不気味で学園なおすすめアニメランキング 8

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの不気味で学園な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月27日の時点で一番の不気味で学園なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

71.1 1 不気味で学園なアニメランキング1位
ブギーポップは笑わない(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (414)
1736人が棚に入れました
竹田啓司は、同じ学校の後輩でもある恋人の宮下藤花を待っていた。しかし約束の時間が過ぎても彼女は現れず、連絡も通じない。日も暮れ始め、あきらめて帰ろうとした竹田の視界に涙を流しながらふらふらと歩く男の姿が映る。どう見ても普通ではない男の姿に、竹田自身も、そして周囲の人間たちも我関せずを決め込んだそのとき、不思議な人物が男に駆け寄ってくる。大きなマントに身を包み、奇妙な帽子を被った不思議な人物。ソレは竹田との待ち合わせをすっぽかした宮下藤花と同じ顔をしていて……。

声優・キャラクター
悠木碧、大西沙織、近藤玲奈、小林千晃、下地紫野、諏訪彩花、榎木淳弥、市川蒼、竹達彩奈、宮田幸季、八代拓、市ノ瀬加那、細谷佳正、長谷川芳明、阿澄佳奈、上田燿司、花澤香菜
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

どっからどう見てもポップ・・・ではないよね

『これは猟奇サスペンスであり青春群像劇であるんだよ』 

相反しそうな言葉を同一の意味合いのものとしてキャラに語らせる。するとあら不思議!深淵なる哲学的ななにかに聞こえてきます。

『猟奇サスペンスである一方青春群像劇』 並列は×
『猟奇サスペンスである以上に青春群像劇』 序列も×

いずれもパンチが弱いため、ここではあくまであたかも相反するものが一体となってるような表現に努めねばなりません。

・レトリックのみでくどく、キャラをイタく感じてしまうのが “梅”
・レトリックがハマリ、キャラに魅力を感じてしまうのが “竹
・レトリックとストーリーがマッチし、作品に魅力を感じてしまうのが “松”

本作『ブギーポップは笑わない』はまごうことなき松!
抽象的な「世界の危機」という大問題を巡って登場人物たちの極めて主観的な台詞回しで進行していくサスペンスタッチの青春群像劇のようなものと言ってよいでしょう。猟奇性を帯びたキャラクターも複数登場するため、グロ描写も所々出てまいります。


1クールなのに全18話のお得感。トリッキーな放送スタイルのおかげで何話か飛ばしましたがなんとか視聴を完了しました。配信やタイムシフトのある時代で良かったです。
そんな便利なサービスの欠片もなく、ラノベという単語も浸透してなかった1998年に刊行されたヒット小説のアニメ化です。
元ネタの刊行年度を考えれば古典といって良いでしょう。私としては珍しく原作既読の作品です。作品の意義だったり影響等についてはgoogle先生あたりをご参照くださいませ。

実際に視聴してみて巷で言われるような “古臭さ” というのが実はよく分かりませんでした。
だいぶ原作の記憶が薄れているためほぼ初見のような新鮮さで堪能できてます。全18話を通してキーになる人物(人格)がブギーポップ。いくつかに別れたエピソードはこちら、

(1) 第1話 - 第3話 ブギーポップは笑わない
(2) 第4話 - 第9話 VSイマジネーター
(3) 第10話 - 第13話 夜明けのブギーポップ
(4) 第14話 - 第18話 オーバードライブ 歪曲王

計4つのエピソード。時系列は前後してたりするのでながら見は禁物です。時系列の掴みづらさと同様に、キャラ相関が難解、そして台詞回しが難解です。私は後者をあきらめました。
ただキャラ相関は小難しそうに見えて意外とシンプルなのではなかろうかと思ってます。ここが掴めてくるとテーマらしきものも見えてくる作品でした。


◆相関その1 二つの二項対立
・《世界の敵》 と 《世界の敵の敵》 の二項対立。
{netabare}《世界の敵の敵》はブギーポップ。前者はブギーポップに“自動的に殺される”人が目安でした。合成人間もいいセンいってますが、MPLSと呼ばれる元は普通の人間でふと異能に目覚めちゃったのが敵認定される場合が多かった気がします。{/netabare}

・《社会の敵》 と 《社会の敵の敵》 の二項対立。
{netabare}霧間お父さんの「社会の敵」というセリフに引っ掛かりを感じました。統和機構に殺されるのが《社会の敵》に見えます。ブギーポップは社会の敵は殺しません。{/netabare} 

《敵の敵》の主語は一つで《敵》はいろいろですが、《世界の敵》か《社会の敵》かに分けて整理するとスッキリします。《世界》と《社会》の違いはようわかりませんでした。
{netabare}強いて言えば
《世界の敵》はマジやばいやつ。世界を滅亡に陥れる者。
《社会の敵》はプチやばいやつ。世界を大混乱に陥れる者。{/netabare}

{netabare}ここでふと、《世界の敵》は超異能だけどスケールが小さいというか世界はさすが言い過ぎじゃね?と思ってみたり。
この作品でいう世界の規模感や質感が我々がイメージできるものならば、目立ってマークされてそのうち一個師団が出てきて壊滅させられる程度の異能ぶりです。おそらく煮詰まった上で殺される前といいますか勃興期のイケイケな時にブギーポップが登場するのかもしれません。だからこう噂されてるのかな。

{netabare}「その人が一番美しい時に、それ以上醜くなる前に殺す」{/netabare}{/netabare}


◆相関その2 宮下籐花はモブ
ブギーポップが主要人物であることはよいとして、肉体を間借り!?している籐花にも焦点をあてると混乱します。
先入観だと、ふつう主役はこの人だよって観る側に柱を作ってあげてから話を進めるとか、群像劇でもグループ(だいたい5名くらい)を作ってその囲いの中で話を進めるものだと思うのですが、それがありません。登場人物の母集団に大きな変動はないのにです。さらに4エピソードと分けてることでなおさらこんがらがります。
前のエピソードで主役を張ったかと思えば次のエピソードは台詞なしとか、ブギーポップに視点を置きたいけどなかなかもったいぶって出てこないとか。
{netabare}当初は、別人格に悩まされる少女(宮下籐花)と恋人竹田啓司との奮闘記を想像してしまったせいでとても混乱した私です。{/netabare}
{netabare}霧間凪も髪型変わってヴィジュアル判別が難しくなったりとかホント勘弁して~{/netabare}


対立の構図や人物相関が整理できたらあとは身を委ねて完走です。
こういった「世界の危機」といった抽象的な大問題をさも大事のように扱う作品って、外からだと馬鹿馬鹿しくつまらなく見えがちなのですが、中に入ってみるとけっこう陶酔できるものです。
作品が世に出た1998年あたりで例えれば、ヴィジュアル系バンドの歌詞世界とライブ模様みたいなものかと。「破滅」「追憶」「世界の果て」「彷徨」「闇」「孤独」「血」「薔薇」「憂鬱」「堕ちる」・・・とだんだん楽しくなってきちゃったのでこのへんで。あと「とりあえずフランス語」。

極めて私的で閉じた空間でのダークな物語。
きっと中学生や高校生くらいの思春期に出会ってたらドはまりしてたと思います。では思春期が遥か遠い大人の私はどうだったかというと、「とても楽しく鑑賞できました」になります。
毎度OPが楽しみだったのと、意外と大人がいい役回りをしてたことが理由としては大きいですね。語り部的な大人らしい大人もいれば、大人になりきれなくて身を滅ぼす大人と。
彼ら高校生が抱く未来への期待と不安を象徴するような大人ばかりでした。
子供ばかりだけだったら見られなかったような気がします。

思春期世代の抱える不穏さをファンタジーでふわりと包んだ良作です。

この作品に影響を受けた奈須きのこ氏の『空の境界』にドはまりした私にはとても相性の良い作風でした。



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2019.09.19追記 


視聴時期:2019年1月~3月 リアタイ視聴



2019.04.27 初稿
2019.09.19 追記

投稿 : 2024/05/25
♥ : 51
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

多様性から生まれる「金」の泡

アニメーション製作:マッドハウス、監督:夏目真悟、
シリーズ構成・脚本:鈴木智尋、音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン、澤田英彦、原作:上遠野浩平

世界が危機に陥ったときに現れる
不気味な泡、ブギーポップという人格。
左右非対称の奇妙な表情をして
筒のような帽子とマントを身に着けている。
その存在は、ひとつの都市伝説のようなものだった。

1998年に発表された電撃小説大賞の大賞受賞作。
この作品に影響を受けたラノベ作家は多く、
西尾維新は作家を志望するきっかけになったと語り、
奈須きのこは『空の境界』の「矛盾螺旋」でのアイデアは、
この作品の『歪曲王』に登場する「ムーンテンプル」に
インスピレーションを得て考案したことを公言している。
ライトノベル作家に影響を与えたという意味では、
1984年から刊行された笹本祐一の『妖精作戦』シリーズに
匹敵する作品だろう。

原作については、アニメ化された作品は既読。
しかし、読んだのは10年以上前のことで、
アニメを観て、ようやく少しずつ思い出した。
ちなみに原作で好きだったのは、
『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』と
『歪曲王』だったのは記憶している。
パンドラのほうは、残念ながらアニメ化されなかった。

そして今回のアニメ化を観て、まず感じたのは、
普通に一度観ただけでは、まず理解できないだろうと
いうことだった。私自身もそうだった。
原因は、登場人物が多すぎて覚えきれないことがひとつ。
ふたつ目は世界観が少しずつ明かされていき、
構造が複雑なため、展開に追い付いていけないことだ。
だから、この作品を1度で理解しようとするなら、
ウェブサイトなどで、登場人物や世界観を頭に入れてからの
視聴をおすすめする。その場合は、物語のあらすじを
観る前から、ある程度知ってしまうことになるが、
知ったからといって、魅力が薄れてしまう
種類の作品ではないと思う。
それを避けたい人は、2度観る覚悟が必要かもしれない。

もう20年も前の作品だが、個人的にはそれほど
古さを感じなかった。
そして原作をとても上手く映像化している。
世界の敵、統和機構、合成人間、世界の危機を回避する者、
人類の進化形であるMPLS。
これらを中心に哲学的、思春期特有の思考が重なり、
物語が展開していく。

1~3話『ブギーポップは笑わない』
4~9話『VSイマジネーター』
10~13話『夜明けのブギーポップ』
14~18話『オーバードライブ 歪曲王』
という4つの作品で構成されており、
多くの登場人物が錯綜しながら、
さまざまな伏線が回収されていく。
小説では『VSイマジネーター』が2冊分、
ほかは全て1冊で完結している。
シリーズ通しての主人公は、
ブギーポップになるのだが、
その存在を目撃したり、相対する者が
真の主人公になるため、
視点をどこに定めれば良いのかが
分からなくなってしまうのが欠点だろう。
「正義」と「悪」という明確な概念がなく、
常に視聴者に哲学的な思考を強いるのも
観にくさにつながっている。

