幽霊で田舎なおすすめアニメランキング 8

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの幽霊で田舎な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年01月31日の時点で一番の幽霊で田舎なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

82.2 1 幽霊で田舎なアニメランキング1位
ふらいんぐうぃっち(TVアニメ動画)

2016年春アニメ
★★★★☆ 3.8 (1300)
5998人が棚に入れました
青森の親戚の家で居候をすることになった15歳の魔女・真琴と、彼女を取り巻く少年少女の日常をコミカルに描く物語。

声優・キャラクター
篠田みなみ、鈴木絵理、菅原慎介、葵井歌菜、三上枝織、日野まり、井口裕香、佐倉綾音、茅野愛衣、小澤亜李
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

コンクルシオ

<2022/2/27 追記>
一期はからもう6年近く経ってるんですねぇ。
アニメ一期は原作4巻ぐらいまでだったはず。
そして今は10巻まで出てます。
そろそろ2期欲しいですよね。
6年間、正座して待ってるけどそろそろ足が痺れてきましたよ。
また朝4時の放送でもいいからなんとか。。

<2019/10/31 追記>
原作8巻読んだのですが。
のんびりの雰囲気はそのままに魔法要素増えてました。
やはり面白いっすよ、これ。
杏子の通う学校が意外すぎる!

ところで前から薄々感じてたんですが
この作品、「アタゴオル・シリーズ」になんか似てるなー。
雰囲気というか空気感というか世界観というか。
アタゴオルはコテコテのファンタジーですがでもある意味日常ものですし。

ふらいんぐうぃっち気に入った方はアタゴオルシリーズもおすすめかも。

<2019/5/3 追記>
昨日、ドトールでぼーっとコーヒー飲んでた時のこと

ふと横を見ると隣席を隔てる衝立にナナホシテントウが・・・
自分の顔から20cmくらいの衝立の表面をトコトコトコトコと

奴は可愛いですね。

喫茶コンクルシオ思い出しました。。


<2017/9 初投稿>
魔女の女子高生が修行のために青森県弘前市の親戚の家に
居候する話です。

魔法少女とか魔女っ子ではなく、ケルト風な自然信仰っぽいかなりオーソドックスでレトロな方の魔女。


いわゆる日常系。ほのぼの。
物語の起伏は恐ろしいまでに乏しいのですがそれがまたいい。

そして・・・{netabare}
箒に乗って飛ぶときの浮遊感がたまらない!
この作品好きな人には、「この浮遊感にやられた」って人多いんじゃないでしょうか。{/netabare}

さらに、風景の一つ一つ、エピソードの一つ一つが全て安心。
音楽も、アコースティックな優しい音色が耳に心地よい。

弘前市の田舎の描き方もいいですね。
うっかり住みたくなります。
青森の西側の豪雪っぷり考えたら住んだら大変なんでしょうけど。

ところで。
これだけ癒し系なのに女性にはあまり人気ないんですよね。
例えば真琴のボディラインが妙に強調されてるような気がするのだけど、やっぱりそういうの女性にはあまりウケがよくないんでしょうか。
あんだけキャラがぼーっと平坦なんだから、体型ぐらい凹凸あってもいいじゃない、とも思うんですが笑。

「明日も仕事だ嫌だな」という時にちょっと観るのに最適な作品です。

<2017/9/25追記>
今日うっかり原作大人買いしてしまいました。
原作はさらにさらっとしてますね。

<2018/4/21追記>
女性からの人気が少ない理由、男性がほとんど出てこないからですね。
原作でモツ焼きパーティするシーンがあるんですが、そこでお母さんの「あら!女の子ばっかり」という台詞でようやく気がつきました。
そりゃそーだわ。と納得。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 89
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

ゆっくりとした口調や柔和な言葉遣いに安心します。

田舎での落ち着いた日常を描いた作品の様です。

主人公の真琴が魔女なので、少しだけ不思議な事が起こりますが、それらの出来事が自然に日常に溶け込んでいる所に魅力を感じました。同じ様に田舎での日常を描いたアニメ「のんのんびより」と比べて、キャラの年齢が全体的に高めなので、口調や言葉遣いもさらに柔和で、よりゆったりとした空気を醸し出しているのではないかと思います。

登場する人たちの殆どが、他者の行動に自分の行動を合わせたり、気を使ったりせずマイペースに行動している点は、都会を舞台にした日常アニメのキャラたちが、常にお互いの孤独を補い合い、気を使いあう行動に走りがちなのと比べて、自由であり、予測不能であり、それゆえ面白いと感じました。

1~4話
{netabare}
2話で圭君が道端でフキノトウを見つけた時も、なおはあまり興味を示さなかったらしく、さっさと家に帰ってしまいました(笑)。

この作品で今のところ耳障りなものをただ一つ挙げるとすれば、1話で登場したマンドレイクの叫び声で、片耳を塞いで引っこ抜いた真琴は魔女だからってよく無事だったなあと思います。少し離れた所になおもいたので結構危なかったかも知れない。

4話はこれまでの3話と比べてやや賑やかな回になっていた気がします。(ノロイっぽい顔になってた人もいたし)個人的には最初の3話の方がこの作品の魅力を強く感じられました。それでも取り立てて派手と言う訳でも無く許容内でした。やはり毎週楽しみです。桜並木の描写は非常に美しかった。

演出について、使い魔である猫に安易に人間の言葉を喋らせなかったり、3話のお姉さんが去るシーンでも僅かに煙が立ち昇っただけだったりと、控えめな中にも動きや構図などで魅力を出し、作品の雰囲気を壊さぬよう細心の注意を払っている事が伺えました。後者のシーンを見た時、なぜか私は既視感に近いリアリティを感じました。ああいったシーンで、見栄えはするものの雛形に従った表現しか出来ていないアニメと異なり、日常の中の不思議を文字通り空気の様に描いているアニメは、私の知る限りでは殆ど例が無く(※1古いヨーロッパの映画の何かにこんな描写があったかも)素直に感服させられました。畑を開けるために引っこ抜いた雑草の描写や動物たちの動きについても、地味な中にも目を楽しませるものがあり、見ているだけで幸せな気分になってしまいます^^

※1:ジョン・ブアマン監督の「エクスカリバー」ヤロミル・イレシュ監督の「闇のバイブル 聖少女の詩」にそれっぽい描写が確認できました。前者は英・米共同の、後者はチェコの映画。
{/netabare}
5話~最終話
{netabare}
5話はねこ好き必見のねこ主役回であると共に、登場する人物同士が互いに気兼ねする事無く、各々自由に振舞っていた様で、この作品の雰囲気がこれまで以上に強く出ている印象を受けました。

6話では不動の圭くんが珍しくも呆れ気味に漏らした独り言がありましたが、それとは関係なく、かねてから思っていたのですが、ふらいんぐうぃっちの作風は「長くつしたのピッピ」等で有名なリンドグレーン原作の※2「やかまし荘のこどもたち」にちょっと似てると思いました。

むしろそれよりも落ち着いている空気が有ります。上記の作品でも、子供達がぐらぐらして抜けそうな歯を上手に抜く方法を考えたり、草むしりの最中に変な言葉を発明してみんなで遊んだり、ザリガニ釣りに行ったりと、のどかな日常を描くばかりで、取り立てて事件と呼べる様な挿話がありません。

映画版も製作されているのですが、こちらでは出演している子供達の演技も、演技と言って良いものかどうか迷う程に自然で、ハリウッド映画や日本映画に散見される、子供を大人にとっての都合の良い操り人形として扱っている様な、わざとらしい描写の仕方とはまるで違っていて、安心して視聴出来ます。

ふらいんぐうぃっちを気に入った人なら、アニメ一筋の人でも充分に楽しめる映画だと思いますのでおすすめです。

7話は山菜取りとか、山菜をおつまみにしたお姉ちゃんの昼酒とか、廃屋の魔法喫茶や、可愛い幽霊も登場して、物語の展開的にも、美術的にもふらいんぐうぃっちの魅力が凝縮した素敵な回でした。チトさんもいつも以上にニャゴニャゴ喋ってました^^

7話から引き続いて8話も魔法喫茶を舞台に、とっても落ち着いた会話劇が繰り広げられます。椎名さんとそのお母さんの二人の新キャラが物語に加わりましたが、作品の雰囲気は微動だにしませんでした。※3アザミを食べるてんとう虫って見た事有りませんが、葉っぱの部分にアブラ虫がわんさと付いているのを見た事があるので虫にとっても美味しいんでしょうね…。

生長しきったアザミの"がく"や成長し切った葉のイガイガ部分は人間にとっては食用に適しませんが、若芽や若葉、茎、根っこまで、殆どの部分が食用になります。採る時はくれぐれも棘に気を付けましょう。刺さると細菌感染する恐れがあります。

今回も和みました。

最終回は裁縫回、裁縫好きのブリキ男にとっては楽しい回でした。布地選びから採寸、裁断、縫製など、要所要所丁寧に描写されていました。裁縫の手際の良くない私は、裏地付きの見事なマントをぱっぱと作ってしまう真琴の手腕に驚かされました。熟達している人なら出来そうなので、魔法と言う程ではないですが、とても羨ましく思いました。

※2:ピッピにも似ていると思います。リンドグレーン原作のスウェーデン映画(他の国の製作ものはあまりよろしくない。)は他にも色々有りますが、どれも面白いと思います。

※3:概ね鞘翅につやが無いのが草食、あるのが肉食らしいです。作中描写は肉食のナナホシテントウみたいに見えますが、一応テントウムシもアザミを食べる!
{/netabare}
最期まで大きなドラマも中くらいのドラマも無く、小さな小さなドラマを丁寧に一つづつ積み重ねている印象を残す作品でした。こういったアニメは私は今まで見た事がありません。最終話でもその姿勢は揺らがず、いつも通りやさしい時間が過ぎ去りました。


以下はアニメ本編とはあまり関係なく、どこでも採れそうな野草について
{netabare}
ヨモギ:ばばばあちゃんでお馴染み(もしかしたら知ってる人少ないかも)の万能野菜。天ぷらが美味です。それ以外で使うなら湯掻いて水に晒して灰汁を取る。枯れたと思っても地下茎から芽が出てくるので栽培すれば半永久的に葉を収穫出来ます。

ナガミヒナゲシ:近年よく話題に登りますが、特定外来生物などには指定されていない。花が枯れてから花芯を採取します。素手だと黄色い汁が付いて中々取れませんので、袋(新しいのを使うのはもったいないので油っ気の無い空いた菓子袋などで)ごしに取るなどしましょう。炒めても茹でてもおいしい。芥子の実の一種ですが無害です。ナッツの様なこくがあります。

カラスノエンドウ:ソラマメ属。天ぷらが美味ですが、虫が付いている事があるので気になる人は湯掻いて水で何回かすすぐ。おひたしや炒め物など何でも使えます。

タンポポ・ノゲシ・ブタナ:タンポポは全草食べられます。天ぷら、油炒め以外で食すなら湯掻いて灰汁を取る。

スギナ:天日干しか電子レンジで4~5分乾燥させて、すりこぎ等で砕いて粉末状にする。風味がよく青海苔の代わりとして使える。栄養価が非常に高いらしい。

フキ:八百屋でも見かけますが、日当たりのそれほど良くない所に自生している事があります。良くあく抜きすれば葉も食用になり、豚挽きを練ってこれに巻いて、ロールキャベツの様にしてつゆなどで煮ると非常に美味です。同じ場所に関東では1月下旬~2月下旬にかけてフキノトウが出ます。

