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69.9 1682 総合得点ランキング1682位
劇場版 機動戦士ガンダム00[ダブルオー] -A wakening of the Trailblazer-(アニメ映画)

2010年9月18日
★★★★☆ 4.0 (552)
2882人が棚に入れました
イノベイドの力による支配で地球人類を導こうとしたリボンズ・アルマークとソレスタルビーイング(CB)の死闘は、真のイノベイターとして覚醒を遂げ人間同士の相互理解への道を示した刹那・F・セイエイの勝利によって幕を閉じた。情報操作によって悪行を隠蔽し続けていた独立治安維持部隊アロウズは解体され、世界は再編成された地球連邦軍の下で、ようやく真の平和へ向けて歩み始めたのだった。それから2年後の西暦2314年。既に表舞台から姿を消して久しいCBは戦争の抑止力となるべく密かに活動を続けていたが、新たな戦争が起きようとしていた。その発端は、130年前に廃船となったはずの木星探査船が地球圏へ漂着したことである。確かにその船には、生体反応は無い…しかし、この漂着によって地球圏へ未曾有の危機が訪れることとなる。再結集したガンダムマイスター達や地球連邦軍のパイロット達は、地球圏の危機へ立ち向かう。
ネタバレ

天駆ける漆黒の双龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

来たるべき対話

この作品は僕の好きな00シリーズの完結作
この作品のテーマは今までのガンダムの歴史史上初の未知の異星生命体とのコンタクト
そして1期2期通してて言われてきた
「来るべき対話」です


戦闘シーンはありますが
敵がガンダムじゃない分入りにくい部分があるかも…
さらに主人公である刹那の戦闘シーンが少なく
新MSのOOクアンタの戦闘シーンはほぼゼロ…
対話のための機体なので仕方ないかもしれませんが
期待してたので残念です…


キャラクターの面で言うと
1期2期で出てきたキャラもたくさん出てますし
新キャラもたくさん出ています
新キャラのデカルトシャーマンはボス的なキャラなのかと思いきやあっさりと死んでしまいます…
かなり扱いが雑いようなw


内容で言うと
戦争や戦闘というよりは
人間やそのほかの生命体と
どのように寄り添い生きていくのかというのを
描いているのだと思います

{netabare}

僕はELSが一箇所へ集まって、巨大な一輪の花へと変化するシーンは
好きですね☆
刹那とELSが分かりあえたことを抽象的に表わしていて、
どんなものとも分かりあえるという
希望を表していて
SF的でスペクタクルなシーンだと思いました。


そして最後の
メタル化(?)した刹那がマリナと
お互いを理解しあうシーンも好きです♪


好きなセリフは
グラハムの
「往け、少年! 未来をその手で切り拓け!!」

「これは死ではない! 人類が生きる為の・・・!」

「未来への水先案内人はこのグラハム・エーカーが引き受けた! 」
いや~かっこいいすね☆

あとはロックオンの
「乱れ撃つぜえぇぇぇ!! 」

「諦めるかよ!グッ・・・!クソッタレがぁぁー!!!」

やはりロックオンは安定してかっこいいっす♪


僕的には刹那はフェルトとくっついてほしかった…
「あの人の愛は大きすぎるから…、私は彼を想っているだけでいいの…」
この言葉はフェルトの切なくてでも刹那を思う気持ちが伝わってきてとても心に響きました。

{/netabare}


音楽では
あのシーンでの“クオリア”はやばいです
鳥肌もんです!!

脚本を担当した黒田さんの言うように
刹那が孤高の存在となっていくようなヒーロー性もありだと思えました!!


最後になりますが
この作品は作画もきれいで迫力もありますし
キャラもカッコよく
男女関係なく楽しめると思います☆

投稿 : 2024/11/23
♥ : 18

りおんぱん さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

「人は分かり合える」

ガンダム00 1st
ガンダム00 2nd 続編

ガンダムによる圧倒的戦力を活かして武力介入を開始
一時は組織壊滅の危機を迎えながらも争いの絶えなかった世界を急変させた
その結果、武力に頼らない社会を選択する人類だったが再び危機が訪れる
これまでの戦いで人類を導く革新者(イノベイター)へと進化していソレスタルビーイングのガンダムマイスター「刹那・F・セイエイ」は
新たなガンダムでその根源に触れようとする
そして人類のイノベイター化を求めてきた
「イオリア計画」の全貌が明らかになっていく


~感想~

00の続編だけど単体の物語として観れば面白いです
なんといってもガンダムは「戦争」が基盤となっているわけですが
今作ではどこぞのSF映画?といった感じです
相手は未知の生命体で人類はCB関係なく協力関係になっています
「戦争」と言う問題はTVできれいにしめられていて
今作は「イオリア計画」の「来るべき対話」
がテーマなので戦争アニメという概念を捨てて観たほうがよさそうです


劇場版というのは詰め込んでるため
内容が駆け足であったりとんだり急展開だったり…
とがっかりすることが多いけど
ストーリーは良くも悪くも単純でテンポを重視していて
展開もハッキリしていて盛り上がっていてまとまっていました

戦闘シーンとBGMでみせれていたので細かいところは気にならなかったです
キャラも多い中で1人1人動かせていたし少しベタかなと思うシーンでも
ハッキリ見せる事によって印象付けされました


00のメインテーマであった「対話と変革」は
別々のようでありながら実は1つのものでした
コミュニケーションは互いが自らを変化させていく事によって成り立ち
その変化を受け止められないものは対話できないと思う

自らの変革に戸惑いそれを受け止めきれない刹那
そして変革に向き合い受け入れるまでの過程が好きでした

ニール・ディランディは刹那に
「お前は変われ、変われなかった俺の代わりに」と言ったのか
自身を理解してもらうことに
無意識に拒絶が出てしまい意識不明になった刹那
ニールやクリス、リヒティ達に諭され
「今」を生きるための戦いをしているみんなを感じたことにより
刹那は過去を受け入れ生きるための戦いをする為に刹那は目を覚ました
ニール・ディランディは自身の過去と決別できなかった
だから刹那には過去に縛られるのではなく
未来を切り開くために「お前は変われ」と言ったのだと
ハッキリとわかるシーンがありうれしく思いました
単純3人の登場がうれしくもあります


グラハムの最後は衝撃を受けました
生きていてほしい!という気持ちがありました

OPを飾ったCBの映画シーンは笑えました
沙慈の「僕、出てなかったな…」と呟いていましたね。笑


1stでは戦う事しか選べない自分を手紙に綴った刹那は
戦う以外の可能性を示そうとしてくれた
マリナの元へ行ってましたが個人的にマリナはあまり好きではないので
とても良いシーンがやや減しました


「刹那・F・セイエイ」=「刹那・FROM・聖永」
"永遠の中の、ほんの一瞬を生きる人間"
という意味が込められているみたいです

投稿 : 2024/11/23
♥ : 7
ネタバレ

Tuna560 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

『劇場版 機動戦士ガンダム00』作品紹介と総評

『機動戦士ガンダム00』の完結編。ガンダムシリーズの劇場作品としては『機動戦士ガンダムF91』以来19年ぶりとなる完全新作。

(あらすじ)
西暦2314年。表舞台から姿を消したCBの刹那やロックオン達は戦争の抑止力となるべく、密かに活動を続けていた。
しかし、新たな戦争の火種が迫りつつあった。発端は、130年前に廃船となったはずの木星探査船「エウロパ」の地球圏への漂着。エウロパには一切の生体反応が無かったが、地球への突入を防ぐために連邦軍のイノベイターであるデカルト・シャーマン大尉の手で破壊された。しかし、この一件以降、無人の乗り物の暴走、イノベイターへ覚醒しつつある人々への脳量子波の干渉、人体へ寄生する謎の金属生命体(ELS)の発見などの怪事件が頻発し始めた。(wikipedia参照)

ガンダムシリーズの公式作品で初の宇宙起源生物を取り扱い、言葉も感情も通じない人類とは全く異なる種族との「対話」がテーマとなっています。

この作品で語るべきは…やはり賛否両論となった結末でしょう。
{netabare} 「相互理解のために対話を試み、その友好の証として全てのELSが大輪の花へと変化した 」{/netabare}という結末は、「対話によって争いを解決したい」という刹那の願いに呼応するもので、この作品にとって、これ以上ない結末に思います。
それは、イノベーターである刹那にしか出来ないことであり、1期の頃に比べ「人間」として大きく成長した証だと感じました。
また、ヒロインであるマリナ・イスマイールとの後日談も、『ガンダム00』らしくてよかったと思います。

「外宇宙からの来訪者」を扱うことで、「ガンダムである必要がない」という意見も多いですが、それは固定概念でしかなく、「新境地の開拓」として評価すべきだと思いますね。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 7

69.8 1707 総合得点ランキング1707位
劇場版 新機動戦記ガンダムW[ウィング] ENDLESS WALTZ 特別編(アニメ映画)

1998年8月1日
★★★★☆ 3.8 (146)
1110人が棚に入れました
かつての戦いから1年。全ての武力を放棄して平和への道を進む世界に対し、トレーズ・クシュリナーダの実子を名乗る少女マリーメイアを頂く謎の軍が宣戦布告した。放棄された筈のMSリーオー他旧式戦力に新型MSサーペントを加えての武力侵攻と、平和の象徴でもあるリリーナ・ドーリアンの拉致というマリーメイア軍の暴挙に対抗すべくヒイロ・ユイとデュオ・マックスウェルは行動を開始する。しかしその前に立ちはだかったのはマリーメイアの軍門に下ったトロワ・バートン、そしてガンダムパイロットの中でただ1人ガンダムを手放していなかった張 五飛だった。一方特務機関プリベンターを組織して、亡きトレーズの意思を継ぎ地球圏の平和維持に当たっていたレディ・アンはルクレツィア・ノインやサリィ・ポォと共に事態の収拾を図るが、対応に追われていたレディ・アンの前に「火消しの風・ウインド」を名乗るゼクス・マーキスが現れ、プリベンターとして活動する権限と封印されたトールギスIIIを貸し与える様に願い出た。そして廃棄される筈だった4機のガンダムは、カトル・ラバーバ・ウィナーの手によって再び地球圏へと舞い戻る。

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

特別編と通常版どちらを見るべきかについては、断然、特別編

ガンダムWの劇場版。OVA作品Endless Waltzの再編集版となっています。
劇場版ガンダムには再編集版というパターンが多いですが、本作は元が全3話のOVAで本作が90分の作品になっているため、再編集である特別版のほうが長く、通常版をそのまま繋いで新作カットを追加したものになっています。
そのため、重要なシーンのカット、ナレーションでごまかす、そもそも完結していないなどはなく、過去の劇場版ガンダムを比較し満足度の高い作品になっています。
もちろんガンダムW本編を前提知識として見ている必要はありますが、本作できれいに完結となっています。

ストーリー、感想は通常版と同じなので、そちらを参照で。

特別編と通常版どちらを見るべきかについては、断然、特別編です。
特別版には戦闘シーンを中心に新作カットの追加や主題歌の変更、つなぎの修正などが行われていますが、それ以上に通常版には登場しないドロシー・カタロニアのシーンが追加されています。
戦闘シーンの新作カットなどは正直、見比べないとわからないくらいなのですが、特別版で追加されたドロシー・カタロニアが民衆を鼓舞するシーンと、「私の知っている男は、墓の下か、あそこにしかいないわ!」というセリフはガンダムWを象徴する場面の一つと思っているので、通常版だと、個人的にはちゃんと見たことにならないレベルと思います。

ドロシーのシーンはなくても話は通じるので、ドロシーの眉毛がむかつくという方については通常版であってもストーリー的に問題はないのですが、そうでない限りは、特別版をおすすめします。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 1

E4GLS さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

平和とは何か、簡潔明瞭にまとめられている

本作はOVA版に新作カットが加えられ、挿入歌が変更になったものです。内容はほとんど変わりませんが、個人的にはこちらがお勧めです。以下、内容です。

ガンダムW本編から1年後、地球で起こった騒乱を描いた物語です。

ガンダムWの完結編として質の高い作品だと思います。
若きガンダムのパイロットやゼクス・マーキスが戦後の騒乱で何を想い戦うのか納得できる形で描かれていました。

ガンダムW本編は突っ込みどころが多い作品でしたが、本作においてはそのようなこともなく短時間でうまくまとめられているのが非常に好印象でした。

作画と音楽も作品の盛り上げに貢献しています。Wガンダムゼロのデザインが本編と大きく異なるのは賛否ありそうですが、個人的には本編から続くガンダムの切ない役割を象徴するデザインとして肯定的に捉えています。

戦争、平和、革命の終わらないワルツが続くというマリーメイアにヒイロ達が何を提示するのか。本編を視聴された方には是非こちらも観てみて欲しいと思います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

69.1 1903 総合得点ランキング1903位
機動新世紀ガンダムX [エックス](TVアニメ動画)

1996年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (339)
1847人が棚に入れました
アフターウォー (A.W.) 15年。人類と地球に壊滅的な打撃を与えた勝者無き大戦争、第7次宇宙戦争後の荒廃した地球が舞台。戦争で孤児となった主人公ガロード・ランは、ジャンク屋やモビルスーツ狩りを生業として逞しく生きていた。そこにある依頼が来る。内容はバルチャー艦「フリーデン」に誘拐されたティファ・アディールという少女を取り戻してほしいというものだった。しかしティファに一目惚れしたガロードは、依頼者を見て激しく怯えたティファをつれて逃走。そしてティファに導かれたガロードは、幻のモビルスーツ「ガンダムX」を発見する。紆余曲折を経て二人は、フリーデン艦長ジャミル・ニートと共に、「ニュータイプ」と呼ばれる人々を探す旅に出るのだった。
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

私にとって最初のガンダム作品

1996年4月~12月放送のテレビアニメ。全39話。

私が全話きちんと視聴した最初のガンダム。ほぼリアタイでした。
ガンダムについて詳しく知る前にこれを見ちゃったのは「設問を見る前に解答例見ちゃった」感があるなあw
BDBOX発売が近いので再視聴しました。


高松信司監督が「ガンダムを考えるガンダム」と語った通り本作はファーストガンダムをオマージュしていますが、きちんとまとまった内容なので初代を知らなくとも問題ないと思います。私は本作がほぼ初のガンダム作品だった(Wを何話か見ていたくらい)ので何も知らずに子ども心に楽しみました。

本作は作画スタッフの少なさが弱点ではありますが、コンテ・演出に作画がしっかり噛み合っていることは大きな美点です。また楽曲のクオリティが高く演出としても上手に使われています。無駄なキャラクターもおらずテーマと物語の一貫性も保たれていました。
スロースターターながらフォートセバーン編からテーマが見え始め、メタ要素はあるにせよ決して難解ではない点も評価に値します。

また、純粋にキャラものとして見てもなかなか楽しめる作品。
客観的に考えると本作の世界観はかなり重くシビアですが、主人公であるガロードのバイタリティやティファとの関係性、フリーデンの和やかな人間関係が作風を明るくしてくれます。


【テーマについて】{netabare}
シリーズ構成の川崎ヒロユキさんはもともとキャラクター描写にもストーリー展開にも穴の少ない脚本家ですが、全話ご本人が書いているので矛盾もほぼ無く、テーマも一貫させています。

「能力の有無に関係なく個性を受容すること」
「未来を切り拓くのは特殊な能力ではなく、望んだ未来を手に入れようとする心の強さ」
「世代間の相互の影響」

本作だけ見てのテーマは以上の3つかなと思います。3つ全てが乖離せず、無理なく描かれたのが素晴らしかったです。
これらのテーマをガロードとフロスト兄弟は正反対な形で背負っていましたし、世界観が非常にシビアなため、様々な年代・様々な立場のキャラクターが登場し、世代間の関係性を好悪に関わらず浮き彫りにする点も良かったと思います。

そしてニュータイプについて。
D.O.M.E.はニュータイプなど存在しないとは言いましたが、ニュータイプだけではなくすべての能力者も、また特別な力のない人々も否定していないのが大きなポイント。
D.O.M.Eの「ニュータイプという言葉を捨てればいい」という言葉には、ティファがガロードから一人の少女として、フリーデンで一人のクルーとして、人柄も能力もありのままに受け入れられていることが説得力を持たせていると思います。{/netabare}


【作画・演出】{netabare}
キャラクターデザインもメカデザインもシンプル寄りで地味。私は好きなんですがキャッチーさはあまり無いですね。ドートレスとかクラウダとか汎用メカがなんとなく可愛いw

DVDのブックレットによると作画はほぼ一班体制(二班体制でクレジットされていますが、お互いがお互いのヘルプに入っていた)というんだから恐ろしい…
毎回同じ作画スタッフだったため、大きく崩れることはありませんでした。

演出は実写映画的演出をする人が多く、良くも悪くも地味。ですがそれが大きな魅力でした。高松監督と渡邊哲哉さんの絵コンテは特に素晴らしく、作画も演出に大切なシーンは外しません。

バトルパートも大切なシーンは綺麗に仕上げているんですが、それ以外はやっぱり大変そう。戦闘シーンの作画の使い回しが、細かく目立たない形で度々行われていました。
90年代という時代を考えると少なくない例ですし、何より非常に厳しい制作環境の中で様々な工夫をし、キャラクターの感情表現を大切にする方向性を最後まで一貫したことは評価すべきと私は思っています。
何よりキャラの仕草が細かいのは見所だと思うし、私は大好き。

その方向性もあり、ロボットものとしての見所はバトルそのものよりも大量破壊兵器(サテライトキャノン)に意味を持たせて演出し、テーマや物語とリンクさせている点。サテライトキャノンをどう使うかによってガロードの内面の成長をわかりやすく見せたのは本当にお見事でした。
激しい戦闘を見たい人には向いていませんが、サテライトキャノン発射には名シーンが多いです。{/netabare}


【音楽】{netabare}
作曲の樋口康雄さんと音響監督の浦上靖夫さんのお仕事が素晴らしかった。

OP・EDの素晴らしさは他のレビュアーさんも書いている通りですが、演出としても上手に使っていて切り離しては語れません。30分(アバンから次回予告まで)の流れが本当に格好良くて、映画のような雰囲気を楽しめます。
また本作のBGMは尺が長めでループできないタイプなんですが、使い方が素晴らしかった!クラシック調の楽曲なので転調も多く楽曲の繋げ方に序盤は苦慮したらしい場面もありますが、それ以降は違和感が全くなくてとても好きです。{/netabare}


【キャラクターについて】
地に足の着いた印象のキャラクターが多いですね。
キャラそのものも好きですが、フリーデンクルーは厳しい世界で助け合って生きていて、娯楽室や食堂などでクルーの関係性を知るシーンが多かったのが良かったです。テクス先生の活躍は一見の価値あり。
ただ終盤にウィッツの活躍が無かったのは残念でした。サテリコンの掘り下げももう少し見たかったですが、放送期間短縮と連続性の強い展開でちょっと難しかったのかな。
みんな好きだけど、今回見直して特に色々考えたキャラについて少し。

{netabare}
・サラについて
第6話から第9話までの一連のエピソードは若干重くて子どもの頃には理解しきれていませんでしたが、今見ると良く出来ているなって思います。キャラクターの心理変化とか、女性の気持ちを表現する口紅の演出の巧みさとか。
5話終了の時点ではフリーデンクルーはティファという少女を仲間として受け入れたとはまだ言えず、ジャミルのために行動していたことがサラの行動に現れます。ジャミルとティファもニュータイプとして根本的に理解しあえるのはお互いだけで、ティファはともかくジャミルはちょっと周りが見えなくなっていました。
過去の心の傷を思えば無理からぬところもありますが、それでもこのアクシデントの遠因はジャミルにあり、きっかけとなったのはガロードであり、自分の不安感を言葉にしてこなかったサラにも問題がある、という感じでなかなか細かいです。
(個人的にはトニヤが口紅をティファに渡したのがちょっとお節介に過ぎると思っちゃうんですよね。ガロードはティファを好きだけど、ティファがガロードを恋愛対象として見ているかはトニヤにはまだわからないはず。普通に元気づけてあげて、っていうだけで十分だったと思います。純粋に善意からの行動だし、結果的にこじれちゃったのがトニヤのせいなわけじゃないんだけど…でもこういう子リアルにもいるよね、みたいな…)

サラの心理は特にデリケートで、心境の変化を正確に理解させられるのは作画の努力(キャラクターの芝居)の賜物です。
自分の気持ちを言葉にすることの少ないサラは、作画・演出の恩恵を強く受けたキャラクターの一人ですね(一番はもちろんティファですが、ティファの心理の変化は割とストレートなので)。
ジャミルへの気持ち、副艦長としての重圧、繊細さと芯の強さなどサラはとにかく仕草と表情から読み取る心情が多いです。ジャミルが娯楽室に入って来たら水着入り紙袋を後ろ手に隠すサラ本当に可愛いw
副官のサラが受け止めてくれるからジャミルも自分の気持ちに正直にフリーデンを動かせる、という信頼関係も好き。


・フロスト兄弟について
以前からフロスト兄弟の「いずれD.O.M.E.にも触れねばなるまい」という台詞が回収されてないのがちょっと気になってはいました。本作で明確な矛盾と言えそうなのはこの一言だけで、放送短縮の影響かなと思います。
あるいはサテライトシステムを利用するためにD.O.M.E.の「力」に接触したと考えるのもアリかも知れません。

もっとも、D.O.M.E.に触れてもフロスト兄弟の考え方は変わらなかったと思います。その答えを受け入れることは自分たちが特別ではないと認めるのと変わらず、特別な存在としての承認欲求を持つ二人のアイデンティティが崩壊してしまう。
むしろ「未来を作るのはニュータイプではなく我々だ」と言い続けた兄弟にとって、ニュータイプという存在は自分たちがより優れた存在であると示せる格好の踏み台です。フロスト兄弟は周りにいた研究者や上司によって与えられた屈辱から、ニュータイプを知るのではなく、ニュータイプを制圧しようと考えたのでしょう。

フロスト兄弟については色々な感想を読んだ中で、本作のテーマを汲み取った上で「彼らは誰しもが持ちうる「歪み」であって、「悪」ではない。「悪」なら倒されるべきだが「歪み」は許されなければならない。」という意見を見かけ、私も色々と腑に落ちました。
二人が生き残ったのは個人的に非常に好ましく本作らしいと思っていますが、やり直しの機会を与えられた明確な理由はこの言葉に尽きるのではないかと感じます。

それに加えて、メタ的にフロスト兄弟はガンダムと比較され貶められた共通の要素を持つ作品に当たると考えられるので、監督は彼らを殺したりはしなかったのでしょう。{/netabare}


まとまりが良く全体的な質は高いと言えると思います。誠実な作品作りが形になった好例ではないでしょうか。
地味な作風ですが、肌に合えば年齢性別問わず楽しめると思います。(2018.3.8)


【ガンダムチャンネルにて一部無料公開中】
改めて見ても音楽の使い方が素晴らしいです。
HDリマスターを公開しているので色味もとても綺麗です。背景の空などは色選びも新鮮ですし。BDそのままの色を見ることができますよ。

第1話前半だけでも雰囲気は掴めるので、興味があればどうぞ。
(2020.2.9)

【ガンダムチャンネルにて第14話以降を期間限定で配信開始】
ガンダムXでは珍しい単発回の第15話が公開されてます。この話数だけでも面白いと思いますよ。
良い回なので是非ー。
(2021.2.23)

投稿 : 2024/11/23
♥ : 23
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ガンダムのフォーマットを借りた少年・少女の初恋ストーリー

視聴率が余り取れなくて、ガンダムシリーズとしては珍しく放送期間が短縮されてしまった不人気作ですが、実際に視聴してみると、その「ガンダムらしくなさ」が逆に個人的には次第に好もしく思えてくる作品となりました。

監督の高松信司氏は、前年(1995年4月-1996年3月)に制作・放送された『新機動戦記ガンダムW』で、本来の監督(池田成氏)が突然途中降板した後、監督代行を本作の放送直前まで務めており、本作のシナリオについては、前作『ガンダムW』と同じく複数ガンダム・複数パイロットとする等の大枠を示した後は、川崎ヒロユキ氏にほぼ丸投げだったそうです。