1~3話は登場人物や世界観の紹介と、
怪奇ミステリー的な要素が色濃く、
それほど特筆すべき点はないのだが、
4話からの展開は視聴者を引き込む。
時系列順に観たい人は、ブギーポップ誕生の
10~13話を先に観て、
そこから1話に戻るのも良いだろう。

四月に降る雪、落下する鳥、
扇動者のような存在であるイマジネーター、
心のなかにある薔薇、隠された心の歪み。
哲学的なイメージをエンターテインメントに
転化させる手法が鮮やかだ。
まるでポール・オースターの初期三部作を
初めて読んだときのような感覚。

物語の構成、音楽、声優は一級品。
悠木碧が上手いのは周知のことだろうが、
やはり抜群の仕事ぶり。
また『聲の形』や『リズと青い鳥』で知られる
牛尾憲輔の劇伴が世界観と完全にマッチしている。
作画も個人的には違和感がなかったし、
上手く描き分けている。

この作品を象徴しているのが
『オーバードライブ 歪曲王』編だ。
そもそも原作の上遠野浩平は、ここでシリーズを
終了させるつもりだったので、
これまでの要素が集約されている。
『VSイマジネーター』で表現された
心に薔薇があって、誰もが何かが欠けているという
表現とリンクしている部分もある。

{netabare}合成人間の天才建築家・寺月恭一郎が
統和機構に処分される前に多くのMPLS候補者を
一堂に集め、覚醒させるために建設したムーンテンプル。
その集まりに乗じて歪曲王が現れる。
歪曲王は、人間の心残りとして封じられた
多様性ともいえる願望を「金(きん)」に変えることが、
何かを突破するきっかけになると考え、実験を行う。
自身の問いに対して答えを探すための行動でもあった。
それは人にどのような効果をもたらすのか。

年を重ねるごとに私たちは、心の奥に何かを封じていく。
それは大人になるために必要なことだが、
人間の多様性を平坦にして
可能性を摘んでいくことにもつながっているのではないか。
まるで最近の企業が取り入れている
ダイバーシティを先取りしたような思考。{/netabare}

人類に未来や進化があるとするなら、
純粋な心の中に答えが示されているのかもしれない。
(2019年4月26日初投稿)

ブギーポップと時代性
(2019年4月27日追記)
{netabare}この小説が登場した90年代は、
ノストラダムスの大予言の影響から来る終末論や
バブル崩壊、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件が
起こったことで、暗いイメージが付きまとう。
しかし、個人的には何かを突破することが
求められた時代とも感じている。
発想の転換ともいえる宮崎学の『突破者』という本がヒット。
そして音楽でいえば、生音のロックから端境期を超え、
より電子音を重視したドラムンベース、
全くの新しい音楽であるHIP HOPなどの
既存のスタイルを突破したジャンルが一気に登場した。
アニメ業界に変革をもたらした
エヴァンゲリオンの放映も90年代。
終身雇用制という働き手のあり方も変化した。
それまでの常識が覆された時代だった。
そして、純文学かミステリー、時代物しかない
小説のあり方を大きく変えたきっかけが
まさにこのブギーポップシリーズだった。
世界に「危機」が迫ったときに自動的に現れる泡。
このシリーズはそういう時代の流れを
象徴した作品といえるのだろう。{/netabare}

投稿 : 2024/05/25
♥ : 70

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

「ブギーポップは半笑い」

<2019/4/23 追記>
ようやく見終えました。
バタバタしててなかなか消化できず。

歪曲王まで見てなんとなく思い出してきました。

感想としては「アニメにしづらい原作だなぁ」とあらためてしみじみ。

敵を倒すとか
感動を催すとか
圧倒的に怖いとか

そういう話じゃなくて。
作者の伝えたいことが抽象的且つ主観的な話なので。
そういった事柄を感覚的に受け入れられないとつらいと思います。

まぁでもそうした感覚は歳を経ると得られていく部分でもあるので、「よくわかんなくて面白くなかったー。地味ー。」という方は10年後にあらためて視聴することをお勧めします。

決してわけわかんない話ではないと思いますよ。
寧ろ青臭くわかりやすい。

と、細かい考察が苦手で、本作も理解が適当な私の適当な感想でした( ・∇・)

あとOP曲は好き。


<2019/3/3 追記>
みなさん、Happyひなまつり♪

それはさておき、ブギーポップ危なかったですねえ。

何がって、10〜13話をいつもと違う時間帯で一挙放送て。
たまたま9話をオンタイムで観てて、一挙放送のテロップで気がついたから良かったけど。

なにしてくれんの( ̄Д ̄)ノ

さてはコアなファン以外に見せる気ないな


<2019/1/25 追記>
第5話観ました。
イマジネーター読んだはずだけどいろいろ忘れてる。
霧間凪に弟いたっけ?
いたような気もするけど
あれ?こんなホモォ・・・なエピソードあったっけ?
スプーキーEってこんなつぶらな瞳なの?
中年太りなのは記憶通りだけど
とかとか。

カメラが追いかける人物がコロコロ変わるのは確かにそんな感じだった。
初見のような気分で見られるのはある意味お得なのかもしれないですね。

<2019/1/14 初投稿>
見始めなので評価はデフォルトの3.0です。

原作はラノベ。
もう10年以上前になるのかな。
途中まで読みました。
なにせ既刊が多いので。
そしてかなりうろ覚え(´・_・`)

原作はラノベ界では有名な作品です。
ラノベをここまで流行らせたきっかけになった作品なんじゃないでしょうか(たぶん)

「ブギーポップは笑わない」
タイトルがキャッチーですね。

例えば「世界の中心で愛を叫ぶ」に通じるものを感じます。
これはエヴンゲリオン最終話「世界の中心でアイを叫んだケモノ」が元ネタで、
そのエヴァも大昔のSF小説「世界の中心で愛をさけんだけもの」が元ネタだったりしてますが、
要は意味はよくわかんないけどキャッチー

「ブギーポップは笑わない」もタイトル先行な気もしますが、書店の本棚に置いてあると目が行ってしまう、ついつい手に取ってしまいそうなナイスなタイトルだと思います。

ジャンルとしては「セカイ系」
1作目の発刊はエヴァのちょっと後ですし時代ですね。
つまりちょっと青臭い。
自分と世の中との関係性に悩む年頃に読むとピタッとハマる作品です。

主役のブギーポップさんは
「世界が危機にさらされると自動的に現れる」
そうです。
セカイ系だから、ね。
そういえば最近までグリッドマンさんもやたら
「裕太!世界の危機だ!」連呼してました。
親戚かな?

どんな危機かは見てのお楽しみです。

ただセカイ系というだけではなく、物語の展開や設定に工夫を懲らそうとチャレンジしている点は好感が持てます。

一見、敵と思える相手のことをブギーポップさんは実はそんなに相手にしておらず・・・とか。
ポイントをずらしてハッとさせる感じの作品。


アニメはまだ3話までしか見ていないですが、原作をうまく表現してます。
ただ原作読んでないと何が何やら(´・_・`)?という気も

雰囲気は一貫して暗いのでそういうの苦手な人にはさらに辛いかも。

あとブギーポップの表情。
原作では左右非対称の奇妙な表情とあります。
半分笑って、半分泣き顔でみたいな感じでしょうか。
それがアニメでは「半笑い」に見えてしまいました。
ここら辺を映像で表現するのは難しい。
文章なら一行なのに。

ものすごい好きかと言われると微妙だけど
懐かしさもあるのでたぶん最後まで見ます。


最後に

スポルディングのスポーツバッグ懐かしいなー
アニメではどうなってんだっけ?

投稿 : 2024/05/25
♥ : 54

64.9 2 不気味で学園なアニメランキング2位
惡の華(TVアニメ動画)

2013年春アニメ
★★★★☆ 3.2 (1142)
4501人が棚に入れました
中学編 クラスの美少女・佐伯奈々子に密かに想いを寄せる春日高男。ある日の放課後、出来心により彼女の体操着を盗んでしまうが、その様子は嫌われ者の女子・仲村佐和に目撃されていた。窮地に陥り、仲村からの無茶な要求に翻弄される中、意外なきっかけから佐伯とつきあうことになり、春日は恋心と背徳の自己矛盾に苛まれる。そんな彼に呼応するかの如く、佐伯も内に秘めた意思を徐々に示すようになるが・・・。
現実社会の閉塞感に自己認識を見出せず、遣る瀬無い自我を抱える3人の中学生のアイデンティティは互いに交錯し、儚い逸脱へと向かっていく。
高校編 中学校編から3年後、春日高男は中学時代を過ごした群馬県から引っ越し、埼玉県で高校生活を送っていた。ある騒動以降仲村と離れ離れになりながらも春日は仲村への思いを捨て切れず、そして抜け殻のように毎日を過ごしていた。そんな春日はあるきっかけから男子の憧れの的である常磐と交流を深め、常磐の中に仲村の影を感じていく。

声優・キャラクター
植田慎一郎、伊瀬茉莉也、日笠陽子、松崎克俊、浜添伸也、上村彩子、原紗友里

ソラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

その人を知りたければ、その人が悪の華に対して何を感じてるかを知れ

レビュタイ通り本作も充分おもろいんだけど、本作を見た視聴者の反応を伺うってのもまたおもろいんですよね。
それは、これに対する反応でその人がアニメはもちろんのこと、アニメ以外について消費者としてどういう価値観を持っているのか、
どういう向き合い方しているのかが分かりやすく読み解くことができるからなんですよね。
あと、賛否両論以前にレビューの書き方のバリエーションが豊富でおもろいんだよね。
なので、あにこれのレビューとか定期的に覗かせてもらってます。


▪️感想

とある郊外の文学少年・春日くんが自分で自分を客観視できるようになっていき、中二病から高二病へと成長していく良い意味で薄気味悪い物語。

この話、主に3つに分類すると、
自分の変態性を自覚していて開き直り、自覚のない人間を見下す仲村さん視点。
自分が少数派な存在だと自惚れながら少数側と多数派の間で揺れてる春日くん視点。
承認欲求が高いがために少数側の気持ちを承認しようとした佐伯さん視点。
この高い自意識からくる3つのタイプが入り混じり、それぞれに賛否、共感、達観しながら成立しているわけです。ま、こういう自意識って自分が多数派であることを信じ、少数派を否定する考え、いわゆる世論が引き起こしてるもんなんだけども。

自分の個性、変態性に必死にもがき苦しみながらも向き合い続ける心情や、自分が認識できる狭い範囲のマジョリティ側に背を向けマイノリティ側(山の向こう側)へ行こうとする探究心に関しては制作者気持ちと悪の華の登場人物達とはシンパシーを感じました。
そんな登場人物達の狂った描写なんかは貴重でおもろかったです。そうやって苦しんでもがいて悩んで狂った後の傷痕が後にいい思い出になるはず。ここらへんも二次創作に対して、シナリオがおもろいのが最優先と考えるか、シナリオの中で見え隠れする制作者の心理を最優先にするかどうかで、見え方も大分変わってくるだろうけど。

