Witch さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
【第2作】「西尾節」と「シャフト演出」と「戦場ヶ原」を抜いた『化物語』
【レビューNo.129】((最終レビュー)初回登録:2024/6/21)
コミック原作で2024年作品。全12話。
第1作は好きだったので、第2作にも期待ですかね。
(ストーリー)
バーテンダー・佐々倉溜は、パリから帰国後銀座のバー”イーデンホール”で
最近働き始めた。
ホテル・カーディナルの営業企画部で働く来島美和は、ホテルのカウンターバ
ーに相応しい、客の魂を癒す「神のグラス」を作れるバーテンダーを探してい
るが一向に見つからず焦っている。
偶然街で出会った溜がバーテンダーであると知る。
(公式サイトより)
(評 価)
・第1話:温故知新的な取り組みは評価したいが・・・う~ん、様子見ですかね
{netabare}・第1作は2006年にアニメ化されており、2回程視聴してますかね。
第2作の位置づけが分からなかったのですが、公式サイトや1話を見た限り
では、リメイクというより
・原作からの主要キャラや舞台等世界観を引き継いだ上で
・現在風解釈等を加えながらの完全新作ストーリー
という感じっぽいですね。
原作未読なので、完全アニオリかどうか等は判断できないですがw
1話はベースとなる世界観を提示する必要があるので、ある程度前作で既視
感のあるものをみせつつ、ところどころ改変が行われているという感じでし
たね。
・例えばグルメなんかは「食堂食堂」や「ダンジョン飯」等ここでも異世界モ
ノが席巻している感があり、個人的には少々食傷気味な感じではあります。
(これらの作品は好きなんですが、こうも異世界モノが多いとね・・・)
なので、下手に「異世界バーテンダー」とかに走らずに、こういう時代だか
らこそ過去の名作に回帰してみようという「温故知新」的な取り組みは大い
に評価したいところですね。
第1作での魅力であった
・バーという(重い扉で閉ざされた)隠れ家的な空間に流れる緩やかな大人
の時間や癒し
・そこで繰り広げられる人間ドラマ
・バーやお酒のウンチク等
第2作ではどうみせてくれるのか。
・ただ1話を観た感じだと「う~ん、コレジャナイ」って感じが・・・
・前作より幼さを感じるキャラデザやコメディ要素を加えたキャラ描写
・前作よりも明るい感じの色調
・過剰なアニメ演出等
前作の素材の味を楽しむような大人な空気感が・・・って感じですね。
しかし
・第2作を創る以上、前と変わらないという訳にもいかんやろしなあ
・第2作として面白いテーマ性とかがあるかも
・新作エピソードは気になる
という感じではあるので、しばし様子見ですかね。
あと前作は思い出補正がかかってる可能性もあるので、この機会に前作も見
直してみようかなっとw{/netabare}
・第2-3話:第1作とは異なる方向性はきちんと提示されていたと思う
{netabare}先日の 第1作のレビューで
・第1作はよくも悪くも「昭和世代が思い描く『かっこいい大人の男像』」を
描いている
・第2作は尖った感じがなくなり、凡庸な作品になりそう
と書いたのですが、
第1話
メインキャストが神嶋部長から来島美和に変更。
それに伴い、神嶋部長の人間ドラマをカット。
その分佐々倉の人間臭いキャラ描写を追加。
→ 「かっこいい大人の男像」が後退
第2話
第1作で2話分のエピソードを1話に詰め込み
→ 人間ドラマは薄味になり、ストーリー重視の味付けに
第3話
見習いバーテンダー・川上京子を追加。
第1作では友好的な熟練バーテンダー・葛原が越えるべき壁という存在。
まさかのカクテル対決w
→ 第1作では客に寄り添う存在であった佐々倉を第2作では前面に押し出し
た演出
やはり第1作のエピソードが古く時代に合わないという判断なのか
・第1作:客の人間ドラマとそれに寄り添う佐々倉
・第2作:佐々倉の人間臭さや彼や来島美和、川上京子等の成長譚
という方向に舵を切っていくのかなあって感じですね。
個人的には
・第1作の「昭和世代が思い描く『かっこいい大人の男像』」がストライク
・第1作でしっかり描かれていた「人間」が、単純な記号化され面白みがな
くなったように感じる
と、どうしても辛口になってしまうのですが。
第1作とは異なる方向性はきちんと提示されていたのかなっと思いますね。{/netabare}
・第4話:第2作のやりたいことは大分明確になってきたかな
{netabare}前回のレビューで書いたように
>・第1作:客の人間ドラマとそれに寄り添う佐々倉
>・第2作:佐々倉の人間臭さや彼や来島美和、川上京子等の成長譚