そして、そういう経緯から本作のシリーズ構成&脚本を一人で担当することになった川崎ヒロユキ氏の方は、その後2005-6年に制作・放送された『ツバサ・クロニクル』(CLAMP原作)の第1-2期の脚本も一人で全話担当している方、ということで、そうした日常系ではない特殊な世界観設定のある「少年・少女の初恋もの」の脚本家として高い適性のある方なのではないか、と思いました。

※つまり本作は、《イベント牽引型》作品の代表格である「ガンダム」向けのシナリオではなく、登場キャラクターたちの細やかな心情推移をゆっくりと描き出す《感情描写型》のシナリオになっている。
→それが、本作が「ガンダム」としては不人気作となってしまった一方で、私には好ましい作品に思われた原因と思います。

なお、《感情描写型》作品ということの補足説明として、本作は、
{netabare}
①ガロード&ティファの初恋だけでなく、
②同じバルチャー艦フリーデンの助っ人パイロットであるウィッツ&ロアビィと、フリーデンの女性クルー達との恋愛模様、
③同じくフリーデンの副官サラのジャミル艦長に対する思慕、
④さらには、ガロード&ティファの2人の成長を見守るジャミル艦長やテクス医師の心境、{/netabare}
・・・等をそれぞれ確り描出しており、視聴者がそうした細かい描写に気付くかどうか、で本作全体への評価も微妙に変わってくる作品かも知れません。


◆制作情報
{netabare}
原作           矢立肇、富野由悠季(『機動戦士ガンダム』より)
監督           高松信司(全話)
シリーズ構成・脚本  川崎ヒロユキ
キャラクターデザイン 西村誠芳
メカニックデザイン   大河原邦男、石垣純哉
音楽           樋口康雄
アニメーション制作  サンライズ{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

============= 機動新世紀ガンダムX (1996年4-12月) ============

 - - - - - OP「DREAMS」、ED「HUMAN TOUCH(英語版)」 - - - -
{netabare}
第1話 月は出ているか? ☆ バルチャー(禿鷹)稼業の少年ガロード&謎の少女ティファの出遭い、ジャミル配下のMSからの逃走、GX起動
第2話 あなたに、力を… ★ 助っ人ロアビィ(Gレオパルド)&ウィッツ(Gエアマスター)との対戦、サテライトキャノン発射、ティファ絶叫
第3話 私の愛馬は凶暴です ☆ ジャミル(バルチャー艦フリーデン艦長)、フロスト兄弟(アルタネイティブ社&フリーデン接触)
第4話 作戦は一刻を争う! ☆ ジャミルの過去とティファに拘る理由、フロスト弟のティファ誘拐
第5話 銃爪(ひきがね)はお前が引け ★ 対フロスト兄(Gヴァサーゴ)・弟(Gアシュタロン)戦、ガロードの戦う理由、ラボ破壊、ティファ帰還
第6話 不愉快だわ… ★ ガロードの落ち込み、化粧、エニル・エルGX襲撃、旧連邦動力施設爆発
第7話 ガンダム、売るよ! ☆ ガロードとティファの行き違い、ガロード逃亡、G競売、ウィッツのお宝
第8話 あの子、許さない! ★ それぞれの想い、ティファへのテクス医師の助言、ガロードGX再搭乗
第9話 巷(ちまた)に雨の降るごとく ★ 湖上の待ち伏せ、水蒸気爆発誘発、3人フリーデン専属パイロットに
第10話 僕がニュータイプだ ★ 北の街フォート・セヴァーン、氷上の待ち伏せ、対ニュータイプ(カリス・ノーティラス)戦
第11話 何も考えずに走れ! ★ ティファの選択、ガロードの逡巡と立ち直り、フロスト兄弟vs.ウィッツ・ロアビィ・ガロード
第12話 私の最高傑作です ★ フォート・セヴァーン潜入、旧宇宙革命軍ライラック作戦失敗の顛末、人工ニュータイプ完成体
第13話 愚かな僕を撃て ★ ティファ奪還、カリスとの再戦、シナップス症候群{/netabare}

 - - - - OP「DREAMS」、ED「HUMAN TOUCH(日本語版)」 - - - -
{netabare}
第14話 俺の声が聞こえるか! ★ カリスとの再々戦、別れ
第15話 天国なんてあるのかな ☆ 助っ人ウィッツ&ロアビィの休日
第16話 私も人間(ひと)だから ★ ティファとイルカの交流回、別のガンダムX
第17話 あなた自身が確かめて ☆ ドルフィン・ナビとイルカの怒り
第18話 Lorelei(ローレライ)の海 ★ ルチル・リリアント出現 ※ガンダム恒例のオカルト現象
第19話 まるで夢を見てるみたい ★ Lシステム、GX-bit機動、ルチルとの別れ
第20話 …また逢えたわね ☆ ガロード&ティファのデート回、エニル・エルの困惑
第21話 死んだ女房の口癖だ ★ 新連邦政府再建委員会、カトック隊のフリーデン襲撃
第22話 15年目の亡霊 ★ エニル・エル救出、ガンダムDX出現、降伏
第23話 私の夢は現実です ★★ 脱出計画失敗
第24話 ダブルエックス起動! ★ カトック死亡、ガンダムDX奪取、新連邦政府樹立
第25話 君達は希望の星だ ☆ 独立国エスタルドとの同盟、新連邦軍撃破
第26話 何も喋るな ☆ 隣国ノーザンベル攻防戦、対「白い死神」戦{/netabare}

 - - - - - - - - OP「Resolution」、ED「銀色Horizon」 - - - - - - - -
{netabare}
第27話 おさらばで御座います ☆ 隣国ガスタールの裏切り 
第28話 撃つしかないのか! ☆ エスタルド降伏
第29話 私を見て ★ 対アベル・バウアー戦(GX-bit操作者)、ティファとの共闘、フロスト兄弟の目的
第30話 もう逢えない気がして ★ ニュータイプ研究所破壊、ニコラ研究員ティファ略奪・宇宙へ 
第31話 飛べ、ガロード! ☆ シャトル打ち上げ、フリーデン突撃・大破
第32話 あれはGファルコン! ☆ スペースコロニー(クラウドナイン)、宇宙革命軍(ランスロー大佐)、Gファルコン(パーラ搭乗)
第33話 どうして俺を知っている!? ☆ 反宇宙革命軍・反ニュータイプ主義組織サテリコン、GファルコンDX
第34話 月が見えた! ★ ダリア作戦(地球へのコロニーレーザー照射)阻止、ティファ救出
第35話 希望の灯は消さない ★ 新連邦ブラッドマン総司令の本心、カリスの救援
第36話 僕らが求めた戦争だ ☆ フリーデン・クルーとの再会、フロスト兄弟の策謀、開戦決定
第37話 フリーデン発進せよ ★ それぞれの恋の進展、ティファの夢(月面のD.O.M.E.)、革命軍の月侵攻、フリーデン月へ
第38話 私はD.O.M.E…かつてニュータイプと呼ばれた者 ☆ D.O.M.E.の招待、1st.ニュータイプ
第39話 月はいつもそこにある ☆ 「人の変革」の否定、フロスト兄弟との最終戦、和平協定{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)1、★(良回)21、☆(並回)17、×(疑問回)0 個人評価 ★ 4.0


◆富野氏の作品は「叙事文学」的、それに対して本作は「叙情文学」的?

そもそも「ニュータイプ」という「只の超能力者」に関する勿体ぶった(その実、何の内容もない)言説には余り興味が涌かない自分には、本作のような《感情描写系》で「叙情文学的」な作品の方がしっくりくる感じです。

なお、私の個人的意見として、ガンダムシリーズは「文学的」ではあっても全然「哲学的」ではない、と考えています(物語-story-としての面白さはあるが、論理考究的な面白さはない)。

※この点については、現在視聴中の『銀河英雄伝説』が、「哲学的」な面白さも兼ね備えた作品と思うので、そちらのレビューの方で比較考察したいと考えています。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 26

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

幽玄の中の新人類(ニュータイプ)

※1劇場版「機動戦士ガンダム」公開からおよそ15年後に製作された、テレビシリーズとしては7作目のガンダム作品。全39話。

ガンダム平成3部作(アナザーガンダム3部作)と呼ばれる作品群の中では、G、Wに続く最後の作品あたり、監督を務めた高松信司さんの言によると、作品のテーマは「ガンダムを考えるガンダム」との事。

スペースコロニーの独立運動に端を発する大戦争の末、人類の99%以上が死滅し、文明の名残も僅かとなった広漠とした世界が舞台のお話。

※2バルチャーの少年ガロードは、運命に導かれるまま(成り行きのままにとも言う笑)に、ニュータイプの少女ティファ、かつてニュータイプと呼ばれていた男ジャミル、その仲間達と共に、放浪の旅へと繰り出します。

従来(あるいはそれ以後の)のガンダム作品とは異なり、物語の中心に据えられているのは戦争ではなく、あくまでも探求の旅。上で引用させてもらった高松監督の示唆する通り、メタフィクション的な視点からガンダム、あるいはニュータイプを再評価した、珍作「Gガンダム」に負けず劣らず(方向性は全く違うけど笑)の冒険的な試みを断行した、シリーズ中屈指の異色作品になっていると思います。

戦争に駆り立てられる訳でもなく、使命を帯びる訳でもなく、ただただ、個人的な想いをつてに人探しの旅を続けるジャミルおよびバルチャー一行の織り成すドラマは、やや冗長で緩慢。

ガンダム作品ではお約束となっている擬似家族ドラマや恋愛物語としての魅力は充分にあるものの、基本的には人探しと戦闘(小競り合い)の繰り返しの構成となっており、最後半になってやっとの登場となる「D.O.M.E.」なる存在が物語に影を落とすまでは、山場と言える様な大きな展開がありません。心地良い退屈感を覚えてしまいました(笑)

主人公のガロードにしても、言わば地を足で行く努力型。ガンダムシリーズの主人公にはありがちな、※3特別な力を持った存在としてではなく、むしろ生粋の※4オールドタイプの少年として描かれているので、ヒーロー性が弱いと言いましょうか、格好良さや華々しさとは縁遠い印象を受けます。元気印で天真爛漫な姿は見ていて痛快ですが、主役としての覇気に欠け、やや頼りなく、物語を牽引する役割についても脇を固めるティファとジャミルにそっくり譲ってしまっている様にさえ思えました。(二人のお供の立ち位置なので仕方無しですけど)

作品全体を俯瞰して見ると、このヒーローらしくないヒーローであるガロードという少年の人物像は、物語のテーマにしっかりと絡み付いておりまして、その意義は"敢えて特別ではないキャラを主役に据える事"そのものにあったのではないかと思われます。言葉に毒されぬ直感型、頭でっかちにならず体を動かす行動派である彼は「ニュータイプ」と言う言葉で理想化された"進化した人類"という概念の破壊と再構築を担う役回りとして、最適なキャスティングだったのではないでしょうか。

人は理想を求めて生きる動物ですが、あくまでも理想は絵に描いたモチ、それ以上でも以下でもなく^^。理想と現実を混同し、もしそれを自身に強いれば、必ずひずみが生じ、病み、もしそれを他者に強いれば、それはエゴとなり、争いの種となる。幼子が博識な大人を見る時、恋する人が想い人を見る時、それがその瞬間幻となるのと同じように。

ニュータイプ(アニメキャラ)という理想に魅せられた少年少女が大人になる通過儀礼としての一面も備えた本作は、裏を返せば、そんな理想に捉われた人々の心の歪みが紡ぐ青春群像劇と言い変える事が出来るのかも知れません。

ニュータイプなんて関係ねぇ!のポーズをとり続ける自由なガロード、ニュータイプとしての力を求められ戸惑いながらも信念を曲げない強い子ティファ、ニュータイプであった過去から逃れられず苦悩する探求者ジャミル、ニュータイプになりたかった献身の人、高潔な魂のカリス、ニュータイプを憎み、滅ぼさんとするフロスト兄弟。

言霊に縛られた人々が白い闇を抜けて、それぞれの道を歩むまでの姿を描いた「機動新世紀ガンダムX」。これはそんな人たちの物語。心を平らかにしてお楽しみ下さい。

最後に、申し訳程度の説明になりますが、ガロードとティファの繊細で優しさに満ちた恋愛描写につきましては、シリーズ屈指、いやむしろ、恋愛を扱ったアニメ全般をひっくるめても突出した微笑ましさと愛くるしさがあったと評価したいです^^

前途ある二人に祝福あれ!


※1:本作のタイトルは劇場版「機動戦士ガンダム」公開直前に、新宿駅前で行われたイベント「2.22アニメ新世紀宣言」を踏まえているそう。劇中の年号「A.W.(アフターウォー)15年」もこれに因んでいるとの事。

※2:ハゲタカの名の通り、廃墟を漁り、使えるものや金になるものをかっぱらい、自分達で利用したり、売り捌いたりして生計を立てているジャンク屋みたいなもの。いくつもの派閥があり、中には傭兵や追い剥ぎまがいの行為をする連中もいる。

※3:あくまでも設定として。バルチャーとして年齢不相応の抜け目無さと逞しさがあり、モビルスーツ乗りとしての天性にもスペシャルと形容していい程に恵まれている。

※4:ニュータイプの対義語。精神感応や未来予知など超能力に類する能力を全く持っていない人。つまり普通の人。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 27

69.1 1903 総合得点ランキング1903位
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ Ⅱ(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (479)
1836人が棚に入れました
大仕事を成し遂げ火星に帰還した鉄華団は、テイワズの庇護の下、ハーフメタル利権に由来する豊富な資金を元に、地球に支部を置くほどの大企業となる。一方、彼らの活躍によって少年兵の有用性が示されたことで、戦場に駆り出される子供やヒューマンデブリの数は激増し、世界の治安は悪化の一途を辿る。エドモントンでの戦いから2年後のある日、アドモス商会の社長となったクーデリアからハーフメタル採掘場の視察の護衛を依頼された鉄華団は、サンドバル・ロイター率いる宇宙海賊夜明けの地平線団の襲撃を受ける。テイワズ本部からガンダム・バルバトスルプスを受領した三日月の活躍で撃退に成功するも、地平線団は主力艦隊を投入して鉄華団を殲滅しようとする。鉄華団と協力関係を結んでいたマクギリスは、部下の石動・カミーチェ率いる援軍を派遣するも、そこにマクギリスを警戒しているアリアンロッド司令のラスタル・エリオンが派遣したイオク・クジャン率いる第二艦隊が介入し戦況は混迷を極めるが、三日月がサンドバルの身柄を抑えたことで戦いは終結。彼らと手を結んでいた活動家団体テラ・リベリオニスも三日月たちによって粛清される。その頃、アーブラウでは防衛軍の発足式典が行われるが、その最中に蒔苗を狙った爆弾テロが発生する。やがて、この事件はSAUの関与が疑われ始め、両者の間では戦争の機運が高まる。

声優・キャラクター
河西健吾、細谷佳正、梅原裕一郎、内匠靖明、村田太志、天﨑滉平、田村睦心、斉藤壮馬、寺崎裕香、金元寿子、櫻井孝宏、大川透
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

“任侠ガンダム”は、《ガンダム・シリーズ》の革命児となるのか?【考察編】

本作の総評/各話評価/個人評点については、第1期のレビューの方にまとめました。
ここでは、①先ず本作のモチーフ等を考察し、②その後に本作の《ガンダム・シリーズ》全体の中での特異性と意義について私見を述べます。

◆“騎士道”ではなく“任侠もの”のノリなので評価に迷うが、構成/作画の見事さには脱帽

本作のような「英雄群像劇」とか「英雄一代記」と称されるバトル系の物語にも色々とバリエーションがあって、その大きな分類の一つは、(1)騎士道もの、と、(2)任侠もの、となると思います。

例えば、本サイトでも非常に高評価であり、私自身も「お気に入り」に登録している『コードギアス 叛逆のルルーシュ』は、この分類でいくと (1)騎士道ものでしょうし、また同じく本サイト等で一部の人たちにカリスマ的な人気のある往年の大作『銀河英雄伝説』(※最近リメイク企画が進行中)も、(1)騎士道ものに分類できるでしょう。

※ここで私が「騎士道もの」といっているのは、
 <1> 主人公たちは、{netabare}それぞれ自身の目的や計画に従って敵と対峙し撃滅を謀(はか)るが、その際に(主に自分自身が何よりも栄誉を重んじる貴族であることから)実は意外と相手の名誉をも重んじる接し方を取ってしまいがちである。{/netabare}
 <2> そもそも、彼らの戦う理由は、{netabare}「自分の愛する人を守るため」「愛する人に危害を加えた者への復讐」あるいは「救いようのない苦難に苛(さいな)まれる人々を見て止むに止まれず」・・・というふうに、専ら他人本位で発生した“高貴な”ものである(つまり根本的な部分で自分本位ではない)。{/netabare}
・・・という特徴を持っている作品となります。

※一方、これに対して本作に描かれる「鉄華団」のメンバーたちの思考・行動パターンは、
 <1> 騎士道精神を貫こうとする者を{netabare}むしろ嘲弄し、彼らを専ら実利的に一方的に撃滅することに躊躇(ためら)いがない(※つまり相手の名誉を重んじるという「騎士の美徳」「武士の情け」がない)。{/netabare}
 <2> 戦う理由が、{netabare}他人ではなく専ら自分自身と自分の「家族」を守り、現状よりも自らにとってより善い環境を獲得する、という“より原初的な”欲求に発している(※つまり根本的な部分で自分と自分の延長である「家族」本位であり、かつその「家族」は血縁者にとどまらず「疑似家族」を含む←逆に言うと彼らが互いに守り守られる関係になるためには「義兄弟の契り」とか「疑似親子の水杯(みずさかづき)」といった任侠的な(=ヤクザっぽい)儀式を必要とする)。{/netabare}
・・・ということで、本作の見始めの頃は、まるで「任侠映画」をみているような気分で、

①確かに一話一話は、脚本も演出も音楽も非常によく工夫されていて見どころが多くて面白いのだけれど、
②このまま漫然と見続けるには結構な抵抗感のある、決して好きにはなれない作風

・・・と思っていました。

そのため、2016年春頃に第1期を見終えた当時の本作への個人的評価は、首を捻りながらも取り敢えず、☆ 3.9 と、私としてはチョイ低めの暫定評点とし、その半年後に始まった第2期も視聴を敬遠していました。

ところがその後、放送完結後の本作の評判が意外に良いことがチラホラと耳に入ってきて、特に色々なサイトや雑誌の2017年放送アニメのベスト作品・ベストキャラクター(男/女)に本作や本作のキャラが選定されているのを幾つも見かけて、「やはりこれは、一度は確り見終えるべき作品かも」と思い直して、もう一度第1期から通しで視聴することにしました。

そうやって視聴していくと、今度は一回目の視聴時には見落としていた作中の色々な仕掛けが見えてくるとともに、特に第2期に入ってからは“ただの任侠もの”ではない本作独自のモチーフに気付き始め、放送終了後の長井監督自身の種明かし(※後記)もあって、完走後直ちに再々視聴を決定、結局2017年放送の作品としては、『冴えない彼女の育て方♭』、『サクラダリセット』に続いて3作目の3周コンプ作品となってしまいました(※第1期に限れば4周)。


◆作品モチーフ等考察(※グダグダ長文注意←適当にスキップ願います)

  【1】 鉄と血で絆を固めた孤児たち(オルフェンズ)の物語
{netabare}
まずは本作タイトルから喚起されるイメージについてですが、世界史マニアの人なら「鉄血」と聞いて直ちに思い浮かべるのは、19世紀後半のプロイセン王国(のちドイツ帝国)で活躍した“鉄血”宰相オットー・フォン・ビスマルクでしょう。

「現下の大問題(※ドイツ統一問題)の解決は、演説や多数決によってではなく・・・鉄と血によってなされる。」
(1862年プロイセン議会での演説)

ここでいう「鉄」は大砲・銃弾・刀剣(つまり武器)、「血」はそれによって流される兵士の血(つまり戦死者・負傷者)をそれぞれ指し、当時プロイセン議会の軍備増強反対に直面していた首相ビスマルクは「このような空疎な議論ではなく、戦争によって初めてドイツの統一が果たされる」と喝破して、彼らの反対を押し切り、このあと現実に対デンマーク戦争/対オーストリア戦争/対フランス戦争の3つの戦争を勝ち抜いて、遂にドイツ統一(1871年)を成し遂げます。
それ以来、もともとマッチョな巨漢だったビスマルクには“鉄血宰相”の綽名(あだな)が定着するとともに、これらの戦争で優秀な参謀司令部の作戦指揮の下、頭頂部の尖った“鉄カブト”を被(かぶ)って憤然と突撃し敵軍を蹴散すドイツ軍には“世界最強の陸軍”というイメージが定着して現在に至っています。
(※アニメの世界でもマッチョな軍団といえばドイツ軍イメージが定番ですね。)

そして、本作のタイトル「鉄血~」も、おそらくは、このビスマルクとドイツ軍の故事からヒントを得て付けられたものと思いますが、作品内容自体はそこから更に捻(ひね)ってあって

<1> “鉄血”宰相ビスマルクのイメージ → 敵ラスボス的な存在のエリオン公ラスタル(※第2期で権謀術数を弄してマクギリス派革命軍&鉄華団の前に立ちはだかり、最終的には彼らの叛乱をも利用して既存体制の変革を成し遂げる冷徹・非情・狡猾な統合治安維持組織ギャラルホルン首魁)
<2> 実際に“鉄と血”を蕩尽(※とうじん、「湯水の如く費消する」という意味)して奮戦する精鋭 → 鉄華団(※本作の主役たちであり、本作に描かれた変革の時代のdriving force(駆動力、推進者)となった者たち)

・・・という風に、敵味方の両極に分離して描き出されているように私には見えました。
つまり、同じ「鉄血」モチーフでも、

<1> エリオン公ラスタルの方は作中世界で最大・最強の武力を誇るギャラルホルンを統括するセブンスターズ(7大軍閥)の盟主であり、史実にあるビスマルク首相もプロイセン王国の教養あるユンカー(地方領主)出身の実力派宰相だったのに対して、
<2> 「鉄華団」の孤児たちは、

「俺達はあんたとは違う。立派な理想も志もねえ。土台のねえ俺らは進み続けることでしか自分たちの居場所を守ることが出来ねえんだ。」(第25話でオルガ(鉄華団のリーダー)がクーデリア(※火星アーブラウ領クリュセ独立自治区首相令嬢であり、辺境とはいえやはり教養ある貴族階級と思われる)に漏らした言葉)

この発言に象徴されるように、鉄華団の団員達は殆(ほとん)ど奴隷労働者とでも呼ぶべき境遇から文字通り鉄と血に塗(まみ)れて這い上がってきた“一代目の人たち”“成りあがり者たち”であり、そんな彼らからすれば、自己陶酔的な貴族サマが望む「一対一の決闘申込」(第3話のクランク二尉)とか「相手の戦闘準備が整うまで攻撃を待って正々堂々と戦う」(第23話のカルタ・イシュー)といった騎士道的な振る舞いは、屁にもならない愚行でしかありませんでした。{/netabare}

  【2】 新撰組モチーフのドラマチック展開
{netabare}
こうした“一代目の人たち”“成り上がり者たち”を主役にした群像劇は、実は日本とか西洋には珍しくて(※なぜなら、その歴史を通して血統正しい王族・貴族や騎士・武士が活躍する物語が多かったから)、易姓革命によって次から次へと君主や支配者層が打ち倒され入れ替わってきた中国由来の物語に多いスタイル(※例えば、『史記』に描かれる項羽と劉邦の抗争や『三国志』『水滸伝』)であり、辛うじて日本でいえば、アンダーグラウンドなヤクザの物語を除外すれば、歴史に浮上したのは、せいぜい幕末の“新撰組”の物語くらいかな?と思って視聴を続けていたら・・・

