Kalafinaで復讐なおすすめアニメランキング 3

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早速見ていきましょう!

79.9 1 Kalafinaで復讐なアニメランキング1位
黒執事(TVアニメ動画)

2008年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (1395)
8140人が棚に入れました
ファントムハイヴ家の当主シエル・ファントムハイヴに仕える執事セバスチャン・ミカエリスとその使用人達の日常とシエルの裏稼業を描く、アクションシチュエーションコメディ。
物語の舞台は19世紀イギリス風のパラレルワールドである(1巻巻末のあとがき漫画より)。作品世界の描写は基本的には史実のイギリスに忠実だが、携帯電話が登場したり、テレビの存在がほのめかされていたりと、独特な世界が形成されている。

声優・キャラクター
坂本真綾、小野大輔、東地宏樹、梶裕貴、加藤英美里、藤村俊二、田村ゆかり、朴璐美、福山潤、遊佐浩二、矢作紗友里、諏訪部順一、鈴木達央、杉山紀彰、矢島晶子、山口孝史、青山穣、菅沼久義、勝杏里、立花慎之介、安元洋貴、日野聡

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

少年シエルと、あくまで執事のセバスチャン。それぞれの目的のために結ばれた主従関係の結末は…。

「月刊Gファンタジー」にて連載されていた漫画が原作。

人気の高い作品だということは知っていたので見てみることにしましたが、
アニメは原作とは異なるオリジナルエピソードが多めだったようです。

1期できれいに完結しましたが、
2期や3期もあるんですね。

1期は全24話です。


● ストーリー
舞台は19世紀末のイギリス。

名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家当主は、
12歳の少年、シエル・ファントムハイヴ。

ファントムハイヴ家は代々政府の汚れ仕事を請け負っており、
シエルも「女王の番犬」として、裏社会の秩序を守る任務を遂行していた。

そんなシエルに仕えているのが、執事のセバスチャン。
料理も武術も、すべてが完璧な執事。

あまりにも完璧なセバスチャンに対して驚く周囲には、「ファントムハイヴ家の執事たるもの、これぐらいできなくてどうします。」「あくまで執事ですから。」と穏やかに語る。

そんなセバスチャンとシエルは、
普通の主従関係ではない特別な関係で結ばれていた。


シエルは過去に両親を殺され、
自分も命を脅かされた過去を持っています。

その復讐を果たすのために、
自分の魂と引き換えにして、
セバスチャンと契約を結んでいます。

シエルが引き受けた事件の解決と合わせて、
両親を殺した犯人に近づいていく。

この2つの物語が並行して進んでいく、
ダークファンタジーです。

幼くて傲慢で「周りの人間は全て駒だ」と冷徹なシエルと、
シエルの魂を頂く日まで、彼を主として仕えるセバスチャン、
その他にぎやかな使用人たちなど。

楽しそうで、幸せも感じられる日々の裏で、
シエルに降りかかるのは、非常な現実。

1話1話すべてに見ごたえがあるわけではないけれど、
それぞれの事件の山場は面白いと思いました。

面白いと言っても、わくわくするような面白さではなく、
時にはショックで、時には衝撃的で、時には残虐で、

でも悲しさとか辛さとかとはまた違って…
復讐や死にまみれた物語なのに、残酷さだけを強く感じない。

セバスチャンのキャラのせいなのか、
全体的に上品な雰囲気は抜けないのです。

後味の悪さもあるし、やるせない展開もあるのに、
鬱な気持ちだけでは終わらない、不思議な作品でした。

何よりも24話で積み重ねた重みに見ごたえがあって、
最終話を観終えたあとの余韻に、満足感がありました。


● キャラクター
やはりこの作品において一番重要なのは、
セバスチャンというキャラでしょう。

あくまで執事な立ち位置の彼ですが、
彼がいなければ、シエルは何もできないだろうし、物語は成り立ちません。

とにかく完璧なイケメン執事、
命と引き換えの契約でも安い!と思う!笑

途中からは、なんだかもう、
何ができても驚かなくなってましたw

話し方も柔らかくて丁寧で、
彼から上品さを学べた気がします。笑

時には色気を武器にしちゃって…なギャップも良いですな(*´Д`)

でもシエルとのコンビが一番安心&安定します^^
二人にならBL展開も歓迎してしまいそうです(*´Д`)ハァハァ

次回予告ではcv.小野大輔さんの遊び心なのか、
しばしば崩壊するキャラも楽しかったですw


シエルのわがままっぷりは少し苦手でしたが、
己の魂に恥じない生き方を選択する、という芯の強さは好きでした。

復讐を果たすことが正しい生き方なのか、そこは肯定できませんが、

周りを利用してでも、己の誇りの為に心に決めたことをやり遂げようとする人間というのはそうそういないと思うので、セバスチャンが魅了されるのも納得です。

他にも個性豊かで魅力的なキャラが多いですね^^

葬儀屋のアンダーテイカーの狂ってる感じが好きでしたが、
その正体には「なんだ、それなら普通じゃないか」と、少し冷めてしまいましたw

…別に狂ってる人がタイプなわけではないけれどw

まっすぐでいい人すぎるアバーラインも好きだったんだけど…
あまりにも救われなさ過ぎて(´;ω;`)

アバーラインに関する展開だけは、
ちょっと鬱な感情が尾を引いています。

最終的にはセバスチャンが一番お気に入りです。


● 音楽
【 OP「モノクロのキス」/ シド 】

最初は1番の、途中からは2番の歌詞が使用されていました。

シドの曲は特別好きというわけではなく、
この曲も以前から聴いてはいましたが、

この作品の雰囲気とよく合っていて、
この作品の曲として聴くようになってから好きになりました^^


【 ED1「I'm ALIVE!」/ BECCA 】

初めは、この作品にしては明るすぎる曲のような気がしましたが、
聴いているうちに気にならなくなりました。

今では好きな曲です♪


【 ED2「Lacrimosa」/ Kalafina 】

明るい曲ではなくなり、OPの雰囲気に近い曲となりました。

でもこの曲も好きです^^

シエルとセバスチャンの、
静かなようで情熱的な関係によく似合っています。


● まとめ
シエルという少年の人生。
それは二つに分かれる。

ひとつは、両親と共に過ごした温かい日々。
もうひとつは、セバスチャンと共に過ごした戦いの日々。

原作とは展開が違うようですが、
アニメの方も24話分の重みと見ごたえを感じられました。

初めはセバスチャンのイケメンさと万能さを愛でる作品かと思ってたけど、
それだけではありませんでした。笑

最終話まで見て、よかったなと感じています^^

とてもきれいに完結したと思ったけれど、
2期もあるんですね。

ちらっとあらすじを見ましたが、
なんだか1期とは異なるお話のようなので、
引き続き楽しみたいと思います^^

投稿 : 2024/06/01
♥ : 15
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

“悪の貴族”と呼ばれる少年の側には,必ず一人の“執事”がいた。

これ昔からタイトルはよく聞いてたんですが,わたしがアニメを本格的に観だす前のアニメでなんか偏見もあってこれまで観ずにいました。
でも,「19世紀」「イギリス」「ヴィクトリア朝」「ダーク・ファンタジー」とわたしが好きな要素がぎゅぎゅっと詰まっているような作品で…。
もうアニメを観だした頃と違って偏見とかもあまりないし,これは観るより他ない!!ということで観てみました。
まぁ,こんな感じなので当然オリジナルの方も読んでません。

