再開発おすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの再開発成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月02日の時点で一番の再開発おすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.3 1 再開発アニメランキング1位
海月姫-くらげひめ-(TVアニメ動画)

2010年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (697)
3312人が棚に入れました
クラゲオタクの月海が住むのは風呂・トイレ共同、男子禁制のアパート・天水館(あまみずかん)。住人は皆腐女子でニート、オシャレ人間は天敵、そんな彼女たちは自分たちを「尼〜ず」と呼ぶ。ある日、死にそうなクラゲを救ってくれた美人でオシャレな女の子と知り合った月海。だがその子は、父親の職業を継ぎたくないがために女装する正真正銘の男だった。

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

わらうことで、すくわれる物語(追記:整形美人のはなし)

 唯一のオール5。

 原作者である、東村アキコという人は不思議な立ち位置にいる漫画家だと思う。
 基本は、アイデンティティは一義的にはギャグ漫画家なのだろう。
 ギャグはもちろんじゅうぶん面白い。だが、個人的には、ギャグはそこまで笑い死にするほどまでには面白いということはない。
 面白さよりも、感動するのは、東村のギャグがそのほとんどが一歩見方をかえれば、そのギャグがあまりに切実な問題ばかりを扱っているということだ。

■他人ではなく、自分でわらいとばすということの効用

 東村のギャグのネタは、つねにあやうい。

 「コミュ障」
 「無収入」
 「ブス」etc...

 これらはいずれも「誰」が言うか、によってギャグどころか差別発言ぎりぎりになってしまうような、そういう危ういところをついている。
 東村アキコのギャグはいつもそうだ。これは、西原理恵子なんかだともっと典型的だとは思うけれども、言い方を間違えればひどい。しかし、その言い方を間違えればひどいものを、「自分で笑い飛ばす」。これは、他人にわらわれてはいけない、自分で笑い飛ばす。そのことが重要なのだ。
 いずれも、他人からわらわれてしまえば、それは、ただの攻撃で、見せしめで、みじめさがましていくだけだ。それを、あらかじめわらいのネタにしてしまうことで、すくわれる。そういう作用を、東村アキコのギャグはもっているように思う。

 たとえば、ある精神科医が自分がかつてパニック障害に陥ったときの療法として、
 「パニック障害におちいって、呼吸困難におちいっている自分を、自分で茶化すことで、呼吸をおちつかせることができるようになった」
 と言っているのを聞いたことがある。たとえば呼吸困難におちいってきたら

 「おおっと、理恵選手(仮名)、
  呼吸が困難になってきました。
  いやー、きましたねー、本日もやってまいりました。
  今日の呼吸は、なかなかいい感じですねぇ。
  斎藤解説委員、どうでしょうか。
  /はい。そうですねぇ
  …今日の呼吸困難も、いい調子ですねぇ…。
  期待できますよぉ、今日は。」

 みたいなバカなことをやっているうちに、気持ちが落ち着いてきて治ったんだそうな。

 ギャグは、自らのどうしようもない行き詰った立場を、一歩外からみつめなおすことができる。そとから自分をみなおすための、もっとも効率的な手段でもある。そとから見つめなおす視点を獲得することで、ラクになれる。力を抜くことが、できる。
 そういうタイプのギャグが、東村アキコの作品にはあふれている。だから、東村アキコのネタは、「ギャグ」という皮を脱いでしまえば、とたんにひどく深刻で、息がつまるような、切実さをもっている。東村はそれを効率的にギャグとしてみせる。それゆえに、東村のギャグはおかしく、そしてまた、強烈だ。


(※もちろん、ギャグが<常に>精神療法として機能する、というわけではないだろうけれど。) 

■ギャグと批評性

 また、こういった一定の批評性をもったギャグというのは、基本的にはその批評性とかみたいなものがほのみえてしまうと、えらくダサく見えたりするもので、「爆笑問題」のギャグは、いつも、そういうあざとさを発揮してしまったりする。(あるいは、昔のビートたけしとかも、そうだと思う)
 だが、東村のギャグは、そういうところがほとんど存在しない※1。それは、何よりも、本人にとって、あるいは本人のごく身近な人間の問題を描きだしているようにしかみえないからだろう。少なくとも、他人を攻撃するためのギャグではない。
 作中では、直接に「痛い」キャラクター本人が自虐として語るのではなく、さまざまな形でかたられるが、いずれも攻撃性がほとんどない。

 なお、原作のあとがき漫画では、東村自身が10代のころにどれほどオタク女子にありがちな痛いことを沢山やっていたか、ということがライトに語られている。まあ、本人が過去そういう人間であったということは、なるほどそうだろう。

 くわえて、少女マンガとしてじゅうぶん機能するだけの人物の心情描写の細やかさ※2を兼ねており、わたしは、もう東村さんに関しては、本当に文句がない。







■アニメとして

 東村さんの話ばかりを描いてしまったけれど、アニメはアニメで、すばらしい脚本のリライトや、キャラクタの描写力をもっており、絶賛するしかないクオリティ。個人的には、ばんばさんと、くららが超かわいくてツボ。

 OPのチャットモンチーの『ここだけの話』も、EDのサンボマスターの曲もすばらしい。とくに、OPのチャットモンチーの曲はここ数年にきいた、すべての日本人の楽曲のなかでもっともよかった。チャットモンチーらしい、わがままで身勝手な欲望をあえてかわいく歌うことで、びっくりもするし、チャーミングでもあるすばらしい楽曲になっている。映像とあわせて本当によかった。

 そういうわけで、なんだか長々と書いてしまったけれども、
 要するに、昨年は
 「ここのところいいコンテンツって、なんかある?」と聞かれたら、
 「海月姫!海月姫!海月姫!ちょう良かった!すごく面白かった!あれこそが感動的!」
 と、ドヤ顔で答える日々を送っていたわけです。


■追記1:
・東村アキコは、岡田あーみん(『お父さんは心配性』『こいつら100%伝説』)が大好きだという。わたしも岡田あーみんは大好きで、吉田戦車、うすた京介と並ぶ90年代の三大不条理ギャグ漫画家だと思っている。少女マンガ、というプラットフォームのなかで、あれだけ不条理系にごりごりと突き進むことができていた、岡田あーみんの遺伝子を東村アキコが引き継いでいるのか、と思うと泣ける。