第2期の放送終了後に、公式番組(鉄血ラジオ第81回)で、長井龍雪監督ご自身が本作について、

・新撰組はイメージモチーフ。企画書にも書いてある
・三日月とオルガは近藤と沖田と土方の好戦的な部分をミックスさせて2で割ったもの

・・・と、そのままズバリ語ったそうで、そういえば、本作の第1期の1番目OPが『Raise your flag』(※直訳すると「君たちの旗を揚げよ」)となっていて、第2期の1番目OP『少年の果』になると今度は「錦の御旗を掲げよう」という歌詞が唐突に現れ、鉄華団のメンバー達の行動・思考パターンから喚起されるイメージと併せて、「あれ?これもしかして幕末モチーフなの?」と薄々感づいてはいたのですが、ああ、やっぱり・・・というか、成る程というか、監督の発言を知って妙に腑が落ちました。

※因みに第1期1番目OP『Raise your flag』に合わせて作中で掲げられる鉄華団の旗は「鉄の華」。→華の形は明らかにフリージア(※第2期2番目OP『Freesia』参照)で、花言葉は“純潔/無邪気/あどけなさ/憧れ/感受性”だそうです。←これって新撰組の“誠”の旗にも通じる設定ですね。

そして、この“新撰組&幕末モチーフ”の方も、上記の“鉄血”モチーフと同様、そのまま作品に適用するのではなくて、捻(ひね)ってあって

<1> こっちの新撰組(※鉄華団=虐待され酷使されていた孤児たちが鉄と血の絆で団結した精鋭武装集団)は、元ネタの史実とは違って、佐幕派(※徳川幕府並みに300年続く守旧派・ギャラルホルン幕府)ではなく、討幕派(※“錦の御旗”を掲げるマクギリス一派)に加担して、佐幕派の返り討ちに遭い壊滅してしまう。
<2> ただし佐幕派(※ギャラルホルン幕府)は、この騒動を機に内部改革を断交して民主化を達成し、また新撰組(※鉄華団)の故郷・火星も民主化の成った新生ギャラルホルンとの交渉によって念願の独立を達成し、鉄華団の元団員や協力者達は新たな立場でそれぞれの未来を切り開いている。

・・・という風に、この手の作品(※《メカ・ロボット系バトルもの》)にありがちな意味不明のグダグダな結末ではなく、確りした好感の持てる結末(※将来に希望を繋ぎつつもほろ苦さの残る結末=ビター・エンド)になっている点が個人的にかなりの好印象となりました。

そして、この「変革の時代の“Driving Force”(※「駆動力」「推進力」という意味で、歴史用語としてしばしば使われる)となって華々しく散る鉄華団」「彼らの後には“ギャラルホルンの民主化”と“火星独立”という確かな果実が残される」という結末はまた、アニメの先行作品としては直ちに『太陽の牙ダグラム』(1981-83年)を想起させるものでした。{/netabare}

  【3】 “革命の乙女”と“ダークヒーローのなり損ね”のもたらす対照的な結果
{netabare}
鉄華団自体は、親の顔を碌に知らずマトモな教育の機会も与えられなかった孤児たちという境遇から、通常は国家や地域社会や累代の血族たちから自然に授けられる「歴史的背景」とか「(政治的・思想的な意味での)教養」を持たず、それ故にセブンスターズやクーデリアのような“高い理想”や“志”を持たない、専ら自己とその“家族”の利益のため“だけ”に死力を尽くす精鋭武装集団ですが、
(1) そんな彼らの“覚悟の良さ”に魅せられて自らの覚悟をも決めてしまう者、また、
(2) そうした彼らの持つ“火事場の馬鹿力”を自己の計画の達成のために最大限に利用しようと画策する者が現れます。

(1) 前者が火星独立運動家クーデリア・藍那・バーンスタインであり、(2) 後者がセブンスターズ(7大軍閥)の一翼の跡取り(のち当主)マクギリス・ファリドなのですが、結局、鉄華団としては、

(1) クーデリアを事業の依頼主として行動を起こしていた頃は、波乱万丈とはいえ武装集団として前進に継ぐ前進を果たして、大きく羽ばたくことが出来たのですが(※第1期の展開)、
(2) マクギリスに「自分の計画に協力すれば火星の王にしてやる(※火星の治安維持権限を与える)」と煽てられ、そのクーデター計画に加担してしまってからは、一方的に損害を出す分の悪い勝負にズルズルと引き擦り込まれ、シノ/オルガ/昭弘/三日月といった主力メンバーたちが次々と悲劇的な最期を迎えてしまうことになる(※第2期の展開)。

同じことですが、これを別の言い方をすると・・・
(1) 火星の自治政府の首相令嬢という恵まれた生まれでありながら(※むしろそれゆえに一種の“ノブレス・オブリージュ”として)、虐げられた火星の人たちの独立を全身全霊で希求する“革命の乙女”(※他称)として覚醒を遂げたクーデリアとの協力関係は、ビターエンドとはいえ、最終的には本部から脱出した元鉄華団員たちにとって、正(プラス)の結果を生み出す一方、
(2) 腐敗した治安維持組織ギャラルホルンの指導者の一人ファリド公イズナリオの男色の相手として貧民窟から拾われ、同家の養子に入り、その中で既存の貴族社会を打倒するという暗い情念を密かに抱き続けてきた“アグニカ・カイエルの再来”(※自称)マクギリス・ファリドとの共闘は、鉄華団の主力メンバーの相次ぐ戦死・団自体の壊滅という最大の負(マイナス)をもたらすものとなってしまう。

・・・この組む相手によって全く対照的となる結末のつけ方は、客観的に見て決して“正義の集団”とはいえない(※どちらかというと団員たちの“任侠的価値観に基づいた美意識を満たすための集団”である)鉄華団の一部始終を描いた物語のケジメとして妥当なものだったように思います。

※なお、マクギリス・ファリドについては、『コードギアス』のルルーシュ、『銀河英雄伝説』のラインハルトのような“ダークヒーロー”のなり損ね的な扱いになっていて、その点の考察も実は面白い作品なのですが、ここでは割愛します。{/netabare}

  【4】 “鉄華団”と“太陽の牙”の比較
{netabare}
本作のエピローグとして、鉄華団の壊滅から数年後、彼らの墓標は世間からは全く忘れ去られ、ただかっての協力者の生き残りクーデリアとアトラの二人の女性によって大切に守られている、というシーンがありますが、これを見ていて、私は、本作とよく似たシナリオを持つ往年の大作『太陽の牙ダグラム』(1981-83年)のラストシーンで、それまで地球に虐げられてきた植民惑星デロイアの自治独立運動を武力面で支えてきたゲリラ組織「太陽の牙」の象徴だった二足歩行ロボ(ダグラム)が砂漠で自沈した際に、その鹵獲命令を受けて追跡してきた反対組織側の指揮官や兵士たちが総敬礼するシーンを想起しました。

→ 鉄華団はクーデリアの火星独立活動に多大な戦死者を出しつつ協力し、マクギリス一派の叛乱事件では「火星の王」となることを目指したが、それはあくまで、そうすることが彼らにとっての仁義であったり、実益をもたらすものとの期待(もしくは打算)があったため(※つまり結局のところは自分本位の集団であり、火星の人たちにとって別に“正義の味方”でも何でもなかった→それゆえに火星の人々からは忘れ去られてしまった)。

→ これに対して「太陽の牙」は、その存在意義自体が「植民惑星デロイアの自治独立獲得」にあり、そのために命をなげうって戦う集団だった(※つまり自分本位の集団では決してなく、惑星デロイアの人たちにとってまさに“正義の味方”だった→それゆえに反対組織からの総敬礼を呼び起こした){/netabare}


※次に、《ガンダム・シリーズ》全体に対する《異色作》としての本作のインパクトを少しばかり考察していきます。


◆西暦2000年以降に制作された主な《ガンダム・シリーズ》一覧(制作順)
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{netabare}(1) 『機動戦士ガンダムSEED』 (福田己津央/全50話+1話/2002–03年) ※個人評価 ☆ 3.7 ※HDリマスターは全48話
(2) 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』 (福田己津央/全50話+1話/2004–05年) ※個人評価 ★ 4.1 ※HDリマスターは全50話
(3) 『機動戦士ガンダム00(1st./2nd.シーズン)』 (水島精二/全50話/2007–8、2008-9年) ※個人評価 ★ 4.1
(4) 『機動戦士ガンダムUC』 (古橋一浩/全7部/2010–14年) ※個人評価 ★ 4.4 ※のち、再構成版TVシリーズ『機動戦士ガンダムUC RE:0096』(全22話/2016年、※個人評価 ★ 4.3)を放送
(5) 『機動戦士ガンダムAGE』 (山口晋/全49話/2011-12年) ※個人評価 ★ 4.2
(6) 『ガンダムビルドファイターズ(1期)/ファイターズトライ(2期)』 (長崎健司/25+25話/2013-14、2015-16年) ※個人評価 ☆ 3.6
(7) 『ガンダム Gのレコンギスタ』 (富野由悠季/全26話/2014-15年) ※個人評価 ☆ 3.6
(8) 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』 (松尾衡/8話+未完/2015-16年) ※個人評価 × 3.3 ※追加シーン付き劇場版2本(『DECEMBER SKY』『BANDIT FLOWER』)を公開
(9) 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(第1-2期)』 (長井龍雪/全50話/2015-16、2016-17年) ※個人評価 ★★ 4.5
(10) 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 (安彦良和・今西隆志/全6作/2015-18) ※個人評価 ☆ 3.6
(11) 『ガンダムビルドダイバーズ』 (綿田慎也/現在放送中/2018年) ※個人評価 ☆ 3.5{/netabare}
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<1> このうち西暦2000年代に制作された最初の3本(SEED/SEED DESTINY/00)は、内容はともかく新規ファンの獲得という点では成功作(※特に SEED は大成功作)といえると思います(※DESTINY は悪評も含めて一応は話題作)。
<2> また、UC/THE ORIGINの2本は、それぞれヒットはしましたが、おそらく既存のU.C.(宇宙世紀)シリーズのファンの支持を受けただけで、新規のファンを獲得したとは言い難い。
<3> そして、AGE/Gレコは、新規ファンの獲得という意味では失敗作、とくにGレコの方ははっきりとした爆死作といえると思います(※なお、AGEは個人的には好感度の高い作品となりました)。
<4> その他、ガンダムビルド~は、新規ファンの獲得に成功したかはよく分かりませんが、その親世代のガンダム・ファンには受けた作品と推測します。

・・・ということで、
<5> 西暦2010年代に入ってから制作された《ガンダム・シリーズ》の中で、胸を張って“新規ファンを獲得できた”といえるのは、本作『鉄血のオルフェンズ』だけではないでしょうか?
(※私見では、本作にはそうなるだけの魅力-近年のガンダム他作品にはない特別な魅力-があった、と思っています)


◆考察まとめ :《ガンダム・シリーズ》の今後に対する本作の影響は?

本レビューの一番最初に、

「英雄群像劇」とか「英雄一代記」と呼ばれるバトル系の物語にも色々とバリエーションがあって、その大きな分類の一つは、(1)騎士道もの と (2)任侠もの

・・・と書いていますが、実はこの分類にはもうひとつ、騎士道ものでも任侠ものでもない、便宜的に、

(3) プロ市民もの(*1)、

とでも称すべきサブジャンルがある、と思っていて、その代表作が、『機動戦士ガンダム』(初代ガンダム)と考えているのですが・・・

<1> その初代ガンダムの原作者であり監督である富野由悠季氏が久々に監督を務めた『ガンダム Gのレコンギスタ』が見るも無残な爆死を遂げる一方で、
<2> その半年後に放送が始まった、メカ・デザイン的にはともかく登場キャラの設定的には初代ガンダムのイメージが皆無の(※つまり、これまで《ガンダム・シリーズ》の諸作品の中で繰り返し描かれてきたアムロ的な一面を引きずっているキャラクターが皆無の)この『鉄血~』が、主に新規ファン獲得成功によって収益面でかなりの好成績を収め、それまで本作について否定的な評価を繰り返してきた既存ファン層も次第に沈黙を余儀なくされていったことの意義は意外と大きいのではないでしょうか?

・・・つまり、《ガンダム・シリーズ》をスポンサードする玩具会社、そしてアニメーション企画会社・制作会社が、最早アムロをどこかしら引きずるキャラを主人公とする作品は売れなくて、その正反対のキャラ付けをした主人公の作品の方がずっと売れる、という学習効果をきちんと受け容れるとしたら、今後制作される新作にも、そういう制作方針が踏襲される可能性が高まるはずです。

(*1) 『ガンダム』の主人公アムロ・レイが、騎士道的でもなく任侠的でも全くない、どういう訳かとにかく教条的・原理主義的な戦闘忌避・反戦主義者で、それでいて散々勿体をつけて嫌々ながら戦闘に入ると、俄然君子豹変して無類の強さを発揮してしまう意味不明な(※もしかして逆ギレ?)タイプであることから、そういうアムロのような思考・行動パターンのモデルとなったのかも?な「プロ市民」の方々に敬意を表して、便宜的に「プロ市民もの」とここでは命名しています(※もっと適切な命名があればご意見を下さい)。

なお、ここで「プロ市民」という言葉の意味が分からない人は検索してみて下さい。
簡単にいうと「プロテスト(抗議、異議申し立て)する市民」という意味で、ガンダムに搭乗して出撃することを嫌がり駄々をこねたり拗ねて周囲に当たり散らすアムロにピッタリな用語ですが、他にも「プロフェッショナルな市民」「プロブレムをまき散らす市民」「プロパガンダを繰り返す市民」等の複合的な意味があるそうです。

また、蛇足ながら富野由悠季監督は1941年11月生まれで、1960年の安保闘争(60年安保)当時は丁度東京で大学生をしていた世代であり、かつこの世代はのちの70年安保世代(全共闘世代)と並んで「プロ市民」としての自覚に富む人が多いとされていて、『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイだけでなく富野監督の次作『伝説巨神イデオン』の主人公ユウキ・コスモのキャラ付けにも、そういう彼の所属した世代の価値観が反映されているのかも知れません。


・・・以上まとめると、最初に書いたとおり本作を見始めた当初は、「何だ、この“任侠ガンダム”は?」と訝(いぶか)しむ気持ちが強かったのですが、途中から、「結果的に“プロ市民”ガンダムを駆逐してくれるのなら、本作みたいなのも有りかな?」という気持ちに次第に変化してしまい、それが私の本作への個人的評価が大きくプラスへと変わる決め手となったように思います。

※因みに、私が本当に見たいのは“騎士道”ガンダムなのですが、そういう作品は今のところ未だ制作されていません(一応、『機動戦士ガンダムUC』が一番それに近いと思いますが)。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 22

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

戦場じゃあまともな奴から死んで行くんだよ!この滅びの美学を見よ!

2016年~2017年放送のテレビアニメ 全25話
 
監督 長井龍雪 構成 岡田摩里 音楽 横山克 制作 サンライズ

基本ストーリーは長井龍雪が決め、設定に鴨志田一、キャラ原案に「皇国の守護者」の伊藤悠が当たった。
脚本は岡田摩里と鴨志田一が交互に、さらに一部をベテランの吉野弘幸、黒田洋介など。

最も不満だった点はメインの舞台であるテラフォーミングされた火星の描写がほとんど無いこと。
遠くに見えるはげ山は現在の火星の想像図でありテラフォーミングされて数百年後とは思えない。
過去作から監督と脚本はSFと無縁の人のようですが、
本格SFロボットアニメである以上、最も気を使ってほしい部分であり、
機動戦艦ナデシコやARIAなどの過去作より劣る結果になりました。

第二期のストーリーは歴史ファンなら一目瞭然、「源家物語」です。
歴史ファン以外の人に説明すると、
平家と源氏、なぜ家と氏なのか考えてみてください。
源平合戦の前半、保元平治の乱で源家は滅びたのです。
源氏とは諸国に散らばった源家の関係者を指し、平家とは平の一家を指します。
富士川の戦いは平清盛の派遣した軍と平氏の分家北条氏の戦いです。
「源家物語」とは書かれなかった源義朝と源家の滅びの物語のことです。

本作における長距離決戦用兵器ダインスレイブは当時の新兵器弓を指し、
平治物語で機動力に奢った源氏武者が平氏の弓一斉攻撃の前に総崩れになるシーンがネタ元と思われます。

源家と鉄華団の主人物を照らすと、
オルガ・イツカ→源義朝(京の戦いに敗れ本拠地関東に逃走中に暗殺される)
三日月・オーガス→悪源太義平(義朝の死後も平家に戦いを挑み戦死する)
ノルバ・シノ→鎮西八郎為朝(新兵器強弓で平清盛を狙い失敗する)

クーデリア・バーンスタイン→後白河法皇
マクギリス・ファリド→崇徳上皇
ラスタル・エリオン→平清盛

源家物語とは平家物語の10数年前の歴史であり、日本人で詳しい人は多くない。

滅びの美学をすでに知っている人にとっては間違いなく傑作物語であるが、
吉川英治の「新平家物語」でも読まないことには分かりづらいネタでもある。

このストーリーの意味が理解できない場合、本作の後半はストレスが溜まるばかりかもしれない。
幸い自分は何度も読んだ物語のため、第二期後半は非常にすんなりと観ることが出来たため、
相当な名作として評価できました。
もっとロボや使用武器などを研究して説明したいところですが、
長大になるため興味がある人は説明本を読んで何度も視聴すれば人生の糧ともなる、
素晴らしいアニメ作品であると私は判断できました。

元ネタとして滝沢馬琴の「椿説弓張月」12年のNHK大河ドラマ「平清盛」
古書「保元物語」「平治物語」「源平盛衰記」
吉川英治作「新平家物語」NHK大河ドラマ「新平家物語」は消去
任侠系については、やや後の時代の大河ドラマ「草燃える」が元ネタ

投稿 : 2024/11/23
♥ : 35
ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

不在の政治性

*内容に変更はありません



一期のラストで主人公と子供たちに出された「宿題」は果たされ、二期の終幕では本が読めるようになった主人公。
しかし、その「先」を自らが考え出すには、作中の時間は足りなかったようだ。


{netabare}作中で何度も、教育が無いために稼いだ金銭の使い途すらも考えることが出来ないと描かれる鉄華団団員だが、彼らをまとめる唯一の理念は「家族」として表現される。
ヤクザの「一家」に近似してゆくのも、必然かもしれない。

主人公がアトラとの間に子供を作ろうとするのも、ヤンキーにありがちな早婚ではなく、「本を読める」ようになった主人公の精一杯に見出したものが、「家族」であったからだ。
クーデリアに「赤ちゃんを作ろう」と呼びかけるアトラは、別に性的関係を結ぼうと誘っているのではなく、言葉通りに「子供を作ろう」=「家族になろう」という素直な呼びかけをしているに過ぎない。

キャラクターの一人一人を、丁寧に細かく描写しているために、彼らの「家族」は、とても自然に強固なものに見える。
が、「家族」の枠を超えて人がつながるためには、何らかの理念が必要になる。
例えば、イデオロギーはその一つだ。

「家族」の実体性を演出するため、本作では「イデオロギー」は空虚な否定性として描かれざるを得ないようだ。

二期の冒頭でクーデリアに接近する「活動家」が、三流のイデオローグとして描かれるのがその現れだろう。
いや、イデオローグを名乗る、単なる「政治ゴロ」として描いてしまう視点が、本作のストーリーラインを規定している。
終幕のマクギリスの挙兵の場面において、彼の主張が対抗勢力から「たんなる詭弁だ」と一蹴されてしまうのも、同じ流れからくる必然だろう。
視聴者からはほとんど意味不明に見えるマクギリスの主張と戦略は、説得的なイデオロギーを描写することが、設定の必然によってあらかじめ不可能と定められていることによる。

ラスタルとの開戦の後、火星へ退却するマクギリスに対して「鉄華団の戦闘は、降りかかる攻撃を退けてきただけだ」と語るオルガだが、そもそも「鉄華団」を結成し、これを経営しなければならない境遇自体が、社会からの「攻撃」であるという視点は持てない。
自分の過酷な少年時代を、社会からの「攻撃」であったと自覚したマクギリスと対照的だが、ここでも「教育」の有無が視点の差を生んでいるようだ。
しかし、「攻撃」に対抗する反抗を、イデオロギーとして表現することまでは、上記の理由で出来ない。
イデオロギーが不在である結果、オルガは、ついに「家族」の生存を超えるその先を指し示すことが出来ないまま、最後を迎える。

社会的な不正義を表現する「理論」の不在が、マクギリスの決起に際して、火星側からは鉄華団ただ一つが参加するという作劇になって展開される流れを生む。
何らかの「理念」の共有が存在していないことが、「鉄華団」が応援勢力を招集できずに単体で戦闘参加する展開を必然化する。
「家族」を超える理念を持てない鉄華団は、「家族」外の助力を応集する影響力を持てない。

作中の「世界」においては自然で必然的な展開なのだが、この必然を生むのはイデオロギーの排除という設定だ。

この現状は、火星の「全住民」に関係する不公正の現れであると「理論化」するイデオロギーの不在。
「俺は儲かっているから関係ない」と言う者も例外ではないのだ、という「理論」の不在。

象徴的に言うならば、この「世界」には「ジオン・ダイクン」が不在である、と言えるだろう。
逆説的に、イデオローグ=ジオン・ダイクンの不在によって、この「世界」の政治性は定義されている。


作中からイデオロギーが排除されるのは、アニメ作品に政治的なものが入り込むことに拒絶的な視聴者の気分を配慮してのことかもしれない。

だが、アニメに政治を持ち込むな、というのも一つの「イデオロギー」だ。
アニメは政治と切り離されている、というのは、即物的な事実ではなく、そのような「見方」をするという態度表明に過ぎない。

ウヨクが「反日アニメだ」、サヨクが「大政翼賛アニメだ」と主張するときに、それぞれのイデオロギーからの視点を明確にしなくては説得力が皆無であるように、「政治的に中立なアニメ」とみるためには、中立性を証明する必要があるだろう。
自明の事実だからそんな必要はない、と言うだけでは、説明抜きに「反日アニメ」「大政翼賛アニメ」と言い放つ人がまともに相手をされない事態をなぞるだけにしかなるまい。

本作におけるイデオロギーの積極的な排除は、視聴者の欲望に応えて、中立性を自己証明する意図があるように見える。

しかし、イデオロギーの不在は、反対に立つギャラルホルンの、特にラスタルの立場をも不安定にする。

終盤の決戦におけるラスタルの立場や役割が、今一つすっきりと視聴者に了解されないのは、イデオロギーの不在が反対者のイデオロギーをも曖昧にするからだろう。

思い出したように「合法/非合法」や「マスコミ工作」が持ち出されるが、いかにも唐突だ。
作中の設定に入り込んでみれば、支配システムが劣化して「法治」が形骸化している、平たく言えば、「影響力」があれば法律に違反しても罰を受けなくても良いという、「支配者」が法律を捻じ曲げて世の中が動いているという状況だが、これも視聴者の政治観に寄り添った表現なのだと言えるかもしれない。
「政治」は「えらい人」が「上の方で」動かしている「難しい」ごちゃごちゃで、「自分なんか」には「カンケー無い」出来事であるという政治観を反映しているのだと。

だとすれば、自分の予想や期待に反する展開に出会うたびに「クズ」「カス」とレッテルを貼ることが権利であると疑わない視聴者が、終幕の不透明ですっきりとしない展開を間接的に制作者に要求したのだ、と言えなくもない。


だが、イデオロギーが不在であっても、それがそのまま政治性が無いということにはならない。

確かに、イデオロギーによる「正義」の争奪を、製作者は退けているように見える。

それぞれの立場に、それぞれの「正義」があり、互いに尊重し合うべきだというのが現在主流の考え方だろう。
それぞれの「正義」に応じて、「現実」はそれぞれに異なって見える。
他者の見え方を否定することはできない。

だが、通常の普通人は、他者と共に一つの現実に生きていると「信憑」しているはずだ。
歩行者天国に車が突っ込んできたとき、逃げ惑う人々を見ながら「彼らにとっての『車』は私にとっての現実とは限らない」と傍観する人はいないだろう。
誰でも一斉に車から逃げ惑う。
車から逃げなければならない同じ「現実」に、他者も自分も所属していると疑いの余地なく感じている。

