2009年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画一覧 41

あにこれの全ユーザーが2009年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画を評価したーデータを元にランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年02月02日の時点で一番の2009年夏(7月~9月)に放送されたアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

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年代別アニメ一覧

88.2 1 2009年夏(7月~9月)アニメランキング1位
サマーウォーズ(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★☆ 4.0 (4193)
21330人が棚に入れました
世界中の人々が集うインターネット上の仮想世界、OZ(オズ)。そのメンテナンスのアルバイトをしている高校生の健二は、憧れの夏希先輩から田舎に行くというアルバイトを頼まれる。気楽に応じた健二だったが、実は夏希の本家とは武家の血筋を受け継ぐ旧家、陣内家であり、曾祖母である烈女・栄のために夏希のフィアンセのふりをするというアルバイトだったのだ。さいわい栄は健二を認め、芝居は平穏のうちに終わるかに見えたが、その夜健二はケータイに届いた謎の数式を、数学の問題と考えて解いてしまう。しかしそれは、OZ世界を崩壊させ、現実世界をも混乱させる大事件の幕開けだった。

声優・キャラクター
神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、仲里依紗、斎藤歩、富司純子
ネタバレ

◎TARGET さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

【残念賞】ストーリー構成が雑すぎて冷めた

❏総評

細田守監督作品。
前作の「時をかける少女」が面白かったので見てみたけど
う~んちょっと物足りなかった。何かイマイチだった。



❏作品テーマについて

テーマは以下の2つ
「コンピュータに依存しすぎる社会への警告」
「(大)家族の絆、人の絆」

そしてこの2つのテーマを交差させたものが、この物語の骨組み。
コンピュータに依存した社会で問題が発生したけど、
家族の絆、人の絆があれば乗り越えられるんだ。涙。(←でなかったけどw)

テーマと骨組みは別に悪くない。いくらでも面白くできそうなテーマだ。



❏何故イマイチだったのか?

・2つの作品テーマを結びつけて、物語を収束に導くために不合理で必然性がない設定を多用しすぎ

・問題を解決したのは「家族の絆」ではなく「個人のスキル」の度合いが強いのに、
 映画は「家族の絆」で解決したような印象操作をしている

上記の2点により冷めてしまった。

一旦冷めた気持ちは温まることなくラストまで継続。


以下、具体的にネタバレ込みでダメなとこ書きますね
{netabare}


1. OZシステムにリアリティがない。

 これは技術的にハードルが高すぎて現実的に不可能という意味ではない。
 仮に技術的に可能だとしても、このようなシステムを多くの人が利用し、
 ここまで人々の社会の隅々にまで入り込むはずがないという意味だ。

 ツッコミどころはたくさんある。

 ・仮想世界に店舗を出すメリット、必要性が見いだせない
  (アバターがアバターの服を買うなど仮想世界内だけで完結するものは別として)

 ・社会インフラと仮想世界がつながるメリット、必要性が見いだせない。
  しかも、OZシステムがハッキングされただけでこの大騒ぎって、どんだけ脆弱なのかw
  普通はセキュアなシステムとは外の世界と繋がらないようにするものだ。
  だからこんなこと100%ありえないと感じてしまう。

 ・AIはゲームをしたいんだみたいな感じだったが、
  何故AIはそう思うのか?米国政府が興味を持つようなものがそんなんでいいのか?

 ・AIがアバターとして視覚的な存在になって、
  戦闘行為とかするのは非効率じゃないのか。(AIさん遊びたかったの?)

 ・アカウント乗っ取るとAIの戦闘力が増す意味がわからん、ハッキング技術があるなら
  数値調整すりゃいいじゃんw

 ・衛星落とすのになんでAIさん2時間くれたの?そのまま落とせよw


 設定担当の人にITリテラシーが無いか勉強不足なのかもしれないし、
 視聴者はITリテラシーが無いという前提で、わかりやすくするためにこのような表現になったのかもしれない。
 いずれにせよ、もうちょい煮詰めて欲しかった。



2. 家族の絆のおかげで問題が解決したのか?

 映画では一生懸命そういう風に見せようとしてますが、
 問題を解決したのは結局のところ「個人のスキル」です。

 AIと戦闘できたのも、池沢佳主馬の「スキル」だし
 AIに花札で勝てたのも、篠原夏希の「スキル」だし
 最後に暗号解いたのも、小磯健二の「スキル」だし
 AIを制御できたのも、陣内侘助の「スキル」なのだ

 ちなみにAI作ったのが陣内侘助ってのもOZシステムに負けず劣らず都合が良すぎで閉口。

 栄婆ちゃんが、色んな人たちに電話かけてがんばってたり、
 陣内家の男性陣が、仮想世界内でアバターでちょびっと助けてくれたりして、
 家族が最後一つになって雰囲気はよくなってたけど、
 問題を収束させる役にたったのかというと残念ながらほど遠いw

 花札のシーンで世界の人が協力してくれたのは唯一スキルではなく「絆」が
 役に立ったシーンですが、設定に必然性がなく冷めながら見てたので
 ここも感動が薄まった。

 このシーンを活かすには、
 例えばもっと前の場面で非協力的だった傍観者を伏線として描いておいて、
 そしてラストのここにきてようやくなんらかのきっかけで協力させるとかしないと薄いです。
 唐突すぎて「あ、助けてくれてありがとう。ややジーンとした」レベルwです。


 映画製作者は
 家族が一つになって問題解決したよーやった!→感動
 って方向に持ってきたいのに、

 こちらはスキルで解決しただけじゃん って思ってるので
 正直終始興醒め状態ですw

 スキルを身につけるのに血の滲むような努力をして、
 最後、それでAIを倒すのなら感動できるでしょうが、
 スキルで解決しても「すごいじゃん」って一人ぐらい若い子が言うだけで
 大家族の殆どはスキルの凄さを誰も認知していない。

 なんかこのレビュー書いてて段々腹が立ってきたw

{/netabare}



❏ささやかなフォローをしてみる

物語の進行中にいちいち設定で冷めながら見てましたが、
人物の表情や心理描や声優さんの演技に救われて、
他の面に関しては楽しく見れた。

なので上記でダメ出しは多いけど、時間の無駄とかにはならなかった。

さらに言うと設定の部分や絆の描き方に何ら疑問を持たずに見れたラッキーな人に
とっては素晴らしい作品だったのではないかと思う。


❏世間一般の評価

・観客動員数123万人
・Blu-ray Discは初登場5.4万枚の売上げで週間ランキング1位
・初動記録としては当時のアニメ作品歴代1位
・BD総合歴代2位
・同日発売のDVDも総合ランキングで初登場5.5万枚で1位
・同一アニメ作品のDVD・BD両メディアダブル首位
・シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門 (Gertie Award) 最優秀長編作品賞(第42回)
・日本SF大会星雲賞メディア部門(第41回)
・『金曜ロードショー』での地上波初放送視聴率は関東地区で13.1%
・『金曜ロードSHOW!』2回目の地上波放送。視聴率は前回を上回る14.1%

↑自分の感覚との違いにびっくり。
 何でここまでの評価と実績があるのか疑問。
 作品のプロモーションにお金かけたから売れただけなのでは?と疑念を払えないw

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

夏の清涼感たっぷりの作品です

あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。


 初見でした。
 時をかける少女と同じ監督の作品とのことですが、随分違う描き方をしていたので驚きました。あまりフラグや考察ポイントを作らずに、ストーリーとテンポでぐいぐいと引っ張っていくような作品です。時をかける少女よりはより子供向けを目指していたのだと思われます。顔が赤くなる、鼻血が出るなどアニメ独特の表現をふんだんに取り入れているため、荒唐無稽とも思える設定(設備とか才能とか)も許せてしまうようになっています。面白かったです。鬱になるシーンもないのでまだ見ていない方はぜひとも気軽な気持ちでご覧になるといいでしょう。

テーマ:
 人とのつながりでしょう。家族との対面でのつながりを描いたのちに、黒電話によるアナログ感たっぷりの人とのつながり、ネットによる架空での人とのつながり。話が大きくなるにつれてつながりの質も規模も変化していくところは本作における見どころのひとつになっていたと思います。
 主人公におけるつながりの表現も良かったです。一人で食事をし、友達も一人しか登場しない主人公。最初に、訳も分からずにおばあちゃんに認められます。そして、ある人を「よろしくお願い」されることになります。最後に、とある家族とつながりを持つようになりました。ストーリー展開の規模に比べて随分小さなステップですが、確実に踏み越えていくこの描写は、夏の背景と合わさって清涼感たっぷりのエンディングを迎えさせてくれました。


疑問点・不満点:
{netabare}
①探査機の名前
 探査機のモデルは明らかですが、名前はオリジナルですよね?探査機のニュースは随所に出てきますが、襲われることには唐突な感じを受けてしまいました。探査機の名前が、過去のいくさや野球の対戦相手、地名などと同じであったり模してあったりすると襲われることも腑に落ちたかな、と思いました。裏設定があるのでしょうか?それとも見落としたかな?

②探査機のターゲット
 ターゲットが犬なのか家なのか、どちらか分かりませんでしたが、「なぜここに!?」というのはありましたよね。まぁ敵と認識したところに落としただけなのでしょうが説明不足な感じもありました。
 ①と関連するのですが、探査機の名前か犬の名前でこの違和感を解消して欲しかったです。おばあちゃんと犬のエピソードを入れてその中でフラグを立てておくのも良かったでしょう。犬の名前は作中で出ていましたが、確かほとんど意味のない名前だったように記憶しています。いずれにせよ、当然ここに落ちてくる、と視聴者が気構えておけるような理由付けをして欲しかったです。

③花札
 最後の花札のシーン、決め札がはっきりとは確認できませんでした。バトルの締めのシーンなので、決め札を「思い出の札」にすべきだったと思います。視聴後に確認したところ、雨四光に桜を加えた五光でした。つまり決め札は桜。ここだけはやや強い不満があります。サマーとタイトルが付いた作品で、桜で締めでは納得しがたいものがあります。名シーンであるだけに心残りとなってしまいました。

 では、決め札は何にすべきだったのか。花札には種類ごとに月が決まっています。五光に限っていいますと、松に鶴は1月、桜に幕は3月、ススキに月は8月、柳に道風は11月、桐に鳳凰は12月です。夏に対応する五光はありません(8月は秋です)。適当な候補がないんですよね。

 ということでストーリー上に五光のどれかにふさわしいシンボルを用意しておくべきだったのでしょう。ここで注目すべきは家族の象徴である鳥型の家紋です。家紋はおばあちゃんの背中で強烈に印象付けられるのですが、その後使われたのは敵を閉じ込めるシーンだけです。家族の象徴なのにこれだけなんてもったいないように思えます。
 鳥を模した家紋なので決め札は鶴が妥当でしょう。作中の家紋の鳥(おそらく鶴ではない)を鶴に改編して、家紋の鶴の札で勝った(=家族の力で勝った)、という結末のほうがスッキリしました。このためのフラグとして、2回ある対人戦ではいずれも鶴の札で勝利させてあげるべきでしょう。おばあちゃんに鶴の札に関する思い出を語らせるのも良と思います。おばあちゃんは家紋と同じだから鶴の札が好き、ワビスケはおばあちゃんの好きな札だから鶴の札が好き。こうすることでワビスケからおばあちゃんへの愛情にも重みが増すと思われます。作中では手をつないでいるシーンくらいしか直接的な表現はありませんから。
 作中の家紋自体は実在のものを使っている可能性もありますが、前述したようにアニメらしく作っている作品です。山に船を運んでしまうくらいですから、鶴をモチーフに創作したオリジナルの家紋でも良かったのではないでしょうか。

 一度敗れた敵に、仲間とのきずなでリベンジする、という技法は少年漫画で散見されるものですが、この作品に採用しても上手く機能したと思えるのです。もっとテーマを露骨に表現して欲しかったです。
{/netabare}
 この3点を解消するだけで、物語の説得性と厚みが増すと思うのですが、いかがでしょうか。
 とはいえ、気になった程度であり、作品をダメにしているのでは決してありません。アニメ表現を利用したご都合主義を採用しているのですから、とことんやってしまえ、と思った次第です。現状でも十分な名作であることは間違いありません。

対象年齢:
 ただ見るだけなら小学校低学年くらいからでも大丈夫だとは思いますが、理解することを条件とするなら小学校の高学年くらいからでしょう。家族ものですのでそれ以上の年齢であればどなたでもご覧になれます。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

7月と言えばサマーウォーズ。見る度に評価があがります。

 7月なのでサマーウォーズです。夏になると見たいアニメが沢山ありますが、その筆頭ですね。多分公開された翌年くらいから毎年見ている気がします。
 21年と22年の夏にレビューして、追記もありました。ごちゃごちゃになるのでまとめます。もう10回以上再視聴しているので、評価はオール5にしておきます。

 この映画の特徴はビジュアルの良さでしょう。バーチャル空間の見せ方と田舎の古きよき旧家の対比。クーラーの無い部屋で食事をする様子。扇風機やスイカなどなど。子供が走り回ったり、皆で風呂に入ったり。スダレとか縁側とか。それだけで見る価値があるくらい素晴らしい画面です。

 本作はバーチャル空間の描写が話題でした。また、その中で独自のアルゴリズムによって「悪意」を巻き散らかすプログラムが敵なので、あたかもそこにテーマ性があるように感じるかもしれませんが、それは舞台でしかないと思います。
 あまりバーチャル空間とAIにテーマ性を求めると矛盾もあるでしょうし、テーマも浅く感じると思います。
 あくまで「家族」が戦う物語の敵役として、人間ではない敵を用意した、という感じでしょう。侘助=ラブマシーンに見えてしまいますが、ミスディレクションです。ビジュアルが凄すぎるのでそっちに視点がどうしても向きますけど。

 本作で一番の見どころは、家族と言えば家族なんですけど、統一された意思の元で「自分の役割を果たす」というところだと思います。あのイヤな警官ですら自分の役割を自覚していました。

 そしてなんといってもこの映画の良さは、解決に沢山の人が寄与する、ということです。
 主人公が1人でなんとかするではなく、家族みんながハイスペックPCを用意する、VR格闘技で戦う少年とその師匠、氷をもってくる、電源の船を持ってくる。女たちはバーチャルではなく、現実で奮闘しています。葬式の準備やご飯の支度、甲子園の応援などなど。
 それがおばあちゃんの死後でも、ちゃんと機能しているところが素晴らしかったと思います。おばあちゃんの遺志を継ぐのは恐らく夏希で健二がサポートするのかなあと、キービジュアルを見ると想像してしまいます。

 そして、満を持してヒロインも戦います。これも力を合わせると言うところにつながっていきました。ここは今見ても恥ずかしいご都合主義ですけど。夏希も戦いに参加するにはここしかなかったんでしょう。ここにメッセージ性を求めるのは牽強付会かなあという気がします。
 映画としては、その後の健二の活躍があるので、それほど気にならないと思います。

 夏希が健二を田舎に連れ出す時、2人の候補者の中から健二を選んだシーンは見せてないですよね。これは夏希が迷ったフリをしながら健二になるような作為があったのだと考えられます。
 もともと叔父の侘助に似たところを健二に見ていたのかなあ、という想像ができます。
 人を見る目があるおばあちゃんが健二に夏希を託したところで、健二も家族になったととることができるでしょう。だから、最後は力を合わせて戦うシーンにつながったのでしょう。

