未来で電脳なアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の未来で電脳な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月23日の時点で一番の未来で電脳なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.4 1 未来で電脳なアニメランキング1位
楽園追放 -Expelled from Paradise-(アニメ映画)

2014年11月15日
★★★★☆ 4.0 (890)
4662人が棚に入れました
われわれはどこから来たのか われわれは何者か

われわれはどこへ行くのか――。

地球はナノハザードにより廃墟と化した。

その後の西暦2400年、大半の人類は知能だけの電脳世界ディーヴァに生きていた。

電脳世界に住む捜査官アンジェラは、

闘力を誇るスーツ・アーハンを身につけ地上に初めて降り立った。

そして地上調査員ディンゴと共に地上のサバイバルな世界に旅立った。

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

色々な意味で魅力的なヒロイン

陳腐な表現だけど、すごいアニメを観ました。
これこそ、次世代アニメっていう奴?
専門的なことはわからないけど、CGが動くこと動くこと。
そして、メッセージ性が強烈で、シンプルなストーリー。
さらに、ヒロインアンジェラの露出度の高い臀部・・・
思う存分、楽しませてもらいました。

ヒロインの声が釘宮理恵さんということで、視聴を決定。
ツンモードのヒロインはまさに適役ですね。
その上、ややロリ容姿とナイスボディーに露出度の高いコスチューム。
私、ヒロインにメロメロになりました。
また、主人公ディンゴの声が良いですね。
三木さんの落ち着いた柔らかい声。
声に確固たる自信が満ち満ちています。
こちらはちょっとだけメロッとなりました。

内容と言えば、近未来にありそうなリアル物語。
人間の本当の幸福とは?を考えさせてくれます。
ヒロインが最終的に見せた、
使命感に満ちた表情、鬼気迫る真剣な表情、それにバカ話に笑い転げる表情が、
その答えでしょう。

釘宮さんの声がきっかけだったとは言え、収穫の多い作品でした。
こんなアニメ映画がもっと増えればいいですね。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 43

ワタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

極上の娯楽映画。

結論から言うと、今年放送されたどの作品よりも、これが一番面白かった。

ジャンルはSFだが、廃墟と化した地球・電脳世界・人工知能などといった、もはや手垢のついた設定ばかり。
ストーリー的にもこれといった深みも捻りもなく、ましてや大きな仕掛けやどんでん返しがあるはずもない。
でもそんなことはスタッフも重々承知の上で「それがどうした?面白ければそれでいいじゃないか!」
と言わんばかりの、萌えエロとメカアクションに溢れた上質な王道娯楽活劇に仕上がっている。

時間の制約上、アンジェラ・ディンゴ・フロンティアセッターの3人のみに焦点を絞ったのも好判断。
立場が異なる各々の主張が、テーマ語りだけでなくキャラ立てとしてもしっかり機能している。

終盤の戦闘シーンは圧巻の一言。
ここ最近のCGメカアクションでは、マジェプリ・シドニア・亡国のアキトが特に凄いと思ったが
本作はセルルック(3Dを2Dのように表現する手法)という意味で、方向性が若干異なる。
3Dならではの高速戦闘でありながら、2Dの手描き感も味わえるとは・・・!
本作はフルCGアニメだが「2Dこそが至高」と思ってる人に一度観て欲しいと思った。

アンジェラの顔芸一歩手前の鬼気迫る表情や、ワンカットだけあった完全デフォルメ顔なんかも印象的で、
これは専用の表情モーフィングツールを使っているとのこと。手描きと思ったけどホント技術凄いな・・・

一応不満点を挙げると、電脳世界側の描写が薄いところか。
劇中で電脳世界の在り方が肯定されたり否定されたりするが、いまいちピンと来ない。
あとディンゴが完璧超人すぎるかな(歌がアレなのは中の人の問題)。
アンジェラとの掛け合いは面白いけど、アンジェラが一方的に論破されてるだけに見えるのがね・・・w

※※※

作品に斬新さや深みがあるという「だけ」で褒め称えられ、
それらがない作品は特段価値のないものとして格下に位置付けられるという風潮は間違いなくあると思う。
個人的には創作作品である以上、まずエンタメ優先であって欲しいという思いがある。
斬新さや深みに拘り過ぎるあまり、娯楽性が疎かにされるような作品はあまり好きではない。
作者の妙な哲学のせいでストーリーがグダグダになり、キャラがブレまくるなんて本末転倒だろう。

虚淵玄という脚本家には色々思うところがあるが、
その本質はエンターテイナーだということを本作を観て勝手に確信した次第。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 60

シン風 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

素晴らしいアニメをありがとう。これが仁義ってやつでしょ^ - ^

久々にいいアニメを見ました。
あ〜映画館で見たかったなぁ〜〜
もっと良かっただろうなぁ〜〜
まぁともかく、とても良かったのは変わりないですね。
作画に関してはいいと思います。
本当、アルペジオみたいな感じでそれはそれでいい!
音楽も何かと心に来るし、ストーリーも楽しめること間違いなし!

あ〜これで終了か………
何か唖然としますね。
映画ならではの消失感じわっとくるネェ〜
最後まで個性豊かなキャラクターに素晴らし世界観……
SF要素も入り、魅力満載
見ていない人は見たらどうですかね^ - ^


最後に一言
音楽は古くても新しくても関係はない
絶えず何処かで心を震わせる
今はそんなに興味もない曲も
時間が経てばいつか馴染めるようになる
いや、好きになってしまう
きっとそんな風に彼女もまたなるだろう

投稿 : 2024/11/23
♥ : 10

65.2 2 未来で電脳なアニメランキング2位
<harmony/>(アニメ映画)

2015年11月13日
★★★★☆ 3.7 (272)
1418人が棚に入れました
優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。13年後、死ねなかった少女トァンが、人類の最終局面で目撃したものとは?

