ひろたん さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
えっ、そことそこも繋がるの!まるで動物園の園内マップのような人物相関図ができあがっていく面白さ
1話目の最初のシーンは、結構、衝撃的です・・・。
このシーンでガチなミステリーだと分かります。
その後、場面が変わり第一印象的には何の魅力もないセイウチとカバが登場します。
もし、このシーンから始まっていたら、恐らく続きは観ていなかったでしょう。
そう考えると、ほんの数秒ですが最初に衝撃的なシーンを持ってきたのは正解です。
ちなみにセイウチは、平凡な人生を送る個人タクシーの運転手で主人公です。
カバは、このタクシーの乗客でSNSにのめり込んでいる大学生です。
車内の会話を通じて、いままで何の接点もなかった二人がここで繋がります。
その後、犬のお巡りさんに止められ、ある「指名手配犯」について尋ねられます。
また、社内のラジオで「女子高生失踪事件」の話題を耳にします。
主人公にとって、指名手配犯も女子高生の失踪も全く関係ない話です。
あくまでも、この時点では・・・。
しかし、実際は、主人公が見慣れたこの街で何かが起きているのです。
この物語でまず驚くのはその登場人物の多さです。
公式HPによると、ざっと27人いて、各々問題や課題を抱えています。
そして、そのほとんどがなんらかの形でこの物語に関わってくるのです。
まず、話が進むとだんだん分かってくることがあります。
それは、一見、無関係な人同士の間に実は何かしらの接点があると言うことです。
最初、登場人物の間で多少の接点があることは当然なのであまり気になりません。
そのうち、また別の人同士に接点があることが分かってきます。
この時点では、多少気にし始めますが、「ふ~ん、そこも繋がるのね」程度です。
しかし、話が進むにつれて「えっ、そことそこも繋がるの!」と驚きます。
ここまできたら後は展開が速い。
次から次へと無関係そうに見えた人たちが次から次へと繋がっていくのです。
観ているこちらは、今度は、誰と誰が繋がるんだろうと楽しみになってきます。
そして、いつのまにか頭の中には、「人物相関図」が出来上がっていくのです。
しかも、それは、まるで動物園の園内マップのようです。
登場人物が多いのに、迷子になることなく、とても分かりやすいマップなのです。
この時点でもう一つ驚くべきことに気づきます。
それは、登場人物の名前をほとんど覚えていないのです。
それでも話についていくことができるのです。
27人も登場人物がいるのにですよ。
ミステリーは登場人物が命なのにですよ。
それでも、名前を覚えなくても大丈夫なのです。
これは、もちろん登場人物すべてが違う動物で描き分けられている効果です。
一度見たら忘れられない個性的な顔は、こんなにも効果絶大なのかと唸ります。
会話の中で、そこにはいない人物名がでてきても大丈夫な工夫もされています。
他のミステリー作品ではよくある「それ誰だっけ?」となるやつです。
この作品では、これだけ登場人物がいてもそうならないところが地味にすごいです。
名前から登場人物を脳内検索しなくてもよいので、とにかく話に集中できます。
また、この作品のキャラ達は、普通の人間キャラ以上に人間らしく見えます。
それは、人間の持つ癖や仕草を大げさに表現しているからです。
動物キャラを逆手にとり、人間キャラ以上に人間味のある表情を作っているのです。
恐らく普通の人間キャラでこれをやると、逆に不自然になるのだろうなと思います。
また、街の喧騒や雑踏、街並みもぬかりないところもリアリティに寄与しています。
ちなみに勘がいい人は、途中で真犯人が分かると思います。
話の途中、主人公が何度かヒントを出してくれます。
それをもとに消去法で考えると・・・、おっと、これ以上は!
***
登場人物達は、最初は、ただただ自分の人生を生きているだけにすぎません。
そして、この物語では、そんな人生に順番にスポットをあてていきます。
その中で、少しずつ接点が増えていきます。
しかもそれは、ただの知り合い程度の接点ではありません。
各々の人生そのものが干渉し、お互いに影響を及ぼしあいます。
それは、一種の運命のようなものです。
そして、気づけばその運命に、登場人物たちは翻弄されていくのです。
この作品は、そんな多くの人々の人生が次々に繋がっていく爽快感があります。
そして、その繋がった先をたどると事件の真相が見えてくるのです。
まさにミステリーの醍醐味を味わえる作品でした。
とても良く練られた脚本だと思います。
もちろんアニメだからこそ成り立っている部分もあることは否定できません。
それでもここまでのミステリーは、実写ドラマでもなかなかお目にかかれません。
キャラの見た目だけで、食わず嫌いしないほうがよいと思いました。
それだけ、面白い作品でした。