自主制作TVアニメ動画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の自主制作成分を投票してランキングにしました!
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早速見ていきましょう!

62.9 1 自主制作アニメランキング1位
rain town [レインタウン](TVアニメ動画)

2010年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (166)
813人が棚に入れました
2010年度に京都精華大学マンガ学部アニメーション学科の学生が卒業制作として作った約10分の短編アニメ。その街はいつからか雨がやまなくなって人々は郊外や高台に移り住んでいった。「rain town」。人々の記憶の底に沈む 忘れられた“雨の街”へ時折、誰かが迷い込むという…。

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

批判します。

「あにこれ」内に批判のレビューが1つもないこの作品。そんな馬鹿なと思ってもないものはない。
おおかたの感想の傾向は、雰囲気が良いってこと、ノスタルジアチックであること、
そしてこの作品を観て感じることはあなた次第だと、抽象的作品の性質の良さを褒めている3つでした。

あらすじは大体このような内容でした。
“雨の止まない街「rain town」では人々は逃げるように、高台へと逃げ暮らしていました。
ある日、小さな女の子が出かけて行きました。黄色いあまがっぱを着た幼い子です。母親は心配そうに見守ります。
女の子が歩いていると、住宅に囲まれたその路地からいつもと何か違うようなものを感じました。
不思議そうに覗き、そのまま入っていきました。「rain town」では、時折”雨の街”へ迷い込む者がいると言います。
その子がまさにそうでした。
そこで女の子はロボットを見つけます。棒人間の体に鉢植えを載せたような、錆びれたロボットです。
2人は街を歩き回ります。廃墟となった街には誰もいません。
電車も車さえも通っていません。電柱は自分の役目を忘れたかのように立っています。
突然、なんの予兆もなくロボットは崩れてバラバラになってしまいました。女の子は急いでおばあちゃんを呼んできます。
おばあちゃんはそのロボットを見て驚きました。実はそのロボット、昔おばあちゃんと仲の良かったロボットだったのです。
2人はそのロボットを持って帰りました。おしまい。”そんなお話。

作品の雰囲気の良さは、数々の賞やたくさんの人の評価がそれを証明しています。
やさしく降る雨の中、廃墟となった街の様子が流れていく。
家や電車など、使いものにならなくなった街そのものの退廃的な雰囲気に観る者はどんどん呑み込まれていく。
少女のイノセントな心にはそれが何なのかわからないところからこそ、僕らの方はますます夢中になる。
声はなく、少女とロボットの足音に、雨の音。淡々と鳴り続くそれらは、雰囲気作りに力を添えている。
画面に広がっている青の世界は、哀しみも慈しみも愛をも包んでいる。
すでに過ぎ去ってしまった多くのものに―少女ではなく、また少女を通して―僕たちが触れ、感じ、思いを寄せ、それが何であるかを考える作品。

初めの2分くらいは割といいんじゃないかな、なんて思いながら観ているけれどだんだんと飽きてきます。
ロボットの話の挿入の仕方で冷めてしまうところもあるし、BGMもだんだんと邪魔になってくるのもあるのだけれど、
それ以上に絵、それ自体にも声のない音だけのアニメーションとしては、魅力に欠けているのではないかと思います。
なぜならば、雨の音と廃墟の街で心地のいい退廃的な雰囲気こそは出てはいるけれど、
これらにはメッセージ性があまり見受けられません。そこに、皮肉や渇望やシニカルな表現があったかというと、ありません。
また、廃墟の街並みをそのまま映しているかというと、作品の方向性からみてそれは違う。
この作品は、不思議な”雨の街”に迷い込むと銘を打っています。
それらの絵はどちらかというと、感覚的に状況や物が選ばれ、描かれたのではないかと感じました。
つまり、パっと見てなんとなく良いものです。だから、込められているものがいまいちないな、という印象を受けました。
この手の作品であれば、ある程度その絵で紡いでいくのであれば、1シーンで何か伝えなければなりません。
そこに、観ていて心をグッと掴まれるような、強いなにかを投影しなければなりません。
これでは「感じの良い風景」止まりになってしまっています。表面的なんです。
「ああ、なんか良い風景だね。俺こういうの好きだよ。」と観る人に言わせるだけで、もうひとつ上に行けていない。
作品の根幹となる部分がこれでは、もしくはこう感じてしまった僕には、この話を面白く感じることはできませんでした。