 この映画の難点は、夏希の内面描写かなあと思っていましたが、今年見て気が付いたのは、健二の視点の映画なので、夏希の内面が分かるとつまらないですよね。健二への気持ちが本当はどうなの?というところとか、侘助への態度に嫉妬してしまうとか。
 声優さんの演技が棒という批判もあるみたいですけど、この子の不思議な感じによく合っていた気がします。と言ってももうサマーウォーズと言えばこの演技なので、気にもなりません。

 いろいろ批判も出来なくはないでしょう。バーチャル空間やAIに絡んで、いろいろ批判も見かけますが、上述の通りそれは舞台であり、エンタメとしての華やかさです。ド田舎の大家族という「点」と世界と言う広がりが同じ場所にある、という対比はある気がします。

 何より、批判するのが無粋な映画の筆頭かなあと思います。本作は話のつながりと、構成・演出が良すぎて、スーッと通り過ぎてしまいます。それだけエンタメとして出来がいいということでしょう。
 夏にみるのに、爽やかで面白く、感動もできる名作だと思っています。

 細田守氏の映画では一番好きな映画です。脚本や企画が本人じゃないし、今よりも案件臭が無いし、我儘もきかない立場だったころだから奇跡的に素晴らしいバランスの映画が生まれたのかなあなどと想像します。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 15

84.9 2 2009年夏(7月~9月)アニメランキング2位
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(アニメ映画)

2009年6月27日
★★★★★ 4.2 (2161)
12626人が棚に入れました
2007年9月1日に公開され、全4部作のうち、序章的な位置づけにあたる。本作のベースとなったのは、TVシリーズのうち第壱話から第六話まで。14歳のシンジ少年が汎用ヒト型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオンに乗って正体不明の敵性存在「使徒」と戦い始める契機と、自分の暮らし、友人、街など身近なものを認識する過程が、丁寧なタッチで再び語られ、1本の映画として再構成されている。クライマックスは、国家規模のオペレーションを描いた「ヤシマ作戦」。日本中の電力を箱根の一点に集め、シンジのEVA初号機が狙う陽電子砲の起動エネルギーとする大プロジェクトだ。自在に変形と攻撃を繰り返し、ネルフ本部へ侵入しようとする使徒。人類すべての運命が自分の双肩にかかったとき、シンジの心中に芽生えたものは・・・。

声優・キャラクター
緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、山寺宏一、石田彰、立木文彦、清川元夢、長沢美樹、子安武人、優希比呂、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、麦人

にゃんにゃ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

正直…

「使途」と呼ばれる敵が次々に、人類の前に現れる。
そして、使途がある場所に近づくとサードインパクトという大惨事が起こるらしい。
サードインパクトを未然に防ぐため、
人類はネルフと呼ばれる組織を結成し、「エヴァ」と呼ばれるロボットで、それに対抗する。

そんなエヴァパイロットたちのラブストーリー。

しかしその裏に、ネルフ総司令官碇ゲンドウの怪しげな思惑が見え隠れする。




この作品が、旧エヴァを超えることはない。
旧劇場版から早10年。エヴァンゲリオンが美化されるには十分すぎる年月が過ぎた。
私の記憶の中で美しく、かつ鮮やかに残るエヴァンゲリオン。

もう一度言う。
ヱヴァンゲリヲンがエヴァンゲリオンを超えることはない。
ヱヴァンゲリヲンはエヴァンゲリオンの贋作に過ぎない。



我々の仕事はサービス業でもあります。
当然ながら、エヴァンゲリオンを知らない人たちが触れやすいよう、(以下略)

庵野氏がこういうように、
エヴァンゲリオンから、めんどくさい描写を一切省き、シンプルに、万人受けしやすいように
作り変えられたのがこの作品。(序・破までの意見)

シンジの鬱は身をひそめ、アスカのマザコン描写は皆無。レイも普通の女の子。

個性というか、癖がなくなっている。
さらには、頬を赤らめたり、にゃんにゃん言ったり、大衆受け狙ってる感が否めない。
「逃げちゃだめだ」が少ないのは大衆向けに、
シンジのイメージアップか?
「あんたバカ」「ありえないわ」を過剰に使用するのはパチンコファン対策か?
ミサトのセリフをパロったリツコの「奇跡を待つより地道な努力」も、いまいちピンとこない。


客に媚びるのは、何とエヴァらしくないことだ。


展開も感情変化も速すぎてついていけない。感情移入もへったくれもない。
旧作の名シーン名セリフを矢継ぎ早に、唐突につないでいく流れには苛立ちさえも覚えた。

旧作では効果的だったシーンがこの作品で観ると、
無駄に思えてしまう。



新劇場版「破」。
その名の通り、ヱヴァでエヴァを破壊しようとした結果、
いい意味でも悪い意味でもエヴァの世界は壊されている。

面白いとは思うが、正直言っていいイメージはない。
しかしこれは「エピソード0」に過ぎない。



次回作「Quickening」
胎動。とうとう物語は動き出す。新しいヱヴァンゲリヲンの始まり。未知の世界への突入。
これが期待せずにいられるか。

次回作次第で、ヱヴァンゲリヲンの価値は決まる。
壊すなら徹底的に壊してほしい。
中途半端に壊して、エヴァの幻影を振りほどけないようなら、
それこそ、出来の悪い贋作になり下がる。
 
注)
エヴァンゲリオン、旧作→アニメ版&旧劇場版
ヱヴァンゲリヲン→新劇場版2作

以下ねたばれ
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以下ネタばれ


心に移りゆくよしなしことをそこはかとなく…

ネブカドネザルのカギ…
原作から考えると、このアイテムは今後出てこない。
というよりもうすでに使用済み?その結果の初号機覚醒か?

まきは…
子供の都合ってなに?普通に2号機乗り回してるし、ほんと謎。

かおる…
彼だけ、アニメ版とリンクしている?
「今度こそ…」って今作はハッピーエンドにするって意味?それとも…
大人たちによって仕組まれた運命から救う。だから神になりかけたシンジを、ロンギヌスの槍で救った?
…もしかしてシンジ殺される?予告出てないし。

エヴァ8号機…
その役目は?そして誰が乗る?新キャラ登場?

カヲルの前に立つ、運命を仕組まれた4人の子供…
普通に考えるとシンジ・レイ・アスカ・マリ。
でもシンジじゃない気がする。新しい「波」が加わる予感。
じゃないと惣流から式波に変えた意味がない。「3」はどこにも結び付かない。


倒すべき使途は、あと2人…
2人って、カヲルは入ってないっぽいよね?

アダム・リリス…
両人の立ち位置がわからない。
今作ではセントラルドグマにいるのはリリス。これは周知の事実。
でも実はこれがアダムだったら?使徒が生まれるところであるアダムを目指すなら納得。
更に加持とゲンドウ、冬月のシーンがアダムから鍵に変わっているのも納得。
すべてを知っているであろうゲンドウがまだ、アダムリリスに触れていないのも納得。
月にいるのは月の女神であるリリス。
リリスのしもべであるカヲルは使途ではなくなる?でも眼は赤いままなんだよなー…
ヒトの母であるリリスによる計画遂行を望むカヲル(ゼーレ)は、
シンジ(ネルフ)による、アダムの分身である初号機による計画の遂行をロンギヌスの槍によって阻止した?


人類補完計画…
このままだと完遂しそう。でもやったら駄作。そこは裏切ってほしい。

宇多田…
復活?

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

少女は先に大人になる。少年時代という世界は破壊される。

 新劇場版序については、シンジを通して自分が何者か、自分が何をすればいいのか、どこにいるのかがわからない14歳のみならず、バブル期以降の日本人の気分を象徴していた、という印象を持ちました。家族の喪失、大人と子供の溝。設定考察では見えてこないものが描かれていたと思います。

 本作、破も当然その続きではありますが、ここではアスカとレイ。2人の少女です。天才型と秀才型ともいえるし、陽と陰ともいえる対照的な2人。この2人とシンジとの交流がテーマになりました。

 同級生の少女たちと葛藤を持ちながらも、次第に心を通わせる。アスカとは性的なニュアンスもありました。
 2人のエヴァに乗る動機の部分は新劇場版だとちょっと表面的でした。もちろん承認という点は描けていましたが、ちょっと肉付けが物足りなかった気がします。新劇場版の序破は特にアスカの掘り下げが説明不足な気がします。

 冒頭、新キャラのマリは5号機を破壊したことを「自分の都合に大人を巻き込むのは気おくれする」と言っていました。つまりエヴァとは「大人の都合」あるいは「大人の世界」と解釈することができます。
 
 マリの獣は分かりやすい肉食系女子のアナロジーに見えます。アスカはエヴァに取り込まれます。このときのアスカのプラグスーツはほぼ裸でした。あのシーンって性的なニュアンスが色濃くあった気がします。デート(あるいは行為)の前の身支度をしている雰囲気でした。髪もいじってたし。レイはシンジをエヴァに乗せないために、自ら特攻します。レイのエヴァは「食べられて」敵側に取り込まれて、シンジに襲い掛かります。

 ここは強烈に性的なアナロジーを感じます。3人の少女たちは様々な形で、シンジを置き去りにして「大人」になる、と見えます。つまり、本作「破」は少女たちが先に大人になって、おいて行かれた14歳の少年の話ということだと思います。

 それがつまり、純粋だった少年時代の終わり、つまり世界の破滅です。セカンドインパクトとかサードインパクトは成長段階の事とみることができそうです。

 思春期の性的な成長(性行為そのもの、または、同級生の少女が先に性行為をしているという事実)、あるいはエヴァにのる大人の社会に自分の意思で足を踏み入れる、親離れなどがサードインパクトかなあ、という気がします。(Qに至って、ニアサードインパクトという名前になっていました。つまり、正式なサードインパクト=実際の成長=性行為ではないという定義になります。それが後付けなのか、本作時点からの意図なのかはわかりません。本作の描写から言って、実際レイとはなんらかのふれあいがあったとみるべきか、あるいはこの時点で…というのはQで考察します)

 序、破の並びで比較すると、なんとなく、破は、心を通わせ始めた少女たちとの交流を楽しんでいたのに、少女たちが先に大人になる、という気がします。

 アスカの登場時の子供っぽさと、最後の出撃前の大人っぽさのギャップ。最後のミサトへのお礼というのが明確に描かれていました。もちろん、性的な事ばかりでなく、少女がわの視点に立った場合、大人世界=社会的な役割を果たす、という意味にもとれます。
 レイもシンジのために…という自分の意思でした。マリは初めから大人を利用する気満々です。マリについてはまた次作以降で考察します。

 まあ、エヴァでの考察は厳密性を求めると、何かを見失いそうなので、これくらいにしますが、少女のほうが先に大人になる。その先を見ようとすると世界=少年期は崩れ去る。そういう話だったと思います。

 この世界を虚構の世界、つまり2Dと見ることもできますが、どうでしょうか?そちらの意味もあるかもしれませんが、あまりシンエヴァやまごころのラストで、「アニメを卒業」に引っ張られないほうがいいかもしれません。庵野監督がそちらを意図したとしても、エヴァファンはそこに乗っかったのではなく共感したのは「14歳の気分」だと思いますので、そこは忘れたくないです。

 また、エロスの視点は重要だと思います。TV版と「AIR/まごころを、君に」も参考にしてますけど。


 改めてすごい作品だなあと思います。考察云々はおいて置いても、SF、ロボットアニメとして凄い設定、映像、ストーリーの作品だし、何よりアスカとレイの2名の美少女は日本のアニメ史をもっとも彩ったキャラではないでしょうか。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10

A.Crest さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

螺旋的に輪廻する世界としてのエヴァシリーズ

私信のように感じてしまう作品というのがある。そこには心の底の記憶を掻き起すような仕掛けがあちこちに埋め込まれている。

たとえば、ミサトの携帯、あのウルトラ警備隊の通信機の音は、その玩具を買ってもらった子供の頃の風景や匂いを、居酒屋に流れる昭和レトロな曲"恋の季節”は、今はもう物置にもないあの電蓄で聞いていた45回転シングルの音を、第9使徒および第10使徒との戦いの際の"今日の日はさようなら"にいたっては、学生時代のキャンプファイヤーの夜を、否応なく鮮やかに蘇らせてしまう。

これをオマージュと呼ぶのは相応しくない。それは過去の心象風景を召喚するスイッチであり、視聴者の記憶をスクリーン上の架空の物語に横糸のように織り込んでいく仕掛けだ。そしていつの間にか視ていたはずの者はあたかも当事者のように物語世界にひきずりこまれてしまう。これがエヴァという作品の手法なのだ。踏切の音、留守電のメッセージなどの生活音をわざわざリアルから持ってきているのにも同じ演出意図を感じる。

私はその効果を素晴らしいとも、あざといとも思う。

世代・文化圏の違う人達に対してこれらの仕掛けがどう働くのかは判らないが、少なくとも私は魔法にかかり、エヴァをまたもや私信のように感じながら、いろいろなことを考えてしまうのであった。

95年のころと比べて、なんというかエヴァも丸くなったというか、優しくなった。ゲンドウの不器用な父親のありようは、なんだかこう、愛らしいとう領域にあるし、レイも心を開き行動を起こすまでに成長しているではないか。なぜ??