声優・キャラクター
沢城みゆき、上田麗奈、洲崎綾、榊原良子、大塚明夫、三木眞一郎、チョー、森田順平

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

現代医療の在り方に対する危機感を掻き立てられた作品。政治思想的レビューです。

2015年放送の劇場版アニメ 120分

原作 伊藤計劃 監督 なかむらたかし マイケル・アリアス 脚本 山本幸治
制作 STUDIO 4°C

原作は2008年にハヤカワSFシリーズとして刊行された伊藤計劃の長編小説。

2019年に起こった大災禍「メイルストロム」(世界戦争と未知のウイルスの蔓延)により、
世界は新しい統治機構によって医療経済社会が築かれた。
全ての人類が社会のために健康・幸福であれ、がこの社会の名目である。

舞台は新世界確立から50数年後の日本やバグダッドやチェチェン。
主人公は
霧慧トァン CV沢城みゆき
御冷ミァハ CV上田麗奈

監督のマイケル・アリアスと制作会社は鉄コン筋クリートのスタッフ。

さて、この作品は本格SF小説のノイタミナ系アニメ化と言うことで、
地味に話題になってそれなりの動員は記録したようです。
日本のアニメファンのレベルの高さが証明されて嬉しいことです。

病気の無い幸せな世界と言われれば、同じノイタミナ枠で放送された、
犯罪の無い幸せなはずの世界「サイコパス」を思い出しました。
世界の設定が少し似ていますが、こちらの原作が先発なので参考にされたと思われます。

感想としてはサイコパスを観ていなければ設定の緻密さに驚いたであろうと言う程度です。
現代から続く世界的組織WHO(世界保健機関)が独裁的ではないにしても、
強大な権力を持っていて、「メイルストロム」のような危機に備えています。

医療経済社会に関しては現在進行形なので警告を発する作品かと思いましたが、
それほどのメッセージ性は感じられませんでした。

現代日本に例えれば、国民保健を値上げすることで、絶対多数の下層階級から金を巻き上げ、
癌などの無駄な医療で医療機関に金を回し、一部だけの景気を上げる。
国民保健医療機関は脱税が不可能なので、財務省に金が入り、
下層階級のなけなしの金は医療と言う名のもとに国に吸い上げられているのです。
それでいて日本の医療は先進国中最低レベルです。
金が入るタイプの医療にしか興味が無いからです。
サイコパスにおいても厚労省の肥大化が描かれましたが、現在進行形です。

日本が貧乏になった理由は原子力と医療に金を吸い上げられたため、
資格が紙切れになったのは医師免許に権力が集中したためです。

このSFアニメを観ればこういった日本の現状が思い浮かびますが、
それだけで、作品によるメッセージは見当たりません。
当然ですね、権力が集中しつつある医療には逆らえないからです。

日本は抗がん剤の実験場になっていますが、だからと言って海外諸国がまともとも思えません。
癌の治療法を開発したシモンチーニ博士は抗がん剤マフィアに命を狙われ、
現在はイタリア軍の厳重な保護下にあります。
これただの重曹治療でですよ。

WHOが厳重に摂取を抑制させようとしている「塩」は癌予防薬です。
エイズや新型インフルエンザをばらまいたのがどの組織なのか、
知識人なら常識ですね。

このアニメはストーリーよりもこのような会話をしたくなる作品です。
利権を持っている者、医療関係者や公務員は必死の攻撃を始めます。
それは現代のファシズムと言ってよいでしょう。

癌センターや指定病院を現代のアウシュビッツと呼ぶ人も居ます。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 23

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

すばらしい新世界-Brave New World-

2015年11月27日記載
さっそくレビューを始めていきたいと思います。
今回は伊藤計劃『ハーモニー』の映画を観てきました。
私の個人的感想を徒然と書いていくので、よろしければご参考までにどうぞ。

まずは世界観説明から
2019年のアメリカ合衆国で暴動が起こりました。
それをきっかけとして全世界で戦争と未知のウィルスが蔓延
人類の多くが死に絶えたそれは「大災禍(ザ・メイルストロム)」という名前で後に語られ、その反動か、従来存在していた政府と言う概念は崩壊し、新たな統治機構「生府(ヴァイガメント)」の下で高度な医療経済社会が築かれる世界が誕生します。
そこに参加する人々自身が社会のために健康・幸福であれと願う世界が構築された、優しい牢獄の世界
これはそんな社会に反抗し続けた少女達の物語なのです…

さて、ここからは私の感想を書いていきたいと思います。
今回、正直言ってこのアニメはレビューを書こうかどうか大変迷いました。
伊藤計劃作品は全部レビューしていこうと、前回の『屍者の帝国』を観てから固く誓ったのですが、この作品を見てからはちょっと決心が揺らいだ位です(笑)
これは自分の個人的価値観のせいでもあるのですが…
まあ、その理由については下記の方で書いていきたいと思います。
なので、フォローも交えて説明していきますが、今回の『ハーモニー』のアニメ映画に好感を持てた方、百合というよりレズ描写、グロ描写が大好きな方、原作未読の方はもしかしたら納得できない部分も多々あるかもしれません。
なので、この先を閲覧するかどうかは自己判断でお願いします。





では、これより説明していきたいと思います。
大まかな理由として
1.理解する事と共感する事は違うという事
2.レズ描写の増加
3.小説から映画への転換と2に伴って起こる原作改変
この3つが挙げられます。

