スタジオジブリでパトロールなアニメ映画ランキング 1

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68.9 1 スタジオジブリでパトロールなアニメランキング1位
On Your Mark(アニメ映画)

1995年7月15日
★★★★☆ 3.7 (190)
994人が棚に入れました
劇場版アニメ『耳をすませば』と同時上映で公開された短編アニメで、同映画の制作スタッフだった宮崎駿が監督を務めた。内容は、人気アーティストであるCHAGE and ASUKAの、アニメ映像を用いたプロモーションフィルムである。 汚染が進み、地表に人間が住むことは叶わなくなった未来の地球。カルト教団を殲滅するべくその本拠地に突入した武装警官隊は、施設の奥深くに翼の生えた少女を発見した。その姿から何かを感じた警官二名は、彼女を空へと返すために行動を開始する……。 企画自体はアーティスト側からスタジオジブリに持ち込まれており、本来はコンサートツアーのオープニングフィルムとして制作されたものだった。その完成度の高さから、万人の目に触れるようにと発表されることになったのだ。
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

7分弱を真剣に見る

 初見でした。7分くらいのミュージックビデオ。
 他の方のレビューがきっかけとなって視聴しました。
 最初に通しで見たときは、何が何やら分からないままに、あっという間に終わってしまいました。2回目以降は、一時停止しながら見ていたんですが、結局かなりの時間を費やしてしまいました。30分以上はは確実に画面とにらめっこしていました。

 相当面白い作品です。宮崎駿監督が描く、清々しくも悲しい世界を堪能できます。短編にもかかわらず、長編と遜色ないメッセージ性があります。時間も短いですし、何回でも何十回でも見て、ストーリーと世界観を把握することに努めてみると、この作品の良さを知ることが出来るのではないでしょうか。理解するためには、一時停止が必須レベルです。

対象年齢等:
 音楽や雰囲気を楽しむためならどなたでも。解釈をするのならば、最低限の知識は必要とされますので、子供には難しいかもしれません。中学生か高校生くらいからがいいと思います。

 以下のレビューは、かなりのネタバレです。未視聴の方は、一度以上視聴したうえで読むことをお勧めします。というか、余計な先入観を持たないように、ネタバレ耐性があっても読まない方がいいと思います。


結局どんなストーリー?:{netabare}
 あるカットの解釈に明確な結論を出せていないために、そこで分岐する二つのストーリーを挙げます。
 一つ目は、「助けられなかった翼の女の子を助けることを想像する話」です。
 二つ目は、一つ目を前提に「翼の女の子すら想像だったという話」です。
 個人的には、二つ目だと思っているのですが、ここではその原因も結論も述べずに、後述することにします。ただ、どちらもこの作品の大半が想像により成り立っているという姿勢は変わりません。翼の女の子が亡くなっていると解釈しているのも同様です。以下の考察では、一つ目を前提として進めていき、最後に二つ目の解釈を追加します。
{/netabare}

世界観:{netabare}
 この世界は、原発がメルトダウンをした後の世界です。核戦争後ではありません。正確に言うとするならば、メルトダウン後にも原発に依存している世界です。根拠となるカットを挙げておきます。

①オープニングに描かれている草原と朽ちた鉄線、無人の民家、民家の後ろの巨大な建物
②頻出する放射能のハザードシンボル
③重装甲の車両
④人類の居住空間が地下になっている
⑤居酒屋のメニューで、合成食料が安く、天然ものが時価となっている
⑥地上にたくさんの原発が並んでいる

