仮想現実で未来なおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの仮想現実で未来な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月09日の時点で一番の仮想現実で未来なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

82.6 1 仮想現実で未来なアニメランキング1位
デカダンス(TVアニメ動画)

2020年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (626)
2263人が棚に入れました
突如として姿を現した未知の生命体《ガドル》により、人類が滅亡の危機に陥ってから、長い年月が過ぎた。生き残った人々は《ガドル》の脅威から身を護るため、全高3,000Mの巨大な移動要塞《デカダンス》を建造し、日々を暮らしていた。《デカダンス》に住まうのは、日夜《ガドル》と戦う戦士たち《ギア》と、戦う力を持たない《タンカー》たち。ガドルと戦う戦士《ギア》に憧れ、自らも《ギア》になることを夢見る《タンカー》の少女・ナツメは、ある日、無愛想なデカダンスの装甲修理人・カブラギと出会う。夢を諦めない前向きな少女と夢を諦めたリアリストの男。一見正反対のように見える二人の出会いは、やがてこの世界の未来を大きく揺るがすことになる。

声優・キャラクター
小西克幸、楠木ともり、鳥海浩輔、喜多村英梨、柴田芽衣、青山吉能、竹内栄治
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ソリッドステイトサバイバー

NUT制作。

未知の生命体ガドルの侵攻により、
人類は滅亡の危機に瀕し、
生き残った人々は巨大な移動要塞デカダンスを、
建造し、日々を暮らしている。
戦地に赴く戦士たちに憧れる少女ナツメ。
寡黙な装甲修理人カブラギとの出会いが、
少女の運命を変える。

謎で牽引するお決まりの展開ですが、
{netabare}オキソンで駆動する重厚な要塞のガジェットと、
歩兵用兵装、立体機動装置での戦闘が、{/netabare}
初回の大きな見所であり、まずまず楽しい。

しかしタイトルは退廃的な!?
この世界を逆照射するのでしょうか。

7話視聴追記。
絶滅危惧種としてのヒト、
{netabare}主題は現代社会への警告でもあるのでしょう。
世界の廃棄物のどこかにきっと、
我らを修復する鍵が潜んでいる。{/netabare}

トマスピンチョンで括ろう、
じんるいにひかりをあたえますか?

最終話視聴追記。
{netabare}気持ちの良い爽快な大団円だ。
世界から零れ落ちる不確定要素、
それがあるから世界は楽しいのである。{/netabare}
モノアイのジルが素晴らしいです。

最後まで楽しめる良品だと思います。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 63

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

変形からの必殺技って、それかい(笑)! → まあ、落ち着くべきところに落ち着いたかな?

== [下記は第2話まで視聴時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
オリジナルテレビアニメです。第2話まで観終わった時点で、このレビューを書いています。

不味いですやん、人類滅びかけてますやん。いわゆる「終末もの」というジャンルのストーリーですね。

人類にとっては未知の敵であるガドルと戦うための移動要塞デカダンス。全高3000メートル級って、とんでもないデカさですね。山が動いているレベルの大きさ…。

ガドルと戦うのは戦闘員であるギアと呼ばれる人たちで、「かの力(ちから)」と呼ばれる対ガドル戦闘組織に属しています。

それ以外の人たちはタンカーと呼ばれていて、デカダンス内の「タンク」と呼ばれる居住区画で生活しています。で、稀にタンカーから「かの力」に入る人がいて主人公の少女ナツメもそれを目指しますが、幼少時の右手欠損により資格なしということで、デカダンスの装甲修理人として配属が決まります。

果たしてナツメは「かの力」に入ってガドルと戦うことになるのか、そしてナツメの右手欠損時の事件の真相は何なのか、そもそもガドルやそれと戦うギアとは何者なのかといった興味で視聴者を引っ張る感じのお話です。

第2話を観終わってから第1話を観直すと、初見時とは違ったものが見えてくるかも。以降もこういう感じになっていると楽しめそうですが、どうでしょうかね。

今クールの作品の中では、私はかなり面白い方だと思っています。なお、レビュータイトルに「それかい(笑)」と書いておきながら、どのような必殺技かはあえて書きません。悪しからず。

気になる方はとりあえず第1話を観てみてくださいね。
== [第2話まで視聴時のレビュー、ここまで。] ==

最終話まで観終わっていましたが、更新が遅れていました。

人類全体の状況を考えると、バッドエンドではないのでしょうがトゥルーエンドでもない感じ。ナツメたちはそれなりに幸せなんでしょうが、頑張れば後日談的な外伝や2期目も作る余地はありそうです。逆に物語としては「余韻を残した良い終わり方」とも言えますが。

何のためにいたかわからないようなキャラクターはいなかったと思うので、その点は好印象ですね。

本作のサイボーグのデザインは人によっては苦手かもしれないですが、作画面でも安定しており、突飛さこそないものの充分視聴に耐える良作SF作品だったと思います。

2020年夏クールの中から視聴を敢えてお薦めするとしたら本作は充分に候補の一つじゃないでしょうか。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 57
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

咀嚼しづらいけど

<2020/9/24 初投稿>
オリジナルアニメ。
今夏、気がついたらなんとなく毎週観てました。

人類文明が崩壊した未来を舞台とするSF

舞台設定の説明は最初の数話のネタバレになるのでタグで括っておきます。

{netabare}
・文明が崩壊する過程の中で人類は自らをサイボーグ化していき
・さらに世界の管理を自己完結型の『システム』に委ねた人類はもう生身の部分がなくなり、サイボーグというより自我を持ったロボとして生き残っていた
・『システム』が全てを管理する世界で、『システム』の一部として退廃的な生活を送る「元人間のロボ」たち
・デカダンスはそんなロボ達の娯楽施設。人間の容姿をした素体に『ギア』としてログインすればデカダンスでガドルという敵を倒すスリル溢れるゲームに興じることができる。
・さらにデカダンスにはRPGのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)のような立ち位置で、希少な「生身の人間」の『タンカー』を配置している。つまり、デカダンスに行けばロボ達は生身の人間に触れ合える。
(この生身の人間、『システム』がガドルのように培養したんでしょうか)
・ただし、タンカーはデカダンスが娯楽施設であることも、ギアの状態が元人間のロボであることも、自分たちがNPC扱いなことも知らない。
{/netabare}

こんな設定です。
結構、咀嚼しづらい設定。

注意点としては「これらは仮想空間ではなく、全て現実世界でのお話であること」
仮想空間という設定に慣れてしまった我々にはなかなかとっつきにくいところがありますw

物語のテーマは
「社会のルールに外れずさえいたら、無限の命が保証される。それはどんなに退廃的なのだろう」
タイトルがデカダンスですし。
様々なSFで古今東西取り上げられてるモチーフです。

最終回、あれは{netabare}大団円{/netabare}だったのでしょうか?
第1話の状況との違いは{netabare}「タンカーたちがこの世の仕組みを理解し」「ギアとタンカーが区別も差別もなく暮らしている」{/netabare}ことかな?
あの{netabare}大団円{/netabare}の世界は{netabare}「進化した『システム』」{/netabare}ってことなんでしょうか?

