Tnguc さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
名作というよりも名盤と言いたい作品
~
友達がいない根暗設定をステレオ化させた主人公が、バンド仲間を通して自身の承認欲求と向き合うコメディ作品。原作はきらら系譜の4コマ漫画(未読)で、たしかに空気系の雰囲気が感じとれる安直なパロディもあったりしたが、アニメ化にあたってはそういう部分に頼らない構成に書き直されていて、「けいおん!」のような青春ドラマを目指した作りになっている。ただ、この作品は基本的にバンド活動を舞台としているので厳密に言うと学園モノではなく、そのため「けいおん!」とは少しアプローチが違う。むしろ、ビジネス寄りのドラマ展開になっていて、そういう意味では「けいおん!」よりもロックに向き合った作品と言える。そのせいもあってか、学園祭を着地点として捉えた場合の過程としては少し盛り上がりに欠けていて、そういった青春の部分はやはり「けいおん!」の方がキラキラしていた。では、この作品の長所は何だったのかと考えると、やはりロックに対して嘘でも真面目に取り組んだ姿勢だったと思う。それは、主人公のギターヒーローとしての使命感や、ロックに対する想い、あと、楽曲をとことんロックナンバーにこだわった点など、とくにアジカンに対するリスペクトが顕著に現れている。また、「BECK」や「TOーY」、「アイデン&ティティ」、「ファイヤー!」のような作品と比べるとロックに対する下地の弱さが浮き彫りになっていたが、この作品は空気系とロックのバランス感覚が良く出来ていて、おそらくアニメ化にあたってプロデューサーがうまく調整したんだなと思う。ただ、元々が空気系だった作品を何とか青春ドラマとして持っていこうとした齟齬は隠しきれずにいて、それは、あくあでも「ぼっち」を売りとした作品のため、主人公がぼっちから抜け出す努力や成長の描写がほとんど描かれない(描けない)点がパラドックスのようで実にモヤモヤした。あるのは受動的に変化する日常だけで、基本的に主人公の成長はギターヒーローとしてのみに留まり、冷静に考えると「ぼっち」という主根のテーマが主人公の成長を阻害している呪いのようにも見えた。そのため、小慣れた作画で描かれた陰キャネタこそは観ていて面白かったが、青春ドラマとして観る分には少し息苦しかった。ゆえに、アニメ版に限っては、コマーシャリズムを無視して言うと、女子高生ではなくて成人だった方が自然だったと思う。あと個人的に思ったのは、この作品、キャラが弱いなと感じた。無料配布されたキャラ設定のアセットをコンピレーションしたかのようなキャラクターばかりで、たった1クール足らずでキャラの底が見えていたのが哀しかった。でも、制作陣の熱意は画や音などからダイレクトに伝わってきて、それらをみんなと共有できたライヴ感は間違いなく今期一番の盛り上がりだったと思う。放送終了後に配信されたセルフタイトルアルバムは、そんな彼女たちのこれからの軌跡を想起させ、彼女たちの静かな夢を瞼の裏で夢想させてくれる。
個人的評価:★★★☆☆(3.5点)