まず、1から
私は原作既読なのですが、正直に言って、原作を読んだ時は生命主義体制(ライフイズム)もミァハの思想も共感できるものではありませんでした。
何と言うか、ひどく極端なんですね…
生命を社会的公共財として捉える生府(ヴァイガメント)の理念も、ミァハの生命主義(ライフイズム)に対して行うテロ行為も客観的に見たらとても横暴なんですよ。
勝手な考えで人々を動かしているのはどっちも変わらないじゃんと最初に読んだ時は酷く冷めた目で感じていました。
なので、今回の映画で何か心が傾く要因となる物が出てくるか、少し期待して観に行ったんです。
観に行った結果として、私が揺り動かされる事はありませんでした。
むしろ、逆に横暴だと言う自分の考えがさらに強固になった次第です(笑)
うん、やっぱりどっちにも理解は出来るけど共感は出来ない。
しかし、この映画を見てどちらかに共感する人は必ず出てくると思います。
人間の考えは千差万別です。
むしろ当てはまらない自分みたいな奴が異端なのだと思います(笑)
なので、この映画を見てどう感じるか
生府(ヴァイガメント)の理念に共感できるか、はたまた、ミァハの理念に共感できるか、もしくはどちらの意見にも共感できないか自分の眼で見極めてほしい。
その為にもまだ観ていない方は是非、1度は映画館や後に出てくるであろうレンタルなどで観てほしいと私は思いました。

次は2について
単刀直入に言います、原作よりレズ描写が明らかに多いです。
原作では普通だった箇所もレズっぽくなってます。
また、新たに作ったのか、はたまた私が忘れているのか分かりませんが、自分の知らないレズシーンまでありました。
私は随分前に見た某アニメのおかげで、女同士の恋愛に対しては嫌悪感を覚えるまでのトラウマを抱えてしまったので、正直観ててつらかったです…
小説でも百合を1つの土台としてはいるものの、地の文と組み合わせて淡々と表現しているので、そこまで悪寒はしなかったのですが、映像化するとなると恐ろしいですね…改めてそう感じました(笑)
また、グロシーンも結構すごいです。
『屍者の帝国』よりも気持ち悪く感じました、精神的にきます、驚きます、血がドバドバ出ます。
これらが嫌いな人は少し覚悟して観た方がいいでしょう。
ああ、勿論大好きな方はどうぞ期待して観てください。

最後に3について
これがこの映画で1番納得できない部分でした。
1や2については主に私だけの個人的問題なのでいいのですが、この3だけは原作既読の方でも納得できない人は多いかと思います。
端的に説明していきましょう。
まず、説明セリフのオンパレードです。
未読の方はこの映画だけを観て理解できるのか、少し分かりませんね…
あまりにも喋っている場面が多いので、聞き逃すとストーリーが把握できなくなるかもしれないです。
映画として表現するにあたっての工夫があまり感じられないような気がしました。
ただ、小説をそのまま映像化しただけのような…
まあ、これは原作自体が説明の多い小説ですし、演出を吟味した結果なのだとしたらしょうがない事なのでしょう。
次に重要なシーンが結構抜かれています。
最初に上映した『屍者の帝国』も重要なシーンは抜かれていますし、映画では登場していない人物も数多くいました。
しかし、あの映画は再構成と言う形で未読の方にも分かりやすく伝わるよう工夫した結果、牧原亮太郎監督版『屍者の帝国』として生まれ変わったのです。
この点に関してはただ、素直に拍手を送りたいです。
さて、『ハーモニー』の映画はそれとは逆に原作を忠実に作りました。
ただ、その結果、フォローの回りきれていない部分があったように思います。
最初の物体は何なのか?
意識が消失すると言う細かい意味とは?
最後に登場した人物は一体誰なのか?
あんなにキャラクター達が喋っているのに、説明不足な点が多いですからね…
改めて、映画化するにあたっての難しさを感じたような気がします(笑)
まあ、しかし、やはり原作全てを映像化するのは不可能な事
2時間で収めるならば、所々カットしなければいけない箇所もあるかと思いますので、これもまた、しょうがない事でしょう。

しかし、これだけは言わせてください。
ラストシーンを変えたのは流石にどうでしょうか?
原作では霧慧トァンという1人の女性が御冷ミァハという女性の影をある種の執念で追い続け、最終的にはミァハからの独立、明確なトァンという1つの個へと至る物語でした。
しかし、この映画では最初から最後までトァンはミァハの事しか考えていません。
その結果、ミァハという自分に指針を与えてくれた親の如き存在から離れ、前に進んでいくトァンの成長というカタルシスがろくに感じられなかったのが心残りでした。
そして、最後に彼女はミァハに対して自分の答えを出す為にある行為をします。
その行為をした理由となる答えも原作とは変えられ、しかも原作の方が好きだったので、これもまたちょっと心残りでしたね…


以上を持ちまして、個人的感想を終了したいと思います。
ここまで長々とした駄文を読んでくださってありがとうございました。
今回は少し毒の強いレビューとなってしまったので、ちょっと残念です。
しかし、ここで1つ言っておきたいのですが…
この『ハーモニー』映画の全体的出来としては決して悪い訳ではありません。
上手く原作をまとめているなあと感じる部分もありましたし、改変でよかった箇所もありました。
恐らく、この作品は映画と小説、両方見て初めて完成する作品なのだと思います。

「事実は小説よりも奇なり」と言う言葉があります。
現実に起こる出来事は、作られた物語の中で起こる事よりも不思議で面白いものだという意味の諺です。
正直、私自身にとってみればあまり実感のない言葉でした。
その意味についても本当にそうだろうか?と首をかしげている普通の一般的な現代人です。
現実よりも小説の方が面白く感じる時もあるし、そんな考えに至るには、毎日、充実した日々を過ごすしかない。
だが、そんな幸福に溢れた生活などあり得ないと、その言葉を最初に学んだ時は斜に構えた眼で見ていました。
しかし、この映画を見てから、その諺の意味が少しだけ理解出来たような気がします。