カヲルは「今度こそ君を幸せにする」と言った。この物語はおそらくパラレルワールド型ではない。前回のサードインパクト後に再創造された世界を舞台とし、少しだけ成長した魂たちによる二度目(あるいはそれ以上)のチャレンジなのであり、前回のエヴァから螺旋的に展開した物語世界なのではなかろうか。「Air/まごころを君に」のあの最後のセリフ『キモチワルイ』はバッドエンドを示していたのだったか、と。。。

いや、そんな解釈を抜きにしても、ここにある新しい物語世界が、15年前にエヴァを作っていたスタッフの心の成長であり、物語世界に参加していた私達の心の成長なのであることはきっと真実だ。

庵野監督にはこれからも成長し輪廻するエヴァをずっと作り続けていってほしい、否、そうするしかないであろう。まだ見ぬ第四部のラストで本当に満足できるフィナーレが描けるとは思えないから。なぜなら、人類の補完、すなわちヒトのあるべき姿などを描けた作品は未だかつてないのだから。私たちは永遠にチャレンジし続けるしかないのだから。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 16

75.7 3 2009年夏(7月~9月)アニメランキング3位
空の境界 第七章 殺人考察(後)(アニメ映画)

2009年8月8日
★★★★★ 4.1 (728)
4355人が棚に入れました
1999年2月。両儀式が黒桐幹也の前から姿を消した。そして、それに合わせる様に再発する連続殺人事件。3年前、自らを人殺しと称した式。信じ続けると誓った幹也。幹也は式の無実を証明するため、殺人事件の捜査を始める。そんな中、幹也はある麻薬事件をきっかけに高校時代の先輩・白純里緒と再会する。

声優・キャラクター
坂本真綾、鈴村健一、本田貴子、藤村歩、中田譲治、保志総一朗
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

空の境界の集大成。式と織の夢の行方は如何に

「空の境界」は奈須きのこによる、同人誌に掲載された長編伝奇小説である。全7章で構成され、本作は第七章「殺人考察(後)」が映像化された。「そらのきょうかい」でも「くうのきょうかい」でもなく、「からのきょうかい」なのでお間違えの無い様に。略称は「らっきょ」。


「空の境界」は奈須きのこの小説だが、奈須きのこと武内崇の所属する同人サークル(現在は有限会社Noteのブランド)「TYPE MOON」の作品に「月姫」、「Fateシリーズ」などがあり、「空の境界」と世界観を共有している。奈須氏によると「微妙にズレた平行世界」とのこと。

劇場版「空の境界」は圧倒的な映像美、迫力満点の戦闘シーンと、難解且つ素晴らしい世界観を、原作小説を忠実に再現し映像化したufotableの力作である。
本作のメインテーマは「境界」である。相反する二つのものに関するメッセージが緻密に組み込まれている。
その各々に対する矛盾もまたテーマの一つだ。
奈須氏の命の重さ、禁忌を主題とした本作の完成度には脱帽するばかりである。
「生」と「死」、「殺人」と「殺戮」などについて考察するわけだが、テーマがこれであるから必然的にグロテスクな描写がある(しかも美しかったり)。
また、難解な言葉(辞書的意味では用いない)や、時系列のシャッフルにより、物語の理解はやや困難である。
しかし、この時系列シャッフルこそが「ミステリ」における叙述トッリクとして作用しているのである。
決して時系列の通りに見てはいけない(2度目からはご自由に)他にも、原作にはなかった「色分け」が行われている点も魅力的だ。式の服の色や、月の色なども見てみると楽しい。
全7章に渡って展開される両義式と黒桐幹也の関係も素晴らしい。
設定はここで説明するとつまらないので、作品を視聴することをお勧めしたい(丸投げであるが(笑))
副題のThe Garden of sinnersは直訳すると「罪人の庭」と言う意味。sinには(宗教・道徳上の)罪という意味があり、guiltの(法律上の)罪とは区別される。
Theの次のGardenが大文字であることから、これはギリシアの人生の目的を心の平静(アタラクシア)に見出した精神快楽主義のエピクロス学派を意味する。よってThe Garden of sinnersは快楽主義に溺れた道徳的罪人という意訳が適切ではないか。

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第七章の本作は「空の境界」の時系列で、全7章のうち7番目にあたる作品だ。本作の視聴で第一章から第六章までの展開や伏線について、九分九厘解明され、当然ながら本作の集大成といえる章である。第二章は殺人考察(前)ということもあって、本章の前日譚であり話の関連性が多く見られる。しかし、二章の他にも本章への伏線は張巡らされているので、注意深く視聴して欲しい。二章から本章まで七章作品があるが、五章で述べた通り、荒耶の野望としての側面は五章までで、六章・七章は彼の残滓・置き土産との戦いである。
本章は置き土産2号との戦い(笑)
そして空の境界の式と幹也のラヴストーリー性が最大に際立っているのが本章である。
式、幹也が各々の方法で4年前からの事件に決着を付けるべく行動する。彼らの葛藤とその意味、事件の真相と結果が見所。
また、本章視聴後、是非、終章空の境界も見て欲しい。こちらを見る事によりより深く、作品を理解することができると思う。
副題の not nothing heartは「空虚な心でない」といった訳だろうか。二章と対照的。
考察←観る前に見ない様に。

{netabare}
時系列:7/8
1999年2月
両儀式:19歳 職業:高校生
黒桐幹也:19歳 職業:大学中退 伽藍の堂に勤務

原作との相違:小
原作との尺の比 210P:120min=1:0.83(1分当たり1.75P)
(一番原作との尺の長さの比が合致していると判断される2章の比を基準:1とする)
(原作の頁数は講談社文庫を用いる)

・「白純里緒」について
黒桐幹也の高校時代の先輩であり生徒会に属していた目立たない生徒だった。幹也は六章で述べた通り、誰にでも普遍的に接し、交際範囲が広く、彼は一人の先輩としての位置づけだが、彼は幹也に常軌を逸した親愛の情を寄せる。
両儀式に惚れて告白するも、「弱い人は嫌いです」と振られてしまう。彼は潔癖症で人間嫌いだったが、式に惚れた理由は、式が男性と女性の要素を兼ね備えていたからだろう。彼は天性の女性的嗜好家で、式よりも織に惚れていたきらいがある。月刊コンプティークのインタビューで、奈須氏は「里緒は性同一性障害であり、織に惹かれ、幹也に惹かれた」と答えている。
強い自分になるべくゲームセンターで幅を利かせていた不良を挑発し、木材で遭えなく殺害してしまう。死体処理に困った揚句に死体を摂食して処理することを思い付き、之を食らう。処理中に荒耶宗蓮に認められ「食べる」という起源(後述)を覚醒する。
彼には自身の行為の異常性の認識があったものの、荒耶に「君はすでに常識に不在している」と言われ、道徳に縛られない、常識という世界において異常者は罪に囚われない(罪に問われないわけではではない)という観念に没頭する。
起源覚醒時に荒耶に「りお――おしいな、一字違えば君は獅子だったのに」と言われ、獅子を模す為に金髪に染めている。(レオ=Leoとはラテン語で獅子、ライオンを意味する。性質と名前の関連で言えば両儀式は完璧と言える。性質と名前の一致は重要と思われる。)
二年前の殺人事件でも式に模した格好で殺人を連続して挙行しており、彼女の殺人衝動を刺激して、彼女も自分と同じ殺人鬼にすることで、自らの欲望を満たそうとした。
(防衛機制に於ける式と自身の同一視という見方も出来る。)
他にも、薬屋の息子だったこともあり、自分と同じ起源覚醒者を製造する為に、荒耶から貰った大麻を安価で頒布し、見込みのあるものには、自分の血液を混入したブラッド・チップというドラッグを頒布した。
荒耶宗蓮の所有するアパートに居住し、部屋には両儀式コレクションがある。薬の製造も此処で行われた。
式が殺人に踏み切れない理由を「普通」や常識に囚われていること、それらと式を繋いでいる対象を幹也だと看破し、式を自分と同じ異常者に誘う為に彼を殺害しようとした。
彼は、式に振られてから犯した殺人を堺に、自分は異常だから、狂っているから異常な行為をするのは当然と、自己を正当化する為に狂った振りをして、言い訳をして、自分から、現実から逃げていた。
「・・・・・・生まれた時から理由もなく殺人を嗜好してしまう式と、自分を守る為に殺人を嗜好していると思い込んだ白純里緒」という幹也の台詞は簡潔で正鵠を射ている。
「空の境界という伝奇作品」のラスボスが荒耶宗蓮ならば、「式と幹也の恋愛物語」のラスボスは彼だろう。

・「壊れていない人間が殺人後に採る行動」について
白純里緒は前章の境界式で荒耶に「そうか。それは、君が特別だという事だ。殺人という極限状態において選ばれた選択には余分なモノがない。おおかたの人格はその時点で自らの罪から逃亡する。だが君は、君にしかできない方法でそれに立ち向かった。たとえそれが常識という範疇から”壊れている”方法だとしても、それを非に思う事はない」と言われ、自らの特別性を認識する。

奈須きのこが神様(月姫読本Plus Period 漢話月姫第七回より)だという京極夏彦の説を引用すると、
(魍魎の匣p.88より)
動機は後から、便宜上他人がつけるようなもので、犯罪を犯罪たらしめるために、社会通念上動機という理由が必要である。
動機は皆持っており、特殊なことではない。犯罪者と一般人を分かつものはそれが可能な状況や環境が訪れるか否かの一点にかかっている。
正常異常で分けるのなら、精神状態が一番異常になるのは犯行の後である。些細な衝動、殺した後に物凄い非日常的な状態に気が付く。
この状況を脱する、日常に戻る為の方法は二つ
 一つは後悔、反省、自首などの矯正をする。
 一つは社会に見逃して貰えば良いと、犯行を隠蔽する。バラバラはこの工程で合理的判断から行われるが、良心の呵責から、結局は警察に露見してしまう。

蛇足だが、監察医里村の意見だとバラバラは殆ど頭・胴体・両腕・両足の6つに分解されるが、そこまでする時間があるのならば、もっと細かく、肉は細切れにして、骨を砕いて、飼料にでも混ぜて畑に撒けば絶対に分からない。
絶対に捕まりたくないと思えばここまでやるだろうが、深層心理の何処かに捕まりたいという思い或いは遺しておきたいという思いがあるのかもしれない。

この考えでいけば白純が異常だったのは死体を摂食しようと思ったこと一点であり、荒耶の罪は重いと言えるだろう。


・「起源」について
起源とは生命体が生命の根底にもつ衝動で、始まりの因で発生した方向性であり絶対命令である。生命の存在意義であり、人格の形成に影響を与える。人格よりも肉体に対する支配力は強いが通常は自覚することが無い為、強い作用には至らない。起源を覚醒した人間は徐々に起源に飲み込まれ人格は消滅するが、強大な力を得る。荒耶宗蓮は螺旋した人の性を覆す為の人間のルーツの探求中に、起源覚醒の術を得た。覚醒には、荒耶と起源覚醒者の双方の同意が必要。


・「四年前の事件の真相」について
前半は省略。詳しくは、二章殺人考察(前)を参照

式は黒桐幹也を求める心と壊してしまいたいと思う心(ambivalent)に苛まれながら幹也を刺殺すようとするも、愛情と夢を叶えたいという想いから躊躇し、殺すことしか出来ない彼女は、自らの命を絶とうと自刃しようとする(一章の逃避行動の内の飛行)。しかし、五章矛盾螺旋で述べた通り、式の肉体の成熟を見守っていた荒耶に妨害される。幹也の傍を離れるべく逃走し幹也に追われるも、結局は自動車に跳ねられる。ここからは詳しくは四章伽藍の洞を参照して頂きたいが、昏睡から目覚める際に六章忘却録音で述べた通り、織は織と幹也の思い出、事件当夜の記憶を目覚めた後の式の理性によって解釈を改編されぬように(これは一種の防衛機制における抑圧とも解釈出来る)永遠の忘却の彼方に送った。そして織には叶えられぬ「普通に生きる」という夢を式に託し、消滅した。

・「殺人と殺戮」について
式の祖父は彼女と同じ二重存在者で、自らを痛めつけ、潰しあい、否定して、自己が曖昧になってしまった人物で、二十年近く座敷牢に幽閉され、何十年と正気でなかったが、式が六歳になり道具さえあれば何かを殺してしまえる体になったころ、今際の際に式に遺言を残した。
「人は一生に一人分の死しか背負えない」

祖父「人は、一生に必ず一度は人を殺す」
式「そう、なの?」
祖父「そうだよ。自分自身を最後に死なせるために、私たちには一度だけ、その権利があるんだ」
式「じぶんの、ため?」
祖父「そうとも。人はね、一人分しか人生の価値を受け持てないんだ。だからみんな、最後まで辿り着けなかった人生を許してあげられるように、死を尊ぶんだ。命はみんな等価値だからね。自分の命だからって、自分の物ではないんだよ」
式「じゃあ、おじいちゃんは?」
祖父「おじいちゃんはだめかな。もう何人も殺してしまった。殺してしまった彼らの死を受け持っているから、自分の死は受け持てない。おじいちゃんの死は、誰にも受け持ってもらえないまま、空っぽのところへ行く。それは淋しい事だ」
式「いちどしか、だめなの?」
祖父「ああ。人を殺せるのは一度だけだ。そこから先はもう意味のない事になる。たった一度きりの死は、大切なものなんだ。誰かを殺してそれを使い切った者は、永遠に、自分を殺してあげることができない。人間として、死ねないんだ」
式「・・・・・・おじいちゃん、苦しそうだよ?」
祖父「うん、これでおわかれだ。さよなら、シキ。せめてキミが、穏やかな死を迎えられればいいんだが」

人は一生に1人分の死を背負うことができる。つまり、自分が死ぬ際に、自分の死を受け入れるためのある種の一人一票的権利と形容できよう。人を殺した場合、その次の死を受け入れることはできない。処女は二回目は処女でないように、死を自分の体験として処理する際に慣れが生じる。最初の死は、処女喪失に等しい壮絶な体験であり、二回目に同等のものを得ることはできない。
式は殺人の痛みを誰よりも知っている。自分が殺人を嗜好していても、殺人を耐えずっと我慢してきた。

殺人・・・相手に抱く感情が、自己の容量を超えてしまった時、恋愛であれ憎悪であれ、その感情が自己の器から溢れてしまったとき、感情は苦痛に変化し、相手の存在に耐えられなくなる。それを何らかの手段で自分の中から遠ざけなければならず、対策として忘却したり、離れたりするが、手段が極端になると殺人となる。自分を守る為に道徳は消え、仮初の正当性をも手に入れる。殺害後は人を殺した、という意味も罪も背負う。

殺戮・・・殺人と違い殺す相手を特定しない。よって殺害される対象に特別性は無い(通り魔の対象が不特定多数であるように)。殺された側は人間だが、殺した側は人としての尊厳がない。あとの意味も罪もない。事故の様な物である。


・「一連の連続殺人事件の真相」について
四年前の事件(二章殺人考察(前)参照)では六人の殺害で式が昏睡状態に陥った為、白純里緒の無差別通り魔殺人事件は両儀式への見せしめ、誇示、示威が目的だったことから幕を閉じた。しかし、式が目覚めたという情報を察知した彼は、荒耶宗蓮が居なくなった秋から、再び連続通り魔殺人を挙行する(荒耶には白純は失敗作扱いされていた為、式を陥れる駒という役割を与えられなかった)。前回とは違い今回は、式に発見してもらう為に、「着物を着た人物」の目撃者を作るという証拠を残した。前回は織が夜に、誰かと殺しあいたいという願望を持って徘徊し、死体を発見し恍惚としていたが、今回は式が自身の殺人嗜好から殺人鬼と殺しあいたいという願望、四年前の事件に決着を付ける為に犯人を捜した。幹也は式が犯人でない事を証明し、安堵する為に捜査を行い、白純里緒が犯人だと断定した。白純は彼女を縛る対象を幹也と断定し、だんだんと起源と本能に埋没していく。
式は白純と戦闘するも、幹也との約束を守り、彼の左腕を殺しつつも、人殺しだけは行わなかった。しかし、白純に幹也が殺された旨を聞かされ、彼を殺してしまう。幹也は命からがら式の元に辿り着き、式が生きていることを嬉しく思い、傷心している彼女に、三章での「式の罰は、僕が代わりに背負ってやるよ」の言葉の通り、「・・・・・・でもかまわない。言ったろ、君のかわりに背負ってやるって」と彼女を慰めた。


・「seventh heaven」について
両儀式が黒桐幹也により変化していく様子イメージして奈須きのこ監修の下、梶浦由記によって作詞・作曲された。「君が光に変えて行く」の続編である。
Seventhは英語で7番目、heavenは英語で天国という意味の名詞。
Seventh heavenつまり第七天国はアブラハムの宗教(ユダヤ・キリスト教、イスラーム)における天国の階層の七番目。第一天ヴィロン、第二天ラキア、第三天シェハキム、第四天ゼブル、第五天マオン、第六天マコン、第七天アラボトがある。第七天国は天国の中心らしいseventh heavenは「至福」を意味するらしく、式と幹也の至福を祝っているのだろうか。

本作は第二章「殺人考察(前)」から続く式と幹也のラヴストーリー色の最高潮の作品で、二章の「君が光に変えて行く」の「こんなに哀しい景色を 君が光に変えて行く」という歌詞続きとして「こんなに明るい世界へ君が私を連れてきた」という歌詞からも分かるとおり、式が幹也によってだんだんと解放されてきていることを歌っている。
「もう一人じゃない ずっと 二人で行く まほろば」(「まほろば」は日本の古語で素晴らしい場所や住みよい場所を表す)