ミント:近所で見つけたらラッキーです。耐久性が非常に高いので粗悪な環境でも育ちます。一本だけ引っこ抜いて(根が繋がっているので他の株を傷めない様に途中で切断すべき)土に刺して控え目に水やりすれば脅威の成長力で地下茎を張り巡らせます。冬に枯れても復活し、半永久的に葉を収穫出来ます。

ローズマリー:近所で見つけたら超ラッキーです。柑橘系のさわやかな香りが魚、肉料理にとても良く合い重宝します。小枝を一本失敬して挿し木にすれば、根を広げてプランターなどでも成長します。猛暑には弱いのですが、うまくいけばこちらもまた半永久的に葉を収穫出来ます。

セイタカアワダチソウ:香りは春菊に似て華やか。葉はハーブに、花穂は天ぷらに最適。茎が残りますが、極上の味わいです。晩秋~初冬にかけて繁茂します。

ノゲシ:酷暑に計れてしまいますが、寒さには非常に強く、ほぼ一年中収穫できます。背の高いタンポポといういでたち。葉はロゼット状ではなく互生なので区別出来ます。やや苦味が強いので、基本湯掻いてあく抜きしてから料理に使います。ほうれん草の代わりやそばのお供、炒めものなど色々使えます。天ぷらにするなら洗って水を切るだけで大丈夫です。

ブタナ:茎だけががひょろりと長いタンポポの様な野草。タンポポと同じでロゼット状に葉を付けます。葉は大きく食べでがあり、花も美味。全草食用になります。

ヨメナ…花期は7〜10月ですが、ロゼット状に広がった葉を年中見かけます。葉の形は根元がまっすぐで先端に少し刻みのついたきつねの尻尾型。あくや苦味が少ないので下処理は特に必要ありません。春菊に似た風味も良く、さっと湯掻いたものを薬味として利用したり、おひたし、炒め物、天ぷら、お吸い物にヨメナごはん、何でも使えます。キク科の植物は食せるものが非常に多いです。

田舎住まいでなくとも皆さんの身近に食べられる野草は沢山あると思います。是非お試しあれ。

※1採り過ぎはその種がそこで自生出来なくなる原因になるので控えましょう。

※2必ず火を通しましょう。「のんのんびより」のお兄ちゃんみたいな事をやると稀ですが感染症になる場合もあります。
{/netabare}

投稿 : 2025/01/25
♥ : 82

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

既に早朝アニメ、だがそれが合っている…?(← 本放送時の話です)

原作未読です。

放送時間帯ですが、もはや深夜を通り越して早朝と言って良い時間帯に放送されています。

最終回は1話前が放送休止で1週跳び、最終回は11、12話1時間スペシャルとなり、しかも野球の放送延長で放送時間が遅れました。この作品らしい状況でしたがめでたく最終回を迎え無事視聴終了。

個人的にはとても面白く観ていましたが、どこが面白いのかとても説明がしにくい感じです。

主人公が魔女なので魔法絡みのエピソードもあるわけですが、単なる「東北の田舎の日常」的なエピソードも多々あります。

ただ、魔法絡みのエピソードも「魔女にとっての日常」というスタンスで描かれるのが本作の特徴かもしれません。

例えば主人公の真琴を含め魔女は黒猫のチトなどの使い魔と会話しますが、魔女サイドの言葉は聞けても使い魔側が何をしゃべったのかは視聴者には直接はわかりません。

返事から内容を想像したり、他の人物が何を言ったか訊いたときに魔女側が説明するのを聞かないといけないのです。

あるいは普通の人間には魔法で不思議なことが起きていることになるのですが、魔女には当たり前のことだったりします。

これが千夏ちゃんをはじめとする作中キャラたちへの共感を生んでいる気がします。

魔法以外の要素は人間や動物たちの行動を観察した結果なのか、登場人物たちの行動に妙なリアリティがあるのが面白く感じます。

追記:
1: 『さまよえるオランダ人』(Flying Dutchman)からの連想で、タイトルは「さまよえる魔女」の意と取れなくもない。

2: 「真琴と千夏のダブル主人公」と考えた方が良いのかもしれない。

[変更履歴]
2016.5.24:
作画の評価を5にupします。猫のチトさんの動きとか田舎の風景とか、もう神レベル。あとこれは本来演出面の評価かもしれないけど、登場人物の私服に手抜きがなくて素晴らしい。

2016.6.27追記:
けっこう食事を作るシーンが出てくる作品でしたが、食べ物はどれもおいしそうでした。

2017.7.3追記:
tvkでの放送情報追加: 2017/7/7(金) 25:00~25:30

2017.9.6追記:
9/8に原作6巻が出ます!

2017.10.24追記:
*tvkでの再放送はとっくに終わっていたので、レビュータイトルを変更。

原作6巻、面白かったです。ちなみにアニメでは原作4巻途中くらいまでのエピソードを使っています。仮に2期目があるとしても、原作7巻くらいまで出ないと無理ですかね…。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 110

63.7 2 幽霊で田舎なアニメランキング2位
神霊狩/GHOST HOUND(TVアニメ動画)

2007年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (337)
1957人が棚に入れました
遥か古来より、この世界“現世”は、別の世界“幽世”と重なり合っていた。
 日本の原風景の面影を残す地方の小さな町・水天町。この町に住む中学生、古森太郎と大神信は、それぞれ消し去ることのできない過去を持っていた。町の誰もが忘れられないでいる、11年前に起きた一つの事件。ある日東京から引っ越してきた転校生、中嶋匡幸は2人の過去に触れようとする。3人の出会いによって、各々に背負ってきた過去が絡み合っていく。そして、太郎の持つ力がもうひとりの少女との出会いを導いていく。

声優・キャラクター
小野賢章、保志総一朗、福山潤、矢島晶子

九条 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

古今東西における普遍的な人間心理。

心理学・脳科学・宗教学・民俗学などの学問領域から援用される専門知識を包括する難解な作品であり
多分野の学問から形成される知の連携と総合はぺダンチックとも捉えられるほどの観念性を含意する。
尚、魂抜けと呼称される幽体離脱やバイオエシックスなどは、士郎正宗の世界観を知る上で重要であり
本作の範疇を超えて、他作品と通ずる一定のロジックを構築し、そこにシャーマニズムが織り込まれる。
そして不可思議な心霊現象を科学的に可視化しようとする過程が思考的かつ実験的に考察されていく。

一般的に考えれば、オカルトと科学の双方を極めることは竜頭蛇尾に陥る恐れがあるが、現世と幽世を
設定上のバックボーンとして機能させているだけあってか、破綻することはなく、精妙に探求されている。
伝承や方言、「serial experiments lain」を連想させるノイズなども細部まで抜かりなく徹底されており
ある事件から心的障害を発症した主人公に対する精神療法と連鎖的な「サスペンス」を醸成させている。

それ故、高踏的にならざるを得ないが、「Production I.G 20周年記念作品」の冠には恥じぬ作品であり
次回予告における台詞は示唆に富んでいる。その上、ジュブナイル作品としても非常に良く出来ている。
一見すると敷居は高く感じられるかもしれないが、硬軟を織り交ぜながら、一定の均衡が保たれている。
古来から人類が科学的根拠が存在しないにも関わらず絶対的なものとして信仰心を抱いてきた神話を
心霊現象や占いに置き換えると、古今東西における普遍的な「人間心理」が透けて見えてくるのである。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 11
ネタバレ

lll1 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

大傑作!!やはり、中村隆太郎は天才だった。

 監督:中村隆太郎
 脚本:小中千昭
 の『Serial Experiments Lain』(以下:lain)のコンビがおくる本作。

 原案は士郎正宗(攻殻機動隊原作者)とProduction I.Gだが、士朗正宗は本作の制作には特に関わってはいないらしい。
 Production I.G20周年記念作品として作られた本作。20周年記念で、中村隆太郎にこんなくせのある作品を作らせたのは凄い。

 ネタバレ有り。また本作以外にも、今敏の『パーフェクト・ブルー』についても重大なネタバレを含みます。

 またnoteの方にも同様の感想を上げていますので是非。読みやすい方を。
https://note.com/24_98000/n/n3b3484f7962a

 端的に言って”大傑作”でした。しかし、本作は万人受けはしないでしょう。なんていったってlainのコンビです。

 lain同様に音と音楽に、絶大なこだわりをみせ、ここまで効果的に使用しているアニメは珍しい。そして何よりも製作者たちが、その音によって生まれる効果を理解している点。なかなか賭けに近い部分があったと思われるが、それでも貫き通した。

 lainの音響監督を務めた鶴岡陽太は、中村隆太郎の音の演出を唯一無二だと言っており、私もそう思う。たくさんのアニメと映画と海外ドラマを観てきたが、中村隆太郎の演出の影響元となる作品がまるで浮かばない。
 渡辺信一郎の『Cowboy Bebop』は音楽を多用したこだわりの演出をしているが、影響元は間違いなく『パリ、テキサス』を代表とした、洋画の影響が見られる。
 しかし、中村隆太郎は全く分からない。彼の特徴的な演出の一つは”雑音”を取り入れること。日常に潜む、聞き取れはしない人の話し声、コンピューターが起動している低い地鳴りのような音。ゲーム機しかり、機械や人、及び物は多くの音を発するが、「我々は雑音(ノイズ)に囲まれて生活している」とでも言いたいのか、彼はふんだんに取り入れている。
 
 また、中村隆太郎の音楽センスも良く、lainのオープニングテーマとなったBôaの'Devet'。未だに他のアニメとは一線を引いている見事な選曲。当時はもっと衝撃的だったのではないだろうか。
 そして本作は小島麻由美の'ポルターガイスト'。本作のために卸された曲ではなく、『ご近所探偵TOMOE』というWOWOWで放送されたテレビドラマの主題歌である。それをおそらくそのまま使っている。本作もWOWOWでの放送のため、彼の意志なのかレコード会社からの圧力かは分からないが、オカルトちっくなジャズを披露している、この曲は本作にはぴったりだった。
 
 前置きが長くなってしまいましたが、ようやく本作について触れていきます。

以下ネタバレを含みます。
{netabare}
①概要
 本作の舞台は九州北部。県は明確には分からない。
 ミステリーを基調としつつも、ホラーと微量のコメディを取り入れ、何ともオカルトちっくな作品となっており、原案の士郎正宗が考えるネットワークに対するオカルト的な部分が香る。

 主要な登場人物は四人で、タロウ、マコト、マサユキの男子中学生三人と、ミヤコという女子小学生。
 本作の魅力的な部分の一つが、この四人が抱えるトラウマと親との向き合い方、及び家庭の問題。

