rie-ru.2 さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「誰かになる」のではなく「やがて君になる」
百合アニメだといって頭から切るのはもったいない。
「好き」という特別な感情の分からない女の子が、それを自覚するまでを丹念に描いた作品。
とてつもない論理性で、人間関係そのものすらも描いていく作品。
小糸侑は「好き」が分からない。
七海燈子もそうだったはずなのに、燈子は侑に会った瞬間それを知ってしまった。
そこから全ては始まる。
{netabare}
最初のうち、侑にとって燈子は「甘えてくる困った先輩」であったろう。
だが燈子を知るたび、その印象は侑の感情と呼応するように変化していく。
素の弱い自分ではダメだと、完璧な才女だった亡き姉の幻影を追う燈子。
それを心配した侑だったが、燈子に冷淡に突っぱねられる。『死んでも、私が好きな人に、嫌いな私自身を好きになって欲しくない』
この冷たい論理に侑はたじろぐけれど、それでも「じゃあ私は先輩を好きにならない」と必死に繋がり続ける。
これは明確な「好き」という感情なのかはわからない。
しかしわからないからこそ、侑はそれを知るために燈子と共に居続けるのだ。
けれども燈子はやがて知る。知っていたはずの亡き姉の後姿は偶像であり、イメージとかけ離れていたことを。
「自分ではない誰かにならなければ」と思っていた燈子は、姉の真実を知って目指すべきものを見失いかける。
そこで侑は遂に「好き」を知るのだ。
『私が好きな燈子先輩に、先輩自身を嫌って欲しくない』と。
相手の触れられたくない場所を知ってなお、そこに踏み込んで変わりたい、変わって欲しいという勇気。
その想いとリンクする、劇の脚本を変えるシーンでは思わず鳥肌が立った方も多いのではないだろうか。
{/netabare}
原作連載中のため、物語は結末までは進みません。
しかし素晴らしい作品だと思う。…力入り過ぎて疲れるけど(笑)
好きな人が、「誰か」ではなく「やがて君になる」ことを望む。
その想いに至るまでの物語。