takato さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
百合の深き薫り。または「君」になる物語。
「私を好きにならないで」
そんな告白の物語。
本作は百合の尊さと、安易な恋愛ものを超えた愛や人間関係の在り方についてまで考えさせる深さが両立している点、「フラグタイム」にちかい。
本作で愛は「特別」と表現されることで、ひたすら肯定される安易な物ではない、それは幾つもの複雑さと微妙さを含んだものになっている。
「特別」に憧れるが、誰も「特別」に思ったことがない。
大切な人の「特別」になれなくて良い。一番隣にいられれば。
「特別」に見える誰かにならなくちゃ、何者でもない私なんて大嫌いだから。私が嫌いな私を好きだなんて言わないで。
これらの絡み合う想いを大袈裟なことなく、静かな緊張と甘やかさを交えてゆっくり進行させる。故に自然に作中のキャラたちと同じように、想いが蓄積していく切なさと愛おしさを味わえる。
本作は過剰にドラマチックな展開は極力排除している。心の変遷を繊細な手つきで丁寧に紡いでゆき、物語を開いたまま余白を残して終わる。
その点は好き嫌い別れるかもだが、「やがて」…そんな願いで終わるほうが本作には相応しいだろう。
それにしても、先生と女マスターが付き合ってることをサラっと普通のことのように描かれてるのが妙に嬉しい。