・「殺人考察(後)」という作品について
四年前、白純里緒は両儀式が好きだった。性同一性障害を秘めていた彼は男女両方に見られる彼女に惚れていたが、「弱い人は嫌いです」と振られてしまい、強くなるべく、喧嘩をしようとしたら、相手を殺してしまった。「自分は異常だ、特別だ」と思い込むことにより自我を保ち、荒耶に認められて起源を覚醒する。夜に徘徊する織の近くで殺人を繰り返し彼女を外から壊していったが、彼女が事故から昏睡してしまい、荒耶に失敗作の烙印を押されてしまう。荒耶の消滅後、式が目覚めたことを知り彼女に分かるように殺人を挙行した。式は四年前の事件に決着を付けるべく殺人鬼を追い、幹也も式が犯人でないことの証拠を掴む為に調査を開始する。白純は殺人鬼というネーミングに酔いしれながら、だんだんと起源に飲み込まれていった。式は彼が犯人だと突き止め、殺人衝動を押し殺して彼の挑発を受け流した。幹也もドラッグ方面の調査から白純が犯人であることを突き止め、説得を試みるも失敗。式に傷付いて欲しくない思いから式は幹也に戒められたが、式は幹也を殺されたと思い込んで白純を殺してしまう。幹也は式の罪を背負うことを伝え、彼女を生涯放さないことを決意した。



・名言(原作より抜粋)

荒耶―たわけ、そのような崩壊を望んだ訳ではない

荒耶―まだアレを破壊するのは早い。相克する螺旋こそが、アレに相応しい終焉だ。

式「おまえを消せないのなら――わたしが、消えるしかない」

白純「・・・・・・ダメだ。ボクは特別だから」

幹也「先輩を殺したら、僕は一生君を許さないからな」

幹也「・・・・・・君は誰も殺さないよ。たまたま誰も殺していないだけだって?笑わせるな、そんな偶然が今まで続いているもんか。君は自分の意志で、いつだって耐えていたんだ。人間の嗜好はそれぞれだろ。式はたんに、それが人殺しだっただけじゃないか。でも、ずっと我慢してきた。ならこれからも我慢できる。絶対だ」

式「・・・・・・おまえは変わらないね。コクトー。言っただろ。式はさ、おまえのそうゆう所が大嫌いだったって」

織―ありがとう。君を殺すことなんて、できない。

橙子「そうか。なら止めるのは少し野暮だね。――行ってらっしゃい黒桐。縁が続けば、また明日」

式「――そっか。殺人鬼が本当にいるのなら、私は、殺人鬼じゃないんだもの」

式―あいつがいないと、わたしは、生きてさえいけないんだ――。

幹也「・・・・・・殺人鬼なんて呼び名は間違っていたんだ。式が抱く苦しみを、あなたは持っていない。捨てたくても捨てられない感情、その隔たりがあなたにはないから」
幹也「だから――あなたは式と同じなんかじゃない。まったく正反対の人間だ。人を殺して、その罪を自分のものと認められない。ただ逃げて、殺人者にも殺人鬼にもなりきれない逃亡者。――それがあなたの正体です、先輩」

式「・・・・・・ああ。死んだのか、おまえ」

式―たとえば雨。霧のように降りしきる放課後、きみの口笛を聴いていた。
式―たとえば夕暮れ。燃えるような景色の教室で、きみとボクは語り合った。
式―きみがいて、わらっているだけで、幸せだった。
式―きみがいて、あるいているだけで、嬉しかった。
式―ほんのひととき。木漏れ日が暖かそうで、立ち止まっただけ
式―いつか、同じ場所に居られるよときみは笑った。
式―その言葉を、ずっと、誰かに言ってほしかった。
式―それはほんとうに。夢のような、日々でした。
式 ありがとう。でもごめんなさい。

幹也 君が、人を殺す事だけは許せない。
幹也 他の誰かが誰かを殺しても、かまわない。僕はただ、式にだけは人を殺してほしくないんだ。
幹也 君が好きだから。
幹也 君を好きでいたいから。
幹也 君に、幸せになってほしいから。
幹也 これ以上、傷ついてほしくなかっただけ。

幹也「・・・・・・でもかまわない。言ったろ、君のかわりに背負ってやるって」

幹也―僕が、君を殺そう。

幹也「式。君を―――一生、許(はさ)さない」

式「だからね、幹也。今の式は、そういうの嫌いじゃないって言ったんだよ」


感想

式が異常者として生涯に幕を閉じることがなかったことは、偏に幹也の功績である。式に異常者であることを強く認識させ、「普通」の代名詞たる自分との乖離を無意識の内に強調する事により、結果的に両儀式の人格破綻を招き、織を殺してしまった。しかし、彼の真っ直ぐな主義主張と愛情は首尾一貫して式の拠り所となり、織の式が普通に生きるという夢を最終的に叶えることと成った。式と幹也の純愛物語として、一章から七章の波乱万丈の物語も見ごたえがあって、見終わった後の感慨深さも一入である。式の消えてしまった織を忘れて欲しくないが為の男性口調や、反動形成、時たま幹也にだけ見せる女性らしさが愛おしい。式の胸に空いた伽藍洞にはしっかり幹也が納まっている。
式の言う「弱い人」とは五章で述べた通り、自我を保つ為に他人と違うことを強く望み、自分が特別であることを強調する人だろう。だから正反対の幹也に惹かれたのかもしれない。
両儀式は特別を持たない青年、黒桐幹也の特別となった。空の境界の一側面は幹也による両儀式の救済物語である。彼女の空っぽの心は、彼の愛に満たされたのだから。{/netabare}
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この七章は、「空の境界」の集大成である。是非、一章からの物語を反芻して、本作の神髄を味わって欲しい。

本作は考察のし甲斐があり、非常に面白い。また現代人への処方箋のような役割を果たし、私達にカタルシスを与える。

私は全章視聴後原作を購読したが、読み応えがあって大変面白い。アニメを観た人は補足の為にも、お勧めしたい。
未視聴の方は、是非挑戦していただきたい作品である。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 35
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

夢の終わり

原作未読。
全8章からなる物語の7章目。約120分。

「空の境界」全章に共通する項目は、第1章のレビューをご覧ください。
→ http://www.anikore.jp/review/450724/

時系列で言うと第6章の後。
4年前に引き続き、新たな連続殺人事件が発生する……。

第1章~第6章に対する解答編になっています。

今までの殺人事件は、式の仕業だったのか? それとも別の誰かなのか?
……だとしたら、その目的は?
そして、黒桐幹也はそれをどう捉えていたのか?

今までの伏線が回収され、4年前から始まる事件の真相が明かされます。
幹也の葛藤、式の葛藤、そしてたどり着く結末。

もちろん、いつものごとく、綺麗な作画、スタイリッシュなバトル。
そして、BGM、EDテーマ「seventh heaven」のクオリティも健在です。



【7章「殺人考察(後)」の考察】
{netabare}

すべての章に繋がっているストーリー展開です。

冒頭で明かされる4年前(2章)の真相。

織は幹也を愛していました。
幹也と幸せに生きることが彼の夢。

織「お前を殺したい」

殺人という感情でしか他者と関われない織にとって、これは「愛情表現」です。

しかし、幹也を殺してしまうとその対象が消えてしまう。
「夢」を破壊することを選べなかった織は、「自らを殺す」という選択肢を選んで、車にはねられました。
これは、浮遊ではなく飛行という行動に当たります(1章)。

その事故で生死の境をさまよった両儀式。
自分にはできない「夢」を叶える可能性を持つ「式」を守るため、「織」は消滅します。
そこで、式は、織の代わりに男性人格を演じることで、織の叶えられなかった「夢」を守ろうと決意します(4章)。

同時に、式は当時の記憶を失ってしまいます。

したがって、式は、自分が殺人を犯したかどうかを覚えていません。
しかし、「忘却録音」により、式の中に記憶が残っている可能性があります(6章)。

自分は本当に殺人を犯したのか? それは殺人衝動による殺戮なのか?
もしそうだとすれば、もう幹也に許されることはなくなってしまいます(3章)。
それを確認するために、殺人鬼のところへ向かう式。


式は、殺人鬼を殺すことができませんでした。
幹也のことに触れられて、傷つけることはしましたが、殺すことはしなかった。
ここで、式は自分が「他の人間を殺したことがない」ことがないことを悟ります。

まだ、夢は壊れていなかった。

しかし、式は里緒に対して直視の魔眼を使っていることに気づき、自分の中に「殺人衝動」が眠っていることも再認識します。
式が「殺人衝動」を抑え、境界を越えず、「殺人」に走らないようにつなぎ止めている「カギ」が幹也。

それに気付いた、式と白済里緒。


白済里緒は、両儀式に対する強い愛情を持っています。
好きな人が自分と同類であることを確認したいという気持ちは分かります。
同じ趣味を持っていれば嬉しいのは当然。

幹也「橙子さん、人間が人間を殺す理由は何ですか?」
橙子「相手に抱く感情が、自己の容量を超えてしまったときだろう。恋愛であれ、憎悪であれ……」

それが極端になってしまったのが、白済里緒という人間です。

式が「殺人」に焦がれていることを知った里緒は、殺人を犯してしまうわけです。
そこを荒耶宗蓮に見られ、自らの意志で起源を覚醒し、力を得ました(5章)。


そして、最終局面、幹也が里緒に殺されたと勘違いした式。
式は、自分自身も幹也を愛していることを認めます。
織に託された「夢」がいつしか自分のものになっていました。

そして、すべてを失うのが分かっていながら……もう自分の夢が叶わないと知りながら、里緒を殺してしまいます。


ただ、幹也が「先輩を殺したら許さない」と言っていたのは、式に傷ついて欲しくなかったからなんですね。
式を認める認めないの話ではなく、好きな人を守りたい、ただその一心から出た言葉だったわけです。

だから、式が生きている、ただそれだけで良かった。
幹也「代わりに背負ってやるって約束したろ」

そうして式と織の夢は叶います……というより、すでに叶っていました。

幹也「もう何年も前から僕は君が好きだった。今も」
式「今の式は、そういうの嫌いじゃない」

すごく優しい笑顔でした。

式「私が欲しかったものはナイフでも何でもなくて、そのてのひらだったんだ」
一人称が「私」になっています。

これで「式」の物語はおしまいです。
{/netabare}

投稿 : 2025/02/01
♥ : 36
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

普通と特別 理性と衝動の境界線

1999年2月。時系列的に7番目の第7章。
黒桐幹也の前から式が姿を消したのとほぼ同時期、
4年前と似たような連続猟奇殺人事件が起きる。
式を信じ続けたい幹也は彼女の無実を証明するため、独自に捜査を始めるが
そんな中、高校時代の先輩・白純里緒と再会して・・というお話。

なにげない点と点がやがて、ひとつの線でつながっていくこの第7章、
劇場版としては最終章となり、いろんな意味で結論が出され、
しっかりと区切りがつくように作られていた。
そしてこの章のタイトル「殺人考察(後)」からもわかるように
第2章「殺人考察(前)」での伏線がどんどん回収されていく。
ともすると聞き漏らしてしまっていたかもしれないような誰かのセリフが
実はとても重要だったりして、綿密に計画されたシナリオの深さに
あらためて驚かされたし、音楽、映像、演出すべてにおいて
この章の完成度が一番高かったのではないだろうか。

ヘンデルの「サラバンド」をアレンジしたようなOP、
ネガフィルムをモチーフに記憶というテーマを揶揄した映像も、すごく好み。

4年前、式が遭った事故の真相と殺人鬼の真相。
そして式が失っている2年間の記憶とは。
幹也が信じてきた式という1人の人間像。
式が見てきた幹也という1人の人間との出会いと軌跡。そして絆。
ドラッグを通してその人物の人間性や性格を表現していたのもなかなか良かった。
{netabare}
さらには、式を縛り付けていた、「人は一生のうちに1人しか殺せない」
「人は人間1人分の死しか背負えない」という亡き祖父の言葉の本当の意味が、
この作品の一番底にあることに気づかされ、多少の矛盾は感じつつも、納得できた。

観終えて思えば、白純里緒みたいな人こそが本来の意味での中二病な人だよね。
特別でありたいと憧れ、異常なことをしていくうちにエスカレート。
正当化するためにさまざまな行為に理屈をつけては繰り返す異常行動が
犯罪と気づいていても引き返せない精神的な弱さ。
さらには自分だけで背負うことができなくなり、同じ仲間を増やそうとする。
悲しく、とても哀れな里緒だったが、荒耶 宗蓮のような魔術師も似たようなもの。

対照的に、幹也のブレない一途さがすごく光っていて。
ブレないどころかもう執念としか言いようがないほどだったけれど。
式にとっては、幹也の真っ直ぐな愛情が彼女の中の男性人格・織を消して(殺して)
しまったのだとしても、この作品は式と幹也の傷だらけの純愛物語でもあるのだなと
思うと、織が消失して良かったし、そうしないと前に進まない物語だった。
それに、消えてしまった織を補うかのように男性口調でいようとする式の気持ちも
ものすごく共感できるし、幹也の前でだけは時々ながらも
女性らしさをちらっと出すところなんか、ほんと・・わかるなぁと(笑)
そんな部分でも、個人的にこの作品への愛着が強かったりする自分だ。

とにかく、殺戮シーンのグロさとは裏腹に、静かな雪の風景はとても美しく。
スピード感のあるバトルシーンとのメリハリも効いていて、
里緒はとことん気持ち悪く、幹也はとことん純粋で、そして式は強かった。
特に、里緒との戦いのあと、十字架のように仰向けになっている式が印象的。
精根使い果たした後に背負うものの重さを感じさせる、良いシーンだったと思う。
また、幹也の本音が叫ばれるシーンは必見だけれど、
自分的にはエンドロール後の、桜並木での式のセリフに熱い涙がこぼれてしまった。
{/netabare}
上映時間120分。時間だけでなく内容的にもとても見応えがあり、
この第7章に一番、登場人物たちの本音が出ていたと思う。
しかし、このあと「終章」が控えている。
まだこの作品を語るに、終われないものがあるのだよね。
終章の感想はまた後日。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 44

68.9 4 2009年夏(7月~9月)アニメランキング4位
ボルト(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★☆ 4.0 (18)
152人が棚に入れました
ピクサーと合併したディズニーがジョン・ラセター制作総指揮の下、新生ディズニーの第1弾として贈る感動アドベンチャー・アニメ。また、企画の段階から3D映画として制作された最初のディズニー作品ともなる。人気TVドラマでスーパードッグとして活躍するタレント犬のボルトが、初めて放り出された現実世界で挫折を乗り越えながら旅の仲間と力を合わせて愛する飼い主のもとへと帰るまでの遥かなる珍道中を、手に汗握るアクションとユーモラスかつ心温まるストーリーで綴る。 白い犬のボルトはハリウッドのスタジオで育ったスター犬。TVドラマの中で、飼い主の少女ペニーを守るために改造されたスーパードッグとして無敵のスーパーパワーを発揮し、悪党たちを次々と退治していた。人間たちは、ボルトからリアルな演技を引き出すため、ドラマの中の出来事を現実と思い込ませていた。そんなある日、ひょんなことからボルトはハリウッドから遠く離れたニューヨークへと運ばれてしまう。そこで初めて遭遇した外の世界。ボルトはここにきてようやく、全てはドラマの中のことだったと知る。それでもペニーの愛だけは本物と信じ、ハリウッドを目指して長い長い旅に出るボルト。その途中でさまざまな苦難に遭いながらも、旅の仲間、やせっぽちの皮肉屋ノラ猫ミトンズやテレビおたくのハムスター、ライノに助けられながら遥か故郷を目指すボルトだったが…。

声優・キャラクター
ジョン・トラボルタ、マイリー・サイラス、スージー・エスマン、マーク・ウォルトン、マルコム・マクダウェル、ジェームズ・リプトン、グレッグ・ジャーマン、グレイ・デリスル、ショーン・ドネラン
ネタバレ

Kuzuryujin さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

ディズニーアニメの中ではベスト3に必ず入る

2008年ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ製作
CGIアニメ映画。96分

※ 以下のレビューは、2013年12月に某サイトに自身が投稿したものに加筆修正したものです。

5年ほど前にDVDレンタルで初鑑賞。
以来、記憶では定期的に2Dで5回ほど観た後に3D版も観ました。

3D版では、キャラクターの可愛さ、アクションシーンの迫力が増して新鮮でとても良かったです!!
特に毛並みがリアルに感じ、思わずキャラクターに触りたくなります。

内容では、{netabare}
愛から見放されていた猫のミトンズ、孤独だったハムスターのライノが
最後にボルトとペニーと共に本当の家族になれたところがこの作品で一番好きな点。

一番感情移入できたのは、主人公ではなくミトンズでした。
家族がいて仲間がいることがいかに幸せなことか観るたびにしみじみ実感します。
エンドロールの後日の楽しげな家族風景の紙芝居のような手書き風アニメで毎回ホロリとします。

このとき流れる軽快な「I Thought I Lost You」も最高!