いわば物理的に唯一であると信憑されている「世界」を、多様な価値観による異なった「世界」という解釈で取り仕切るのは、もう無理がきているのではないか。

「無理」は、「現実」的な衝突に至るほかないだろう。
本作の戦闘シーンにおいては、戦うキャラクターたちは、互いに交感することは無い。
敵手は、ただの邪魔者、排除すべき対象として現れ、殺すことに互いにためらいはない。

敵であっても殺してはならない、戦いは肯定されてはならない、といったアニメ的な理念は、つまるところ「現状の社会を乱すものが悪」というタブーへ行き着く。
いっけん非情な殺し合いを描く本作は、このような「タブー」の欺瞞を冷静に対象化する製作者の視線を物語っているようだ。

体制の不変を絶対とする「タブー」は、社会に圧殺されようとする者に反撃を禁じる。
普通に物語を構想すれば、反撃をするには、「タブー」を覆すに足る「正義」が要請されるだろう。

しかし正義を裏付ける「イデオロギー」が排除されていれば、残るのは、いかに体制から虐待されているかという事実性しかない。
マクギリスの空想的な決起の呼びかけの背後にも、社会に虐待を押し付けられた幼少期という具体性がある。
ともすれば「奴隷の鎖自慢」のように、一番不幸なものが一番正しいという「不幸自慢」に陥りかねない作劇だが、ラスタルや、イオクですらも背負うものがあることを丁寧に見せることで、製作者は巧妙に切り抜けているようだ。
こうした点で、キャラをかき分ける製作者の手腕は非常に巧妙だ。

こうして、互いが互いの邪魔者として、互いに排除しなければならない敵である非情な戦いは、製作者の怜悧な視線の下に実現した。

同時に、「正しい」を主張し合うのではなく、「許せないもの」を撃滅するという形での政治性が浮上する。


一期のレビューで、作品世界に「影響力」の綱引きという形で「政治」性が登場したと記した。

影響力は「正しさ」を主張するイデオロギーによってだけ生まれるものではないのではないか。

視聴者が「政治」が作品内に入り込むのを嫌うのは、イデオロギーの主張する「正義」が不完全で、自分の「正義」と完全に一致することが無いからだろう。
不完全な「正義」を、唯一絶対の「正義」だと主張するイデオロギーへの不信。
こんな「正義」で人が殺されるのを正当化されるのは、いかにもグロテスクに見える、と。

だが、政治性は「正しさ」を競う形でだけ現れるとは限らない。
何が「許せない」かという形での闘争もあり得る。

現実の政治においても、選挙の投票率が低いのは、「正しさ」が完全であるかという面からのみ「政治性」が捉えられているせいだろう。
商店で商品を選ぶように、「私を100パーセント満足させる商品=正しい候補に、対価=投票を与える」のが選挙であると考えていれば、どの候補にも投票できないのは当然だ。
が、絶対に「許せない」ものは何かという視点もまた、政治的だろう。
「許せないもの」を殴りつける棍棒のような道具として有効な候補者を選ぶ、という視点もあり得る。

「家族」的な絆で内向きに結束する鉄華団が、それでもクーデリアやマカナエと協同できたのは、「許せない」ものが共有されていたからだ。
理由は異なるかもしれないが、「現に、私が」許せないものが同じである共有性が、彼らを結び付ける。
こうして作中の闘いは、互いに「許せない」ものを叩き潰すものとして、描き出されることになる。
戦いの帰結が、互いの「許せない」ものをどれだけ消滅させるかの「影響力」の増減を生み出すだろう。


一期の終幕において、「許せない」ものへの攻撃として起ちあがった鉄華団の「蜂起」は、二期においてはマクギリスによって担われたようだ。

社会に敵対するものとして起こされた彼の決起は、主観的には「蜂起」なのだろう。
「蜂起」の同志は、彼と共に起った部下たちではない。
死の間際に、社会に反逆して戦いに挑む者たちの登場を予期したように、あとに続く無数の「蜂起」者へ向けて、先陣を切ったアジテーターとして自己了解していたのではないか。

殆んど一貫した理屈の見えないマクギリスの演説だが、そもそも「理論」は問題ではない。
「反対するなら代案を示せ」は、現状維持勢力が、反対=「許せない」と言わせないために持ち出すイデオロギー言語に過ぎない。
何よりもまず「許せない」と宣言すること。代案は反対の必要条件ではない。それが蜂起だ。


ラストで、再び影響力のプレーヤーとしてクーデリアが浮上する。
プレーヤーとしての登場自体が影響力の駆け引きの結果と描写されているが、駆け引きの結果でヒューマンデブリや火星自治の状況が改善されたのであれば、鉄華団やマクギリス艦隊の戦闘と死は、無意味だったのだろうか。

もちろん、彼らの闘いが支配階層を「改心」させて「正義」に目覚めさせたわけではない。
それが不満ですっきりしない視聴者もいるかもしれない。
結局、頂上に立つギャラルホルンの支配性はそのままではないか、と。


フランスでは1789年の大革命以来、19世紀を通じて共和制、帝政、王政と目まぐるしく政体が変わり続けた。
しかし、共和制から王政に変るときでも、選挙権や労働権、福祉などは、少しづつでも拡大してきた。
大革命という暴力と、続く大小の市民の蜂起という実力行使が、時々の支配者に、市民に「配慮」させざるを得ないよう強制し続けたのだ。

本作の「世界」で、ヒューマンデブリが存在し続けたのは、彼らを搾取することで利益を得るものが、存続を望み続けていたからと言える。
ヒューマンデブリが消滅すれば、それによって不利益を被るものが必ずいる。
破産して自死するものも出るかもしれない。

だが、「影響力」の駆け引きの地図が、支配者に、ヒューマンデブリに配慮しなければ「ならない」と強制するよう変化した。
これまでの既得権益者を死なせても、ヒューマンデブリを無くすようにと。

鉄華団の闘いこそが、支配者に「配慮」をさせる「影響力の地勢変化」を生み出したことは疑いないだろう。

支配者を打倒したかという意味では、鉄華団は「敗北」して「犬死」したと見える。
が、「許せない」ものを殴りつける闘いは、影響力の綱引きのバランスを変化させた。
一見、敗北したように見える闘いは、決して「敗北」ではない。
帝政によって覆されたかに見えたフランス革命が、市民権の拡大という意味で「敗北」ではなかったように。

このように政治アレルギーが嫌う「正義を掲げるイデオロギー」に導かれたものとは全く違う、「許せない」ものに抵抗する政治性が、本作には刻まれている。

本作ラストの火星と鉄華団生き残りの境遇は、「正義」の実現したユートピアとはとても見えない、不十分で微温的なものにしか見えないかもしれない。
実際にユートピアなどでは無いし、アドモス商会とテイワズの関係すら、将来は破綻してもおかしくはない。
いずれ、別の場所で別の誰かに「社会」の負が押し付けられてゆくのは、避けられないように見える。

だがその時には、新たな、別の「鉄華団」が生まれるのだろう。
マクギリスが望んだように、蜂起はいつでも繰り返され得る。
「許せない」ものへの反抗がある限り。


「正義」を掲げるイデオロギー不在の物語は、「許せない」ものへの抵抗という、より一層強固な政治性として現れたようだ。

政治的なものから遠ざかるという宣言は、消極的には現状の政治への賛成という形となって、現状の固定の威力として統合されてしまう。
中立であるという自己認識は、意図せずに、現状という「特定の」政治的立場への賛成となって政治性を帯びざるを得ない。

果たして計算の結果かは分らないが、いっけん政治性を拒絶している本作は、安直な「中立」の罠に囚われることなく、現代的な政治性をあらわにしている。


二人の「母親」とアカツキの前に広がる、希望に満ちている未来とも、凡庸で灰色の未来とも決めかねるラスト。
「泣ける」とも「笑える」ともレッテルを貼られることを拒絶する両義性が、象徴的に思える。{/netabare}

正義に反する「から」許せないのだ、と考えて行動するとき、まず「正義」が先行して在る。
もしも「正義」を支える基準が変化したり、行為が敗北した時、「正義」の名においてなされた一切の行為も否定されざるを得ないだろう。

が、「許せない」がまず先行し、「なぜ」許せないかの根拠づけとして「正義」が生じるとしたならば、「正義」が否定されたとしても「許せない」の存在は決して消去し去ることはできない。
蜂起の純粋性とは、「許せない」の先験性にある。

本作において、「許せない」を裏付ける「正しさ」の描写は確かに十分ではない。

「正義」が先行して戦いを正当化する、という従来型の作劇になれていれば、意味が不明なところも多いだろう。

しかし、「許せない」が先行する蜂起を描き出したところに、本作の独創を見たい。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 3

68.9 1960 総合得点ランキング1960位
機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER(アニメ映画)

2017年11月18日
★★★★☆ 3.8 (36)
240人が棚に入れました
 イオとの死闘を制したダリルは、ジオン残党軍の一員として地球にいた。彼は奪われたサイコ・ザクの情報を得るための諜報任務に就いていたのだ。一方、新たな仲間と共に「サンダーボルト作戦」に参加したイオの前に、南洋同盟国境守備隊隊長を名乗るペール中佐が立ち塞がる。

http://www.gundam-tb.net/information/index.html

声優・キャラクター
中村悠一、木村良平、古川由利奈、逢坂良太、杉田智和、行成とあ、大原さやか
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

水陸両用MS活躍活躍

 前回のガンダムサンダーボルトの続きの話で、舞台が地球になるお話です。

 フルアーマーガンダムとの死闘を制したサイコ・ザクが、南洋同盟というカルト教団に奪われていて、ダリル達ジオン残党軍、地球連邦軍の三つ巴展開なアニメだったです。

 アッガイ、ゴッグ、ズゴックの活躍が凄かったし、懐かしのモビルアーマー グラブロなんかも洗練され登場するです。

 捕らえられたイオも復帰し、アストラルガンダムという何か貧弱に見えるも新たな機体で、ジャズを聴きながら活躍するのです。水陸両用で結構強いです。今回のジャズは、思ったほど激しくない感じです。

 地球連邦軍とジオン残党軍の戦闘は、氷上や水中における戦闘で、ゴッグ、ズゴックに有利な環境で凄いと思ったです。イオも負けてなかったけど。

 一方でアッガイを操縦するダリル達。性能を最大限に引き出しているというのか?あの丸く短足な機体で初期のアッガイとは比べ物にならない、動作性能だったです。ダリル、サイコ・ザクでなくてもニュータイプな感じです。

 最後の方では、イオにとっての思わぬ再会や南洋同盟の秘密にも触れることとなり、思わぬ展開に発展するようだったです。{netabare}まだ次作いつになるのかあるらしいです。{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 6

さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

JAZZと戦争

前回のDECEMBER SKYでは、1年戦争の末期であったので奮い立つ若者たちの様子から真実を知って絶望する姿が描かれていた。
今作は1年戦争の7か月後を描いた作品なので、悲しみの感情が強く描かれていたと思う。
家族を失ったやり場のない怒りを敵勢にぶつける少佐がいたり、手足を失ったダリルの生身で走り回っていた時の記憶であったり。戦死した者たちを弔う描写がしっかりと描かれていたり。
ファンタジーなのになんてリアリティのある作品なのだろう。
カルト宗教の台頭という話の流れも、ごく自然かもしれない。
作品自体も前作より落ち着いていて、前作の感じで視聴したら若干物足りなくも思ったが、作品づくりの点においてものすごい拘りを感じる。

映像は相変わらずのクオリティでロボットは手書きなのかCGなのか分からないけれども、セル時代のアニメーションのような独特な色合いを感じた。

劇伴も相変わらずの豊富さでジャズを中心に、ポップス、民謡まで幅広いジャンルを展開して、劇画・セル画タッチの本編に負けず劣らずの存在感をもつ。
映像と音楽とがセッションしてるみたいで面白い。まさにJAZZという感じだ。

ガンダムはあまり詳しい訳ではないのだが、この作品は素直に面白く、凝っていると感じる。ガンダムを切り離しても多分面白い。ヴィンテージ・アンティークっぽい雰囲気なので、ハマる人も多いと思うのだが…OVA作品だけに知名度が低いのが残念。
もっと多くの人に観て欲しい。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 8

haiga さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

サンダーボルトの第2シーズン。なんだかマイルドになったような...。

脚本家代わりました?サンダーボルト独特の苦味が無くなってしまったような。とってもしんぱーい(^_^;)まあ第3シーズンに向けた助走と思いましょう。

ダリルとイオの闘いの舞台は地球に移ります。ダリルは地球のジオン軍残党として、イオは地球連邦で不穏な動きをしてる南洋同盟の鎮圧目的で宇宙から新しい部隊に編入されて来ます。そう、ジオン、連邦以外に南洋同盟の三つ巴になってるんですね。

今回は地球が舞台と言う事で水陸両用MSが活躍します。特にアッガイがめっちゃ活躍するのでファーストガンダムファンも満足出来ると思います。
ダリルもイオも新たな仲間を得て第3シーズンへと繋がって行きます。

サンダーボルトと言ったら戦闘中の音楽ですが、今回は字幕がちょこちょこ入るし日本語の歌が結構あって私はイマイチでした。演出的には第1シーズンの方が良かったです。

サンダーボルト独特の戦争の容赦なさがちょっとマイルドになっちゃって少し拍子抜けです。安心させといて次のシーズンで突き落とすのかな?期待して待ちたいと思います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 6

68.8 1988 総合得点ランキング1988位
機動戦士ガンダムUC/episode7 虹の彼方に(OVA)

2014年5月17日
★★★★★ 4.1 (229)
1558人が棚に入れました
地球連邦政府転覆の可能性を秘めた『ラプラスの箱』の在処が遂に明かされた。
その場所は、事件の始まりの地、〈インダストリアル7〉の〈メガラニカ〉であった。ビスト財団当主代行のマーサ・ビスト・カーバインは、
財団権益を保持すべく、地球連邦政府中枢を担う移民問題評議会議長ローナン・マーセナスと、 甥のアルベルト・ビストを伴ってシャイアン
基地に直行し、事態の始末を図ろうとする。
一方、『箱』を奪取せんと先行したフル・フロンタルを追い、〈インダストリアル7〉に急ぐバナージだが、眼前に《バンシィ・ノルン》を
駆るリディ と、アンジェロの《ローゼン・ズール》が立ち塞がる。
『箱』の守人、サイアムが待つ〈メガラニカ〉に到達する者は果たして――。

CountZero さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

そして新たな人類の可能性の時代へ

「ファースト」
「ゼータ」
「ダブルゼータ」
「逆襲のシャア」
と続いてきたガンダムの宇宙世紀シリーズの最新作で、総決算的な作品です。
ようやく先日本作、「機動戦士ガンダムユニコーン」が完結しました。

結論から言うと、宇宙世紀シリーズが好きなファースト世代のガンダムファンにとっては最高の出来であったと思います。
原作小説は未読でしたので、カットされた部分については分かりませんが、それでも本当に最高でした。
でも同時に上記のガンダムシリーズを知らない世代にとっては、かなり物語の全体像やつながりを理解する事は難しい作品でもあったと思います。
なので、本作を観るにあたっては少なくとも「逆襲のシャア」は前もって観ておく事をお勧めします。
また、連邦とネオジオン、ロンドベルにエコーズ、サイド3とジオン公国、アースノイドとスペースノイド、ニュータイプと強化人間、コロニー落としにアクシズショックなどなど…挙げるときりがありませんが、定番の知っておくと良いガンダム単語もたくさん出てくるので、宇宙世紀シリーズに免疫の少ない人は前もって調べておくのも良いかもしれません。

ガンダムシリーズの魅力は沢山ありますが、やっぱり多種多様なかっこいいモビルスーツによるロボット戦と宇宙戦艦による艦隊戦、そして幾重にも重なった重厚なヒューマンドラマです。
本作では、シャアの反乱から三年後を描いているため、登場するモビルスーツにはなつかしい面影がたくさん見て取れますし、おなじみの効果音(MSの機動音とかビームサーベルやライフルの音、高熱源体接近の警告音、思念波を感じたときの音とか)にもファンはわくわくさせられます(笑)

登場人物もいつも通りの設定です。
ガンダムの乗り手はいつだって未成熟な若者がぴったりですし、大人たちはみんな理屈や常識や建前にいつも縛られてはいても、やるときはやってくれます。
経験の少ない若者を導き助ける、かっこいい大人がたくさん登場するのはガンダムシリーズの特徴ですね。
そして、戦争ドラマではあるものの「正しい戦争などはない」というスタンスを一貫しているので、連邦側にもネオジオン側にも偏らないものになっているのもいつも通りです。
どちらの側にも大義があり悲劇があります。

わたし的にはダブルゼータのプルとプルツーが大好きだったので、プルトゥエルブであるマリーダさんが登場してきた時はほんと嬉しかったです!
大人になったプルに思わず涙でした(笑)
まあそのあとも、ジンネマン船長とマリーダさんの深い絆にまた号泣でしたが…。゚+(σ´д`。)+゚・クスン…本作ではマリーダさんが最優秀助演賞です(笑)

とまあ、作品としては正統派ガンダムシリーズの魅力満載です。
もちろんサンライズの気合いが入りまくりの作品なので、作画のクオリティも最高レベルと言える出来なので満足できます。
原作を読んでいるファンにとっては、カットされている箇所も結構あるようで物足りない所もあるようですが、それでも間違いなくアムロやシャアやブライト艦長が活躍したファーストガンダムを愛するファンにとって、本作はガンダムシリーズの区切りであり総決算となる大事な作品になりました。
一話約60分、最終話は1時間半の大作ですが、ガンダムファンなら一度は観る事をオススメします。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 22

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

少なくとも逆シャアまでを観ていたら観て欲しい作品

ユニコーンガンダム最終巻。7巻の本作のみ尺が90分と拡張されています。
良かったです、が、すっきりしない終わり方でした。
明言はしないけどわかりなさいよ、的なラストシーンなのですが、個人的にはバナージとミネバはもっとイチャイチャして欲しかったなと思いました。
ちゃんとは描かないけどそういうことなんだみたいな最後は、富野作品ライクな空気を生むことができますが、また数週間も経つとどういうラストだったか忘れてしまいそうです。
明確に説明不足なポイントもあって、リディ少尉の問いかけにバナージが何も答えなかったシーンでバナージはどういう状態だったかなど、小説版を読まないと意味がわからないところもあるそうです。
OVAはOVAで描ききって欲しかったと思います。
それ以外は良かったです。
ちょっとトンデモ過ぎるんじゃないかと思わないでもなかったですが、あれくらいぶっ飛んでてのガンダムみたいなところもありますし、ストーリーを通して散々言われてきたラプラスの箱についても、顛末を含めて明確になったのはとても良かったです。

内容は最初から最後までぶっ通して宇宙戦です。
愚痴が多くなってしまいますが、リディ・マーセナス少尉が許されるのが納得いかなかったです。
こいつ本作中でもとんでもないことをやらかして視聴者の涙腺を怒りで破壊するのですが、最終的にこれまでやってきた迷惑行為を含めて報いを受けたとは思えない。
「殺されたから殺して、世界は平和になるのかよ」とは誰かが言った台詞ですが、リディ少尉くらい明確な悪党に鉄槌が下されないのは珍しい気がしました。
それと、ミコット。
普通にいらないんじゃないかなと思います。
序盤以降、バナージと絡みもほとんど無いし、小説版だと重要な役割みたいなものがあるのでしょうか。
艦のお手伝いをしている様子もないのに、最後までネェル・アーガマに居座っている理由も不明。
前作で無責任な暴動に手を貸しておきながら、本作でちゃっかりバナージを応援する姿に妙に腹が立ちました。
ちなみに好きなキャラはアンジェロ。ああいったヒャッハーキャラは必要ですね。

文句が多くなってしまいましたが、長く続いたOVAシリーズを締めるのにいい作品でした。
まるでガンダムファイトのように熱いフル・フロンタル戦、呪縛から解き放たれたマーサとアルベルト、どこを切り取っても名場面が表示されるようなシーンの連続です。
ユニコーンガンダム自体はガンダム初心者には厳しい内容ですが、少なくとも逆シャアまでの作品を観ていたら観て欲しいと思います。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

nf918 TELL さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

終わった…

作画、音楽は相変わらずずば抜けて素晴らしかったです。ただよくクライマックスにありがちなキャラクターの心境変化がちょっと突然すぎたりして「おい、お前さっきまであんなに…」って突っ込みたくなり部分もありましたが、それでも十分面白い作品でした。宇宙世紀シリーズのまとめのようなものです。自分は他の宇宙世紀シリーズはまだ見ておらず、ゲームやwikipedia,名言などの知識しかありませんでしたがそれはそれで楽しめました。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 4

68.5 2083 総合得点ランキング2083位
機動戦士ガンダムUC RE:0096(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.9 (238)
1239人が棚に入れました
U.C. 0001―。宇宙への移民が始まった、新たな時代。西暦から宇宙世紀(Universal Century : U.C.)に移るセレモニーが行われていた地球連邦政府の首相官邸、宇宙ステーション〈ラプラス〉が爆破テロにより粉々に砕け散る。貧しさからそのテロ事件に加わった青年サイアムは、〈ラプラス〉の爆発に巻き込まれ、残骸の中である物を発見する。それは後に『ラプラスの箱』と呼ばれることとなる禁忌の箱だった。U.C.0096―。『シャアの反乱』から3年、一年戦争から続く戦乱の世は、表面上には平穏を取り戻しているかのように見えた。工業スペースコロニー〈インダストリアル7〉に住む少年バナージ・リンクスは、ある日、オードリー・バーンと名乗る謎の少女と出会う。彼女は、ビスト財団とネオ・ジオン残党軍『袖付き』による『ラプラスの箱』の取引を止めようと、単身行動を起こしたのだ。彼女に対し、協力するバナージ。だが、同じく取引を妨害するため乗り込んだ地球連邦軍と『袖付き』との戦闘により、コロニーは戦場と化してしまう。オードリーを探して戦火を走り抜けるバナージは、『ラプラスの箱』の鍵となる純白のモビルスーツ、ユニコーンガンダムとの運命的な出会いを果たす。『ラプラスの箱』とは何か―。『箱』の抱く秘密とは何か―。今、宇宙世紀 百年の呪いが解かれようとしていた。

声優・キャラクター
内山昂輝、藤村歩、池田秀一、浪川大輔、甲斐田裕子、柿原徹也、手塚秀彰、戸松遥、下野紘、菅生隆之、高木渉、永井一郎
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

空から落ちてきた碧い瞳のお姫様と少年の物語

ここしばらく、「機動戦士ガンダム」シリーズの色々な作品を見ているのですが、シリーズ全体の核となる初期の作品群(79-80年代の《宇宙世紀》シリーズ)については、

①最近の美麗な仕上がりの諸作品に比較すると、どうしても作画・演出の粗雑さが目に付いてしまうこと
②シナリオ構成・脚本が、スポンサー(子供向け玩具メーカー)の意向を反映した1年もの作品(約50話)という制約から、とくに中盤に無駄に引き伸ばされた感のある話が目立ち過ぎること

等々から、やはり視聴を続けるのがちょっとばかり難儀でした。
それでも今回は、本サイトにレビューを書く、という目標があったので、何とか挫折せずに完走することが出来ましたが、その結果として、各TVシリーズの完走直後の率直な個人評価は、下記のとおり、どうしても不満の残るものとなってしまいました。


◆機動戦士ガンダム《UC(宇宙世紀)シリーズ》TVシリーズ・評価

1.機動戦士ガンダム  (TVシリーズ)   ☆  3.7 (43話) (1979年)
2.機動戦士Zガンダム (TVシリーズ)   ☆  3.7 (50話) (1985年)
3.機動戦士ガンダムZZ (TVシリーズ)   ×  3.2 (47話) (1986年)
4.機動戦士ガンダムUC (TVシリーズ)   ★  4.3 (22話) (2016年)
------------------------------------------------------------------------
  総合                      ☆ 3.7 (全162話)