よく考えてみると、この諺は決して現実と物語を分けてはいません。
物語は現実と断絶して存在している訳ではない。
確実にそれは読者にも何かしらの影響を与え、その結果、変わらない日常が変化していく人も中にはいます。
「影響」と言う言葉で片付けるにはあまりにも強い力
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を読んで自殺者が急増するように
坂口安吾の『堕落論』を読んで若者が新たな価値観を植え付けられるように
物語に感化された御冷ミァハから影響を受けた霧慧トァンのように
そして、伊藤計劃という個人の作品に没入している私達のように……
その結果、彼らは、私達はどのような方向へ導かれていくのか?
それは誰にもわかりません、歴史もしくは観ている我々、傍観者が判断するしかない事でしょう。
ただ1つだけ言えるとするならば
その力こそが現実を面白くさせる1つの起爆剤になるのではないかという事

それはこの映画からも同じことが言えます。
あなたは『ハーモニー』を観て、どんな影響を受けるでしょうか?
もしくは何も感じずに終わるでしょうか?
しかとこの目で確かめる為にも、この映画1度は見るべきかと存じます……

ここまで読んでくださってありがとうございました!!

「フィクションには、本には、言葉には、人を殺す事のできる力が宿っているんだよ、すごいと思わない?」
伊藤計劃『ハーモニー』p.224,早川書房


2016年1月24日追記
いまから語るのは、
〈declaration:calculation〉
〈pls:敗残者の物語〉
〈pls:脱走者の物語〉
〈eql:つまりわたし〉
〈/declaration〉 [ハーモニー]
と言っても、この映画については1年前に概ね語り尽くしましたね…
今作の批評も、今思えば感情に任せて書いた文章でございます。
しかし、よく考えたらそのスタンスは現在の自分と未だに変わっていないというか、未だによく行っている事に書いていて気付きました。
自分の理性的であり合理的な部分を占める成長は、この先「闇」しかないのかもしれません(笑)

しかし、この『ハーモニー』と言う映画
観ていてつくづく考えてしまうのは、社会を構成していく難しさです(ディストピア小説なので当然と言えば、当然の話なんですが)
より良い社会に住みたいと思う事は万人において普遍的な共通性ですが、しかし、その社会的「善政」が万人に良い効果をもたらすとは限らない…
構成員である人々誰もが「善性」であれば、社会は幸せになるのか?
『ハーモニー』と言う作品はそんな問いにも深く言及しているようです(まあ、私が1番好きなキャラはキアンなんですけど(笑))
しかし、社会は無理でも世界なら…
2人ぼっちの世界なら…
-----------------------------------------
彼女が死んでいく間、私は誓った。
天国とまではいわないけれど、できるかぎりここを、この場所を良くしてみせるよ、と。
彼女はそれを聞くと、にっこり微笑んだ。
そうね、天国とはいわないけれど、天国の隅っこくらいまではたどり着きたいわね、と。
それが彼女の最後の言葉だった。
伊藤計劃『The Indifference Engine』「フォックスの葬送」より
-----------------------------------------

さて、前作『屍者の帝国』から始まり、今作で分岐点を迎えた長いプロジェクトは来月の「終わりの始まり」を上映する事によって、遂に終焉を迎えます。
ここまで至る道は1年以上に亘った大変長い物でしたが、何、なんて事ありません。
人間の魂に及んだ解答が1年と少しで解明されたんです、こんなに短い物は無いでしょう…
しかも、どうやら深夜に『屍者の帝国』と『ハーモ二ー』が放送されるそうですね、こんなに嬉しい事は無いでしょう…
私も深夜放送で「終わりの始まり」に至るまでの雄姿をもう1度拝見し、それから最後の戦場、ジョン・ポールとの戦いへ臨みたいと思います。
そして、「伊藤計劃」の全てが揃ったその時はもう1度全体を観るとしましょう、読みましょう!!
「物語…それは死してなお、この世界にあり続ける技術」

-----------------------------------------
さあ、行進しよう、とぼくは穏やかに呼びかけた。
のろまも、せっかちも、思い思いに。
足並みなんてばらばらでかまわない。
のっぽも、ちびも、僕らは歩く。
丘を下って。
人の営み、生活の匂い
それを運ぶ涼やかな風の上方へと。
伊藤計劃『The Indifference Engine』「The Indifference Engine」より
-----------------------------------------

投稿 : 2024/11/23
♥ : 15

米麹米子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

中々に重いお話ですぞ

HTML書式風味?で始まる未来の光景からは
想像つかない程にラストは濃厚。
脳医学ちょっとかじってれば
理解できると思うけれども、別に知らなくても
他に見所は沢山あるので問題無し。

中1の時の自分の思考や言動をなぞっているようでしたよ
ミァハ

思考停止
いわゆる考えるのをやめた☆
ようなちょっと想像するとラストは怖いのですが

憎しみ・恨み・怒りのエネルギーというのは絶大なもので
生きる力に変換できるほどの威力を持っています。
相手を殺すか自分が死ぬかの二択と思われがちなのですが
実は3の道があります。
これがベリーハードモードで
死んだがマシと思えるほどの苦痛

脳みそって良くできていて
失った機能をサポートしてくれる場合もあるのね
シナプスが勝手につながる感じ?
これがミァハの言うところの意識の覚醒だと思うんだけど
痛みも苦痛も意識下で認識してないと
認識してないととるわけ
何も感じない訳でもなく緊急避難的に
なかったことにするか自我を殺して
何も感じないようにもできるわけ。
すごいよね、脳みそ。