扱っているシナリオ、テーマ、技法が希少でありながら、どう作品として成立させるか。希少価値が高いほど難しいが、成功させた時の達成感が大きい。ま、それは一個人の視聴者側の勝手な都合による見解であって、書き手にとっては気にせず、ただ自分が表現したいもの自分の趣味思考が大衆の趣味思考とは違っただけと感じながら二次創作として成立させている人が多いのだと思う。だからこそ斬新で感情移入がしにくい設定やシナリオでも自然に演出ができているのでしょう。

実写トレースなんてせず、そのまま実写でやればいい。という意見を聞く、確かに実写で公開されたのはなかなか好評だったらしいけど、アニメでもやってくれてよかった。
そもそも私は『アニメはこうあるべきだ。』や『実写はこうあるべきだ。』という勝手な思い込みを捨てるようにして見ていて、失敗を恐れずどんどん新しいことに挑戦していって欲しい。と思っている身勝手なタイプの人なので、あまり目くじらを立てようとは思えない。そもそもそんな固定概念が表現の幅を狭めているみたいで好きになれない。
てか、最近は感情移入できる、できないか、という論争は二の次で、少数派か多数派か、新しいのか新しくないのか、という枠組みに重きを置いてるような気がします。なのでそういう面で物事に興味あるかないかの判断にきびしくなってきてます。

てか正直技術的なことは分らんけど全編ロトスコープでやる意味が分らないっていう批判が沸くってのは絵で物事を描こうとする限界を指しているのかもしれないですね。想像画とロトスコープの良いとこどりってやり方なら色々やりようがあるみたいだけど。ま、ネタとして楽しめました。
長濱監督は実写に関しては素人だから、うまいはずがない。という意見を目にした。ならば、実写に慣れている監督さんとかの作品でロトスコープを試してみたらどうなるのかな。と単純に疑問を持った。
最近ではロトスコ演出増えっていってるようなので手書きとCGとロトスコなどの技術を上手く組み合わせて頑張って欲しいですね。

まーそもそも私は4、5年くらい前までは実写ばかり見ていた人で、近年は実写の表現だけでは限界があるなと思いながらアニメも見ているので、アニメと実写の美味しいとこどりしてるって状態、アニメも住み分けして見てます。

それと、私、一見マイノリティを擁護しまくってるマイノリティ中毒者のように見えるけど、根はけっこうミーハーな野郎でして、流行りものや話題性のありそうなのはできるだけチェックしようとするスウィーツ(笑)的な部分もあったりします。でもなんか流行ってる一定のシステムというかロジックがある程度分かってしまったら、あっさりと手放して深くはのめりこもうとしない、というなんとも冷ややかな付き合いばかりしています。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 34

あめんぼ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

意外とはまってしまった。

元々漫画を読んでいたので、、最初トレーラーを見たときは「えええええ全然違う!ひどい!」と思いました。

次に、見始めてこういう画風にするならアニメじゃなくてドラマでもよかったんでは?と思いました。

しかし4話あたりから、これが正解だと思うように。

思春期独特の、決して軽やかでもさわやかでもない空気、周りの目が気になって、友達も必ずしも信用できなくて、でも異性は気になって、そういった少し鬱陶しい空気が、この手法だからこそ出せたということ。
漫画のかわいい絵ではリアリティに欠け、ドラマだと具体的な俳優の顔が見えることで共感が薄れる。
女子中学生の太ももの太さのリアルさと、質感の偽物加減が、ちょうどいい匿名性をもって物語を展開する。
だから、あのころの空気を胸いっぱいに思い出して、懐かしいような、思い出したくないような気分になる。

景色をひたすら映すなど冗長な場面もなくもなかったけど、回を重ねるごとに癖になる作品でした。
最初の抵抗感が、抵抗感ゆえに噛み応えのある食感に仕上がっていると思います。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 18

らしたー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

好きの反対は嫌いじゃなくて無関心

*視聴完了(7/1更新)

仲村役の伊瀬茉莉也の演技力に支えられてた部分が大きかったなあ。
ますます売れっ子になるんじゃないかしら。(声優点を上方修正)

どなたかが、これこそ「中二病でも恋がしたい! 」である、とおっしゃっていたが
またうまいこと言うなと。たしかにそうだよね。

--更新ここまで--


なんていうか、ここまで「アリかナシか」で盛り上がるのも久しい気がする。もはや共和党か民主党かってなもんで、『惡の華』を話題にするときは阪神ファンしかいない飲み屋に入って原の采配やら江川のストレートについて語るくらいの心構えちゅーか、場合によっちゃ友人ひとりなくすくらいの覚悟が必要に思う、ってのは言い過ぎとしてもですよ、たとえば作画の評点だけをざっくり眺めても明らかにクオリティではなく「好き嫌い」が支配しているのは興味深いよね。

そのことをもってあにこれというサイトについてどうこう思うことはまったくもってナイのだけれど、問題作とはかくあるべし、てのを久々に目の当たりにした一種独特の高揚感とでもいうか、「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心」という格言の示すところをまざまざと体現してくれたよなあと個人的に妙な感動を覚えてしまうのです。

まあ、たしかに尖り具合が尋常じゃない。

リアルタイムでアニメを観ながらニコニコ実況の様子を眺めると実に面白くて、CM中に原作コミックスの宣伝が流れるやコメント画面が「この絵で」弾幕で埋め尽くされるのである。そんな様子をみて、それはそれで商業的に正解かもなあと思いつつも、この人たち文句たれつつちゃんと観てるんだよな…と感心したりもするわけで。

原作者の押見修造と長濱監督の対談で、「とにかく消費者に刺さるものを作りたい」という文脈があったと記憶していますが、その点では間違いなく成功してると思う。てかあんだけ尖ってたら刺さることは刺さるよな、誰にでも、うん。


作品内容にまったく触れていないけどいいよね、これ。惡の華、アリですよ。

原作は原作で好きなんですが、アニメの気色悪さは正直クセになる。好きか嫌いかという軸ではなくて、無視できない、てのが感想として真っ先にきた。いきなり違う土俵で試合が始まっていて、ちょ待って!ってのが言ってみればつかみ。そこで展開されるのは、とてつもなくリアルな舞台で行われる、すごくアンリアルな青春ストーリ。

仲村みたいなのは、やたら権力のある生徒会とか美人ツンデレ風紀委員とかとアイテム的には同列で、リアリティのある舞台に放り込まれたアンリアル側の刺客ですよ。性質としてあの手のアタシ世界を内側に抱えちゃう人間はたしかにいるんだけれど、それを全開で他者に、それも異性に接続してくるってのはなかなかない。突き抜けた個性が根暗少年とクラスのマドンナを巻き込んでグロテスクな三角関係を構成するという点まで含めて極めてアンリアル。だから面白いんだけども。

てのはいいとして、このハードパンチャー仲村のエキセントリックな言動をぜんぶノーガードで受け止めてしまう春日も春日でね、まあ春日がそうであるがゆえに物語が成立してるわけでもあるのですが、もうフルボッコで見るに忍びない、でも無視できない。見ちゃう。笑っちゃう。

春日のボードレールへの傾倒も静かに気に入ってて、この街でボードレール読んでる人が何人いるのだろう?みたいなあのこじらせ方はちょっとグサリとくる、てか手足バタバタもんで、自分も中3くらいのときに夢野久作にハマってて、隣でジャンプ読んでる同級生を内心見下してたりもして。

すごい昔に観たNHK教育の番組で、周囲にうまく馴染めない中学生の少女が「周りはみんなラルクとか聴いてるけどワタシはアジカンしか聴かないから」などと、むしろ誇らしげにインタビューに答える場面があって、昔の自分を見ているようで恥ずかしくも微笑ましい気持ちになったことがあった。

ほんとにある種の思春期の子供って、大人から見ればどうでもいいようなことを媒介に自己の優位性・特別性を見出そうとするのですよ。アジカンとボードレールではその水準においてだいぶ開きがあるとは思うけれど、本質的には変わらない。

自分にとっても(おそろしいことに)完全な過去形じゃなく、そもそもこんなアニメ見て何かしら語りたがっちゃうとこなんか、まさにそーいう、春日にとってのボードレール的なものの残滓みたいなものがまだこびりついてるんだろーな、とか、そんな現在進行形の自己言及もあったり。

こういうね、あんまり触れられたくない部分を自覚的に鷲掴みにしてくる押見修造みたいな才能は大事にすべきだと思いますです、はい。描ける人は描けるし描けない人には一生かかっても描けないと思うのです。


●「楽しめる範囲での生々しさ」に対するカウンター

ちと外野的視点でうがった見方をすると、この作品って、最近の青春コンテンツ全般に対する強力なカウンターという気がしなくもない。甘酸っぱい思い出の想起、あるいは「こうであったら良かったのに」という遡及的な代償行為としての青春が小説やアニメのフォーマットとして大量に消費されている潮流にあって、「いやいや思春期ってそれはそれで大変だったじゃん?」という、考えてみれば割と素直に頷ける真実を鋭く突きつけてくるカウンター。

大人が青春時代に戻りたいと願うのは、懐かしさと同時に今だったらこうやり直すのに…的な後悔の念がそうさせる場合がほとんどで、であるがゆえに青春てのが魅惑的なノスタルジーのキーワードたり得るわけでもあるのですが、同じくらいのエネルギーでもって子供は大人に憧れてたりするわけで。はやく社会に出たい、子供は子供で大変だよ、と。

そういうカウンターってたぶん未来永劫有り続けるわけだのに、都合のよい青春イメージだけを生産し消費し続けるのはどうなのかしらっていう。そんな観点からも、いいパンチもらったなあ、てのが印象としてはあったりします。

部分社会の息苦しさだとか、そこからの逃げ道のなさだとか、将来への不安だとか、油断すると押しつぶされそうな何かしらが思春期の子供の周りにはけっこううようよしていて、逆に言えば、それらを避けて「楽しめる範囲の生々しさ」にフォーカスしているのが最近の学園日常系とか、そのあたりなんじゃないかと思う。そら楽しいし、安心できるわな、、なんて逆説的な見地から日常系の需要を再確認してみたりも。



以下、レビューとは関係ない話です。

結局自分の視聴スタイルって、「表現したいことは何で」「それに対してブレがなかったか」しか最終的には見ないです。

表現したいことってのはテーマがあるならそのテーマ、あるいはこういう雰囲気のアニメを目指す、とかでも全然いいし。それに対する個人的な好き嫌いや主義の食い違いは必ず出てくるのですが、それについての感想は、レビューにはなるべく残したいけれども評価には影響しません。ましてやテーマの高尚さだとか社会的倫理性なんかはほんとどーでもいい。イカ娘なんてテーマもへったくれもないアニメですが、あれ、表現したい雰囲気を出すための手法にブレがないでしょう。だから好き。

でもって、目的に向かって「ブレがないか」てのは、有り体に言えば技術です。一義的にはディレクションの成否に集約され、それを支えるところの脚本・演出、さらにそれを最大効果化するための美術・音響てとこまで落とし込まれていくわけですが、とにかく然るべきプロの技術がきちんと表現したい何かに向かって発揮されているか、ということです。