もうひとつ。
冒頭の表記だと、「人々の記憶の底に沈む 忘れられた雨の街へ 時折、誰かが迷い込むという・・」なんて
言い方をするもんだから、普通の街からいつの間にか異世界に迷い込む話だと思ったら、
ただ単にお城と城下町みたいな高低差の関係にある下の街に行くことだったんですね。
だったらこども以外の人間がどうやったら迷い込むのだろう。
それに、過去や未来のつながりもあり、作品自体は立体的な構造を持っているけれど、
街の描写に関しては平面的な現実を扱うのだから、こういう言い方はないんじゃないかな。
これじゃあ扇情的なコピーと変わらないですし、内容とズレてしまっています。
「時折、誰かが迷い込む」じゃなくて、これはたまたまこどもが好奇心ゆえに入っちゃっただけでしょう。
実際に、ロボットが壊れてもパニックにならずに、ちゃんと自分ひとりでおばあちゃんの家に行っているではありませんか。
それを「人々の記憶の底に沈む 忘れられた雨の街へ」なんて、ピーターパン症候群じゃないんだからw
機関は存在しません。写輪眼も、第3の眼も開きません。左手も疼きませんし、竜の巣もありません。
それはちょっと大きな積乱雲ですw

僕にとってはこの作品は雰囲気だけのからっぽな作品です。
人それぞれに感じることがあるほど広がりのある話ではないですし、何度も観るような種類のものでもありませんでした。

けれど、どの作品を愛し、アニメに、またはアニメだけにどのくらいのものを求めるかは人それぞれであり、
好みの問題まで否定するつもりはさらさらありません。でも、皆が皆口を揃えていうほど良いのかな、と首を傾げたくなります。
僕が1957年アタマーノフ監督の『鉛の兵隊』がほんとうに素晴らしい!と、言ってどれくらいの人が頷いてくれるのでしょう。
ジブリが出している『雪の女王』に収録されている作品なのですが。



最後に、解釈について僕の見解を書いて終わろうと思います。
そんなに、というかほとんど価値のないようなものかもしれないけど。

おそらくではあるが、この作品は「高度資本主義経済へ警鐘を鳴らした作品」ではないかと、思う。
ラストのシーンで、かつて繁栄していた街並みが映されるのを見ると、この街はそのせいで滅んだのではないかと思う。
雨は、その崩壊の象徴であり、メタファーとして降り注ぐ。いつまでも、その余波は街を傷つけ、人々の住処を削り取るのだ。

ラスト間際のシーンで突然ロボットは崩れ落ちる。鉢植えのような形をしたロボットの頭は路地中からのアングルで映される。
街の景色は昔の様子を映し出す。車が走り、人がまだそこに住んでいた時代を。同じアングルで今の街の様子に戻る。
ロボットはこちらを見ている。このロボットの目線こそが本作の一番伝えたかったメッセージではないかと思う。
そのロボットが観ている目線の先には、画面を通して僕らがいるのだから。
その昔の風景は僕らの世界のことを指している。いずれそうなるであろう世界が、今ロボットが倒れている世界ということだ。
崩壊の影が僕らの元にも忍び寄ってきていることを暗示している。自滅までそう長くはないと。

そこには、おばあさんが小さい頃にロボットを捨てたように、”物への愛情が失われている”こともメッセージとしてある。
(あえて言うならば、ラストのシーンで少女がこちらを見つめた数秒間はこれを語っているかもしれない。)
なぜならば、今の僕らの世界では、物は買って捨ててまた買ってというスタンスが基本であり、
それで経済が回っている社会なのだから。ゆえに、われわれは「消費者」と呼ばれる。
けれど、おばあちゃんは幼い頃にどうしても連れてはいけなかったロボットと再び出会たことを喜び、彼を持ち帰る。
そんなおばあちゃんの姿勢を見て、少女は学ぶ。
冒頭のシーンで、高台の街の家から、屋内に入り、おばあちゃんがたくさんの物に囲まれた部屋を映す。
特徴的な黄色の服は間違いなく、かつて”雨の街”をさまよった少女であることを意味する。
そう、あれから少女は物を大切にしてきた。いささか極端なほどに物が溢れているが、それは愛の大きさを物語っている。
かつて少女であった老婆は、失われた価値を今もなお、あの部屋の奥で独り守り続けている。
しかし、雨はまだ降り続けたままだ。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 17