これ,2008年のアニメなんですね~。もう14年も前だ。
でも,いざ観てみるとそんなに前のアニメって感じはしなかったですね。
この位時間が経ってるアニメだと,作画が不安定だとか,キャラクターデザインに古さを感じたりすることもあるんですが…。
(最近のアニメはほんとに綺麗ですからね~。)
キャラクターデザインでいえば,大人のキャラクターはあまり好きじゃなかったんですが,シエルはけっこう好きでした。
原作のキャラクターデザインはどんな感じなのかなと思って調べてみたんですが,原作の方もアニメとほとんど同じで綺麗な絵だなぁと思いました。
なので,機会があれば原作の方も読んでみたいです。
なんか,さらっと調べたところけっこう原作とはストーリーに違いがあるようなのでそこも気になって…。

物語的には,観る前はダーク・ファンタジーという印象が強くて終始暗い感じで話が進んでいくのかなと思っていたんですが,観てみるとけっこうコメディ感もありますね。
セバスチャンの毒舌というのか慇懃無礼な発言がブラック・ユーモアな感じもあって…。
とことんダークな話も好きなんですが気分まで暗くなっちゃうので,わたしはこういうコメディ感好きでした。
そして,ダーク・ファンタジーをベースにしつつも事件を解決する的なミステリーで話が展開されます。
で,まぁ人が死んだりはします。―が,主人公であるセバスチャンがチートなのでシエルに関してはあまり心配することなく安心して観ていられました。
それ以外だと,イギリス好き,ヴィクトリア朝好きにはたまらないような単語がいっぱい出てきてにやにやしちゃいますね。
「ジャック・ザ・リッパー」とか「クリッパー」とか「1666年のロンドン大火」とかもう盛りだくさんです。
イギリスに限らずヨーロッパは歴史的な建築物が今もいきているので,エリザベスタワーやロンドン塔,タワーブリッジなど名所が出てくるところも見どころです。
カティーサークの船主像がきちんと作画してあるのもにやりとさせられます。
セバスチャンがシエルにサーブするお茶菓子も毎回美味しそう🍰
けど,マナーハウスじゃなくてカントリーハウスじゃないのって思ったけどどうなんだろう??

次はキャラクターについてレビューしていきます。
セバスチャンが主人公と上で書きましたが,わたしの中でセバスチャンはドラえもん的位置づけで,シエルはのび太くん。
なので,物語自体はシエル目線で進んでいきます。
{netabare}セバスチャンは悪魔なので,人間相手には無敵です。
一方,シエルは人間,それも両親とも亡くなっちゃってるみなしご。。
ただ,彼は貴族(それも伯爵!)なのでね。
経済的な部分では安心なのかな。
彼に関しては最初『伯爵と妖精』のエドガーと『それでも世界は美しい』のリビを足して2で割ったようなキャラクターだなと思いました。
地位と傲慢さ,子どもとは思えない知識・才能が備わっているところや冷徹な性格はリビと一緒だし,19世紀イギリスの伯爵という身分や火事で何もかもを失うという身の上はエドガーと一緒ですね。
ただ,上の2人と違うのはそもそもの物語がラブストーリーじゃないという点。
最初は,リビと重なって「くそ生意気なガキ」としか思ってなかったんですが,(セバスチャンは居るけど)メンタル的に支えとなるヒロインが居ない。
高慢な所が目につくけど,実際は孤独なんだろうなっていつの間にか好きになって応援していました。
―というのも,彼のセリフが薄っぺらくないんですよね。
シエルはセバスチャンに頼らなきゃいけない無力な子どもなのに,こういう性格にならなきゃ生きていけないんだなって悲哀を感じたし,だからこそ言葉に力があると思いました。{/netabare}
あとシエルは声が良いですね!!

主題歌はOPが1つとEDが2つあります。
わたしは「I'm ALIVE!」が好きでした。
曲調もアニメーションもダークな雰囲気を吹き飛ばしてくれるような感じですね。
めっちゃ洋楽っぽい!!って思ったらやっぱりアメリカの方が歌ってました♪

こちらの第1期は「えっ。結局どうなっちゃうの!?」って感じで終わってしまい,第2期もあるそうなので続きはそちらを楽しみにしています。
(そのうち観たいと思います。)

(観る前はシエルの名前を知らなかったのですがL'Arc〜en〜Cielのhydeさんがシエルのコスプレしてたのは“シエル”つながりだったのか!!と今頃悟りました(^-^;)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

19世紀英国史の影で暗躍する優雅な執事

【紹介】
19世紀のイギリスが舞台、坊ちゃんと執事の関係性がとても良い女性向けの雰囲気重視作品
重めのダークファンタジー×史実の裏側で暗躍する人々×女性向けコメディでとても話が面白い
久しぶりにちょっとだけ見たのですが、今見ても画期的な作品と思うし、当時女子の間でバズったのも必然だと思います

【感想】{netabare}
私は原作は読んだことないです

リアリティは全くなくていろいろ変なことは多いですが、細かいこと気にしなければとても素晴らしい作品です
ダークな世界観や設定・全体的に重くシリアスなシナリオと明るく軽いノリの使用人という明暗のバランスが良くメリハリがきいていて退屈しない良作

セバスチャンはじめ使用人のやり取りが面白くて、仲が良くワイワイ賑やかな雰囲気で女性向け作品に多い空気感です
BL作品ではないですが、それっぽい空気は結構出ててシエルが時々ヒロインみたいな立ち位置になります、女装もしますし
私がBL作品大丈夫になったのは黒執事を再放送で見て女装したシエルとセバスチャンの絵がいいなーと思ったのがきっかけでした、美少年の女装とイケメンの組み合わせアリって思ってしまったらだいぶハードルが下がった気がします
本格的なものにいきなり手を出すと拒否感強いでしょうから、これくらいで慣らしたほうがいいかもしれませんね

女性向け作品特有の馴れ合い空気が苦手な人にはきついかもですが、全体的にメインストーリーは暗いのでちょうどいいバランスかも
男性同士で仲良くしているのを見ているだけで虫唾が走る人以外は大丈夫だと思います

※二次創作でそういうものがいっぱい出ているので腐向け作品とみなされているのも仕方ないと思いますが、二次創作もBL作品ばかりではなく、わいわい仲良くしているだけの二次創作も多いです
ファンは絵がきれいな方が多く話の面白さもあって二次創作のレベルがとても高いので苦手じゃないなら是非読んでみてほしいです

世界観がカッコ良く、キャラクターの性格や雰囲気が良くて話が面白いのでとても好きな作品です
かなり昔の作品で映像自体は古いけどキャラデザや演出に古さを感じないです
むしろ映像が古いことで近代英国の薄暗くじめっとした雰囲気がよく出ていていい感じ

近代欧州の歴史背景や雰囲気で世界観はとても魅力的で掛け合いがスムーズ
主人公を取り巻くキャラクター同士の掛け合いと世界観と雰囲気とヴィジュアルに全振りした作品で、シナリオはかなり「あれ?」って思うところ多いけどキャラクターが好きになれれば楽しめると思います
{/netabare}
【キャラクター】
一番好きなのはセバスチャンですが、シナリオ的にはシエルが好きです
{netabare}
最初はシエルがあまり好きになれなくて、セバスチャンのカッコ良さにばかり注目してましたがそれは間違いでした
使用人たちの明るさでほのぼのした空気のお屋敷で親しみを持てるのですが、とても重くシリアスな現実が襲い掛かってきて
若くして戦うことを余儀なくされたシエルにだんだんひかれるようになった

シエルの女装が可愛くてお嬢様として振舞ってるシーンかなり好きです
女装キャラ苦手なんですが、シエルはアリというか素晴らしい!

