エイ8 さんの感想・評価
2.9
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
おじさんだって少女になりたい!
『エスタブライフ』は、アニメーション監督の谷口悟朗が原案・クリエイティブ統括を務める日本のメディアミックス企画。多様な人種が存在する未来の東京を舞台とする物語が様々な媒体で2022年より展開される。
『エスタブライフ グレイトエスケープ』のタイトルで、2022年4月から6月までフジテレビ『+Ultra』ほかにて放送された
生まれ住むクラスタに馴染めない者を別のクラスタへと移動させる「逃がし屋エクストラクターズ」を描く。作品のテーマは逃亡であり、監督の橋本は、逃げるという言葉にあるマイナスイメージをプラスに描くことを掲げている。またアニメーション制作のポリゴン・ピクチュアズにとっては、自社開発のレンダリングソフトウェア「PPixel(ピクセル)」を初めて全面導入した作品となる(wikipedia)
(おそらく)東京24区を「クラスタ」という単位に置き換え、それぞれが独自の個性をもった集団となっている。原則的に逃げられないというのは、ひょっとしたら一旦所属した集合体からは離脱しにくいという現実に対応させているのかもしれない。
とはいえメディアミックス企画ということもあってか(?)ディティールはかなり甘め。結局最後まで主人公エクア達の掘り下げはほとんど行われてないのでどういう事情で彼女達が逃がし屋を始めたのかわからず共感しにくいというのが最大の欠点か。
一応フェレスだけが過去とチームに加わった経緯を描写されていたが、マルテース、アルガ、ウルラに関しては一切謎のまま。(というか今調べてわかったのだがフェレスって魔族らしいw魔族ってなんだよ魔族ってw)
3DCGとしての質自体はそれほど悪くはないが良くもないという印象。バトルシーンにはある程度躍動感があったもののこれといって特筆すべきものもなし。
シナリオも可もなく不可もなくといったものが最後まで続くのだが、唯一ペンギンが出てくる回だけが突出して良かった。確か3話だったと思うけど、旧東西ドイツをモデルにした資本主義VS共産主義の構図でベルリンの壁を開かずの踏切で喩えている。東側は貧しく、統制が行き届いており、エクアが捕まった際拷問(?)を受けるのだが相手がペンギンキャラのため殴られても痛くなさそうというのがご愛敬。しかもその後西側で自由を満喫できるのかと思いきや稼ぐためにやりたくもない演技をやらされるというアイロニーも盛り込んだ完成度の高い構成だった。
3話という結構早い段階でこのシナリオを見せられたため以降も結構期待してみたのだが4話がある程度似たような構成だったもののその後は(良くも悪くも?)シュールな展開が続く。スタッフを確認してみると、なるほど3,4話を含めある程度IQが高そうなことをやってる回とそうでない回で脚本の人が違う。とはいえ、全体的に見てもあまり高度な内容とは言えないし、そもそもおっさんが魔法少女になったり(そもそも少女になりたいってなんやねん)、パンツ(アンダーウェア)は脱いだとはいえズボンはちゃんと履いてるのにやたらと見られないよう意識したりとかどう反応していいのかわからない展開も含め、単純に面白いとも言いにくかった。
作品を通して「逃げたい」というテーマがあったのはわかるしそれを貫こうとしたのもわかる。依頼するときのへんてこりんな音頭にも意味があったわけだし行き当たりばったりで作ったわけでもないのだとは思う。
ただ如何せんちょっとキャラが弱すぎたんじゃないか。どう見たってエクアは綺麗ごとを言ってるようにしか見えないし(秋葉原の人は、結局エクア以外が頼りなさ過ぎて帰還を選択している)その綺麗ごとを貫く動機も見えない、未来を見通す能力を授けられているとはいえあまりにもご都合主義的に事が進み過ぎるため高揚感も足りない。じゃあ逆に安心して見られる癒し枠かと言えばそこそこシリアスなこともするという、何とも扱いに困る作品だったという印象。
せめて当のエクアが逃がし屋から逃げたいという展開があったりしたら面白かったのかもなあと思わなくもない。