でこぽん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
触れることはできなくとも…二人の影は、いつも寄り添っている
タイトルに似合わず、とても温かで心が安らぐ物語でした。
監督は、山川吉樹さん。「ハイスコアガール」や「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」の監督もされた方です。
山川監督は、人の弱さや悲しさを知っているからこそ、温かく優しい作品をつくれるのだと思います。
幼い頃、触るものは全て死に絶える呪いを魔女にかけられた坊ちゃん。
坊ちゃんは名門の貴族の長男ですが、彼の名前は不詳です。
母親からは「死神のよう」とさげすまれ、古い友人からは化け物と罵られた彼。
本邸から馬車で2時間もかかる別邸にて、執事とメイドと三人で暮らしています。
呪いがかけられた最初の数年は、彼は孤独でした。未来に絶望しか持てませんでした。
でも、今の彼は孤独ではありません。
メイドのアリスは、献身的に彼を愛してくれて、彼に生きる希望を与えてくれました。
執事のロブは、彼の親代わりに大切に育ててくれました。
そして妹のヴィオラは、2時間もかけて毎日のように兄に会いに来てくれます。
そして、カフやザインといった友達もできました。
今年は、皆と一緒にクリスマスパーティを催し、楽しむこともできました。
現代人の私たちは、何不自由なく暮らしていますが、坊ちゃんのように多くの人に囲まれてクリスマスパーティをしているでしょうか?
もしかして、私たちのほうが呪いをかけられた坊ちゃんよりも孤独なのかもしれません。
アリスは幼い頃は体が弱く、虐められていたところを坊ちゃんに助けられました。
優しい坊ちゃんの何気ない行動が、幼い頃のアリスにとって救いとなったのです。
そして今、アリスの献身的な行動が、坊ちゃんにとって救いとなっています。
それぞれお互いは、当たり前なことをしているだけだと思うでしょうが、その行動によって救われる人は確かにいるのです。
それは、とても素晴らしいことだと思います。
坊ちゃんはアリスが大好きです。アリスも坊ちゃんが好きです。
お互い触れ合うことはできませんが、一緒にダンスを踊ったり、一緒に歌ったり、一緒にお祭りを見に行ったりと、まるで恋人同士のようです。
それに、夢の中では、二人は手をつなぐことができました。
確かに好きな異性の人とは、手をつなぎたい、キスをしたい、抱きしめたい、と願います。
でも坊ちゃんには、それだけはできません。
しかし、お互いに触れることはできなくとも、二人の影は、いつもしっかりと寄り添っています。
二人の心は、しっかりとつながっています。
オープニングは、「満月とシルエットの夜」 坊ちゃんとアリスとが楽しそうにデュエットしています。
エンディングは「夜想曲」 アリスの力強い歌声を聞くことができます。
素晴らしい作品を教えてくれた私の友達に感謝します。