「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
8283
棚に入れた
34283
ランキング
117
★★★★☆ 4.0 (8283)
物語
3.9
作画
4.0
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.1

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ネタバレ

ヒロトシ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

不器用な兄と素直になれない妹の物語

予想以上に心に響いた作品。

桐乃をはじめとして、可愛い魅力的な女の子はそこそこ登場するのだが、実は一番魅力を感じるのが、桐乃の兄の京介なのだ。彼の存在のおかげで、最近氾濫する中身のない、可愛い女の子出しておけばいいんだろ的なアニメとは全く持って違うんだと胸を張って言える。オタクへの差別や偏見もテーマとして取り入れていて、若干過剰に演出されている部分はあるものの、桐乃のまっすぐな気持ちとそれに何とかして応えてやろうとする京介の奮闘が良いアクセントとなっていて、単純ながら楽しめるストーリー構成に仕上がっている。

京介は今までの人生でオタク趣味とは無縁の人間であり、桐乃の人生相談の影響で、それに触れる機会もあるものの、特別関心があるわけでもない・・・という描かれ方をしているのがちょっと面白い。そんな彼が妹との気まずい仲を修復できる可能性を見出した事で、色々こじれ出す人間関係にぶつからざるを得なくなる。

{netabare}京介と桐乃は元々仲が良くない兄妹だ。

京介からすれば桐乃は自分に足りないものを全て持っている人間である。世間も評価しているし、親からの期待も一身に集めている。たまに兄に口を開けばキモイというし、取る態度も侮蔑そのものである。そんな桐乃を京介は『頭の中で何を考えているかわからない』として、必要以上に距離を取っていたのだと思う。

しかし桐乃の趣味を知った事と、その流れで人生相談を受けた事で京介の桐乃評は一変する。桐乃を形作っている要素に触れたことで、京介は彼女を理解できるチャンスを得た。そしてアニメ・ゲームといったサブカルな話題だけが、心の距離が離れた兄妹の関係を、そして相互理解を円滑に出来るコミュニケーションツールという可能性を見出し、新たな人間関係も築いた上で、兄と妹が共存できる世界もゆっくりと模索していこうとそれが京介の真の狙いなのかもしれない。

しかしそんな京介の密かな願いは桐乃の趣味が父親に発覚したことで崩壊の危機を迎える。京介は桐乃とその件で話し合うが、その時、桐乃の思わぬ本音を聞くことになる。

『学校やモデルで頑張るのも、アニメやゲームに夢中になるのも、両方があたしなの!どっちかやめちゃったら、私が私でなくなっちゃう!』

趣味に没頭している自分も、日常生活で優等生で通っている自分も全部ひっくるめて『桐乃』という人間と京介に宣言している。自分という存在を世間体だけで勝手に評価して欲しくないという桐乃の本音が見える台詞だ。

京介にとってもこの台詞は桐乃の全てを現したものだと考えたのだろう。後に父親との話し合いでも似たような台詞を吐いている。

『桐乃の友達が送ってきた写真だ!これははばからなきゃいけねえか!? これが今桐乃が手に入れたものなんだ!ここにある全部が桐乃なんだよ!1つでも欠けたら、あいつじゃなくなっちまうんだ!』

自分を形作っている要素は人によって様々だ。人間はそれを成長の過程で自覚していくことでパーソナリティを構築していくのかもしれない。それは自分にとってはかけがえのないものであり、その1つの要素でも、他人に脅かされるという事は自分の存在を全否定される可能性になる事と同義だ。だからこそ人は共通の要素を持つ人間との繋がりを望み、自分のパーソナリティを充実させると共に存在を強く表明する行為を無意識的に選んでいるのではないかと思う。

京介は桐乃のように自分を形作っているものが何なのかは具体的には理解していない。それを理解しようとして、桐乃の人生相談に乗ったり、または、はじめから構築するつもりで色々な人間と接しているのかもしれない。そう思うと京介にはハッピーエンドが待っていて欲しいと願うばかりである。{/netabare}

自分を形作っている物は何なのか?これが欠けてしまうと自分が自分ではなくなってしまう!という事に対して明確な答えを持っていない人には是非鑑賞して欲しい。

投稿 : 2013/04/10
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