なお上の一覧からは外していますが、TVシリーズ第3作「機動戦士ガンダムZZ」を見終えた後、その続編となる劇場作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」を続けて視聴して、しかしそれも、本サイトの評価の高さ(総合順位167位、総合得点81.6)から期待したほどには面白いとは思えず(※私の個人評価=3.8となりました)、結構ガックリしてしまいました。

しかし、そうやってガンダム・シリーズの色々な作品の情報を事前チェックしていくうちに、2010年から2014年に掛けて計7章が劇場公開され、2016年4月からはそれは再編集したTV版が放送中の本作「機動戦士ガンダムUC」が、「逆襲のシャア」の続編(その3年後の物語)である、という情報を見つけたので、それなら少なくとも作画・演出は素晴らしいだろう、と思って、シナリオには余り期待しないで「逆襲のシャア」を見終えた直後から視聴を開始しました。


◆ところが、予想外に面白かった「ガンダムUC」

まず、初っ端(劇場版のepisode1)から、「あれ?この子、前に見たことある」という感じで、全く想定していなかった方面から本作に惹き込まれてしまいました。

それまでの私の、ガンダム《宇宙世紀》シリーズの各作品に関する印象としては、

(1) ガンダム・ファン以外でも知っているシャア・アズナブルという有名な悪漢(ダーク・ヒーロー)は流石に魅力的に描かれている。

(※ただし、「ガンダムZZ」でシャアの代役を務める{netabare}ハマーン・カーン{/netabare}は残念ながらイマイチで、それがおそらくZZの個人評価が低くなってしまった最大の原因)

(2) それに対して、各作品でシャアやその代役の相手方となる表面的な主人公(アムロ、カミーユ、ジュドー)の描かれ方は、どうしても薄味に感じてしまう。

(※ただし、これらの主人公はあくまで「真の主役」であるシャアの「引き立て役」「当て馬」である、と考えると、納得の配役と見る事も可能)

(3) だとしても、各作品で、表や裏の主役たちのパートナーをつとめるヒロインの影が薄すぎる。

(※各作品とも、それなりの個性を持った女性キャラが多数登場して、それぞれ主役たちと恋をしたり心の交流を持ったりはするものの、「作品を代表するメイン・ヒロイン」と呼べるほどの魅力的なキャラが見当たらない)

・・・といったものでした。

ところが、本作で「遂に」というべきか、個人的にはようやく「ガンダム《宇宙世紀》シリーズ」全体をとおしての「真のヒロイン」を発見してしまったようなちょっと嬉しい気持ちになってしまいました。

何てったって、{netabare}シリーズ第1作「機動戦士ガンダム」から登場し、「Zガンダム」「ガンダムZZ」でも気になる描かれ方をしていたあの「お姫様」{/netabare}が本作のメイン・ヒロインなのですから。

ガンダム・ファンの方々からは叱られるかもしれませんが、私は、本作「ガンダムUC」を見始めて、初めて、この長々しい「ガンダム《宇宙世紀》シリーズ」を我慢して見続けてきた甲斐があった・・・と思いました。

本当にここまで長かった。
途中で投げ出さなかった自分を褒めてやりたい笑。

作画・演出は、当然ながらガンダム・シリーズ中、最高に洗練されていて見事です。
シナリオも、ガンダム・ファン以外の方でも十分に楽しめる内容と思います。
本TVシリーズはおそらく残り5話で、劇場公開されたepisode6のラスト10分程と最終章episode7に相当する部分が未放送なので、TV既放送分を見終えて更に続きが気になる方は、劇場公開作品の方も当たってみて下さい。


◆制作情報
{netabare}
原作小説       福井晴敏(角川書店『ガンダムエース』2007年2月-2009年8月)
監督         古橋一浩
シリーズ構成     福井晴敏(ストーリー)
脚本         むとうやすゆき
キャラクターデザイン 安彦良和(原案)、高橋久美子
メカニックデザイン  カトキハジメ、佐山善則、石垣純哉、玄馬宣彦、明貴美加、小倉信也
音楽         澤野弘之
アニメーション制作  サンライズ{/netabare}

◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

========= 機動戦士ガンダムUC (TVシリーズ) (2016年4-8月) =========

 - - - - - OP「Into the Sky」、ED「Next 2U -eUC-」 - - - - -
{netabare}
第1話 96年目の出発たびだち ★ 工業コロニー(インダストリアル7)、バナージとオードリーの出遭い
第2話 最初の血 ★ ラプラスの箱と鍵
第3話 それはガンダムと呼ばれた ★ UCガンダム発進、リディ少尉のオードリー救出 
第4話 フル・フロンタル追撃 ★★ 赤い彗星(シャアの再来)、ジオンの姫 
第5話 激突・赤い彗星 ★ 姫の覚悟、UCガンダム再出撃、UCガンダムvs.クシャトリヤ
第6話 その仮面の下に ★ 鉱山衛星パラオ、姫の脱出(リディ少尉の手引き)
第7話 パラオ攻略戦 ★ デルタ+とUCガンダムのランデブー、NT-Dシステム実験、マリーダ(プル・トェルヴ)、リディ&ミネバ地球へ
第8話 ラプラス、始まりの地 ★ マリーダ中尉(強化人間)、箱を巡る謀略、ラプラス座標への実験 
第9話 リトリビューション ★★ 首相官邸衛星の残骸、マリーダ奪還作戦、ダグザ中佐戦死、ギルモア死亡 ※ED「merry-go-round」
第10話 灼熱の大地から ☆ ビスト財団とマーセナス家の策動、ガランシェール隊との砂漠行
第11話 トリントン攻防 ☆ 次のラプラス座標、ジオン残党の怨念
第12話 個人の戦争 ★★ UCガンダムvs.シャンブロ(ロイ・ガーベイ搭乗)、黒いUC(バンシィ){/netabare}

 - - - - - - OP(変わらず)、ED「bL∞dy f8 -eUC-」 - - - - - -
{netabare}
第13話 戦士、バナージ・リンクス ★ バナージ&リディ少尉それぞれの戦う理由
第14話 死闘、二機のユニコーン ★★ ミネバ救出作戦、真のマスター、ミネバの選択、マリーダ救出
第15話 宇宙で待つもの ☆ ネェル・アーガマ移乗、連邦軍(ゼネラル・レビル)来襲、ネオ・ジオン来援
第16話 サイド共栄圏 ★ フル・フロンタルの目的、最終座標、リディ少尉バンシィ搭乗
第17話 奪還!ネェル・アーガマ ★ ネェル・アーガマ艦内騒乱、フル・フロンタル退去
第18話 宿命の戦い ★ ガンダム同士の戦(バナージ&リディ少尉) ※OP「RE:I AM」
第19話 再び光る宇宙 ☆ マリーダ死亡、メガラニカ入境 ※オカルト現象は説得力なし× 
第20話 ラプラスの箱 ☆ サイアム・ビストとの対面、財団と連邦の秘密、フル・フロンタルとの決裂
第21話 この世の果てへ ☆ 巨大シナンジュvs.2機のUCガンダム ※同上
第22話 帰還 ☆ コロニーレーザー命中阻止、ミネバ演説 ※ED「StarRingChild」{/netabare}
--------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)4、★(良回)11、☆(並回)7、×(疑問回)0 ※個人評価 ★ 4.3


※最後に一言、重要な【注意事項】。

「これからガンダムUCを視聴される方は、このTV作品(RE0096)ではなく、劇場版(OVA)7部作の方を強くお勧めします。」

というのは、TV版の方は劇場版(OVA)7部作を全22話に切り分けて、各話の冒頭に「それまでの粗筋」等を入れて話を水増ししているのですが、その切り分け方が何故か物凄く下手くそで、私などはTV版を視聴していて「あれ?ガンダムUCってこんなにテンポ悪かったっけ?」と何度も訝(いぶか)しがってしまったからです。
それでTV版を何話か見終わった後で、念のためそれらの回に相当する劇場版の回も再視聴してみたら、やっぱり劇場版はどの回もテンポが良くて(※最終episode7だけは微妙ですが・・・)、改めてガンダムUCは劇場版作品として、1episodeづつ丁寧に作り上げられた作品だったのだな、ということを再認識できました。
→そのため、実際の作品内容はほとんど同じであるにも拘わらず、劇場版の方は評価を ★★ 4.5、TV版の方は評価を ★ 4.3 と区別しました。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 23
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

全ては善意から始まっている

福井晴敏氏による原作小説は10巻まで購読中。
……なのですが劇場版OVAの方は4作目で鑑賞が止まっていまして(汗)
今月末に迫った11巻に基づいた新作公開に向けて、
過去の劇場版シリーズを2クールに再編集した本作で復習した次第。


中盤ややダイジェスト感があったものの、
概ね『UC』の世界観をまとめられていたと思います。

そして、やっぱり澤野弘之さんの劇伴は相変わらず素晴らしいです。
特に「UNICORN」は彼のベストだと思います。
この曲に乗って再現されたガンダム発進シーンは、
私にとっては史上屈指のロボット発進場面です。


モビルスーツ戦の描写も内容が濃くてシビれます。
大体、巨大二足歩行ロボット自体、突き詰めれば
現実には難しい無理な設定ですが、諦めたらそこでお終い。

そう言わんばかりに、小説版では、モビルスーツを実存させるべく、
マニピュレーター(手)の挙動がどうの、
このノーマルスーツには重力負荷を軽減する機能がどうの、
などと実に細々と熱意を持って戦闘描写が重ねられています。

その積み重ねの成果が映像でもしっかり反映されているのが嬉しいです。

今後も『ガンダム』シリーズを展開するなら、
これくらい実在感が伝わるコックピット周りを
スタンダードにして欲しいと願います。


内容は地球圏を支配する地球連邦政府の根幹を揺るがすと言う「ラプラスの箱」を巡って、
ネオ・ジオン系の「袖付き」や連邦政府、
「箱」を秘匿することで利権を得て来たビスト財団などが介入する乱戦模様。

正体も定かでない「箱」を巡って、各地で戦いが繰り広げられ、
死人は出るし、街も破壊される。
ハッキリ言ってイカレています。

シナリオも展開はそれほど詰まってはいません。
終盤に本作の物語を超高速で振り返るカオスなアバンがありますが、
僅か数分で大体説明できる程の内容です。

けれど虚像にすがり翻弄される人々と言う切り口は、
ニュータイプ神話や「赤い彗星」伝説と言った、
定まらない物や主義に振り回されて惨劇を拡大させて来た
一年戦争以来の戦乱の本質に迫る有効手。
かつて『ガンダム』を体験した視聴者にとっては、
往年の激戦地や英雄たちの足跡に思いを馳せながら、
戦史を総括しつつ、シリーズのテーマについて思索に耽ることができる
刺激的な宇宙世紀の史跡探訪番組です。


要所でガンダムファンにサービスしつつも、
原作者のこだわり、作家性を感じるのは、
理想の頓挫、組織の腐敗といった宇宙世紀に荒廃をもたらした惨禍の種も、
元々は人々が可能性を信じ、善意をもって企画したものだという救済思想。


その中でも私が特徴的に感じるのは地球連邦に対する視点。
従来の『ガンダム』における地球連邦政府とは、
地球の引力に魂を惹かれた、見限るべき腐敗組織といった感じで、
散々な言われようでしたがw

本作においては、地球連邦もまた、旧世紀の苦境を乗り越えるため、
世界統一政府という途方もない夢を体現した
可能性の産物として再評価されます。

「箱」を巡る旅路の道中では、一年戦争来の爪痕ではだけでなく、
地球連邦が統一を押し進める際に抑圧して来た分離派の怨念にも焦点があてられ、
地球圏の平和と安定以前に、
地上の世界統一もまた一筋縄ではいかない難行であることを物語ります。

本作に触れるまで、私は『ガンダム』の地球連邦って腐り切っているはずなのに、
なんで毎回生き残るのだろう?と疑問に思っていましたが、
本作で連邦に託された理想の大きさに触れると、
連邦を過小評価していたと認識が改まります。
こりゃ一介のスペースノイドがニュータイプの革新がどうのと、
時に種々の私怨も交えて色々な物体を地球に落したくらいじゃ
到底、連邦は瓦解し得ないと畏怖しました。


結果ばかり見て失望しない。挑戦を続ける人の可能性こそが尊いのだという視点が、
かつて戦場で散っていった者たちや、失意に打ちひしがれる戦士たちを鎮魂する、
そこに『UC』の感動ポイントがあるのだと思います。


こうした観点から印象的なのは、地上のとあるダイナーで
一杯のコーヒーを挟んで繰り広げられたオードリーと老主人の会話。

{netabare} 善意を否定してしまったら、この世は闇。{/netabare}

地球と宇宙。立場と世代を越えて、可能性の継承を感じた
私にとっては本作にじっくり触れる機会がなくても、
この会話。小説で言うと七巻序盤で展開されるこのやり取りだけは
是非、聞いて欲しいと思える名会話シーンです。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 27
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ヒロインの名前の由来はあのお笑いコンビと同じなのです

<2020/1/2 初投稿>
昔にepisode5まで観てて止まってたので、この正月休みにepisode1〜7を一気見しました。
(OVA版はエピソード毎に分かれてたので、こちらのテレビ放送版でまとめてレビューします)

ガンダムの宇宙世紀(Universal Centuly)シリーズの保守本流ですね。

時系列で言えば
UC0079 機動戦士ガンダム(ファースト)
UC0087 機動戦士Zガンダム
UC0088 機動戦士ZZガンダム
UC0093 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
そして本作
UC0096 機動戦士ガンダムユニコーン

今回のガンダムは一本角のユニコーン。
お台場で実寸大が仁王立ちしてます。


コロニーへの宇宙移民が始まったUC01年に端を発する、地球連邦の存在を揺るがすと言われる重要機密「ラプラスの箱」

これを永きに渡り秘匿、所有してきた「ビスト財団」が、通称「袖付き」と呼ばれるネオジオンの残党に譲渡しようとするところからお話は始まります。

主人公バナージ・リンクスさんはアナハイム工業専門学校に通う高校生。
ガンダムの新主人公なのでルールにより16歳です。ハロも連れてます。
歴代のUC主人公としてはかなり普通の少年ですね。
引きこもりじゃないし、
癇癪もちでもないし、
悪ガキでもない。
無味無臭な感じが新しいかも。

ヒロイン オードリー・バーン(本名{netabare}ミネバ・ザビ{/netabare})さんも16歳。
すぐ身バレするんで本名を隠す必要は薄いかもしれないけど一応。
宇宙世紀シリーズの視聴者としては「いつのまにか大きくなったなぁ」と親戚のおじさん・おばさんのような気分に浸れます。
いい娘ですよ。
実は隠れリトルトゥースかもしれない

「袖付き」の領袖フル・フロンタルさん(大佐)は作中「赤い彗星の再来」と呼ばれています。
顔も仮面もモビルスーツが赤いところや決め台詞なんかもみんなみんなあの赤い人にそっくり。
声が池田秀一さんの時点でもう、ね 笑
プロレスラーみたいにゴツいのは気のせい。

図らずも「ラプラスの箱」の文字通りキーマンとなってしまったバナージさんは、
この箱を巡っての「大人たちの争い」に巻き込まれ、翻弄されていきます。

つーか翻弄されすぎ 笑
ちょっと可哀想な気もする。
でも最後はちゃんと宇宙世紀シリーズ主役のお約束もとい責任を果たしたようなので。

本作の特徴は宇宙世紀シリーズの中心概念「ニュータイプ」を軸に据えているところ。

「ニュータイプ」という概念はガンダムの中でファーストの後半に出てきたものです。
マチルダさんがいきなりアムロに向かって「君はニュータイプなのかもね」みたいなこと言ってて、これがおそらく初出。
以降、宇宙世紀シリーズの保守本流では欠かせない概念なのですが、本作は特に重心を置いている印象でした。

「ニュータイプってなんなの?」という問いに私は答えを持ち合わせていないのですが、(誰か持ってる人がいたら教えてくださいませ)

自分なりの解釈では
・人間が宇宙での生活に適応するために
・{netabare}テレパシーの{/netabare}ようなものが芽生え
・これにより{netabare}通常の生物の五感を超えた時空間認識能力{/netabare}を獲得し、
・さらに{netabare}お互いの気持ちや考えが相当恥ずかしいところまで解って{/netabare}しまう
という超能力者。

でも逆襲のシャアでは元気玉みたいなの出してたし、よくわかんないや。


作品の評価ですが

映像は綺麗で戦闘シーンカッコいいし、
キャラクターデザインも安彦良和さんなので大好物、
劇伴も特にユニコーンが起動する時のはゾクゾクしますね。
声優さんも良かったです。

ただ物語はファースト、Z、ZZ、逆シャアの4作品観てる度合いで変わりそう。
もし自分が4作品を
①全部好きなら→4.5〜5点
②一部好きなら→2〜4点
③全部苦手もしくは見たことなかったら→見ない方が良かった
となりそう。

私はZとZZ途中までしか見てないので物語は4.0にしました。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 24

68.5 2083 総合得点ランキング2083位
機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光(アニメ映画)

1992年8月29日
★★★★☆ 3.7 (164)
1178人が棚に入れました
ロボットアニメの一大ブームを巻きおこした「機動戦士ガンダム」のアナザーストーリー。OVAシリーズ「機動戦士ガンダム スターダストメモリー」を再構成し、新作映像も追加している。ジオンと地球連邦の1年戦争が終結して3年。突如としてデラーズ・フリートと名乗る組織が地球連邦に宣戦布告してきた。目的はジオンの復興、そして連邦の滅亡だ。彼らは星の屑作戦を敢行するため、モビルスーツのテストパイロット、コウ・ウラキの目の前で、ガンダムの試作機を奪取する。

声優・キャラクター
堀川りょう、佐久間レイ、大塚明夫、山田義晴、伊倉一恵、真柴摩利、大塚周夫、小林清志

おふとん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

最終戦だけ観るならOVAより劇場版かと。

物語の解説は『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』のレビューを参照してください。
ちなみに私の書いたものは偏りすぎで参考にならないので、他のレビュアーさんのを読むのが吉。


全13話の本編OVAを120分に纏めた、92年公開の劇場作品。
本編前半のエピソードが容赦なくカットされて、終盤の宇宙戦に特化した構成になっています。

特に最終戦には尺の4割以上を割いているので、本編に遜色ないレベルで描かれていますし、
BGMの使い方がより効果的で、引き締まった緊迫感のある戦闘シーンが楽しめました。

キャラの台詞回しは全般的に劇場版のほうが力が入っていて、
例のガトーの名言はOVAより遥かに魂こもってます。微妙な違いですがそう感じます。
ガノタ以外にとってはどうでもいいこの一言が聴けるだけでも、劇場版に価値ありだと
勝手に思っています。 ガトーCVの大塚明夫さん、本当にありがとうございました。

身震いする程嫌いだった本編のラストシーンがカットされているのも良かった。
この結末の方がガンダムらしくていいと思いますが、
あまりにも救いのない終幕となったので、この辺は評価のわかれるところでしょうか。


劇中で適時ナレーション入れてくれるので、本編を観ていなくても置いてきぼりにはならないですが、
総集編と呼ぶには編集のバランスが悪いと思いますので、やはり本編OVAを観た方が無難。

中途半端に終わらせてしまうエピソードや、いつの間にか消えてるキャラもいたりして、
バランスが悪いだけでなく、編集そのものも上手とは言えません。
「最終戦だけ観るなら」という条件付きでしかお薦めできないのが残念。

個人的には幾つかOVAより良い点を見い出せたので、これはこれで手放せない作品ではあります。


以下余談

VHS版での感想なので、台詞やBGMに関してDVD・BD版はどうなっているかはわかりません。
主観ですが、宇宙世紀シリーズをDVD・BD化する際の音源リテイクは、
BGMもSEも台詞回しもとかく悪い方向へ行く事が多いようなので、本作もかなり心配です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 7

ザンギエフ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

なぜか

個人的には一番好きなガンダム作品です

なぜかこのサイトにはOVA版の「機動戦士ガンダム0083Stardust Memory」の項目がないんですがもともとはOVAです
(追記:発見しました。自分が馬鹿なだけでした…orz)


OVA全13話を120分にまとめているのでかなりの部分をはしょっています
OVA版は物語の評価は☆5を与えたいほどの内容です
他の方も書かれていますが観るなら是非OVA版を御覧ください

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

ヌンサ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

最も好きなガンダムの一つ

OVA版は10年近く前に視聴したのですが、劇場版は初見でした。

非常に好きな作品ということもあって、内容はかなり覚えていました。劇場版特有のモノローグや省略は、仕方がないですね。

しかし改めて見ても、ニナとは恐ろしいキャラクターですね(笑)。僕は佐久間レイさんの声が大好きなはずなのに、その声がものすごく耳障りに感じられるくらいでした。その辺りは佐久間さんの演技力の賜物なのでしょう。

そして僕がガンダムシリーズのキャラクターの中で一番好きな(笑)シーマ様は、思ってた以上に笑っちゃうくらい悪役でした。やっぱり大好きです。

人間ドラマにおいて省かれている場面も多いので、やはり最初はOVA版の視聴をオススメします。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

68.4 2122 総合得点ランキング2122位
ガンダムビルドダイバーズRe:RISE 2nd Season(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (33)
142人が棚に入れました
激戦の果てに静止衛星から放たれたひとすじの光は、ヒロト達が戦い続けてきた「惑星エルドラ」がネットワークゲーム「ガンプラバトル・ネクサスオンライン(GBN)」の世界ではなく、現実(リアル)の世界である可能性を突き付けるものであった。その状況に一度は足を止めてしまうビルドダイバーズ。しかし、共にヒトツメと戦ってきたフレディ達エルドラの民との絆が、ヒロト、カザミ、メイ、パルヴィーズを再び結集させる。未だエルドラに意識を囚われたままのダイバー、シドー・マサキの行方。そしてヒトツメを率いる謎の存在、アルスの正体。なによりも、かけがえのない仲間であるフレディ達を救うため……そう、エルドラにはクリアするべき“ミッション"がまだ残されている。新たにビルドした力(ガンプラ)を手に、もうひとつのビルドダイバーズの真の戦いは、ここから始まる。

声優・キャラクター
小林千晃、加隈亜衣、水中雅章、水瀬いのり、渕上舞、若山詩音、南真由
ネタバレ

どどる さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

日はまた昇る

見事な最終回でした。

基本的にはまんまタイトル通りのアニメでRi:RISE、太陽はまた昇る。
今は沈んでいる。
沈んでいたキャラクターが再生に至る過程と、踏み出せるようになるまでのお話。
そういうことが好きな人にはたいへんオススメです。

個人的にはプリティーリズムレインボーライブ、ムシキングのような「大人が見て楽しいホビーアニメ」の部類というのがもっとも端的に全体像を表す言葉だと思います。


見た人向けに細かい話をすると、
{netabare}
・ネプテイトの使い方が最高。
ネプテイトがイヴを象徴していることは25話のパージ後に察せられる作りになっています。
パージされたネプテイトユニットが棺桶風の構造なのは、視聴者にネプテイトの象徴性を感じさせるための絵なのだと思います。
ここがまた表現が繊細で、ヒロトがどう感じていたかダイレクトには伝えてきません。
ネプテイトユニットに「さようなら」と言えばまだ分かりやすいですが「ありがとう」で、宇宙へ漂って行くわけでも大気圏に突入するわけでもなく、エルドラの軌道上を漂う。

イヴの存在が無かったことになったわけではなく確かにここに息づいているとでもいうようですが、劇中で言葉には表されないので、私たち視聴者の感じ方にかかっています。
ガンプラは自由、ガンプラアニメをどう感じるかも自由。
イヴとの約束のネプテイトでどっかんどっかん殴りあってほしかったなと思うのも……まあ自由!

