ゲリオ さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
意識の高さが空回り?
2022年秋アニメの注目作。
新進気鋭のジャンプ作家、藤本タツキ先生の原作。
本原作は未読だが藤本先生の漫画は『ファイアパンチ』や読み切り作品等で読んだことがあるので、どんな作家さんなのかは承知済。
とにかくムチャクチャ尖った作品を書く漫画家さん。
唯一無二なので漫画作品としての評価は得られそうだけど全く王道ではないので、例えば映像化するのとか難しいだろうなぁ…との印象を受けた。
そして、満を持してのアニメ化となった本作だが、おそらく企画段階から尖った作品は尖った人間に任せた方が好転するだろうとの思惑があったのか、MAPPA所属の経験の浅い若手が初のアニメ監督の大役を担うことになる。
結果、、、第1話放送直後からネット上は原作ファンによる監督批判一色で大変なことになってしまう(笑)
自分は原作読んでないから本当にそこまで監督が悪いのか?と勘繰るも、原作との対比画像付きで説明されると「なるほど改悪だわ」と納得してしまう部分も有り…
画面の構図やキャラの行動描写は特に批判対象に挙げられた模様。
まー、そうは言っても正直アニメだけしか見てない勢にとっては「気にしなければ気にならない程度」だったが、熱烈なファンにしてみれば大問題に感じたのかもしれない。
あと話題になったのは、登場するほとんどのキャラクターの何とも言えない抑揚のない喋り方についてだ。
普通のアニメと違ってアニメアニメしてない、さながら邦画の役者演技のような淡々とした会話が展開される。
新人声優もベテラン声優も一貫しているので役者の技量の問題ではなく意図的に。
これについてもネットから多くの批判が発せられる。
ただ自分的には、たしかに藤本先生の作品の会話劇って、淡々と感情の無い雰囲気が特徴なんだから原作の味は出せてるんじゃないの?と監督を擁護したい気持ちもある。
監督がアニメ雑誌にて「(型にハマった)アニメを作りたくない」だの「僕が想像した芝居をするように声優にディレクションした」だの経験が浅いくせに意識高いことをペラペラ語ってしまったことが仇になったのかもしれない。
また、個々の声優が「監督の指示で抑制された芝居を徹底した」と語っていている切り抜き画像も広まり、それがさながら「棒読みになったのは監督の指示です」と言ってるような印象を視聴者に植え付けてしまった。
ということで現状、ネットでは散々な評価を受けてしまった本作。
しかしながら広まってる批判はさすがにどう考えても過剰である。
SNSが普及した現代、残念ながらそれぞれの作品は本来より、過剰に称賛されたり、過剰に批判されたり、それがバズってしまうことで、正当な評価値を得られない場合が多い。
本作は作画とCGを上手く融合させた高い映像クオリティは勿論、内容も少なくとも『呪術廻戦』程度には面白く、決して卑下されるようなものではない。
「原作の方が面白い」というファンの意見は多分その通りだと思う。しかし決して画力の高さで勝負している漫画ではないので、アニメのグロ規制を無視した迫力のある戦闘シーン等は一見の価値ある代物であった。
いずれにしても「藤本タツキ先生の作品は映像化が難しい」というのだけは確か。
はたしてMAPPAの若手ではなく、例えば今最も精鋭スタッフが揃ったCloverWorksさんが担当すれば、アニメ映えを意識しつ漫画の独特な雰囲気も残し、全ての原作ファンを納得させる作品に成り得たのだろうか。誰も知る由はない。