アニメ『惡の華』は胸をえぐるような生々しい思春期を描きたいわけでしょう。観る者を不快にするほどに。それを表現するためにロストスコープという技法が最適とジャッジした。結果、実に気持ち悪く生々しい世界を作り上げた。その一連のクリエイティビティの発揮には素直に拍手を送りたいわけです。もうね、女子クラスメートの木下の造形とか生々しすぎて軽く吐き気を催すくらい。

本作が成功なのか失敗なのかは割とどーでもいいと思ってて、ただひとつ願うとすれば、これを観たアニメクリエイターには歯ぎしりして悔しがってほしいってこと。少しくらいは「やられた」と思ってほしい。もちろんロストスコープという技法の話じゃなくて、表現したいことに向かって突き詰めて物を考える姿勢の話、ですが。

ただそれだけのことで、我々が駄作をつかまされる確率はずいぶんと下がるんじゃないかしら、と思ったりもするわけです。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 28

77.0 3 不気味で学園なアニメランキング3位
シリアルエクスペリメンツ・レイン[serial experiments lain](TVアニメ動画)

1998年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (879)
3882人が棚に入れました
コミュニケーション用コンピュータネットワーク端末「NAVI」(ナビ)が普及した現代、中学生の岩倉玲音は、死んだはずの四方田千砂からのメールを受け取る。その日以来、玲音は見えないはずのものを見るようになる。四方田千砂のメールの言葉に興味を持ち、大型の「NAVI」を手に入れるが、それ以来更に奇怪な事件に巻き込まれていく。物理世界(リアルワールド)と電脳世界(ワイヤード)、二つの世界・二人の玲音(lain)が混濁し錯綜する果てにあるものは? 「人は誰しも“繋がれて”いる」「私は遍在する」

Вистерия さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

どき、どき、どき、どき、

この作品を見ている間は脳がフル回転で、
飛び交っている情報を拾い集めて整理するだけで精一杯でした。
視聴後一段落ついて、もう一度、今度は情報が集まった状態で
考察しながら見たことでやっとひとつの解釈を得られました。
そのくらい難解なストーリーです。
他に類を見ない非常に高いメッセージ性と表現力は
情報化社会の始まりのこの年代に生み出されたものだとは思えないくらい先見性があり、
今この時代に見ることでまた違った解釈も生まれてくるものだと思います。

更に、
雑誌連載企画・アニメ作品・ゲーム作品が同時進行・相互関連して制作された作品なので
考察や解釈の幅がとても広いです。
ですからアニメの情報だけでは不十分かもしれませんが、
私が得た解釈を軽く書き綴ろうかと思います。


まず、作中には登場しませんがこの作品を理解する上で便利な言葉が
「ミーム」というものです。
このミームというのは、肉体的な情報を複製伝達する遺伝子と類推して考察される、
精神的な情報を複製伝達する摸伝子のことを指します。
つまり人間の情報や意識そのもののことです。

ミームは元々会話や行動によって少しづつ広まり
人間に文化というひとつのフィールドを形成させるに至ります。
しかしこのlainの世界や私たちのいる現代では、ワイヤード(ネット)という
人間が世界中どこにいても同時に情報としてのミームを共有できるシステムを作り上げました。
更にこのlainの世界ではシューマン共鳴の理論を取り入れ、
人間は無意識下につながっているという意識としてのミームの共有も可能にしました。
そこで、
これ以上進化ができないと言われていた人類が進化するためには
この仮想的にミームを共有することのできるネット世界と現実世界を統合し、
肉体という枷から解き放たなくては。と考えるものが現れます。

そのためにまずは、
今はただの意識や情報の集合体でしかない漠然としたミームというものをひとつの形にしてみよう、
とミームに実体を与えてみる実験をしました。
ここから実体化したミーム(=lain 玲音)に関する一連の実験(serial experiments)が始まり、
物語の動機になります。

そして物語の渦中、実体を与えられていたミーム(=lain)は自我を持ちます。
肉体という個を識別するものが与えられたからです。
しかし、人間の意識や情報の塊が自我をもってしまうことによって、
そのひとつの自我により人類全ての意識・情報が操作されてしまうことになるのです。

この危険性から実験は終了となり、lainはまた実体を持たない存在に還元されました。

総じてこの実験、物語は、
人類はただ意識や情報を共有するだけの生き物ではなく、
肉体という実体があるからこそ人間は個を識別することができ、
個という実体同士のつながりや触れ合いから生み出されるものこそ尊いんだ
というメッセージを伝えるものだと解釈考察しました。


大分ザックリした説明でしたが、大体こんな視点でこの作品を考察しています。
他にもきっとたくさんの解釈があるでしょう。
個人的にはエヴァンゲリオンを筆頭に語られる考察アニメの中でも
ぶっちぎりNO.1で難解+解釈の幅が広い+答えが見つからないアニメだと思います。
テッド・ネルソンのザナドゥ計画やヴァネヴァー・ブッシュのMemexなど
実際の情報工学や社会科学に基づいた根拠が散在しているので下調べも重要ですし…

アニメーションとしても98年当時のテクノロジーから見るととても実験的で
映像効果と音響も見事にマッチして不思議な
これまで体験したことのない世界にいざなってくれます。
しかし特徴的なうえに極端に暗い90'sサイケデリックな雰囲気なので中々、
近頃の流行りもののアニメが好きな人にはキツい作品かも知れません。
萌えもなければ笑える要素もひとつもありません。終始考察です。
なので好きな人は好きなアニメって感じですね。

長くなりましたが参考になれば幸いです。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 40

たま。 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

考えるアニメ

楽しい、面白い系のアニメではありません。
非常に見る人を選ぶアニメです。
問題はとっつきにくさとテレビアニメ史上トップクラスのストーリーの難解さです。
最終回を見終わった後もいろいろな解釈ができ、そういった意味でのエンターテイメント性は他に類を見ませんし、突出していますから、コアなファンを唸らせることができる作品だとは思います。

わたし個人の意見としては、好きなアニメの一つです。
当時ここまで考えている人がいるとは・・・。脱帽です。

興味がある方は是非一話だけ視聴してみてください。
耐えられたら最後まで見てください。気に入らないなら、見ないほうがいいです。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 23
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

たくさんいる「私」

岩倉玲音の時代である。

ブゥーーン、ブゥーーーン、
幾度となく強調される送電線のノイズ音。
それは「つながり」のメタファー。

90年代末尾を飾る時代が生んだ傑作。
欝々しい展開にカルト的人気で名高い作品、
そこを乗り越えた先の大団円に感動を覚えます。
ここでの問題提起は「攻殻SAC」へと昇華され、
この偉大な「供儀」の物語は幕を閉じる。

絵柄は古く、演出は静かに進行する。
しかし前半に種を撒き、後半に回収する。
物語の基本に忠実な展開、構成だと思う。

主人公は中学生、岩倉玲音。
{netabare}現実世界と仮想世界の「2人の玲音」、
ある日、自殺した同級生からのメールが届く。
会話もない冷たい家庭の食卓、
自宅前に張り付く不気味な黒服たち。{/netabare}

神の不在、集合的無意識。
何かがおかしい!?何かが始まっている!!

難解でしょうか?いいえ。
我々の側が複雑にさせているのでしょう。
しっかり観ていれば、迷子にはならない。
{netabare}私なりの攻略指南を書かせて頂こう。
英利政美の思考を追え、これだけです。{/netabare}

世界は等しく病んでいる。

文化庁メディア芸術祭優秀賞作品。
ご堪能あれ。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 74

84.9 4 不気味で学園なアニメランキング4位
呪術廻戦(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (845)
3320人が棚に入れました
少年は戦う――「正しい死」を求めて。辛酸・後悔・恥辱。人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む。呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く。そして、呪いは呪いでしか祓えない。驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁はごく普通の高校生活を送っていたが、ある日“呪い"に襲われた仲間を救うため、特級呪物“両面宿儺の指"を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう。呪いである“両面宿儺"と肉体を共有することとなった虎杖は、最強の呪術師である五条悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり……。呪いを祓うべく呪いとなった少年の後戻りのできない、壮絶な物語が廻りだす――。

声優・キャラクター
榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、小松未可子、内山昂輝、関智一、津田健次郎、中村悠一、諏訪部順一

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

呪いから守るために、自らに呪いを宿す。

週刊少年ジャンプで連載中の漫画が原作のアニメ。

まだ鬼滅の刃人気が高い中放送が始まったこの作品、
とある小学1年生の女の子に
「私は鬼滅の刃より呪術廻戦が好きなの!」とゴリ押しされ、

放送が終わったら一気に見てみようかなーと思ってたら、

会うたびに「呪術廻戦見た!?」「絶対観てすぐに観て」とプッシュされ続けたので、観念して放送中から見始めました。笑

その後どんどん人気が高まって、
今や鬼滅の刃にとって代わる人気となり、
時代を先取る嗅覚の鋭さすごいなと感心しておりますw

全24話です。


● ストーリー
高校生の虎杖悠仁(いたどり ゆうじ)。
オカルト研究会に所属する彼は、学校で怪しい箱を拾う。

オカルト研究会の先輩が箱の箱の中身を確認しようとするが、
それは強い呪いが込められた“呪物(じゅぶつ)”であり、
呪物の封印が解けたことで、人を襲う“呪霊(じゅれい)”が現れ、
先輩たちが襲われてしまう。

呪物の回収に来ていた呪術師の伏黒恵(ふしぐろ めぐみ)と共に先輩たちを救おうとするもピンチになり、

悠二は呪物「宿儺(すくな)の指」を食べ、
呪いに対抗できる力を得る。

しかしそれはあまりにも危険な力のため、
先輩たちを救うことができた後、悠二には死刑が宣告される。

死刑を延ばす代わりに、
そして世に溢れる呪いによって誰かが苦しまないように、

残りの「宿儺の指」を集める使命を果たすため、
都立呪術高専に転校し、呪術師として生きることを決意する。


長いあらすじとなりました。

ざっくりまとめると、つまり、
呪術師として呪いと戦う話です。

呪いの見た目は気持ち悪い。

死体も出てくるし体も切断されるしで、
なかなかグロさもあります。

現代日本が舞台なのに、
呪いという異形と戦うことで非日常感が強い。

でも学生同士で仲良くしてたり、
普通の高校生っぽい一面もあるし、
不思議な世界観です。


ストーリーは、進んでいるような流れているような。

いきなり新しい展開が始まっている。
そしてもやもやっとそのシリーズが終わる。笑

強すぎる敵を追いつめはするんだけど、
逃げられてしまったりで、いつも倒すわけではないのがその原因かな。

この作品はなぜ人気が高いのか、
その理由をうまく言葉で説明できない。

ストーリーは、波があったものの、
全体的に面白かったです。

毎回30分があっという間に終わるし。

アクションシーンの作画もかっこよかった。

キャラもそれなりに魅力があって個性的。
女子ウケ抜群な五条先生という最強キャラもいる。

でも、呪いの見た目は不気味だし、
必殺技も真似したいものとか真似しやすいものではないし、
血みどろの戦いで見た目はよくないし、

呪いとか人の心の闇とか、暗い雰囲気で、
人の心は醜く描かれてるところもあるし大事な人も死んでしまうし、
メンタルやられるところも多い。

ここが人気なポイント!と語るのが非常に難しい。笑

呪術師たちは元々強いけど、
その強さを十分に描けていないのか、
それともこれから強い敵とぶつけていくうちにその強さが描かれることになるのか、

全力出しきった感がないんだよなー。
いや当人たちは全力出してるんだろうけど。

それでも十分かっこよくはある。
これからもっと強くかっこよく見せてくれるのかなというわくわくもある。

24話見たけれど、
どうやら私はまだこの作品を掴み切れていないのです。

そもそもグロい系の作品が苦手なのもあるかもしれないけど^^;