・感情のドラマなのが最高
リライズ、上質な感情のドラマです。
作劇を事件に寄りそうか、感情に寄りそうかはあくまで比重の話ですが、好みの別れるところです。
私は感情によりそうのが好きです。
でも感情がうおおー!で現実に影響を与えるところまで行くとイマイチなのです。
比重が問題で、リライズはその点最高のバランスでした。

・群像劇要素があるのが最高
感情のドラマとして最高なのが、やはりこれ。
単に主人公が納得、成長して終わりではなくて、イヴから生まれた影響が色んな人にもおよんでいく。
好循環を生み出していることです。
このことが「持久性を感じさせるハッピーエンド」を生み出しています。

{/netabare}

最終的に名作の部類ですが、おもしろいかな?ってなるのが1クール目6~7話だったりしてスロースターターっぷりはかなりのものです。
「だいたい合うかどうか」はほとんどのアニメの例にもれず3話までには判断できなくはないんですが、アニメの先を予想するのに慣れていない人は間違って切ってしまう要素もあったりするアニメ。
4~5話くらいでイライラして切りそうって人には続きを見て欲しいけど、単に本当に合ってなくてイライラしてる可能性も否定はできない。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

68.3 2158 総合得点ランキング2158位
機動戦士ガンダムNT(アニメ映画)

2018年11月30日
★★★★☆ 3.6 (121)
486人が棚に入れました
2010~14年にかけてOVAと劇場上映で展開され、16年にはテレビシリーズとして放送もされた「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」の続編となる劇場版アニメ。「ガンダムUC」のストーリーを担当した小説家の福井晴敏が脚本を手がけ、「ガンダムUC」から1年後となる宇宙世紀0097年を舞台に、ユニコーンガンダム3号機フェネクスをめぐる物語が描かれる。ニュータイプの存在と権利に言及した「宇宙世紀憲章」の存在が明らかにされた「ラプラス事変」から1年。争乱の中心にあった「ユニコーンガンダム」と呼ばれたフルサイコフレーム仕様の2機のモビルスーツは最後の戦闘で人知を超えた力を発揮し、それゆえに危険視され、封印された。しかし、2年前に消息を絶っていたユニコーンガンダム3号機が再び地球圏に姿を現し、同機をめぐる争奪戦が勃発。この戦いに、新たなモビルスーツ「ナラティブガンダム」が投入される。

声優・キャラクター
榎木淳弥、村中知、松浦愛弓、梅原裕一郎、藤村歩、古川慎、塩田朋子、てらそままさき、中井和哉、山路和弘、星野貴紀、佐藤せつじ、駒田航、荒井勇樹、島田岳洋、玉野井直樹、中村文徳、横溝菜帆

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

まさしく宇宙世紀の…新世代の『火の鳥伝説』…オイラは刻の涙を見た!【Narra-TALK&ノベライズ版&パッケージマスター版感想追記】

ファーストガンダムから始まる「宇宙世紀(UniversalCentury)」を舞台にしたガンダムシリーズのオリジナル長篇映画
『NT』は「ナラティブ」と読み、この単語自体は“物語”や“説話”という意味を持ってますが宇宙世紀を舞台にした作品ではお馴染みの要素である“ニュータイプ”と掛けてるダブルミーニングであり、今作では“神話”という意味に意訳できます
『機動戦士ガンダムUC』の1年後が舞台で実質的に『UC』の後日譚になっている為『UC』及び『UC』に至るまでの宇宙世紀シリーズを視聴者が把握してることを大前提として話が進みます
具体的には『ファースト』『Z』『ZZ』『逆襲のシャア』『UC』を把握していた方がすんなり話が入ってくると思います


宇宙世紀0097
ラプラス戦争から1年後、極秘裏に開発されていたユニコーンガンダム3号機「フェネクス」を追う地球連邦軍の特殊部隊シェザール隊
起動実験の最中で暴走し、行方不明となっていた幻の機体だったがルオ商会のミシェル・ルオから提供された試作兵器「ナラティブガンダム」とそのパイロットのヨナ・バシュタの協力もあり、あと一歩のところまでフェネクスを追い詰めるも逃げられてしまう
実はヨナとミシェル、そしてフェネクスの起動実験に参加していたリタ・ベルナルは一年戦争開戦当初、わずか7歳にして「コロニー落とし」を予知したというニュータイプ“奇蹟の子供”と呼ばれた三人組だった
そんな因縁浅からぬ関係のヨナとミシェルが、リタが乗っているはずのフェネクスを執拗に追う理由
それは解体されてしまったユニコーンとバンシィに代わるサイコフレームを手に入れ、ニュータイプの真実…を解き明かすことにあった
だが、同じくフェネクスを狙うネオジオン残党の過激派=袖付きとシェザール隊が偶発的に衝突してしまう


























わずか90分の単発長篇ですが、実はガンダムシリーズというのは来年で40年、そのほとんどがテレビシリーズを端に発している為に今作のように単発で完結する作品はあまり作られていません
宇宙世紀を舞台にした作品としては『逆襲のシャア』と『F91』ぐらいなもので、それから数えて実に27年ぶり
『劇場版00』から数えても8年ぶり、と長い歴史の中でも珍しい作品であるとわかります


『UC』を手掛けた福井晴敏が『UC』の外伝として発表した『不死鳥狩り』という短篇小説が原作となっていますが、当該小説とはだいぶ違う内容なのであまり気にしなくて良いです
というか、ちゃんと映画らしくなるように再構築されているので『UC』シリーズという括りにはなっていません
ですが『UC』までに“ニュータイプ”と呼ばれる存在とそれに反応する“サイコフレーム”という金属が何を起こしてきたのか…これが大前提になっている為、宇宙世紀シリーズのファン以外は相手にしていないのが実際のところでしょう


今作のキーポイントは何といっても、“ニュータイプ”という宇宙世紀シリーズに共通する要素にお茶を濁すことの無い回答を提示したこと、に尽きるのではないでしょうか?
コレに関しては賛否が別れてるようにも感じますが『UC』を観て面白いと感じれた方には今作もご納得いただけるはずです
ニュータイプとは結局なんだったのか…今まで薄々解っていても誰も声を大にして言わなかった真実を、今作は遂に取り上げてしまったのです
そりゃ賛否も別れますわなw


ツッコミ所、というか矛盾を感じるのはマウリ中将が「ルオ商会がグリプス戦役でエゥーゴ側に着いたのはミシェルの進言あって」と言ってましたが、ミシェルがルオ・ウーミンに引き取られたのはグリプス2陥落後の為、あの証言は都市伝説を口にしただけだったのかな?ってところです
あとラストシーンで10年前のシドニーでヨナ達と幼いゾルタンがすれ違っていた可能性に触れていますが、設定上ゾルタンの方が2歳年上なので現実描写としての信憑性は希薄です
ゾルタンの記憶が投影された、と割り切った方が良いでしょう


さて、そんなシナリオに対して今作はファーストをリアルタイムで視聴していた世代のスタッフが中心だった『UC』や『THE ORIGIN』と違って吉沢俊一を監督に配したり、金世俊(キム・セジュン)をキャラデザに配したりと、メインスタッフの多くが30歳代、とガンダムのスタッフとしては比較的若いことに注目したいです


吉沢監督は『Gのレコンギスタ』で御大・冨野由悠季と師弟関係を結んだ気鋭の若手で今作が初監督作
今作の、内容が詰め込まれたスピーディーな構成は冨野演出そのものを体現しており、他人のガンダムに口出ししない御大が珍しく吉沢監督を素直に褒めていたそうですw


キムさんをキャラデザに起用したのも、高齢化しつつあるガンダム関連アニメタを意図的に若返らせるためだそう
キャラの私服がやたらオシャレだったり、ゾルタンの印象的なツーブロックの髪型はまんまキムさんのアイデアだとか
新世代スタッフが伝統ある宇宙世紀ガンダムを手掛ける、という今作のモットーは実に有意義に感じます
伝統芸能の継承みたいな流れですね


ちなみに同じサンライズ制作の『シティハンター新宿プライベートアイズ』のスタッフは『UC』や『THE ORIGIN』のベテランで固められているようです


全篇で90分、という尺は映画としては決して長くは無いのですが、これでもかと詰め込まれた展開がとてもスピーディーに進んでいく様はそれだけでもとても気持ちが良いものです
さらに『UC』でオーケストラを用いたエピックな劇伴を手掛けた澤野弘之が、今作では打って変わってエレクトロを取り入れた重厚かつハイテンポな、ガンダムシリーズとは思えない挿入歌や劇伴を挟んでくる演出もキマっているのも今作の完成度を高めている一因でしょう


ナラティブガンダム出撃のテーマとして流れる「vigilaNTe」は男女ツインボーカルでありながら別々の歌詞が付いており、mpi氏歌唱の男声パートはヨナの心情を、Gemie氏歌唱の女声パートではミシェルの心情をそれぞれ歌っているので本編を観たあとに再注目していただくのも面白いです


あとお台場に立っている実物大ユニコーンで毎夜行われているライトアッププログラムに使われているテーマソング「cage」のアレンジ版がココぞ!という場面で流れたのも鳥肌モノです
思えば「cage」というタイトルからして、不死鳥を追いかけるという今作のテーマにぴったりだったのではないでしょうか
アレが流れるとお台場の人集りの中でも泣いちゃうんですわw


Narra-TALKで小形Pが最も拘ったポイントに挙げていたのはやはり音楽
『UC』、さらにはその後の『ハサウェイ』でも澤野氏が起用されることから本作は意図的に毛並みと変えてるとのこと
また、「cage」のレコーディングに立ち会った小形Pは「良い曲なので(等身大ユニコーン立像のテーマだけでなく)是非本編でも使いたい」と申し出て今作への起用に繋がったようです
「vigilaNTe」も「cage」も劇中で流れるタイミングは小形Pの拘りだそうです
グッジョブですね!


さて今作のフェネクスというモビルスーツ
よくわからん原理で飛んだり、約1年半も宇宙を彷徨い続けたり、とにかく物理の壁を叩き壊すMSなのですが、こういう何がなんだかわからないモノを追い続ける人々の悲喜交々を描く、というのは手塚治虫の『火の鳥』を思い出します
恐怖を通り越して、美しい
美しさを通り越して、気高い
気高さを通り越して、恐ろしい
ともかく追い詰められた人間ってのはこーゆーよくワカラナイものにすがりたくなる性分なのだな、と再認識するドラマでした


本編を観てこのフェネクスの中身を知ると【もしかしてコイツ、ガンダム史上最高の“ヒロイン”】なのでは?とすら思えてくるほど可愛く見えてくるのが不思議ですw


ところでリタ・ベルナル役を演じた松浦愛弓さんってどっかで聞いたような声…と思っていたら『うさぎドロップ』のりんちゃん役だったって…あの子役がこんなに立派になっていたとはオジサン感無量ですよ(;;)


そうそうオジサンといえば、イアゴ隊長とかダマスカスの艦長とか、オジサンキャラが格好良く描かれているのも宇宙世紀ファンのツボを突くのではないでしょうか?


あと竹内清人が手掛けたノベライズ版も読みました
小説家の福井晴敏が書いた脚本から、脚本家の竹内清人が小説を書く、というのも面白い話ですw
このノベライズ版では劇中では多く語られなかった部分がより掘り下げられています
特にヨナがイジメられていた理由やニュータイプ研究所を脱走できた理由や子供だったヨナ達がコロニー落としをシドニーの人々に知らせた方法…というのはこのノベライズ版のみで語られるショッキングな設定です;
この話を踏まえるとミシェルのヨナへの距離感がやたら近いことや側近にブリックが宛がわれた理由が読めてきます
竹内先生は過去に冨野監督が書いたガンダムのノベライズ版を意識して書いたそうです
より本作の理解を深めたい方には必読の一冊ですのでオススメします


そしてガンダムエースにて連載中の大森倖三先生のコミカライズ版ですが、こちらには福井夫人からのアイデアで、今作でも印象的な名脇役として機能しているブリックの過去にまつわるエピソードを、今後収録したいと冗談交じりに福井氏からは語られました


ラストシーンでミネバが意味深な言葉を残してますが今作を皮切りに今後の宇宙世紀ガンダムは年一ペースで長編映画を出していくそうで、とりあえず来年には『閃光のハサウェイ』が3部作形式で映画化するそう
その後は『UC』の続編も描かれる予定とのことで、個人的にはジオン共和国がなぜ衰退してしまうのか(ムーンクライシスのアレ、はちょっと納得いってないので)をハッキリさせて欲しいと感じてます

























…さて、ただいま1月の2週目時点でまだロングラン公開中ということで、実は既に5回も観に行ってます(笑)
正直言ってここまでハマるとは思ってませんでした;
ガンダム40年の歴史で一番好きになりそうです


5回中の3回は新宿ピカデリーの爆音映画祭で観賞してますのでその感想をば…
爆音映画祭は今は無き吉祥寺バウスシアターで始まった企画で映画用ではなく音楽ライブ用機材を用いて大音量で映画を上映するイベントです
現在は映画批評家の樋口泰人氏とboidというイベンター企業の手で全国各地を行脚するように運営されています
ライブ用巨大スピーカーが剥き出しでスクリーン下に鎮座し、配線やPA等も雑多に置かれる為に最前列は基本的に閉鎖されていて座れません


肝心の音感ですがやや音圧が高めかな、と思います
正直セリフ等が聴き取りにくくなる傾向にあり、初期の立川シネマシティの極上爆音上映に似てます
やはり機材の品質の差だと思います
低音に関しては極端に効いているわけではなく、この点は好みが分かれそうですが低音を効かせすぎると劇伴が別モノになってしまうので悪くないと思います
ちなみに立川シネマシティ、特に現bスタジオが知る限り一番低音が効いてます


一番音圧を感じるのは意外にも冒頭、コロニー落としの落着の瞬間でした
まさにこの世の終わり、といった破裂音を感じますw
次いでナラティブA装備の初撃、超長距離からのハイメガ砲が飛んでくるカット
それと計2回あるフェネクスのデストロイモードへの変型シークエンスのバスンッ!バスンッ!ってあの音がかなり勢いよく弾けてました


爆音映画祭は基本リバイバル上映にあてがわれるので、今回の様に新作で上映されたのは大変珍しいことなので貴重な体験だったと感じました
(この記事の後にNarra-TALKを含め計10回観ましたw今作は個人的にシリーズで一番好きなガンダムになったと思いますw)


先日のAnimeJapanでの展示で公表されて驚いたことがあったので追記します
80年代のサンライズ作品へのリスペクトを込めた作品にすべく、フェネクスの機動音には『レイズナー』のV-MAXの音が、Ⅱネオジオングの波動の音には『イデオン』のイデオンソードの音をあえて使っているそうですw
またcageからnarrativeへは、当初シームレスに繋がる予定だったそうですが、間に無音のパートを挟んだ方が良いということから尺を合わせる為にわざわざ幼少期のゾルタンとすれ違うカットを追加したそうです
音の演出に合わせて画を増やすって珍しいですね
制作期間も限られていた中で素晴らしい現場の連携だと思いました


11回目の劇場鑑賞をしたので少しだけ追記します
1週間限定で一部の劇場で公開された“パッケージマスター版”つまりブルーレイ用に多少修正が入ったバージョンの劇場公開です
結論から言うとカットが増えたり大幅に作画が修正されたりするわけではありません
一番大きい変化ですがコロニー(メーティス)の3DCGを作り直したそうです
残りは主に撮影のリテイクで画面の明るさ等、観え方に関する部分を直したそうです
音響のダビングやマスタリングも変わっているんじゃないでしょうか?、セリフ類が聴き取り易く感じました
作画の修正点ですが最後に素顔を見せるバナージの瞳にハイライトが入れられていたのは変更点なはずです

投稿 : 2024/11/23
♥ : 10

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

嘘を付くなんてあまりにも人間的じゃないか

宇宙世紀の歴史を様々な視点から再考する『ガンダムUC』シリーズ。
「ラプラスの箱」を巡る争乱後の地球圏を舞台に、
本編やこれまでの『ガンダム』シリーズとは異なる登場人物を軸に紡がれた本作もまた、
「ニュータイプ」を巡る論争に新たな論点を補強する意欲作でした。

超人的な能力故、都合の良い解釈と悪用に曝され続けて来た「ニュータイプ」
本作では兵器としての「ニュータイプ」だけではなく、
政治に有用な予言者として、肉体を超越した不老不死をもたらす者として、多様な野心家に見出されます。

ついでに、歴代のガンダムパイロットたちは
何故、死に別れたはずの女性たちと会話できるのか?という超設定への疑問も、
不老不死の観点から大真面目に解決w

こうして種々の野望に曝された「ニュータイプ」は、
宇宙に出て進化した人類は肉体と言葉を超越し、みな分かり合えるようになる。
と言う初期の「ニュータイプ」の理想から、どんどん引き離されて行きます。

「ニュータイプ」は邪な野望でその力を求める程、真実から遠ざかって行く……。
そのジレンマの最たる人工的な「ニュータイプ」製造の研究
及び“失敗作”というフェイクの数々。嘘に塗れた狂気の歴史。
その本丸たる悪名高き“ニタ研”の暗部にメスを入れるテーマの掘り下げも果敢。

そもそも超越者である「ニュータイプ」能力は「オールドタイプ」に観測可能なのか?
という視点から、認識もできない物から現世利益をもぎ取るために、
切っ先を振り回し、強化人間たちの肉体や人生を傷つけていく……。
狂乱の本質に迫る切れ味も良好です。

そんな中、ある女が真の「ニュータイプ」に抱いた、
死者と再会できる世界、もう嘘を付かなくていい世界という憧憬が悲壮です。
命も肉体も有限だから、人は執着し、嘘を重ねて行く。
ならば魂が解放された「ニュータイプ」の高みに至れば、
自分を押し殺して嘘を重ねなくて済むのだろうか?

野望、悲願、復讐……。
三機目のRX-0・フェネクス。黄金の“不死鳥狩り”に殺到する諸々の思念が、
未曾有の「サイコフィールド」出現という“特異点”へと登り詰めて行くその先に、
待っている君は、嘘を許してくれるのだろうか?それとも……。

真実は、是非劇場に滑り込んで澤野弘之氏の劇伴と共に展開される
迫力の戦闘シーンと共に目撃して欲しい。

私にとっては後年も思索の種として思い返すことも多くなりそうな有意義な『ガンダム』でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 15

フェイルン さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

ニュータイプの解釈

まずは視聴条件から。
原作の小説は読んでいません。よって、予習は前売り券に付いてきたマル秘レポートのみのみをさらっと見て、初日に観に行きました。
ほぼ、今までのガンダム作品は把握。ガンダムUCはもとより、初代ガンダム~逆襲のシャア~Vガンダム、ガイアギア、その他ガンダム作品など(以下略

UCから1年後の話で、消息不明となっていたRX-0 ユニコーンガンダム3号機「フェネクス」が、再びその姿を見せ始めた。……といったところから話が始まる。

キャラの作画は希に気になるところがありました。例えば、マーサ・ビスト・カーバインが移動されている場面、わざとかもしれませんが、UCとは別人かと思うくらいに違って見えました。まぁ、栄枯盛衰と言うのか、それだけ落ちぶれたという事を表現していると理解してます。

MSは、CGで綺麗に表現されていました。

キャラクターが各々個性が出ていて良いです。
本作のキーパーソンではありませんが、マーサ・ビスト・カーバインのみならず、UCからのキャラがいますので、UCが好きな人はニヤリとする場面もあり。

人により、UC以降はやり過ぎ感があると聞きますが、「そういう感じ方もあるのかぁ」くらいにしか思いませんでした。原作小説からはカットされている部分もあるようですが、未読なので特に分からず。映画を観た限りでは、テンポ良くまとまっていました。

ニュータイプの可能性といったテーマがあり、本作は過去のガンダム作品に対する今なりの1つの答えであり解釈なのでしょう。

『UC NexT 0100』の第2弾になる、閃光のハサウェイも楽しみです。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 3

68.3 2158 総合得点ランキング2158位
ガンダムビルドファイターズ(TVアニメ動画)

2013年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (450)
2078人が棚に入れました
時は近未来。 アニメ作品『機動戦士ガンダム』のプラスチックモデル ――通称『ガンプラ』が、1980年代に一大ブームメントを巻き起こしてから早幾年。 今、第2次ガンプラブームと呼ぶべき、新たな波が世界を席巻していた。 その人気を牽引しているのが、『ガンプラバトル』の存在である。 仮想空間のCGなどではなく、製作したガンプラそのものを操作して戦うという、 画期的なバトルシステムの登場により、その人気は拡大、 毎年、ガンプラバトル世界大会が開催されるまでに至っている。 本編の主人公、イオリ・セイも、ガンプラを愛し、ガンプラバトル世界大会への出場を夢見る、 若きガンプラビルダー(製作者)である。 模型店の一人息子ということもあり、高いガンプラ製作能力を持つ彼だが、 バトルの操縦には疎く、大会に出場しても初戦敗退を続けていた。 そんな彼が、卓越したガンプラ操縦技術を持つ謎の少年、レイジと出会い、 コンビを組んで世界大会に挑む! ガンプラビルダー、セイ。 ガンプラファイター、レイジ。 セイが作って、レイジが戦う。 彼らが、噂のビルドファイターズ! 目指すは、ガンプラバトル世界大会への出場――その優勝だ!

声優・キャラクター
小松未可子、石川由依、中村悠一、三石琴乃、國立幸、佐藤拓也、藤井美波

いおりょぎ  さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

全てのガンダム・ガンプラ世代に贈る!!ガンダムシリーズでも屈指の名作です!!ガンダムに興味が無くても一見の価値がありますっ!!(全話視聴完了再レビュー)

全話視聴しました!!

⇒あまりに興奮して、ちょっと盛りすぎかもなので、以下2割引き程度でご覧下さい(^^ゞ(視聴完了日の翌日追記) 

今、興奮の余韻に浸っており、今すぐこの気持ちを伝えないと、と思いながらキーボードを叩いています。

本作は、間違いなくガンダム史に残る代表作になったと思います。
そして、ガンプラという題材だったからこそできた、ガンダム集大成の作品となったとも思います。

1クールは敢えてガンダム初見の方たちも取り込もうとした意欲の表れだったのでしょうが、成功したとは言い難い出来でした。

それに反し本当に同じ作品とは思えないほどの2クールでの物語の濃縮度は想像を絶します!!特に終盤はとても1話とは思えないくらいの密度の連続で、ちょっとした映画を見たくらいの圧倒感がありました。

でも、最後まで見た今は、その1クールの長い尺があったからこそ、この感動があったとも思いますし、また、ガンダム初見の人たちにもお勧めできるとも思います。
結果的に当初の意図を超えて進化できたと言ってもいいんではないでしょうか。

抽象的なもの言いになってしまいますが、「ベアッガイさん」(クマをイメージしたガンプラ)が、あんなにも格好良く見えたのは、本作のそれこそ自分たちと等身大の一般の人達が活躍し「ガンプラを実際に戦わせる」という世界観だったからこそ実現できたのではないでしょうか。

もちろん一度でもガンダムに興味をもった方なら、間違いなく面白いと思いますし、ロボットやバトルが苦手じゃなければ、初見の方にもお勧めします。

長い尺が持たない方なら2クールからでも面白いし、本当の感動を味わいたい方なら1話から視聴することをお勧めします。

「ガンプラ」という世界観からは想像もできない、楽しい世界が待っていますよ!!

そして、最終的にまだまだ明かされていない秘密も多々ありますし、続きを期待させる終わり方にもなっているので、続編が楽しみです!



以下前回レビューになりますが、当レビュー初見の方がいたら、参考になると思いますので是非読んでみてください!!


《見続けて良かった!!面白くなってきましたよ(*^_^*) ガンダム好きなら今からでも見るべし(21話まで感想)》 

21話まで視聴しました。

「ガンダム」の名前付いているだけで観てしまう習性で見てましたが、ここに来て俄然面白くなって来ました!!

「ガンダム」や「ガンプラ」に興味があれば見て損は無い作品だと思います。

「ガンダム」について今更説明は不要だと思いますが、本作の特徴は「ガンプラ」を実際に戦わせることができる世界であることです。

正直言うと、1クール12話までは、子供向けかガンダム初心者向けという感じで、設定自体は面白いけどストーリーに面白さは感じませんでした。
なんかOP・EDも、敢えてそちらの層をターゲットにしているような感じで、あまり期待していませんでした。
そのままだったら断念していたかもしれません。

が、2クール「ガンプラバトル世界選手権」に入ってからOP・EDもガラっと雰囲気が変わって、ストーリーも加速度的に面白くなっています!!