劇中歌のカントリー調の「生まれ変わった僕」(Barking at the Moon)も曲とバックの映像共にセンスがいい!!

すっとぼけた鳩たちのギャグもツボで、笑いあり涙ありの、
自分探しと自分の居場所を見つけるためのロードムービーとして最高です。
{/netabare}
吹替え版も良くできていて、特にミトンズ役の江角マキコさん、ライノ役の天野ひろゆきさんがお気に入り。

製作総指揮にジョン・ラセターさんが入ると本当に子供から大人まで安心して観れる良作になりますね。

ぜひ、家族そろって観て下さい。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 3

セレナーデ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

冒頭2分が全て。

ずるいわーあの導入。幼少時にイヌを飼ってた経験のある人にとって、あれは、ある種ノスタルジーな切なさすら感じる、微笑ましさがあります。女の子がショップにいたボルトを選ぶあの件を観ただけでも、きっとあの子も幼少時特有の「イヌを飼うことへの憧れ」に突き動かされて、親を説得して、あのショップに赴くに至ったんだろうなと、いろいろな経過の情景が浮かんでくるというものです。誰にでも尻尾を振る子イヌとその態度に運命を感じる子供、という、純粋無垢さが衝突しあってる図にもグッときます。

本編的には、悪くはないけど、もうひと味欲しいと思わないでもない出来。自分に超能力があると信じていた状態から現実に突き落とされてさらにそこから復帰する流れは、脚本的にも演出的にもバズ・ライトイヤーの下位互換といった風。だけど、ロードムービーテイストのストーリーでほどよく楽しく仕上げております、という感じ。よく言えば安定している、悪く言えば無難。

それでも、あのOPの破壊力。あれだけで、なんかもう、いろいろ満たされた気持ちになっちゃう。

恐るべしディズニー。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 4

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ヒーローに大切なのは、能力などではなく、勇気と諦めない信念。

殆ど完璧なんじゃね?な傑作。ラセターが総指揮につくことで、こんなに進化するなんて脱帽としか言いようがない。


話のプロットしては、「トイストーリー」とほぼ同一であるが、進歩したCG技術による動物や街並みの描写の素晴らしさ、随所に効いているユーモアのセンスなどなど、更にブラッシュアップされてトンデモない領域に達している。


 なにより、ヒーロー論になっている部分が思わずグッときてしまった。ヒーローに大切なのは、能力などではなく、勇気と諦めない信念なのだ!。それが結実するラストの展開と、伏線の回収の見事さよ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

65.7 5 2009年夏(7月~9月)アニメランキング5位
ブレンダンとケルズの秘密(アニメ映画)

2009年6月20日
★★★★★ 4.1 (17)
43人が棚に入れました
9世紀のアイルランド。
砦にもなっている僧院で暮らす少年ブレンダンのもとに、遠くの島から美しい書物を携えた老人が訪れる。
名高い写本家である老人は、ブレンダンにインクの原料であるある植物の実の採取を依頼する。
僧院長である伯父から僧院の外の森に行くことを禁じられているが、
実はその森に生えているため、ブレンダンは森へ行った。

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

伝説をアニメ化!そして世界はイマイチドひっくり返る!!まさに伝説のアニメ映画!!!

2009年、アイルランドのカートゥーンサルーンというスタジオが中心となった1作の映画が世界を震撼させた
それが本作『ブレンダンとケルズの秘密』でした
一部映画祭などでの上映はあったものの、実に8年もの間、日本未公開のままだった伝説的傑作が、満を持して日本の劇場で公開とあっては観ないわけにはいかない!!!


9世紀のアイルランドはバイキングによる侵略を受け、ケルト人達は修道院を砦に改築し、残虐なバイキングを恐れながら過ごしていた
ケルズ修道院のケルアッハ修道院長の甥である少年、ブレンダンは砦の外の世界に憧れを持ちつつも、外の世界の危険性や砦建設にだけ執念を燃やすケルアッハの監視の目もあり退屈な日々を過ごしていた
ある日ケルズを訪れたのは、聖書の手写本を代々受け継いできた徳の高い装飾士であるブラザー・エイダン
バイキングの侵攻から逃れてきたエインダだったが、本が人々を救うと信じ、最高の装飾写本の完成を夢見ていた
砦の建設を優先するケルアッハとエイダンは対立したが、本に興味を抱いたブレンダンをエイダンは快く受け入れ、彼に本の製作を一緒にしないか?と持ちかける
インクの材料になる木の実を森から持ち帰ることが最初の条件だったが、ブレンダンはケルアッハの言いつけを破り、危険な森へ木の実を探しに行く…
そこで出会ったのは少女の姿をした妖精、アシェリンだった


後に『ソング・オブ・ザ・シー』を手掛けるトム・ムーア監督の長篇デビュー作です
『ソング・オブ・ザ・シー』でも書きましたが、そもそもアニメが興行として成り立つのは日本とアメリカだけ、せいぜいフランスどまりと言われてるのが21世紀の現状なのです
そんな中まさかアイルランドからこのような傑作映画出るとは夢にも思っていませんでした
本当にアニメ業界にとって21世紀最大の衝撃だと思います


特に本作はもう日本人ぐらいしかやらんであろうか言われている手描きの作画を中心とした作品なだけに、その美しさたるや群抜いています
『ソング・オブ・ザ・シー』にも観受けられる、○や△といった記号を用いたキャラデザはキャラの性格までもを画面に反映させ、幾何学的な模様が森の木々や街並みの建物の配置にうっすらと浮かび上がる構図は天才としか言いようがありません


また、本作は“ケルズの書”という実在する聖書の手写本が完成するまでの伝説が描かれる物語なのですが、この“ケルズの書”は「世界一美しい本」とまで賞賛されるほど、その装飾が独特です
それが古代から脈々と受け継がれてきたケルト美術の特徴である【渦巻き模様】の多用が見受けられることで、キリストの頭文字をアナグラムにして一枚の絵にしてしまったキー・ロー・ページに代表される渦巻き模様が本作でも画面レイアウトの所々、あるいはカット全体そのものに使われているんです


まさに世界一美しい本を、世界一美しいアニメーション映画にしてしまったというわけ


さて肝心な内容の方ですが、前半こそ侵略に怯えるケルト人の現状やケルズの書が受け継がれてきた経緯などを説明する場面が多く正直退屈なものの、中盤からはダークファンタジーめいた冒険活劇となり、そしてブレンダンに手を貸してくれるアシェリンというヒロインの可愛らしさに胸ときめかせることとなるでしょう
マスコットキャラとなる白い猫、パンガ・ボンの存在も忘れてはならない
少女とマスコットがセットな辺りは、宮崎駿作品には影響を受けたと答えてるトム・ムーア監督らしいところです


ちなみに説明臭い本作前半のやりとりは、次回作『ソング・オブ・ザ・シー』で「御伽噺の一説として主役達が口にする」という形で消化するパートに変わっていて、この点はむしろ『ソング・オブ・ザ・シー』における大きな進歩に感じます


あと壁画のような平面的な世界を舞台に繰り広げられる古代の神、クロム・クルアハとの決闘はアニメーション的にも大きな観どころです


さあ、聖書を巡る話ということで「なんだ宗教のアニメか」と倦厭しないで下さい
オイラ自身も最初その類かと思っていたのですが大間違い!
てっきり宗教で奇跡が起きてバイキングを追っ払うのかと思いきや、結論から言って「宗教で奇跡は起きない」「宗教では戦いには勝てない」「宗教で死にそうな人は救えない」というところに落ち着くのが今作なんです
その一方で「宗教で疲れた人の心を癒すことぐらいは出来る」ともしてて、ただ単に美しい聖書を書いたから信仰しましょう、という話ではないのが最もオイラが評価したいところなんです


ケルト人っていうのはバイキングに限らず他部族の支配に追い詰められてきた人種ですから、負けっぱなしのケルト人でも偉大な文化を残してきた
“ケルズの書”こそ、その1つだ!言わんばかりの内容なんですね
宗教の話と身構える必要は全く無く、むしろ老若男女問わずご覧いただきたい1作となっています


そうそう、『ソング・オブ・ザ・シー』もそうでしたがブリュノ・クレとKiLaによるケルト音楽をベースとした劇伴がとにかくもう最高なんですよ!
これがディズニーだったら南国の伝説を舞台にしながらレゲエが流れたり、アラビアンナイトを舞台にしながらポップソングが流れるわけです(笑)
ソレはソレ、かとも思いますがケルトの伝説を舞台にしてケルト音楽が流れる今作の劇伴の方がオイラは好きですね

投稿 : 2025/02/01
♥ : 11
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ケルトの至宝

カートゥーンサルーン制作。
ソングオブザシーのトムムーア監督、
数々の賞を受賞した神話的冒険ファンタジー。

実在するアイルランドの国宝「ケルズの書」
絢爛豪華なケルト伝統の渦巻き模様に彩られた、
世界一美しいとされる装飾写本の最高傑作。

物語は9世紀のアイルランド、
度重なるバイキングの襲来に備え、
高い壁を街の周囲に築くケルズ修道院から始まる。
歴史にある通り、当時のバイキングは、
聖職者の高価な黄金の聖具を狙いやって来るのです。
{netabare}時に高名な写本装飾士エイダンが、
聖なる書を携えケルズに生き逃れて来る。{/netabare}
未完成の写本に魅せられた少年修道士ブレンダンは、
書物の完成を誓い、彼と妖精の冒険が始まる。

アイルランドは欧州最果ての島国である為、
土着の信仰や伝統が根強く残り、そこに、
キリスト教が交わり独自の文化を生み出します。
世界的な文学者もたくさんいますね。

中世絵画に習い遠近法を排し描かれる、
動く絵本のようなアニメーション。
暗闇に光を照らす先人達の知恵と哲学。
書物とは「灯」であるのでしょう。

美しいケルトの物語、ぜひ堪能して頂きたい。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 32

64.5 6 2009年夏(7月~9月)アニメランキング6位
くもりときどきミートボール(アニメ映画)

2009年9月19日
★★★★☆ 3.9 (11)
55人が棚に入れました
同名のベストセラー絵本を3D映画化したファンタジー・アニメーション。風変わりな発明ばかりしている青年の新発明により、空からいろいろな食べ物が降ってくるようになった町で繰り広げられる大騒動をコミカルに描く。フリント・ロックウッドの夢は偉大な発明家になること。しかしヘンなものばかり発明しては町の人々に迷惑がられているのが現実。そんなある日、彼は水を食べ物に変えるマシーンを発明する。ちょっとした事故からそれは空高く飛んでいってしまうが、おかげで雨雲からチーズバーガーが降ってきて町の人々は大喜び。フリントも一躍ヒーローに。ところが次第に天候が悪化し、降ってくる食べ物がどんどん巨大化してしまい…。

声優・キャラクター
ビル・ヘイダー、アンナ・ファリス、ジェームズ・カーン、ブルース・キャンベル、アンディ・サムバーグ、ミスター・T、トレイシー・モーガン

ワドルディ隊員 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

アメリカの絵本を原作としたSFアドベンチャーアニメ

このアニメ映画は、アメリカでベストセラーとなった絵本を元に
制作された作品である。日本では、2004年に出版されたようだ。
このアニメ映画を見終わった後に、原作を知ったため
原作についてのコメントはできない。

大まかなあらすじとしてはこんな感じ。
アメリカの小さな港町が舞台。
スワロー・フォールズと呼ばれる港町は、サーディン(イワシ)の
缶詰で非常に有名な場所だったのだが、いつの間にか
缶詰が売れなくなり、代わりとして住民たちが
缶詰を処分する日々を送っていた。

主人公のフリントは、発明家を夢見ていたが、失敗続きで
町の住民からは煙たがられていた。
そんなある日、町の食糧問題を解決するべく水を食べ物に
変える機械「FLDSMDFR」を開発することに。
だが、大量の電力を使わなければならないため、
町の電線から電力を供給しようと試みるがFLDSMDFRは
ジェット噴射を起こし、空の彼方へと消え去ってしまう。
途方に暮れたフリントだったが、しばらくすると信じられない
光景が目の前に飛び込んできて…。

この作品では、人間の3大欲求の一つである食欲をテーマ
としている。最初の頃は機械の恩恵にあずかり、人々は色んなもの
を欲するようになるが、異様なまでに膨れ上がった欲望は、
最終的に破滅を引き起こすというもの。
沢山の作品を視聴されている方には、少々物足りないと
感じるかもしれないが、とても分かりやすい上に、伏線回収も
されていると思う。
また、科学の危険性を暗示しているかのようにも感じられた。

魅力的なキャラクターが多いのも、この作品の良さの一つ。
主人公を含む主要メンバーそれぞれに明確な役割が
与えられているため、私としては、このキャラは不要だと
感じたことはほとんどなかったように思う。

私が特に印象に残っているのは、フランクとサムが
ゼリーで作られたお城でお互いの過去について会話しているシーンだ。
彼女が、過去を打ち明け、悩んでいたことに対し反論することなく
素の自分でいられる君の方が好きだと答えるフランク。
二人の関係性をよく表していると思う。
しかも、それをメガネというアイテムで表現しているのが素晴らしい。
非常に自然な流れということもあり、違和感を覚えることはなかった。