 ストーリーは、前半は特に男子中学生三人のトラウマを描き、中盤からはホラーとミステリー要素が増す。そして、後半はやや壮大になっていく。



②キャラクター
 まずはキャラクターについて。
 主人公のタロウは、幼少期に"姉"と共に拉致監禁された過去を持ち、またその時に姉は衰弱死している。
 タロウは当時、小学生にも満たない幼児であったため、姉の記憶は断片的で、姉のことを思い出したいが、同時に恐怖が襲ってくるという雁字搦めな状態にいる。

 タロウは、現在もその悩みを抱え、カウンセリングを週に一回受けている。本編開始とともに、カウンセリングの先生が変わり"平田"という男が現れるが、またこの男があからさまに奇妙に描かれた登場をする。
 正直、私は平田の登場シーンの奇妙さから、彼は本当は奇妙ではなく、また悪い人でもないだろうと思った。
 今敏の『パーフェクト・ブルー』でいうストーカー的な役割だと。あからさまに怪しいストーカーを描き、マネージャーから目を背けさせる。この平田が全く同じ役割を務めている訳ではないが、意図としてストーカーに似た意味を感じた。
 私的に最も面白いと感じたキャラクターは、平田です。理由は後術。

 マコトは、地元で程度な権力を誇る、宗教の一人息子で、父親の自殺を目撃するという経験を持つ。おそらく、最も異様な環境にいるのが彼だが、それが少し私の理解からかけ離れていたかもしれない。

 三人の中でかなり共感を得やすいのがマサユキだ。彼はかつて東京の学校におり、そこでとある生徒をいじめて飛び降り自殺に追いやった。本人は自殺をするとは思ってもおらず、また、自殺した被害者が黒板に書き残した中には、マサユキの名前以外にも多数の生徒の名前が記されていた。
 マサユキはいじめっ子の一人に過ぎないが、彼はその責任をとても重く感じており、それがトラウマと化している。
 しかし、本人はそれを認めたくはなく、"高所恐怖症"(被害者が飛び降り自殺(高所)したことが関係)と思いこむことで、そのことから逃れようとしているが、上手くはいっていない。

 学生時代、人権問題といじめに関するビデオ等を見せられたことがあるが、描かれているのは被害者ばかり。加害者は決して描かれない。自動車教習や更新の際にも、自動車事故の被害者が描かれ、加害者は僅かなもの。故意のものではない者も、自動車事故の加害者にはなり得るのに。
 いじめの被害者を救うことだけでは、いじめそのものがなくなることには繋がらない。何とも悲しいことですが。

 また、マサユキの家庭は、両親が共におり、かなり裕福な家庭で育っている。だからこそ、彼の両親の異様さがより際立ち、また共感も得やすい。
 マサユキの父が、仕事から帰って来た時、母はただパズルゲームを黙々とやっている。彼女には生気というものがまるで感じられず、「もし、母がこんな姿になったら、相当怖いだろうな」と思わせる。
 タロウの母のように、原因があれば、気遣いもあるが、彼女にはそれがない。描写されていないだけも知れないが。そして、後半、父の異様な姿もまた、見たくは無い姿の一つだ。

 ミヤコは神社の神主の娘で、霊感が強く、ときおり自身の身体に霊体が降りて来る経験をしているが、それを制御することは出来ていない。
 本作のこの霊体を降ろすという、見方がまた面白い。本編中ミヤコは、乗っ取られたかのようにとある神の名を名乗るが、彼女の父はかつて、その神の研究をしていた。娘がその研究文書を呼んでいたとするなら、霊体が降りたのではなく、ふざけているのか、無意識の内に言っているだけだと、霊体が降りるということを否定した見方をする。これが、また一定の説得力を持ち、非常に面白い



②ストーリーと演出
 本作のジャンルはホラー・スリラー。視聴者に恐怖を味わってもらうため、キャラクターはそのパイプとなる。共感・共鳴の役割を果たす。キャラクターが怖がっていることに共感・共鳴し、視聴者も怖がる。

 物語の序盤はこれが、子供たちの役割だった。三人の男子中学生だ。しかし、中盤から彼らは成長し、恐怖を退けて行く。では、後半誰がその役目を果たすかというと、本作ではそれが"大人"だ。
 本作は、先に子供たちがオカルトの領域に足を踏み入れ、克服する。その後、大人たちが子供たちの異変に気付き、オカルトの領域に足を踏み入れる。子供はどこか怖いもの知らずの一面があるが、大人は違う。経験から何が真実で何が虚構かを判断する。しかし、成長した大人たちでさえ、自身の理解を遥かに超えた体験により恐怖を齎す。

 平田というカウンセリングの先生が主に、この共鳴の役割を務めるのだが、先述したように、彼は最初怪しげな男として登場するのだ。こんなことは普通はありえないだろう。『パーフェクト・ブルー』でいうストーカーが、マネージャーの恐怖に晒され、しかも視聴者が共感するようなもの。
 この平田の変化が大変おそろしく、あたかも彼が感じている恐怖が嘘ではないということに、高い説得力を持たせ実現させている。
 カウンセリングの後、子供を追いかけ、教室を見渡すシーンは絶品だし、テープを聞いて、臨場体験をするシーンも見事。またそれを主観(平田の視点)と客観(タロウの視点)で撮っているから素晴らしい。一気に本物になる。
 これらの変化により、私にとって平田は非常に興味深い人物になっていった。アニメーターが描く表情も上手く、声優の演技も見事。

 本作のホラー演出は、はっきり言って”見事”だ。本当に怖いし、不気味で異様。

 とある地縛霊のようなものが、道路に走っていってトラックに跳ねられるシーンがある。そして、その地縛霊はそれを繰り返すのだ。

 「ポーン、ポーン、ポーン、ポーン」という、一定のリズムの足音のあと、車に跳ねられる。
 「ポーン、ポーン、ポーン、ポーン」という、一定のリズムの足音のあと、車に跳ねられる。
 「ポーン、ポーン、ポーン、ポーン」という、一定のリズムの足音のあと、車に跳ねられる。

 このループととれる現象と、奇妙な足音がとてつもなく怖い。ループがかなりの効果を齎していると思われるが、中村隆太郎らが、この現象が与える効果を熟知しているというのもまた恐ろしい。

 そして、本作はジャンプスケアを一切使用しない。

 エンタメ性の高い王道の演出から外れ、常に邪道と現実味を重視する。セリフにノイズを掛け、何て言っているのか分からない。子供の視点から見た大人、壁の高さと恐ろしさ。悪くない天気。拉致されるシーンは昼間で天気も良いんですよ。まぁこれが気持ち悪い(褒めてます)。

 また、方言についても無視してはいけないポイントの一つ。聞き慣れぬ方言に、僅かな違和感を持つ。人によっては大きいかもしれない。この方言は水面下での違和感の発生を齎している。
 私は、濱口竜介の『寝ても覚めても』に似たものを感じた。『寝ても覚めても』では、関西出身ではない役者に関西弁を喋らせ、異様な雰囲気を作っている。演技もちょっと不気味。しかし、演出力が低い訳ではない。どちらかと言えば高い。いや、むしろ高すぎるのかも知れない。当然、本作も『寝ても覚めても』と同じく演出力は低くない。とても高いのだ。
 この方言による違和感を中村隆太郎と小中千昭は既にやっていたのかも。

 ストーリーについては、克服、そして改善・修復という点に関して弱さがある。トラウマの克服は説得力に欠けるし、終盤家族の修復も描写不足。この2点に関しては残念だった。マコトとミヤコ、強いていうならタロウは良かったが、最も異様なマサユキの家庭の修復は全く描写がない。非常に残念なポイントだった。マサユキの母親の奇妙さは、本当に素晴らしかったからこそ、思ったことだ。

 脚本の統一も良かった。第19話以外の全てのエピソードを小中千昭が脚本を務めている。第19話を観てもらえれば分かるが、これは、小中千昭が苦手とする分野だったのかも知れないと思わせる。
 テレビシリーズは脚本・絵コンテ共に、統一性をはかるのが難しい。違う方が務めることが必ずあるからだ。しかし、本作は小中千昭がほぼ、脚本を書き、中村隆太郎の絵コンテに合わせた他のアニメーターたちの絵コンテも見事だった。中村隆太郎自身が他の絵コンテを直しに直している可能性はあるが…。


④映像
 本作の映像は新しかった。新奇性が見られた。CGとデジタル技術を用い、一人称で見せたりと興味深いものがあった。ホラーの描写はやはり圧巻。
 しかし、アニメーションそのものに視点を向けたとき、さほど高品質ではなかったかなと。序盤は、わざわざ歩いている他の生徒を描いたりと、映像に彩を加えていたが、やや鈍いシーンもあった。日本のテレビアニメが抱える問題は、本作も対象外ではなかった。
 
 それでも先述したように、映像は実に見事です。最高だと思う。
 ノイズだらけの摩訶不思議な前話回想からのオープニング。私はこれを毎回飛ばさず観ていた。毎回微妙に演出が異なることが理由の一つではあるが、この前話回想だけで、ゾクゾクするものがあり、また映像ファンの視点から見ても類のあるものではなかった。演出・映像に興味のある方には、この摩訶不思議な前話回想だけでも是非観て頂きたいもの。

 キャストに関してはそんなに不満はないですが、メインキャストの保志総一朗の演技はいまいちだったかなと。脇役は素晴らしい方ばかりでした。
{/netabare}

おわりに
 やはり中村隆太郎は天才だった。彼の演出は最高だし、絵コンテもめちゃくちゃ上手い。
 本作に合わせ彼の監督作『キノの旅』を観て、『lain』を再観賞した。キノの旅はやや、中村隆太郎らしさを感じにくいものだったが、lainと比べると、本作の演出はやはり似ている。
 また、lainを補完する上でも、本作の観賞はぜひおすすめしたい。中村隆太郎、小中千昭に触れるためもあるが、微小ながらもlainに繋がる部分はある。


 最終評価は 8 / 10点です。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 2

momomax さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

私好みで面白かったです!!

霊的現象と科学(脳科学、バイオetc.)、宗教。
心理学用語や脳科学用語などが難しいけど惹かれます。
理解仕切れない部分もあるのですが
感覚的に凄く面白かった! 私好みです!!