 ハザードシンボルといくつかの標識から、地上に人が住んでいないことが分かります。人が住んでいないために手入れがされず、草が生い茂り、鉄線が朽ちています。民家が壊れていないのは、爆発性の災害(核戦争・核爆弾)ではなく、放射線の影響だけがあるからだと思われます。
 民家の後ろにある巨大な建物は、おそらくメルトダウンした原発です。原発がメルトダウンを起こしたために周囲を塗り固められた姿です。いびつな形で塗り固められているのは、その際の緊急性と人間が味わった恐怖の表現なのかもしれません。
 地表が汚染されてしまったため、人類は地下に逃げ込みました。耐放射線の装甲車でなければ、地上には出れなくなっています。また、海も汚染されています。安全な天然食品が貴重になり、やきとり・めざしが時価になっています。合成の塩サバとバイオ酢だこは比較的安価に食べられるようなので、人工的な食料の生産体制は確立されているようです。
 地下世界にもかかわらず、電気が煌々と灯されています。また、食料の生産も潤沢に行われているようです。これらを支えるエネルギーはおそらく複数の原発によるものです。
 人類は、原発の恐怖を知ったにのも関わらず、原発の依存から抜け出すことは出来ませんでした。

 こんな感じだと思います。地上の民家に比べ、地下世界はかなり広大で、かつ、発展しています。つまり、地下に進出してから長い時間が経過しているわけです。地上の別の場所に避難しているのではなく、地下の生活が基本となっているってことです。一基の原発がメルトダウンして、地上の全てが壊滅状態ということは考えづらいので、多数の原発がメルトダウンをしているのかもしれません。翼の女の子が飛び立つ最後のシーンで、もう一基塗り固められた原発が写っているように見えます。メルトダウンをした原発は、海洋汚染が進まないように最低限の封印を施して終わりにしているのではないでしょうか。
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二人の男と彼らの現実:{netabare}
 二人の男は、主題歌を歌っているチャゲとアスカだと思われますが、先入観を除くためグラサンとイケメンと呼称します。この二人は警察の中でも下っ端の存在だと思います。ほぼ最下層と言っていいと思います。根拠は二つです。
 一つ目は、地上のパトロール的な任務に就いていることです。世界観で述べたように、地上は汚染された世界です。そこに行く仕事をしていることから、相当下位の立場であることが伺えます。
 二つ目は、指揮官ではなく、戦闘の最前線に立っていることです。前線のどの位置にいたかというと、突入の先端を担う戦闘のエリートではなく、そのあとからついていく補助的な役割だと思われます。

 おそらく初陣だったのでしょう。凄惨な現場にショックを受けてしまったのが彼らです。兵士が女性を持ち上げて死亡を確認するシーンがありますが、この時に部屋の外から部屋の中を見ていたのがこの二人だと思われます。このシーンでは、背後は光で満ちています。つまり、光の世界にいたと思っていたけれど、現実の闇の部分を見てしまったという描写です。

 ここまでが実際に起こった現実のシーンです。つまり現実はパトロールと襲撃と飲み屋だけ。それ以外は想像の中の世界です。
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翼の女の子:{netabare}
 彼女が亡くなっているのは確定だと思います。
 注目すべきは、彼女が初めて登場した時のカットです。壁を見て欲しいのですが、頭の高さの位置くらいのところから、床の位置まで何かの跡があります。その先にあるのが翼の女の子の頭で、その手前に赤い缶が転がっています。
 このカットでは、赤い缶以外の色が消されています。つまり、赤い缶に注目してくれというメッセージが込められています。赤い缶はコーラだったわけですが、当たり前ですがこれがメッセージのはずがありません。見ろと指示したところにメッセージがないんです。
 これは、「メッセージを隠しましたよ」ということがメッセージになっているんです。「赤い缶で隠しましたよ」というメッセージです。
 赤い缶によって隠されたのは何か。それは「血」です。赤い缶によって「血」を隠したんです。壁の跡も、赤い缶も「血」を描いているけれど、それを隠している。つまり、彼女の「死」を隠したというわけです。壁の跡と頭と赤い缶を直線に並べているのも、血の流れを暗喩しているからです。イケメンが彼女に近づき、死を確認するときには、周囲の色が復活しています。「死」を隠す必要がなくなったから、色が戻ったというわけです。翼の女の子の頭の周りは、赤いもので満ちています。