テンポよく進む上に、ユーモアも適度にちりばめられているため
視聴者を飽きさせない作りとなっている。

但し、食べ物を粗末に扱うのは許さん!と憤りを感じる方には
かなり相性が悪いと思われるので視聴しないほうが良い。
なんせ、これでもかといわんばかりの食品が大量に降ってくる上に、
かなり速い頻度でその日の光景が変わっているのだ。
いつ掃除したんだ?と疑問が次々と湧いてくるだろう。
考え出すとキリがないので、他の作品に目を向ける
時間に使用するのが望ましいと言える。

個人的には、とても楽しむことが出来た。良作だと思う。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 13

rurube さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

いやマジで面白い。

宇多丸さんの映画批評で取り上げられた為に映画好きの人たちの間で話題になっていた作品。

知らない人が多いと思うのであらすじはwiki見て下さい。

映画の決まりとして寝る・食べる・セックスは人間の欲望を表す事が多い。
今回はキッズアニメなので食べるを人間の欲望のメタファーに使っている。

肥大化した人の欲望によって世界が混乱に陥ると良くある話だ。

この作品が素晴らしいのはテンポとセンスだ。話の展開の速さとアニメ特有のコミカルな動き、気の利いたユーモアが観ている人をあきさせない。
感じ的にはシンプソンンズ+トムとジェリー÷2だろう。

それとこの作品監督が主人公みたいないわゆるオタクなんだと思う。特にヒロインが良い。ヒロインが自分を取り戻してめがねを掛けるシーンがあるのだけれどこれは素晴らしいと思う。日本のアニメでオタクな子がめがねを外すと美少女みたいなアホな設定があるけどこれは逆。

オタクがお洒落したら居心地悪いだろ。そういうのに興味ないんだから。
お洒落を捨てて社会性が無い好きな事しているんだから。

このヒロイン昔は天気予報図が好きな天気オタクだったらしい。それで友達から馬鹿にされて自分を偽って周りと同じ服装をしている。
それが本当の自分に戻るためにめがねを掛ける。それを他のキャラに馬鹿にされるんだけど彼女は気にもしない。これが大事なんだよ。かわいくなってちやほやされるんじゃなくて馬鹿にされても自分でいられる。良く分ってるしめがねした方が描写としてかわいく無いんだけどそれを主人公が天使みたいだって言うのがこの二人の関係性を表している。皆が前の方が良かったという中で主人公だけはめがねの彼女が好き。

他にも黒人警官・子役(今は大人)・テレビ局のクルー・父親などちょい役もキャラ付けがしっかりしている。

この作品キッズ映画だけど作りがしっかりしていて大人にしか分らないネタもいっぱい仕込んである。何より子供を馬鹿にせずストーリーも面白い。
見る価値のある作品だと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 9

さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

とぅっとぅるー

バイト先のお姉さんに以前勧められたのを思い出した。

主人公は友達のいない天才発明家。
根拠のない自信を振りまく性格、シュタゲが好きな人ならすんなり入ってくると思う。
彼が発明したのは電話レンジ括弧仮…ではなく、水を食べ物に変換する装置。
しかし、想定外のトラブルが起こり、装置が空へと打ちあがったために、天から食べ物が降ってくるようになってしまった。

物語の展開はコミカルに進んでいく。
笑いのツボはハマらなかったけど、誰しも一度は夢見る空から食べ物降ってきたらいいのに…という空想を物語として描いており共感を持てたし、掘り下げて問題提起もしっかりされていて結構楽しみながら観れた。

キャラが憎めない感じなのが良い。
掘り出し物感があってなかなか良かった。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 2

62.1 7 2009年夏(7月~9月)アニメランキング7位
NARUTO ナルト 疾風伝 火の意志を継ぐ者(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★☆ 3.7 (107)
581人が棚に入れました
五大国で血継限界を持つ忍が行方不明になる事件が発生した。木ノ葉は任務で草隠れと岩隠れの境界付近に聳える須弥山(しゅみせん)付近で消息を絶っていることを知る。そんな中、カカシが謎の失踪をとげる。綱手は木ノ葉に緘口令を出す。しかし、ナルトはカカシを助け出そうと里を抜け出す。

声優・キャラクター
竹内順子、井上和彦

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

かかしせんせーーーい!!

本編の話が出てくるので、本編を観ていた方がより感動出来ると思います!!


どんな事があっても自分の信念は曲げない、
仲間は何があっても救おうとするナルト。
里を守るため自分を犠牲にするカカシ。


いつもですが本当にNARUTOはいい話です。
木の葉の里、砂の忍、沢山出てくるので見ごたえありです!!

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

tinzei さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

外れだなー

なんだろ・・・この感じ
物語的には面白いはずなのに、まったく面白くない
一時間半で話を完結させなきゃいけないっていうのはわかるけど、敵に関する描写が少なく、カカシ先生とナルトシカマルの心描写ばっかり、まあそれがテーマだから重点的に描くのはわかるけど、生理的に合わなかったなぁ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

AKIRA さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

仲間を大切にしないやつは、それ以上のクズだ!

カカシがメインの作品。

師匠のカカシから弟子のナルトへ、ちゃんと想いが引き継がれていますね。劇場版単品としてだけではなく原作の補完の意味合いでも見る価値はあると思いました。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 6

61.6 8 2009年夏(7月~9月)アニメランキング8位
ホッタラケの島 遥と魔法の鏡(アニメ映画)

2009年8月22日
★★★★☆ 3.6 (62)
277人が棚に入れました
高校生の遥は、亡くなった母親から貰った手鏡がなくなってしまったことで、神社にお参りに行き手鏡を返してほしいと祈る。そこに狐があらわれ、人がほったらかした物をこっそり持ち去る姿を目撃する。狐を追いかけると、神社の裏に不思議な穴がある。実は狐の世界へと通じる穴だった。遥は手鏡が狐の世界にあるかもしれないと思い、不思議な「ホッタラケの島」での冒険が始まる。

声優・キャラクター
綾瀬はるか、沢城みゆき、戸田菜穂、大森南朋、谷村美月、家弓家正、松元環季
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

人が最後にホッタラケにするもの、それは・・・

フジTV開局50周年を記念して制作されたCGアニメ映画。
制作はProduction I.G
主人公、はるかの声を綾瀬はるかさんが自然な感じで
演じていたのがとても印象的だった。

病気で亡くなったお母さんが大事にしていた手鏡・・・
それは、はるかにとっても宝物のはずだった。
しかし、月日は流れ・・・昔はすごく大切だったものなのに
いつのまにか、なくなってしまっていて、探すことすらしない。
一緒に暮らしている父親とも、すれ違いの日々。
そんな はるかがある日突然、不思議の国のアリスみたいな世界に吸い込まれ
そこでようやくみつけた大切なものに多くの事を気づかされる、というお話。

観ていて最初はホント、日本版アリスか?と思ったけれど、
そうではなかったし、細かい部分に拘ったしゃれた演出や
あたたかな涙を誘う展開に、日本独特なものを感じた。

CG映像なので、登場する動物顔の雰囲気は好き嫌いが分かれそうだけど
とても表情豊かに描かれていたと思う。
また、スリルと迫力あるシーンがタイミングよく挿入された飽きのこない展開には、
童心に返ったように胸がワクワクした。

世界がまず面白い!
人間がほったらかしにしていて、なくなったことも気づかないような
さまざまなものを集めて、飛行船や列車、車や建物が造られ、
そこはまるでガラクタ遊園地。
あたりやハズレのついたアイスキャンデーのスティックが
無数に敷き詰められた屋根や、古い看板やポスター、やかんなどなど
チラッと見えただけでも郷愁を誘う。
{netabare}
そして、「人が最後にホッタラケにするもの・・それは思い出なんだ」
というセリフと、
まだお母さんが生きていた、はるかが幼少期の父親との思い出を振り返るシーンに、
こみ上げる想いが抑えきれずに号泣してしまった。
{/netabare}
また、この物語の季節が夏というのもいい。
夏は一年のうちで一番、こういう冒険ファンタジーや郷愁が似合う季節だよね。
ちなみに、EDで流れるスピッツの『君は太陽』もぴったりだった。

こどもが観ても、冒険モノとして充分楽しめると思うが、
ある程度歳を重ね、親になった立場の大人が観ても
感じるところの多い作品だと思うので、お子さんのいらっしゃるご家庭なら、
ぜひ親子で鑑賞されることをオススメします。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 47
ネタバレ

さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

動画で見て初めて分かったスゴさ

DVDで視聴
CGキャラが自分には合わないと思っていた頃から一転、ハピネスチャージの存在でCGに目覚めた私。キービジュアルが微妙だなと思って勝手にクソアニメ扱いしていた自分を叱りたい。

今更視聴してみようかなと思った理由についてだが、尊敬する宮本さんの携わった作品を調べていたところ、この作品に至った。


まず未視聴の方に向けて第一にお伝えしたいのが
○制作陣のスゴさ

監督は佐藤信介さん
GANTZ・図書館戦争監督(どちらも実写版)

演出は塩谷直義さん
サイコパス・劇場版BLOOD-C監督

脚本は安達寛高さん
一見誰だろうと思いますが、実は{netabare}ミステリー作家の乙一さんの別名義のペンネームとのこと{/netabare}

遥デザインスーパーバイザーに黄瀬数哉さん
IG四大神の一人にも数えられるスーパーアニメーター
表情が良いと作画オタの先生が嬉々として語っていました。
この役職どんな役職かは不明ですが、アニメを見る限り遥の魅力的な表情を生み出すのに尽力されたのでしょう。

制作はProdactionI.G

CG制作はポリゴンピクチュアズ
シドニアの騎士、スターウォーズクローンウォーズを制作した会社です。

手描き背景は美峰
20年以上前からあらゆる作品の背景を担当してきた会社です。


日本アニメ界のトップクリエーターが揃いも揃ったこの作品
ラインナップを見ると、どんな殺伐とした内容だろうとおもわれるかも知れませんねw

ご安心下さい。滅茶苦茶ハイクオリティな子供向け作品となっております。


○テーマ性の高い物語

○中盤から終盤にかけてのスピード感のある映像

アニメーションはピクサーのようなオーバーアクションではなく、日本の2Dアニメのような洗練されたナチュラルな演技

声はおそらく先取りでしょうが、違和感が全くなく演技がとてもはまっていました

○そして、最も目を引かれたのが主人公遥かの表情!どう動かしたらあんなに色っぽくなるんでしょうか!
きっとあの表情は一流の手描きアニメーターが携わっているからこその表情だと思います。

3Dらしい3Dなのに手描きアニメと同じ感覚で観れるので、CGアニメの動きが苦手な方でも楽しめるかも。
3DCGアニメーターのスゴさが分かるアニメでした!

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

それなりに楽しめた

見た感じ、欠点が多いです。セルアニメ的ポスターカラー風背景に、つるんとしたCGキャラが浮きまくってたり、そのCGキャラがかなり省略型デザインで、まるでマリオネット、パペットが動いてるみたいだったり。更に子供向けファンタジーでありながらクライマックスの動きは激しすぎ。秒間24フレームしかない映画で、情報量がやたら多い世界をめまぐるしくグルグルと動かされても絵が流れずに飛びます。設定的にもテオのワルな知り合い3人が半端な存在だったり、島における男爵のポジションが不明瞭だったりして、ずっとしっくり来ない違和感を心の隅に抱きながら映画を見続ける事に。でも、母を亡くした少女が辿る失われた思い出の世界の物語自体は楽しませて頂きました。お人形さん然としたCGキャラに命が吹き込まれ、不思議な世界を冒険し、ドラマを紡いでゆく。物語的に特に新鮮さはありませんが、シンプルな感動をきちっと与えてくれます。美術面は大変刺激的で面白いですし結局のところホッタラケの島は遙のために存在した世界なのでしょう。そう考えれば、あちこちに存在する映画の綻びも納得できます。1つのCGキャラが広げてゆく世界にどこまで心動くかがポイントですね。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 4

61.5 9 2009年夏(7月~9月)アニメランキング9位
センコロール(アニメ映画)

2009年8月22日
★★★★☆ 3.6 (143)
734人が棚に入れました
奇妙な生物「センコ」を飼う少年・テツと、同じような生物を飼う少年・シュウとの間でモンスター同士の戦いが起こる。テツの秘密を知った同級生の少女・ユキはその戦いに巻き込まれる。

声優・キャラクター
花澤香菜、下野紘、木村良平、森谷里美

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

「何もなかったね。」

日常から非日常性を引き出して、そこからあっさりと去っていくのが特徴的なこの作品。



 何がしたいとか、これをぶつけたいとかいった強い衝動は特に見られないが、画やカメラワークから湧いてくる雰囲気にそれらは溶け込んでいるのだと思う。落ち着いていて、グッと抑制されたようにみえる作品自体がすべてなのだろう。アニメとして直接肌にくるものを作ったという点では良くもあり、悪くもある。この何か起こるかもしれない前兆を感じる空気感が好きな人にとっては楽しめるが、始めから終わりまでずっと水平的に並べられているので少しバランスが悪く感じる節がある。感覚的なアニメを作ったわりには盛り上がりには欠けるし、デザイン性、創造性はいまいちときている。寂しい言い方をしてしまうと、抜きん出た面白さは見当たらない作品だ。


 内容は、1人の男子高校生がある女子高校生に秘密を見つけられてしまうところから発展する。その秘密とは、白い怪物のことだ。アマミヤは「センコ」と呼んでいる。センコは白い大きな怪物で何にでも変身できてしまう。それこそ、自転車でも冷蔵庫でも飛行機でも。大きさも重さも自由自在だ。何にも変身していないときは熊のように大きく、丸い体に使い物にならなそうな小さな四本の足が付いている。顔もはっきりとあるが、しゃべることはなくただいつも不満そうな顔を掲げている。その異物感もさながら、どこにいても不気味で存在を疑うような不思議な奴である。ただひとつ悪いことはしないところが可愛い。そんな彼の秘密を知ったユキは面白がってアマミヤについていく。するとアマミヤに攻撃してくるものが現れる。彼と同じ力を持った人間だ。いつしかその戦いは規模を広げ、都心は大惨事になる。軍が出動し、ミサイルが投下される。が、そんなことをものともせず2人は対峙する。しかし、最終的に勝負を持っていったのはユキだった。アマミヤの力はユキに移り、襲ってきた人間をバットに変身したセンコで殴ってケリがつく。でもユキは勝って嬉しがることはなく、腑に落ちないアマミヤを前に淡々とその場から立ち去ろうとするのだ。そりゃあそうだよね。センコがあっさりと宿主を変えて、さらにユキが全部持って行っちゃうんだもん。アマミヤとしてはなんだか納得いかないよね。でもそんなこと気にせずユキは他の人に見つからないように「ほら、急いで」とアマミヤの手を引っ張って連れて帰る。まるで何事もなかったように。


 僕は個人的にこの作品のここが好きだ。現実にはない奇妙な怪物や無限の変身や都心で繰り広げられる大きな戦いなど、非現実性を帯びた要素をこれだけ持ち出しておきながら、主人公のヒロイズムはあっさりとユキに渡され、そのユキもそれに浸ることなく、ほとんど見向きもせずにそこから立ち去ってしまうところが面白い。飽きるでもすごく嫌がるでもなく、ふっと離れていく彼女の姿にはどこか惹かれるものがある。ここには皮肉っぽいところもあれば、意味があるようでないようなフリも、アマミヤの「なんなんだよ」と逆に振り回されるところが可笑しくもあって僕は好きなのだ。最後に心の中でふふっと笑えるこの感じはたまらない。