葬式があるだけマシというか
健全なのかな
死をまだ身近で感じられる分
そんな事を考えながら見ていたのでした。

マイケル・アリアスとSTUDIO4℃
鉄コンコンビですね。
「Ghost of a smile」
主題歌は EGOIST

意識に思いをはせられる哲学的な一品です
カテゴリーはSFになるんだろうけど。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 24

64.9 3 未来で電脳なアニメランキング3位
攻殻機動隊ARISE GHOST IN THE SHELL 「border:1 Ghost Pain」(アニメ映画)

2013年6月22日
★★★★☆ 3.6 (336)
2032人が棚に入れました
『公安9課』が最優先ラインの攻性部隊とはなり得ていない、A.D.2027。公安捜査の権謀術数に限界を覚える荒巻の前に現れたひとりの女─ 陸軍『501機関』所属・草薙素子三佐。 最高度のフィジカルと電脳戦スキルを備える一方、向こうみずで世慣れぬ未熟さをあわせ持つ草薙は、荒巻と不即不離の関係をたもちつつ、次々と発生する犯罪へと対処する。だがそれは、ゆりかごたる501機関との関係を問い直すことでもあった。上司であり保護者でもある野心の女・クルツ中佐との間に生じる軋轢。さらに、謎のウィルス『ファイア・スターター』の出現。困難な事件に立ち向かう中、『眠らない目を持つ元レンジャー』『所帯持ちの特捜刑事』ら、個性的な人的資源と気脈を通じる草薙。荒巻といつしか共有していた目的─『犯罪に対し常に攻性の精鋭実力部隊』創設へ向け、草薙は彼らを糾合してゆくこととなる。『攻殻機動隊ARISE』─これは草薙が少佐と呼ばれる前夜の物語である。

声優・キャラクター
坂本真綾、塾一久、松田健一郎、新垣樽助、檀臣幸、中國卓郎、上田燿司、中井和哉、沢城みゆき、浅野まゆみ、星野貴紀、野島健児、宮内敦士
ネタバレ

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

押井じゃない!神山もいない!キャストも音楽も違う!だけど冲方丁が来たよ!つまりオイラが知る限り最高の攻殻だよ!

後に攻殻機動隊と呼ばれる『公安9課』のメンバーが一同に会するまでを、新たに書き換えた設定の元に描くという攻殻シリーズの【エピソード0】と呼ぶべき全4部作の第1話
今作では草薙素子、荒巻、バトー、トグサ、パズの5人が登場
各々のファーストコンタクトと、そして素子の旧所属である『陸軍特科501機関』が題材となっています










まずたったの全国20館の上映にも関わらず、あにこれ内でもまずまずの前評判
これには流石長寿作品ということで脱帽です
一方で、ネガティブな評価の多さに個人的には残念でしょうがないっす
【たぶん今年一番のアツイ作品になりそう!】というのがオイラの率直な意見だからです


既にGIS、SACといったアニメ化を経て原作者の手元を離れたと言ってもいいであろう『攻殻』という作品
そして今作は【第4の攻殻】と呼ぶべき新シリーズとなり、監督や脚本はおろか、キャストの総変更という大冒険に出ています


これは単純に好みなのかもしれませんが、このキャスト変更に関しては前向きに受け取ってます
特に主演のまーやはコドモトコも演じてるシリーズの常連
アップルシードのキャスト変更のときもそうでしたが、まーやを使うこと自体には特にデメリットを感じません
むしろ大正解、実に俺得(お
初めて攻殻に触れる人にもオヌヌメ


そして最もたる特徴なのが脚本の冲方丁の存在でしょう
攻殻シリーズらしい今作の事件のトリック{netabare}(電脳の記憶改竄、視覚操作){/netabare}、これを氏が得意とするサイコサスペンス調で描く様はこれまでのどのシリーズよりも手に汗握るスリルと興奮を誘います
(っていうかまんま『マルドゥック・スクランブル』なんですけどw)


犯罪心理やゴーストの在り処といった複雑で哲学的内容だった以前のシリーズと違い、映画らしいシンプルなドキドキを感じさせてくれるお話作りの今作
オイラは上映後にスタンディングオベーションを送りたかったくらいです



それと音楽
川井?菅野?いえいえ、それもええけど今作の劇伴はなんとコーネリアス
コーネリアスですよ!?小山田圭吾でしゅお!?
オイラの記憶によればエクスマキナ以来ですか
これがすげーんです、カッケーんすよ
エスニックな民謡でもブラックなファンクでもない、けどシンプルなエレクトロがこんなにも攻殻の世界観とマッチするとは・・・
灯台下暗しとはこのこと;


これに絡めてゆらゆら帝国の坂本慎太郎が作詞、小山田圭吾のサウンドプロデュースでsalyuが歌い上げる幻想的でアンビエントな主題歌もエンドロールでの心地良い余韻を生んでいます


こういった部分から攻殻を知らない人にこそ観ていただきたい作品だと言えます
サイバーパンクが流行らない昨今でこれだけの大作に出会えたことは感涙ですね


イイとこばっか語っていてもなんなのでツッコミどころをば・・・
なんと今作、完全義体であるはずの素子がシャワーを浴びるシーンがあります(笑)
これにはちょいと驚き
義体の取り扱い方が依然の作品の設定と違うのか、光学迷彩を装備していない点を見るとそもそも完全義体とは名ばかりで厳密には生身の部分が残っているのか
その辺は定かではない
ようはアレです、サービスカットってやつですか


あとマイクロソフトのタブレット型PCとコラボしたアニメCMが上映前に流れ、以前のシリーズを汚しかねないヘボいオマージュが多くて思わず吹き出しましたw
いくらなんでもあれはないw


ええでもまあ、タチコマの旧型と思しき新ガジェット(新キャラクター)の『ロジコマ』(CV:沢城みゆき)かわいいよぉ、かわいいよぉ


それに相変わらず日産車に乗ってますたね


キャラデザがどうのこうの言ってもそりゃ好みの差
黄瀬和哉、西尾鉄也、沖浦啓之・・・ってどうみてもいつもの攻殻です
1.5巻辺りの原作にも近いし、本当にありがとうございました!