まず、本作の特徴である、好きなガンプラで戦えるという設定を最大限に生かした、メカが格好いいです!!

特に世界選手権から登場した主人公機「スタービルドストライクガンダム」は、傑作機です!!
あの大河原邦雄氏が携わっている機体で、今まで歴代人気の機体のいいとこを上手く活かしてると思います。
他の機体たちも歴代のガンダムシリーズを集大成したように様々なバリエーションで登場してきます。

ガンプラを戦わせる場所も自在に設定できるとあって、バトルも様々な場所で行えることから、話数に関係なく期待できます。

そしてバトルシーンもかなり魅せます!!
さすがにサンライズがガンダムの名前を使って作るだけのことはあると思います。

特に16話以降は、毎週のように本格バトルの連続で見ごたえ十分です!!

ただ、「え~っ、それバトルじゃないじゃん」っていうのもあるのですが、そこはご愛嬌ですかね(^^ゞ

まあ、ここまではガンダムが好きならそれでいいじゃん・・・ってとこですが、ストーリーもかなり面白くなっています!!

主人公はイオリ・セイとレイジの二人ですが、レイジは異世界の人間で、2クールに入ってから徐々にその秘密が明かされてきて、それが現実世界でガンプラを実際に戦わせることが可能なシステムと密接に関係していることが、ストーリーを面白くさせています。

さらにライバルキャラたちも、個性豊かで大いにストーリーを盛り上げています。

また意外にもラブコメ要素もあって、これがこれまでのガンダムシリーズには余り無かった要素で、想定外に楽しめます(*^_^*)

特にレイジとアイラの関係は、自分にはかなり受けが良かったです(>_<)

現時点で物語が最高潮に達しており、未視聴の方がいたら、是非今からでも視聴することをお勧めします。

1クールで見切った方も少なからずいるんではないでしょうか。
⇒自分がかなりそれに近かったです(-_-;)

が、今から見ても面白いし、メカやバトルを見るだけでもかなりいけますよ!

キャラはやはりサンライズなので、好き嫌いが出てしまうかもしれません。
でも、それを補うだけのメカやバトルの作画と、ガンダムらしく無いけど面白いストーリー展開があると思います。

ガンダム作品で盛り上がったのはSEED以来ですかね。

今クールで終わるかどうかわかりませんが、毎週月曜が楽しみになりました!!

投稿 : 2024/11/23
♥ : 21

のか さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ユニコーンに並ぶガンダムシリーズの集大成!

あらすじ・・・
ガンダムのプラモデルでバトルをするアニメです^^

では、感想を
いや~面白かったです♪
ガンダムファンとしては絶対に見るべきアニメだと思いました^^

しかし、このアニメはガンダム初心者には全くって言っていいほどわからないネタばかりだと思います(苦笑)

ガンダムの知識が多ければ多いほど楽しめるアニメです。

逆に知らないからこそ(何のネタだろう?)と気になれば製作スタッフの意図にそっている気も(笑)

ガンダムシリーズを見ている人ならユニコーンと並んで必見!!
見ていなくてもそれなりに楽しいアニメだと思いますよ^^

声優さん、キャラ、音楽は文句なし。作画は多少崩壊もありますが、そこまで気にならないかも。

ガンダムシリーズを知らない人にとっては入り口にはならないかな^^;
ガンダムシリーズを見ようと思っている人はSEEDかダブルオー、F91ぐらいから見ることをお勧めします。


では最後に一言
絶望した~!作品のネタの中に自分が見ていない作品があった事に絶望した~!!
GガンダムとかOVA作品とがターンAとか・・・
作画が私の好みじゃないんです~!!
ネタとして入っていても見る気がしません~~~

投稿 : 2024/11/23
♥ : 3
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

昭和と平成を、そして未来を、ガンプラが結ぶ

[文量→大盛り・内容→感想系]

【総括】
ガンダムのプラモデル、ガンプラを題材にしたアニメ。ただの販促アニメと侮るなかれ。

このアニメは、①エンタメ性。②新規ファン獲得。③古参ファンへのサービス。④販促。

という4点で、とても優れた作品です。

まず大前提としては、ローティーンなど、子供向けのアニメです。そこの層が面白いと思えば良いアニメなんです(我々オッサンよりもね)。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
まず①(エンタメ性)ですが、これはガンプラ云々を排してみても、まるでジャンプ漫画のような堂々とした王道感があります。主人公イオリ・セイは、ガンプラ製作の腕は一流でも、その力を出しきれない弱気な少年。正に平成生まれの現代っ子。もう一人の主人公である、謎の少年レイジは、ガンプラ製作は素人ながら天才的な操縦センスで強敵を倒していく、熱血バカ。正に昭和生まれの少年。この二人が、まるで「BAKUMAN」の最高と秋人のように、役割を分担しつつ協力して猛者達に挑んでいきます。深まる友情。そして、イオリは操縦を、レイジはガンプラ製作を学び、次第に独り立ちしていく。そんな彼らを見守るヒロインのコウサカ・チナ(メインヒロインが眼鏡っ子委員長というのも良い)。ライバルはイケメン金持ちで良い先輩のユウキ・タツヤ。あぁ、なんという王道少年漫画感! ラストは、これまで戦った敵、味方が大集合し、世界を救うために共闘します。あぁ、なんという王道少年漫画感w という具合に、現在、小~中学生であるならば必ず心を熱くする(と信じたい)真っ直ぐなストーリーと、「流石にガンダム」と言いたくなる格好良い戦闘シーンで、ガンダムを知らずとも楽しめるだけのエンターテイメント性がありました。

まず、この部分が大事なんですね。テーマ性だ販促だなんだかんだと言ったところで、「シンプルにアニメとして楽しい」ことは大前提になると思います。

続いて②(新規ファンの獲得)ですが、この点はメインヒロインのコウサカ・チナの果たした役割が大きいと思います。いうても、イオリもレイジも基本的には天才。しかしチナは、ガンダムに対してもガンプラにしてもズブの素人。そんな彼女が「好きな男子に近づきたいから」とガンプラを始める様子は、実に等身大であり、萌えの要素もありました。しかも、チナが入ることで、本来ディープでオタッキーなガンプラの世界に「初心者目線」「女子目線(可愛さ)」という要素が加わり、これまでにないファン層を獲得できたと思います。チナが美術部ってのもキモで、今や美術部は多くの学校で(下手すれば野球部以上の)大所帯になり、しかも実質「アニメ部」になっていると聞きます(勿論硬派な美術部もあるでしょうが)。ガンダムの世界に引きずり込むには絶好のターゲットでしょう(チナは塗装など、美術部のスキルを活かしたガンプラ製作が得意)。実際、この年のガンプラ売り上げではチナの「ベアッガイⅢ」が好調で、品切れ状態だったらしいしね。

そして、③(古参のファンへのサービス)は、所々の小ネタでカバー。ラルさんを筆頭に、ファンなら気付けるネタが、本編を邪魔しない範囲で随所にあります。私が一番好きだったのは、もう一人のメインヒロイン、アイラ・ユルキアイネンの存在。フラナ機関の人体実験で超人的な操縦技能をもったとか、まんまフォウ・ムラサメ。カミーユとフォウの悲恋は、ガンダム史上でも1、2を争う悲劇だったけど、アイラはレイジとちゃんと結ばれました。ここに、なんか救いを感じたガンダムファンは私だけでしょうか? なんか、すごい嬉しかったんだよな~。

ラストの④(販促)は、もう言うまでもないですよね。①~③までの要素のお陰で人気作となり、新たなガンプラブームを巻き起こすまでに。ゲーム化もしやすく、円盤も売れ、(UCなどの頑張りもあり)2014年の決算ではサンライズの純利益が20億円を越えたとも。短期的、または中・長期的にみても商業的な成功という点では申し分ありません。販促を悪く言う人もいるけど、サンライズが赤字になっちゃったら、ガンダムというコンテンツ自体が廃れていくということを考えてほしいです。

以上のような点から、ガンダムビルドファイターズを(少年向きながら)素晴らしい作品だと(勝手にw)認定します!
{/netabare}

【視聴終了(要約バージョン小盛りレビュー)】
{netabare}
ガンプラ要素を抜いたとしても、王道のバトルもの、成長モノ。少年漫画のような楽しみがあった。ヒロインのチナによって、女子や初心者にも楽しめる要素が。小ネタによる古参のガンダムファンへのサービスも嬉しい。販促としても成功したし、純粋に面白かった。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 20

68.3 2158 総合得点ランキング2158位
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 (アニメ映画)

2022年6月3日
★★★★☆ 3.6 (63)
204人が棚に入れました
ジャブローでの防衛戦を耐えきった地球連邦軍は勢いのままにジオン地球進攻軍本拠地のオデッサを攻略すべく大反抗作戦に打って出た。アムロ達の乗るホワイトベースは作戦前の最後の補給を受ける為にベルファストへ向け航行。そんな中ホワイトベースにある任務が言い渡される。無人島、通称「帰らずの島」の残敵掃討任務。残置諜者の捜索に乗り出すアムロ達であったが、そこで見たのは、いるはずのない子供たちと一機のザクであった。戦闘の中でガンダムを失ったアムロは、ククルス・ドアンと名乗る男と出会う。島の秘密を暴き、アムロは再びガンダムを見つけて無事脱出できるのか…?

ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ニュータイプという言葉も出てこない地に足のついた素朴なガンダム

『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」(視聴済)を素材に
正味18分程度→100分超にリブートした長編作品。

【物語 4.0点】
一貫して戦時下の人間の業を描いていく『ガンダム』ですが、
ククルス・ドアンの頃はまだアムロも民間人から戦争に深入りする途上。
スレッガーさんなどの“潤滑油”も健在。
悲劇も積み重なって、オールドタイプじゃもう地球はもたない。
人類はニュータイプに進化すべき云々と理想が語られるのも、もう1クール程あとの話。

誰も戦争を望んでいないのに、巨大な組織の一員として戦争に巻き込まれる惨状を自嘲しつつも、
敵味方の立場を越えて、良心に従い、自然を顧みたりすれば、まだ人類はやり直せる。
一筋の光明にすがれる佳作エピソードが詰まっているのがファーストガンダム前半部。


こうした要素に光を当てるため、本劇場版は拡大した尺の多くを島での生活描写に注ぎ込む。
あとは地球圏をたらい回しにされるホワイトベースの立場の解像度アップを企画した政治的背景の詳述などがメイン。
もちろんバトルにも見どころはあるものの二の次といった印象。

長い人生、戦時など一瞬。地に足をつけて、動植物や子供を育む人間活動こそ重要。
ドアンの達観に価値を見いだせるかで明暗は分かれそう。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・サンライズ

決して美女イケメンばかりでない顔立ちが並ぶのも相変わらず。
が、その心情描写は深く、人間観察する価値が大いにある。

特にブライト艦長の円な瞳に中間管理職の悲哀が滲んでいるのがジワジワ来ます。

レビル将軍ら上層部によるホワイトベースへの命令も政治力学上の合理性あってのこと。
が、直下の中間管理職らからすればそれは無茶振り。
そんな事情を胸にしまって部下に当たれば不機嫌だの何だの陰口を叩かれる。
さらにブライトさんも少し前に{netabare}親父にもぶたれたことない少年に手を上げた{/netabare}後ろめたさも引きずっていて……。
戦時の人間組織を解析する脚本の意図を、
ブライトさんの顔立ちがしっかり拾っているのがもう可笑しくてw
そんな彼が心情を吐露できるのはミライさんだけ。
これはもう結婚するしかありませんねw

絵コンテがいぶし銀のいい仕事していると感じます。


古くからのSFには、当時のSF設定が時代遅れになるという課題がつきまとうもの。
だからといって、アナログっぽい計器や分厚いモニターといったオリジナルのコックピットに、
急に空中ディスプレイが乱舞するのも興ざめ。
本作はその辺りのバランスも考慮してオールドファンに訴求。
ブライトさんもカステラみたいな有線受話器に口角泡を飛ばしますw

ベルファストの連邦軍描写からは、
大艦巨砲主義を引きずった旧態依然が、持て余し宙に浮いたホワイトベースの苦難を示唆。

ドアンのザクによるスラスターをフル活用した格闘戦。
ザクの白兵武器は“ヒート”ホークであることを納得させられる加熱描写。
など詰めるところは渋く詰めて来る。


【キャラ 4.5点】
主人公アムロ・レイ。
ガンダムでの激闘、両親との軋轢と、ここに至るまでに既に大きな負荷がかかっていることが、回想で示唆される。
が、この段階ならまだ、島で人間活動をする描写を通じて、土と心を耕せば、
まだ普通の人間の少年として再生できる可能性も示される。

ドアンの島の子供たちもモブではなく
一人ひとり、より明確な人格を持ったキャラとして再構築され、
各々が一年戦争の縮図を体現。
さらにドアン家の“母親役”の少女カーラや、
アムロと同年代の少年マルコス辺りは、
アムロに世話を焼き、突っかかることで、
人間アムロの要素を掘り起こす引き立て役としても機能。


サブがメインを引き立てるという意味では、
元ネタでは顔が出なかったザク強襲部隊。
本作では“サザンクロス隊”としてキャラが確立。
戦場でしか生きられない戦闘狂をドアンにぶつけたりすることで、
ドアンの生き様を際立たせる。


ガンダムがまだ“白いやつ”呼ばわりで留まっているのも前半部ムード。
この島で“白い悪魔”と呼ぶべきは、気まぐれな挙動で人間たちを翻弄するヤギのブランカでしょうかw

ただ真に喰えないのは、狐のマ・クベと狸のゴップの化かし合い。


【声優 4.0点】
『ガンダム』も後継声優が馴染んでいく中、
オリジナルから残っているホワイトベース隊はアムロ・レイ役の古谷 徹さんや、
カイ・シデン役の古川 登志夫さんくらいに……。
このお二人も、本作が最後のガンダムと公言する安彦 良和監督と同様、いつまで見られるのか……。

一方、島の子供たちの役には新人の抜擢も目立つ。
特にカーラ役の廣原 ふうさんは錚々たる顔ぶれの中でも、
ドアンに対する複雑な感情などを表現する堂々たる演技。

ドアンは声優界にも種を蒔いています。


【音楽 3.5点】
劇伴担当は『THE ORIGIN』以来の服部 隆之氏。
昭和を彷彿とさせる金管をアレンジし、
「ガンダム大地に立つ」など往年のBGMリバイバルの土台を整える。

ED主題歌は森口 博子さん「Ubugoe」
『Z』後期OP「水の星へ愛をこめて」の頃からは、流石に声質が変わってはいますが、
齢50を越えて尚、純度の高いボーカルを維持する辺りはお見事。


【感想】
本作もIMAXだの4DXだの様々な規格に対応して興行。
ですが私はこの映画に迫力やアトラクション性などを求めるのは何か違うと思い、
平日夜の閑散とした小規模スクリーンで静かに見届けました。

だから劇場で是非とは敢えて言いません。
BDは既に販売リリースされてますし、各人の目的に応じた方法で、島に潜入すればよいかと。

ニュータイプだけが『ガンダム』じゃないと再認識させられた。
渋い余韻が残った劇場鑑賞でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 16
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

大戦の片隅で

[文量→大盛り・内容→考察系]

【総括】
映画館で観てきました。一応、TV版も見直したのですが、これはもう別物ですね(笑)

作画はとても良いです。映画館で観るべきアニメだと思います。

ストーリーには賛否あるでしょうね。私は、わりと好感をもって観ました。まあ、富野ガンダムを期待すると、大分期待はずれでしょうね。

本作は、安彦ガンダムらしい、古くさくて、人間くさくて、心あたたまる、これはこれで素敵なガンダムでした。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
「戦争は上層部が起こし、最前線が戦い、民間人が傷つく」

そんな事実が、妙に「今、この瞬間」と重なった。ヒトラーをなぞらえて語ったマ・クベ。民間人の犠牲を全く気にしないゴップ。2人が引き起こそうとした「核戦争」を、1兵士(ククルス・ドアン)が止めようとするのである。

あのシーンなんて、本当に「今」、、、いや、もしかしたらやってくるかもしれない「ごく近い最悪の未来」を見ているようだった。

もちろん、安彦監督は、今のこの状況を想定して作ったわけではなくて、人間が持つ、普遍的な部分を描いたら、妙に時勢とマッチしてしまったのだろう(というかそれは、富野監督が描いた原作からであるが)。

本作の主人公はククルス・ドアンなのかもしれないが、やはり、私自身はアムロ・レイを主人公として観た。

TVシリーズの流れの中では、ガルマを倒して、アムロが母と再開した後であり、ランバ・ラルが死ぬ前に位置するのが、この「ククルス・ドアンの島」である。

TV版は正直、「箸休め」的な部分が大きく、安彦監督も「ファーストガンダム最大の心残り」としたエピソードであるが、その焼き直しには完全に成功していたと思う。

アムロの成長を考えていくとき、最初は「成り行き」で戦ったアムロだが、徐々に「ヒロイズム」に囚われていき、それを、ランバ・ラルに叩き直されるという大きな流れがある。

優しく、虫も殺せないような「少年」だったアムロは、戦争の中で、否応なく「兵士」になっていく。戦争の中では、「大人」になる前に、「兵士」に成らざるを得ないのだ(2話前の、母との再会話から)。

そんな悲しい現実の中、アムロが「少年」から「兵士」に生まれ変わっていく途中に、「人としても少しずつ成長している」ことを、安彦監督はこの「ククルス・ドアンの島」を通して描きたかったのかなと思った。

本作のアムロは、かなりポンコツに描かれている。

モビルスーツの操縦は上手いだけで、畑仕事も満足に出来ない15歳の普通の少年。はじめ、アムロは何にも出来ないので周りからも認められない。

彼が認められたのは、「水道修理」と「電気修理」。水道修理で高所からロープで降りていったのは、間違いなく、アムロが兵士として身に付けたスキルと根性だろう。「電気修理」で生きた機械いじりは、ガンダムに乗る前からのアムロの特技である。

つまりこの2つによって周囲から認められ、受け入れられたのは、「ガンダムに乗る前のアムロの人生の肯定」と、「ガンダムに乗った後のアムロの人生の肯定」ではないだろうか。

アムロはガンダムに乗らなければ多分、父親のような技術者になったのだろう。もしくは、機械いじりが好きなだけのオタクか。

そんな人生と、「連邦のエースパイロット」としての人生の、どちらが幸せなのかは分からないし、それを考えることにも意味はない。

それを望むかどうかは別にして、時間は確実に流れ、その時間の中で得た経験は全てが自分の中に蓄積されている。兵士として得た人殺しの技術も、使い方を変えれば人を救ったり守ったりできる。

本作の中で、アムロがガンダムで生身の敵兵を踏み潰して殺すシーンがある。前後の流れからしても、アムロの性格からしても、違和感のあるシーンだったが、あの優しい安彦監督が満を持して作った本作である。きっと何かの意味はあるのだろう。

TVシリーズで本作の1話前にあたる「時間よ、とまれ」で、アムロは生身の敵兵を殺すことは出来なかった。それがなぜできたか?

「時間よ、とまれ」との最大の違いは、「守るべき者が居たか」ではないだろうか。「時間よ、とまれ」ではガンダムが単独で動いていたが、本作には、カーラやマルコスといった、「守るべき者」がいる。彼らを守るためには鬼にでもなれるというのは、ククルス・ドアンから学んだことではないだろうか。

思えばアムロが初めてガンダムに乗った動機は、「生き残るため」であり、「身近な人を助けるため」であった。そういう初心を思い出した、とするのは、やや恣意的な解釈だろうか。

本作で敵を踏みつけたのは、近くにマルコスがいたからだろう。下手に兵器を使えば、跳弾や崩落などでマルコスを巻き込む可能性がある。直前に、ビームサーベルでコックピットだけを貫いたことからも、マルコスを守るために戦っていることが分かる。

少年だったアムロは、ドアン達との日常の中で人間として成長し、また、兵士としても成長していた。

では、その先に見つめるものは何か。

最終的には、「武器を捨てること」だろう。

ククルス・ドアンは、完全に地に足がついた「大人」として、アムロの前に現れる。ドアンは一流の兵士であり、多くの人を殺したが、その先でも、「素敵な大人」になれた。

今はまだ銃を置くべき時ではない。でも、その時が来たら武器を捨て、穏やかに暮らすこと。

ククルス・ドアンは、アムロにとっての目標となる大人であり、散々人を殺してきた自分もそうなれるという希望だったのかもしれない。その象徴が、最後の「染み付いた戦いの臭いを捨てる」という、「とても良いこと」なのだ。

ちょっとだけ残念だったのは、もう少しロボアクションが観たかった(特に、サザンクロス隊との決戦)ことと、ラストでアムロがガンダムを使って畑を作るシーンくらいは欲しかったかなというところ。数秒でも良いし、なんなら、ホワイトベースから見下ろした背景として、(人力で作った円の畑の中に)ガンダムの指で引っ掻いたような直線的な畑がある、くらいさりげなくても良いからさ。それは、本作の作風にもテーマにも合った、素敵なシーンになったと思うんだけどな。

まあ、本作は、とにかく「ガンダムらしく」はない。ただ、ハッピーエンド好きな私としては、こういう素敵なラストは嫌いじゃない。

賛否両論あるだろうが、私含め、オッサンのガンダムファンは、批判はしても離反はしない。負け続けても応援し続ける阪神ファンみたいなもんである。多分、一生ガンダムファンなのだ。

大事なことは、こういう、新しい、綺麗なガンダムを、若い世代がどう受け止めるかだと思う。是非、若手の意見を聞いてみたい。

余談だが、今日、映画館で私の隣に座っていたのは、可愛らしい女子中学生の2人組だった。個人的には、今回の映画鑑賞でそれが一番嬉しかったりした(いや、JCの隣に座ったことじゃなくてね(汗)。そういう若い女性ファンがこんなコアな作品を観てくれている、ガンダムを好きでいてくれることがね、嬉しかっただけですよ。アセアセ)w
{/netabare}

【余談~舞台挨拶中継から素敵なシーンを~】
{netabare}
ライブビューイングで見られたので、いくつか素敵なシーンを。

①視聴前に司会の方が、「カメラでの撮影はお控え下さい。もし見つけた場合には、高濃度のミノフスキー粒子が散布されます」と、洒落た注意をしたこと。

②森口博子さんの挨拶中にお客さんのスマホが鳴ってしまったのに、すかさず、「大丈夫ですよ。本番前で良かったですね」と、笑顔でフォローしたこと。

③本作でセイラさん役をした潘めぐみさんが、お母さんの潘恵子さん(ララァ)のスカーフを巻いて登壇していたこと。

④マルコス役の内田雄馬さんが、司会の方から「内田裕也さんです」と紹介されたが、笑いながら「大丈夫ですよ。名前だけでも覚えて帰って下さい」と、笑いに変えていたこと。

⑤もうこれでガンダムは最後、とする安彦監督に、古谷さんが何度も「僕はまだ15歳のアムロをやりたいです」「作画に悔いがあるなら、それは次回作で」と、何度も次回作を勧め、安彦さんも困りながらも何だか嬉しそうで、最後には「もう先のことを考えられる年ではないのですが、実は、この中で私が一番年上ではないんですよね(古川登志夫の方が一歳年上)」と、少し前向きになっていたこと。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 21
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ガンダム二刀流

 ガンダムを知っているならわかる、「ククルス・ドアンの島」の話のリニューアルどうなっているのか?「私、気になります!」だったです。
一部同じだった当時と比べ物にならない、初めての人でも楽しめる内容の濃い迫力のあるお話に仕上がっていたです。

当時はコアファイターでアムロが偵察に行った島で、ちょっとした一話の島での出来事のお話が、まさかのMS(モビルスーツ)出動の任務になっているです。

当時は、考えられなかったMS戦まではじまりびっくりだったです。島でアムロが、ククルス・ドアンら子供達との触れ合いあるの一緒だけど、ここまで過ごす時間をえがいていた事に驚きです。島のとある施設だったり、ガンダムを隠した場所も鮮明だったです。

{netabare} 他に大規模作戦もからんだり、 MS戦も最新のザク達も出てきたりと盛りあがったです。ガンダムもかっこいいです。
不思議なのは、この話グフが出る前の話なのに、コアブースターがでたりスレッガーが出てきたことです。{/netabare}
おすすめできるです。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 8

67.9 2289 総合得点ランキング2289位
機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY(OVA)

2016年7月29日
★★★★☆ 3.9 (67)
398人が棚に入れました
宇宙世紀0079、地球連邦とジオン公国が戦った一年戦争の末期、サイド4のスペースコロニー群、ムーアはジオン軍の攻撃により破壊され、多くの住人が命を落とした。破壊されたコロニーや、撃沈された戦艦の残骸が無数に漂う暗礁宙域では、ぶつかり合い帯電したデブリによって絶えず稲妻が閃くようになり、いつしかそこは、『サンダーボルト宙域』と呼ばれるようになった。ムーア市民の生き残りで構成された地球連邦軍所属部隊、ムーア同胞団は、故郷であったサンダーボルト宙域の奪還を悲願とし、宙域のジオン軍を殲滅せんとしていた。連邦の進軍を足止めせんとするジオン軍も、義肢兵の戦闘データ採取を目的に設立されたリビング・デッド師団を展開。ムーア同胞団に所属しながら、故郷や自身の出自に束縛される事を疎ましく思うイオ・フレミングと、過去の戦闘により両足を失い、今はリビング・デッド師団でエーススナイパーとして活躍するダリル・ローレンツは、戦場で対峙した時、互いに悟るのだった。ふたりは、殺し合う宿命なのだと……。

声優・キャラクター
中村悠一、木村良平、行成とあ、大原さやか、平川大輔、咲野俊介、佐々木睦、土田大

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

傷痍兵、ドラッグ、学徒動員、PTSD、、、ガンダムの歴史に楔を打つ傑作の誕生を目撃せよ!史上最も残酷なガンダム映画!!そして史上最強のザク!!!