うまく(自分が)消化できていない感じです。

でも、映像、演出、キャラクターは好みでした。
音楽も伊東歌詞太郎さんの作詞・作曲・唄のED「記憶の箱舟」は歌詞もメロディも超好み。
ただいまヘビロテ中です。

そして、最終回のエンドカードはじんわりきました。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 46

77.6 2 仮想現実で未来なアニメランキング2位
ZEGAPAIN ゼーガペイン(TVアニメ動画)

2006年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (1094)
6602人が棚に入れました
未来的にデザインされた街・舞浜市に住み、近郊の高校に通う普通の学生、キョウ。たった1人で水泳部を切り盛りする彼は、中学以来の因縁を持ち難癖をつけてくる宿敵達とのいざこざも意に介せず、練習と水泳部への勧誘の為、学校の室内プールへと向かう毎日。
ある日、幼なじみのリョーコに頼まれ、映画研究部作品の撮影中、やる気の無いキョウはNGを出し撮影は中断。ふと、窓の外を見るとそこで彼は飛び込み台の最上段に立つ、1人の見知らぬ美少女・シズノを見つける。
水泳部入部希望者と察したキョウは、慌ててプールへと急ぐが、シズノは声にならない謎の言葉を残し、華麗な飛び込みを見せ忽然と姿を消す。シズノの事が忘れられないキョウだったが、程無くして彼女はキョウの自室に瞬間移動したかの如く唐突に現れる。
シズノはキョウに「ゲーム」の始まりを宣言。彼女の導きのままにキョウは異空間へ転送され、美しい光の装甲をまとった巨大ロボット「ゼーガペイン・アルティール」に乗り込み、敵と目されるキャラクターをシズノと共に倒していく。
だがしばらくして、キョウは様々な疑問に対峙していく事になる…。

声優・キャラクター
浅沼晋太郎、花澤香菜、川澄綾子、朴璐美、牧野由依、渡辺明乃、坪井智浩、井上麻里奈、吉野裕行、加藤将之、神谷浩史、ゆかな、家中宏、久川綾
ネタバレ

disaruto さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「痛み」を受け止める強さ

制作はサンライズのオリジナルアニメです。
ジャンルはSFロボット・恋愛です。
人によっては鬱と感じるかもしれないシリアス展開なので苦手ならば若干注意です。


高校生のソゴル・キョウは水泳部立て直しのために尽力していた。
ある日突然、彼はミサキ・シズノというミステリアスな女性に連れられてロボットに乗り、敵と戦う。
彼にとってその戦いは「仮想現実のゲーム」だと思っていた…。


斬新な世界観・恋愛を主軸に置いた人間ドラマ・水泳と映画を用いた青春劇・ロボットバトル・「生」についての哲学・シリアス(鬱)展開。
盛り込まれたそれぞれの要素が絡み合って奥行きのあるストーリーになっています。
どれもぼやけておらず、納得のできるストーリー展開になっています。

その中でも前者三つの要素が秀逸。
ロボットアニメ、というか他のアニメでここまで複合ジャンルをまとめたのはあまり見たことないですね。
その要素のどれもが「痛み」を伴っています。


1話見たときにこんなシリアスな話だとは思っていませんでしたw
普通に過ごしていた日常がこうも簡単に崩れ去る恐怖。
「生きていること」とはどういうことかと問う。
主人公に降りかかる数多くの試練。
私はこういう設定の作品は見たことがなかったので、世界の真実が分かったときは結構驚きました。

主人公に起こった試練のまとめ。
{netabare}・一度記憶を消去されている
・この世界が幻だと知る
・自分たちは幻体という存在と知る
・サーバーがリセットされてループする
・リョーコが消滅する
こんなところでしょうか?{/netabare}

とってもシリアスなことが起こっているのですが、主人公の性格でそこまで重く見えない不思議。
主人公が直球野郎で見ていて気持ちがいいのが本作の救いになっています。
加えて彼は意外と物知りであったりするので馬鹿ではないのが良い。


その他のヒューマンドラマについて。
恋愛に関しては主人公とヒロイン二人の三角関係が基本なのでこれまた重め。
設定が設定なだけに、どっちも気持ちは分かるんですよねえ…。
また、ルーシェン、シマ、クリスといったサブキャラの話も結構しっかりしています。
特にクリスの回は感動しちゃいました。

青春劇に関してはこれまた設定のために主人公には非常につらい仕様になっていますw
部活動再建のためにかつての仲間と友情を取り戻していくキョウ。
普通に青春アニメとしても見ることが出来るのが凄い。
正直、細かいSF設定が分からなくなってもヒューマンドラマで楽しめます(私です)。


本作の難点は序盤の訳の分からなさ。
加えて、ロボットアニメですが戦闘シーンがイマイチ面白くないところ。
ロボットアニメと思って視聴すると肩透かしを食らうかもしれません。
加えてよく分からない所があるので、詳しい人に教えてほしいくらいですw

難点かどうかは微妙ですが、結構声優が棒読みです。
気になったのは数人でその他は上手だったのですけどね。
率直に言えば、気になったのは浅沼さんと花澤さんw
浅沼さんは割と前半で慣れましたが、花澤さんはずっと気になりましたw
これが良いって仰る花澤さんファンも意外と多いので、見てみるのもアリかな?
正直、私はにわかだから今の彼女の演技の方が良いと思うんだけどねw


総括して、取っ付きづらさはかなりありますが、前半を乗り切れたら作品にぐいぐい引き込まれるかと思います。
ロボットアニメは後半にならないとイマイチ面白さが分からないので、前半で切らないであげてくださいw
見ごたえのある作品でした。

どうでもいいですが、キャスト紹介で主要キャラが四人ですよね?
キョウ・リョーコ・シズノ・ルーシェン。
何でルーシェンがずっと入っているのとか個人的に思っていたのですが、24話で分かりました。
彼は{netabare}キョウに憧れていたヒロインの一人だった{/netabare}ってことですねえ。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 54
ネタバレ

ストライク さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

学園SF恋愛ロボットもの

序盤の5~6話は、正直なんかイマイチ面白くなかったですが、そこを過ぎるとどんどん引き込まれました。

ネタバレって程ではないですが、設定とさわりだけ~
{netabare}
主人公のキョウは、舞浜市に住む高校生で、ある日、ミステリアスな雰囲気の女性シズノ先輩に呼ばれ、生徒会長のシマが司令を務める戦艦「オケアノス」へと召喚されます。
そして人型兵器のロボットに乗って敵と戦う事になり・・・

リアルなロボットゲームだと思い、気楽に戦っていたキョウだが、実はその荒廃した世界こそが現実であり、自分が現実と思っていた世界は、量子コンピューターサーバー内で処理されている仮想空間であることを知る。
そして自分たちは「幻体」と呼ばれるデータでしかないという衝撃の事実を告げられます。
{/netabare}

隣に住む幼馴染のリョーコとシズノ先輩と3角関係の展開に・・・

ロボットには男女ペアで乗り込み操縦します。(女性がサポート役)
これは、ロボットものでは今までに無い設定で良かったです。

ロボットのデザイン、戦闘はイマイチ微妙・・・  (-ω-)

心の葛藤、刹那さ、やるせなさを感じさせられます。

途中、ショックで泣けます。
最後は感動でした。 (=´ω`)ノ

結構、鬱作品とか言われてますが、私はそんなにでもなかったです。


OP:「キミヘ ムカウ ヒカリ」
ED:「リトルグッバイ」

2曲とも心に沁みる良い曲で、今でもよく聞いてます。



余談で
ヒロインの守凪 了子(カミナギ・リョーコ)役の声は、花澤香菜さんなんですが、この作品が彼女の初メインヒロイン(レギュラー)役で、今の声とはまたちょっと違ってて、キャラの影響だろうけど、綺麗で優しい透明感のある声です。
(@´▽`@)

なので、花澤さんが好きな人は、彼女の初々しい声目当てに視聴するのもありです!^^

あとは・・・
恋愛や、人間ドラマなど好きな人にもオススメです。
(あ!ロボットには期待しないで下さい)

もうちょっと評価されても良い作品だと思います。

なかなかの良い作品でした。 (っ´ω`c)