今はとにかく次回作が楽しみでなりませんねー
(半年後らしいですけどねw)
次回以降の盛り上がり次第では今年のベストジャパニメーション!?
要注目ですぜb

投稿 : 2024/11/23
♥ : 28

ストン さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ちょwww サイトーの髪型が!!

いえ、この話にはサイトーさんは出てきません。
でも、攻殻の中で好きなキャラだったんですが、
OPで一瞬出てきたサイトーさんの髪型を観て噴きました。

ええええええ!

一体何が起こったのか、いや、まぁ落ち着こうか。

コレまで、ほぼ全部の攻殻機動隊シリーズを観てきて、
先日このARISEを見始めました。

このシリーズは、
今までのシリーズより少し前の時間軸で、
公安9課が出来る前のお話です。
4話まであるようなので、そこで発足するのでしょうか。

この第一話では、
草薙素子が荒巻と出会い、軍を退役するところまでです。

今までのシリーズを見ていたから何とか話についていくことは出来たけれど、
何の前知識もなく、いきなり見たら、
頭のなかが「?マーク」でいっぱいになるかもしれません。

攻殻機動隊シリーズ特有の、
電脳とネットの海の中で、
自分の記憶が正しいのか、自分が今見ているものが現実なのか、
他人からハッキングされているのではないか?
といった独特の状況をうまく描写していると思います。

ここまで書いておきながら、
コレ以上はネタバレなので、書きません^^;

また、今までの攻殻機動隊シリーズと違う部分は、
キャラクターの作画が少し変わったところと、
声優が刷新されたところです。

最初、素子を見た時、
今までよりも幼く感じました。
時間軸的に昔なので、ちょっと経ってからもう少しアダルトな身体に義体をいじったのかな、とも思いましたが。。。

声優に関しては、
今までの田中敦子さんがあまりにもはまり役だったので、
少々不安はありましたが、
なぜかあまり違和感を感じることなく上手だと思いました。

50分の作品ですが、
充実してみることが出来ました。

第二話が楽しみです^^

投稿 : 2024/11/23
♥ : 6

kuroko85 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

どうして「攻殻」のシリーズはこうもハズさないのか

もちろん、最初から期待を込めて
見ている。
その目線は他のシリーズと比べても格段にきついほど、、
私の中で「攻殻シリーズ」が一番、シビアな目で
鑑賞しているはずだ、、、
(次がジプリ作品かな、個人的に
川尻作品も辛く見る)
それにも関わらず、どの作品も必ず及第点以上の
レベルは必ずクリアしてくる。
(監督や声優を代えても)

この作品も十分満足させてもらった。
ARISEの言葉が付いている事から、
9課メンバー発足前と言う事は想像がついた。
題材としては扱いやすいとは思う。
ファンの中では、既に9課メンバーの
個性や能力は、大概浸透しているからだ、、、

今回の作品は、それをワザと裏切らず、
常套手段で責めてきた。
さて、イシカワやパズーはどう出てくるか?
続きが楽しみだ、、、

投稿 : 2024/11/23
♥ : 1

66.2 4 未来で電脳なアニメランキング4位
マルドゥック・スクランブル 排気(アニメ映画)

2012年9月29日
★★★★☆ 3.9 (177)
1004人が棚に入れました
『天地明察』で2010年本屋大賞に輝いた人気作家・冲方丁の出世作にして2003年日本SF大賞受賞の傑作サイバーパンク小説『マルドゥック・スクランブル』を、原作者自らの脚本でアニメ化する全3部作の映画プロジェクト、その第3弾。

賭博師シェルの犯罪に巻き込まれた少女娼婦バロットと、委任事件担当官のネズミにして万能兵器のウフコックは、宿敵ボイルドとの激闘後に訪れた“楽園”にて、シェルの移し替えられた記憶は彼が経営するカジノの百万ドルチップの中に隠されていることを知る。

バロットは、シェルの罪状を白日の下に晒すため、チップを手に入れることを決意。
シェルの経営するカジノへ乗り込んだバロットは、ウフコックとの見事な連携により、伝説の女性スピナー、ベル・ウィングをも制した。

しかし、そんなバロットの前に、最強のディーラーにしてハウスリーダーであるアシュレイが立ち塞がる…。

最後に挑むゲームは、“ブラックジャック”。
果たして、バロットはアシュレイを破ることが出来るのか?

そして、ボイルド、シェルとの戦いの行く末は?

