けみかけ さんの感想・評価
4.5
一時は完成すら危ぶまれた【27番目の世界名作劇場】の完結を祝して
世界名作劇場などを手掛けた日本アニメーションの創立40周年記念にして久々の完全新作映画
個人的には【27番目の世界名作劇場】と呼ぶに相応しい1作だと感じます
セルフィルム時代の作品を彷彿とさせる温かみのあるキャラデザ、絵の具のような淡い色彩設計、テカりを抑えつつクリアな画面を魅せる撮影効果
これらの技術によってセルアニメ独特の画風を見事21世紀の今日に復活させたといえるヴィジュアルは一見の価値ありです
アラビアンナイトを原作に、航海に旅立つことを夢見る少年シンドバットは、偶然出会った魔法族の末裔である少女サナを助ける
時に彼女を狙う悪漢達と戦いながらも帆船バハル号の船員達と共に魔法族の秘密を追いかける冒険が描かれるボーイミーツガール&ファンタジースペクタクル
第1話に相当する『空飛ぶ姫と秘密の島』、第2話に相当する『魔法のランプと動く島』を再編集
さらに第3話となる新作パートを収録して合計約120分の長篇として改められているのが本作です
前2作から明白に削られたパートは無いように感じました
単にカット毎の繋ぎの尺を少しずつ詰めた編集の様です
ですから前2作をご覧になっていない方でも安心してお楽しみいただけるというか、むしろテンポが良くなってる分【こちらだけ観ればいい】とすら感じます
観どころは純粋にファミリー向け冒険活劇であると同時に、世界名作劇場特有の丁寧な人物描写があるところですね
旅立ちを決意したシンドバットを優しく見送る彼の母
ここは母親役を演じた薬師丸ひろ子の子守唄と共に心に染み入るシークエンスです
この子守唄の切ないメロディーは終盤まで物語を彩る一曲になっていて味があって好きですね
キャラ的には後半どんどんと絆を深めていくシンドバットとサナが周囲を気にせず見つめ合い続けたり(笑)と、イチャラブっぷりが目立つようになっていきこーゆージュブナイル的純愛が好きな人には堪らない内容のはずですw
終盤の新作パートではいよいよ魔法族の秘密、サナの過去、悪漢達のボスであるガリプ様との因縁が明らかになっていきます
以前のレビューに載せましたが一部のメカやエフェクトがCGなのでセルフィルム調の作画とあまりマッチしてなくて「(画面から)浮いてるなー」とは思いつつ、結局最後まであまり改善しなかったのでちょっと残念です
そしてラストには手放しのハッピーエンドとは程遠い切ない締めくくりが待っているのですが、こーゆーのを良いなと取るか単にバッドエンド取るかは観た人に委ねられていると思います
オイラとしてはとても好きなエンディングで、全部スッキリ幸せに暮らしましたとさチャンチャンよりか断然余韻に浸れますね
エンドロールの主題歌も最後まで一貫してwhiteeeenの「ポケット」という楽曲で、爽やかな歌声が冒険活劇の主題歌らしくて素晴らしかったです
よく巷では「ジブリがもうファンタジーを作ってくれないのが寂しい」という声を聞いたりするのですが、ジブリほどお金が掛かっているわけではないにしろ、宮崎駿や高畑勲が築いてきた日本製ファンタジーの系譜はちゃんとこういったところに息づいているんだな、と感じた一作でした
全体的に『ラピュタ』っぽさは拭えないものの、そんな何に似てるかだのはファミリー映画には関係ないなーだって観るのはヲタクじゃねーし、とも思いました
第2話公開直前に急逝された宮下新平監督、そして監督亡き後も作品を完成させることに注力されたスタッフの方々
本当にお疲れ様でしたm(__)m