少年ジャンプの作品だけど、
少年以上に青年や大人に好かれそうなタイプの作品だと思いました。


● キャラクター
全体的に大人から好かれそうな、
かっこいいキャラが多かったように感じました。

観終わってみると、
好きなキャラが多かったなー。

順位はつけられませんが、私のお気に入りは
・釘崎 野薔薇(くぎさき のばら)
・五条 悟(ごじょう さとる)
・七海 建人(ななみ けんと)
の3人ですね^^

釘崎は最終話のかっこよさで好きになりました。

クールでかっこいい女の子キャラならよくいるけれど、
釘崎のようなタイプのかっこよさは珍しいなと思いました。

自分に自信があり、女であることを忘れず、
相手が誰だろうと怯んだり屈したりしない。

認めた相手は慕うし、大切にも思う。

敵に対しては容赦しない非情さも好き。
なんなら、笑ってるもんなw
最終話はどちらが悪役なのかわからなくなったよw


五条先生はつかみどころがないけど、
その分、普段のふざけた人柄と真面目なときのギャップがやばい。

圧倒的過ぎる強さ、かっこいいです。

そしてcv.中村悠一さんなんだからもう大勝利です。笑


● 音楽
【 OP1「廻廻奇譚」/ Eve 】
【 ED1「LOST IN PARADISE feat. AKLO」/ ALI 】

この作品と言えば、やっぱり「廻廻奇譚」が強いですね。
この曲の圧倒的かっこよさよ…!

そして作品の雰囲気とぴったり。
というか、この曲が雰囲気を作ったと言ってもいいぐらい。

アニメーションにもいろいろと伏線やら秘密が隠されているようです。
細かな変化もたくさんあったし、とても凝られていました。

EDは英語の歌詞でのポップな曲調だけど、
こちらも別のかっこよさがありました。

アニメーションもおしゃれでした^^


【 OP2「VIVID VICE」/ Who-ya Extended 】
【 ED2「give it back」/ Cö shu Nie 】

この後半OPもまたかっこよくて好きだなあ。

「廻廻奇譚」と雰囲気は似ていなくもないけど、
別物のかっこよさです。

アニメーションはこちらもかっこよかったです。
じっくり見れば見るほどかっこいい!

というか、「廻廻奇譚」だけでも十分なかっこよさと人気だったのに、そのハードルを越えてきたこのOPによって、次のOPはさらにハードルが上がりますね。笑

EDはしっとり感動系。

映像とのマッチングによって、より沁みます。


どの曲も当たりで、
音楽の選曲もアニメーションも最高でした。


● まとめ
面白かったです。

よく理解できていない部分も多いものの、
楽しめたのは事実です。

好きな作品かと問われると微妙なところなのが、
自分では不思議な感覚なんですけど。

これからもっと強い敵と遭遇するのだろうし、
それに伴って彼らの活躍もよりかっこよく、
見どころのあるものとなっていくのでしょう。

話としてはまだまだ途中だし、
24話の最後に「続」と出てたから、きっと2期もあるでしょう^^

2021年には「東京都立呪術高等専門学校」の劇場版アニメの公開が予定されています。

これは「呪術廻戦」がジャンプで連載される前の、
呪術高専のお話のようですね。

まずはこちらを楽しみに待ちたいと思います^^

投稿 : 2024/05/25
♥ : 30

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

全てにおいてよくできていてびっくり。巨人・菅野投手並の完成度!

<2021/4/10 追記>
先日最終話見ました。
うん。
面白かった。
最後まで優等生。
次回作は映画ですか。
どれくらいヒットするか、注目ですね。

<2020/12/31 追記>
いやー、レベル高いっすね。
アニメ好きなら好きになるなにがしかのフックがある。
それだけ数多くの魅力あります。
「キャラクターの魅力」
「物語の練り込まれ度」
「演出の完成度」
「映像美」

さらに、大事な点として
「見ることに躊躇が要らない」

これ、実は結構大事で。
見たら面白いんだろうけど、この先辛い展開がありそうだとかなんらかの理由で食が進まないことは多々あります。
そういうことがない。
まさに優等生。
各パラメーターにおいて高得点という化け物作品なのかもです。

これだけの作品だと鬼滅のような売れ方をつい期待してしまいますが、それは難しいんでしょうね。
本作は漫画やアニメが好きな人にとって百点満点。
でも普段そういうの見ない層にどれだけ訴求力があるかというとそこはやはり疑問があります。

それだけ鬼滅の刃という作品が、家族愛というこのコロナ禍で改めて見直された大事な価値観に訴える力の強い作品なのだと思います。

もし、「どちらが好きか」と問われると悩んだ末に「四月は君の嘘が一番好き」と答える自分が想像できますが 笑。

<2020/10/3 初投稿>
見始めなので評点はデフォルトの3.0です。

原作は未読。
少年ジャンプだそうです。

録画予約した時、タイトルが
「呪術廻戦/犬と猫どっちも飼ってると毎日楽しい」
となっていたので意外とハートフルなのかな?
とか思っていざ見てみたら
「呪」に纏わるハードなダークファンタジーでした。

意表突かれたのは自分の勘違いからなんですが。

第一話を観た感想は、
・ノラガミを少年誌っぽくした感じ
・結界師をジャンプっぽくした感じ
・血界戦線を和風にして、割と普通にした感じ
・つまり「妖」とか「呪」とか「怪」とか「神」とか「鬼」とか「禍」とか「蟲」とかの漢字が似合いそう。
・こういう感じ好き

ちなみに第一話のサブタイ「両面宿儺」
たしか大昔、日本神話の創世記に現れたとされる鬼神。
貌が二つに手が8本だったかな。
このネーミングは本作の雰囲気をよく表してるのかもしれません。

この手の話は好物なので今期期待枠に入りました。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 41
ネタバレ

えりりん908 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

今期最っ高☆に、クールでスタイリッシュ( `ー´)ノ

今期って、
続き物も含めて、バトル系アニメは、4本観てますが・・・

このアニメ、いちばんいいです!

バトル展開のベースが、「呪術」という
怪異(呪い)v.s.異能力者(人間)
なんですけど、
世界観がきっちり整理されているから、
いろんなキャラや能力が出て来ても、
「あれれ?」って全然ならない。

それと、主人公の熱さ、正義感が上手く演出されてるから、
うざい感じが全然しない。

ライバルも指導者も、
熱い心を内に秘めていて格好いい!
先輩たちとか、同級生になる女子キャラが微妙なのは気になりますけど、
これはひとまず、置いておいて。
っていうか、メインキャラがとにかくカッコいいっ!
しかもそんな登場人物が3人もきちんとキャラ立ちしてるって、
凄く大事!ってあらためて納得!です(^^♪

そして何より、戦っているときの作画!
素敵です!!

バトルは男の子がやっぱりいちばん似合いますね。
もう見惚れてしまいます(*^。^*)



まだ観終わっていません!!
{netabare}っていうのは嘘で、もちろんちゃんと、視聴は終えてますww
ただ、今期、「これは!」って作品が限られているので、
呪術廻戦、いまだにリピートしまくり状態なんです!
異能バトルがこんなに面白いって思ったの、めったに無いです!!
視聴前には、微妙かな?って思っていた、
真希さんの、三輪さんや真依さんとのバトルも
凄く楽しめました(^^♪

そして何より、二大ヒーローのひとり、五条先生が素敵!
ヘラヘラしてるのに、
混戦をあっという間に鎮圧しちゃう圧倒的強さ。
しかも、クールで、美しい(笑)
格好よすぎ、です!!

後半クールでは、二大ヒーローのもうひとり、
両面宿儺の活躍が
八十八橋の下での、指ペロ(笑)だけだったのが残念と言えば残念でしたけど、
それに、劇場版はエピソードゼロなので、やはり出番はなさそうですけど、
2期での両面宿儺の、
一筋縄ではいかない唯我独尊の大活躍、
凄くスゴク、期待しています!!!
{/netabare}

投稿 : 2024/05/25
♥ : 37

67.8 5 不気味で学園なアニメランキング5位
ゴーストハント(TVアニメ動画)

2006年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (437)
2306人が棚に入れました
舞台は、主人公・谷山麻衣が通う都内の高校。
旧校舎で心霊現象が発生し、渋谷サイキックリサーチという心霊現象の調査事務所が調査にやってくる。事故で助手に怪我を負わせ、高価な機材を壊してしまった麻衣は、弁償する代わりに所長・渋谷一也の助手の代理をすることになるのだが…。

声優・キャラクター
名塚佳織、泰勇気、成田剣、浜田賢二、釘宮理恵、岡本信彦、鈴木真仁、岡野浩介

ほるん吹き さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

本格的なミステリーホラー

主人公の麻衣は、「渋谷サイキック・リサーチ(SPR)」という事務所でバイトをしている女子高生。所長は麻衣と同じくらいの年の少年・ナル。SPRでは依頼のあった心霊現象による様々な事件を、霊能者らと協力しながら調査している。

物語は全25話、大きく分けて8つの話があります。心霊現象による事件の内容はポルターガイストや呪い、祟り、超能力にまつわる話などなど。

この作品は、単に「心霊現象コワイ」といった恐怖の演出があるだけではありません。
この事件を起こしている亡霊の正体は○○だ!と確信して徐霊に踏み出すも、全く見当違いで逆に返り討ちに合うなどと、事件の真相には裏があったりして推理物の要素も強いです。さながら「心霊探偵」といったところ。犯人を亡霊に置き換えた「金田一少年の事件簿」のようでした(例えが若干古いですがw)。

心霊現象を調べていく手段として、高感度カメラや集音マイクといった精密機械を使って、科学的に分析していくのは斬新でした。怪現象が起きるとノイズやカメラの映像の乱れ、温度の急激な変化などがおこり、データとして記録されるので妙な説得力があります。それをもとに類似の例や過去の事件などと照らし合わせ、調査を進めていきます。

でもいざ亡霊に襲われた時や、徐霊・浄霊するときに活躍するのはやっぱり霊能者たち。その仲間たちは坊主、巫女、エクソシストなど様々。肩書きだけ聞くと何だか堅苦しいイメージの人々ですが、実際はもっとくだけた人たちです。



せっかくなので、簡単に主要キャラの紹介もしておきます。


谷山麻衣:
元気いっぱいの明るい性格で、困ってる人を放っておけない、まさに主人公気質の女の子。

ナル:
イケメンな所長。クールでナルシスト。プライドが高く毒舌だけど、心霊現象に関する知識は豊富。

リン:
ナルの片腕的存在。何考えてるか分からない長身で寡黙な中国人。中国呪術を使います。

滝川法生:
長身長髪で陽気なぼーさん。見た目はチャラいけどいざというときはすごく頼りになるみんなの兄貴分。お札や念仏などの法力で徐霊します。

松崎綾子:
ド派手な衣装と化粧をしてる、色々と騒がしいおばさ…お姉さんの巫女。いまいち能力を発揮できないけど、条件さえ揃えばその力は絶大。

ジョン・ブラウン:
悪魔祓いが得意なエクソシスト。なぜか怪しい関西弁をしゃべる、綺麗な顔した外人さん。温厚な性格。聖書や聖水などを使います。

原真砂子:
プライドの高いクールな着物少女。霊を自分に憑依させる、口寄せが出来る霊媒師。


ナルとリンさんはちょっと冷たい感じですが、普段は基本的にみんな仲が良く、キャラクター同士のやりとりもおもしろいです。
麻衣と真砂子はナルを巡って恋のライバル(?)といった関係で最初は仲が悪いですが、様々な事件でピンチの際に助け合ったり、互いの苦悩を理解しあったりしていくうちに仲良くなっていきます。デレた真砂子可愛い!
ちなみに、麻衣とナルは霊能力がないように見えて、実は色々あるんですがネタバレになりそうなのでここでは伏せておきます。



作中では多くの心霊現象や霊能術が出てきます。専門用語とか出てきてちょっと混乱しそうですが、ナルをはじめ専門家の方々が素人である麻衣に説明がてら、視聴者にも詳しく解説してくれるのでその点は心配ないと思います。色々盛りだくさんなので、ホラー好きの方はぜひチェックしてみて下さい!


