oneandonly さんの感想・評価

4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

子供向け絵柄の大人向け作品

世界観：８
ストーリー：７
リアリティ：９
キャラクター：６
情感：７
合計：３７

巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
（公式サイトより）

以前から気になっていた作品ですが、今年の夏アニメのシーズン１位が実質的に決定したこと（平均４．２は優秀）、Amazonプライムの無料視聴コーナーに本作を見つけたことから視聴しました。

世界観は、洞窟を下に潜るか、塔を上に登るか、といった安易な冒険物設定に近いと思ったのですが、もし巨大な大穴があって、そこから過去の文明の利器が見つかったり、謎があったりした場合をしっかり想像しながら創られている感じがあって良かったです。ＯＰＥＤは刺さらなかったですが、劇伴は良質ですし、作画は美しくこのファンタジー世界を描いてくれています。原作は知りませんが、原作ファンも納得できる出来なんじゃないかなと思います。

物語は、序盤で設定の説明をして、冒険開始。アビスの穴を降りていきます。半分くらいまで、ストーリーありきな感じで進むので退屈に感じる人もいるかもしれません。{netabare}シーカーキャンプでのオーゼンとリコの母ライザとの回想や、箱の話が入ってきてから、引き込まれていったように思います。

序盤で説明された厳しい設定が、しっかりと事実であることを表現していく後半。嘔吐を描いた作品もまずもって珍しいと思いましたが、更に、したたかなモンスターの毒針を受けたリコが、逃げるために上昇したことによって顔から血を吹いて死にかけたり、その後のミーティの顛末は、なかなか骨のあるダークファンタジーへの変貌でした。食事の後、洗い物をしていたり、冒険中の食事のことなど、リアリティ面は高く評価します。

キャラデザは子供っぽく可愛らしいです（好きな絵でもないですが）。特にマルルクが可愛いですが、男の子なんですかね？　後半はドラマがありましたが、主役のリコとレグの魅力を高めるという点では不足感がありました。

リコの旅を応援したいという気持ちに、いまいちなってこないのですよね。アビスの大穴を降りれば、呪いを受けるし、危険な生物と遭遇するかもしれないしと、死と隣り合わせであるため、白笛になりたいという気持ちに共感できない部分が少なからずありました。母親から地の底で待っていると言われても、自分は行けないだろうと思いますし、母親がそんなことするかよ、と思ってしまいます。リコの動機をもっと近いものに感じられれば、もっと楽しめたと思います。

情感は、ナナチとミーティの過去に、心が痛くなりました。だから「火葬砲」なんですね。。{/netabare}

厳しめのコメントもしましたが、全体的に水準の高い、大人が楽しめる作品だと思います（子どもが見たらトラウマになるかもしれませんので要注意）。
続きもありそうな終わり方だったので、続編に期待します。

（参考評価推移：3話4.1→7話4.3→13話4.4）
（2017.11視聴）