かなり前に一度だけ体外離脱をしました。
天井を抜け、自宅の屋根を見下ろし、町並みや山々を浮遊しました。
超常現象好きな私は貴重な体験をしたと思っています。
夢かもしれませんが、夢でも中々見られないので
体外離脱したという事にしておきます。(笑)
神霊狩の第1話を観て、その浮遊感が似ていて嵌りました。

なにげなく人物がみんな魅力的です。
派手さは全くなく、地味なくらいですが、声優もキャラに合った演技で良かった。

好みが分かれると思いますが、いろいろな要素が含まれていて
とても面白い作品でした。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 24

80.7 3 幽霊で田舎なアニメランキング3位
蛍火の杜へ(アニメ映画)

2011年9月17日
★★★★☆ 4.0 (1080)
5227人が棚に入れました
祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女・竹川蛍は、妖怪が住むという山神の森に迷い込み、人の姿をしたこの森に住む者・ギンと出会う。人に触れられると消えてしまうというギンに助けられ、森を出ることができた蛍は、それから毎年夏ごとにギンの元を訪れるようになる。

声優・キャラクター
内山昂輝、佐倉綾音
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

恋は儚い人の夢

「夏目友人帳」の緑川ゆきが原作で、同作品のアニメスタッフによって作成された短編映画です。


恋は儚い人の夢。
蛍の様に光り、白銀の雪のように輝き、やがて……。


誰もが開始3分で「あっ……これは」と思うはず。
分かってるんですよ、分かってるのに30分後には泣いている私がいる。


蛍は裏表のない、明るくも利発な女の子。

ギンは雰囲気こそ神秘的なものがあります。
しかし、その行動は迷い、恋し、決断する、真っ直ぐな男。

ピュアなキャラによるピュアなラブストーリーです。


{netabare}気軽に触れられる{/netabare}男子生徒。
蛍から{netabare}のプレゼントのマフラーを身につける{/netabare}ギン。
二人が{netabare}会えない季節も{/netabare}どんどん距離が縮まっていく。
ちょっとしたシーンにも説得力がありますね。

夏のイメージが強い本作ですが、冬があるからこその夏。
それが夏の風物詩である「蛍」と冬のイメージがある「ギン」という名前に込められた意味なのかもしれません。


そしてラスト。
涙が止まらない。

{netabare}
お面越しのとてもとても美しいキス。
その後ギンは転びそうになった人間の男の子に触れてしまいます。

「来い、蛍。やっとお前に触れられる」

お面の向こうの蛍の顔はそれまでにないほどの笑顔でした。


……でもね、これは事故ではないんです。
何年も何十年もお祭りに参加しているギンが、うっかりミスをするとは思えない。

「何があっても、私に触らないでね」

この約束がある限り、ギンも蛍も直接お互いに触れることはできません。

そして、後の妖怪の言葉。

「ギンはやっと人に、触れたいと思ったんだね」

つまり、これはギンの意志だったわけです。

確固たる意志を持っていたわけではないのかもしれません。
しかし、ギンは、蛍との約束を破ることなく、罪悪感を残すこともせず願いを叶えたかった。

そのためにギンは事故を装い、{netabare}「人の手というチャンス」{/netabare}を掴んだのでしょう。
{/netabare}


わずか45分という短くシンプルなストーリー。
それでいながら洗練されていて、温かさ、切なさ、色んな感情が溢れてきます。

美しいお話で完成度が高く、今まで見たアニメ映画の中では一番。
本当に大好きな作品です。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 140
ネタバレ

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

10年分の想いを、今ここに・・(ギン視点で観てみました)

ねえ、蛍。
俺はずっとここに居るよ?
何年、何十年たとうとも。
たとえ、君の瞳に写らない
そんな存在だとしても。

俺が過ごした、途方もない時間。
そんな中で、蛍と過ごした時間は ほんの一瞬だった。
でもね、俺にとってはその一瞬が大切で愛おしくて、仕方がなかった。

蛍は俺に、優しくて、温かい感情をたくさんくれたね。
でも、それは、切なくて、苦しくもあったんだよ?
蛍は気付いてないかもしれないけれど・・
まるで夏の夜に光る、ホタルのヒカリのような、
そんな儚くて脆い、だけど、強くて、美しい。
そんな日々だったね。

蛍は俺に「忘れないで」と言ったよね?
忘れる訳がない。忘れたくない。
でもね、蛍は忘れてしまってもいいんだよ?・・


蛍に出会ったのは、蛍がまだ小さい時だった。

{netabare}

~蝉の詩、笑い声・・~
鳥達の囀り、木々の揺れる音・・
そんな森達の雑談と共に聞こえた、泣き声。
それが蛍だった。
蛍は、俺を見ても少しもこわがらなかったよね。
むしろ、楽しそうに俺に触れようとして来た。
まだ小さい蛍には「消える」という意味さえ理解出来なかったんだろう。
でも、俺には それが素直に嬉しかったよ。
1人の存在として認められているようで。

~夕やけの茜色、帰り道、遠回り~
「何かデートみたいデスネー」「色気のないデートデスネー」
そんな他愛ない会話を繰り返したね。
手をひいてあげる事は出来なかったけれど、
その先から伝わるこの想いは、一体何なんだろう?
何だか、胸の奥が温かくなるような・・

別れる時、蛍は俺の名前を聞いた。
俺の名前は・・無言・・疑問と不安。
そんな時、風が俺の背中を押した気がした。

~約束は「また明日」~
明日も来ると走って行った、蛍。

「ギンだ」

翌日 本当に蛍はやって来た。
そして、約束の場所で、待っていた俺が居た。

~夏はただ、咲き誇り~
冷たい小川に、暑い夏の日差しが差し、キラキラしてる。
全てが美しく、夏が輝いていた。
それは、蛍が側に居るからなんだよ?
蛍と見る全てが、今までとはまるで、違って見えた。

~その命輝かせ~
俺はただ、生かされて、ただそこに存在しているだけだった。
何も意味をもたない、あやふやなモノ。
だけどね、今まで感じた事のない、自分の存在。
俺は自分というものをこんなにも感じる事が出来るんだ。
夏が待ち遠しい、蛍に会える事が、素直に嬉しい。
そう思えた。
そんな夏が何度も何度も訪れた。

ある夏の事だった。
蛍は俺を驚かせようとして、見事に木から落ちて来た。
俺は、そんな蛍を受け止める事が出来なかった。
自分の存在が無くなってしまう事を恐れたのか・・?
そんな気持ちとは裏腹に、蛍は安堵の顔を見せた・・
そして、大粒の涙を流した。
何故泣いてるのかは、分かってた。
涙は止め処なく流れ続ける。
でも、俺は その涙を拭ってあげる事も出来ず、ただ、その泣き顔を見続けた。

出会わなければ、こんな想いをさせなかった?・・
出会わなければ、こんな想いはしなかった?・・

~終わらない、お話のその先に気付いて~
蛍は毎年、会う度に、成長していく。
それは、普通の人間の子なら当たり前の事なのは分かっていた、、つもりだった。
少しづつ、目線が近くなって来る。
それを複雑に感じつつ、俺の感情に違う何かが芽生えはじめた。
いつか感じた想いとは、全く別物。

蛍に・・会いたい。
蛍に・・触れたい。

この胸を締め付ける感覚は・・

~カラス達遠ざかり、どこかへと飛んでゆく~
離れてる時間がこんなにも長く、辛く感じるなんて・・
今まで考えた事も無かったよ。
蛍は今何をして、何を見て、何を考えてる?
いつからか、俺の中は蛍でいっぱになっていた。
いつか、こんな気持ちが届く日が来るのだろうか?

真っ白な雪の上に散る椿が一際紅く見えた。
俺の心の中のように。
真っ白な心の中に、真っ赤に燃える感情が一つ・・
蛍がくれた温もりで、いつもの冬より、身体も心も温かかった。

~夏はただ駆け抜ける、宝物、しまうように~
ある夏、蛍は言った。
春も、秋も、冬も、俺の事を考えていた、
そして、もっと一緒に居たいと。
俺は、自分という存在の全てを打ち明けた。
打ち明けなければならないと思った。
俺は、蛍を幸せにはしてあげられないから、永久に・・
こんな俺の為に犠牲になる事なんてない、もうここには来なくていいよ?
俺はずっとこうして、だだ存在しているだけで、何も変わらない。
“決して忘れられない、かけがえのないモノが一つ増えた事以外は”
だけど、蛍から返って来た言葉は優しく、心が苦しくなった。
そして思った。もう、こんな夏を続けていてはいけないと・・

~いつまでもなつかしい、あの頃は黄金色~
いつか蛍と行きたいと思った、 「妖怪達の夏祭り」。
誘うのは、ちょっと照れ臭かったけど
蛍は喜んで、行きたい!っと言ってくれた。
そして、少し不安な言葉を口にする。
不安な事はないよ、だって蛍は、俺が守るよ?
そう言うと蛍は、少し頬を紅くして
「そういう事を言われると、飛びつきたくなってしまう」と言った。
・・「飛びつけばいい、本望だ」
もし、それで俺が消えても何の後悔もない、今なら全て受け止める事が出来る。

~何気ない毎日の片隅を照らしてる~
手を伸ばせば、届く距離。
一番近くに居るのに、一番遠い存在。
俺は、蛍を抱きしめたかった。
そして、その手に、その髪に、頬に、
一瞬でいい・・その温もりに触れたい。
もう、気持ちが抑えきれなくなっていた。

~夏はまた、やってくる約束を守るように~
祭はいつもの夏と同じようにやって来た。
でも、今年は隣に蛍が居る。
毎年思い描いていた光景。
「デートみたいデスネー」「デートなんデスネー」
10年前、初めて会った日に交わした会話。
10年越しの、始めてのデート。
やはり、あの日のように手はひいてあげられない。
でも、振りなら許されるよね?

息を吹きかけると回る風車。
金魚すくいをする子供は、尻尾を隠しきれてなくて。
偽物の綿あめが空に浮かび上がり、その空に花火が咲き誇る。
蛍はそんな光景に、ずっと笑顔だったね。
その笑顔を見て俺も笑った。

このまま時間が止まってしまえばいい・・。
そんな、叶わぬ願いをそっと胸にしまい込んだ。

楽しい時間は一瞬だった。
蛍と過ごした10年分の夏がそうだったように。
そして、俺は帰り道に全ての想いを蛍に伝えた。
こんな事を言っても困らせてしまう事は分かっていた。
だって2人は決して交わる事はないのだから。
そして、お面越しにくちづけをした。
これが蛍に触れられる精一杯。
蛍に捧げる、精一杯の気持ち。

蛍は今どんな顔をしてる・・?

