セレナーデ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
困った作品がまたひとつ
またやっちまいましたね京アニさん。画に関しては相変わらずの安定感で、他社の作品と一線を画す出来ですなという気分にさせてくれます。しかしお話の出来がそれに追いついていないという近年の京アニ特有の調子もきれいに承襲してしまってて、そりゃあ見事なものです。
物語評を言うと、もうなにからナニまで「中途半端」。帯に短し襷に長しを地で行く、歯切れの悪い仕上がり。
一見すると面白そうな要素がてんこ盛りで期待させられます。閉園危機に瀕したテーマパークを再興させるため来場者数獲得を図る基軸ドラマ、そのテーマパークのマスコットキャラや従業員一同が実は異世界からの来往者であるファンタジー設定、それをベースにしたコメディ、元俳優というエキセントリックな肩書きを持つ主人公がオーナーとなりさらには超能力をも得る展開。まあ若干の「詰め込みすぎなんじゃないの」感も否めないけど、それでも、パッと見どれもこれも充実した未来を予感させるものばかり。
しかし、全て空振りしちゃってるんだなこれが。
全うな経営理論が出土してくるシナリオなんてもってのほか。ファンタジー設定を用いたストーリーも来場者数獲得の流れにいまいちリンクしておらず、ドラマ的な爽快感やオカシサは希薄。コメディも突き抜けたサムシングがあるわけでもなく、むしろ、ドタバタ、王道、シュール、萌えなどのどこに比重を置こうとしてるのかおぼつかない、見ていてヤキモキする内容。主人公も俳優時代のノウハウを活かしたトリッキーな手腕をもって劇的な展開を呼ぶわけでもないし、せっかく与えられた超能力を存分に駆使するわけでもない。
期待していたあれやこれがぜーんぶ少しずつ期待はずれなものとして提供される、拍子抜けな出来。魅力的なドラマにも愉快極まるコメディにもなり切れない、不徹底な出来。
そんな残念なシナリオが展開されるなか、ビジュアル面はがんばってます。それも、そんじょそこらのがんばりぶりではなく、京アニの面目が躍如というべき安心安定のクオリティで。ディテールの凝った線や次々繰り出されるカット、キャラクターが活き活き動く様は、悔しいけれどそれだけで見ていてそこそこ気持ちがいい。
かくして、脚本は微妙と一蹴するに心痛まない仕上がりだのに、作画と演出のがんばりで駄作とは言い切れない困った作品がまたひとつ出来上がってしまいました。
ビジュアル面はともかく、シナリオに関しては、京アニさんにはもう「結局なにがしたかったの?」と思わせる作品を作る力しか残っていないのでしょうか。けいおんらきすたふもっふハルヒ氷菓、今のアニメ界をこんなにしてしまった数々の京アニ産アニメから授かった色眼鏡がそう簡単には外せんのも事実だけども、それ抜きにしても目に余ります。今作に限らず。
そろそろ「次回作こそは」と期待するのがアホらしくなりそう。