投稿 : 2024/06/08
♥ : 45
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

ゼーガペイン放送から10週年を迎えて

2006年4月から放送されたサンライズのSFロボットアニメ(全26話)。

私的に2006年というのは、
日本アニメ界において非常に重大な節目となる年だったと思っています。
本作と同時期に放送された「涼宮ハルヒの憂鬱」は、
アニメ好きだけでなく、普段アニメに興味を示さない層の耳目を集めていましたし、
同年10月に放送開始した同じサンライズの作品
「コードギアス」については、もはや説明不要でしょう。
手軽に消費できる娯楽としてアニメが注目され始めた、そんな年だったと思います。
あくまで私感ですけどw
そういう大きな変革期の中で埋没してしまったのが本作「ゼーガペイン」でしょうw
「隠れた名作」、「知る人ぞ知る名作」というような表現がよくされる本作ですが、
一部の間では根強い人気を誇っており、2010年には受注限定でBD-BOXが販売。
そして、放送10週年となる今年(2016年)にはBD-BOXの一般販売が決定。
10月には、新カットも追加した劇場版が公開予定のようです。

ここからはネタバレありで語ります。未視聴の方は読まないでください。
これだけ良く出来ている作品です。
視聴前からネタバレ食らうのは損するどころの話ではないので。


{netabare}まず、ざっとですが本作を振り返ると(只のあらすじなので面倒だったら飛ばしてください)
主人公十凍京(ソゴルキョウ)たちが学園生活を送っていた舞浜市は、
実は虚構の世界(量子コンピューターサーバーに管理されている仮想世界)であり、
ゲームの世界だと思っていた荒廃した世界こそが現実世界であった。
人類はすべて滅亡しており、キョウたちも「幻体」と呼ばれる人格記憶体であり、
コンピューターに保存されたデータだったのである。

そのすべての元凶は超天才科学者のナーガである。
ナーガはかねてより時間の加速した量子サーバー内で人間を進化させる
「無限進化」を提唱しており、それを実現させる為に
致死率98%の「オルム・ウィルス」をばら撒き、人類を強制的に量子サーバー内に押し込む。
その後、ナーガはガルズオルムを組織し、
I.A.L.社のロボットを使い、環境実験空間「デフテラ領域」を世界中に作り始めた。
しかし、ループを観測しサーバーコントロールから離れた存在である
「セレブラント」達は対抗組織「セレブラム」を設立。
彼らはシマが開発した「ゼーガペイン」を始めとする光装甲を纏った「ホロニックアーマー」に乗り、
荒廃した現実世界でガルズオルムと戦い続けていた。(wikipedia「ゼーガペイン」参照、抜粋)


なんでwikiに載っていることを、わざわざここに記載したのかというと、
何故にこんな世界が形成されたのか?
敵は誰で、何の為に戦うのか?
これらの問いに対して、明確に言葉で説明できる素晴らしさを声を大にして言いたいからです。
明確に言葉で説明できるということは、
プロットの段階から設定やシナリオを相当練ってきている証左であると思います。

本作の構成要素を個別に分解していくと、
「どこか(他の作品)で見たことあるような」という、ある意味紋切り型なのかもしれません。
例えば、量子コンピューターの処理能力には限界がある為、
8月31日の午後0時になると4月5日までリセットされてしまう訳ですが、
これは、所謂ループものに内包される事象なのかもしれません。
ですが、本作をループものと言い切ってしまうのは些か乱暴だと思います。
ループものというのは、真の解決に向けてキャラが何度も同じ時間を繰り返すというものですが、
本作はそれを主とする作品ではありません。
ループすることが主ではなく、あくまでループという要素を取り扱っているに過ぎないのです。
そして、ループする原因を明確に言葉で説明できるというのが、
物語に説得力と厚みを持たせています。
こうした明確に言葉で説明できる個別の構成要素をいくつも積み重ねていくことによって、
全体で見ると、他の作品にはない本作独自の世界観が形成されているのだと思います。
例えるならば、誰もが知っている食材を使っているのですが、
それが上手く調理されているので、
出来上がった料理は今までありそうでなかった新しい美味だったと言ったところでしょうか。

本作の楽しみ方やその秘密について、さらに考えていきたいと思います。
通常、我々視聴者は作中の主人公よりも高次元の視点から、
観測者として物語を俯瞰することができます。
本作では、衝撃の事実(物語上の仕掛け)を主人公キョウに提示するのと同じタイミングで
視聴者に提示してきます。
我々視聴者は、衝撃の事実を突きつけられたキョウたちの狼狽、葛藤、
そして、どのように対峙していくのかとキョウたちと同目線で楽しむと同時に、
物語の観測者として、
さらなる仕掛けや物語の結末を予想して楽しむという二重の楽しみ方をしているのですが、
ここでも重要になってくるのが、その仕掛けを明確に言葉で説明できるということなのです。
どの作品がとは言いませんけど、
シーンありきでシナリオを作ったのだろうなという作品は多々存在するのですが、
そのほとんどすべてが設定やシナリオの脆弱性を露呈しています。
視聴者に解釈を委ねていると言えば聞こえはいいんですけどね。
突飛な展開で視聴者置いてけぼり、
真面目に予想していたのがアホらしくなってしまうことが多いんですよ。
それらの作品は、設定や起こった現象に対して
明確に言葉で説明できるということが欠如しているということなんですけど、
その有無は、作品の印象を大きく違えてしまう程重要なのだと思います。

では、これ程の作品が何故に埋もれてしまったのか?
単純に「華」がないからでしょうねw
萌えなど皆無な上、主人公十凍京(ソゴルキョウ)もイケメンという訳ではないしw
中の人と言っても、肝心の主人公十凍京(ソゴルキョウ)役の
浅沼晋太郎さんは、本作がテレビアニメ初出演。
ヒロインの守凪了子(カミナギ・リョーコ)役は当時ド新人のざーさんですからねw
あまりの棒演技に台詞の度にゲラゲラ笑ってしまった程ですw
また、戦闘シーンも迫力不足というのは正直否めません。
ただ、アクションが分かりやすかったというのはよかったと思います。
最近は3DCGの技術が著しく進化していて、迫力も段違いなのですが、
何をやっているのかいまいちよく分からないと感じることがしばしあるので。
あとは、序盤の地味過ぎる展開ですかねw
ファンの間で本作の公然の薦め文句は「取り敢えず6話まで観て」だそうですw
ほぼ同時期の同じサンライズ作品「コードギアス」と比べてしまうと、
圧倒的な華のなさですw {/netabare}


さて、私は冒頭で本作が放送開始された2006年は、
手軽に消費できる娯楽としてアニメが注目され始めた年と言いました。
宮崎駿監督の言葉を借りれば、
ポリポリとポテトチップを食べるように消費されているということなのでしょうけど、
2006年から今日に至るまでに、こういった傾向はより顕在化しているように思えます。
2000年~2011年の期間では、深夜アニメの放送本数は2006年の93本をピークに、
そこから2011年までは減少傾向にあったのですが、
2012年は106本、13年は128本、14年は159本、15年は170本と再び凄まじい勢いで
増加していっています。
もはやすべての作品を網羅することなど不可能と言ってもいいでしょう。
従って、「つまらないから何話で切った」、「よく分からないから何話で切った」
という声が増えていくのは至極当然のことなのかもしれません。

私はこのレビューで明確に言葉で説明できる、
すなわち、練りに練られた作品設定やシナリオの素晴らしさを説いてきたわけですけど、
このような状況下で、それがどれだけの重要性を持つのか、正直言って甚だ疑問です。
論理的な骨子、重厚なバックボーン、
そんなものよりも、たとえ唐突であろうとも、ご都合主義であろうとも、
まるで感動シーンを切り売りしたような、
視聴者にとって口当たりのよい、分かりやすいものの方が歓迎されるのではないでしょうか。
そんな風に思ってしまいます。

偏屈な私の知人はこんなことを言っていました。
「アニメは2000年代前半までだね。
それ以降のは一部を除いて視聴者に媚びているようなものばっかで視聴する価値がない」

こういう意見も分からなくはないですけど、
ただ、私はたとえ萌え豚御用達と揶揄されるような作品でも
素晴らしい作品はいくらでもあると思っています。
視聴者に媚びている作品=くだらない作品だとは露ほども思っていません。
どんな作品にも良い箇所はあるという考えです。
キャラが可愛いだけのアニメ? 
それの何が悪いんですか?

