ねっち さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
わたしを好きにならないで
これは単なる百合作品ではなく、心情に強く訴えかけてくる作品でした。1から10まで語るとキリがないので良かった点を2点と残念だった点を1点、それぞれ語っていこうかと思います。
まず、良かった点1点目はセリフの秀逸さです。
本作は好きを知らない少女が徐々に先輩のことを好きになっていくというストーリーになっておりそれが女性同士だったという取り扱う対象としての珍しさはあるもののテーマとしてはシンプルなもので類似したテーマでやっている作品もいくつかあるとは思います。そういった場合であればストーリー構成やキャラクター性で差をつけていくと思うのですが、個人的に本作が他作品に比べ明らかに秀でていると感じた点はセリフでした。
その時その時のキャラの感情を言い表す、あるいは本音を隠す際のセリフが本当に綺麗に言い表しているなと感じました。
またこのタイトルも素晴らしいですね。本作を見てからこの「やがて君になる」というタイトルを見るとその言葉の重みや主人公・小糸侑の七海先輩を好きになりたいけど好きになってはいけないという板挟みの葛藤が伝わってきてグッときました。
次に、良かった点2点目はキャラクターの心情の変化です。
先に述べた通り侑は初めのころは好きという感情を持ち合わせておらず自分のことを好きになってくれる七海先輩のことが理解できず何とか先輩のことを好きになりたい、かわいいと思いたいという気持ちでいました。
しかし、七海先輩と過ごしていくうちに自分の中に七海先輩に対する特別な感情が芽生えてきて、最初それが侑には何なのかわからないのですがそれが少しずつ、ゆっくりと「恋」だとわかっていきます。
そのあたりの侑の心情の変化も非常に秀逸なのですがそこで七海先輩の「わたしを好きにならないで」というセリフがそれはもう痛いほど効いてきます。
こういった段階を踏むごとに越えていかなければいけない壁が変わっていくという構成は見事というほかありません。ものすごくキャラクターの感情に持っていかれました。
とまあここまで完璧な完成度でしたが1点だけ惜しいなと思う点を挙げるとすると、なにも決着していないというところです。
恐らく2期前提のストーリー構成ですから完結しろだなんて思っていないし2人の関係性に明確な変化を求めていたわけではありません。
ただ、あまりに何もかも片付かないまま終わってしまったなといった印象です。
侑や七海先輩に限らずほかの主要人物にも恋心であったり葛藤やらがあったにも関わらずそのどれもに核心をついた進展、変化がなく一期単体として観たときの満足感が薄くなってしまったかなと思いました。
せめて文化祭の劇を終わらせるところまではやってほしかったです。
ただ、トータルで見たときの完成度は素晴らしく、早く彼女たちの行き着く先を見たい、そう思える作品でした。
83/100点