・あと、本編だと東村さんのギャグは自虐性がたかいけれども、たまに、周囲への敵意そのものがむき出しになってるような、場合とかもあるのは、ある(笑)。まあ、それは西原さんもそうなんだけど。なので、上記の感想は若干ほめすぎているといえば、ほめすぎてるんだけれども、大筋の言いたいこと、としてはそういうことで。『ママはテンパリスト』とか、けっこうひどいな、とも思うw

■追記2:美容整形をめぐって

 ちなみに、この「眼差される対象としてのわたし」をめぐる、コンプレックスを扱った作品としては、サブカル文脈で有名なものとしては、90年代の岡崎京子の『ヘルタースケルター』という作品がある。
 わたしは、岡崎京子は好きではない。…が、教養として岡崎京子を知っている、ということには意味があると思っているので、興味のある人は読んでもらえるといいと思うけれども、話の内容としてはWikipediaの要約によれば下記のとおり

「美しく幸せになりたいという欲望を持ったモデル・りりこは、全身を作り変えるほど危険な美容整形手術の結果、その美貌でトップアイドルになっていくが、手術の激甚な後遺症に心身ともに蝕まれていた。」

 という内容。
 基本的には、まあ、「他人から見られる私の美しさ」というリソースをゲットするために、なりふりかまわず、人生のほかの大事なものをごっそりと捨ててしまう、というそれだけの話なんだけれども、しかし、少なくない数の「女性」にとっては、美貌という資源がそれほどに、めんどくさいものとして描写可能だ、という話になっている、ということだ。

 これと比べると、海月姫の「美」をめぐる描写はかなり楽天的な部類に入るだろう。
「キレイはつくれるんだよ★」
 という言い方がカバーする範囲で、基本的には話は推移する。つきみちゃんは、見てくれをちょっと変えるだけで美人っつーね。
 いや、まあ、実際に、それまで全く手を入れてないようなタイプの人の場合、
・姿勢
・ファション
・髪型
・化粧
 あたりをゴリゴリといじっていくと、相当にいじれる、とは思うけど、…それにしても、海月姫的な「美」の世界観はけっこう希望に満ちている。整形しなくても、イケる世界だからねぇ。


 …
 で、何を言いたいのかというと、
 整形したり、何かを強力に犠牲にしてまで、「美」を手に入れようという人にとっては、「キレイは作れるんだよ★」的な世界はうざい、と思われているはずで、ここに対する、何かが入ってくるといいなー、と思っています。海月姫じゃなくて、東村さんの別の作品でもいいけど。
 整形美人とかが登場して、

 非モテ(つきみちゃん) vs 整形の怨念女

 みたいな対決とかね。
 そんでもって「キレイはつくれるんだよ★うふ」な楽観でないことを示せると、もうサイコー。

*整形に対する価値観

 ちなみに、
 整形に対する価値感とか、韓国とかだといま、全く変わっていて、ヘルタースケルター的な描写が成立する、ということ自体が、いまやバカみたいにしか見えないと思う。
 (韓国にいれば)

 「整形=性格ブス」の構図とかって、なんなのそれ?w みたいな感じで笑い飛ばしてやりたいよね。前時代もいーとこだと思うんだよね。
 整形美人が性格的にストレスを抱える理由というのは、整形自体が問題というよりは、どちらかというと「整形行為」に対する社会的なレイベリング※3の問題でしょう。
 その意味で整形美人っていうのは
1.「美人であれ」という世間的要求と、
2.「むりに美を買うなんて浅ましい」という世間的要求の
 どちらにも、二重にコンプレックスを抱えやすい人になりがちなわけで、そうなっちゃうと整形美人ってのは、けっこうガチでかわいそう。笑い飛ばせる人だと、いいと思うけど。椎名林檎とかだと、なんとも思わずにやっちゃってそうだけど。
 で、岡崎さんの話は、教養人が、そのレイベリング問題を取り扱っているようにも読めるけど、レイベリングを強化しているようにも見えて、困りものなんだよね。岡崎さんのような人がそういうもんしか描けてないってのは、ほんとにねー。まったくもー、どうなの。

 整形美人、に対して、そういうわけで今後、東村さんがなんか描いてくれればなー、というのがわたしの、ごく勝手な希望で、東村さんならやってくれる、はずだ、と勝手に期待してる。※4


※1 これは、昔の古谷実のギャグマンガ(『グリーンヒル』『ぼくと一緒』)や、西原理恵子のような人のギャグにおいては。こういうことは成立していた。

※2 心情描写のセンスの良さは、現在連載中の別の漫画『主に泣いています』のほうがよく出ているかもしれない。

※3 レイベリング、というは、たとえば「おまえは不良だ!」と学校で先生からレッテルを貼られることで、それまで、さほど不良でもなかった子が、「っち、おれはどうせ不良だよ!!!」とかやさぐれて、本当に不良になっちゃうってこと。「レイベリング」でぐぐってくれれば、社会心理学系の解説のページが出てくるはず。

※4岡崎京子は、わたしにとっては「一世代前の教養」の象徴的存在でもあるので、東村さんに、そこはなんか一発やってほしいな、と思っている。
 むかし、三島由紀夫を読んでいたら、三島が太宰のことを「あんな、田舎者」とかっていうような書き方をしていて「なんのこっちゃい」と思っていたけれども、要するにあれって、「過剰な露悪趣味にたいするナルシズム」みたいなことだよね。
 そういうものが、80年代ニューアカの残滓みたいなところと結びついちゃったのが岡崎さんで、太宰の頃には、そういう教養主義って、一高文化とか東大みたいな限られたところにしかないから、太宰が教養主義にアクセスする、ということはなかったわけだ。そこが、なんか、戦後のある時期以後は、結びついちゃってるのが、わたしは嫌なんだよなー。
 太宰はコンプレックスばりばりの無教養DQNなんだけど、村上龍とか、岡崎さんは、勉強するんだよね。あの人達は。
 これって、19世紀初頭のヨーロッパの成金が、美術を介して文化資本に手早くアクセスしようとしたときの話にすごく似てる気がする。一発目は、ただの俗悪な趣味の権威化しかできなかったんだよね。あのとき。50年ぐらいたって、ようやくそれが新しい趣味の世界を構築してきたけど。
 なお、もちろん、岡崎さんが交通事故で描けなくなったこと自体は惜しい。岡崎さんには、ずっと、わたしにとってのヒールであって欲しかった。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 36

ハウトゥーバトル さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

姫は海に漂い波にのまれる

序盤 ああ

中盤 ええと

終盤 これで終わり?