>という方向に舵を切っていくのかなあって感じですね。
がより鮮明に描かれていたのかなっと。
Aパートは
・ホテル・カーディナルに凄腕フレンチシェフのスカウトを画策
・このシェフを口説くために佐々倉も一役買う
→ 利き酒対決や酒にまつわるエピソードを絡め、シェフの心を動かす
という流れでしたが、
・やはりシェフよりも佐々倉に焦点を当てた演出で「佐々倉スゲー」をやり
たいみたいな
→ う~ん、少し話が軽く安っぽくみえるのかなあ
Bパートは「見習いバーテンダー・川上京子の苦悩」ということで
・ようやくカクテル作りの許可が出たが、オーナーからは厳しいダメ出し
・自分が目指すべきバーテンダー像がわからない
それを「キング・オブ・カクテル」と呼ばれるマティーニで
・佐々倉の作る顔のある→酒の個性を引き出したカクテルとは
・他のバーへ行き、多様なマティーニを飲み比べ
でしたが、第1作にはなかった
・若手バーテンダーの共演
・駆け出しの頃の佐々倉の描写
・カクテルレシピだけでなく、ステアや温度管理といった技術面の細やかな
解説
などは第2作のウリとしてよかったのでは。
今回の新キャラ・バー「Hell's Arms」の金城ユリも今後の出番が楽しみな
キャラではありますし。
また会話の中でカクテルコンクールの話も出たので、以降でそちらの話も描
かれるのでしょうか。
それにラストは熟練バーテンダー・葛原と来島会長で何か仕掛けてくるよう
な引きで終りましたし。
(これも第1作にはない展開ですね)
一長一短はありますが、(第1作とは異なる)第2作のやりたいことは大分明
確になってきたように思いますね。{/netabare}
・第5話:悪くないが凡庸かな
{netabare}今回の主役は、葛原の愛弟子チェン。
ストイックだが、視野が狭いようで・・・
>それにラストは熟練バーテンダー・葛原と来島会長で何か仕掛けてくるよう
>な引きで終りましたし。
前回のフリは佐々倉ではなく、チェンの見識を深めるためのようで、
・「サントリー 山崎蒸留所」見学ということで関西へ研修ツアー
(来島会長の人脈による)
・他のバーテンダーと触れ合うために、川上京子と金城ユリも同行
(あと孫の特権で来島美和も)
ということで、はじめはツンケンとしたチェンでしたが
・佐々倉のフォロー
・自身の京都の苦い思い出と向き合い
最後に何かを掴んだようです。
う~ん、話は悪くないですが、もうひとつ面白くないんですよね。
回想なんかも入れてますが、全体的に人物描写が単純な記号化されて平面的
というか、やはり凡庸な感じが否めませんね。
「サントリー 山崎蒸留所」の辺りは、昔住んでたことがあったので、
「おお、こんな風景だったわw」
と、懐かしさがありましたが。
川上京子と金城ユリとの交流を深める目的もあったはずですが、途中から別
行動になったので、その目的も果たされずでよかったんか?!
今回2人は「コメディ要員か?!」という扱いでしたね。
この2人はカクテルコンクールに出場すると表明したので、今後そちらも描か
れるんでしょうね。
よくも悪くも「第2作はこんなもんかな~」という印象ですね。{/netabare}
・第6話:「バーという”特別な空間”だからこそ面白い」が薄まった
{netabare}今回のエピソードは
・来島美和の後輩・樋口由香利のまさかの結婚話
・心がささくれだった中間管理職と患者を救えなかった女医の出会いの物語
でした。
樋口由香利については、来島美和ともに最初からずっと登場していますが、
仕事でいいところがなく、どこかお気楽で浮付いたキャラって感じなんです
よね。
・そんな彼女の”結婚”といわれても、唐突感だけが凄くて感情移入できな
かった
・佐々倉の彼女の本心を見抜いてた描写が「佐々倉スゲー」よりの演出で
「バーテンダー="優しい止まり木"」
からズレてる感じがどうも好きになれない
また中間管理職と女医の物語ですが
・ストーリー重視で薄味、この2人に焦点が当てたいのか、佐々倉よりなのか
創りが中途半端
・バーという”特別な空間”に入ったという空気感が不足している
この辺りも第1作ならこれだけで1話分の尺を使ってたところを、上述由香利の
結婚話も詰め込んでいるので、まあそうなるわなっと。
やはりこの手の話になると、第1作に比べ
「バーとバーテンダー(優しく寄り添う存在)だからこそ独自の面白さがある」
という尖った感じが薄まり、無難でライトな仕上がりだなという印象ですね。
いつまでも「第1作がよかった~」という私は老害でしょうか(笑)
第2作として新作のエピソードをやってくれてるのは、ありがたいですが。{/netabare}