そんな時、小さな子供が飛び出して転びそうになった。
俺は咄嗟にその腕をつかんだ。

・・刹那、指先から光を放つように消え始めた。
「あの子は、人の子だったのか・・」

もう、何もこわくはなかった。
ただ、願いは一つ。

「来い、蛍!やっとお前に触れられる」


ねぇ?蛍、覚えてる?
初めて会った日の事を。
笑いあった夏の日々を。
俺は忘れた事なんてなかったよ。
春も、秋も、冬も、会えない日々
ずっと蛍の事を考えていた。
蛍としたい事でいっぱいだった。
蛍とみたい物でいっぱいだった。
蛍と感じたい事でいっぱいだった。

でも、もうさよならなんだね。

蛍、こんな俺に気付いてくれてありがとう。
こんな俺を受け入れてくれてありがとう。

蛍の温もりを感じながら、最後に伝えたい事があった。




「好きだよ」



~夏はただ咲き誇り、その命輝かせ・・~






※~〇〇~
ED・おおたか静流『夏を見ていた』

{/netabare}

投稿 : 2025/01/25
♥ : 58
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

出逢ったのが彼女で良かった

『夏目友人帳』でおなじみのスタッフでおくる50分ほどのアニメ映画で、
なんともせつない、だけど心にやさしくしみるお話。

主な登場人物を公式サイトから抜粋すると


〔ギン〕
山神の森に住むキツネの面をかぶった少年。

〔竹川 蛍〕
6歳の時 森で迷子になったところをギンに助けられて以来、
彼に懐き、毎年の夏 彼のもとへ通うことになる少女。


ある夏、妖怪たちが住むと言われている山神の森で迷子になった蛍。
泣いているところを助けてもらったのが、ギンとの出会い。

それ以来の毎夏 森で逢うことを重ね、強く惹かれ合っていくのだが、
人でも妖怪でもないというギンには
「人に触れると消失してしまう」という掟のようなものがあり、
互いに触れ合えないまま蛍だけが高校生へと成長し、
やがてふたりは・・・というお話。

触れ合えないという大きな枷があるせいで、
手を繋ぐことも、抱きしめることもままならない関係。
蛍がまだ幼さの残る少女だった頃は面白おかしく描かれるのだけれど、
中学、高校へと成長していく彼女の、彼への想い方や、
お互いの向き合い方の変化、そしてなんとも初々しい二人の逢瀬など、
丁寧にきめ細やかに描かれていくので、
観ているこちらはもどかしくも切ない想いに駆られる。

このお話は詳しく書いたら野暮なのであまり書けないが、
{netabare}
ギンの正体の真相というか素性に加え、
胸が苦しくなるような出来事が起きた後の妖怪たちの言葉に、
{/netabare}
「あぁ・・・そういうことだったのか」と
山神様がかけた術の本当の意味がわかり、
こらえていた涙がどっとあふれてしまった。

雰囲気的には、『夏目友人帳』1期の8話「儚い光」や
3期の4話「幼き日々に」に近いテーマを感じた。

せつないけれど、悲しいのとは違う温かさ。
妖怪たちや山神の純粋でやさしい想いと、ギンへの愛情。
それらは、観る前に想像していた以上のもので。

また、これは2回以上観るとすぐに気づけるのだが、
蛍の選んだ道がわかる部分にも、ほっとできて。
とても良い後味と、しっとりした余韻に、
エンドロールがなくなってもなお、みつめ続けてしまうほどだった。

満天の星がきらめく夜空や、緑深い森に流れる木漏れ日のようなピアノ曲や
少しとぼけた感じのオルガンのメロディーも、
ふんわりとしたこの作品の空気感を盛り上げてくれる。

現実的に考えれば、少女がたった一人で森に行くというだけで
事件が起きそうな不安がよぎるし、ましてやギンなんて不審者扱いを受けそうな
今の世の中なのに、なんて平和なんだろう・・と。
観ていると・・・のどかでゆったりしていた時代が恋しくなる。

そして個人的に、ずっとずっと大切にしておきたい愛すべき作品の1つです。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 81

75.4 4 幽霊で田舎なアニメランキング4位
空の青さを知る人よ(アニメ映画)

2019年10月11日
★★★★☆ 3.8 (241)
1106人が棚に入れました
山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。2人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、2人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして金室慎之介の名があがる。あかねのかつての恋人であり、高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が町に帰ってくる…。時を同じくして、あおいの前に、突然“彼"が現れた。“彼"は、しんの。まだあかねと別れる前の、高校時代の姿のままで、13年前の過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会をきっかけに、次第に、しんのに恋心を抱いていくあおい。一方、13年ぶりに再会を果たすあかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。

声優・キャラクター
吉沢亮、吉岡里帆、若山詩音、松平健、落合福嗣、大地葉、種﨑敦美
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

魂と時間

秩父三部作と通称される長編アニメシリーズの完結編。
先行する「あの花」「ここさけ」で描かれた鮮烈な青春群像劇を受けて、
青春の「その先」にあるもの、選択と迷い、行き詰まりや停滞など、
より広汎な人生の諸相を包括した物語となっている。

東京での成功を夢見る高校生のあおい。かつての輝きを失って帰郷した慎之介。
二人が歌うそれぞれの「ガンダーラ」に込められた、対照的な「夢」の姿。
自分の可能性を信じるあおいのアグレッシブな歌いっぷりと、
ギターを爪弾きながら慎之介が絞り出す、うらぶれたひとり歌。
青春ドラマに人生の苦みを足し加えた、独特の渋さが本作の個性である。

少し前に投稿したレビューを今回、ほぼ全面的に書き直した。
自分の関心は相変わらず、しんのというキャラクターの本質、そして、
三部作を一貫する主題の探求にあるのだが、前二作との比較をより鮮明にしつつ、
主題の一貫性を内在的な発展過程として捉える、思い切った試みをした。
それによって、出発点の素朴な疑問、しんのとは本当は何者なのか?
という問いをめぐる解釈に、多少の説得力が加わったか、どうか…。

(プロローグ)
{netabare}
物語の出発点を要約する導入部は、
短いカットやシーンをモンタージュ風につなげた凝った趣向で、
まずは主要なキャラクターを登場させ、さらにはその前史をも先取りする。

その中に断片的に挿入される、薄暗い、不明瞭なカット。
押し入れから何かを取り出しているらしい、無精髭を生やした男。
取り出されたものは、ガムテープで封印されたギターケース。

この部屋とは別にもう一つ、納戸のような場所も映し出される。
これらの場所が意味するものは物語の進行とともに徐々に明らかになる。
一方は、慎之介が現在暮らしている都会の一室。
もう一つは彼の故郷の、お堂と呼ばれている神社の拝殿の中。
そこには今も一本のギターが残されたままになっている。

暗示めいたこの冒頭の一連のカットには、わざと目立たないように
最も重要なメタファーが潜められている、というのが自分の推測である。
つまり、観ている者が後から気づくことになる決定的な事態とは、
これこそが「しんの」がお堂の中で目覚めた瞬間だったこと、
さらに、その目覚めとギターケースの封印が解かれるのが同時であったこと。

このメタファーの意味は踏み込んで考えるまでもなく、至って明解なものだ。
一方には空っぽのケース。そして、遠くに残されてきた本体のギター。
この両者が、しんのと慎之介との関係、即ちしんのの正体を説明している。
空虚な抜け殻になってしまっている現在の慎之介。
それはまさしく、中身の入っていない空っぽのギターケースだ。
だとすれば、周囲からは生霊とか地縛霊とか言われ、
慎之介の方が「本体」扱いされているのとは逆に、実はお堂にいるしんのの方が
置き去りにされた中身であり本体、いわば慎之介の「魂」と呼べるものなのだ。

ギターケースの中には、当時の記念の品々と、一枚の写真がしまわれている。
空っぽの心の中に過去の思い出だけを抱える現在の慎之介を象徴するようだ。
だから、これから始まろうとするものは、過去に残してきた自らの本体、
真実の自分、すなわちおのれの「魂」と再会するための旅であり、これは
しんの=魂という視点によって、物語の全体を読み解いてゆく試みである。
{/netabare}

Ⅰ 魂の顕現
{netabare}
「封印された過去」。これがしんのの一応の設定である。
岡田作品通有のモチーフであり、とりわけ「あの花」との関連は明らかだろう。
トラウマとして封印された過去の記憶の中から突如、実体となって現れる懐かしい異人。
めんまはそんな存在であり、しんのもまたその分身のように見える。
つまり本作の基本設定は「あの花」の延長線上にあると言ってよいだろう。

目覚めたしんのは、お堂に閉じ込められたまま一歩も外に出ることができない。
一切の活動を奪われた彼の状態は、文字通りの「封印」である。
その結果、外界から隔絶された閉鎖空間の中で
自分の存在をずっと自問自答する苦行を課せられることになる。

 なあ、俺どうしてここにいるんかな?・・・どうして、か・・・

封印された過去が自意識を所有して、自らの存在理由を問い続けている。
例えばめんまも自分の正体がわからず、その追求のプロセスが周囲を巻き込み、
やがて一人一人を自分の内面と向かい合わせる契機となった。
それが結果的に周囲の人々を苦悩から解放し、自らの救済にまでつながった。

しんのの場合も同じように、彼と関わる人々の心に徐々に変化をもたらしてゆく。
その変化のメカニズムを、物語の水面下で持続しているはずの彼の自省と関連させてみたい。
すなわち、あおいやツグに向けられる彼の率直な、全面的な肯定は
自身が完全に無力であるという苦い認識の裏返しなのではないか。
自らへのネガティブな反省が、他者へのポジティブな肯定に反転する。
ネガティブなものがポジティブな作用を及ぼすことは常識的には逆説に見える。
だが、魂の背理な力は常識の眼には、一個の逆説と映るものなのである。
自分はこれを魂の作用、働きかけと捉えたい。

ストーリーの軸となる、しんのとあおいとの関係をこの視点から見た時、
本当の力点は恋愛とは別のところにあるように思われる。
しんのへの想いを本物の恋愛と呼ぶには、あおいの心はあまりにも未熟に感じられる。
例えば、やさぐれた慎之介に失望し、さらに周囲の大人への反発が重なって
衝動的にあかねの生き方を全否定してしまうような幼さ。
しんのは、そんな突っ張ったり背伸びしたりする部分も含めて
等身大の、ありのままの自分を受け容れてくれる、心の支えのような存在である。

しんのへの淡い恋心は、あおいの内部に葛藤を生じさせる。
あかねの幸せを願う気持ちと、しんのが消えてしまうことを恐れる気持ち。
あかねへの愛情ゆえに揺れ動く、そのアンビバレントな感情の縺れは
心の奥底にある、最も素直な感情に立ち還ることによって解きほぐされる。
その役割を担ったのがしんのの存在であったように思われる。

ヒロインのあおいと主人公の慎之介は共に、心に抱えた屈折を
しんのの働きかけによって解消される。そこには本来の純粋な自分への復帰、
いわば「魂への回帰」が生じている。これが本作の固有のテーマではないだろうか。
本作が危機からの救済をめぐる「魂の劇」であるという事実を
「魂」そのものの顕示によって明らかにするものではないだろうか。
{/netabare}

Ⅱ 時間の肯定
{netabare}
秩父三部作を巨視的に通観する時、全作品に共通する
危機の救済のプロセスが、純化されていく方向性が認められるように思う。
つまり、前二作に潜在していた本質的なものが明確に顕現した結果、
「あの花」の心理ドラマが本作において「魂の劇」に昇華したと自分は捉える。
その過程で転回点になったのが、中間に位置する「ここさけ」の
あの極度に張り詰めた対話劇だったのではないか。そんな仮説が思い浮かぶ。

以前書いたレビューの中で指摘したことだが、「ここさけ」の終盤、
順と拓実が「本当の言葉」をぶつけ合う対話の場面には
相互の働きかけによる同時的な救済が実現している。
ここにおそらく、岡田作品に特有の救済の位相が認められると思われ、
漠然とだが、そこには魂への省察が予感されていたような気がするのだ。

本作にも山場となる二つの対話がある。
まずはしんのと慎之介。自分と自分、過去と現在とのドラマチックな対決。
もう一つはラストの、しんのとあかねとの再会の場面である。