この話は持てないオタク女性、通称「尼ーズ」のクラゲオタクについての話
ジャンルはオタク・恋愛・コメディ・荘・女装
基本的に恋愛です。もちろんコメディ要素も少ないわけではないですが、恋愛要素のほうが多いイメージです。クラゲ姫という名前ですが(私だけかもしれませんが)、クラゲに対する知識はあまり入ってこなかったような気がします。「クラゲオタク」という要素だけが重要なだけであって「クラゲ」要素はコメディ要素でしか使われてません。そのクラゲも大雑把な特徴と名前と形だけ説明されるので生物学的な知識としてはあまり期待できないかなって感じです。まぁクラゲというものを大雑把に理解するだけなら十分かもしれませんが。
内容です。序盤の展開であまり好まない人がデてくるかもしれませんが、この先「とってもおもしろくなる!」とは言えないので別に断念しても良かったかな、という感じです。中盤も同じ調子でずっと退屈な展開が続きますが、かといって視聴をやめたいというわけでもない状態です。終盤は終わる気がしないまま展開が続きます。ラストシーンは「え?終わり?」といった感想しかありません。すべてが完結しないまま、かといって何かが始まっていたかと言われればそうでもない、という感じです。全体的に内容が薄いかな、といった感じです。
まぁ良いところといったら「日常」を描いているといったところでしょうか。日常ではそんなに大きな展開がころころとでてくるとは限りませんので、この小さすぎる展開はある意味現実を移してるかもしれません。ヒロイン(?)の過程環境が普通ではないので現実とはかけ離れているのですが。矛盾の極みですね。言ってみたかっただけです。
私はこういう主人公はあまりすきじゃないのですが、こういう奥手な人が好きという人もいるのですかね。ちょっとわかりませんが。基本的に逃げてばっかです。良くない場面もなれない場面も自分のしらないことからも。何も知ろうとせず何も変わろうとせず何も産まないただただ生きてる虚しい人生のように私は感じました。私は逃げてない、なんていうつもりはまったくないのですがさすがにこれは逃げ過ぎです。自分の人生は自分で決めるものです。100%自分とまでは行かないにしろ自分に意志があるというのは本人しか証明しようがありません。この主人公がクラゲという生物がすきなのは「自由にゆらゆらと海を漂っているから」と言っていました。それは彼女が自分だけは特別(姫)だ、とどこかで思い、自ら行動せず「波」にのまれて、「海を漂う」という表現であたかも自ら行動してるように見せてる、ということなのではないでしょうか。傲慢にもほどがあります。まぁ人間という生命体は一社会に溶け込まなければならない、という常識的な価値観が間違っていない、とは断言できるはずもないので、もしかしたら正しいかもしれませんが。とりあえず私はこの主人公は嫌いです。

監督・音響監督は大森貴弘さん。デュラララや夏目友人帳の監督をされた方ですね。
シリーズ構成は花田十輝さんローゼンメイデンのシリーズ構成をされた方ですね。
キャラデザは羽山賢二さん。マジンカイザーなどのキャラデザをされた方ですね
劇伴は吉森信さん。バッカーノやデュラララの劇伴をされた方ですね。
アニメ制作はブレインズ・ベースさん。デュラララやバッカーノを制作したところですね

作画は普通でした。
opは橋本絵莉子さん作詞曲、チャットモンチーさん編曲歌唱の「ここだけの話」
edは山口隆さん作詞曲、サンボマスターさん編曲歌唱の「きみのキレイに気づいておくれ」
声優さんは良かったです。

総合評価 見なくて良い

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

ローズ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

自分の持っているケータイはガラケー。この作品の鍵となるのはクラゲ……

クラゲオタクの倉下月海(くらした つきみ)の住んでいるアパート・天水館の住民は全て独自のオタク趣味を持つ集まりで、自分たちの事を”尼~ず”と称して外部のお洒落な女性や男性を拒んでいた。
月海がペットショップで死にかけているクラゲを助けようと悪戦苦闘しているところにお洒落な女性が現れて救い出すことに成功する。
ただ、その女性だと思っていた人物が女装した男・鯉淵蔵之介(こいぶち くらのすけ)であった。
お洒落っ気の無い月海をメイクして変身させたり天水館が取り壊されるピンチなどを回避するための行動をしていくうちに、蔵之介の心情に変化が……


オタクと言えば男のイメージが強いですが、本作品では女性のオタクが多く登場します。

主人公でクラゲオタクの倉下月海
着物を常に着ていて日本人形を集めている千絵子(ちえこ)
三国志が大好きな まやや
鉄道が大好きで包装紙から中身(高級食品)を当てる事ができる ばんば
中高年(特に地位武男)が大好きな ジジ
部屋に籠ってBL漫画を描いている目白樹音(めじろ じゅおん)

他人の趣味・嗜好をどうこう言うつもりはありませんが、天水館の住民はオタク趣味の中でも かなり特殊な部類になると思います。

服装やメイクに無頓着な月海に対して、徹底的に女性らしい服装やメイクをして変身させています。
中身はそのままでも外見を綺麗に変えるだけで周囲の反応が変わります。
蔵之介の兄と対面した時も 普段の月海とメイクアップした月海では態度が変わります。
(変わるというか、全然気づかないのですが^^;)

自分も高校時代に髪の毛を伸ばしたりガイコツ柄のメタルTシャツを着ていたので、周りの人と距離がありました。
ちょっとしたキッカケがあり、髪型を普通にしただけで周囲の反応は変わりました。
その時に「外見だけで人を判断する人間は多い」という事を学びました。
中身は全然変わっていなかったのですが^^;

外見だけで人を判断することはできませんが、相手の第一印象は変わります。
一度しか会わない人に対して良い印象を持ってもらいたいのならば、ある程度、外見に気を遣わなければいけません。
オタク趣味を持っている事は隠さなくてもいいかもしれませんが、相手の第一印象を良くするためにも外見に無頓着のままでは いけないかもしれません。
受験・就職・仕事先など、清潔な印象を求められる場面も多いので、外向きの服装を持っていた方がいいでしょう。