なんといってもキャラクターが素晴らしいです、声優もとても良かったですし、建物の内装の緻密さや細かい服飾までこだわった服装がオシャレな雰囲気を作っていて素晴らしいです
とても個性的でカッコいいキャラクターが多く、掘り下げもきちんとされていて誰だっけ?ってならないしいらないキャラクターがいない
{/netabare}
【残念なところ】{netabare}
文明レベルは適当ですし、歴史も史実に忠実ではないので細かいことを気にする人は注意
19世紀の英国には存在しないものやこの時代よりかなり前にはすでに定着しているであろう文化が出てこないなど
その時代や世界観に合わないものは雰囲気を壊しかねないので出さないほうがいいと思います

良くも悪くもセバスチャンセバスチャンセバスチャン
シエルはとても苦しい状況に置かれてますがいくらなんでもセバスチャンに依存しすぎで、強気な態度にあまり説得力がない場面もあるのでもう一つくらい強みが欲しいところ

セバスチャンカッコいいけど戦闘シーンは変なことだらけです、気にしてはいけません
{/netabare}
【主題歌】
OPもEDも作品の雰囲気に合った良曲、とても素晴らしいです

投稿 : 2024/06/01
♥ : 20

72.5 2 Kalafinaで復讐なアニメランキング2位
黒執事Ⅱ(TVアニメ動画)

2010年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (805)
5001人が棚に入れました
19世紀後半、英国名門貴族トランシー家。若き当主アロイス・トランシーは生まれてまもなく攫われ行方不明となっていたが、漆黒の執事クロードとともに帰還した。クロードはアロイスに絶対的忠誠を誓っており、広大なトランシー邸の一切を切り盛りしていたが、名前以外はすべてが謎に包まれていた。
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

好敵手の出現で1期より見応えがあった

レビューを書くにあたって少し前に1期、2期を通して再視聴したが、
実は僕の場合、「黒執事」を初めて観たのは2期を放送中だった頃の3話からだった。
そのせいもあってか、2期のほうから先に好きになった作品なので、
原作ファンの方とは、だいぶ観方や感想が違っているかもしれない。

というのもこの2期、原作でも1期でも主役であった執事セバスチャンと
その主、シエルの対抗相手として、原作には無関係の執事・クロードと
その主・アロイスが登場し、物語もオリジナルだったからだ。
で、1期を観た上で思うのは、2期のほうがメリハリあって個人的には楽しめた。
でも2クールかけた1期でのセバスチャンの有能さと、シエルとの信頼関係や
細かな設定、人物関係を観ていないと、1クールで終わってしまう2期に
感情移入しにくくなるので、当然1期を観ておくことはオススメ。

ちなみに1期、2期ともシリーズ構成は岡田麿里。
監督、美術、色彩設定のスタッフは変更になったため、違いは随所に見られた。
どちらが良いとか悪いとかは人それぞれ好みもあると思うけれど、
全体的に観て、1期は日常系的な要素のほうが強く、コミカルなシーンも多かったが
2期は笑える部分をかなり抑えてバトル色を濃厚にし、心理描写はさらに細かく深くなっていた。

個人的にキャラデザはクロード&アロイスのほうが好みだったりして、
オリジナルの新キャラであるクロードを、とことん冷ややかな策士にし、
アロイスの傲慢さとしたたかさ、その裏にある孤独や、絶望感と哀しみを
彼の過去とともに描くことで、1期では感じづらかったシエルの正統派お坊ちゃんの
高貴さが浮き彫りになったし、セバスチャンのちょっと人間味のある愛情や甘さも見えて
奥行きを感じ、特に後半は感情移入しやすかった。

OSTのほうは1期同様、ストラヴィンスキーやマーラー、ヴィヴァルディや
ショパンなどのクラシックをモチーフにしたような曲や、
エニグマのようなグレゴリオ聖歌をベースにした曲がいいタイミングで挿入され、
クールな外見に似合わないド派手なアクションや、
エキセントリックな内面を垣間見せるクロードの動きや、
アロイスの歪んだ人間性を哀しげに見せることに成功していたと感じる。

一方、セバスチャンとシエルのほうは、1期の最終回のその直後がどうなったのか
中盤で描かれており、あぁなるほどそういうことだったのかと納得はできた。
そしてセバスチャンがなぜシエルに固執するのか、その理由もよくわかる。
また、それをクロードやメイドのハンナが察知して企てる数々の
エグい展開はなかなか見応えあったし、これでこそ{netabare}悪魔{/netabare}
と満足できた。

特に9話以降は緊迫感で張りつめ、目が離せなくなる。
{netabare} あくまでも悪魔は悪魔ということか。{/netabare}
ラストに対しては賛否分かれそうだが、僕的には2人のひとつの道筋として
そして、実際あるかないかわからないけど3期を期待できる結び方だったかなと。

それにしても、契約を遂行する忠実さは良しとして、悪魔だろうが人間だろうが天使だろうが
やはり女性の持つ母性愛に適うものはないのかもなぁと、しみじみ感じる2期だった。

ちなみに、あにこれでは別作品として登録はされていないが、
この「黒執事」6話あるOVAがすごく面白いのでオススメ。
不思議の国のアリスをモチーフにした物語があったり、ファントムハイブ家を案内してもらう形で
屋敷内のさまざまな場所のことがわかったり、『黒執事』をハリウッド映画に仕立て上げ
オールキャラが俳優としてインタビューに答えたりするのも笑える。
死神たちの裏側のこともちゃんと描かれてたりして、それも楽しいのだが
一番心に残ったのは、アロイスを主人公にした6話の「蜘蛛の意図」
愛情を渇望する彼の痛い心が、2期を観終えた後だとなおさらせつなく。
そして悪魔に関しては、「悪魔としての悦びは悪魔としての苦しみの先にしかない」
って意味がよくわかる話だった。
もちろん、1期2期を観てないと設定や関係がつかめないので観終わってからが前提。

声の出演は以下の通り。

セバスチャン・ミカエリス : 小野大輔
シエル・ファントムハイヴ :坂本真綾
フィニアン : 梶裕貴
メイリン : 加藤英美里
バルドロイ : 東地宏樹
タナカ : 藤村俊二
エリザベス・ミッドフォード : 田村ゆかり
劉 : 遊佐浩二
藍猫 : 矢作紗友里
ドルイット子爵 : 鈴木達央
アバーライン : 菅沼久義
葬儀屋 : 諏訪部順一
グレル・サトクリフ : 福山潤
ウィリアム・T・スピアーズ : 杉山紀彰
アロイス・トランシー : 水樹奈々
クロード・フォースタス : 櫻井孝宏
ハンナ・アナフェローズ :平野綾

投稿 : 2024/06/01
♥ : 34

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

復讐と陰謀に絡めとられた少年の、気高き魂の行方は。

つい先日、黒執事が連載15周年を迎えましたね♪
おめでとうございます^^

1期で物語が完結したと思っていましたが、
これは1期の続編となっています。

原作とは関係のないアニメオリジナルキャラクターが、
もう一人の主人公として新しく登場しています。

全12話です。


● ストーリー
イギリスの名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家。
その当主はシエル・ファントムハイヴ。