長々と駄文を書き綴ってしまいました…。ここまで読んで下さった方々、ありがとうございましたm(_ _)m

投稿 : 2024/05/25
♥ : 18

徳寿丸 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

面白い

アニメ視聴後、漫画コミックで最後まで読みました。
アニメ放送時は完結していませんでしたので(といっても半端な終わり方ではありません)。
怪奇現象の原因を推理、追究して解決する事を生業とする会社に最初の事件で関わった主人公がバイトで働きはじめて物語は進んでいきます。見所は主人公とほぼ同い年の天才所長との掛け合い。この所長の性格が極端なナルシストで口が悪いからいつも大変なんですよ。
ホラーが苦手という方もこの作品は大丈夫ですよ。

私のツボ:ジョン


二回目視聴後(2019.7)
夏といえばホラーではないですが、ちょっとそういった系観ようかなと(ハードなものは自分厳しいので・・・)。かなり前に観てるので評価甘めですね。今なら3.7位ですかね。ちょっと主人公の女子高生の言動や行動が鼻につきます(苦渋の選択に代替案を提示するわけでもなくヒステリックに自分はいいこちゃん論を吐く。無論自分に責任が及ばない立場で。周りへの迷惑も考えず独断専行。無論、御都合で誰か助けてくれる。結局、天才所長を自分のものだと意識している。まぁ、観る側の代弁者的な立ち位置ではあるのですがイラッとします(無論、年齢や生い立ちを鑑みると彼女が周りに自然と甘えてしまうのも理解はできます)。それでも苦にならず2回目(25話)を一気観できるポテンシャルは大したものだと思っています(私感)。

私のツボ:この作品は実写化のハードルそこまで高くないと思うけどね。オタ恋とかするくらいなら・・・(ネタないにしてもサブカル興味ない層には共感0だと気づかないのか?だから最近のTVドラマは駄目なんだよ 笑)。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 4

ロロ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

結構楽しめました

youtubeでテキトーに検索しててたまたま見つけたアニメです
内容は幽霊などの不可解なことに対して主人公たちが解決していくというもので、これが意外におもしろかったです
ロン毛のお坊さんやケバイ巫女さん、ほかにも超能力者など変わったキャラたちが出てきます

実際にある霊の払い方や、超能力の詳しい知識などを知ることができて興味深かったです

ちょぴり恐いですが、恐いのが本当に超苦手って人以外なら
大丈夫だと思います

是非見て感想を教えてくださいね^^

投稿 : 2024/05/25
♥ : 9

73.5 6 不気味で学園なアニメランキング6位
見える子ちゃん(TVアニメ動画)

2021年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (377)
1207人が棚に入れました
見えるはずのないものが見えたとき見てはいけないものを見たときあなたならどうしますか……?そんなものが語りかけてきたらこちらに向かってきたらあなたはどうしますか……?一目散に逃走する?あやしげな術を学び、もしくは霊媒師を頼り、戦う?女子高生・四谷みこの取った行動は――徹底的にスルー!なんにも見えていない、気づいていない!これは、鋼の精神とスルースキルを駆使して女子高生が異形な“ヤバい"やつらを回避するお話……見えていないだけで、そいつらはあなたの隣にも、ほら……

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

過小評価ってこういうこと?

<2021/12/22 初投稿>
先程最終話まで見終えました。
原作は未読です。

本作、面白いですね。
変化が凄い。
最初の頃はホラーのフリしたシュールコントかと思ってましたが。
どんどん景色が変わっていく。

最終2話の展開は素晴らしいものがありました。

よく「これは過小評価されてる」と言われる作品があります。
最近なら無職転生を岡田斗司夫さんがYouTubeで「過小評価」言ってましたが。
無職転生はちゃんと高く評価されてますでしょ。
少なくともあにこれでは、私がキャッチしてる方々のレビューでは辛口レビュアーさん含めほぼほぼ絶賛の嵐。

そもそも「過小評価されてる」というフレーズ、あんま好きじゃないんです。
というのも「人気作のファンがさらに欲張りに世間の評価を求めてる」気がして、ちょっとウンザリしてしまうんです。

一方で本作。
そもそも目立ってないし。
キワモノ扱いすらされてる。
あにこれでも微妙な評価が目立つ。

でも本格派ですよ。
変化球投手のフリした本格派。
そう思うんです。

こういうのが「過小評価」というんじゃないかと思い始めたり。

そんな本作、騙されたと思って最終話まで見ることをおすすめします。
もちろん、無理にとは言いませぬ。。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 43
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

尻上がりに面白くなるのがいい。名作ではないですが佳作と言えます。

 面白かったと思います。見えるだけ、の話から主体的なかかわりも出てきましたし、ほろっとする話やちゃんと過去からの因縁や家族みたいな原因もストーリーに組み込まれていました。

 あの狐…なんでしょうか。2人組。あれがもっと見たかった。あの風船の子供に使っちゃったのは話としてもったいなかったですね。夢オチ的なシーンがありましたが…あれはなんでしょうか。続きが見たいところです。

 霊がテーマの話っていくらでも広げられますからね。その意味でセンスや話作りの力量が問われるところですが、本作については大変良かったです。一話一話のエピソード、キャラ作り、ギャグとシリアスの混ざり具合、エロ要素。エンターテイメントしてしてかなりの出来でしょう。
 中心キャラは3人のヒロイン、占い師、弟、先生、スキンヘッド…くらいしかいなかったのに、飽きませんでした。
  
 なにより尻上がりに面白くなってゆくのが、良かったです。尻つぼみが最悪ですからね。

 テーマ性は…まあ、無いという事でいいでしょう。エンタメに振っていると思ったほうがこの作品の評価を間違えないと思います。

 名作、傑作ではないですが佳作、秀作ですね。この水準のアニメが沢山あると選択の楽しみが生まれてきます。オール4がぴったりの評価だと思います。

 作画も演出も良かったので、ぜひ続きがアニメで見たいです。2期をお願いします。




6話 先週登場の新キャラ展開でいくと思ったら、来ましたね。すごいのが。で、最後何か言ってましたね。
 つまり今後なんかあるということでしょう。楽しみです。


5話です。 {netabare}まあ、とりあえず新キャラ出すしかないですよね。設定は無視しないとひどい目に合うというので固定なのかなあ、と思ってたら、ちょっとだけ違う要素がありましたね。
 で、ごめんなさい。エロシーンを楽しみにしていた自分に気が付きました。{/netabare}


4話見ました。そろそろ筋が通った何かが欲しいところです。
{netabare}今回の話はなかなかぞっとさせてもらいました。そう来ましたか。まあ、古典的なんでしょうけど、上手でしたね。また、ED後に「なるほど」を持ってくる構成は良かったです。
 裸が多いですが、絵柄の関係かまあやらしくはないのでコメディとしていいと思います。が、弟くんって5年でしたね?距離感やばくないですか。お風呂で背中を流してもらうとかもそうですけど、冒頭シーンはほとんど夜這い…よくあれで悲鳴あげませんよね。

 さて、そろそろ一本筋が通った何かが欲しいですね。謎とか、解決すべきやばい霊とか、体質改善とか、意思疎通できるとか。見える恐怖だけだと限界があるでしょう。現状なかなか良くできているだけに、飽きさせるのはもったいないですね。{/netabare}


 2話まで見ました。ちょいエロ日常怪奇系?出落ちでなければ面白いかも。1話で怪奇現象が全然起きないし、起きたら起きたでただ見えるだけなので大丈夫かなあと思っていたら、2話は結構面白かったと思います。

{netabare}  この娘は結局スマホの怪奇現象でビックリしてスマホを落としていましたが、あれで怪奇現象が見えるようになったということでしょうか。それにしては、バス亭のところで落ち着いていましたね。
 ですが、1話前半の鏡のところで、手の跡がついていても怪奇現象に気が付かなかったですが、後半では気が付いていましたのでそういうことなんでしょう。
 なお19分50秒くらいのシーンですが、ここの鏡に映っているヒロインの作画がカメラのアングルからいってかなりおかしかったのは怪奇現象?それとも作画ミス?
 本作はホラーの演出として鏡を多用しているように見えます。これを手書き作画でやるのは恐らくかなり難易度が高いことは想像できますし、非常にチャレンジングで素晴らしいと思いますが、だからこそここは丁寧にやるべきだったと思います。

 ちょっとエロい感じと日常の怪奇現象を楽しむ話なのでしょうか。新ジャンルといえば新ジャンルだし、怪奇映画はなぜかエロシーンがあるので伝統ともいえます。「伯方の塩」(作中は彼方の塩と表記)って瀬戸内海方面でかなり有名なCMの塩らしいですが、これがギャグなのか真面目なのかわからないところが味なのでしょう。
 アルコールとかちょっと笑ってしまいましたし、猫の話も悪くないと思います。まあ、一気見はつらいですが、2話くらいなら面白く見られました。

 出落ちじゃなければいいのですが。{/netabare}

投稿 : 2024/05/25
♥ : 26
ネタバレ

えりりん908 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

これちょっと怖すぎたかも。でも、いいですね!