仕事や勉強の場では個性は無くても大丈夫です。
自分のくつろげる場所などで、オタク趣味などの個性を全開させましょう。
場を考えろ、という事ですね^^

場慣れしていて男を手玉に取るような女性よりも月海のような純情な女性の方が人間としては良いかもしれません。
あまりにも純粋すぎて男性恐怖症のようになってしまうのも困ってしまいますが^^;
自分の事を理解してくれて受け入れてくれる相手が見つかるといいと思います。

本作品は微妙な所で終了します。
全11話では仕方が無いのでしょうが、終わり方が唐突だったのが残念です。

今までの自分自身のままでいいんだ と思いたい人や、これから少しづつ自分を変えていこうといった人には参考になる作品かもしれません。
現状の自分に満足している間は人間として成長しないので、どちらかと言うと自分を変えるキッカケにしたほうがいいように思います。

狭いジャンルに特化した人もいいのですが、視野を広げて守備範囲を広くしてみようと思える作品でした。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 29

78.6 2 再開発アニメランキング2位
機動警察パトレイバー the Movie(アニメ映画)

1989年7月15日
★★★★★ 4.1 (381)
1824人が棚に入れました
すべてが朱に染まる夕暮れ、篠原重工の天才プログラマー・帆場暎一が、バビロンプロジェクトの要となるレイバー用海上プラットホーム「方舟」から投身自殺する。その口元に嘲りの笑みを浮かべながら…これが、すべての始まりであった。時期を同じくして、レイバーが突如暴走する事件が多発、遂に自衛隊の試作レイバーまでが暴走事件を起こす。特車二課第1小隊は、近々正式配備される新型パトレイバー(通称「零式」)に関する研修中のため不在。単独で暴走事件の処理に追われる第2小隊の篠原遊馬巡査は、多発する暴走事件の異常性にいち早く気付いて独自に調査を始め、原因が暴走した機体すべてに搭載されていた篠原重工製の最新レイバー用OS「HOS」(Hyper Operating System)ではないかと推測する。

声優・キャラクター
冨永みーな、古川登志夫、池水通洋、二又一成、大林隆介、榊原良子、郷里大輔、井上瑤、千葉繁、阪脩、西村知道、辻谷耕史、辻村真人、小島敏彦
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

人にアニメ作品を勧めるときにまずこの作品をおすすめします。

羽海野チカさんの『スピカ』に収録されていた「イノセンスを待ちながら」を読んで興味が湧き、初めてこの映画を観てみました。それからも、ふと思い出してみては何度も観ている大好きな作品です。

 科学技術が進む中で二足歩行型ロボットである「レイバー」の製作に成功し、それに足並みを合わせるかのように町の開発も進んでいく、まさにその過渡期の東京を舞台にした話。近頃、安全だと信じられていたレイバーが暴走する事件の増加に疑問を持った篠原という若い男が事件解決に取り組みます。
 何が原因で、誰の策略でなんてことをいちいち細かく調べていく過程は観ていて面白いし、それがだんだんと明らかになってくるストーリーも流石です。さらに作中に出てくる人たちもその描かれ方は非常に繊細で、1人1人がその息遣いまでもが分かるくらいにリアルに描かれています。
 まるで本当にこんなことがあったかのような強い現実感を帯びた物語は風化することなく、今の僕らにも十二分に楽しめます。

 「現実的」この言葉がいろんなところでしっくりとくる映画です。レイバーが大量生産され、工業化は大きく進んだけれどそれはすべてではなく、同心円状に街は開発されていったのでその周りには、この映画の製作年代の1980年代の趣のある街並みがまるで見捨てられたように印象強く残っています。
 それはたとえば夏。凌ぐことのできない暑さに加え、容赦なく照りつける太陽の光を心の底から憎む季節。そこにはクーラーのひんやりとした涼しさはなく、ただただ暑さを耐えるだけで途方がなく、救いもない。目線を上げると20メートル先の景色が少し歪む。そんな夏をスーツ姿で背広を肩にかけ、敷き詰められた木造住宅街を歩くシーンはそれそのままのように感じます。
 「ちょっと前まではこうだったよ。」なんてどこかのサラリーマンが言いそうな映像です。しつように描き込まれた風景は既視感を生んだり、または人の想像力を限りなく現実に近づけてくれる装置となり、僕らはこの作品によりのめり込み共感していくことができます。
 他にも篠原の事件解決までの道のりでの上からの圧力などの障害や、後藤刑事のすること成すことが、そこにあるべき不自由さを持って描いているので非常に現実的です。

 一見の価値があるかどうかまでは分からないけど、「何か面白い作品ある?」と人から訊かれたときには必ず『GHOST IN THE SHELL』と一緒にこれを勧めます。面白いですよ。いやいや、ほんとに面白いんだって。

{netabare}

 箱舟に乗り込んでから、泉が帆場のところに向かってそこに大量の鳥しか発見できなかったときに篠原に報告した言葉「ここに人間なんていないわよ!」。僕はこの言葉がずっと頭に引っかかっていました。ここでこんなことを言うなんて何か変だと思いませんか?他にも言い方はたくさんあっただろうし、なんというか抽象的で暗喩的。んー、なんでだろうと思いながらひとつ思い当りました。それは一体なんだったのか。