 他にも根拠はあります。
 宗教ビルの目のマークが動いていますが、これも目を見てくれというメッセージで、死んだ女性と翼の女の子の目の類似性(生気のない目)をアピールしているように思えます。瞬きをしていない彼女らは、死を担っているというです。
 翼の女の子が水を飲むシーンがあります。このシーンでは、胸が大きく動いています。これは鼓動が復活した、つまり、生き返ったという表現です。
 また、装甲車に翼の女の子を乗り込ませるシーンでは、ぞんざいに扱われ、脚が出てしまっています。生きていることを前提とすれば、このような雑な扱い方をするはずがありません。しかも、翼の女の子の身体が固いんです。くてっとならずにピンと張っている。これは死後硬直の描写です。
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襲撃後の展開:{netabare}
 翼の女の子の死亡の描写後に繰り返される映像は、想像のものだと述べました。単に想像しているというよりは、イケメンが考え、口に出したことについて、グラサンが現実的な指摘をすることで、想像の世界をより現実的に修正していっているのだと思います。つまり、会話の映像化です。この作品はミュージックビデオなので、会話をさせることが出来ません。そこを逆手に取ったのだと思います。
 イケメンが話しているのは、「あの翼の女の子がもし生きていたら」という内容です。このイケメンの考えに対して、グラサンが現実的な指摘(否定)をするたびに、想像が頓挫しています。何度も会話を続ける中で「翼の女の子が助けられる出口」を探しているのだと思われます。

 想像だと確信できる理由は、「素顔」です。イケメンとグラサン以外の人物はマスクをしているか、防護服を着ているかで、顔を出していません。つまり、危険な環境下にあるということです。そんな中で彼らだけが素顔を晒しているのは、危険がない想像の世界にいるからです。

①最初の想像は、翼の女の子の死を確認した後すぐに入ります。飲み屋のシーンが出てきていませんが、このシーンから既に想像に入っています。
 このシーンで描かれているのは、「理想」です。「もし死んでいなかったのならば、逃がしてあげたい」というイケメンの「理想」だけが描かれています。地上の背景を見て欲しいのですが、原発など描かれておらず、美しい自然の風景しかありません。翼の女の子も満面の笑顔です。これはイケメンの「理想」だからであって、現実が一つも介入してきていないということです。

②次の想像は、グラサンに「生きていたとしてどう助けるんだ」と指摘された後です。生きていたとしても、周囲にばれずに逃げることは出来ず、連れて行かれてしまうだろうという現実が入ってきています。

③「連れて行かれたのならばその場所から救出すればいい」と展開したのがその後のシーンです。グラサンが解除装置を作り、イケメンが場所を探し当てるという分担をしています。イケメンの周囲に花束が写っていますが、この世界では花自体が貴重なはずです。これも想像の中だからだと思います。もちろんチャゲアス人気のメタファーでもあるでしょう。
 施設に侵入した際には、ハザードシンボルを背に制服で悠々と歩いていますが、グラサンに「さすがに防護服はいるだろ」と指摘されたのだと思います。服装が突如防護服に変わります。
 防護服を着た職員が、風船のように膨らんだだけで倒されてしまうのは、そういう物質を注入したというよりは、「凄惨に人を殺したくない」という戦闘後の心理が影響したためだと思います。
 その後、装甲車に乗って地上に出ようとしますが、ここでグラサンの「追手が来るだろう」という指摘がなされて、作戦は失敗へと帰着します。
 翼の女の子の目や身体に生気がないのは死亡しているためで、彼女が一人で逃げずに懸命にイケメンを助けようとするのは、イケメンの中の彼女はあくまでも理想像であり、彼女を純真なものとしか捉えていないからだと思われます。自分たちを見捨てないだろうということです。また、テーマとも関係します。