その一方で、本作のような骨太な作品がもっともっと評価されてほしいとも思っています。
そのような土壌の形成を心から望んでいます。
ゼーガペイン放送から10週年を迎えて、
我々アニメ視聴者を取り巻く環境は大きく変容しましたけど、
こんな時代だからこそ、より真摯にアニメ作品と向き合っていきたいとも思えます。
まぁ言っても娯楽なので、気楽に楽しむというのは大前提なんですけどねw

投稿 : 2024/06/08
♥ : 37

64.6 3 仮想現実で未来なアニメランキング3位
フラクタル(TVアニメ動画)

2011年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (815)
4300人が棚に入れました
舞台は世界を管理する“フラクタル・システム”が完成し、人類が働かなくても生きていける楽園に足を踏み入れてから1000年後の未来。システムはかろうじて稼働していたが、誰もシステムを解析することはできず、ただ維持し続けることが幸せの条件だと信じて疑わなかった。しかし、大陸の片隅ではフラクタルが崩壊し始めていた。漫然と日々を生きる少年・クレインは、ある日何者かに追われ崖の下に転落した少女・フリュネを助ける。少女との出会いに心躍らせるクレイン。だが、フリュネはブローチを残しクレインの前から姿を消した。ブローチに残されたデータには、少女の姿をしたアバター、ネッサが閉じ込められていた。ネッサとともにフリュネを探し旅にでるクレイン。そこで彼は“システム”の秘密を知ることになる―

声優・キャラクター
小林ゆう、津田美波、花澤香菜、井口裕香、浅沼晋太郎
ネタバレ

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ヤマカンとあずまんと、時々、マリー

【概要】
 2011年冬。原作に思想家の東浩紀ことあずまん、脚本に岡田麿里ことマリー、監督に山本寛ことヤマカンという豪華制作陣で送るオジリナルアニメ。アイルランドを舞台に繰り広げられるSFファンタジー。放送前の期待値は高かったのだが、結果は撃沈。コミカライズを担当している漫画家から「こんなつまらない作品の連載を続けたくない」と愚痴られて揉めたり、原作のあずまんから「監督が耳を傾けてくれたらいいアニメになってた」と後日批判されたり、作品の内外問わず悪評高い作品でもある。

 駄作といえば「フラクタル」、「フラクタル」といえば駄作。2010年代の有名クソアニメとして必ず名前の挙がる不名誉な作品。クソアニメと言っても最近ありがちな「いもいも」「メルメド」等の作画崩壊系ではなく作画はむしろ良い。(特に第7話は凄いと思う。)でも作画が良いということは裏を返せばそれだけ製作費がかかっているということであり、事前の宣伝も力が入っていたらしく、放送後ヤマカンは最大の戦犯としてボロクソに叩かれたそうだ。

 評判的にもパッケージの売上的にも散々な結果に終わったフラクタル。原作のあずまんは「震災があったのにサブカル批評なんてやってる場合じゃねえ!」と早々に逃亡。マリーは同年「花いろ」「あの花」等のヒットで汚名返上できたのだが、「この作品が失敗すれば引退も辞さない」と事前に決意を語っていたヤマカンのダメージは大きく、カリスマ的な権威は失墜、その後は奈落に落とされるようにして、先日破産にまで至ったのである…

 フラクタルについて、ヤマカンはBLOGでこう語っている。(何を隠そう、僕はヤマカンBLOGの愛読者なのだ。)
 https://lineblog.me/yamamotoyutaka/archives/13018660.html

 この記事の後も「フラクタルは名作、ネットの評判に潰されただけだ」「フラクタルは必ず再評価される」など自己弁護的な発言を繰り返しているヤマカン。往生際が悪いにもほどがあるのだけど、彼はフラクタルが失敗作だとは絶対に認めたくないらしい。そこまで意地になるフラクタルとは一体どのようなアニメなのか、気になっていたので観てみた。

【感想】
 結論から言うと作画が良くて、音楽も良くて、世界観も深くて、声優さんも上手くて、それでいて心躍るものがないという、何とも残念な作品でございました。世間の評判と大差ない感想になってしまったんだけど、「つまらない」と言われる原因ははっきりしているように思う。

 1つはフラクタルシステムに関する設定が分かりにくく、最後まで見ても何を訴えたかったのか漠然としている点。もうひとつは主人公のクレインが受け身体質で、理不尽な出来事に巻き込まれながら淡々と話しが進んでいくため盛り上がりに欠ける点。見た目はジブリ風の冒険活劇で、特に「天空の城ラピュタ」を連想させる雰囲気を醸し出しているのにワクワク感や達成感、人物の成長を感じられる場面に乏しく見た目とのギャップが大きい。王道の冒険ストーリーを期待すると失望することになるだろう。

 フラクタルのストーリーのあらすじはこうだ。(公式ページから転載)

 “世界を管理する「フラクタルシステム」が完成し、人類は史上初めて、もはや働かなくても生きていくことができる圧倒的な楽園に足を踏み入れた。それから千年 ―― システムはいまだに生き残り稼働し続けていたが、もはや誰もそのシステムを解析できなかった。多くの人々が、その維持こそが、人類の幸せの条件だと信じて疑っていなかった。物語は、そんな「フラクタル」が崩壊し始めた、ある大陸の片隅の島で始まる。漫然と日々を生きる少年・クレインは、ある日何者かに追われ崖の下に転落した少女・フリュネを助ける。少女との出会いに心躍らせるクレイン。だが、フリュネはブローチを残しクレインの前から姿を消した。ブローチに残されたデータには、少女の姿をしたアバター、ネッサが閉じ込められていた。ネッサとともにフリュネを探し旅にでるクレイン。そこで彼はシステムの秘密を知ることになる”

 要するに典型的なディストピアものであり、ボーイミーツガールである。その定型に従えば、主人公のクレインが世界の危機に勇猛果敢に挑み、一目惚れした少女フリュネを助け出し、フラクタルシステムの再起動を阻止し、デカダンスに陥っている人々の生活に潤いを取り戻す…というストーリーが頭に浮かんでくる。ところがこのアニメは視聴者の予想を見事に裏切ってくれるのだよ。

 {netabare}主人公クレインはフラクタルを否定し昔ながらの生活を是とする集団「ロストミレニアム」と出会うが、彼らは暴力に訴えるテロリストという一面があり全幅の信頼を置ける仲間とはいえない。見続けると、フラクタルシステムに依存する暮らしが当たり前になった世界で、システムを停止させることが正義なのか段々疑わしくなってくる。システムの管理者であり存続を図る「僧院」とシステムの破壊を狙う「ロストミレニアム」の間で板挟みになったクレインは確固たる信念を持って行動できない。そもそも設定上、彼に人々を動かし世界を変えるだけの力は一切与えられていない。見ている側からすると非常にもやもやする。

 フリュネへの恋心はぶれないが、フリュネが「何を考えているかよく分からない」女の子で話も噛み合わず、勝手に行動するから盛り上がるはずの恋愛要素で全く盛り上がらないという状態。{/netabare}

 以上、ヤマカン自身も認めているように本作はエンターテイメント性が希薄で分かりやすい面白さがないんだよね。(そこは認めておきながら、なぜ名作だと言い張るのか…)これでは「退屈」「楽しくない」「何をしたいのかよく分からない」といった感想が並ぶのも致し方無い。僕は嫌いじゃないんだけどね。少なくともハルヒ1期より好きだ。(フラクタル以下ってどんだけハルヒ嫌いなんだよと突っ込まれそうですが)