『MOONLIGHT MILE』などで知られる漫画家、太田垣康男が手掛けた『機動戦士ガンダム』のスピンオフコミックの、原作第1部に相当する部分をサンライズ第1スタジオと松尾衡監督が有料配信限定作品として15分×4話でアニメ化
さらにそれを劇場上映とパッケージ向けに纏め上げ、新規カットを多数加えたものが本作です


舞台は宇宙世紀0079の12月、一年戦争末期
かつてのサイド4(ムーア)が存在していた宙域は、破壊されたコロニーの残骸と無数のデブリが漂って沸き起こる稲妻によって暗礁地帯と化していた
通称“サンダーボルト宙域”と呼ばれていたこのポイントは、決戦の地ア・バオア・クーへの補給地点としてその重要度が増していたのだ
連邦軍のムーア同胞団はこの宙域を奪還せんとモビルスーツを大量導入するが、ジオン軍の傷痍兵ばかりで構成されたリビング・デッド師団の狙撃部隊によって足踏みを余儀なくされていた
元々はムーアの住民であったムーア同胞団にとっては、故郷を取り返すような面持ちのとても辛い作戦であったのだが、パイロットの一人であるイオ・フレミングは趣味であるフリージャズをBGMに飄々と出撃していく
イオは乗機を撃破されつつも奇跡的にジオン狙撃兵の一人に一矢報いる事に成功、敵狙撃手を卑怯者の傷痍兵と侮蔑して煽る
仲間の一人をイオの騙し討ちに殺られたリビング・デッド師団のエーススナイパー、ダリル・ローレンツは自分や仲間たちを侮辱する態度のイオに対し復讐を誓いつつも撤退を余儀なくされる
そんな中、ムーア同胞団への補給として最新鋭機であるガンダムが配備されることとなった・・・


まず今作は『ユニコーン』や『THE ORIGIN』と同じく明白な原作が存在している珍しい『ガンダム』アニメであります
舞台は1年戦争、これまでにも『0080』や『第08MS小隊』や『MS IGLOO』といった名スピンオフOVAが生まれてきた時代設定で、特に残酷な戦争描写に注力している作品が多いと言えます
そして今作はそれら名作OVA達の鉄壁の牙城を揺るがす傑作に仕上がっているとまず断言しておきます!


太田垣先生と言えば、SFとしては極めてリアルなメカ設定と圧倒的作画力でそれを描写する画面的な説得力がまず際立っていますよね
今作に登場するMSはジム、ザク、ドムなど一年戦争作品ではお馴染みの量産機でありながら、よりリアリティのあるデザインにリファインされているのが特徴です
関節をデブリから守るシーリングが施されていたり
不恰好なバックパックがわざとらしく装着されていたり
盾に両手を取られることの無い様に盾を担ぐためだけのサブアームがこれ見よがしに着いていたり
“人型”というMS最大の矛盾点、【アニメ的な嘘】を極力補うような造形はをした結果がコレだ、というこれまでの『ガンダム』シリーズにありそうでなかった描かれ方をしていると思います
ちなみに太田垣先生が今作で最も拘っているのが、イオが駆るフルアーマーガンダムを“ガンダム=ヒーロー”的に描いてきたこれ以前のシリーズと違えて【史上最凶の悪役】としてる点
その上で、ダリルが駆る【ザクがこれを倒す!】という部分にあるらしいです
シリーズではあくまで雑魚キャラとして扱われてきたザク
そのザクで!あのガンダムを!!倒すというのです!!!
この展開、シリーズが好きな人にとっては胸アツにならないわけがない
バーニィもびっくりだぁ!


そして肝心の戦闘描写も、複雑なデザインのMSや画面に無数に溢れるデブリといった根気の要る細かな作画にも関わらず見事なまでにアニメートされており、これまでの『ガンダム』シリーズでも屈指のハイクオリティです
そしてサンダーボルト宙域特有の放電現象も、デジタル技術を十八番とするサンライズ1スタお得意の色彩設計と撮影効果のコンビネーションによって単なる稲光エフェクトとも虹色とも違う、なんとも形容しがたい万華鏡のような情景を映し出しており、“単純に1枚の絵として観ても”価値のある画面に仕上がっています


さらにお話の方もとにかく戦争の悲惨さが際立って描かれるシリアスなものになっています
そもそも主人公の一人であるダリルが傷痍軍人、というある意味『ガンダム』を含めたアニメ作品ではタブー的に扱われる存在だと言う点からして他とは違う
そして新兵器開発の為に身を捧げるが如く扱われる使い捨ての軍人達
追い詰められていく度に疲弊していく精神
学徒兵の動員という直視し難い現実との向き合い
生きる為には相手を殺すしかない、という恐ろしさ
とにかく残酷、とにかく悲惨、こーゆー作品こそ『ガンダム』を知らない人にもチェックしていただきたいです


んで松尾衡監督といえばやっぱ“プレスコ”ですよね
このシリアスな作品を支えるキャストの演技は近年のどのアニメよりも際立って良かった
中村悠一、木村良平、行成とあ、大原さやか、平川大輔、まさに実力派の真骨頂
終盤の狂気に駆られていく登場人物達の雄叫びや悶絶の芝居にアナタは震え上がることでしょう


最後に今作の独特の味を出している菊池成孔による劇伴の存在も忘れてはいけません
今作はストーリーを際立てる為に重要な会話パートではほとんどNO BGMです
これはそもそも松尾監督の演出の基本ですね
ですが、ひとたびイオが出撃すると彼が身に付けるプレーヤーからはお気に入りのフリージャズが流れ出すのです
一見すると荒唐無稽なようで不思議とノれるフリージャズのハイテンポなリズムとスウィングは、飄々と戦場を駆け抜けるイオと軽々しくデブリを避けて飛び回るガンダムの機動力にマッチしてまるでダンスのよう
そして狂気めいたイオ自身をも演出します
ソレに対してダリルも音楽を聴くのですが、イオとは対照的に50年代アメリカのオールディーズを髣髴とさせるポップスが流れてくるんです
爽やかな女性ボーカルをバックにして次々に敵兵を撃ち抜く(つまり殺している)ダリルの現実感が既に常識から乖離している、というギャップを示唆する異化効果を出しています
劇伴はあくまで劇中のラジオやプレーヤー、或いは登場人物たちの記憶にある音楽が頭の中で流れているだけという演出になっており、画面やお話とのマッチング、或いはその逆でギャップからくる異化効果を楽しんでいただくとこの作品の印象がより強く感じると思います


長くなりましたがお話、画面、芝居、音楽といった全ての要素において今作はこれまで37年に及ぶ『ガンダム』シリーズにおいてもトップクラスに君臨する傑作に仕上がったと思います
原作ではイオとダリルの戦いはまだまだ続いており、今作のラストでは今後の原作の展開を予想させる結末を迎えるのですが、今作単発の出来に関しては何一つ文句の付け様がありませんでした

投稿 : 2024/11/23
♥ : 5

阿紫カービィ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

さようなら プティの卵

これは…過酷な悩みを抱えた人達のドラマ。
苦悩が、これでもか!と襲ってきます。


戦争で四肢欠損した軍人で結成された
『リビングデッド師団』(自虐的な名前に驚いた)と、サポート隊員で結成された、ジオン軍。


対する地球連合軍は
故郷奪還のため結成された『ムーア同胞団』


そこに所属する、ガンダムフルアーマーパイロット、イオ・フレミング。

彼はとても魅力的だ。

一見、『戦争ジャンキー』っぽいけど、
ブレる事なく戦うイオは格好いい。

仲間思いの一面もあり、口は悪いけど、優しい人だと、私は思いました。


イオの登場シーンには必ず『ジャズ』が流れます。


反するかのように
ジオン軍、ダリル・ローレンツの登場シーンには
ポップス、カントリー、ラブソング、オペラなど、多様なジャンルの音楽が流れます。


音楽で、キャラの違いを表しているかのようで。



印象的だったのは
ダリルが、試作機のテスト搭乗するシーン。

心に沁みました。


義足のダリルが専用機で走る。


自分の足で無邪気に走る記憶、
戦争で必死に走る記憶、
足を失った記憶…

そして、彼はうつむいて涙します。

涙が、上に流れます。記憶と共に昇華するようで…美しかったなぁ。


こういった演出が度々現れるので
胸が痛くてしょうがなかった。



終盤の、サイコ・ザクとガンダムの戦闘シーン、格好いいのだけど、閃光が邪魔して、解りにくかったのが残念。


『戦争』に魅了されているのは
イオか?ダリルか?

最後、痺れました。



この作品の救い

旧ザク(黄色の機体)と
ボロボロになったフルアーマーガンダムが格好良かった事かな(笑)

あと、エンドロール。

この作品の音楽は…本当に心地良い。




最後に。

『心の死』と『肉体の死』は同等だと、
しみじみ感じました。



心が生きている限り
身体は生きる。

心が死ぬと、身体は死ぬということ。




プティ エッグ

投稿 : 2024/11/23
♥ : 33

D.D さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

エグいガンダム

原作はジャズ押しが好きじゃなくて読むのをやめてました
この作品も中々視聴する気になりませんでしたが観始めると戦闘シーンが良く思わず魅入ってしまいました

話は戦争の醜さと言うよりは人間の醜さが描かれている気が超個人的にですがしましたかね
超個人的と言えば重装のフルアーマーガンダムが超機動な点となんでザクを赤にしちゃったかなと言う点ですかね


ま、ガンダム好きはもとより、ロボ好きな方等は一度視聴さてみては?
こちらの作品がディレクターズカット版なのでこちらを観ればOKです

合わないとすればジャズとキャラデザかな?

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2

67.8 2327 総合得点ランキング2327位
機動戦士Vガンダム [ヴィクトリー](TVアニメ動画)

1993年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (356)
1658人が棚に入れました
宇宙世紀0153年、地球圏を統治している地球連邦政府は形骸化し、宇宙に存在する各サイドは連邦政府の統制を離れた独自の道を歩み始め、各地で紛争が勃発する「宇宙戦国時代」に突入していた。
そのなかでもサイド2に存在するザンスカール帝国はギロチンによる恐怖政治と、救済と慰謝を基調とするマリア主義を掲げて急激に民衆の支持を獲得し、地球に向けてベスパと呼ばれる帝国軍を派遣した。ベスパはヨーロッパの都市 ラゲーンを制圧下に置いた後、地球侵攻のための拠点とする。また、ザンスカール帝国への抵抗活動を続けている組織 リガ・ミリティアの構成員たちも、それに対抗してヨーロッパで散発的な抵抗を始める。
こうした中、ヨーロッパの都市 ウーイッグ近くに存在するカサレリア近辺にてパラグライダーを操っていた主人公の少年 ウッソ・エヴィンはベスパのMS(モビルスーツ) シャッコーとリガ・ミリティアに所属する小型戦闘機との戦闘に巻き込まれ、シャッコーに引っかかり取り付いた挙句、パイロットを引き摺り落としてMSを奪ってしまう。これを発端に、その後ウッソはリガ・ミリティアと共に、数奇な運命をたどることになる。

偽ニュー隊長 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

最鬱ガンダム

ガンダムシリーズ中、最も鬱なガンダムであろう。
時代は初代ガンダムの80年ほど後の話となり
宇宙世紀シリーズになる。

主人公にもニュータイプが採用されているが戦闘方法は異色である。
ただ強いのではなく、さまざまな作戦で戦っていく。
ある意味、ガンダムが強いのではなく人が強いといった感じ。

ただ、個人的にはV2はやりすぎだと思う。
もう、ガンダムの域を超えた感じ。
あれさえなければいいガンダムだったのに・・・

最鬱ガンダムというのは、まさに鬱展開なのである。
「これって戦争なのよね」と思わず言いたくなるほどに。

個人的には間違いなく好物であるのだが、
万人にお勧めはできないとも思う。
好物にもかかわらず最後の方は泣きそうになった。
それほど鬱な展開が繰り広げられる。
富野監督にあのあだ名が付くほどにw

鬱展開、無問題の方、Zなんてぬるいよって方
是非ごらんあれ。

とまあ色々書いてきたが
何が言いたいかというと

シュラク隊の皆好きだーーー

投稿 : 2024/11/23
♥ : 9

ひげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

まさに皆殺しの芸術。黒富野ここに極まれり。

銀魂でぱっつぁんがよくネタにしてるVです。
同じく演技指導として殴られたと有名なVです。
デッカク見ないでくれとBOXに書いてあるVです。
とにかくみんな死ぬんで有名なVです・・・。

背景としてF91からの一連の騒動が裏にあるといわれています。
サンライズがどうしてもバンダイの子会社になりたかったんです。それにはガンダムが必要でした。
F91をTVシリーズでやる。そんな約束で原作権を売ってあげたらしいです。ご本人は貧乏だった、原作ではなく企画書だといっていましたが。
後年、他の関係者が遠まわしに語っていましたね。40万っていってたかな・・・とにかく激安です。

F91のプラモなどの売り上げがイマイチなので今で言うCVガンダムおよびその前夜の物語はお流れに・・新たなシリーズとしてVガンダムを企画されたのですが・・・。
何も知らされずに怒り狂った御大が描いたのがこの作品だそうです。
とにかく少し前のインタビューでVの時は関係者全員殺したかったと名言してますw

なにゆえそんな監督にVの話がきたのか謎ですがその激情を作品にガッツリと込めました。最初は子供向けに作りますとかいってましたが・・・。毎週のように人が死に、とにかく死に様もひどい。
まぁそこいらは楽しみに観てください。その殺し方のシナリオ、演出は毎回芸術の域。ただ単に人殺しだけではなくちゃんと骨太の背景と人間の生き死を通じてしっかりとしたメッセージを込めてあります。そういった意味でもこの人はやはり天才だと思います。

今ではカテ公が散々いじめられますが彼女は強化されてます。
そんでテーマはシャアにあたる人物が姉の七光りなだけでダメ男なことに言及されてます。カテ公も本人が言ってますね。
サゲチンに惚れたばかりに堕ちていく女のお話です。
あまりいじめないでください・・。

ただ御大の声優発掘の才能はこの作品でも遺憾なく発揮されます。新人だったメインはかなり残ってた、ないし健在なんで当時、現在のアニメ業界みてればわかりますよね。

残念なのは開幕。一話にガンダムを出さないといけないというスポンサー命令で話数の組み替えされてます。不自然ですが当時の事情があるので・・・、。リマスターするなら直してほしいな・・・。

後カトキさんが持てはやされますが敵MSが好きになれません・・人型でないやつが特にw。カトキさんだけではないので
わかりませんが。車輪はかっこいいな・・
当時は初の量産型のガンダム、ヴィクトリーのデザイン、合体は秀逸、天才。V2はダサ・・・
バンダイの意向らしくカトキさんもVタイプのが好き、監督はV2は大嫌いだそうです。

てことで小説版ではセカンドVなる素敵なガンダムが登場します。
ヴィクトリーのウッソ機にミノフスキードライヴつきの専用コアファイターをつけたもの。Vの美しいラインを崩さず完璧なカスタム機に仕上がっております。やっぱ兵器は量産機っすよ。
もっとも商品化希望な機体なのでメーカーのヤツにいってもマズ無理とか・・ロボット魂でいいから受注してくれよ・・。
ガレキがあったりもするんですが・・ワンフェスモノなので値段がすごい・・。なぜ人気が出ないのか・・。まぁそもそも作品に人気ないからですけど・・。

HIνみたいにGジェネとかスーパーロボット大戦とかで出てくれれば人気でると思うんだけどなぁ・・・・。



投稿 : 2024/11/23
♥ : 14
ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

富野監督から渡された、次の世代への『バトン』

リアルタイムで視聴していましたが、子供だったのと飛び飛びで見ていたせいで、全く記憶に残らず。後年レンタルで全部視聴しましたが、はっきり言って『見なきゃよかった』作品でした。決してつまらなくは無いのですが、富野監督が制作時に鬱屈した感情を全てぶつけた作品と言われている通り、見ているだけで気が滅入ってきます。富野監督が大嫌いだとか見てはいけないとか言っているらしいですが、私も他人に薦めるという意味では絶対に選出しない作品です。

{netabare}と悪口を言いましたが、良い所も勿論あります。ガンダムから代々継承されてきたテーマとして『子供達から見た戦争』というのがあります。非戦闘民である子供達が否応が無しに戦争に巻き込まれていく姿を通して、大人のエゴを描写していくというのが、ガンダムの1つの特徴です。Vガンダムはそんな大人達のエゴに良い様に振り回される子供達をストーリーに積極的に加担させていき、味方が次々と死亡するという凄惨な場面も子供達に受け止めるように導いており、それでいて決して逃げ出さない逞しい姿も描かれていて、捉えようによっては次の世代への試練と成長物語としてVガンダムがあるような気がします。

それとこの作品、元気なご老人達が何人か出てきますが、この老人達が次の若い世代へ未来を託すシーンがあります。このシーンに関して私はVガンダムからGガンダムの路線変更を暗示するように思えてならず、富野監督は元からVガンダムを自分の次の世代の人間が受け継ぐバトンのように考えていたのではないかと、『もう、俺は俺の大嫌いな、エゴを振り回す大人にすっかりなってしまった、こんなんでは駄目だ。だから次の世代にバトンを託して、俺は退場する!』・・・みたいなね。

そう考えると、富野監督の単なる憂さ晴らしではなく、次の世代への辛口のエールのようにも見えてくるんですよね。そういう見方でこの作品を視聴するとまた新しい発見があるのではないかなと、そう思います。とはいえ私はもう二度と見返したくは無いのですけども。しかしこういう作品が夕方に放映されていたというのは、今考えても凄い時代だったなと思いますw{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 19

67.7 2357 総合得点ランキング2357位
機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(TVアニメ動画)

2024年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (15)
73人が棚に入れました
宇宙世紀0079年、ジオン公国は地球連邦政府からの独立を宣言し戦争状態に突入した。新兵器モビルスーツの活躍により序盤こそ優位を保ったジオン軍だったが、地球の全面制圧を行う戦力はなく戦況は膠着する。そして開戦から11ヶ月後、東欧のジオン軍占領下にある基地の一つが連邦軍に奪取される。その奪還に向かう混成大隊の中に、宇宙から降りてきたばかりのモビルスーツ小隊、ソラリたちレッド・ウルフ隊の姿もあった――

ウェスタンガール さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

Good Hunting!

原作(無印)への愛、決して安易なリメイクに走らず、しかしそれぞれのエピソードに込められたオマージュの数々と、“白い悪魔”であるガンダム、何より“ニュータイプ”をどのように描いてゆくか、「めぐりあい宇宙(そら)」ならぬ「めぐりあい地球(テラ)」の顛末や如何に!
全6話、3時間にも満たぬ、しかし濃密な人間ドラマである。
一つ一つのスイッチやメータ、地球の、それも中部ヨーロッパの環境によってまとうであろうDusty で Rusty な汚れ、素材感へのこだわり。
傷つき失われてゆくモビルスーツが、それでももがき、足掻き戦い続ける姿、そのメカニカル的蓋然性を担保するリアリティを突き詰めてゆく製作陣の熱量と作画エンジンの進歩。
オタク監督、脚本家、その造詣の深さに感嘆するのである。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 10

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ガンダム敵にまわすと怖ぇ〜だけともいえるが、このレベルのリアリティーで見れるとは…。

 正直話しとかストーリーはそれほどでもない。しかし、とにかく映像のレベルが桁違い。ガンダムといっても宇宙でニュータイプが変顔口喧嘩バトルを繰り広げるタイプ(愛ゆえの軽口です)ではなく、30分6話という構成も含めて地上でミリタリーをやっていたovaガンダムタイプで好みでした。この海外CGレベルで怖いガンダムの大暴れが見れただけで見た甲斐あり。


 あとは、ポケ戦みたいなストーリー性が揃えば、ガンダムかどうかは置いといてミリタリーの新たな傑作誕生へと繋がるかも。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 5

たナか さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

インヴェイダーズ・ナイトメア

ネトフリ製ジオン視点のガンダム各話35分全6話

世界観こそ完璧なまでのガンダムワールドだが、お話的には戦場を舞台にしたパニックホラースラッシャームービーと言っていい。ジオン陣営を軽々と蹂躙していくガンダムがマジで怖い。ジオンは侵攻側なので乏しい資源をやりくりしつつ頑張ってるが、連邦の白い悪魔はひょいっと単騎でやってきては無双アンド無双。目の前で展開される無慈悲な虐殺ショーになすすべもないジオン兵。

撃たれる前にかわす超反応。瞬時に距離を詰める超機動。射程外から貫通するビームライフル。サクサクと機体を刻むビームサーベル。ええい!連邦の〜とか言ってる場合じゃない。一般兵は見たら死ぬ。まさに悪魔。

リアル寄りのCGだがメインキャラはわかりやすいデザイン。軽口を叩く兵士たちによる超人のいない世界観は一般的な戦争映画っぽいノリ。しかし途中で出てくるいかにもマンガっぽいやつがマンガっぽい作戦を指示するのでやや興醒め。クズ上司はずっとクズなのでカタルシスも弱め。ネタバレは控えるがアメリカ戦争映画のラストのように男女がキスしてUSA!USA!にはならないので安心してください。

モビルスーツがカッコよければ良かろうなのだ!

最新機のちょうつよいガンダムに劣勢ながらも現地即席改修機体で足掻くロマンとカタルシス。みんなだいすきグフカスちょーかっけえ。やたらと異次元なガンダムを除いて、ザクやグフはゲームみたいにピョンピョンし過ぎず、かといってアクションを楽しめる程度には鈍重過ぎない調整で画面映えするファンタジーバランス。そもそも兵器が人型である必要ガーなひとはこんなの観てはいけない。

ミリタリー萌えの御仁にはご褒美でしかない映像美。マゼラアタックやザクタンクやガンタンクなどのモビルアーマーはもちろん、AFVは当然としてトラックや輸送車なんかの軍用車両もいちいちカッコいい。眼福。しかし人物のCGは正直もっと頑張って欲しかった。不意に出てきたモロ実写の手で笑う。

幽白は絶望的だがこれは続編作って欲しい。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 2
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