最初は、霊とか化け物とかが見えてしまう女子高生の
日々のドタバタを描く、
そんな日常系ホラーコメディと思ってみてたら、
全然違って、{netabare}しっかりホラーしてた!
まず第一に、化け物のデザインが怖すぎます。

そして、日常系と違って、ストーリー展開がしっかりあって、
ヤバそうなおじさんが出て来たと思ったら、
実はそのおじさんは善意のカタマリで、
その対極に位置するような、
超ヤバいラスボスっぽい「善先生」が出てきたと思ったら、
さらにまさかの、そこからの、どんでん返し!
展開怖くて、凄すぎる。

途中で出てくる、
地下鉄の包丁使いの化け物とか、
公園で人間の子のフリしてた化け物とか、
ギャッてなっちゃいます(>_<)

ライトなエッチ感も、
出だしだけで収まってくれてたのは、
見やすくなってよかったかも。

最後、自由の意味をはき違えちゃう善先生。
オチが無いのが底なしに怖いかも。
でもキツネの巫女ペアちゃんが可愛いからオッケーですww

というか、キツネ巫女ペアとそのご本尊?とか、
相当魅力的なんで、{/netabare}
ぜひぜひ、続編やって欲しいな~
なんて、思ったりしています(^0^)

投稿 : 2024/05/25
♥ : 26

69.8 7 不気味で学園なアニメランキング7位
Sonny Boy サニーボーイ(TVアニメ動画)

2021年夏アニメ
★★★★☆ 3.4 (284)
793人が棚に入れました
長い長い夏休みも半ばを過ぎた8月16日。学校に集まっていた中学3年生・長良〈ながら〉たちは突然、思いも寄らない事態に巻き込まれていた。長良自身はもちろんのこと、謎の転校生・希〈のぞみ〉や瑞穂〈みずほ〉、朝風〈あさかぜ〉ら、36人のクラスメイトとともに、学校が異次元に漂流してしまったのだ。しかも彼らは、漂流と同時にさまざまな《能力》を入手。人知を越えた能力に大喜びし、好き勝手に暴れ回る者もいれば、リーダーとして他の生徒たちを統率しようとする者も、元の世界に戻るための方法を必死で探す者もいる。渦巻く不信や抑えきれない嫉妬、そして支配欲からくる対立。次々と巻き起こる不可解な事態を前に、少年少女たちは突如として、サバイバル生活に放り込まれてしまう。果たして長良たちはこの世界を攻略し、無事に元の世界に帰ることができるのだろうか……?
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

アンチ・モラトリアム

本作とは全く印象が異なりますが、難解な青春アニメというと
今やネタアニメの定番になった「グラスリップ」が思い出されます。
揺れ動く思春期の心情を独自の表現語法を用いて描き出し、
心の内奥までも可視化しようとした点で両者は共通していますし、
結果、意味不明などと揶揄されてしまうのもやはり共通です。

「グラスリップ」では「未来の欠片」という超常的な現象が
ヒロインの深層心理をヴィジュアル化する装置として機能し、
また、エッシャーのトリックアート、「昼と夜」が解釈の鍵となっています。
イメージの喚起力に訴える同様の象徴表現を本作も駆使していますが、
こちらは比較にならないほどの徹底振り、まさしく完全な極振りです。

こうした野心的な独創が視聴者にウケないのはきわめて自然で、
この種の作品では視聴に払った注意力の量が感動に比例するので
制作に注がれたエネルギーに見合うだけの熱量で向き合わなければ入り込めず、
結果、作り手の自己満足のように感じられてしまうわけです。

本作はとにかく情報量が尋常でなく、深入りすると収拾がつかなくなるので
核心と思われる部分だけを抽出して概観することにします。
全体の大まかな構成は、漂流の"謎"をめぐる前半と、
漂流の"意味"を追求する後半とにはっきりと分かれていますが、
その転換の軸となる主人公長良の、決断と行動に焦点を当てた
いわば"長良ルート"と呼べるものが一応、標準的な読み筋になるようです。


{netabare}まず指摘したいのは、序盤のミスリードについて。
SF風の少年少女・異世界サバイバルというパッケージには
あふれんばかりの既視感が漂っていますが、
実はこの既視感を逆手に取った意図的な操作、
いわゆるミスリードが序盤に仕組まれているふしがあります。
惨劇の匂いを漂わせたり、魔女狩り風のイベントを持ち込んだりと、
常套的なサスペンス展開で前半部を偽装しつつ、
ストーリーが進むに従い、"哲学的"と評すべき本作の真の姿、
この作品のアレゴリカルな本質が鮮明になってきます。


平たく言うと、物語全体が「喩え話」だということです。
例えば第4話のモンキー・ベースボールは「ルール」および「能力」の不均衡、
第7話のバベルの塔は「労働」や「希望」の転倒をめぐる一種の寓話だし、
全編の至る所にメタファーや象徴、暗示などが散りばめられた
さながら「アレゴリー(寓意)」の祝祭の趣があります。

ならば「漂流」とは何を意味しているのか?

結論から言うと、すでに指摘されている通り
「モラトリアム」の寓意、そう素直に考えてよさそうです。
終わらない夏休み。止まってしまった時間。
"静止した世界"とは、永遠に続くモラトリアムの表象でしょう。
隔絶され孤立した校舎。管理のもとに置かれ、ルールに守られた閉鎖空間。
そして、訓練キャンプで強制的に"一人前"にされた少年少女が
社会という「戦争」に送り出される・・・このあたりにもアイロニカルに
制度や世相を風刺する、現代の寓話としての側面を見ることができそうです。


さて、転換点となる第6話。漂流の真相が明らかになり、
原因となった長良に対して「神(校長)」から宣告が下される。

「君は世界を創っていたわけじゃない。
 可能性の箱を開けているだけの、ただの観測者なんだよ。
 君がいるからこの世界は存在している。」

観測者が箱を開ける、という言い回しから、元ネタはよく知られた
「シュレーディンガーの猫」と称される量子力学の思考実験だと思われます。
専門的な内容はわかりませんが、本作に応用されている方向性としては
事物ないし事象の存在そのものに関わる理論上の不安定さを
モラトリアムの本質に結びつけようとしている、といった感じでしょうか。

その際、重要な意味を担うことになるのが「可能性」という概念です。
漂流世界の原理となる「可能性」とは、すなわち「不確定性」、
存在が非決定の状態にあるという、ネガティブなニュアンスを含んでいます。

 君たちはもう、必要ないんだよ。
 君たちはただのコピーなんだよ。
 君たちだけが、特別だと思っていたのか?

「神(校長)」が生徒たちに告げるこれらの言葉は、
着想のベースになっているらしい確率論の文脈に置き換えると、
「君たちは確率論上のただの可能性に過ぎない」となる。
つまり、まだ何者でもない可能性だけの存在である思春期の少年少女、
あるいは可能性の海を漂流するモラトリアム人間たちの在り方を
原理的に否定し、切り捨てているわけです。


ここは物語の転換点であると同時に、長良ルートの真の起点ともなります。
つづく第7話、バベルの塔に仮託したエピソードの中で長良は、
転倒した世界を自らの観測者の能力を用いて反転させ、こう宣言します。

「この世界をひっくり返す。
 僕はみんなの分まで前に進まなきゃいけない。
 全部僕のせいなんだ。それでも、もう逃げないって決めたんだ。
 この漂流を間違いにしたくないから。」

漂流の原因として世界から断罪された彼が、
自らの手でそれに決着をつけるための行動を起こす。
これは、責任を猶予されたモラトリアム的な心性からの脱却であり、
主体的な自我の確立を描いた成長ストーリーとして、ある意味、
世間一般のモラトリアム論に即した模範解答とも言えるものでしょう。
ただ、あまりに模範的すぎて、もしやこれもミスリードなのではないかと
つい身構えてしまうのは本作の場合、やむを得ないところです。


多分、ドラマの核心となる部分は、もう一歩踏み込んだところにあります。

「観測者がいなきゃ、みんなただの可能性で終わっていた。
 みんな解っているはずだ、結局どこにいたって
 僕らは抗い続けなければならないって。」

これは、長良に共感したこうもりの言葉ですが、
着目したいのは「反抗」という契機が、世界観と物語をつなぐ形で導入され、
物語後半で長良が企てる元の世界への帰還計画が本質において、
この世界を支配する「神」へのプロテストになることを予告している点です。


その経緯。まずは、漂流の"真実"を見究めたラジダニの言葉。

「そうか、これは漂流なんかじゃない。
 神が振ったサイコロだったんだ・・・。」

サイコロは「偶然」の表徴であり、確率論のシンボル的なアイコンです。
漂流世界は無限にある可能性の中から、たまたま出た一つの目に過ぎず、
偶然の結果に過ぎないから当然、その現象には何らの意味もない。
やまびこが言うように、「この漂流に意味なんてない。無だ。」
「偶然」という絶対的な「神」が支配する確率論と決定論だけの世界。
長良の計画は、この世界への挑戦を意味するものでした。

長良:ロビンソン計画に追加したい項目があるんだ。
ラジダニ:ああ、そうこなくっちゃ。

ちょっと分かりにくいですが、最終盤の展開はここからスタートします。 
追加した項目がどういうものか、ここでは説明されずに、ただ、
希のコピーであるコンパスを掌にのせて長良が呟きます。
「どうせ世界は変えられない。それなら・・・」


追加した項目は最終話で明らかにされます。
彼らが目指したのは"元の世界"ではなく、コンパスが指し示す世界。
ここでふたたび「可能性」がキーワードになります。
偶然の支配から可能性を解放し、それに別の意味を与えること。
それが「神」への反抗の最終形態になります。

瑞穂:そこに行っても希が生きてるかはわからないんでしょ?

長良:だからコンパスを使うんだ。
   何も結末は変わらない。
   起こり得ることしか起こらない世界だから・・・
   可能性をもう一度振り直す。

神が振るサイコロに対抗して、長良はコンパスを"振り直す"。
コンパスの針は、どこかの世界で希が生きている可能性を指し示しています。
「希はもう戻らない。でもね、彼女の意志はまだ生きている。」

「過去は変えられない。でも、未来ならいくらだって変えられる。」
・・・かつて希はこう語っていました。
つまり、希が信じた「未来」という可能性を彼もまた追い求める。
「起こり得ることしか起こらない」決定論の世界では単に確率論上の
ニュートラルな意味しか持ちえないネガティブな「可能性」を
ポジティブに反転させ、「偶然」に意味を与えようとするのです。

乱気流のように錯綜する次元の混沌の中を、長良と瑞穂が走り続ける。
その時、上方に現れた鳥の群れが、彼らを先導するように先立ってゆく。
希と鳥とは終始一貫して、アナロジーの糸で結ばれています。
やがて、満ち溢れる光に包まれて二人が立っている地点で
回り続けているコンパスの針が、目的地に到着したことを告げています。

瑞穂:長良はさ、何で帰ろうと思ったの?
長良:これは、希が見た光だから・・・{/netabare}


長良ルートを締めくくる最終話の内容については、
希と瑞穂のその後の動向も含めて、いずれ補足する予定です。
本作のユニークな特色は、鬼面人を嚇すような世界設定よりも
この結論部分に提示されている独自の思想にあると自分は考えていて、
それを「アンチ・モラトリアム」などと呼んでみたのですが、
そもそも観る側に結論を委ねることを本作は意図しているようでもあり、
自分も確認できたポイントだけを覚書風に記しておくつもりです。