【考察】
 この不人気アニメの考察を読みたい人がどれだけいるか疑問だし、見たことある人自体少なそうだけど、折角なので書いてみよう。

 ネット上のログを見るに、原作のあずまんは制作の途中で「あなたが入ると話がまとまらない」と脚本会議から追い出され、どうも後半のストーリーは彼の構想とは違うものになったらしい。したがって本来のフラクタルについては勝手に想像するしかないのだけど、あずまんがやりたかったのはトラウマを抱えた可哀想な少女を救うKEY的な物語だったんじゃないかと思う。東浩紀ことあずまんはポストモダンという視点でサブカルチャー批評を行い話題になった人だが、「動物化するポストモダン」や「ゲーム的リアリズムの誕生」を読めば分かる通りアニメよりも美少女ゲームに造詣が深く、とりわけKEY作品が大好きなんだよね。(いわゆる鍵っ子)

 それを踏まえるとフリュネの不幸な境遇、ネッサの純粋無垢な性格はKEYヒロインにありがちだし、フラクタルシステム自体は緻密な設定を構築しておきながら再起動の鍵になるのが16歳の少女という物語の核心的な部分について何のロジックもないというのもある意味でKEYっぽい。美少女ゲームの「運命」や「奇跡」って往々にして理由付けがなかったりする。

 「ゲーム的リアリズムの誕生」によればノベルゲームには「メタ物語的」な構造が見受けられるという。あずまんは自著で「ひぐらし」「AIR」「ONE」などの作品を取り上げ、これらの作品にはゲームのプレイヤーとゲーム内の主人公の視点を同一化させてしまう巧妙な仕掛けが施されていることを説明している。たとえば「ひぐらしのなく頃に」はストーリー自体は一本道で購入者はクリックして話を進めることしかできないのにも関わらず、各編は選択肢に失敗したがゆえのバッドエンドであるかのように錯覚し、プレイヤーは自分の力で物語を正しい在り方へと導くような感覚があるといった具合だ。

 フラクタルが「メタ物語的」な想像力を実践する作品だとすれば、わがままで自分の意のままにならず話の通じない一方、なぜか惹かれてしまうし性的な存在でもあるフリュネは現実の女性の象徴、人懐っこくいつも笑顔で自分の身近にいてくれる一方で、実存しないアバター「ドッペル」でしかないネッサは虚構のキャラクターの象徴だと思えてくる。

 ここに自分を愛してくれるのは実体のない二次元キャラで、本当に愛されたい三次元の女性とは分かり合えないという悲しい構図が見て取れる。あずまんは視聴者をこの皮肉な構図に嵌め込み、男性の不能感(フリュネを救えないバッドエンド)あるいは全能感(フリュネを救うハッピーエンド)をトコトン味わわせて泣かせようという魂胆だったのではないかと予想する。ヤマカンに没にされ小説版フラクタルもなかったことにされた今となっては想像しても詮無き事ではあるが…

 結局フラクタルはヤマカンが作りたいものを作ったことになるのだけど、「アニメ業界批判(藤津亮太)」、「80年代への回帰(宇野常寛)」といった評論家の方々の評価は少し外れているように思う。萌えアニメの台頭によってキャラクターが記号化・パターン化し、客に媚びた作品やストーリーを軽視した作品が増えているという問題意識は当然あるだろう。ヤマカンがBLOGやtwitter(問題を起こしすぎて現在はアカウント凍結されているけど)で度々言及していることだ。でも当時は批判一辺倒ではなく、もう少し前向きな気持ちで作っていたんだと思う。下記の対談記事で語っている内容が一番真意に近いのではないだろうか。

 http://www.billboard-japan.com/special/detail/99

 {netabare}最終回でフリュネはフラクタルシステムを再起動させるという道を選び、クレインもフリュネの決断を止めようとはしない。見せかけの虚構によって人々の心を支配するフラクタルシステムがアニメ業界のカリカチュアであり、仮に萌えアニメを業界から一掃したいという考えがヤマカンにあるならば本システムは唾棄すべきものであり、主人公たちに破壊する道を選ばせるはずなんだよね。でも、そうはしなかった。フラクタルの聖域でフリュネとクレイン、ネッサの三人は「神」なるものの姿を観るのだけど、スクリーンに映し出された神はただの女子高生で、彼女は「ネッサ」と名付けたウサギのぬいぐるみに愛おしそうに話しかける。この演出の意図するところは、アニメの視聴者とアニメのキャラクターの関係を女の子とぬいぐるみの関係にスライドさせ、キャラクターに抱く特別な感情(もちろん萌えも含めて)を人間らしい感情だと肯定しているように僕には思える。

 この後場面は一年後になり、クレインは自炊生活をしながらもドッペルの犬を可愛がっている様子が描かれる。要するにヤマカンは「萌え要素を残しつつも従来のストーリー重視でテーマ性も感じられるアニメを俺は作るから、お前らついて来い!」と言いたくて、これを作った当時はオタクと手を繋ごうという意志がまだあったんだと思うんですよ。だからこそフラクタルを批判されると反撥するし、このアニメを否定されると身を切られるようにつらいのではないだろうか。
 {/netabare}

 以上、長々と語ってきたけど、東浩紀のデータベース消費理論を知らない人にとって、人と社会の関係、消費者と創作物の関係に相似を見出すこと自体無理な話だと思う。(どうしてフラクタルのストーリーとアニメ業界の話が繋がるのか分からないはず)

 このアニメこそヤマカンが散々BLOGで言ってるスノビズムに冒されている作品のようにも見える。こんだけアニメについて熱く表現したところで視聴者からすると「そんなの知らんがな」で終わるような気がするのだけど、僕の思い過ごしですかね?やっぱりポタクの戯言ですか!?

 

投稿 : 2024/06/08
♥ : 21
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

こんなの間違ってる。

フラクタルシステム。
これにより、この世界の人間には一定額の収入が支給され、ある程度の自由が許されるようになった。
あくせくと働くことをしなくても手元にお金がある状況ができ、大衆は好きなことに好きなように時間の全てを使うことができるようになった。
まさにある種の理想が現実となった世界なのである。人々はその自由に心までどっぷりと浸かっていた。


その世界に生きる1人の少年クレイン。科学技術が進歩し全てがデータとなっている中で
彼はビンテージ(僕らが今使っているコンピュータ)をこよなく愛す、周りからしてみると一風変わった少年だった。
その日クレインはフリーマーケットの帰りだった。自転車に乗り風を切る。とても気持ちが良い午後だった。
あたりは芝生の綺麗ないくつかの丘によって小さな起伏の波ができておりとてものどかな眺めである。
砂利道はまるでフォークを手に持ち力づくに切リ分けたケーキのような崖に沿い、彼の家までずうっと続いている。
クレインは自転車を途中で止め本日の収穫を確認した。手には成り行きで持ってきてしまったデータが一つだけ。
中を調べてみるとそれは教科書のデータだった。期待外れの収穫にがっかりし、空を見上げる。
雲はまるで関係ないような顔をして去っていった。すると急に何かが視界を通り過ぎた。
彼にはそれが最初鳥に見えた。白い大きな鳥。それは何かに追われていた。
でもそれは白い大きな鳥ではなく1人乗り用の飛行機に乗った若い女の子だった。一目見て可愛いと思った。
クレインは急いで自転車に乗り追いかけた。頑張って並走しようとする。彼女とコンタクトをとろうとする。
けれど少女の飛行機は追跡者に撃たれしまった。そのまま飛行機と一緒に少女は崖に沿って下に落ちていく。
落ちていく、落ちていく。いや、すでに堕ちているのだ。



管理社会を扱った作品です。世界観や設定はとても良いです。すごく好きです。
でもあまり面白味がなかったのがとても残念でした。そして評判もあまり良くはありません。
1話から3話くらいまではとても良かったのにそれ以降は回を追うごとに悪くなっていく。
僕が一番感じたのは何人かの登場人物の魅力の無さでした。