h02dvvd さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「感じる」アート

【萌え】☆☆☆☆☆ 【シリアス】★☆☆☆☆
【ヒューマンドラマ】★★☆☆☆☆ 【アカデミック】☆☆☆☆☆
【ギャグ】☆☆☆☆☆ 【演出】★★★★★

 アニメは全部アートだとも言えるんですが。あにこれでサムネ(?)に惹かれて観た作品。

 一言で言えば「雨の降る廃都を旅する物語」といったところですが、まあ美しいこと。売上納期等々の事情を気にする必要のない個人製作でだからこそできる映像美でしょう。自らの廃墟好き補正は多少入っていると思いますが、それを差し引いても雰囲気の良さはトップクラスだと思います。

 雰囲気アニメですので雰囲気が楽しめないと面白くないでしょう。物語の方をどう解釈するかについてはまだ自分の中で見解がまとまってないのですが、雰囲気がツボらない人は見解どうこうの前に脱落しそう。

 「アートは何か」というような芸術論をおっ始めるきは全く無いので軽く流しますが、タイトルでは「受動的ではなく能動的に鑑賞されるもの」と定義したつもりです。「観る」より「感じる」としたいのもそのためで、ただ漫然と見てるだけでは眠くなるのでは?

-----以下、この作品とはあまり関係がない小言-----

 声優の評価を星いくつにすれば良いのかということで(この作品には声の出演は一切ありません)他の方のレビューをざーっと見てみましたが、おおかた無難に星3つということで、あにこれの評価方式にはやはり少々問題があるのではーと思った次第。つまりアニメを評価する際の評価軸はそれでよいのかというお話。

 現状の評価軸を素直に受け取るのであれば「物語が良くキャラも立っていて作画・音楽もマッチしている。声優も最高!」という優等生アニメがランキング上位に躍り出ることになります。それはそれでアニメ初心者には良いと思うのですが、人に大きく影響を与えるのは優等生タイプばかりではないでしょう。作画がひどくても心に響く作品はあるだろうし、逆も然り、です。おまけにアニメ初心者のひよっこがわざわざこのようなサイトを参照しに来るのかどうかというのも非常に怪しい。

 「声優」に至っては、アニメの必要条件ではないと思うんですよ、これ。(「物語」「音楽」「キャラ」も必要条件ではないかもしれませんが、そこまでの前衛的アニメには出会ったことがないので断言は保留。)他の軸の評価が同じだとすると、現状は「声優がないアニメ」<「声優がいいアニメ」ということになります。これは少々おかしいと言わざるを得ません。

 声優という観点からアニメを評価すること自体は悪いことだとは思いません。それは「作画」「音楽」「キャラ」ひいては「物語」においても同じだと思います。ただ、全てのアニメにその評価軸を強要するのはおかしい・理にかなっていないのです。思うに、今までの評価軸は残した上で、新たに「満足度」のような何かを導入した上で総合得点はその満足度から算出した方がよいのではないでしょうか。競合の名前をここで出すのは憚られるので名前までは出しませんが、他のアニメ評価サイトはアニメを恣意的にいくつかのファクターに分解した上での点数ではなく、単純に「あなたはどれくらい気に入ったか」という一つの軸に基づいた点数を総合得点としておおかた採用しています。あにこれはUIの分かりやすさが随一なのでこのまま使い続けますけれども。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8
ネタバレ

とろろ418 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「あなたの雨は止みましたか?」

一番の評価点は個人製作だということでしょうね。
10分程度の作品ではありますが、一人でこれだけのクオリティは本当に凄い。
良い作品です。未視聴の方は是非。

台詞が一切ないので、人によって解釈は変わりやすいかもしれません。
とりあえず、私なりの解釈を記述してみます。→{netabare}
①昔、おばあちゃんはこの町に迷い込んだ。(冒頭の文章から)
 そこで、あのロボットと友達になり、たくさん遊んだ後にお別れした。
 おばあちゃんとの別れを悲しむロボットの気持ちに呼応するように町では雨が降るようになった。
 (おばあちゃんと遊んでいた時は、晴れていたことから)
 数十年後、おばあちゃんの孫が同じように町に迷い込み、ロボットと出逢った。
 ロボットは雨で老朽化していたため、簡単に壊れてしまった。
 助けを呼びに来た孫に連れられておばあちゃんはロボットとの再会を果たした。