本作が執拗に反復する「死」のモチーフについても触れなければなりません。
光を志向しながらも死と親和的であり、作中に死の契機を導入する
希というヒロインの両義性は、本作の複雑な性格を端的に表出するものです。
また、「死」を「モラトリアム」と並ぶもう一つのテーマと捉えるならば、
その両者を統合する存在が瑞穂であり、最終話にその帰結が示されます。
長良ルートがシンプルな成長ストーリーであるのに比べ、
難解なメタファーや象徴が横溢するこの裏ルートの方に、余程興味をそそられます。


・・・しかし、さすがに四周もすると、最後は達観した心境に至ります。
これ、解らなくても別にいいんじゃないの? なんて。

理解しようと頑張ると、他作品を視聴する時間が削られます。
それよりは、クールでポップなヴィジュアルと雰囲気を楽しみつつ
一通り完走すれば、もうそれで十分なのではないだろうか?
哲学風味に抽出されたビターな青春のエッセンスをフィーリングで味わう、
こういうのが本作の正しい鑑賞法なのかも知れない、等々・・・

のっけから散々思わせぶりに引っ張りまわされた挙句、
最後は一方的に突き放される。有り体に言ってかなり鬼畜なアニメでした。
これがハッタリなら断じて許されないところですが、悔しいことには
十分過ぎるほどの内実を備えており、余韻も深いので黙らざるを得ない。
とは言え、好きになれるかどうかはまた別問題であって、
人に勧めたい気はあまりしないし、案外残らない作品にも思えます。

2022.11.23 投稿

投稿 : 2024/05/25
♥ : 17

御宅 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

唯一無二の夏目監督。異世界の描き方。

小説をそのまま映像化したような作品

不思議な世界観であり、効果音だけの演出などが興味深かった。銀杏BOYZの主題歌もとても爽やかな夏を感じさせるものでとても良く、劇伴もとても良い。謎の世界観のため、好きな人は好き。嫌いな人は嫌い。極端に層が別れると思います。

opとedがなく、銀杏の主題歌だけで勝負するという挑戦を行なっている。最後の銀杏でいかに爆発させられるかが鍵になってくると感じた。

これぞ異世界というものを夏目監督は描いてくれている。異世界アニメの異世界は本来こうあるべきなのではないか。

市川さんと大西さんを中心としたキャスト陣のアフレコも良く、全体的に良かった作品。

哲学的作品が好きな人は好き。刺さる人には刺さるでしょう。監督もその人にしか求めてないです。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 13
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

いいですね、とても。結末の後どうなるかを想像する話なのでしょう。

12話まで視聴しました。

 大いなる勘違いをしてましたね。1話の時点で希はクラスメイトかと思っていたら夏休みの途中で転校してきたと。最終回を見てあれ、と思って1話に戻ったら、希は8月16日に転校してきて、クラスの人たちと面識がなかった。長良の名前を知っていたのは面接を後ろで聞いていたから。で、屋上で主人公と出会って、行くところはないのか、と問いかけたから主人公が違う世界に移転させてしまったと。

ただ、6話で希は元の世界で死んでいましたし、世界史の教科書は1話で自分で破いていたので、やっぱり自殺したのでしょう。それを希は知ってしまった。友人たちは泣いていたので、仲間外れとかじゃないと思いますが、作品を見返すと答えが見えるかもしれません。

 その情報が希の頭に残っていたのかもしれません。希は元の世界で卒業して高校に行って、アレとああなったのでしょう。どう見るかですよね。長良は変りました。鳥、見てましたから。希または瑞穂とこれでまた出会えたわけですから、今後は長良しだいということでしょう。

 長良も言っていますが、人生はこれからです。希とはあんな感じで終わったとしてもどうなるかわかりません。あっちの世界では朝風を認めていなかったし、長良と上手くいっていました。物語の結末は、すなわちこれからスタートだと。

 または中学校の卒業とかそういう区切りで人生終わるんじゃなくて、その後いろんな世界がまっているんだから、昔を引きずるな、ということでもあるでしょう。その意味では希も瑞穂の事も、過去として考える強さを長良は持ち始めたという意味かもしれません。(この意味だとしたら、秒速5センチメートルみたいな悲劇は起こすなという感じでしょうか)

 ああ、でもコンパスですよね。コンパス忘れちゃいけません。あれの意味を考えると…。あ、でもEDの歌の最後のフレーズが…。

 まあ、本作は最終回のラストシーンを見るための話なのでしょう。考察も無粋だと思いますので、もう1回どっかのタイミングで見て、何か書きたいことがあれば、また書きたいと思います。

 とてもいい話でした。



11話まで。
 なるほど、中学校…に限らないかもしれないですが、閉塞した世界=大人の世界に旅立ちたくない思春期の少年少女たちの話だと。やりたい事をやり続けたいという思いが、大人になっても残り続けて成長できない…中学生のころが一番良かったという日本人の停滞感の話でしょうか。
 だから、ラジタニが外国人として外から見ているので、いろいろ見えてくるものがある、と。

 また、海外帰国子女で{netabare}勉強について行けない、あるいは友達が長良しかいない希ちゃんは、自殺したということですね。スマホ嫌いでしたもんね。世界史の教科書を破っていたあるいは破られたのか。イジメの線も考えられます。恐らく屋上から飛び降りたのでしょう。だから光をもとめて飛び降りたと。そのとき、朝風は希を見捨てたという感じでしょうか。長良が死んだ鳥に冷たいのは死の現実を知っている、あるいは死んだ鳥は彼そのものなので同情もできないとか。 {/netabare}まあ、詳細は違うかもしれませんが、こんな感じではないでしょうか。

 並行世界を確率論的に云々ではなく、長良は希ちゃんと一緒の未来が見たかったんでしょうか。現実世界で彼の心は空になって、妄想の世界に入ったと。ただ、希の残したコンパスは長良が進むべき道なのでしょうか。
 3人は皆と離れていました。3人とも現実世界では孤立していたのかもしれません。瑞穂と一緒に旅立ちました。これは3人で死んだということではないと思いますが、可能性はありそうです。瑞穂の能力とか長良の境遇とか考えると分かりません。猫も瑞穂の心配をしていました。指輪も気になりますし。
 ただ、コンパスを考えると希が残した「2人は現実を見つめて生きろ」というメッセージなのかもしれません。

 あの犬の先輩は、結局中学校時代の思い出あるいは初恋に引きずられて年をとるまで成長ができなかった、ということでしょうか。
 穴の中の世界は意味のないことに騒いでそこに意味を見出していた中学校のクラスの象徴なのかもしれません。
 クラスが分裂したり一人で何かやってる奴とか、駄目だししてバツを人につける奴とかはまさに中学生の教室そのものでした。
 アキ先生はFAXとかコピーとか小間使いにされていました。多分その反動で支配者になりたかったのでしょう。


 9話、10話、11話と見ていろいろ気が付きましたし、考察は的はずれかもしれませんが、そういう何かを感じて欲しいという話なのは分かりました。この3話はすごく面白かったです。で、6話を見るとここでいろいろ解答につながるヒントを出していたと。考察すれば1話からなにかあるかもしれませんが、最終話見たら改めてやってみたいと思います。




以下 7話までのレビューです。

 7話です。希ちゃんが一番ダーク説でどうでしょう。
 額面通りに受け取れば確率論的に存在する並行世界を主人公がランダムに移動、観測することで実体化するという話に受け取れます。
 ポイントは主人公が鳥を助けずに猫は救ったこと、いつも寝転んでいたこと、主人公の家がゴミ屋敷でおそらく過去なにかの事件で母親が精神的におかしくなっている状況などです。

 考察をすればSF設定的にはいろいろ矛盾があると思います。1例をあげればその場で傷がなおる、時間の経過、超能力は何かの解答になっていません。今後のストーリーしだいでしょうが、現時点で材料は出そろっていない気がします。
 瑞穂の能力が猫と箱(シュレーディンガーの猫)でモノが出てくるということで、雰囲気だけで並行世界ですと力技で言い切るのかもしれません。その場合はSFではなく単なる物語だと割り切るのでしょう。
 
 キャラについて。主人公の逃避根性と厭世が前面にでています。また、あの空を飛べる子の嫉妬、瑞穂の正義感と物欲等々、その他のキャラも中学生の感情や悩みなどの縮図をこれでもか、といわんばかりに強調しています。あまりにダイレクトな感情表現が少々不快になるくらいですし、逆に言えば不自然すぎます。ただ、ポイントはどうやらそれが超能力と一致しているだろうという事です。

 となると、ヒロインの希ちゃんの内面を見せていないことが圧倒的に怪しいです。帰国子女ということもあいまって、まあこの子がキーパーソンではあるのでしょう。それぞれの能力が願望に準じているのなら、光が見えるという彼女の内面がもっともダークな予感もします。
 一方で、外国人を混入させていることに意味がありそうです。一番楽しんでいるのは黒人(インド人?)の彼でした。希ちゃんとインド人?の彼が実は…もありそうな気がします。外国人と帰国子女であることを明確に表現していますし。なにより一番面白そうですし。

 いろいろ謎はあります。瑞穂ちゃんの指輪も怪しいですね。男の先生と何かあった気がします。そして、白衣の先生は多分中学生なのでしょう…というか露骨に学生服のスカートをはいていました。そして星のほっぺのあいつですね。目の描き方から言って何かにとりつかれている感はありますので、こちらが犯人説が自然なのでしょうが、だとしたら捻りが無さすぎです。

 今のところ面白くないとはいいません。アニメの見方としては、SFとかの設定より推理小説的な犯人捜しの方が面白そうです。理屈が通ったどんでん返しなら大歓迎ですが、ご都合主義にならないことを期待します。ワンダー〇ッグプ〇イオリティーに似た匂いを感じるので心配です。

 アニメについては、少し「味」を出し過ぎでしょう。手抜きのごまかしに見えます。江口寿史の風景の雰囲気はでていません。希と瑞穂のキャラデザは可愛いです。
 ストーリーや映像は奇抜に走りすぎです。作家性の出し方のチューニングがちょっと悪い方にアンバランスです。謎がどうこうの言う前に切る人が続出しないことを祈ります。

投稿 : 2024/05/25
♥ : 19

63.8 8 不気味で学園なアニメランキング8位
ハイスクールミステリー 学園七不思議(TVアニメ動画)

1991年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (15)
63人が棚に入れました
つのだじろう原作の『学園七不思議』をアニメ化した作品。原作にはなかったオリジナルのストーリーが多くを占め、またその作品のクオリティの高さが当時の小中高生、主婦層に支持を得た。やたらと霊障の起こる「黄泉(こうせん)学園」に通う女子高生、一条みずきは、学校で起こるさまざまな心霊・怪奇現象を、自分の霊力を自覚している月影明子先輩とともに経験していく。「興味本位に霊の世界に近づくと危険よ」という月影先輩の忠告も空しく、みずきはさまざまな学校内の伝説や噂、事故、自殺、いじめ、恨み、悩み、恋愛などといった事件に首を突っ込んでいく。

声優・キャラクター
富沢美智恵、本多知恵子、川島千代子、青羽美代子、芳野日向子、三石琴乃
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