まずクレイン。
彼にはフラクタルシステム下で生活していたせいか意志というものが欠落しています。
だから誰かを助ける!とか構うもんか!とならなければならないシーンで熱がない。足りない。ほぼみせかけでした。
他の面で良いところはあるかと探してみても特に見つからず、ぐだぐだとグラニッツというレジスタンスの中にいた印象しかありませんでした。
「彼が何かしたかい? いやいや、ただそこにいただけさ。」

次にスンダ。
彼はレジスタンスである「グラニッツ」のリーダー。しかし頭悪いし、リーダーシップないしで、魅力も0です。
彼とクレインが一緒になることで物語もどんどん面白さを失っていったと思います。
肝心なグラニッツ一家に関してもこっちには何も伝わってきません。やっと分かるのは名前くらいです。

彼らのテロ行為もおかしいと僕は思います。
フラクタルシステムに反抗し、自活することができていればそれはそれで十分に戦っていることなります。
それはジョージ・オーウェルが『1984年』で綴った一文、「抱擁は戦いである」と同義です。
社会のシステムに身を委ねず、魂を売らず、強いられた生活の営みの中に反抗を見い出し、
自らが打ち立てる強い意志を保つことでそれが意味を成し、心の最も大切な支えとなり、剣となるのです。
それを他の人に広めたいのなら他にも手段はあったはずです。もっともこれは例えばの話ですが。
しかし、それを飛び越えて人を殺すことを目的に襲撃するのがスンダの「抵抗」と言うのなら、それはただの殺戮でしかありませんでした。
まったくもって、ただの人殺しです。
それでは世界はなにも解決されなし、誰も救えない。愚か者め。

ストーリーもはっきりしないことが多いです。どこに焦点を持っていっているのかもあやふや。
観ていて状況は分かっても結局なに?だから何なの?という感覚でした。
基本観ていて分かることはあんまりない。理解しようとする努力も水を掴もうとするくらい無駄なものでした。

良いところもたくさんあったのに全て自分達で潰してしまっている、非常にもったいない作品です。


{netabare}

1話は本当に面白かったのに!すごくすごく惹かれました。
でもあのグラニッツの2人組もすごくよかったのに片方を襲撃で殺しちゃうし…



僕がさらにここで書きたいのはフリュネについてです。

彼女は本当に悲惨でした。
彼女が登場した1話から僕は非常に好感を持っていたのであのような状況にはひどく傷つきました。
あの椅子や、あのアホの頬ずりや抱きしめられる姿には本当に胸が引き裂かれる想いでした。
最終話のアホの語りの部分は聞いているだけで頭がおかしくなるかとも思いました。
観終わった後20分くらい体育座りで泣いてましたww 俺も俺で相当気持ちが悪いww
でも本当に傷ついた。泣いた。

どうしてアニメにあんな設定が必要だったのでしょう。なぜフリュネは汚れなければならなかったのでしょう。
悲劇的要素を含ませたかっただけなのであればこれほど悲しいことはないと思います。
生み出され、汚され、自由もなく、そして無に消えいく。
最後のフリュネの姿も見るに絶えません。あんなのありえないでしょう。
道徳観がどうかしているとしか僕には思えません。どうしてあんなに酷いことができたのでしょう。

僕個人の見解としてはフリュネが汚される理由は特に無かったと思います。
ではどうしてこんなことになったか。それは作る側がただただ悲劇を生み出したかっただけだろうと思います。
話(物語と呼ぶには決して値しない)の終盤に向けてなんとか大義名分やら目的やらが欲しかったのでしょう。
単発型の扇情的な描写でしか引く手がなかったのでしょう。筆舌に尽くし難いほど素晴らしい脚本です。
視聴者を傷つけるような雑なプロットに、話は簡単には分からないように作り少しでも好奇心を持たせようというだけを目的としたストーリーはもはや灰に等しいです。


決して現実と虚構が錯綜しているわけではありませんよ!その辺はまともな人間であると自分を信じたいw
ただフリュネに関してはもっともっと掘り下げることもできただろうし、
他のことを通してあの積極的で頑固な性格を生かす手段がたくさんあったのではないかと思うのです。
おそらくこの想像があることも悲劇的運命を受け入れられない一つの理由かもしれません。
どうしてかは分からないけれど彼女にはすごくすごく惹かれました。というか大好きですねw
それも最後まで観てしまった今ではもう。とても悲しかったです。

2度とこの作品を観ることはありません。偏見の強い文章ですみません。

{/netabare}

投稿 : 2024/06/08
♥ : 19

ato00 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

宮崎作品の模倣? もう少しがんばって下さい。

フラクタルシステム確立後、千年後の世界。
ここでの人間は完全管理により幸せな生活をおくれる代わりに人間性を失っている。
この作品は、人間性を取り戻すための戦いを描いた作品である。

雰囲気は、古き良き宮崎作品を彷彿とさせ、ナウシカやラピュタの影響がチラチラする。

途中までは、面白そうな展開であった。
しかし、ストーリーとして洗練されておらず、世界観を十分描き切れていない。
もう少しシナリオを練り込めば、成功作になり得た作品でしょう。

OP曲;なんかハマります。
ED曲;アイルランド民謡、いい感じです。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 18

63.3 4 仮想現実で未来なアニメランキング4位
RD潜脳調査室 アールディー(TVアニメ動画)

2008年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (272)
1687人が棚に入れました
2012年、フリーダイバーの波留真理は、建設中の人工島沖合で観測実験の最中、「海が燃える」現象に遭遇し、49年間も昏睡状態に陥った。2061年、長い眠りから覚醒した波留は81歳の老人となり、車椅子生活を送らざるを得なくなった。そんな中、波留は旧友・久島永一郎によって、メタリアル・ネットワーク(通称:メタル)の情報を調査する、電理研外部委託調査員に任命される。メタルは、安全で人々の欲望を満たす一方、現実世界(リアル)の世界に歪みが生じたからだ。こうして、波留は蒼井ミナモとバディ(英語で『相棒』の意)を組み、メタルとリアルの間で起きる事件や謎を追う事になる。

ninin さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

あなたにリアルドライブ!

全26話(攻殻機動隊未視聴)

攻殻機動隊の原作者 士郎正宗と制作したプロダクションI.Gの共同原作作品です。
設定は合わせているようですが、内容には接点がないようです。

ネットワークが発達した世界、通称「メタル」での様々な事件や謎を解決するため、電脳ダイバーで主人公 波留真理(はる まさみち)、ヒロインで中学生の波留さんのバディ(相棒)蒼井ミナモやその仲間たちの活躍を描いています。

キーワード「海」ですね。舞台は海が綺麗な人工島で普通にダイビングできそうな感じです。

基本、1話で1つのエピソードですので、観やすいです。
終盤は、連続したお話となります。

主人公が老人という設定はなかなか斬新でした。

キャラはみなさんちょっと太めです。萌え作画ではありません。

自然と科学技術は調和できるのか、対局にあるのか、そう言ったことを考えさせる作品だと思います。

電脳世界といっても基本人間同士のお話なので、人間味溢れるエピソードが多い作品です。楽しめました。オススメです。

OP/ED アニソンとはちょっと違う感じの曲です。アップテンポな曲ですが、儚さを感じました。

最後に、主人公 波留真理さんの声を担当していたのは森 功至さんですが、私には銀河英雄伝説のウォルフガング・ミッターマイヤーのイメージが強いですね。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 27
ネタバレ

minisaku さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ある意味、インパクトの強い作品

内容は、「メタル」と呼ばれるネットワーク世界。それにより発生する、
リアルとメタルの間で起こる事件を解決していくって感じのお話。
基本的には1話完結で全26話です。

この作品は、主人公が81歳の老人だったり、女性キャラのデザインが
異様に太いなど、少し変わったアニメではありましたが、
個人的には楽しめましたww

電脳化や擬体化など、「攻殻機動隊」に近い用語が出てくるな~って
調べてみると、原作者同じらしいですね。まぁ繋がりはないようですがw


物語としては、地味かも知れませんが落ち着いて見られる
良い内容の作品だと思います。

犬の話、視力を失った少女の話、美食倶楽部の話などなど、
電脳化社会ならではの事件や出来事は、興味深い話も
沢山あって面白かったです。

それに、たまにある素手での格闘シーンが何気に良かったです!!
ホントたまにしかないんだけど、自分はとても好きでしたww


まぁ終盤の展開やラストについてはちょっとな... って思ったりもしたけど、
全体的に見れば楽しめたので、良しとしようって感じです。

それに、これより許容しづらかったトコがあったので... 太さとか...