わざわざ何度も観るものでもないけれど、最後のシーンに感じたことが心の片隅にひっそりと残っている作品です。それだけでも充分僕にとっては特別な作品です。そんなふうに残るものって思っているより少ないから。そんな感覚をぜひ味わってみて下さい。






余談

EDがsupercellの「LOVE&ROLL」でした。
僕はけっこうというかかなりsupercellとやなぎなぎを聴く方で好きです。
歌詞なんかは割とどうでもいいものだけど楽曲や歌声がとても気に入っています。
歌詞はまあJ-POPだから個人個人ピンとくるものに差があり過ぎるからこれは仕方ないw
アルバム『Today Is A Beautiful Day』はよく聴いています。でも真剣に聴くことはあまりないかも。
好きなのは「君の知らない物語」「ヒーロー」「LOVE&ROLL」「星が瞬くこんな夜に」「うたかた花火」です。
その中にも特に好きなのはこのアルバムの始めと終わりにある2曲の「終わりへ向かう始まりの歌」「私へ」、そして「さよならメモリーズ」です。
なぜか前2曲は好きで、歌詞にも共感を覚えます。彼女の透き通った声に不安の色が青くスッとかかっていて、
若い頃に盲目的に信じていたことの崩壊や将来への漠然とした不安などに思わず頷いてしまいます。
正しかったのかな?わたしはいま幸せなのかな?と焦る若さ特有のこの気持ちが正直に語れていてとても好きです。
「さよならメモリーズ」は最後の「好きでした。」とこの一言を言うまでの流れと盛り上げ方がとても好きです。
いつも聴くと、とうとう言えたんだね、って1人で思ってますw

まあ割に好きなアーティストです。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

ビッグバジェットとも自主制作とも違う、もうひとつのアニメ制作のカタチか否か

色々と思い出深い映画です^q^


当時、今は無き池袋のテアトルダイヤにてコイツを観るためのチケットを買おうとその日に初めて顔合わせをしたそうたんと一緒に早朝6時から入り口に張り込んだのも今は昔(笑)
あんな必死の想いで映画館に行ったのはコイツと『らっきょの5章』ぐらいですよw










事の始まりは『動画革命東京』という個人制作のアニメ作品を専用ウェブチャンネルで公開、その中から商業利用価値のありそうな作品やクリエーターを発掘するという東京都支援のプロジェクトからです


最近では『つり球』のキャラクター原案などでもお馴染みの漫画家、宇木敦哉さんが作画はモチロンのこと、背景や仕上げまで全て一人で手掛けた作品でして、今作の原点となるトレイラーが例のウェブチャンネルで公開されるやいなや、アニメーションの面白さの原点回帰ともいえる【変身(メタモルフォーゼ)】をする怪獣とソレを見つめる少女の表情など、キメ細やかな作画描写が多くの視聴者やオイラの心にワクワク感をもたらしてくれました


その後、アニプレックスが本格的に短編映画として公開する権利を買い取り、実に2年に渡る宇木さんの孤独な制作作業が始まった・・・










で、完成した内容は【ポケモン世代の怪獣映画】とも呼ぶべきモノになったとさw


たぶん怪獣好きなら誰しもが一度は考えるであろう、
「我が街にもし怪獣が現れたらきっと、目の前の高層ビルなんて軽く粉砕して、自動車なんかオモチャのように投げ飛ばすんだぜ。しかも怪獣はオイラの思いのままさ!」
って妄想の具現化ですよw
(この場合、舞台となるのは宇木さんが在住する北海道の札幌)


肝心の作画の方も先述のトレイラー版からは明らかにクオリティダウンしており、正直に言えば肩透かし感を食らいました^^;
(この2年の間に宇木さん自身の絵柄が、線や影の少ないシンプルなモノに変化したことも理由にはある)


ただ本格的な商業作品化に当たってキャストには花澤香菜、下野紘、木村良平といった豪華な面々を起用
(当時のこの三人はまだまだ駆け出しのイメージが離れていませんでしたけどね)


エンドロールの主題歌にはちょうどメジャーデビューしたばかりだったsupercellが担当し、劇中BGMやメインテーマもryoPことryoさんが手掛けるというのも大きな話題となりました










結局のところ【大して面白くないしそんなに作画も良くない!】というのを言い忘れてはいけない作品なんですよw


だけど興行収入やDVDの売り上げなど、商業的には成功を収めたわけですし、ウェブ発のアニメのもうひとつ新たな試みとして歓迎出来る歴史的な作品になったわけです
(こういった試みの裏にはいつも、アニプレックスの南成江Pがいることも忘れたくないですね)


東京在住のryoさんと北海道在住の宇木さんが、特に顔合わせ等することは無い代わりに、「skypeで制作現場から直接打ち合わせをした」というお話も新しい時代の到来を感じさせました










それとなんか色々酷ぇこと言いましたが、オイラは宇木さんの大ファンやからな!w

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

ハネマン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

作画になにか惹きつけられるアニメ

あにこれ友達でもあり、高校の同級生でもある友人から薦められたので視聴してみたアニメです。

宇木敦哉さんという方がほぼ一人で作成し、若手アニメクリエーター支援事業の一つである動画革命東京の第一期支援作品に選出された作品です。30分完結短編アニメですね。

このアニメの舞台は札幌市をモデルにしてるんですが、実は作中に登場する高校は僕の母校です、なんて自慢をしてみたりします。

ストーリーは変な生物「センコ」を従えるテツが、ふとしたことで同級生ユキに秘密にしていた「センコ」の存在を知られ、なんやかんやあって同じく変な生き物を従えるシュウとの戦うお話です。

ストーリーに関して言えば、良くも悪くも30分完結アニメだなという印象。丁度30分で得られる程度の満足感でした。それ以上でもそれ以下でもないですね。
30分でまとめるんで、やっぱり端折る部分が出てきて、少しストーリーとしてチグハグな感じが出てきますが、しょうがないのかなと割り切れば大丈夫でしょう。

キャラクターもやっぱりこのストーリーにおいて30分で良さを理解しろっていうのは野暮ですね。なんともいいようがないです。ただ、センコは妙にリアルで正直キモイっす。でも、キモカワイイ…のかな??いや、やっぱかわいくないかも(笑)

声優はビックリしたんですけどテツ役・下野紘さん、ユキ役・花澤香菜さん、シュウ役・木村良平さんと今をときめく声優さんを重用したりしてます。ここはテンション上がりポイントでした。
ただ、もちろんそれぞれの声優さんの良さが出てるんですが、花澤さんに関してはデビューしたてなのか、少し今と比べるとたどたどしい感じがしますね。

作画は一番このアニメでスゴイと思った所です。なんていうんですかね、遠近感がすごくリアルに感じるんですね。人間の視覚的な作用をうまく利用されている感覚でした。
そしてキャラクターの所にも書きましたけど、妙にセンコ等の変な生き物がリアルです。センコとか変な生き物なんて実際に存在しないし、それが人間に飼われるなんて論外なんですが、なぜか日常的に犬感覚で普通に飼われていて、実在しているように感じてしまいました。
ちなみにこのアニメを作った宇木さんは、この頃ではつり球のキャラデザもしている方です。そう言われれば、確かに似てますね。でもつり球よりはキレイですね。

音楽はエンディング良かったと思います。特筆するほどではありませんが。

総じて、ほぼ一人で作ったと考えれば、感服するレベルだと思います。作画に関しては特に。

30分で観れるんで暇な時にでも観てください。戦闘シーンはありますがグロさはないんで、意外と気軽に観れますし、損はしないと思います。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 10

60.7 10 2009年夏(7月~9月)アニメランキング10位
劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克の時空へ(アニメ映画)

2009年7月18日
★★★★☆ 3.5 (80)
464人が棚に入れました
サトシたち一行がやってきたのは美しい自然に囲まれた川沿いの町“ミチーナ”。彼らはそこで遺跡のまもりびとでポケモンと心を通わせる能力のある女性シーナと出会う。彼女はサトシたちに全てを生み出したといわれる幻のポケモン、アルセウスについて語る。かつてシーナの祖先ダモスは、アルセウスから借りた “命の宝玉”を返さず、アルセウスを裏切った。アルセウスは“次に目覚めるときは人間に裁きを下す”との言葉を残して、長い眠りについた。そしてついに、アルセウスが目覚めるときがやって来たのだった。

声優・キャラクター
松本梨香、大谷育江、うえだゆうじ、豊口めぐみ、小桜エツコ、林原めぐみ、三木眞一郎、犬山イヌコ、石塚運昇、山寺宏一、中川翔子

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

裁き、スケール、一振りの鍬

劇場版3部作の第3作目となる本作『アルセウス 超克の時空へ』です。
前2作では「時の神・ディアルガ」と「空間の神・パルキア」が争い合い、
「反転世界の主・ギラティナ」が怒ってさらに戦うというそんなに面白くない話が展開されました 笑


そして本作、3部作ラストの第3作目『アルセウス 超克の時空へ』。これは別格でした。

世界の創造主であるアルセウス。
交わるはずのない時のディアルガと空間のパルキア、そして反転世界のギラティナまでもが交戦した。
これまでに起きたこの異常な現象のすべての原因は彼にありました。
アルセウスは過去に人を信じ自分の命と等価の力を貸したあげくに人に裏切られました。
さらに約束の受け渡しの神殿で自分を殺そうとさえした人間共に、彼は赤黒い復讐の火を灯します。
体に受けたダメージを宇宙の果てで癒しながら、ずっとずっとその機会を窺っていました。
そしてそのときが来た。彼は人類を裁くことを心に決め、再び降臨しました。
絶大な力に誰ひとりとしてアルセウスを止めることは敵わず、神の名を持つポケモンさえ彼の前では塵同然でした。
このままでは本当の世界の終末を感じたサトシたちはその運命を変えるべく、
時の神ディアルガの力によって過去にさかのぼりアルセウスの魂の救済に向かうそんなお話。


シナリオが申し分なく素晴らしい映画です。
この映画の良いところ、面白いところは全てここに尽きます。
人の裏切り、復讐、強欲、憎悪、または愛、そして未来の風景。
様々なものが渦巻く中、揺るがない信念を持つサトシサイドの人たちの行動に価値を持たせ、
アルセウスを救うと共に世界と、誤解を受けてきた人たちを救います。
話の中で散りばめられてきたそれらは、時空という大きなスケールを中に途切れることなく身を置き、クライマックス後の会話において、すべては収束します。
そこでは、これまでにはなかった大きな、そして深い感動を与えてくれました。
素晴らしい映画です。



かつて善良な力は、誠実な者に対して与えられた。
騙し、奪い取る。そんな人の愚かさはいつどの場所であっても影のようにあり、同じように愛もあった。
愛を快く人に差し出すことができ、またそれを享受できる世界を求めるには正しい行為がなくてはならない。
それをこの映画では時空を超えることでぼくらに見せてくれた。
過去から連綿と連なる今は良くも悪くも、こうした人々が培ってきたものでできているのだとわかった。
自分たちのすることが未来の人々へとすべてが伝わる。
土地の復興のため、その地に生きる人々のため、ポケモンのために、誠実な者が畑に鍬を入れるその一振りには―今までは考えもしなかったけれど―そこにはもっと色んなものがつまっていた。
「君たちのいる未来はどんなところなんだろう」
遠くを見つめながら真剣に、また穏やかな表情で空に思うこの一言には世界への愛を感じる。
尊く、理解されにくく、壊れやすい愛は人々の営みによってほんの少しかもしれないが、確実に今に受け継がれている。
世界は素晴らしいというメッセージ性はあるだろうが、子供より少し成長した僕には、まだまだ見捨てたものではないよと、そう訴えかけてくるお話でした。

すごく温かかった。頬を流れた涙は虚構のモノではなかった。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

チィ千 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

ミワセウスに返却大作戦

シリーズ第12作目の映画

良い点
・ダイパシリーズの伝説ポケモンオールスターズ。
・古代にタイムリープする展開は劇場シリーズ初。
・ギリシャ神話チックな世界観が原始的。
・エンディングのスタッフロールでダークライやシェイミとか出てくるのでニヤリ。

悪い点
・ストーリー展開が安直すぎてイマイチ盛り上がりに欠ける。
・アルセウスのブチ切れ感がすごすぎてトラウマ、中の人がミワセウスなのでより狂暴に見える。
・ディアルガだけが妙に優遇されてる。

まとめ
ダイパ神三部作の完結編としてはまあまあな内容でした。一応ダークライからの伏線なども回収されてるので見てスッキリする展開です。終盤の展開で、サトシとピカチュウとアルセウスとの関係性が薄すぎるため、最後はやっつけ感で拍子抜けですね。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 0

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

タイトルなし

何千年もの昔、人間に裏切られたアルセウス。 人間に復讐するため、激しい怒りとともに現代へと現れたアルセウスは、サトシたちがたどりついた町・ミチーナを攻撃する。アルセウスのエネルギーを受け、竜巻に巻き上げられるサトシたち。 そこへ遺跡の守り人シーナ、ケビンが駆けつけ、不思議な力でディアルガを呼び出し、助けを請う。アラモスタウンで壮絶なバトルを繰り広げたディアルガとパルキア、さらに、ディアルガを追ってきたギラティナまでもが姿を現し、かつてない神々の戦いがはじまった!

3部作の最期を飾る作品。

信頼を取り戻すのは大変。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 0

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
ジャングル大帝 勇気が未来をかえる(アニメ映画)

2009年9月5日
★★★★★ 4.9 (3)
50人が棚に入れました
エターナルアースによって造られた巨大な人工島『ネオジャングル』では、動物を捕獲移住させ管理していた。動物の声を聞くことが出来る少年・大山賢一は、ネオジャングルに生息する子供の白ライオン・レオと出会い、ネオジャングルの存在が間違っていると思うようになる。そんな中、病原体の蔓延によりレオ達の住む区域の動物をリセット(殲滅)しようとする人間に対し、レオら動物たちは反旗を翻した。

声優・キャラクター
時任三郎、松嶋菜々子、川田妙子、矢島晶子、大塚明夫、ゴリ、KABA.ちゃん、田村裕、川島明、千葉紗子、釘宮理恵、伊藤利尋、遠藤玲子、松尾翠、松村未央、山中章子、小倉智昭、船越英一郎

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
劇場版 デュエル・マスターズ 黒月の神帝 ルナティック・ゴッド・サーガ(アニメ映画)

2009年9月19日
★★★★☆ 3.9 (5)
35人が棚に入れました
切札勝舞はカードバトル“デュエル・マスターズ”が大好きな小学生。勝舞が持つ切り札のカードが謎のデュエリスト・ミカドと名乗る男に奪われてしまう。このカードには神(ゴッド)をこの世に召喚する力があったのだ! 勝舞とこの世界の運命はいかに!?

声優・キャラクター
小林由美子、今井由香、中島沙樹、若本規夫、関智一、皆川純子、田中完

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
劇場版ヤッターマン 新ヤッターメカ大集合!オモチャの国で大決断だコロン!(アニメ映画)

2009年8月22日
★★★★☆ 3.6 (5)
33人が棚に入れました
トイトイ王国から招待されたヤッターマン一行は、おもちゃのテーマパーク「トイトイランド」でプラモン王子や国王、そしてパ・ズール大臣と出会う。我が儘だが寂しがりのプラモン王子と遊ぶヤッターマンだが、謎のメカ、ヤッターゼロがヤッターワンを襲い大ピンチに陥る。果たして、地球をパズルのように破壊することができる宇宙釘を利用して密かに世界征服を企むパ・ズール大臣の陰謀を阻止することができるのか?