 冒頭のシーンで帆場は笑みを浮かべて自殺しました。レイバーの暴走が起こることを確信し、自分を蔑んだ者たちに復讐ができるから。その悪意に満ちた計画こそがこの事件の核心でした。そう、彼が死んでも、肉体が水圧で潰され跡形もなくなろうと彼の計画は、その悪意だけはこの世で生きていました。
 そしてそれは実際に起ころうとしていました。特車二課の彼ら有志諸君は箱舟に到着し帆場の反応を発見し泉をそこに向かわせます。そこで泉が見た不気味に赤く目を光らせたたくさんの鳥たちは、まさしくそれを象徴していたのではないでしょうか。
 「人間なんていない。」じゃあ何がいたのか。それは鳥の形を模した”悪意”でした。
 人は死んでもこの世に何かを残せる。非情に前向きな文句だけれどもそれは憎悪や悪意も同じこと。死んでも死なない観念は計画としてじっとそのときを待ち、悪霊のように鳥の形をしてこの世に住み着いていました。
 鳥は空を飛び回ります。僕らはそれを日常生活でも頻繁に目にします。彼らは空を自由に行き来し、世界のあらゆるところを飛び、街の中にもごく普通に存在します。意味は異なりますが『グレート・ギャッツビー』もしくは『華麗なるギャッツビー』のT・J・エックルバーグ博士の眼や、『1984年』の冒頭でウィンストンが見るポスターの眼、さらに"ビッグ・ブラザーズがあなたを見ている"の文句、『空の境界 第5章』の巴がコルネリウスを街中で見かけたときに彼の後ろにあった両目の看板のように、この鳥たち(もしくは悪意)も僕らのすぐそばで、その両の眼で「あなたを見ている」のです。その隙を窺っているのです。押井監督がどういう意図で意図的に鳥を使っているのかは知りませんが僕はこう思う次第です。

 この映画で示した、今まで安全安心だと自分が信じていたものが突然裏切り攻撃してくるのも非常に怖いもの。
そこに付け込んできた帆場の計画は相当残虐な事件となり得たでしょう。その度合が悪意のそれだとするならば、この世に残った悪意もちょっとやそっとのものではなかったです。
 おぞましき悪意は果たしてここで消えたのでしょうか。いいえ、この社会に根付いた悪はとても深い。終わりのない人為的なカタストロフは主役を変えて繰り返され続けます。この社会ができたときからすでにそう運命づけられているのです。それは次の映画でも証明されます。

でもまあ、そんなこと考えずともこの作品は単純でいて面白いですよね。うんうん。ホント好き。
{/netabare}

余談

 本作にはオリジナルバージョンとリニューアルバージョンがDVDまたはブルーレイに収録されています。オリジナルバージョンは劇場公開されたとき(1989年)の映像そのままです。リニューアルバージョンは1998年に音楽・効果音を録音し直し、さらに再アフレコをしたものです。
 で、どちらが良いのかというと一言ではとても言いにくい。実際に比べてみると、オリジナルはリニューアルと比べて声のノリがいい。泉野明役の富永みーなさんはもう全然違う。オリジナルの方が元気でいてとても良いです。南雲しのぶ役の榊原良子さんもかなり違います。オリジナルでは声も高くおだやかにリラックスしているように感じ、リニューアルではおしとやかに、大人の雰囲気が一層強くなり諭すようにものを言います。後者はちょうど映画第二弾のときのトーンに近いです。これは押井監督かな。何の根拠もありませんが。後者の方が押井監督の作品の雰囲気にぴったりだし、一言一言が重くなることでその場の空気もシリアスになります。
 音は確かに変わっていると思う。でもね、最初は「変わってんのかなあ。」なんて気にしながら観てはいるけど、結局話に集中しちゃってまったく忘れてしまいます。だから僕にはあんまりわかりません(笑)。
 こう見るとオリジナルの方がいいけれど、全体的な会話のリアリティーはリーニューアルの方が幾分か高いです。それにこっちでは、箱舟突入前で後藤さんが海上保安庁に出頭する際に、南雲さんに一度呼びかけられて「はい?」と返事するところが僕は個人的にとても好きなんです。オリジナルでは「はい。」と普通に返事をするのですが、リニューアルでは「はい?」とわざと語尾を上げて返事をするんです。こういう言葉にしないところでの表現は見事ですし、後藤さんの魅力をこの一言でバン!と表現できちゃってるところはすごい。だから僕はリニューアルの方も捨てがたいです。
 初めて観るのであれば、初めにオリジナルの方を観てみるのがいいかもしれません。これが当時公開されたものですし。もしTVアニメを先に観ていて、後藤さん好きであればリニューアル版を先に観ることをお勧めします。それでこの映画をとても気に入ったら比べて観てみて下さい。何度観たって面白いんですから。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

☆近代史を語れるエンタメお手本作品(仮)

■評価
テーマ性  :★★★★★ 5.0
エンタメ度   :★★★★★ 5.0
シリアス度   :★★★   3.0
脚本巧み度 :★★★★★ 5.0
おススメ度 :★★★★☆ 4.5

■ストーリー
レイバーメーカー篠原重工の天才プログラマーである
帆場暎一が不可解な投身自殺を図る。それと同じくして
東京界隈で原因不明のレイバー暴走事件が多発する。
事件対応に苦慮する特車2課であったが、後藤隊長の
暗黙の命により同課の遊馬が単独捜査に乗り出すが
帆場暎一の自殺には恐ろしい陰謀が隠されていた。
1989年劇場版パトレイバー第一弾作品

■感想
本作は劇場版のエンタメ作品としての出来の良さは随一と断言できます。
1989年作品ではありますが、古臭さや前時代を感じるというよりも
近代史を感じるといった方が分かりやすい作品です。

まず本作で一番に褒め称えたいのは、ストーリー構成・脚本と描写の
完成度の高さでしょう。帆場暎一をめぐる捜査の過程で描かれるキャラ達の
心理描写と展開される真相の動線が非常に分かりやすく、視聴している側も
一緒に真相をおっている様な錯覚を覚えます。また予想の半歩先を行く二段
三段落ちの素晴らしいおケツマツもお見事の一言につきます。
押井監督が作ったとは思えない程パトレイバーらしさを保ち、至極の
エンタメ作品に感じれるでしょう。また作中に登場する『サイバーテロ』
『リコール隠し』といった要素は当時よりも現代の方がその恐ろしさを
実感できる点が古臭さを感じさせない要因の一つでもあり、未だに本作を
視聴していない人に薦めてしまう作品です。

そして本作のテーマですが、個人的には『時代への不満と怒り』だと
思います。まず本作の真相の肝は『犯人の動機』になると思いますが
これを考える前に本作が作られた当時の時代背景を少し語っておいた方が
楽しめると思います。
当時1980年代後半は日本は経済大国といわれる程の経済的な発展を遂げ、
時代はバブル時代へと突入していました。そのため湧き水の様に吹き出る
ほどお金が稼げた上に、大枚ばら撒いて昼夜問わず遊び倒し、量産型T式
パンツを見せながら踊り狂うジュリアナ嬢、飲酒運転、高級車の衝動買い
なんてのも当たり前。また日々自覚できるほどの科学・工業・建築技術
が発展した事で古き物(古き良き物も含む)は壊され、物を大量消費し
大量廃棄する事が正義とされ、人も文化も洗練されていない時代でした。
(これはその時代に生きたお父ちゃまにヒアリングして裏をとっております)