まだ幼い当主の彼には、
有能な執事、セバスチャン・ミカエリスがついている。

料理、掃除、身の回りの世話まで、
なんでも彼一人で一流にこなす。

完璧すぎる彼に周囲は驚き、
そんな周囲に対してセバスチャンは冷静に告げる。

「私はあくまで、執事ですから」
「ファントムハイヴ家の執事たる者、このくらいできなくてどうします?」


初めは1期の終わりとのつながりが見えず、
時系列や世界線がわからずに混乱しましたが、

とりあえず1期と同じ、
いつも通りなシエルとセバスチャンの日常。

たとえピンチのオンパレードでも、
セバスチャンにかかればなんともなし。

なんでもできすぎて、もう何ができても驚かないよ。
笑ってしまうけど。笑

ただ解決するだけじゃない。優雅に、気品よく。
伯爵家の執事なのですから♪

5話あたりで、
1期からのつながりとシエルの現状がはっきりと語られました。

2期の大きな特徴としては、トランシー伯爵家の当主であるアロイス・トランシーと、その執事であるクロード・フォースタスが登場します。

この二人はシエルとセバスチャンと同様の関係。
つまり、悪魔とその契約者です。

つらい過去を持つアロイスという人物について。
それに加え、シエルを巡るクロードとセバスチャンの争いが2期の見どころとなっています。

2期もお話はきれいにまとめられていますが、
私は1期の終わり方のほうが好きだったなあ。

2期の方がハッピーエンド色は強いので、
こちらの終わり方のほうが好きだという方がいるのもわかります。

2期の終わり方がセバスチャンにとって幸せなのか不幸なのか、
どちらで捉えるかでも、変わりそうですけどね。

1期で十分物語としてまとまりがあったのに、
わざわざ2期を作ったのは、やはり人気があったから?

オリジナルキャラを用意して、
物語にもそれなりに見ごたえはありましたが、

私の中では“おまけ続編”という印象でした。

1期の美しいラストを覆してまで製作されるべきものだったのかは、
やや疑問が残っています。


● キャラクター
1期に引き続き、
シエルとセバスチャンの関係は安定です。

偉そうでわがままなシエルの要求に、
完璧に答えていくあくま(悪魔)で執事なセバスチャン。

シエルの周囲の人たちも、
シエルを愛していて、温かいです。

対して、
2期で登場したアロイスがひどい…。

彼の生い立ちを知ると仕方がないと思うところはあるのですが、
彼の乱暴でわがままな性格がどうも好きになれませんでした。

彼と比べると、
シエルが優しい人に見えるから面白いですね。

普段はぶっきらぼうなシエルの優しさが、
はっきりと浮かび上がってくるw

新執事のクロードは眼鏡イケメンキャラでしたが、
私はセバスチャン派でした。

2期で天使なのは、
アロイスの弟のルカだけです。

ルカの笑顔、可愛すぎる…。


● 音楽
【 OP「SHIVER」/ the GazettE 】

1期と似た雰囲気のOP。

ヴィジュアル系バンドの曲、
この作品には合いますね^^


【 ED「Bird」/ 松下優也 】

OPとは反対に、
こちらは優しい曲。

包み込む愛を連想させます。

包み込まれているのは、
シエルなのか、アロイスなのか…。


【 特別ED「輝く空の静寂には」/ Kalafina 】

最終話など、山場となる回で使われたED。

私はこの曲が一番好きでした。


● まとめ
セバスチャンのイケメンさとありえない芸を楽しむのが、この作品のユニークポイントであり、

シエルの復讐に関わってくるところがシリアスポイント。

このユニークさとシリアスさのバランスがよいと思う作品ですが、
今回はシリアスの方にやや傾いていたように感じます。

もちろん、ユニークポイントもちゃんと描かれていて、
そこは楽しませてもらいました^^

原作を読んでいないのでアニメでのみの印象ですが、
この作品は1期で満足かも。

1期だけでは物足りない、もっと見たい!という方に向けた2期かなと思いました。

3期は2期とはつながりがないようなのですが、個人的にはその方が楽しめそうなので、そのうち3期も見てみたいと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 12

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ・・そして、OVAは最高だったのである・・

1期に引き続き~なんて思いきや、
1話を観てみると・・「シエル&セバスチャン」が出てこない(;゚Д゚)
いきなり始まる「謎の執事と、謎の少年」の話。
しかもグロ健在?むしろひどくなってない?
「謎の少年」がメイドを目潰し!(σ´∀`)σ(*□*;)ギャ
これは・・完走出来ないかもしれない・・
と思いきや、颯爽と登場セバスチャン♫
やはり主役は変わらない事に安心し視聴継続しちゃって下さい♪

そうなのです、2期からは新しく「トランシー家」が加わります!
なので1期の「裏家業」とは違い、
「トランシー家」との話が中心になります!
トランシー家の当主「アロイス」・(あくまで)執事「クロード」
は執拗に「シエル&セバスチャン」を狙います( >_[・]) ロックオン
それは何故か・・という所がみどころになって来るのではないかと・・
しかしっ、やはり私が一番に楽しみだったのは、
オカマ死神「グレル」とセバスチャンの掛け合いですかねw
いや~何度観ても飽きないわぁww
\(・д\)ソレハ(/д・)/オイトイテ(グレル再度登場しますので・・w)

そして、注目すべき所は普通なら見逃す「アイキャッチ」
それぞれのキャラがタロットカードを正位置と逆位置で持っているのが印象的でした☆
カードの意味=ストーリーになってるようで、
詳しい方はそこも注目してみたら面白いと思います!

そして次回予告が面白いですね(・∀・)ニヤニヤ
セバスチャンが甘ぁーい声で色々やってくれます!

今回の新キャラの声優、
アロイス役には「水樹奈々」サン。個人的には・・合ってなかった・・かな。
クロード役は「櫻井孝宏」サン。
「イエス ユア ハイネス」が某ギアスのスザクとかぶったのは私だけ?(´・ω`・)エッ?w

1期と違い12話完結で完全オリジナルストーリー
なるほど・・って感じでした。
何で作ったんだ?とまでは言いませんが、
無くても良かったとは言えます・・
3期があってもおかしくないような終わり方。
私はあの終わり方には満足行きませんでした!
「あくまで私の意見ですが、ね|ω・`)」

しかーし、ここで終わらないΣ(*´∀`*;)ドキッ!!
私はレンタルで視聴したのですが、
OVAが収録されていて、ある意味そっちの方が面白かったとも言えます♫

①「シエル イン ワンダーランド(前・後編)」
黒執事版「不思議の国のアリス」ですね~☆
アリス=シエル・衣装が可愛すぎるぅ~(*´ω`)
白ウサギ=セバスチャン・うさ耳(*´ω`)
チシャネコ=グレル・猫耳(*´ω`)
他キャラもたくさん登場!黒執事の注目どころ、衣装が可愛すぎる作品です♥

②「ファントムハイブ家へようこそ」
うぉーーーーーー(゚∀゚)これは自分がファントムハイブ家へ行った感覚になれます♪かわゆいエリザベスのお友達として☆
セバスチャンが手を取ってくれます、シエルが歓迎してくれます、
ソウマに「可愛い」と言われます・・しかし、私には「ある計画」があるんです・・・