④どう考えても成功しないため、ここで一旦当初の目的を思い返すカットが入ります。
 その後の想像で、装甲車が飛行機能を有するようになりました。現実的には救出が不可能だと悟り、当初の目的を達成するためにやや空想側へ寄ったのだと思われます。そもそも装甲車に飛行機能が付いていたのならば、③の時点で飛行していたはずです。飛行した装甲車が事故を起こすのは、グラサンの「飛ばし方が分からない」という現実的な指摘が入ったためでしょう。グラサンが重たいであろうタイヤを蹴飛ばせているのも空想の側面が強くなっているからだと思います。
 そして、オープンカーに乗って地上へと到達します。オープンカーの奪取シーンがないのは、地上が汚染されたこの世界にオープンカーが存在し得ないためか、少なくとも下っ端にはどこにあるのか分からないためでしょう。分からないから考えていないのだと思います。トンネル内で追手がかからないのも、空想に寄ったためにハッピーエンドを急いでいるからです。
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エンディングとテーマ:{netabare}
 ④のトンネルを抜けた先からがエンディングということにします。
 ①(④の当初の目的を含む)の理想とエンディングの描写の同異点を見て欲しいんですが、ここの変わったところと変わっていないところがテーマになりそうな気がします。

 変わっていないところ。翼の女の子が生きていることとオープンカーは変わっていません。あと、翼の女の子が遠くへ飛び立ってしまうのも変わっていないですね。
 翼の女の子は、地表に出て初めて目に生気が宿りますから、汚染された世界でのみ生きていける存在です。オープンカーは、人間にとっては、汚染されていない世界でのみ走れる車ですから、意義としては両者は真逆にあると思います。それの両立を目指している、つまり「叶わぬ夢」です。だから、彼女は遠くに飛び立ってしまうのではないでしょうか。

 変わったところ。背景を比較してほしいのですが、①は美しい自然の風景です。エンディングではトンネルの出口周辺の汚染とドライブ中の背後の原発が描かれています。それと翼の女の子の表情が、満面の笑顔から憂いを含んだ笑みに変わっています。ウインクと指へのキスが追加されています。
 背景の補足をすると、オープニングにもエンディングと同じ表現があります。車が通ったところは草がなく、人が入れないところは自然があふれています。人の通行はないはずですから、本来道は轍として描かれるべきだと思いますが、そうは描かれていません。
 このオープニングとエンディングの背景から考えられるのは、「人の近くからは自然が無くなる」ということだと思います。翼の女の子も、人ではない自然側のイメージを担っています。だからこそ、飛び立ってしまうとも考えられます。

 で、これらの要素が集約されたのが翼の女の子の憂いの笑顔です。
 地上が汚染され、自然から隔離され、人間は地下へ逃げ込み、人を守るはずの警察が暴力をふるう。そんな閉塞の世界を自分たちで作っておきながら、夢を捨てることが出来ない。彼女の笑顔は、そんな人間に対して向けられた笑顔です。慈悲ではなく、憐みの笑顔だと思います。
 想像の世界だということを踏まえれば、二人の男が光を背負って闇を見てしまったときに、人間のエゴとか業というものに気付いてしまった。そんな話だと思います。
 ウインクと指へのキスが意味するところは挨拶だと思います。夢や理想との出会いと別れ、両方の意味が含まれているのではないでしょうか。