この行け行けどんどんの時代で、果てしない欲の追求と無限の浪費生活を
送る日本人に少なからず倫理観への猜疑心、不満や怒りを漠然と感じて
いた人もいたのではないかと思います。おそらく押井監督もその一人だった
のでは??だからこそ漠然としてみえない不満や怒りを、そのまま形を
なさない動機として犯人に宿し、同時にバブル時代の価値観というものを
間接的に風刺したのではないかと考えています。またこの漠然とした時代
への不満と怒りが、明確な形として描かれているのが次作の劇場版パトレイ
バー2になります。

総じて、この100分程度の劇場版作品に色々な要素を盛り込んだ作品であり
作画も含めて褒める所の多い作品です。お時間のある時にでも気軽に
見てみてくださいまし。

でゎでゎ~ご拝読有り難うございました。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 18

やまだ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

★5/不朽のマスターピース

夏の日の1989。なんと31年前。
機動警察パトレイバー the Movie

4DX版が7/17から全国の劇場で公開。
3日間でなんと動員数1万人突破らしい。
やっぱり何回見ても面白いからね。




ヘッドギアという奇跡が産んだロボアニメの究極形

コレは本当にマジで物凄くとても抜群に面白い。
面白いロボットアニメ映画は?と問われれば
これはもう秒でコレ。一択。
ロボ好きを公言している者がもし
万が一にもコレを見ていないということがあれば
そいつの言動はもう以後一切信用しない。
いや見てないなんて絶対あり得ないんだけど。

ロボットアニメだがアクションメインではないので
面白いアニメが見たい人にも手放しでオススメ。
マトモなロボットバトルはラストくらい。
無理矢理とってつけた感があるので、これも多分
押井からすれば無理矢理やらされたんだろうけど。

そして悲しいかな、
この作品に匹敵する押井作品の登場は
もう絶望的だということ。

パトレイバーという作品はヘッドギアの面々により
押井守をある程度コントロール出来る状況下でのみ
発生したケミストリーによるミラクルである。
スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフル
ミラクル。
パトレイバー制作の為に発足したヘッドギア。
押井は途中参加の為、当時既に決まっていた
決定事項について我を通しきれなかった。
押井は主役メカ、イングラムのデザインについて
最初から最後まで納得していなかったらしい。
だが「パトカーは白黒だろ」と当時の常識だった
「主役ロボは派手なカラーリングが望ましい」
を覆した突破力は押井の本分のなせる技である。 
ナンバープレートと指揮車両も個人的にツボ。

ヘッドギアの拘束力でシリアス一辺倒にもできず
学園ドラマのようなコミカルさ、
ロボットバトルのカッコ良さ、
そして何より押井の本領、シリアスなテーマ。

完璧なバランス。

今見てもそこまで古臭さを感じないのは
劇中ほとんどが職務中のシーンであるため
携帯電話を使わないことに余り違和感がないことと
サイバーテロ等のテーマが当時よりも現代のほうが
わかりやすいこともあるかもしれない。



成り行きで乗る事になる他のロボットモノと違って
仕事であんな高価そうなロボットに乗るんだから
宇宙飛行士とか航空機パイロットレベルの
スーパーエリートじゃないとオカシイとか
そんな野暮は言わない。
搭乗者のキャラに合わせて押井がロボを考えたら
多分ヒト型ですらなくなる。
個人的にはそういうのも大好きなんですけどね。
RING of REDのAFWとか、
辰奈1905のトミコローツとか。
でもそれより好きなのは
外骨格、パワードスーツ系。
ALIEN2のパワーローダー、
うすね正俊のコンバットドール、
横山宏のマシーネンクリーガー。
子供の頃、周りがガンプラ買ってたのに
私はSF3D買ってましたからね。
すいません。
このくだりは性癖書きたかっただけです。
こんなのが主役メカじゃ絶対ここまで売れてない。


面白いロボットアニメ(映画)は?
一番好きなアニメ(映画)は?
もう何年も、答えは同じ。
「劇場版のパトレイバー」

投稿 : 2024/06/01
♥ : 19

66.2 3 再開発アニメランキング3位
アベノ橋魔法☆商店街(TVアニメ動画)

2002年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (162)
879人が棚に入れました
『アベノ橋魔法☆商店街』(あべのばし まほう☆しょうてんがい)は、ガイナックスが制作したアニメ作品。
【ストーリー】夏休みのある日、大阪の下町、アベノ橋商店街に住むサッシと幼馴染のあるみ。
昔ながらの商店街は再開発で立退きの憂き目にあっており、風呂屋を営んでいたサッシの家も取り壊された。あるみ一家も北海道に引越しを考えてると聞き、愕然のサッシ。しかし頑固に反対するあるみの祖父。そんな中、二人はお互いの店に商店街の四方を護る四神獣が奉られていることを知る。
だがあるみの店のシンボルであり四神獣の最後の1つであった「ペリカン」が事故で壊れてしまう。いよいよ立ち退きが決まったその夜、奇怪な出来事が起こりはじめた。空を飛ぶドラゴン…そして、神社で体操していた人たちがキノコに…
必死で逃げるサッシとあるみ。だが、逃げる途中街は崩れていき、目の前には大きな城が建っていた。

声優・キャラクター
松岡由貴、サエキトモ、久川綾、小山力也、藤原啓治、青野武、金月真美、渡部猛、龍田直樹、氷上恭子、岡村明美、石井康嗣、小西克幸

Dkn さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

商業になりきる前のジャパニメーションと、世相を映す鏡。

いつの頃からかテレビは大多数が観る最大公約数を求めた宣伝媒体でありそれ以上でもそれ以下でもないと
割り切る人も多くなったかも知れません。全部が全部当て嵌まりはしませんが確かに増えた気はします。

