ぐであろうストレスフリーな構成であり、かつそこそこ面白い。「今もう春アニメを数本追っててこれ以上は……」という方でも気軽にサクサクと観れる代物だろう。

投稿 : 2024/05/11
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サンキュー:

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