 タイトルの「on your mark」も、「位置について、よーい、ドン」の「位置について」なわけですが、「やっと現実というスタートラインに立った」みたいな意味かもしれません。オープンカーは最後に道を外れるわけですが、彼らは夢とか正義を求めたら道を外れる(死んでしまう)世界に生きているわけです。想像の世界でしか夢を語れない彼らは、日常に戻って淡々と日常を送ってから死ぬのか、将来革命家になって死ぬのかは分かりませんが、現時点ではスタートラインなんだと思います。まだ走り出してはいないんです。翼の女の子の憂いの笑顔は、そんな二人への憂いでもあると思います。
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二つ目のストーリー:{netabare}
 簡単に。初めて翼の女の子に会うシーンなんですけど、部屋に入るときにイケメンの姿が半透明なんです。つまり、もしこんな部屋があったら、という想像なのではないかと考えられます。
 兵士によって生死の確認をされた女性と翼の女の子の類似点で、目を挙げましたけど、ぞんざいに扱われていることも共通するんですよね。持ち上げ方と車への押し込み方。現実で見たものが想像の世界に影響してしまったのではないでしょうか。この作品で、素顔を晒している人物、つまり、アイデンティティを持った人物は、二人の男と女性と翼の女の子だけですし、女性の顔を見てしまったから、助けてあげたくなってしまって、この女性を翼の女の子に仕立てて想像を始めた、と展開したように思えたりします。
 もう一つ深読みすれば、女性が持ち上げられているのって、背中なんですよね。その位置から自由の象徴である翼を生やしたのが、翼の女の子なのではないかな、みたいに思ったんです。持ち上げられたシーンと翼の女の子の出会いのシーンにおける近影は、同じ構図のようにも見えます。この辺はちょっと深読みが過ぎるかもしれませんけどね。
 最初の直観がこっちだったというのもあるし、エンディングを見たら「理想なんか叶うわけねぇだろ、それでも夢を見るもんだ」、つまり「翼の女の子が幻想であっても、助けたくなるんだ」と言われた気がしたのもあるし、個人的にはこちらの解釈を押したいですね。ここまで状況証拠が揃えば、あながち突飛な意見でもないと思うのですが、いかがでしょうか。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

On Your Mark―ここには宮崎駿監督からのメッセージが隠れているのかも。

1995年、「耳をすませば」と同時上映されました。

「ジブリ実験劇場」という副題がついたこの作品。

最初は「どういうことだ??」と思いましたが、
なるほど、繰り返し観ているうちにその副題の意味がわかった気がします。

この作品、繰り返し観ないと意味がわからないでしょうね。
映画館では当然一度しか流れなかったでしょうから、
お客さんにはどよめきが起こったことでしょう(笑)


● ストーリー
舞台は近未来。

放射能によって地表が汚染されたため、
人類は地下で生活をしていた。

警官の男2人は、襲撃したオカルト教団のアジトで
天使の少女と出会う。


CHAGE and ASKAの曲「On Your Mark」の
プロモーションフィルムとして制作されたため、
作中の台詞は一切ありません。

音楽に合わせて映像が流れるだけです。
(効果音はあります。)

主人公の警官2人のモデルはCHAGE and ASKAの2人です。


およそ7分の作品。

ちゃんと映画1本分作れそうな設定や構成を持っているので、
ストーリーはものすごく駆け足です。

こちらの想像と理解が追いつかないほど目まぐるしいです(笑)

しかし、意味不明ではないですし、展開が急速な分、
ものすごく内容に惹きつけられます。

細かい描写がカットされていることもあり、
この作品が一体どういう話なのか、解釈は観る人によって変わるでしょう。

私も初めて見た時と、繰り返し観た今とでは
随分解釈が変わりました。


≪ 私の解釈 ≫
*ここからは作品の構成について触れます。

この作品の場合、
いろいろな解釈を知れば知るほど楽しめるところもあるので、
未視聴の方も興味があれば開いてください。
(ネタバレはしていませんので。)

