「人類は衰退しました(TVアニメ動画)」

総合得点
84.8
感想・評価
2326
棚に入れた
11687
ランキング
264
★★★★☆ 3.8 (2326)
物語
3.8
作画
3.7
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
4.0

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ネタバレ

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

脱力系世紀末 文学的なアニメです

理由は定かでありませんが、人類が衰退しつつあり、まだ滅亡はしていない地球での出来事です。
この時代では妖精が「現人類」として生息していますが、「旧人類」の人間とさほど敵対している様子はなく共存しているようです。(※のちほど考察)

観始めてすぐ「あぁナンセンスギャグだ」と思い、流し観するようになりました。
「日常」にも通じるシュールなギャグ+主人公がやる気ない感じでほのぼのファンシーかつブラックユーモアな感じです。
そしてしばらく観るとこれは一筋縄ではいかないと気づき真面目に観るようになりました。
あまり明示的なストーリーではなく、視聴者は行間を読まなければなりません。
アイロニカルな風刺もタップリ含んだギャグアニメを観て7~8話でハっとさせられます。
最後は不覚にもホロリときました。

話数の並びが時系列順になっておらず「ハルヒ」1期みたいですし、途中例のループみたいなシーンもあります。
他にもパロディやオマージュや、それでは済まされないようなパクりも散見されましたが、見終わった印象はあるアニメにとてもよく似ています。
「四畳半神話大系」です。
鬱屈した青春の苦悩と成長によるカタルシスを描いた案外真面目な作品でした。

12回の話は綺麗に構成されています。
{netabare}
1~4話は導入から笑う所。(実は意味深な事に後で気づきますが)
7~8話のループ回
7話でループの事象を見せ、8話でそのループの裏側を見せると言う2重のループになっています。
妖精達の悪戯と助手君にまつわる他者社認識論が交錯する複雑な構造をしています。
思えば5~6話の探査機の自己認識論と対を成すもので、さらにその後のクライマックスにかかる伏線となっています。
9~10話は妖精達の営みを客観的に見た、個人ではなく社会の営みと衰退を風刺します。
「電脳コイル」のヒゲに近い表現です。
11~12話は主人公の学生時代を舞台に、再び個人にフォーカスを当てます。
「私」は敵の様に見える「彼ら」や味方に見える「彼ら」の本当の姿を覗き見てしまいます。
人には誰だって裏の顔があります。
それを覗き見た「私」は一瞬ドン引きしますが、その後の私のとった行動から彼らに対して憎しみや軽蔑を向けるのではなく、愛情とまでいかずとも肯定、または容認することが出来た事が伺えます。
未熟な「巻き毛」もやがて成長します。

ここで、人類が何故衰退したのかと考えさせられるわけです。
衰退した人類は戦争をする力も残っておらず今日も平和です。

10話で名前の無い妖精達に名前をつけようとする「私」が11話で名前を持っていない事を暗示されるに象徴されるように、彼らの中の「私」の存在、私にとっての「彼ら」の存在について多角的に考察する作品なのです。
そしてこの話をとてもコミカルに描いています。
そういうわけで「四畳半」にとてもよく似ています。

そして人類に俯瞰されている様で実は人類を俯瞰している存在の妖精達。
彼らの喋る事には意味のわからない事が多分に含まれますが、7~8話では登場人物にとっては意味不明、視聴者には少しわかる様に見せているのです。
その時点でそれ以前のエピソードでも意味不明な事を言っていた妖精達の活躍(暗躍?)を想起させます。
この妖精達の存在は映画「2001年宇宙の旅」のアイツラを思い出します。
彼らが人類にすることはただの悪戯。彼らのする事は人類には理解が出来ません。
彼らに導かれ人はゆらゆらと生きてゆきます。しかし最後はその悪戯に涙せずには居られませんでした。{/netabare}


時系列シャッフルの意図は簡単です。
もしこれ時系列順に並べたら竜頭蛇尾も良い所です。
↑の様に整理すればクライマックスに向かって綺麗に進行していくことがわかります。

観終わって熱い物がこみ上げてきます。
最近鬱系ばっかり観てたので久々の感覚でした。

文句ナシお気に入り決定です。

投稿 : 2016/09/07
閲覧 : 403
サンキュー:

28

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