では最後に、この作品を見て誰もが必ず思うであろう女性のキャラの
キャラデザについて。(ネタバレではないです。ただ、自分の感想を
ぶちまけてるだけなのでww){netabare}

とりあえず... ムチムチ具合が半端無いです!!


太ももは太いし,お腹の脂肪やたるみなどがしっかり描かれています。
明らかにぽっちゃりを超えてる気が...

う~ん... これには一体どんなこだわりがっ!? 誰の好みですか... !?
とツッコミたくなります!!

マジでありえないです!! どういう意図があるのでしょうか...
全く意味が分からないww

さすがに見続けると慣れてはきますが、見始めた当初は切るかどうかすごく悩みました...

個人的には、キャラデザだけで長文レビューが書けちゃうくらいの衝撃度だったし、
実際、見続けるにあたっての最大の難関でしたww
{/netabare}

まぁ攻殻の「姉妹作」、女性キャラの体型、地味な物語などなど、
気軽に見るには取っつきにくい要素もありますが、
個人的には楽しめた作品ではありましたww

投稿 : 2024/06/08
♥ : 25

えんな さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

もうひとつの電脳社会

攻殻機動隊でお馴染みのプロダクションIG、士郎正宗原作の近未来SFモノです
なんとなく攻殻機動隊と似たような世界、共通設定(電脳とか)ありますが別世界みたいですね
けっして二番煎じとは思いませんが、イマイチ影が薄い作品になっているみたいで残念です

主人公はなんと81歳のおじいちゃん!いい味出してます
ヒロインは15歳!オイオイ・・・と思ったら孫と祖父みたいな温かい関係です
主要な登場人物はそんなに多くないので関係性もすぐ把握できます
主人公のcv森功至さんは70年代のタイガーマスク役の方だったんですね
ニュース番組のナレーションで聞き覚えていたので、しっとりとした声で役にあってると思いました

攻殻機動隊とは違った電脳ネット社会を描いてるので楽しめました

個人的に「もっと評価されるべき」

投稿 : 2024/06/08
♥ : 25

72.5 5 仮想現実で未来なアニメランキング5位
HELLO WORLD(アニメ映画)

2019年9月20日
★★★★☆ 3.7 (222)
1013人が棚に入れました
京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。

声優・キャラクター
北村匠海、松坂桃李、浜辺美波、福原遥、寿美菜子、釘宮理恵、子安武人
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

堀口悠紀子氏のキャラで京都が舞台です

劇場版オリジナルアニメ 98分

ご縁があって迷作『バビロン』に触れた時に皆が口々にどう言ってたか?

 「やっぱり野○まどだ。あいつまたやりやがった」と。

『正解するカド』を知らない自分に1人の脚本家が記憶された瞬間でした。この映画。その人がシナリオ書いてるみたいです。漠とした不安。
スタッフでいえばキャラクターデザインが堀口悠紀子さんということで『けいおん!』『たまこまーけっと』などのどこかで見たような造形で展開されるボーイミーツガールにニヤッとできました。日常劇ではなく恋愛もの。正直これだけでなんとなく満たされました。
{netabare}※節穴eyesのため放言するとヒロインの見ためが秋山澪にしか見えなかったです。知ったこっちゃないだろうし言われて迷惑でしょうけど…{/netabare}

視聴動機はあにこれ。自分は視聴前作品のレビューをほぼ読まないためレビューに触発されてではなく、レビュー数に着目。ここ最近の映画もので100件超えてるものは視聴候補に挙げてます。だから皆さんレビュー書いてくれるとありがたい。


ということで観てみました。わりと流して観てみました。あらすじは省略。

不思議と面白かったです。
内容理解できてませんが面白かったです。
辻褄合ってない気もしますが、胸が熱くなりました。

なぜなんでしょうか?
舞台は2027年の京都、とSF仕様。

いろいろ外ではごちゃごちゃしてましたが、「好き」という感情をこねくり回しておらずシンプルにメッセージを発し続けてたからかもしれません。

不満はありますよ。
挿入歌や劇中曲も好みでなかったのかアニメーションと喧嘩してるようにも見えたし、
自然派動画ならまだしもSFならではの強烈な画に職業俳優さんの芝居は負けていて見劣りがします。


結末もわりと好みでした。私も本作品のレビューはこねくり回さずこれにて閉じます。
結局のところ堀口さんのキャラで展開されるゴリゴリのラブストーリーという見ための希少感に引き寄せられたと言えなくもない気がする。


追伸
{netabare}これ略称は“ハロワ”でいいのかしら…{/netabare}



視聴時期:2020年11月 

-----

2020.11.03 初稿
2021.08.15 修正

投稿 : 2024/06/08
♥ : 46
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

HELLO、WORLD

グラフィニカ制作。

2027年、京都、
内気な少年が突如カラスに導かれるまま、
パラレルな世界へと突入するSFファンタジー。

開幕から爽快な音楽で楽しませてくれる。
京都の街並みを俯瞰でダイジェストし、
青春の足音が、軽快にリズムをとる。
馴染みあるキャラデザインは好印象である。

皆さんの感想も拝読しましたが、
{netabare}恋愛要素を期待すれば肩透かしをくらう。
想像以上に本格的にSF展開が続き、
少々、苦しい感想である。
ただそれはこちらの勝手な期待であり、
映画としては及第点ではないでしょうか。{/netabare}
景観も良く、美しい青春劇でもあります。

仮想現実での冒険はやがて、
{netabare}この世界の真実を明るみにする。
世界は二重の入れ子構造であり、
数々の選択肢が未来を改変、刺激し、
物語は複雑なままで、幕を閉じる。{/netabare}

新しい地平は希望に満ちている。
ハロー、ワールド、良い言葉です。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 46

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

仮想世界に魂の洗練を託す……挑戦的な3DCG映画

【物語 4.0点】
青春ボーイミーツガール、時間差を盛り込んだSF設定、ヤマ場でMV風演出……。

同時期、乱立したアニメ映画企画群の中でも、
本作はSFとして情報量多し。

現実に匹敵する仮想世界を観察するこの世界もまた仮想世界で……。
という入れ子構造を生かしたシナリオはSFとして刺激的。

俳優や音楽目当ての一般層よりも、
歯ごたえのあるSF設定も楽しみたいマニア向け。


『SAO-オーディナルスケール-』までの監督・伊藤 智彦氏が
引き続きVRMMO物をやりたいと始めた企画なので
『SAO』をテーマを咀嚼して体験したような方なら付いていける。

他にもSF関連や、
プログラム入門者が最初に紹介される例題から借りたというタイトル名、
PCゲーム『平安京エイリアン』みたいな惨状(笑)とか、ネタ多し。


これを既視感と断じるのは簡単だが、
私の場合、既視のSF設定等を当てにしないと理解仕切れなかったのも事実(苦笑)

なのでここはオマージュとして好評します。


脚本は野崎 まど氏。“脚本テロ”による奈落突き落とし等を警戒される方もいると思いますがw
むしろ昨年、私が劇場鑑賞したアニメ映画の中でも、本作の余韻の良さは屈指でした。


一方で解釈しきれない謎も残される。

本作にはBD特別盤同梱or一部配信サイト限定で、
大人・ナオミ視点で綴られた短編アナザーストーリー『ANOTHER WORLD』もありますが、
それで補完し切れない点もあり、鑑賞者の想像に委ねられる。