まっさらな気持ちで視聴したい場合はとばしてください☆

{netabare}

初めて見た時には、
構成に疑問を感じました。

宮崎駿監督のことだから、
いろいろなことを考えて構成を作っているのだと思うけれど、

途中で未来の描写が挟まったり、
時間が過去に戻って別の展開が続いたり。

混乱しました。

これによる私の解釈は以下の通り。

◆世界にはいくつかの未来があるということを示唆しているのか。

◆天使やオカルト教団の不幸な境遇と、
 天使や教団の人一人ひとりに待っていた(はずの)明るい未来を対比させ
 ているのか。

◆目指す未来への道程は一つじゃないことを言いたいのか。

◆「実験劇場」だから、いろいろなパターンのラストや演出を
 考えていて、それを音楽に合わせてつなぎ合わせたのか。


ネットでも少し検索をしてみたのですが、
やはり人によっていろいろな解釈がありました。

一つのストーリーのように見えて、実は三部構成であり、
精神の発達が異なる3つの人生を意味しているのだ、
という解釈もありました。

説得力があり、それもなるほどなーと思いました。

{/netabare}


この作品を長編化する、という話もあったそうです。
長編化されてしっかりとしたストーリーを観てみたい気もしますが、

私は7分のこの構成だから、
この作品の良さが味わえると思います。

観る人によって様々な解釈がなされている本作品。

自分なりの解釈を探すのが好きな人にとっては
うってつけの作品と言えるでしょう。

時間も短いから、
とことん見返すことができますしね。

そして自分なりの解釈を深めたり、
他の人の解釈から新たな発見を得たり、

そういう無限の楽しさと可能性をこの作品は持っています。


それにしても、自分の生き様を貫く!という
かっこいい役のモデルとなっておきながら、
現実では今や犯罪者。

2次元の理想と3次元の現実との壁は
なんと高くて冷たいものなのか…。


● まとめ
『On Your Mark』とは、
『位置について』という意味。

この作品は完結しているように思いますが、
実際はそうではないのかも。

主人公の警官2人にとっても、私達にとっても、

あなたの行動から未来は少しずつ作られているのだという、
宮崎駿監督からのメッセージなのかもしれませんね。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 22

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

アニメはさすがのジブリ。ただ意味不明です。

 この作品の登録があると思いませんでした。本作はジブリがいっぱいに収録されています。もともとはチャゲ&飛鳥のPVで6分ちょっとの作品です。
 DVDは3000円くらいなので簡単に手にはいりますが、一応アニメオタクとしてチェックしていますが、1,2回見ればいいでしょう。無理に手に入れるほどではありません。本レビューは記録みたいなものです。

 アニメの出来はさすがのジブリでした。細部の作り込みや世界観が素晴らしいですね。1995年ですからエヴァの年ですね。絵柄は違いますが絵具か技術の関係でしょうか。アニメの色の雰囲気はどことなく90年代後半独特のエヴァと共通する感じがあります。

 正直内容は訳がわかりません。冒頭から核のマークがあって、原子力発電所があるので地上が放射能に汚染されているのはわかります。人類は地下世界にもぐりこんだのでしょう。

 宗教施設のようなところを警察が襲撃します。どちらに正義があるかわかりません。残虐性は警察ですが、宗教施設の雰囲気もかなり怪しいです。
 そこに鳥の翼をもつ少女がいます。何者なのか、どういう理由でそこにいたのかもわかりません。宗教の神なのか、捕らわれた人造人間の実験体なのか。放射能の世界観なので突然変異…というには奇麗すぎますね。

 まあ、少女が最後に自由になるので、捕えていた宗教施設側も正義はなさそうですね。つまり人類全体にどこにも正義がなくなったディストピアなのでしょう。

 チャゲ&飛鳥扮する警察官2人がその翼をもつ少女を奪取します。逃亡し外の世界に連れて行こうとします。ここで不思議なのは、一回失敗して途中で時間が巻き戻っているような感じなんですよね。これが意味するところも解りません。パラレルワールド?タイムリープ?心象風景?

 とにかく翼を持つ少女を外の世界に連れて行き、空に放ちます。少女は嬉しそうに雲の向こうに去ってゆきます。放射能で汚染された世界だとしたら、少女に未来があるかわかりません。地下世界もかなりくたびれた荒廃した感じがあります。人類が滅びの時を迎えているのかもしれません。

 オンユアマークという歌の歌詞を確認したましたが、あまり関係なさそうですね。結局意味はわかりませんが、人類の黄昏がテーマなんでしょうか。
 ナウシカの冒頭の絵巻物、背中に羽がある少女を連想する人は多いでしょうが、関係は不明です。放射能の汚染された世界で人造人間だとしたらあるいはと思いますが、だからどうした、という感じですね。






 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 7
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