こたろう さんの感想・評価
3.4
男前な少女漫画
少女漫画でありながらスポ根漫画でもある本作。
恋だの愛だのと言いながらも、物語の根底に流れるのは熱血!文字どうり命懸けでテニスに打ち込む壮絶なお話です。
偉才・出崎統監督の出世作・代表作といえば、あしたのジョーと、このエースを狙え!
スポーツにおける躍動感や技が極まったときの臨場感など、止め絵とSEで魅力的に表現してしまう、世にいう「出崎演出」が本作でも採用されています。
デジタル作画など考えられもしない時代、短い制作期間と限られた人員で、これだけ”見られる”映像を作りだした技法には脱帽するばかり。
とはいえ、やっぱり全体の作画の質としては、少々厳しいものがありますが・・・・・昔の作品のそれをどうこう言うのも詮無いことですね。
本作の特徴といえば、やはり熱血ストーリー。
鬼コーチの存在です。一に根性、二に根性、三四が無くて、五に根性。
「俺はお前の才能を見込んだんだ」、「岡、エースを狙え!」
軽い気持ちでテニス部に入った高校入学したての夢見る少女に、この一方的な理屈だけで、過酷すぎる試練を次から次へと与え続けます。
平凡で可憐な少女だった主人公は、その度に泣き崩れ、そして立ち直り強くなっていきます。
コーチも生半可でない覚悟で臨んでいるので、半ば脅迫的にやらざるを得なかったような気もしますが、その道で「一流」と呼ばれる人とは、皆そういうものなのかもしれません。
言葉は悪いですが、終盤でははもう、いろいろとテニスの為に身を犠牲にする事に酔っちゃってる・・・・マゾっぽいですw。色恋沙汰すら放棄しますからね。
少女漫画なのにヤワじゃない。
骨太でカッコイイスポーツ選手に、男も女もないってことを知らしめてくれました。
そして、やっぱりお蝶夫人。
絶対的な実力と人望・容姿・財力・華麗さを備えた完璧超人。、最初は憧れの存在でしかなかったお蝶夫人に、徐々に選手としてライバルとして意識されてゆく過程が、主人公の成長物語を絶妙に盛りたててくれます。この人物対比による状況説明って、今みても巧いなぁ、と感心。
アニメのオリジナルエピソードですが、最後はお蝶夫人と互角に勝負するまでになります。
(そして、そこでアニメは打ち切りですがw)
厳しく厚い信頼関係の師弟愛。
高みにある憧れのお姉さま。
この要素を含んだアニメや漫画がどれだけ存在することか。
その多くが、エースを狙え!から影響を受けていることは、本作を見れば疑い様もありません。