命をかけた最終決戦がはじまる-。

声優・キャラクター
林原めぐみ、八嶋智人、東地宏樹、中井和哉、磯部勉、藤田淑子、土師孝也

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

サイバーパンクハードボイルド3部作に決着の時、来たり!「君は何人も殺さないし、殺されたりしない。殺させもしない!」

思いっきり前回の続きからなので前2作を観ないと完全に置いてけぼりですw
ダイジェストとか一切ナシですw
可能であれば3作を連続して観て頂くのがイチバンかと?;


前作でベル・ウィングさんとのルーレット勝負に辛くも勝利を収めたバロットとウフコック
続けてブラックジャックに挑戦し、目的である100万ドルチップ4枚の回収を狙う
前回に引き続き、前半の内容は完全にギャンブルでの頭脳戦、心理戦の模様


そしてバロットを殺そうとしたシェルの、消し去った記憶から明らかになるその素顔と真実
残忍な殺人犯であるはずのシェルに秘められた悲しい過去に困惑するバロットがドラマティックですb


そしていよいよクライマックスはボイルドとの最終決戦
シリーズ集大成とも言うべき圧巻のアクションシーンにスタッフの成長も感じられ、ここまでマルドゥックを追いかけてきた甲斐もあったというものですよ
(実際に、第1部制作開始当初は新米だったアニメタ達の、レベルアップを狙ったOJT的な制作現場だったようです)


改めて『3年という月日』と『60分×3部作という構成』は、「原作を完全再現したい!」という想いから生まれたものではあるものの、いささか“詰め込みすぎた”感が苛まれ、決して今回のフォーマットがマルドゥックのアニメ化に相応しいモノだったとは言い難いです


でもねw
この『排気』単発の出来栄えからするとその辺はもうドーデモ良くなってくるのですよwww


神さま(本田美奈子)が差し伸べた救いの手(アメイジング・グレース)がバロット(林原めぐみ)に受け継がれていく様(今作の挿入歌で林原めぐみと本田美奈子が奇跡のデュエット)とかもう感無量


とりまちゃんと完結したことへのお祝いも兼ねて、本当に良かったね
って微笑ましく見送りたいっす

投稿 : 2024/11/23
♥ : 11
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

心に焦げ付く重厚サスペンス作品★

本作およびレビュー内容にはR18になりそうな過激な言語表現が含まれていますので、嫌な方は読まないで下さい。

■評価
テーマ性 :★★★★☆ 4.1
エログロ度:★★★★  4.0
純愛度  :★★★★☆ 4.3
シリアス度:★★★★☆ 4.3
おススメ度:★★★★☆ 4.1

■ストーリー
未成年売春婦のバロットは専属の雇い主であるカジノオーナー・シェルに突如焼殺される。しかし、生きる希望を持たぬバロットに救いの手を差し伸べたのは一匹のネズミであるウフコック・ペンティーノだった。そして、一命をとり止めたバロットは自身が焼殺された謎をウフコックたちと共に追っていくストーリー。『圧縮』『燃焼』『排気』の全3話 劇場版作品。

■感想
本作は著者:冲方丁さんの日本SF大賞を受賞した小説をアニメ化したもので、私は原作小説をすべて既読済です。本作はSF作品となっていますが、科学的な考察などは皆無であり、あくまでSF設定を用いたハードボイルド・サスペンス作品となります。(攻殻の様な世界観は求めない方が良いです)

個人的な感想としては、原作小説は超えられなかったが、難しい言語表現がならぶ小説の世界観を巧みに表現した良作だと思います。本シリーズは『生きる事とは何か?』というシンプルなテーマを持ち、一つの殺人未遂事件から真相を追う過程を、肉弾戦・頭脳戦・心理戦を用いて楽しませてくれる内容になっています。
そして、未成年売春・幼児虐待・強姦・近親相姦・暴力・ドラッグ・汚職・金・権力という人間の汚物と血反吐にまみれた世界観の中で、そのストーリの本質が生きる苦しさ、そして純愛という人の生臭さを描いているので本シリーズのテーマが光ってみえます。

また本作を鑑賞すると『生きる事は何なのか?』と考えさせられ、それは『自身や他者の存在を必要とし、必要とされる事』そんな分かりきった答えを理解しながらも、想い通りにはいかない人生の虚しさ(焦げ付き)や他者に愛される幸福感を本作品は感じさせてくれます。これぞハードボイルドの真骨頂です。

ただ、尺が足りない事でエンターテイメント性が薄れている点は残念です。個人的に本シリーズ通しての見所は、カジノでの頭脳戦・心理戦になりますが、このシーンでのバロットやウフコックの心理描写や、結果に対する過程の説明が少し足りないので、緊張感や悲壮感に物足りなさを感じます。
非常に惜しいです。

総じて、本シリーズはエログロ鬱なので、万人受けする作品ではありませんが、個人的には本作の続編(前章譚)であるボイルドが主人公のマルドゥック・ヴェロシティーのアニメ化も強く祈願しております。みんな~オラにパワーをぉぉぉ!!

レビューはここで一旦しめさせてもらいます。
ご拝読有り難うございました。


-------
■本作の謎とポイント
ネタバレになりますので、興味のない方は
読み飛ばしてくださいましm(_ _)m
{netabare}
Q1:バロットはなぜシェルに焼殺(未遂)されたの?
A1:原作小説から引用すると、生きる実感を得るために
  バロットは思いつきで自身の身元を確認してしまった
  事で、マネーロンダリングの秘密に触れたと思われ
  シェルに殺害される事になります。
  (本シリーズではよく描かれていませんでした)

Q2:ウフコックって何者?
A2:世界大戦期に楽園にいた三博士の一人に設計開発
  された人口知能をもったネズミ型万能兵器です。
  (ドラえもんのネズミ版です)
  仕組みは全くわかりませんが、異次元に物体を
  無限・永久的に保存し、必要なときに現次元に
  呼び出す様な構造になっていたと理解しています。
  そのためウフコックが銃になれば弾は無限に供給され
  続けます。

Q3:シェルって何者?少女達を殺害した動機は?
A3:オクトーバー社と結託し、身寄りのない少女達の
  戸籍を利用したマネーロンダリングを行う悪党です。
  そして、シェル(殻)という名の通り、過去の母親殺し
  という罪と苦しみから逃げるために、マネーロンダリ
  ングの証拠隠滅と併せて、自身の記憶の抜き取りを
  繰り返し、結局は中身のない殻の様な男に成り下がり
  ました。また動機ですが、どの少女も自分の事を
  知ろうとしてしまう事でシェルの過去の罪の苦しみや
  恐怖をフラッシュバックさせてしまい、A1の内容と
  あいまって動機となり殺害に及んでいました。