③「MAKING OF KUROSHITSUJI2」
黒執事の裏側・・登場人物達が役者のように私服でインタビューをうけたり、NGシーンだったり、グレルが「スッピンを映さないで!」と怒ったり、TVショッピングだったり・・アニメなのに、アニメじゃない・・こういうの好きです(。◕‿◕。)

④「死神ウィルの物語」
事前情報あったので、ウキウキで視聴♪
ウィルとグレルが新人死神に死神派遣協会を案内しながら
2人の過去をご紹介☆
こんな初々しい時期があったのか(*´∀`)
そして、メガネ課?死神にはメガネが必須アイテムらしいです♫

⑤「蜘蛛の意図語」
・・トランシー家の人物紹介?
とりあえず、使用人の3つ子が笑えます( ゚∀゚)アハハッ

Ⅱに満足いかなくても、これを観ればきっと満足出来るはずですよー!黒執事ファンなら是非♥

投稿 : 2024/06/01
♥ : 26

74.8 3 Kalafinaで復讐なアニメランキング3位
空の境界 第三章 痛覚残留[ツウカクザンリュウ](アニメ映画)

2008年2月9日
★★★★★ 4.1 (733)
4252人が棚に入れました
1998年7月、複数の捻じ切られたような変死体が見つかるという、人間の仕業とは思えない猟奇殺人事件が発生する。そんな中、“伽藍の堂”の所長である蒼崎橙子に一件の依頼が飛び込んできた。依頼内容は事件の犯人の保護、あるいは殺害。犯人の名前は浅上藤乃。殺された被害者たちに陵辱されていた少女だった。式は藤乃の暴走を止めるために行動を始める。

声優・キャラクター
坂本真綾、鈴村健一、本田貴子、藤村歩、能登麻美子
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

自身と似て非なる能力者に式は何を思うのか

「空の境界」は奈須きのこによる、同人誌に掲載された長編伝奇小説である。全7章で構成され、本作は第三章「痛覚残留」が映像化された。「そらのきょうかい」でも「くうのきょうかい」でもなく、「からのきょうかい」なのでお間違えの無い様に。
略称は「らっきょ」。

「空の境界」は奈須きのこの小説だが、奈須きのこと武内崇の所属する同人サークル(現在は有限会社Noteのブランド)「TYPE MOON」の作品に「月姫」、「Fateシリーズ」などがあり、「空の境界」と世界観を共有している。奈須氏によると「微妙にズレた平行世界」とのこと。


劇場版「空の境界」は圧倒的な映像美、迫力満点の戦闘シーンと、難解且つ素晴らしい世界観を、原作小説を忠実に再現し映像化したufotableの力作である。
本作のメインテーマは「境界」である。相反する二つのものに関するメッセージが緻密に組み込まれている。
その各々に対する矛盾もまたテーマの一つだ。
奈須氏の命の重さ、禁忌を主題とした本作の完成度には脱帽するばかりである。
「生」と「死」、「殺人」と「殺戮」などについて考察するわけだが、テーマがこれであるから必然的にグロテスクな描写がある(しかも美しかったり)。
また、難解な言葉(辞書的意味では用いない)や、時系列のシャッフルにより、物語の理解はやや困難である。
しかし、この時系列シャッフルこそが「ミステリ」における叙述トッリクとして作用しているのである。
決して時系列の通りに見てはいけない(2度目からはご自由に)他にも、原作にはなかった「色分け」が行われている点も魅力的だ。式の服の色や、月の色なども見てみると楽しい。
全7章に渡って展開される両義式と黒桐幹也の関係も素晴らしい。
設定はここで説明するとつまらないので、作品を視聴することをお勧めしたい(丸投げであるが(笑))
副題のThe Garden of sinnersは直訳すると「罪人の庭」と言う意味。sinには(宗教・道徳上の)罪という意味があり、guiltの(法律上の)罪とは区別される。
Theの次のGardenが大文字であることから、これはギリシアの人生の目的を心の平静(アタラクシア)に見出した精神快楽主義のエピクロス学派を意味する。よってThe Garden of sinnersは快楽主義に溺れた道徳的罪人という意訳が適切ではないか。



第三章の本作は「空の境界」の時系列で、全7章のうち3番目にあたる作品だ。本作の視聴で第一章での伏線を回収し、第二章のその後を展開する。本章に登場する浅上藤乃は、巫条霧絵や両儀式と同じ能力者であり、彼女も悩みを抱えて生きてきた。彼女の思いや、彼女と両儀式の接触により生じる式の心情の変化、式の信条について知ることが出来る。
第一章俯瞰風景の直前の話であるので、式と幹也の関係を一章と比較してみるのも良い。
本章は一章・二章と比較して話が理解し易く、初めての視聴でも面白く感じられると思う。
本章のメインは浅上藤乃である。彼女の変化に細心の注意を払って観て欲しい。
副題の ever cry never life は直訳すると「いつも叫ぶ、決して命でない」となるが、この場合、「いつも叫んでいる、一度も生きたことは無い」といった訳だろうか。

考察←観る前に見ない様に。
{netabare}

時系列:3/8
1998年7月
両儀式:18歳 職業:高校生(サボりがち)
黒桐幹也:18歳 職業:大学中退 伽藍の堂に勤務

原作との相違:小
原作との尺の比 155P:57min=1:0.53(1分当たり2.72P)
(一番原作との尺の長さの比が合致していると判断される2章の比を基準:1とする)
(原作の頁数は講談社文庫を用いる)


・「無痛症」について
「無痛症」という病気は実際は無く、「先天的無汗症」という病気が之に該当する。
痛み・熱さ・冷たさなどを始めとした触覚全般に関する感覚が存在せず、体温調節が非常に困難である。
「痛覚」の定義として皮膚・粘膜・骨膜・内臓などに生じる感覚とあり、痛覚が無いということは五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の内、触覚が無いに等しい。
般若心経に「無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法」という文言がある。即ち「目・耳・鼻・舌・体・心といった感覚器官は無く、其々の器官に対応する対象[色(=物体)・音・香り・味・触覚・観念]も無い」という意味で、般若心経中では、龍樹(ナーガールジュナ)により完成させられた「空」の思想の説明に用いられている。(般若経自体は龍樹以前から存在する)
注目したいのは、「体が無ければ触覚も無い」という表現である。之即ち「触覚が無ければ体を感じることが出来ない」ということである。
浅上藤乃の場合はデビック症という延髄炎の一種で、感覚の麻痺を起こす病気で、失明の虞さえある。
藤乃は加えて鎮痛剤の一種「インドメタシン」の大量投与により、痛覚を人工的に失った。
彼女は常に自身の体を感じることが出来ず、虚ろな日々を過ごしていた。これは痛覚が「生の実感」を得るのに必要不可欠な要素であり、五感中で最高に重要な感覚であることを証明している。彼女は国語の読解力に欠け、他人の気持ちを「理解」することは出来ても、「実感」することが出来なかった。これも痛覚が無い為である。


