STONE さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
百合という部分にシフトを置かない百合もの?
原作は未読。
いわゆる百合ものなんだけど、シリアス系のこの手の作品の場合、肯定的に捉えるにしろ、
否定的に捉えて悩むにしろ、「同性を好きになる」こと自体に焦点を当てているのに対して、
本作の主軸キャラである七海 燈子にとって自分を特別視しない人が、小糸 侑にとって特別に
感じられたのが、それぞれにたまたま同性だったという感じになっていたのが興味深い。
逆に佐伯 沙弥香は「同性を好きになる」という部分に対する意識は強そうだったが。
そういう点ではビジュアル的な面は別にして、殊更百合という部分を押しているわけでは
ないような感があり、逆に言えば燈子と侑のいずれかが男性でも成立してしまう内容かも。
ストーリー的には燈子と侑の関係を軸に話が進んでいくが、二人の関係性にしろ、燈子の
心情にしろ、そして侑の変わっていく感情にしろ、ある種のジレンマを孕んでいるものばかりで、
モヤモヤした感情を持ちつつ、目が離せない。
なんと言うか「変わらないといけない」と「今のままでいたい」という矛盾した感情が
同居している感じで、特に燈子の場合は死んだ姉のようであろうとしたという自己の
アイデンティティにも関わる問題だけに、かなり根が深そう。
あまり話が動くタイプの作品ではないが、とにかく心情描写が見事で、そういう点でよくできた
話だなあという印象。そして、その心情の発露の元であるキャラがこれまた魅力的。
この心情描写という点では作中でのキャラのいる場所や物理的立ち位置などが、関係性や
心情のメタファーになっていたりする演出がなかなか上手かったりする。
個人的にはラストの電車のシーンが、侑の「そろそろ乗り換えですよ」というセリフも
相まって、見事な締めという感じ。
まあ、電車というのは他作品でも一緒に乗る乗らない、乗るべき電車の方向が違う、先に行く、
遅れる、停車中に後からきた電車に抜かされる、など心情を示唆するのに凄く良い
大道具だったりするのだが。
2019/01/06
2022/07/24 加筆・修正