Q5:ボイルドって何者?
A5:彼は元々は戦術爆撃機のパイロットであり、過度の
  過労と処方されたオクトーバー社製ドラッグが要因
  で、誤って見方を爆撃してしまう罪を犯します。
  そして楽園に人体改造のモルモットとして送られ
  ますが、ウフコックという愛を与えてくれる存在と
  出会い希望を見出した人間でした・・・。

Q6:バロットはなぜ人体改造の順応率が高くて強いの?
  主人公だから?
A6:半分合っています。
  バロットは幼少期から大人の欲望に蹂躙される経験を
  もち、その経験から無意識の防衛本能により、自分の
  体の感覚を自由に無感・無心にする術を身に着けて
  いました。そのため、繊細なコントロールが必要な
  スナーク機能とバロットの愛称がよく順能率が
  あがった事になっています。

Q7:ボイルドは重力を操って弾丸をはじく程、無敵なのに
  なぜバロットの銃弾が当たったの?
A7:バロットが持つ能力はスナーク機能となっており
  電子機器の遠隔制御やハッキング、そして自身の肌
  から放出する電磁波をソナー代わりにして、物体の
  接近や動作を察知します。
  この機能を駆使してボイルドが銃を撃つ際に
  重力の壁に隙間ができる事を察知し、その隙間に
  銃弾を打ち込む事でボイルドは初めて被弾したのです。
  そのため、終盤のボイルドはチャクグレネードを使い
  バロットのスナーク機能を封じようとしたのです。

Q8:ボイルドのもっている銃は何?威力ありすぎでは?
A8:65口径のモンスター・マグナムです。通常の人間が
  撃てば両腕が脱臼するほどの威力ですが、ボイルドは
  重力でその衝撃を抑えて使用しています。
  現代でも55口径の拳銃が最大です。
  詳細はヴェロシティーで!!

Q9:ボイルドとウフコックは過去に何があったの?
A9:ボイルドとウフコックは楽園からでてからも
  マルドゥックスクランブルO-9の有用性を証明する
  ために、相棒として日夜事件と戦っていました。
  しかし、オクトーバー社の陰謀によりマルドゥック
  スクランブルO-9の遵守が難しい(ウフコックが処分
  される)と思った彼は、その陰謀を潰すため
  自分たちに不利な証言をする一般人たちを口封じの
  ために次々と暗殺したのです。
  その事が原因でウフコックはボイルドと離別し
  単独で任務に励みますが、実はボイルドのお陰で
  存在できているのです。そんなボイルドの愛を
  知っているからこそ、ラストシーンでウフコックは
  あんなにも落ち込んでいたのです。
  ここで何でボイルドはオクトーバー社側に
  ついてるの?という疑問が沸きますが、詳細は
  ヴェロシティーで!!

Q10:冲方丁さんは虚淵玄さんの二番煎じの脚本家
  じゃないの??
A10:私は違うと思います。
  冲方丁さんは数多くのアニメ作品を手がける私の
  好きな脚本家さんですが、私は虚淵玄さんも好きです。
  このお二方の共通点は触れ幅の激しいストーリーと
  鬱展開だと思っていますが、決定的に違う点が
  あると思います。
  それは虚淵さんは、容赦なき『死に様』を描いて
  強烈な心の傷(印象)を残しますが、冲方さんは
  主人公の過酷な『生き様』を描いて、苦しみと絶望を
  心にジワリジワリと染み込ませてきます。
  この似ているけど異なるすばらしき脚本家さん達の
  活躍に今後も期待しています。

少しでも本作を楽しむ糧にして頂いたら幸いです。
{/netabare}
-------

投稿 : 2024/11/23
♥ : 17

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

生きることが穢れであった少女の戦い 排気?廃棄?心は流体力学

2011年の劇場版アニメ 3部作の最終章 62分 R15指定

スタッフキャストは一貫している。

前半は第二部の続きでカジノでのブラックジャック勝負。
SF的な部分があるのかは視聴者の感じ方次第。
ブラックジャックそのものは面白いし手に汗握る。
まあ、サイバーバンクSFアニメを期待したとすれば裏切られる方向性かな。

後半は一転して、乱雑な未来社会(ウイリアムギブソン風)を舞台にガンバトルが繰り広げられる。
ハカイダーの如く壁を歩く強敵ディムズデイル=ボイルドCV磯部勉との決着だ。

3部作一貫して主人公ルーン・バロットの魅力が全開で、
受け入れられるかどうかは、数奇な運命をたどった少女との一体感を得られるかだと思います。
大人向け作品なのでルーンには処女性は無く、汚れきった生命の強さを見せます。
はかなげな外見とは相いれないような穢れこそがその本質です。

この作品が成功作なのかどうかは原作を読んだ人にしか評価できないでしょうが、
SFファンにとっては貴重な作品であることだけは確かだと思います。

80年代の米SF界を席巻したサイバーバンクにあこがれた日本人作家の必死な作品とも見えますが、
完成させたことにより、日本人独自の創作が一段階上がった、
恥ずかしながらもマイルストーンと言える作品であったと思いたいです。

物語の迷走は「乱雑な世界」を描くための上級創作ともいえますが、
失敗であったとも取れる、視聴者に判断をゆだねたものだと思います。

誰にでもお勧めできる作品ではありませんが、
未知なるものへの興味が、完成品しか認めないという固さを超える人には、
価値ある作品になる可能性はある作品だと思いました。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 22
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