sunnyday さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
彼女たちは特別じゃない
僕はもともと百合アニメは見る前から食わず嫌いをしていた人間なんですけど、スタッフロールに「宇宙よりも遠い場所」の脚本を書いた花田十輝さんがいたので、なんとなく1話だけ見ることにしました。
…結局ハマってしまい視聴継続です。
<物語について>
僕が百合が苦手だった理由は2つ、
・同性愛を特別なものだと見なしているようで気持ち悪い
・単純に共感できない
という点です。しかし本作ではそんなことはありませんでした。様々な恋愛の形が極めてニュートラルな視点から描かれているし、なにより強く共感するところがあります。
{netabare}本作では前述したように多彩な恋愛が描かれます。自分と同性の人を好きになる、もしくは人を好きになる気持ちが分からなかったりする人は、おそらく少なくないでしょう(日本におけるLGBTの割合は左利きの割合と大体同じです)。そしてそのような人を決して特別扱いしないのが本作です。
このことが最も感じられたのは7話のBパート、沙弥香がカフェの店長、児玉都と話をする場面です。沙弥香の唐突な質問に対して、あっけらかんとして同性と付き合っていることを話す都は、自らや沙弥香が同性を好きになることを全く特別に思っていない。そのことが僕にとっては素敵なことだなと思いました。{/netabare}
<作画・演出について>
本作の最大の欠点は作画にあります。まず、キャラクターの目の大きさが正面と横顔とで大きく異なっています。話数によってもばらつきがありますし、これはかなり気になりました。
また、2、3話あたりの作画は止め絵も多く不安定で、現場の大変さが伺えます。特に2話の沙弥香と燈子がバレーボールをするシーンは沙弥香の足がめっちゃ細く描かれていて、良くありませんでした。
でも、5、6話あたりから作画は安定してきたように思います(単に目が慣れたのかもしれません)。6話の演出も素晴らしかったし、これからに期待です。
<声優について>
どの声優もキャラクターに合っていたと思います。僕が驚いたのは、「あそびあそばせ」で香澄役だった小原さんが本作では叶こよみを演じていること。ギャップがすごい…!尊敬します笑
<音楽・OPEDについて>
本作の劇伴は大島ミチルさんが担当されています。ストーリーに沿った叙情的な音楽は、詩的な脚本と相まって、小説を読んでいるような気分になれます。
EDテーマの「hectopascal」もポップな感じで好きです。
<キャラについて>
本作のメインキャラクターである3人は、それぞれ違った形の恋愛感情を持っています。
侑は恋そのものが分からなくて、燈子は自分のことを束縛して欲しくなくて、沙弥香はそんな燈子のことが好きで……というように、彼女たちの性格は非常にめんどくさい。でも、そんな風に悩む彼女たちは私たちと何ら変わりはないし、共感できるところが多かった。
特に侑の「心臓が選んでくれたらいいのに」っていう台詞がとっても気に入りました。ほんとそう思うよ。
<その他>
・{netabare}僕は今まで百合を避けて来ましたが、思えば百合という文化はとっても素敵な文化だと思うんです。同性愛をタブー視しないで、むしろ漫画やアニメで商業化することは、日本特有のものだし、もっと評価されてもいいんじゃないでしょうか。
まあ端的に言えば「百合もええやん!」ってことです。{/netabare}
原作を読んでおらず、どういう結末になるのかは分かりませんが、彼女たちの脆くて不安定な恋がどうなるのか楽しみです。
願わくば、佐伯先輩が何らかの形で報われればいいなあ。
12話追記
{netabare}私は私自身のこと嫌いだからあなたは私のこと好きにならないでって……
七海先輩ずるすぎるだろっっ!!
それに対して侑は先輩に自分自身を好きになって欲しいって…
健気すぎるやろっっ!!
…この回が一番好きかもしれません。
最終話追記
てっきり生徒会劇の発表までやると思ってたのですが、その辺りは曖昧なまま水族館デートで終わりでしたね… 原作との兼ね合いもあったのでしょうか?
ただその曖昧な結末のおかげで、本作はさらに文学チックになったように感じました。
最後のシーン、二人はずっとこのままでいたいと思いながらも、乗り換えをします。それは、ここから二人の関係が大きく変わることを示唆しているようです。
まさに「尊い」って感じのシーンでした。
{/netabare}
百合に対する意識ががらりと変わった作品です。まだ見ていない方には是非見てもらいたい作品です。めちゃくちゃおすすめします。