②おばあちゃんとの別れのシーンで雨が降っていたのを考えると、住んでいた可能性もありますよね。
 引っ越しの原因が雨が降り続いたことで、ロボットとは関係ない。最後まで雨が止まなかったのはそのため。

筋は②の方が通っているんですけど、個人的には①の方が好きなので、敢えてそちらを押します。

EDに出ていた他のロボット二体については、おそらく孫が
水溜りに落ちた時に見たのが彼らでしょうね。
いつ、どうしてそうなったのかは謎ですが……。
{/netabare}

そして、ここからは私が多少気になったこと→{netabare}
①登場人物について
  母親とおばあちゃんは同一人物として処理した方が良かったと思います。
  態々別の人物にしたということは何かしら意味があったのかもしれませんが、私にはわかりませんでしたので。
  また、おばあちゃんよりは母親の方が物語としての整合性は高い気がしました。(ここは好みの問題ですね)
②雨について
  先の解釈で述べているように、雨とロボットの気持ちがリンクしてて欲しいので敢えて突っ込みます。
  最後は雨が上がって欲しかった。
③冒頭の文章
  凄く細かいですけど、少し読みにくかったです。
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 8

56.8 2 自主制作アニメランキング2位
空を見上げる少女の瞳に映る世界(TVアニメ動画)

2009年冬アニメ
★★★★☆ 3.3 (106)
667人が棚に入れました
『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』の制作で知られる京都アニメーションが、オリジナル企画を立ち上げ、制作・販売を行う『京アニプロジェクト』の第1弾アニメ。 主人公の少女ユメミには、特別な力があった。それは、空に浮かんでいる不思議な島々が見えること。しかし、友人たちは誰一人としてその島を見ることはできなかった。そんなある日、突然、赤い髪をした少年がユメミの前に現れる。彼の名前はムント。彼は、ユメミが見ていた天上世界の一国、魔導国から来たという。バランスを崩しつつある“天上界”と“地上界”の危機を救うには、ユメミの力が必要だというムント。あまりの突然のことにユメミは戸惑うが、世界の危機を救うべく立ち上がるのだった。

声優・キャラクター
相沢舞、小野大輔、堀川千華、今野宏美、高橋伸也、水原薫、平松広和、井上喜久子、内田彩、稲田徹、若本規夫、白石稔、田中涼子、松元惠、土谷麻貴、斎藤楓子、遠藤広之

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

初のオリジナルは、京アニさんの原点を感じる作品でした。

京アニさんはAIR、Kanon、CLANNADなどKey原作のゲーム作品の制作を経て、この作品…初のオリジナル作品に辿り着きました。

木上益治さんの監督2作目でもあるこの作品は、2009年の冬アニメとして放送されたそうです。
私が本格的にアニメの視聴を始める3年も前の作品…今から10年も前の作品であるにも関わらず、あまり10年のギャップが感じられないんです。

勿論、今の京アニさんの技術やクオリティと比較するつもりはありません。
機材やコンピューターも進歩していますし、何よりこれまで地道に培ってきた努力と技術の厚みが違いますから…

それに…演出もきっと今と10年前では天地ほどの差があるのでしょうから、キャラの服装などには若干の古さは感じるものの違和感のあるレベルではありません。

何より、純粋にアニメーションとして作品を捉えてみると、京アニの原点を感じさせる作品と言えると思います。
最初に気付いたのは何気ない日常の1シーン…具体的にどんなシーンだったかは定かではありませんが、道端に咲いている花や草木にハッと息を呑みました。
ありふれる「生」の躍動が描かれているヴァイオレト・エヴァーガーデンの1シーン…
風になびく植物たちの動きが、この作品の1シーンとオーバーラップしたからです。

それに髪の毛や洋服が風になびく様だってみんなバラバラですし、視線を引いたカットにおける周囲の人の動きなどにも余念がありません。

勿論、京アニさんの歩んできた10年間の歳月があるので全く同じという訳ではありません。
私が言いたかったのは、こういう日常の1シーンに「京アニさんらしさ」という刷り込みが10年前から行われていたこと…これって凄いことだと思うんです。