・「殺人」と「殺戮」について
「殺人」とは、相手に抱く感情が、自己の容量を超えてしまったとき、それが極端になるとき人を殺してしまうこと。人が互いの尊厳と過去を秤にかけて、どちらかを消去した場合のみ、それは殺人となる。人を殺したという意味も罪も背負う。そして、人を殺すということは自分自身も殺すということである。
また、殺人は殺す側が「人」として相手を殺すことが必要で、死体が肉塊であったり、消し去られてしまったりする場合は、人としての尊厳が無く、「殺人」とは呼べない。
「殺戮」とは、殺された側は人だが、殺した方は人としての尊厳も意味もない。後の意味も罪も無い。自然災害に例えられる。殺戮は殺す相手を特定せず、殺される意味を持たない。
すなわち大義名分の無い殺人と言える。式は彼女の置かれた境遇から人一倍「殺人」に対する意識が強く、殺戮を酷く嫌う。藤乃の五人目以降の殺人は「殺戮」と定義されている。


・「浅上藤乃」について
{netabare}浅上藤乃の起源は「虚無」。荒耶宗蓮は両儀式と相反する能力者をつくる為、彼女の痛覚を復活させ、「死に接触して快楽する存在不適合者」にさせたのだ。
浅神家は混血の大敵である四家系「浅神」「巫浄」「両儀」「七夜」の一つであり、
浅上藤乃は浅神家の没落から母と共に浅上家に引き取られた。
彼女は、両儀式、巫条霧絵と同様に起源に「虚無」を持ち、特別な家系故に、特別な力を発現した。視界内の任意の場所に螺旋を作り、対象の強度に関係なく曲げる(捻る)能力、その名も「歪曲」(要するにサイコキネシス)。
浅神家は両儀家と異なり能力者の発現を忌み嫌う。浅上藤乃は幼少期に能力を発現し、能力の元である「歪曲の魔眼」を封じる為、父親によって強制的に感覚を奪われ、人為的に感覚を喪失してしまう(人工的無痛症)。
彼女は幼い頃「痛覚」を持っており、薬物の過剰投与によって「無痛症」になってしまった。
『第二章殺人考察(前)の考察「式と織」について』で述べた見解として、式は「抑圧」の感情を、織は「解放」の感情を受け持つと記述したが、浅上藤乃の場合は、
「抑圧」の感情により傷を耐え忍び、「解放」することを恐れた。
中学時代に幹也に「傷は耐えるものじゃない。痛みは訴えるものなんだよ」と言われていたが、これを実行出来ていたら、彼女はここまで苦しまずに済んだだろう。能力を取り戻した彼女は「痛み」(ストレス)の「解放」の手段として能力を発動し、他人の痛みを自身の痛みの代償とした。
腹部の虫垂炎が原因で「痛み」が止まず、痛みの発散の為に殺人を繰り替えす。
後に他人を殺すことに快楽を覚え、必要以上の能力の発動を行い、殺戮を始める。精神的苦痛から自身を陵辱した不良に対する復讐を行っていたが、いつの間にか無関係な他人を殺害するようになった。式は彼女が無関係な殺害を始めた時点で、彼女の殺害を決意した。
式に「おまえは血の味を知ったケダモノだ。人殺しを愉しんでいる」と指摘され、
「それは貴女でしょう。わたしは、愉しんでなんか、いない」という言葉は、痛みで思考が麻痺しながらも「まとも」でない自分を認めたくないという心情の表れである。

「太極図」で式が一つの肉体に二つの人格を持つ二重存在者なのに対し、彼女は万物の移り変わりを現す螺旋の方向性を視認出来る存在不適合者である。
荒耶宗蓮による恢復によって、バットで殴られた際の脊髄の炎症は治療され、不定期に痛覚が復活するようになった。
幼少期に封印されていた能力が復活したことに依り、その能力の威力は凄まじく、式を凌駕するものだった。更に後には透視能力(千里眼)をも発動出来るようになった。
彼女も巫条霧絵と同様に荒耶宗蓮の「根源の渦」、『 』への到達という最終目標の為に両儀式と接触する駒となった。
一章では述べなかったが、この似て非なる式・霧絵・藤乃の三者の共通点として、
「虚無」を起源とし、「根源の渦」、『 』への到達の鍵であること。三者とも「生」の実感が得られず、「今」を生きることに全力を注ぎ、快楽への傾倒が何時起きても可笑しくない不安定な存在であること。黒桐幹也という存在に、三者とも一種の憧れを抱いており、自分を受け入れてくれる唯一無二の存在として、彼を欲していることなどが挙げられる。この点に関しては五章矛盾螺旋や終章空の境界で改めて記述する。{/netabare}


・ほんの少し――ほんの少しだけ、おまえよりの殺人衝動――」について
{netabare}第六章「黒桐幹也」についてで述べるが、彼は「どこまでも普通で、誰よりも人を傷つけない」という起源を持っている。中立かつ博愛である彼は誰かを特別視することが出来ない。自分の親類と赤の他人とを同等に扱わなければならない。式が幹也に人殺しについての一般論を期待した(というか幹也には一般論しか言えないのを分かっていた為、自分を否定して欲しかったのである。)のは、この起源に起因する彼の性格によるものである。
社会的に罪を背負うことがなくとも、自責の念だけは残り、それは償うことの出来ない罪の意識として、当人を苦しめることになる。式が罪の意識は常識によるものだから、常識のない自分を野放しにしてよいのかと幹也に問うたとき、彼は「式の罪は、僕が代わりに背負ってやるよ」と回答した。
式の「かわりに一つだけ分かった。自分の生き方、自分が欲しいものが。とてもあやふやで危なっかしい物だけど、今はそれにすがっていくしかない。そのすがっていくものが、自分が思っているほど酷いものじゃなかったんだ。それが少しだけ嬉しい」という台詞は、式が生の実感を得る上で必要不可欠な殺人衝動が、浅上藤乃との戦闘で式の殺人衝動が思ったほど酷くなく、浅上藤乃を許せるものであったことから、一般論を期待していたけれど、人間味のあることを言ってくれた幹也に向けて、幹也の期待に応えられる殺人衝動という意味で言ったものである。式は織の消滅によって空いた伽藍洞の心を幹也で埋めることを決意し、織の幹也と幸せに生きるという夢を叶えるため、幹也と共に生きることを決意し、自分の生の実感を得る手段としての殺人衝動を幹也に認めてもらえるようなものにすることを決意した。因みにこの会話は第三章の最重要場面である。ここでの約束が七章で果たされることになる。
{/netabare}
・「傷跡」について
浅上藤乃をイメージして奈須きのこ監修の下、梶浦由記によって作詞・作曲された。中学時代に浅上藤乃は黒桐幹也と出会い、今回再び助けられた。
「ねえ、生きていると分かるほど抱きしめて」という歌詞や他の歌詞から、彼女の「生の実感」への渇望と、憧れの混じった恋について上手く纏められている。