テレビアニメにもその波は年々迫ってきています。

現在もアニメを見続けている人間なので、ロートルぶった“昔のアニメはもっと面白かった”なんてセリフは
虫酸が走るほど嫌いなのですが、そんな恐らく1980~2000年代あたりのアニメ好きたちが“ぼやく”のも、
気持ちがわからなくは無いのです。アニメの進化や歴史というのは考えているよりもずっと短いもので、
最古に近い物でも人間の寿命とさして変わらない程。それがここ50年程度で目まぐるしい発展を遂げてきました。

何かのレビューでアニメは世相を映す物だと表した気がします。時代ごとの流行りや廃りが顕著にあるのです。

まだ若く新しいコンテンツの業界に夢を抱き新雪を踏むような気持ちで開拓していったクリエイター達は、
車が宙を舞い機械が意思を持つ数十年先の未来に思いを馳せ科学の発展を夢想し虚構の世界へと描き写しました。
安定成長期を経てバブル期から崩壊後には時代と同じようにパワーある作品が数多く生まれることとなります。
急速に発展する世の中への不安や畏れ、社会問題やアニメで扱わなかった他ジャンルを取り入れていきます。

音楽を聞くとふと記憶が思い起こされる‥、なんて事があって、あの時あの場所で聞いた曲の数々。
時代を経て場所が変われど色がつき鮮明に思い出す景色、青春の淡い想い出、楽しかったこと悲しかったこと。
アニメにも同じような郷愁を感じることがあります。ファンタジーだろうとSFであろうと一つ一つが時代の空気や
時間そのものを閉じ込めた、映像という名のタイムカプセルのようなものです。

時代を切り取ったようなアニメーションは、今でも時代に思いを馳せ懐かしむことが出来る追憶の欠片(照れ)

本作の舞台は大阪の下町。アベノ橋商店街が再開発により取り壊されるという時代感にノスタルジーを感じながら
パラレルワールドを渡り歩き、とある人物の記憶によりタイムスリップのような不思議な出来事も起こります。

ムック本の「まんがアベノ橋魔法☆商店街~アベノの街に祈りを込めて~」にはテレビシリーズの資料等と、
キャラクター原案を担当している鶴田謙二さんの漫画「アベノ橋魔法☆商店街」が掲載されていました。
完結してないものの、本編のギャグとは逆のシリアスな雰囲気でアベノ橋の世界が広がるような感覚です。

元々はオリジナル脚本を赤井孝美が考案しており、それをベースにコメディとして作り変えたものでした。
各話ごとに作画監督にデザインや演出を全て任せアニメーターが全力で個性を発揮できる場として提供され、
GAINAXスタッフの特色を濃く反映したレイアウトや作画の癖が強く出ました。後にスタジオカラーが企画した
アニメーター見本市なんて近く、大学時代から彼らや彼らの意志を継ぐ人達がやりたいことは変わっていません。
制作する人間の青春期は十数年前に遡るわけで、自分たちの好きな事をやると自ずと古くなっていきます。
この頃にでも懐かしいと思ったパロディの数々は今観るとどう映るのかは興味があれば視聴なさって下さい。

現代のアニメーションには巨大資本の元、メディアミックスや宣伝効果を狙った広告塔のようなアニメも
数多く存在します。アニメの数自体は増えましたが、頭ひとつ抜けて面白いと感じるようなアニメは一握り。
それでも技術自体は日進月歩で、職人である日本の主力アニメーターもそう何度も代替わりはしていません。
予算の都合や制作ペースは有りますが、昔のアニメに劣っている部分なんて探すほうが難しいと思っています。

アニメーションは世相を映すものだからこそ、閉塞気味な時代に不満を感じるし面白くないと辟易している。
青春にあった何かを切り拓くような力を感じるアニメと違い、現代の行き詰まった世間に癒やしや余裕を求め
消費することに慣れたコンテンツに変わった事が過去と比べ不満に思っている点の一つなんだと感じるのです。

レビュータイトルで商業になりきる前のアニメだと言っていますが、これは良い意味だけでは言ってません。
レオタードのようなピッチリスーツに身を包んだSFや、マスキュリズムを感じるラブコメディーに、
内輪ネタで盛り上がるマニアックな物だけを詰め込んだ作品。愚直にそれだけを続けていたのではアニメは
ここまで巨大なコンテンツになりませんでした。悪かったとは言わないし今の業界にも引き継がれている。

今まさに時代を切り取り進化を続けてるアニメーションはスタートから何も変わってはいないのでしょう。
変わったのは好きだった頃に比べて「今の時代そのものを好きでいられているか」それだけだと思うのです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 14
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ある意味、ガイナックスの自主制作アニメw ~いまだ、バカやろう!~

[文量→中盛り・内容→考察系]

【総括】
文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作。パロディ系のドタバタギャグが中心。オムニバス形式。あのガイナックスが全力で遊んだ作品。様々な深みは感じられ、流石にガイナックスと思える「部分」もちらほら。

ただ、やはり子供向けのギャグが中心だから、その様なアニメが好きな方以外にはあまりオススメはできません。でも、1話は絶品です。何かで無料視聴のチャンスがあれば、1話だけでも観る価値はあるアニメだと思います。

※だって、文化庁メディア芸術祭ですが、「審査員全員が観たのは1話だけで、2話から作風が大きく変わるため、1話のみに対する授賞とした」と発表してますし。

なんじゃそりゃ? てか、そんな感じで賞決めてるの? あにこれでいうと、1話だけ観てベスト10に入れてる感じ? 私達(素人)ですら、基本的には全話観てるのに、、、(いや、私自身は途中切りも多い方だけど)。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
この作品が批判されるとしたら、以下の2点でしょう。

① 1、7、13話以外のパロディ満載のドタバタコメディに飽きる。

② ラストの展開が納得いかない。

この2つに関して、実は繋がっていると思います。

この作品の舞台は「阿部野橋商店街」。昭和の古き良き雰囲気を残す商店街ですが、再開発により、とり壊しが決まっている商店街です。

そんな商店街を最後まで守ろうとするのが、ヒロイン「あるみ」の祖父である「雅じい」。

この作品において「雅じい」は「義理や人情など、昭和的な良さ」の象徴だと思います。

そんな雅じいの死をきっかけに、あるみ と サッシ は不思議な世界に旅立ちます。二人が巡るのは、サッシの心象世界、つまり「子供の妄想」の世界です。

それはどこか、「若かりし頃の」雅じいが自らの夢を具現化した「阿部野橋商店街」とかぶります。

沢山の世界を巡る中で、あるみは何度も「元の世界に戻ろう」と言います。「雅じい」も「昭和の良さは」も死んだ世界に。

それを拒否するサッシ。そして結末は、「雅じいも阿部野橋商店街もある世界の創造」という反則技。普通なら、現実を受け止めることでの、あるみ やサッシの成長を描くはずなんですよね。