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
8月のシンフォニー 渋谷2002-2003(アニメ映画)

2009年8月22日
★★★★☆ 3.1 (5)
31人が棚に入れました
高校生のアイは歌手を目指して一人で上京してきたのだが、なかなかデビュー出来ずにいた。彼女は夢を実現させるために渋谷でストリートミュージシャンとして活動し始める。

敦賀迷彩 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

女子の博多弁、、

可愛い(ノ≧▽≦)ノ何か、のだめを観ている感覚でした。
後は、アニメーションとしてどうだったのだろうか?と疑問点疑問符?が付きます。
随所に散りばめられた実写は、アニメーションに対し喧嘩売っているのか?と思えました。
評価点は、かなり甘めですm(_ _)m

投稿 : 2025/02/01
♥ : 1

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
アイス・エイジ3 ティラノのおとしもの(アニメ映画)

2009年7月25日
★★★★☆ 3.7 (6)
28人が棚に入れました
マンモスのマニー、ナマケモノのシド、サーベルタイガーのディエゴをはじめとした氷河期に生きる動物たちが騒動を巻き起こすアドベンチャー・アニメの人気シリーズ第3弾。今回は彼らの暮らす氷の世界の真下に広がっていた恐竜の世界を舞台に、ひょんなことからティラノサウルスにさらわれてしまったシドを救出するため、愉快な仲間たちが未知なる恐竜ワールドへスリリングな冒険に繰り出す。監督は前作に引き続きカルロス・サルダーニャ。 間もなく我が子が誕生するマンモスのマニーはパパになる準備に夢中。一方、サーベルタイガーのディエゴは平和ボケしてしまった自分を見つめ直すため、ひとり旅を決意する。そんな彼らに取り残され、寂しさを感じていたナマケモノのシドはある時、氷に開いた穴に落ちてしまう。すると、そこで3つの卵を発見、家族が欲しいが為にそれらを持ち帰り、シド自ら育てることに。しかし、生まれてきたのは、なんとティラノサウルスの子供、ティラノ・キッズだった。さらにシドが母代わりに奮闘していた矢先、キッズを探していた本当の母親、ティラノ・ママが現われ、まとめて連れ去られてしまう。さっそくシドの救出に向かう仲間たち。やがて、彼らの辿り着いた先には、マニーが小さく見えるほど巨大な恐竜たちが生息する神秘の世界が広がっていた…。

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
ウォレスとグルミット/ベーカリー街の悪夢(アニメ映画)

2009年7月18日
★★★★★ 4.4 (2)
23人が棚に入れました
アードマン・スタジオのニック・パーク監督が贈る大人気クレイ・アニメ“ウォレスとグルミット"シリーズの、短編としては1996年の「ウォレスとグルミット、危機一髪!」以来となる第4弾。パン屋さんを始めたウォレスとグルミットが、パン屋を狙う謎の連続殺人事件に巻き込まれていく。本国英国では2008年のクリスマスにテレビで放映され高視聴率をマークした。英国アカデミー賞短編アニメ賞受賞作。三鷹の森ジブリ美術館が配給する日本での劇場公開に当たっては、過去の短編3作品「チーズ・ホリデー」「ペンギンに気をつけろ!」「危機一髪!」の新字幕・新吹替、デジタルリマスター版にての一挙同時上映が実現。 チーズが好きな発明家の英国紳士ウォレスとその忠実な愛犬グルミット。今回2人が始めた新商売は、街のパン屋さん。ある日、ウォレスはパイエラというかつてのCM女優にしてウォレス憧れの女性と出会い、恋に落ちる。折しも巷ではパン屋さんばかりを狙った連続殺人事件が多発しており、パイエラのことですっかり有頂天のウォレスが心配でならないグルミットだったが…。

ポロム さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ウォレスとグルミットでも珍しいホラーテイスト

パン屋「トップ・バン」を始めたとぼけた発明家ウォレスと犬のグルミット

街で起こっている「パン屋さん連続殺人事件」の犯人にウォレスが狙われている中、ウォレスは、街で出会ったかつてのCM女優パイエラ・ベークウェルに恋をしてしまいます。
命を狙われているウォレスをグルミットが一生懸命助けようと奮闘します。

海外で人気の「ウォレスとグルミット」シリーズ。『ベーカリー街の悪夢』は、イギリスでTV放映され、視聴率58%という驚異的な視聴率を出しました。
まつ毛がチャーミングなプードルのフラフルス、可愛いです。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
ペンギンの問題 幸せの青い鳥でごペンなさい(アニメ映画)

2009年9月19日
★★★★☆ 3.1 (3)
22人が棚に入れました
ペンギン小学生・木下ベッカムが暮らす“きりかぶ町”に逃げてきた謎の美女ペンギン・雪村ビクトリア。彼女の持つ神秘の力を狙い、南極から氷の王・氷川ニコルソンが攻めてきた。この世界の行く末を決める王vsベッカムたちの戦いの行方は!?

声優・キャラクター
伊東みやこ、松本さち、後藤沙緒里、愛河里花子、チョー、川田紳司、三宅健太

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星(アニメ映画)

2009年7月4日
★★★★☆ 3.9 (5)
21人が棚に入れました
やなせたかし原作の人気TVアニメの劇場版シリーズ21作目。ゲスト声優にはスザンヌファミリーが登場。キララとキラリは星空を守るふたごの星のかわいいふたごの妖精。ある時、ふたりはケンカしたはずみで地上に落下、離ればなれとなってしまう。キララはアンパンマンに助けられるが、キラリは行方不明に。その頃、ヒヤリ城ではドクターヒヤリがロボットのだだんだんに心を与える実験を進めていた。さらに、キララとキラリがいなくなった星空にも大きな危機が迫りつつあった…。同時上映は、新山千春がゲスト声優を務める短編「ばいきんまんVSバイキンマン!?」。
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

質は高いがアンパンマン映画としては異質。小学生以上のお子さんと見てください

2009年公開のアニメ映画。
川越淳監督作品なので視聴してみました。

一言でいえば、典型的な小学生向けのロボットアニメの趣きです。
アンパンマンの映画としては異質の一言。
{netabare}
幼児向けとしてはテンポが速く、中身が詰まりすぎていて息つく暇がなく少々激しすぎるなあと。
ダメージ表現も未就学児向けとしては強すぎますし、だだんだんの自己犠牲のようにも見えるラストは私にはちょっと…。戦えない人達が無差別に襲われる展開には個人的には抵抗があったのも事実です。

ナンダとルンダのインタビューで川越監督ご本人が「だだんだんの映画では、内容というより映像面でやなせたかし先生に叱られた。小学生の子には人気だったけれど小さい子供達は怖がってしまったようで、表現を間違えてしまった」と仰っていますがその言葉の通りの作品です。

本作は映画ですから、幼児が暗い館内で長時間見るにはもう少し優しい内容と明るい映像の方が良いだろうと思います。実際川越監督は次回作からはしっかり問題点を修正し、明るく楽しくを貫いて制作した作品ではやなせ先生に褒めてもらったともありました。
こういうのは感性の問題ですからね。叱られても直せない制作者はいるでしょうから、その点は流石のベテラン監督です。

ですからきっと小学生以上のお子さんであれば楽しめるのではないかと。作品自体の質は物語も作画も音楽もとても高いです。
きららとアンパンマンが出会う直前、アンパンマンが朝日の湖の上を飛ぶシーンがあります。そのシーンは明るく綺麗で、映像としても工夫されていて素晴らしいです。

アクションについては申し分ない…というか絵柄がシンプルな分凄いですね。なんだかすごいなあとしか言えない(笑)。
{/netabare}
小学生以上のお子さんと楽しんで欲しい作品です。
(2021.10.9)

投稿 : 2025/02/01
♥ : 5

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
モンスターVSエイリアン(アニメ映画)

2009年7月11日
★★★★★ 4.2 (4)
18人が棚に入れました
それまで日陰の存在だったモンスターたちが突如地球に襲来したエイリアン相手に大活躍する痛快SFアドベンチャー・アニメ。ごく普通の女性がひょんなかことから巨大化してしまったばかりに奇妙な生き物たちと一緒にモンスター扱いされ、果てはエイリアンと戦わされるハメになるさまを、SF映画はじめ過去の名作へのオマージュをふんだんにコミカルに描き出す。声の出演にオスカー女優リース・ウィザースプーン、「24」のキーファー・サザーランド。監督は「シャーク・テイル」のロブ・レターマンと「シュレック2」のコンラッド・ヴァーノン。 今まさに幸せの絶頂にいたスーザン。恋人とついに念願の結婚式を迎えようとしていたのだ。ところが、式の直前しばしテラスでひとり佇んでいたところ、突然落下してきた謎の隕石の直撃を受けてしまう。そして、何が起きたのか分からないまま式に臨んだスーザンの身体はおよそ15mにまで巨大化し、周囲のみならず自らもパニックに陥るスーザン。すると、そこへ軍隊が駆けつけ、彼女を捕獲して連れ去ってしまうのだった。やがて、冷たく固い建物の中で目覚めたスーザンの前には、奇妙奇天烈な生物たちが。彼らはみなモンスターとしてこの施設に監禁されていた。スーザンもまた、事情を説明するモンガー将軍から“ジャイノミカ"と名付けられ彼らの仲間入りとなる。一方その頃、米政府は地球侵略を目論むギャラクサーが放ったエイリアン・ロボットへの応戦に苦しんでいた。窮地に立たされた人類は、ついにモンスター軍団の出動を決断、スーザンも当然のようにエイリアンとの戦いに駆り出されてしまうのだが…。

takato さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

幸福なる少数者

 思った以上の掘り出し物!。

 怪獣大好きスピルバーグの会社であるドリームワークス制作だけあって、怪獣映画のツボをしっかり抑えてくれている。ビジュアル面だけでも実に優れている。それ以上にサクサク進むストーリー面も良い。単なる絵空のお話しではなく、ある意味「幸福なる少数者」の物語とように感じられた。平凡なる多数者に満ちている世界の只中では、巨大である者や、異端である者は必ず排斥される。しかし、彼らこそ世界を救う者、真に偉大になれる者たちである。自らの意志で怪物たることを選ぶシーンは上がらざるをえない。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 3

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
それいけ!アンパンマン ばいきんまんVSバイキンマン!?(アニメ映画)

2009年7月4日
★★★★★ 5.0 (1)
16人が棚に入れました
やなせたかし原作の絵本がアニメ化された作品、その劇場版第二十一弾。『それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星』と同時上映された。ゲスト声優として、新山千春が参加している。 ある日、ばいきんまんは、お絵描きが上手なベレちゃんを見かける。ベレちゃんがたのまれて"アンパンマンがばいきんまんをやっつけている"様子を描いたところ、それを見て怒ったばいきんまんは、ベレちゃんをバイキン城へ無理やり連れていってしまう。そして、ベレちゃんに強いばいきんまんの絵を描かせるのだった。その絵を、ベレちゃんが絵筆でたたいたところ……。

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
劇場版ムーミン パペット・アニメーション ~ムーミン谷の夏まつり~(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★★ 4.4 (3)
13人が棚に入れました
2003年に日本でも劇場公開され評判を呼んだ79年のポーランド製短編TVシリーズ「ムーミン パペット・アニメーション」を基に、最新技術で甦るクリアな映像と長編映画として再構成されたストーリーで描くリニューアル劇場版。トーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の夏まつり』を原作に、噴火が原因で大洪水に見舞われたムーミン谷を舞台に、一家とはぐれたムーミンの大冒険や、劇場に流れ着いたムーミンパパたちが繰り広げるお芝居の行方、同じく一家とはぐれたミイと遭遇したスナフキンの思いがけない活躍ぶりが愉快に綴られてゆく。日本公開にあたってはナレーションを小泉今日子が担当。

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
屋根裏のポムネンカ(アニメ映画)

2009年8月1日
★★★★★ 5.0 (2)
12人が棚に入れました
“チェコ人形アニメ最後の巨匠"と呼ばれるイジー・バルタ監督による23年ぶりとなる長編作品。様々な物が乱雑にひしめく屋根裏を舞台に、人間に忘れられた小物やおもちゃのガラクタたちが人知れず繰り広げているキュートな暮らしぶりと、掠われた屋根裏のアイドル“ポムネンカ"の救出に向かうガラクタ住人たちの大冒険を、イマジネーションあふれる世界観とぬくもりが伝わる素朴で手作り感いっぱいの映像で描き出す。

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
ゴーレム・パイロット版(アニメ映画)

2009年8月15日
★★★★☆ 3.8 (4)
10人が棚に入れました
詳細不明

Dkn さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ビロード革命のアオリを受け崩壊した砂上の楼閣『ゴーレム』

チェコのストップモーション・アニメーション作家、映画監督の『イジー・バルタ』は、約二十数年もの間この作品への情熱を注いでいた。実写とストップモーション・アニメーションの融合である『ゴーレム』。この作品は制作当初90分の長編映画として制作されるはずだった。しかし、1989年に起きた共産党政党の崩壊により制作が滞る。国からの安定的な資金の供給が途切れてしまったことにより、資金集めに奔走するが、娯楽の中心ではないアニメーション映画という性質のために資金が集まることはなかった。皮肉として共産主義の恩恵に預かり育った作家といわれたイジー・バルタ。国に保証された作家性と芸術性を備えた作品は、政治の変動があった時から無用の長物として淘汰されていく運命にあったのかもしれない。

インタビュー“唯物論に対するマジック”では、彼が今まで辿った道のりや創作してきた作品,技術論と共に、未完成である『ゴーレム』についても言及した文面がある。ユダヤ教の伝承で語られる泥人形のゴーレムは、経典「タルムード」の中で神が大地からアダムを生み出す前の胎児であったという。だが彼が表現したかったものは、19世紀に活躍した作家「グスタフ・マイリンク」の著作「ゴーレム」から着想を得たものであった。自身に寄り添うもうひとりの自分とも言える存在、心的な不安や病巣を写す幽霊のような自我、実体なきドッペルゲンガー。謎の男から、イッブール(霊魂の受胎)という本を渡された主人公は自身に振りかかる奇妙な出来事に対して一つの答えを得る。それが「ゴーレム」という存在だった。直面した謎や主人公に起こる苦難を経てのカタルシスは秀逸であり、映像化に踏み切る事も頷ける刺激的な作品。このゴーレム(パイロット版)からも大きく影響を受けた事が見て取れる。

このパイロット版で用いられる手法はチェコアニメーションで多く見られる実写とアニメーションの融合、そして実写から転写したレリーフによる強烈なクレイアニメーションだった。同作者の「手袋の失われた世界」や「最後の盗み」などの実写がメインの作品や、人形アニメーション主体のストップモーション・アニメーション「笛吹き男」なども秀逸な作品。現在は「ゴーレム」の制作は頓挫してしまい、次作に取り掛かっているという。「屋根裏のポムネンカ」「雪女」以降、大きな動きが無いためファンは新作を待ち望んでいる状況だ。

投稿 : 2025/02/01
♥ : 8

計測不能 11 2009年夏(7月~9月)アニメランキング11位
ウォーキング(アニメ映画)

2009年9月1日
★★★★☆ 4.0 (3)
10人が棚に入れました
詳細不明
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