【作画 4.5点】
果敢なセル画寄りの3DCG作画。

群衆やアクションに長があるCGの力をしっかり濫用する一方、
意外に日常ラブコメシーンも多い本作。

CGが不得手な萌えやコミカルも提供しようと、
制作に「フェイシャル・スーパーバイザー」なる顔面チェック担当のポジションを設置。
さらに勝負所ではキャラクターデザインの堀口 悠紀子氏自らが原画を担当するなど、
人物の表情に不自然さが生じないよう尽力。
成果は赤面するヒロイン等に確実に現われている。

ただ、それでも私はラブコメは手描きの方が好きですがw
けれど本作の挑戦は評価したいです。


日本有数の計画都市である京都。
碁盤状の古都に近未来の仮想世界が重なり、現実をひっくり返す描写はダイナミック。

私のツボ:見下し視点で描かれた、
区画ごとマス目を動かしてピンチ脱出を図る想像力爆発シーン。


【キャラ 4.0点】
ヒロインの一行さん。感情希薄な図書委員。ツンデレ成分配合。
彼女に萌えるかどうかが特に前半日常パートを楽しめるか退屈するかの分かれ目。

萌えキャラとしては標準的な属性の一行さんだが、
文化系でも意外と強気で頑固な性格がツンとして消費されるだけに終わらず、
濃厚なSFシナリオの中でしっかりと回収されるのが評価ポイント。

私の中で、一行さんは萌えキャラでもあり、ある種の燃えキャラでもあるのです。
さあ、「やってやりましょう」


多分に生き方を問われるシナリオ構成の中で、
主人公少年・直実と外部世界から来た大人・ナオミが、
世界との関わり方を通じたキャラ立ちにより、
テーマを深化させているのも〇。


【声優 3.5点】
直実 CV.北村 匠海さん。ナオミ CV.松坂 桃李さん。ヒロイン CV.浜辺 美波さん。

実力も人気もあり、かつアニメへの理解もある若手俳優陣でメインを固める。


ただ、この役者さんたちの演技力を引き出したかと言うと、
私はもっとやってやれた感じもします。

映像にしても状況理解に想像力が求められる本作にて、
アフレコ(映像に合わせて収録)ではなくプレスコ(声を収録してから映像)で、
台本だけで、SF設定が絡む場面を思い浮かべながら声を提供する
というのは俳優陣にとってはかなりハードルが高かったのかもしれません。


大人・ナオミ役も声は合っていましたが、
一方で、上記の『ANOTHER WORLD』では声優・松岡 禎丞さんが大学時代を演じていて、
正直、本編も松岡さんで良かったじゃんと言う気持ちが抑えられませんw


脇を固めた声優陣はプレスコでも盤石。



【音楽 4.0点】
気鋭。

OKAMOTO`Sらが若手アーティストらを束ねたチーム「2027Sound」が、
多彩な劇伴&楽曲を提供。
Official髭男dism「イエスタデイ」、OKAMOTO`S「新世界」といった主題歌は、
キャッチーなメロディがBGMとしても再三アレンジされ、堅いSFの大衆化を試みる。

……の割には興収……伸びなかったな……(遠い目)


【感想】
仮想現実がリアルに追い付き追い越した時、何が起こるのか?

『SAO』や他のSF関連でも再三問われて来たテーマに改めて挑んだ本作。
これらの作品群に通底するのは、
魂の虚実が問題なのではない。リアルでもバーチャルでも邪悪な意志はある。
バーチャルを見下し悪用しようとする人間もいる。
そんな中でも、善き魂が残り、新しい世界の道しるべになって欲しい。
こうした近未来に向けた願いなのだと思います。

この春にラストシーズンを迎える
『SAO』のテーマを受け止めるためのお供にもオススメしたい、
良作SF映画です♪

※初回投稿4/10

【追記】
……と思っていたら、『SAO』も新型コロナの影響で放送延期に……。
厳しい春ですね……。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 34

62.7 6 仮想現実で未来なアニメランキング6位
.hack//Quantum[ドットハック クワンタム](OVA)

2011年1月28日
★★★★☆ 3.7 (76)
487人が棚に入れました
攻略不可能と言われるイベント「ザワン・シン」。そこに無謀にも挑む3人組のパーティがあった。双剣士のサクヤ、斬刀士トービアス、そして撃剣士メアリ。彼女達は迷宮で道に迷い、モンスターに追われている間に冒険者ギルド「八咫鏡」と遭遇する。が、うっかり発動させたトラップにギルドメンバーをはめてしまい大惨劇を引き起こす。翌日、賞金首となってしまった彼女達はタウン内でも付け狙われることに。逃げ惑うサクヤの前に、ハーミットと名乗る猫型プレイヤーが現れこう尋ねてくるのだった「キミ、あそこで何か変わったもの拾わなかった?」はたしてハーミットの探し物とは!?

coldikaros さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

もしかしてゲームやらないと分かんないのかな?

作品単体としては正直相当急ぎ足だったこともあり、個人的にはあんまり面白いとは思いませんでした。
僕はそこそこ.hackの世界観を知っているつもりなのですが、もしかしてこれはLinkをやらないと細かいところまで分からないんですかね^^;
これまでのシリーズから見ると色々と疑問なところがあって、かなり気に食わなかったです。
声優さんも豪華で作画も相当なものなのでそこら辺は評価できると思います。
ですが、やっぱりストーリーはもうちょい工夫が欲しい所でした。
とにかく、急ぎ足はいけませんね。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 3

スレイブ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

.hackファンなら見るべし、初見はおいてけぼりにされるかも・・・

OVAとしてリリースされたこの作品3巻合わせて約90分の中に少し話を詰め込みすぎたため、他の方が言われているとおり駆け足気味な展開になっています。しかし起承転結はそれなりにはっきりしています。

しかし所々にファンならニヤニヤしてしまうネタが散りばめてあり、映像もとても綺麗でThe World RXの世界観を理想の形で表現できているのではないでしょうか。

ただ.hackの特徴としてこの作品だけではすべての付箋は回収されません。
OVA1巻は初見の方でも難なく楽しめると思いますが、2巻以降はほかの作品(主にゲーム三作)を行っていないとおいてけぼりにされます。(例として2巻のジャムロックの別件の話等)

この話を見てあれはどういうことだったのか?とか世界観に魅了された方はほかの作品に手を出して見るのもいいと思います。ほかの作品に手を出してからこの話を見ると自ずと評価は変わるのではないでしょうか。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 3

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

猫だ!

The World R:Xとなっていて
同タイトルR:2以降の時系列。
3話完結で90分程度の映画並。

相田 亜澄(花澤香菜)PC名サクヤ
生田 衣織(沢城みゆき)PC名トービアス
江藤 衿(藤村歩)PC名メアリ
同じ高校に通う仲良し3人組
が楽しくゲームをしているが・・

脳天気でトラブルメーカーの
アスミに巻き込まれ御尋ね者に・・

逃げ回る最中に規格外のネコ型
PCハーミットと出逢い不思議な
世界に入り込んでしまう・・

その後未帰還者となったエリを
助ける為、謎を解こうと探偵の
真似事を始めるが・・どうなる。

キャラデザや声優など最近の
美少女系アニメの様な感じ。

構成や演出も良い感じで映像も
それなりに綺麗な感じ。

歴代のメインキャラ等関連性を
描くカットも入り世界観を大切
にした感じもある。

次々とスピード感のある展開で
結構魅入ってしまった。

基本シリアスなので悲しく切ない
描写もあるけど良い話でした♪

元々このシリーズはリアルと
ゲームを意識した描写が特徴
ではあるけど、リアルの人物
とPCキャラが同じウェイトで
描かれるのはこれだけかな?

投稿 : 2024/06/08
♥ : 3
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