ここに、メッセージ性を感じます。

それが「いまだ!バカ(を)やろう!」「いまだ!バカ野郎(でも良いじゃないか)!」というものです。

そこにはガイナックスの、「アニメって、いつからそんな高尚なものになったの?」という、現代の芸術的なアニメに対するアンチテーゼを感じます。アニメって本来(昭和の時代)、「子供達の」玩具、コミュニケーションツールだったはず。

1話目は、掛け値なしに良い出来でした。

あのまま、関西弁の楽しいテンポ、会話劇の中で人情話をやり、阿部野橋商店街の謎を解き明かしながら、商店街の再建(もしくは別れ)を丁寧に描いていれば、「誰もが」「称賛」するアニメになっていたと思います。そんなこと、(私ですら思うのだから)ガイナックスの面々が分からないわけありません。

あの(地味で芸術的な)1話目を作ったのは、「こんなんもつくる気になれば作れるで。まっ、つくらへんけどな」ていうガイナックスからのメッセージだと思いました(考えすぎかなw)。

アニメって、本来バカバカしいものだ。熱いものだ。楽しいものだ。な~~にが芸術だい! こちとら芸術なんてつくるつもりなんかないんじゃ、てやんでぇバカヤロウめぇ!

という、気概を感じた(妄想)。

そういう見方をすると、制作陣が子供の頃にハマっであろう(ちょい古めで)様々な創作物のパロディが散りばめられているのにも、何らかの意味はあるのかもしれない。(制作が趣味100%で、自分が好きだと思っているモノを、誰にも遠慮せず作っている感じが、ある意味で自主制作アニメって感じでした)

……あっ、そうそう。とはいえやっぱり(私もいい大人なので)あのギャグでは笑えなかったので、評価は3ですw 普通に、1話目の流れからの人情話が観たかったっす(称賛か批判かどっちだよ、というレビューですが)w
{/netabare}

投稿 : 2024/06/01
♥ : 28

セメント さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

人間なんちゅうたかて達者が何よりや

どツボや・・・


アベノ橋商店街に住まう今宮聖志、朝比奈あるみはひょんなことがきっかけで次々に異世界に飛ばされてしまいます。
RGPのような世界、スペースオペラ、ダイナソー、学園もの、時代劇、様々な世界を渡り歩いて、二人はある事実に気づいていく、みたいな話です。
これがめっちゃ面白いです。
まず流れるような大阪弁、これは大阪弁の監修にあの吉本興業で台本作家もしていた田中哲弥さんが入ってるのもあって、とにかく出来が良いです。
そんでもって大阪弁って、聞いてるとなんか面白いですよね、イントネーションというか独特の雰囲気があって。
あるみが北海道に引っ越すことになった聖志が、"シャケが生まれて戻ってくるちゅう北海道かいな?"と間髪入れずに言うんですがね、そうそうー、大阪の人って流れるようなレスポンスをすらっと入れて来るよねー、という風に台詞回しは特に洗練されてます。
まず一つ会話劇が心地よい部分と、その次に基本的に1話完結のオムニバスで色んな時代背景の世界を楽しめるという部分ですね。
「ヤミと帽子と本の旅人」をさらに尖らせた感じで、なんかこういうの、いいですよね、1つのアニメで色んな世界が楽しめて。
それぞれの世界に行って順応性を高めていく聖志と馴染めないあるみが面白おかしく描かれていて、次はどんな世界に行くのだろう?と楽しみになってくるわけです。
登場人物達の掛け合いは面白く、世界観も得てして素晴らしい、まさにプロの技を見たといった具合です。
他にも物語の核心的部分に触れてしまう気がするので控えますが、まだまだ魅力はあって、百聞は一見にしかずといった感じで是非見て欲しいアニメです。

この作品、天下のGAINAXが企画していて、制作自体はマッドハウスと協同みたいなんですが、とにかく絵のクオリティはずば抜けています。
なんと文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞しています。
ただこの受賞、少々曰く付きで・・・

>なお、審査員が全員見たのは第一話であり、剣と魔法が活躍する第二話からの印象は大きく変わりそうなので、第一話のみに対する授賞とした。

とまぁ審査員を以てして1話しか見てないけど1話のクオリティが高かったから優秀賞をあげました、と言ってるのです。
いや、勿論1話の出来も素晴らしいんですが、全編を通して見えて来るものもあって1話だけじゃないだぞというのをここで言っておかないといけませんね。

主人公の今宮聖志役を演じるのはサエキトモさん、コテコテの大阪府出身です。
「ラジオアベノ橋魔法☆商店街」で披露された武勇伝は後に語り継がれることになったとか、ならなかったとか。
この方、病気の治療のため、長らく声優業を休業していたのですね、最近はちょいちょいアニメに出ているようですが。
ヒロインの朝比奈あるみ役は松岡由貴さん、生粋の大阪は阿倍野区の隣の東住吉区ご出身。
その他、久川綾さん、小山力也さんなど関西出身の方をメインを据えられて声優に関しては太鼓判です。

さてOP、EDともにアニソン界の大御所・林原めぐみさんが歌っています。
もはや何も言うことが御座いません。
OP「Treat or Goblins」はラップ調、ED「あなたの心に」は中山千夏さんのかの名曲のカバーとなっております。

さてキャラクターに関しては、さっきもちょっと述べちゃったんですが。
ちょい根暗でボケ担当の聖志と明るくてツッコミ担当のあるみの関係がすんごくいいです、掛け合いも面白い。
それから他にも行く先々の世界で共通して登場するキャラクターがままいますが、心に留めておいてくとよいでしょう。
最後に驚きの展開が待っていると思います。


このアニメ、ゼロ年代で最もクオリティが高いんじゃないかと思うくらいの作品です。
作り手の、作りたいものを作ってるんだ!って感じが伝わってきて、良い作品に巡り合えたものだと思います。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 5
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