だから、ユーフォやヴァイオレットちゃんのクオリティが鬼懸かっているのは、ある意味当然なんだと思います。
だって、こういう努力や研鑽を積み重ねてきた結果なんですから…


他の人とは違う空が見える中学生ユメミのもとに、天上世界の魔道王を名乗るムントという男が現れ、2つの世界を救えと言われる。


あらすじとしては、少し雑な気もしますがwiki先生のあらすじを引用させて頂きました。
京アニさんの公式HPにもこの作品のストーリーは記載されているのですが、ネタバレ要素が含まれているので…

これまでの実績からか、オリジナル作品ですがSEなどに多少のゲームっぽさが感じられたり、企画に八田陽子さんのお名前があったりと、今とは異なる面が見受けられますが、これら全てを京アニさんの歴史と額面通り受け取ってよいんだと思います。

何度もハッと息を呑む作品…とは、きっとこういう作品の事を言うんだと思います。
やっぱり木上益治さんは物凄い方なんですね。
この作品で木上さんは監督・シリーズ構成・脚本・絵コンテ・演出・OP絵コンテ・OP演出を担当されたそうです。
木上さんの魂の込められた作品と言っても過言では無いと思います。

オープニングテーマは、eufoniusさんの「アネモイ」
エンディングテーマは、Ceuiさんの「光と闇と時の果て」と「心の翼」

1クール全9話の物語でした。
確かに今の京アニさんの作風とは少し違いますし、思い切りファンタジー寄りの作品も最近の京アニさんの作品ではあまりお目にかかれないです。
でも京アニさんを知る上で、絶対に視聴の欠かせない作品だと思いました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

キャラに萌えられて泣ければいい…という京アニの原点ではあります。

 ついにdアニで配信開始して見られました。オリジナルは2003年以降のOVAで、その後TV化されたらしいですね。京アニ作品なので見たかったものです。

 壮大な過去、舞台設定のわりに話はこじんまりしています。要するにヒロインが世界を救う気になればいい話です。少女に2つの世界の未来がかかっているみたいな世界系の要素に見えますが、世界を救うと失われるものがない気がしますので、厳密には世界系ではないです。それぞれのキャラの行動原理がパーソナルすぎて思想も感じられません。

 友情とか心とかボーイミーツガール的な要素もありますが、すべてファンタジー物語を動かすための要素でしかありません。

 ですので、さすが京アニオリジナル。ほぼ深さがないです。テーマ性、人間ドラマ、文学性のどれをとってもほぼゼロです。キャラ極振りのファンタジー物語です。感動といわれても、めでたしめでたし的なカタルシスしかありません。

「萌え」という言葉が広がった時代です。キャラ萌えを最重要なファクターとして、キャラを動かすために世界系っぽいラノベファンタジー的舞台を作ったという感じすらあります。
 何がいいたいかというと脚本は圧倒的に弱いです。キャラの活躍を見ると言う意味で、アニメ作品としては意味があるかなあという感じでした。

 京アニ作品は、この後作品のレベルがどんどん進化してゆきますが、結局はテーマや思想度外視で、キャラに萌えられればいい、面白いか泣ければいい、になって行きますので、原点と言う意味では納得感はあります。
 京アニのミニスカ短すぎる問題はここからもう見られましたね。つまり、萌えキャラありきという事でしょう。

 そして、キャラデザが1~3と4~6話、7~9話で全然違います。キャラの同一性が保てないレベルで違います。作画の水準も4~6話が最高で、7~9話はかなり残念です。
 背景美術もすごいところはすごいのですが、日常と異世界のニュアンスの差で見づらい事。
 あの京アニでもこんな時代があったんだ、というレベルの安定感の無さで、残念作画の混入が多かったです。

 ということで、総評です。ストーリー…物語はキャラを動かすためのものでしかなく、因果関係と盛り上がり、結論、友情っぽいなにか、死別的ななにか、悪役がいればいいというレベルで物語性は低いです。当然、テーマ・思想・文学性は感じられません。
 キャラはまあ、少女ヒロインとしてよく動いていましたが、動いていただけです。「がんばり」に萌えられれば良いのでしょう。
 具体性のないレビューになりましたが、考察するための深さがないのでこんなものでしょう。

 画面は一部凄いなあ、と思う部分もあります。とくに異世界の戦闘シーンには見るべきところがあります。OPも高水準です。しかし、悪いところが混入するのはいただけません。キャラの同一性は問題外です。

 なんとなく今につながる京アニの思想性が見えたかなあという感じで、歴代の京アニ作品の評価を見直したくなる気分です。

 ところで最後はセーラームーンオマージュ?

