「思い出のマーニー(アニメ映画)」

総合得点
66.9
感想・評価
339
棚に入れた
1777
ランキング
2611
★★★★☆ 3.8 (339)
物語
3.8
作画
4.2
声優
3.5
音楽
3.8
キャラ
3.7

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101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

心の療養

元ネタの英国児童小説は未読。


北海道の湿地の町を舞台に、喘息の療養に訪れた内気な少女が、
不思議な出会いを通じて、徐々に心を解きほぐされるジブリの米林宏昌監督作品。


私事ですが自分も小児喘息患者でした。
喘息は危険な病です。単に呼吸が苦しいだけじゃない。
周りは普通に息をして元気に生きているのに、自分だけが苦しんでいる。
発作が繰り返されると、不幸自慢やら自己嫌悪やらで、
人格がねじ曲がり自壊しそうになる。

その上、本作の主人公少女は親がいない貰い子。
自分は輪の外にいると、いよいよ不幸病をこじらせつつある。

本作はそんな病状の心理描写と、癒やしの軌跡が繊細に描かれた、
個人的には改めて、もう一度、人を信じてみようと思い直すことができる、
素晴らしい作品に感じました。


ただ多分に感性に訴えてくる内容。

米林作品は『アリエッティ』もそうですが、
しばしば、雰囲気はいいけど、話の内容は何てことない平凡なお話だった。
との感想を耳にします。

ジブリアニメを観ていると、
人間の細かな生活の所作までよくアニメーションできているな。
と感心することが多々あります。

宮崎駿監督作品の場合、登場人物の細かい所作、表情は大抵はメインストーリーを彩る装飾。
大切な展開、肝心なメッセージは巨神兵やバルスでガツンとぶつける、といった感じ。
細かな言動に気が付けば、奥に秘めたテーマも発掘でき、
さらに味わい深くなりますが、気付けなくても一定の感動は得られます。

一方の米林監督は、その細やかな人間観察による所作の再現を、
メインストーリーへの誘導、
繊細な心理描写を鑑賞者に受信させるための感性調節装置として重用しています。

私の場合は、主人公少女への共感もあって、深い感動と浄化を得られましたが、
誘導され損ねた鑑賞者にとっては、本作も何てことないお話になりがち。

使う鉛筆は従来のジブリと同じでも、米林監督による作品構築の仕方はまた違う純文学的な風味。


本作公開後、米林監督はスタジオジブリを退社しています。
事情は不明ですし、だからと言うわけでもありませんが、
作品を観た限り、私は米林監督も宮崎吾朗監督同様、
従来のジブリとは違う才能の持ち主だと思うので、
“ジブリの後継者”という枷で無理に矯正されるよりは、
新天地で才能を開花させた方がいいと感じました。


私も米林監督と同じ石川県人として、ジブリ後の彼の仕事に注目したいと思います。

投稿 : 2016/09/12
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サンキュー:

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