しんのと慎之介の間では、否定と肯定が弁証法のように交錯する。
しんのは当然、現在の慎之介を非難するが、それが否定ではないことに注意したい。
しんのの否定は自らに向かっている。その否定の中に実は、
慎之介を肯定する契機が内在しているのだ。それはおそらく「時間」である。
具体的には、慎之介が耐えてきた13年という重たい歳月。
停まったままの自分には持ちえなかった時間。
それが、今も所在なく無為に存在している自分の現実と鋭く対比される。

この場所に留まってしまったしんのと、歯を食いしばって踏み出した慎之介。
尖鋭に向かい合う二人の姿に「いま」が顕現し、「時間」が可視化される。
そして今、過去を回収し、決着をつけてふたたび前に進むためにこの場所に来た
慎之介の覚悟は、しんのによって自分が存在した理由として理解された。

 俺さ、あの写真見ていろいろわかっちまった。
 あいつはさ、あん時、閉じ込めることでしか前に進めなかったもんに
 もっかい向き合おうとしたんだ、って。
 俺の中にもあるこの想いを、後悔になんてしないように、
 だから俺はあそこにいたんだ、って・・・

しんのとは、慎之介が向き合うべき「過去」の具現化だった。
そのような自分と向き合うために来た13年後の自分。その決意が彼に救いをもたらす。
しんのの方からの肯定によって、慎之介もまた過去の呪縛から解放される。
救済は一方通行ではなく、双方向的・相互的に成就する。
これが、三部作を通じて深められてきたテーマの真髄ではないだろうか。

そして、完結編となる本作ではさらに多方向的な展開を見せる。
クライマックスとなる、しんのとあかねが再会して交わす対話の中では
あおいを中心として、次々に肯定の連鎖が生じていく。

真っ直ぐに成長したあおい。その彼女のために地元に残ったあかね。
あかねの選択をしんのは今、心から肯定することができた。
そしてその肯定は、あかねを愛した彼自身にも及んでいく。
13年前のあかねの選択をしんのが肯定し、それによって自らを肯定する。
あかねへの断ち切れない想いが実体化した、凝固してしまった時間の象徴である
ネガティブな存在が肯定され、彼は安らかに消えていく。

そしてここでも、肯定されるものは「時間」である。
それはあおいと共に生きることを選んだあかねにとっての時間であり、
物理的な時間とは異なる、一人一人によって「生きられた時間」である。
成長した今のあおいはその結晶、具現化だと言ってよい。
ここに込められた本作のメッセージを自分は以下のように読み取った。

時間とは残酷なものだが、それが救いをもたらす場合もある。
本作はその両面を描きつつ、後の一面を支持していることは言うまでもない。
過去の意味は一概に判断できるものでなく、時間をかけて明らかになる真実もある。
「生きられた時間」を持てなかったしんのが結果的には
周囲の人々が新たな一歩を踏み出すための契機となったように
人生に無意味な時間というものは実は存在しないのではないだろうか。
「無用の用」という奥深い逆説的真理を体現したしんのの存在の奥に、
魂というものの本質が潜んでいるように感じられるのは自分だけだろうか…。
{/netabare}

Ⅲ 魂への回帰
{netabare}
過去の自分、現在の自分、未来の自分。
それらを貫いているものとは一体何だろうか―?

私たちはそれぞれに自前の判断基準=「ものさし」を持っている。
いつかは消え去る多くの夢、偶然の事柄に左右される日々の生活。
それら曖昧で不確かなものに基づいて私たちは往々、自らの現実を評価していないだろうか。
だが、もっと確かな、定点となるべき固有の実体が存在するはずだ。
それがその人の「魂」と呼ばれるものなのではないか。
過酷な現実の中で魂と折り合いをつけながら進むこと。魂を保って生きること。
そのような魂の所在こそが人生の本質的な課題となるのではないか。

その尺度に照らした時、夢とか現実とかいう区分は解消されるだろう。
魂にとってはただ為すべきことだけがあり、その進行の経過が現実というものだからだ。
だから当然、挫折などというものもない。
慎之介があかねに語ったように、すべてはまだ実現の途上でしかない。

 俺さあ、俺、ちゃんと前に進んでんだと。
 けど、まだ全部途中なんだ。途中だったって思い出した。
 だから、あきらめたくねえんだ、俺も・・・。

「思い出した」という表現が特に意味深く感じられる。
それは単に、忘れていた初心に帰るといったこととは違うだろう。
停滞とは多分、虚像にとらわれて本当の現実を見失ってしまうことだ。だからこれは
見失われていた自分の魂との再会による、本当の自分の回復を言い表すものであって、
魂を尺度として生きる人生への転換を意味する言葉なのだ。

——そして、慎之介の時間が再び流れはじめる。傍らのあかねと共に。


魂への回帰——。

それは個々人の人生の転換点において生じる事態である一方で、
人間の生存の条件をめぐる根本問題としての広大な射程をも有している。
本作の主題も実は、その地平にまで及んでいるのではないだろうか。

封印からついに解き放たれたしんのがあおいを連れて、広大な空を駆け回る、
全編のクライマックスとなる「魂の解放」を描いた場面。
魂の自由な躍動をヴィジュアルに描き切ったこのシーンは決して
単なる派手な映像的見せ場などではなく、ここまでの省察を踏まえれば
その内包するメッセージ性に気づかされるのである。

しんの=魂に導かれて、初めてあおいは、この空の本当の青さを発見する。

 空、青いね。・・・
 出たい出たいって思ってたけど、こんなにきれいだったんだね。

自分が今生きている「場所」の再発見、そしてその肯定を表明する言葉である。
「魂への回帰」とは、人が真に根差すべき場所をあらためて確認することなのだ。
しんのに抱かれたあおいがまるで、あやされる赤ん坊のように描かれるシーンがあるが、
ここにもおそらく、それぞれの固有の風土に抱かれて育まれる
人間存在の本来の在り方への暗示が含まれていると自分は解釈する。

この空の青さが魂の宿りだからこそ、どこまでも高く高く、跳ぼうとする。
この場所が魂の故郷だからこそ、どこまでも遠く遠く、駆け巡ろうとする。
このシーンは秩父への、そしてすべての「魂の故郷」に捧げられたオマージュである、
そのように捉えていいのではないだろうか。

デラシネ=故郷喪失。かつてアクチュアルな思想課題として熱く論じられた
あのテーマが、今再びここに喚び起こされているのだろうか——。
アニメ史に残るであろう記念碑的な連作・秩父三部作を締めくくるものは、
魂の「根差し(enracinement)」をめぐる新たな思索の可能性への
いまだかすかな予感なのかも知れない。
{/netabare}

(エピローグ)
{netabare}
エンディングに織り込まれた趣向は、エピローグと呼ぶのが相応しいものだ。
あおいたちのその後の歩みが、何枚かの写真によって伝えられる。その中の、
華やいだ記念写真に混じって、部屋の中だけを写した異質な一枚が注意を引く。

おそらく、ひとり暮らしを始めたあおいの部屋の中なのだろう。
愛用のベースの隣にはあの「あかねスペシャル」が仲良く並べられている。
慎之介とあかねが結ばれた後も、魂のしんのはずっとあおいと共にいる・・・
あおいのエア彼氏として(笑)。どうやらそんな感じの結末のようだ。
{/netabare}

総評:(主に前二作との比較を、旧レビューから再掲。)
{netabare}
「あの花」「ここさけ」に見られた求心性と緊迫感は
物語の固有の磁場を形成する、オリジナルな原初の「事件」に由来する。
原罪とも呼び得るトラウマからの解放に向け、極限的な感情と言葉とがぶつかり合い、
それらが思春期の心の揺らぎと共振し、作品は独特の屈折と陰翳を帯びる。
そうした内発的な展開の契機が、今作ではいわば外部化されている。
両親の死亡によるあかねの東京行の断念は、一般的な人生の有為転変に属しており、
そこにはあの私小説風の、特異で尖鋭な端緒が見られなくなっている。

また、説明的な描写、外的要因に頼る展開などに、一種の省エネ志向が認められる。
例えば、慎之介とあかねが会場の裏手で偶然出会う重要なシーン。
ここは再会した二人の心の揺らぎをもっとじっくり描くべき所ではないか?
目撃したあおいが姉の知らない一面を再認識し、一方でしんのの消滅を恐れて
板挟みの苦悩を深めるという方向につなげるのは、確かに無駄がなく効率的だが、
その分、キャラクターの心情への共感的な没入が妨げられる。
予期せぬ偶発事の発生で急転直下、物語に決着がつく終盤も展開本位だ。
視聴者は作品の中に入り込むよりも、外から筋の流れを追っていく感じになり、
映画的な感興がそがれ、テレビドラマ風な平板な印象が残ってしまう結果になった。

発展と見なせるのは、過去に関わる葛藤の乗り越えを描くのに際して、
思春期の心の「成長」から、人生の「成熟」へと視野が拡大し、さらに
それを促す要件としての「魂」の存在が、暗示的に主題化された点だろうか。

視点を多重化した本作の試みは功罪両面で評価できそうだ。
複層化に対応した構成は、前二作よりも明らかに緊密になっているが、
それにもかかわらず、逆に弛緩したような印象を受けることは上記の通りであり、
作品としての感銘度では、前二作には及ばないというのが自分の結論である。

蛇足になるが「井の中の蛙~空の青さを知る」というこの格言を
「魂」の方向に徹底させた言葉があるので、引用しておきたい。
沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷が座右の銘とした、ニーチェの言だそうである。
曰く、
   ― 汝の足元を掘れ。そこに泉はある。 {/netabare}


(初投稿 : 2021/06/01)

投稿 : 2025/01/25
♥ : 22
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る

世の中は思ったようにならないことのほうが多く、そんなときの悔しさや自分への腹立たしさが身に染みて伝わってくる物語です。

おそらく、順風満帆の人生を送られている方は、この映画の良さが理解しずらいと思います。
でも、失敗や挫折を経験したことのある方が見ると、直ぐにこの映画の登場人物に感情移入でき、感動するでしょう。
最後はハッピーエンドとなる素晴らしい映画でした。

特に若い人たちは、以下のまえおきを読んでいただいたうえで映画を見ると、より一層感動できると思います。

<まえおき>
ガンダーラとはパキスタン北西部にかつてあった古代都市です。
孫悟空で有名な唐の時代に実在した三蔵法師も、ガンダーラに行ったことがあるそうです。
そこに行けばどんな夢もかなう。そんな噂があったかどうかわかりませんが、
約40年前にゴダイゴが歌った『ガンダーラ』は、まさに理想郷でした。

この映画は、まさに理想郷ガンダーラを東京に置き換えて夢を見た若者たちの物語です。


<映画の序章のあらすじ>
※私の思いが含まれています

事故で両親を亡くした二人の姉妹がいた。
姉のあかねは、妹を誰よりも愛していた。
妹のあおいも、姉を誰よりも慕っていた。

だがある日、あおいは、自分のせいで姉が結婚を諦めたことに気づく。
それからは自己嫌悪の日々。
自分さえいなければ姉は幸せになれる…。そんなねじれた考えが日増しに大きくなってゆく。
そしてあおいは、姉を愛するがゆえに{netabare}家を出ることを決意する。{/netabare}

あおいの第一印象は、影と棘とを持ち合わせた少女として映ります。
もし自分が同じ立場だったら、やはりあおいと同じように考え、行動すると思う。
この悔しさを誰にぶつければいいのかと悩むだろう。


姉の元恋人である慎之介は、東京で一旗揚げようと夢を見ていた。
一旗揚げれば、姉妹そろって呼ぶことができる。
そうすればみんなが幸せになれる。彼はそう信じていた。
だが、東京は、そんな夢を見る人がたくさん集う場所。
夢を掴むのは、ほんの一握りの人だった。
さらに、都会で生きていくためには厳しい現実があった。

私も東京に住んでいるので、慎之介の気持ちが良くわかります。
都会で生きていくのは、本当に大変なことです。


そして、ここからこの映画の本編が始まるのです。
ぜひ見てください。


井の中の蛙は大海を知りません。
でも、大海を知らないからこそ、できることもあります。
大海を知ったたがために尻込みして、挑戦せずに諦めるよりも、
大海を知らずに挑戦するほうが断然良い。

たとえ挑戦してその夢がかなわなかったとしても、後悔することはないはず。
挑戦せずに諦めると、一生後悔します。

一度っきりの人生です。
空の青さは誰にでも見ることができ、そして太陽は、誰にでも平等に光を降り注ぐ。
井の中の蛙は、誰にはばかることなく挑戦して良いのです。
挑戦し続けている間は、たとえ何度打ちのめされようとも負けではない。挑戦をあきらめた時が負けなのです。

2019/12/28 一部修正しました。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 55
ネタバレ

みのるし さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

泣いて…  ないし!