 なお、監督さんを初め、スタッフさんの中に例の事件の故人がいらっしゃいます。その点での気持ちはなくはないですが、作品評価とは別にしました。


 

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

守りたいと思う気持ち♪

MUNTOシリーズ。京都アニメーションが自主制作した
「京アニプロジェクト」第1弾ファンタジー作品のTV版。
続編のOVA第2作『MUNTO 時の壁を越えて』の後の作品。
OVAを原点に、2009年にテレビアニメ版が放送された。
のちに続編『天上人とアクト人最後の戦い』が公開。

OVA「MUNTO」2作品に新作カットを加えたディレクターズ
カット版として放映された。全9話。
音楽は全て本作オリジナルで、声優もほぼ全員変更。

OVAの映像をそのまま流用している部分がありますが
元々雨上がりの水溜りに反射する背景等綺麗だった♪

音楽は雰囲気を向上させて自然に入れ替えられてる?
OP/EDも結構いい感じで好きです♪

ムントの小野大輔さんへの変更も普通に良かった。
若本規夫も良い味出してますね♪
バランスというか・・ヒロイン劣化した気が・声優の
起用って個々のキャラ毎に上手くあてても・・全体の
バランスで欠点になってしまう人ができたり・・特に
メインヒロインだし・・追加カットもあるので、より
いっそう目立ってしまう・・

キャラデザや個性等のイメージは声優の演技で大きく
変わってしまうなと実感。例えば苦手だったムント等
変更ないのに良く見えるし・・。

それでもできれば新作として作り直して欲しかった・・
まぁエンドレス8を思えば全然マシな予算稼ぎだけどw
「天上人とアクト人最後の戦い」に活かされたのかな?
それとも宣伝効果的なモノ程度だったのか・・
映画も新作カットを追加したディレクターズカット版。

OVA1作目が3話迄、OVA2作目が6話まで。つまり3話以降
はキャラデザも作画もキャラも成長(向上)している♪

新作カットは主にキャラの掘り下げや派手なバトル等
印象深くするための描写が多い様に感じた。
一気にSF色の強い描写が増える戦闘シーンの多いパート。
そこそこ良い感じで迫力のあるシーンや新キャラが・・
OVA2では二人が抱き合って終わるが・・此方は良い感じ
で追加シーンの補填が有る♪キャラデザは一気に京アニ。
あ・・もともと京アニだけどw

7話以降は新作で・・劇場版の序盤としての部分かな・・
派手な描写や穏やかな描写にコミカルな要素も多数含み、
緩急が大きく盛り上がっていく。

9話・・良い最終回だ・・まぁメッセージは理解できる。
1作目のOVAからずっと基本は一緒だ。

って・・この後映画有るんだけど・・

えぇ~・・天上人とアクト人の最終決戦・・

ん~・・視るのが怖いなぁ~・・

リュエリが語ってるんで凡そ予想ついてしまうから・・

此処で終わっても十分綺麗だなと思うのだけど♪
如何にも京アニっぽいキャラデザや作風になって・・
一般受けはしそうだけど・・内容的にはキャデザ・・
服飾とか・・媚び過ぎた感じになったような・・


日高ユメミ 相沢舞
ムント     小野大輔
小野イチコ 堀川千華
今村スズメ 今野宏美
高森カズヤ 高橋伸也
戸部タカシ 水原薫
日高シゲル 平松広和
日高ノゾミ 井上喜久子
日高チカラ 内田彩
ガス     稲田徹
グンタール 若本規夫
グリドリ 白石稔
リュエリ 田中涼子
トーチェ 松元恵
イリータ 土谷麻貴
ライカ     斎藤楓子
ルイ     遠藤広之
長老     城山堅

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4
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