・第7-8話:正直どうでもよくなってきた(笑)
{netabare}7話はチェン君の話がメイン
・葛原の元を破門された模様
・父親が来日(シンガポールの有名ホテルの跡取りとして連れ帰るため)
・バーテンダーを本気で目指すことを決めたチェンは、佐々倉の元で研鑽
を積みつつ、父に認めてもらうためにカクテルを作るのだが・・・
また8話はカクテルコンクール回。
・川上京子
・金城ユリ
・チェン君
が出場。その模様とそれぞれの新しい始まりを描いて終わりました。
チェン君の騒動も一応の決着を見ましたが・・・
正直どうでもよくなってきました(笑)
エピソードは進むものの、こちらに積み上がってくるものがないなっと。
>「バーという”特別な空間”だからこそ面白い」が薄まった
前回こう書いたのですが、少しフォローしておくと
・第1作はバーでの人間ドラマや男のカッコよさなど、かなり特化した創り
→ (バーでのシーンが大半で)バーの空気感等も注力して創りやすい
・第2作は”前作とは違うベクトルを”ということで、多様化を意識
→ まあ「バーの空気だけ重厚に」とかは創りづらいよなあ
って感じですね。
正直原作未読なので両作とも、どこまでが原作準拠でどの辺がアニオリ改
変なのかも分からないですし。
そういう意味では「第2作は第2作の面白さ」があればと期待していました
が、ちょっと厳しくなってきましたねえ。
一応最後まで視聴予定ですが、ただ”凄腕バーテンダー”が出てくるだけの
作品で終わりそうですね。
この”凄腕バーテンダー”も「佐々倉スゲー演出」でみせたかと思えば、重
鎮からは「ひよっこ扱い」等なんかチグハグなんだよなあ。{/netabare}
・第9-10話:人間を描くってやっぱり難しいんだと思う
{netabare}第2作の目玉として第1作では描かれなかった
・”佐々倉溜”という人間を深堀して描いていく
という試み自体は評価したいのですが・・・
ざっと作品内での”立ち位置”でみても
・「神のグラスを作る男」とか”凄腕バーテンダー”と持ち上げる一方で
・重鎮(老害?)からは育てるべき人材として「ひよっこ扱い」
・佐々倉自身も自分が未熟だと納得していない様子
・その一方で高みを極めし者のように説法を垂れるという
もうストーリー都合でキャラを動かしちゃってるなあっと。
それに今回はついに佐々倉の過去が明かされますが
・人が死んだという話を絡めればインパクトがあり、説得力増すやろ
という、制作側の浅はかな考えが透けて見えるというか・・・
”キャラ造形”って
・作り手が「彼はどういう人間か?」というのを考え抜いた上で、それを
作中の言動に地道に落とし込んていく
・その積み重ねを経て、視聴者側がどう受け取るか
ということだと思うのですが、やってることは
・こういうエピソードで説明したから、彼はこんなキャラということでい
いよね♡
という制作側のキャラの押しつけだったり、レッテル貼りレベルにしか過
ぎないんですよね。
やはり人間を描くって難しいですね。でもそこを超えてくるから私たちは
「プロのクリエイターってやっぱり凄い」
とリスペクトの念を抱くわけで、そういうところをインスタントにやろう
している作品はねえ・・・
>こういう時代だからこそ過去の名作に回帰してみようという「温故知新」
>的な取り組みは大いに評価したいところですね。
と最初に書いたのですが、どうもアニメ化の経緯もタック二階堂さんの
「サントリー案件」
というご指摘が的を射ている気がしますね。
そう考えるとこの凋落ぶりも納得ですね。{/netabare}
(最 終)
「西尾節」と「シャフト演出」と「戦場ヶ原」を抜いた『化物語』
率直な感想がこれですかね。
第1作を知らなければ、「バーとバーテンダーが登場する一風変わった作品」
として、それなりに楽しめたかもしれませんが、前作の尖った部分を切り捨
て、凡庸な人物描写やサントリー案件を加えた本作は”コレジャナイ”って
感じですね。
まあ「昭和の男臭さ」がプンプンする第1作と同じテイストで令和のアニメ
を創る訳にはいかんやろ、という判断は理解できます。
とはいえ、
>「バーとバーテンダー(優しく寄り添う存在)だからこそ独自の面白さが
>ある」
という根幹が揺らいでしまっては「本末転倒だろう」って思う訳ですが。
今回”佐々倉溜”という人物描写に結構尺を使ったものの、あまり魅力的に
描けていないからなあ。
いろいろと多角的に描いてみたものの、結局どれも中途半端に終わった印象
ですね。
>「バーという”特別な空間”だからこそ・・・」
やはりこの空気感がないと、漠然とバーのシーンを見せられても響くものが
ばない気がしますし、そこが本作の生命線だったのではと思いますね。