えー。これはなんとゆうかですね。

くっそー。まるっきり大人向けのストーリーやないかー!

ボクはねぇ、もっとこう青春超せつな系のキュンキュン物語をねぇ、期待していったんですよ。

あの花とかここさけとかよりも、夏待的な。
まあでもあの花ここさけと3部作ってゆってんだからアレか。。。

いやいや。そんなこたあこのさいどうでもよいのですよ。


これは来ますよ。後からじわじわ来ますよ。
おそらくおっさんには。(ひょっとしたらおばさんにもかも。)

なんでお堂にあいつがいたのかとか、そこからなんで出られないのかとか、最後なんでああなってこうなっちゃったのかとか、まあなんかそのへんのところは実はいまいち…とゆうか全然わかってないんですけども、僕ら世代にとってはもはやそこはどうでもよくなっちゃっいましたね。



挫折を知り、世の理不尽さをしり、世の中の理をしり、それでもどうにかこうにか生きてますよと。もう昔の俺じゃあないんだよな。だから子供のころに見た夢の話とかやめてくれよ。頼むから。。。


と思って流れで生きてる大人のご貴兄みなさんがた。


{netabare}『そんな俺をがっかりさせないでくれよ!』{/netabare}

ってその夢を追いかけてた若いころの自分にゆわれたらどうしますか?



泣いて…   ないし!


・・・うぇぇぇええん。
それってあおいちゃん、ボクの気持ち、代わりに言ってくれてんだよな。。


あーはやくDVDでないかな。
家で一杯やりながら見てぇよ。これは。


おそらくめちゃくちゃ泣いてしまうなぁ。。。


:::::::::::::::::::::::


つーことで2020年夏。レンタル開始ってんでツタヤで借りてきて改めて見ましたがな!もちろん一杯やりもってですな。

まあびーびー泣くってことはなかったですけども。


んー。
これほんとに来るなぁ。ココに。


あの若い方のしんのはアレですな。
過去に縛られたギブソンファイアーバードの魂ですな。

そう考えるとつじつまが合いますね。

最初映画館で見たときはわからんかったなー。。。


脚本が岡田マリーさんで監督が長井監督ですよ。
まーさすがああゆうひねくれた青春送ってますよって話書かせるとすごい説得力ある物語書くよなぁ。


改めて見て、泣くってよりも、なんだろ、共感かな。
うあー。わかるー。の連発みたいな(笑)。

でも目はうるんでるので、そこはやっぱり『泣いて、ないし!』と言わざるをえんのでした。

連休最終日に見て正解でした!
次の日からまた気合い入れて働くぜ!ってギアが入りましたとさ♪

投稿 : 2025/01/25
♥ : 25

73.6 5 幽霊で田舎なアニメランキング5位
花田少年史(TVアニメ動画)

2002年秋アニメ
★★★★☆ 4.0 (196)
961人が棚に入れました
近所でも有名な腕白小僧、花田一路は悪戯を叱る母親から逃げようと道路に飛び出し、車にはねられてしまう。頭を9針縫いながらも、奇跡的に助かった一路であったが、これ以降なぜか幽霊が見え会話出来るようになってしまう。そして様々なオバケ達が生前の未練や願いを果たすためにと、自分たちと会話可能な一路の元にやって来て無理難題を押し付けられる事となった。

声優・キャラクター
くまいもとこ、桑島法子、矢尾一樹、田中真弓、野沢那智、竹内順子、久川綾、伊倉一恵、永井一郎、ゆきのさつき、井上倫宏、真殿光昭、松本梨香、山口勝平、小林沙苗、堀勝之祐、大原さやか、金月真美、高山みなみ、田中秀幸、かないみか、たてかべ和也

CC さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

お尻ペンペン!!

 本作は『ピアノの森』なども手掛けた「一色まこと」によるコメディ作品。
 舞台は1970年代の日本の田舎。一路は交通事故から九死一生を得て、幽霊が見えるようになる。
 一路が幽霊と関わっていく様をコミカルに、ハートフルに描かれているコメディ作品。

 一路は腕白坊主で悪戯が好きな「絵に描いたようなクソガキ」なんだけど、そこが良いんだよね。彼の腕白さや悪戯が笑いを生み明るく楽しくコミカルに仕上がっている。一つ一つの行動や言動が考えナシだから子供らしく愛らしい。誰とでも対等に向き合って、なんだかんだ悩み解決してしまう一路には毎回感動させられた。一路の自由きままさと純粋さ、そして優しさは見ていて癖になるほど微笑ましかった。

 私が好きだった話は15話~「ゴンパチ」の話かなぁ。泣けるほど感動できる話ではないが、一番コミカルであったかな。笑いと感動の落差が激しい話であった。一路にとって新しい出来事がたくさんあり、人として最も成長できた話だったと思う。

 終始見受けられるのが一家団欒の食卓、兄弟喧嘩や親子喧嘩。独り立ちしているモノには心打たれるシーンではあるよね。家族と触れ合っていた時間は子供の時しかないし、当たり前に過ごしていた日々に大事のモンがいっぱいあったんだな…なんて感性は持ち合わせてないけど、去来する情景であった。なら「サザエさんでも見てろ!」って話なんだけどね。嫌だ。
 この作品と出合うにはまだ私は若すぎる気がしたけど、とても感動した作品でした。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 13

U-tantan-U さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

笑いあり涙ありとはまさにこの作品のことではないか!

かなり前に見た作品。

笑いあり涙ありとはまさにこの作品の事を指したものではないかと思わせるくらいの作品ですね。

絵等から古臭いと感じる人が多いと思うので、このアニメに抵抗感を抱く人が多いとは思います。
自分もそうでしたが、内容が非常に秀逸で、昔懐かしく、優しい気持ちになれる作品だと思います。ピュアな気持ちになれる!少しでいいから我慢してみてください^^後悔はさせませんww

大雑把に内容を書きますと、典型的な悪ガキの主人公の一路がある日車に轢かれてしまい、その日以来、幽霊が見えるようになる。そして、幽霊たちが一路の元に生前の未練、願いを叶えてもらうよう、無理難題を押し付け、それを叶え成仏させていくというお話。


一見ありがち?な話ですが、本当に演出が秀逸だと思います。各章の話の持っていきかたが本当にうまくて、一路の幽霊との交流の中での成長、家族愛、恋愛etc、、様々な幽霊たちが織り成す物語に自然と涙と笑みがこぼれてしまいました。今までアニメで流した涙とはまた別の暖かい涙が流れてきました。
また音楽もいい感じでムードを高めてくれます。

最近のアニメとは雰囲気が全然違いますね。最近の感動するといわれるアニメを見てきて感動してきました。ですが、こういったのもいい^^すごい新たな発見でした!

童心に帰って見れる気がします。多少お下劣なギャグもあったりしますが、子供から大人まで万人に薦めたいお話だと思います。

心が汚れてしまったと感じる方はぜひ、この作品を見て心を洗い流してくださいww

投稿 : 2025/01/25
♥ : 27

Tnguc さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

【お気に入り】 正真正銘、笑って泣ける作品

~
「クソガキ」を絵にかいたような少年・花田一路(はなだ・いちろ)は、可愛げの「か」の字もないようないハナタレ小僧で、どうしようもないトラブルメーカーでした。ある日、事故をきっかけに後頭部に九つの縫い跡を持ってしまった一路は、幽霊が見える特異体質になってしまいました。という話。
この作品は、そんな少年一路を中心とした花田家のドタバタギャグの一面と、様々な幽霊との出会いが生み出す感動ドラマの側面があり、他の作品にはない特殊な二面性を持っています。ギャグの部分については、とにかく一路たちのクソガキらしさが前面に出ているので、やっていることは心底下らない感じです。でも不思議と微笑ましさすら感じる面白さがありました。きっとそれは、どんなに下品なやりとりだとしても、その根底には「家族」という素朴な温もりがあるからだと思います。もう一つの側面である幽霊との物語は、幽霊が見える体質であるばっかりに、色んな幽霊から未練の代役を頼まれてしまうのですが、その中には、しょーもない未練を依頼する者や、大切な人との別れをお願いする者など、様々。とにかく幽霊の依頼内容が多種多様のため、ある時はコメディになったり、ある時はヒューマンドラマになったりと、物語のバリエーションがとても豊富です。最後まで飽きることはありません。
この作品は「浦安鉄筋家族」と「夏目友人帳」を合体させたような作品で、登場人物や作風自体は「浦安鉄筋家族」、設定や物語は「夏目友人帳」を彷彿させます。普通に考えると、この二つの作品は噛み合いそうにありませんが、実はその通りだったりします。幽霊メインのドラマが始まると、一路が蚊帳の外になったりして、主人公にも関わらず舞台装置のような扱いになったりしていました。それでも、時には笑い、時には胸が温かくなるような、一粒で二度おいしい作品であることに変わりはありません。

物語:★★★★☆
・本文参照。個人的にメロンとクリスマスプレゼントの回がお気に入り。
作画:★★★★★
・水彩画のような背景が素朴な雰囲気を演出しています。
声優:★★★★★
・有名な声優が多いけど、普段とは違った演技が見れるので新鮮。
音楽:★★★★☆
・バックストリートボーイズは今だからこそノスタルジックに聴こえてしまう不思議。
人物:★★★★★
・子供がみんな生き生きとしています。桂ちゃんが可愛い。

個人的評価:★★★★☆ (4.0点)

投稿 : 2025/01/25
♥ : 6

60.8 6 幽霊で田舎なアニメランキング6位
絶対少年(TVアニメ動画)