・「痛覚残留」という作品について
幼い頃に「歪曲」という能力を発現し、封印されてしまった浅上藤乃。彼女は能力の封印の代償として「痛覚」を失ってしまう。痛覚を失うことで外部からの刺激・自らの身体の感覚を失い、「生の実感」をも失ってしまう。彼女は痛みを知らず、感情の抑揚も乏しく、鮮花に「誰にも憎まれない娘」と評されるほど温和で穏やかな性格となった。
無痛症の為、自身の身体の異常が検地出来ず、外出に厳しい礼園女学院生ながら、主治医に定期的に診て貰う為に外出をしていたところを不良に絡まれ、半年間に亙って性的暴行を受けたが、感覚が無く、感情に乏しい為ほとんど抵抗はしなかった。
しかし、金属バットで背中を強打されたことで脊髄に損傷を受け、不定期に感覚を取り戻すようになる。ある日感覚を取り戻している時間に不良のリーダーに腹部を刺され、自己を防衛する為に「歪曲」により湊啓太以外の4名を殺害してしまう。
実際には腹部を刺されるよりも能力の発動の方が早く、彼女は刺されていなかった。
彼女は腹部に虫垂炎(後に腹膜炎)を患い、その痛みは腹部の傷として彼女に認識される。
彼女は陵辱されたという精神的苦痛から、不良への復讐を行い、湊啓太を捜索する。他人の痛む様子を見ることで「生の実感」を得ることを覚え、他人の痛みで自身の痛みを補完しようとした。しかし、手段と目的が入れ替わり、殺人に快楽を覚えるようになり、殺すことで「生の実感」を得る為、殺戮を始めた。痛むが為に人を傷つけるのではなく、人を傷つける為に痛む傷。傷は人を殺す理由の為に永遠に消えない。
式は能力を発現している時の彼女を酷く嫌い、之を殺すことで排除しようとした。藤乃の能力「歪曲」により左腕を失うが、「直死の魔眼」の力により、「歪曲」の描く螺旋を殺すことに成功し、藤乃に勝った。
しかし、彼女が無痛症に戻ってしまったので式は殺害を止め、彼女に巣食う盲腸を殺すことで幕を閉じた。


・名言(原作より抜粋)

藤乃「――はい。とても・・・・・・とても痛いです。わたし、泣いてしまいそうで――泣いて、いいですか」

藤乃(お腹が痛い。見えない手に、私の中身が鷲摑みにされる不快感が。吐き気がする――いつもはそんなものはしない。めまいがする。――いつもは唐突に意識が落ちる。腕がしびれる。――いつもは目で見て確認する。 とても、痛い。――ああ、生きている。)

藤乃「・・・凶れ」

橙子「黒桐は間に合わなかったか。さて。嵐が来るのが先か、嵐が起こるのが先か。式ひとりでは返り討ちにあうかもしれないぞ。両儀」

幹也「馬鹿だな、君は。いいかい、傷は耐えるものじゃない。痛みは訴えるものなんだよ、藤乃ちゃん」

式「万物には全て綻びがある。人間は言うにおよばず、大気にも意志にも、時間にだってだ。始まりがあるのなら終わりがあるもの当然。オレの目はね、モノの死が視えるんだ。おまえと同じ特別製でさ。だから――生きているのなら、神様だって殺してみせる」

藤乃(やっと手に入れた痛覚なのに、今はこんなにも憎い。でも――ほんとうだ。痛いから――とても痛いから、死にたくないと渇望する。このまま消えるのはイヤ。もっと、生きて何かをしなくちゃいけないんだ。)

藤乃(もっと生きて、いたい。もっと話して、いたい。もっと思って、いたい。 もっと ここに いたい。)

式「痛かったら、痛いっていえばよかったんだ、おまえは」

幹也「・・・罰っていうのは、その人が勝手に背負うものなんだと思うんだ。その人が犯した罪に応じて、その人の価値観が自らに負わせる重荷。それが罰だ。
良識があればあるほど自身にかける罰は重くなる。常識の中に生きれば生きるほど、その罰は重くなる。浅上藤乃の罰はね、彼女が幸福に生きれば生きるほど重くて辛いものになる」

幹也「そっか。じゃあ仕方ない。式の罰は、僕が代わりに背負ってやるよ」

式「もうひとつ白状するとさ。・・・・・・オレも、今回ので罪を背負ったと思う。けど、かわりに一つだけ分かった。自分の生き方、自分が欲しいものが。とてもあやふやで危なっかしい物だけど、今はそれにすがっていくしかない。そのすがっていくものが、自分が思っているほど酷いものじゃなかったんだ。それが少しだけ嬉しい。ほんの少し――ほんの少しだけ、おまえよりの殺人衝動――」
{/netabare}

感想

本作は一章,二章と比較して分かり易い作品で、世界観がだんだんと理解出来てきた中で、式と似た境遇の人間・浅上藤乃と式を絡ませ、両者の違いや、式の信条などを視聴者に刻銘に印象付けさせ、五章矛盾螺旋への繋ぎとしての役割が十分に果たせている。
一章に比肩する式の戦闘シーンや空の境界随一のグロテスクな描写の多さが特徴的だった。
本章は幹也から式への想いの表現が多かったが、式から幹也への想いの表現が少なく、式が何を想っているのか想像することが出来た。もしかしたら藤乃の幹也への想いに嫉妬していたのかもしれない。
「努力してみる」などツンデレ気味の発言も含まれている。
ほんの少し――ほんの少しだけ、おまえよりの殺人衝動――」と言った式の覚醒後初めての笑顔は大変可愛い。
{netabare}
「凶れ(まがれ)」という言葉が式に向けて何度も発せられたが、あれは殺戮が彼女に「生の実感」を与える唯一の痛みへと変貌してしまったことを示しているのと同時に、自分の存在を否定するものの排除という「殺人考察(前)」における式に似た心情であると考える。
藤乃は可哀想な人生を歩んできたが、その中での幹也への恋と、「普通でありたい」と思う心が彼女の心の糧となったと思う。最期に式によって殺されなかったことは、彼女にとっても、式にとっても良いことだった。無痛症は治らないだろうが、盲腸が治って良かった。
最初と最後に出てきた「とても・・・とても痛いです。わたし泣いてしまいそうで――泣いて、いいですか」という言葉が藤乃の本音だろう。
最後に痛覚がある状態で盲腸の痛みを実感し、「痛い」から「死にたくない」と「渇望」する。という強い思いが湧き出てきた。
もっと生きて、いたい。
もっと話して、いたい。
もっと思って、いたい。
もっと ここに いたい。
という「痛い」=「居たい」という強い意志が「痛覚」があることで具現した。
同時に自分が愉しんでいたモノの正体に対する痛み、自分が犯した罪、自分が流した血の意味を「実感」した。
藤乃「痛みは耐えるものじゃなくて。誰かに愛してと訴えるものなんだって、あのひとは教えてくれたんだ」
とあり、「痛み」の正体を知るに至った。
式が言った「痛かったら、痛いっていえばよかったんだ、おまえは」という言葉のとおり、もっとはやく「痛い」と言えていればと思う。
{/netabare}

この三章は、一章,二章を視聴した上で「両儀式」という人物について考えさせる作品だった。
浅上藤乃という式に似た殺人鬼の登場。彼女も特別な家系の生まれで、それ故に不幸な人生を歩んでしまう。本章は藤乃への同情を誘うとともに、式の心の揺らぎが見られる。
一章と二章を繋ぐ三章。そして二章と三章を繋ぐ四章へと話は進んでゆく。

本作は考察のし甲斐があり、非常に面白い。また現代人への処方箋のような役割を果たし、私達にカタルシスを与える。

私は全章視聴後原作を購読したが、読み応えがあって大変面白い。アニメを観た人は補足の為にも、お勧めしたい。
未視聴の方は、是非挑戦していただきたい作品である。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 48
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

強制された抑圧と、境界を越えた解放

原作未読。
全8章からなる物語の3章目。約60分。

「空の境界」全章に共通する項目は、第1章のレビューをご覧ください。
→ http://www.anikore.jp/review/450724/

1章より前、2章より後の話。
ストーリーは比較的独立しており、この話だけ観てもわかりやすい構成になっています。

この回では少し笑いの要素が入ってきます。
また、黒桐幹也の妹、黒桐鮮花の出番があります。
彼女は清涼剤みたいな存在で、話に柔らかみをもたせてくれています。

ただし、残虐性にも拍車がかかっています。
人間の負の面を強く表現している印象です。
残酷な話と軽いテンポの会話、その組み合わせで、他の章との重みのバランスを取っているのでしょう。

映像面の見所は、嵐の中での戦い。
水を切るように動く表現は、実にスタイリッシュです。

EDテーマは「傷跡」。


【3章「痛覚残留」の考察】
{netabare}
過去に、黒桐幹也と浅神藤乃は出会っています。

幹也「いいかい?傷は耐えるものじゃない。痛みは訴えるものなんだよ」

これは、私たちの日常生活にも繋がってくる発言です。
「抑圧」=「傷を耐える」という行為は、周りに危害を加えないと同時に、自分の中にストレスどんどんため込んでしまいます。
そして、たまりにたまったストレスは、ふとしたきっかけで爆発してしまう。
それを防ぐためには、ストレスを定期的に「解放」=「痛みを訴えることを」してやらなければならない。

浅神藤乃は、精神的にはごく普通の人間です。
しかし、痛みを訴える方法が「能力の発動」という特殊なケースだったため、「人工的に感覚を抑える」という方法で、強制的に抑圧され続けてきたわけです。


そして、金属バット殴られた衝撃で、一時的に復活した痛み。
むりやりイスに縛り付けられ、勉強させられ続けてきた人のロープが、ふいにほどけたと考えると分かりやすいと思います。

自分のやりたいようにできない、つまり「生」を実感できない「空っぽの」状態から解放される。
やっとストレスの発散が可能になりました。
ただし藤乃は、痛みを感じている間はストレスの解放が終わっていない、つまり、痛みを訴え続けなければならないと解釈しています。
だから、殺しに対して「私は楽しんでなんかいません!」と藤乃は言ったんでしょう。

しかし、抑圧が解放されることに、徐々に喜びを覚え始めた藤乃。
必要最小限の解放ではなく、必要以上の解放へと、その「境界」をまたいでしまった。
それが、「殺人」という行為を超え、無関係な人々を巻き込む「殺戮」へと移行し、式の怒りを買ってしまうことになったわけですね。

しかも、実際はナイフで刺された痛みではなく、もともと持っていた病気による痛みだった。
そのため、永遠にストレスの発散が終わることがないわけです。

さんざんたまっていた「ストレス」が一気に解放されたわけですから、藤乃はあれだけの力を発揮しました。
そして同時に、余命いくばくもない藤乃。

この状況を打開する方法が、式にしかできない「病気を殺す」という行為だったのでしょう。

この浅神藤乃が、2章のラストで語られた「死に接触して快楽する存在不適合者」に相当します。


【全て見終わった人へ】
{netabare}
4章で分かりますが、痛覚が戻ったのは、バットで殴られたのがきっかけではないんですね。
荒耶宗蓮の仕業だった。


7章でも触れられていますが、

殺人=相手に抱く感情が、自己の容量を超えてしまったとき、それが極端になるとき人を殺す。人が互いの尊厳と過去を秤にかけて、どちらかを消去した場合のみ、それは殺人となる。人を殺したという意味も罪も背負う。そして、人を殺すということは自分自身も殺すということ。
殺戮=殺された側は人だが、殺した方は人としての尊厳も意味もない。自然災害に例えられる。

と区別されています。
この違いを強調しているため、藤乃に危害を及ぼした人以外への殺害行為を「殺戮」と呼んで、式は嫌っていたわけですね。


なお、劇中で橙子が式に渡したカードキーの名義は「荒耶宗蓮」となっています。
橙子「名義は古い知人のものを拝借したがね」
ここで、初めて名前が出てきています。

また、カードキーの色は、蒼、橙、ピンクの3色。
「式、織、両儀式」の着ている3種類の着物の色と被ります。
また、
橙子「式一人では返り討ちに遭うかもしれんぞ、両儀」
すでに橙子は、式の2種類の人格に加え、3つ目の人格に気付いていたんですね。

{/netabare}

{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 34
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シェリー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

おススメできないです。

第三章です。

今回は一章と同じく不可思議な事件を解きます。

痛みを知らない少女、浅上藤乃のお話。

演出や音楽は相変わらずに良かったですのが
とってもとっても嫌な気分になる映画でした。
浅上藤乃は痛みを知らない少女。
また性格も流れに身を任せるような女の子でして
そんな彼女を面白がってひどいことをする不良達がいるわけです。
まあいわば凌辱ですよ。
そのひどい描写があってのストーリー構成なのでしょうが
あれはもう最悪です。本当に観てて嫌だった。
だから二度と観たくないです。
一章から順に二章、さあこれから三章だという人で
こういう描写が苦手なら控えた方がいいかもしれません。
別にこの回を観なくても話は十分に理解できるので大丈夫です。

まあそんなとこかな。



{netabare}

浅上藤乃が意志とは無関係であっても殺戮を好んでしまい
父親から勘当され、1人孤独に痛み苦しむ。
そして、逃れようのなく、無意味な戦いを式と交える。

こうみるととても面白かったように思えます。
戦いが決まって橋で相まみえるまですごくドキドキしました。

式は浅上を生かしましたね。
僕は殺すものだと思っていました。
もう手遅れなはずなのに。
確かに死んでしまってはあまりに救いがないですね。
あのあと浅上はどうなるんだろう。気になります。








以下は非常に個人的なお話です。



けれどあのかわいそうな描写は本当に嫌でした。
弱いものへの暴力は最低です。
一般的にみても、特に男性から女性への力の行使は
どういう場面であれいいものとしては映りませんね。
でも僕はこれに対し賛成の立場でありながら
この先僕は女性に対し絶対に暴力を振るわないと
果たして言い切れるのかということを随分前から自問自答しています。
というよりもし自分が怒りと憎しみから
「ああ、僕はこいつを殴らなければならない」
と向かいあう相手に思わなければならなくなることが怖いです。
きっかけは村上春樹さんがネットで募集した質問に対して
答えるというものでその中に
「彼氏から暴力を振るわれて大変。
 けどもうしないって約束してくれました。信用できますか?」
みたいななんとも欠陥の多い質問だったのですが
それに対し村上さんは
「男性が女性に対して暴力を振るうことは決していけない。
 けれど次振るわれたときには別れなさいと。
 もう彼は今後約束守ることはないでしょう。」
みたいなことを答えていました。
その時に僕もうんうんと思ったのですが
それについて真剣に考えてみると、
もし自分の許容を超えた裏切りやなにかをされたときに、
男としてまた1人の人間として本当に踏みとどまることができるだろうかと。
極端な例ですが朝起きたときに
「あら、おはよう。今日はいい天気よ。
 そうそう、あなたが寝ている間にあなたの右目と左腕売ってしまったの。
 大丈夫、心配しないで。
 あなたはいままで通りに目が見えて、耳が聞こえて、
 その他の五感も正常よ。
 言葉も話せるし、抽象的な思考もできる。
 物も五本の指で掴めるし、足は二本とも残しておいたから
 直立二足歩行の動物としてとても健全だわ。」
なんてことになったら(笑)
でもなんにしても男性が女性に対して
むきになってる姿ほど醜いものはありませんよね。
これは本当にそう思います。


僕は浅上藤乃への暴力的な描写には断固反対です。
これを流してはいけないよ。



{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 9
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