2005年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (73)
460人が棚に入れました
自分がこれから何をしたいのか見出せず、不登校の生活が続く少年・逢沢歩。
母親に勧められた歩は、離婚した父親の住む町へと行き、父親のもとで一夏を過ごすことになる。進んで同意したわけではなかったが、母親から交換条件としてマウンテンバイクを買ってやるとまで言われれば、行かないと言えるほどの積極的理由もない、そんな歩だった。やって来た田菜は、山と水田と民家がポツポツとある小さな盆地。
母には小さい頃一度来たことがあると言われたが、その記憶のない歩には、今までいた場所と何も変わらない、何もない場所にしか思えなかった。
だが、それはとんでもない間違いだった…。

声優・キャラクター
豊永利行、三橋加奈子、斎藤千和、斎藤恭央、清水愛、加瀬康之、竹内順子

ソーカー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

10代の頃に見たかったジュブナイルファンタジー

2部構成で描かれた、日常ファンタジーアニメ。
前半はのどかな田舎町、後半は横浜の都会を舞台にしており
どちらも正体不明の物体マテリアルフェアリーがもたらす事件と少年少女の人間関係を描いた作品。

前半ののどかな雰囲気はとにかく素晴らしく良かったです。
現実感のある繊細なキャラ描写も、美しい風景も、謎に包まれたマテリアルフェアリーも
全体的に地味な印象ではあったものの、非常に丁寧で何もかもが素晴らしく思えました。
キャラの心情描写がアニメらしからぬほど非常にしっかりしている点が印象的で
「見えないもの」が見えてしまった等身大の少年少女の心情がじわじわ伝わってくる。
そういうなかで結びつきを深めていったり成長したりする様は実に心穏やかになれました。

後半から舞台を都会を移すと若干スタイルが変わってしまうんですが、
話の繋がりはちゃんとあって、前半の主人公も絡んでくる展開ではあります。
ただ前半より登場人物のすれ違いに重点をおいたシナリオなのでちょっと話が重い。
相変わらず非常にキャラ描写は丁寧ではありましたけども。
しかし、ラストは心地よい終わり方で実に良いアニメでしたねぇ・・・

マテリアルフェアリーの謎を追っていく展開も面白かったのですが
明確な答えと言える答えというのは作中では語られなかったように思います。
ラストで登場人物が各々解釈を語るわけですが、それなりに納得いく部分もありました。
しかし明確にこうだとは全然言い切れないわけで、どう受け取るかは人それぞれなんでしょうかね。
人は見たいように見るわけで、同じものでも色々な見方があると・・・。
結局よく分かりませんでしたが、その正体そのものよりそれに関わってしまった少年少女が
どう受け取りどう成長していくかが最大の見所ではあると思います。
ちょっと判然としないので、分かりやすさを求める人には合わないかもしれない。

全体的に非常にとてつもなくゆったりとした展開なので、好みは分かれると思いますが
とにもかくにもキャラの人間関係を非常に丁寧に描いていて、
ここまで繊細で良質なアニメにはなかなかお目にかかれなかったなぁとしばらく感慨に耽りました。
10代の頃に見ればもっと心に響いた作品だったと思いますけど。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 13

ねこmm。 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

世界はどこまでも開いている  【ねこ's満足度:80pts】

不思議な光”マテリアルフェアリー&イーヴル”に導かれる少年少女を描いた青春群像劇。
終始落ち着いた雰囲気で淡々と時が流れる、日常系ファンタジーです。

物語は、田菜編(1~12話)・横浜編(13~26話)の2部構成。
それぞれ中心となる登場人物が変わり、舞台や季節も別のものになっています。

両編の主人公(歩と希紗)に共通する点は、ともに不登校児だということ。
どちらも人と接し関わる事が苦手で、自分の想いをうまく口にする事ができません。
そんな彼らがある日出会う謎の光、それをきっかけに始まる不思議な現象。
それらの出来事に関わることによって、彼らの考え方も微妙に変化していきます。

それは歩や希紗に限ったことではなく、彼らに関わる周りの少年少女たちも同様です。
擦れ違う想い・迷い・嫉妬・葛藤……。ふらふらと行き場の無い、もろく崩れやすい未熟な心。
それでも徐々に自分なりの答えを見つけ成長していく、そういった心理描写がとても丁寧に感じました。

ポイントはそんな心の変化・成長が、あくまで彼ら自身の意思でなされてるところです。
”マテリアルフェアリー&イーヴル”そのものは彼らになにかをするわけではありません。
それらが出現した意味を考え、自分を信じ、行動する。その結果が彼らの成長に繋がっているんです。

最終的にこの作品は明確な答えを表示しません。でもわたし的は特に不自然に感じませんでした。
歩にとっての真実、希紗にとっての真実、他の登場人物たちにとっての真実、それは全部違うからです。

淡い色調にゆったりとしたBGM、全編に漂う不思議な空気感。
慣れないと退屈に感じてしまうかもしれませんが、なんとも心地よい感覚に浸れる作品でした。
(個人的には田菜編の方が好みです)

投稿 : 2025/01/25
♥ : 26

うぃず さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

ひとりきりはつらいね

「観る人を選ぶ」って評価、よく見かけますよね。

ところで選ばれる要素って何かしら?
1年にこれだけの本数のアニメが製作されていれば、それは様々なストーリーや絵柄も存在すのは当たり前。様々な要素においてテンプレを用意し視聴者に迎合すればそれは喜ばれ選ばれるのでしょうけれど、名作には成り得るのかな?

「絶対少年」
観る人を選びます。おい。笑
ううん、そんなこと絶対に無い。
観る人の寛容さが求められる作品。

テンポが遅いと感じてしまうのは、今のアニメはテンポが速過ぎるから。(暴論)丁寧に進められるストーリーはそれぞれのキャラクターに深みをもたらし、徐々にその世界へ溶け込むことが出来ます。細やかな所作も心情を表す表現として見逃せませんよ。

OP/EDも文句なし。
EDは大好きな伊藤真澄さんです。
畑亜貴さんの歌詞を口ずさむ度に涙がジワッと。
いつの時代になっても心に突き刺さるのです。

豊永利行さんの初期声優作品なのですね。
斎藤千和さんの演技も相変わらず素敵です。

たまにはこんなファンタジー作品もどうでしょう。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 9

54.9 7 幽霊で田舎なアニメランキング7位
ミヨリの森(OVA)

2007年8月25日
★★★★☆ 3.2 (37)
133人が棚に入れました
不仲な両親の間で育ったミヨリ(11歳)。そのせいか空想癖があり、いつも心を閉ざして他人との関係を
ずっと否定してきた意地っ張りな少女だった。母は男をつくって家を出て行き、ミヨリを一人で育てることに
不安を感じた父は、ミヨリを祖母の住む田舎に預ける。
祖母の家に着いた早々にミヨリは近くの森に散歩に出かける。ミヨリは何もない森の中で強い孤独を感じていた。
しかしその森で数々の不思議な出来事に遭遇し、やがて森の精霊たちがミヨリの前に姿を現しだす。

声優・キャラクター
蒼井優、天野ひろゆき、市原悦子、元ちとせ、高島彩、松尾翠、伊藤利尋、吉崎典子、佐々木恭子、辻親八
ネタバレ

ユニバーサルスタイル さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

ここに居たいと思える場所

最初に言うとこれは子供向け、児童向けです。
それを念頭に入れておかないとダメですね。
実は皮肉が込められているとか、奥深いテーマがあるとかそんなことはなく、とても素直な作品。

そのため僕は受け入れるまで時間がかかりました。
「なんだこれ面白くないじゃん!」・・と思いつつ、一時間くらい見続けていたらやっと面白みを感じられるようになりました。
素直な心がない人には忍耐が必要かもしれません。

でも最後まで見ると満足感ありました。
(100分超もあれば愛着もわくってもんですが)



あらすじは・・
両親の不仲をきっかけとして、幼少期を過ごした祖父母の田舎に預けられた主人公の少女ミヨリ。
森に住む精霊たちや村に住む子供たちとの交流を通じて、ミヨリは成長していく。


僕が最近観た作品としては『ももへの手紙』や『思い出のマーニー』の導入に近いと感じました。
しかしそれらと比較すると(テレビスペシャルということもあるかな?)質が低いように思います。
作画はのっぺりしてるし、キャストは俳優が多いので拙いし、話も淡々として盛り上がりに欠けるし・・。途中で止めようかと思いました。

まあ、そう思いつつも見ていたんです。
すると、段々と慣れてきたというか面白くなってきました。
作画案外イケるよな、蒼井優の声可愛いな、みたいな具合に。


物語はミヨリが田舎に馴染んできてから動き出します。

嫌々田舎で過ごしていたミヨリが少しずつ田舎を好きになっていく。
そこで生きている精霊や人間との付き合いが増え結び付きが強くなっていく。

そうして、今まで感じなかった想いが芽生えます。
{netabare}
自分の意志で選んでここに居たい、ここを守りたいと思う心。
受け身で自身の殻に閉じ籠っていたミヨリに初めて生まれた自我の心。
{/netabare}

後半はミヨリ役の蒼井優さんの演技がイキイキとしてきて、BGMも合わせてドラマチックに響き、高揚感を高めてくれます。

ミヨリが前半と打って変わって積極的に、頼もしい女の子になっているのも見ていて感慨深いです。
そう考えると長い時間かけてミヨリの変化を描いていたのにも意味があったのだと思えますね。
蒼井優さんの演技に関しても、そうした効果を狙ってのものだったのかな?って思います。


田舎っていいよね、とか。
人のせいにしてばかりじゃいけないよ、とか。
悪いことするとバチが当たるよ、とか。
そんな言葉も浮かびましたが一番はタイトルのようなメッセージです。
「私はここに居たい、ここで生きたいんだ!」と思える居場所を見つけられることって幸せだと思いました。


ミヨリのように、素直な心で接して見てあげてほしい作品ですね。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 17

58.2 8 幽霊で田舎なアニメランキング8位
アイドル事変(TVアニメ動画)

2017年冬アニメ
★★★☆☆ 2.9 (131)
544人が棚に入れました
MAGES.原作の二次元アイドルプロジェクト。アイドル議員たちが、みんなを笑顔にするため、歌とダンスでニッポンを変えていく物語。各県代表の個性的なアイドル議員が登場!

舞台は現代の日本によく似た、パラレルワールド的な[ニッポン]。一世を風靡したアイドル議員旋風から十数年、新潟出身の元気っ子・星菜夏月がヒロイン党から新人アイドル議員としてデビュー!

環境汚染、ごみ問題、待機児童、汚職事件…山積みの問題に取り組む夏月たちアイドル議員の前に、政権与党・楼凱党が立ちはだかる。楼凱党からの度重なる妨害工作にもめげずに、活動を続けるアイドル議員たちが、やがてこの国に奇跡を起こす――。

声優・キャラクター
八島さらら、渕上舞、上田麗奈、Lynn、久保ユリカ、仲谷明香、吉田有里、赤﨑千夏、山本希望
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